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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】ヒータ
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/48 20060101AFI20230502BHJP
   H05B 3/02 20060101ALI20230502BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230502BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20230502BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20230502BHJP
   C23C 16/46 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
H05B3/48
H05B3/02 A
H01L21/31 B
H01L21/302 101G
C23C14/50 E
C23C16/46
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018195943
(22)【出願日】2018-10-17
(65)【公開番号】P2020064760
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】花待 年彦
(72)【発明者】
【氏名】巽 新
(72)【発明者】
【氏名】関谷 健二
(72)【発明者】
【氏名】相川 尚哉
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼梨 雅也
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第02608884(FR,A1)
【文献】特開昭57-202093(JP,A)
【文献】特開昭61-181091(JP,A)
【文献】実開昭54-083648(JP,U)
【文献】登録実用新案第3040731(JP,U)
【文献】実開昭54-126146(JP,U)
【文献】特開2009-091660(JP,A)
【文献】特開2014-222651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/48
H05B 3/02
H01L 21/31
H01L 21/3065
C23C 14/50
C23C 16/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折りたたまれた1つの部材から構成されるヒータ線、
前記ヒータ線に設けられた第1の絶縁体、
前記第1の絶縁体に接するように設けられた金属シース、
前記金属シースの第1の端部から取り出された前記ヒータ線の一方に平行に配置された第1の絶縁部材、
前記第1の絶縁部材に平行に配置され、前記金属シースの第1の端部から取り出された前記ヒータ線の他方に平行に配置された第2の絶縁部材、
前記第1の絶縁部材および前記第2の絶縁部材に平行に配置され、かつ、前記第1の絶縁部材および前記第2の絶縁部材を束ねるように設けられた第3の絶縁部材
記金属シースおよび前記第3の絶縁部材の少なくとも一部に平行に配置される円筒部材、および、
前記円筒部材及び前記第3の絶縁部材との間に配置され、前記円筒部材の内壁及び前記第3の絶縁部材に接する第2の絶縁体、を有し、
前記円筒部材の内側において、前記ヒータ線の一方は前記第1の絶縁部材で覆われ、前記ヒータ線の他方は前記第2の絶縁部材で覆われる、ヒータ。
【請求項2】
前記円筒部材は所定の厚みを有し、かつ、円筒状の一つの部材から構成される、請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
前記円筒部材の内径は、前記金属シースの外径と略同一である、請求項1に記載のヒータ。
【請求項4】
前記第1の絶縁部材、前記第2の絶縁部材および前記第3の絶縁部材は、前記円筒部材に対して、前記金属シースが設けられている方向とは反対の方向に突出している、請求項1に記載のヒータ。
【請求項5】
前記金属シースの一部は円筒状であって、
前記金属シースの円筒軸方向に沿って、前記第1の絶縁体と、前記第1の絶縁部材、前記第2の絶縁部材及び前記第3の絶縁部材との間に配置され、第1の貫通孔と第2の貫通孔とを有する絶縁管を有する、
請求項1に記載のヒータ。
【請求項6】
前記ヒータ線の一方の端部および前記ヒータ線の他方の端部は、前記第1の絶縁部材、前記第2の絶縁部材および前記第3の絶縁部材が突出している方向に対して、前記第1の絶縁部材、前記第2の絶縁部材および前記第3の絶縁部材よりもさらに突出している、請求項4に記載のヒータ。
【請求項7】
前記ヒータは、さらに一対のリード線を有し、前記一対のリード線は前記ヒータ線の一方の端部と前記ヒータ線の他方の端部とに接続される、請求項6に記載のヒータ。
【請求項8】
前記ヒータ線の一方は前記第1の貫通孔に挿通され、前記ヒータ線の他方は前記第2の貫通孔に挿通される、請求項5に記載のヒータ。
【請求項9】
前記第1の貫通孔と、前記第2の貫通孔と、前記ヒータ線の一方の少なくとも一部と、前記ヒータ線の他方の少なくとも一部とは平行に配置される、請求項5に記載のヒータ。
【請求項10】
前記第1の絶縁部材、前記第2の絶縁部材および前記第3の絶縁部材のそれぞれは、前記絶縁管と接している、請求項5に記載のヒータ。
【請求項11】
前記ヒータ線は帯状である、請求項1に記載のヒータ。
【請求項12】
前記ヒータ線はらせん構造を有する、請求項1に記載のヒータ。
【請求項13】
前記ヒータ線は、二重らせん構造を有する、請求項1に記載のヒータ。
【請求項14】
前記金属シースはアルミニウムを含む、請求項1に記載のヒータ。
【請求項15】
前記金属シースの外径は3.0mm以上6.0mm以下である、請求項1に記載のヒータ。
【請求項16】
前記円筒部材はアルミニウムを含む、請求項1に記載のヒータ。
【請求項17】
前記円筒部材の外径は4.0mm以上10.0mm以下である、請求項1に記載のヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ヒータ、およびヒータを備えたステージに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスはほぼ全ての電子機器に搭載されており、電子機器の機能に対して重要な役割を担っている。半導体デバイスはシリコンなどが有する半導体特性を利用したデバイスである。半導体デバイスは、半導体膜、絶縁膜、及び導電膜を基板上に積層し、これらの膜がパターニングされることによって構成される。これらの膜は、蒸着法、スパッタリング法、化学気相成長(CVD)法、または基板の化学反応などを利用して積層され、フォトリソグラフィープロセスによってこれらの膜がパターニングされる。フォトリソグラフィープロセスは、パターニングに供される膜上へのレジスト膜の形成、レジスト膜の露光、現像によるレジストマスクの形成、エッチングによる膜の部分的除去、およびレジストマスクの除去を含む。
【0003】
上述した膜の特性は、膜を形成する条件、またはパターニングの条件によって大きく左右される。前記条件の一つが基板の温度である。多くの場合、基板の温度は、基板を設置するための載置台(以下、ステージと記す)の温度を調節することによって制御される。基板を加熱し基板内における温度分布を均一に抑制するため、ステージを加熱するヒータの一つがシースヒータである。例えば特許文献1には、金属シース内に電熱線(ヒータ線)が配置されたシースヒータを複数備えたステージが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-91660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板内における温度分布の均一性を向上させるためには、ヒータを高密度に備えたステージが必要となる。また、ステージ上に、ヒータを高密度に備えるためには、ヒータの細径化が課題である。さらに、ヒータの細径化に伴い、ヒータの破損、ヒータ内の発熱線の断線などが起こらないような、細径化されたヒータの信頼性の向上が課題である。
【0006】
