(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】エクソンスキッピング抗ウイルス導入ベクター免疫応答を減弱化するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20230502BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20230502BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230502BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20230502BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230502BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20230502BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230502BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20230502BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20230502BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20230502BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20230502BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20230502BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230502BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230502BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230502BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230502BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230502BHJP
C12N 7/01 20060101ALN20230502BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20230502BHJP
【FI】
A61K48/00
A61K9/107
A61K9/14
A61K31/436
A61K31/7088
A61K31/7105 ZNA
A61K35/76
A61K35/761
A61K38/10
A61K39/12
A61K45/06
A61K47/04
A61K47/10
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/42
A61P21/00
C12N7/01
C12N15/113 Z
(21)【出願番号】P 2017512898
(86)(22)【出願日】2015-09-07
(86)【国際出願番号】 US2015048771
(87)【国際公開番号】W WO2016037165
(87)【国際公開日】2016-03-10
【審査請求日】2018-09-07
【審判番号】
【審判請求日】2021-01-29
(32)【優先日】2014-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511254321
【氏名又は名称】セレクタ バイオサイエンシーズ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SELECTA BIOSCIENCES,INC.
【住所又は居所原語表記】65 Grove Street,Watertown,MA 02472,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】キシモト,タカシ,ケイ
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】馬場 亮人
【審判官】森井 隆信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第02/09770(WO,A1)
【文献】特表2014-513092(JP,A)
【文献】Mol.Ther.,2009,Vol.17,No.9,pp.1492-1503
【文献】Blood,2007,Vol.110,No. 7,pp.2334-2341
【文献】Science,2004,Vol.306,pp.1796-1799
【文献】Mol.Ther.,2013,Vol.21,No.8,pp.1551-1558
【文献】Int.J.Pharm.,2008,Vol.349,pp.241-248
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/09
CAPLUS/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIX(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原提示細胞標的免疫抑制剤と、エクソンスキッピングを誘導するためのエクソンスキッピング導入遺伝子を含むウイルス導入ベクターであるエクソンスキッピングウイルス導入ベクターと
を含み、抗原提示細胞標的免疫抑制剤が、ラパマイシンまたはラパマイシンアナログを含むポリマーナノ粒子を含む、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターの組み合わせ医薬であって、
以下を含む方法:
抗原提示細胞標的免疫抑制剤およびエクソンスキッピングウイルス導入ベクターの、対象への共投与により、抗エクソンスキッピングウイルス導入ベクター減弱応答を対象において確立すること、
ここで、対象
は、エクソンスキッピングウイルス導入ベクターに対する既存の免疫を有さず、
(a)
ここで、抗ウイルス導入ベクター減弱応答が、ウイルス導入ベクターに対するT細胞応答であり、ならびに、
方法は、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの共投与より前に、抗原提示細胞標的免疫抑制剤なしで、ウイルス導入ベクターを対象へ投与することをさらに含む;または
(b)
ここで、抗ウイルス導入ベクター減弱応答が、ウイルス導入ベクターに対するT細胞応答であり、ならびに、
方法は、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの共投与より前に、抗原提示細胞標的免疫抑制剤なしで、ウイルス導入ベクターを対象へ投与することをさらに含み、ならびに、
ここで、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの共投与が、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの反復共投与である、
における使用のための、前記組み合わせ医薬。
【請求項2】
抗原提示細胞標的免疫抑制剤と、エクソンスキッピングを誘導するためのエクソンスキッピング導入遺伝子を含むウイルス導入ベクターであるエクソンスキッピングウイルス導入ベクターと
を含み、抗原提示細胞標的免疫抑制剤が、ラパマイシンまたはラパマイシンアナログを含むポリマーナノ粒子を含む、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターの組み合わせ医薬であって、
以下を含む方法:
抗原提示細胞標的免疫抑制剤およびエクソンスキッピングウイルス導入ベクターの、対象への共投与により、抗エクソンスキッピングウイルス導入ベクター減弱応答を対象において確立すること、ならびに
エクソンスキッピングウイルス導入ベクターの1以上の反復用量を対象へ投与すること、
ここで、抗ウイルス導入ベクター減弱応答が、ウイルス導入ベクターに対するT細胞応答であり、ならびに、
方法は、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの共投与およびウイルス導入ベクターの1以上の反復用量の投与の両方より前に、抗原提示細胞標的免疫抑制剤なしで、ウイルス導入ベクターを対象へ投与することをさらに含む、
における使用のための、前記組み合わせ医薬。
【請求項3】
方法が、抗原提示細胞標的免疫抑制剤を単独で、またはウイルス導入ベクターと組み合わせて、提供または入手することをさらに含む、請求項1または2に記載の組み合わせ医薬。
【請求項4】
抗原提示細胞標的免疫抑制剤と、エクソンスキッピングを誘導するためのエクソンスキッピング導入遺伝子を含むウイルス導入ベクターであるエクソンスキッピングウイルス導入ベクターとを含み、抗原提示細胞標的免疫抑制剤が、ラパマイシンまたはラパマイシンアナログを含むポリマーナノ粒子を含む、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターの組み合わせ医薬であって、
以下を含む方法:
初めに、抗原提示細胞標的免疫抑制剤なしで
、エクソンスキッピングウイルス導入ベクターを、対象へ投与すること、および
その後、エクソンスキッピングウイルス導入ベクターと抗原提示細胞標的免疫抑制剤とを共に対象へ投与すること
により、抗エクソンスキッピングウイルス導入ベクター応答を減弱化すること
、ここで、抗エクソンスキッピングウイルス導入ベクター応答が、T細胞応答であり、任意に
、方法は、ウイルス導入ベクターと抗原提示細胞標的免疫抑制剤との対象への共投与の後に、ウイルス導入ベクターの1以上の反復用量を対象へ投与することをさらに含む、
における使用のための、前記組み合わせ医薬。
【請求項5】
抗原提示細胞標的免疫抑制剤と、エクソンスキッピングを誘導するためのエクソンスキッピング導入遺伝子を含むウイルス導入ベクターであるエクソンスキッピングウイルス導入ベクターとを含み、抗原提示細胞標的免疫抑制剤が、ラパマイシンまたはラパマイシンアナログを含むポリマーナノ粒子を含む、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターの組み合わせ医薬であって、
以下を含む方法:
エクソンスキッピングウイルス導入ベクターの、対象への投与より前に、エクソンスキッピングウイルス導入ベクターに対する既存の免疫のレベルを対象において決定すること、
抗原提示細胞標的免疫抑制剤とエクソンスキッピングウイルス導入ベクターとを共に対象へ投与すること、および
抗原提示細胞標的免疫抑制剤とエクソンスキッピングウイルス導入ベクターとの対象への共投与よりも前に、抗原提示細胞標的免疫抑制剤なしで、エクソンスキッピングウイルス導入ベクターの用量を対象へ投与すること
、
任意に:
(a)決定することが、ウイルス導入ベクターの対象への投与より前に、対象における抗ウイルス導入ベクター抗体のレベル
もしくは対象におけるウイルス導入ベクターに対するT細胞応答のレベルを測定することを含む;および/または
(b
)方法が、ウイルス導入ベクターの1以上の反復用量の投与をさらに含む;および/または
(c)既存の免疫のレベルが、ウイルス導入ベクターのウイルス抗原に対するものである;および/または
(d)
既存の免役のレベルが、ウイルス導入ベクターのウイルス抗原に対するものであって、ウイルス抗原が、カプシドタンパク質のウイルス抗原である、
における使用のための、前記組み合わせ医薬。
【請求項6】
抗原提示細胞標的免疫抑制剤と、エクソンスキッピングを誘導するためのエクソンスキッピング導入遺伝子を含むウイルス導入ベクターであるエクソンスキッピングウイルス導入ベクターと
を含み、抗原提示細胞標的免疫抑制剤が、ラパマイシンまたはラパマイシンアナログを含むポリマーナノ粒子を含む、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターの組み合わせ医薬であって、
以下を含む方法:
抗原提示細胞標的免疫抑制剤およびエクソンスキッピングウイルス導入ベクターを共に対象へ反復して投与することにより、対象におけるエクソンスキッピングウイルス導入ベクターの導入遺伝子発現をエスカレートさせること、任意に
、
方法が、対象における導入遺伝子発現を増大させる、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの反
復共投与の頻度および投薬を決定することをさらに含む、
における使用のための、前記組み合わせ医薬。
【請求項7】
抗原提示細胞標的免疫抑制剤と、エクソンスキッピングを誘導するためのエクソンスキッピング導入遺伝子を含むウイルス導入ベクターであるエクソンスキッピングウイルス導入ベクターと
を含み、抗原提示細胞標的免疫抑制剤が、ラパマイシンまたはラパマイシンアナログを含むポリマーナノ粒子を含む、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターの組み合わせ医薬
であって、
以下を含む方法:
抗原提示細胞標的免疫抑制剤およびエクソンスキッピングウイルス導入ベクターを共に対象へ反復して投与すること、および
エクソンスキッピングウイルス導入ベクターの1以上の用量を、対象が、エクソンスキッピングウイルス導入ベクターの反復投与に起因して抗エクソンスキッピングウイルス導入ベクター免疫応答を発達させることが予測される場合に対象に選択されたであろうエクソンスキッピングウイルス導入ベクターの投薬量よりも少なくなるように選択すること、
における使用のための、前記組み合わせ医薬。
【請求項8】
(a)反復用量(単数または複数)中のウイルス導入ベクターの量が、前の用量中のウイルス導入ベクターの量と少なくとも等しい;
(b)反復用量(単数または複数)中のウイルス導入ベクターの量が、前の用量中のウイルス導入ベクターの量よりも少ない;
(c)抗原提示細胞標的免疫抑制剤もまた、ウイルス導入ベクターの1以上の反復用量と共に対象へ投与される;および/または
(d)抗原提示細胞標的免疫抑制剤はまた、ウイルス導入ベクターの1以上の反復用量のうちの少なくとも1つとも共に対象へ投与されない、
請求項1~7のいずれか一項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項9】
対象が、ウイルス導入ベクターに対する既存の免疫を有しない、請求項2~8のいずれか一項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項10】
共投与が、同時投与である、および/または方法が、対象におけるウイルス導入ベクターに対する既存の免疫のレベルを決定することをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項11】
抗原提示細胞標的免疫抑制剤と、エクソンスキッピングを誘導するためのエクソンスキッピング導入遺伝子を含むウイルス導入ベクターであるエクソンスキッピングウイルス導入ベクターと
を含み、抗原提示細胞標的免疫抑制剤が、ラパマイシンまたはラパマイシンアナログを含むポリマーナノ粒子を含む、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターの組み合わせ医薬であって、
以下を含む方法:
抗エクソンスキッピングウイルス導入ベクター減弱応答を対象に生じさせるために、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とエクソンスキッピングウイルス導入ベクターとの共投与の頻度および投薬を決定すること、ならびに
決定された頻度および投与量に従って、エクソンスキッピングウイルス導入ベクターの投与、ならびに、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とエクソンスキッピングウイルス導入ベクターとの対象への共投与、を指示すること、
任意に
共投与が、同時投与である、
における使用のための、前記組み合わせ医薬。
【請求項12】
抗原提示細胞標的免疫抑制剤と、エクソンスキッピングを誘導するためのエクソンスキッピング導入遺伝子を含むウイルス導入ベクターであるエクソンスキッピングウイルス導入ベクター
とを含み、抗原提示細胞標的免疫抑制剤が、ラパマイシンまたはラパマイシンアナログを含むポリマーナノ粒子を含む、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターの組み合わせ医薬であって、
以下を含む方法:
抗エクソンスキッピングウイルス導入ベクター減弱応答を対象に生じさせるために、エクソンスキッピングウイルス導入ベクターの1以上の反復用量と組み合わせた、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とエクソンスキッピングウイルス導入ベクターとの共投与の頻度および投薬を決定すること、ならびに
決定された頻度および投薬に従って、対象への、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とエクソンスキッピングウイルス導入ベクターとの共投与と、エクソンスキッピングウイルス導入ベクターの1以上の反復用量の投与と、を指示すること
任意に:
(a)反復用量の少なくとも1つにおけるエクソンスキッピングウイルス導入ベクターの量が、前の用量中のウイルス導入ベクターの量と少なくとも等しいか、または反復用量の少なくとも1つにおけるウイルス導入ベクターの量が、前の用量中のウイルス導入ベクターの量よりも少ない;および/または
(b)抗原提示細胞標的免疫抑制剤もまた、ウイルス導入ベクターの1以上の反復用量と共に対象へ投与される;および/または
(c)抗原提示細胞標的免疫抑制剤はまた、ウイルス導入ベクターの1以上の反復用量のうちの少なくとも1つとも共に投与されない;および/または
(d
)方法が、対象への、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの共投与およびウイルス導入ベクターの1以上の反復用量の投与の両方の前に、ウイルス導入ベクターの用量の対象への投与を指示することをさらに含む;および/または
(e)対象が、ウイルス導入ベクターに対する既存の免疫を有しない;および/または
(f)共投与が、同時投与である、
における使用のための、前記組み合わせ医薬。
【請求項13】
(a)対象が、以前にウイルス導入ベクターを投与されていない対象である;および/または
(b)ウイルス導入ベクターが:(i)レトロウイルス導入ベクター、アデノウイルス導入ベクター、レンチウイルス導入ベクターまたはアデノ随伴ウイルス導入ベクターであり、
あるいは、サブグループA、サブグループB、サブグループC、サブグループD、サブグループEまたはサブグループFのアデノウイルス導入ベクターから選択されるアデノウイルス導入ベクター、あるいはHIV、SIV、FIV、EIAVまたはヒツジレンチウイルスベクターから選択されるレンチウイルス導入ベクター、あるいはAAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10またはAAV11アデノ随伴ウイルス導入ベクターから選択されるアデノ随伴ウイルス導入ベクターである;または(ii)キメラウイルス導入ベクター
もしくはAAV-アデノウイルス導入ベクターである;および/または
(c)エクソンスキッピング導入遺伝子が、アンチセンスオリゴヌクレオチドをコードし、任意に(i)アンチセンスオリゴヌクレオチドが、snRNAであり、および/または(ii)対象が、ジストロフィー、
もしくは筋ジストロフィーを有し、および/または(iii)アンチセンスオリゴヌクレオチドが、ジストロフィンに結合する、
請求項1~12のいずれか一項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項14】
抗原提示細胞標的免疫抑制剤が:
(i)赤血球結合治療剤を含み、任意に、赤血球結合治療剤が、ERY1、ERY19、ERY59、ERY64、ERY123、ERY141およびERY162を含
むか、
または、赤血球結合治療剤が、ウイルス導入ベクター抗原をさらに含み
、ウイルス導入ベクター抗原が、ウイルス抗原である;および/または
(ii)負に荷電した粒子を含み、任意に、負に荷電した粒子が、ポリスチレン、PLGAまたはダイアモンド粒子である、および/または粒子のゼータ電位が、負である
か、-50mVより低いか、
もしくは-100mVより低い;および/または
(iii)アポトーシス小体模倣物および1以上のウイルス導入ベクター抗原を含み、任意に、アポトーシス小体模倣物が、1以上のウイルス導入ベクター抗原と、任意に1以上のアポトーシスシグナル分子とを含む粒子であり
、1以上のウイルス導入ベクター抗原が、1以上のウイルス抗原を含み、および/または
、ポリマーナノ粒子が、ポリグリコール酸ポリマー(PGA)、ポリ乳酸ポリマー(PLA)、ポリセバシン酸ポリマー(PSA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)コポリマー(PLGA)、ポリ(乳酸-コ-セバシン酸)コポリマー(PLSA)、ポリ(グリコール酸-コ-セバシン酸)コポリマー(PGSA)、ポリラクチド-コ-グリコリド(PLG)またはポリエチレングリコール(PEG)を含む;および/または
(iv)
ポリマーナノ粒子の平均直径が、0.1と5μmとの間、0.1と4μmとの間、0.1と3μmとの間、0.1と2μmとの間、0.1と1μmとの間または0.1と500nmとの間である、
請求項1~13のいずれか一項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項15】
抗原提示細胞標的免疫抑制剤が、ポリマーナノ粒子を含む合成ナノキャリアを含み
、
(a)合成ナノキャリアが、ウイルス導入ベクター抗原をさらに含み
、ウイルス導入ベクター抗原が、ウイルス抗原である;および/または
(b)免疫抑制剤および/または存在する場合は抗原が、合成ナノキャリア中に封入される;および/または
(c
)ポリマーナノ粒子が:(I)非メトキシ末端のプルロニック
(登録商標)ポリマーであるポリマーを含む;および/または(II)ポリマーナノ粒子が、ポリエステル、ポリエーテルに接着したポリエステル、ポリアミノ酸、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリケタール、多糖、ポリエチルオキサゾリンまたはポリエチレンイミンを含み、
ここで:(i)ポリエステルが、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)またはポリカプロラクトンを含み、および/または(ii)ポリマーナノ粒子が、ポリエステルおよびポリエーテルに接着したポリエステルを含む;および/または(III)ポリエーテルが、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールを含む;および/または
(d)合成ナノキャリアの集団の動的光散乱を使用して得られた粒子サイズ分布の平均が:(i)110nm、150nm、200nm、250nmより大きい直径である;および/または(ii)5μm、4μm、3μm、2μm、1μm、500nm、450nm、400nm、350nm、300nmより小さい直径である;および/または
(e)合成ナノキャリア中に含まれる
ラパマイシンまたはラパマイシンアナログの負荷量が、合成ナノキャリア全体の平均で:(i)0.1%と50%(重量/重量)との間;(ii)0.1%と25%との間;(iii)1%と25%との間;(iv)2%と25%との間である;および/または
(f)
抗原提示細胞標的免疫抑制剤が
、ラパマイシン
を含むポリマーナノ粒子を含む合成ナノキャリアである;および/または
(g)合成ナノキャリアの集団のアスペクト比が、1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7または1:10より高い、
請求項1~13のいずれか一項に記載の組み合わせ医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2014年9月7日に出願された2/047,034;2014年9月16日に出願された62/051,255;2015年1月9日に出願された62/101,841;2014年9月7日に出願された62/047,044;2014年9月16日に出願された62/051,258;2015年1月9日に出願された62/101,861;2014年9月7日に出願された62/047,054;2014年9月16日に出願された62/051,263;2015年1月9日に出願された62/101,872;2014年9月7日に出願された62/047,051;2014年9月16日に出願された62/051,267;および2015年1月9日に出願された62/101,882の35 U.S.C. §119下における利益を主張し、これらの各々の全内容は、本明細書において参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、ウイルス導入ベクター(viral transfer vectors)および抗原提示細胞標的免疫抑制剤(antigen-presenting cell targeted immunosuppressants)を投与するための方法および組成物に関する。
【発明の概要】
【0003】
本明細書において提供されるのは、エクソンスキッピングウイルス導入ベクターおよび抗原提示細胞標的免疫抑制剤を投与するための方法および組成物である。ウイルス導入ベクターは、本明細書において提供される方法または組成物のいずれか1つにおいて、本明細書において提供される目的のいずれか1つのための治療上の利益を有し得る、エクソンスキッピング導入遺伝子を含む。
一側面におけるものは、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの対象への共投与により、対象において抗ウイルス導入ベクター減弱応答を確立することを含む方法である。一態様において、対象は、ウイルス導入ベクターに対する既存の免疫を有しない。
【0004】
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、抗ウイルス導入ベクター減弱応答は、ウイルス導入ベクターに対するT細胞応答であり、方法はさらに、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの共投与の前に、抗原提示細胞標的免疫抑制剤なしで、ウイルス導入ベクターを対象に投与することを含む。
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの共投与は、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの反復共投与である。
【0005】
別の側面におけるものは、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの対象への共投与により、対象において抗ウイルス導入ベクター減弱応答を確立すること、ならびにウイルス導入ベクターの1以上の反復用量を対象に投与することを含む方法である。
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、抗ウイルス導入ベクター減弱応答は、ウイルス導入ベクターに対するT細胞応答であり、方法はさらに、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの共投与およびウイルス導入ベクターの1以上の反復用量の両方の前に、抗原提示細胞標的免疫抑制剤なしで、ウイルス導入ベクターを対象に投与することを含む。
【0006】
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法はさらに、抗原提示細胞標的免疫抑制剤を、単独でまたはウイルス導入ベクターと組み合わせて提供または入手することを含む。
別の側面におけるものは、初めに抗原提示細胞標的免疫抑制剤なしでウイルス導入ベクターを対象に投与すること、ならびにその後、対象に、ウイルス導入ベクターと抗原提示細胞標的免疫抑制剤とを共に投与することにより、抗ウイルス導入ベクター応答を減弱化することを含む方法であり、ここで、抗ウイルス導入ベクター応答はT細胞応答である。
提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法はさらに、ウイルス導入ベクターの1以上の反復用量を対象に投与すること、およびその後、ウイルス導入ベクターと抗原提示細胞標的免疫抑制剤との対象への共投与を行うことを含む。
【0007】
別の側面におけるものは、ウイルス導入ベクターの対象への投与より前に、対象におけるウイルス導入ベクターに対する既存の免疫のレベルを決定すること、対象に抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとを共に投与すること、ならびにウイルス導入ベクターの用量を対象に投与することを含む方法である。
提供される方法のいずれか1つの一態様において、決定することは、ウイルス導入ベクターの対象への投与より前に、対象における抗ウイルス導入ベクター抗体のレベルを測定することを含む。提供される方法のいずれか1つの別の態様において、決定することは、ウイルス導入ベクターの対象への投与より前に、対象におけるウイルス導入ベクターに対するT細胞応答のレベルを測定することを含む。
【0008】
提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法はさらに、ウイルス導入ベクターの1以上の反復用量を含む。
提供される方法のいずれか1つの一態様において、既存の免疫のレベルは、ウイルス導入ベクターのウイルス抗原に対するものである。
別の側面におけるものは、対象に、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとを共に反復投与することにより、対象におけるウイルス導入ベクターの導入遺伝子発現をエスカレートさせることを含む方法である。
提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法はさらに、対象における導入遺伝子発現を増大させる抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの反復共投与の頻度および投薬を決定することを含む。
【0009】
別の側面におけるものは、対象に、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとを共に反復投与すること、ならびに、ウイルス導入ベクターの1以上の用量を、該対象がウイルス導入ベクターの反復投与に起因して抗ウイルス導入ベクター免疫応答を発達させることが予測される場合に該対象のために選択されたであろうウイルス導入ベクターの用量よりも少なくなるように選択することを含む方法である。
別の側面におけるものは、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの共投与は、対象における抗ウイルス導入ベクター減弱応答をもたらすことを主体に伝達することにより、該主体を、抗原提示細胞標的免疫抑制剤を、単独でまたはウイルス導入ベクターと組み合わせて購入または入手するように誘導することを含む方法である。
【0010】
別の側面におけるものは、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの対象への共投与により、有効な反復ウイルス導入ベクター投薬が可能なものであることを主体に伝達することにより、該主体を、抗原提示細胞標的免疫抑制剤を、単独でまたはウイルス導入ベクターと組み合わせて購入または入手するように誘導することを含む方法である。
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、伝達することは、本明細書において記載される方法のいずれか1つを実施するための指導またはウイルス導入ベクターと抗原提示細胞標的免疫抑制剤との共投与の利益を説明する情報をさらに含む。
【0011】
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法はさらに、抗原提示細胞標的免疫抑制剤もしくはウイルス導入ベクターまたはその両方を主体に分配すること(distributing)を含む。
別の側面におけるものは、対象において抗ウイルス導入ベクター減弱応答を生じさせるために、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの共投与の頻度および投薬を決定することを含む方法である。
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法はさらに、決定された頻度および投薬に従って、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの対象への共投与を指示することを含む。
【0012】
別の側面におけるものは、対象において抗ウイルス導入ベクター減弱応答を生じさせるために、ウイルス導入ベクターの1以上の反復用量と組み合わせた、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの共投与の頻度および投薬を決定することを含む方法である。
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法はさらに、決定された頻度および投薬に従って、対象への、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの共投与およびウイルス導入ベクターの1以上の反復用量の投与の両方を指示することを含む。
【0013】
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法はさらに、対象への、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの共投与およびウイルス導入ベクターの1以上の反復用量の投与の両方の前に、対象へのウイルス導入ベクターの用量の投与を指示することを含む。
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、対象は、ウイルス導入ベクターが以前に投与されていない対象である。
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、対象は、ウイルス導入ベクターが前に1回より多く投与されていない対象である。
提供される方法のいずれか1つの一態様において、反復用量(単数または複数)中のウイルス導入ベクターの量は、前の用量中のウイルス導入ベクターの量と少なくとも等しい。提供される方法のいずれか1つの一態様において、反復用量(単数または複数)中のウイルス導入ベクターの量は、前の用量中のウイルス導入ベクターの量よりも少ない。
【0014】
提供される方法のいずれか1つの一態様において、抗原提示細胞標的免疫抑制剤もまた、対象に、ウイルス導入ベクターの1以上の反復用量と共に投与される。提供される方法のいずれか1つの一態様において、抗原提示細胞標的免疫抑制剤はまた、対象に、ウイルス導入ベクターの1以上の反復用量のうちの少なくとも1つとも共に投与されない。
提供される方法のいずれか1つの一態様において、対象は、ウイルス導入ベクターに対する既存の免疫を有しない。
提供される方法のいずれか1つの一態様において、共投与は同時投与である。
【0015】
提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法はさらに、対象におけるウイルス導入ベクターに対する既存の免疫のレベルを決定することを含む。
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、ウイルス導入ベクターは、レトロウイルス導入ベクター、アデノウイルス導入ベクター、レンチウイルス導入ベクターまたはアデノ随伴ウイルス導入ベクターである。
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、ウイルス導入ベクターはアデノウイルス導入ベクターであり、アデノウイルス導入ベクターは、サブグループA、サブグループB、サブグループC、サブグループD、サブグループE、またはサブグループFのアデノウイルス導入ベクターである。
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、ウイルス導入ベクターはレンチウイルス導入ベクターであり、レンチウイルス導入ベクターは、HIV、SIV、FIV、EIAVまたはヒツジレンチウイルスベクターである。
【0016】
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、ウイルス導入ベクターはアデノ随伴ウイルス導入ベクターであり、アデノ随伴ウイルス導入ベクターは、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10またはAAV11アデノ随伴ウイルス導入ベクターである。
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、ウイルス導入ベクターは、キメラウイルス導入ベクターである。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、キメラウイルス導入ベクターは、AAV-アデノウイルス導入ベクターである。
【0017】
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、ウイルス導入ベクターの導入遺伝子は、エクソンスキッピング導入遺伝子を含む。
【0018】
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、エクソンスキッピング導入遺伝子は、アンチセンスオリゴヌクレオチドをコードする。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドはsnRNAである。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、対象は、ジストロフィーを有する。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、筋ジストロフィーを有する。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ジストロフィンに結合する。
【0019】
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、抗原提示細胞標的免疫抑制剤は、赤血球結合治療剤を含む。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、赤血球結合治療剤は、ERY1、ERY19、ERY59、ERY64、ERY123、ERY141およびERY162を含む。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、赤血球結合治療剤はさらに、ウイルス導入ベクター抗原を含む。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、ウイルス導入ベクター抗原は、ウイルス抗原である。
【0020】
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、抗原提示細胞標的免疫抑制剤は、負に荷電した粒子を含む。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、負に荷電した粒子は、ポリスチレン、PLGAまたはダイアモンド粒子である。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、粒子のゼータ電位は負である。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、粒子のゼータ電位は、-50mVより低い。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、粒子のゼータ電位は、-100mVより低い。
【0021】
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、抗原提示細胞標的免疫抑制剤は、アポトーシス小体模倣物および1以上のウイルス導入ベクター抗原を含む。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、アポトーシス小体模倣物は、1以上のウイルス導入ベクター抗原を含む粒子である。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、1以上のウイルス導入ベクター抗原は、1以上のウイルス抗原を含む。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、粒子はまた、アポトーシスシグナル分子を含んでもよい。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、粒子は、ポリグリコール酸ポリマー(PGA)、ポリ乳酸ポリマー(PLA)、ポリセバシン酸ポリマー(PSA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)コポリマー(PLGA)、ポリ(乳酸-コ-セバシン酸)コポリマー(PLSA)、ポリ(グリコール酸-コ-セバシン酸)コポリマー(PGSA)、ポリラクチド-コ-グリコリド(PLG)、またはポリエチレングリコール(PEG)を含む。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、粒子の平均直径は、0.1と5μmとの間、0.1と4μmとの間、0.1と3μmとの間、0.1と2μmとの間、0.1と1μmとの間または0.1と500nmとの間である。
【0022】
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、抗原提示細胞標的免疫抑制剤は、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアを含む。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、合成ナノキャリアはさらに、ウイルス導入ベクター抗原を含む。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、ウイルス導入ベクター抗原は、ウイルス抗原である。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、免疫抑制剤および/または存在する場合は抗原は、合成ナノキャリア中に封入される。
【0023】
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、合成ナノキャリアは、液体ナノ粒子、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤ベースのエマルション、デンドリマー、バッキーボール(buckyball)、ナノワイヤー、ウイルス様粒子またはペプチドもしくはタンパク質粒子を含む。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、合成ナノキャリアは、ポリマーナノ粒子を含む。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、ポリマーナノ粒子は、非メトキシ末端のプルロニックポリマーであるポリマーを含む。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、ポリマーナノ粒子は、ポリエステル、ポリエーテルに接着したポリエステル、ポリアミノ酸、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリケタール、多糖、ポリエチルオキサゾリンまたはポリエチレンイミンを含む。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、ポリエステルは、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)またはポリカプロラクトンを含む。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、ポリマーナノ粒子は、ポリエステルおよびポリエーテルに接着したポリエステルを含む。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、ポリエーテルは、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールを含む。
