(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】移動式クレーンの作業領域管理システム及び移動式クレーンの作業領域管理方法
(51)【国際特許分類】
B66C 23/88 20060101AFI20230502BHJP
B66C 13/00 20060101ALI20230502BHJP
G01S 19/13 20100101ALI20230502BHJP
【FI】
B66C23/88 D
B66C13/00 D
G01S19/13
(21)【出願番号】P 2019003252
(22)【出願日】2019-01-11
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】小川 達也
(72)【発明者】
【氏名】西村 淳
(72)【発明者】
【氏名】横島 喬
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-029338(JP,A)
【文献】特開2015-067413(JP,A)
【文献】実開平06-056087(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0013251(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/88
B66C 13/00
G01S 19/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動式クレーンの先端部に設けられた第1GNSS端末と、
前記移動式クレーンの旋回中心部に対して前記先端部とは反対側である後端部に設けられた第2GNSS端末と、
前記第1GNSS端末によって測定された位置と前記第2GNSS端末によって測定された位置とに基づいて、前記移動式クレーンの位置とジブの方向を求める姿勢算出部と、
前記移動式クレーンの位置と前記ジブの方向に基づいて、他の物体との干渉があるか否かの判定に用いる判定エリアを設定する判定エリア設定部と、
を有し、
前記姿勢算出部は、
前記第2GNSS端末によって測定された位置
から少なくとも3点を選択し、前記少なくとも3点を通る円の中心を旋回中心点として求め、
前記円が前記第2GNSS端末によって測定された位置からずれている場合には、前記第2GNSS端末によって測定された位置から新たに選択された点を含む少なくとも3点を通る円の中心を前記旋回中心点として求め、前記円が前記第2GNSS端末によって測定された位置からずれなくなるまで、前記第2GNSS端末によって測定された位置の選択と前記旋回中心点の算出とを繰り返し、
さらに、
前記旋回中心点を基準として前記判定エリアを旋回させた場合に、他の物体が前記判定エリアに干渉するか否かを判定する判定部
を有する移動式クレーンの作業領域管理システム。
【請求項2】
前記移動式クレーンは複数であり、
第1の移動式クレーンの判定エリアと第2の移動式クレーンの判定エリアを平面図に表した画像を生成する画像生成部と、
前記生成された画像を出力する画像出力部と、
を有する請求項
1記載の移動式クレーンの作業領域管理システム。
【請求項3】
前記画像生成部は、前記第1の移動式クレーンと前記第2の移動式クレーンのそれぞれの第1GNSS端末の位置に基づく前記第1の移動式クレーンと前記第2の移動式クレーンの距離を含む画像を生成する
請求項
2に記載の移動式クレーンの作業領域管理システム。
【請求項4】
前記判定エリアを示す情報を外部の機器に送信する送信部
を有する請求項1から請求項
3のうちいずれか1項に記載の移動式クレーンの作業領域管理システム。
【請求項5】
移動式クレーンの先端部に第1GNSS端末を設けるとともに、前記移動式クレーンの旋回中心部に対して前記先端部とは反対側である後端部に第2GNSS端末を設け、
前記第1GNSS端末によって測定された位置と前記第2GNSS端末によって測定された位置とに基づいて、前記移動式クレーンの位置とジブの方向を求め、
前記移動式クレーンの位置と前記ジブの方向に基づいて、他の物体との干渉があるか否かの判定に用いる判定エリアを設定
し、
前記第2GNSS端末によって測定された位置から少なくとも3点を選択し、前記少なくとも3点を通る円の中心を旋回中心点として求め、前記円が前記第2GNSS端末によって測定された位置からずれている場合には、前記第2GNSS端末によって測定された位置から新たに選択された点を含む少なくとも3点を通る円の中心を前記旋回中心点として求め、前記円が前記第2GNSS端末によって測定された位置からずれなくなるまで、前記第2GNSS端末によって測定された位置の選択と前記旋回中心点の算出とを繰り返し、
前記旋回中心点を基準として前記判定エリアを旋回させた場合に、他の物体が前記判定エリアに干渉するか否かを判定する