したがって、本発明の実施形態の課題の一つは、信頼性を向上し細径化されたシースヒータを提供することである。また、基板の温度を精密に制御するためのヒータを備えたステージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態の一つは、ヒータであって、折りたたまれたヒータ線、ヒータ線に設けられた第1の絶縁体、第1の絶縁体の少なくとも一部に接するように設けられた金属シース、金属シースの第1の端部から取り出されたヒータ線の一方の少なくとも一部に平行に配置された第1の絶縁部材、第1の絶縁部材の少なくとも一部に平行に配置され、金属シースの第1の端部から取り出されたヒータ線の他方の少なくとも一部に平行に配置された第2の絶縁部材、第1の絶縁部材および第2の絶縁部材の少なくとも一部に平行に配置され、かつ、第1の絶縁部材および第2の絶縁部材を束ねるように設けられた第3の絶縁部材、および、金属シースおよび第3の絶縁部材の少なくとも一部に平行に配置される円筒部材、を有する。
【0008】
別の態様において、円筒部材は所定の厚みを有し、かつ、円筒状の一つの部材から構成されてもよい。
【0009】
別の態様において、円筒部材の内径は、金属シースの外径と略同一であってもよい。
【0010】
別の態様において、第1の絶縁部材、第2の絶縁部材および第3の絶縁部材は、円筒部材に対して、金属シースが設けられている方向とは反対の方向に突出していてもよい。
【0011】
別の態様において、金属シースの一部は円筒状であって、金属シースの円筒軸方向に沿って、第1の絶縁体と第3の絶縁部材との間に配置され、第1の貫通孔と第2の貫通孔とを有する絶縁管を有してもよい。
【0012】
別の態様において、ヒータ線の一方の端部およびヒータ線の他方の端部は、第1の絶縁部材、第2の絶縁部材および第3の絶縁部材が突出している方向に対して、第1の絶縁部材、第2の絶縁部材および第3の絶縁部材よりもさらに突出していてもよい。
【0013】
別の態様において、ヒータは、さらに一対のリード線を有し、一対のリード線はヒータ線の一方の端部とヒータ線の他方の端部とに接続されてもよい。
【0014】
別の態様において、ヒータ線の一方は第1の貫通孔に挿通され、ヒータ線の他方は第2の貫通孔に挿通されてもよい。
【0015】
別の態様において、第1の貫通孔と、第2の貫通孔と、ヒータ線の一方の少なくとも一部と、ヒータ線の他方の少なくとも一部とは平行に配置されてもよい。
【0016】
別の態様において、第1の絶縁部材、第2の絶縁部材および第3の絶縁部材のそれぞれは、絶縁管と接していてもよい。
【0017】
別の態様において、ヒータ線は帯状であってもよい。
【0018】
別の態様において、ヒータ線はらせん構造を有してもよい。
【0019】
別の態様において、ヒータ線は、二重らせん構造を有してもよい。
【0020】
別の態様において、金属シースはアルミニウムを含んでもよい。
【0021】
別の態様において、金属シースの外径は3.0mm以上6.0mm以下であってもよい。
【0022】
別の態様において、円筒部材はアルミニウムを含んでもよい。
【0023】
別の態様において、円筒部材の外径は4.0mm以上10.0mm以下であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係るヒータの構成を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るヒータの作製方法を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るヒータの作製方法を示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るヒータの作製方法を説明するためのフローチャートを示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係るステージの構成を示す斜視図及び上面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るステージの構成を示す断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係るステージの構成を示す断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係るステージの構成を示す上面図である。
図9】本発明の一実施形態に係るヒータの構成を示す断面図である。
図10】本発明の一実施形態に係るヒータの構成を示す断面図である。
図11】本発明の一実施形態に係るヒータの構成を示す断面図である。
図12】本発明の実施形態に係るステージを備える膜加工装置の断面模式図。
図13】本発明の実施形態に係るステージを備える成膜装置の断面模式図。
図14】本発明の実施形態に係るステージを備える成膜装置の断面模式図。
図15】本発明の実施形態に係るステージを備える成膜装置の断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本出願で開示される発明の各実施形態について、図面を参照し説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0026】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。また、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明するが、上方又は下方はそれぞれヒータユニットの使用時(基板載置時)における向きを示す。
【0027】
本明細書および図面において、同一、または類似する複数の構成を総じて表記する際には同一の符号を用い、これら複数の構成のそれぞれを区別して表記する際には、さらに小文字のアルファベットを添えて表記する。一つの構成のうちの複数の部分をそれぞれ区別して表記する際には、同一の符号を用い、さらにハイフンと自然数を用いる。
【0028】
1.第1実施形態
本実施形態では、本発明の一実施形態に係るシースヒータ110に関して説明する。
【0029】
1-1.シースヒータの構成
シースヒータ110の断面図を図1に示す。図1(A)はシースヒータ110の構成を示す断面図である。図1(B)は鎖線B1とB2に沿った構成を示す断面図である。図1(C)は鎖線C1とC2に沿った構成を示す断面図である。図1(D)は鎖線D1とD2に沿った構成を示す断面図である。
【0030】
シースヒータ110は、通電することで発熱する機能を有する。シースヒータ110は、ステージ100(図5(A)参照)が有する第2の支持プレート104(図5(A)参照)、および第1の支持プレート102(図5(A)参照)を加熱するために設けられる。これにより、ステージ100上に設置される基板を加熱することができる。
【0031】
図1(A)に示すように、シースヒータ110は、金属シース115、ヒータ線118、第1の絶縁体116、第2の絶縁体136、第1の絶縁部材122、接続部材126、円筒部材124、第2の絶縁部材128、第3の絶縁部材138、第3の絶縁体132、第4の絶縁体134、一対のリード線112、および一対の端子114を含む。図1(A)においては、所謂、片端子型のシースヒータ110を例示している。本明細書等においては、本発明の一実施形態に係るシースヒータ110の構成を、片端子型のシースヒータ110を例に説明するが、本発明の一実施形態に係るシースヒータ110と同様の構成を、両端子型のシースヒータに適用してもよい。なお、図1(A)の平面視において、右側を上部、左側を下部と呼ぶ。
【0032】
金属シース115は、第1の端部(閉鎖端)が閉じられ、第2の端部(開放端)が解放された円筒形を有する。本明細書等において、金属シース115の先端の形状は、半円形状である例を示すが、この例に限定されない。例えば、金属シース115の先端の形状は、平面形状であってもよいし、円錐形状であってもよい。シースヒータ110の発熱によって、後述する第2の支持プレート104(図5(A)参照)、および第1の支持プレート102(図5(A)参照)を加熱することが可能な形状であればよい。
【0033】
ヒータ線118は金属シース115内で折りたたまれ、金属シース115の円筒軸方向に往復するように配置され、その両端が金属シース115の第2の端部(開放端)から取り出される。すなわち、1つのヒータ線118が金属シース115の円筒軸方向の大部分において2軸(2芯)となるよう配置され、2軸のうちの一方と一方の端子と2軸のうちの他方と他方の端子とが金属シース115の第2の端部(開放端)から取り出される。また、1つのヒータ線118の2軸のうちの一方と2軸のうちの他方とが金属シース115の円筒軸方向に対して略平行または平行となるよう配置される。1つのヒータ線118の2軸のうちの一方の少なくとも一部と2軸のうちの他方の少なくとも一部とが金属シース115の円筒軸方向に対して略平行または平行となるよう配置されてもよい。さらに、ヒータ線118は金属シース115内に間隙をもって配置される。なお、ヒータ線118は、発熱線および非発熱線を含む。
