(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】潜在事故記録装置
(51)【国際特許分類】
G07C 5/00 20060101AFI20230502BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20230502BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
G07C5/00 Z
G08G1/00 D
G08G1/09 F
(21)【出願番号】P 2022065599
(22)【出願日】2022-04-12
(62)【分割の表示】P 2018019692の分割
【原出願日】2018-02-06
【審査請求日】2022-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】593026627
【氏名又は名称】セルスター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】小林 恭二
(72)【発明者】
【氏名】帆苅 努
(72)【発明者】
【氏名】松永 広行
(72)【発明者】
【氏名】小野 幸範
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/010392(WO,A1)
【文献】特開2018-007038(JP,A)
【文献】特開2012-003607(JP,A)
【文献】特開2010-020485(JP,A)
【文献】特開2017-175220(JP,A)
【文献】特開2016-103049(JP,A)
【文献】中国実用新案第205545367(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 5/00
G08G 1/00
G08G 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライブレコーダーのカメラが撮像した映像データを記録した記録媒体から、潜在事故の発生前後の映像データ及び位置情報を含む潜在事故情報を読み取る読取部と、
前記記録媒体に前記潜在事故情報を書き込む書込部と、
前記潜在事故情報を共有するか否かを区別するためのフラグを、前記記録媒体毎に付与するフラグ付与部と、を有することを特徴とする潜在事故記録装置。
【請求項2】
前記フラグは、前記記録媒体毎に、前記潜在事故情報を読み取るか否かを区別するためのフラグであることを特徴とする請求項1記載の潜在事故記録装置。
【請求項3】
前記フラグは、前記潜在事故情報を、他のドライブレコーダーの記録媒体毎に書き込むか否かを区別するためのフラグであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の潜在事故記録装置。
【請求項4】
ドライブレコーダーとの間で、ネットワークを介して情報を送受信する通信部と、
前記通信部が前記ドライブレコーダーから受信した潜在事故の発生前後の映像データ及び位置情報を含む潜在事故情報に、各ドライブレコーダーに送信するか否かを区別するためのフラグを、各ドライブレコーダーに応じて付与するフラグ付与部と、
を有することを特徴とする潜在事故記録装置。
【請求項5】
前記フラグ付与部は、ドライバーの所定期間内の運転による車両の走行状態の前記記録媒体単位での評価に応じて、前記フラグを付与することを特徴とする請求項1乃至
3のいずれかに記載の潜在事故記録装置。
【請求項6】
前記フラグ付与部は、ドライブレコーダーのカメラが撮像した映像データを記録した記録媒体からドライバーの所定期間内の運転による車両の走行状態の前記記録媒体単位での評価に応じて、前記フラグを付与することを特徴とする請求項4に記載の潜在事故記録装置。
【請求項7】
前記走行状態を評価する評価部を有する請求項5
又は請求項6に記載の潜在事故記録装置。
【請求項8】
情報を入力する入力装置を有し、
前記フラグ付与部は、前記入力装置からの入力に応じて、前記フラグを付与することを特徴とする請求項1乃至
7のいずれかに記載の潜在事故情報記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜在事故情報を記録する潜在事故記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライブレコーダーは、車両の外部や内側の映像をカメラにより撮像し、撮像した映像データを、マイクロSDカードなどのリムーバブルな記録媒体に記録する装置である。ドライブレコーダーの映像データの記録は、例えば、エンジンの始動からエンジン停止まで連続して行われる。
【0003】
このようなドライブレコーダーには、GPSが搭載されていて、車両が走行している位置を検出可能に設けられている。そして、GPSを利用して、ヒヤリハットを報知する報知機能を有しているドライブレコーダーが存在する。ヒヤリハットとは、事故には至らなかったものの、事故が発生する原因となり得た状況をいう。
【0004】
ドライブレコーダーにおいて、ヒヤリハットの報知機能を作動させるためには、あらかじめヒヤリハットとその位置情報を、記録媒体に記録しておく必要がある。そして、GPSにより検出される車両の位置が、あらかじめ記録した位置に接近又は到達すると、警告を示す情報を画面表示や音声出力により報知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、運送会社、タクシー会社では、同じエリアを異なるドライバーが走る。このため、各ドライバーは、ヒヤリハットとして登録された地点と同じ地点を走る可能性が高い。このため、全てのドライバーが、ヒヤリハットを共有できることが好ましい。これに対処するため、例えば、複数の車両のドライブレコーダーにおいて記録されたヒヤリハットの情報を、外部データベースに記憶しておくことが行われている。各車両のドライブレコーダーは、そのデータベースからヒヤリハットの情報を取得して、車両がヒヤリハットに対応する位置に接近すると、警告を報知する。
【0007】
しかし、複数の車両から取得したヒヤリハットの情報は、種々のものが存在するとともに、その数も膨大となる。このため、あるドライバーにとっては必要な情報であっても、他のドライバーにとっては不要な情報も存在する。また、そもそもヒヤリハットとして適切でない情報も存在する。
【0008】
これらの情報を全て含めて、ヒヤリハットとして全ての車両のドライブレコーダーに記録すると、警告の報知が頻繁となり、各ドライバーにとって煩雑である。また、ドライブレコーダーの記憶媒体の記憶容量は少ないため、不要なヒヤリハットの情報によって記憶領域が無駄に使用されることは避けたい。
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、複数のドライバーが、必要な潜在事故情報を共有できる潜在事故記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の潜在事故記録装置は、ドライブレコーダーのカメラが撮像した映像データを記録した記録媒体から、潜在事故の発生前後の映像データ及び位置情報を含む潜在事故情報を読み取る読取部と、前記記録媒体に前記潜在事故情報を書き込む書込部と、前記潜在事故情報を共有するか否かを区別するためのフラグを、前記記録媒体毎に付与するフラグ付与部と、を有する。
【0011】
また、本発明の潜在軸記録装置は、ドライブレコーダーとの間で、ネットワークを介して情報を送受信する通信部と、前記通信部が前記ドライブレコーダーから受信した潜在事故の発生前後の映像データ及び位置情報を含む潜在事故情報に、各ドライブレコーダーに送信するか否かを区別するためのフラグを、各ドライブレコーダーに応じて付与するフラグ付与部と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のドライバーが、必要な潜在事故情報を共有できる潜在事故記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態の潜在事故記録システムを示す全体構成図である。
【
図2】第1の実施形態のドライブレコーダーを示す正面側斜視図である。
【
図3】第1の実施形態のドライブレコーダーを示す背面側斜視図である。
【
図4】第1の実施形態のドライブレコーダーのメモリカード収容部を示す斜視図である。
【