【0024】
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、合成ナノキャリアの集団の動的光散乱を使用して得られた粒子サイズ分布の平均は、110nmより大きい直径である。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、150nmより大きい。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、200nmより大きい。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、250nmより大きい。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、5μmより小さい。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、4μmより小さい。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、3μmより小さい。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、2μmより小さい。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、1μmより小さい。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、500nmより小さい。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、450nmより小さい。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、400nmより小さい。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、350nmより小さい。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、300nmより小さい。
【0025】
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、合成ナノキャリア中に含まれる免疫抑制剤の負荷量(load)は、合成ナノキャリア全体の平均で、0.1%と50%(重量/重量)との間である。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、負荷量は、0.1%と25%との間である。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、負荷量は、1%と25%との間である。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、負荷量は、2%と25%との間である。
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、免疫抑制剤は、NF-kB経路の阻害剤である。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、免疫抑制剤は、ラパマイシンである。
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、合成ナノキャリアの集合のアスペクト比は、1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7または1:10よりも大きい。
【0026】
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法はさらに、抗体、T細胞またはB細胞応答などの抗ウイルス導入ベクター応答を減弱化させるか、導入遺伝子発現をエスカレートさせるか、または抗ウイルス導入ベクター応答を確立するプロトコルに従う方法を行うことを含む。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法はさらに、抗体、T細胞またはB細胞応答などの抗ウイルス導入ベクター応答を減弱化させるか、導入遺伝子発現をエスカレートさせるか、または抗ウイルス導入ベクター応答を確立するプロトコルを決定することを含む。
【0027】
提供される方法のいずれか1つの別の態様において、方法はさらに、対象に投与する前、投与中または投与後に、ウイルス導入ベクターに対する抗体免疫応答を評価することを含む。
一側面において、例のいずれか1つにおいて記載されるような方法または組成物が提供される。
別の側面において、組成物のいずれか1つは、提供される方法のいずれか1つにおける使用のためのものである。
別の側面において、方法のいずれか1つは、本明細書において記載される疾患または障害のいずれか1つを処置することにおける使用のためのものである。別の側面において、方法のいずれか1つは、抗ウイルス導入ベクター応答を減弱化すること、減弱化された抗ウイルス導入ベクター応答を確立すること、導入遺伝子発現をエスカレートさせることにおける使用のため、またはウイルス導入ベクターの繰り返し投与のためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、プライムまたはブーストにおいて、ラパマイシンを含む合成ナノキャリアと共にまたはこれを用いずにAVVを注射したマウスの肝臓におけるGFP発現を示す。最初の「クリーン」ゲートにより除外される高い側方散乱デブリ(合計の2~3%、コラゲナーゼ処置の副生成物)を例外として、懸濁液中の全細胞をGFP発現について分析した。全ての残りの細胞を相対的GFP強度についてゲーティングした(FL-1チャネル)。示された数は、親集団全体のGFP陽性細胞のパーセンテージを表す。
【
図2】
図2は、AAVを注射されたマウスの肝臓におけるGFP発現を、ラパマイシンを含む合成ナノキャリアと共のまたはこれを用いないブーストの関数として示す。示されたデータは、
図1におけるものと同じであるが、AAVブーストがラパマイシンを含む合成ナノキャリアとの共投与を用いたか否かに従って群化される(群5および6からのブーストされていない試料もまた、別の「スーパーグループ」として示す)。
【0029】
【
図3】
図3は、ラパマイシンを含む合成ナノキャリアと共にまたはこれを用いずにAVVを注射された動物の肝臓におけるGFP
高細胞の占有率を示す。GFP陽性細胞(
図1において表されるとおり)をゲーティングし、次いで、親集団における平均よりも10倍高い平均GFP蛍光強度を有する集団を、再度ゲーティングした。表される数は、
図1において見られるとおりの親GFP陽性集団からのパーセンテージである。
【
図4】
図4は、マウスを、ラパマイシンを含む合成ナノキャリアの共投与によりまたはこれを用いずに、単回AAV-GFP接種を受けさせた後で、d14に出血させ、その血清を、AAVに対する抗体についてアッセイした実験からの結果を示す。1:40の血清希釈物についての最大ODを、全マウスについて示す。バックグラウンド正常マウス血清は、0.227のODを有した。
【0030】
【
図5】
図5は、マウスを、ラパマイシンを含む合成ナノキャリアの共投与(i.v.)を用いてまたはこれを用いずに、単回AAV-GFP接種を受けさせた後で、第14、21および33日において出血させ、その血清を、AAVに対する抗体についてアッセイした実験からの結果を示す。1:40の血清希釈物についての最大ODを、全マウスについて示す。バックグラウンド正常マウス血清活性を示す。統計学的有意性は、二要因ANOVAを用いて計算した。
【
図6】
図6は、マウスに、第0日および21日において、一方または両方の注射においてラパマイシンを含む合成ナノキャリアの共投与(i.v.)を用いてまたはこれを用いずに、AAV-GFPを注射し、次いで、第14日および33日に出血させ、その血清を、AAVに対する抗体についてアッセイした実験からの結果を示す。1:40の血清希釈物についての最大ODを、全マウスについて示す。バックグラウンド正常マウス血清活性を示す。統計学的有意性は、二要因ANOVAを用いて計算した。
【0031】
【
図7】
図7は、
図6のものと同じデータを、個々のマウスについての読み取り値を示して提供する。ブースト(d21)においてラパマイシンを含む合成ナノキャリアのみで処置された群中の2個体のマウスは、d14においては陽性であったにもかかわらず(黒矢印)、第33日において検出可能な抗体を示さなかった。プライムにおいてラパマイシンを含む合成ナノキャリアで処置された両群中の5個体のマウスのうちの1個体は、d33において検出可能な抗体レベルを有し(破線矢印)、プライムおよびブーストの両方においてラパマイシンを含む合成ナノキャリアで処置された群からのマウスは、より低い抗体レベルを有した(白菱形)。
【
図8】
図8は、マウスを、ラパマイシンを含む合成ナノキャリアの共投与を用いてまたはこれを用いずに単回AAV-GFP接種を受けさせた後で、d14に出血させ、その血清を、AAVに対する抗体についてアッセイした実験からの結果を示す。1:40の血清希釈物についての最大ODを、全マウスについて示す。バックグラウンド正常マウス血清は、0.227のODを有した。N=15マウス/群。
【0032】
【
図9】
図9は、マウスを、ラパマイシンを含む合成ナノキャリアの共投与(i.v.)を用いてまたはこれを用いずに単回AAV-GFP接種を受けさせた後で、第14、21および33日において出血させ、その血清を、AAVに対する抗体についてアッセイした実験からの結果を示す。1:40の血清希釈物についての最大ODを、全マウスについて示す。バックグラウンド正常マウス血清レベルを示す。統計学的有意性は、二要因ANOVAを用いて計算した。第14日においてはN=15マウス/群、第21および33日においては5マウス/群。
【
図10】
図10は、マウスに、第0日および21日において、示すとおり一方または両方の注射においてラパマイシンを含む合成ナノキャリアの共投与(i.v.)を用いてまたはこれを用いずに、AAV8-GFPを注射し、次いで、第14日および33日において出血させた実験からの結果を示す。血清を、AAV8に対する抗体についてELISAによりアッセイした。1:40の血清希釈物についてのODを、全マウスについて示す。正常マウス血清バックグラウンドレベルを、点線により示す。統計学的有意性は、二要因ANOVAを用いて計算した。
【0033】
【
図11】
図11は、プライムまたはブーストにおいて、ラパマイシンを含む合成ナノキャリアと共にまたはこれを用いずにAVVを注射したマウスの肝臓におけるGFP発現を示す。最初の「クリーン」ゲートにより除外される高い側方散乱デブリ(合計の2~3%、コラゲナーゼ処置の副生成物)を例外として、懸濁液中の全細胞をGFP発現について分析した。全ての残りの細胞を相対的GFP強度についてゲーティングした(FL-1チャネル)。示された数は、親集団全体のGFP陽性細胞のパーセンテージを表す。
【
図12】
図12は、プライムおよび/またはブーストにおいてラパマイシンを含む合成ナノキャリアと共にまたはこれを用いずにAVVを注射したマウスの肝臓におけるRFP発現を示す。高い側方散乱デブリを例外として、懸濁液中の全細胞をRFP発現について分析した。示された数は、肝細胞の親集団全体のRFP陽性細胞のパーセンテージを表す。
【0034】
【
図13】
図13は、AAV-GFP単独で、またはラパマイシンを含む合成ナノキャリアと組み合わせて免疫したマウスにおける細胞傷害活性を示す。動物に、第0日および21日において、ラパマイシンを含む合成ナノキャリアと共にまたはこれを用いずに、AAV8-GFP(i.v.)を注射した。AAVカプシドタンパク質からの優性な細胞傷害性ペプチドとGFP導入遺伝子との組み合わせをパルスした標的細胞を、最後の注射の7日後(第28日)に投与し、それらの生存率を、18時間後に測定し、ペプチドでパルスしていない対照細胞のものと比較した。
【
図14】
図14は、AAV-GFP単独でまたはラパマイシンを含む合成ナノキャリアと組み合わせて免疫したマウスにおけるAAV特異的なIFN-γ産生を示す。動物に、第0日および17日において、NCSと共にまたはこれを用いずに、AAV-GFPを注射した(i.v.)。第25日において脾細胞を単離し、in vitroでAAVカプシドタンパク質からの優性なMHCクラスI結合ペプチドを7日間にわたり接種し、次いで、同じペプチドによるELISpotによりアッセイした。各試料を、2回の複製において流し、バックグラウンドを減算して提示した。
【0035】
【
図15】
図15は、AAV-GFP単独でまたはラパマイシンを含む合成ナノキャリアと組み合わせて免疫したマウスにおけるGFP特異的なIFN-γ産生を示す。動物に、第0日および17日において、ラパマイシンを含む合成ナノキャリアと共にまたはこれを用いずに、AAV8-GFPを注射した(i.v.)。脾細胞を単離して、in vitroでGFPからのMHCクラスI結合ペプチドを7日間にわたり接種し、次いで、同じペプチドによるELISpotによりアッセイした。各試料を、2回の複製において流し、バックグラウンドを減算して提示した。
【0036】
【
図17】
図17は、マウスに、第0日において、100μgのラパマイシンを運搬する合成ナノキャリアの共投与(i.v.)を用いてまたはこれを用いずに、rAAV2/8-ルシフェラーゼを注射し、その後、第14日においてAAV-hFIXのi.v.注射により負荷をかけた(challenged)実験からの結果を示す。示すとおりの多様な時点において血清を収集し、AAV8に対する抗体(左)について、およびヒト第IX因子タンパク質(右)のレベルについてアッセイした。
【0037】
【
図19】
図19は、実験からの結果を示す。オスC57BL/6マウスに、第0日において、rAAV2/8-ルシフェラーゼを、100μgのラパマイシンを運搬する合成ナノキャリアと共に注射し(i.v.)、次いで第21日において、rAAV2/8-hFIXを100μgのラパマイシンを、運搬する合成ナノキャリアと共に注射した。対照動物は、同様に、しかし、ラパマイシンを含む合成ナノキャリアの代わりに空のナノキャリアで処置した。示すとおりの多様な時点において血清を収集し、AAVに対する抗体(左)について、およびヒトFIXタンパク質(右)のレベルについてELISAによりアッセイした。肝臓におけるAAV2/8-FIXベクターのコピー数(中)を、PCRにより決定した。
【0038】
【
図21】
図21は、第0日におけるラパマイシンを運搬する合成ナノキャリアとrAAV2/8ベクター(AAV2/8-Luc)とのi.v.での共投与が、第21日において投与されたAAV5ベクター(AAV5-hFIX)に対する抗体応答に対して顕著な影響を有しなかったことを示す結果を提供する。対照的に、結果はまた、第0日においてラパマイシンを含む合成ナノキャリアとrAAV2/8-Lucとで共処置されたマウスが、第21日において、完全フロイントアジュバント(CFA)中の組み換えhFIXタンパク質による免疫に対して強力な応答を示すことを示した。
【発明を実施するための形態】
【0039】
発明の詳細な説明
本発明を詳細に記載する前に、本発明は特に例示された材料またはプロセスに限定されず、パラメーターのようなものは無論変化し得ることが理解されるべきである。また、本明細書において用いられる用語は、本発明の特定の態様のみを記載することを目的とし、本発明を記載する代替的用語の使用を限定することを意図しないことが理解されるべきである。
上記または下記のいずれであっても、本明細書において引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、その全体において全ての目的のために本明細書により参考として援用される。かかる参考としての援用は、本明細書において引用される援用された刊行物、特許および特許出願のいずれかが先行技術を構成するという承認であることを意図しない。
【0040】
本明細書および添付の請求の範囲において用いられる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、内容が明らかに他を指示しない限り、複数の参照対象を含む。例えば、「ポリマー(a polymer)」についての参照は、2以上のかかる分子の混合物または異なる分子量の単一のポリマー種の混合物を含み、「合成ナノキャリア(a synthetic nanocarrier)」についての参照は、2以上のかかる合成ナノキャリアの混合物または複数のかかる合成ナノキャリアを含み、「DNA分子(a DNA molecule)」についての参照は、2以上のかかるDNA分子の混合物または複数のかかるDNA分子を含み、「免疫抑制剤(an immunosuooresant)」についての参照は、2以上のかかる免疫抑制剤分子の混合物または複数のかかる免疫抑制剤分子を含む、など。
【0041】
本明細書において用いられる場合、用語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」などのそのバリエーションは、任意の列記される完全体(integer)(例えば、特色、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップもしくは限定)または完全体の群(例えば特色、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップもしくは限定)の包含を示すが、任意の他の完全体または完全体の群の除外を示すものではないと読まれるべきである。したがって、本明細書において用いられる場合、用語「含むこと(comprising)」は、包括的であり、さらなる列記されていない完全体または方法/プロセスステップを除外しない。
【0042】
本明細書において提供される組成物および方法のいずれかの態様において、「含むこと(comprising)」は、「から本質的になる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」で置き換えることができる。句「から本質的になる」は、本明細書において、特定された完全体(単数または複数)またはステップ、ならびに請求される発明の特徴または機能に実質的には影響を及ぼさないものを要求するために用いられる。本明細書において用いられる場合、用語「からなる」は、列記される完全体(例えば特色、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップもしくは限定)または完全体の群(例えば特色、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップもしくは限定)単独での存在を示すために用いられる。
【0043】
A.序論
抗ウイルス導入ベクターは、エクソンスキッピングなどの多様な適用のための有望な治療剤である。ウイルス導入ベクターは、したがって、メッセンジャーRNA中の変異部位に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド(核内低分子RNA(snRNA)など)などの核酸をコードする導入遺伝子を含んでもよい。残念なことに、これらの治療剤の見込みは、当該分野においてまだ実現されていない。これは大部分、ウイルス導入ベクターに対する細胞性および体液性の免疫応答に起因する。これらの免疫応答は、抗体、B細胞およびT細胞応答を含み、ウイルス導入ベクターのウイルス抗原、例えばウイルスカプシドまたはコートタンパク質またはそのペプチドに対して特異的であり得る。
【0044】
現在、多くの潜在的な患者が、ウイルス導入ベクターの基礎となるウイルスに対して、何らかのレベルの既存の免疫を保有する。実際に、ウイルス抗原に対する抗体、例えばアデノ随伴ウイルスに対する抗体は、ヒト集団において高度に普及している。加えて、既存の免疫のレベルが低い場合であっても、例えばウイルス導入ベクターの低い免疫原性に起因して、かかる低レベルですら、首尾よい形質導入を妨げ得る(例えば、Jeune et al., Human Gene Therapy Methods, 24:59-67 (2013))。したがって、低レベルの既存の免疫ですら、特定のウイルス導入ベクターの使用を妨害し得、このことが、医師に、同じようには有効ではない可能性がある異なる血清型のウイルスに基づくウイルス導入ベクターを選択するか、または、別のウイルス導入ベクター治療が利用可能でない場合、異なる型の治療を選択することすら要求する場合がある。
【0045】
加えて、アデノ随伴ベクターなどのウイルスベクターは、高度に免疫原性であり得、体液性および細胞媒介性免疫を惹起し得、これは、特に再投与に関する効力を損ない得る。実際に、ウイルス導入ベクターに対する細胞性および体液性の免疫応答は、ウイルス導入ベクターの単回投与の後で発生し得る。ウイルス導入ベクター投与の後で、中和抗体の力価は増大して数年間にわたり高いままであり得、ウイルス導入ベクターの再投与の有効性を低下させる可能性がある。なぜならば、ウイルス導入ベクターの反復投与は、一般に望ましくない免疫応答の増強をもたらすからである。加えて、例えばカプシドタンパク質などのウイルス抗原に対する再暴露などにより、所望される導入遺伝子産物を発現する形質導入された細胞を取り除く、ウイルス導入ベクター特異的なCD8+T細胞が生じる場合がある。実際に、AAVカプシド抗原が、AAVウイルス導入ベクターを形質導入した肝実質細胞の、免疫により媒介される破壊を引き起こしたことが示されている(例えば、Manno et al., Nature Medicine, Vol. 12, No. 3, 2006)。多くの治療的適用のために、長期の利益のために複数のラウンドのウイルス導入ベクターの投与が必要となるであろうこと、ならびに、本明細書において提供される方法および組成物を用いなければ、そうする能力は、再投与が必要とされる場合に特に著しく限定されることが予測されるであろうことが理解される。
【0046】
ウイルス導入ベクター抗原は、単回投与の後いくらかの時間にわたり、例えば少なくとも数週間にわたり存続し得るために、治療のためのウイルス導入ベクターの使用に関連する問題は、さらに複雑化する(例えば、Nathawani et al., N Engl J Med 365; 25, 2011;Nathwani et al., N Engl J Med 371; 21, 2014)。例として、アデノ随伴ウイルス血清型8(AAV8)ウイルス導入ベクターの単回注入を受けた患者において、持続性のカプシド特異的な体液性免疫が生じることが見出されている(例えば、Nathwani et al., N Engl J Med 371; 21, 2014)。抗原の持続性は、さらに、ウイルス導入ベクターを首尾よく用いる能力を妨げる。ウイルス導入ベクターによる治療が成功するためには、ウイルス導入ベクターに対する免疫応答を逃れることが重要である。しかし、本発明の前には、それを行い、免疫抑制剤の長期投与を必要とすることなく長期の免疫応答の減弱化を達成する方法は存在しなかった。
【0047】
本発明者らは、驚くべきことに、かつ予想外のことに、上記の問題および制限は、本明細書において開示される発明を実施することにより克服することができることを見出した。処置のためのウイルス導入ベクターの効果的な使用に対する前述の障害に対する解決方法を提供する方法および組成物が提供される。特に、予想外のことに、抗ウイルス導入ベクター免疫応答は、本明細書において提供される方法および関連する組成物により減弱化することができることを見出した。方法および組成物は、ウイルス導入ベクターによる処置の有効性を増大し、ウイルス導入ベクターの投与を反復する必要がある場合であっても、長期の免疫減弱化を提供することができる。
本発明をここで、以下により詳細に記載する。
【0048】
B.定義
「投与すること」または「投与」または「投与する」とは、材料を、薬理学的に有用である様式において、対象に与えるかまたは分配することを意味する。当該用語は、「投与させること(causing to be administered)」を含むことを意図される。「投与させること」とは、別の当事者が材料を投与することを、直接的または間接的に、引き起こすこと、駆り立てること、奨励すること、補助すること、誘導することまたは指示することを含む。本明細書において提供される方法のいずれか1つは、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとを共に投与するステップを含むか、これをさらに含んでもよい。幾つかの態様において、共投与は、反復して行われる。なおさらなる態様において、共投与は同時投与である。
【0049】
本明細書において提供される組成物または対象への投与のための投与形態に関する「有効量」とは、対象において1以上の所望される結果、例えば、ウイルス導入ベクターに対する免疫応答の軽減もしくは除去、または抗ウイルス導入ベクター減弱応答の発生をもたらす組成物または投与形態の量を指す。有効量は、in vitroまたはin vivoでの目的のためのものであってよい。in vivoでの目的のために、量は、医師が、ウイルス導入ベクターの投与の結果として望ましくない免疫応答を経験し得る対象のための臨床的利益を有し得ると考えるものであってよい。本明細書において提供される方法のいずれか1つにおいて、投与される組成物は、本明細書において提供されるような有効量のうちのいずれか1つにおけるものであってよい。
【0050】
有効量は、望ましくない免疫応答のレベルを低下させることを含み得るが、幾つかの態様において、それは、望ましくない免疫応答を完全に予防することを含む。有効量はまた、望ましくない免疫応答の発生を遅延させることを含んでもよい。有効量は、所望される治療的エンドポイントまたは所望される治療効果をもたらす量であってもよい。有効量は、好ましくは、対象において、ウイルス導入ベクター抗原などの抗原に対して、免疫寛容原性免疫応答をもたらす。有効量はまた、好ましくは、導入遺伝子発現の増大をもたらし得る(ウイルス導入ベクターにより送達されている導入遺伝子)。このことは、対象における多様な目的の組織または系における導入遺伝子発現産物濃度を測定することにより、決定することができる。この発現の増大は、局所的にまたは全身で測定することができる。前述のもののいずれかの達成は、慣用的な方法によりモニタリングすることができる。
【0051】
提供される組成物および方法のいずれか1つのいくつかの態様において、有効量は、ウイルス導入ベクターに対する免疫応答の軽減もしくは除去、または抗ウイルス導入ベクター減弱応答の発生などの所望される免疫応答は、対象において、少なくとも1週間、少なくとも2週間または少なくとも1か月間にわたり持続する。提供される組成物および方法のいずれか1つの他の態様において、有効量は、ウイルス導入ベクターに対する免疫応答の軽減もしくは除去、または抗ウイルス導入ベクター減弱応答の発生などの、測定可能な所望される免疫応答をもたらすものである。幾つかの態様において、有効量は、測定可能な所望される免疫応答を(例えば特定のウイルス導入ベクター抗原に対して)、少なくとも1週間、少なくとも2週間または少なくとも1か月間にわたりもたらすものである。
【0052】
有効量は、無論、治療されている特定の対象;状態、疾患または障害の重篤度;年齢、身体条件、サイズおよび体重を含む個々の患者のパラメーター;処置の期間;併用治療の性質(あれば);投与の特定の経路、ならびに保健実施者の知識および経験の範囲内の類似の要因に依存するであろう。これらの要因は、当業者に周知であり、慣用的な実験のみを用いて取り組むことができる。
【0053】
「抗ウイルス導入ベクター免疫応答」または「ウイルス導入ベクターに対する免疫応答」または類似のものは、ウイルス導入ベクターに対する任意の望ましくない免疫応答を指す。幾つかの態様において、望ましくない免疫応答は、ウイルス導入ベクターまたはその抗原に対する抗原特異的免疫応答である。幾つかの態様において、免疫応答は、ウイルス導入ベクターのウイルス抗原に対して特異的である。免疫応答は、抗ウイルス導入ベクター抗体応答、抗ウイルス導入ベクターT細胞免疫応答、例えばCD4+T細胞またはCD8+T細胞の免疫応答、または抗ウイルス導入ベクターB細胞免疫応答であってよい。
【0054】
抗ウイルス導入ベクター免疫応答は、それが、対象において何らかの様式において、または対象もしくは別の対象において予測もしくは測定される応答と比較して、低下するかまたは取り除かれる場合に、「抗ウイルス導入ベクター減弱応答」であるといえる。幾つかの態様において、本明細書において提供される共投与の後に対象から得られた生物学的試料を用いて測定される、当該対象における抗ウイルス導入ベクター減弱応答は、別の対象(試験対象など)から、この他方の対象への、抗原提示細胞標的免疫抑制剤の共投与なしでのウイルス導入ベクター投与の後に得られた生物学的試料を用いて測定される抗ウイルス導入ベクター免疫応答と比較して、低下した抗ウイルス導入ベクター免疫応答(T細胞、B細胞または抗体応答など)を含む。幾つかの態様において、生物学的試料は、他方の対象から、この他方の対象への、抗原提示細胞標的免疫抑制剤の投与なしでのウイルス導入ベクターの投与の後に、得られる。幾つかの態様において、抗ウイルス導入ベクター減弱応答は、本明細書において提供される共投与の後に対象から得られた生物学的試料中の、対象の生物学的試料に対して行われるその後のウイルス導入ベクターのin vitroでの負荷(challenge)により、別の対象(試験対象など)から、この他方の対象への、抗原提示細胞標的免疫抑制剤の共投与なしでのウイルス導入ベクターの投与の後に得られた生物学的試料に対して行われるウイルス導入ベクターのin vitro負荷の後で検出される、抗ウイルス導入ベクター免疫応答と比較して、低下した抗ウイルス導入ベクター免疫応答(T細胞、B細胞または抗体応答など)である。幾つかの態様において、抗ウイルス導入ベクター減弱応答は、本明細書において提供される共投与の後に、対象における、その後の対象に投与されたウイルス導入ベクター負荷により、試験対象などの別の対象における、抗原提示細胞標的免疫抑制剤の共投与なしでのこの他方の対象へのウイルス導入ベクターの投与の後に、この他方の対象に投与されたウイルス導入ベクター負荷による抗ウイルス導入ベクター免疫応答と比較して低下した、抗ウイルス導入ベクター免疫応答(T細胞、B細胞または抗体応答など)である。幾つかの態様において、ウイルス導入ベクターは、抗原提示細胞標的免疫抑制剤の投与なしで投与される。
【0055】
「抗原」とは、B細胞抗原またはT細胞抗原を意味する。「抗原の型」とは、同じまたは実質的に同じ抗原性の特徴を共有する分子である。幾つかの態様において、抗原は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質、糖脂質、ポリヌクレオチド、多糖などであってよい。
「抗原提示細胞標的免疫抑制剤」とは、免疫寛容原性効果を有する抗原提示細胞(APC)をもたらす剤を意味する。かかる免疫抑制剤は、APCへの送達および免疫寛容原性効果をもたらすキャリアとカップリングされている免疫抑制剤、ならびにその形態または特徴のおかげでAPC免疫寛容原性効果をもたらすことができる剤を含む。抗原提示細胞標的免疫抑制剤の例として、限定されないが、本明細書において記載される免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア;本明細書において記載される免疫抑制剤であって、APCを標的とする抗体またはその抗原結合フラグメント(またはAPCを標的とする他のリガンド)、赤血球結合治療剤、ならびにその特徴のおかげでAPC免疫寛容原性免疫応答をもたらす粒子などにカップリングされているものが挙げられる。
【0056】
抗原提示細胞標的免疫抑制剤が免疫抑制剤にカップリングされた合成ナノキャリアである場合、幾つかの態様において、免疫抑制剤は、合成ナノキャリアの構造を構成する材料に追加する要素である。例えば、一態様において、合成ナノキャリアが1以上のポリマーからなる場合、免疫抑制剤は、追加の、および幾つかの態様においては1以上のポリマーに接着した、化合物である。別の例として、一態様において、合成ナノキャリアが、1以上の脂質からなる場合、免疫抑制剤は、やはり、追加のものであり、および幾つかの態様においては、1以上の脂質に接着している。抗原提示細胞標的免疫抑制剤が免疫抑制剤にカップリングされた合成ナノキャリアである態様において、合成ナノキャリアの材料はまた、免疫寛容原性効果をもたらし、免疫抑制剤は、免疫寛容原性効果をもたらす合成ナノキャリアの材料に加えて存在する要素である。
【0057】
「抗原特異的」とは、目的の抗原の存在から生じる、または目的の抗原を特異的に認識するかもしくはこれに結合する分子を生じる免疫応答を指す。一般に、目的の抗原に対するかかる応答は測定可能であるが、他の抗原に関しては応答は低下しているかまたは無視し得る程度である。例えば、免疫応答が抗原特異的抗体産生である場合、目的の抗原に選択的に結合するが、他の抗原には結合しない抗体が産生される。別の例として、免疫応答がCD4+またはCD8+T細胞の産生を含む場合、抗原特異的CD4+またはCD8+T細胞は、それぞれMHCクラスIまたはII抗原に関して、抗原提示細胞(APC)により、またはCD8+T細胞の場合には抗原が産生される任意の他の細胞(例えばウイルスに感染した細胞)により提示される場合、目的の抗原またはその部分に結合することができる。免疫寛容の場合、抗原特異性とは、他の無関係なまたは無関連な抗原(例えば、標的抗原から時間的または空間的に転位置される抗原)と比較して、標的抗原に対する特異的な免疫応答の選択的な予防または阻害を指す。
【0058】
「免疫応答を評価すること」は、in vitroまたはin vivoでの免疫応答のレベル、存在または不在、減少、増大などの任意の測定または決定を指す。かかる測定または決定は、対象から得られた1以上の試料に対して行うことができる。かかる評価は、本明細書において提供されるかまたは当該分野において公知の他の方法のいずれか1つにより行うことができる。評価は、抗体またはT細胞(例えば対象からの試料中の、例えばウイルス導入ベクターに対して特異的なもの)の数またはパーセンテージを評価することであってもよい。評価はまた、免疫応答に関連する任意の効果を評価すること、例えばサイトカインの存在または不在、細胞表現型などを測定することであってもよい。本明細書において提供される方法のいずれか1つは、ウイルス導入ベクターまたはその抗原に対する免疫応答を評価するステップを含んでもよく、またはこれをさらに含んでもよい。評価は、直接的に行われても間接的に行われてもよい。当該用語は、別の当事者が免疫応答を評価することを、引き起こすか、駆り立てるか、奨励するか、補助するか、誘導するかまたは指示する作用を含むことを意図する。
【0059】
「接着する(attach)」または「接着している(attached)」または「カップリングする」または「カップリングしている」(など)は、1つの実体(例えば部分)を別のものに化学的に会合させることを意味する。幾つかの態様において、接着は共有的であり、これは、接着が2つの実体の間の共有結合の存在に関して起こることを意味する。非共有的な態様において、非共有的な接着は、非共有的な相互作用により媒介され、これは、限定されないが、電荷相互作用、アフィニティー相互作用、金属配位、物理的吸着、主客相互作用(host-guest interaction)、疎水性相互作用、TTスタッキング(TT stacking)相互作用、水素結合相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、磁性相互作用、静電相互作用、双極子-双極子相互作用、および/またはこれらの組み合わせを含む。態様において、封入は、接着の形態である。
「平均」とは、本明細書において用いられる場合、他に記述されないかぎり、算数的平均値を指す。
【0060】
「共に(concomintantly)」とは、対象に、時間的に相関する、好ましくは、免疫応答の調節を提供するために時間的に十分に相関する様式において、2以上の材料/剤を投与すること、およびさらにより好ましくは2以上の材料/剤が組み合わせて投与されることを意味する。態様において、共投与は、2以上の材料/剤の、特定された期間内、好ましくは1か月間以内、より好ましくは1週間以内、なおより好ましくは1日以内、さらにより好ましくは1時間以内の投与を包含してもよい。態様において、材料/剤は、繰り返し共投与してもよい;それは、例において提供されるような、1回より多くの機会における共投与である。
【0061】
「決定すること」とは、事実、関係または量などの何かを客観的に確認することを意味する。幾つかの態様において、対象がウイルス導入ベクターに対する既存の免疫を有するか否かを決定することができる。当該用語は、「決定させること」を含むことを意図される。「決定させること」とは、別の当事者が本明細書において提供されるような決定するステップを行うことを、引き起こすこと、駆り立てること、奨励すること、補助すること、誘導することまたは指示することを意味する。幾つかの態様において、決定するステップは、対象がウイルス導入ベクターに対する既存の免疫を有するか否かを決定することができる。本明細書において提供される方法のいずれか1つは、対象がウイルス導入ベクターに対する既存の免疫を有するか否かを決定するステップを含む、本明細書において記載される決定するステップを含んでもよいか、またはこれをさらに含んでもよい。
【0062】
「指示すること」とは、何らかの様式において、別の当事者が本明細書において提供される1以上のステップを行う様式において、他方の当事者の行動に影響を及ぼすこと、例えば何らかの行動を取ること、例えば他方の当事者の行動を引き起こすかまたはこれを制御することを意味する。幾つかの態様において、他方の当事者は、指示することを行う当事者の代理人である。他の態様において、他方の当事者は、指示することを行う当事者の代理人であるが、他方の当事者により行われるステップは、指示することに起因するかまたは指示することの結果である。したがって、指示することは、当該1以上のステップの実施を条件とする利益を受けるために、1以上のステップを行うことを指導するかまたはこれを行う指導を提供することを含む。
【0063】
「投与形態」とは、培地、対象への投与のために好適なキャリア、ビヒクルまたはデバイス中の薬理学的におよび/または免疫学的に活性な材料を意味する。本明細書において提供される組成物または用量のいずれか1つは、投与形態におけるものであってもよい。
「用量」とは、所与の時間にわたる対象への投与のための特定の量の薬理学的および/または免疫学的に活性な材料を指す。「前の用量」とは、材料のより以前の用量を指す。一般的に、本発明の方法および組成物における抗原提示細胞標的免疫抑制剤および/またはウイルス導入ベクターの用量は、抗原提示細胞標的免疫抑制剤および/またはウイルス導入ベクターの量を指す。あるいは、抗原提示細胞標的免疫抑制剤が、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアである場合、用量は、所望される量の抗原提示細胞標的免疫抑制剤を提供する合成ナノキャリアの数に基づいて投与することができる。用量が、反復投薬に関して用いられる場合、用量とは、反復用量の各々の量を指し、これらは同じであっても異なっていてもよい。
【0064】
「封入する」とは、合成ナノキャリア内の物質の少なくとも一部を囲い込むことを意味する。幾つかの態様において、物質は、合成ナノキャリア内に完全に囲い込まれる。他の態様において、封入される物質の殆どまたは全てが、合成ナノキャリアの外の局所環境に暴露されない。他の態様において、50%、40%、30%、20%、10%または5%(重量/重量)以下が、局所環境に暴露される。封入は、吸収とは別のものであり、吸収は、物質の殆どまたは全てを合成ナノキャリアの表面上に配置し、物質を合成ナノキャリアの外部の局所環境に暴露させる。
【0065】
「導入遺伝子発現をエスカレートさせること」とは、対象におけるウイルス導入ベクターの導入遺伝子発現産物のレベルを増大させることを指し、導入遺伝子は、ウイルス導入ベクターにより送達されるものである。幾つかの態様において、導入遺伝子発現産物のレベルは、対象における目的の多様な組織または系における導入遺伝子発現産物濃度を測定することにより決定することができる。導入遺伝子発現をエスカレートさせることは、例えば、対象から得られた試料中の導入遺伝子発現産物の量を測定すること、およびそれを前の試料と比較することにより決定することができる。試料は、組織試料であってよい。幾つかの態様において、導入遺伝子発現産物は、フローサイトメトリーを用いて決定することができる。
【0066】
「確立すること」または「確立する」とは、転帰もしくは結果を生じること、または何か(事実もしくは関係など)を推論することを意味する。この用語のその使用は、それが用いられる文脈に基づいて明らかであろう。転帰または結果を生じるために、確立することは、多くの方法において達成することができ、これは、限定されないが、転帰または結果を達成するステップを取ることを含む。例えば、幾つかの態様において、本明細書において提供される材料の投与は、転帰または結果を生じ得る。何か(事実もしくは関係など)を決定するために、確立することは、実験を行うこと、推定を行うことなどにより達成することができ、例えば、ウイルス導入ベクターの投与が対象において抗ウイルス導入ベクター免疫応答を生じる可能性が高いことを確立することは、対象に対する実験(対象から得られる1以上の試料に対するものを含む)の結果に基づき得る。一般に、対象において抗ウイルス導入ベクター免疫応答が生じる可能性は、本明細書において提供される抗原提示細胞標的免疫抑制剤の投与の不在下におけるウイルス導入ベクターの投与(または、いくつかの態様においては反復投与)により、かかる応答が生じる可能性である。同様に、対象がウイルス導入ベクターに対する既存の免疫を有することを確立することはまた、対象に対する実験(対象から得られる1以上の試料に対するものを含む)の結果に基づき得る。別の態様において、かかる確立は、対象における免疫応答を評価することにより決定することができる。投与のための用量を確立することに関して、抗原提示細胞標的免疫抑制剤またはウイルス導入ベクターの用量は、試験用量から開始して、投与のための用量を決定するための既知のスケーリング技術(例えば非比例的な等尺性のスケーリング)を用いることにより、決定することができる。かかるものはまた、本明細書において提供されるプロトコルを確立するためにも用いることができる。「確立すること」または「確立する」とは、「確立させること」を含む。「確立させること」は、主体が、本明細書において提供される確立するステップを行うことを、引き起こすこと、駆り立てること、奨励すること、補助すること、誘導することまたは指示すること、または該主体と協調してそのために行動することを意味する。本明細書において提供される方法のいずれか1つのいくつかの態様において、方法は、本明細書において記載される確立するステップのいずれか1つを含んでもよく、またはこれをさらに含んでもよい。
【0067】
「エクソンスキッピング導入遺伝子」とは、エクソンスキッピングを発生させ得るアンチセンスオリゴヌクレオチドをコードする任意の核酸を意味する。「エクソンスキッピング」とは、タンパク質産生の間に、mRNA前駆体のレベルにおいてスキップされて取り除かれるエクソンを指す。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、スプライス部位またはエクソン内の調節エレメントと干渉し得る。これは、遺伝子変異の存在に関わらず、短縮された部分的に機能的なタンパク質をもたらす。一般に、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、変異特異的であり、メッセンジャーRNA前駆体中の変異部位に結合して、エクソンスキッピングを引き起こす。