【0034】
ヒータ線118と金属シース115とは間隙に設けられる第1の絶縁体116によって絶縁される。すなわち、ヒータ線118は第1の絶縁体116に囲まれ、第1の絶縁体116は金属シース115に囲まれる。また、第1の絶縁体116は、金属シース115の第2の端部(開放端)と第1の端部(閉鎖端)の間であって、第2の端部(開放端)近傍までの金属シース115内を満たすように設けられる。第1の絶縁体116は、金属シース115の少なくとも一部に接するように設けられてもよいし、ヒータ線118の少なくとも一部に接するように設けられてもよいし、金属シース115に接することなくヒータ線118と金属シース115とを絶縁するように設けられてもよいし、ヒータ線118に接することなくヒータ線118と金属シース115とを絶縁するように設けられてもよい。すなわち、第1の絶縁体116は、ヒータ線118と金属シース115とを絶縁するように設けられれば良い。
【0035】
第1の絶縁体116の上部には、第2の絶縁体136が設けられる。第2の絶縁体136は、第1の絶縁体116の上部および金属シース115の内側の少なくとも一部に接するように設けられる。第2の絶縁体136によって、第1の絶縁体116を金属シース115内に封止し、かつ、ヒータ線118を金属シース115内に固定することができる。第2の絶縁体136は封止剤、接着剤などと呼ばれることもある。
【0036】
第2の絶縁体136の上部には、第1の絶縁部材122が設けられる。第1の絶縁部材122は、第2の絶縁体136の上部および金属シース115の内側の少なくとも一部に接するように設けられる。第1の絶縁部材122は、少なくとも第1の貫通孔と第2の貫通孔とを有する。金属シース115の第2の端部(開放端)から取り出されたヒータ線118の両端の一方が第1の貫通孔に挿通され、もう一方が第2の貫通孔に挿通される。よって、ヒータ線118の両端は、第1の絶縁部材122に対して、第2の絶縁体136が配置されている側から挿通され、第2の絶縁体136が配置されていない側から取り出される。ここで、第1の貫通孔の少なくとも一部と第2の貫通孔の少なくとも一部とは、金属シース115の円筒軸に対して略平行または平行に設けられてもよい。また、第1の貫通孔と第2の貫通孔とに挿通されるヒータ線118の少なくとも一部も金属シース115の円筒軸に対して略平行または平行に設けられてもよい。さらに、第1の貫通孔の少なくとも一部と第2の貫通孔の少なくとも一部とは、第1の貫通孔と第2の貫通孔とに挿通されるヒータ線118の少なくとも一部に対して略平行または平行に設けられてもよい。第1の絶縁部材122は、保護管、絶縁管などと呼ばれることもある。
【0037】
円筒部材124は、その一部が金属シース115に接するように設けられる。円筒部材124は接続部材126によって金属シース115に接続される。円筒部材124は、階段状の段差、または、階段状の構造を含まず、所定の厚みを有するような一つの部材から構成されていてもよい。円筒部材124が階段状の段差、または、階段状の構造を含まず、所定の厚みを有するような一つの部材から構成されることによって、円筒部材124の内径と金属シース115の外径とをほぼ同じにし、かつ、円筒部材124の外径を金属シース115の外径ともほぼ同じにすることができる。したがって、本発明の一実施形態に係るシースヒータ110の径を細くすることができる。円筒部材124は、アダプタと呼ばれることもある。
【0038】
第1の絶縁部材122の上部には、二つの第2の絶縁部材128が第1の絶縁部材122に接するように設けられる。第2の絶縁部材128は貫通孔を有する。第1の絶縁部材122の第1の貫通孔から取り出されたヒータ線118の両端の一方が一つ目の第2の絶縁部材128に挿通され、もう一方が二つ目の第2の貫通孔に挿通される。よって、ヒータ線118の両端は、二つの第2の絶縁部材128に対して、第1の絶縁部材122が配置されている側から挿通され、第1の絶縁部材122が配置されていない側から取り出される。ここで、二つの第2の絶縁部材128は、金属シース115の円筒軸に対して略平行または平行に設けられてもよく、二つの第2の絶縁部材128の一部が金属シース115の円筒軸に対して略平行または平行に設けられてもよい。また、二つの第2の絶縁部材128に挿通されるヒータ線118も金属シース115の円筒軸に対して略平行に設けられてもよく、ヒータ線118の一部が、金属シース115の円筒軸に対して略平行または平行に設けられてもよい。また、第2の絶縁部材128の外径は、第1の絶縁部材122の外径よりも小さく、第1の絶縁部材122が有する第1の貫通孔の径および第2の貫通孔の径と同等であることが好ましい。さらに、第2の絶縁部材128の長さは、後述する第3の絶縁部材138の長さよりも長い。また、第2の絶縁部材128の長さは、円筒部材124の接続部材126が設けられていない端部よりも突出する長さである。
【0039】
第1の絶縁部材122の上部には、第3の絶縁部材138が第1の絶縁部材122に接するように設けられる。第3の絶縁部材138は貫通孔を有する。二つの第2の絶縁部材128が第3の絶縁部材138に挿通される。よって、第3の絶縁部材138は、二つの第2の絶縁部材128に対して、第1の絶縁部材122が配置されている側から挿通され、第1の絶縁部材122が配置されていない側から取り出される。すなわち、第3の絶縁部材138は、二つの第2の絶縁部材128の少なくとも一部を囲うように設けられる。換言すると、第3の絶縁部材138は、二つの第2の絶縁部材128の少なくとも一部を束ねるように設けられる。よって、ヒータ線118は第2の絶縁部材および第3の絶縁部材138によって二重に囲まれる。ここで、第3の絶縁部材138は、金属シース115の円筒軸に対して略平行または平行に設けられてもよく、第3の絶縁部材138の少なくとも一部が、金属シース115の円筒軸に対して、略平行または平行に設けられてもよい。また、第3の絶縁部材138の外径は、第1の絶縁部材122の外径よりも小さいことが好ましい。また、第3の絶縁部材138の長さは、円筒部材124の接続部材126が設けられていない端部よりも突出する長さである。本明細書および図面においては、第2の絶縁部材128と第3の絶縁部材138とが接しない例を示すが、この例に限定されない。第2の絶縁部材128の外側(外壁)の少なくとも一部と第3の絶縁部材138の内側(内壁)の少なくとも一部とが接していてもよい。なお、本明細書等において、第3の絶縁部材138は絶縁性を有する部材である例を示したが、第3の絶縁部材138は導電性を有していてもよい。第3の絶縁部材138は二つの第2の絶縁部材128の少なくとも一部を束ねることができればよい。
【0040】
円筒部材124の内部には、第3の絶縁体132が設けられる。第3の絶縁体132は、金属シース115の一部、第1の絶縁部材122の一部、円筒部材124の内壁の一部、および第3の絶縁部材138に接するように設けられる。第3の絶縁体132によって、第3の絶縁部材138は第1の絶縁部材122に接するように固定される。また、第3の絶縁体132は、円筒部材124の接続部材126が設けられていない端部近傍までの円筒部材124内を満たすように設けられる。第3の絶縁体132は封止剤、接着剤などと呼ばれることもある。
【0041】
第3の絶縁体132の上部には、第4の絶縁体134が設けられる。第4の絶縁体134は、金属シース115の一部、第3の絶縁体132の一部、円筒部材124の内壁の一部、および第3の絶縁部材138に接するように設けられる。第4の絶縁体134は封止剤、接着剤などと呼ばれることもある。第4の絶縁体134は、水分、溶媒などの湿気がシースヒータ110の内部に侵入することを防止する。なお、シースヒータ110が防湿を要しない環境下で利用される場合、第4の絶縁体134を設けなくてもよい。第4の絶縁体134を設けないことによって、シースヒータ110の製造工程を簡略化できる。
【0042】
第2の絶縁部材、および第3の絶縁部材は、第4の絶縁体134よりも突出して設けられる。また、ヒータ線118の両端は、第2の絶縁部材、および第3の絶縁部材よりもさらに突出して設けられる。
【0043】