ようにした移動式クレーンの作業領域管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーンの作業領域管理システム及び移動式クレーンの作業領域管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数台のクレーンを使って作業を行う作業現場では、クレーン同士の干渉が問題となる。例えば、移動式クレーンが複数台稼働している建築現場においては、隣り合ったクレーン同士が衝突しないように管理する必要がある。また、送電線や鉄道等に近接した建築現場や、空港近辺であって航空制限が設けられているような建築現場においては、そのエリアに侵入することがないようクレーンの稼働状況を把握しておく必要がある。
【0003】
そこで、従来では、以下のような対策が図られている。
(a)安全監視員を各クレーンに配置し、目視による確認する。
(b)クレーン自身に搭載されているリミッター設定値によって、ジブ起伏及び旋回を制限させる。
(c)レーザー光を面状にスキャニングしてバリアを形成し、バリアに侵入した障害物を検知してオペレータに通知する。
(d)GNSS(Global Navigation Satellite System)又はTS(Total Station)を移動式クレーンのジブ先端に取付け、位置情報をリアルタイムに計算し、表示する。
【0004】
また、特許文献1には、衛星測位システムを利用した三次元情報を取得するとともに、他のクレーンが取得する衛星測位システムを利用した三次元情報を受信可能に構成することで、一のクレーンと他のクレーンとの間で三次元情報を共有することで、他のクレーンを容易に確認し、安全な作業を実現できるようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、安全監視員による目視の確認では、人為的ミスが起こる可能性が大きい。特にジブ先端の位置が高いほど監視は困難である。また、クレーンにリミッターを搭載してジブ起伏及び旋回を制限させたとしても、移動式クレーンの場合、クレーンの場所によって制限したい可動範囲が異なるため、その都度リミッターの設定値を変更しなければならない。また、バリアに侵入した障害物を検知する場合には、バリア内に侵入した全ての物体に反応するため、侵入物がクレーンであるか否かの特定が難しく、また、エリア侵入があるか否かの判定をすることができたとしても、現状どの程度近づいているか等の情報を把握することができない。また、あくまで点の位置情報を示すものであるため、クレーン全体の位置や方向、形状は把握できない。
【0007】
また、特許文献1に記載されているものでは、クレーンの現在位置をGNSS装置を用いて検出している。その上で、ジブの位置を特定するためには、旋回位置検出センサ、伸縮ブーム長さ検出センサ、起伏角検出センサ、モーメント検出センサなどの各種センサを設けなければならないという問題がある。また、クレーンはレンタルされる場合もあり、レンタルされたクレーンにこれらのセンサが設けられていない場合には、後付けで複数のセンサを設置しなければならないため準備が大変であり、さらには、必ず後付けで設置できるとは限らない。
【0008】
上述の課題を鑑み、本発明は、作業現場においてクレーン同士の干渉を容易に回避できる移動式クレーンの作業領域管理システム及び移動式クレーンの作業領域管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を鑑み、本発明の一態様に係る移動式クレーンの作業領域管理システムは、移動式クレーンの先端部に設けられた第1GNSS端末と、前記移動式クレーンの旋回中心部に対して前記先端部とは反対側である後端部に設けられた第2GNSS端末と、前記第1GNSS端末によって測定された位置と前記第2GNSS端末によって測定された位置とに基づいて、前記移動式クレーンの位置とジブの方向を求める姿勢算出部と、前記移動式クレーンの位置と前記ジブの方向に基づいて、他の物体との干渉があるか否かの判定に用いる判定エリアを設定する判定エリア設定部と、を有し、前記姿勢算出部は、前記第2GNSS端末によって測定された位置から少なくとも3点を選択し、前記少なくとも3点を通る円の中心を旋回中心点として求め、前記円が前記第2GNSS端末によって測定された位置からずれている場合には、前記第2GNSS端末によって測定された位置から新たに選択された点を含む少なくとも3点を通る円の中心を前記旋回中心点として求め、前記円が前記第2GNSS端末によって測定された位置からずれなくなるまで、前記第2GNSS端末によって測定された位置の選択と前記旋回中心点の算出とを繰り返し、さらに、前記旋回中心点を基準として前記判定エリアを旋回させた場合に、他の物体が前記判定エリアに干渉するか否かを判定する判定部を有する。
【0010】