【0068】
「頻度」とは、抗原提示細胞標的免疫抑制剤、ウイルス導入ベクターまたは両方を組み合わせたもの(例えば共投与によるもの)が対象に投与される時間の間隔を指す。
【0069】
「免疫抑制剤」は、好ましくはAPCに対する効果を通して、免疫寛容原性効果を引き起こす化合物を意味する。免疫寛容原性効果は、一般に、APCまたは他の免疫細胞による、全身性および/または局所的な調節であって、耐久的な様式において抗原に対する望ましくない免疫応答を阻害または予防するものを指す。一態様において、免疫抑制剤は、APCに、1以上の免疫エフェクター細胞における調節性の表現型を促進させるものである。例えば、調節性の表現型は、抗原特異的CD4+T細胞またはB細胞の産生、誘導、刺激または動員の阻害、抗原特異的抗体の産生の阻害、Treg細胞(例えば、CD4+CD25highFoxP3+Treg細胞)の産生、誘導、刺激または動員などにより特徴づけられ得る。このことは、CD4+T細胞またはB細胞の調節性の表現型への変換の結果であってもよい。このことはまた、CD8+T細胞、マクロファージおよびiNKT細胞などの他の免疫細胞におけるFoxP3の誘導の結果であってもよい。一態様において、免疫抑制剤は、APCが抗原をプロセッシングした後の応答に影響を及ぼすものである。別の態様において、免疫抑制剤は、抗原のプロセッシングに干渉するものではない。さらなる態様において、免疫抑制剤は、アポトーシスシグナル分子ではない。別の態様において、免疫抑制剤は、リン脂質ではない。
【0070】
免疫抑制剤として、これらに限定されないが、以下が挙げられる:スタチン;ラパマイシンまたはラパマイシンアナログ(すなわち、ラパログ(rapalog))などのmTOR阻害剤;TGF-βシグナル伝達剤;TGF-β受容体アゴニスト;トリコスタチンAなどのヒストンデアセチラーゼ阻害剤;副腎皮質ステロイド;ロテノンなどのミトコンドリアの機能の阻害剤;P38阻害剤;6Bio、デキサメタゾン、TCPA-1、IKK VIIなどのNF-κβ阻害剤;アデノシン受容体アゴニスト;ミソプロストールなどのプロスタグランジンE2アゴニスト(PGE2);ホスホジエステラーゼ阻害剤、ロリプラムなどのホスホジエステラーゼ4阻害剤(PDE4);プロテアソーム阻害剤;キナーゼ阻害剤;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;糖質コルチコイド;レチノイド;サイトカイン阻害剤;サイトカイン受容体阻害剤;サイトカイン受容体アクチベーター;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼ阻害剤;カルシニューリン阻害剤;ホスファターゼ阻害剤;TGX-221などのPI3KB阻害剤;3-メチルアデニンなどのオートファジー阻害剤;アリール炭化水素受容体阻害剤;プロテアソーム阻害剤I(PSI);ならびにP2X受容体遮断薬などの酸化ATP。免疫抑制剤はまた、IDO、ビタミンD3、レチノイン酸、シクロスポリンAなどのシクロスポリン、アリール炭化水素受容体阻害剤、レスベラトロール、アザチオプリン(Aza)、6-メルカプトプリン(6-MP)、6-チオグアニン(6-TG)、FK506、サングリフェリンA、サルメテロール、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、アスピリンおよび他のCOX阻害剤、ニフルミン酸、エストリオールならびにトリプトライドを含む。他の例示的な免疫抑制剤として、限定されないが、低分子薬、天然生成物、抗体(例えば、CD20、CD3、CD4に対する抗体)、生物製剤ベースの薬物、炭水化物ベースの薬物、RNAi、アンチセンス核酸、アプタマー、メトトレキサート、NSAID;フィンゴリモド;ナタリズマブ;アレムツズマブ;抗CD3;タクロリムス(FK506)、アバタセプト、ベラタセプトなどが挙げられる。「ラパログ」とは、ラパマイシン(シロリムス)に構造的に関連する(そのアナログである)分子を指す。ラパログの例として、限定することなく、テムシロリムス(CCI-779)、エベロリムス(RAD001)、リダフォロリムス(AP-23573)、およびゾタロリムス(ABT-578)が挙げられる。ラパログのさらなる例は、例えばWO公開WO1998/002441および米国特許第8,455,510号において見出すことができ、それらのラパログは、本明細書においてその全体において参考として援用される。
【0071】
免疫抑制剤は、APCに対して直接的に免疫寛容原性効果を提供する化合物であっても、またはそれは、間接的に(すなわち、投与の後何らかの方法において処理された後で)免疫寛容原性効果を提供する化合物であってもよい。免疫抑制剤は、したがって、本明細書において提供される化合物のいずれかのプロドラッグの形態を含むさらなる免疫抑制剤は、当業者に公知であり、本発明は、この点において限定されない。態様において、免疫抑制剤は、本明細書において提供される剤のいずれか1つを含んでもよい。
【0072】
「購入するように誘導する」とは、主体に、本明細書において記載される有益な効果を達成するために、または本明細書において提供される方法のいずれか1つを実施するために、抗原提示細胞標的免疫抑制剤、ウイルス導入ベクター、または両方を購入することを示唆する任意の行動を指す。かかる行動は、抗ウイルス導入ベクター応答を減弱化するため、導入遺伝子発現をエスカレートさせるため、またはウイルス導入ベクターの反復投与を可能にするための、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの共投与の利益を記載して、抗原提示細胞標的免疫抑制剤、ウイルス導入ベクター、または両方をパッケージングすることを含む。あるいは、パッケージングは、本明細書において提供される方法のいずれか1つの性能を記載または示唆してもよい。主体を購入するように誘導する行動はまた、抗原提示細胞標的免疫抑制剤、ウイルス導入ベクター、または抗原提示細胞標的免疫抑制剤およびウイルス導入ベクターの製品を、本明細書において記載される有益な効果のいずれか1つまたは本明細書において提供される方法のいずれか1つを実施するための、かかる製品の使用を記載または示唆する情報と共に上市することを含む。あるいは、上市することは、抗ウイルス導入ベクター応答を減弱化するため、導入遺伝子発現をエスカレートさせるため、またはウイルス導入ベクターの反復投与のための、かかる製品の使用を記載または示唆する材料を含む。さらなる例として、誘導する行動はまた、前述のもののいずれかを記載または示唆する情報を伝達する行動を含んでもよい。伝達することは、書面、口頭などに関わらず任意の形態において行うことができる行動である。書面の形態におけるものである場合、伝達することは、電子または紙ベースの媒体を含む任意の媒体を介して行うことができる。さらに、誘導する行動はまた、抗原提示細胞標的免疫抑制剤、ウイルス導入ベクターまたは両方を分配する行動を含む。分配する行動は、抗原提示細胞標的免疫抑制剤、ウイルス導入ベクターまたは両方を、本明細書において記載される利益、または本明細書において提供される方法のステップのいずれか1つ、または抗ウイルス導入ベクター応答を減弱化するか、導入遺伝子発現を増大させるか、もしくはウイルス導入ベクターの反復投与を可能にする能力のいずれかを、記載するか、指示するか、または伝達する情報、パッケージング、上市用の材料などと共に、主体にとって利用可能とする任意の行動を含む。分配する行動は、販売すること、販売を提案すること、および販売のために輸送すること(例えば、薬局、病院などに輸送すること)を含む。
【0073】
「負荷量(load)」とは、合成ナノキャリアと共役する場合、合成ナノキャリア全体における材料の乾燥処方重量(重量/重量)に基づいた、合成ナノキャリアと共役する免疫抑制剤の量である。一般に、かかる負荷量は、合成ナノキャリアの集団全体の平均として計算される。一態様において、負荷量は、合成ナノキャリア全体の平均で0.1%と99%との間である。別の態様において、負荷量は、0.1%と50%との間である。別の態様において、負荷量は、0.1%と20%との間である。さらなる態様において、負荷量は、0.1%と10%との間である。なおさらなる態様において、負荷量は、1%と10%との間である。なおさらなる態様において、負荷量は、7%と20%との間である。さらに別の態様において、負荷量は、合成ナノキャリアの集団全体の平均で少なくとも0.1%、少なくとも0.2%、少なくとも0.3%、少なくとも0.4%、少なくとも0.5%、少なくとも0.6%、少なくとも0.7%、少なくとも0.8%、少なくとも0.9%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。さらに別の態様において、負荷量は、合成ナノキャリアの集団全体の平均で、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%または20%である。上の態様のうちのいくつかの態様において、負荷量は、合成ナノキャリアの集団全体の平均で、25%以下である。態様において、負荷量は、例において記載され得るか、または当該分野において公知であり得るように、計算される。幾つかの態様において、ナノ結晶性免疫抑制剤のように、免疫抑制剤の形態自体が粒子または粒子様である場合、免疫抑制剤の負荷量は、粒子または類似のものにおける免疫抑制剤の量(重量/重量)である。かかる態様において、負荷量は、97%、98%、99%またはそれより高くに近づき得る。
【0074】
「合成ナノキャリアの最大寸法」とは、合成ナノキャリアの任意の軸に沿って測定されるナノキャリアの最大寸法を意味する。「合成ナノキャリアの最小寸法」とは、合成ナノキャリアの任意の軸に沿って測定される合成ナノキャリアの最小寸法を意味する。例えば、球体の合成ナノキャリアについて、合成ナノキャリアの最大および最小寸法は、実質的に同一であり、その直径のサイズである。同様に、立方状合成ナノキャリアについて、合成ナノキャリアの最小寸法は、その高さ、幅または長さのうちの最小のものであり、一方、合成ナノキャリアの最大寸法は、その高さ、幅または長さのうちの最大のものである。一態様において、試料中の合成ナノキャリアの合計数に基づいた、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、100nmと等しいか、またはこれより大きい。一態様において、試料中の合成ナノキャリアの合計数に基づいた、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法は、5μmと等しいか、またはこれより小さい。好ましくは、試料中の合成ナノキャリアの合計数に基づいた、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、110nmより大きく、より好ましくは120nmより大きく、より好ましくは130nmより大きく、より好ましくはなお、150nmより大きい。合成ナノキャリアの最大および最小寸法のアスペクト比は、態様に依存して変化し得る。例えば、合成ナノキャリアの最小寸法に対する最大寸法のアスペクト比は、1:1~1,000,000:1、好ましくは1:1~100,000:1、より好ましくは1:1~10,000:1、より好ましくは1:1~1000:1、なおより好ましくは1:1~100:1、およびさらにより好ましくは1:1~10:1の間で変化し得る。好ましくは、試料中の合成ナノキャリアの合計数に基づいた、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法は、3μmと等しいか、またはこれより小さく、より好ましくは2μmと等しいか、またはこれより小さく、より好ましくは1μmと等しいか、またはこれより小さく、より好ましくは800nmと等しいか、またはこれより小さく、より好ましくは600nmと等しいか、またはこれより小さく、およびより好ましくはなお、500nmと等しいか、またはこれより小さい。好ましい態様において、試料中の合成ナノキャリアの合計数に基づいた、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、100nmと等しいか、またはこれより大きく、より好ましくは120nmと等しいか、またはこれより大きく、より好ましくは130nmと等しいか、またはこれより大きく、より好ましくは140nmと等しいか、またはこれより大きく、およびより好ましくはなお、150nmと等しいか、またはこれより大きい。合成ナノキャリアの寸法(例えば有効直径)の測定は、幾つかの態様において、合成ナノキャリアを液体(通常は水性)媒体中に懸濁して、動的光散乱(DLS)を用いること(例えばBrookhaven ZetaPALS装置を用いること)により、得ることができる。例えば、合成ナノキャリアの懸濁液を、約0.01~0.1mg/mLの最終合成ナノキャリア懸濁液濃度を達成するために、水性バッファーから精製水中で希釈することができる。希釈された懸濁液は、DLS分析のために好適なキュベット中で直接調製しても、またはこれに移してもよい。キュベットを、次いで、DLS内に置き、制御された温度まで平衡化させて、次いで、媒体の粘度および試料の屈折率のための適切なインプットに基づいて、安定で再現性のある分布を得るために十分な時間にわたりスキャンすることができる。有効直径、または分布の平均を、次いで報告させる。高アスペクト比または非球形の合成ナノキャリアの有効サイズを決定することは、より正確な測定値を得るために、電子顕微鏡法などの増強技術を必要とする場合がある。合成ナノキャリアの「寸法」または「サイズ」または「直径」は、例えば動的光散乱を用いて得られる粒子サイズ分布の平均を意味する。
【0075】
「測定可能なレベル」とは、陰性対照のレベルより高いか、バックグラウンドまたはシグナルノイズより高いと考えられる任意のレベルを指す。測定可能なレベルは、測定されている分子の存在を示すレベルであると考えられるものである。
「非メトキシ末端のポリマー」とは、メトキシ以外の部分で終了する少なくとも1つの末端を有するポリマーを意味する。幾つかの態様において、ポリマーは、メトキシ以外の部分で終了する少なくとも2つの末端を有する。他の態様において、ポリマーは、メトキシで終了する末端を有しない。「非メトキシ末端のプルロニックポリマー」とは、両端にメトキシを有する直鎖状プルロニックポリマー以外のポリマーを意味する。本明細書において提供されるポリマーナノ粒子は、非メトキシ末端のポリマーまたは非メトキシ末端のプルロニックポリマーを含んでもよい。
【0076】
「入手すること」とは、材料を、任意の手段により獲得する行動を意味する。材料は、それを生成すること、それを購入すること、それを受け取ることなどにより獲得することができる。この用語は、「入手させること」を含むことを意図される。「入手させること」とは、主体が、本明細書において提供される材料を入手することを、引き起こすこと、駆り立てること、奨励すること、補助すること、誘導することまたは指示すること、または該主体と協調してそのために行動することを意味する。本明細書において提供される方法のいずれか1つのいくつかの態様において、方法は、本明細書において記載される入手するステップのいずれか1つを含んでもよいか、またはこれをさらに含んでもよい。
「薬学的に許容し得る賦形剤」または「薬学的に許容し得るキャリア」とは、組成物を処方するために薬理学的に活性な材料と一緒に用いられる薬理学的に不活性な材料を意味する。薬学的に許容し得る賦形剤は、当該分野において公知の多様な材料を含み、これは、限定されないが、糖(例えばグルコース、ラクトースなど)、抗菌剤などの保存剤、再構成補助剤、色素、食塩水(例えばリン酸緩衝化食塩水)およびバッファーを含む。
【0077】
「ウイルス導入ベクターに対する既存の免疫」とは、対象における、ウイルス導入ベクターの抗原に対する、または交差反応性抗原(他のウイルスを含むがこれに限定されない)に対する以前の暴露により、以前にプライミングされている、抗体、T細胞および/またはB細胞の存在を指す。幾つかの態様において、この既存の免疫は、ウイルス導入ベクターの有効性を損なう抗ウイルス導入ベクター免疫応答をもたらすことが予測されるレベルである。幾つかの態様において、この既存の免疫は、ウイルス導入ベクターに対するその後の暴露により、抗ウイルス導入ベクター免疫応答をもたらすことが予測されるレベルである。既存の免疫は、対象からの血液試料などの試料中に存在するウイルス導入ベクターに対する中和抗体などの抗体のレベルを決定することにより評価することができる。中和抗体などの抗体のレベルを評価するためのアッセイは、本明細書において少なくとも例において記載され、また、当業者には公知である。かかるアッセイは、ELISAアッセイである。既存の免疫はまた、in vivo またはin vitroで、APCにより提示されたウイルス導入ベクター抗原またはMHCクラスIもしくはMHCクラスII分子上に提示されたウイルス抗原エピトープで刺激した、BまたはT細胞などの免疫細胞の抗原リコール応答を決定することにより、評価することができる。抗原特異的リコール応答のためのアッセイとして、これらに限定されないが、ELISpot、細胞内サイトカイン染色、細胞増殖、およびサイトカイン産生アッセイが挙げられる。一般に、これらのおよび他のアッセイは、当業者に公知である。幾つかの態様において、ウイルス導入ベクターに対する既存の免疫を示さない対象は、中和抗体、またはメモリーBもしくはT細胞などの抗ウイルス導入ベクター抗体のレベルが陰性であると考えられるものである。他の態様において、ウイルス導入ベクターに対する既存の免疫を示さない対象は、抗ウイルス導入ベクター応答のレベルが、陰性対照の平均値+3×標準偏差以下であるものである。
【0078】
「生成すること」とは、作られている材料をもたらす任意の行動を指す。生成する行動は、材料を調製すること、またはそれを何らかの様式において処理することを含む。幾つかの態様において、生成する行動は、材料を他者による使用のために利用可能にする任意の行動を含む。この用語は、「生成させること」を含むことを意図される。「生成させること」とは、主体が、本明細書において提供される材料を作ることを、引き起こすこと、駆り立てること、奨励すること、補助すること、誘導することまたは指示すること、または該主体と協調してそのために行動することを意味する。本明細書において提供される方法のいずれか1つのいくつかの態様において、方法は、本明細書において記載される生成するステップのいずれか1つを含んでもよいか、またはこれをさらに含んでもよい。
【0079】
「プロトコル」とは、対象に投与するパターンを意味し、1以上の物質の対象への任意の投薬レジメンを含む。プロトコルは、要素(または変数)からなり;したがって、プロトコルは、1以上の要素を含む。プロトコルのかかる要素は、投薬量(用量)、投薬頻度、投与の経路、投薬期間、投薬速度、投薬の間隔、前述のもののいずれかの組み合わせなどを含んでもよい。幾つかの態様において、プロトコルは、1以上の本発明の組成物を、1以上の試験対象に投与するために用いることができる。これらの試験対象における免疫応答を、次いで、所望される、または所望されるレベルの、免疫応答または治療効果を生じることにおいてプロトコルが有効であったか否かを決定するために評価することができる。任意の治療効果および/または免疫性効果を評価することができる。プロトコルのエレメントの1以上は、非ヒト対象などの試験対象において前に実証されていてもよく、次いでヒトプロトコルに翻訳してもよい。例えば、相対成長率または他の尺度法などの確立された技術を用いて、非ヒト対象において実証された投薬量を、トプロトコルのエレメントとしてスケーリングしてもよい。プロトコルが所望される効果を有したか否かは、本明細書において提供されるかまたは他の当該分野において公知の方法のうちのいずれかを用いて決定することができる。例えば、試料は、特定の免疫細胞、サイトカイン、抗体などが、減少、産生または活性化されたか否かなどを決定するために、本明細書において提供される組成物が特定のプロトコルに従って投与された対象から得ることができる。例示的なプロトコルは、ウイルス導入ベクター抗原に対する免疫寛容原性免疫応答をもたらすこと、または本明細書において記載される有益な結果のいずれか1つを達成することが、以前に示されているものである。免疫細胞の存在および/または数検出するために有用な方法として、これらに限定されないが、フローサイトメトリー法(例えば、FACS)、ELISpot、増殖応答、サイトカイン産生、および免疫組織化学法が挙げられる。免疫細胞マーカーの特異的染色のための抗体および他の結合剤は、市販されている。かかるキットは、典型的には、FACSベースの検出、不均一な細胞の集団からの所望される細胞集団の精製および/または定量化を可能にする、抗原についての染色試薬を含む。態様において、本明細書において提供される組成物は、選択された要素が対象において所望される結果を達成すると予測されることを前提として、プロトコルを構成する要素の1もしくは2以上、または全てもしくは実質的に全てを用いて、対象に投与される。かかる予測は、試験対象において決定されたプロトコルおよび必要とされる場合にはスケーリングに基づくものであってよい。本明細書において提供される方法のいずれか1つは、抗ウイルス導入ベクター免疫応答を減弱化するか、またはウイルス導入ベクターの反復投与を可能にすることが示されているプロトコルに従って、単独で、または本明細書において記載されるようにウイルス導入ベクターの1以上の用量と組み合わせて、抗原提示細胞標的免疫抑制剤の用量を投与するステップを含んでもよいか、またはこれをさらに含んでもよい。本明細書において提供される方法のいずれか1つは、本明細書において記載される有益な結果のいずれか1つを達成するかかるプロトコルを決定することを含んでもよいか、またはこれをさらに含んでもよい。
【0080】
「提供すること」とは、個人が行う、本発明を実施するための材料を供給する行動または行動のセットを意味する。提供することは、材料を、生成する、分配する、販売する、譲渡する、利用可能にする、処方するまたは投与する行動を含んでもよい。行動または行動のセットは、個人が直接行っても、間接的に行ってもよい。したがって、この用語は、「提供させること」を含むことを意図される。「提供させること」とは、主体が、本発明の実施のための材料を供給することを、引き起こすこと、駆り立てること、奨励すること、補助すること、誘導することまたは指示すること、または該主体と協調してそのために行動することを意味する。本明細書において提供される方法のいずれか1つのいくつかの態様において、方法は、本明細書において記載される提供するステップのいずれか1つを含んでもよいか、またはこれをさらに含んでもよい。
【0081】
「反復用量」または「反復投薬」または類似のものは、同じ材料の以前の用量または投薬の後に対象に投与される、少なくとも1回のさらなる用量または投薬を意味する。例えば、ウイルス導入ベクターの反復用量は、同じ材料の以前の用量の後の、ウイルス導入ベクターの少なくとも1回のさらなる用量である。材料は同じであってよいが、一方で、反復用量中の材料の量は、以前の用量と異なっていてもよい。例えば、本明細書において提供される方法または組成物のいずれか1つの一態様において、反復投薬中のウイルス導入ベクターの量は、以前の用量のウイルス導入ベクターの量より少なくてもよい。あるいは、本明細書において提供される方法または組成物のいずれか1つの一態様において、反復用量は、以前の用量中のウイルス導入ベクターの量と少なくとも同等の量であってよい。反復用量は、前の用量の数週間後、数か月後、または数年後に投与してもよい。本明細書において提供される方法のいずれか1つのいくつかの態様において、反復用量または投薬は、反復用量または投薬の直前に起きた用量または投薬の少なくとも1週間後に投与される。反復投薬は、それが対象のために有益な効果をもたらす場合、有効であると考えられる。好ましくは、有効な反復投薬は、減弱化された抗ウイルス導入ベクター応答と組み合わされた有益な効果をもたらす。
【0082】
「ウイルス導入ベクターの用量を、~より少なくなるように選択する」とは、対象が、ウイルス導入ベクターの反復投薬に起因して、ウイルス導入ベクターに対する抗ウイルス導入ベクター免疫応答を発達させるであろう場合に、対象への投与のために選択されたであろうウイルス導入ベクターの量よりも少ない、ウイルス導入ベクターの用量の選択を指す。この用語は、「選択させること」を含むことを意図される。「選択させること」とは、主体が、前述のより少ない投与量を選択することを、引き起こすこと、駆り立てること、奨励すること、補助すること、誘導することまたは指示すること、または該主体と協調してそのために行動することを意味する。本明細書において提供される方法のいずれか1つのいくつかの態様において、方法は、本明細書において記載される選択するステップのいずれか1つを含んでもよいか、またはこれをさらに含んでもよい。
【0083】
「同時(simultaneous)」とは、医師が、投与の間の任意の時間を、所望される治療成績に対して影響を及ぼすためには実質的に無または無視し得ると考えるであろう場合に、同じ時間または実質的に同じ時間における投与を意味する。幾つかの態様において、同時とは、投与が、5、4、3、2、1分間またはそれより短い時間内に起きることを意味する。
「対象」とは、ヒトおよび霊長類などの温血哺乳動物;鳥類;ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマおよびブタなどの家庭内または家畜動物;マウス、ラットおよびモルモットなどの実験動物;魚類;爬虫類;動物園および野生の動物などを含む動物を意味する。本明細書において用いられる場合、対象は、本明細書において提供される方法または組成物のいずれか1つを必要とするものであってよい。
【0084】
「合成ナノキャリア(単数または複数)」とは、天然では見出されない個別の物体であって、サイズが5マイクロメートルより小さいか、またはこれと等しい、少なくとも1つの寸法を有するものを意味する。アルブミンナノ粒子は、一般に合成ナノキャリアとして含まれるが、しかし、ある態様においては、合成ナノキャリアは、アルブミンナノ粒子を含まない。態様において、合成ナノキャリアは、キトサンを含まない。他の態様において、合成ナノキャリアは、脂質ベースのナノ粒子ではない。さらなる態様において、合成ナノキャリアは、リン脂質を含まない。
【0085】
合成ナノキャリアは、これらに限定されないが、1つまたは複数の脂質ベースのナノ粒子(また本明細書において液体ナノ粒子、すなわち、それらの構造を構成する材料の大部分が脂質であるナノ粒子としても言及される)、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤ベースのエマルション、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤー、ウイルス様粒子(すなわち、主にウイルスの構造タンパク質からなるが、感染性ではないか、低い感染性を有する粒子)、ペプチドまたはタンパク質ベースの粒子(また本明細書において、タンパク質粒子、すなわち、それらの構造を構成する材料の大部分がペプチドもしくはタンパク質である粒子としても言及される)(アルブミンナノ粒子など)および/または脂質-ポリマーナノ粒子などのナノ材料の組み合わせを用いて開発されるナノ粒子であってもよい。合成ナノキャリアは、多様な異なる形状であってよく、これは、限定されないが、球体、立方状、錐体、長方形、円柱状、ドーナツ型などを含む。本発明による合成ナノキャリアは、1以上の表面を含む。本発明の実施における使用のために適応させることができる例示的な合成ナノキャリアは、以下を含む:(1)Grefらに対する米国特許5,543,158において開示される生分解性ナノ粒子、(2)Saltzmanらに対する米国特許出願公開20060002852のポリマーナノ粒子、(3)DeSimoneらに対する米国特許出願公開20090028910のリソグラフィーにより構築されるナノ粒子、(4)von Andrianらに対するWO 2009/051837の開示、(5)Penadesらに対する米国特許出願公開2008/0145441において開示されるナノ粒子、(6)de los Riosらに対する米国特許出願公開20090226525において開示されるタンパク質ナノ粒子、(7)Sebbelらに対する米国特許出願公開20060222652において開示されるウイルス様粒子、(8)Bachmannらに対する米国特許出願公開20060251677において開示される核酸結合ウイルス様粒子、(9)WO2010047839A1またはWO2009106999A2において開示されるウイルス様粒子、(10)P. Paolicelli et al., 「Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles」Nanomedicine. 5(6):843-853 (2010)において開示されるナノ沈殿させたナノ粒子、(11)米国公開2002/0086049において開示されるアポトーシス細胞、アポトーシス小体または合成もしくは半合成模倣物、あるいは(12)Look et al., Nanogel-based delivery of mycophenolic acid ameliorates systemic lupus erythematosus in mice」J. Clinical Investigation 123(4):1741-1749 (2013)のもの。
【0086】
約100nmと等しいかこれより小さい、好ましくは100nmと等しいかこれより小さい最小寸法を有する、本発明による合成ナノキャリアは、補体を活性化するヒドロキシル基を有する表面を含まないか、あるいは、補体を活性化するヒドロキシル基ではない部分から本質的になる表面を含む。好ましい態様において、約100nmと等しいかこれより小さい、好ましくは100nmと等しいかこれより小さい最小寸法を有する、本発明による合成ナノキャリアは、補体を実質的に活性化する表面を含まないか、あるいは、補体を実質的に活性化しない部分から本質的になる表面を含む。より好ましい態様において、約100nmと等しいかこれより小さい、好ましくは100nmと等しいかこれより小さい最小寸法を有する、本発明による合成ナノキャリアは、補体を活性化する表面を含まないか、あるいは、補体を活性化しない部分から本質的になる表面を含む。態様において、合成ナノキャリアは、ウイルス様粒子を除外する。態様において、合成ナノキャリアは、1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7より高い、または1:10より高いアスペクト比を有してもよい。
【0087】
「治療用タンパク質」とは、タンパク質の置き換えまたはタンパク質の補充のために用いられるものであってよい任意のタンパク質を意味する。治療用タンパク質として、これらに限定されないが、酵素、酵素補因子、ホルモン、血液凝固因子、サイトカイン、増殖因子などが挙げられる。他の治療用タンパク質の例は、本明細書において他の場所で提供される。
【0088】
「ウイルス導入ベクターの導入遺伝子」とは、細胞中に輸送するためにウイルス導入ベクターが用いられる核酸材料であって、一旦細胞中に入ると、発現して、本明細書において記載されるような治療的適用のための遺伝子発現産物を産生するものを指す。導入遺伝子は、エクソンスキッピング導入遺伝子であってよい。「発現される」または「発現」または類似のものは、導入遺伝子が細胞中に形質導入されて、形質導入された細胞によりプロセッシングされた後の、機能的(すなわち、所望される目的のために生理学的に活性な)遺伝子産物の合成を指す。かかる遺伝子産物はまた、本明細書において「導入遺伝子発現産物」としても言及される。発現された産物は、一般的に、導入遺伝子によりコードされた結果としてのタンパク質または核酸、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは治療用RNAである。
【0089】
「ウイルス導入ベクター」とは、本明細書において提供されるような導入遺伝子を送達するように適応させられたウイルスベクターを意味する。「ウイルスベクター」とは、導入遺伝子を送達するウイルス導入ベクターのウイルス成分の全てを指す。したがって、「ウイルス抗原」とは、カプシドまたはコートタンパク質などのウイルス導入ベクターのウイルス成分の抗原を指すが、導入遺伝子またはそれがコードする産物は指さない。「ウイルス導入ベクター抗原」とは、そのウイルス成分ならびに任意のタンパク質の導入遺伝子発現産物を含む、ウイルス導入ベクターの任意の抗原を指す。ウイルスベクターは、1以上の所望される核酸を細胞中に形質導入するように操作される。導入遺伝子は、エクソンスキッピング導入遺伝子であってよい。ウイルスベクターは、限定することなく、レトロウイルス(例えば、マウスレトロウイルス、トリレトロウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーヴェイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳房腫瘍ウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV))、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、アルファウイルスなどに基づくものであってよい。他の例は、本明細書において他の場所において提供されるか、当該分野において公知である。ウイルスベクターは、ウイルスの天然のバリアント、株、または血清型、例えば本明細書において提供されるもののいずれか1つに基づくものであってよい。ウイルスベクターはまた、分子進化を通して選択されるウイルスに基づくものであってよい。ウイルスベクターはまた、操作されたベクター、組み換えベクター、変異体ベクター、またはハイブリッドベクターであってよい。幾つかの態様において、ウイルスベクターは、「キメラウイルスベクター」である。かかる態様において、このことは、ウイルスベクターが、1種より多くのウイルスまたはウイルスベクターに由来するウイルス成分からなることを意味する。
【0090】
C.本発明の方法における使用のための組成物
上述のとおり、ウイルス導入ベクターに対する細胞性および体液性の免疫応答は、ウイルス導入ベクター治療剤の有効性に有害効果を与え得、それらの再投与を妨害し得、これが多くの患者について長期の処置を不可能にする。当該分野において証明されているとおり、ウイルス導入ベクターによる処置は、ウイルスによる導入の基礎となるウイルスへの以前の暴露に起因して、一部の患者については成功しないことが予測される。加えて、患者がウイルス導入ベクターに対する既存の免疫を有していなかったとしても、ウイルス導入ベクターの単回投与は、中和抗体の力価および/またはメモリーT細胞の活性化などの細胞性および体液性の免疫応答をもたらす可能性が高く、これが、再投与を不可能にするであろう。これらの問題をさらに複雑化するのは、ウイルス導入ベクター抗原の長期の持続性である。
【0091】
重要なことに、本明細書において提供される方法および組成物が、ウイルス導入ベクターに対する免疫応答を減弱化することにより、前述の障害を克服することを見出した。本明細書において提供される方法および組成物はまた、長期の免疫抑制を必要とすることなく、ウイルス導入ベクターの再投与を可能にし、ウイルス導入ベクターに対する持続性の寛容を提供することを見出した。したがって、本明細書において提供される方法および組成物は、ウイルス導入ベクターによる対象の処置のために有用である。ウイルス導入ベクターは、対象においてエクソンスキッピングを生じさせるための導入遺伝子を送達するために用いることができる。
【0092】
対象
対象は、エクソンスキッピングが有益となるであろう疾患または障害を有する対象であってよい。対象は、本明細書において提供される、ジストロフィーなどの、エクソンスキッピングの発生が有益となるであろう疾患または障害のいずれか1つを有していてよい。加えて、エクソンスキッピング導入遺伝子は、エクソンスキッピングの結果が利益を与えるであろう任意の内因性タンパク質の発現の間にエクソンスキッピングを発生させることができる剤をコードしていてもよい。かかるタンパク質の例は、本明細書において提供される疾患または障害、例えば本明細書において提供されるジストロフィーのいずれかに関連するタンパク質である。タンパク質は、本明細書において提供される治療用タンパク質のいずれか1つの内因性のバージョンであってもよい。
【0093】
治療用タンパク質の例として、これらに限定されないが、注入可能なまたは注射可能な治療用タンパク質、酵素、酵素補因子、ホルモン、血液または血液凝固因子、サイトカインおよびインターフェロン、増殖因子、アディポカインなどが挙げられる。
注入可能なまたは注射可能な治療用タンパク質の例として、例えば、トシリズマブ(Roche/Actemra(登録商標))、アルファ-1アンチトリプシン(Kamada/AAT)、Hematide(登録商標)(AffymaxおよびTakeda、合成ペプチド)、アルブインターフェロンアルファ-2b(Novartis/Zalbin(商標))、Rhucin(登録商標)(Pharming Group、C1阻害剤補充療法)、テサモレリン(Theratechnologies/Egrifta、合成成長ホルモン放出因子)、オクレリズマブ(Genentech、RocheおよびBiogen)、ベリムマブ(GlaxoSmithKline/Benlysta(登録商標))、ペグロチカーゼ(Savient Pharmaceuticals/Krystexxa(商標))、タリグルセラーゼアルファ(Protalix/Uplyso)、アガルシダーゼアルファ(Shire/Replagal(登録商標))、ならびにベラグルセラーゼアルファ(Shire)が挙げられる。
【0094】
酵素の例として、リゾチーム、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、アスパラギナーゼ、ウリカーゼ、グリコシダーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、ヘパリナーゼ、ヘパラナーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、溶解素およびリガーゼが挙げられる。酵素の他の例は、酵素補充療法のために用いられるものを含み、これは、限定されないが、イミグルセラーゼ(例えば、CEREZYME(商標))、a-ガラクトシダーゼA(a-gal A)(例えば、アガルシダーゼベータ、FABRYZYME(商標))、酸a-グルコシダーゼ(GAA)(例えば、アルグルコシダーゼアルファ、LUMIZYME(商標)、MYOZYME(商標))、およびアリールスルファターゼB(例えば、ラロニダーゼ、ALDURAZYME(商標)、イデュルスルファーゼ、ELAPRASE(商標)、アリールスルファターゼB、NAGLAZYME(商標))を含む。
【0095】
ホルモンの例として、メラトニン(N-アセチル-5-メトキシトリプタミン)、セロトニン、チロキシン(またはテトラヨードチロニン)(甲状腺ホルモン)、トリヨードチロニン(甲状腺ホルモン)、エピネフリン(またはアドレナリン)、ノルエピネフリン(またはノルアドレナリン)、ドパミン(またはプロラクチン阻害ホルモン)、ミュラー管阻害(antimullerian)ホルモン(またはミュラー管阻害因子(mullerian inhibiting factor)もしくはホルモン)、アディポネクチン、副腎皮質刺激ホルモン(またはコルチコトロピン)、アンギオテンシノーゲンおよびアンギオテンシン、抗利尿ホルモン(またはバソプレシン、アルギニンバソプレシン)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(またはアトリオペプチン)、カルシトニン、コレシストキニン、コルチコトロピン放出ホルモン、エリスロポエチン、卵胞刺激ホルモン、ガストリン、グレリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GIP、ゴナドトロピン放出ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト胎盤性ラクトゲン、成長ホルモン、インヒビン、インスリン、インスリン様増殖因子(またはソマトメジン)、レプチン、黄体化ホルモン、メラニン細胞刺激ホルモン、オレキシン、オキシトシン、副甲状腺ホルモン、プロラクチン、レラキシン、セクレチン、ソマトスタチン、トロンボポエチン、甲状腺刺激ホルモン(またはチロトロピン)、チロトロピン放出ホルモン、コルチゾール、アルドステロン、テストステロン、ジヒドロエピアンドステロンエピアンドロステロン、アンドロステンジオン、ジヒドロテストステロン、エストラジオール、エストロン、エストリオール、プロゲステロン、カルシトリオール(1,25-ジヒドロキシビタミンD3)、カルシジオール(25-ヒドロキシビタミンD3)、プロスタグランジン、ロイコトリエン、プロスタサイクリン、トロンボキサン、プロラクチン放出ホルモン、リポトロピン、脳性ナトリウム利尿ペプチド、ニューロペプチドY、ヒスタミン、エンドセリン、膵臓ポリペプチド、レニンおよびエンケファリンが挙げられる。
【0096】
血液または血液凝固因子の例として、第I因子(フィブリノーゲン)、第II因子(プロトロンビン)、組織因子、第V因子(プロアクセレリン、不安定因子)、第VII因子(安定因子、プロコンバーチン)、第VIII因子(抗血友病性グロブリン)、第IX因子(クリスマス因子または血漿トロンボプラスチン成分)、第X因子(スチュアート・プロワー因子)、第Xa因子、第XI因子、第XII因子(ハーゲマン因子)、第XIII因子(フィブリン安定化因子)、フォン・ヴィルブランド因子、フォン・ヘルデブラント因子、プレカリクレイン(フレッチャー因子)、高分子キニノーゲン(HMWK)(フィッツジェラルド因子)、フィブロネクチン、フィブリン、トロンビン、アンチトロンビンIIIなどのアンチトロンビン、ヘパリンコファクターII、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2-アンチプラスミン、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤-1(PAI1)、プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤-2(PAI2)、癌凝血原(cancer procoagulant)、およびエポエチンアルファ(Epogen、Procrit)が挙げられる。
サイトカインの例として、リンホカイン、インターロイキン、ならびにケモカイン、IFN-γ、TGF-βなどの1型サイトカイン、ならびにIL-4、IL-10およびIL-13などの2型サイトカインが挙げられる。
【0097】
増殖因子の例として、アドレノメデュリン(AM)、アンギオポエチン(Ang)、自己分泌型細胞運動刺激因子、骨形成タンパク質(BMP)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、上皮増殖因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、グリア細胞由来神経栄養因子受容体(GDNF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、増殖分化因子-9(GDF9)、肝細胞増殖因子(HGF)、肝細胞腫由来増殖因子(HDGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、遊走刺激因子、ミオスタチン(GDF-8)、神経増殖因子(NGF)および他のニューロトロフィン、血小板由来増殖因子(PDGF)、トロンボポエチン(TPO)、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGF-α)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)、血管内皮増殖因子(VEGF)、Wntシグナル伝達経路、胎盤増殖因子(PlGF)、[(ウシ胎仔ソマトトロフィン)](FBS)、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6およびIL-7が挙げられる。
