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特許7272778折り返し導波路低速波構造を用いる進行波管用の内部負荷
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】折り返し導波路低速波構造を用いる進行波管用の内部負荷
(51)【国際特許分類】
   H01J 23/30 20060101AFI20230502BHJP
   H01J 23/28 20060101ALI20230502BHJP
   H01J 25/38 20060101ALI20230502BHJP
   H01P 9/00 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
H01J23/30
H01J23/28
H01J25/38
H01P9/00 B
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018200613
(22)【出願日】2018-10-25
(65)【公開番号】P2019102438
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2021-10-13
(31)【優先権主張番号】1701253
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511148123
【氏名又は名称】タレス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アラン・デュラン
(72)【発明者】
【氏名】トマ・アルディ
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/104680(WO,A1)
【文献】特開昭61-284032(JP,A)
【文献】中国実用新案第202352608(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 23/24-23/30
H01J 25/38
H01P 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
り返し導波路低速波構造であって、
-中央プレート(20)の長手軸(z)と同一方向の直線ビームトンネル(21)、および前記導波路の幅方向に折り返された蛇行折り返しスリット(22)を含む中央プレート(20)と、
-各々が前記中央プレート(20)の上下に配置されていて、前記導波路を閉じる下部プレート(23)および上部プレート(24)と、
-前記導波路の前記長手軸(z)に沿って、前記下部プレート(23)、前記上部プレート(24)、または前記中央プレート(20)の前記導波路の少なくとも1個の内面に形成され、且つ少なくとも部分的に損失材料を含んでいる少なくとも1本の溝(25)とを、
ハイブリッド低速波が内部を通って伝播し、損失材料を含む前記少なくともの溝の部分の開始端と終端の間で振幅が少なくとも20dB減衰する閉じた低速波構造を形成すべく含んでおり、前記少なくとも1本の溝(25)のうちの第1の溝の前記長手軸(z)に垂直な断面が、前記長手軸(z)に沿って変化する、折り返し導波路低速波構造。
【請求項2】
前記損失材料が損失誘電体である、請求項1に記載の折り返し導波路低速波構造。
【請求項3】
折り返し導波路低速波構造は、少なくとも2本の溝(25)を有し、
少なくとも本の溝(25)のうちの第2の溝が一定の断面を有し、波の伝搬方向に向けられた前記導波路の軸に沿って前記長手軸(z)の横座標が増大するのに伴い増大する所与の量の損失誘電体を含んでいる、請求項2に記載の折り返し導波路低速波構造。
【請求項4】
折り返し導波路低速波構造は、少なくとも3本の溝(25)を有し、
少なくとも本の溝(25)のうちの第3の溝前記長手軸(z)に垂直な、一定のままであるかまたは前記横座標の増大に伴い増大する断面を有し、前記横座標の増大に伴いマイクロ波の損失レベルが増大する損失誘電体で満たされている、請求項に記載の折り返し導波路低速波構造。
【請求項5】
