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特許7272854梁補強金具、梁補強構造および梁補強方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】梁補強金具、梁補強構造および梁補強方法
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/08 20060101AFI20230502BHJP
   E04G 21/32 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
E04C3/08
E04G21/32 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019081592
(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公開番号】P2020176494
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】316001674
【氏名又は名称】センクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】望月 久智
(72)【発明者】
【氏名】冨田 拓
(72)【発明者】
【氏名】林 郁実
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-162244(JP,A)
【文献】特開2007-138478(JP,A)
【文献】特開2009-167615(JP,A)
【文献】特開2015-200085(JP,A)
【文献】特開2016-211252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 3/04,3/06,3/08
E04G 21/32
E04B 1/24
F16L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブに貫通孔が形成された梁を補強するための梁補強金具であって、
貫通孔に挿入され、内部に配管が挿通される配管孔を有する筒状の本体部を具備し、
前記梁補強金具の少なくとも一方の端面または少なくとも一方の端部側の外周部の、全周ではなく周方向の一部のみに、ネットを掛けることが可能な切欠き部が形成されることを特徴とする梁補強金具。
【請求項2】
前記本体部の端部近傍には、径方向に突出するフランジ部が設けられ、
前記切欠き部は、前記フランジ部の端面または前記フランジ部の外周面に形成されることを特徴とする請求項1記載の梁補強金具。
【請求項3】
ウェブに貫通孔が形成された梁を補強するための梁補強金具であって、
貫通孔に挿入され、内部に配管が挿通される配管孔を有する筒状の本体部を具備し、
前記梁補強金具の少なくとも一方の端面または少なくとも一方の端部側の外周部に、ネットを掛けることが可能な切欠き部が形成され
前記切欠き部は、前記梁補強金具の一方の端面に開口し、
前記端面側から見た際に、前記切欠き部の内部空間の一部が、前記開口から見えず、前記開口の縁部がネットの係止爪として機能することを特徴とする梁補強金具。
【請求項4】
前記切欠き部の前記開口の縁部に形成される前記係止爪の向きが、対向する2方向に向けて形成されることを特徴とする請求項3記載の梁補強金具。
【請求項5】
前記切欠き部は、前記梁補強金具の一方の端面において、前記配管孔を挟んで一対形成され、
前記端面から見た際に、一対の前記切欠き部が一直線上に形成されることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の梁補強金具。
【請求項6】
前記切欠き部は、前記梁補強金具の外周部において、周方向に、全周ではなく周方向の一部のみに形成された溝であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の梁補強金具。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の梁補強金具を用いた梁補強構造であって、
前記本体部が、梁のウェブに形成された貫通孔に挿入されて前記梁に溶接され、
前記切欠き部にネットが掛けられていることを特徴とする梁補強構造。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の梁補強金具を用いた梁補強方法であって、
前記本体部を、梁のウェブに形成された貫通孔に挿入して前記梁に溶接し、
前記切欠き部にネットを掛けることを特徴とする梁補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造物を構成し、貫通孔を有する梁を補強するための梁補強金具、梁補強構造および梁補強方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築構造物の梁には配管や配線を通すために貫通孔が形成されることがある。この場合、貫通孔により、梁の曲げ耐力が低下する。この梁の曲げ耐力低下を防ぐため梁に梁補強金具を接合し、梁の補強を行っている。