アディポカインの例として、レプチンおよびアディポネクチンが挙げられる。
【0098】
治療用タンパク質のさらなる例として、これらに限定されないが、受容体、シグナル伝達タンパク質、細胞骨格タンパク質、足場タンパク質、転写因子、構造タンパク質、膜タンパク質、細胞質タンパク質、結合タンパク質、核タンパク質、分泌型タンパク質、ゴルジ体タンパク質、小胞体タンパク質、ミトコンドリアタンパク質、および小胞タンパク質などが挙げられる。
【0099】
疾患または障害の例として、これらに限定されないが、以下が挙げられる:リソソーム蓄積性疾患/障害、例えばSantavuori-Haltia病(小児性神経セロイドリポフスチン沈着症1型)、Jansky-Bielschowsky病(遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症、2型)、バッテン病(若年性神経セロイドリポフスチン症、3型)、クーフス病(神経セロイドリポフスチン症、4型)、フォン・ギールケ病(糖原病、Ia型)、糖原病、Ib型、ポンペ病(糖原病、II型)、フォーブス病またはコリ病(糖原病、III型)、ムコリピドーシスII(I-細胞病)、ムコリピドーシスIII(偽性ハーラー・ポリジストロフィー)、ムコリピドーシスIV(シアロリピドーシス(sialolipidosis))、シスチン症(成人非腎症性型)、シスチン症(小児性腎症性型)、シスチン症(若年性または青年性腎症型)、サラ病/小児型シアル酸蓄積障害、およびサポシン欠損;脂質およびスフィンゴ脂質分解の障害、例えばGM1ガングリオシドーシス(小児性、遅発型小児性/若年性、および成人型/慢性)、テイ・サックス病、サンドホフ病、GM2ガングリオシドーシス、Abバリアント、ファブリー病、ゴーシェ病、I、IIおよびIII型、異染性白質ジストロフィー、クラッベ病(早発型および遅発型)、ニーマン・ピック病、A、B、C1およびC2型、ファーバー病およびウォルマン病(コレステリルエステル蓄積症);ムコ多糖分解の障害、例えばハーラー症候群(MPSI)、シャイエ症候群(MPS IS)、ハーラー・シャイエ症候群(MPS IH/S)、ハンター症候群(MPS II)、サンフィリポA症候群(MPS IIIA)、サンフィリポB症候群(MPS IIIB)、サンフィリポC症候群(MPS IIIC)、サンフィリポD症候群(MPS IIID)、モルキオA症候群(MPS IVA)、モルキオB症候群(MPS IVB)、マロトー・ラミー症候群(MPS VI)、およびスライ症候群(MPS VII);糖タンパク質分解の障害、例えばアルファマンノース症、ベータマンノース症、フコシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症、ムコリピドーシスI(シアリドーシス)、ガラクトシアリドーシス、シンドラー病、およびII型シンドラー病/神崎病;ならびに白質ジストロフィー疾患/障害、例えば、無ベータリポ蛋白血症、新生児副腎白質ジストロフィー、カナバン病、脳腱黄色腫症、ペリツェウス・メルツバッヘル病、タンジール病、小児性レフサム病、および古典的レフサム病。
【0100】
本明細書において提供される対象の疾患/障害のさらなる例として、これらに限定されないが、以下が挙げられる:酸性マルターゼ欠損症(例えば、ポンペ病、糖原病2型、リソソーム蓄積症);カルニチン欠損症;カルニチンパルミチルトランスフェラーゼ欠損症;脱分枝酵素欠損症(例えば、コリ病またはフォーブス病、糖原病3型);乳酸デヒドロゲナーゼ欠損症(例えば、糖原病11型);ミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症;ホスホフルクトキナーゼ欠損症(例えば、垂井病、糖原病7型);ホスホグリセリン酸キナーゼ欠損症(例えば、糖原病9型);ホスホグリセリン酸ムターゼ欠損症(例えば、糖原病10型);ホスホリラーゼ欠損症(例えば、マッカードル病、筋ホスホリラーゼ欠損症、糖原病5型);ゴーシェ病(例えば、染色体1、酵素グルコセレブロシダーゼが影響を受ける);軟骨無形成症(例えば、染色体4、線維芽細胞増殖因子受容体3が影響を受ける);ハンチントン病(例えば、染色体4、ハンチンチン);ヘモクロマトーシス(例えば、染色体6、HFEタンパク質);嚢胞性線維症(例えば、染色体7、CFTR);フリートライヒ運動失調症(染色体9、フラタキシン);ベスト病(染色体11、VMD2);鎌状赤血球症(染色体11、ヘモグロビン);フェニルケトン尿症(染色体12、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ);マルファン症候群(染色体15、フィブリリン);筋緊張性ジストロフィー(染色体19、筋緊張性ジストロフィータンパク質キナーゼ);副腎白質ジストロフィー(X染色体、ペルオキシソーム中のリグノセロイル-CoAリガーゼ);デュシェンヌ筋ジストロフィー(X染色体、ジストロフィン);レット症候群(X染色体、メチルCpG結合タンパク質2);レーベル遺伝性視神経症(ミトコンドリア、呼吸器タンパク質);ミトコンドリア脳症、乳酸アシドーシスおよび脳卒中(MELAS)(ミトコンドリア、トランスファーRNA);ならびに尿素回路の酵素欠損。
【0101】
かかる疾患または障害のなおさらなる例として、これらに限定されないが、鎌状赤血球貧血、筋細管ミオパチー、血友病B、リポタンパク質リパーゼ欠損症、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、クリグラー・ナジャー症候群、ムコリピドーシスIV、ニーマン・ピック病A、サンフィリポA、サンフィリポB、サンフィリポC、サンフィリポD、b-地中海貧血症およびデュシェンヌ型筋ジストロフィーが挙げられる。疾患または障害のなおさらなる例として、脂質およびスフィンゴ脂質分解、ムコ多糖分解、糖タンパク質分解における欠損の結果であるもの、白質ジストロフィーなどが挙げられる。
【0102】
エクソンスキッピング剤は、本明細書において提供される疾患または障害のいずれか1つの欠損タンパク質の内因性の発現の間にエクソンスキッピングを生じさせることが望ましい場合があり、かかる剤は、導入遺伝子によりコードされていてもよい。タンパク質もまた、筋ホスホリラーゼ、グルコセレブロシダーゼ、線維芽細胞増殖因子受容体3、ハンチンチン、HFEタンパク質、CFTR、フラタキシン、VMD2、ヘモグロビン、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、フィブリリン、筋強直性ジストロフィータンパク質キナーゼ、リグノセロイル-CoAリガーゼ、ジストロフィン、メチルCpG結合タンパク質2、ベータヘモグロビン、ミオチューブラリン、カテプシンA、第IX因子、リポタンパク質リパーゼ、ベータガラクトシダーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、イズロン酸-2-スルファターゼ、酸性アルファグルコシダーゼ、UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ1-1、GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ、GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ、ムコリピン(Mucolipin)-1、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、ライソゾーム酸性リパーゼ、アルファ-L-イズロニダーゼ、ヘパランN-スルファターゼ、アルファ-N-アセチルグルコサミニダーゼ、アセチル-CoAアルファ-グルコサミニドアセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼ、N-アセチルガラクトサミン-6スルファターゼ、アルファ-マンノシダーゼ、アルファ-ガラクトシダーゼA、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子および呼吸器タンパク質を含むということになる。
【0103】
さらなる例として、タンパク質はまた、以下に関連するものを含む:脂質およびスフィンゴ脂質分解の障害(例えば、β-ガラクトシダーゼ-1、β-ヘキソサミニダーゼA、β-ヘキソサミニダーゼAおよびB、GM2アクチベータータンパク質、8-ガラクトシダーゼA、グルコセレブロシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、アリールスルファターゼA、ガラクトシルセラミダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、NPC1、HE1タンパク質(コレステロール輸送の欠陥)、酸性セラミダーゼ、ライソゾーム酸性リパーゼ);ムコ多糖分解の障害(例えば、L-イズロニダーゼ、L-イズロニダーゼ、L-イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、ヘパランN-スルファターゼ、N-アセチルグルコサミニダーゼ、アセチル-CoA-グルコサミニダーゼ、アセチルトランスフェラーゼ、アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ、ガラクトサミン-6-スルファターゼ、アリールスルファターゼB、グルクロニダーゼ);糖タンパク質分解の障害(例えば、マンノシダーゼ、マンノシダーゼ、l-フコシダーゼ、アスパルチルグルコサミニダーゼ、ノイラミニダーゼ、リソソーム保護タンパク質、リソソーム8-N-アセチルガラクトサミニダーゼ、リソソーム8-N-アセチルガラクトサミニダーゼ);リソソーム蓄積障害(例えば、パルミトイル-タンパク質チオエステラーゼ、少なくとも4種のサブタイプ、リソソーム膜タンパク質、未知、グルコース-6-ホスファターゼ、グルコース-6-ホスファートトランスロカーゼ、酸性マルターゼ、脱分枝酵素アミロ-1,6グルコシダーゼ、N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ、ガングリオシドシアリダーゼ(ノイラミニダーゼ)、リソソームシステイン輸送タンパク質、リソソームシステイン輸送タンパク質、リソソームシステイン輸送タンパク質、シアル酸輸送タンパク質サポニンA、B、C、D)および白質ジストロフィー(例えば、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質/アポリポタンパク質B、ペルオキシソーム膜輸送タンパク質、ペルオキシン、アスパルトアシラーゼ、ステロール-27-ヒドロキシラーゼ、プロテオリピドタンパク質、ABC1トランスポーター、ペルオキシソーム膜タンパク質3またはペルオキシソーム新生因子1、フィタン酸オキシダーゼ)。
【0104】
エクソンスキッピング導入遺伝子は、エクソンスキッピングをもたらし得る剤をコードし、かかる剤はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、エクソン内のスプライス部位または調節エレメントに干渉して、遺伝子変異の存在に関わらず部分的に機能的な、短縮されたタンパク質をもたらすことができる。加えて、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、変異特異的であってもよく、メッセンジャーRNA前駆体中の変異部位に結合してエクソンスキッピングを誘導することができる。エクソンスキッピングのためのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、当該分野において公知であり、一般に、AONと称される。かかるAONは、snRNAを含む。アンチセンスオリゴヌクレオチド、それらを設計する方法および関連する作製方法の例は、例えば、米国公開番号20150225718、20150152415、20150140639、20150057330、20150045415、20140350076、20140350067および20140329762において見出すことができ、それらのAON、ならびに記載される関連する方法、例えばAONを設計および作製する方法は、その全体において本明細書において参考として援用される。
【0105】
本明細書において提供される方法のいずれか1つは、それを必要とする対象の細胞においてエクソンスキッピングをもたらすために用いることができる。対象は、エクソンスキッピングが利益をもたらすであろう任意の疾患または障害を有していてよく、かかる疾患または障害に関連する適切な(その発現の間のエクソンスキッピングが有益であろう)タンパク質に基づいて、アンチセンスオリゴヌクレオチドを設計することができる。疾患および障害ならびに関連するタンパク質の例は、本明細書において提供される。本明細書において提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様において、対象は、筋ジストロフィー(例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィー)などの本明細書において記載されるジストロフィーのいずれか1つを有する。したがって、本明細書において提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様において、エクソンスキッピング導入遺伝子は、本明細書において提供されるジストロフィーのいずれか1つと関連する本明細書において提供されるタンパク質のいずれか1つにおいてエクソンスキッピングをもたらすことができる、アンチセンスオリゴヌクレオチドをコードする。本明細書において提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ジストロフィンにおいてエクソンスキッピングをもたらすことができる。
【0106】
導入遺伝子の配列はまた、発現制御配列を含んでもよい。発現制御DNA配列は、プロモーター、エンハンサーおよびオペレーターを含み、一般に、発現コンストラクトが利用されるべき発現系に基づいて選択される。幾つかの態様において、プロモーターおよびエンハンサー配列は、遺伝子発現を増大する能力のために選択され、一方、オペレーター配列は、遺伝子発現を調節する能力のために選択され得る。導入遺伝子はまた、宿主細胞中での相同組み換えを容易にする、および好ましくは促進する、配列を含んでもよい。導入遺伝子はまた、宿主細胞中での複製のために必要である配列を含んでもよい。
【0107】
例示的な発現制御配列は、プロモーター配列、例えば、サイトメガロウイルスプロモーター;ラウス肉腫ウイルスプロモーター;およびサルウイルス40プロモーター;ならびに本明細書において他の場所で開示されるか当該分野において他に公知の任意の他の型のプロモーターを含む。一般に、プロモーターは、所望される発現産物をコードする配列の上流(すなわち5’)で作動的に連結される。導入遺伝子はまた、コード配列の下流で作動的に連結された(すなわち3’)好適なポリアデニル化配列(例えば、SV40またはヒト成長ホルモン遺伝子ポリアデニル化配列)を含んでもよい。
【0108】
ウイルスベクター
ウイルスは、それらが感染する細胞の内部でそれらのゲノムを輸送するために特化した機構を進化させてきた;かかるウイルスに基づくウイルスベクターは、特別な用途のために細胞に形質移入するように仕立てることができる。本明細書において提供されるとおり用いることができるウイルスベクターの例は、当該分野において公知であるか、本明細書において記載される。好適なウイルスベクターとして、例えば、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスウイルス(HSV)に基づくベクター、アデノウイルスに基づくベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)に基づくベクター、およびAAV-アデノウイルスキメラベクターが挙げられる。
【0109】
本明細書において提供されるウイルス導入ベクターは、レトロウイルスに基づくものであってもよい。レトロウイルスは、広範な宿主細胞に感染することができる一本鎖ポジティブ・センスRNAウイルスである。感染すると、レトロウイルスゲノムは、そのRNAゲノムからDNAを生成するためにそれ自身の転写酵素を用いて、その宿主細胞のゲノム中に組み込まれる。ウイルスDNAが、次いで、ウイルスおよび宿主の遺伝子を翻訳および転写する宿主細胞DNAと共に複製される。レトロウイルスベクターは、ウイルス複製能力を失うように操作することができる。したがって、レトロウイルスベクターは、in vivoでの安定な遺伝子導入のために特に有用であると考えられる。レトロウイルスベクターの例は、例えば、米国公開番号20120009161、20090118212および20090017543において見出すことができ、そのウイルスベクターおよびそれらの作製の方法は、本明細書においてその全体において参考として援用される。
【0110】
レンチウイルスベクターは、本明細書において提供されるウイルス導入ベクターの作製のために用いることができるレトロウイルスベクターの例である。レンチウイルスは、非分裂細胞に感染する能力を有し、これは、遺伝子送達ベクターのより効率的な方法を構成する特性である(例えば、Durand et al., Viruses. 2011 Feb; 3(2):132-159を参照)。レンチウイルスの例として、HIV(ヒト)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)およびビスナウイルス(ヒツジレンチウイルス)が挙げられる。他のレトロウイルスとは異なり、HIVに基づくベクターは、それらのパッセンジャー遺伝子を非分裂細胞中に組み込むことが知られている。レンチウイルスベクターの例は、例えば、米国公開番号20150224209、20150203870、20140335607、20140248306、20090148936および20080254008において見出すことができ、そのウイルスベクターおよびそれらの作製の方法は、本明細書においてその全体において参考として援用される。
【0111】
単純ヘルペスウイルス(HSV)に基づくウイルスベクターもまた、本明細書において提供される使用のために好適である。多くの複製欠損HSVベクターは、複製を防止するために、1以上のintermediate-early遺伝子を取り除く欠失を含む。ヘルペスベクターの利点は、潜伏期に入る能力により長期のDNA発現をもたらすことができること、および大きなウイルスDNAゲノムにより25kbまでの外来DNAを収容することができることである。HSVに基づくベクターの記載については、例えば、米国特許第5,837,532号、同第5,846,782号、同第5,849,572号および同第5,804,413号、ならびに国際特許出願WO 91/02788、WO 96/04394、WO 98/15637およびWO 99/06583を参照;そのウイルスベクターおよびそれらの作製の方法の記載は、その全体において参考として援用される。
【0112】
アデノウイルス(Ad)は、多様な異なる標的細胞型にin vivoでDNAを導入することができる無エンベロープウイルスである。ウイルスは、ウイルス複製のために必要とされる選択遺伝子を欠失させることにより、複製欠損にすることができる。より大きなDNAインサートのためのさらなる余地を可能にするために、犠牲にしてもよい複製に必須でないE3領域もまた頻繁に欠失させられる。ウイルス導入ベクターは、アデノウイルスに基づいていてもよい。アデノウイルス導入ベクターは、高い力価において作製することができ、DNAを複製中および非複製中の細胞に効率的に導入することができる。レンチウイルスとは異なり、アデノウイルスDNAは、ゲノム中には組み込まれず、したがって、細胞分裂の間には複製せず、その代わりに、それらは宿主細胞の核内で、宿主の複製機構を用いて複製する。
【0113】
ウイルス導入ベクターの基礎となるアデノウイルスは、任意の起源、任意のサブグループ、任意のサブタイプ、サブタイプの混合物、または任意の血清型からのものであってよい。例えば、アデノウイルスは、サブグループA(例えば、血清型12、18および31)、サブグループB(例えば、血清型3、7、11、14、16、21、34、35および50)、サブグループC(例えば、血清型1、2、5および6)、サブグループD(例えば、血清型8、9、10、13、15、17、19、20、22~30、32、33、36~39および42~48)、サブグループE(例えば、血清型4)、サブグループF(例えば、血清型40および41)、未分類の血清群(例えば、血清型49および51)、または任意の他のアデノウイルス血清型のものであってよい。アデノウイルス血清型1~51は、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas, Va.)から入手可能である。非C群アデノウイルス、および非ヒトアデノウイルスですら、複製欠損アデノウイルスベクターを調製するために用いることができる。非C群アデノウイルスベクター、非C群アデノウイルスベクターを作製する方法、および非C群アデノウイルスベクターを用いる方法は、例えば、米国特許第5,801,030号、同第5,837,511号および同第5,849,561号、ならびに国際特許出願WO 97/12986およびWO 98/53087において開示される。任意のアデノウイルス、キメラアデノウイルスですら、アデノウイルスベクターのためのウイルスゲノムのソースとして用いることができる。例えば、ヒトアデノウイルスを、複製欠損アデノウイルスベクターのためのウイルスゲノムのソースとして用いることができる。アデノウイルスベクターのさらなる例は、米国公開番号20150093831、20140248305、20120283318、20100008889、20090175897および20090088398において見出すことができ、そのウイルスベクターおよびそれらの作製の方法の記載は、その全体において参考として援用される。
【0114】
本明細書において提供されるウイルス導入ベクターはまた、アデノ随伴ウイルス(AAV)に基づいていてもよい。AAVベクターは、本明細書において記載されるもののような治療的適用における使用のために、特に関心を集めて来た。AAVは、ヒト疾患を引き起こすことは知られていないDNAウイルスである。一般に、AAVは、効率的な複製のために、ヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルスまたはヘルペスウイルス)との共感染またはヘルパー遺伝子の発現を必要とする。AAVは、宿主細胞ゲノムに特定の部位において安定に感染する能力を有し、それにより、レトロウイルスより予測可能である;しかし、一般に、ベクターのクローニング能力は4.9kbである。遺伝子治療の適用において用いられてきたAAVベクターは、一般に、DNA複製およびパッケージングのための認識シグナルを含む末端反復(ITR)のみが残るように、親ゲノムの約96%を欠失している。AAVに基づくベクターの記載については、例えば、米国特許第8,679,837号、同第8,637,255号、同第8,409,842号、同第7,803,622号および同第7,790,449、ならびに米国公開番号20150065562、20140155469、20140037585、20130096182、20120100606および20070036757を参照;そのウイルスベクターおよびそれらの作製の方法は、本明細書においてその全体において参考として援用される。AAVベクターは、組み換えAAVベクターであってよい。AAVベクターはまた、自己相補的(sc)AAVベクターであってよく、これは、例えば、米国特許公開2007/01110724および2004/0029106、ならびに米国特許第7,465,583号および同第7,186,699号において記載され、ベクターおよびその作製の方法は、本明細書において参考として援用される。
【0115】
ウイルス導入ベクターの基礎となるアデノ随伴ウイルスは、任意の血清型または血清型の混合物のものであってよい。AAV血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10およびAAV11を含む。例えば、ウイルス導入ベクターが血清型の混合物に基づく場合、ウイルス導入ベクターは、AAV血清型の1つ(例えばAAV血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10および11のいずれか1つから選択される)から取得されるカプシドシグナル配列、ならびに異なる血清型(例えばAAV血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10および11のいずれか1つから選択される)からのパッケージング配列を含んでもよい。したがって、本明細書において提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様において、AAVベクターは、AAV 2/8ベクターである。本明細書において提供される方法または組成物のいずれか1つの他の態様において、AAVベクターは、AAV 2/5ベクターである。
【0116】
本明細書において提供されるウイルス導入ベクターはまた、アルファウイルスに基づいていてもよい。アルファウイルスとして、シンドビス(およびVEEV)ウイルス、アウラ(Aura)ウイルス、ババンキ(Babanki)ウイルス、バーマフォレストウイルス、ベバル(Bebaru)ウイルス、カバソウ(Cabassou)ウイルス、チクングニアウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、エバーグレード(Everglades)ウイルス、フォートモーガン(Fort Morgan)ウイルス、ゲタウイルス、ハイランドJ(Highlands J)ウイルス、キジラガチ(Kyzylagach)ウイルス、マヤロウイルス、メトリ(Me Tri)ウイルス、ミデルバーグ(Middelburg)ウイルス、モッソダスペドラス(Mosso das Pedras)ウイルス、ムカンボウイルス、ヌドゥムウイルス、オニョンニョンウイルス、ピクスナウイルス、リオネグロウイルス、ロスリバーウイルス、サケ膵臓病ウイルス、セムリキ森林ウイルス、南部ゾウアザラシ(Southern elephant seal)ウイルス、トナテ(Tonate)ウイルス、トロカラ(Trocara)ウイルス、ウナウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、およびワタロアウイルスが挙げられる。一般に、かかるウイルスのゲノムは、宿主細胞の細胞質中で翻訳されることができる、非構造タンパク質(例えばレプリコン)および構造タンパク質(例えば、カプシドおよびエンベロープ)をコードする。ロスリバーウイルス、シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス(SFV)、およびベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)は全て、導入遺伝子送達のためのウイルス導入ベクターを開発するために用いられてきた。シュードタイプウイルスは、アルファウイルスのエンベロープ糖タンパク質とレトロウイルスのカプシドとを組み合わせることにより形成させることができる。アルファウイルスベクターの例は、米国公開番号20150050243、20090305344および20060177819において見出すことができ;ベクターおよびそれらの作製の方法は、その全体において本明細書において参考として援用される。
【0117】
抗原提示細胞標的免疫抑制剤
抗原提示細胞標的免疫抑制剤は、それらの形態および特徴のおかげでAPC免疫寛容原性効果をもたらすことができる剤を含んでもよい。抗原提示細胞標的免疫抑制剤はまた、免疫抑制剤が共役するキャリアを含む剤を含む。
【0118】
抗原提示細胞標的免疫抑制剤は、米国公開番号20150010631において記載されるもののような特定のサイズおよびゼータ電位の、ポリスチレン、PLGAまたはダイアモンド粒子などの、負に荷電した粒子を含み、かかる粒子およびそれらの生成のための方法の記載は、本明細書において参考として援用される。かかる粒子は、任意の粒子の形状または立体構造を有していてよい。しかし、いくつかの態様においては、in vivoで凝集する可能性が低い粒子を使用することが好ましい。一態様において、これらの粒子は、球状の形状を有する。一般に、かかる粒子は、サイズについて均質である必要はないが、かかる粒子は、一般に、抗原提示細胞または他のMPS細胞における食作用を引き起こすために十分なサイズのものでなければならない。好ましくは、これらの粒子は、可溶性を増強し、in vivoでの凝集により引き起こされる複雑化を回避し、飲作用を促進するために、マイクロスケールまたはナノスケールのサイズである。
【0119】
これらの粒子は、約0.1μm~約10μm、約0.2μm~約2μm、約0.3μm~約5μm、または約0.5μm~約3μmの平均直径であってよい。幾つかの態様において、これらの粒子は、約0.1μm、約0.2μm、約0.3μm、約0.4μm、約0.5μm、約1.0μm、約1.5μm、約2.0μm、約2.5μm、約3.0μm、約3.5μm、約4.0μm、約4.5μm、または約5.0μmの平均直径を有していてよい。これらの粒子は、均一な直径のものである必要はなく、医薬処方物は、粒子サイズの混合物を有する複数の粒子を含んでもよい。
【0120】
幾つかの態様において、これらの粒子は、非金属である。これらの態様において、これらの粒子は、ポリマーから形成されていてもよい。好ましい態様において、これらの粒子は、生分解性である。好適な粒子の例として、ポリスチレン粒子、PLGA粒子、PLURONICS安定化硫化ポリプロピレン粒子、およびダイアモンド粒子が挙げられる。加えて、これらの粒子は、広範な他の材料から形成させることができる。例えば、これらの粒子は、ガラス、シリカ、ヒドロキシカルボン酸のポリエステル、ジカルボン酸のポリ無水物、またはヒドロキシカルボン酸とジカルボン酸のコポリマーからなっていてもよい。より一般的に、これらの粒子は、米国公開番号20150010631において記載されるような他の材料からなっていてもよい。
【0121】
粒子は、一般に、特定のゼータ電位を有する。態様において、ゼータ電位は負である。ゼータ電位は、約-100mVより低いかまたは約-50mVより低くてもよい。態様において、粒子は、-100mVと0mVとの間、-75mVと0mVとの間、-60mVと0mVとの間、-50mVと0mVとの間、-40mVと0mVとの間、-30mVと0mVとの間、-20mVと+0mVとの間、-10mVと-0mVとの間、-100mVと-50mVとの間、-75mVと-50mVとの間、または-50mVと-40mVとの間のゼータ電位を有する。
別の態様において、これらの粒子はまた、本明細書において提供される1以上の抗原を含む。これらの態様のいくつかにおいて、1以上の抗原は、粒子中に封入されている。
【0122】
抗原提示細胞標的免疫抑制剤の別の例は、ナノ結晶性形態の免疫抑制剤であり、これにより、免疫抑制剤の形態自体が、粒子または粒子様となる。これらの態様において、かかる形態は、ウイルスまたは他の外来病原体を模倣する。多くの薬物が、ナノサイズ化されてきており、かかる薬物形態を製造する適切な方法は、当業者には公知であろう。ナノ結晶性ラパマイシンなどの薬物ナノ結晶は、当業者には公知である(Katteboinaa et al., 2009, International Journal of PharmTech Resesarch;第1巻、第3号;pp682-694)。本明細書において用いられる場合、「薬物ナノ結晶」とは、キャリアまたはマトリックス材料を含まない薬物(例えば免疫抑制剤)の形態を指す。幾つかの態様において、薬物ナノ結晶は、90%、95%、98%または99%またはそれより多い薬物を含む。薬物ナノ結晶を製造するための方法として、限定することなく、製粉、高圧均質化、沈殿、スプレー乾燥、超臨界溶液の急速膨張(rapid expansion of supercritical solution)(RESS)、Nanoedge(登録商標)技術(Baxter Healthcare)、およびNanocrystal Technology(商標)(Elan Corporation)が挙げられる。幾つかの態様において、薬物ナノ結晶の立体的または静電気的安定性のために界面活性剤または安定化剤を用いてもよい。幾つかの態様において、免疫抑制剤のナノ結晶またはナノ結晶性形態は、免疫抑制剤、特に不溶性または不安定な免疫抑制剤の、可溶性、安定性、および/またはバイオアベイラビリティーを増大するために用いることができる。
【0123】
抗原提示細胞標的免疫抑制剤はまた、アポトーシス小体模倣物であってもよく、関連する抗原の寛容化を引き起こしてもよい。かかる模倣物は、米国公開番号20120076831において記載され、その模倣物およびその製造の方法は、本明細書において参考として援用される。アポトーシス小体模倣物は、粒子、ビーズ、分枝ポリマー、デンドリマーまたはリポソームであってよい。好ましくは、模倣物は粒子状であり、一般に、球状(spherical)、楕円体状、桿状、球状(globular)または多角体状の形状である。あるいは、しかし、模倣物は、不規則または分枝状の形状のものであってもよい。好ましい態様において、模倣物は、生分解性の材料からなる。一般に正味の負の電荷を帯びている細胞表面への非特異的結合を軽減するために、模倣物が、正味の中性または陰性の電荷を有することが、さらに好ましい。好ましくは、模倣物の表面は、非特異的な、または望ましくない生物学的相互作用を最少化する材料からなる。粒子である場合、模倣物の表面を、非特異的な相互作用を防止または軽減する材料でコーティングしてもよい。粒子を、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、およびそのコポリマー、例えばPLURONICS(ポリ(エチレングリコール)-bl-ポリ(プロピレングリコール)-bl-ポリ(エチレングリコール)のコポリマーを含む)などの親水層でコーティングすることによる立体安定化により、間質のタンパク質との非特異的相互作用を軽減することができる。
【0124】
粒子である場合、模倣物は、ガラス、シリカ、ヒドロキシカルボン酸のポリエステル、ジカルボン酸のポリ無水物、またはヒドロキシカルボン酸とジカルボン酸とのコポリマーからなる粒子であってもよい。これらの模倣物は、量子ドットであっても、または量子ドットポリスチレン粒子などの量子ドットからなるものであってもよい。これらの模倣物は、ポリグリコール酸ポリマー(PGA)、ポリ乳酸ポリマー(PLA)、ポリセバシン酸ポリマー(PSA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)コポリマー(PLGA)、ポリ(乳酸-コ-セバシン酸)コポリマー(PLSA)、ポリ(グリコール酸-コ-セバシン酸)コポリマー(PGSA)などを含む材料を含んでもよい。模倣物はまた、ポリスチレンビーズであってもよい。
【0125】
これらの模倣物は、1以上の抗原を含んでもよい。模倣物は、直接的または間接的に、寛容が所望される1以上の抗原と共役することができてもよい。いくつかの例において、模倣物は、複数のコピーの暴露される抗原を有し、免疫寛容原性応答の可能性を増大するために、複数の結合部位を有するであろう。模倣物は、その表面上に1つの抗原を有していても、表面上に複数の異なる抗原を有していてもよい。あるいは、しかし、模倣物は、共役部分が、化学結合を形成することなく吸着することができる表面を有していてもよい。
【0126】
幾つかの態様において、模倣物はまた、アポトーシスシグナル分子を含んでもよいが、これは、ポリスチレンビーズを用いる場合などには、必ずしも必要ではない。アポトーシスシグナル分子として、これらに限定されないが、米国公開番号20050113297において記載されるアポトーシスシグナル分子が挙げられ、このアポトーシスシグナル分子は、本明細書において参考として援用される。これらの粒子における使用のために好適な分子として、貪食細胞を標的とする分子が挙げられ、これは、マクロファージ、樹状細胞、単球および好中球を含む。かかる分子は、トロンボスポンジンまたはアネキシンIであってよい。
【0127】
抗原提示細胞標的免疫抑制剤はまた、米国公開番号20120039989において記載されるもののような赤血球結合治療剤であってもよく、この治療剤およびその製造の方法は、本明細書において参考として援用される。記載されるように、赤血球(erythrocytes)(赤血球(red blood cells)としても知られる)に特異的に結合するペプチドが発見されている。これらのペプチドは、血液中に存在する他の因子の存在下においてすら、赤血球に特異的に結合し、免疫寛容をもたらすために用いることができる。したがって、赤血球結合治療剤は、寛容が所望される1以上の抗原、および赤血球アフィニティーリガンドを含む。1以上の抗原は、1以上のウイルス抗原(例えば、1以上のウイルスカプシドタンパク質のもの)などの、本明細書において記載されるウイルス導入ベクター抗原であってもよい。また、1以上の抗原はまた、提供されるような発現された導入遺伝子の1以上の抗原であっても、またはこれを含んでもよい。抗原は、混合物を形成してもよく、これに対して寛容が所望される。
【0128】
赤血球に特異的に結合するペプチドの例として、ERY1、ERY19、ERY59、ERY64、ERY123、ERY141およびERY162が挙げられる。赤血球に結合するペプチドに加えて、抗体、例えば単鎖抗体、およびその抗原結合フラグメントなどのタンパク質もまた、アフィニティーリガンドとして用いることができる。アフィニティーリガンドはまた、赤血球表面成分に対するヌクレオチドアプタマーリガンドを含んでもよい。したがって、他の赤血球アフィニティーリガンドの代わりにアプタマーを作製して用いてもよい。DNAおよびRNAアプタマーは、非共有的赤血球結合を提供するために用いることができる。アプタマーは、DNAアプタマー、RNAアプタマーまたはペプチドアプタマーとして分類することができる。加えて、アフィニティーリガンドは、赤血球結合ペプチドなどの、2以上のアフィニティーリガンドの融合物であってもよい。さらに、赤血球結合治療剤の成分は、ポリマーソーム(polymersome)、リポソームまたはミセルまたはいくつかの型のナノ粒子などのキャリアと結合していてもよい。幾つかの態様において、成分は、かかるキャリア中に封入される。幾つかの態様において、キャリアは、本明細書において記載されるアフィニティーリガンド、および1以上の抗原を含む。かかる態様において、アフィニティーリガンドおよび1以上の抗原は、必ずしも互いに共役している必要はない。
【0129】
抗原提示細胞標的免疫抑制剤はまた、APCを標的とするキャリアと共役した、本明細書において提供される免疫抑制剤のいずれか1つを含む。キャリアは、いくつかの態様において、APCマーカーに特異的な抗体またはその抗原結合フラグメント(または何らかの他のリガンド)であってよい。かかるマーカーとして、これらに限定されないが、以下が挙げられる:CD1a(R4、T6、HTA-1);CD1b(R1);CD1c(M241、R7);CD1d(R3);CD1e(R2);CD11b(αMインテグリン鎖、CR3、Mo1、C3niR、Mac-1);CD11c(αXインテグリン、p150、95、AXb2);CDw117(ラクトシルセラミド、LacCer);CD19(B4);CD33(gp67);CD35(CR1、C3b/C4b受容体);CD36(GpIIIb、GPIV、PASIV);CD39(ATPデヒドロゲナーゼ、NTPデヒドロゲナーゼ-1);CD40(Bp50);CD45(LCA、T200、B220、Ly5);CD45RA;CD45RB;CD45RC;CD45RO(UCHL-1);CD49d(VLA-4α、α4インテグリン);CD49e(VLA-5α、α5インテグリン);CD58(LFA-3);CD64(FcγRI);CD72(Ly-19.2、Ly-32.2、Lyb-2);CD73(Ecto-5’ヌクレオチダーゼ);CD74(Ii、不変鎖);CD80(B7、B7-1、BB1);CD81(TAPA-1);CD83(HB15);CD85a(ILT5、LIR3、HL9);CD85d(ILT4、LIR2、MIR10);CD85j(ILT2、LIR1、MIR7);CD85k(ILT3、LIR5、HM18);CD86(B7-2/B70);CD88(C5aB);CD97(BL-KDD/F12);CD101(IGSF2、P126、V7);CD116(GM-CSFRα);CD120a(TMFRI、p55);CD120b(TNFRII、p75、TNFR p80);CD123(IL-3Rα);CD139;CD148(HPTP-η、p260、DEP-1);CD150(SLAM、IPO-3);CD156b(TACE、ADAM17、cSVP);CD157(Mo5、BST-1);CD167a(DDR1、trkE、cak);CD168(RHAMM、IHABP、HMMR);CD169(シアロアドヘシン、Siglec-1);CD170(Siglec-5);CD171(L1CAM、NILE);CD172(SIRP-1α、MyD-1);CD172b(SIRPβ);CD180(RP105、Bgp95、Ly64);CD184(CXCR4、NPY3R);CD193(CCR3);CD196(CCR6);CD197(CCR7(ws CDw197));CDw197(CCR7、EBI1、BLR2);CD200(OX2);CD205(DEC-205);CD206(MMR);CD207(ランゲリン(Langerin));CD208(DC-LAMP);CD209(DC-SIGN);CDw218a(IL18Rα);CDw218b(IL8Rβ);CD227(MUC1、PUM、PEM、EMA);CD230(プリオンタンパク質(PrP));CD252(OX40L、TNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー4);CD258(LIGHT、TNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー14);CD265(TRANCE-R、TNF-Rスーパーファミリー、メンバー11a);CD271(NGFR、p75、TNFRスーパーファミリー、メンバー16);CD273(B7DC、PDL2);CD274(B7H1、PDL1);CD275(B7H2、ICOSL);CD276(B7H3);CD277(BT3.1、B7ファミリー:ブチロフィリン3);CD283(TLR3、TOLL様受容体3);CD289(TLR9、TOLL様受容体9);CD295(LEPR);CD298(ATP1B3、Na K ATPaseβ3サブユニット);CD300a(CMRF-35H);CD300c(CMRF-35A);CD301(MGL1、CLECSF14);CD302(DCL1);CD303(BDCA2);CD304(BDCA4);CD312(EMR2);CD317(BST2);CD319(CRACC、SLAMF7);CD320(8D6);およびCD68(gp110、マクロシアリン);MHCクラスII;BDCA-1;およびSiglec-H。抗体-薬物コンジュゲートを調製するための方法は、米国公開番号20150231241において見出すことができ、その方法は、本明細書において参考として援用される。他の方法は、当業者に公知である。
【0130】
抗原提示細胞標的免疫抑制剤はまた、本明細書において記載される免疫抑制剤のいずれか1つを含む合成ナノキャリアであってもよい。かかる合成ナノキャリアは、米国公開番号20100151000のものを含み、その合成ナノキャリアおよびそれらの作製の方法は、本明細書において参考として援用される。記載されるとおり、NF-κB阻害剤と抗原との両方を含む粒子(例えばリポソームまたはポリマー粒子)を投与することにより、in vivoで免疫寛容原性応答をもたらすことができることが見出された。したがって、NF-κB経路の阻害剤と1以上のウイルス導入ベクター抗原とを含む粒子は、本明細書において提供されるような抗原提示細胞標的免疫抑制剤として用いることができる。幾つかの態様において、粒子は、リポソームのものである。他の態様において、粒子は、金属粒子(例えば、タングステン、金、白金またはイリジウム粒子)などのキャリア粒子を含む。なお他の態様において、粒子は、ポリマーマトリックスまたはキャリアを含み、その代表的な例は、生分解性ポリマー粒子(例えばポリ(ラクチド-コ-グリコリド)から製造される粒子)を含む。なお他の態様において、粒子は、セラミックまたは無機のマトリックスまたはキャリアを含む。
