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特許7272719水硬性組成物用添加剤、その製造方法及び水硬性組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】水硬性組成物用添加剤、その製造方法及び水硬性組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/18 20060101AFI20230502BHJP
   C04B 24/02 20060101ALI20230502BHJP
   C04B 24/32 20060101ALI20230502BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20230502BHJP
   C09K 17/32 20060101ALI20230502BHJP
   C09K 17/14 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
C04B24/18 B
C04B24/02
C04B24/32 A
C04B28/02
C09K17/32 P
C09K17/14 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022163120
(22)【出願日】2022-10-11
【審査請求日】2022-10-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217102
【弁理士】
【氏名又は名称】冨永 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】古田 章宏
(72)【発明者】
【氏名】尾関 秀哉
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】玉木 伸二
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04351671(US,A)
【文献】米国特許第05085708(US,A)
【文献】特開2018-043921(JP,A)
【文献】特開平06-093067(JP,A)
【文献】特開平09-104819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグニンスルホン酸系化合物(A)及び水(C)を有し、
更に、0.05~10質量%の芳香族系ノニオン界面活性剤(B)を含有し、
前記芳香族系ノニオン界面活性剤(B)が、下記一般式(1)で示される化合物である芳香族系ノニオン界面活性剤(B1)、下記一般式(2)で示される化合物とカルボニル化合物とを縮合させた化合物である芳香族系ノニオン界面活性剤(B2)、及び、下記一般式(3)で示される化合物である芳香族系ノニオン界面活性剤(B3)からなる群より選択される少なくとも1種を含有するものであり、
前記一般式(1)におけるR が炭素数14~30のスチレン化フェニル基であり且つR が水素原子であり、
前記一般式(2)におけるR が炭素数10~16のアルキルフェニル基又は炭素数14~30のスチレン化フェニル基であり且つR が水素原子であり、
前記一般式(3)におけるR がビスフェノールA又はビスフェノールSから2個のヒドロキシ基を除いた残基であり且つR が水素原子であることを特徴とする水硬性組成物用添加剤。
【化1】
(一般式(1)において、R は、炭素数7~30のアルキルフェニル基、又は炭素数14~30のスチレン化フェニル基である。A Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。mは、A Oの平均付加モル数であり、1~200の数である。R は、水素原子、又は炭素数1~6の炭化水素基である。)
【化2】
(一般式(2)において、R は、炭素数7~30のアルキルフェニル基、又は炭素数14~30のスチレン化フェニル基である。A Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。nは、A Oの平均付加モル数であり、1~200の数である。R は、水素原子、又は炭素数1~6の炭化水素基である。)
【化3】
(一般式(3)において、R は、ビスフェノールから2個のヒドロキシ基を除いた残基である。A Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。pは、A Oの平均付加モル数であり、1~200の数である。R は、水素原子、又は炭素数1~6の炭化水素基である。)
【請求項2】
リグニンスルホン酸系化合物(A)及び水(C)を有し、
更に、0.05~10質量%の芳香族系ノニオン界面活性剤(B)を含有し、
前記芳香族系ノニオン界面活性剤(B)が、下記一般式(1)で示される化合物である芳香族系ノニオン界面活性剤(B1)、下記一般式(2)で示される化合物とカルボニル化合物とを縮合させた化合物である芳香族系ノニオン界面活性剤(B2)、及び、下記一般式(3)で示される化合物である芳香族系ノニオン界面活性剤(B3)からなる群より選択される少なくとも1種を含有するものであり、
前記芳香族系ノニオン界面活性剤(B2)は、その平均縮合度が1.1~5.0のものであることを特徴とする水硬性組成物用添加剤。
【化4】
(一般式(1)において、R は、炭素数7~30のアルキルフェニル基、又は炭素数14~30のスチレン化フェニル基である。A Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。mは、A Oの平均付加モル数であり、1~200の数である。R は、水素原子、又は炭素数1~6の炭化水素基である。)
【化5】
(一般式(2)において、R は、炭素数7~30のアルキルフェニル基、又は炭素数14~30のスチレン化フェニル基である。A Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。nは、A Oの平均付加モル数であり、1~200の数である。R は、水素原子、又は炭素数1~6の炭化水素基である。)
【化6】
(一般式(3)において、R は、ビスフェノールから2個のヒドロキシ基を除いた残基である。A Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。pは、A Oの平均付加モル数であり、1~200の数である。R は、水素原子、又は炭素数1~6の炭化水素基である。)
【請求項3】
前記一般式(1)におけるAOは、当該AOの総量の30モル%以上がオキシエチレン基であり且つmが3~150の数であり、
前記一般式(2)におけるAOは、当該AOの総量の30モル%以上がオキシエチレン基であり且つnが3~150の数であり、
前記一般式(3)におけるAOは、当該AOの総量の30モル%以上がオキシエチレン基であり且つpが3~150の数である、請求項1または2に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項4】
請求項1または2に記載の水硬性組成物用添加剤を添加する工程を含むことを特徴とする水硬性組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用添加剤、及び水硬性組成物の製造方法に関する。更に詳しくは、水硬性組成物に対する空気連行性能を維持し、保存安定性が向上された水硬性組成物用添加剤、及び水硬性組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モルタルやコンクリートなどの水硬性組成物は、作業性を向上させるという観点から、その流動性が高いものであることがよく、水硬性組成物に流動性を付与するために、リグニンスルホン酸系分散剤、ナフタレンスルホン酸系分散剤、メラミンスルホン酸系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤などの分散剤が添加剤として添加されている。
【0003】