図5】第1の実施形態のドライブレコーダーの設置例を示す斜視図である。
【
図6】第1の実施形態のドライブレコーダーのハードウェアブロック図である。
【
図7】第1の実施形態のドライブレコーダーの制御部の機能ブロック図である。
【
図8】映像データ、潜在事故情報のフォーマットを示す説明図である。
【
図10】第1の実施形態の潜在事故記録装置の制御装置の機能ブロック図である。
【
図11】第1の実施形態のフラグ付与の手順を示すフローチャートである。
【
図12】第1の実施形態の潜在事故情報の収集及び報知の手順を示すフローチャートである。
【
図13】第2の実施形態のドライブレコーダーの制御部の機能ブロック図である。
【
図14】第3の実施形態のドライブレコーダーの制御部の機能ブロック図である。
【
図15】第3の実施形態の潜在事故記録装置の制御装置の機能ブロック図である。
【
図16】第3の実施形態の重み付けの手順を示すフローチャートである。
【
図17】第4の実施形態のドライブレコーダーの制御部の機能ブロック図である。
【
図18】他の実施形態の潜在事故記憶部を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施形態]
[概要]
本発明を実施するための第1の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態は、ある車両に設置されたドライブレコーダーが収集した潜在事故情報を、他の車両に設置されたドライブレコーダーにおいて利用可能とする、つまり共有する潜在事故記録システムである。潜在事故とは、事故には至らなかったものの、事故が発生する可能性があった状況をいう。いわゆるヒヤリハット、ニアミス等は、潜在事故に含まれる。
【0015】
図1に示すように、潜在事故記録システムSは、ネットワークNを介して接続されたドライブレコーダー100、潜在事故記録装置200を有する。ドライブレコーダー100は、車両C1、C2、C3…(以下、車両を区別しない場合にはCとする)の外部をカメラにより撮像し、撮像した映像データを、記録媒体に記録する装置である。
【0016】
記録媒体としては、メモリカードM等のリムーバブルな媒体を用いる。例えば、運送会社、タクシー会社等のサービスを提供するための複数の車両Cに、ドライブレコーダー100が搭載される。メモリカードMには、ドライバー又は車両Cを識別する識別情報が記録されている。さらに、メモリカードMには、潜在事故情報を共有するか否かを区別するためのフラグが記録されている。潜在事故情報を共有するとは、潜在事故情報を記録すること、記録された潜在事故情報を読み取ること、記録された潜在事故情報を送信すること、記録された潜在事故情報を他の記録媒体に書き込むことの少なくとも一つを含む。潜在事故情報を共有しないとは、潜在事故情報を記録しないこと、記録された潜在事故情報を読み取らないこと、記録された潜在事故情報を送信しないこと、記録された潜在事故情報を他の記録媒体に書き込まないことの少なくとも一つを含む。本実施形態のフラグは、潜在事故情報を記録するか否かを区別するためのフラグである。メモリカードMは、リムーバブルな記録媒体であればよく、SDカード、マイクロSDカード等、種々の媒体を利用可能である。
【0017】
潜在事故記録装置200は、各ドライブレコーダー100のメモリカードMに記録された情報を読み取り、データベース化して記録する装置である。潜在事故記録装置200は、PC、サーバ、タブレット、スマートフォン等のコンピュータにより構成される。潜在事故記録装置200は、潜在事故記録システムSの全体又は一部を管理する主体が使用する。例えば、各ドライブレコーダー100の潜在事故情報が、潜在事故記録装置200に収集され、これに基づいて、運送会社、タクシー会社等のサービスを提供する組織のオペレータОPが、各ドライバーの安全運転を支援する。
【0018】
ネットワークNは、インターネット、専用通信網等、現在又は将来において利用可能な種々の通信網を適用できる。例えば、ドライブレコーダー100は、スマートフォン、ウェアラブルデバイス等の情報通信端末Tを介して、Wi-Fi(登録商標)、Bluetооth(登録商標)、USBなどを利用したテザリングにより、ネットワークNに接続される。なお、スマートフォン、ウェアラブルデバイス等の情報通信端末Tは、ドライブレコーダー100への情報の入力装置として利用することもできる。潜在事故記録装置200は、ルータ等の通信機器を介してネットワークNに接続される。
【0019】
[ドライブレコーダー]
[外観構成]
本実施形態のドライブレコーダー100の外観構成を、
図2~
図5を参照して説明する。
図2は正面側斜視図、
図3は背面側斜視図、
図4は底面側斜視図、
図5は車両への設置例を示す斜視図である。なお、本明細書において、図面に示すz軸方向を「上側」、その逆方向を「下側」とする。各部材の構成を説明するのに、「下」は「底」とも称する。z軸方向を縦軸方向と称する場合もある。また、
図2に示すy軸方向を正面側とし、その反対側を背面側とする。正面側は前方、背面側は後方と称する場合もある。「上」、「下」、「正面側」、「背面側」、「前方」、「後方」とは、ドライブレコーダー100が通常の態様で設置された場合の各構成の位置関係をいう(
図5参照)。
【0020】
ドライブレコーダー100の外観構成を説明する。ドライブレコーダー100は、
図2~
図4に示すように、本体101、ブラケット102、カメラ103、ディスプレイ104、ボタン105、ランプ106、音声出力口107、メモリカード収容部108、音声入力口109を有する。
【0021】
本体101は、略直方体形状の筐体である。ブラケット102は、本体101を車両に取り付ける部材である。カメラ103は、車両の外部を撮像する装置である。カメラ103のレンズは、本体101の正面側に設けられている。ブラケット102は、一端が本体101の上部に取り付けられ、他端が車両のフロントガラスFG内の所定の位置に、カメラ103のレンズが車両の正面を向くように、両面テープ等を介して貼り付けられる(
図5参照)。また、ドライブレコーダー100には、電源ケーブルLを介して、車両のシガーライターソケットに接続されることにより、車両から電源が供給される。なお、ドライブレコーダー100の設置位置は、ダッシュボード上であってもよい。
【0022】
ディスプレイ104は、本体101の背面側に設けられ、各種の情報を表示する液晶等の表示装置である。ディスプレイ104は、タッチパネルと一体に構成されていてもよい。ボタン105は、各種の指示入力を押圧により行うスイッチである。ランプ106は、各種の情報を発光により表示する部材である。音声出力口107は、後述するスピーカ114の音声を出力するための開口である。メモリカード収容部108は、
図4に示すように、本体101の下部に設けられたスリット状のスロットであり、スロット内にメモリカードMが挿脱される。音声入力口109は、後述するマイク115へ音声を入力するための開口である。
【0023】
[内部構成]
次に、ドライブレコーダー100の内部のハードウェア構成を、
図6のブロック図を参照して説明する。ドライブレコーダー100は、上記のカメラ103、ディスプレイ104、ボタン105、ランプ106、メモリカード収容部108に加えて、加速度センサ110、GPS受信器111、時計112、一時メモリ113、スピーカ114、マイク115、メモリカードインタフェース116、制御部120を有する。
【0024】
カメラ103は、レンズ等の光学部材、CMOSやCCD等の受光素子であるイメージセンサを有する入力装置である。カメラ103は、上記のように設置されるため、車両の前方の映像を撮像することができる。なお、車内の映像を撮像するカメラを有していてもよい。
【0025】
ディスプレイ104は、動画像、静止画像を表示する出力装置である。ディスプレイ104は、カメラ103が撮像した映像、ドライブレコーダー100の設定画面、案内情報、警告等の情報を、所定のレイアウトで表示する。ディスプレイ104は、カメラ103が撮像した映像をリアルタイムで表示するライブビュー画像を表示することも、メモリカードMに記録された映像を再生することもできる。
【0026】
ボタン105は、ドライバー等のユーザがドライブレコーダー100に対する所望の指示を入力する入力装置である。ボタン105は、ディスプレイ104に表示されたメニューの選択や、情報の記録、消去等の指示入力を行うことができる。例えば、ボタン105、タッチパネルは、ユーザが潜在事故の発生の記録、記録された潜在事故情報の消去を指示入力する入力部として機能する。なお、図示はしないが、赤外線を介してドライブレコーダー100を遠隔操作するためのリモコンも、入力部として機能する。