【0131】
NF-κB経路の阻害剤は、NF-κB経路のメンバーのレベルまたは機能的活性を低下させることができ、BTK、LYN、BCR Igアルファ、BCR Igベータ、Syk、Blnk、PLCガンマ2、PKCベータ、DAG、CARMA1、BCL10、MALT1、PI3K、PIPS、AKT、p38 MAPK、ERK、COT、IKKアルファ、IKK.ベータ、IKKガンマ、NIK、RelA/p65、P105/p50、c-Rel、RelB、p52、NIK、Leu13、CD81、CD19、CD21ならびに補体および凝血カスケードにおけるそのリガンド、TRAF6、ユビキチンリガーゼ、Tab2、TAK1、NEMO、NOD2、RIP2、Lck、fyn、Zap70、LAT、GRB2、SOS、CD3ゼータ、Slp-76、GADS、ITK、PLCガンマ1、PKCシータ、ICOS、CD28、SHP2、SAP、SLAMおよび2B4から選択することができる。幾つかの態様において、NF-κB経路阻害剤は、RelA/p65、P105/p50、c-Rel、RelBまたはp52のうちの任意の1以上のレベルまたは機能的活性を低下させる。
【0132】
本発明により、幾つかの態様において、広範な他の合成ナノキャリアを免疫抑制剤とカップリングさせて、なお他の抗原提示細胞標的免疫抑制剤を提供するために用いることができる。幾つかの態様において、合成ナノキャリアは、球体または球状体である。幾つかの態様において、合成ナノキャリアは、扁平または平板状である。幾つかの態様において、合成ナノキャリアは、立方体または立方である。幾つかの態様において、合成ナノキャリアは、卵円または楕円である。幾つかの態様において、合成ナノキャリアは、円柱、円錐または錐体である。
【0133】
幾つかの態様において、各々の合成ナノキャリアが類似の特性を有するように、サイズまたは形状に関して比較的均一である合成ナノキャリアの集団の使用が望ましい。例えば、提供される組成物または方法のいずれか1つの合成ナノキャリアの、合成ナノキャリアの合計数に基づいて、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%は、合成ナノキャリアの平均直径または平均寸法の5%、10%、または20%以内に該当する最小寸法または最大寸法を有していてもよい。
【0134】
合成ナノキャリアは、中実であっても中空であってもよく、1以上の層を含んでもよい。幾つかの態様において、各層は、他の層と比較してユニークな組成およびユニークな特性を有する。一例のみを挙げると、合成ナノキャリアは、コア/シェル構造を有していてもよく、ここで、コアは1つの層であり(例えばポリマーのコア)、シェルは第2の層である(例えば脂質二重層または単層)。合成ナノキャリアは、複数の異なる層を含んでもよい。
【0135】
幾つかの態様において、合成ナノキャリアは、1以上の脂質を任意に含んでもよい。幾つかの態様において、合成ナノキャリアは、リポソームを含んでもよい。幾つかの態様において、合成ナノキャリアは、脂質二重層を含んでもよい。幾つかの態様において、合成ナノキャリアは、脂質単層を含んでもよい。幾つかの態様において、合成ナノキャリアは、ミセルを含んでもよい。幾つかの態様において、合成ナノキャリアは、脂質層(例えば、脂質二重層、脂質単層など)に囲まれたポリマーマトリックスを含むコアを含んでもよい。幾つかの態様において、合成ナノキャリアは、脂質層(例えば、脂質二重層、脂質単層など)に囲まれた非ポリマー性のコア(例えば、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子、骨粒子、ウイルス粒子、タンパク質、核酸、炭水化物など)を含んでもよい。
他の態様において、合成ナノキャリアは、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子などを含んでもよい。幾つかの態様において、非ポリマー性合成ナノキャリアは、金属原子(例えば金原子)の凝集物などの、非ポリマー性成分の凝集物である。
【0136】
幾つかの態様において、合成ナノキャリアは、1以上の両親媒体を任意に含んでもよい。幾つかの態様において、両親媒体は、増大した安定性、改善した均一性または増大した粘性により、合成ナノキャリアの製造を促進することができる。幾つかの態様において、両親媒体は、脂質膜(例えば、脂質二重層、脂質単層など)の内部表面に関連していてもよい。当該分野において公知の多くの両親媒体が、本発明による合成ナノキャリアを作製するために好適である。かかる両親媒体として、これらに限定されないが、以下が挙げられる:ホスホグリセリド;ホスファチジルコリン;ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE);ジオレイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム(DOTMA);ジオレオイルホスファチジルコリン;コレステロール;コレステロールエステル;ジアシルグリセロール;コハク酸ジアシルグリセロール;ジホスファチジルグリセロール(DPPG);ヘキサンデカノール;ポリエチレングリコール(PEG)などの脂肪アルコール;ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル;パルミチン酸またはオレイン酸などの界面活性脂肪酸;脂肪酸;脂肪酸モノグリセリド;脂肪酸ジグリセリド;脂肪酸アミド;ソルビタントリオレアート(Span(登録商標)85)グリココーレート;ソルビタンモノラウレート(Span(登録商標)20);ポリソルベート20(Tween(登録商標)20);ポリソルベート60(Tween(登録商標)60);ポリソルベート65(Tween(登録商標)65);ポリソルベート80(Tween(登録商標)80);ポリソルベート85(Tween(登録商標)85);ポリオキシエチレンモノステアレート;サーファクチン;ポロキサマー;ソルビタントリオレアートなどのソルビタン脂肪酸エステル;レシチン;リゾレシチン;ホスファチジルセリン;ホスファチジルイノシトール;スフィンゴミエリン;ホスファチジルエタノールアミン(セファリン);カルジオリピン;ホスファチジン酸;セレブロシド;リン酸ジセチル;ジパルミトイルホスファチジルグリセロール;ステアリルアミン;ドデシルアミン;ヘキサデシルアミン;パルミチン酸アセチル;グリセロールリシノレート;ヘキサデシルステアレート;ミリスチン酸イソプロピル;チロキサポール;ポリ(エチレングリコール)5000-ホスファチジルエタノールアミン;ポリ(エチレングリコール)400-モノステアレート;リン脂質;高い界面活性剤特性を有する合成および/または天然の洗剤;デオキシコラート;シクロデキストリン;カオトロピックな塩;イオン対化剤(ion pairing agent);およびこれらの組み合わせ。両親媒体成分は、異なる両親媒体の混合物であってもよい。当業者は、これは例示的な界面活性剤効果を有する物質のリストであって、包括的なものではないことを理解するであろう。本発明により用いられるべき合成ナノキャリアの製造において、任意の両親媒体を用いることができる。
【0137】
幾つかの態様において、合成ナノキャリアは、1以上の炭水化物を任意に含んでもよい。炭水化物は、天然であっても合成であってもよい。炭水化物は、誘導体化された天然の炭水化物であってもよい。態様において、炭水化物は、単糖または二糖を含み、これは、限定されないが、グルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、セロビオース、マンノース、キシロース、アラビノース、グルクロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラクトサミンおよびノイラミン酸を含む。態様において、炭水化物は多糖であり、これは、限定されないが、プルラン、セルロース、微晶質セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシセルロース(HC)、メチルセルロース(MC)、デキストラン、シクロデキストラン、グリコーゲン、ヒドロキシエチルデンプン、カラギーナン、グリコン(glycon)、アミロース、キトサン、N,O-カルボキシルメチルキトサン、アルギン酸およびアルギニン酸、デンプン、キチン、イヌリン、コンニャク、グルコマンナン、プスツラン(pustulan)、ヘパリン、ヒアルロン酸、カードランおよびキサンタンを含む。態様において、合成ナノキャリアは、多糖などの炭水化物を含まない(または特に除外する)。態様において、炭水化物は、糖アルコールなどの炭水化物誘導体を含んでもよく、これは、限定されないが、マンニトール、ソルビトールキシリトール、エリスリトール、マルチトールおよびラクチトールを含む。
【0138】
幾つかの態様において、合成ナノキャリアは、1以上のポリマーを含んでもよい。幾つかの態様において、合成ナノキャリアは、非メトキシ末端のプルロニックポリマーである1以上のポリマーを含む。幾つかの態様において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%(重量/重量)は、非メトキシ末端のプルロニックポリマーである。幾つかの態様において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの全てが、非メトキシ末端のプルロニックポリマーである。幾つかの態様において、合成ナノキャリアは、非メトキシ末端のポリマーである1以上のポリマーを含む。幾つかの態様において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%(重量/重量)は、非メトキシ末端のポリマーである。幾つかの態様において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの全ては、非メトキシ末端のポリマーである。幾つかの態様において、合成ナノキャリアは、プルロニックポリマーを含まない1以上のポリマーを含む。幾つかの態様において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%(重量/重量)は、プルロニックポリマーを含まない。幾つかの態様において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの全ては、プルロニックポリマーを含まない。幾つかの態様において、かかるポリマーは、コーティング層(例えば、リポソーム、脂質単層、ミセルなど)により囲まれていてもよい。幾つかの態様において、合成ナノキャリアの要素は、ポリマーに接着していてもよい。
【0139】
免疫抑制剤は、多数の方法のうちのいずれかにより合成ナノキャリアにカップリングすることができる。一般に、接着は、免疫抑制剤と合成ナノキャリアとの間の接着の結果である。この結合により、免疫抑制剤の合成ナノキャリアの表面への接着、および/または合成ナノキャリア中での包含(封入)をもたらすことができる。幾つかの態様において、しかし、免疫抑制剤は、合成ナノキャリアへの結合よりもむしろ合成ナノキャリアの構造の結果として、合成ナノキャリアにより封入される。好ましい態様において、合成ナノキャリアは、本明細書において提供されるポリマーを含み、免疫抑制剤はポリマーに接着している。
【0140】
接着が、免疫抑制剤と合成ナノキャリアとの間の結合の結果として生じる場合、接着は、カップリング部分を介して生じてもよい。カップリング部分は、それを通して免疫抑制剤が合成ナノキャリアに結合する任意の部分であってよい。かかる部分は、アミド結合またはエステル結合などの共有結合、ならびに免疫抑制剤を合成ナノキャリアに(共有的または非共有的に)結合する別の分子を含む。かかる分子は、リンカーまたはポリマーまたはその単位を含む。例えば、カップリング部分は、免疫抑制剤が静電気的に結合する荷電したポリマーを含んでもよい。別の例として、カップリング部分は、それが共有結合しているポリマーまたはその単位を含んでもよい。
好ましい態様において、合成ナノキャリアは、本明細書において提供されるポリマーを含む。これらの合成ナノキャリアは、完全にポリマー性のものであっても、ポリマーと他の材料との混合物であってもよい。
【0141】
幾つかの態様において、合成ナノキャリアのポリマーは、会合してポリマーマトリックスを形成する。これらの態様のいくつかにおいて、免疫抑制剤などの成分は、ポリマーマトリックスの1以上のポリマーと共有的に会合することができる。幾つかの態様において、共有的会合は、リンカーにより媒介される。幾つかの態様において、成分は、ポリマーマトリックスの1以上のポリマーに、非共有的に会合していてもよい。例えば、幾つかの態様において、成分は、ポリマーマトリックス中に封入されていても、ポリマーマトリックスにより囲まれていても、および/またはポリマーマトリックス全体に分散していてもよい。あるいはまたは加えて、成分は、疎水性相互作用、電荷相互作用、ファン・デル・ワールス力などにより、ポリマーマトリックスの1以上のポリマーに会合することができる。それらからポリマーマトリックスを形成するための広範なポリマーおよび方法が、慣習的に知られている。
【0142】
ポリマーは、天然または非天然の(合成の)ポリマーであってよい。ポリマーは、ホモポリマーであっても、2以上のモノマーを含むコポリマーであってよい。配列に関して、コポリマーは、ランダムであっても、ブロックであっても、またはランダムおよびブロック配列の組み合わせを含んでもよい。典型的には、本発明によるポリマーは、有機ポリマーである。
【0143】
幾つかの態様において、ポリマーは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドまたはポリエーテル、またはこれらの単位を含む。他の態様において、ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)コポリマー、またはポリカプロラクトン、またはこれらの単位を含む。幾つかの態様において、ポリマーは、生分解性であることが好ましい。したがって、これらの態様において、ポリマーが、ポリ(エチレングリコール)またはポリプロピレングリコールまたはこれらの単位などのポリエーテルを含む場合、ポリマーが生分解性となるように、ポリマーが、ポリエーテルのブロックコポリマーおよび生分解性ポリマーを含むことが好ましい。他の態様において、ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)またはポリプロピレングリコールまたはその単位などのポリエーテルまたはその単位を単独では含まない。
【0144】
本発明における使用のために好適なポリマーの他の例として、限定されないが、ポリエチレン、ポリカーボネート(例えばポリ(1,3-ジオキサン-2オン))、ポリ酸無水物(例えばポリ(セバシン酸無水物))、フマル酸ポリプロピル、ポリアミド(例えばポリカプロラクタム)、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコリド、ポリラクチド-グリコリドコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酸(polyhydroxyacid)(例えばポリ(β-ヒドロキシアルカノアート)))、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリラート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリウレア、ポリスチレンおよびポリアミン、ポリリジン、ポリリジン-PEGコポリマー、およびポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンイミン)-PEGコポリマーが挙げられる。
【0145】
幾つかの態様において、本発明によるポリマーは、米国食品医薬品局(FDA)により21 C.F.R.§177.2600下においてヒトにおける使用について承認されているポリマーを含み、これは、限定されないが、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)コポリマー、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(1,3-ジオキサン-2オン));ポリ酸無水物(例えばポリ(セバシン酸無水物));ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール);ポリウレタン;ポリメタクリラート;ポリアクリラート;およびポリシアノアクリラートを含む。
【0146】
幾つかの態様において、ポリマーは、親水性であってよい。例えば、ポリマーは、アニオン基(例えば、リン酸基、硫酸基、カルボン酸基);カチオン基(例えば、四級アミン基);または極性基(例えば、ヒドロキシル基、チオール基、アミン基)を含んでもよい。幾つかの態様において、親水性ポリマーマトリックスを含む合成ナノキャリアは、合成ナノキャリア中に親水性環境を生じる。幾つかの態様において、ポリマーは、疎水性であってもよい。幾つかの態様において、疎水性ポリマーマトリックスを含む合成ナノキャリアは、合成ナノキャリア中に疎水性環境を生じる。ポリマーの親水性または疎水性の選択は、合成ナノキャリア中に組み込まれる材料の性質に対して影響を有し得る。
【0147】
幾つかの態様において、ポリマーは、1以上の部分および/または官能基により修飾されていてもよい。本発明により多様な部分または官能基を用いることができる。幾つかの態様において、ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)により、炭水化物により、および/または多糖から誘導される非環式ポリアセタールにより修飾することができる(Papisov, 2001, ACS Symposium Series, 786:301)。ある態様は、Grefらに対する米国特許第5543158号またはVon AndrianらによるWO公開WO2009/051837の一般的教示を用いて行ってもよい。
【0148】
幾つかの態様において、ポリマーを、脂質または脂肪酸基により修飾してもよい。幾つかの態様において、脂肪酸基は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸またはリグノセリン酸の1以上であってよい。幾つかの態様において、脂肪酸基は、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、アルファ-リノール酸、ガンマ-リノール酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸またはエルカ酸の1以上であってよい。
【0149】
幾つかの態様において、ポリマーは、ポリエステルであってよく、これは、乳酸およびグリコール酸の単位を含むコポリマー、例えばポリ(乳酸-コ-グリコール酸)およびポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(本明細書において集合的に「PLGA」として言及される);ならびにグリコール酸単位を含むホモポリマー(本明細書において「PGA」として言及される)、ならびにポリ-L-乳酸、ポリ-D-乳酸、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-ラクチド、ポリ-D-ラクチド、およびポリ-D,L-ラクチド乳酸単位を含むホモポリマー(本明細書において集合的に「PLA」として言及される)を含む。幾つかの態様において、例示的なポリエステルとして、例えば、ポリヒドロキシ酸;PEGコポリマーおよびラクチドとグリコリドとのコポリマー(例えば、PLA-PEGコポリマー、PGA-PEGコポリマー、PLGA-PEGコポリマー)およびそれらの誘導体が挙げられる。幾つかの態様において、ポリエステルとして、例えば、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)-PEGコポリマー、ポリ(L-ラクチド-L-リジン)コポリマー、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)、ポリ[α-(4-アミノブチル)-L-グリコール酸]およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0150】
幾つかの態様において、ポリマーは、PLGAであってよい。PLGAは、乳酸とグリコール酸との生体適合性かつ生分解性のコポリマーであり、PLGAの多様な形態は、乳酸:グリコール酸の比により特徴づけられる。乳酸は、L-乳酸、D-乳酸またはD,L-乳酸であってよい。PLGAの分解速度は、乳酸:グリコール酸比を変更することにより調節することができる。幾つかの態様において、本発明により用いられるべきPLGAは、約85:15、約75:25、約60:40、約50:50、約40:60、約25:75または約15:85の乳酸:グリコール酸の比により特徴づけられる。
【0151】
幾つかの態様において、ポリマーは、1以上のアクリル酸ポリマーであってよい。態様において、アクリル酸ポリマーとして、例えば、アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー、メチルメタクリラートコポリマー、エトキシエチルメタクリラート、シアノエチルメタクリラート、アミノアルキルメタクリラートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ(メタクリル酸無水物)、メチルメタクリラート、ポリメタクリラート、ポリ(メチルメタクリラート)コポリマー、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリラートコポリマー、グリシジルメタクリラートコポリマー、ポリシアノアクリラート、および前述のポリマーの1以上を含む組み合わせが挙げられる。アクリル酸ポリマーは、低い含有量の四級アンモニウム基と共に、アクリル酸とメタクリル酸エステルとの完全に重合したコポリマーを含んでもよい。
【0152】
幾つかの態様において、ポリマーは、カチオン性ポリマーであってよい。一般的に、カチオン性ポリマーは、核酸の負に荷電した鎖を縮合および/または保護することができる。ポリ(リジン)などのアミン含有ポリマー(Zauner et al., 1998, Adv. Drug Del. Rev., 30:97;およびKabanov et al., 1995, Bioconjugate Chem., 6:7)、ポリ(エチレンイミン)(PEI; Boussif et al., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 1995, 92:7297)、およびポリ(アミドアミン)デンドリマー(Kukowska-Latallo et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 93:4897;Tang et al., 1996, Bioconjugate Chem., 7:703;およびHaensler et al., 1993, Bioconjugate Chem., 4:372)は、生理学的pHにおいて正に荷電しており、核酸とイオン対を形成する。態様において、合成ナノキャリアは、カチオン性ポリマーを含まなくともよい(またはこれを除外してもよい)。
【0153】
幾つかの態様において、ポリマーは、カチオン性側鎖を有する分解性ポリエステルであってもよい(Putnam et al., 1999, Macromolecules, 32:3658;Barrera et al., 1993, J. Am. Chem. Soc., 115:11010;Kwon et al., 1989, Macromolecules, 22:3250;Lim et al., 1999, J. Am. Chem. Soc., 121:5633;およびZhou et al., 1990, Macromolecules, 23:3399)。これらのポリエステルの例として、ポリ(L-ラクチド-L-リジン)コポリマー(Barrera et al., 1993, J. Am. Chem. Soc., 115:11010)、ポリ(セリンエステル)(Zhou et al., 1990, Macromolecules, 23:3399)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)(Putnam et al., 1999, Macromolecules, 32:3658;およびLim et al., 1999, J. Am. Chem. Soc., 121:5633)、ならびにポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)(Putnam et al., 1999, Macromolecules, 32:3658; and Lim et al., 1999, J. Am. Chem. Soc., 121:5633)が挙げられる。
【0154】
これらのおよび他のポリマーの特性およびそれらを調製するための方法は、当該分野において周知である(例えば、米国特許第6,123,727号;同第5,804,178号;同第5,770,417号;同第5,736,372号;同第5,716,404号;同第6,095,148号;同第5,837,752号;同第5,902,599号;同第5,696,175号;同第5,514,378号;同第5,512,600号;同第5,399,665号;同第5,019,379号;同第5,010,167号;同第4,806,621号;同第4,638,045号;同第および同第4,946,929号;Wang et al., 2001, J. Am. Chem. Soc., 123:9480;Lim et al., 2001, J. Am. Chem. Soc., 123:2460;Langer, 2000, Acc. Chem. Res., 33:94;Langer, 1999, J. Control. Release, 62:7;およびUhrich et al., 1999, Chem. Rev., 99:3181を参照)。より一般的には、特定の好適なポリマーを合成するための多様な方法は、Concise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts、Goethals編、Pergamon Press, 1980;OdianによるPrinciples of Polymerization、John Wiley & Sons、第4版、2004;AllcockらによるContemporary Polymer Chemistry、Prentice-Hall、1981;Deming et al., 1997, Nature, 390:386において;および米国特許第6,506,577号、同第6,632,922号、同第6,686,446号および同第6,818,732号において記載される。
【0155】
幾つかの態様において、ポリマーは、直鎖状または分枝状ポリマーであってよい。幾つかの態様において、ポリマーは、デンドリマーであってよい。幾つかの態様において、ポリマーは、互いに実質的に架橋されていてもよい。幾つかの態様において、ポリマーは、実質的に架橋を含まなくてもよい。幾つかの態様において、ポリマーは、架橋するステップを経ることなく用いることができる。さらに、合成ナノキャリアは、前述のおよび他のポリマーのいずれかのブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ブレンド、混合物および/または付加物を含んでもよいことが、理解されるべきである。当業者は、本明細書において列記されるポリマーは、本発明による使用のものである例示的なポリマーのリストを代表するが、包括的なものではないことを認識するであろう。
【0156】
幾つかの態様において、合成ナノキャリアは、ポリマー成分を含まない。幾つかの態様において、合成ナノキャリアは、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子などを含んでもよい。幾つかの態様において、非ポリマー性合成ナノキャリアは、金属原子(例えば金原子)の凝集物などの、非ポリマー性成分の凝集物である。
【0157】
本明細書において提供される任意の免疫抑制剤は、幾つかの態様においては、合成ナノキャリア、抗体またはその抗原結合フラグメント(またはAPCを標的とする他のリガンド)、赤血球結合ペプチドなどにカップリングされていてもよい。免疫抑制剤として、これらに限定されないが、以下が挙げられる:スタチン;ラパマイシンまたはラパマイシンアナログなどのmTOR阻害剤;TGF-βシグナル伝達剤;TGF-β受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤;副腎皮質ステロイド;ロテノンなどのミトコンドリアの機能の阻害剤;P38阻害剤;NF-κβ阻害剤;アデノシン受容体アゴニスト;プロスタグランジンE2アゴニスト;ホスホジエステラーゼ4阻害剤などのホスホジエステラーゼ阻害剤;プロテアソーム阻害剤;キナーゼ阻害剤;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;糖質コルチコイド;レチノイド;サイトカイン阻害剤;サイトカイン受容体阻害剤;サイトカイン受容体アクチベーター;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼ阻害剤;カルシニューリン阻害剤;ホスファターゼ阻害剤ならびに酸化ATP。免疫抑制剤はまた、IDO、ビタミンD3、シクロスポリンA、アリール炭化水素受容体阻害剤、レスベラトロール、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、アスピリン、ニフルミン酸、エストリオール、トリポリド(tripolide)、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-10)、シクロスポリンA、サイトカインまたはサイトカイン受容体などを標的とするsiRNAを含む。
【0158】
スタチンの例として、アトロバスチン(LIPITOR(登録商標)、TORVAST(登録商標))、セリバスタチン、フルバスタチン(LESCOL(登録商標)、LESCOL(登録商標)XL)、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標)、ALTOCOR(登録商標)、ALTOPREV(登録商標))、メバスタチン(COMPACTIN(登録商標))、ピタバスタチン(LIVALO(登録商標)、PIAVA(登録商標))、ロスバスタチン(PRAVACHOL(登録商標)、SELEKTINE(登録商標)、LIPOSTAT(登録商標))、ロスバスタチン(CRESTOR(登録商標))、およびシンバスタチン(ZOCOR(登録商標)、LIPEX(登録商標))が挙げられる。
mTOR阻害剤の例として、ラパマイシンおよびそのアナログ(例えば、CCL-779、RAD001、AP23573、C20-メタリルラパマイシン(C20-Marap)、C16-(S)-ブチルスルホンアミドラパマイシン(C16-BSrap)、C16-(S)-3-メチルインドールラパマイシン(C16-iRap)(Bayle et al. Chemistry & Biology 2006、13:99-107)、AZD8055、BEZ235(NVP-BEZ235)、クリソファン酸(クリソファノール)、デフォロリムス(MK-8669)、エベロリムス(RAD0001)、KU-0063794、PI-103、PP242、テムシロリムス、およびWYE-354(Selleck、Houston、TX、USAから入手可能)が挙げられる。
【0159】
TGF-βシグナル伝達剤の例として、TGF-βリガンド(例えば、アクチビンA、GDF1、GDF11、骨形態形成タンパク質、nodal、TGF-β)およびそれらの受容体(例えば、ACVR1B、ACVR1C、ACVR2A、ACVR2B、BMPR2、BMPR1A、BMPR1B、TGFβRI、TGFβRII)、R-SMADS/co-SMADS(例えば、SMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD5、SMAD8)、ならびにリガンド阻害剤(例えば、フォリスタチン、ノギン、コーディン、DAN、レフティー、LTBP1、THBS1、デコリン)が挙げられる。
ミトコンドリアの機能の阻害剤の例として、アトラクチロシド(二カリウム塩)、ボンクレキン酸(三アンモニウム塩)、カルボニルシアニドm-クロロフェニルヒドラゾン、カルボキシアトラクチロシド(例えばAtractylis gummifera由来のもの)、CGP-37157、(-)-デグエリン(例えばMundulea sericea由来のもの)、F16、ヘキソキナーゼII VDAC結合ドメインペプチド、オリゴマイシン、ロテノン、Ru360、SFK1、およびバリノマイシン(例えばStreptomyces fulvissimus由来のもの)(EMD4Biosciences、USA)が挙げられる。
【0160】
P38阻害剤の例として、SB-203580(4-(4-フルオロフェニル)-2-(4-メチルスルフィニルフェニル)-5-(4-ピリジル)1H-イミダゾール)、SB-239063(トランス-1-(4ヒドロキシシクロヘキシル)-4-(フルオロフェニル)-5-(2-メトキシ-ピリミジン-4-イル)イミダゾール)、SB-220025(5-(2アミノ-4-ピリミジニル)-4-(4-フルオロフェニル)-1-(4-ピペリジニル)イミダゾール))、およびARRY-797が挙げられる。
NF(例えば、NK-κβ)阻害剤の例として、IFRD1、2-(1,8-ナフチリジン-2-イル)-フェノール、5-アミノサリチル酸、BAY 11-7082、BAY 11-7085、CAPE(Caffeic Acid Phenethylエステル)、マレイン酸ジエチル、IKK-2阻害剤IV、IMD 0354、ラクタシスチン、MG-132[Z-Leu-Leu-Leu-CHO]、NFκB活性化阻害剤III、NF-κB活性化阻害剤II、JSH-23、パルテノライド、フェニルアルシンオキシド(PAO)、PPM-18、ピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウム塩、QNZ、RO 106-9920、ロカグラミド、ロカグラミドAL、ロカグラミドC、ロカグラミドI、ロカグラミドJ、ロカグラオール、(R)-MG-132、サリチル酸ナトリウム、トリプトライド(PG490)、およびウェデロラクトンが挙げられる。
【0161】
アデノシン受容体アゴニストの例として、CGS-21680およびATL-146eが挙げられる。
プロスタグランジンE2アゴニストの例として、E-プロスタノイド2およびE-プロスタノイド4が挙げられる。
ホスホジエステラーゼ阻害剤(非選択的および選択的阻害剤)の例として、カフェイン、アミノフィリン、IBMX(3-イソブチル-1-メチルキサンチン)、パラキサンチン、ペントキシフィリン、テオブロミン、テオフィリン、メチル化キサンチン、ビンポセチン、EHNA(エリスロ-9-(2-ヒドロキシ-3-ノニル)アデニン)、アナグレリド、エノキシモン(PERFAN(商標))、ミルリノン、レボシメンダン、メセンブリン、イブジラスト、ピクラミラスト、ルテオリン、ドロタベリン、ロフルミラスト(DAXAS(商標)、DALIRESP(商標))、シルデナフィル(REVATION(登録商標)、VIAGRA(登録商標))、タダラフィル(ADCIRCA(登録商標)、CIALIS(登録商標))、バルデナフィル(LEVITRA(登録商標)、STAXYN(登録商標))、ウデナフィル、アバナフィル、イカリイン、4-メチルピペラジンおよびピラゾロピリミジン-7-1が挙げられる。
プロテアソーム阻害剤の例として、ボルテゾミブ、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガラートおよびサリノスポラミドAが挙げられる。
【0162】
キナーゼ阻害剤の例として、ベバシズマブ、BIBW 2992、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、イマチニブ(GLEEVEC(登録商標))、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))、ペガプタニブ、ソラフェニブ、ダサチニブ、スニチニブ、エルロチニブ、ニロチニブ、ラパチニブ、パニツムマブ、バンデタニブ、E7080、パゾパニブおよびムブリチニブが挙げられる。
糖質コルチコイドの例として、ヒドロコルチゾン(コルチゾール)、酢酸コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン(DOCA)およびアルドステロンが挙げられる。
【0163】
レチノイドの例として、レチノール、レチナール、トレチノイン(レチノイン酸、RETIN-A(登録商標))、イソトレチノイン(ACCUTANE(登録商標)、AMNESTEEM(登録商標)、CLARAVIS(登録商標)、SOTRET(登録商標))、アリトレチノイン(PANRETIN(登録商標))、エトレチナート(TEGISON(商標))およびその代謝物であるアシトレチン(SORIATANE(登録商標))、タザロテン(TAZORAC(登録商標)、AVAGE(登録商標)、ZORAC(登録商標))、ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))およびアダパレン(DIFFERIN(登録商標))が挙げられる。
サイトカイン阻害剤の例として、IL1ra、IL1受容体アンタゴニスト、IGFBP、TNF-BF、ウロモジュリン、アルファ-2-マクログロブリン、シクロスポリンA、ペンタミジンおよびペントキシフィリン(PENTOPAK(登録商標)、PENTOXIL(登録商標)、TRENTAL(登録商標))が挙げられる。
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アンタゴニストの例として、GW9662、PPARγアンタゴニストIII、G335およびT0070907(EMD4Biosciences、USA)が挙げられる。
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニストの例として、ピオグリタゾン、シグリタゾン、クロフィブラート、GW1929、GW7647、L-165,041、LY 171883、PPARγアクチベーター、Fmoc-Leu、トログリタゾンおよびWY-14643(EMD4Biosciences、USA)が挙げられる。
【0164】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤の例として、トリコスタチンA、環状テトラペプチド(トラポキシンBなど)およびデプシペプチドなどのヒドロキサム酸(またはヒドロキサマート)、ベンズアミド、求電子性ケトン、酪酸フェニルおよびバルプロ酸などの脂肪族酸性化合物、ボリノスタット(SAHA)、ベリノスタット(PXD101)、LAQ824およびパノビノスタット(LBH589)などのヒドロキサム酸、エンチノスタット(MS-275)、CI994およびモセチノスタット(MGCD0103)などのベンズアミド、ニコチンアミド、NADの誘導体、ジヒドロクマリン、ナフトピラノン、ならびに2-ヒドロキシナフアルデヒドが挙げられる。
カルシニューリン阻害剤の例として、シクロスポリン、ピメクロリムス、ボクロスポリンおよびタクロリムスが挙げられる。
ホスファターゼ阻害剤の例として、BN82002塩酸塩、CP-91149、カリクリンA、カンタリジン酸、カンタリジン、シペルメトリン、エチル-3,4-デホスタチン、フォストリエシンナトリウム塩、MAZ51、メチル-3,4-デホスタチン、NSC 95397、ノルカンタリジン(norcantharidin)、Prorocentrum concavum由来のオカダ酸アンモニウム塩、オカダ酸、オカダ酸カリウム塩、オカダ酸ナトリウム塩、フェニルアルシンオキシド、多様なホスファターゼ阻害剤カクテル、タンパク質ホスファターゼ1C、タンパク質ホスファターゼ2A阻害剤タンパク質、タンパク質ホスファターゼ2A1、タンパク質ホスファターゼ2A2、およびオルトバナジン酸ナトリウムが挙げられる。
【0165】
本発明による組成物は、保存剤、バッファー、食塩水またはリン酸緩衝化食塩水などの薬学的に許容し得る賦形剤を含んでもよい。組成物は、有用な投与形態を達成するために、慣用的な医薬の製造および配合技術を用いて製造することができる。一態様において、組成物は、注射のために、無菌の食塩水溶液中で保存剤と一緒に懸濁される。
【0166】
D.組成物を使用および作製する方法
ウイルス導入ベクターは、当業者に公知の、または本明細書において他の場所で記載される方法により作製することができる。例えば、ウイルス導入ベクターは、例えば、米国特許第4,797,368号およびLaughlin et al., Gene, 23, 65-73(1983)において記載される方法を用いて構築および/または精製することができる。
例として、複製欠損アデノウイルスベクターは、複製欠損アデノウイルスベクターにおいては存在しないが、ウイルスの伝播のために必要とされる遺伝子の機能を提供する補完細胞株において、高力価のウイルス導入ベクターストックをもたらすために適切なレベルにおいて、作製することができる。補完細胞株は、全てのアデノウイルス機能を含む、early領域、late領域、ウイルスパッケージング領域、ウイルス関連RNA領域、またはそれらの組み合わせによりコードされる、少なくとも1つの複製必須遺伝子の機能の欠損を補完することができる(例えば、アデノウイルスアンプリコンの伝播を可能にするために)。補完細胞株の構築は、Sambrook et al., Molecular Cloning, a Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989年)、およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons、New York、N.Y.(1994年)により記載されるような標準的な分子生物学および細胞培養技術を伴う。
【0167】
アデノウイルスベクターを作製するための補完細胞株として、これらに限定されないが、293細胞(例えばGraham et al., J. Gen. Virol., 36, 59-72 (1977)において記載される)、PER.C6細胞(例えば国際特許出願WO 97/00326、ならびに米国特許第5,994,128号および同第6,033,908号において記載される)、ならびに293-ORF6細胞(例えば国際特許出願WO 95/34671およびBrough et al., J. Virol., 71, 9206-9213 (1997)において記載される)が挙げられる。いくつかの例において、補完細胞は、全ての必要とされるアデノウイルス遺伝子機能を補完しない。ヘルパーウイルスは、アデノウイルスベクターの複製を可能にするために、細胞またはアデノウイルスのゲノムによりコードされていない遺伝子機能を、トランスに提供するために使用することができる。アデノウイルスベクターは、例えば、米国特許第5,965,358号、同第5,994,128号、同第6,033,908号、同第6,168,941号、同第6,329,200号、同第6,383,795号、同第6,440,728号、同第6,447,995号および同第6,475,757号、米国特許出願公開番号2002/0034735 A1、ならびに国際特許出願WO 98/53087、WO 98/56937、WO 99/15686、WO 99/54441、WO 00/12765、WO 01/77304およびWO 02/29388、ならびに本明細書において同定される他の参考文献において記載される材料および方法を用いて、構築するか、伝播させるか、および/または精製することができる。アデノウイルス血清型35ベクターを含む非C群アデノウイルスベクターは、例えば、米国特許第5,837,511号および同第5,849,561号、ならびに国際特許出願WO 97/12986およびWO 98/53087において記載される方法を用いて作製することができる。