これらの分散剤は、それぞれ異なる特長を有しているが、リグニンスルホン酸系分散剤としては、凝結時間を短縮できるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、リグニンは、木材等の植物系バイオマスの3大主成分のうちの一つ(3大主成分:セルロース、ヘミセルロース、リグニン)であり、天然の芳香族ポリマーとして地球上に最も豊富に存在している。リグニンの分子構造は、複雑な三次元網目構造をとっている。そして、リグニンスルホン酸は、セルロースなどの多糖類と並んで植物体を構成する主要な成分の一つであるリグニンに由来し、例えば亜硫酸法により植物体からパルプを製造する際に、副産物としてリグニンがスルホン化されることにより生じるものである。
【0005】
このリグニンスルホン酸系分散剤は、上記の通り木材等の植物系バイオマスであり植物体に由来し、植物体からパルプを製造する際に生じる排液(副産物)から生成される。具体的には、クラフトパルプ排液から精製したKPリグニンを亜硫酸塩とホルムアルデヒドによってスルホメチル化したものや、サルファイトパルプ排液から得られるリグニンスルホン酸などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭63-129049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のAE減水剤は、上記のように凝結時間を短縮できるというものであるが、リグニンスルホン酸系分散剤は、その構造や上述の通り植物体に由来するものであることにも起因して、保存中に多くの沈殿が発生するという問題がある。
【0008】
そして、多くの沈殿が生じると、水硬性組成物の作製における作業性が低下したり、水硬性組成物中での分散性が悪くなったりするという問題がある。このような問題を回避するために沈殿を除去してから水硬性組成物の作製に用いてもよいが、この沈殿の除去のための手間が掛かるなどの問題がある。
【0009】
なお、セメントなどの水硬性組成物は、その中に適度な空気が連行されることによって作業性が良好になる等の効果が得られる。一方で、連行される空気量が多すぎると、得られる水硬性組成物の硬化物の強度が低下する原因となる。そのため、水硬性組成物用添加剤を用いる場合には、連行空気量を増大させないことも重要である。
【0010】
そこで、保存安定性が向上し(つまり、保存中に沈殿が発生し難く)つつ、連行空気量に影響を与え難い(即ち、連行空気量が従来と同様に維持された)水硬性組成物用添加剤の開発が求められていた。
【0011】
そこで、本発明の課題は、上記実情に鑑み、水硬性組成物に対する空気連行性能を維持し、保存安定性が向上された水硬性組成物用の添加剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、所定量の芳香族系ノニオン界面活性剤(B)を採用することによって上記課題を解決できることを見出した。本発明によれば、以下の水硬性組成物用添加剤、及び水硬性組成物の製造方法が提供される。
【0013】
[1] リグニンスルホン酸系化合物(A)及び水(C)を有し、
更に、0.05~10質量%の芳香族系ノニオン界面活性剤(B)を含有し、
前記芳香族系ノニオン界面活性剤(B)が、下記一般式(1)で示される化合物である芳香族系ノニオン界面活性剤(B1)、下記一般式(2)で示される化合物とカルボニル化合物とを縮合させた化合物である芳香族系ノニオン界面活性剤(B2)、及び、下記一般式(3)で示される化合物である芳香族系ノニオン界面活性剤(B3)からなる群より選択される少なくとも1種を含有するものであり、
前記一般式(1)におけるR が炭素数14~30のスチレン化フェニル基であり且つR が水素原子であり、
前記一般式(2)におけるR が炭素数10~16のアルキルフェニル基又は炭素数14~30のスチレン化フェニル基であり且つR が水素原子であり、
前記一般式(3)におけるR がビスフェノールA又はビスフェノールSから2個のヒドロキシ基を除いた残基であり且つR が水素原子であることを特徴とする水硬性組成物用添加剤。
【化1】
(一般式(1)において、R は、炭素数7~30のアルキルフェニル基、又は炭素数14~30のスチレン化フェニル基である。A Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。mは、A Oの平均付加モル数であり、1~200の数である。R は、水素原子、又は炭素数1~6の炭化水素基である。)
【化2】
(一般式(2)において、R は、炭素数7~30のアルキルフェニル基、又は炭素数14~30のスチレン化フェニル基である。A Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。nは、A Oの平均付加モル数であり、1~200の数である。R は、水素原子、又は炭素数1~6の炭化水素基である。)
【化3】
(一般式(3)において、R は、ビスフェノールから2個のヒドロキシ基を除いた残基である。A Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。pは、A Oの平均付加モル数であり、1~200の数である。R は、水素原子、又は炭素数1~6の炭化水素基である。)
【0014】
[2] リグニンスルホン酸系化合物(A)及び水(C)を有し、
更に、0.05~10質量%の芳香族系ノニオン界面活性剤(B)を含有し、
前記芳香族系ノニオン界面活性剤(B)が、下記一般式(1)で示される化合物である芳香族系ノニオン界面活性剤(B1)、下記一般式(2)で示される化合物とカルボニル化合物とを縮合させた化合物である芳香族系ノニオン界面活性剤(B2)、及び、下記一般式(3)で示される化合物である芳香族系ノニオン界面活性剤(B3)からなる群より選択される少なくとも1種を含有するものであり、
前記芳香族系ノニオン界面活性剤(B2)は、その平均縮合度が1.1~5.0のものであることを特徴とする水硬性組成物用添加剤。
【0015】
【化4】
(一般式(1)において、Rは、炭素数7~30のアルキルフェニル基、又は炭素数14~30のスチレン化フェニル基である。AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。mは、AOの平均付加モル数であり、1~200の数である。Rは、水素原子、又は炭素数1~6の炭化水素基である。)
【0016】
【化5】
(一般式(2)において、Rは、炭素数7~30のアルキルフェニル基、又は炭素数14~30のスチレン化フェニル基である。AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。nは、AOの平均付加モル数であり、1~200の数である。Rは、水素原子、又は炭素数1~6の炭化水素基である。)
【0017】
【化6】
(一般式(3)において、Rは、ビスフェノールから2個のヒドロキシ基を除いた残基である。AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。pは、AOの平均付加モル数であり、1~200の数である。Rは、水素原子、又は炭素数1~6の炭化水素基である。)
【0018】
[3] 前記一般式(1)におけるAOは、当該AOの総量の30モル%以上がオキシエチレン基であり且つmが3~150の数であり、
前記一般式(2)におけるAOは、当該AOの総量の30モル%以上がオキシエチレン基であり且つnが3~150の数であり、
前記一般式(3)におけるAOは、当該AOの総量の30モル%以上がオキシエチレン基であり且つpが3~150の数である、前記[1]または[2]に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0019】
(削除)
【0020】
(削除)
【0021】
(削除)
【0022】
] 前記[1]または[2]に記載の水硬性組成物用添加剤を添加する工程を含むことを特徴とする水硬性組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、水硬性組成物に対する空気連行性能が維持され、保存安定性が向上されるという効果を奏するものである。
【0024】
硬性組成物用添加剤の製造方法は、水硬性組成物に対する空気連行性能が維持され、保存安定性が向上された本発明の水硬性組成物用添加剤を製造することができるという効果を奏するものである。
【0025】