【0027】
ランプ106は、継続した発光又は消灯、点滅等により、ユーザに特定の情報を知らせる出力装置である。ランプ106としては、発光LEDを用いる。ランプ106は、例えば、発光によって電源オン、警告等を示すことができる。メモリカード収容部108は、メモリカードMを収容する記録媒体収容部である。メモリカード収容部108は、収容されたメモリカードMとドライブレコーダー100との電気的な接続を確立する。
【0028】
加速度センサ110は、ドライブレコーダー100や設置対象の加速度を検出するセンサである。本実施形態の加速度センサ110は、x軸、y軸及びz軸の3軸方向の加速度を検出する3Gセンサを用いる。加速度センサ110により検出される加速度によって、ドライブレコーダー100を搭載した車両に加わった衝撃、車両の急加速、急減速などの動き、アイドリング時の振動などを判定できる。
【0029】
GPS受信器111は、GPS衛星からの電波を受信して、GPS衛星との距離及びGPS衛星の位置に基づいて、車両の現在位置を検出する位置検出部である。時計112は、年月日及び時刻を計測して出力する装置である。時計112は、映像データの記録、潜在事故の発生等の年月日及び時刻を出力する。一時メモリ113は、カメラ103のイメージセンサが受光した光を変換した電気信号を、一時的に保持するキャッシュメモリである。
【0030】
スピーカ114は、音声により、ユーザに特定の情報を知らせる出力装置である。マイク115は、ドライブレコーダー100が搭載された車内の音声を電気信号に変換して入力する入力装置である。音声とは、物音、生物の声等を含む。メモリカードインタフェース116は、メモリカード収容部108に収容されたメモリカードMへのデータの書き込み及びメモリカードMからのデータの読み出し、メモリカードMのフォーマット等を行うインタフェースである。
【0031】
ディスプレイ104、ランプ106、スピーカ114は、後述するように、ドライブレコーダー100が搭載された車両、つまり自車が潜在事故情報の位置に接近した場合に、警告を報知する報知部である。
【0032】
制御部120は、ドライブレコーダー100の各部の動作を制御する。制御部120は、中央処理装置であるプロセッサを主体に構成され、各種のメモリ、入出力インタフェース等を備えた所謂コンピュータである。プロセッサは、メインプログラムに従って、情報の入力、記憶、出力等のための演算処理及び周辺機器の制御処理を行う。
【0033】
メモリは、EEPROM、RAMを含む。EEPROMは、プロセッサが各部の制御を行うための各種の処理をおこなうためのプログラム、データ、設定が格納された書き込み可能な不揮発性メモリである。RAMは、プロセッサが処理を行う際の作業領域等として機能するメモリである。入出力インタフェースは、プロセッサが外部との間で入出力する情報の変換を行う。
【0034】
さらに、ドライブレコーダー100には、ジャイロセンサ117、車内CAN信号ポート118、通信部119が設けられている。ジャイロセンサ117は、ドライブレコーダー100や設置対象の角速度を検出するセンサである。車内CAN信号ポート118は、例えば、OBD-IIのように、車両のECUの自己診断機能のための各種の情報を取得する車両情報取得部である。車内CAN信号ポート118は、例えば、車両のOBD-IIコネクタに、アダプタケーブルを介して接続される。車両情報には、車速、アクセル開度、ブレーキ開度、ウィンカー動作、ハンドルの操舵角が含まれる。なお、車内CAN信号ポート118を車両に接続した場合には、本体101に接続されている電源ケーブルLを使用せずに電源の供給を受けることもできる。通信部119は、外部との間で情報の送受信を行う処理部である。通信部119は、例えば、情報通信端末Tを介して、Wi-Fi(登録商標)、Bluetооth(登録商標)、USBなどを利用したテザリングによりネットワークNに接続され、潜在事故記録装置200との間で情報を送受信する通信モジュールである。なお、通信部119としては、例えば、3G、4G等の通信規格による基地局との接続機能を有することにより、情報通信端末Tを介さずに、ネットワークNに接続可能な通信モジュールを用いることもできる。
【0035】
(制御部の各処理部)
制御部120は、プロセッサが、メモリに格納された各種のプログラム、データ、各種設定を読み出して実行することにより、各種の処理部として機能する。本発明は、上記のようなプログラム、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記憶媒体としても把握できる。以下の説明では、各処理部の機能をブロックで図示したブロック図を用いる。プログラム、データ、設定は、メモリカードMに記録されている場合も含む。
【0036】
制御部120は、
図7に示すように、映像記録部21、検知部22、音声認識部23、画像認識部24、潜在事故記録部25、位置判定部26、警告出力部27、フラグ認識部28、走行状態記録部29を有する。
【0037】
映像記録部21は、カメラ103が撮像した動画像である映像データを、メモリカードMに継続して記録する。継続して記録とは、所定の時間連続して記録することをいい、常時記録とも呼ぶ。例えば、エンジンの始動からエンジン停止まで連続して記録する。つまり、ドライブレコーダー100に電力が供給されている間、連続して記録する。但し、後述する潜在事故記録の際に、記録を一時的に中断し、その後再開する場合もある。なお、映像記録部21は、少なくとも映像データを記録すればよいが、本実施形態では、カメラ103による撮像時にマイク115から入力された音声信号も、映像データとともに音声データとしてメモリカードMに継続して記録する。
【0038】
より具体的には、映像記録部21は、カメラ103が撮像した映像データ及びマイク115から入力された音声データを、一時メモリ113からメモリカードインタフェース116を介してメモリカードMに記録する。このとき、
図8に示すように、一定の時間間隔の映像データ及び音声データを1ファイルとして作成し、当該ファイルをメモリカードMの所定の記憶領域に記録していく。
図8の例では、1ファイルが60秒である。メモリカードMの所定の記憶領域の空き容量が不足すると、最も古いファイルが記録された記憶領域に最も新しいファイルを順次上書きして記録する。
【0039】
検知部22は、潜在事故の発生を検知する。潜在事故の発生は、種々の手法により検知することができる。検知部22の検知は、あらかじめ設定としてメモリに記録された種々の発生条件を満たした場合をトリガーとして行われる。例えば、検知部22は、入力された計測値が、設定された各種のしきい値を超えた場合、しきい値未満の場合、上限下限のしきい値の範囲内又は範囲外にある場合、潜在事故であることを検知する。これらのしきい値は、メモリにデフォルトで設定されていてもよいし、ユーザが設定画面を見ながら、ボタン105を操作する等により入力してもよい。また、発生条件は、プログラムの更新時等に更新、追加、変更、削除等を行うことができる。
【0040】
音声認識部23は、マイク115から入力された音声の音量、周波数等を認識する。音量、周波数等を認識とは、音量、周波数を解析して特定することをいう。画像認識部24は、カメラ103により撮像された映像データにおける特定の対象の位置、形状及び色等を認識する。位置、形状、色等を認識するとは、位置、形状、色等を解析して特定することをいう。
【0041】
検知部22による潜在事故の検知のために、音声認識部23、画像認識部24による認識結果、加速度センサ110、GPS受信器111、ウェアラブルデバイス、ジャイロセンサ117、車内CAN信号ポート118により取得された計測値等を利用することができる。これらの情報と発生条件に基づく潜在事故の検知例は、以下の通りである。
【0042】
衝撃:加速度センサの値がしきい値を超えた場合
速度:GPSの信号に基づいて演算される速度、車内CAN信号ポート118により取得される速度(例えば、
図1の車両C2に示すように、速度がしきい値を超えた場合には、潜在事故として検知される。)
急加速/急減速:加速度センサの値がしきい値を超えた場合(例えば、
図1の車両C1に示すように、飛び出しがあって急ブレーキを踏んだ場合には、急減速があったとして、潜在事故として検知される。)