【0003】
このような梁補強金具としては、例えば、リング状の部材であって、梁に形成された貫通孔に接合する梁補強金具がある(例えば特許文献1)。
【0004】
また、建築構造物を構築する際には、柱や梁に取り付けたフックに落下防止ネットを引っ掛けて、作業中に物や作業員が落下するのを防止している(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-167615号公報
【文献】特開2004-232351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の梁補強金具を用いて梁の補強を行い、前述した落下防止ネットを柱や梁に設けたフックに引っ掛ける場合、現場で柱や梁にフックを取り付けたりネットの使用後にフックを撤去したりするため、作業工程が増える。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、梁の補強と同時にネットの取り付け準備が可能な梁補強金具、梁補強構造および梁補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、ウェブに貫通孔が形成された梁を補強するための梁補強金具であって、貫通孔に挿入され、内部に配管が挿通される配管孔を有する筒状の本体部を具備し、前記梁補強金具の少なくとも一方の端面または少なくとも一方の端部側の外周部の、全周ではなく周方向の一部のみに、ネットを掛けることが可能な切欠き部が形成されることを特徴とする梁補強金具である。
【0009】
前記本体部の端部近傍には、径方向に突出するフランジ部が設けられ、前記切欠き部は、前記フランジ部の端面または前記フランジ部の外周面に形成されてもよい。
【0010】
第2の発明は、ウェブに貫通孔が形成された梁を補強するための梁補強金具であって、貫通孔に挿入され、内部に配管が挿通される配管孔を有する筒状の本体部を具備し、前記梁補強金具の少なくとも一方の端面または少なくとも一方の端部側の外周部に、ネットを掛けることが可能な切欠き部が形成され、前記切欠き部は、前記梁補強金具の一方の端面に開口し、前記端面側から見た際に、前記切欠き部の内部空間の一部が、前記開口から見えず、前記開口の縁部がネットの係止爪として機能することを特徴とする梁補強金具である。
【0011】
前記切欠き部の前記開口の縁部に形成される前記係止爪の向きが、対向する2方向に向けて形成されてもよい。
【0012】
前記切欠き部は、前記梁補強金具の一方の端面において、前記配管孔を挟んで一対形成され、前記端面から見た際に、一対の前記切欠き部が一直線上に形成されてもよい。
【0013】
前記切欠き部は、前記梁補強金具の外周部において、周方向に、全周ではなく周方向の一部のみに形成された溝であってもよい。
【0014】
第1または第2の発明によれば、切欠き部にネットを掛けることが可能であるため、梁補強金具を梁に溶接することによって梁の補強と同時にネットの取り付け準備を行うことができる。このため、別途のネット用のフック等の設置を減らすことができる。
【0015】
また、本体部の端部近傍に径方向に突出するフランジ部を設ければ、切欠き部を形成することが可能な範囲が広くなる。また、梁補強金具を貫通孔に挿入する際にフランジ部によって軸方向の位置決めを行うことができる。
【0016】
また、切欠き部を梁補強金具の端面に形成する場合において、切欠き部の開口縁部を、ネットを掛けることが可能な係止爪とすることで、より確実にネットの脱落を抑制することができる。
【0017】
この際、係止爪を上下の2方向に向けて形成することで、梁補強金具の設置の向きを間違うことがない。
【0018】
また、梁補強金具の一方の端面において、配管孔を挟んで一直線上に一対の切欠き部を形成することで、ネットを複数個所に掛けることができる。
【0019】
また、梁補強金具の外周面に、溝状の切欠き部を形成しても、溝にネットを掛けることができる。
【0020】
の発明は、第1の発明の梁補強金具を用いた梁補強構造であって、前記本体部が、梁のウェブに形成された貫通孔に挿入されて前記梁に溶接され、前記切欠き部にネットが掛けられていることを特徴とする梁補強構造である。
【0021】
の発明によれば、ネットを掛けることが可能な切欠き部が形成された梁補強金具を用いるので、梁補強金具を梁に溶接することによって梁の補強と同時にネットの取り付け準備を完了させて、切欠き部にネットを掛けることができる。
【0022】
の発明は、第1の発明の梁補強金具を用いた梁補強方法であって、前記本体部を、梁のウェブに形成された貫通孔に挿入して前記梁に溶接し、前記切欠き部にネットを掛けることを特徴とする梁補強方法である。
【0023】