ヒータ線118の両端には、一対のリード線112が接続される。リード線112には、一対の端子114が接続される。なお、リード線112を介さずに、ヒータ線118の両端に一対の端子114が接続されてもよい。
【0044】
図1(B)、図1(c)および図1(d)に示されるように、ヒータ線118の外径をd1、金属シース115の内径および外径をそれぞれd2およびd3、金属シース115の厚みをd4、円筒部材124の外径をd5、第1の貫通孔123aおよび第2の貫通孔123bの径をd6、第2の絶縁部材128aおよび第2の絶縁部材128bの外径をd7、第3の絶縁部材138の外径をd8、ヒータ線118の間の距離をg1、ヒータ線118の外壁と金属シース115の内壁との距離をg2とする。また、第1の絶縁部材122の外径もd2であり、円筒部材124の内径もd3である。なお、図1(B)、図1(c)および図1(d)は、円筒軸と直交する断面を示す断面図である。ヒータ線118の外径d1は0.1mm以上2.0mm以下の範囲から選択できる。金属シース115の内径d2は3.0mm以上4.0mm以下の範囲から、金属シース115の外径d3は3.0mm以上6.0mm以下の範囲から、それぞれ選択することができる。金属シース115の厚みd4は0.5mm以上1.0mm以下の範囲から選択できる。金属シース115と、金属シース115内に配置されるそれぞれのヒータ線118との距離g1は0.3mm以上1.0mm以下、または0.4mm以上1.0mm以下の範囲から選択することができる。ヒータ線118の一方の端部から折り返し部分と、他方の端部から折り返し部分との距離g2は0.3mm以上2.0mm以下、または0.4mm以上1.0mm以下の範囲から選択される。円筒部材124の外径d5は、4.0mm以上10.0mm以下の範囲から選択することができる。第2の絶縁部材128aおよび第2の絶縁部材128bの外径d7は、1.0mm以上4.5mm以下の範囲から選択することができる。第3の絶縁部材138の外径d8は、2.0mm以上9.0mm以下の範囲から選択することができる。
【0045】
ヒータ線118には、通電することでジュール熱を発生する導電体を用いることができる。具体的には、タングステン、タンタル、モリブデン、白金、ニッケル、クロム、およびコバルトから選択される金属、またはこれらの金属を含む合金などを使用することができる。合金としては、ニッケルとクロムの合金、ニッケル、クロム、およびコバルトを含む合金などが挙げられる。
【0046】
第1の絶縁体116はヒータ線118が金属シース115と接触してショートすることを防ぐために設けられる。第1の絶縁体116に使用される材料は、熱伝導率が10W/mK以上200W/mKの絶縁材料から選択することができる。このような材料を使用することで、ヒータ線118が発生する熱エネルギーを効率よく金属シース115へ伝えることができる。第1の絶縁体116としては、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどが例示される。
【0047】
金属シース115は金属を含み、金属は200W/mK以上430W/mK以下の熱伝導率を有する金属から選択することができる。このような金属を選択することで、ヒータ線118が発生する熱エネルギーを効率よく第1の支持プレート102や第2の支持プレート104へ伝えることができる。金属は、5×10-6/K以上25×10-6/K以下の熱膨張率を有することが好ましい。これにより、熱膨張による変形を抑制することができ、信頼性の高いシースヒータ110を提供することができる。具体的には、アルミニウム、チタン、ステンレスなどの金属や合金を金属シース115に用いることができる。
【0048】
第2の絶縁体136は、例えば、セラミック系の封止剤を使用することができる。セラミック系の封止剤は、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ケイ素、炭化ケイ素などを含む材料を用いることができる。
【0049】
第1の絶縁部材122は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、酸化ケイ素などを含む材料から形成される。
【0050】
接続部材126は、ろう付けによって形成される。接続部材126として用いられる材料は、例えば、銀、銅、および亜鉛を含む合金、銅と亜鉛を含む合金、リンを微量含む銅、アルミニウムやその合金、チタン、銅、およびニッケルを含む合金、チタン、ジルコニウム、および銅を含む合金、チタン、ジルコニウム、銅、およびニッケルを含む合金などが挙げられる。
【0051】
円筒部材124は、金属シース115と同様の材料、同様の特性を有する部材を用いることができる。
【0052】
第2の絶縁部材128および第3の絶縁部材138は、例えば、塩化ビニル、シリコンゴム、フッ素系ポリマー、ポリイミド、ガラス繊維またはセラミック繊維の織物などから形成される絶縁チューブを用いることができる。
【0053】
第3の絶縁体132は、例えば、セラミック系の接着剤、エポキシ系の接着剤またはガラス系の接着剤等を使用することができる。セラミック系の接着剤は、第2の絶縁体136と同様の材料を用いることができる。
【0054】
第4の絶縁体134は、例えば、フッ素系の接着剤を使用することができる。
【0055】
シースヒータ110の円筒軸に垂直な断面の形状に制約はなく、様々な構造を有するシースヒータ110を使用することができる。例えば、図1(B)に示すように円形状、後述する図10(B)及び図11(B)に示すように多角形状でも良く、図示しないが楕円形状でも良い。断面形状が円形状の場合、変形に必要な力は曲げる方向に依存しないため、容易に任意の方向にシースヒータ110を曲げることができる。このため、後縦する第1の支持プレート102または第2の支持プレート104などに形成される溝にシースヒータ110を容易に配置することが可能となる。
【0056】
従来のシースヒータは、例えば、金属シースの開放端から取り出された一対のヒータ線において、一方のヒータ線と他方のヒータ線との距離を離すようにしたうえで、その距離を保つように絶縁チューブなどの絶縁部材を装着し、さらに、一方のヒータ線と他方のヒータ線のそれぞれにリード線を接続し、一対のリード線を絶縁チューブなどの絶縁部材で束ねる構造を有していた。このような構造の少なくとも一部は締結部と呼ばれる。そして、従来のシースヒータは、以上のような構造を、例えば、二段の階段状の筒状部材に挿通し、二段の階段状の筒状部材と金属シースとをろう付けによって接続した構造を有していた。よって、従来のシースヒータは、少なくとも締結部と階段状の筒状部材とによって、太い径を有するヒータとなっていた。
【0057】
一方、本発明の一実施形態に係るシースヒータは、従来のシースヒータが有していた締結部、および階段状の筒状部材を含まない。本発明の一実施形態に係るシースヒータ110は、上述したように、金属シース115の開放端から取り出された一対のヒータ線118は、金属シース115の外径よりも細い第2の絶縁部材128および金属シース115の外径よりも細い第3の絶縁部材138によって囲まれ、さらに金属シース115の外径と同等の円筒部材124によって囲まれる構造を有する。よって、シースヒータ110を細く形成することができる。また、金属シース115とヒータ線118との絶縁を確保するとともに、ヒータ線118のショートを防ぐことができる。また、シースヒータ110を、後述するステージ100上に、高密度にレイアウトすることができる。したがって、基板上の温度分布を均一にし、基板上の温度分布をさらに低減することができる。
【0058】
1-2.シースヒータの作製
図2及び図3はシースヒータ110の作製方法を示す断面図である。図4はシースヒータ110の作製方法を説明するためのフローチャートを示す図である。ここでは、図1(A)、図2乃至図4を参照し、シースヒータの作製について説明する。なお、図1(A)、図2および図3の平面視において、右側を上部、左側を下部と呼ぶ。
【0059】
図2(A)および図4のステップ31(S31)に示すように、シースヒータ110の作製が開始されると、第2の絶縁体136を、第1の絶縁体116とヒータ線118を囲う金属シース115に、注入する。本実施形態においては、第2の絶縁体136はセラミック系の封止剤を用いた。ここで、ヒータ線118は金属シース115内で折りたたまれ、その両端が金属シース115の一端から取り出される。金属シース115の一端から取り出された一対のヒータ線118の長さは、金属シース115の長さよりも十分に長い。
【0060】