急ハンドル:ジャイロセンサの値がしきい値を超えた場合
アイドリング:速度がしきい値未満の停止中であり、加速度センサにより検出される振動がしきい値を超える場合
大きな音:マイクにより検出された音量が、しきい値を超えた場合
【0043】
さらに、以下のような発生条件も設定可能である。
(a)音声認識部23により認識された音声の音量、周波数がしきい値を超えた場合、音量、周波数が所定のしきい値の上限及び下限の範囲内にある場合等に、検知部22は、潜在事故であると検知する。例えば、人間の声としては、悲鳴、叫び、音としては、タイヤのスキール音、ABS作動音、他車事故時のクラッシュ音、クラクション音などを認識することにより、潜在事故であると検知する。
【0044】
(b)画像認識部24により認識された画像から、車線と自車との距離を認識して、その逸脱量がしきい値を超えた場合、前の車両との間隔がしきい値未満となった場合、潜在事故として検知する。
【0045】
(c)検知部22は、ウェアラブルデバイスからの信号に基づいて、これらの信号が示す値がしきい値を超えた場合等に、潜在事故として検知する。例えば、ウェアラブルデバイスが備えるセンサからの脈拍や血圧等の値が、しきい値を超えた場合、潜在事故として検知する。
【0046】
(d)検知部22は、ユーザによる指示入力があった場合にも潜在事故として検知する。指示入力の態様としては、例えば、ボタン105やタッチパネルが操作された、リモコンからの指示入力があった、スマートフォンやウェアラブルデバイスから指示入力があった等がある。なお、ユーザが意図的に大きな声を出したり、本体101に振動を与えたりすることによっても、指示入力と同等の機能を発揮できる。例えば、ドライバーが、危険な障害物を認識したとしても、車両の走行状態は平常であった場合に利用できる。
【0047】
(e)検知部22は、加速度センサ110からの信号のうち、縦軸方向の加速度を、他の軸方向の加速度よりも相対的に低く評価して、潜在事故を検知する。相対的に低く評価するとは、縦軸方向の加速度が潜在事故の検知に与える影響を、他の軸方向の加速度が潜在事故の検知に与える影響よりも低くすることをいう。縦軸方向は、上記のz軸に沿う方向であり、ドライブレコーダー100を水平に設置した場合に下側となる方向が重力方向である。これは、縦軸方向の加速度を除外して判断する、縦軸方向の加速度のしきい値を他の軸方向のしきい値よりも高くして判断する等により実現できる。例えば、
図1の車両C3に示すように、道路の段差、穴による縦軸方向の振動は、潜在事故でなくてもしきい値を超える場合があり、その場合にも潜在事故情報として記録されてしまう。このため、3軸方向の加速度センサ110からの信号のうち、縦軸方向の信号を排除又はしきい値を高くすることにより、潜在事故でない情報が潜在事故として記録されてしまうことを排除できる。
【0048】
潜在事故記録部25は、検知部22が潜在事故を検知した場合に、潜在事故の発生前後の映像データを映像記録部21により記録される映像データとは区別した情報と、位置情報とを含む潜在事故情報を記録する。映像記録部21により記録される映像データとは区別した情報とは、潜在事故の発生前後の映像データのコピーであってもよいし、潜在事故の発生前後に区切りを与える識別情報を付したデータであってもよい。本実施形態では、潜在事故記録部25は、潜在事故が検知された場合に、検知時点の所定の時間前から、所定の時間後までの間の映像データを、映像記録部21により記録される映像データからコピーして記憶する。所定の時間は、例えば、1分半~2分程度とする。事故の原因は、事故発生後ではなく、発生前の数分に原因があると検証されていることに基づく。位置情報は、GPS受信器111により検出される車両の位置情報である。なお、潜在事故情報は、少なくとも映像記録部21により記録された映像データとは区別した情報と位置情報を含めばよいが、本実施形態では、映像データとともに記録された音声データとは区別した情報も含む。つまり、潜在事故の発生前後の映像データに対応する音声データのコピー又は潜在事故の発生前後に区切りを与える識別情報を付したデータを含む。
【0049】
より具体的には、
図8に示すように、映像記録によって作成されたファイルのうち、潜在事故の発生時のファイルを利用して、別ファイルを作成する。例えば、映像記録時に作成されるファイルの開始時点(t0)から40秒経過後の時点(ta)で潜在事故が発生すると、潜在事故記録部25は、t0から60秒前から潜在事故発生20秒後まで、つまりt0-60秒~ta+20秒の期間の映像データを1ファイルとして作成し、当該ファイルをメモリカードMの所定の記憶領域に記録する。また、映像記録時に作成されるファイルの開始時点(t0)から20秒経過前の時点(tb)で潜在事故が発生すると、潜在事故記録部25は、t0から120秒前から潜在事故発生20秒後まで、つまりt0-120秒~tb+20秒の期間の映像を1ファイルとして作成し、当該ファイルをメモリカードMの所定の記憶領域に記録する。
【0050】
このように、少なくとも映像記録の単位が複数となる時間長で、潜在事故が記録されるようにする。この例では、少なくとも2ファイル分の時間長となるように、潜在事故が記録されることにより、潜在事故の発生の1分半~2分前の映像を確保できる。従来は、潜在事故の発生前の1ファイルのみを記録していたところ、本実施形態では、敢えて複数ファイルを記録する場合を含めることにより、事故の原因究明に役立つ可能性を高めている。潜在事故情報のファイルは、映像記録でのファイルが格納されるメモリカードMの記憶領域とは異なる記憶領域に記録される。なお、各ファイルの時間長は、上記で例示した長さには限定されない。
【0051】
なお、検知部22の潜在事故の検知には、上記のように、ユーザによる入力部から指示入力があった場合も含む。つまり、ユーザによる指示入力によっても、潜在事故記録部25に潜在事故情報を記録させることができる。指示入力の態様としては、例えば、ボタン105やタッチパネルが操作された、リモコンからの操作入力があった、スマートフォンやウェアラブルデバイスからの指示入力があった等がある。このような入力があった場合、検知部22は、潜在事故記録部25に潜在事故の記録を促すコマンドを出力する。
また、潜在事故記録部25は、潜在事故情報を消去することもできる。指示入力の態様は、潜在事故情報の記録の指示入力と同様である。
【0052】
位置判定部26は、GPS受信器111により検出された現在位置が、潜在事故情報に含まれる位置情報が示す位置に接近したことを判定する。接近とは、車両の現在位置と潜在事故の位置との距離が所定の距離以内となった場合をいう。
【0053】
警告出力部27は、位置判定部26により、車両の現在位置が、潜在事故情報に含まれる位置情報が示す位置に接近したと判定された場合に、警告を出力する。警告は、ディスプレイ104の画面表示、ランプ106の発光又は点滅、スピーカ114の音声等の報知部により、画面表示、発光、音声によりユーザに報知される。つまり、警告出力部27は、各報知部に応じた信号を出力する。例えば、
図9に示すように、ディスプレイ104の表示画面に、「300m先、ヒヤリハット地点です 走行には注意してください」などの文字と「!」などの記号を表示するとともに、ランプ106を発光させる。
【0054】
フラグ認識部28は、メモリカードMに記録されたフラグを認識することにより、潜在事故記録部25が、潜在事故の記録をするか否かを決定する。メモリカードMには、
図1に示すように、潜在事故情報を記録するか否かを区別するためのフラグが記録されている。ここでいうフラグは、潜在事故情報を記録するか否かを決定するための識別情報である。フラグを認識するとは、フラグが立っているか否かを判断することをいう。例えば、フラグが立っている“1”であれば、潜在事故情報を記録しないが、フラグが落ちている“0”であれば、潜在事故情報を記録するように設定されている。但し、フラグのいずれの状態を、記録する、記録しないに割り当てるかは自由である。また、フラグは、記録する、記録しないを区別できる情報であればよいため、その表現形式は問わない。
【0055】
フラグ認識部28が、潜在事故情報を記録しないと決定した場合には、潜在事故記録部25は、潜在事故情報を記録しない。フラグ認識部28が、潜在事故情報を記録すると決定した場合には、潜在事故記録部25は、上記のように、潜在事故情報を記録する。
【0056】