前記損失材料が、鉄、ニッケル、モリブデン、およびチタンから選択された金属の混合物の層であり、溝(25)の内面を少なくとも部分的に覆っている、請求項1に記載の折り返し導波路低速波構造。
【請求項6】
折り返し導波路低速波構造は、少なくとも2本の溝(25)を有し、
少なくとも本の溝(25)のうちの第2の溝が、前記長手軸(z)に垂直な、縁の長さが一定のままの断面を有し、前記長手軸(z)の横座標の増大に伴い増大する量の金属の同一の前記混合物の層を含んでいる、請求項5に記載の折り返し導波路低速波構造。
【請求項7】
折り返し導波路低速波構造は、少なくとも3本の溝(25)を有し、
少なくとも本の溝(25)のうちの第3の溝が、前記長手軸(z)に垂直な、縁の長さが一定のままであるかまたは前記横座標の増大に伴い増大する断面を有し、金属の同一の前記混合物の層を含んでいる、請求項に記載の折り返し導波路低速波構造。
【請求項8】
り返し導波路低速波構造を製造する工程であって、
-中央プレート(20)内に、中央プレート(20)の長手軸(z)と同一方向の直線ビームトンネル(21)、および前記導波路の幅方向に折り返された蛇行折り返しスリット(22)を穿孔するステップと、
-前記導波路の長手軸(z)に沿って、下部プレート(23)、上部プレート(24)、または中央プレート(20)の前記導波路の少なくとも1個の内面に、少なくとも部分的に損失材料を含んでいる少なくとも1本の溝(25)を形成するステップであって、前記少なくとも1本の溝(25)のうちの第1の溝の前記長手軸(z)に垂直な断面が、前記長手軸(z)に沿って変化する、形成するステップと、
-前記導波路を閉じる前記下部プレート(23)および前記上部プレート24それぞれを前記中央プレート(20)の上下それぞれに配置するステップとを、
ハイブリッド低速波が内部を通って伝播し、損失材料を含む前記少なくとも本の溝の部分の開始端と終端の間で振幅が少なくとも20dB減衰する閉じた低速波構造を形成すべく含む工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は折り返し低速波構造または進行波管(TWT)用の遅延線に関する。
【背景技術】
【0002】
大多数のマイクロ波管において、波とビームの相互作用は、
-電子を束にまとめる、すなわちビーム流の密度をマイクロ波信号の周波数に応じて変調する第1のステップと、
-このように得られた電子の束を同相に配置して、電子のエネルギーを波へ伝達すべく場により電子を遅延する第2のステップの2段階に分けられる。
【0003】
TWTの場合、位相速度が電子の速度に等しい進行波の場にビームを配置することにより電子を束にまとめる。移動座標系において、電子は定常波場に見る。電子は、1半波で減速され、次の半波で加速される。電子の束は、加速場が減速場に変化する位相の周辺で形成される。
【0004】
断面が矩形または円筒形の従来型導波路は、導波路を通って伝搬する波の位相速度が光速より速いのに対し、電子の速度は光速より遅いため、この種の相互作用に適していない。また、電子の移動に平行な電場が必要であるのに対し、断面が矩形または円筒形の直線導波路の基本モードは導波路の軸に垂直である。光速より遅い位相速度を得るために、低速波構造または遅延線と呼ばれる特別な導波路が必要である。多くの場合、遅延線は、一連の同一セルを得るために、基本セルを反復的に並進させることにより得られる周期的な線である。これは、螺旋TWT、結合空腔TWT、インターデジタル線TWT等の場合である。
【0005】
ミリメートル波長で動作するTWTの場では折り返し導波路遅延線を用いる場合が多い。この種の線は、ビームの軸に垂直な矩形導波路の区間を周期的に位置調整することにより、および直線導波路の断面を180°E平面回転を生じる屈曲部と交互に接続することにより得られる。側面から見れば折り返し導波路は蛇行している。ビームトンネルは、矩形導波路の直線区間の中央に位置している。導波路の電場は、導波路の広い側に垂直であり、従って電子の移動に平行であるため、ビームを変調することができる。従って電子は、ビームトンネル内を通って移動し、直線導波路区間に入り、電場(相互作用空間)の作用を受けて、ビームトンネル内を通って戻り、後続の相互作用空間に入る。従って電子は、線のピッチに等しい周期で連続的な相互作用空間に入るのに対し、線の幾何学的周期はピッチの2倍に等しい。ピッチは、屈曲部により分離された2個の直線導波路間の距離に対応している。