次に、図2(B)および図4のステップ33(S33)に示すように、金属シース115の一端から取り出されたヒータ線118の両端を、第1の絶縁部材122に挿通する。具体的には、ヒータ線118の両端のうちの一方を、第1の絶縁部材122に含まれる第1の貫通孔123aに挿通し、ヒータ線118の両端のうちのもう一方を、第1の絶縁部材122に含まれる第2の貫通孔123bに挿通する。本実施形態においては、第1の絶縁部材122は二つの貫通孔を有するセラミック系の絶縁管を用いた。このとき、金属シース115から突出している第1の絶縁部材122の長さd9を測定してもよい。長さd9を測定することによって、ヒータ線118が第1の絶縁部材122に挿通され、第1の絶縁部材122が金属シース115に適切に設けられているか否かを確認してもよい。
【0061】
次に、図2(C)および図4のステップ35(S35)に示すように、金属シース115を円筒部材124に挿通し、金属シース115と円筒部材124とを接続部材126によって接続する。本実施形態においては、接続部材126は銀を材料とする銀ろうを用い、銀ろう付けによって金属シース115と円筒部材124とを接続した。また、本実施形態においては、円筒部材124はアルミニウムを含む材料で形成され、円筒部材124の外径d5はおよそ6.5mm、円筒部材124の内径d3はおよそ4.5mm、円筒部材124の厚みはおよそ1.0mmの部材を用いた。
【0062】
次に、図3(A)および図4のステップ37(S37)に示すように、ヒータ線118の両端を、二つの第2の絶縁部材128を挿通された第3の絶縁部材138に挿通する。具体的には、ヒータ線118の両端のうちの一方を、第3の絶縁部材138に挿通された第2の絶縁部材128aに挿通し、ヒータ線118の両端のうちのもう一方を、第3の絶縁部材138に挿通された第2の絶縁部材128bに挿通する。本実施形態においては、第2の絶縁部材128および第3の絶縁部材138はポリイミドから形成される絶縁チューブを用いた。また、第2の絶縁部材128は外径d7がおよそ2mmの絶縁チューブ、第3の絶縁部材138は外径d8がおよそ4mmの絶縁チューブを用いた。
【0063】
次に、図3(B)および図4のステップ39(S39)に示すように、第3の絶縁体132を円筒部材124に注入する。本実施形態においては、第3の絶縁体132はセラミック系の接着剤を用いた。
【0064】
次に、図3(C)および図4のステップ41(S41)に示すように、第4の絶縁体134を円筒部材124に注入する。本実施形態においては、第4の絶縁体134はフッ素系の接着剤を用いた。第4の絶縁体134は、第3の絶縁体132を覆い、第2の絶縁部材128を囲うように設けられる。
【0065】
さらに、図1(A)および図4のステップ43(S43)に示すように、一対のリード線112をヒータ線118の両端に接続する。最後に、図1(A)および図4のステップ45(S45)に示すように、一対の端子114を一対のリード線112に接続する。
【0066】
以上のように、シースヒータ110が作製される。なお、図1(A)、図2乃至図4を用いて説明したシースヒータ110の作製方法は、一例であって、この例に限定されない。シースヒータ110の作製方法は、本発明の一実施形態にかかるシースヒータ110の構成を逸脱しない範囲において、適宜選定した方法を用いればよい。
【0067】
以上のようにシースヒータ110を作製することによって、シースヒータ110を細く形成することができる。
【0068】
2.第2実施形態
本実施形態では、本発明の一実施形態に係るステージ100に関して説明する。第1実施形態と同一、または類似する構成については説明を省略することがある。
【0069】
図5(A)と図5(B)にステージ100の斜視図と上面図とをそれぞれ示す。図5(B)の鎖線A1とA2とに沿った断面図を図6(A)および図6(B)に示す。図5(A)乃至図6(B)に示すように、ステージ100は、第1の支持プレート102、第2の支持プレート104、シャフト108、および少なくとも一つのシースヒータ110を有する。図5(A)乃至図6(B)では、第1のシースヒータ110aおよび第2のシースヒータ110bの二つのシースヒータが設けられた例が示されている。図面の見やすさを考慮し、図5(A)では第1の支持プレート102の図示は省略され、図6(B)ではシースヒータ110の図示は省略されている。
【0070】
第1の支持プレート102は、シリコンや化合物半導体を含む半導体基板、または石英やガラスなどの絶縁物を含む絶縁基板などをその上に配置するため、上面が平坦になるように構成される。第1の支持プレートは金属を含み、金属は200W/mK以上430W/mK以下の熱伝導率を有する金属から選択される。高い熱伝導率を有する金属を用いることで、シースヒータ110が発生する熱エネルギーを効率よく受け取ることができる。また、金属は、5×10-6/K以上25×10-6/K以下の熱膨張率を有することが好ましい。このような特性を満たす具体的な金属として、チタンやアルミニウム、ステンレスなどの金属が挙げられる。図示しないが、第1の支持プレート102上には、基板を固定するための静電チャックや、基板とステージ100の間にヘリウムなどの熱伝導率の高いガスを供給するための貫通孔、または液体の媒体を環流するための環流路を設けてもよい。
【0071】
第2の支持プレート104は第1の支持プレート102の下に設けられる。第2の支持プレート104も第1の支持プレート102で使用可能な金属を含む。第2の支持プレート104に含まれる金属と第1の支持プレート102に含まれる金属は同一でも良く、異なっていてもよい。異なる場合には、第1の支持プレート102と第2の支持プレート104に含まれる金属の熱膨張率の差が10×10-6/K以下となるように、それぞれの金属を選択することができる。これにより、熱膨張による変形を抑制することができ、信頼性の高いステージ100を提供することができる。
【0072】
また、第2の支持プレート104は、その上面104-3が第1の支持プレート102と接合される。第1の支持プレート102と第2の支持プレート104の接合は、溶接やねじ止め、または、ろう付けによって行うことができる。ろう付けにおいて用いられるろうとしては、銀、銅、および亜鉛を含む合金、銅と亜鉛を含む合金、リンを微量含む銅、アルミニウムやその合金、チタン、銅、およびニッケルを含む合金、チタン、ジルコニウム、および銅を含む合金、チタン、ジルコニウム、銅、およびニッケルを含む合金などが挙げられる。
【0073】
なお、ステージ100はさらに、第3の支持プレート(図示は省略)を有してもよい。任意の構成である第3の支持プレートは、第2の支持プレート104の下に配置される。第3の支持プレートは第1の支持プレート102、または第2の支持プレート104と同様の構成を含む。第3の支持プレートは第2の支持プレート104の下面104-4と接合される。第1の支持プレート102と第2の支持プレート104の接合と同様、第3の支持プレートと第2の支持プレート104の接合も、溶接やねじ止め、または、ろう付けなどによって行うことができる。
【0074】
シャフト108は第1の支持プレート102、および第2の支持プレート104を支持するために設けられる。後述するシースヒータ110のヒータ線118へ電力を供給するためのリード線112を格納するため、中空構造となっている。静電チャックを設ける場合には、静電チャックへ電力を供給するための配線もシャフト108内に配置される。図面の見やすさを考慮し、図示を省略するが、シャフト108は回転機構と接続されていてもよい。シャフト108が回転機構と接続されることによって、ステージ100をシャフト108の長軸を中心として回転させることができる。シャフト108は、溶接やねじ止め、または、ろう付けなどによって第2の支持プレート104と接合される。なお、第3の支持プレートを用いる場合、シャフト108は第3の支持プレートと接合され、第3の支持プレートも支持する。
【0075】
シースヒータ110は、第1実施形態で説明した構成を適用することができる。シースヒータ110は、通電することで発熱する機能を有する。シースヒータ110は、第2の支持プレート104、および第1の支持プレート102を加熱するために設けられる。これにより、ステージ100上に設置される基板が加熱される。
【0076】
