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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】生分解性袋体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 30/02 20060101AFI20230502BHJP
   B65D 33/25 20060101ALI20230502BHJP
   B65D 33/00 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
B65D30/02 ZBP
B65D33/25 A
B65D33/00 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019050019
(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公開番号】P2020152387
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000147316
【氏名又は名称】株式会社生産日本社
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】野口 ▲隆▼之
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-001400(JP,A)
【文献】国際公開第2006/001250(WO,A1)
【文献】特開平10-258845(JP,A)
【文献】実開昭62-159444(JP,U)
【文献】登録実用新案第3153727(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/02
B65D 33/25
B65D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然紙と生分解性フィルムとが重ね合わされた状態で前記生分解性フィルムが内側にされて二つ折りされた折り返し部と、該折り返し部に対向する縁に設けられた開口部と、前記折り返し部と該折り返し部に対向する縁とを結ぶ第1側縁封止部と、該第1側縁封止部に対向する第2側縁封止部とを有する袋体であって、
前記生分解性フィルムは、前記開口部の縁に沿って内表面に設けられた雌雄咬合型のチャックを有し、
前記第1側縁封止部及び前記第2側縁封止部は、前記天然紙及び前記生分解性フィルムの厚さ方向に沿って、前記天然紙の内表面及び前記生分解性フィルムの外表面の熱接着部と、前記生分解性フィルムの内表面同士の熱接着部と、前記生分解性フィルムの外表面及び前記天然紙の内表面の熱接着部と、を有し、
前記袋体は、前記生分解性フィルムの内表面同士の間に設けられた収容部となる空間S1と、該空間S1の前記生分解性フィルムの厚さ方向の外側に設けられた前記生分解性フィルムの外表面と前記天然紙の内表面との間の空間S2とを有することを特徴とする生分解性袋体。
【請求項2】
前記折り返し部は、前記天然紙及び前記生分解性フィルムの厚さ方向に沿って、前記天然紙の内表面及び前記生分解性フィルムの外表面の熱接着部と、前記生分解性フィルムの内表面同士の熱接着部と、前記生分解性フィルムの外表面及び前記天然紙の内表面の熱接着部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の生分解性袋体。
【請求項3】
前記開口部の縁は、前記天然紙及び前記生分解性フィルムの厚さ方向に沿って、前記天然紙の内表面及び前記生分解性フィルムの外表面の熱接着部と、前記生分解性フィルムの内表面同士が非接着状態とされた非接着部と、前記生分解性フィルムの外表面及び前記天然紙の内表面の熱接着部と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の生分解性袋体。
【請求項4】
前記生分解性袋体は、前記開口部の縁を封止する開口封止部を有し、かつ、
前記第1側縁封止部若しくは前記第2側縁封止部のいずれか一方又は両方は、前記開口封止部と前記チャックとの間の領域に開封用のノッチを有し、
前記開口封止部は、前記天然紙及び前記生分解性フィルムの厚さ方向に沿って、前記天然紙の内表面及び前記生分解性フィルムの外表面の熱接着部と、前記生分解性フィルムの内表面同士の熱接着部と、前記生分解性フィルムの外表面及び前記天然紙の内表面の熱接着部と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の生分解性袋体。
