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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/53 20060101AFI20230502BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20230502BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20230502BHJP
   A61F 13/56 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
A61F13/53 200
A61F13/532 200
A61F13/15 143
A61F13/56 110
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019096721
(22)【出願日】2019-05-23
(65)【公開番号】P2020188981
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 幸江
(72)【発明者】
【氏名】山本 耕裕
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-217077(JP,A)
【文献】特開2013-255567(JP,A)
【文献】特表2019-505243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する前後方向と幅方向を有する吸収性コアを有する吸収体と、前記吸収体を間に介して対向配置される表面シート及び裏面シートとを具備する吸収性物品であって、
前記裏面シートの着用者の肌側に位置する肌側面と対向する非肌側面側に配された賦香領域と、
前記裏面シートの非肌対向面に配された着用者の着衣に対して前記吸収性物品を固定する複数の固定手段と
を具備し、
前記吸収性コアは、前記前後方向の両端部側に位置する前方コア部及び後方コア部と、前記前方コア部及び前記後方コア部の間に位置し、前記前方コア部及び前記後方コア部よりも幅が狭い領域を備えた中間コア部とを有し、
前記中間コア部は、前記幅方向の中央部に前記中間コア部の幅方向両側部よりも坪量の高い高坪量部を有し、
前記後方コア部では、前記幅方向の中央部が前記幅方向両側部よりも高い坪量を有し、
前記賦香領域は、平面視で複数の前記固定手段間に配される
吸収性物品。
【請求項2】
前記後方コア部は、前記幅方向の中央部に、周囲よりも低坪量の縦溝部を少なくとも1つ有する
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記後方コア部は、前記幅方向の中央部に、周囲よりも低坪量の横溝部を少なくとも1つ有する
請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記固定手段は、前記幅方向を二分する前記前後方向に延びる中心線上に位置せず、前記中心線を挟んでその両側に一対存在し、
前記固定手段は、前記吸収性コアの中間コア部では、前記吸収性コアの前記幅方向側縁を超えて外方に存在しない
請求項1から3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン等のように、下着の内側に配して使用するタイプの吸収性物品は、経血等の液状の排泄物を吸収するための吸収性コアを備えている。例えば特許文献1に記載される吸収性コアには、排泄部対向部から後方部の一部に亘って吸収性コアの長手方向に長い形状の突出部が設けられ、また、着用者の肌に沿うように溝が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-112235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生理用ナプキン等の吸収性物品は、その後方部が着用者の臀部に対応して着用される。吸収性物品の後方部では、臀部等で圧縮されて臀部から離れるように凹変形して吸収性物品と肌との間に隙間が生じやく、液漏れが生じやすい。
【0005】
本発明の課題は、後方部の液漏れを抑制することができる吸収性物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吸収性物品は、吸収性コアを有する吸収性を具備する。
上記吸収性コアは互いに直交する前後方向と幅方向を有する。
上記吸収性コアは、上記前後方向の両端部側に位置する前方コア部及び後方コア部と、上記前方コア部及び上記後方コア部の間に位置し、上記前方コア部及び上記後方コア部よりも幅が狭い領域を備えた中間コア部とを有する。
上記中間コア部は、上記幅方向の中央部に上記中間コア部の幅方向両側部よりも坪量の高い高坪量部を有する。