第2の支持プレート104の上面104-3には溝(第1の溝120)が設けられ(図6(B))、第1のシースヒータ110a及び第2のシースヒータ110bは第1の溝120内に配置される(図6(A))。図6(A)、図6(B)に示した例では、第1の支持プレート102は平坦な下面を有しており、下面には溝は設けらない。したがって、第1の溝120の深さは、シースヒータ110の外径と同一、またはほぼ同一である。具体的には、第1の溝120の深さは、シースヒータ110の外径の100%よりも大きく150%以下、100%よりも大きく120%以下、または100%よりも大きく110%以下とすればよい。第1の支持プレート102の面内温度分布を小さくするため、第1の溝120は、上面104-3内に均一な密度で存在するように形成される。
【0077】
第1のシースヒータ110aの第1の端部T1は、第1の支持プレート102および第2の支持プレート104がシャフト108と重なる領域(図5(B)において鎖線の円で示された領域)109内に位置する。第1の端部T1で折り曲げられた第1のシースヒータ110aは、第2の支持プレート104に形成される貫通孔130(図6(B))を通過し、シャフト108内部へ延伸し、さらにリード線112、端子114を介して図示しないヒータ電源と接続される。
【0078】
第1のシースヒータ110aの第1の端部T1と同様に、第2のシースヒータ110bの第1の端部T2も、第1の支持プレート102および第2の支持プレート104がシャフト108と重なる領域(図5(B)において鎖線の円で示された領域)109内に位置する。第1の端部T2で折り曲げられた第2のシースヒータ110bは、第3の支持プレート106に形成される貫通孔130(図6(B))を通過し、シャフト108内部へ延伸し、さらにリード線112、端子114を介して図示しないヒータ電源と接続される(図6(A))。
【0079】
上述した構成を適用することにより、シースヒータのレイアウトの自由度を大幅に向上させるのみならず、より均一な基板加熱を行うことが可能となる。
【0080】
第1実施形態において説明したように、従来のシースヒータの径は、本発明の一実施形態に係るステージ100に備えられたシースヒータ110の径と比較して太い。ステージが有するシャフト108の大きさには制約があるため、ステージに多数の従来のシースヒータを用いる場合には、多数の従来のシースヒータの端部を領域109内に配置することが困難となる。その結果、配置可能なシースヒータの数が制限される。よって、ステージの上面を複数のセグメントに分割し、セグメントごとに精密に温度制御を行うことができない。したがって、基板を均一に加熱することが困難となる。
【0081】
これに対して、本発明の一実施形態に係るステージ100に備えられたシースヒータ110の径は細い。よって、ステージ100に複数のシースヒータ110を配置しても、前記多数のシースヒータの端部を領域109に配置することができる。また、多数のシースヒータ110の配置の自由度が高く、ステージの上面を複数のセグメントに分割し、セグメントごとに精密に温度制御を行うことができる。したがって、基板を均一に加熱することが可能となる。
【0082】
3.第3実施形態
本実施形態では、第2実施形態で述べたステージ100の変形例を図7(A)および図7(B)を用いて説明する。これらの図は、図6(A)と同様に、図5(B)の鎖線A1とA2とに沿った断面図である。第1実施形態または第2実施形態と同一、または類似する構成については説明を省略することがある。
【0083】
3-1.変形例1
図7(A)に示すように、変形例1では、第2の支持プレート104の上面104-3に溝(第1の溝120)は形成されず、第1の支持プレート102の下面に溝(第2の溝140)が形成される。変形例1では、シースヒータ110は第2の溝140内に収納される。第2の溝140の深さは、シースヒータ110の外径と同一、またはほぼ同一である。具体的には、第2の溝140の深さは、シースヒータ110の外径の100%よりも大きく150%以下、100%よりも大きく120%以下、または100%よりも大きく110%以下とすればよい。
【0084】
変形例1においては、第2の溝140の深さをシースヒータ110の外径と同一またはほぼ同一にすることによって、シースヒータ110と第1の支持プレート102の接触面積を増加させることができる。よって、シースヒータ110が発生する熱エネルギーを第1の支持プレート102へ効率よく伝えることが可能となる。
【0085】
変形例1においては、第2の溝140の深さをシースヒータ110の外径と同一またはほぼ同一にする構成を例示したが、第2の溝140の深さはこの構成に限定されない。例えば、シースヒータ110の外径と第2の溝140の深さは異なっていてもよい。シースヒータ110の外径と第2の溝140との間にスペースが存在している場合、シースヒータ110の熱膨張による変形を抑制することができる。よって、信頼性の高いステージを提供することができる。
【0086】
3-2.変形例2
または図7(B)に示すように、第2の支持プレート104の上面104-3に第1の溝120を形成するとともに、第1の支持プレート102の下面に第2の溝140を形成してもよい。変形例2では、第1の溝120の深さと第2の溝140の深さの和は、シースヒータ110の外径と同一、またはほぼ同一である。具体的には、第1の溝120の深さと第2の溝140の深さの和は、シースヒータ110の外径の100%よりも大きく150%以下、100%よりも大きく120%以下、または100%よりも大きく110%以下とすればよい。
【0087】
変形例2においては、第1の溝120の深さと第2の溝140の深さの和をシースヒータ110の外径と同一またはほぼ同一にすることによって、シースヒータ110と第1の支持プレート102および第2の支持プレート104との接触面積を増加させることができる。よって、シースヒータ110が発生する熱エネルギーを第1の支持プレート102および第2の支持プレート104へ効率よく伝えることが可能となる。
【0088】
変形例2においては、第1の溝120の深さと第2の溝140の深さの和をシースヒータ110の外径と同一またはほぼ同一にする構成を例示したが、第1の溝120の深さと第2の溝140の深さの和はこの構成に限定されない。例えば、シースヒータ110の外径と、第1の溝120の深さと第2の溝140の深さとの和は異なっていてもよい。シースヒータ110の外径と第1の溝120および第2の溝140との間にスペースが存在している場合、シースヒータ110の熱膨張による変形を抑制することができる。よって、信頼性の高いステージを提供することができる。
【0089】
4.第4実施形態
本実施形態では、独立に駆動される複数のシースヒータ110が配置されたステージ150について説明する。以下に示す態様は本実施形態の一例であり、ステージ100に設けられるシースヒータ110の数に制約はない。第1実施形態乃至第3実施形態と同一、または類似する構成については説明を省略することがある。
【0090】
図8に、ステージ150の上面図を示す。図面の見やすさを考慮し、図8では、第1の支持プレート102の図示は省略されている。図8に示すように、ステージ150には四つのシースヒータ(第1のシースヒータ110a、第2のシースヒータ110b、第3のシースヒータ110c、および第4のシースヒータ110d)のそれぞれが、一つの四分円内に配置される。すなわち、ステージ150には四つのシースヒータ(第1のシースヒータ110a、第2のシースヒータ110b、第3のシースヒータ110c、および第4のシースヒータ110d)が、対称性良く配置される。図8で示した例では、半径の異なる円弧を備える第1のシースヒータ110aから第4のシースヒータ110dが配置されている。
【0091】
第1のシースヒータ110a乃至第4のシースヒータ110dは同一の形状を有し、かつ、第1のシースヒータ110a乃至第4のシースヒータ110dの一つを第2の支持プレート104の中心を通る軸で90°回転させると他の一つと重なるように配置することができる。
【0092】
上述したようなレイアウトを採用しても、本発明の一実施形態に係るステージ150に備えられた複数のシースヒータ110の径は細いため、複数のシースヒータ110の端部を領域109内に配置することができる。また、上述したようなレイアウトを採用することによって、高い対称性を有する複数のシースヒータ110を第2の支持プレート104上に高い密度で配置することができる。よって、より均一に、かつ、精密に基板の温度を制御することが可能である。
【0093】
5.第5実施形態
本実施形態では、第1実施形態とは異なるシースヒータ110の構造を説明する。第1実施形態と同一、または類似する構成については説明を省略することがある。
【0094】