本発明の一態様に係る移動式クレーンの作業領域管理方法は、移動式クレーンの先端部に第1GNSS端末を設けるとともに、前記移動式クレーンの旋回中心部に対して前記先端部とは反対側である後端部に第2GNSS端末を設け、前記第1GNSS端末によって測定された位置と前記第2GNSS端末によって測定された位置とに基づいて、前記移動式クレーンの位置とジブの方向を求め、前記移動式クレーンの位置と前記ジブの方向に基づいて、他の物体との干渉があるか否かの判定に用いる判定エリアを設定し、前記第2GNSS端末によって測定された位置から少なくとも3点を選択し、前記少なくとも3点を通る円の中心を旋回中心点として求め、前記円が前記第2GNSS端末によって測定された位置からずれている場合には、前記第2GNSS端末によって測定された位置から新たに選択された点を含む少なくとも3点を通る円の中心を前記旋回中心点として求め、前記円が前記第2GNSS端末によって測定された位置からずれなくなるまで、前記第2GNSS端末によって測定された位置の選択と前記旋回中心点の算出とを繰り返し、前記旋回中心点を基準として前記判定エリアを旋回させた場合に、他の物体が前記判定エリアに干渉するか否かを判定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各移動式クレーンの位置及びジブ方向を表示し、移動式クレーンが判定エリア内となるまで近づくと、警告が表示される。これにより、人為的ミスやセンサ検知ミスによる誤警報の可能性が低減され、常時どこに何がどういった状態であるかといった実際に近い稼働状況等の情報を、より正確に把握、管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る移動式クレーンの作業領域管理システムの概要の説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る移動式クレーンの作業領域管理システムにおいて移動式クレーンが複数の場合の概要を示す説明図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る移動式クレーンの作業領域管理システムにおける演算装置の機能ブロック図である。
【
図4A】本発明の第1の実施形態に係る移動式クレーンの作業領域管理システムにおけるクレーンエリアのオブジェクトの設定の説明図である。
【
図4B】本発明の第1の実施形態に係る移動式クレーンの作業領域管理システムにおけるクレーンエリアのオブジェクトの設定の説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る移動式クレーンの作業領域管理システムにおいて移動式クレーンの旋回中心点を求める際の処理を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る移動式クレーンの作業領域管理システムにおいて移動式クレーンの旋回中心点を求める際の処理の説明図である。
【
図7A】本発明の第1の実施形態に係る移動式クレーンの作業領域管理システムにおける表示部の表示画面の説明図である。
【
図7B】本発明の第1の実施形態に係る移動式クレーンの作業領域管理システムにおける表示部の表示画面の説明図である。
【
図7C】本発明の第1の実施形態に係る移動式クレーンの作業領域管理システムにおける表示部の表示画面の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る移動式クレーンの作業領域管理システム1の概要の説明図である。
【0014】
図1において、移動式クレーン10は、移動可能なクレーンであり、例えば、走行体11と旋回体12とからなるクローラクレーンである。走行体11には、クローラ13が設けられるとともに、エンジンや油圧ポンプ等の動力機構が搭載されている。
【0015】
旋回体12はブーム15とジブ16とからなり、走行体11の上面側に回転自在に設けられる。ブーム15及びジブ16からなる旋回体12は、走行体11に対して、旋回可能であるとともに起伏可能である。
【0016】
ジブ16の先端部からは、フック17が吊り下げられる。また、ジブ16の先端部に、GNSS端末(第1GNSS端末)21が取り付けられる。GNSS端末21は、GNSS衛星からの信号を受信し、ジブ16の先端の位置を計測する。GNSS端末21は無線LAN(Local Area Network)による通信機能を備えており、演算装置30とデータ通信を行い、GNSS端末21の現在位置の測定結果を送信することができる。また、GNSS装置21の設置位置は、ジブ16の先端部であるため、GNSS装置21の位置をジブ16の先端部の位置とすることが可能である。
【0017】