【0006】
折り返し導波路(直線部および屈曲部)の長さは、導波路内の波の位相シフトが相互作用空間毎の電子の移動に関する位相変化に対応するように決定される。
【0007】
進行波管は、2個以上の区間を含む遅延線を用いる。入力区間は負荷により終端し、出力区間は負荷から開始する。中間区間は負荷により開始および終端する。用語「負荷」は、RF波を吸収する材料を含む空間を意味し、接続平面において、当該空間が示すインピーダンスが、良好ないマッチを保証(すなわち負荷により反射される波を最小化)すべく遅延線の特性インピーダンスになるべく近くなるように、遅延線に接続されているものと理解されたい。
【0008】
図1に、3個の区間1、2および3を含む進行波管用の低速波構造または遅延線を模式的に示す。図示する遅延線は入力端4および出力端5を含んでいる。
【0009】
第1の区間1の出力端、第2の区間2の入力端、第2の区間2の出力端、第3の区間3の入力端での負荷6は切断負荷と呼ばれる。ある線の終端と後続線の開始端との間で電子ビームはRF波が伝搬しないビームトンネルを通過し、結果として束形成作用が生じず、ビームの束分離(従って変調損失)に寄与する。
【0010】
区間の両終端での反射係数および区間の利得が高過ぎる場合、当該遅延線区間で発振が見られる場合がある。このため、切断負荷の反射係数を考慮して、利得を制限すべく各種区間の長さを決定する。
【0011】
図2に一例を示す最も一般的なTWTは、3本の誘電体ロッド9によりエンベロープ8に保持された螺旋部7を含む遅延線を用いる。
【0012】
図2の種類の遅延線において、負荷は一般に、螺旋部7を支持するロッド9に黒鉛等の損失材料の層を堆積させることにより生成される。損失材料は、有限導電率σ(導電率が無限の完全導体とは対照的に)により特徴付けられ、その結果、導電流σE(Eは電場)および抵抗損失σEが得られる。損失媒体において波は、距離の関数として指数関数的に減衰する。堆積の厚さを変化させることにより、減衰(マイクロ波損失)および反射係数が漸次増大する負荷が生成されるため、広周波数帯域にわたり良好な整合が得られる。
【0013】
このような螺旋遅延線において、負荷の長さは相当の変調損失、従ってTWTの利得の減少につながるため、他の区間の利得、従ってTWTの全長を増大することにより補償する必要がある。
【0014】
図3に、ロッド9での減衰を黒鉛等の損失材料の堆積の厚さzの関数として模式的に示す。減衰が大きいほど、減衰を表すグレー色が濃い。
【0015】
折り返し導波路遅延線を用いるTWTの場合、折り返し導波路10から、電磁気のエネルギーを吸収する負荷が配置された直線導波路11まで通過すべく変調を中断することが知られている。このような直線導波路は、図4、5に示すようにビームトンネル12に平行であっても、または図6に示すように垂直であってもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このような実施形態において、同一の導波路断面が用いるにもかかわらず、負荷を含む周期的折り返し導波路線および直線導波路のインピーダンスは同一でないため、ある線から他の線への遷移箇所で広帯域ではなくTWTの帯域幅を制限する整合回路を挿入することが必要である。
【0017】
一変型例として、図7に示すように、負荷の反射を最小化すべく決定された表面形状の損失誘電ブロック13の挿入を可能にすべく折り返し導波路遅延線を中断することが知られている。
【0018】
この変型例は、周期的折り返し導波路10と損失誘電ブロック13との間の突然遷移を含んでいて、これは多くの共鳴周波数を有する損失共鳴器を周期的折り返し導波路10にロードすることと同等であり、負荷が良好に整合する周波数帯を制限するものである。
【0019】