【請求項5】
前記開口部の縁は、前記天然紙及び前記生分解性フィルムの厚さ方向に沿って、前記天然紙の内表面及び前記生分解性フィルムの外表面が非接着状態とされた非接着部と、前記生分解性フィルムの内表面同士が非接着状態とされた非接着部と、前記生分解性フィルムの外表面及び前記天然紙の内表面が非接着状態とされた非接着部と、を有し、かつ、
前記開口部の縁を構成する2つの前記天然紙の縁と該2つの天然紙の縁の間に配置された2つの前記生分解性フィルムの縁とが、一方の前記天然紙側から他方の前記天然紙側に向かうにしたがってより前記折り返し部とは反対側に突出して配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の生分解性袋体。
【請求項6】
前記開口部の縁は、前記天然紙及び前記生分解性フィルムの厚さ方向に沿って、前記天然紙の内表面及び前記生分解性フィルムの外表面が非接着状態とされた非接着部と、前記生分解性フィルムの内表面同士が非接着状態とされた非接着部と、前記生分解性フィルムの外表面及び前記天然紙の内表面が非接着状態とされた非接着部と、を有し、かつ、
前記開口部の縁を構成する2つの前記生分解性フィルムの縁が、2つの前記天然紙の縁よりも前記折り返し部とは反対側に突出して配置されており、かつ、前記2つの生分解性フィルムの縁のうちいずれか一方の縁が他方の縁よりも前記折り返し部とは反対側に突出して配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の生分解性袋体。
【請求項7】
前記天然紙の片面又は両面は、バリア性塗工層を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の生分解性袋体。
【請求項8】
二つ折りされて折り返し部が長手方向に沿って延在する帯状であり、内表面に雌雄咬合型のチャックが長手方向に沿って設けられた生分解性フィルムの外表面側に天然紙を重ね合わせて、前記生分解性フィルムと前記天然紙とが二つ折りで重ね合わされた状態とする工程と、
前記生分解性フィルムと前記天然紙とが二つ折りで重ね合わされた状態で、長手方向に交差する方向に延びる側縁封止部を所定の間隔毎に形成する工程と、を有し、
前記側縁封止部を形成する工程は、前記天然紙及び前記生分解性フィルムの厚さ方向に沿って、前記天然紙の内表面及び前記生分解性フィルムの外表面の熱接着部と、前記生分解性フィルムの内表面同士の熱接着部と、前記生分解性フィルムの外表面及び前記天然紙の内表面の熱接着部と、を設ける工程であることを特徴とする生分解性袋体の製造方法。
【請求項9】
前記生分解性フィルムと前記天然紙とが二つ折りで重ね合わされた状態で、折り返し部に、前記天然紙及び前記生分解性フィルムの厚さ方向に沿って、前記天然紙の内表面及び前記生分解性フィルムの外表面の熱接着部と、前記生分解性フィルムの内表面同士の熱接着部と、前記生分解性フィルムの外表面及び前記天然紙の内表面の熱接着部と、を設ける工程を更に含むことを特徴とする請求項8に記載の生分解性袋体の製造方法。
【請求項10】
前記チャックは、前記生分解性フィルムの内表面に一体に成形されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の生分解性袋体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生分解性袋体及びその製造方法、特には再封止可能なチャック付きの生分解性袋体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再封止が可能なチャック付き袋体としては、様々な形態が提案されている。例えば、大小異なる複数の袋部の開口及び収納物の取り出しを容易とした合成樹脂製ファスナー付きの袋体が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。複数の袋部を一体に形成し、各袋部に分別収納を可能とした合成樹脂製袋体が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。外袋の内部に更に内袋が収納され、各袋に備えられたチャックによって各袋を封止することができるチャック付き二重袋が提案されている(例えば、特許文献3を参照。)。二枚のシートの間に不織布が配置され、二枚のシートの上部にファスナが取り付けられており、二枚のシートと不織布とが溶断によって一体に密着固定されたコンパクトディスク収納用包装容器が提案されている(例えば、特許文献4を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-25794号公報
