(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】操作ガイダンス装置、及び操作ガイダンス方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20230502BHJP
【FI】
E21D9/06 301Z
(21)【出願番号】P 2019070621
(22)【出願日】2019-04-02
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】和田 健介
(72)【発明者】
【氏名】杉山 博一
(72)【発明者】
【氏名】増田 湖一
(72)【発明者】
【氏名】大木 智明
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-085594(JP,A)
【文献】特開2019-039264(JP,A)
【文献】特開2017-119284(JP,A)
【文献】特開2018-011377(JP,A)
【文献】伊藤 透, 外2名,シールド方向制御学習システムの構築と現場適用事例,土木学会第68回年次学術講演会(平成25年9月),[online],2013年09月30日,[2022年10月18日検索], <URL:http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00035/2013/68-06/68-06-0137.pdf>
【文献】シールド方向制御学習システムの構築と現場適用事例,J-GLOBAL,[online],国立研究開発法人 科学技術振興機構,2013年08月01日,[2022年10月18日検索], <URL:https://jglobal.jst.go.jp/en/detail?JGLOBAL_ID=201302219088848817>
【文献】中谷 武彦,AIによるシールド掘削計画支援システムの開発,建築機械施工,第70巻、11号,2018年11月25日,p.20-22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00-9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘削機が掘削する状況を測定した測定データを取得する取得部と、
掘削の状況とシールド掘削機に作用させる力点の位置との対応関係を学習した学習済みモデルに前記測定データを入力させることにより、前記シールド掘削機に作用させる力点の目標とする位置である力点目標を推定する推定部と、
前記推定部により推定された前記力点目標に基づいて、前記シールド掘削機に作用させることが可能な力点の目標である力点操作目標を生成する生成部と、
前記シールド掘削機に作用させている現在の力点の位置である現力点位置及び前記生成部により生成された前記力点操作目標を示す情報を、オペレータの操作を案内するガイダンスガイダンス
画像として
力点位置を示す座標系に表示させるために出力する出力部と、
を備えることを特徴とする操作ガイダンス装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記力点目標として前記シールド掘削機に作用させる力点の位置を推定し、
前記生成部は、前記力点操作目標として
、前記現力点位置と前記力点目標
との関係に応じた範囲を示す情報を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の操作ガイダンス装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記力点目標として前記シールド掘削機に作用させる力点の位置を推定し、
前記生成部は、前記力点操作目標として前記力点目標が示す位置を含む所定の範囲を、前記力点目標の位置に応じてコンター表示する情報を生成する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の操作ガイダンス装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記力点目標として前記シールド掘削機に作用させる力点の位置を推定し、
前記生成部は、前記力点操作目標として
、前記現力点位置から、前記力点目標が示す位置への方向を示す情報を生成する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の操作ガイダンス装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記力点目標として前記シールド掘削機に作用させる力点の位置を推定し、
前記生成部は、前記力点操作目標として
、前記現力点位置から、前記力点目標が示す前記力点の位置までの距離を示す情報を生成する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の操作ガイダンス装置。
【請求項6】
取得部が、シールド掘削機が掘削する地山の状況を測定した測定データを取得する取得工程と、
推定部が、地山の状況とシールド掘削機に作用させる力点の位置との対応関係を学習した学習済みモデルに前記測定データを入力させることにより、前記シールド掘削機に作用させる力点の目標である力点目標を推定する推定工程と、