本発明の水硬性組成物の製造方法は、本発明の水硬性組成物用添加剤を添加する工程を含むことにより、当該添加剤中のリグニンスルホン酸系化合物由来の沈殿量が少ないので、作業性良く水硬性組成物を製造することができるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられ得ることが理解されるべきである。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【0027】
(1)水硬性組成物用添加剤:
本発明の水硬性組成物用添加剤は、リグニンスルホン酸系化合物(A)及び水(C)を有し、更に、0.05~10質量%の芳香族系ノニオン界面活性剤(B)を含有するものである。
【0028】
このような水硬性組成物用添加剤は、上記構成を採用したことによって、水硬性組成物に対する空気連行性能が維持され、保存安定性が向上されたものである。
【0029】
(1-1)リグニンスルホン酸系化合物(A):
リグニンスルホン酸系化合物(A)は、コンクリートなどの水硬性組成物に流動性を付与するための分散剤(リグニンスルホン酸系分散剤)として機能するものである。
【0030】
そして、このリグニンスルホン酸系化合物(A)は、セルロースなどの多糖類と並んで植物体を構成する主要な成分の一つであるリグニンに由来し、例えば亜硫酸法(サルファイドパルプ法)により植物体からパルプを製造する際に、副産物としてリグニンがスルホン化されることにより生じるものである。リグニンの分子構造は、複雑な三次元網目構造を有しており、これをスルホン化させたリグニンスルホン酸系化合物(A)も複雑な三次元網目構造を有している。このようにリグニンスルホン酸系化合物(A)は、天然物由来の副産物(つまり、リグニンスルホン酸以外に夾雑物などの成分も含むもの)であり、且つ、それ自身が複雑な三次元網目構造を有していることに起因して、保存中に多くの沈殿が生じる傾向にある。
【0031】
リグニンスルホン酸系化合物(A)は、具体的には、リグニンのヒドロキシフェニルプロパン構造の側鎖α位の炭素が開裂してスルホ基が導入された骨格を有する化合物(リグニンスルホン酸)を含むものである。上記骨格の構造を式(a)に示す。
【0032】
【化7】
【0033】
リグニンスルホン酸系化合物(A)は、上記式(a)で示される骨格を有する化合物の変性物(変性リグニンスルホン酸系化合物)を含むものであってもよい。この変性物を得る方法(変性方法)は、特に限定されず、例えば、加水分解、アルキル化、アルコキシル化、スルホン化、スルホン酸エステル化、スルホメチル化、アミノメチル化、脱スルホン化など化学的に変性する方法や、リグニンスルホン酸系化合物を限外濾過により分子量分画する方法を挙げることができる。
【0034】
本発明においてリグニンスルホン酸は、塩の形態であるもの(即ち、リグニンスルホン酸塩)を含む。この塩としては、例えば、一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩が挙げられる。
【0035】
(1-2)芳香族系ノニオン界面活性剤(B):
本発明の水硬性組成物用添加剤は、リグニンスルホン酸系化合物(A)を含むリグニンスルホン酸系分散剤に、界面活性剤(なお、界面活性剤は起泡性や消泡性を有することが多い)の中でも芳香族系ノニオン界面活性剤を所定の割合で加えたものである。このように芳香族系ノニオン界面活性剤(B)を所定の割合で加えることによって、水硬性組成物に対する空気連行性能を維持しつつ、保存安定性を向上させた水硬性組成物用添加剤を得ることができる。なお、リグニンスルホン酸系化合物(A)を含むリグニンスルホン酸系分散剤に、界面活性剤を添加した場合、界面活性剤が水硬性組成物の空気連行性に影響を与え、水硬性組成物に連行される空気量が多すぎたり少なすぎたりしてしまうことがある。この点、本発明では、芳香族系ノニオン界面活性剤(B)を所定の割合で加えることによって、上記のように空気連行性能が維持される。そして、更には、リグニンスルホン酸系化合物(A)を含む水硬性組成物用添加剤の保存安定性を向上させることができる。
【0036】
ここで、芳香族系ノニオン界面活性剤(B)中に含まれるフェノールに由来する構造と、リグニンスルホン酸系化合物(A)中に含まれるフェノールに由来する構造とがπ-π相互作用することで、効率的に分散安定化に寄与し、保存安定性を向上させたものと考えられる。この芳香族系ノニオン界面活性剤(B)は、水硬性組成物に対する空気連行性能に与える影響が小さく(即ち、界面活性剤は起泡性や消泡性を有することが多いが起泡や消泡に寄与し難く)、本発明の課題を解決する効果を奏したと考えられる。
【0037】
芳香族系ノニオン界面活性剤(B)は、その配合割合(水硬性組成物用添加剤全体に対する割合)が、0.05~10質量%であり、0.2~5質量%であることが好ましい。このような範囲とすることによって、水硬性組成物に対する空気連行性能が維持され、保存安定性が向上された水硬性組成物用添加剤を得ることができる。
【0038】
芳香族系ノニオン界面活性剤(B)としては、具体的には、下記一般式(1)で示される化合物である芳香族系ノニオン界面活性剤(B1)、下記一般式(2)で示される化合物とカルボニル化合物とを縮合させた化合物である芳香族系ノニオン界面活性剤(B2)、及び、下記一般式(3)で示される化合物である芳香族系ノニオン界面活性剤(B3)からなる群より選択される少なくとも1種を含有するものである。これらのものであると、水硬性組成物に対する空気連行性能を更に維持しつつ、保存安定性を更に向上させた水硬性組成物用添加剤を得ることができる。
【0039】
【化8】
(一般式(1)において、Rは、炭素数7~30のアルキルフェニル基、又は炭素数14~30のスチレン化フェニル基である。AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。mは、AOの平均付加モル数であり、1~200の数である。Rは、水素原子、又は炭素数1~6の炭化水素基である。)
【0040】
【化9】
(一般式(2)において、Rは、炭素数7~30のアルキルフェニル基、又は炭素数14~30のスチレン化フェニル基である。AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。nは、AOの平均付加モル数であり、1~200の数である。Rは、水素原子、又は炭素数1~6の炭化水素基である。)
【0041】
【化10】
(一般式(3)において、Rは、ビスフェノールから2個のヒドロキシ基を除いた残基である。AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。pは、AOの平均付加モル数であり、1~200の数である。Rは、水素原子、又は炭素数1~6の炭化水素基である。)
【0042】
以下に、芳香族系ノニオン界面活性剤(B1)~(B3)について具体的に説明する。
【0043】
(1-2a)芳香族系ノニオン界面活性剤(B1):
芳香族系ノニオン界面活性剤(B1)は、下記一般式(1)で示される化合物である芳香族系ノニオン界面活性剤である。
【0044】
【化11】
(一般式(1)において、Rは、炭素数7~30のアルキルフェニル基、又は炭素数14~30のスチレン化フェニル基である。AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。mは、AOの平均付加モル数であり、1~200の数である。Rは、水素原子、又は炭素数1~6の炭化水素基である。)
【0045】
芳香族系ノニオン界面活性剤(B1)を含有することによって、水硬性組成物に対する空気連行性能を更に維持しつつ、保存安定性を更に向上させた水硬性組成物用添加剤を得ることができる。
【0046】
一般式(1)におけるRは、炭素数7~30のアルキルフェニル基、又は炭素数14~30のスチレン化フェニル基であり、炭素数14~30のスチレン化フェニル基であることが好ましい。このようにすると、水硬性組成物に対する空気連行性能を更に維持しつつ、保存安定性を更に向上させた水硬性組成物用添加剤を得ることができる。本発明の一の実施形態では、R が炭素数14~30のスチレン化フェニル基であり且つR が水素原子である。
【0047】