【文献】特開2005-145536号公報
【文献】特開2012-20463号公報
【文献】特開2010-269825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1~4の袋体は、いずれも合成樹脂製フィルムが用いられているところ、これらの袋体は、使用後廃棄されることが多い。廃棄された後は、埋立処理されることが多いが、袋体に用いられるポリエチレン又はポリプロピレンなどの合成樹脂は、化学的に安定であるため、ほとんど分解せずに残留してしまう問題があった。
【0005】
そこで、土壌中で分解する生分解性のチャック付袋体が求められている。例えば、天然紙と生分解性フィルムとを積層させた基材を用いたチャック付袋体がある。しかし、このようなチャック付袋体では、従来、天然紙と生分解性フィルムとを貼り合わせるために、接着層が用いられていた。この接着層は生分解性を有さないため、該接着層だけは生分解されずに自然界に残留してしまう問題があった。
【0006】
本開示は、生分解性を有さない接着層を用いない、天然紙と生分解性フィルムとを用いた再封止可能なチャック付きの生分解性袋体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る生分解性袋体は、天然紙と生分解性フィルムとが重ね合わされた状態で前記生分解性フィルムが内側にされて二つ折りされた折り返し部と、該折り返し部に対向する縁に設けられた開口部と、前記折り返し部と該折り返し部に対向する縁とを結ぶ第1側縁封止部と、該第1側縁封止部に対向する第2側縁封止部とを有する袋体であって、前記生分解性フィルムは、前記開口部の縁に沿って内表面に設けられた雌雄咬合型のチャックを有し、前記第1側縁封止部及び前記第2側縁封止部は、前記天然紙及び前記生分解性フィルムの厚さ方向に沿って、前記天然紙の内表面及び前記生分解性フィルムの外表面の熱接着部と、前記生分解性フィルムの内表面同士の熱接着部と、前記生分解性フィルムの外表面及び前記天然紙の内表面の熱接着部と、を有し、前記袋体は、前記生分解性フィルムの内表面同士の間に設けられた収容部となる空間S1と、該空間S1の前記生分解性フィルムの厚さ方向の外側に設けられた前記生分解性フィルムの外表面と前記天然紙の内表面との間の空間S2とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る生分解性袋体では、前記折り返し部は、前記天然紙及び前記生分解性フィルムの厚さ方向に沿って、前記天然紙の内表面及び前記生分解性フィルムの外表面の熱接着部と、前記生分解性フィルムの内表面同士の熱接着部と、前記生分解性フィルムの外表面及び前記天然紙の内表面の熱接着部と、を有することが好ましい。折り返し部において生分解性フィルムが袋の内方に浮き上がることを防止して、生分解性フィルムの内表面同士の間の空間をより確実に確保することができる。また、空間を3つに分割することができる。
【0009】
本発明に係る生分解性袋体では、前記開口部の縁は、前記天然紙及び前記生分解性フィルムの厚さ方向に沿って、前記天然紙の内表面及び前記生分解性フィルムの外表面の熱接着部と、前記生分解性フィルムの内表面同士が非接着状態とされた非接着部と、前記生分解性フィルムの外表面及び前記天然紙の内表面の熱接着部と、を有することが好ましい。チャックをより容易に開封することができる。また、生分解性フィルムの内表面同士の間の空間に内容物をより確実に収容することができる。
【0010】
本発明に係る生分解性袋体では、前記生分解性袋体は、前記開口部の縁を封止する開口封止部を有し、かつ、前記第1側縁封止部若しくは前記第2側縁封止部のいずれか一方又は両方は、前記開口封止部と前記チャックとの間の領域に開封用のノッチを有し、前記開口封止部は、前記天然紙及び前記生分解性フィルムの厚さ方向に沿って、前記天然紙の内表面及び前記生分解性フィルムの外表面の熱接着部と、前記生分解性フィルムの内表面同士の熱接着部と、前記生分解性フィルムの外表面及び前記天然紙の内表面の熱接着部と、を有することが好ましい。開口封止部によって、未開封状態を確保することができる。
【0011】
本発明に係る生分解性袋体では、前記開口部の縁は、前記天然紙及び前記生分解性フィルムの厚さ方向に沿って、前記天然紙の内表面及び前記生分解性フィルムの外表面が非接着状態とされた非接着部と、前記生分解性フィルムの内表面同士が非接着状態とされた非接着部と、前記生分解性フィルムの外表面及び前記天然紙の内表面が非接着状態とされた非接着部と、を有し、かつ、前記開口部の縁を構成する2つの前記天然紙の縁と該2つの天然紙の縁の間に配置された2つの前記生分解性フィルムの縁とが、一方の前記天然紙側から他方の前記天然紙側に向かうにしたがってより前記折り返し部とは反対側に突出して配置されていることが好ましい。各開口部より容易に開くことができる。