生成部が、前記推定部により推定された前記力点目標に基づいて、前記シールド掘削機に作用させることが可能な力点の目標である力点操作目標を生成する生成工程と、
出力部が、
前記シールド掘削機に作用させている現在の力点の位置である現力点位置及び前記生成部により生成された前記力点操作目標を示す情報を、オペレータの操作を案内するガイダンスガイダンス
画像として
力点位置を示す座標系に表示させるために出力する出力工程と、
を有することを特徴とする操作ガイダンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘削機の操作ガイダンス装置、及び操作ガイダンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルなどの築造に地山を掘削するシールド掘削機が用いられている。シールド掘削機を操作するオペレータは、予め計画された掘削の指示を示す掘削指示書に従い、シールド掘削機が掘削する現場の施工環境(土質、水圧などの状態)を監視しながら掘削する方向を操作している。
【0003】
シールド掘削機においては、円筒形のスキンプレートの内周に沿って複数のシールドジャッキが設けられる。この複数のシールドジャッキの全部又は一部が油圧操作により推進(伸長)されることによりスキンプレートの面が押され、シールド掘削機の掘進する方向が制御される。オペレータは、複数のシールドジャッキの何れを伸長させるかを選択するにより、シールド掘削機に作用させる力点の位置を調整し、シールド掘削機が掘削する方向を制御している。
【0004】
オペレータは、様々な現場においてトンネルの施工を行うことで、施工環境の変化に対応したシールド掘削機の制御の経験を養い、熟練度を向上させている。熟練度が向上した熟練したオペレータは、掘削中の現場におけるシールド掘削機の制御を行う際、現在の現場の施工環境に対応した制御を、過去の似たような施工環境における制御の知識を応用して行っている。しかし、施工した現場の数の少ないオペレータの場合、経験したことのない施工環境においては、経験と操作知識が不十分であり、その施工環境における適切なシールド掘削機の制御を行うことができない。
【0005】
すなわち、オペレータの各々のシールド掘削機の制御の熟練度によって、掘削されるトンネルの設計に対する精度や安全性がばらついてしまう問題がある。この問題を解決するため、掘削の際におけるシールド掘削機のカッターの回転状態及び推進ジャッキの推進状態を示す計測データにより、シールド掘削機を自動運転させる構成がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、人間の感情解析などを行うために人工知能(AI(Artificial Intelligence))を用いることが一般的に行われている。AIを用いた手法では、例えば、人間の表情(入力)と、その表情に対応する感情(出力)とを対応付けた教師データを用いて機械学習を実行することにより、学習済みモデルを作成する。この学習済みモデルに人間の表情を入力させることにより、その表情が意味する感情を推定させることができ、人間の感情解析を行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1においては、熟練したオペレータによるシールド掘削機の操作を十分に再現することができない。すなわち、測定したデータと設定値とを比較することにより制御が行われるため、熟練したオペレータの経験に基づいた制御と異なり、時々刻々と変化する現場の施工環境に対応した制御が適切に行われているとは限らず、掘削されたトンネルの設計に対する精度や安全性が向上するとは言い難かった。
【0009】
一方、上述したAIの手法を、シールド掘削機の操作に応用することが考えられる。例えば、シールド掘削機から得られる掘削状況(入力)と、その掘削状況に対応する熟練したオペレータの操作(出力)とを対応付けた教師データを用いて機械学習を実行することにより学習済みモデルを作成する。この学習済みモデルに、現在掘削している掘削状況を示すデータを入力させることにより、シールド掘削機の望ましい操作の内容を推定することが可能である。例えば、学習済みモデルが推定した力点の位置に、シールド掘削機の力点がくるようにシールドジャッキを選択する操作を行うことで、経験が少ないオペレータであっても熟練したオペレータに近い操作を行うことができると考えられる。
【0010】