本実施形態に係るステージ100に使用可能なシースヒータ110に制約はなく、様々な構造を有するシースヒータ110を使用することができる。その一例として、帯状のヒータ線118を備えた片端子型のシースヒータ110の断面図を図9(A)に示す。図9(B)は長軸に垂直な鎖線E1とE2に沿った断面を示す図である。また、らせん構造を有する帯状のヒータ線118を備えた片端子型のシースヒータ110の断面図を図10(A)に示す。図10(B)は長軸に垂直な鎖線F1とF2に沿った断面を示す図である。また、二重らせん構造を有する帯状のヒータ線118を備えた片端子型のシースヒータ110の断面図を図11(A)に示す。図11(B)は長軸に垂直な鎖線G1とG2に沿った断面を示す図である。
【0095】
図9(A)に示したシースヒータ110は、帯状のヒータ線118が金属シース115内で折りたたまれ、その両端が金属シース115の一端から取り出される点で、第1実施形態において示したシースヒータ110と異なる。
【0096】
図9(A)に例示されるシースヒータ110の断面形状は四角形であり、帯状のヒータ線118を与える。図10(A)に示すように、ヒータ線118は金属シース115内で捻じれ、一方の端部から折り返し部分と、他方の端部から折り返し部分は、それぞれ独立してらせん構造を形成してもよい。帯状のヒータ線118がらせん構造を有する場合、らせんのピッチL1は1.0mm以上3.0mm以下、1.0mm以上2.5mm以下、または1.0mm以上2.0mm以下となるよう、らせん構造が調整される。このようならせん構造を適用することにより、金属シース115の単位当たりのヒータ線118の長さが増大し、シースヒータ110の抵抗値を増大させることができる。さらに、ヒータ線118にばね性を付与することができるため、ヒータ線118の変形や熱膨張時の断線が抑制される。このため、例えば金属シース115とヒータ線118との熱膨張率の差が大きくても、信頼性が向上したシースヒータ110を提供することが可能となる。
【0097】
図9(B)および図10(B)に示すように、ヒータ線118の法線は、金属シース115が延伸する方向に対してほぼ垂直である。さらに、ヒータ線118の互いに対向する二つの部分において、ヒータ線118の面はほぼ平行である。また、らせん構造の巻方向を同一とし、そのピッチL1もほぼ同一とすることで、ヒータ線118の互いに対向する二つの部分の間の距離g2を一定に維持することができ、その結果、ヒータ線118のショートを防ぐことができる。ただし、ヒータ線118の互いに対向する二つの部分において、らせんの巻方向またはピッチL1は互いに異なっていてもよい。
【0098】
図11(A)に示すように、ヒータ線118の互いに対向する二つの部分は、二重らせん構造を有するよう、ヒータ線118を構成してもよい。この場合、ヒータ線118のらせん構造のピッチL2は1.0mm以上6.0mm以下、1.0mm以上2.5mm以下、または1.0mm以上2.0mm以下となるよう、ヒータ線118を構成することができる。
【0099】
図9(B)、図10(B)、および図11(B)を参照すると、ヒータ線118の幅d10は0.1mm以上2.0mm以下の範囲から選択でき、厚みd11は0.1mm以上0.5mm以下の範囲から選択することができる。金属シース115の内径d2は3.0mm以上4.0mm以下の範囲から、厚みd4は0.5mm以上1.0mm以下の範囲から、外径d3は3.0mm以上6.0mm以下の範囲から選択することができる。ヒータ線118と金属シース115との距離g1は0.3mm以上1.0mm以下、または0.4mm以上1.0mm以下の範囲から選択することができる。ヒータ線118の一方の端部から折り返し部分と、他方の端部から折り返し部分との距離g2は0.3mm以上2.0mm以下、またはは0.4mm以上1.0mm以下の範囲から選択される。これにより、シースヒータ110を細く形成することができる。よって、シースヒータ110をステージ100上に、高密度に配置することができる。したがって、基板の温度分布をさらに低減することができる。また、金属シース115とヒータ線118との絶縁を確保するとともに、ヒータ線118のショートを防ぐことができる。
【0100】
シースヒータ110の長軸に垂直な断面の形状に制約はない。例えば、シースヒータ110の長軸に垂直な断面の形状は、図1(B)に示すように円形状でも良く、図示しないが多角形状または楕円形状でも良い。断面形状が円形の場合、変形に必要な力は曲げる方向に依存しないため、容易に任意の方向にシースヒータ110を曲げることができる。よって、図5乃至図8に示した第1の支持プレート102や第2の支持プレート104などに形成される溝にシースヒータ110を容易に配置することが可能となる。
【0101】
6.第6実施形態
本実施形態では、上述したステージ100、またはステージ150を備える成膜装置と膜加工装置について説明する。本実施形態ではステージ100が備えられた成膜装置及び膜加工装置を例として説明する。第1実施形態乃至第5実施形態と同一、類似する構成に関しては説明を省略することがある。
【0102】
6-1.エッチング装置
図12には、膜加工装置の一つであるエッチング装置200の断面図が示されている。エッチング装置200は、種々の膜に対してドライエッチングを行うことができる。エッチング装置200は、チャンバー202を有している。チャンバー202は、基板上に形成された導電体、絶縁体、または半導体などの膜に対してエッチングを行う空間を提供する。
【0103】
チャンバー202には排気装置204が接続され、これにより、チャンバー202内を減圧雰囲気に設定することができる。チャンバー202にはさらに反応ガスを導入するための導入管206が設けられ、バルブ208を介してチャンバー内にエッチング用の反応ガスが導入される。反応ガスとしては、例えば四フッ化炭素(CF4)、オクタフルオロシクロブタン(c-C48)、デカフルオロシクロペンタン(c-C510)、ヘキサフルオロブタジエン(C46)などの含フッ素有機化合物が挙げられる。
【0104】
チャンバー202上部には導波管210を介してマイクロ波源212を設けることができる。マイクロ波源212はマイクロ波を供給するためのアンテナなどを有しており、例えば2.45GHzのマイクロ波や、13.56MHzのラジオ波(RF)といった高周波数のマイクロ波を出力する。マイクロ波源212で発生したマイクロ波は導波管210によってチャンバー202の上部へ伝播し、石英やセラミックなどを含む窓214を介してチャンバー202内部へ導入される。マイクロ波によって反応ガスがプラズマ化し、プラズマに含まれる電子やイオン、ラジカルによって膜のエッチングが進行する。
【0105】
チャンバー202下部には基板を設置するため、本発明の一実施形態に係るステージ100が設けられる。基板はステージ100上に設置される。ステージ100には電源224が接続され、高周波電力がステージ100に与えられ、マイクロ波による電界がステージ100の表面、基板表面に対して垂直な方向に形成される。チャンバー202の上部や側面にはさらに磁石216、磁石218、及び磁石220を設けることができる。磁石216、磁石218、及び磁石220としては永久磁石でもよく、電磁コイルを有する電磁石でもよい。磁石216、磁石218、磁石220によってステージ100、および基板表面に平行な磁界成分が作り出され、マイクロ波による電界との連携により、プラズマ中の電子はローレンツ力を受けて共鳴し、ステージ100、および基板表面に束縛される。その結果、高い密度のプラズマを基板表面に発生させることができる。
【0106】
ステージ100にはさらに、ステージ100に設けられるシースヒータ110を制御するヒータ電源230が接続される。ステージ100にはさらに、任意の構成として、基板をステージ100に固定するための静電チャック用の電源226や、ステージ100内部に環流される媒体の温度制御を行う温度コントローラ228、ステージ100を回転させるための回転制御装置(図示は省略)が接続されてもよい。
【0107】
上述したように、エッチング装置200には本発明の一実施形態に係るステージ100が用いられる。このステージ100を用いることで、基板を均一に加熱し、かつ、加熱温度を精密に制御することができる。したがって、エッチング装置200により、基板上に設けられる種々の膜を均一にエッチングすることが可能となる。
【0108】
6-2.CVD装置
図13は、成膜装置の一つであるCVD装置300の断面図が示されている。CVD装置300はチャンバー302を有している。CVD装置300は、反応ガスを化学的に反応させ、種々の膜を基板上に化学的に形成する場を提供する。
【0109】