【0012】
本発明に係る生分解性袋体では、前記開口部の縁は、前記天然紙及び前記生分解性フィルムの厚さ方向に沿って、前記天然紙の内表面及び前記生分解性フィルムの外表面が非接着状態とされた非接着部と、前記生分解性フィルムの内表面同士が非接着状態とされた非接着部と、前記生分解性フィルムの外表面及び前記天然紙の内表面が非接着状態とされた非接着部と、を有し、かつ、前記開口部の縁を構成する2つの前記生分解性フィルムの縁が、2つの前記天然紙の縁よりも前記折り返し部とは反対側に突出して配置されており、かつ、前記2つの生分解性フィルムの縁のうちいずれか一方の縁が他方の縁よりも前記折り返し部とは反対側に突出して配置されていることが好ましい。各開口部をより容易に開くことができる。
【0013】
本発明に係る生分解性袋体では、前記天然紙の片面又は両面は、バリア性塗工層を有することが好ましい。内容物の品質低下をより抑制することができる。
【0014】
本発明に係る生分解性袋体の製造方法は、二つ折りされて折り返し部が長手方向に沿って延在する帯状であり、内表面に雌雄咬合型のチャックが長手方向に沿って設けられた生分解性フィルムの外表面側に天然紙を重ね合わせて、前記生分解性フィルムと前記天然紙とが二つ折りで重ね合わされた状態とする工程と、前記生分解性フィルムと前記天然紙とが二つ折りで重ね合わされた状態で、長手方向に交差する方向に延びる側縁封止部を所定の間隔毎に形成する工程と、を有し、前記側縁封止部を形成する工程は、前記天然紙及び前記生分解性フィルムの厚さ方向に沿って、前記天然紙の内表面及び前記生分解性フィルムの外表面の熱接着部と、前記生分解性フィルムの内表面同士の熱接着部と、前記生分解性フィルムの外表面及び前記天然紙の内表面の熱接着部と、を設ける工程であることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る生分解性袋体の製造方法では、前記生分解性フィルムと前記天然紙とが二つ折りで重ね合わされた状態で、折り返し部に、前記天然紙及び前記生分解性フィルムの厚さ方向に沿って、前記天然紙の内表面及び前記生分解性フィルムの外表面の熱接着部と、前記生分解性フィルムの内表面同士の熱接着部と、前記生分解性フィルムの外表面及び前記天然紙の内表面の熱接着部と、を設ける工程を更に含むことが好ましい。折り返し部において生分解性フィルムが袋の内方に浮き上がることを防止して、生分解性フィルムの内表面同士の間の空間をより確実に確保する袋体を製造することができる。また、天然紙と生分解性フィルムとの間の空間を3つに分割する袋体を製造することができる。
【0016】
本発明に係る生分解性袋体の製造方法では、前記チャックは、前記生分解性フィルムの内表面に一体に成形されていることが好ましい。より簡易な構造とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、生分解性を有さない接着層を用いない、天然紙と生分解性フィルムとを用いた再封止可能なチャック付きの生分解性袋体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る生分解性袋体の第一例を示す正面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図1のB-B線断面図である。
図4】本実施形態に係る生分解性袋体の第二例を示す正面図である。
図5図4のC-C線断面図である。
図6】開口部の縁の第一変形例を示す部分拡大断面図である。
図7】本実施形態に係る生分解性袋体の第三例を示す正面図である。
図8図7のD-D線断面図である。
図9】開口部の縁の第二変形例を示す部分拡大断面図である。
図10】開口部の縁の第三変形例を示す部分拡大断面図である。
図11】本実施形態に係る生分解性袋体の製造方法を説明するための概略図であり、(a)(b)(c)の順に工程が進む様子を示している。
図12図4及び図5に示す生分解性袋体の製造方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0020】