の発明によれば、梁補強金具に切欠き部が形成されているので、梁補強金具を梁に溶接することによって梁の補強と同時にネットの取り付け準備が完了し、切欠き部にネットを掛けることができるため、作業が容易である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、梁の補強と同時にネットの取り付け準備が可能な梁補強金具、梁補強構造および梁補強方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】梁補強金具1を示す斜視図。
図2】(a)は梁補強金具1を示す正面図、(b)は梁補強金具1を示す側面図。
図3】梁補強構造10を示す斜視図であり、(a)は背面側を示す図、(b)は正面側を示す図。
図4】梁補強構造10を示す正面図。
図5】(a)、(b)は、切欠き部の他の形態を示す図。
図6】(a)~(d)は、切欠き部のさらに他の形態を示す図。
図7】(a)は梁補強金具1aを示す背面図、(b)は梁補強金具1aを示す側面図。
図8】梁補強金具1bを示す斜視図。
図9】(a)は梁補強金具1bを示す正面図、(b)は梁補強金具1bを示す側面図。
図10】梁補強構造10aを示す正面図。
図11】(a)は梁補強金具1bの使用状態の断面図、(b)は梁補強金具1cの使用状態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態にかかる梁補強金具1を示す斜視図であり、図2(a)は正面図、図2(b)は側面図である。梁補強金具1は、本体部3、フランジ部5等から構成される。梁補強金具1は、ウェブに貫通孔が形成された梁を補強するための部材である。
【0027】
梁補強金具1は、例えば鋼材やステンレス鋼などの金属製の部材である。梁補強金具1は、全体としてリング状の部材であり、配管等が貫通する配管孔4を有している。本体部3は、後述する梁の貫通孔に挿入される筒状の部位である。本体部3の一方の端部近傍には、フランジ部5が設けられる。フランジ部5は、本体部3に対して外径が大きい部位であり、本体部3の径方向に突出する。本体部3及びフランジ部5の内径は略同一であり、内周面には凹凸は形成されない。
【0028】
梁補強金具1の一方の端面(フランジ部5の端面)には、切欠き部7が設けられる。なお、本発明において端面とは、梁補強金具1の軸方向の両端部におけるリング状の面を言う。
【0029】
切欠き部7は、梁補強金具1の一方の端面において、配管孔4を挟んで一対形成される。この際、端面から見た際に、一対の切欠き部7が一直線上に形成される。
【0030】
また、切欠き部7は、奥行き方向(梁補強金具1の軸方向)に対して略L字状に屈曲して形成される。すなわち、切欠き部7は、梁補強金具1の一方の端面に開口し、当該端面側から見た際に、切欠き部7のL字状に屈曲した内部空間の一部が、開口から見えないように形成される。切欠き部7の内部を開口部よりも下側に向けて屈曲させることで、開口部の縁部を相対的に上方に向けて突出させることができ、当該部位を後述する落下防止用のネットを掛けることが可能な係止爪6として機能させることができる。
【0031】
次に、梁補強金具1を用いた梁補強構造10について説明する。図3(a)は、梁補強構造10をウェブ15の背面15b側から見た斜視図であり、図3(b)は、梁補強構造10をウェブ15の正面15a側から見た斜視図である。また、図4は、梁補強構造10の正面図である。
【0032】
梁11は、ウェブ15の上下にフランジ13を有するH鋼である。ウェブ15には、配管等を通すための貫通孔17が形成される。梁補強金具1は貫通孔17に配置される。前述したように、貫通孔17には、梁補強金具1の本体部3が挿入される。フランジ部5は、貫通孔17の縁部近傍のウェブ15に面接触する。これにより、貫通孔17の縁にバリ等がある場合にも、梁補強金具1で隠すことができる。
【0033】
梁補強金具1は、係止爪6が上方に向くように配置される。すなわち、側面視において、L字型の切欠き部7が、開口側から下側に向けて屈曲するように梁補強金具1が配置される。この際、梁補強金具1の端面側から見て、一対の切欠き部7が、略水平方向に一直線上に配置される。
【0034】
梁補強金具1は、ウェブ15に対して溶接によって接合される。本実施形態では、フランジ部5の外周部が、ウェブ15に対して全周にわたって溶接される。すなわち、溶接部19は、フランジ部5の外周部とウェブ15の正面15aとの間に形成される。
【0035】
梁補強構造10では、梁補強金具1の切欠き部7に落下防止用のネット9が掛けられる。また、梁11はウェブ15の背面15b側にフック8が設けられ、フック8にも落下防止用のネット9が掛けられる。切欠き部7に掛けられたネット9、フック8に掛けられたネット9は、それぞれ梁11の下側のフランジ13の縁部を覆うように配置され、作業中に梁11の側方に物や作業員が落下するのを防止する。
【0036】