一般式(1)におけるAOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。そして、AOは、その総量の30モル%以上がオキシエチレン基であることが好ましく、総量の45モル%以上がオキシエチレン基であることが更に好ましく、総量の80モル%以上がオキシエチレン基であることが特に好ましい。このような範囲であると、水硬性組成物に対する空気連行性能を更に維持しつつ、保存安定性を更に向上させた水硬性組成物用添加剤を得ることができる。
【0048】
一般式(1)におけるmは、AOの平均付加モル数であり、1~200の数である。そして、mは、3~150の数であることが好ましく、5~100であることが更に好ましい。このような範囲であると、水硬性組成物に対する空気連行性能を更に維持しつつ、保存安定性を更に向上させた水硬性組成物用添加剤を得ることができる。
【0049】
一般式(1)におけるRは、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基であり、水素原子であることが好ましい。このような構成であると、水硬性組成物に対する空気連行性能を更に維持しつつ、保存安定性を更に向上させた水硬性組成物用添加剤を得ることができる。
【0050】
(1-2b)芳香族系ノニオン界面活性剤(B2):
本発明の水硬性組成物用添加剤は、下記一般式(2)で示される化合物と、カルボニル化合物と、を縮合させた芳香族系ノニオン界面活性剤(B2)を含有するものである。つまり、芳香族系ノニオン界面活性剤(B2)は、一般式(2)で示される化合物と、カルボニル化合物と、を縮合させて形成される構造を有する化合物である。
【0051】
【化12】
【0052】
但し、一般式(2)において、Rは、炭素数7~30のアルキルフェニル基、又は炭素数14~30のスチレン化フェニル基である。AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。nは、AOの平均付加モル数であり、1~200の数である。Rは、水素原子、又は炭素数1~6の炭化水素基である。
【0053】
芳香族系ノニオン界面活性剤(B2)を含有することによって、水硬性組成物に対する空気連行性能を更に維持しつつ、保存安定性を更に向上させた水硬性組成物用添加剤を得ることができる。
【0054】
芳香族系ノニオン界面活性剤(B2)は、その平均縮合度が1.1~5.0であることが好ましく、1.2~4.0であることが更に好ましい。本発明の一の実施態様では、芳香族系ノニオン界面活性剤(B2)は、その平均縮合度が1.1~5.0のものである。このような範囲とすることによって、水硬性組成物に対する空気連行性能を更に維持しつつ、保存安定性を更に向上させた水硬性組成物用添加剤を得ることができる。
【0055】
芳香族系ノニオン界面活性剤(B2)の平均縮合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて以下の各質量平均分子量を測定し、式:平均縮合度=芳香族系ノニオン界面活性剤(B2)の質量平均分子量÷(一般式(2)で示される化合物の質量平均分子量+カルボニル化合物の質量分子量)に基づいて算出することができる。
【0056】
芳香族系ノニオン界面活性剤(B2)は、一般式(2)で示される化合物と、カルボニル化合物と、を縮合させて得られる縮合反応物であり、一般式(2)で示される化合物に由来する構造と、カルボニル化合物に由来する構造と、を含有する化合物である。別言すれば、本発明における芳香族系ノニオン界面活性剤(B2)は、アルキルフェニル化合物に由来する構造またはスチレン化フェニル化合物に由来する構造と、アルキレンオキサイド構造と、カルボニル化合物に由来する構造と、を含有する化合物と言うこともできる。
【0057】
(1-2b-1)一般式(2)で示される化合物:
一般式(2)におけるRは、炭素数7~30のアルキルフェニル基、又は炭素数14~30のスチレン化フェニル基であり、炭素数10~16のアルキルフェニル基又は炭素数14~30のスチレン化フェニル基であることが好ましく、炭素数14~30のスチレン化フェニル基であることが更に好ましい。このようにすると、水硬性組成物に対する空気連行性能を更に維持しつつ、保存安定性を更に向上させた水硬性組成物用添加剤を得ることができる。本発明の一の実施形態では、R が炭素数10~16のアルキルフェニル基又は炭素数14~30のスチレン化フェニル基であり且つR が水素原子である。
【0058】
一般式(2)におけるAOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。そして、AOは、その総量の30モル%以上がオキシエチレン基であることが好ましく、総量の45モル%以上がオキシエチレン基であることが更に好ましく、総量の80モル%以上がオキシエチレン基であることが特に好ましい。このような範囲であると、水硬性組成物に対する空気連行性能を更に維持しつつ、保存安定性を更に向上させた水硬性組成物用添加剤を得ることができる。
【0059】
一般式(2)におけるnは、AOの平均付加モル数であり、1~200の数である。そして、nは、3~150の数であることが好ましく、5~100であることが更に好ましい。このような範囲であると、水硬性組成物に対する空気連行性能を更に維持しつつ、保存安定性を更に向上させた水硬性組成物用添加剤を得ることができる。
【0060】
一般式(2)におけるRは、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基であり、水素原子であることが好ましい。このような構成であると、水硬性組成物に対する空気連行性能を更に維持しつつ、保存安定性を更に向上させた水硬性組成物用添加剤を得ることができる。
【0061】
(1-2b-2)カルボニル化合物:
カルボニル化合物は、特に制限はなく、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトンなどを挙げることができる。これらの中でも、ホルムアルデヒドであることが好ましい。ホルムアルデヒドであると、芳香族系ノニオン活性剤(B2)の縮合反応物が良好に(高収率で)生成し、また、リグニンスルホン酸系化合物(A)の保存安定性が良好となる。
【0062】
(1-2c)芳香族系ノニオン界面活性剤(B3):
芳香族系ノニオン界面活性剤(B3)は、下記一般式(3)で示される化合物である芳香族系ノニオン界面活性剤である。
【0063】
【化13】
(一般式(3)において、Rは、ビスフェノールから2個のヒドロキシ基を除いた残基である。AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。pは、AOの平均付加モル数であり、1~200の数である。Rは、水素原子、又は炭素数1~6の炭化水素基である。)
【0064】
芳香族系ノニオン界面活性剤(B3)を含有することによって、水硬性組成物に対する空気連行性能を更に維持しつつ、保存安定性を更に向上させた水硬性組成物用添加剤を得ることができる。
【0065】
一般式(3)におけるRは、ビスフェノールから2個のヒドロキシ基を除いた残基であり、ビスフェノールA又はビスフェノールSから2個のヒドロキシ基を除いた残基であることが好ましい。このようにすると、水硬性組成物に対する空気連行性能を更に維持しつつ、保存安定性を更に向上させた水硬性組成物用添加剤を得ることができる。本発明の一の実施形態では、R がビスフェノールA又はビスフェノールSから2個のヒドロキシ基を除いた残基であり且つR が水素原子である。
【0066】
一般式(3)におけるAOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。そして、AOは、その総量の30モル%以上がオキシエチレン基であることが好ましく、総量の45モル%以上がオキシエチレン基であることが更に好ましく、総量の80モル%以上がオキシエチレン基であることが特に好ましい。このような範囲であると、水硬性組成物に対する空気連行性能を更に維持しつつ、保存安定性を更に向上させた水硬性組成物用添加剤を得ることができる。
【0067】
一般式(3)におけるpは、AOの平均付加モル数であり、1~200の数である。そして、pは、3~150の数であることが好ましく、5~100であることが更に好ましい。このような範囲であると、水硬性組成物に対する空気連行性能を更に維持しつつ、保存安定性を更に向上させた水硬性組成物用添加剤を得ることができる。