走行状態記録部29は、車両の走行状態を制御部120のメモリ、メモリカードMに記録する。車両の走行状態とは、車両の走行時に取得される情報である。例えば、音声認識部23及び画像認識部24による認識結果、加速度センサ110、GPS受信器111、ジャイロセンサ117、車内CAN信号ポート118、ウェアラブルデバイスにより取得された計測値等の情報を記録する。走行状態記録部29は、これらの情報の全て又はあらかじめ設定された情報を選択的に記録する。
【0057】
(潜在事故記録装置)
潜在事故記録装置200は、
図1に示すように、入力装置210、表示装置220、カードリーダ230、制御装置240を有する。入力装置210は、潜在事故記録装置200に必要な各種の情報を入力する装置である。入力装置210は、タッチパネル、キーボード、マウスを含む。表示装置220は、潜在事故記録装置200に必要な各種の情報を表示する出力装置である。タッチパネルは、表示装置220に構成されたものも含む。
【0058】
カードリーダ230は、メモリカードMが装着され、メモリカードMに対する情報の入出力を行う装置である。カードリーダ230は、メモリカードMから映像データ、潜在事故情報、識別情報、フラグ、走行状態を読み取る読取部、メモリカードMに映像データ、潜在事故情報、識別情報、フラグ、走行状態を書き込む書込部として機能する。例えば、カードリーダ230は、ある車両のドライブレコーダー100のメモリカードMの潜在事故情報を、他の車両のドライブレコーダー100のメモリカードMに書き込む。つまり、異なる車両のドライバーの潜在事故情報を、相互に利用できるようにする。
【0059】
制御装置240は、中央処理装置であるプロセッサを主体に構成され、ROM、RAM、ハードディスク、SSD等の記録媒体、入出力インタフェース等を備えるコンピュータであり、所定のプログラムをインストールすることにより、各種の処理部として機能する。本発明は、上記のようなプログラム、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体としても把握できる。以下の説明で、各処理部の機能をブロックで図示したブロック図を用いる。
【0060】
制御装置240は、
図10に示すように、通信部40、映像記録部41、潜在事故記録部42、走行状態記録部43、評価部44、フラグ付与部45を有する。通信部40は、ネットワークNを介して、各ドライブレコーダー100との間で情報を送受信する。映像記録部41は、カードリーダ230から読み出されたメモリカードMに記録された映像データを、ハードディスク、SSD等の記録媒体にデータベース化して記録する。
【0061】
潜在事故記録部42は、カードリーダ230により読み出されたメモリカードMに記録された潜在事故情報を、ハードディスク、SSD等の記録媒体にデータベース化して記録する。データベースは、メモリカードM毎又は潜在事故情報毎に付与された識別情報、フラグを含む。なお、フラグが立っていることにより、潜在事故情報が記録されなかったメモリカードMからは、潜在事故情報の読み出しはない。さらに、走行状態記録部43は、メモリカードMに記録された走行状態を、ハードディスク、SSD等の記録媒体にデータベース化して記録する。
【0062】
評価部44は、車両の走行状態を評価する。走行状態の評価は、潜在事故情報の頻度、音声認識部23、画像認識部24による認識結果、加速度センサ110、GPS受信器111、ジャイロセンサ117、車内CAN信号ポート118、ウェアラブルデバイスにより取得された計測値等に基づいて行うことができる。評価は、走行状態の良否に応じた数値であるポイントを付与することにより行う。例えば、所定の期間内における潜在事故情報の回数が、しきい値を超えた場合にはポイントを低くして、しきい値以下の場合にはポイントを高くする。所定の期間内における急ブレーキの回数がしきい値を超えた場合にはポイントを低くして、しきい値以下の場合にはポイントを高くする。また、しきい値以下の速度しか出ていない場合にはポイントを高くして、しきい値を超える速度の頻度が高い場合にはポイントを低くする。制限速度と実際の速度との差分がしきい値以下の場合にはポイントを高くして、しきい値を超える場合にはポイントを低くする。このような評価部44による評価を、ドライブレコーダー100のメモリカードM単位で行うことにより、ドライバーが優良か否かを区別することになる。例えば、ポイントが高い場合には優良、ポイントが低い場合には優良でないと区別できる。
【0063】
フラグ付与部45は、メモリカードMにフラグを付与する。フラグ付与部45によるフラグの付与は、車両の走行状態に応じて行われる。車両の走行状態に応じてとは、評価部44の評価に従う。例えば、評価部44の評価であるポイントの値がしきい値よりも低い場合には、フラグを立てて、しきい値以上の場合には、フラグを落とす。なお、このような車両の走行状態に応じたフラグの付与は、初期状態では、各メモリカードMのフラグを落としておいて、各ドライバーによる所定期間内の運転による走行状態に応じて、フラグ付与部45がフラグを付与するように行うこともできる。つまり、ある程度、走行状態が蓄積されて評価部44の評価がなされた段階で、フラグを付与することができる。フラグが立っている場合には、その後の潜在事故情報が記録されない状態が発生するが、そのような場合にも、評価部44が潜在事故情報以外の走行状態から評価して、その評価に応じて、フラグ付与部45がフラグを落とすこともできる。
【0064】
また、フラグ付与部45は、オペレータOPの入力装置210からの入力に応じて、フラグを付与することもできる。例えば、オペレータOPが、車両の走行状態等から、特定の車両又はドライバーの潜在事故情報は、他のドライバーで利用すべきでないと判断した場合には、入力装置210を操作してフラグを立てる。他のドライバーで利用すべきと判断した場合には、入力装置210を操作してフラグを落とす。例えば、上記のような評価部44による評価と同様の判断を、オペレータOPが行って、フラグの付与を決定することができる。オペレータOPが行う場合、表示装置220に表示させた映像データを見て、評価部44による評価が難しい判断を行うこともできる。例えば、急ブレーキを踏む回数が少ないドライバーであっても、黄色信号でスピードを出して交差点につっこんでいる場合には、評価を低くしてフラグを立てるなどの判断ができる。
【0065】
[動作]
以上のような本実施形態の処理手順を、上記の図面に加えて、
図11、
図12のフローチャートを参照して説明する。
(フラグの付与)
潜在事故記録装置200によるフラグの付与の手順を説明する。
図11に示すように、まず、各車両のドライバーは、運転を終えた後、ドライブレコーダー100からメモリカードMを抜き出して、オペレータOPに渡す。オペレータOPは、カードリーダ230にメモリカードMを挿入し、情報を読み書き可能な状態とする(ステップ101)。
【0066】
オペレータOPは、入力装置210を操作して、各メモリカードMに記録された映像データ、潜在事故情報、識別情報、走行状態を読み出して、潜在事故記録装置200の記録媒体にデータベース化して記録する(ステップ102)。
【0067】
評価部44は、各車両の走行状態を評価する(ステップ103)。例えば、走行状態の良否に応じた数値であるポイントを付与する。評価のポイントがしきい値よりも大きい場合には(ステップ104のYES)、フラグ付与部45は、フラグを落とす(ステップ105)。評価のポイントがしきい値以下の場合には(ステップ104のNO)、フラグを立てる(ステップ106)。
【0068】
なお、上記のように、オペレータOPが、各ドライバーの潜在事故情報を、他のドライバーが利用するに値するか否かを判断してもよい。つまり、オペレータOPが評価を行って、潜在事故情報の読み取りを行うべきでないと判断した場合には、入力装置210を操作してフラグを立てる。読み取りを行うべきと判断した場合には、入力装置210を操作してフラグを落とす。
【0069】
(潜在事故情報の収集及び報知)
次に、ドライブレコーダー100による潜在事故情報の収集及び報知の手順を説明する。
図12に示すように、ドライブレコーダー100は、エンジンの起動とともに電源が入り(ステップ201)、映像記録部21によるメモリカードMへの映像データの記録が開始する(ステップ202)。映像記録部21は映像データの記録を継続し、検知部22は潜在事故の発生を待つ(ステップ203のNO)。
【0070】