図1は、本実施形態に係る生分解性袋体の第一例を示す正面図である。図2は、図1のA-A線断面図、図3は、図1のB-B線断面図である。本実施形態に係る生分解性袋体1は、図1及び図2に示すように、天然紙2と生分解性フィルム3とが重ね合わされた状態で生分解性フィルム3が内側にされて二つ折りされた折り返し部4と、折り返し部4に対向する縁に設けられた開口部5,9,10と、折り返し部4と折り返し部4に対向する縁とを結ぶ第1側縁封止部6Aと、第1側縁封止部6Aに対向する第2側縁封止部6Bとを有する袋体であって、生分解性フィルム3は、開口部5,9,10の縁に沿って内表面に設けられた雌雄咬合型のチャック8を有し、第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bは、図3に示すように、天然紙2及び生分解性フィルム3の厚さ方向Tに沿って、天然紙2の内表面及び生分解性フィルム3の外表面の熱接着部H1と、生分解性フィルム3の内表面同士の熱接着部H2と、生分解性フィルム3の外表面及び天然紙2の内表面の熱接着部H3と、を有する。
【0021】
生分解性袋体1は、図1に示すように、正面視で四角形状の袋体であることが好ましく、下縁に折り返し部4、左右の側縁にそれぞれ第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6B、上縁に開口部5,9,10を有する袋体である。生分解性袋体1は、図2に示すように、生分解性フィルム3の内表面同士の間の空間S1と、天然紙2の内表面と生分解性フィルム3の外表面との間の空間S2とを有する。空間S1は、開口部5に連通するメインの収容部となる空間であり、開口部5がチャック8で再封止可能となっている。空間S2は、図2では、開口部5の縁の両脇に開口部9,10を有する空間である。生分解性袋体1は、外表面が天然紙2で覆われており、遮光性を有するため、お茶、コーヒー、紅茶などの包装袋として好適である。また、生分解性袋体1は、天然紙の持つ自然な風合いを生かして、お菓子、お米又は自然食品などの包装袋としても好適である。
【0022】
天然紙2は、生分解性であれば特に限定されず、和紙又は洋紙を問わないが、例えば、クラフト紙又はパラフィン紙(蝋引き紙)である。
【0023】
本実施形態に係る生分解性袋体1では、天然紙2の片面又は両面は、バリア性塗工層を有することが好ましい。バリア性塗工層によって内容物の品質低下をより抑制することができる。バリア性塗工層は、天然紙2の内表面だけに設けられる形態、天然紙2の外表面だけに設けられる形態、又は天然紙2の内表面及び外表面の両方に設けられる形態であってもよい。バリア性塗工層は、生分解性を有することが好ましい。また、バリア性塗工層を天然紙2の内表面に設ける場合、バリア性塗工層は熱接着性を有することが好ましい。バリア性塗工層を天然紙2の外表面に設ける場合、バリア性塗工層は印刷適性を有することが好ましい。生分解性、熱接着性及び印刷適性を有するバリア性塗工層としては、例えば日本製紙株式会社製のシールドプラス(登録商標)が挙げられる。
【0024】
生分解性フィルム3は、生分解性プラスチックからなるフィルムであればよく特に限定されないが、例えば、ポリ乳酸又はポリグリコール酸である。また、生分解性プラスチックは、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、変性ポリビニルアルコール、カゼイン又は変性澱粉を成分とするものであってもよい。
【0025】
雌雄咬合型のチャック8は、図2に示すように、開口部5において対向する生分解性フィルム3の一方に突設された雌部材8Aと生分解性フィルム3の他方に突設された雄部材8Bとを有する。雌部材8A及び雄部材8Bは互いに係脱可能に係合する形状であればよく、図2では一例として雌部材8Aは断面形状が矢尻状の頭部を有する形状であり、雄部材8Bは雌部材8Aの頭部が嵌まるような断面形状が凹形状であってその両側の先端に互いに向き合う鉤が設けられた形状である形態を示したが、本発明はこれに限定されない。
【0026】
第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bは、図3に示すように、天然紙2及び生分解性フィルム3の厚さ方向Tに沿って、熱接着部H1、H2,H3を有する。本明細書において、「天然紙2及び生分解性フィルム3の厚さ方向Tに沿って」とは、天然紙2及び生分解性フィルム3の厚さ方向Tに伸びる仮想の同一直線(不図示)上に並んでいることを意味する。なお、図3には代表して第1側縁封止部6Aを示したが、第2側縁封止部6Bも第1側縁封止部6Aと同様の構造を有する。熱接着部H1、H3は、天然紙2の内表面と生分解性フィルム3の外表面とが熱によって接着された部分である。熱接着部H1、H3では、熱によって生分解性フィルム3が溶融又は軟化して天然紙2に固着(融着)している。熱接着部H2は、生分解性フィルム3の内表面同士が熱によって接着された部分である。熱接着部H2では、熱によって向かい合う生分解性フィルム3同士が溶融又は軟化によって固着(融着)している。このように、本実施形態に係る生分解性袋体1では、基材である天然紙2及び生分解性フィルム3は接着剤などの生分解性を有さない材料によって貼り合わされておらず、天然紙2と生分解性フィルム3とは、第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bにおいて熱による接着で直接的に固定されている。その結果、完全生分解性を達成することができる。