しかしながら、シールドジャッキは、オン又はオフの何れかの操作しかできないものが多い。それ故に、シールド掘削機を推進させる際に操作できる力点の位置は、離散的になる。一方で、学習済みモデルが推定する力点の位置は、任意の位置であり連続的なものとなる。このため、オペレータは、複数のシールドジャッキの何れを選択したとしても、学習済みモデルが推定した力点の位置に一致させることができない場合があり得る。学習済みモデルが、実際には一致させることが不可能な力点の位置を提示してしまうと、オペレータを混乱させ、無駄な操作を増やしてしまう可能性がある。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シールド掘削機の操作において、オペレータが操作しやすいガイダンス(案内)を行うことができる操作ガイダンス装置、及び操作ガイダンス方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために本発明の一実施形態の操作ガイダンス装置は、シールド掘削機が掘削する状況を測定した測定データを取得する取得部と、掘削の状況とシールド掘削機に作用させる力点の位置との対応関係を学習した学習済みモデルに前記測定データを入力させることにより、前記シールド掘削機に作用させる力点の目標とする位置である力点目標を推定する推定部と、前記推定部により推定された前記力点目標に基づいて、前記シールド掘削機に作用させることが可能な力点の目標である力点操作目標を生成する生成部と、前記シールド掘削機に作用させている現在の力点の位置である現力点位置及び前記生成部により生成された前記力点操作目標を示す情報を、オペレータの操作を案内するガイダンスガイダンス画像として力点位置を示す座標系に表示させるために出力する出力部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、上述した操作ガイダンス装置は、前記推定部は、前記力点目標として前記シールド掘削機に作用させる力点の位置を推定し、前記生成部は、前記力点操作目標として、前記現力点位置と前記力点目標との関係に応じた範囲を示す情報を生成することを特徴とする。
【0014】
また、上述した操作ガイダンス装置は、前記推定部は、前記力点目標として前記シールド掘削機に作用させる力点の位置を推定し、前記生成部は、前記力点操作目標として前記力点目標が示す位置を含む所定の範囲を、前記力点目標の位置に応じてコンター表示する情報を生成することを特徴とする。
【0015】
また、上述した操作ガイダンス装置は、前記推定部は、前記力点目標として前記シールド掘削機に作用させる力点の位置を推定し、前記生成部は、前記力点操作目標として、前記現力点位置から、前記力点目標が示す位置への方向を示す情報を生成することを特徴とする。
【0016】
また、上述した操作ガイダンス装置は、前記推定部は、前記力点目標として前記シールド掘削機に作用させる力点の位置を推定し、前記生成部は、前記力点操作目標として、前記現力点位置から、前記力点目標が示す前記力点の位置までの距離を示す情報を生成することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の一実施形態の操作ガイダンス方法は、取得部が、シールド掘削機が掘削する地山の状況を測定した測定データを取得する取得工程と、推定部が、地山の状況とシールド掘削機に作用させる力点の位置との対応関係を学習した学習済みモデルに前記測定データを入力させることにより、前記シールド掘削機に作用させる力点の目標である力点目標を推定する推定工程と、生成部が、前記推定部により推定された前記力点目標に基づいて、前記シールド掘削機に作用させることが可能な力点の目標である力点操作目標を生成する生成工程と、出力部が、前記シールド掘削機に作用させている現在の力点の位置である現力点位置及び前記生成部により生成された前記力点操作目標を示す情報を、オペレータの操作を案内するガイダンスガイダンス画像として力点位置を示す座標系に表示させるために出力する出力工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、この発明によれば、オペレータが操作しやすいガイダンス(案内)を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態の操作ガイダンス装置10が適用される操作ガイダンスシステム1の構成例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態の端末装置20に表示される画面の例を示す図である。
【
図3】実施形態の端末装置20に表示される画面の例を示す図である。
【
図4】実施形態の端末装置20に表示される画面の例を示す図である。
【
図5】実施形態の操作ガイダンス装置10の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態の、操作ガイダンス装置を、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、実施形態の操作ガイダンス装置10が適用される操作ガイダンスシステム1の構成例を示すブロック図である。操作ガイダンスシステム1は、操作ガイダンス装置10と、端末装置20とを備える。操作ガイダンス装置10と端末装置20とは、通信可能に接続される。
【0022】
操作ガイダンスシステム1では、操作ガイダンス装置10により生成されたガイダンス情報が、端末装置20に出力される。ガイダンス情報は、シールド掘削機のオペレータの操作を案内する情報であって、例えば、シールド掘削機に作用させる力点の位置(以下、単に、シールド掘削機における力点の位置などと称する)を示す情報である。シールド掘削機における力点の位置が制御されることにより、シールド掘削機を推進させる方向(推進方向)が制御されることになる。
【0023】