本発明の目的の一つは上述の問題を緩和することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一態様によれば、内部負荷を備えた折り返し導波路低速波構造を提供し、当該構造は、
-中央プレートの長手軸と同一方向の直線ビームトンネル、および導波路の幅方向に折り返された蛇行折り返しスリットを含む中央プレートと、
-各々が当該中央プレートの上下に配置されていて、導波路を閉じる下部プレートおよび上部プレートと、
-導波路の長手軸に沿って、下部プレート、上部プレート、または中央プレートの導波路の少なくとも1個の内面に形成され、且つ少なくとも部分的に損失材料を含んでいる、可変な断面の少なくとも1本の溝を、
ハイブリッド低速波が内部を通って伝播し、損失材料を含む1個以上の溝の部分の開始端と終端の間で振幅が少なくとも20dB減衰する閉じた低速波構造を形成すべく含んでいる。
【0021】
従って、負荷の反射は最小化され、電磁エネルギーが突発的に減衰しない。
【0022】
損失は折り返し導波路線に漸次導入され、これは螺旋支持部への黒鉛堆積の厚さの漸次的増大と類似している。
【0023】
一実施形態において、材料は損失誘電体である(通常、損失正接により特徴付けられて)。
【0024】
従って、損失材料の分布が均一な場合、波は指数関数的に減衰し、減衰ゾーンの開始端で最大電力が消失する。
【0025】
一実施形態によれば、少なくとも1本の溝は、一定の断面を有し、波の伝搬方向に向けられた導波路の軸に沿って横座標が増大するのに伴い増大する所与の量の損失誘電体を含んでいる。
【0026】
従って、電力のごく一部を負荷の開始端で吸収させ、その後より多くの電力を吸収させることができ、この利点は、負荷の長さにわたり電力の消失をうまく分散させられることである。
【0027】
一実施形態において、少なくとも1本の溝は、一定のままであるかまたは前記横座標の増大に伴い増大する断面を有し、前記横座標の増大に伴いマイクロ波の損失レベルが増大する損失誘電体で満たされている。
【0028】
従って、電力のごく一部を負荷の開始端で吸収させ、その後より多くの電力を吸収させることができ、この利点は、負荷の長さにわたり電力の消失をうまく分散させられることである。
【0029】
一変型例として、損失材料は、鉄、ニッケル、モリブデン、およびチタンから選択された金属の混合物の層であり、溝の内面を少なくとも部分的に覆っている。
【0030】
従って、電力が消失する誘電ブロックと遅延線の周囲に配置された冷熱源との間の熱流を保証するために、誘電ブロックを機械加工し、次いで当該ブロックを下部および上部プレートに真鍮ろう付け、または圧着固定する必要がない。
【0031】
例えば、少なくとも1本の溝は、縁の長さが一定のままの断面を有し、前記横座標の増大に伴い増大する量の前記同一の金属混合物の層を含んでいる。
【0032】
一変型例として、少なくとも1本の溝は、縁の長さが一定のままであるかまたは前記横座標の増大に伴い増大する断面を有し、前記同一の金属混合物の層を含んでいる。
【0033】
本発明の別の態様によれば、内部負荷を備えた折り返し導波路低速波構造を製造する工程を提供し、当該工程は、
-中央プレート内に、中央プレートの長手軸と同一方向の直線ビームトンネル、および導波路の幅方向に折り返された蛇行折り返しスリットを穿孔するステップと、
-導波路の長手軸に沿って、下部プレート、上部プレート、または中央プレートの導波路の少なくとも1個の内面に、少なくとも部分的に損失材料を含んでいる、可変な断面の少なくとも1本の溝を形成するステップと、
-導波路を閉じる下部プレートおよび上部プレートを当該中央プレートの上下に配置するステップを、
ハイブリッド低速波が内部を通って伝播し、損失材料を含む1個以上の溝の部分の開始端と終端の間で振幅が少なくとも20dB減衰する閉じた低速波構造を形成すべく含んでいる。
【0034】
一実装例において、本工程は更に、各々が中央プレートの下面および上面に固定された下部プレートおよび上部プレートにより導波路を閉じるステップを含んでいる。
【0035】