【0027】
図4は、本実施形態に係る生分解性袋体の第二例を示す正面図である。図5は、図4のC-C線断面図である。本実施形態に係る生分解性袋体1では、折り返し部4は、図4及び図5に示すように、天然紙2及び生分解性フィルム3の厚さ方向Tに沿って、天然紙2の内表面及び生分解性フィルム3の外表面の熱接着部H4と、生分解性フィルム3の内表面同士の熱接着部H5と、生分解性フィルム3の外表面及び天然紙2の内表面の熱接着部H6と、を有することが好ましい。熱接着部H4,H5,H6は、熱接着部H1,H2,H3と同様に、接着剤などを介在せずに熱による接着で直接的に固定されている。折り返し部4に熱接着部H4,H5,H6が設けられることによって、折り返し部4において生分解性フィルム3が袋の内方に浮き上がることが防止されて、生分解性フィルム3の内表面同士の間の空間S1をより確実に確保することができる。また、図5に示すように、天然紙2の内表面と生分解性フィルム3の外表面との間の空間S2が、開口部9に連通する空間S2Aと、開口部10に連通する空間S2Bとに区画される。その結果、袋体1は、3つの空間S1,S2A,S2Bを有することとなる。
【0028】
図6は、開口部の縁の第一変形例を示す部分拡大断面図である。本実施形態に係る生分解性袋体1では、開口部5の縁は、天然紙2及び生分解性フィルム3の厚さ方向Tに沿って、天然紙2の内表面及び生分解性フィルム3の外表面の熱接着部H7と、生分解性フィルム3の内表面同士が非接着状態とされた非接着部N1と、生分解性フィルム3の外表面及び天然紙2の内表面の熱接着部H8と、を有することが好ましい。熱接着部H7,H8は、熱接着部H1,H2,H3と同様に、接着剤などを介在せずに熱による接着で直接的に固定されている。非接着部N1は空間S1に連通する開口部5となる。熱接着部H7,H8を有することによって、空間S2に連通する開口部(例えば図2の符号9,10)が閉鎖され、開口部5が非接着部N1の1つだけとなるので、チャック8をより容易に開封することができる。また、生分解性フィルムの内表面同士の間の空間S1に内容物をより確実に収容することができる。図6において、袋体1の折り返し部の図示を省略しているが、折り返し部4は図2に示すように熱接着部が設けられていない形態であってもよいし、図5に示すように熱接着部H4,H5,H6が設けられた形態であってもよい。
【0029】
図7は、本実施形態に係る生分解性袋体の第三例を示す正面図である。図8は、図7のD-D線断面図である。本実施形態に係る生分解性袋体1では、図7及び図8に示すように、生分解性袋体1は、開口部5,9,10の縁を封止する開口封止部11を有し、かつ、第1側縁封止部6A若しくは第2側縁封止部6Bのいずれか一方又は両方は、開口封止部11とチャック8との間の領域に開封用のノッチ12を有し、開口封止部11は、天然紙2及び生分解性フィルム3の厚さ方向に沿って、天然紙2の内表面及び生分解性フィルム3の外表面の熱接着部H9と、生分解性フィルム3の内表面同士の熱接着部H10と、生分解性フィルム3の外表面及び天然紙2の内表面の熱接着部H11と、を有することが好ましい。ノッチ12は、特に限定されず、例えば、Vノッチ(図7に図示)、Iノッチ(不図示)、又は傷加工などによるダメージ加工であってもよい(不図示)。また、ノッチ12は、図7に示すように第1側縁封止部6Aだけに設けられていてもよいし、第2側縁封止部6Bだけに設けられていてもよいし(不図示)、第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bの両方に設けられていてもよい(不図示)。図7及び図8に示す袋体1では、袋体1をノッチ12からチャック8に沿って切り開くと、例えば図2に示すように開口部5,9,10が形成される。熱接着部H9,H10,H11は、熱接着部H1,H2,H3と同様に、接着剤などを介在せずに熱による接着で直接的に固定されている。開口部5,9,10の縁が開口封止部11で封止されることによって、袋体1の未開封状態を確保することができる。図8では、折り返し部4に熱接着部が設けられていない形態を示したが、図5に示すように熱接着部H4,H5,H6が設けられた形態であってもよい。