検知部22が潜在事故を検知した場合(ステップ203のYES)、フラグ認識部28は、フラグが立っているか否かを認識する(ステップ204)。フラグが立っている場合には(ステップ204のYES)、潜在事故記録部25は、潜在事故を記録しない(ステップ205)。フラグが立っていない場合には(ステップ204のNO)、潜在事故記録部25は、潜在事故をメモリカードMに、映像データとは区別して記録する(ステップ206)。
【0071】
潜在事故情報が記録されている場合に、車両の走行中に、GPS受信器111により検出された現在位置が、潜在事故情報に含まれる位置情報が示す位置に接近したことを、位置判定部26が判定すると(ステップ207のYES)、警告出力部27が警告を出力するので、ディスプレイ104等に警告が表示される(ステップ208)。なお、現在位置が潜在事故情報の位置に接近しない場合又は潜在事故情報が記録されていない場合には(ステップ207のNO)、警告はなされない。以上の処理を、エンジンを停止するまで行う(ステップ209のNO)。エンジンを停止して電源ОFFとなった場合(ステップ209のYES)、映像データの記録を停止する(ステップ210)。
【0072】
[作用効果]
(1)本実施形態のドライブレコーダー100は、車両に設置されるカメラ103と、メモリカード収容部108と、カメラ103が撮像した映像データを、メモリカードMに記録する映像記録部21と、潜在事故の発生を検知する検知部22と、検知部22が潜在事故の発生を検知した場合に、潜在事故の発生前後の映像データを前記映像記録部により記録される映像データとは区別した情報と、位置情報とを含む潜在事故情報を、メモリカードMに記録する潜在事故記録部25と、を有し、メモリカードMには、潜在事故情報を共有するか否かを区別するためのフラグが記録され、フラグを認識することにより、潜在事故記録部25が、潜在事故の共有をするか否かを決定するフラグ認識部28を有する。
【0073】
このため、各ドライブレコーダー100のメモリカードMに記録されたフラグによって、潜在事故情報が記録されない設定にすることができる。このため、複数のドライバーがメモリカードMを介して潜在事故情報を共有する場合に、不要な潜在事故情報をあらかじめ排除できる。従って、他のドライバーにとって不要な潜在事故情報に煩わされる必要がなく、記憶媒体の容量の節約にもなる。フラグによって、潜在事故情報の記録の有無を判断できるので、難しい判断処理が不要となり、ドライブレコーダー100の処理負担が軽減できる。
【0074】
(2)潜在事故の発生を指示入力する入力部を有する。このため、各ドライバーが必要と判断した潜在事故情報を、他のドライバーが利用する潜在事故情報に含めることができる。したがって、車両の走行状態に表れない潜在事故情報を記録することができる。なお、このような指示入力は、フラグが落ちていることにより、潜在事故情報を記録することになっている場合にのみ有効とすることもできるし、フラグが立っている、落ちているにかかわらず、入力部による指示入力の方を優先させて、潜在事故情報を記録する設定とすることもできる。
【0075】
(3)潜在事故情報の消去を指示入力する入力部を有する。このため、各ドライバーが明らかに不要と判断した潜在事故情報を、他のドライバーが利用する潜在事故情報から排除して、他のドライバーに警告されることを防止できる。
【0076】
(4)検知部22は、加速度センサ110からの信号のうち、縦軸方向の加速度を他の軸方向の加速度よりも低く評価して、潜在事故の発生を検知する。このため、単なる道路の段差や穴の上を走行することによって、潜在事故として認識されてしまうことを防止して、不要な潜在事故情報を排除できる。
【0077】
(5)本実施形態の潜在事故記録装置200は、ドライブレコーダー100のカメラ103が撮像して映像データを記録したメモリカードMに、潜在事故情報を共有するか否かを区別するためのフラグを付与するフラグ付与部45を有する。
【0078】
このため、オペレータOPの判断で、各ドライバーを比較して、不要な潜在事故情報しか得られないと考えられるドライバーのドライブレコーダー100のメモリカードMには、潜在事故情報を記録しないためにフラグを立てて、有用な潜在事故情報が得られるドライバーのドライブレコーダー100のメモリカードMには、潜在事故情報を記録するためにフラグを落とすことができる。
【0079】
(6)車両の走行状態を評価する評価部44を有し、フラグ付与部45は、評価部44の評価に応じてフラグをメモリカードMに付与する。このため、オペレータOPが判断することなく、各ドライバーを評価して、不要な潜在事故情報しか得られないドライバーのドライブレコーダー100のメモリカードMには、潜在事故情報を記録させず、有用な潜在事故情報が得られるドライバーのドライブレコーダー100のメモリカードMには、潜在事故情報を記録させることができる。
【0080】
[第2の実施形態]
[構成]
本発明の第2の実施形態を、図面を参照して説明する。第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、
図13に示すように、ドライブレコーダー100の制御部120が、評価部31、フラグ付与部32を有する。
【0081】
評価部31は、第1の実施形態の評価部44と同様に、車両の走行状態を評価する。フラグ付与部32は、第1の実施形態のフラグ付与部45と同様に、メモリカードMにフラグを付与する。例えば、自車の走行状態に対する評価部31の評価のポイントがしきい値よりも低い場合にはフラグを立てて、ポイントがしきい値以上の場合には、フラグを落とす。なお、フラグ付与部32は、ドライバーの入力部からの入力に応じて、フラグを付与することもできる。
【0082】
[作用効果]
本実施形態では、ドライブレコーダー100を搭載した車両の走行状態を示す情報に応じて、フラグを付与するフラグ付与部32を有する。このため、自らの走行状態の評価が低い場合には、他のドライバーの潜在事故情報として利用されない。
【0083】
[第3の実施形態]
[構成]
本発明の第3の実施形態を、図面を参照して説明する。第1及び第2の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、メモリカードMには、メモリカードM毎に又は潜在事故情報毎に重み付けが付与されている。重み付けは、数値によって行う。例えば、数値が大きいほど重み付けが高く、数値が小さいほど重み付けが低い。
【0084】
ドライブレコーダー100の制御部120は、
図14に示すように、重み付けに応じて、警告出力部27が警告を出力するか否かを決定する重み付け認識部33を有する。重み付けの認識とは、しきい値との比較により、重み付けの値の大小を判断することをいう。重み付けがしきい値以下の場合には、重み付け認識部33は、警告を出力しないと決定する。重み付けがしきい値よりも大きい場合には、重み付け認識部33は、警告を出力すると決定する。
【0085】
潜在事故記録装置200の制御装置240は、
図15に示すように、重み付け部52を有する。重み付け部52は、メモリカードM毎に又は潜在事故情報毎に重み付けを付与する。重み付けの付与は、車両の走行状態に応じて行われる。例えば、同位置、同内容の潜在事故情報の場合、回数が少ないほど重み付けを軽くして、回数が多いほど重み付けを重くする。急ブレーキの頻度がしきい値以下のドライバーが踏んだ急ブレーキについては、重み付けを重くする。
【0086】
また、重み付け部52は、評価部44の評価に基づいて、重み付けをしてもよい。例えば、評価部44の評価のポイントをそのまま重み付けの値としてもよい。また、自車の走行状態に対する評価部44の評価のポイントがしきい値よりも低い場合には、重み付けの値をデクリメントさせて、ポイントがしきい値以上の場合には、重み付けの値をインクリメントしてもよい。
【0087】
なお、重み付け部52は、オペレータOPの入力装置210からの入力に応じて、重み付けを付与することもできる。例えば、オペレータOPが、車両の走行状態等から、特定の車両又はドライバーの潜在事故情報は、警告として出力すべきでないと判断した場合には、入力装置210を操作して重み付けを低くする。他のドライバーで利用すべきと判断した場合には、入力装置210を操作して重み付けを高くする。
【0088】
例えば、時間帯、時期、エリアを考慮して、朝と夕方の学校周辺の潜在事故情報については、重み付けを重くする。冬場に凍結する地点の潜在事故情報についても、重み付けを重くする。このような地点については、デフォルトで潜在事故情報として登録しておいてもよい。