【0068】
一般式(3)におけるRは、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基であり、水素原子であることが好ましい。このような構成であると、水硬性組成物に対する空気連行性能を更に維持しつつ、保存安定性を更に向上させた水硬性組成物用添加剤を得ることができる。
【0069】
芳香族系ノニオン界面活性剤(B1)~(B3)は2種以上同時に用いてもよく、それぞれの含有割合は、特に制限はなく、これらの合計(即ち、芳香族系ノニオン界面活性剤(B)の割合)が、0.05~10質量%の範囲を満たせばよい。例えば、芳香族系ノニオン界面活性剤(B1)~(B3)のそれぞれの含有割合は、それぞれ、0.05~10質量%とすることができる。
【0070】
(1-3)水(C):
水(C)は、特に制限はなく、リグニンスルホン酸系分散剤などの従来の水硬性組成物用添加剤に用いられるものを適宜採用することができる。
【0071】
水(C)は、その配合割合(水硬性組成物用添加剤全体に対する割合)について特制限はないが、例えば、10~99質量%とすることができる。
【0072】
本発明の水硬性組成物用添加剤のように水を含む水性液である従来のリグニンスルホン酸系分散剤は、安定性が低く、多くの沈殿が生じ易いものであるが、本発明では、上述した芳香族系ノニオン界面活性剤(B)を所定の割合で含有することによって、沈殿の発生を抑制することができ、保存安定性を向上させているものである。
【0073】
(1-4)その他の構成成分:
本発明の水硬性組成物用添加剤は、リグニンスルホン酸系化合物(A)、芳香族系ノニオン界面活性剤(B)、及び水(C)以外に、その他の構成成分を更に含んでいてもよい。
【0074】
その他の構成成分としては、例えば、グルコン酸ナトリウム、ポリカルボン酸系分散剤、糖類、防錆剤、収縮低減剤、消泡剤、AE剤、防腐剤、増粘剤などを挙げることができる。
【0075】
その他の構成成分の含有割合としては、例えば、水硬性組成物用添加剤全体に対する割合、0~50質量%とすることができ、好ましくは0~25質量%とすることができ、より好ましくは0~15質量%とすることができる。
【0076】
(2)水硬性組成物用添加剤の製造方法:
硬性組成物用添加剤の製造方法は、リグニンスルホン酸系化合物(A)、芳香族系ノニオン界面活性剤(B)、及び水(C)を配合し、このとき、芳香族系ノニオン界面活性剤(B)を全体の0.05~10質量%の割合で含有するように配合して混合する混合工程を備えるものである。
【0077】
このような水硬性組成物用添加剤の製造方法によれば、水硬性組成物に対する空気連行性能が維持され、保存安定性が向上された本発明の水硬性組成物用添加剤を製造することができる。
【0078】
(2-1)混合工程:
本工程において、リグニンスルホン酸系化合物(A)、芳香族系ノニオン界面活性剤(B)、及び水(C)は、全て一緒に配合してもよいし、一部を配合し、その後、残部を配合してもよい。例えば、リグニンスルホン酸系化合物(A)及び水(C)を配合した後、芳香族系ノニオン界面活性剤(B)を配合してもよい。
【0079】
芳香族系ノニオン界面活性剤(B)は、水硬性組成物用添加剤全体における割合が0.05~10質量%であり、0.2~5質量%であることが好ましい。このような割合とすることで、水硬性組成物に対する空気連行性能が維持され、保存安定性が向上された水硬性組成物用添加剤を得ることができる。
【0080】
各成分を混合する方法は、特に制限はなく従来公知の方法を適宜採用することができる。
【0081】
例えば、混合温度を5~80℃とすることができる。
【0082】
(3)水硬性組成物:
本発明の水硬性組成物用添加剤は、水硬性組成物に添加して用いるものである。
【0083】
この水硬性組成物は、従来公知の水硬性組成物と同様に、結合材(水硬性結合材)、水、細骨材、及び粗骨材等を含むものである。
【0084】
この水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用添加剤の含有割合については特に制限はなく適宜設定することができる。例えば、本発明の水硬性組成物用添加剤の含有割合は、結合材100質量部に対して、0.01~5.0質量部とすることができる。
【0085】
結合材としては、例えば、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等の各種のセメントを挙げることができる。
【0086】
更に、結合材は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、石灰石微粉末、石粉、シリカフューム、膨張材等の各種混和材を併用してもよい。
【0087】
細骨材としては、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、珪砂、砕砂、各種スラグ細骨材等が挙げられるが、粘土質等の微粒成分等を含むものであってもよい。
【0088】
粗骨材としては、例えば、川砂利、山砂利、陸砂利、砕石、各種スラグ粗骨材、軽量骨材等が挙げられる。
【0089】
水硬性組成物は、効果が損なわれない範囲内で、適宜その他の成分を更に含有していてもよい。このようなその他の成分としては、例えば、糖類やオキシカルボン酸塩等からなる凝結遅延剤、各種流動化剤、陰イオン界面活性剤等からなるAE剤、オキシアルキレン系化合物等からなる消泡剤、アルカノールアミン等からなる硬化促進剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等からなる収縮低減剤、セルロースエーテル系化合物からなる増粘剤、カルシムスルホネート等からなる急結材、イソチアゾリン系化合物等からなる防腐剤、亜硝酸塩等からなる防錆剤等を挙げることができる。
【0090】
その他の成分の含有割合としては、例えば、結合材100質量部に対して、0~5質量部とすることができる。
【0091】
水硬性組成物は、その水と結合材の比率(水/結合材比)としては従来公知の割合を適宜採用することができるが、例えば、20~70質量%とすることができ、好ましくは30~65質量%とすることができる。
【0092】
(4)水硬性組成物の製造方法:
本発明の水硬性組成物の製造方法は、本発明の水硬性組成物用添加剤を添加する工程(添加剤添加工程)を含む方法である。この水硬性組成物の製造方法によれば、本発明の水硬性組成物用添加剤を添加する工程を含むことにより、当該添加剤中のリグニンスルホン酸系化合物由来の沈殿量が少ないので、作業性良く水硬性組成物を製造することができる。つまり、リグニンスルホン酸系化合物を含む水硬性組成物用添加剤において、リグニンスルホン酸系化合物由来の沈殿が多く存在する場合、使用する前に攪拌を行って沈殿を解消させる手間がかかる。また、沈殿を残したまま使用すると、最終的に沈殿を除去する手間が生じることが考えられる。これらの作業は水硬性組成物の製造に際して手間となる傾向がある。一方で、リグニンスルホン酸系化合物由来の沈殿量が少ないと、上記のような作業を省略することができ、水硬性組成物を作業性良く製造することができる。
【0093】
添加剤添加工程において、本発明の水硬性組成物用添加剤の添加方法は特に制限はなく従来公知の方法を適宜採用することができる。
【0094】
また、水硬性組成物を製造するに際して、水硬性組成物を構成する結合材などは、従来公知の方法で適宜配合することができる。なお、結合材などの成分については、上述したものを挙げることができる。
【実施例
【0095】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0096】
まず、実施例及び比較例で使用したリグニンスルホン酸系化合物(A)(LS-1~LS-3)を以下の表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
次に、実施例及び比較例で使用した芳香族系ノニオン界面活性剤(B)(B1-1~B1-11、B2-1~B2-4、B3-1~B3-3、BR-1、BR-2)を以下の表2~表4に示す。
【0099】