【0168】
AAVベクターは、組み換え方法を用いて作製することができる。典型的には、方法は、AAVカプシドタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸配列;機能的rep遺伝子;AAV末端逆位反復配列(ITR)および導入遺伝子からなる組み換えAAVベクター;ならびに組み換えAAVベクターのAAVカプシドタンパク質中へのパッケージングを可能にするために十分なヘルパー機能を含む宿主細胞を培養することを含む。幾つかの態様において、ウイルス導入ベクターは、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11およびそれらのバリアントからなる群より選択されるAAV血清型の末端逆位反復配列(ITR)を含んでもよい。
【0169】
rAAVベクターをAAVカプシド中にパッケージングするために宿主細胞において培養されるべき成分を、宿主細胞にトランスに提供してもよい。あるいは、必要とされる成分のいずれか1つまたは2つ以上(例えば、組み換えAAVベクター、rep配列、cap配列および/またはヘルパー機能)を、当業者に公知の方法を用いて、必要とされる成分のいずれか1つまたは2つ以上を含むように操作された安定な宿主細胞により、提供してもよい。最も好適には、かかる安定な宿主細胞は、誘導性プロモーターの制御下において、必要とされる成分を含むことができる。しかし、必要とされる成分は、構成的プロモーターの制御下にあってもよい。本発明のrAAVを作製するために必要とされる組み換えAAVベクター、rep配列、cap配列、およびヘルパー機能は、任意の適切な遺伝子エレメントを用いてパッケージング宿主細胞に送達することができる。選択される遺伝子エレメントは、本明細書において記載されるものを含む任意の好適な方法により送達することができる。本発明の任意の態様を構築するために用いられる方法は、核酸操作において技術を有する当業者に公知であり、遺伝子工学、組み換え工学および合成技術を含む。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、N.Y.を参照。同様に、rAAVウイルス粒子を作製する方法は、周知であり、好適な方法の選択は、本発明に対する限定ではない。例えば、K. Fisher et al, J. Virol., 70:520-532(1993)および米国特許第5,478,745号を参照。
【0170】
幾つかの態様において、組み換えAAVベクターは、三重トランスフェクション法(triple transfection method)を用いて作製することができる(例えば、米国特許第6,001,650号において詳細に記載されるように;三重トランスフェクション法に関するその内容は、本明細書において参考として援用される)。典型的には、組み換えAAVは、宿主細胞を、AAV粒子中にパッケージングされるべき組み換えAAVベクター(導入遺伝子を含む)、AAVヘルパー機能ベクター、および補助機能ベクターでトランスフェクションすることにより作製する。一般に、AAVヘルパー機能ベクターは、増殖性AAVの複製およびカプシド形成のためにトランスで機能する、AAVヘルパー機能配列(repおよびcap)をコードする。好ましくは、AAVヘルパー機能ベクターは、任意の検出可能な野生型AAVウイルス粒子(すなわち、機能的なrepおよびcap遺伝子を含むAAVウイルス粒子)を作製することなく、効率的なAAVベクター作製を支持する。補助機能ベクターは、AAVが複製のために依存する、非AAV由来のウイルスおよび/または細胞の機能のためのヌクレオチド配列をコードしていてもよい。補助機能は、AAV複製のために必要とされる機能を含み、これは、限定することなく、AAV遺伝子転写、ステージ特異的なAAVのmRNAのスプライシング、AAVのDNAの複製、cap発現産物の合成、およびAAVカプシドアセンブリーの活性化に関与する部分を含む。ウイルスに基づく補助機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス1型以外のもの)、およびワクシニアウイルスなどの既知のヘルパーウイルスのいずれかに由来してよい。
【0171】
レンチウイルスベクターは、当該分野において公知の多数の方法のいずれかを用いて作製することができる。レンチウイルスベクターおよび/またはそれらの作製の方法の例は、例えば、米国公開番号20150224209、20150203870、20140335607、20140248306、20090148936および20080254008において見出すことができ、かかるレンチウイルスベクターおよび作製の方法は、本明細書において参考として援用される。例として、レンチウイルスベクターが組み込み不能である場合、レンチウイルスゲノムはさらに複製起点(ori)を含み、その配列は、レンチウイルスゲノムを発現させなければならない細胞の性質に依存する。前記複製起点は、真核生物由来、好ましくは哺乳動物起源のもの、最も好ましくはヒト起源のものであってよい。レンチウイルスゲノムは細胞宿主のゲノム中に組み込まれない(不完全なインテグラーゼのため)ので、レンチウイルスゲノムは、頻繁な細胞分裂を経験している細胞においては失われ得る;このことは、BまたはT細胞などの免疫細胞における場合はことさらである。複製起点の存在は、いくつかの場合において有益であり得る。ベクター粒子は、293T細胞などの適切な細胞のトランスフェクションの後で、前記プラスミドにより、または他のプロセスにより、産生させることができる。レンチウイルス粒子の発現のために用いられる細胞において、プラスミドの全てまたは一部を、それらがコードしているポリヌクレオチドを安定に発現させるために、またはそれらがコードしているポリヌクレオチドを一過性にもしくは半安定して(semi-stably)発現させるために用いることができる。
【0172】
本明細書において提供される他のウイルスベクターを作製するための方法は、当該分野において公知であり、上の例示的な方法と同様である。さらに、ウイルスベクターは市販されている。
態様において、特定の抗原提示細胞標的免疫抑制剤を調製する場合、成分を、例えば赤血球結合ペプチド、抗体もしくはその抗原結合フラグメント(もしくはAPCを標的とする他のリガンド)、または合成ナノキャリアに接着させるための方法が有用であり得る。
【0173】
ある態様において、接着は、共有的リンカーであってよい。態様において、本発明による免疫抑制剤は、外側表面に、アルキン基を含む免疫抑制剤とのアジド基の1,3-双極性環化付加反応により、またはアジド基を含む免疫抑制剤とのアルキンの1,3-双極性環化付加反応により形成された、1,2,3-トリアゾールリンカーを介して、共有的に接着していてもよい。かかる環化付加反応は、好ましくは、好適なCu(I)-リガンドおよびCu(II)化合物を触媒活性Cu(I)化合物に還元するための還元剤と共に、Cu(I)触媒の存在下において行う。このCu(I)により触媒されたアジド-アルキン環化付加(CuAAC)はまた、クリック反応としても言及される。
【0174】
加えて、共有的カップリングは、共有的リンカーを含んでもよく、これは、アミドリンカー、ジスルフィドリンカー、チオエーテルリンカー、ヒドラゾンリンカー、ヒドラジドリンカー、イミンまたはオキシムリンカー、ウレアまたはチオウレアリンカー、アミジンリンカー、アミンリンカー、およびスルホンアミドリンカーを含む。
【0175】
アミドリンカーは、免疫抑制剤などの1つの成分上のアミンと、ナノキャリアなどの第2の成分のカルボン酸基との間のアミド結合を介して形成される。リンカー中のアミド結合は、N-ヒドロキシサクシニミドにより活性化されたエステルなどの好適に保護されたアミノ酸との慣用的なアミド結合形成反応のいずれかを用いて生成することができる。
【0176】
ジスルフィドリンカーは、例えばR1-S-S-R2の形態の2つの硫黄原子の間のジスルフィド(S-S)結合の形成を介して、生成することができる。ジスルフィド結合は、チオール/メルカプタン基(-SH)を含む成分の、別の活性化されたチオール基との、またはチオール/メルカプタン基を含む成分の、活性化されたチオール基を含む成分とのチオール交換により、形成させることができる。
【0177】
トリアゾールリンカー、特に、
【化1】
ここで、R1およびR2は、任意の化学成分である、
の形態の1,2,3-トリアゾールは、第1の成分に接着したアジドの、免疫抑制剤などの第2の成分に接着した末端アルキンによる1,3-双極性環化付加反応により生成することができる。1,3-双極性環化付加反応は、触媒を用いてまたはこれを用いずに、好ましくは1,2,3-トリアゾール官能基を通して2つの成分を連結するCu(I)触媒を用いて行う。この化学は、Sharpless et al., Angew. Chem. Int. Ed. 41(14), 2596, (2002)およびMeldal, et al, Chem. Rev., 2008, 108(8), 2952-3015において詳細に記載され、しばしば、「クリック」反応またはCuAACとして言及される。
【0178】
チオエーテルリンカーは、例えばR1-S-R2の形態における硫黄-炭素(チオエーテル)結合の形成により生成される。チオエーテルは、1つの成分上でのチオール/メルカプタン(-SH)基の、第2の成分上のハライドまたはエポキシドなどのアルキル化基によるアルキル化により、生成することができる。チオエーテルリンカーはまた、1つの成分上のチオール/メルカプタン基の、マイケルアクセプターとしてマレイミド基またはビニルスルホン基を含む第2の成分上の電子欠乏アルケン基に対するマイケル付加により、形成させることができる。別の方法において、1つの成分上のチオール/メルカプタン基の、第2の成分上のアルケン基によるラジカルチオール-エン反応により、チオエーテルリンカーを調製することができる。
【0179】
ヒドラゾンリンカーは、1つの成分上のヒドラジド基の、第2の成分上のアルデヒド/ケトン基との反応により生成することができる。
ヒドラジドリンカーは、1つの成分上のヒドラジン基の、第2の成分上のカルボン酸基との反応により生成することができる。かかる反応は、一般に、カルボン酸が活性化試薬により活性化される、アミド結合の形成に類似する化学を用いて行う。
イミンまたはオキシムリンカーは、1つの成分上のアミンまたはN-アルコキシアミン(またはアミノオキシ)基の、第2の成分上のアルデヒドまたはケトン基との反応により形成される。
【0180】
ウレアまたはチオウレアリンカーは、1つの成分上のアミン基の、第2の成分上のイソシアナートまたはチオイソシアナート基との反応により調製される。
アミジンリンカーは、1つの成分上のアミン基の、第2の成分上のイミドエステル基との反応により調製される。
アミンリンカーは、1つの成分上のアミン基の、第2の成分上のハライド、エポキシドまたはスルホナートエステル基などのアルキル化基によるアルキル化反応により生成される。あるいは、アミンリンカーはまた、シアノ水素化ホウ素ナトリウムまたはトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどの好適な還元試薬による、1つの成分上のアミン基の、第2の成分上のアルデヒドまたはケトン基による還元性アミノ化により生成することができる。
【0181】
スルホンアミドリンカーは、1つの成分上のアミン基の、第2の成分上のスルホニルハライド(スルホニルクロリドなどの)基との反応により生成される。
スルホンリンカーは、ビニルスルホンへの求核試薬のマイケル付加により生成される。ビニルスルホンまたは求核試薬のいずれかは、ナノキャリアの表面上にあるか、成分に接着していてもよい。
成分はまた、非共有的共役方法を介して共役させることができる。例えば、静電吸着を通して、負に荷電した免疫抑制剤を、正に荷電した成分に共役させることができる。金属配位子を含む成分はまた、金属-配位子錯体を介して金属錯体に共役させることができる。
【0182】
態様において、成分は、合成ナノキャリアのアセンブリーの前に、ポリマー、例えばポリ乳酸-ブロック-ポリエチレングリコールに接着していてもよく、合成ナノキャリアは、反応性または活性化可能な基により形成させることができる。後者の場合において、成分は、合成ナノキャリアの表面により提示される接着化学に適合性である基を用いて調製することができる。他の態様において、ペプチド成分は、好適なリンカーを用いてVLPまたはリポソームに接着させることができる。リンカーは、2つの分子を一緒にカップリングすることができる化合物または試薬である。一態様において、リンカーは、Hermanson 2008において記載されるようなホモ二官能性またはヘテロ二官能性の試薬であってよい。例えば、表面上にカルボン酸基を含むVLPまたはリポソーム合成ナノキャリアを、EDCの存在下において、ホモ二官能性リンカーであるアジピン酸ジヒドラジド(ADH)で処置して、ADHリンカーを有する対応する合成ナノキャリアを形成させることができる。結果として生じるADHと連結された合成ナノキャリアを、次いで、ナノキャリア上のADHリンカーの他方の末端を介して、酸基を含むペプチド成分と共役させて、対応するVLPまたはリポソームペプチドコンジュゲートを生成する。
【0183】
態様において、ポリマー鎖の末端側にまたはアルキン基を含むポリマーを調製する。このポリマーを、次いで、複数のアルキンまたはアジド基がナノキャリアの表面上に位置するような様式において合成ナノキャリアを調製するために用いる。あるいは、合成ナノキャリアを、別の経路により調製して、その後、アルキンまたはアジド基で官能化してもよい。成分は、アルキン(ポリマーがアジドを含む場合)またはアジド(ポリマーがアルキンを含む場合)基のいずれかの存在と共に調製される。成分を、次いで、1,3-双極性環化付加反応を介して、1,4-二置換1,2,3-トリアゾールリンカーを通して成分を粒子に共有的に接着させる触媒を用いてまたはこれを用いずに、ナノキャリアと反応させる。
【0184】
成分が低分子である場合、合成ナノキャリアのアセンブリーの前に成分をポリマーに接着させることは、有利であり得る。態様において、成分を合成ナノキャリアに接着させるために用いられる表面基を用いて、成分をポリマーに接着させるというよりはむしろこれらの表面基の使用を通して、合成ナノキャリアを調製し、次いで、このポリマーコンジュゲートを合成ナノキャリアの構築において用いることもまた、有利であり得る。
【0185】
利用可能な共役方法の詳細な記載については、Hermanson G T「Bioconjugate Techniques」、第2版、Academic Press, Inc.刊行、2008年を参照。共有的接着に加えて、成分は、予め形成された合成ナノキャリアに吸着させることにより接着させても、または合成ナノキャリアの形成の間の封入により接着させてもよい。
【0186】
合成ナノキャリアは、当該分野において公知の広範な方法を用いて調製することができる。例えば、合成ナノキャリアは、ナノ沈殿、流体チャネルを用いるフローフォーカシング(flow focusing)、スプレー乾燥、シングルおよびダブルエマルション溶媒蒸発、溶媒抽出、相分離、製粉、マイクロエマルション法、微細加工(microfabrication)、ナノ加工(nanofabrication)、犠牲層、単純および複合コアセルベーションなどの方法、ならびに当業者に周知の他の方法により形成することができる。あるいはまたは加えて、単分散半導体のための水性および有機性の溶媒合成、伝導性、磁性、有機および他のナノ材料が記載されている(Pellegrino et al., 2005, Small, 1:48; Murray et al., 2000, Ann. Rev. Mat. Sci., 30:545; and Trindade et al., 2001, Chem. Mat., 13:3843)。さらなる方法は、文献において記載されている(例えば、Doubrow編、「Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy」、CRC Press, Boca Raton, 1992;Mathiowitz et al., 1987, J. Control. Release, 5:13; Mathiowitz et al., 1987, Reactive Polymers, 6:275;ならびにMathiowitz et al., 1988, J. Appl. Polymer Sci., 35:755;米国特許第5578325号および同第6007845号;P. Paolicelli et al., 「Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles」Nanomedicine. 5(6):843-853 (2010)を参照)。
【0187】
材料を、望ましい場合には、限定されないが以下を含む多様な方法を用いて、合成ナノキャリア中に封入してもよい:C. Astete et al., 「Synthesis and characterization of PLGA nanoparticles」J. Biomater. Sci. Polymer Edn、第17巻、第3号、pp. 247-289(2006);K. Avgoustakis「Pegylated Poly(Lactide) and Poly(Lactide-Co-Glycolide) Nanoparticles:Preparation, Properties and Possible Applications in Drug Delivery」Current Drug Delivery 1:321-333(2004);C. Reis et al., 「Nanoencapsulation I. Methods for preparation of drug-loaded polymeric nanoparticles」Nanomedicine 2:8- 21(2006);P. Paolicelli et al., 「Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles」Nanomedicine. 5(6):843-853(2010)。材料を合成ナノキャリア中に封入するために好適な他の方法を用いてもよく、これらは、限定することなく、2003年10月14日に発行されたUngerに対する米国特許第6,632,671号において開示される方法を含む。
【0188】
ある態様において、合成ナノキャリアは、ナノ沈殿法またはスプレー乾燥により調製される。合成ナノキャリアを調製することにおいて用いられる条件は、所望されるサイズおよび特性(例えば、疎水性、親水性、外側の形態、「粘着性」、形状など)の粒子を得るために改変することができる。合成ナノキャリアを調製する方法および用いられる条件(例えば、溶媒、温度、濃度、気体の流速など)は、合成ナノキャリアに結合させるべき材料および/またはポリマーマトリックスの組成に依存し得る。
上記の方法のいずれかにより調製される合成ナノキャリアが所望される範囲の外のサイズ範囲を有する場合、合成ナノキャリアを、例えば篩を用いて、サイズ分類することができる。
【0189】
合成ナノキャリアの要素は、例えば1以上の共有結合により合成ナノキャリア全体に接着させても、1以上のリンカーにより接着させてもよい。合成ナノキャリアを官能化するさらなる方法は、Saltzmanらに対する米国特許出願公開2006/0002852、DeSimoneらに対する米国特許出願公開2009/0028910、またはMurthyらに対する国際特許出願公開WO/2008/127532 A1から適応させることができる。
【0190】
あるいはまたは加えて、合成ナノキャリアは、直接的または間接的に、非共有的相互作用を介して、成分に接着させることができる。非共有的態様において、非共有的接着は、限定されないが以下を含む非共有的相互作用により媒介される:電荷相互作用、アフィニティー相互作用、金属配位、物理的吸着、主客相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、磁性相互作用、静電相互作用、双極子-双極子相互作用、および/またはこれらの組み合わせを含む。かかる接着は、合成ナノキャリアの外部表面または内部表面上にあるように配置することができる。態様において、封入および/または吸収は、接着の形態である。
【0191】
本明細書において提供される組成物は、無機または有機の緩衝化剤(例えば、リン酸、炭酸、酢酸またはクエン酸のナトリウムまたはカリウム塩)およびpH調整剤(例えば、塩酸、水酸化ナトリウムまたはカリウム、クエン酸または酢酸の塩、アミノ酸およびそれらの塩)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、アルファ-トコフェロール)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン9-10ノニルフェノール、デオキシコール酸ナトリウム)、溶液および/または低温(cryo)/凍結安定化剤(例えば、スクロース、ラクトース、マンニトール、トレハロース)、浸透圧調節剤(例えば、塩または糖)、抗菌剤(例えば、安息香酸、フェノール、ゲンタマイシン)、消泡剤(例えば、ポリジメチルシロキサン、保存剤(例えば、チメロサール、2-フェノキシエタノール、EDTA)、ポリマー性安定化剤および粘度調節剤(例えば、ポリビニルピロリドン、ポロキサマー488、カルボキシメチルセルロース)および共溶媒(例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール、エタノール)を含んでもよい。
【0192】
本発明による組成物は、薬学的に許容し得る賦形剤を含んでもよい。組成物は、有用な投与形態を達成するために、慣用的な医薬の製造および配合技術を用いて製造することができる。本発明の実施における使用のために好適な技術は、Handbook of Industrial Mixing:Science and Practice、Edward L. Paul, Victor A. Atiemo-ObengおよびSuzanne M. Kresta編、2004年、John Wiley & Sons, Inc.;ならびにPharmaceutics: The Science of Dosage Form Design、第2版M. E. Auten編、2001年、Churchill Livingstoneにおいて見出すことができる。一態様において、組成物を、注射のために、保存剤と共に、無菌の食塩水溶液中に懸濁する。
【0193】
本発明の組成物は任意の好適な様式において製造することができることが、理解されるべきであり、本発明は、本明細書において記載される方法を用いて製造することができる組成物に決して限定されない。適切な製造の方法の選択は、関連する特定の部分の特性に対する注意を必要とする場合がある。
幾つかの態様において、組成物は、無菌条件下において製造されるか、最終的に無菌化される。このことにより、結果として生じる組成物が無菌であり、非感染性であることを確実にすることができ、それにより、非無菌の組成物と比較して安全性を改善する。このことは、特に組成物を投与されている対象が免疫欠損を有するか、感染症を罹患しているか、および/または感染に対して感受性である場合に、有益な安全性の指標を提供する。
本発明による投与は、多様な経路によるものであってよく、これは、限定されないが、皮下、静脈内、筋肉内および腹腔内経路を含む。本明細書において言及される組成物は、投与、いくつかの態様においては共投与のために、従来の方法を用いて製造および調製することができる。
【0194】
本発明の組成物は、有効量、例えば本明細書において他の場所で記載される有効量で投与することができる。幾つかの態様において、抗原提示細胞標的免疫抑制剤および/またはウイルス導入ベクターは、抗ウイルス導入ベクター免疫応答を減弱化するか、または再ウイルス導入ベクターの対象への投与を可能にするために有効な量で、投与形態中に存在する。幾つかの態様において、抗原提示細胞標的免疫抑制剤および/またはウイルス導入ベクターは、対象における導入遺伝子発現を増大させるために有効な量で、投与形態中に存在する。好ましい態様において、抗原提示細胞標的免疫抑制剤および/またはウイルス導入ベクターは、例えば対象に共投与された場合にウイルス導入ベクターに対する免疫応答を低下させるために有効な量で、投与形態中に存在する。投与形態は、多様な頻度において投与することができる。幾つかの態様において、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの反復投与を行う。
【0195】
本発明の側面は、本明細書において提供される投与の方法のためのプロトコルを決定することに関する。プロトコルは、ウイルス導入ベクターおよび抗原提示細胞標的免疫抑制剤の少なくとも頻度、投与量を変化させ、その後に所望されるかまたは望ましくない免疫応答を評価することにより、決定することができる。本発明の実施のための好ましいプロトコルは、ウイルス導入ベクターに対する免疫応答を低下させ、抗ウイルス導入ベクター応答を減弱化し、および/または導入遺伝子発現を増大させる。プロトコルは、少なくとも投与の頻度およびウイルス導入ベクターおよび抗原提示細胞標的免疫抑制剤の用量を含む。
【0196】
例
例1:ポリマー-ラパマイシンコンジュゲートを含むポリマーナノキャリア(仮想)
PLGA-ラパマイシンコンジュゲートの調製:
酸末端基を有するPLGAポリマー(7525 DLG1A、酸価0.46mmol/g、Lakeshore Biomaterials;5g、2.3mmol、1.0当量)を、30mLのジクロロメタン(DCM)中で溶解する。N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.2当量、2.8mmol、0.57g)を添加し、その後、ラパマイシン(1.0当量、2.3mmol、2.1g)および4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(2.0当量、4.6mmol、0.56g)を添加する。混合物をrtで2日間撹拌する。混合物を、次いで濾過して、不溶性ジシクロヘキシルウレアを取り除く。濾過物を約10mLの容積まで濃縮し、100mLのイソプロピルアルコール(IPA)を添加して、PLGA-ラパマイシンコンジュゲートを沈殿させる。IPA層を取り除き、ポリマーを、次いで50mLのIPAおよび50mLのメチルt-ブチルエーテル(MTBE)で洗浄する。ポリマーを、次いで35℃で2日間にわたり真空下で乾燥させて、PLGA-ラパマイシンを白色固体として得る(約6.5g)。
【0197】
PLGA-ラパマイシンを含むナノキャリアをを、以下のとおり調製する:
ナノキャリア形成のための溶液を、以下のとおり調製する:
溶液1:PLGA-ラパマイシン@100mg/mL。PLGA-ラパマイシンを純粋な塩化メチレン中で溶解することにより溶液を調製する。溶液2:PLA-PEG@塩化メチレン中100mg/mL。PLA-PEGを純粋な塩化メチレン中で溶解することにより溶液を調製する。溶液3:ポリビニルアルコール@100mMのpH8のリン酸バッファー中50mg/mL。
【0198】
第1の油中水型エマルションを初めに調製する。W1/O1は、小さい圧力管中で溶液1(0.75mL)と溶液2(0.25mL)とを組み合わせて、Branson Digital Sonifier 250を用いて、50%の振幅で40秒間超音波処理することにより調製する。第2のエマルション(W1/O1/W2)を、次いで、溶液3(3.0mL)を第1のW1/O1エマルションと組み合わせ、10秒間ボルテックスし、Branson Digital Sonifier 250を用いて30%の振幅で60秒間超音波処理することにより調製する。W1/O1/W2エマルションを、70mMのpH8のリン酸バッファー溶液(30mL)を含むビーカーに添加し、室温で2時間にわたり撹拌して塩化メチレンを蒸発させて、ナノキャリアを形成させる。ナノキャリアの一部を、ナノキャリア懸濁液を遠心管に移して、75,600×gおよび4℃で35分間遠心分離し、上清を取り除き、ペレットをリン酸緩衝化食塩水中で再懸濁することにより、洗浄する。洗浄の手順を繰り返し、ペレットを、約10mg/mLの最終ナノキャリア分散のためにリン酸緩衝化食塩水中で再懸濁する。
【0199】
例2:ラパマイシンを含む金ナノキャリア(AuNC)の調製(仮想)
HS-PEG-ラパマイシンの調製:
乾燥DMF中のPEG酸ジスルフィド(1.0当量)、ラパマイシン(2.0~2.5当量)、DCC(2.5当量)およびDMAP(3.0当量)の溶液を、rtで一晩撹拌する。不溶性ジシクロヘキシルウレアを濾過により取り除き、濾過物をイソプロピルアルコール(IPA)に添加して、PEG-ジスルフィド-ジ-ラパマイシンエステルを沈殿させ、IPAで洗浄して乾燥させる。ポリマーを、次いで、DMF中の塩酸トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンで処置して、PEGジスルフィドをチオールPEGラパマイシンエステル(HS-PEG-ラパマイシン)に還元する。結果として生じるポリマーを、IPAからの沈殿により回収し、以前に記載されるように乾燥させ、H NMRおよびGPCにより分析する。
【0200】
金NC(AuNC)の形成:
冷却器を備えた1Lの丸底フラスコ中で、500mLの1mMのHAuCl4の水溶液を、加熱して、激しく撹拌しながら10分間にわたり還流する。50mLの40mMのクエン酸三ナトリウム溶液を、次いで、撹拌している溶液に速やかに添加する。結果として生じる深いワインレッドの溶液を、25~30分間還流し続け、熱を下げ、溶液を室温まで冷却する。溶液を、次いで、0.8μmのメンブレンフィルターを通して濾過し、AuNC溶液を得る。AuNCは、可視光の分光分析および透過型電子顕微鏡法を用いて特徴づけられる。AuNCは、直径約20nmであり、クエン酸によりキャッピングされており、520nmにおけるピーク吸収を有する。
【0201】
HS-PEG-ラパマイシンとのAuNCコンジュゲート:
150μlのHS-PEG-ラパマイシンの溶液(10mMのpH9.0の炭酸バッファー中10μΜ)を、1mLの直径20nmのクエン酸でキャッピングされた金ナノキャリア(1.16nM)に添加して、2500:1のチオールの金に対するモル比をもたらす。混合物を室温でアルゴン下において1時間にわたり撹拌して、金ナノキャリア上のクエン酸によるチオールの完全な交換を可能にする。PEG-ラパマイシンを表面上に有するAuNCを、次いで12,000gで30分間にわたり遠心分離することにより精製する。上清をデカントし、AuNC-S-PEG-ラパマイシンを含むペレットを、次いで1×PBSバッファーでペレット洗浄する。精製された金-PEG-ラパマイシンナノキャリアを、次いでさらなる分析およびバイオアッセイのための好適なバッファー中で再懸濁する。
【0202】
例3:イブプロフェンが接着したメソポーラスなシリカナノ粒子(仮想)
ゾル-ゲルプロセスを通してメソポーラスなSiO2ナノ粒子コアを作製する。ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)(0.5g)を、脱イオン水(500mL)中で溶解し、次いで、2MのNaOH水溶液(3.5mL)をCTAB溶液に添加する。溶液を30分間にわたり撹拌し、次いで、テトラエトキシシラン(TEOS)(2.5mL)を溶液に添加する。結果として生じるゲルを、3時間にわたり80℃の温度で撹拌する。形成する白色沈殿を、濾過により捕獲し、その後脱イオン水で洗浄して室温で乾燥させる。残りの界面活性剤を、次いでHClのエタノール溶液中での一晩の懸濁により粒子から抽出する。粒子をエタノールで洗浄し、遠心分離し、超音波処理により再分散させる。この洗浄の手順をさらに2回繰り返す。
【0203】
SiO2ナノ粒子を、次いで、(3-アミノプロピル)-トリエトキシシラン(APTMS)を用いて、アミノ基で官能化する。これを行うために、粒子をエタノール(30mL)中で再懸濁し、APTMS(50μL)を懸濁液に添加する。懸濁液を、室温で2時間にわたり静置し、次いで、周期的にエタノールを添加することにより容積を一定に保ちながら、4時間にわたり沸騰させる。遠心分離による5回の洗浄のサイクル、および純粋なエタノール中で再懸濁することにより、残りの反応物を取り除く。
【0204】
別の反応において、直径1~4nmの金の種(seed)を作製する。この反応において用いられる全ての水は、初めに脱イオンされ、次いでガラスから蒸留される。水(45.5mL)を、100mLの丸底フラスコに加える。撹拌しながら、0.2Mの水性NaOH(1.5mL)、およびその後にテトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムクロリド(THPC)の1%水溶液(1.0mL)を添加する。THPC溶液の添加の2分後、少なくとも15分間熟成させた10mg/mLの塩化金酸の水溶液(2mL)を添加する。水に対する透析を通して、金の種を精製する。
【0205】
コア-シェルナノキャリアを形成させるために、上で形成されたアミノ官能化SiO2ナノ粒子を、初めに、2時間にわたり室温で金の種と混合する。金で装飾されたSiO2粒子を、遠心分離を通して回収し、塩化金酸および炭酸水素カリウムの水溶液と混合して、金のシェルを形成させる。粒子を、次いで、遠心分離により洗浄し、水中で再分散させる。イブプロフェンナトリウムの溶液(1mg/L)中で72時間にわたり粒子を懸濁することにより、イブプロフェンをロードする。遊離イブプロフェンを次いで遠心分離および水中で再分散させることによりにより粒子から洗浄する。
【0206】
例4:シクロスポリンAを含有するリポソーム(仮想)
リポソームは、薄いフィルムの水和を用いて形成させる。1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)(32μmol)、コレステロール(32μmol)、およびシクロスポリンA(6.4μmol)を、純粋なクロロホルム(3mL)中で溶解する。この脂質溶液を50mLの丸底フラスコに加え、回転蒸発装置において60℃の温度で溶媒を蒸発させる。フラスコを、次いで、窒素ガスでフラッシュして、残りの溶媒を取り除く。リン酸緩衝化食塩水(2mL)および5個のガラスビーズをフラスコに加え、60℃で1時間にわたり振盪することにより脂質フィルムを水和して、懸濁液を形成させる。懸濁液を、小さな圧力管に移し、60℃で、30秒のパルスのサイクルを4回、各パルスの間を30秒間遅らせて、遠心分離する。懸濁液を、次いで、室温で2時間にわたり静置して、完全に水和させる。リポソームを遠心分離により洗浄し、その後、フレッシュなリン酸緩衝化食塩水中で再懸濁する。
【0207】
例5:ラパマイシンを含む合成ナノキャリア
材料
ラパマイシンは、TSZ CHEMから購入した(185 Wilson Street, Framingham, MA 01702;製品カタログ#R1017)。76%ラクチドおよび24%グリコリドを含有し、0.69dL/gの固有粘度を有するPLGAは、SurModics Pharmaceuticalsから購入した(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211. 製品コード7525 DLG 7A)。約5,000DaのPEGブロックおよび約40,000DaのPLAブロックを有するPLA-PEGブロックコポリマーは、SurModics Pharmaceuticalsから購入した(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211;製品コード100 DL mPEG 5000 5CE)。ポリビニルアルコール(85~89%加水分解物)は、EMD Chemicalsから購入した(製品番号1.41350.1001)。
【0208】
方法
溶液は、以下のとおり調製した:
溶液1:塩化メチレン中、75mg/mLのPLGAおよび25mg/mLのPLA-PEG。PLGAおよびPLA-PEGを純粋な塩化メチレン中で溶解することにより、溶液を調製した。
溶液2:塩化メチレン中100mg/mLのラパマイシン。ラパマイシンを純粋な塩化メチレン中で溶解することにより、溶液を調製した。
溶液3:100mMのpH8のリン酸バッファー中50mg/mLのポリビニルアルコール。
【0209】
水中油型エマルションを用いて、ナノキャリアを調製した。溶液1(1mL)、溶液2(0.1mL)および溶液3(3mL)を、小さい圧力管中で組み合わせて、Branson Digital Sonifier 250を用いて30%の振幅で60秒間超音波処理することにより、O/Wエマルションを調製した。O/Wエマルションを、70mMのpH8のリン酸バッファー溶液(30mL)を含むビーカーに添加し、室温で2時間にわたり撹拌して塩化メチレンを蒸発させ、ナノキャリアを形成させた。ナノキャリア懸濁液を遠心管に移し、75,000×gおよび4℃で35分間遠心分離し、上清を取り除き、ペレットをリン酸緩衝化食塩水中で再懸濁することにより、ナノキャリアの一部を洗浄した。洗浄の手順を繰り返し、ペレットを、約10mg/mLの最終ナノキャリア分散のためにリン酸緩衝化食塩水中で再懸濁した。
【0210】
ナノキャリアサイズは、動的光散乱により決定した。ナノキャリア中のラパマイシンの量は、HPLC分析により決定した。1mLの懸濁液あたりの乾燥ナノキャリアの総質量は、重量測定法により決定した。
【表a】
【0211】
例6:GSK1059615を含む合成ナノキャリア
材料
GSK1059615は、MedChem Expressから購入した(11 Deer Park Drive, Suite 102D Monmouth Junction, NJ 08852)、製品コードHY-12036。1:1のラクチド:グリコリド比、および0.24dL/gの固有粘度を有するPLGAは、Lakeshore Biomaterialsから購入した(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)、製品コード5050 DLG 2.5A。約5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび0.26DL/gの全体的な固有粘度を有するPLA-PEG-OMeブロックコポリマーは、Lakeshore Biomaterialsから購入した(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211;製品コード100 DL mPEG 5000 5K-E)。Cellgroリン酸緩衝化食塩水(1×)pH7.4(PBS(1×))は、Corningから購入した(9345 Discovery Blvd. Manassas, VA 20109)、製品コード21-040-CV。
【0212】
方法
溶液は、以下のとおり調製した:
溶液1:PLGA(125mg)およびPLA-PEG-OMe(125mg)を10mLのアセトン中で溶解した。
溶液2:GSK1059615を、1mLのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)中で10mgで調製した。
ナノキャリアは、溶液1(4mL)および溶液2(0.25mL)を小さなガラス圧力管中で組み合わせて、混合物を、20mLの超純水を含む250mLの丸底フラスコに、撹拌しながら滴加することにより、調製した。フラスコを、回転式蒸発デバイスに乗せて、減圧下においてアセトンを取り除いた。ナノキャリア懸濁液を遠心管に移し、75,600rcfおよび4℃で50分間にわたり遠心分離し、上清を取り除き、ペレットを1×PBS中で再懸濁することにより、ナノキャリアの一部を洗浄した。洗浄の手順を繰り返し、ペレットを1×PBS中で再懸濁して、ポリマーに基づいて10mg/mLの名目濃度を有するナノキャリア懸濁液を達成した。洗浄したナノキャリア溶液を、次いで、Pall製の1.2μmのPESメンブレンシリンジフィルター(パーツ番号4656)を用いて濾過した。同一のナノキャリア溶液を上記のとおり調製し、濾過のステップの後で最初のものと共にプールした。均質な懸濁液を、-20℃で凍結保存した。
【0213】
ナノキャリアサイズは、動的光散乱により決定した。ナノキャリア中のGSK1059615の量は、351nmでのUV吸収により決定した。1mLの懸濁液あたりの乾燥ナノキャリアの総質量は、重量測定法により決定した。
【表b】
【0214】
例7:ウイルス導入ベクター抗原を有する赤血球結合治療剤(仮想)
米国公開番号20120039989の教示に基づいて赤血球結合治療剤を調製し、抗原提示細胞標的免疫抑制剤として用いる。赤血球結合治療剤は、ERY1、ERY19、ERY59、ERY64、ERY123、ERY141およびERY162のいずれか1つ、ならびに本明細書において記載されるウイルス導入ベクター抗原、例えば、カプシドタンパク質(もしくはそれから誘導されるペプチド抗原)、またはタンパク質(もしくはそれから誘導されるペプチド抗原)、例えば、本明細書において記載される導入遺伝子によりコードされる治療用タンパク質(もしくはそれから誘導されるペプチド抗原)のいずれか1つを含んでもよい。
【0215】
例8:NF-kB経路の阻害剤を含む粒子(仮想)
米国公開番号20100151000の教示に従って、抗原提示細胞標的免疫抑制剤を調製する。粒子は、リポソームまたはポリマー粒子であってよく、本明細書において提供される免疫抑制剤のいずれか1つまたは米国公開番号20100151000において提供されるNF-kB経路の阻害剤のいずれか1つを含み、この阻害剤は、その全体において本明細書において参考として援用される。加えて、リポソームまたはポリマー粒子は、本明細書において記載されるウイルス導入ベクター抗原、例えばウイルスベクター抗原、例えばカプシドタンパク質(もしくはそれから誘導されるペプチド抗原)またはタンパク質(もしくはそれから誘導されるペプチド抗原)、例えば本明細書において記載される導入遺伝子によりコードされる治療用タンパク質(もしくはそれから誘導されるペプチド抗原)のいずれか1つをさらに含んでもよい。
【0216】
例9:遺伝子治療導入遺伝子を有するアデノウイルス導入ベクター(仮想)
アデノウイルス導入ベクターは、米国特許公開2004/0005293において提供される方法に従って作製する。かかるベクターは、本明細書において提供される導入遺伝子のいずれか1つを含んでもよい。例えば、ヒトアルファ1-アンチトリプシンプロモーター(AAT)からのヒトB-ドメイン欠損FVIIIのcDNAを発現するAd-AAT-hFVIIIベクターを調製する。ベクターサイズを最適化するため、およびベクターの再配列を回避するために、HPRTスタッファーフラグメントを使用する(Parks R J, Graham F L. A helper-dependent system for adenovirus vector production helps define a lower limit for efficient DNA packaging. J Virol. 1997, 71:3293-3298)。Cre66パッケージング細胞株を用いる。
【0217】
例10:ウイルス導入ベクターと免疫抑制剤にカップリングされた合成ナノキャリアとの共投与(仮想)
例のいずれか1つのウイルス導入ベクターを、共に、例えば本明細書において提供される抗原提示細胞標的免疫抑制剤のいずれか1つ、例えば例におけるものと同じ日に、臨床治験のために集められた対象に投与する。ウイルス導入ベクターに対する1以上の免疫応答を評価する。ウイルス導入ベクターに対する1以上の免疫応答のレベルは、抗原提示細胞標的免疫抑制剤の不在下(例えばウイルス導入ベクターが単独で投与される場合)においてウイルス導入ベクターを投与された対象、または対象の別の群における1以上の免疫応答のレベルとの比較により、評価することができる。態様において、反復共投与を、同様の様式において評価する。
【0218】