チャンバー302には排気装置304が接続され、チャンバー302内の圧力を低減することができる。チャンバー302にはさらに反応ガスを導入するための導入管306が設けられ、バルブ308を介してチャンバー302内に成膜用の反応ガスが導入される。反応ガスとしては、作成する膜に依存して種々のガスを用いることができる。ガスは、常温で液体でもよい。例えばシランやジクロロシラン、テトラエトキシシランなどを用いることでシリコン、酸化ケイ素、または窒化ケイ素などの薄膜を形成することができる。またはフッ化タングステンやトリメチルアルミニウムなどを用いることで、タングステンやアルミニウムなどの金属薄膜を形成することができる。
【0110】
エッチング装置200と同様、チャンバー302上部には導波管310を介してマイクロ波源312を設けてもよい。マイクロ波源312で発生したマイクロ波は導波管310によってチャンバー302内部へ導入される。マイクロ波によって反応ガスがプラズマ化し、プラズマに含まれる種々の活性種によってガスの化学反応が促進され、化学反応によって得られる生成物が基板上に堆積し、薄膜が形成される。任意の構成として、プラズマの密度を増大させるための磁石344をチャンバー302内に設けることができる。チャンバー302下部には、第1実施形態で述べたステージ100が設けられ、基板がステージ100上に設置された状態で薄膜の堆積を行うことができる。エッチング装置200と同様、チャンバー302の側面にはさらに磁石316、および磁石318を設けてもよい。
【0111】
ステージ100にはさらに、ステージ100に設けられるシースヒータ110を制御するヒータ電源330が接続される。ステージ100にはさらに、任意の構成として、高周波電力をステージ100に供給するための電源324、静電チャック用の電源326、ステージ100内部に環流される媒体の温度制御を行う温度コントローラ328、ステージ100を回転させるための回転制御装置(図示は省略)などが接続されてもよい。
【0112】
6-3.スパッタ装置
図14は、成膜装置の一つであるスパッタ装置400の断面図が示されている。スパッタ装置400はチャンバー402を有する。スパッタ装置400は、高速のイオンとターゲットの衝突、およびその際に発生するターゲット原子を基板上に堆積させるための場を提供する。
【0113】
チャンバー402にはチャンバー402内を減圧にするための排気装置404が接続される。チャンバー402にはアルゴンなどのスパッタガスをチャンバー402へ導入するための導入管406、およびバルブ408が設けられる。
【0114】
チャンバー402下部には、成膜する材料を含むターゲットを保持し、かつ陰極として機能するターゲットステージ410が設けられ、その上にターゲット412が設置される。ターゲットステージ410には高周波電源414が接続され、高周波電源414によってチャンバー402内にプラズマを発生することができる。
【0115】
チャンバー402上部には、第1実施形態で述べたステージ100を設けることができる。この場合、基板がステージ100下に設置された状態で薄膜の形成が進行する。エッチング装置200やCVD装置300と同様、ステージ100にはヒータ電源430が接続される。ステージ100にはさらに、高周波電力をステージ100に供給するための電源424、静電チャック用の電源426、温度コントローラ428、ステージ100を回転させるための回転制御装置(図示せず)が接続されてもよい。
【0116】
チャンバー402内で発生したプラズマによって加速されたアルゴンイオンは、ターゲット412に衝突し、ターゲット412の原子が弾き出される。弾き出された原子は、シャッター416が開放されている間、ステージ100下に設置される基板へ飛翔し、堆積する。
【0117】
本実施形態では、ステージ100がチャンバー402の上部に、ターゲットステージ410がチャンバー402の下部に設置される構成が例示されるが、本実施形態はこの構成に限られず、ターゲット412がステージ100の上に位置するようにスパッタ装置400を構成してもよい。または、基板の主面が水平面に対して垂直に配置されるようにステージ100を設置し、それに対向するようにターゲットステージ410を設けてもよい。
【0118】
6-4.蒸着装置
図15は、成膜装置の一つである蒸着装置500の断面図が示されている。蒸着装置500はチャンバー502を有する。蒸着装置500は、蒸着源510における材料の蒸発、ならびに蒸発した材料を基板上へ堆積させるための空間が提供される。
【0119】
チャンバー502にはチャンバー502内を高真空にするための排気装置504が接続される。チャンバー502にはチャンバー502を大気圧に戻すための導入管506が設けられ、バルブ508を介して窒素やアルゴンなどの不活性ガスがチャンバー502内に導入される。
【0120】
チャンバー502上部には、ステージ100を設けることができる。基板がステージ100下に設置された状態で材料の堆積が進行する。エッチング装置200、CVD装置300、スパッタ装置400と同様、ステージ100にはさらにヒータ電源528が接続される。ステージ100にはさらに、任意の構成として、静電チャック用の電源524、温度コントローラ526、ステージ100を回転させるための回転制御装置530が接続されてもよい。ステージ100はさらに、基板と蒸着源510の間にメタルマスクを固定するためのマスクホルダ516を有してもよい。これにより、材料を堆積する領域にメタルマスクの開口部が重なるように、基板近傍にメタルマスクを配置することができる。
【0121】
蒸着源510がチャンバーの下側に設けられ、蒸着する材料が蒸着源510に充填される。蒸着源510には材料を加熱するためのヒータが設けられており、ヒータは制御装置512によって制御される。排気装置504を用いてチャンバー502内を高真空にし、蒸着源510を加熱して材料を気化させることで蒸着が開始される。蒸着の速度が一定になった時にシャッター514を開放することで、基板上において材料の堆積が開始される。
【0122】
上述したように、本実施形態のCVD装置300、スパッタ装置400、または蒸着装置500などの成膜装置には、本発明の一実施形態に係るステージが用いられる。このステージを用いることで、基板を均一に加熱し、かつ、加熱温度を精密に制御することができる。したがって、これらの成膜装置を用いることで、特性が制御された種々の膜を基板上に均一に形成することが可能となる。
【0123】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0124】
また、上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
【符号の説明】
【0125】
100:ステージ、102:第1の支持プレート、104:第2の支持プレート、104-3:上面、104-4:下面、106:第3の支持プレート、108:シャフト、109:領域、110:シースヒータ、110a:第1のシースヒータ、110b:第2のシースヒータ、110c:第3のシースヒータ、110d:第4のシースヒータ、112:リード線、114:端子、115:金属シース、116:第1の絶縁体、118:ヒータ線、120:第1の溝、122:第1の絶縁部材、124:円筒部材、126:接続部材、130:貫通孔、140:第2の溝、150:ステージ、200:エッチング装置、202:チャンバー、204:排気装置、206:導入管、208:バルブ、210:導波管、212:マイクロ波源、214:窓、216:磁石、218:磁石、220:磁石、224:電源、226:電源、228:温度コントローラ、230:ヒータ電源、300:装置、302:チャンバー、304:排気装置、306:導入管、308:バルブ、310:導波管、312:マイクロ波源、316:磁石、318:磁石、324:電源、326:電源、328:温度コントローラ、330:ヒータ電源、344:磁石、400:スパッタ装置、402:チャンバー、404:排気装置、406:導入管、408:バルブ、410:ターゲットステージ、412:ターゲット、414:高周波電源、416:シャッター、424:電源、426:電源、428:温度コントローラ、430:ヒータ電源、500:蒸着装置、502:チャンバー、504:排気装置、506:導入管、508:バルブ、510:蒸着源、512:制御装置、514:シャッター、516:マスクホルダ、524:電源、526:温度コントローラ、528:ヒータ電源、530:回転制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15