【0030】
図9は、開口部の縁の第二変形例を示す部分拡大断面図である。本実施形態に係る生分解性袋体1では、開口部5の縁は、天然紙2及び生分解性フィルム3の厚さ方向Tに沿って、天然紙2の内表面及び生分解性フィルム3の外表面が非接着状態とされた非接着部N2と、生分解性フィルムの内表面同士が非接着状態とされた非接着部N3と、生分解性フィルム3の外表面及び天然紙2の内表面が非接着状態とされた非接着部N4と、を有し、かつ、開口部5の縁を構成する2つの天然紙2の縁と2つの天然紙2の縁の間に配置された2つの生分解性フィルム3の縁とが、一方の天然紙2側から他方の天然紙2側に向かうにしたがってより折り返し部4とは反対側に突出して配置されていることが好ましい。非接着部N2は空間S2に連通する開口部9となる。非接着部N3は空間S1に連通する開口部5となる。非接着部N4は空間S2に連通する開口部9となる。図9に示す袋体1では、開口部5,9,10の隣り合う縁が互いに段差をもって配置される。このように段差を持たせることによって、開口部5,9,10の縁を指先でずらしやすくなり、各開口部5,9,10をより容易に開くことができる。図9では、折り返し部4に熱接着部が設けられていない形態を示したが、図5に示すように熱接着部H4,H5,H6が設けられた形態であってもよい。
【0031】
図10は、開口部の縁の第三変形例を示す部分拡大断面図である。本実施形態に係る生分解性袋体1では、開口部5,9,10の縁は、天然紙2及び生分解性フィルム3の厚さ方向Tに沿って、天然紙2の内表面及び生分解性フィルム3の外表面が非接着状態とされた非接着部N2と、生分解性フィルム3の内表面同士が非接着状態とされた非接着部N3と、生分解性フィルム3の外表面及び天然紙2の内表面が非接着状態とされた非接着部N4と、を有し、かつ、開口部5,9,10の縁を構成する2つの生分解性フィルム3の縁が、2つの天然紙2の縁よりも折り返し部4とは反対側に突出して配置されており、かつ、2つの生分解性フィルム3の縁のうちいずれか一方の縁が他方の縁よりも折り返し部4とは反対側に突出して配置されていることが好ましい。図10に示す第三変形例は、開口部の縁の配置が異なる以外は、図9に示す第二変形例と基本的な構成を同じくする。図10に示す袋体1においても、図9に示す袋体1と同様に、開口部5,9,10の隣り合う縁が互いに段差をもって配置される。このように段差を持たせることによって、開口部5,9,10の縁を指先でずらしやすくなり、各開口部5,9,10をより容易に開くことができる。図10では、折り返し部4に熱接着部が設けられていない形態を示したが、図5に示すように熱接着部H4,H5,H6が設けられた形態であってもよい。
【0032】
図11は、本実施形態に係る生分解性袋体の製造方法を説明するための概略図であり、(a)(b)(c)の順に工程が進む様子を示している。本実施形態に係る生分解性袋体1の製造方法は、二つ折りされて折り返し部4が長手方向Lに沿って延在する帯状であり、内表面に雌雄咬合型のチャック8が長手方向Lに沿って設けられた生分解性フィルム3の外表面側に天然紙2を重ね合わせて、生分解性フィルム3と天然紙2とが二つ折りで重ね合わされた状態とする工程(図11(a))と、生分解性フィルム3と天然紙2とが二つ折りで重ね合わされた状態で、長手方向Lに交差する方向に延びる側縁封止部6を所定の間隔毎に形成する工程(図11(b))と、を有し、側縁封止部6を形成する工程は、例えば図3に示すように、天然紙2及び生分解性フィルム3の厚さ方向Tに沿って、天然紙2の内表面及び生分解性フィルム3の外表面の熱接着部H1と、生分解性フィルム3の内表面同士の熱接着部H2と、生分解性フィルム3の外表面及び天然紙2の内表面の熱接着部H3と、を設ける工程である。
【0033】
図11(a)に示す工程は、帯状の天然紙2と帯状の生分解性フィルム3とを天然紙2が外側になるように2枚重ねで二つ折りする工程である。図11(a)に示す工程は、帯状の天然紙2及び帯状の生分解性フィルム3がそれぞれロール状に巻かれた原反ロール(不図示)から、天然紙2及び生分解性フィルム3をそれぞれ繰り出して供給する工程を含むことが好ましい。
【0034】
本実施形態に係る生分解性袋体1の製造方法では、チャック8は、生分解性フィルム3の内表面に一体に成形されていることが好ましい。より簡易な構造とすることができる。帯状の生分解性フィルム3は、インフレーション成形でチャック8がフィルムに一体に成形されたフィルムであることが好ましい。