移動式クレーンの旋回中心部に対して、ジブ16の先端部とは反対側である後端部に、カウンターウェイト18が設けられ、このカウンターウェイト18の装着点には、GNSS端末(第2GNSS端末)22が取り付けられる。GNSS端末22は、GNSS衛星からの信号を受信し、カウンターウェイト18の装着点の位置を計測する。GNSS端末22は無線LANによる通信機能を備えており、演算装置30とデータ通信を行うことができる。また、GNSS装置22の設置位置は、カウンターウェイト18の装着点の近傍であるため、GNSS装置22の位置をカウンターウェイト18の位置とすることが可能である。
【0018】
演算装置30は、例えばオペレータ室内に設置されたPC(Personal Computer)である。演算装置30は、無線LANの通信機能により、GNSS端末21及び22からの情報(例えば、位置情報)を受信できる。演算装置30は、GNSS端末21及び22からの情報を受信すると、GNSS端末21及び22によって測定された位置に基づいて、移動式クレーン10の位置とジブ16の方向を算出する。そして、演算装置30は、これに基づいて、他の物体との干渉があるか否かの判定に用いる判定エリアを設定し、判定エリアと他の物体とを平面図に表した画像を表示装置40に表示する。
【0019】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る移動式クレーンの作業領域管理システムにおいて、移動式クレーンが複数の場合の概要を示す説明図である。この例では、移動式クレーンの作業領域管理システム1aは、2台の移動式クレーン10a及び10bの2台である場合について説明する。3台以上の移動式クレーンがある場合であってもよい。
【0020】
図2において、移動式クレーン10aは、クローラ13aを有する走行体11aと、ブーム15aとジブ16aとからなる旋回体12aと、フック17aと、カウンターウェイト18aとを備える。また、ジブ16aの先端部に、GNSS端末21aが取り付けられる。カウンターウェイト18aの装着点に、GNSS端末22aが取り付けられる。移動式クレーン10bは、同様に、クローラ13bを有する走行体11bと、ブーム15bとジブ16bとからなる旋回体12bと、フック17bと、カウンターウェイト18bとを備える。また、ジブ16bの先端部に、GNSS端末21bが取り付けられる。カウンターウェイト18bの装着点に、GNSS端末22bが取り付けられる。
【0021】
このように、2台の移動式クレーン10a及び10bからなる移動式クレーンの作業領域管理システム1aの場合には、演算装置30は、移動式クレーン10aのGNSS端末21a及び22aと、移動式クレーン10bのGNSS端末21b及び22bと通信を行い、移動式クレーン10a及び10bの位置とジブ16a及び16bの方向を算出する。そして、演算装置30は、移動式クレーン10aと移動式クレーン10bとの干渉があるか否かの判定に用いる判定エリアを設定し、この判定エリアを平面図に表した画像を表示装置40に表示する。
【0022】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る移動式クレーンの作業領域管理システムにおける演算装置30の機能ブロック図である。
図3に示すように、演算装置30は、姿勢算出部31と、判定エリア設定部32と、画像生成部33と、画像出力部34と、判定部35と、送信部36とを備える。
【0023】
姿勢算出部31は、GNSS端末21及び22(GNSS端末21a、21b及び22a、22b)によって測定された位置に基づいて旋回中心点を求め、移動式クレーン10(移動式クレーン10a、10b)の位置とジブ16(ジブ16a、16b)の方向を算出する。判定エリア設定部32は、クレーンエリアの周辺に、判定エリアを設定する。画像生成部33は、移動式クレーン10(移動式クレーン10a、10b)の判定エリアを平面図に表した画像を生成する。画像出力部34は、この生成された画像を表示装置40に出力する。判定部35は、移動式クレーン10(移動式クレーン10a、10b)が干渉を起こす可能性があるか否かを判定し、干渉を起こす可能性があると判定すると、警告を表示する。送信部36は、判定エリアを示す情報を外部の機器に送信する。
【0024】
図4A及び
図4Bは、本発明の第1の実施形態に係る移動式クレーンの作業領域管理システムにおけるクレーンエリアのオブジェクトの設定の説明図である。移動式クレーン10は、
図4Aに示すように、クローラ13を有する走行体11上に、ブーム15とジブ16とからなる旋回体12が旋回自在に取り付けられた構成となっており、長さ方向(ジブ方向)が長くなるような構造となっている。移動式クレーン10の位置は、このような構造の移動式クレーン10の略中心の位置となる。
【0025】
本実施形態では、GNSS端末21及び22の計測値から、ジブ方向と旋回中心点を求め、この旋回中心点の位置を、移動式クレーン10の現在位置としている。すなわち、