また、操作ガイダンスシステム1では、端末装置20は、操作ガイダンス装置10から取得したガイダンス情報に基づいて、ガイダンス画像を表示する。ガイダンス画像は、シールド掘削機のオペレータによる操作を支援する画像であって、シールド掘削機における力点の位置を示す画像である。オペレータが、ガイダンス情報に従ってシールド掘削機における力点の位置を操作することにより、シールド掘削機を所定の方向に推進させることが可能となる。
【0024】
操作ガイダンス装置10は、例えば、測定データ取得部11と、現力点位置取得部12と、力点目標推定部13と、力点操作目標生成部14と、ガイダンス情報出力部15と、測定データ記憶部16と、力点位置情報記憶部17と、学習済みモデル生成部18とを備える。
【0025】
測定データ取得部11は、測定データを取得する。測定データは、シールド掘削機が掘削する状況を測定したデータであって、例えば、水平偏差、垂直偏差、ローリング、ピッチング、左右実ストローク差、及び上下実ストローク差などを測定したデータである。水平偏差は、掘削指示書において指示された位置とシールド掘削機の位置との水平方向の偏差を示す。垂直偏差は、掘削指示書において指示された位置とシールド掘削機の位置との鉛直方向の偏差を示す。ローリングは、シールド掘削機の現在の姿勢のうち水平方向の方位を示す。ピッチングは、シールド掘削機の姿勢のうち鉛直方向の方位を示す。左右実ストローク差は、シールド掘削機を推進させる推進力の水平方向の差分(左右差)を示す。上下実ストローク差は、シールド掘削機を推進させる推進力の鉛直方向の差分(上下差)を示す。尤も、測定データは、少なくともシールド掘削機が掘削する状況を測定したデータであればよく、シールドジャッキの総推進力、地山や掘削土の土圧や水圧などを測定したデータであってもよい。
【0026】
現力点位置取得部12は、現在の力点の位置を取得し、取得した力点の位置を示す情報を力点位置情報記憶部17に記憶させる。現在の力点の位置とは、シールド掘削機における力点の位置であって、現在オン状態となっているシールドジャッキにおけるスキンプレートの面上の設置位置に基づいて検出される。例えば、スキンプレートの内周を囲む全てのシールドジャッキがオン状態である場合、力点の位置はスキンプレートの面の中心となる。スキンプレートの面の右側に設置されたシールドジャッキがオン状態である場合、力点の位置はスキンプレートの面の右側となる。
【0027】
力点目標推定部13は、機械学習の手法を用いて力点目標を推定する。機械学習の手法としては、決定木学習、ニューラルネットワーク、遺伝的プログラミング、サポートベクタマシンなどの一般的に用いられている技法のいずれを用いてもよい。以下では、力点目標推定部13が、学習済みモデルを用いて、力点目標を推定する場合を例に説明する。学習済みモデルは、例えば、学習済みモデル生成部18に記憶されるモデルである。
【0028】
学習済みモデルは、掘削の状況と、シールド掘削機における力点の位置との対応関係を学習したモデルである。掘削の状況は、掘削に関する情報であり、例えば掘削の際に測定データ取得部11により取得される測定データである。学習済みモデルは、例えば、様々な掘削作業において収集された、掘削の状況(学習データにおける入力)と力点の位置(学習データにおける出力)とが対応づけられた学習データを機械学習することにより生成される。学習済みモデルは、未学習の掘削の状況を示すデータが入力されると、学習済みのデータから類似する学習済みの掘削の状況を抽出する。そして、学習済みモデルは、抽出した掘削の状況に対応づけられている力点の位置を、未学習の掘削の状況に対応する力点の位置と推定する。
【0029】
力点目標推定部13が推定する力点目標は、シールド掘削機における力点の目標となる位置を示す情報であり、例えば、スキンプレートの面の何れかの位置を示す情報である。力点目標推定部13は、測定データ取得部11により取得された測定データを、学習済みモデルに入力して得られる出力を、当該測定データに対して推定される力点目標とする。力点目標推定部13は、推定した力点目標を示す情報を力点操作目標生成部14に出力する。
【0030】
力点操作目標生成部14は、力点目標推定部13により推定された力点目標を加工して、力点操作目標を生成する。力点操作目標は、オペレータが操作する、シールド掘削機における力点の目標である。
【0031】
力点操作目標は、例えば、位置ではなく、ある程度の領域をもつ範囲を示す情報である。つまり、力点目標推定部13は、力点操作目標として、オペレータが操作する際の目標となる力点の位置を、力点目標が示す力点の位置を含む領域で示す情報を生成する。これにより、力点目標推定部13がシールドジャッキによるオンオフの組合せでは一致させることが不可能な力点の位置が推定した場合であっても、シールドジャッキの組合せにより操作可能な範囲を含めて示すことができ、オペレータを混乱させないようにすることが可能である。
【0032】
力点操作目標生成部14は、力点操作目標を領域で示す場合、当該領域をコンター表示するようにしてもよい。コンター表示は、ある特定の量や度合いに応じた領域を輪郭により示す表示であって、例えば、地図における等高線、天気図における等圧線のような表示である。