次に、梁補強金具1を用いた梁補強方法(梁補強構造10の施工方法)について説明する。まず、梁11をウェブ15の正面15a側が上向きになるように作業ヤードに仮置きし、梁補強金具1の本体部3を、梁11のウェブ15の正面15a側から貫通孔17に挿入する。なお、梁補強金具1は、係止爪6が梁11の上側のフランジ13の方向に向くように配置する。この際、梁補強金具1のフランジ部5は、梁11に設けられた貫通孔17よりも大きな外径を有している。また、本体部3は、梁11に設けられた貫通孔17の径よりも小さい外径を有している。このため、本体部3を貫通孔17に挿入すると、フランジ部5をウェブ15に接触させることができる。すなわち、フランジ部5は梁補強金具1を貫通孔17に挿入する際、軸方向の位置決めに使われる。
【0037】
梁補強金具1の位置が決まったら、ウェブ15の正面15a側からフランジ部5の外周部とウェブ15の正面15aとの間に溶接部19を形成して、梁補強金具1をウェブ15に固定する。溶接は例えば被覆アーク溶接で行われる。
【0038】
梁補強金具1を梁11に溶接したら、梁11を現場に設置する。すなわち図示しない柱との接合部に梁11を接合する。そして、梁補強金具1に形成された切欠き部7(係止爪6)に落下防止用のネット9を掛ける。また、ウェブ15の背面15b側に取り付けられたフック8にもネット9を掛ける。フック8はウェブ15の背面15bにあらかじめ取り付けておいてもよいし、現場で取り付けてもよい。
【0039】
以上により、梁補強構造10を得ることができる。梁補強金具1によって、梁11の貫通孔17の近傍における曲げ耐力を向上させることができる。なお、溶接は、ウェブ15の正面15a側からフランジ部5とウェブ15とを溶接してもよく、ウェブ15の背面15b側から本体部3とウェブ15とを溶接してもよい。
【0040】
以上、本実施の形態によれば、梁補強金具1のフランジ部5の端面に切欠き部7が形成されているので、落下防止用のネット9を掛けることが可能である。このため、梁補強金具1を梁11に溶接することにより梁11の補強と同時にネット9の取り付け準備を完了することができる。また、現場に梁11を設置したらすぐに切欠き部7にネット9を掛けて落下防止対策を行うことができる。
【0041】
また、切欠き部7が、配管孔4を挟んで一対形成されるため、ネット9を2カ所に掛けることができる。このように、ネット9を複数個所の切欠き部7に掛けることで、1つの切欠き部7にかかる重量を分散させるとともにネット9を広げて設置することができる。また、一対の切欠き部7が一直線上に形成されるため、切欠き部7の形成が容易である。
【0042】
なお、本実施形態において、切欠き部7の側面視における形状を略L字状としたが、これには限られない。ネット9を掛けることが可能な形状であれば、切欠き部7の形状は特に限定されない。
【0043】
例えば、図5(a)に示すように、屈曲部を形成せずに、一直線上の切欠き部7aでもよい。この場合には、切欠き部7aの形成方向を、梁補強金具の軸方向に対して斜めに形成することで、端面側から見た際に、切欠き部7aの内部空間の一部が開口から見えず、開口の縁部を、上方に向けた係止爪6として機能させることができる。
【0044】
また、図5(b)に示すように、一部にのみ傾斜面を有する切欠き部7bであってもよい。この場合にも、切欠き部7bの内部空間に、梁補強金具の軸方向に対して斜面を形成することで、端面側から見た際に、切欠き部7bの内部空間の一部が開口から見えず、開口の縁部を、上方に向けた係止爪6として機能させることができる。
【0045】
なお、上述した各種の切欠き部を用いた梁補強金具1は、係止爪6が上を向くように梁補強金具1を配置する必要がある。すなわち、前述した梁補強金具1は、設置する際に、上下方向の向きを合わせる必要がある。
【0046】
これに対し、切欠き部の形状によって、上下方向の向きをなくしてもよい。図6(a)~図6(b)に示す切欠き部は、いずれの切欠き部も、上下方向に略対称な形状であり、切欠き部の内部空間に対して、開口部が狭くなるように形成される。例えば、図6(a)に示す切欠き部7cは、断面が略T字状であり、上下方向に屈曲する。このため、切欠き部7cの開口の縁部の上下に係止爪6が形成される。すなわち、係止爪6の向きが、対向する2方向に向けて形成される。
【0047】
同様に、図6(b)に示す切欠き部7dは、2方向に斜めに略V字状に形成される。また、図6(c)に示す切欠き部7eは、断面が略台形に形成され、上下に斜面が形成される。また、図6(d)に示す切欠き部7fは、断面が略円形であり、直径よりも小さな開口部を有する。
【0048】
このようにすることで、梁補強金具の上下方向を気にすることなく使用することができる。以上のように、切欠き部の形状は、特に限定されず、ネット9を掛けることが可能であれば、いずれの形態であってもよい。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図7(a)は、梁補強金具1aの背面図であり、図7(b)は梁補強金具1aの側面図である。なお、以下の説明において、梁補強金具1及び梁補強構造10と同様の機能を奏する構成には、図1図6と同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0050】