かかる治験の間に確立された情報の適用において、ウイルス導入ベクターを必要とする対象に、かかる対象が、抗原提示細胞標的免疫抑制剤と共投与されなかった場合にウイルス導入ベクターに対する望ましくない免疫応答を有することが予測される場合に、ウイルス導入ベクターと抗原提示細胞標的免疫抑制剤とを共に投与することができる。さらなる態様において、ウイルス導入ベクターによる処置を必要とし、ウイルス導入ベクターに対する望ましくない免疫応答を有するか、抗原提示細胞標的免疫抑制剤の利益なしではこれを有することが予測される対象の、ウイルス導入ベクターおよび合成ナノキャリアの共投薬をガイドするために、治験の間に確立された情報を用いるプロトコルを準備することができる。このようにして準備されたプロトコルを、次いで、対象、特にヒト対象を処置するために用いることができる。
【0219】
例11:遺伝子治療導入遺伝子を有するウイルス導入ベクターの、免疫抑制剤にカップリングされた合成ナノキャリアとの投与
組み換え緑色蛍光タンパク質を発現するアデノ随伴ウイルス(AAV-GFP)の、2回の連続した静脈内(i.v.)接種は、ブーストステージにおいてナノキャリア封入免疫抑制剤(NC)が共注射された場合に、肝細胞においてin vivoでより高いGFP発現をもたらした。
実験方法
オスC57BL/6マウスを用いた(5マウス/群)。動物に、200μLのAAV-GFPまたはAAV-GFP+ラパマイシンを含む合成ナノキャリア(NC)の混合物を、21日間の間隔にわたり、異なる反復で、1回または2回注射した(以下の表1を参照)。第1の注射後のd33において、(=2回注射した群については、第2の注射後のd12)、動物を安楽死させ、その肝臓をコラゲナーゼ4(Worthington, Lakewood, NJ)で処置し、メッシュを通し、細胞懸濁液全体をFACSによりGFP発現について分析した。簡単に述べると、最初に組織にコラゲナーゼ(100U)を灌流し、37℃でインキュベートし(30分間)、コラゲナーゼ上清を取り除き2%FBSでクエンチした。組織試料を、次いで、約2mm平方に切断し、繰り返し撹拌しながら消化し(コラゲナーゼ、400U)、濾過し(ナイロンメッシュ)、スピンダウンし(1,500rpm)、ペレットを氷冷2%FBS中で再懸濁した。
【0220】
第1の注射後の第14日において、全ての動物を出血させ、その血清を、以下のとおりAAVに対する抗体についてELISAで分析した。96ウェルプレートを、炭酸バッファー中で92時間にわたり、50μLのAAVで、2×109vg/mLでコートし、次いで、2時間にわたり300μLのカゼインでブロッキングした。試料を、50μLのカゼイン中で1:40希釈で添加し、2時間にわたりRTでインキュベートした。ウサギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA, 315-035-008)を二次抗体として用い(0.5μg/mL、1時間)、次いで、TMB基質を添加し(10分間)、その後停止溶液を添加した。プレートを450nmの波長で読み取り、570nmでのバックグラウンドを減算した。マウスモノクローナル抗AAV8抗体(Fitzgerald, Acton, MA, 10R-2136)を、陽性対照として役立てた。
【0221】
AAV-GFPの量:d0プライムにおいては1×10
10ウイルスゲノム(VG)、d21ブーストにおいては5×10
10VG。
用いられたナノキャリア封入免疫抑制剤(ラパマイシンまたはRapa)の量:プライム(群2、3および5)またはブースト(群3および4)のいずれにおいても、50μgのナノキャリアに封入されたRapa。
【表1】
【0222】
結果
AAVを注射されたマウスの肝臓において、AAV-GFPのみでプライムした後のブーストステージにおいてNCを利用した場合に、プライムおよびブーストの両方がAAV-GFPのみによるものであった場合と比較して、統計学的により高いレベルのGFP発現が見られた(
図1)。また、プライムおよびブーストの両方においてAAV-GFPをNCと共注射した場合にもより高いGFP発現に対する傾向が存在したが、単一の外れ値のために、それは、AAV-GFPのみによるプライム-ブーストに対する明確な統計学的優位性を示さなかった。プライム注射のみにおけるNCの利用は、GFP発現の上昇をもたらさなかった(
図1、群1対群2、および群5対群6)。集合的に、ブーストにおけるAAV-GFPとNCとの共投与が、現在のレジメンによる2回の組み換えAAVの注射を受けた動物において、より高いGFP発現を引き起こすと考えられる。このことは、AAV-GFPのみでブーストされた全ての動物(初回においてNCで処置されているか否かに関わらず)を、AAV-GFP+NCでブーストされた全ての動物に対してプロットすると顕著であり(
図2)、NCの存在下においてブーストされた9/10の動物は、全ての(10/10)NCなしでブーストされた動物より高いGFP発現を示した(前者における平均の発現の増大は>50%であった)。同様に、高度にGFP陽性の肝細胞のみを考慮した場合、ブーストの間のNCの利用は、プライムステージにおいてNCを利用したか否かに関わらず、NCなしでのAAV-GFPによる追加免疫よりも統計学的により高い数をもたらした(
図3)。また、NCなしでのAAV-GFPのブーストは、単回プライム免疫と比較しても低下したGFP発現をもたらしたことが明らかであった。
【0223】
別に、マウスを、d14に出血させ、その血清を、AAVに対する抗体の存在について試験した。この時点で、全マウスは、AAV-GFPで1回、NCの共投与ありまたはなしで注射を受けていた(各15マウスの2群を生じた)。
図4において見られるとおり、NCなしで単回AAV-GFP注射を受けた全ての15/15マウスは、AAVに対する抗体反応性を示し、正常血清対照(OD=0.227)より高い最大ODをもたらしたが、一方、NCと共投与されたAAVを投与されていたマウスには、検出可能なレベルのAAVに対する抗体を示したものはいなかった。単回のみのAAV免疫を使用した場合、NCがAAVと共投与されたマウスにおいて、抗AAV抗体のレベルはd21における基線よりも低いままであったが、一方、NCなしでAAVを投与されたマウスにおいては、これは上昇した(
図5)。単回注射後の33日において、未処置のマウスにおけるこれらのレベルは、なお中程度に上昇していたが、一方、NC処置群においては、5個体のうち4個体のマウスは、検出可能なAAVに対する抗体を有しなかった(
図5)。
【0224】
マウスに第21日にAAV-GFPでブーストした場合、未処置のマウスにおける抗体レベルは、著しく増大し続けたが、一方、ブーストにおいてNCのみを投与されたマウスにおいては、これは鈍化した(
図6および7)。興味深いことに、この後者の群における2個体のマウスは、d14(プライムにおける処置なし)においては陽性であったが、それらのAAVに対する抗体のレベルはd33までにバックグラウンドより下に低下した(
図7)。同時に、プライムにおいてNCで処置された8/10のマウスは、d21のブーストの後ですら、d33において検出可能な抗体を有しなかった(
図6および7)。AAVブーストにおけるNCの適用が、AAVに対する抗体の生成を遮断することにおいて僅かな影響を有していた可能性があるが、この点において、それは、ブーストにおけるNC処置なしと比較して統計学的に有意ではなかった(
図6および7)。したがって、プライムにおけるNC処置は、AAVに対する抗体の発生を遮断するために重要であると考えられ、後の時点におけるその投与もまた有益である。
【0225】
結果は、ウイルス導入ベクターに対する抗体応答を軽減するために、免疫抑制剤にカップリングされた合成ナノキャリアをウイルス導入ベクターと組み合わせて投与することの利益を示す。かかる利益は、発現のためのタンパク質をコードするウイルス導入ベクターと組み合わせた免疫抑制剤にカップリングされた合成ナノキャリアの共投与により見られた。したがって、抗ウイルス導入ベクター抗体応答を軽減するためのプロトコルは、本明細書において上に例示される。
【0226】
例12:ラパマイシンを含む合成ナノキャリア
材料
0.41dL/gの固有粘度を有するPLAを、Lakeshore Biomaterialsから購入した(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)、製品コード100 DL 4A。
約5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび全体で0.50DL/gの固有粘度を有するPLA-PEG-OMeブロックコポリマーを、Lakeshore Biomaterialsから購入した(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)、製品コード100 DL mPEG 5000 5CE。
ラパマイシンは、Concord Biotech Limitedから購入した(1482-1486 Trasad Road, Dholka 382225, Ahmedabad India)、製品コードSIROLIMUS。
ソルビタンモノパルミテートは、Sigma-Aldrichから購入した(3050 Spruce St., St. Louis, MO 63103)、製品コード388920。
EMPROVE(登録商標)ポリビニルアルコール(PVA)4-88、USP(85~89%加水分解されたもの、3.4~4.6mPa・sの粘度)は、EMD Chemicals Inc.から購入した(480 South Democrat Road Gibbstown, NJ 08027)、製品コード1.41350。
ダルベッコリン酸緩衝化食塩水1X(DPBS)は、Lonzaから購入した(Muenchensteinerstrasse 38, CH-4002 Basel, Switzerland)、製品コード17-512Q。
【0227】
方法
溶液は、以下のとおり調製した:
溶液1:ポリマー、ラパマイシンおよびソルビタンモノパルミテートの混合物は、PLAを37.5mg/mLで、PLA-PEG-Omeを12.5mg/mLで、ラパマイシンを8mg/mLで、およびソルビタンモノパルミテートを2.5で、ジクロロメタン中に溶解することにより調製した。
溶液2:ポリビニルアルコールを、100mMのpH8のリン酸バッファー中50mg/mLで調製した。
【0228】
O/Wエマルションは、溶液1(1.0mL)と溶液2(3mL)とを小さいガラス圧力管中で組み合わせ、10秒間ボルテックスすることにより調製した。処方物を、次いで、30%の振幅で1分間にわたる超音波処理によりホモジェナイズした。エマルションを、次いで、DPBS(30mL)を含むオープンビーカーに加えた。第2のO/Wエマルションを、上と同じ材料および方法を用いて調製し、次いで第1のエマルションおよびDPBSを含む同じビーカーに加えた。組み合わせたエマルションを、次いで室温で2時間にわたり撹拌して、ジクロロメタンを蒸発させ、ナノキャリアを形成させた。ナノキャリア懸濁液を遠心管に移して、75,600×gおよび4℃で50分間にわたり遠心分離し、上清を取り除き、ペレットを0.25%w/vのPVAを含むDPBS中で再懸濁することにより、ナノキャリアの一部を洗浄した。洗浄の手順を繰り返し、次いで、ペレットを0.25%w/vのPVAを含むDPBS中で再懸濁して、ポリマーに基づいて10mg/mLの名目濃度を有するナノキャリア懸濁液を達成した。ナノキャリア懸濁液を、次いで、0.22μmのPESメンブレンシリンジフィルター(Milliporeパーツ番号SLGP033RB)を用いて濾過した。濾過したナノキャリア懸濁液を、次いで-20℃で保存した。
【0229】
ナノキャリアサイズは、動的光散乱により決定した。ナノキャリア中のラパマイシンの量は、HPLC分析により決定した。1mLの懸濁液あたりの乾燥ナノキャリアの総質量は、重量測定法により決定した。
【表c】
【0230】
例13:遺伝子治療導入遺伝子を有するウイルス導入ベクターの単回投与は、抗ベクター抗体応答を誘導し、これは免疫抑制剤にカップリングされた合成ナノキャリアとの共投与により阻害することができる
CMVプロモーター下において組み換え緑色蛍光タンパク質をコードするアデノ随伴ウイルス(AAV-GFP)(Virovek, Hayward, CA)の単回静脈内(i.v.)投与は、抗AAV抗体応答をもたらし、これは、ナノキャリア封入免疫抑制剤(例12により生成されたもの)との共投与により阻害された。
【0231】
実験方法
オスC57BL/6マウスを用いた(5~15マウス/群)。動物に、i.v.で、200μLのAAV8-GFP、または、AAV8-GFP+NC、ラパマイシンを含むPLGAナノキャリアの混合物を注射した(以下の表2)。処置後の第14日において、全ての動物を出血させ、その血清を、ELISAによりAAV8に対する抗体について分析した。簡単に述べると、96ウェルプレートを、50μLのAAV8で、炭酸バッファー中で2×109ベクターゲノム(vg)/mLでコートし、次いで、2時間にわたり300μLのカゼインでブロッキングした。試料を、50μLのカゼイン中1:40希釈で添加し、2時間にわたり室温(RT)でインキュベートした。セイヨウワサビペルオキシダーゼ共役ウサギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA, 315-035-008)を二次抗体として用い(0.5μg/mL、1時間)、次いでTMB基質を添加し(10分間)、その後停止溶液を添加した。プレートを、次いで450nmの波長で読み出し、570nmでのバックグラウンドを減算した。マウスモノクローナル抗AAV8抗体(Fitzgerald, Acton, MA, 10R-2136)を、陽性対照として役立てた。
【0232】
AAV-GFPの量:第0日(プライム)においては1×10
10ウイルスゲノム(vg)、第21日(ブースト)においては5×10
10vg。
用いられたナノキャリア封入ラパマイシン(Rapa)の量:50μgのナノキャリアに封入されたラパマイシン。
【表2】
【0233】
マウスを、d14に出血させ、その血清を、AAV8に対する抗体の存在について試験した。この時点で、全マウスは、AAV8-GFPによる注射を1回、ナノキャリアの共投与ありまたはなしで受けていた(各15マウス)。
図8において見られるように、ナノキャリアなしで単回AAV-GFP注射を受けた全マウスが、AAV8に対する抗体反応性を示し、正常血清対照(OD=0.227)より高い抗体レベルをもたらしたが、一方で、NCと共投与されたAAV8を投与されたマウスは、検出可能なレベルのAAV8に対する抗体を、殆どまたはまったく示さなかった。抗AAV8抗体のレベルは、NC処置群(n=5)においては、d21において基線またはそれより低くあり続けたが、一方で、これは、NCなしでAAV8-GFPを投与されたマウスにおいては上昇した(
図9)。AAV8-GFPの単回注射後の第33日において、抗AAV8未処置のマウスにおける抗体レベルは中程度に増大し続けたが、一方で、NC処置群においては、5個体中4個体のマウスは、検出可能なAAVに対する抗体を有しなかった(
図9)。
【0234】
結果は、ウイルス導入ベクターに対する抗体応答を軽減するために、免疫抑制剤にカップリングされた合成ナノキャリアを、ウイルス導入ベクターと組み合わせて投与することの利益を示す。かかる利益は、発現のためのタンパク質をコードする導入遺伝子を含むウイルス導入ベクターと組み合わせた、免疫抑制剤にカップリングされた合成ナノキャリアの共投与により見られた。したがって、抗ウイルス導入ベクター抗体応答を軽減するためのプロトコルが、本明細書において例示される。
【0235】
例14:遺伝子治療導入遺伝子を有するウイルス導入ベクターと免疫抑制剤にカップリングされた合成ナノキャリアとの共投与は、抗AAV抗体応答を阻害する
実験方法
オスC57BL/6マウスを用いた(5マウス/群)。動物に、表3において示されるとおり、第0日および/または第21日において、200μLのAAV8-GFP(Virovek, Hayward, CA)、またはAAV8-GFP+NCの混合物(例12において生成されたもの)を注射した。第0日および33日に血清を収集し、上記のとおりELISAにより抗AAV8抗体レベルについて分析した。
AAV-GFPの量:d0プライムにおいては1×1010ウイルスゲノム(vg)、d21ブーストにおいては5×1010vg。
用いられたナノキャリア封入免疫抑制剤(ラパマイシンまたはRapa)の量:プライム(群2および4)またはブースト(群3および4)のいずれにおいても、50μgのナノキャリアに封入されたRapa。
【0236】
【0237】
結果
第0日にNCの不在下においてAAV8-GFPを注射されたマウスは、強力な抗AAV8抗体応答を示し、これは、第21日におけるAAV8-GFPの第2の注射の後で著しく増大した(
図10)。しかし、第21日にNCをAAV8-GFPと共投与した場合、平均の抗体応答は、著しく鈍化した。興味深いことに、この後者の群における、d14においては抗体陽性であった2個体のマウスは、d33においては検出可能なレベルのAAV8に対する抗体を有しなかった(
図10)。しかし、抗AAV8抗体力価は、2個体の他のマウスにおいては増大した。対照的に、第1のAAV8-GFP注射の時点(第0日)において共投与されたNCは、第14日において抗AAV8抗体応答を完全に阻害した。抗AAV8抗体はまた、第21日におけるAAV8-GFP単独の第2の投与の後で、第33日において5個体のうちの4個体のマウスにおいて阻害された。第0日および21日の両方におけるNCの共投与は、同様の傾向を示した。したがって、AAVの第1の投与の時点におけるNC処置は、AAVに対する抗体の発生を遮断するために重要である。AAVの反復投薬の際のNCのさらなる投与は、潜在的に有益であり得る。
【0238】
結果は、ウイルス導入ベクターに対する抗体応答を軽減するために、免疫抑制剤にカップリングされた合成ナノキャリアを、ウイルス導入ベクターと組み合わせて投与することの利益を示す。かかる利益は、発現のためのタンパク質をコードするウイルス導入ベクターと組み合わせた免疫抑制剤にカップリングされた合成ナノキャリアの共投与により見られた。したがって、抗ウイルス導入ベクター抗体応答を軽減するためのプロトコルが、本明細書において例示される。
【0239】
例15:免疫抑制剤にカップリングされた合成ナノキャリアの治療的投与は、ウイルス導入ベクターの反復投薬の際の導入遺伝子発現の維持を増強する
組み換え緑色蛍光タンパク質をコードするアデノ随伴ウイルス(AAV8-GFP)(Virovek, Hayward, CA)の2回の連続した静脈内(i.v.)接種は、発現のためのタンパク質をコードするウイルス導入ベクターの反復投与の時点においてナノキャリア封入免疫抑制剤(NC)(例12において生成されたもの)を共注射した場合に、肝細胞においてin vivoで、より高いGFP発現をもたらした。
【0240】
実験方法
オスC57BL/6マウスを用いた(5マウス/群)。動物に、第0日に、200μLのAAV8-GFPをNCの不在下において注射した。1群の動物には、さらなる処置を与えなかったが、一方で、他の群には、第21日において、50μgのラパマイシンを運搬するNCの共投与ありまたはなしで、AAV8-GFPの第2の用量を投与した(以下の表4を参照)。第1の注射後のd33(2回注射した群については第2の注射後の第12日)において、動物を安楽死させ、それらの肝臓を、コラゲナーゼ4(Worthington, Lakewood, NJ)で処置し、メッシュを通して、細胞懸濁液全体を、フローサイトメトリーによりGFP発現について分析した。簡単に述べると、組織を、初めに、コラゲナーゼ(100U)で灌流し、37℃で30分間にわたりインキュベートした。コラゲナーゼ上清を取り除き、2%FBSでクエンチした。組織試料を、次いで、約2mm平方に切断し、繰り返し撹拌しながら消化させ(コラゲナーゼ、400U)、濾過し(ナイロンメッシュ)、スピンダウンし(1,500rpm)、ペレットを氷冷2%FBS中で再懸濁した。
【0241】
AAV-GFPの量:d0においては1×10
10ウイルスゲノム(vg)、d21においては5×10
10vg(群2および3のみ)。
用いられたナノキャリア封入免疫抑制剤(ラパマイシンまたはRapa)の量:第21日において、50μgのナノキャリアに封入されたRapa(群3)。
【表4】
【0242】
結果
AAV8-GFP処置マウスの肝臓において、NCをd21にAAV8-GFPの第2の注射と共投与した場合に、NCの不在下においてAAV8-GFPの第2の注射を受けた動物と比較して、統計学的により高いレベルのGFP発現が見られた(
図11)。AAV8-GFPの第2の注射に加えてNCを投与されたマウスにおいて観察されたGFP発現のレベルは、第0日にAAV8-GFPの単用量のみを投与されたマウスにおいて観察されたものと同様であった。これらの結果は、AAV8-GFPの第2の用量の時点におけるNCの共投与が、恐らくは形質導入されたGFP発現肝細胞を除去することができる細胞溶解性T細胞を阻害することにより、GFPの発現を維持するために重要であったことを示す。
【0243】
結果は、ベクター導入遺伝子の発現を維持するために、免疫抑制剤にカップリングされた合成ナノキャリアを、ウイルス導入ベクターと組み合わせて投与することの利益を示す。かかる利益は、発現のためのタンパク質をコードする導入遺伝子を含むウイルス導入ベクターと組み合わせた、免疫抑制剤にカップリングされた合成ナノキャリアの共投与により見られた。
【0244】
例16:免疫抑制剤にカップリングされた合成ナノキャリアの共投与は導入遺伝子発現を増強する
実験方法
オスC57BL/6マウスを用いた(5マウス/群)。動物に、第0日(群1~5)および/または第21日(群1~4、6)に、200μLのAAV-赤色蛍光タンパク質(RFP)(Virovek, Hayward, CA)注射した(以下の表5を参照)。50μgのラパマイシンを運搬するNCを、第0日(群2、4)および/または第21日(群3、4)に共投与した。第1の注射後のd33(2回注射した群については第2の注射後の第12日)において、動物を安楽死させ、それらの肝臓を、コラゲナーゼ4(Worthington, Lakewood, NJ)で処置し、メッシュを通して、細胞懸濁液全体を、フローサイトメトリーによりRFP発現について分析した。簡単に述べると、組織を、初めに、コラゲナーゼ(100U)で灌流し、37℃で30分間にわたりインキュベートした。コラゲナーゼ上清を取り除き、2%FBSでクエンチした。組織試料を、次いで、約2mm平方に切断し、繰り返し撹拌しながら消化させ(コラゲナーゼ、400U)、濾過し(ナイロンメッシュ)、スピンダウンし(1,500rpm)、ペレットを氷冷2%FBS中で再懸濁した。
【0245】
【0246】
結果
NCの不在下において1回または2回のAAV8-RFPの注射を投与された動物は、第33日において同様に低いレベルのRFP発現を示した(
図12)。AAV8-RFPの第1の注射の時点においてNCで共処置されたマウスは、RFPの発現が増大する傾向を示したが、これは統計学的に有意ではなかった。対照的に、AAV8-RFPの第2の注射の時点(第21日)においてNCで共処置されたマウスは、統計学的に有意なRFP発現の増大を示した。第0日および第21日の両方においてNCで処置されたマウスもまた、第0日および21日においてNCの不在下においてAAV8-RFPを投与された対照動物と比較して、RFP発現の有意な増大を示した。
【0247】
結果は、ベクター導入遺伝子の発現を増強するために、免疫抑制剤にカップリングされた合成ナノキャリアを、ウイルス導入ベクターと組み合わせて投与することの利益を示す。かかる利益は、発現のためのタンパク質をコードする導入遺伝子を含むウイルス導入ベクターと組み合わせた、免疫抑制剤にカップリングされた合成ナノキャリアの共投与により見られた。
【0248】
例17:遺伝子治療導入遺伝子を有するウイルス導入ベクターと免疫抑制剤にカップリングされた合成ナノキャリアとの投与は、CD8+T細胞の活性化を阻害する
組み換え緑色蛍光タンパク質を発現するアデノ随伴ウイルス(AAV-GFP)(Virovek, Hayward, CA)の2回の連続した静脈内(i.v.)接種は、in vivoで、ナノキャリア封入免疫抑制剤(NC)をAAV8-GFP注射と共注射した場合に、AAVカプシドタンパク質およびGFPに対してより低い細胞溶解性T細胞(CTL)の活性をもたらした。
【0249】
実験方法
オスC57BL/6マウスを用いた(3または6マウス/群)。動物に、第0日および第17または21日に、200μLのAAV-GFPまたはAAV-GFP+NCの混合物を注射した(以下の表6を参照)。第0日および21日に注射された群(n=3マウス/群)を、第1の注射後の第28日(第2の注射後の第7日)に、抗原特異的CTL活性についてアッセイした。簡単に述べると、シンジェニックなナイーブなマウスからの脾細胞を、0.5μMまたは5μMのCFSEで標識し、それぞれCFSE低およびCFSE高細胞集団を生じた。CFSEhigh細胞を、AAVカプシドからの1μg/mLの優性なMHCクラスI結合ペプチド(配列NSLANPGIA、アミノ酸517~525)、およびGFPからの優性なMHCクラスIペプチド(HYLSTQSAL、aa200~208)と共に、37℃で1時間にわたりインキュベートし、一方、CFSE低細胞は、培地のみにおいてインキュベートした。対照CFSE定細胞およびペプチドでパルスしたCFSE高標的細胞を、1:1の比において混合し(合計2.0×107細胞)i.v.で注射した。標識細胞の注射の18時間後に、脾臓を採取し、処理して、フローサイトメトリーにより分析した。ナイーブマウスにおける対照の回復速度(RR)に基づいて、特異的な細胞傷害性を計算した:(CFSE低細胞のパーセンテージ)/(CFSE高細胞のパーセンテージ)。特異的溶解率(%)=100×[1-(ナイーブマウスからの細胞のRR/免疫されたマウスからの細胞のRR)または100×[1-(RRnaive/RRimm)]。
【0250】
第0日および17日に注射された群(n=6マウス/群)を、第1の注射後のd25(第2の注射後の第7日)に、抗原特異的IFN-γ産生についてアッセイした。簡単に述べると、脾細胞を単離し、予め抗IFN-γ抗体が吸収されたウェルにおいて播種し、in vitroで7日間にわたりAAVカプシドまたはGFPペプチド(1μg/mL)で再刺激した。ビオチン化抗IFN-γ抗体およびストレプトアビジン-HRPによりELISpotsを現像させて、スポットを計数した。非特異的バックグラウンドを減算した。
【0251】
AAV-GFPの量:d0プライムにおいては1×10
10ウイルスゲノム(vg)、d21ブーストにおいては5×10
10vg。
用いられたナノキャリア封入免疫抑制剤(ラパマイシンまたはRapa)の量:プライムおよびブーストの両方において、50μgのナノキャリアに封入されたRapa(群2)。
【表6】
【0252】
結果
NCで共処置された動物は、in vivoで、AAVカプシドとGFPとの優性なMHCクラスIペプチドの組み合わせでパルスされた細胞を標的とするCTL活性を、より低いレベルで示した(
図13)。同様に、NCで共処置されたマウスは、非NC処置群と比較して、抗原特異的IFN-γ産生細胞の著しい減少を示した(
図14および15)。特に、4/6のマウスが、250,000細胞/ウェルの密度で、AAVカプシドタンパク質に対するリコール応答を示したが、一方、NC処置群においてこのペプチドに対して応答したマウスは存在しなかった(0/6)(
図14、p<0.05)。さらに、AAV8-GFP免疫群における3/6のマウスが、免疫優性なGFPペプチドに対して応答を示したが、一方、NC処置群においてこのペプチドに対して応答したマウスは存在しなかった(0/6)(
図15、p=0.01)。
集合的に、プライムおよびブーストにおけるAAV-GFPおよびNCの共投与が、ウイルスカプシドおよびトランスジェニックタンパク質に対する細胞傷害性T細胞応答の抑制をもたらすと考えられる。
【0253】
例18:遺伝子治療導入遺伝子を有するウイルス導入ベクターと免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアとの投与
実験方法
オスC57BL/6マウスを用いた(5マウス/群)。動物に、第0日に、i.v.で、1010vgのrAAV2/8-ルシフェラーゼ(rAAV2/8-Luc)(本明細書において、例えば例21または22において提供される方法と同様の様式において生成されたもの)またはrAAV2/8-Luc+100μgのラパマイシンを含む合成ナノキャリア(NC)を注射した(以下の表7を参照)。第14日において、全ての動物が、ヒト第IX因子(hFIX)をコードする1010vgのrAAV2/8(rAAV2/8-hFIX)のi.v.注射を受けた(本明細書において、例えば例21または22において提供される方法と同様の様式において生成されたもの)。多様な時点において血清を収集し、抗AAV抗体レベルおよびhFIXタンパク質レベルについてELISAによりアッセイした。
【0254】
図16は、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの投与のプロトコルおよびタイミングを説明する。100μgのラパマイシンを含む合成PLGAナノキャリア(NC)または対照の空のナノ粒子(空NP)を、第0日に、i.v.でrAAV2/8-Lucベクター(10
10vg)と共投与した(N=5/群)。全ての群に、第14日に、ヒト第IX凝固因子(hFIX)をコードするrAAV2/8ベクターの注射(i.v.)を行った。データは、AAV8-Lucと共投与された免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの単回投与により、抗AAV8抗体の発生を予防するかまたは遅延させることができることを示す(
図17)。重要なことに、rAAV2/8-ルシフェラーゼとのNCの共投与は、第14日に投与されたrAAV2/8-hFIXからのhFIXの効率的な発現を可能にするために十分に、抗AAV8抗体形成を阻害した。対照的に、空NPで処置された動物は、抗AAV8抗体を発生させ、これが、第14日に投与されたrAAV2/8-hFIXベクターからのhFIXの効率的な発現を妨げた。これらのデータは、AAVの第1の適用の時点における免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの共投与が、同じ血清型のAAVの有効な反復投薬を可能にすることを示す。
【表7】
【0255】
例19:遺伝子治療導入遺伝子を有するウイルス導入ベクターと免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアとの複数の投与
実験デザインを、
図18において示す。オスC57BL/6マウスを用いた(5マウス/群)。第0日に、ラパマイシンを含む合成ナノキャリア(NC)(100μgのラパマイシン)を、i.v.でrAAV2/8-Lucベクター(本明細書において、例えば例21または22において提供される方法と同様の様式において生成されたもの)(1x10
11vg)と共投与した(N=5/群)(表8)。マウスに、次いで、第21日において、rAAV2/8-hFIX(本明細書において、例えば例21または22において提供される方法と同様の様式において生成されたもの)をラパマイシンを含む合成ナノキャリア(100μgのラパマイシン)と共に投与することにより、負荷をかけた。対照群に、第0日および21日において、NCの代わりに空NPを投与した。
【表8】
【0256】
結果は、合成ナノキャリア注射と、第1(rAAV2/8-Luc)および第2(rAAV2/8-hFIX)の両方のウイルス導入ベクターの注射との共投与が、抗AAV8抗体応答を阻害し(
図19、左パネル)、AAV8に対する中和抗体の力価を低下させることを示した(表9)。抗AAV8抗体の阻害は、より高いレベルのAAV2/8-hFIXベクターのコピー数を可能にし(
図19、中央のパネル)、これが、次いで、hFIX導入遺伝子の強力な発現を提供した(
図19、右パネル)。空のナノ粒子で処置された対照群において、第20日において、数個体の動物が、低レベルの抗体を有したことに注意する。これらの動物のうちの2個体は、中間レベルのベクターのコピー数、および第21日におけるrAAV2/8-hFIXの投与に応答して、いくらかのhFIXの発現を有した。しかし、対照動物のうちの3個体は、非常に低いベクターコピー数を示し、検出可能なレベルのFIX発現を示さなかった。
【0257】
したがって、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの複数の投与により、抗原特異的抗AAV8抗体の誘導を完全に予防することができ、第2のAAVの注射による高レベルの導入遺伝子発現を可能にすることができることが示された。
【表9】
【0258】
例20:抗原特異性
実験デザインを、
図20において示す。第0日に、免疫抑制剤(100μgのラパマイシン)を含む合成ナノキャリアまたは対照の空のナノ粒子を、i.v.で、rAAV2/8-Lucベクター(本明細書において、例えば例21または22において提供される方法と同様の様式において生成されたもの)(1x10
11vg/マウス)と同時に投与した。第21日に、マウスに、rAAV5-hFIXのi.v.注射(本明細書において、例えば例21または22において提供される方法と同様の様式において生成されたもの)(1×10
11vg/マウス)または完全フロイントアジュバント(CFA)中で乳化したヒト第IX因子(hFIX)タンパク質のi.m.注射のいずれかを行った(表10)。
【表10】
【0259】
結果は、第0日におけるi.v.でのラパマイシンを運搬する合成ナノキャリアとrAAV2/8ベクター(AAV2/8-Luc)との共投与が、第21日に投与されたAAV5ベクター(AAV5-hFIX)に対する抗体応答に対して顕著な影響を有しなかったことを示した(
図21、左パネル)。ラパマイシンを含むNCで処置された動物は、空NPで処置されたマウスと比較して抗AAV5抗体応答の短期の遅延を有した。これはおそらくは、AAV8に対してプライムされ、AAV5に対して交差反応性であった、空NP処置マウスにおけるB細胞の存在に起因する。しかし、NC処置マウスの抗AAV5抗体応答は、すぐに、空NP処置群の抗AAV5抗体応答に並ぶ。
【0260】
対照的に、第21日にAAV2/8-FIXを投与された動物は、抗AAV8抗体を殆どまたは全く示さなかった。これらのデータは、抗AAV抗体応答を阻害することに対するNC処置の効果が、それが共投与されたAAV血清型(すなわちAAV8)に対して特異的であったこと、およびマウスを慢性的に免疫抑制された状態にはしないことを示す。同様に、第0日にNCとrAAV2/8-Lucとで共処置されたマウスは、第21日において、完全フロイントアジュバント(CFA)中の組み換えhFIXタンパク質による免疫化に対して強力な応答を示した(
図21、右パネル)。抗hFIX抗体応答は、第0日においてNCの代わりに空NPで処置されたマウスのものと区別不能であった。したがって、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアとAAVとの共投与は、慢性的な免疫抑制をもたらさないことが示された。
【0261】
例21:遺伝子治療導入遺伝子を有するAAV5導入ベクター(仮想)
ART-I02は、以前に記載されるとおり作製する(Matsushita T, et al. Gene Ther. 1998; 5:938-945)。プラスミドは、本明細書において提供される導入遺伝子のいずれか1つを、NF-κBプロモーターおよびヒト成長ホルモンポリアデニル化シグナルの制御下においてコードする。目的の遺伝子はまた、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下にあってもよい。Gao GP, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2002; 99: 11854-11859において記載されるように、導入遺伝子カセットは、AAV-2末端逆位反復配列に隣接し、AAV5からのカプシド中にパッケージングされる。ベクターを、クロマトグラフィーと塩化セシウム密度勾配遠心分離との組み合わせにより精製することにより、空カプシドを含まない画分を生じる。ベクターの力価は、特異的プライマーおよびプローブを用いるqPCRにより、決定することができる。同様に、例として、ホタルルシフェラーゼをコードするrAAV5ベクターを作製することができる。
【0262】
例22:遺伝子治療導入遺伝子を有するAAV2/8およびAAV2/5導入ベクター(仮想)
AAV2-HCR-hAAT-FIXからのMscIBsaIおよびBsaITsp45Iフラグメントを、サルウイルス40のlateポリA(SV40 LpA)にライゲーションすることにより、scAAV骨格プラスミドを構築する。結果として生じるプラスミドは、完全な5’末端分解部位(terminal resolution site)(trs)を有し、3’trsが欠失した、改変されたAAV2骨格を含む。標準的なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて、ヒトアポリポタンパク質の肝調節領域(hepatic control region)(HCR)、5’非翻訳領域を含むヒトアルファ1アンチトリプシン(hAAT)遺伝子プロモーターの連続したセグメントの増幅により、LP1エンハンサー/プロモーターを構築し、位置4582(gからcへ)、4580(gからcへ)、4578(aからcへ)、および4561(aからtへ)において改変された、改変SV40 small t抗原イントロン(SV40イントロン)の上流で、改変されたAAV2骨格中にクローニングすることができる。野生型hFIXのcDNA、または3’非翻訳領域(UTR)を有しない他の目的のcDNAを、AAV-HCR-hAAT-hFIXからPCR増幅し、改変されたSV40イントロンの下流に挿入して、scAAV-LP1-hFIXを作製する。高度に発現される真核生物遺伝子において最も頻繁に見出されるコドンを用いて、コドン最適化されたhFIXを作製し、オリゴヌクレオチドとして合成し、その後、ライゲーションにより組み立てて、PCR増幅し、配列決定し、その後、AAVLP1骨格中にクローニングして、sc-AAV-LP1-hFIXcoを作製する。ssおよびscAAVベクターは、アデノウイルスフリー一過性トランスフェクション(adenovirus-free transient transfection)法により作製する。
【0263】
XX2およびpAAV5-2に基づくpLT-RCO3と称されるキメラAAV2 Rep-5Capパッケージングプラスミドを用いて、AAV5-シュードタイプベクター粒子を作製する。加えて、パッケージングプラスミドpAAV8-2を用いて、AAV8-シュードタイプベクターを作製する。AAV2/5および2/8ベクターを、イオン交換クロマトグラフィー法により精製する。ベクターゲノム(vg)の力価は、スーパーコイルプラスミドDNAを標準物として用いる定量的スロットブロット(slotblot)により、決定することができる。かかるウイルスベクターは、本明細書において提供される導入遺伝子のいずれか1つを含んでもよい。
【0264】
例23:遺伝子治療導入遺伝子を有するAAV8導入ベクター(仮想)
マウスゲノムAlbセグメント(NCBI参照配列:NC_000071.6中の90474003-90476720)を、PCRで増幅して、AAV2末端逆位反復配列の間で、改変されたpTRUF骨格中のBsrGIおよびSpeI制限部位に挿入することができる。リンカーコード配列(グリシン-セリン-グリシン)に先行され、後にanNheI制限部位が続く、最適化されたP2Aコード配列は、Bpu10I制限部位中にあってよい。コドン最適化されたF9コード配列を、NheI部位中に挿入して、rAAV8ベクターの構築において役立ち得るpAB269を得ることができる。逆方向の対照(inverse control)を構築するために、BsiWI制限部位からNheI制限部位までの内部セグメントを、適切なPCRプライマーを用いて増幅することができる。最終的なrAAV産生プラスミドは、EndoFree Plasmid Megaprep Kit(Qiagen)を用いて作製することができる。
【0265】
rAAV8ベクターは、Grimm et al., J. Virol. 80, 426-439 (2006)において記載されるように、Ca3(PO4)2トランスフェクションプロトコルと、その後のCsCl勾配精製を用いて、作製することができる。定量的ドットブロットにより、ベクターを力価決定することができる。
Barzel et al., 364, Nature, Vol. 517, 2015において記載されるとおり、上記のようなベクターを用いて、血友病Bマウスにおける出血の素因の寛解が示された。特に、ベクターは、肝細胞において、アルブミン対立遺伝子中への組み込みを達成した。F9は、オン・ターゲット(on-target)な組み込みから産生され、リボソームによるスキッピングは高度に効率的であった。安定なF9血漿レベルが得られ、処置されたF9欠損マウスは、正常な凝血時間を有した。
【0266】
例24:遺伝子治療導入遺伝子を有するAAV9導入ベクター(仮想)
「第1世代」のE1/E3を欠失した複製欠損アデノウイルスアデノウイルスコンストラクトは、Kypson, et al. J Thorac Cardiovasc Surg. 1998およびAkhter, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 1997; 94: 12100 -12105において記載されるように作製することができる。b2ARコンストラクト(Adeno-b2AR)および導入遺伝子は、適切なプロモーターにより駆動され得る。アデノウイルスのラージスケール調製は、感染したエプスタイン・バーの核抗原をトランスフェクトされた293細胞から精製することができる。
Shah et al., Circulation. 2000;101:408-414において記載されるとおり、左または右いずれかの冠動脈の経皮のサブセレクティブ(subselective)カテーテル法、および上記のように作製されたマーカー導入遺伝子を含むアデノウイルスベクターの注入を受けたウサギは、チャンバー特異的な様式において導入遺伝子を発現した。加えて、皮下アデノウイルスにより媒介される治療用導入遺伝子の冠内送達が実行可能であること、および急性の全体的左心室機能を増強することができることが結論付けられた。
【0267】
例25:遺伝子治療導入遺伝子を有するレンチウイルス導入ベクター(仮想)
以下を調製することができる:標的細胞の組み込みを可能にするための、レンチウイルスLTRの間に挿入されたパッケージング配列および導入遺伝子を含む、レンチウイルス発現プラスミド;pol、gag、revおよびtatウイルス遺伝子をコードし、rev-応答エレメントを含む、パッケージングプラスミド;ならびに、ウイルスエンベロープ遺伝子のタンパク質をコードする、シュードタイピングプラスミド。HEK 293T細胞を、前述のものによりトランスフェクトすることができる。HEK 293T細胞のトランスフェクションの後で、組み換えレンチウイルスベクターを含む細胞上清から、レンチウイルスベクターを得ることができる。
【0268】
例26:遺伝子治療導入遺伝子を有するHIVレンチウイルス導入ベクター(仮想)
HIVレンチウイルス導入ベクターは、米国公開番号20150056696の方法に従って調製する。hPEDF CDSフラグメントは、適切なプライマーを用いて、鋳型としてヒト網膜色素上皮細胞株ARPE-19(American Type Culture Collection、ATCC)のcDNAからPCR増幅する。本明細書において記載されるタンパク質のいずれか1つについての代替フラグメントを、同様に得ることができる。hPEDFフラグメントを、ゲル回収により得、TAクローニング法により、製造者の指示に従って、pLenti6.3/V5-TOPO.RTM.ベクター(Invitrogen)中にライゲーションする。ライゲーションされたhPEDFフラグメントの配列を、シークエンシングにより検証する。
【0269】
例27:遺伝子治療導入遺伝子を有するSIVレンチウイルス導入ベクター(仮想)