【0033】
力点操作目標生成部14は、例えば、力点操作目標の領域を、力点目標の位置に達するまでの距離に応じてコンター表示する。この場合、力点操作目標の領域は、力点目標の位置を中心とした同心円状の領域である。或いは、力点操作目標生成部14は、シールド掘削機における現在の力点の位置と、力点目標の位置との関係に応じてコンター表示するようにしてもよい。この場合、力点操作目標の領域は、現在の力点の位置を中心として力点目標の方向に形成した扇型の領域である。また、力点操作目標生成部14は、シールドジャッキの組合せにより操作可能な力点の位置と、力点目標の位置との関係に応じてコンター表示するようにしてもよい。この場合、力点操作目標の領域は、シールドジャッキの組合せにより操作可能な力点の位置と力点目標の位置とを含めた領域である。
【0034】
また、力点操作目標生成部14は、力点操作目標として、力点目標への方向を示す場合、力点目標の位置に達するまでの距離に応じた表示を行うようにしてもよい。力点操作目標生成部14は、例えば、力点目標の位置に達するまでの距離に応じて矢印の長さや太さなどの大きさ、或いは色などを変えた情報を生成する。これにより、オペレータは、現在の力点の位置から、力点の位置を操作すべき方向と距離とを直観的に認識することが可能である。
【0035】
ガイダンス情報出力部15は、力点操作目標生成部14により生成された力点操作目標を示す情報を、オペレータの操作を案内するガイダンス情報として、端末装置20に出力する。以下では、ガイダンス情報が端末装置20に表示させる画像の情報である場合を例示して説明するが、ガイダンス情報は、文字を示す情報であってもよいし、音や音声などを示す情報などであってもよい。
【0036】
端末装置20は、例えば、通信部21と、表示部22と、制御部23とを備える。通信部21は、操作ガイダンス装置10と通信を行い、操作ガイダンス装置10からガイダンス情報を取得する。表示部22は、通信部21により取得されたガイダンス情報を表示する。制御部23は、端末装置20を統括的に制御し、例えば、通信部21により取得されたガイダンス情報を、表示部22に出力させる。
【0037】
ここで、ガイダンス情報として表示される画像について、
図2~
図4を用いて説明する。
図2~
図4は、実施形態の端末装置20に表示される画面の例を示す図である。
図2は従来の表示であり、
図3及び
図4は本実施形態の表示である。つまり、
図2では、力点目標推定部13により推定された力点の位置をそのまま表示された例を示しており、
図3及び
図4では推定された力点の位置が加工されて表示された例を示している。
【0038】
図2~
図4に示すように、表示部22に表示される画像220は、画像221~画像225により構成される。画像221は、リングナンバ(リングNo.)、推進モードなどを示す画像である。画像222は、水平方向(X軸方向)及び鉛直方向(Y軸方向)における力点の時系列変化を、実績値(設定値)と推定値(AI予測値)のそれぞれにより示す画像である。画像223は、水平偏差、垂直偏差、ローリング、ピッチング、左右実ストローク差、及び上下実ストローク差を示す画像である。画像224は、力点の位置の座標を、現在の実績値(設定値)と推定値(AI予測値)とにより示す画像である。画像225は、スキンプレートの面を模した座標系、及びスキンプレートの面を囲むようにして表示されたシールドジャッキそれぞれを示す画像である。また、画像225では、シールドジャッキそれぞれのオンオフ状態が示されている。
【0039】
図2に示すように、従来の表示では、画像225において、現在の実績値(設定値)P1と、推定値(AI予測値)P2のそれぞれが座標系に示されている。この場合、AI予測値P2が、シールドジャッキの組合せにより操作可能な力点の位置でない場合にはオペレータを混乱させてしまう場合があり得る。
【0040】
これに対し、本実施形態では、
図3に示すように、画像225において、現在の実績値(設定値)P1と、力点操作目標としての領域E1及びE2がコンター表示されている。或いは、本実施形態では、
図4に示すように、画像225において、現在の実績値(設定値)P1と、力点操作目標としての矢印G1が表示されている。本実施形態では、力点の推定値(AI予測値)P2を加工し、領域E1及びE2、又は矢印G1のような形式で表示することにより、オペレータが操作し易くなるようにしている。
【0041】
図5は、実施形態の操作ガイダンス装置10の動作例を示すフローチャートである。
まず、操作ガイダンス装置10は、測定データ取得部11により測定データを取得する(ステップS10)。測定データは、掘削に関して測定されたデータであって、力点目標を推定する際に学習済みモデルに入力されるデータである。
【0042】
次に、操作ガイダンス装置10は、力点目標推定部13により力点目標を推定する(ステップS11)。力点目標推定部13は、学習済みモデルに測定データを入力することにより得られる出力を、推定された力点目標とする。学習済みモデルは、測定データに対応する掘削の状況と、力点の位置との対応関係を学習したモデルである。
【0043】