【0035】
本実施形態に係る生分解性袋体の製造方法では、図11(a)に示す生分解性フィルム3と天然紙2とが二つ折りで重ね合わされた状態とする工程において、図9に示すように開口部5,9,10の縁を構成する2つの天然紙2の縁と該2つの天然紙2の縁の間に配置された2つの生分解性フィルム3の縁とを、一方の天然紙2側から他方の天然紙2側に向かうにしたがってより折り返し部4とは反対側に突出して配置することが好ましい。
【0036】
本実施形態に係る生分解性袋体1の製造方法では、図11(a)に示す生分解性フィルム3と天然紙2とが二つ折りで重ね合わされた状態とする工程において、図10に示すように開口部5,9,10の縁を構成する2つの生分解性フィルム3の縁を、2つの天然紙2の縁よりも折り返し部4とは反対側に突出して配置し、かつ、2つの生分解性フィルム3の縁のうちいずれか一方の縁が他方の縁よりも折り返し部4とは反対側に突出して配置することが好ましい。
【0037】
図11(b)に示す工程は、側縁封止部6を熱接着で形成する工程である。側縁封止部6は、例えば、サイドシールバー51で形成する。この工程によって、例えば図3に示すように、熱接着部H1,H2,H3が形成される。
【0038】
本実施形態に係る生分解性袋体1の製造方法は、図11(c)に示すように、側縁封止部6を切断して個々の袋体1とする切断工程を更に有することが好ましい。切断工程は、例えば、側縁封止部6をサイドシールバー51で設けた後、当該側縁封止部6の範囲内を横断するようにカッターなどの切断手段52によって切断する工程である。本実施形態は、図11(b)(c)に示すようにヒートシール工程と切断工程とを別個の工程とする方法に限定されず、側縁封止部6の熱接着と切断とを同時に行う、いわゆる溶断によって袋体1を製造してもよい。
【0039】
図12は、図4及び図5に示す生分解性袋体の製造方法を説明するための概略図である。本実施形態に係る生分解性袋体1の製造方法では、生分解性フィルム3と天然紙2とが二つ折りで重ね合わされた状態で、折り返し部4に、図5に示すように、天然紙2及び生分解性フィルム3の厚さ方向に沿って、天然紙2の内表面及び生分解性フィルム3の外表面の熱接着部H4と、生分解性フィルム3の内表面同士の熱接着部H5と、生分解性フィルム3の外表面及び天然紙の内表面の熱接着部H6と、を設ける工程(図12)を更に含むことが好ましい。折り返し部4の熱接着部H4,H5,H6は、例えば、底シールバー53で形成する。また、折り返し部4の熱接着部H4,H5,H6は、図12に示すように側縁封止部6を形成する前に形成するか、又は側縁封止部6を形成した後に形成してもよい(不図示)。
【0040】
本実施形態に係る生分解性袋体1の製造方法は、図6に示すように、天然紙2の内表面及び生分解性フィルム3の外表面の熱接着部H7と、生分解性フィルム3の外表面及び天然紙2の内表面の熱接着部H8と、を設ける工程を有することが好ましい。熱接着部H7,H8は、例えば、図11(a)の工程の前に天然紙2及び生分解性フィルム3を二つ折りする前に形成してもよいし、図11(a)のように天然紙2及び生分解性フィルム3を二つ折りした状態で形成してもよい。熱接着部H7,H8は、例えば、シールバー(不図示)で形成する。
【0041】
本実施形態に係る生分解性袋体1の製造方法は、図7に示すように、開口封止部11を設ける工程と、第1側縁封止部6A若しくは第2側縁封止部6Bのいずれか一方又は両方の開口封止部11とチャック8との間の領域に開封用のノッチ12を設ける工程と、を有することが好ましい。開口封止部11は、袋体1に内容物を充填後に形成することが好ましい。開口封止部11は、例えばシールバー(不図示)で形成する。また、ノッチ12は、図11(c)の工程で側縁封止部6を切断する時に同時に形成してもよいし、開口封止部11を形成した後に別の工程で形成してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 生分解性袋体
2 天然紙
3 生分解性フィルム
4 折り返し部
5,9,10 開口部
6 側縁封止部
6A 第1側縁封止部
6B 第2側縁封止部
8 チャック
8A 雌部材
8B 雄部材
11 開口封止部
12 ノッチ
51 サイドシールバー
52 切断手段
53 底シールバー
H1,H2,H3,H4,H5,H6,H7,H8,H9,H10,H11 熱接着部
N1,N2,N3,N4 非接着部
S1,S2,S2A,S2B 空間
T 厚さ方向
L 長手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12