図4Bに示すように、ジブ方向は、GNSS端末21の位置P1とGNSS端末22の位置P2とを結ぶ直線L1に、GNSS端末22の取り付け位置オフセット(クレーンの長手方向における中心線からの距離y)を考慮することで求められる。旋回中心点P0は、クレーンを旋回させた際にGNSS端末22で描かれる円弧の中心点を算出することで求められる。中心線L0は、GNSS端末21(あるいはGNSS端末22)と旋回中心点P0を通る線として定められる。距離xは、中心線L0上における旋回中心点P0からGNSS端末22までの距離である。そして、中心線L0を中心として、クレーンの幅Wで定められる範囲と、中心線L
0方向における範囲をGNSS端末21からGNSS装置222までとして定めることで、クレーンエリアを設定することができる。
【0026】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る移動式クレーンの作業領域管理システムにおいて移動式クレーンの旋回中心点を求める際の処理を示すフローチャートである。また、
図6は、本発明の第1の実施形態に係る移動式クレーンの作業領域管理システムにおいて移動式クレーンの旋回中心点を求める際の処理の説明図である。
【0027】
(ステップS101)オペレータは、GNSS端末22の計測値のそれぞれに対して、任意の3点の計測値を選択し、処理をステップS102に進める。
【0028】
(ステップS102)演算装置30は、選択された3点の計測値を使って、旋回中心及び半径を算出し、処理をステップS103に進める。すなわち、
図6に示すように、3点の計測値を選択し、旋回中心点(Xi,Yi)及び半径Riを求める。そして、3点の計測値(Xi,Yi)の平均値を算出して、この平均値を固定旋回中心点(X0,Y0)とする。
【0029】
【0030】
(ステップS103)演算装置30は、理論曲線を表示して、処理をステップS104に進める。
【0031】
(ステップS104)演算装置30は、円形がずれているか否かを判定する。円形がずれていなければ(ステップS104:No)、処理を終了する。円形がずれていれば(ステップS104:Yes)、処理をステップS105に進める。
【0032】
(ステップS105)オペレータは、計測値の1点を選択し直して、処理をステップS106に進める。
【0033】
(ステップS106)演算装置30は、新たに選択された3点の計測値を使って、旋回中心及び半径を算出し、処理をステップS107に進める。
【0034】
(ステップS107)演算装置30は、理論曲線を表示して、処理をステップS108に進める。
【0035】
(ステップS108)演算装置30は、円形がずれているか否かを判定する。円形がずれていなければ(ステップS108:No)、処理を終了する。円形がずれていれば(ステップS108:Yes)、処理をステップS105に戻す。
【0036】
このように、選択された3点の計測値を使って求めた理論曲線が円形になるまでステップS105からステップS108の処理を繰り返して行い、理論曲線が円形になったら処理を終了する。そして、固定旋回中心点を移動式クレーンの位置とする。
【0037】
前述したように、本実施形態では、演算装置30は、移動式クレーン10の位置とジブ方向を算出し、これに基づいて、他の物体との干渉があるか否かの判定に用いる判定エリアを設定し、判定エリアと他の物体とを平面図に表した画像を表示装置40に表示する。また、例えば2台の移動式クレーン10a及び10bの場合には、移動式クレーン10aと移動式クレーン10bとの干渉があるか否かの判定に用いる判定エリアを設定し、この判定エリアを平面図に表した画像を表示装置40に表示する。
【0038】
図7A、
図7B、及び
図7Cは、本発明の第1の実施形態に係る移動式クレーンの作業領域管理システムにおける表示装置40の表示画面の説明図である。この例では、2台の移動式クレーン10a及び10bの場合を示している。
【0039】
図7Aは、クレーンの稼働状況を監視しているときの画面を示す。
図7Aに示すように、表示装置40に、自クレーン(移動式クレーン10a)のオブジェクト101aと、他クレーン(移動式クレーン10b)のオブジェクト101bとが表示される。また、表示装置40には、侵入禁止エリア102、クレーン距離等の補助情報103や、各種ボタン(視点切替ボタン111、拡大縮小ボタン112a及び112b、設定ボタン113、終了ボタン114)が表示される。設定ボタン113を操作すると、
図7Bに示すような設定画面となる。
【0040】