本発明は、完全に非限定的な例として記述すると共に添付図面に示すいくつかの実施形態を精査することで理解が深まるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】従来技術による、3個の区間を含む進行波管用の低速波構造または遅延線を模式的に示す。
図2】従来技術による、3本の誘電体ロッドによりエンベロープ内に保持された螺旋を含む遅延線を模式的に示す。
図3】従来技術による、図2の種類の遅延線のロッド上の減衰を、高マイクロ波損失を生じる材料の堆積の厚さの関数として模式的に示す。
図4】従来技術による、ビームトンネルに平行な直線導波路内に整合負荷を含んでいる折り返し導波路遅延線を模式的に示す。
図5】従来技術による、ビームトンネルに平行な直線導波路内に整合負荷を含み、線のセルに向かって折り返された折り返し導波路遅延線を模式的に示す。
図6】従来技術による、ビームトンネルに垂直な直線導波路内に整合負荷を含んでいる折り返し導波路遅延線を模式的に示す。
図7】従来技術による、負荷からの反射を最小化すべく決定された表面形状の損失誘電ブロックにより中断された折り返し導波路遅延線を模式的に示す。
図8】本発明の一態様による、進行波用の折り返し低速波構造の概要および断面図を模式的に示す。
図9】本発明の一態様による、進行波用の折り返し低速波構造の概要および断面図を模式的に示す。
図10】本発明の一態様による、進行波用の折り返し低速波構造の概要および断面図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
全ての図面を通じて、同一参照符号により参照される要素は同一である。
【0038】
本明細書において、記記述する実施形態は完全に非限定的であり、当業者に公知の特徴および機能については詳述しない。
【0039】
図8に、内部負荷を備えた、進行波管用の折り返し導波路低速波構造を模式的に示しており、
-中央プレート20の長手軸zと同一方向の直線ビームトンネル21、および導波路の幅方向に折り返された蛇行折り返しスリット22を含む中央プレート20と、
-各々が当該中央プレート20の上下に配置されていて、導波路を閉じる下部プレート23および上部プレート24と、
-導波路の長手軸zに沿って、下部プレート23、上部プレート24、または中央プレート20の導波路の少なくとも1個の内面に形成され、且つ少なくとも部分的に損失材料を含んでいる、可変な断面の少なくとも1本の溝25を、
ハイブリッド低速波が内部を通って伝播し、損失材料を含む1個以上の溝の部分の開始端と終端の間で振幅が少なくとも20dB減衰する閉じた低速波構造を形成すべく含んでいる。
【0040】
換言すれば、本発明は、周期的な線と矩形導波路との間、または周期的な線と誘電ブロックとの間の突発的な遷移を回避すべく、従来技術で知られる螺旋遅延線のロッドへの黒鉛堆積の厚さの増大と同等に、折り返し導波路遅延線に電磁気損失を漸次的に導入するものである。
【0041】
この目的のため、折り返し導波路遅延線は高い損失を生じる別の伝送線に結合されていて、2本の線の結合は波の伝搬方向に増大する。ビームの軸に垂直であって1ピッチだけ離れた(すなわち2個の直線導波路間が1個の屈曲部だけ離れた)2平面に囲まれた空間としてセルを定義すれば、波の振幅は1セルずつ減少していく。
【0042】
図8の例において、導波路のz軸の横座標に沿って増大する可変な断面の2本の溝25、すなわちこの場合は中央プレート20の中央平面に関して対称である溝が、下部プレート23の導波路の内面、および上部プレート24の導波路の内面に形成されていて、マイクロ波損失(炭素、鉄、チタン等)を生成する元素で焼結されたセラミック(アルミナ、酸化ベリリウム、窒化アルミニウム)等の損失誘電体で満たされている。
【0043】
高電磁気損失伝送線は、折り返し導波路遅延線を形成すべく蛇行部22が機械加工された中央プレート20に真鍮ろう付けされた下部プレート23および/または上部プレート24に機械加工されていてよい。高電磁気損失伝送線は従って、下部プレート23および/または上部プレート24への機械加工により削り込まれた導波路となる。高電磁気損失伝送線はまた、一部または全部が中央プレート20内で機械加工されていてよい。
【0044】