SIVレンチウイルス導入ベクターは、米国公開番号20150056696の方法に従って調製する。SIV遺伝子導入ベクター、パッケージングベクター、rev発現ベクター、およびVSV-G発現ベクターを入手し、hPEDFフラグメントを遺伝子導入ベクター中に導入する。遺伝子導入ベクター中への導入のための、本明細書において記載されるタンパク質のいずれか1つについての代替フラグメントを、同様に得ることができる。
ヒト胎児腎臓細胞由来の細胞株293T細胞を、15cmの直径を有するプラスチックのペトリ皿1枚当たり約1×107細胞の細胞密度で播種し(翌日には70~80%の細胞密度)、10%ウシ胎仔血清を補充した20mlのD-MEM培養培地(Gibco BRL)中で24時間にわたり培養する。24時間の培養の後、培養培地を、10mlのOPTI-MEM培養培地(Gibco BRL)で交換する。
【0270】
1枚のペトリ皿について、10μgの遺伝子導入ベクター、5μgのパッケージングベクター、2μgのrev発現ベクターおよび2μgのVSV-G発現ベクターを、1.5mlのOPTI-MEM培地中に溶解し、40μlのPLUS Reagent試薬(Invitro Co.)を添加する。結果として生じる混合物を、撹拌し、室温で15分間にわたり静置する。60μlのLIPOFECT AMINE試薬を1.5mlのOPTI-MEM培地で希釈することにより希釈溶液を得る;結果として生じる混合物を、撹拌し、室温で15分間にわたり静置する。結果として生じるDNA複合体を、上記のペトリ皿中の細胞上に滴加する。ペトリ皿を、均一な混合物に達するまで慎重に振盪して、次いでインキュベートする。20%のウシ胎仔血清を含む13mlのD-MEM培地を添加する。上清を回収する。
【0271】
例28:遺伝子治療導入遺伝子を有するHSV導入ベクター(仮想)
HSV導入ベクターは、米国公開番号20090186003の方法に従って調製する。HSV-1(F)株は、継代数が低い臨床分離株であり、プロトタイプHSV-1株として用いられる。マウス初期増殖応答-1プロモーター(Egr-1)の転写制御下においてマウスインターロイキン12(mIL-12)を発現するM002を、構築する。あるいは、本明細書において記載されるタンパク質のいずれか1つを、適切なプロモーターの制御下においてコードする、類似のコンストラクトを調製することができる。pBluescript-SK+(Stratagene)中にmIL-12のp40およびp35サブユニットを含むプラスミドを入手する。HindIII(5’末端)およびBamHI(3’末端)による消化によりp40サブユニットを取り除き、NcoI(5’末端)およびEcoRI(3’末端)による消化によりp35サブユニットを取り除く。配列内リボソーム進入部位またはIRESの配列を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および適切なプライマーを用いて、ベクターpCITE-4a+(Novagen, Madison, Wis.)から増幅する。マウスp40、マウスp35およびIRES配列を、IRES配列がp40とp35とのコード配列を分離するように、pBS-SK+のHindIIIおよびEcoRI部位中に三方ライゲーションすることにより、プラスミドpBS-IL12を構築する。
【0272】
HSVシャトルプラスミドpRB4878は、以前に記載されたとおり調製することができる(Andreansky et al. (1998) Gene Ther. 5, 121-130)。プラスミド4878-IL12は、以下のとおり構築する:pBS-mIL-12を、XhoIおよびSpeIで消化して、IRESを含むIL-12サブユニットコード領域全体を含む2.2kbのフラグメントを取り除き、Klenowフラグメントを用いて末端を充填し、pRB4878中のEgr-1プロモーターとB型肝炎ウイルスポリA配列との間に位置する平滑化したKpnI部位中にライゲーションする。M001(tk-)およびM002(ネイティブの遺伝子座において修復されたtk)を、以前に記載されたとおりに相同組み換えを介して構築する(Andreansky et al. (1998) Gene Ther. 5, 121-130)。2つのtkが修復されたウイルスM002.29およびM002.211を、制限酵素により消化されたウイルスDNAのサザンブロットハイブリダイゼーションにより確認し、これを、1%アガロース、1×TPEゲル上で電気泳動分離して、Zeta-Probe膜(Bio-Rad)に導入する。ブロットを、Gene Images AlkPhos Direct DNA標識システム(Amersham-Pharmacia Biotech, Piscataway, N.J.)を用いて、アルカリホスファターゼで標識された適切なDNAプローブとハイブリダイズする。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、IL-12産生を実証する。
【0273】
例29:CRISPR/Cas-9導入遺伝子を有するウイルス導入ベクター(仮想)
本明細書において、例えば上の例において記載されるウイルスベクターのいずれか1つは、遺伝子編集導入遺伝子を有するウイルス導入ベクターを作製するために用いることができる。あるいは、および例として、以下に、Cas9、例えばCas9野生型(II型)をコードする遺伝子編集導入遺伝子を有するウイルス導入ベクターを作製するための方法を提供する。
【0274】
HEK293T細胞は、10%ウシ胎仔血清(Sigma, Steinheim, Germany)、100U/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシン(Life Technologies)を含むDMEM培地(Life Technologies, Darmstadt, Germany)中で培養することができる。Huh7およびHep56D細胞培地は、さらに、1%の非必須アミノ酸を含み得る(Life Technologies)。Jurkat細胞は、10%ウシ胎仔血清(Sigma)、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、および2mMのL-グルタミン(全てLife Technologies)を含むRPMI 1640培地(GE Healthcare, Pasching, Austria)中で培養することができる。全ての細胞株は、37℃および5%CO2で培養することができる。ラージスケールのAAVベクター生成のために、HEK293T細胞は、10枚の15cm2のディッシュ中に播種することができる(4×106細胞/ディッシュ)。2日後、それらを、(i)AAVベクタープラスミド(gRNAおよび/またはCas9をコードする)、(ii)AAVのrepおよびcap遺伝子を運搬するAAVヘルパープラスミド、ならびに(iii)AAV産生のためのヘルパー機能を提供するアデノウイルスプラスミドで、三重トランスフェクトすることができる。
【0275】
AAVのcap遺伝子は、合成単離株AAV-DJから(Grimm et al., J. Virol. 2008, 82, 5887-5911)、または新たなバリアントAAVrh10A2から、誘導することができる。簡単に述べると、AAVrh10A2は、AAV血清型rh10のカプシドの暴露領域中への7アミノ酸長のペプチドの挿入を通して作製することができる。AAV産生プラスミドおよびプロトコルについてのさらなる詳細は、Boerner et al., Nucleic Acids Res. 2013, 41, e199およびGrimm, Methods 2002, 28, 146-157において報告されたとおりに行うことができる。スモールスケールのAAVストックを作製するために、2×105のHEK293T細胞/ウェルを、6ウェルプレート中に播種して、翌日に前述のプラスミドで三重トランスフェクトすることができる。3日後、細胞を培地中に掻き取り、10分間の1500rpmにおける遠心分離を介して回収し、300μLの1×PBS(Life Technologies)中に再懸濁し、3回の液体窒素中および37℃での凍結融解サイクルに供することができる。10分間の13,200rpmでの遠心分離を行って、細胞デブリを取り除くことができ、ウイルス導入ベクター粒子を含む上清を、形質導入実験において直接用いるか、または-20℃で凍結することができる。
【0276】
スモールスケールのトランスフェクションおよびその後のT7アッセイのために、96ウェルプレートにおいて1ウェルあたり2.8×104のHEK293Tまたは1.2×104のHuh7細胞を播種し、翌日に、リポフェクタミン2000(Life Technologies)を、この形式についての製造者の推奨に従って用いて(各々25μLの無血清培地中の200ngのDNAおよび0.5μLのリポフェクタミン2000)、トランスフェクトすることができる。200ngのDNAは、オールインワンのCas9/gRNAベクターからなるか、または別々のCas9およびgRNAコンストラクトの場合は、100ngの各々からなってもよい。ウェスタンブロットのためのライセートを得るために、HEK293T細胞を、24ウェルプレート(ライセートごとに1ウェル)において、リポフェクタミン2000を、この形式についての製造者の推奨に従って用いて、トランスフェクトすることができる。形質導入実験において、細胞を96ウェルプレート中で増殖させて、播種の1日後に、10μLの精製されていないAAVで、または精製されたベクターで、形質導入することができる。3日間(トランスフェクション)~5日間(形質導入)のインキュベーションの後で、細胞を、0.2μg/mLのプロテイナーゼK(Roche, Mannheim, Germany)を補充したDirectPCR Lysis Reagent Cell(PeqLab, Erlangen, Germany)で、製造者のプロトコルに従って、溶解することができる。
【0277】
Senis, et al. Biotechnol. J. 2014, 9, 1402-1412において記載されるとおり、上記のようなプラスミドおよびベクターは、CRISPR成分Cas9およびキメラg(guide)RNAの送達を達成することができる。加えて、Cas9発現は、それぞれ肝臓特異的なプロモーターまたは肝臓miRNA結合部位を用いて、肝細胞に対して、または肝細胞から離れて行うことができることが示された。かかるベクターをin vivoでの遺伝子工学のために用いることができるという、さらなる証左が提供された。このことは、成体マウスの例証された肝臓において達成された。
【0278】
例30:Cas9バリアント導入遺伝子を有するウイルス導入ベクター(仮想)
例30における方法はまた、遺伝子編集導入遺伝子(例えばCas9バリアント、例えば本明細書において記載されるCas9バリアントのいずれか1つをコードする導入遺伝子)を有するウイルス導入ベクターを生成するために用いることができる。あるいは、かかるウイルス導入ベクターを生成するために、本明細書において記載される他のウイルスベクターのいずれか1つを代わりに用いてもよい。提供されるCas9バリアントのいずれか1つは、本明細書において提供される遺伝子編集導入遺伝子のいずれか1つによりコードされていてよい。
Cas9バリアントを作製するために、NLSおよび3×FLAGタグを有する、ヒトコドン最適化された化膿性連鎖球菌(streptococcus pyogenes)のCas9ヌクレアーゼ(Addgeneプラスミド43861)を、野生型Cas9発現プラスミドとして用いることができる。Cas9_Expプライマーによる鋳型としての野生型Cas9発現プラスミドのPCR産物を、Gibson Assembly Cloning Kit(New England Biolabs)で組み立てて、Cas9およびFokI-dCas9バリアントを構築することができる。単一のgRNAコンストラクト(gRNA G1~G13)をコードする発現プラスミドもまた、クローニングすることができる。
【0279】
例31:ジンクフィンガーヌクレアーゼ導入遺伝子を有するウイルス導入ベクター(仮想)
本明細書において、例えば上の例において記載されるウイルスベクターのいずれか1つは、ジンクフィンガーヌクレアーゼをコードする遺伝子編集導入遺伝子を有するウイルス導入ベクターを作製するために用いることができる。あるいは、および例として、以下に、かかる遺伝子編集導入遺伝子を有するウイルス導入ベクターを作製するための方法を提供する。
【0280】
TRBC-およびTRAC-ZFNを、Urnov, et al. Nature 435, 646-651 (2005)において記載されるとおりに、設計して、組み立てることができる。用いられる認識用らせんは、Provasi et al., Nature Medicine、第18巻第5号(2012年5月)により提供されるとおりであってよい。TRBC-およびTRAC-ZFNをコードするレンチウイルスベクターは、HIV由来の自己失活性導入コンストラクトpCCLsin.cPPT.SFFV.eGFP.Wpreから生成することができ、これは、HIVインテグラーゼ中にD64V変異を有するインテグラーゼ欠損第3世代パッケージングコンストラクトによりパッケージングして、VSVエンベロープによりシュードタイプ化することができる。Ad5/F35アデノウイルスベクターは、E1-E3を欠失した骨格上で作製することができる。TRBCまたはTRAC遺伝子のいずれかを標的とするZFNは、2Aペプチド配列を用いて連結し、適切なプロモーターの制御下においてpAdEasy-1/F35ベクター中にクローニングすることができ、各コンストラクトのためのAd5/F35ウイルスは、TREx 293T細胞を用いて作製することができる。二方向自己失活性導入ベクターpCCLsin.cPPT.ΔLNGFR.minCMV.hPGK.eGFP.Wpreから、およびpCCLsin.cPPT.hPGK.eGFP.Wpreからの、WT1特異的なTCR鎖と、単一のα21またはβ21 WT1特異的なTCR鎖の両方をコードするレンチウイルスベクターを作製して、インテグラーゼコンピーテントな第3世代コンストラクトによりパッケージングして、VSVエンベロープによりシュードタイプ化することができる。
【0281】
上記のもののような、およびProvasi et al., Nature Medicine、第18巻第5号(2012年5月)において記載されるようなベクターを用いて、ZFNが、内在TCRのβおよびα鎖遺伝子の破壊を促進したことが示された。ZFNで処置されたリンパ球は、CD3-TCRの表面発現を欠失しており、インターロイキン-7(IL-7)およびIL-15の添加により増殖した。さらに、レンチウイルスによる、ウィルムス腫瘍1(WT1)抗原に特異的なTCRの導入の後で、TCRが編集された細胞は、新たなTCRを高レベルで発現した(またProvasi et al., Nature Medicine、第18巻第5号(2012年5月)において記載されるとおりである)。
【0282】
例32:ジンクフィンガーヌクレアーゼ導入遺伝子を有するウイルス導入ベクター(仮想)
hF9mut遺伝子座を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)およびF9を標的とするベクターは、Li, et al. Nature. 2011;475(7355):217-221において記載されるとおり調製することができる。かかるベクターは、in vivoでの遺伝子ターゲティングのために首尾よく用いられることが、血友病B(HB)の新生仔マウスモデルにおいて示されている。ヒトF9遺伝子を標的とするZFNのペアをコードするAAVベクターと、修正cDNAカセットに隣接するホモロジーアーム(arms of homology)を有する遺伝子ターゲティングベクターとの全身性共送達は、かかるマウスの肝臓において、マウスゲノム中に設計された欠損hF9遺伝子の修正をもたらした。さらに、凝血時間を正常化するために十分な安定なレベルのヒト第IX因子の発現が達成された。
【0283】
例33:メガヌクレアーゼ導入遺伝子を有するウイルス導入ベクター(仮想)
本明細書において、例えば上の例において記載されるウイルスベクターのいずれか1つは、メガヌクレアーゼをコードする遺伝子編集導入遺伝子を有するウイルス導入ベクターを作製するために用いることができる。あるいは、および例として、以下に、かかる遺伝子編集導入遺伝子を有するウイルス導入ベクターを作製するための一般的方法を記載する。メガヌクレアーゼは、米国公開番号20110033935および20130224863において提供されるメガヌクレアーゼのいずれか1つであってよい。
【0284】
幾つかの態様において、ウイルスの複製を防止するために、特定のウイルス遺伝子が不活化される。好ましくは、幾つかの態様において、ウイルスは、標的細胞内での送達および維持のみを行うことができるが、標的細胞または組織内で複製する能力を保持しないように改変される。ベクターのように作用するウイルスゲノムを作製するために、メガヌクレアーゼをコードする1以上のDNA配列を、改変されたウイルスゲノムに導入することができる。幾つかの態様において、ウイルスベクターは、限定されないが、MFGまたはpLJベクターなどのレトロウイルスベクターである。MFGベクターは、単純化されたモロニーマウス白血病ウイルスベクター(MoMLV)であって、ここで、それを複製欠損にするためにpolおよびenvタンパク質をコードするDNA配列が削除されている。pllレトロウイルスベクターもまた、MoMLVの一形態である(例えば、Korman et al. (1987), Proc. Nat'l Acad. Sci., 84:2150-2154を参照)。他の態様において、組み換えアデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスを、ウイルスベクターを作製するために用いることができる。
【0285】
例34:エクソンスキッピング導入遺伝子を有するウイルス導入ベクター(仮想)
本明細書において、例えば上の例において記載されるウイルスベクターのいずれか1つは、エクソンスキッピング導入遺伝子を有するウイルス導入ベクターを作製するために用いることができる。あるいは、および例として、以下に、特異的エクソンスキッピング導入遺伝子を有するウイルス導入ベクターを作製するための方法を提供する。
一本鎖AAV1-U7ex235およびAAV1-U7scrの作製のためのpAAV(U7smOPT-SD23/BP22)およびpAAV(U7smOPT-scr)プラスミド;ならびに自己相補的scAAV9-U7ex239のためのscAAV-U7ex23プラスミドによる、3プラスミドのトランスフェクションプロトコルを用いることができる。pAAV(U7smOPT-scr)プラスミドは、いかなるマウスcDNAにもマッチしない非特異配列GGTGTATTGCATGATATGTを含んでもよい。
【0286】
上記に従って作製されたウイルス導入ベクターの使用は、Le Hir et al., Molecular Therapy、第21巻第8号、1551-1558(2013年8月)において記載されるとおり、ジストロフィンを修復するためにかかるベクターを用いることができることを示した。しかし、修復は、3~12か月の間に著しく低下し、これは、ウイルスゲノムの喪失と相関した。したがって、本明細書において提供される組成物および方法は、かかる処置の効果を維持することに役立ち得る。
【0287】
例35:エクソンスキッピング導入遺伝子を有するウイルス導入ベクター(仮想)
クローンU1#23は、オリゴmU1anti5(5’-CGAAATTTCAGGTAAGCCGAGGTTATGAGATCTTGGGCCTCTGC-3’およびmU1anti3(5’-GAACTTTGCAGAGCCTCAAAATTAAATAGGGCAGGGGAGATACCATGATC-3’)を用いて、ヒトU1 snRNA遺伝子に対する逆PCRにより得ることができる。アンチセンス含有インサートは、オリゴU1cas-up-NheI(5’-CTAGCTAGCGGTAAGGACCAGCTTCTTTG-3’)およびU1cas-down-NheI(5’-CTAGCTAGCGGTTAGCGTACAGTCTAC-3’)を用いて、対応するプラスミドから増幅することができる。結果として生じるフラグメントを、NheIで消化して、pAAV2.1-CMV-EGFPプラスミドのフォワード方向にクローニングすることができる。
【0288】
AAV-U1#23ベクターは、293細胞の三重トランスフェクションにより作製して、CsCl2超遠心により精製し、リアルタイムPCRベースのアッセイおよびドットブロットアッセイの両方を用いて力価を決定することができる。緑色形成単位の数は、293細胞に対する連続希釈により評価することができる。AAVベクターは、AAV TIGEM Vector Coreにより作製することができる。
6週齢のmdxマウスに、尾静脈から、3~4×1012のゲノムコピーのAAVベクターを投与することができる。ウイルス投与の6週間および12週間後に、動物を安楽死させて、異なる領域からの筋肉を採取することができる。EGFP分析および精査は、蛍光立体顕微鏡下において行うことができる(Leica MZ16FA)。
【0289】
上記に従って作成されたウイルス導入ベクターの使用は、Denti et al., 3758-3763, PNAS(2006年3月7日)第103巻第10号において記載されるとおり、mdxマウスにおいて、尾静脈注射により、持続的なエクソンスキッピングをもたらした。ベクターの全身性送達は、有効な全身にわたる定着、in vivoでの機能的特性の著しい回復、およびより低いクレアチンキナーゼ血清レベルをもたらした。結果は、筋消耗の減少が存在したことを示唆する。
【0290】
例36:エクソンスキッピング導入遺伝子を有するウイルス導入ベクター(仮想)
U7smOPT-SD23/BP22(改変されたマウスU7snRNA遺伝子)からのものなどの特定のエクソンに対して特異的な、異なるU7snRNAコンストラクトを設計することができる。特定のエクソンを標的とするアンチセンス配列を、ジストロフィンmRNAのエクソンを標的とするアンチセンス配列により置き換えることができ、これは、アンチセンスオリゴヌクレオチドとしてエクソンスキッピングを誘導する。配列を、U7snRNAコンストラクト中に挿入することができる。結果として生じるU7snRNAフラグメントを、次いで、さらなるレンチウイルス産生のためのレンチウイルスベクターコンストラクト中、またはAAV産生のためのAAVベクターコンストラクト中に導入することができる。
【0291】
レンチウイルスベクターは、hPGK-GFPカセットが取り除かれてU7snRNAコンストラクトで置き換えられているpRRLcPPT-hPGK-eGFP-WPREコンストラクトに基づいていてよい。レンチウイルスベクターは、以前に記載されるとおり、パッケージングコンストラクトpCMVΔR8.74、水疱性口内炎ウイルス-Gエンベロープを産生するプラスミド(pMD.G)、およびベクターそのものの、293T細胞中へのトランスフェクションにより作製することができる。ウイルス力価(感染性粒子)は、12ウェルプレート中でのベクター調製物の連続希釈を用いるNIH3T3細胞の形質導入により決定することができる。72時間後に、形質導入された細胞からのゲノムDNAを、ゲノムDNA精製キット(Qiagen, Crawley, UK)を用いて抽出することができる。感染性粒子の力価(感染性粒子/ml)は、他で記載されるような定量リアルタイムPCRにより決定することができる。
【0292】
その後のAAVベクター産生のために、pSMD2 AAV2ベクターのXbaI部位において、異なるU7snRNAフラグメントを導入することができる。AAV2/1シュードタイプ化ベクターは、293細胞における、pAAV2-U7snRNA、アデノウイルスヘルパー機能をコードするpXX6、ならびにAAV2のrepおよびAAV1のcap遺伝子を含むpAAV1pITRCO2のコトランスフェクションにより調製することができ、ベクター粒子は、トランスフェクションの48時間後に得られた細胞ライセートから、イオジキサノール勾配に対して精製することができ、力価は、定量リアルタイムPCRにより測定することができる。
Goyenvalle, et al. The American Society of Gene & Cell Therapy、第20巻第6号、1212-1221(2012年6月)において記載されるとおり、上記の方法により作製されたU7低分子核RNAをコードするウイルス導入ベクターは、in vitroおよびin vivoの両方で、効率的なエクソンスキッピングを誘導することができる。
【0293】
例37:エクソンスキッピング導入遺伝子を有するウイルス導入ベクター(仮想)
HSV導入ベクターは、米国公開番号20090186003および上の例28の方法に従って(導入遺伝子がエクソンスキッピング導入遺伝子ではないように方法が改変されてもよいことを除く)、調製することができる。エクソンスキッピング導入遺伝子は、本明細書において記載されるか、当該分野において他に公知な導入遺伝子のいずれか1つであってよい。
【0294】
例38:エクソンスキッピング導入遺伝子を有するウイルス導入ベクター(仮想)
HIVレンチウイルス導入ベクターは、米国公開番号20150056696および上の例26の方法に従って(導入遺伝子がエクソンスキッピング導入遺伝子ではないように方法が改変されてもよいことを除く)、調製することができる。エクソンスキッピング導入遺伝子は、本明細書において記載されるか、当該分野において他に公知な導入遺伝子のいずれか1つであってよい。
【0295】
例39:遺伝子発現調節導入遺伝子を有するウイルス導入ベクター(仮想)
本明細書において、例えば上の例において記載されるウイルスベクターのいずれか1つは、遺伝子発現調節導入遺伝子を有するウイルス導入ベクターを作製するために用いることができる。あるいは、および例として、以下に、特異的遺伝子発現調節導入遺伝子を有するウイルス導入ベクターを作製するための方法を提供する。
ウイルス導入ベクターは、Brown et al., Nat Med.(2006年5月);12(5):585-91において記載される方法に従って作製する。簡単に述べると、RNAの逆転写、mRNAの濃度を定量するための定量PCR分析、および正規化のためのGAPDH発現を用いて、プラスミドを構築する。VSV-シュードタイプ化第3世代レンチウイルスベクター(LV)を、293T細胞中への一過性の4プラスミドのコトランスフェクションにより作製し、超遠心により精製する。HIV-1 gag p24抗原免疫捕獲により、ベクター粒子を測定することができる。
【0296】
Brown et al., Nat Med. (2006年5月);12(5):585-91において記載されるとおり、内在miRNAの標的配列をコードするかかるレンチウイルスベクターは、異なる組織において遺伝子発現を隔離し得るmiRNAの産生をもたらすことが示された。miRNA制御の証左が提供され、これは、かかるベクターを治療的適用において用いることができることを示す。
【0297】
例40:遺伝子発現調節導入遺伝子を有するウイルス導入ベクター(仮想)
ある遺伝子に対するmiRNAに基づくヘアピン(例えば、ハンチンチン遺伝子;AAV2/1-miRNA-Htt)をコードするAAV2/1血清型ベクターを作製するために、特異的遺伝子(例えば、ヒトHTT)についてのcDNAを、AAV2末端逆位反復配列(ITR)および1.6kbのサイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリb-アクチン(CBA)プロモーターを含むシャトルプラスミド中にクローニングすることができる。対照ベクターもまた生成することができ、これは、空のベクター骨格を含む(例えば、AAV2/1-Null)か、または同じプロモーターの制御下において高感度緑色蛍光タンパク質などのレポーターを発現する(AAV2/1-eGFP)。ウイルス導入ベクターは、ヒト293細胞などの細胞株の3プラスミドのコトランスフェクションにより生成することができ、組み換えウイルス粒子を、次いで、Stanek et al., Human Gene Therapy. 2014;25:461-474において以前に記載されるように、カラム精製することができる。結果として生じるAAV2/1-miRNA-Httの力価を、次いで、定量PCRを用いて決定することができる。
【0298】
かかるウイルス導入ベクターを用いて生じたデータは、Stanek et al., Human Gene Therapy. 2014;25:461-474において記載されるとおり、AAVにより媒介されるRNAiは、線条体における細胞を形質導入することにおいて有効であり得、この領域における野生型および変異体の両方のHttのレベルを部分的に低下させ得ることを示した。
【0299】
例41:遺伝子発現調節導入遺伝子を有するウイルス導入ベクター(仮想)
CD81遺伝子は、逆転写により増幅することができる。cDNAは、適切なプライマーを用いてPCR増幅することができる。フォワードプライマーは、BamHI(Biolabs, Allschwill, Switzerland)制限部位と、それに続く5’のCD81のcDNAに特異的な配列を含み得る;リバースプライマーは、3’のCD81のcDNAに特異的な配列、6 His-tag、停止コドンおよびXho I(Biolabs)制限部位を含み得る。PCR産物を消化して、pTK431中の類似の部位中にクローニングすることができる。pTK431は、完全なtet-off-誘導系、セントラルポリプリントラクト(central polypurine tract) cPPTおよびウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節エレメントを含む自己失活性HIV-1ベクターである。プラスミドは、CsCl2で精製することができる。
【0300】
標的は、CD81のmRNA配列に従って、Hannonの設計基準(katahdin.cshl.org:9331/RNAi/html/rnai.html)に基づいて設計することができる。鋳型としてpSilencer 1.0-U6(Ambion)、制限部位を含むU6プロモーターに特異的なフォワードプライマーを用いて、各shRNA標的を、PCRによりマウスU6プロモーターに付加することができる。PCR産物を消化し、pTK431中の類似の部位にクローニングして、各コンストラクトの完全性を検証するためにシークエンシングすることができる。
ベクタープラスミドは、パッケージングコンストラクトプラスミドpΔNRFおよびエンベローププラスミドpMDG-VSVGと一緒に、HEK293T細胞中にコトランスフェクトして、ウイルス粒子を産生することができる。ウイルス力価は、p24抗原測定により決定することができる(KPL, Lausanne, Switzerland)。
Bahi, et al. J. Neurochem. (2005) 92, 1243-1255において示されるとおり、CD81を標的とする低分子ヘアピン型RNA(shRNA)を発現するレンチウイルス(Lenti-CD81-shRNA)は、in vitroでのHEK293T細胞の後で遺伝子サイレンシングをもたらした。加えて、in vivoでのLenti-CD81-shRNAの送達は、内在CD81のサイレンシングをもたらした。
【0301】
例42:遺伝子発現調節導入遺伝子を有するウイルス導入ベクター(仮想)
本明細書において、例えば上の例において記載されるウイルスベクターのいずれか1つは、RNAi剤をコードする遺伝子発現調節導入遺伝子を有するウイルス導入ベクターを作製するために用いることができる。本明細書において提供される遺伝子発現調節導入遺伝子によりコードされ得るRNAi剤の一例を、以下に記載する。
【0302】
発現コンストラクトは、3または4以上の個別のshRNA種の発現を駆動するプロモーターを含むことができる。低分子核RNAおよびトランスファーRNAの合成は、RNAポリメラーゼIII(pol III)により、pol III特異的プロモーターの制御下において指示することができる。これらの調節エレメントにより指示される比較的高い存在量の転写物のために、U6およびH1遺伝子から誘導されるものを含むpol IIIプロモーターを、1-x RNAiの発現を駆動するために用いることができる(例えば、Domitrovich and Kunkel. Nucl. Acids Res. 31(9):2344-52 (2003);Boden, et al. Nucl. Acids Res. 31(17):5033-38 (2003a);およびKawasaki, et al. Nucleic Acids Res. 31(2):700-7 (2003)を参照)。U6プロモーターを用いるRNAi発現コンストラクトは、HCVゲノムの3つの異なる領域を標的とする3つのRNAi剤を含み得る。遺伝子発現調節導入遺伝子によりコードされ得るRNAi剤のさらなる例は、本明細書において記載されるRNAi剤のいずれか1つを含む。
【0303】
例43:遺伝子発現調節導入遺伝子を有するウイルス導入ベクター(仮想)
本明細書において、例えば上の例において記載されるウイルスベクターのいずれか1つは、Serpina1 RNAi(例えば米国特許公開番号20140350071において記載される剤のうちの1つ)をコードする遺伝子発現調節導入遺伝子を有するウイルス導入ベクターを作製するために用いることができる。かかる導入遺伝子を有するウイルス導入ベクターは、本明細書において提供されるか当該分野において他に公知のものと類似の方法に従って作製することができる。
【0304】
例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いることができる(Walsh et al., Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 204:289-300 (1993);米国特許第5,436,146号)。iRNAを、例えばU6もしくはH1 RNAプロモーターのいずれか、またはサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを有する組み換えAAVベクターからの、2つの別々の相補的な一本鎖RNA分子として発現させることができる。本発明において注目されるdsRNAを発現させるために好適なAAVベクター、組み換えAVベクターを構築するための方法、およびベクターを標的細胞中に送達するための方法は、以下において記載される:Samulski R et al. (1987), J. Virol. 61:3096-3101;Fisher K J et al. (1996), J. Virol, 70:520-532;Samulski R et al. (1989), J. Virol. 63:3822-3826;米国特許第5,252,479号;米国特許第5,139,941号;国際特許出願番号WO 94/13788;および国際特許出願番号WO 93/24641:かかる情報の全開示は、本明細書において参考として援用される。
【0305】
例44:対象における抗ウイルス導入ベクター減弱応答の確立(仮想)
本明細書において提供されるウイルス導入ベクターのいずれか1つ、例えば例のいずれか1つは、i.v.、i.m.、s.c.またはi.p.で、本明細書において提供される抗原提示細胞標的免疫抑制剤のいずれか1つ、例えば例のいずれか1つ(これもまた、それぞれi.v.、i.m.、s.c.またはi.p.で投与される)と共に、例えばこれと同時に、投与される。投与は、少なくともウイルス導入ベクターおよび抗原提示細胞標的免疫抑制剤の頻度および用量を含む対象において抗ウイルス導入ベクター減弱応答を確立するプロトコルに従って行われる。対象は、本明細書において記載される対象のいずれか、例えばウイルス導入ベクターに対する既存の免疫を有しない対象、またはウイルス導入ベクターの反復投与が所望される対象であってよい。
【0306】
幾つかの態様において、抗ウイルス導入ベクター減弱応答が、ウイルス導入ベクターに対するT細胞応答である場合、ウイルス導入ベクターは、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとの共投与の前に、抗原提示細胞標的免疫抑制剤なしで対象に投与される。かかる態様において、ウイルス導入ベクターの1以上の反復投薬が、共投与、およびその前のウイルス導入ベクターの投与の両方の後で、対象に投与される。
幾つかの態様において、抗ウイルス導入ベクター減弱応答が、ウイルス導入ベクターに対するB細胞応答である場合、対象は、ウイルス導入ベクターと抗原提示細胞標的免疫抑制剤との共投与の前に、ウイルス導入ベクターを投与されない。かかる態様において、ウイルス導入ベクターの1以上の反復投薬が対象に投与され、各反復投薬は、抗原提示細胞標的免疫抑制剤と共に投与される。
【0307】
他の態様において、抗ウイルス導入ベクター減弱応答が、抗ウイルス導入ベクター抗体応答である場合、対象は、ウイルス導入ベクターと抗原提示細胞標的免疫抑制剤との共投与の前にウイルス導入ベクターを投与されない。かかる態様において、ウイルス導入ベクターの1以上の反復投薬が対象に投与され、各反復投薬は、抗原提示細胞標的免疫抑制剤と共に投与される。
【0308】
抗体のレベルを決定するための方法は、ELISAアッセイの使用によるものであってよい。抗原特異的なB細胞またはT細胞のリコール応答についてのアッセイとして、これらに限定されないが、ELISpot、細胞内サイトカイン染色、細胞増殖、およびサイトカイン産生アッセイが挙げられる。
態様のいずれか1つにおいて、ウイルス導入ベクターと抗原提示細胞標的免疫抑制剤との共投与の後で、抗ウイルス導入ベクター減弱応答を評価する。
態様のいずれか1つにおいて、抗ウイルス導入ベクター減弱応答を確立するためのプロトコルを決定することができる。かかる態様において、プロトコルは、別の対象、例えば試験対象において決定する。そのようにして決定されたプロトコルを、ウイルス導入ベクターによる処置を必要とする他の対象を処置するために用いることができる。
【0309】
例45:ウイルス導入ベクターの投与前の対象における既存の免疫のレベルの決定(仮想)
血液試料などの試料は、本明細書において提供されるようなウイルス導入ベクター(例えば、本明細書において提供されるウイルス導入ベクターのいずれか1つのウイルス導入ベクター、例えば例のいずれか1つにおけるもの)による処置を必要とする対象から、得ることができる。
対象からの試料により、中和抗体などの抗体のレベル、またはT細胞もしくはB細胞などの免疫細胞の抗原リコール応答を決定することができる。抗体のレベルを決定するための方法は、ELISAアッセイの使用によるものであってよい。抗原特異的なB細胞またはT細胞のリコール応答についてのアッセイとして、これらに限定されないが、ELISpot、細胞内サイトカイン染色、細胞増殖、およびサイトカイン産生アッセイが挙げられる。リコール応答は、試料を、ウイルス導入ベクターまたはその抗原と接触させることにより、評価することができる。あるいは、リコール応答はまた、対象へのウイルス導入ベクターまたはその抗原の投与の後で対象から試料を採取して、次いで、生じた抗体のレベルまたはB細胞もしくはT細胞リコール応答を決定することによっても、評価することができる。
【0310】
幾つかの態様において、対象が、ウイルス導入ベクターに対する既存の免疫を有しないことが、対象における抗ウイルス導入ベクター抗体のレベル(またはB細胞応答)の測定により決定される場合、対象は、i.v.、i.m.、s.c.またはi.p.で、本明細書において提供されるウイルス導入ベクターのいずれか1つ(例えば例のいずれか1つにおけるもの)を、本明細書において提供される抗原提示細胞標的免疫抑制剤のいずれか1つ(例えば例のいずれか1つにおけるもの)と共に、例えば同時に、投与される。抗原提示細胞標的免疫抑制剤は、同じ経路により投与される。
【0311】
他の態様において、対象が、ウイルス導入ベクターに対する既存の免疫を有しないことが、対象におけるウイルス導入ベクターに対するT細胞応答のレベルにより決定される場合、抗原提示細胞標的免疫抑制剤とウイルス導入ベクターとを、i.v.、i.m.、s.c.またはi.p.で、対象に、対象がウイルス導入ベクターの用量を、抗原提示細胞標的免疫抑制剤の共投与なしで投与された後で、共に、例えば同時に、投与する。
態様のいずれか1つにおいて、ウイルス導入ベクターの1以上の反復投薬を、対象に投与する。これらの反復投薬は、抗原提示細胞標的免疫抑制剤と共投与されてもよい。
【0312】
例46:対象におけるウイルス導入ベクターの導入遺伝子発現の増大(仮想)
本明細書において提供されるウイルス導入ベクターのいずれか1つ(例えば例のいずれか1つにおけるもの)を、i.v.、i.m.、s.c.またはi.p.で、導入遺伝子発現(ウイルス導入ベクターにより送達されている導入遺伝子)を増大させる頻度および投薬に従って、本明細書において提供される抗原提示細胞標的免疫抑制剤のいずれか1つ(例えば例のいずれか1つにおけるもの)と、共に、例えば同時に、投与する。このことは、対象における多様な目的の組織または系において、導入遺伝子発現産物濃度を測定することにより、決定することができる。導入遺伝子発現が増大するか否かは、上の例において記載されるものなどの方法に従って決定することができる。投与は、対象において導入遺伝子発現を増大するウイルス導入ベクターおよび抗原提示細胞標的免疫抑制剤の頻度および用量に従って行う。対象は、本明細書において記載される対象のいずれか、例えばウイルス導入ベクターに対する既存の免疫を有しない対象、またはウイルス導入ベクターの繰り返し投与が所望される対象であってよい。
【0313】
態様のいずれか1つにおいて、導入遺伝子発現の増大を達成する頻度および用量を、別の対象、例えば試験対象において決定する。このことはまた、上記の方法などにより、当該他の対象の多様な組織または系における導入遺伝子発現産物の濃度を測定することにより決定することができる。頻度および用量が導入遺伝子発現の増大を達成することが、測定された導入遺伝子発現産物の濃度により決定される場合、当該頻度および用量に従うウイルス導入ベクターおよび抗原提示細胞標的免疫抑制剤の共投与、例えば同時投与を、ウイルス導入ベクターによる処置を必要とする他の対象を処置するために用いることができる。
【0314】
例47:より低い用量での反復共投与(仮想)
本明細書において提供されるとおり、対象を、本明細書において提供されるウイルス導入ベクターのいずれか1つ(例えば例のいずれか1つのウイルス導入ベクターのいずれか1つ)に対する既存の免疫のレベルについて評価してもよい。あるいは、医師は、対象を評価して、ウイルス導入ベクターを対象に反復投与した場合に、ウイルス導入ベクターを投与した場合に、対象が抗ウイルス導入ベクター免疫応答を生じることが予測されるか否かを決定してもよい。この決定は、ウイルス導入ベクターがかかる結果をもたらすであろう可能性に基づいていてもよく、他の対象、例えば試験対象におけるかかる結果、ウイルス導入ベクターを作製するために用いられるウイルスについての情報、対象についての情報などに基づいていてもよい。一般に、予測が、抗ウイルス導入ベクター免疫応答が起こる可能性が高いというものである場合、医師は、予測の結果として、ウイルス導入ベクターの特定の用量を選択する。しかし、本発明者の知見を考慮すると、医師は、今や、対象について選択されたであろうものよりも低い用量のウイルス導入ベクターを選択して使用することができる。より低い用量の利益として、ウイルス導入ベクターの投薬に関連する毒性の軽減、およびオフ・ターゲット効果の減少が挙げられ得る。
【0315】
したがって、本明細書において提供される対象のいずれかを、本明細書において提供されるウイルス導入ベクターのいずれか1つと、本明細書において提供される抗原提示細胞標的免疫抑制剤のいずれか1つとの、反復共投与、例えば同時投与で処置することができ、ここで、ウイルス導入ベクターの用量は、対象がウイルス導入ベクターの反復投薬に起因して抗ウイルス導入ベクター免疫応答を生じることが予測された場合に対象について選択されたであろうウイルス導入ベクターの用量よりも低くなるように選択される。反復共投与のウイルス導入ベクターの各用量は、他で選択されたであろうものより低くてもよい。
【配列表】