【0089】
[動作]
以上のような本実施形態の重み付けに応じた警告の処理手順を、
図16のフローチャートを参照して説明する。なお、ステップ301~306、ステップ310、311の処理手順は、
図12のフローチャートのステップ201~206、ステップ209、210と同様であるため、説明を省略する。
【0090】
すなわち、車両の走行中に、GPS受信器111により検出された現在位置が、潜在事故情報に含まれる位置情報が示す位置に接近したことを、位置判定部26が判定すると(ステップ307のYES)、重み付け認識部33は、重み付けの値を認識する(ステップ308)。重み付けがしきい値以下の場合には(ステップ308のYES)、重み付け認識部33は、警告を出力しないと決定するので、警告出力部27は警告を出力しない。重み付けがしきい値よりも大きい場合には(ステップ308のNO)、重み付け認識部33は、警告を出力すると決定するので、警告出力部27は警告を出力する(ステップ309)。
【0091】
[作用効果]
本実施形態では、重み付けの値が低い潜在事故情報については、警告を出力しないため、不要な警告でドライバーが煩わされることがない。また、評価部44の評価を利用することにより、オペレータOPが判断しなくても、不要な警告を排除することができる。なお、本実施形態では、制御部120がフラグ認識部28、制御装置240がフラグ付与部45を有していたが、フラグ認識部28、フラグ付与部45がなくてもよい。
【0092】
[第4の実施形態]
[構成]
本発明の第4の実施形態を、図面を参照して説明する。第2及び第3の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、
図17に示すように、ドライブレコーダー100の制御部120は、重み付け部34を有する。重み付け部34は、第3の実施形態の重み付け部52と同様である。つまり、本実施形態では、ドライブレコーダー100において、潜在事故情報毎に重み付けを行うことができる。
【0093】
[作用効果]
本実施形態では、同一のドライブレコーダー100内において、重み付け部34が潜在事故情報毎に重み付けを行うので、収集した潜在事故情報が、有用なものと不要なものとに選別され、有用な警告を受けることができる。本実施形態では、制御部120がフラグ認識部28、制御装置240がフラグ付与部45を有していても、有していなくてもよい。
【0094】
[第5の実施形態]
[構成]
本発明の第5の実施形態を説明する。本実施形態は、基本的には第1の実施形態と同様である。本実施形態では、ドライブレコーダー100の制御部120は、フラグ認識部28を有していない。また、本実施形態では、フラグ付与部45は、第1の実施形態と同様に、メモリカードMにフラグを付与する。但し、本実施形態のフラグは、潜在事故情報を読み取るか否かを決定するための識別情報である。このフラグを読取フラグと呼んでもよい。また、第1の実施形態と同様に、フラグ付与部45は、オペレータOPの入力装置210からの入力に応じて、フラグを付与することもできる。
【0095】
[作用効果]
以上のような本実施形態では、読取部であるカードリーダ230は、メモリカードMに付与されたフラグが落ちている場合には、潜在事故情報を読み取り、フラグが立っている場合には、潜在事故情報を読み取らない。このため、不要な潜在事故情報をデータベース化することを排除できる。
【0096】
[第6の実施形態]
[構成]
本発明の第6の実施形態を説明する。本実施形態は、基本的には第1の実施形態と同様である。本実施形態では、ドライブレコーダー100の制御部120は、フラグ認識部28を有していない。また、本実施形態では、フラグ付与部45は、第1の実施形態と同様に、メモリカードMにフラグを付与する。但し、本実施形態のフラグは、あるドライブレコーダー100の潜在事故情報を、他のドライブレコーダー100のメモリカードMに書き込むか否かを決定するための識別情報である。このフラグを書込フラグと呼んでもよい。また、第1の実施形態と同様に、フラグ付与部45は、オペレータOPの入力装置210からの入力に応じて、フラグを付与することもできる。
【0097】
[作用効果]
以上のような本実施形態では、書込部であるカードリーダ230は、メモリカードMに付与されたフラグが落ちている場合には、他の潜在事故情報を他のメモリカードMに書き込み、フラグが立っている場合には、潜在事故情報を書き込まない。このため、潜在事故記録装置200においては、多数の潜在事故情報を収集しつつ、不要な潜在事故情報についてはドライブレコーダー100のメモリカードMに書き込まれないので、各ドライブレコーダー100のメモリカードMの記憶容量を節約できる。
【0098】
[第7の実施形態]
[構成]
本発明の第7の実施形態を説明する。本実施形態は、基本的には第1の実施形態と同様の構成の潜在事故記録システムSである。但し、本実施形態では、ドライブレコーダー100の制御部120は、フラグ認識部28を有していない。また、本実施形態では、フラグ付与部45は、第1の実施形態と同様に、メモリカードMにフラグを付与する。そして、本実施形態のフラグは、潜在事故情報をドライブレコーダー100に送信し、読み取るか否かを決定するための識別情報である。このフラグを読取フラグと呼んでもよい。さらに、本実施形態では、通信部40は、各ドライブレコーダー100から送信された潜在事故情報を受信する。潜在事故記録部42は、各ドライブレコーダー100から受信した潜在事故情報を、記録媒体にデータベース化して記録する。
【0099】
第1の実施形態と同様に、評価部44は車両の走行状態を評価して、フラグ付与部45は、各ドライブレコーダー100に応じて潜在事故情報にフラグを付与する。フラグの付与は、車両の走行状態に応じて行われる。なお、第1の実施形態と同様に、フラグ付与部45は、オペレータOPの入力装置210からの入力に応じて、フラグを付与することもできる。
【0100】
通信部40は、受信した潜在事故情報を、各ドライブレコーダー100に送信する。これを受信したドライブレコーダー100では、潜在事故記録部25がメモリカードMに記録し、上記と同様に警告出力部27による警告に利用される。但し、フラグが立っているメモリカードMの潜在事故情報については、ドライブレコーダー100に送信しない。
【0101】
[作用効果]
本実施形態では、ネットワークNを介して潜在事故情報を取得できるので、最新の情報に基づく正確な警告を実現できる。そして、各ドライバーにとって必要な潜在事故情報が得られるとともに、不要な潜在事故情報が排除されるので、通信量、記憶容量を抑えることができる。
【0102】
[第8の実施形態]
[構成]
本発明の第8の実施形態を説明する。本実施形態は、基本的には第3の実施形態と同様の構成の潜在事故記録システムSである。但し、本実施形態では、通信部40は、ドライブレコーダー100から送信された潜在事故情報を受信する。潜在事故記録部42は、ドライブレコーダー100から受信した潜在事故情報を、記録媒体にデータベース化して記録する。
【0103】
第3の実施形態と同様に、重み付け部52は、メモリカードM毎に又は潜在事故情報毎に重み付けを付与する。重み付け部52は、評価部44の評価に基づいて、重み付けをしてもよい。重み付け部52は、オペレータOPの入力装置210からの入力に応じて、重み付けを付与することもできる。
【0104】
通信部40は、受信した潜在事故情報を、各ドライブレコーダー100に送信する。これを受信したドライブレコーダー100では、潜在事故記録部25がメモリカードMに記録し、上記と同様に警告出力部27による警告に利用される。但し、重み付けの値がしきい値よりも低い潜在事故情報については、ドライブレコーダー100に送信しない。
【0105】
[作用効果]
本実施形態では、各ドライバーにとって必要な潜在事故情報が得られるとともに、不要な潜在事故情報が排除されるので、通信量、記憶容量を抑えることができる。なお、本実施形態は、ドライブレコーダー100の制御部120がフラグ認識部28を有していても、有していなくてもよい。
【0106】
[他の実施形態]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、下記に示す他の実施形態も包含する。また、本発明は、上記の実施形態及び下記の他の実施形態を全て又はいずれかを組み合わせた形態も包含する。さらに、これらの実施形態を発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができ、その変形も本発明に含まれる。