図7Bに示すように、設定画面には、自クレーンの選択ボックス121と、クレーン幅入力ボックス122と、判定エリアサイズ入力ボックス123a及び123bが表示される。ユーザは、自クレーンの選択ボックス121で設定対象となる自クレーンを選択し、クレーン幅入力ボックス122にクレーンの幅を入力し、判定エリアサイズ入力ボックス123a及び123bに、他のクレーンとの干渉があるか否かの判定の条件となる判定エリアのサイズを入力する。この例では、判定エリアサイズは、2つ設定できる。ここで、決定ボタン124を操作すると、クレーン設定が確定される。キャンセルボタン125を操作すると、設定が解除される。
【0041】
クレーン設定を行うと、設定された条件で、
図7Aに示すような、各クレーンとの位置関係を平面図に表した自クレーンのオブジェクト101aと他クレーンのオブジェクト101bの画像が表示される。
図7Aに示すように、自クレーンのオブジェクト101aには、その周囲に判定エリア131aが表示される。この判定エリア131aは、他のクレーンとの干渉があるか否かの判定の条件となるエリアである。同様に、他クレーンのオブジェクト101bには、その周囲に判定エリア131bが表示される。また、自クレーンのオブジェクト101aには、自クレーンの旋回方向を示すアイコン141aが表示される。他クレーンのオブジェクト101bには、他クレーンの旋回方向を示すアイコン141bが表示される。
【0042】
クレーンを操作して移動していくと、これに追従して、自クレーンのオブジェクト101a及び他クレーンのオブジェクト101bの画面上の位置が移動していく。そして、自クレーンの位置と他クレーンの位置とに応じて、補助情報103のクレーンの距離の情報が変化していく。
【0043】
ここで、自クレーンと他クレーンとが近づき過ぎると、
図7Cに示すように、警告画面となる。この例では、自クレーンのオブジェクト101aの判定エリア131aと他クレーンのオブジェクト101bの判定エリア131bとが重なり、自クレーンと他クレーンとが接触する危険性がある。このように、自クレーンと他クレーンとが判定エリア内となるまで近づくと、クレーンの距離が近過ぎることを示す警告105が表示される。
【0044】
このように、本実施形態では、各移動式クレーンの位置及びジブ方向を表示し、移動式クレーンが判定エリア内となるまで近づくと、警告が表示される。これにより、人為的ミスやセンサ検知ミスによる誤警報の可能性が低減され、常時どこに何がどういった状態であるかといった実際に近い稼働状況等の情報を、より正確に把握、管理できる。また、例えば、移動式クレーンが複数台稼働している建築現場においては、隣り合ったクレーン同士が衝突を回避することができる。また、本実施形態では、接近判定エリア条件を任意に設定でき、その範囲内に入ったかどうかを判定して警報を発信する。画面には平面的あるいは3次元的にクレーンおよび侵入禁止エリア等が表示されており、視覚的な補助情報としてオペレータに常に提示されている。これにより、人為的ミスやセンサ検知ミスによる誤警報の可能性が低減され、常時どこに何がどういった状態であるかといった実際に近い稼働状況等の情報を、より正確に把握/管理できる。
【0045】
また、本発明の実施形態に係るシステムでは、ジブ16の先端部にGNSS端末21を取り付け、カウンターウェイト18の位置にGNSS端末22を取り付けるだけで、対応できる。このため、様々な移動式クレーンに対して簡易的に取付けることができ、複数台のクレーンの稼働状況の把握が簡単に行える。
なお、上述したGNSS端末21、GNSS端末22は、衛星からの信号を受信して位置を測定する機能を実現することができれば、GNSSとして、例えば、GPS(Global Positioning System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、Galileo、BDS(BeiDou Navigation Satellite System)のいずれを用いてもよく、また、準天頂衛星システムを用いるようにしてもよい。
【0046】
また、本発明の実施形態に係るシステムでは、オペレータ室内に限らず事務所でもその画面を見ることができるため、クレーンを利用する複数の作業領域について安全管理を一括管理することができ、効率を向上させることも可能である。また、これまではエリア侵入した時に警報を鳴らすことで衝突回避などをしていたが、本システムは常に実物に近い形でのクレーンの現在状況をオペレータに提供しているので、接近しているかどうかに関わらず周囲の状況を把握して危険予知しながら、より安全意識をもってクレーン操作を行うことができる。
【符号の説明】
【0047】
10、10a、10b…移動式クレーン、11、11a、11b…走行体、12、12a、12b…旋回体、13、13a、13b…クローラ、15、15a、15b…ブーム、16、16a、16b…ジブ、18、18a、18b…カウンターウェイト、21、21a、21b…GNSS端末、22、22a、22b…GNSS端末、30…演算装置、40…表示部