表2、表3中、オキシエチレン(EO)の付加モル数、オキシプロピレン(PO)の付加モル数は、スチレン化フェノール(具体的には、モノスチレン化フェノール(モノ体)、ジスチレン化フェノール(ジ体)、及びトリスチレン化フェノール(トリ体))のうちの各主成分を100とした場合の計算値とした。なお、モノ体、ジ体、トリ体のうちの各主成分とは、表2の「R」の欄、表3の「R」の欄に示されている基となるものであり、例えば、表2のB1-1の場合、モノスチレン化フェニル基となる「モノスチレン化フェノール」のことである。
【0100】
【表2】
【0101】
なお、表2中、「BR-1」は、市販のラウリルアルコール(東京化成工業社製)にエチレンオキシドを6モル付加したものを使用した。「BR-2」は、マイテイ150(花王社製)をそのまま使用した。表2中、「EO」はエチレンオキサイドを示し、「PO」はプロピレンオキサイドを示す。また、表2中、「付加形態」の「ランダム」は、アルキレンオキサイドをランダム付加させたことを意味する。
【0102】
(合成例1)
芳香族系ノニオン界面活性剤(B1-1)~(B1-3)、(B1-5)、(B1-6)
オートクレーブにモノスチレン化フェノール「SP-F」(三光社製)309.8gと48%水酸化カリウム水溶液4.2gを加え、オートクレーブ内を十分に窒素で置換した後、撹拌しながら、120℃で減圧脱水を行った。その後、この温度で、エチレンオキサイド688.2gを0.4MPaのゲージ圧で圧入・反応させ、上記温度で1時間熟成し反応を完結させた。その後、キョーワード600(協和化学工業社製)を用いて中和濾過し、芳香族系ノニオン界面活性剤(B1-1)を得た。
【0103】
なお、「三光社製のSP-F(商品名)」は、モノ体(即ち、モノスチレン化フェノール)65モル%以上、ジ体(即ち、ジスチレン化フェノール)32モル%以下、トリ体(即ち、トリスチレン化フェノール)1モル%以下の割合のものである。
【0104】
(合成例2、3、5、6)
芳香族系ノニオン界面活性剤(B1-2)、(B1-3)、(B1-5)、(B1-6)
トリスチレン化フェニル基の場合は「TSP」(三光社製)を用いたこと、ジスチレン化フェニル基の場合は「SP-24」(三光社製)を用いたこと以外は、合成例1と同様にして、芳香族系ノニオン界面活性剤(B1-2)、(B1-3)、(B1-5)、(B1-6)を得た。
【0105】
なお、「三光社製のSP-24(商品名)」は、モノ体(即ち、モノスチレン化フェノール)0モル%、ジ体(即ち、ジスチレン化フェノール)60モル%以上、トリ体(即ち、トリスチレン化フェノール)40モル%以下の割合のものである。また、「三光社製のTSP(商品名)」は、モノ体(即ち、モノスチレン化フェノール)0モル%、ジ体(即ち、ジスチレン化フェノール)30モル%以下、トリ体(即ち、トリスチレン化フェノール)65モル%以上の割合のものである。
【0106】
(合成例4)
芳香族系ノニオン界面活性剤(B1-4)
オートクレーブにトリスチレン化フェノール「TSP」(三光社製)131.2gと48%水酸化カリウム水溶液3.2gを加え、オートクレーブ内を十分に窒素で置換した後、撹拌しながら、120℃で減圧脱水を行った。その後、この温度で、エチレンオキサイド1179.9gとプロピレンオキシド187.4gを同時に0.4MPaのゲージ圧で圧入し反応させ、上記温度で1時間熟成し反応を完結させた。その後、キョーワード600を用いて中和濾過し、芳香族系ノニオン界面活性剤(B1-4)を得た。
【0107】
(合成例7、8、10、11)
芳香族系ノニオン界面活性剤(B1-7)、(B1-8)、(B1-10)、(B1-11)
オクチルフェニル基の場合は「パラオクチルフェノール(POP)」(丸善石油化学社製)を用いたこと、ジスチレン化フェニル基の場合は「SP-24」(三光社製)を用いた以外は、合成例4と同様にして、芳香族系ノニオン界面活性剤(B1-7)、(B1-8)、(B1-10)、(B1-11)を得た。
【0108】
(合成例9)
芳香族系ノニオン界面活性剤(B1-9)
合成例1と同様にして、トリスチレン化フェノールにエチレンオキシドを105モル付加した反応物を得た。その後、反応物503.2gを再度オートクレーブに仕込み水酸化カリウム6.2gを加え、120℃で減圧脱水を行った。その後、メチルクロライド5.1gを90℃で反応させた。反応終了後、この温度で熟成を4時間し、反応を完結させた。その後中和・脱塩処理し、芳香族系ノニオン界面活性剤(B1-9)を得た。
【0109】
【表3】
【0110】
なお、表3中、「EO」はエチレンオキサイドを示し、「PO」はプロピレンオキサイドを示す。また、表3中、「付加形態」の「ブロック」は、アルキレンオキサイドをブロック付加させたことを意味する。
【0111】
(合成例10)
芳香族系ノニオン界面活性剤(B2-1)
オートクレーブにトリスチレン化フェノール「TSP」(三光社製)406.6gとp-トルエンスルホン酸一水和物3.8g、更にパラホルムアルデヒドを18.0g加え、還流しながら、110℃で3時間縮合した。その後、48%水酸化カリウム水溶液7.8gを加え、オートクレーブ内を十分に窒素で置換した後、撹拌しながら、120℃で減圧脱水を行った。その後、この温度で、エチレンオキサイド2068.0gを0.4MPaのゲージ圧で圧入し反応させ、上記温度で1時間熟成し反応を完結させた。その後、キョーワード600を用いて中和濾過し、芳香族系ノニオン界面活性剤(B2-1)を得た。
【0112】
(合成例11)
芳香族系ノニオン界面活性剤(B2-2)
オートクレーブにジスチレン化フェノール「SP-24」(三光社製)302.4gとメタンスルホン酸1.9g、更にパラホルムアルデヒドを30.0g加え、還流しながら、110℃で3時間縮合した。その後、48%水酸化カリウム水溶液4.1gを加え、オートクレーブ内を十分に窒素で置換した後、撹拌しながら、120℃で減圧脱水を行った。その後、この温度で、エチレンオキサイド352gとプロピレンオキシド58.1gを同時に0.4MPaのゲージ圧で圧入し反応させ、上記温度で1時間熟成し反応を完結させた。その後、キョーワード600を用いて中和濾過し、芳香族系ノニオン界面活性剤(B2-2)を得た。
【0113】
(合成例12)
芳香族系ノニオン界面活性剤(B2-3)
オートクレーブにオクチルフェノール「パラオクチルフェノール(POP)」(丸善石油化学社製)206.3gとp-トルエンスルホン酸一水和物3.8g、更にパラホルムアルデヒドを206.3g加え、還流しながら、110℃で5時間縮合した。その後、48%水酸化カリウム水溶液6.8gを加え、オートクレーブ内を十分に窒素で置換した後、撹拌しながら、120℃で減圧脱水を行った。その後、この温度で、エチレンオキサイド1760gを0.4MPaのゲージ圧で圧入し反応させ、その後、プロピレンオキシド116.0gを0.4MPaのゲージ圧で圧入し反応させ、上記温度で1時間熟成し反応を完結させた。その後、キョーワード600を用いて中和濾過し、芳香族系ノニオン界面活性剤(B2-3)を得た。
【0114】
(合成例13)
芳香族系ノニオン界面活性剤(B2-4)
ジスチレン化フェノール「SP-24」(三光社製)に代えてトリスチレン化フェノール「TSP」(三光社製)を用いたこと以外は、合成例11と同様にして、芳香族系ノニオン界面活性剤(B2-4)を得た。
【0115】
【表4】
【0116】
なお、表4中、「EO」はエチレンオキサイドを示し、「PO」はプロピレンオキサイドを示す。また、表4中、「付加形態」の「ブロック」は、アルキレンオキサイドをブロック付加させたことを意味する。
【0117】
(合成例14)
芳香族系ノニオン界面活性剤(B3-1)
オートクレーブに2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのすべての水酸基にエチレンオキシド合計6モル付加物である「ニューポールBPE-60」(三洋化成社製)を318.9g及び水酸化カリウム3.0g加え、オートクレーブ内を十分に窒素で置換した後、撹拌しながら、120℃で減圧脱水を行った。その後、この温度でエチレンオキシド2681.1gを0.4MPaのゲージ圧で圧入し反応させ、上記温度で1時間熟成し反応を完結させた。その後、キョーワード600を用いて中和濾過し、芳香族系ノニオン界面活性剤(B3-1)を得た。