次に、操作ガイダンス装置10は、力点操作目標生成部14により力点操作目標を生成する(ステップS12)。力点操作目標生成部14は、オペレータが操作し易くなるよう力点目標を加工して力点操作目標を生成する。力点操作目標生成部14は、例えば、力点目標推定部13により推定された力点の位置を含む一定の範囲を力点操作目標とする。或いは、力点操作目標生成部14は、オペレータが力点の位置を移動させる方向及び距離を力点操作目標とする。
【0044】
そして、操作ガイダンス装置10は、ガイダンス情報出力部15によりガイダンス情報を出力する(ステップS13)。ガイダンス情報出力部15は、力点操作目標生成部14により生成された力点操作目標を示す情報を、ガイダンス情報として出力する。
【0045】
以上説明したように、実施形態の操作ガイダンス装置10では、力点操作目標生成部14がAI(学習済みモデル)を用いて推定された力点目標を加工した情報を、ガイダンス情報出力部15がガイダンス情報として出力する。これにより、実施形態の操作ガイダンス装置10では、AIを用いて推定された力点目標が実際には直接的に操作できない内容であった場合であっても、オペレータが操作しやすいように加工することができるために、オペレータが操作しやすいガイダンス(案内)を行うことができる。
【0046】
また、実施形態の操作ガイダンス装置10では、力点目標推定部13は、力点目標としてシールド掘削機における力点の位置を推定し、力点操作目標生成部14は、力点操作目標として力点目標が示す位置を含む所定の範囲を示す情報を生成する。これにより、実施形態の操作ガイダンス装置10では、推定された力点の位置が、シールドジャッキの組合せでは操作できない位置であった場合に、力点操作目標として所定の範囲で示すことによりオペレータが操作しやすいガイダンス(案内)を行うことができる。
【0047】
また、実施形態の操作ガイダンス装置10では、力点目標推定部13は、力点目標としてシールド掘削機における力点の位置を推定し、力点操作目標生成部14は、力点操作目標として力点目標が示す位置を含む所定の範囲をコンター表示する情報を生成する。これにより、実施形態の操作ガイダンス装置10では、推定された力点の位置が、シールドジャッキの組合せでは操作できない位置であった場合に、力点操作目標として所定の範囲をコンター表示により示すことで、目標の度合いを色分けなどで示すことができ、オペレータが直観的に操作しやすくすることができる。
【0048】
また、実施形態の操作ガイダンス装置10では、力点目標推定部13は、力点目標としてシールド掘削機における力点の位置を推定し、力点操作目標生成部14は、力点操作目標として現在の力点の位置から、力点目標が示す位置への方向を示す情報を生成する。これにより、実施形態の操作ガイダンス装置10では、推定された力点の位置が、シールドジャッキの組合せでは操作できない位置であった場合に、力点操作目標として方向を示すことができるために、オペレータが直観的に操作しやすくすることができる。
【0049】
また、実施形態の操作ガイダンス装置10では、力点目標推定部13は、力点目標としてシールド掘削機における力点の位置を推定し、力点操作目標生成部14は、力点操作目標として現在の力点の位置から、力点目標が示す位置までの距離を示す情報を生成する。これにより、実施形態の操作ガイダンス装置10では、推定された力点の位置が、シールドジャッキの組合せでは操作できない位置であった場合に、力点操作目標として力点を移動させる距離を示すことができるために、オペレータが直観的に操作しやすくすることができる。
【0050】
なお、上述した実施形態では、力点操作目標として、一定の領域を示す範囲や矢印が生成される場合を例示して説明したが、これに限定されない。力点操作目標は、シールドジャッキのオンオフ操作により操作可能な力点の位置であってもよい。この場合、力点操作目標生成部14は、シールドジャッキのオンオフ操作により操作可能な力点の位置のうち、力点目標推定部13により力点目標として推定された力点の位置に最も近い位置を力点操作目標とする。
【0051】
また、上述した実施形態では、力点目標として力点の位置が推定される場合を例示して説明したが、これに限定されない。力点目標は、シールドジャッキそれぞれの推進力であってもよい。この場合、実際のシールドジャッキがオン又はオフの操作のみが可能である場合には、シールドジャッキの推進力を個々に操作することができないためにオペレータを混乱することになり兼ねない。このような場合に、力点操作目標生成部14が、推定されたシールドジャッキそれぞれの推進力を加工して、シールドジャッキそれぞれのオンオフ情報を生成するようにしてもよい。
【0052】
上述した実施形態における操作ガイダンス装置10が行う処理の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0053】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1…操作ガイダンスシステム、10…操作ガイダンス装置、11…測定データ取得部、12…現力点位置取得部、13…力点目標推定部、14…力点操作目標生成部、15…ガイダンス情報出力部、16…測定データ記憶部、17…力点位置情報記憶部、18…学習済みモデル生成部、20…端末装置、22…表示部