【0107】
(1)車両の走行状態に応じて、潜在事故記録部25が記録する潜在事故の映像データの時間長が異なっていてもよい。潜在事故記録部25は、
図18に示すように、短時間モード25a、長時間モード25b、モード切替部25cを有する。短時間モード25aは、潜在事故の発生の前の映像データとして記録する時間を短時間とするモードである。
図8で示した例では、ファイルの開始時間(t0)から20秒経過前の時点(tb)で潜在事故が発生すると、t0-60秒~tb+20秒の期間の映像を1ファイルとして作成して記録する。長時間モード25bは、上記の第1の実施形態において、
図8に示した例と同様に、t0-120秒~tb+20秒の期間の映像を1ファイルとして作成して記録する。
【0108】
モード切替部25cは、車両の走行状態に応じて、短時間モード25a、長時間モード25bを切り替える。例えば、通常の潜在事故発生時には、短時間モード25aで記録して、非常に強い衝撃によって、加速度センサ110の値がしきい値を超えた場合には、モード切替部25cは長時間モード25bに切り替えて記録する。これにより、危険度の高い潜在事故情報の場合にのみ、長時間モード25bとして原因究明に役立てることができるとともに、通常時には短時間モード25aとして記憶容量の節約を図ることができる。この態様は、フラグ及び重み付けの一方若しくは双方が付与されていないドライブレコーダー100であってもよい。
【0109】
(2)ドライブレコーダー100に、背面側、つまり車内を撮像するカメラを設け、このカメラにより撮像された映像データから、画像認識部24が認識した情報に基づいて、検知部22が潜在事故の発生を検知してもよい。例えば、画像認識部24がドライバーを認識して、ドライバーの移動速度、移動量、移動態様等が、しきい値を超えた場合、潜在事故として検知する。これにより、ふらつき、カメラの視界からの逸脱、居眠り等を潜在事故として検知することができる。
【0110】
(3)映像記録、潜在事故記録は、エンジンが停止しても、電源から電力が供給され続けて、記録を継続するパーキングモードとすることもできる。つまり、映像記録は、継続した時間に映像データを記録し続ける状態をいい、エンジンが起動している時間か、走行している時間か、などには限定されない。
【0111】
(4)ユーザが、前方のカメラ103又は後方のカメラのレンズを手で塞ぐことにより、画像認識部24が暗転を認識した場合に、指示入力と同等の機能を発揮できる。つまり、カメラを入力部として用いることができる。従って、カメラのレンズが手で塞がった時に、潜在事故を検知してもよいし、潜在事故を消去してもよい。
【0112】
(5)記録媒体にフラグが記録されておらず、フラグ認識部を有していないが、潜在事故情報毎に重み付けが付与されているドライブレコーダー100も構成可能である。この場合、重み付け付与部は、ドライブレコーダー100にあっても、潜在事故記録装置200にあってもよい。
【0113】
(6)ドライブレコーダー100又は潜在事故記録装置200において、潜在事故情報を消去するためには、パスワードによる認証を必要とする認証部を設けてもよい。その場合、フラグ又は重み付けに応じて、消去可能な潜在事故情報を区別してもよい。例えば、フラグが立っている潜在事故情報のみ、重み付けがしきい値よりも低い潜在事故情報のみを消去可能としてもよい。
【0114】
(7)ドライブレコーダー100の映像データ、潜在事故情報の格納領域は、メモリカードM等のリムーバブルな記録媒体には限定されず、本体101に内蔵され、制御部120により読み書きが制御される各種のメモリであってもよい。例えば、SSD、ハードディスクであってもよい。つまり、記録媒体収容部を有する態様も、録媒体収容部に収容された記録媒体を有する態様も、記録媒体収容部に代えて設けられた記録媒体を有する態様も、本発明の一態様である。
【0115】
(8)潜在事故のみならず、実際に起きた事故の情報についても、記録、警告、共有される情報に含めてもよい。但し、実際の事故の情報よりも潜在事故は数が大量となることと、潜在事故の方が共有化され難いことから、本発明は、潜在事故に適用することに適しているといえる。
【0116】
なお、以下に示すような潜在事故記録装置も、本発明の一態様である。また、ネットワークを介して接続された上記のドライブレコーダー及び以下の潜在事故記録装置を有する潜在事故記録システムも、本発明の一態様である。
【0117】
(請求項1)
ドライブレコーダーのカメラが撮像した映像データを記録した記録媒体に、潜在事故の発生前後の映像データ及び位置情報を含む潜在事故情報を共有するか否かを区別するためのフラグを付与するフラグ付与部を有することを特徴とする潜在事故記録装置。
【0118】
(請求項2)
ドライブレコーダーのカメラが撮像した映像データと、潜在事故の発生前後の映像データ及び位置情報を含む潜在事故情報とを記録した記録媒体から、前記潜在事故情報を読み取る読取部と、前記記録媒体に、前記潜在事故情報を読み取るか否かを区別するためのフラグを付与するフラグ付与部と、を有することを特徴とする潜在事故記録装置。
【0119】
(請求項3)
ドライブレコーダーのカメラが撮像した映像データと、潜在事故の発生前後の映像データ及び位置情報を含む潜在事故情報とを記録した記録媒体に、他のドライブレコーダーの記録媒体の前記潜在事故情報を書き込む書込部と、
前記潜在事故情報に、他のドライブレコーダーの記録媒体に書き込むか否かを区別するためのフラグを付与するフラグ付与部と、
を有することを特徴とする潜在事故記録装置。
【0120】
(請求項4)
車両の走行状態を評価する評価部を有し、
前記フラグ付与部は、前記評価部の評価に応じて前記フラグを付与することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の潜在事故記録装置。
【0121】
(請求項5)
前記記録媒体毎に又は前記潜在事故情報毎に重み付けを付与する重み付け部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の潜在事故記録装置。
【0122】
(請求項6)
車両の走行状態を評価する評価部を有し、
前記重み付け部は、前記評価部の評価に応じて前記重み付けを付与することを特徴とする請求項5記載の潜在事故記録装置。
【0123】
(請求項7)
車両に搭載されたドライブレコーダーのカメラとネットワークを介して接続された通信部と、
前記通信部が前記ドライブレコーダーから受信した潜在事故の発生前後の映像データ及び位置情報を含む潜在事故情報を、前記記録媒体に記録する潜在事故記録部と、
前記潜在事故情報に、各ドライブレコーダーに送信するか否かを区別するためのフラグを付与するフラグ付与部と、
を有することを特徴とする潜在事故記録装置。
【0124】
(請求項8)
車両の走行状態を評価する評価部を有し、
前記フラグ付与部は、前記評価部の評価に応じて前記フラグを付与することを特徴とす
る請求項7記載の潜在事故記録装置。
【0125】
(請求項9)
車両の走行状態に応じて、潜在事故情報に重み付けを付与する重み付け部を有すること
を特徴とする請求項7又は請求項8記載の潜在事故記録装置。
【符号の説明】
【0126】
100 ドライブレコーダー
101 本体
102 ブラケット
103 カメラ
104 ディスプレイ
105 ボタン
106 ランプ
107 音声出力口
108 メモリカード収容部
109 音声入力口
110 加速度センサ
111 GPS受信器
112 時計
113 一時メモリ
114 スピーカ
115 マイク
116 メモリカードインタフェース
117 ジャイロセンサ
118 車内CAN信号ポート
119 通信部
120 制御部
200 潜在事故記録装置
21 映像記録部
22 検知部
23 音声認識部
24 画像認識部
25 潜在事故記録部
25a 短時間モード
25b 長時間モード
25c モード切替部
26 位置判定部
27 警告出力部
28 フラグ認識部
29 走行状態記録部
31 評価部
32 フラグ付与部
33 重み付認識部
34 重み付け部
240 制御装置
40 通信部
41 映像記録部
42 潜在事故記録部
43 走行状態記録部
44 評価部
45 フラグ付与部
52 重み付け部
FG フロントガラス
M メモリカード
S 潜在事故記録システム
L 電源ケーブル
N ネットワーク
T 情報通信端末