梁補強金具1aは、切欠き部7は、梁補強金具1aの両方の端面に形成される点で梁補強金具1と構成が異なる。すなわち、切欠き部7が、フランジ部5の端面と、本体部3の端面とにそれぞれ形成される。なお、切欠き部7に代えて、他の形態の切欠き部を適用してもよい。
【0051】
フランジ部5に形成される切欠き部7も、本体部3に形成される切欠き部7も、いずれも配管孔4を挟んで一対形成され、それぞれの端面から見た際に、一対の切欠き部7が一直線上に形成される。なお、切欠き部7の配置と、係止爪6の向きは、梁補強金具1aの両端面において同一である。すなわち、一方の端面側の係止爪6を上方に向けると、他方の端面側の係止爪6も上方に向けることができる。
【0052】
梁補強金具1aを梁11に固定すると、梁11の背面15b側には、本体部3の先端部の一部がウェブ15から突出する。切欠き部7は、ウェブ15からの突出部に形成される。すなわち、背面15b側において、切欠き部7が、ウェブ15に隠れることがない。
【0053】
梁補強金具1aを用いることで、いずれの端面側においても、係止爪6が上方に向くように梁補強金具1aが配置され、切欠き部7にネット9を掛けることができる。このため、図3(a)に示す梁11のウェブ15の背面15b側においても切欠き部7にネット9が掛けられる。したがって、フック8の使用量を削減し、作業を短縮することができる。
【0054】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、梁補強金具1aのように、切欠き部7を本体部3の端面(フランジ部5が設けられない側の端面)にも形成することで、梁の補強と同時にウェブ15の背面15b側においてもネットの取り付け準備を完了することができる。
【0055】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図8は、第3の実施形態にかかる梁補強金具1bを示す斜視図であり、図9(a)は梁補強金具1bの正面図、図9(b)は梁補強金具1bの側面図である。
【0056】
梁補強金具1bのフランジ部5の外周部には、周方向に溝状の切欠き部7gが形成される。すなわち、フランジ部5の厚み方向の略中央部には、外径が小さくなる溝が形成される。なお、図示した例では、切欠き部7gは、梁補強金具1bの周方向の約半周にわたって形成されるが、全周に形成されてもよく、または、1/3周程度であってもよい。
【0057】
図10は、梁補強金具1bを用いた梁補強構造10aを示す正面図であり、図11(a)は、部分断面図である。図示したように、梁補強金具1bは、切欠き部7gが形成されている側を上方に向けて梁11に固定される。なお、溶接部19が、フランジ部5側に形成される例を示すが、本体部3とウェブ15とを溶接してもよく、又は、その両方で溶接してもよい。梁補強金具1bを梁11に固定した後、切欠き部7g(溝)にネット9を掛けることで、ネット9を設置することができる。
【0058】
なお、図11(b)に示す梁補強金具1cのように、溝状の切欠き部7gを本体部3の端部側にも形成し、ウェブ15の両側において、ネット9を切欠き部7gにかけてもよい。この場合にも、本体部3に形成される切欠き部7gは、ウェブ15に隠れずに、ウェブ15から突出する部位に形成される。
【0059】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、梁補強金具の少なくとも一方の端面または少なくとも一方の端部側の外周部に、ネット9を掛けることが可能な切欠き部を形成することで、ネット9の設置が容易となる。
【0060】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0061】
例えば、各実施形態は組み合わせることができることは言うまでもない。また、各実施形態では梁補強金具を本体部3とフランジ部5とで構成したが、フランジ部5を設けなくてもよい。すなわち梁補強金具を本体部3のみで構成してもよい。この場合、切欠き部は本体部3の一方の側の端面や外周面などに形成される。
【0062】
また、梁補強金具の本体部3は円筒状に限らない。例えば貫通孔が角形である場合、角筒状の本体部の端部に切欠き部が形成された梁補強金具を用いてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1、1a、1b、1c………梁補強金具
3………本体部
4………配管孔
5………フランジ部
6………係止爪
7、7a、7b、7c、7d、7e、7f、7g………切欠き部
8………フック
9………ネット
10、10a………梁補強構造
11………梁
13………フランジ
15………ウェブ
15a………正面
15b………背面
17………貫通孔
19………溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11