【0118】
(合成例15)
芳香族系ノニオン界面活性剤(B3-2)
オートクレーブに市販のビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン(東京化成工業社製)250.3g及びtert-ブトキシカリウム8.0gを加え、オートクレーブ内を十分に窒素で置換した後、撹拌しながら、120℃でまで昇温した。その後、この温度でエチレンオキシド176gを仕込み、反応を開始し、圧力が低下したことを確認後、この反応系内に更にエチレンオキシド5544.0gを0.4MPaのゲージ圧で圧入し反応させ、その後更にプロピレンオキシド580.0gを0.4MPaのゲージ圧で圧入し反応させ、上記温度で1時間熟成し反応を完結させた。その後、キョーワード600を用いて中和濾過し、芳香族系ノニオン界面活性剤(B3-2)を得た。
【0119】
(合成例16)
芳香族系ノニオン界面活性剤(B3-3)
表4を満たすようにエチレンオキシドの量を変化させたこと以外は、合成例14と同様の方法で、芳香族系ノニオン界面活性剤(B3-3)を得た。
【0120】
(平均縮合度)
調製した芳香族系ノニオン界面活性剤(B2)((B2-1)~(B2-3))について、下記に示す測定条件に従ってゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて質量平均分子量を測定し、以下の式を用いて平均縮合度を算出した。
【0121】
<平均縮合度の算出方法>
平均縮合度=芳香族系ノニオン界面活性剤(B2)の質量平均分子量÷(一般式(2)で示される化合物の質量平均分子量+カルボニル化合物の質量分子量)
【0122】
<質量平均分子量の測定条件>
装置:HLC-8120GPC(東ソー社製)
カラム:TSK gel Super H4000+TSK gel Super H3000+TSK gel Super H2000(東ソー社製)
検出器:示差屈折計(RI)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:0.5mL/分
カラム温度:40℃
試料濃度:試料濃度0.5質量%の溶離液溶液
標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
【0123】
次に、配合(2)を採用して水硬性組成物を調製した際に使用したポリカルボン酸系分散剤(表5中、「PCE」と記す)(PC-1~PC-4)について以下の表5に示す。
【0124】
【表5】
【0125】
表5中、「M-1」~「M-4」、「AAA」、「MA」、及び「HEA」は、以下に具体的に示すものである。
M-1:α-メタクリル-ω-メトキシ-ポリ(9モル)オキシエチレン
M-2:α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリ(50モル)オキシエチレン
M-3:α-メタリル-ω-ヒドロキシ-ポリ(113モル)オキシエチレン
M-4:α-メタクリル-ω-メトキシ-ポリ(45モル)オキシエチレン
MAA:メタクリル酸
AA:アクリル酸
MA:アクリル酸メチル
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
【0126】
(合成例17)
ポリカルボン酸系分散剤(反応混合物(PC-1))の製造方法
内容積1Lの反応容器にα-メタクリル-ω-メトキシ-ポリ(9モル)オキシエチレン148.1g、メタクリル酸30.0g、アクリル酸メチル9.4g、3-メルカプトプロピオン酸4.1g及びイオン交換水181.0gを仕込み、撹拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換した。反応系の温度を温水浴にて60℃に保ち、過硫酸ナトリウムの6.2%水溶液31.4gを滴下して重合を開始し、6時間重合反応を継続して重合を完結した。冷却後、pH7となるよう30%水酸化ナトリウム水溶液を加え、更にイオン交換水にて濃度40%に調整し、反応混合物(PC-1)であるポリカルボン酸系分散剤(PC-1)を得た。この反応混合物(PC-1)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量18600であった。
【0127】
(合成例18)
ポリカルボン酸系分散剤(反応混合物(PC-2))の製造方法
内容積1Lの反応容器にイオン交換水102.6g、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリ(n=50)オキシエチレン180.6gを仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて65℃とした。その後、アクリル酸15.7gをイオン交換水76.5gで希釈した溶液を3時間かけて滴下し、同時に3.5%過酸化水素水9.8gを反応系に3時間かけて滴下し、更に同時に3-メルカプトプロピオン酸0.8g、L-アスコルビン酸0.8gをイオン交換水6.3gで希釈した溶液を反応系に4時間かけて滴下した。更に反応系の温度を65℃に保持して1時間熟成を行った。30%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH5に調整し、イオン交換水にて濃度を40%に調整して反応混合物(PC-2)であるポリカルボン酸系分散剤(PC-2)を得た。この反応混合物(PC-2)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量32000であった。
【0128】
(合成例19)
ポリカルボン酸系分散剤(反応混合物(PC-3))の製造方法
内容積1Lの反応容器にイオン交換水151.0g、α-メタリル-ω-ヒドロキシ-オキシプロピレンポリ(113モル)オキシエチレン177.0gを加え、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて70℃とした。アクリル酸11.8g、アクリル酸ヒドロキシエチル7.9gをイオン交換水31.5gで希釈した溶液を3時間かけて滴下し、同時に3.5%過酸化水素水8.9gを反応系に3時間かけて滴下し、更に同時に3-メルカプトプロピオン酸1.0g、L-アスコルビン酸0.8gをイオン交換水7.1gで希釈した溶液を反応系に4時間かけて滴下した。更に反応系の温度を60℃に保持して0.5時間熟成を行った。30%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH7に調整し、イオン交換水にて濃度を40%に調整して反応混合物(PC-3)であるポリカルボン酸系分散剤(PC-3)を得た。この反応混合物(PC-3)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量39000であった。
【0129】
(合成例20)
ポリカルボン酸系分散剤(反応混合物(PC-4))の製造方法
内容積1Lの反応容器にイオン交換水103.4gを加え、攪拌しながら雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて65℃とした。α-メタクリル-ω-メトキシ-ポリ(45モル)オキシエチレン311.7g、メタクリル酸77.9g、3-メルカプトプロピオン酸2.7gをイオン交換水342.5gに溶解させた水溶液を3時間かけて滴下し、同時に7%過酸化水素水24.3gを4時間かけて滴下した。さらに反応系の温度を65℃に保持して1時間熟成を行った。30%水酸化ナトリウム水溶液を加え、pH5.6に調整し、イオン交換水にて濃度40%に調整し、反応混合物(PC-4)であるポリカルボン酸系分散剤(PC-4)を得た。この反応混合物(PC-4)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量35000であった。
【0130】
(質量平均分子量の測定方法)
反応混合物(PC-1)~(PC-4)の質量平均分子量の測定方法は、以下の通りとした。
装置:Shodex GPC-101(昭和電工社製)
カラム:OHpak SB-806M HQ+SB-806M HQ(昭和電工社製)
検出器:示差屈折計(RI)
溶離液:50mM硝酸ナトリウム水溶液
流量:0.7mL/分