図8の例では、上部プレート24の導波路の内面に形成された可変な断面の溝を見ることはできない。
【0045】
図9に、本発明の一態様による、進行波管用の折り返し低速波構造の断面図を示す。
【0046】
図10に、図9の例の各種の断面を示す。
【0047】
一変型例として、下部プレート、上部プレート、または中央プレートの導波路の少なくとも1個の内面で導波路の長手軸zに沿って形成され、損失材料を少なくとも部分的に含む、可変であり得る(可変または一定の)断面の少なくとも1本の溝25を含む任意の実施形態も可能である。
【0048】
これらの電磁気損失を生じるには、溝25の一部または全部を1個または各種の損失誘電体で満たすか、壁に1個または各種の損失材料を堆積することにより、波の伝搬の方向に向けられた前記長手軸に沿って、横座標が増大するに伴い、負荷の開始端と終端の間で波の振幅が20dB減少させることが可能である。
【0049】
以下が最も明示的なケースである。
【0050】
少なくとも1本の溝25は、一定の断面を有し、前記横座標が増大するに伴い増大する所与の量の損失誘電体を含んでいてよい。
【0051】
一変型例として、少なくとも1本の溝25は、一定のままであるかまたは前記横座標の増大に伴い増大する断面を有し、横座標の増大に伴いマイクロ波の損失レベルが増大する損失誘電体で満たされていてよい。
【0052】
一変型例として、少なくとも1本の溝25は、縁の長さが一定のままである断面を有し、横座標の増大に伴い増大する溝の内面を少なくとも部分的に覆う、鉄、ニッケル、モリブデン、およびチタンから選択された金属の所与の量の混合物の層を含んでいてよい。
【0053】
一変型例として、少なくとも1本の溝25は、縁の長さが一定のままであるかまたは前記横座標の増大に伴い増大する断面を有し、鉄、ニッケル、モリブデン、およびチタンから選択された金属の所与の混合物の層を含んでいてよい。
【0054】
下部および上部プレートに機械加工された導波路の広い側は折り返し導波路線内の開口、従って2本の伝送線間の結合を決定する。高さが低い損失ガイドは、カットオフ周波数未満で動作するガイド、従ってエネルギーが損失ガイド内に伝搬するのを防止する導波路に対応していてよい。この場合、導波路は、折り返し導波路に結合された減衰共振キャビティの如く振る舞う。
【0055】
-内部負荷を備えたそのような折り返し導波路低速波構造を製造する工程は、
-中央プレート20内に、中央プレート20の長手軸zと同一方向の直線ビームトンネル21、および導波路の幅方向に折り返された蛇行折り返しスリット22を穿孔するステップと、
-導波路の長手軸zに沿って、下部プレート23、上部プレート24、または中央プレート20の導波路の少なくとも1個の内面に、少なくとも部分的に損失材料を含んでいる、可変な断面の少なくとも1本の溝25を形成するステップと、
-導波路を閉じる下部プレート23および上部プレート24を当該中央プレート20の上下に配置するステップを、
ハイブリッド低速波が内部を通って伝播し、損失材料を含む1個以上の溝の部分の開始端と終端の間で振幅が少なくとも20dB減衰する閉じた低速波構造を形成すべく含んでいる。
【0056】
一般に直方体であるプレートを、従来の積層またはミリング加工を用いて形成することができる。
【0057】
ビームトンネル21は放電加工(EDM)により形成することができ、中央プレートのスリット22は導線EDMにより形成することができる。
【0058】
溝25は、マイクロミリングまたはEDMにより形成することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 第1の区間
2 第2の区間
3 第3の区間
4 入力端
5 出力端
6 負荷
7 螺旋部
8 エンベロープ
9 ロッド
10 折り返し導波路
11 直線導波路
12 ビームトンネル
13 損失誘電ブロック
20 中央プレート
21 直線ビームトンネル
22 蛇行折り返しスリット
23 下部プレート
24 上部プレート
25 溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10