カラム温度:40℃
試料濃度:試料濃度0.5質量%の溶離液溶液
標準物質:ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド(アジレント)
【0131】
(実施例1~30、比較例1~7)
(1)水硬性組成物用添加剤の調製:
下記表6及び表7に示す種類及び割合にて、上記リグニンスルホン酸系化合物(A)、上述のようにして製造した芳香族系ノニオン界面活性剤(B)、及び水(C)を配合して、水硬性組成物用添加剤(L-1~L-30、R-1~R-7)を調製した。なお、各成分に含有されている水以外の配合水には水道水(蒲郡市上水道水)を用い、実施例6、27においては、その他の成分として、グルコン酸ナトリウム(試薬:キシダ化学社製)(表6中「GS」と記す)を配合した。また、実施例24~30、比較例7では、その他の成分として、表7に示すポリカルボン酸系分散剤(PC-1)~(PC-4)を所定の配合割合で更にそれぞれ配合した。
【0132】
なお、表6、表7中、芳香族系ノニオン界面活性剤(B)において、例えば実施例10のように「B1-1/B2-1」は、芳香族系ノニオン界面活性剤(B1-1)と(B2-1)をそれぞれ配合したことを意味する。そして、実施例10の「質量%」における「1.0/0.5」は、芳香族系ノニオン界面活性剤(B1-1)を1.0質量%配合し、芳香族系ノニオン界面活性剤(B2-1)を0.5質量%配合したことを意味する。
【0133】
【表6】
【0134】
【表7】
【0135】
(2)水硬性組成物(コンクリート組成物)の調製:
次に、調製した各水硬性組成物用添加剤(L-1~L-30、R-1~R-7)を用いて、以下のようにして水硬性組成物を調製した。なお、表8には、水硬性組成物(コンクリート組成物)の配合条件である配合(1)及び配合(2)を示す。
【0136】
まず、配合(1)について以下に説明する。20℃、湿度80%の恒温室にて表8に示した配合条件で、公称容量55Lのパン型強制練りミキサーに、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、宇部三菱セメント社製、及び住友大阪セメント社製等量混合、密度=3.16g/cm)からなる水硬性結合材と、骨材として細骨材(大井川水系砂陸砂、密度=2.58g/cm)及び粗骨材(岡崎産砕石、密度=2.68g/cm)と、を添加し、更に、水硬性組成物用添加剤(L-1~L-23、R-1~R-6)を、セメントに対して0.4質量%、グルコン酸ナトリウム(キシダ化学社製)の10質量%水溶液をセメントに対して0.2質量%、及び市販のAE剤である「AE-300(竹本油脂社製)」をセメントに対して0.002質量%を練り混ぜ水(上水道水)の一部として計量し、ミキサーに投入して60秒間練り混ぜ、実施例1~23、比較例1~6の水硬性組成物(コンクリート組成物)を30L調製した。このとき、目標空気量を4.5%、目標スランプ15.5cmとなるようにした。
【0137】
また、練り上がりのコンクリート組成物の温度がいずれも20±2℃の範囲内となるように、調製前に各材料を温調した。なお、上記練り上がりのコンクリート組成物の温度は、JIS-A1156(2014)に準拠して測定した。
【0138】
次に、配合(2)について以下に説明する。20℃、湿度80%の恒温室にて表8に示した配合条件で、公称容量55Lのパン型強制練りミキサーに、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、宇部三菱セメント社製、及び住友大阪セメント社製等量混合、密度=3.16g/cm)からなる水硬性結合材と、骨材として細骨材(大井川水系砂陸砂、密度=2.58g/cm)及び粗骨材(岡崎産砕石、密度=2.68g/cm)と、を添加し、更に、水硬性組成物用添加剤(L-24~L-30、R-7)をセメントに対して1.0質量%、市販のAE剤であるAE-300(竹本油脂社製)をセメントに対して0.002質量%、市販の消泡剤であるAFK-2(竹本油脂社製)をセメントに対して0.0005質量%を練り混ぜ水(上水道水)の一部として計量し、ミキサーに投入して90秒間練り混ぜた。このようにして、実施例24~30、比較例7の水硬性組成物(コンクリート組成物)を30L調製した。このとき、目標空気量を4.5%、目標スランプ18.0cmとなるようにした。
【0139】
また、配合(1)と同様に、練り上がりのコンクリート組成物の温度がいずれも20±2℃の範囲内となるように、調製前に各材料を温調した。なお、上記練り上がりのコンクリート組成物の温度は、JIS-A1156(2014)に準拠して測定した。
【0140】
【表8】
【0141】
次に、調製した水硬性組成物について、各種評価(安定性、スランプ、空気量(%)、空気量について基準との差、AE性、及び、総合評価)を行った。評価結果を表6、表7に示す。
【0142】
調製した水硬性組成物の各評価の評価方法及び評価基準を以下に示す。
【0143】
(安定性)
Fine油用沈でん管100mL(目盛り付き)(東京硝子器械社製)に、調製した各水硬性組成物用添加剤(L-1~L-30、R-1~R-7)を100mLの目盛りまで加えた。このとき、沈でん管に各水硬性組成物用添加剤を加える直前によく振り混ぜた。その後、各水硬性組成物用添加剤を加えた上記沈でん管を25℃の室内に静置し、14日経過後に沈殿物の沈降具合(堆積物の量)を確認した。
【0144】
安定性の評価は以下の基準に基づいて行った。
S:堆積物の量が0.5mL以下である場合
A:堆積物の量が0.5mL超で1.0mL以下である場合
B:堆積物の量が1.0mL超で2.0mL以下である場合
C:堆積物の量が2.0mL超である場合
【0145】
(スランプ)
練混ぜ直後の水硬性組成物(コンクリート組成物)について、JIS-A1101(2020)に準拠して測定した。
【0146】
(空気量(容積%))
練混ぜ直後の水硬性組成物(コンクリート組成物)について、JIS-A1128(2019)に準拠して測定した。
【0147】
(空気量について基準との差)
空気量について基準の空気量(比較例1における空気量)との差を、「式:空気量について基準との差(%)=各実施例及び比較例における空気量(%)-基準の空気量(%)」によって算出した。
【0148】
(AE性)
芳香族系ノニオン界面活性剤(ポリカルボン酸系分散剤(PC-1)~(PC-4))を含まない配合(1)の場合は比較例1の空気量を基準とし、配合(2)の場合は比較例7を基準として、以下の評価基準で評価を行った。
S:空気量について基準との差が±1.0%以内である場合
A:空気量について基準との差が±1.0%超で±1.5%以内である場合
B:空気量について基準との差が±1.5%超で±2.0%以内である場合
C:空気量について基準との差が±2.0%超である場合
【0149】
(総合評価)
安定性及びAE性の評価結果に基づいて以下の基準で総合評価を行った。
S:安定性及びAE性がいずれもSである場合
A:安定性及びAE性がSとAであるか、或いはAとSである場合
B:安定性及びAE性のいずれかがBである場合
C:安定性及びAE性のいずれかがCである場合
【0150】
(結果)
表6及び表7に示すように、実施例1~30の水硬性組成物用添加剤では、比較例1~7の水硬性組成物用添加剤に比べて、AE性が良好であるので水硬性組成物に対する空気連行性能を維持しており、且つ、安定性の評価が良好であることから、保存安定性が向上された水硬性組成物用添加剤が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、コンクリートやモルタル等の水硬性組成物に用いられる添加剤として利用することができる。また、水硬性組成物用添加剤の製造方法は、本発明の水硬性組成物用添加剤を製造する方法として採用することができる。また、本発明の水硬性組成物は、コンクリート硬化体やモルタル硬化体等の水硬性組成物硬化体を形成するものとして利用することができる。
【要約】
【課題】水硬性組成物に対する空気連行性能を維持し、保存安定性が向上された水硬性組成物用添加剤を提供する。
【解決手段】リグニンスルホン酸系化合物(A)及び水(C)を有し、更に、0.05~10質量%の芳香族系ノニオン界面活性剤(B)を含有することを特徴とする水硬性組成物用添加剤。
【選択図】なし