上記後方コア部では、上記幅方向の中央部が上記幅方向両側部よりも高い坪量を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品によれば、吸収性コアの後方部の液漏れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る吸収性物品を示す斜視図である。
図2】上記吸収性物品をXY平面に沿って引き延ばした態様を示す平面図であり、表面シート側から平面視した図である。
図3】上記吸収性物品をXY平面に沿って引き延ばした態様を示す平面図であり、裏面シート側から平面した図である。
図4図2のIV-IV線で切断した吸収性物品の中間領域の断面図であり、吸収性物品に剥離紙が設けられた態様を示す。
図5図2のV-V線で切断した吸収性物品の後方領域の断面図であり、吸収性物品に剥離紙が設けられた態様を示す。
図6】上記吸収性物品の一部を構成する吸収性コアの平面図である。
図7】着用者が上記吸収性物品を着用した際の吸収性コアの後方部の形状を説明するための概略図である。
図8】着用者が上記吸収性物品を着用した際の吸収性物品の後方部の形状を示す概略図であり、(A)は吸収性物品を好ましい位置で着用した時の図であり、(B)は吸収性物品を幅方向にずれて着用した時の図である。
図9】吸収性コアの変形例を示す吸収性コアの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[ナプキンの全体構成]
図1及び図2では、X軸方向が吸収性物品1の前後方向、Y軸方向が幅方向、Z軸方向が上下方向(厚み方向)にそれぞれ対応し、X軸、Y軸、Z軸は互いに直交する。以下、図2に示す態様において吸収性物品1を説明する。
本実施形態の吸収性物品1は、生理用ナプキンとして構成され、以下、ナプキン1と称する。本実施形態のナプキン1は、就寝時に使用されてもよく、例えば前後方向に沿って30cm以上の長さを有していてもよい。
【0010】
図1及び図2に示すように、ナプキン1は、本実施形態において、本体Mと、一対のウイング部Wと、一対の立体ガードGと、一対の後方フラップ部Fと、を備える。
本体Mは、前後方向に延び、着用時に着用者の下着(着衣)の内面(被着用面)に固定される。本体Mは、後述する吸収体11を有しており、着用者の経血等の液状物(以下、「液」とも称する)を吸収する機能を有する。
本体Mは、前後方向に沿って区分された、前方領域M1と、中間領域M2と、後方領域M3とを有する。
前方領域M1は、中間領域M2の前方(着用者の腹側)に配置される領域であり、着用時に着用者の排泄部の前方に対向するように構成される。
中間領域M2は、着用時に着用者の排泄部に対向するように構成される。中間領域M2は、前後方向において後述するウイング部Wの全長と重なる領域である。なお、中間領域M2は、図示のように本体Mの前方寄りに位置してもよいし、本体Mの中央部に位置してもよい。
後方領域M3は、中間領域M2の後方(着用者の背側)に配置される領域であり、着用時に着用者の排泄部の後方に対向するように構成される。
【0011】
一対のウイング部Wは、中間領域M2において、本体Mを挟んで幅方向に互いに対向し、幅方向の外側に大きく突出するように構成される。ナプキン1において一対のウイング部Wが幅方向に大きく突出する起点を基部Waとする。
ウイング部Wは、着用時に下着を挟んで本体Mと対向するように基部Wa付近から折り曲げられ、着用者の下着の外面に固定される。ウイング部Wは、着用中におけるナプキン1の位置ずれを防止し、ナプキン1外部への液の漏れを防止する。
【0012】
立体ガードGは、本体Mの幅方向Y周縁に設けられ、前後方向Xに延びるように配置される。立体ガードGは、着用中に厚み方向に起立し、幅方向の液の漏れを防止することができる。なお、「厚み方向に起立する」とは、着用者側に向かって起立することを意味する。
【0013】
後方フラップ部Fは、後方領域M3の幅方向の外方に膨出するように構成され、着用時に着用者の下着の内面の臀部に面する領域に着用される。これにより、後方フラップ部Fは、後方領域M3の変位を防止し、後方領域M3による後ろ漏れ防止機能をサポートすることができる。なお、ナプキン1は、後方フラップ部Fを有さない構成でもよい。
【0014】
[ナプキンの各部の構成]
(本体)
図2図5に示すように、本体Mは、Z軸方向上方の第1の主面2aと、第1の主面2aの反対側のZ軸方向下方の第2の主面3aとを有し、吸収体11の吸収性コア20を含む。第1の主面2aは使用時に着用者側に対向する面であり、第2の主面3aは下着側に対向する面である。
本体Mは、裏面シート3と、吸収体11と、表面シート2とが積層された構成を有する。本体Mは、吸収体11と表面シート2とを一体化する圧搾溝6を有する。尚、図4及び図5においては、便宜的に各構成の縮尺を異ならせて図示しており、実際には、後述する吸収性コア20に対して、裏面シート3、表面シート2、後述するコアラップシート30、固定手段としての粘着部5、接着剤Bの厚みは薄い。また、図4及び図5において、後述する賦香領域Kが設けられる位置を説明するために、便宜的に厚みをもたせて賦香領域Kを図示しており、実際には賦香領域Kの厚みはほぼない。
【0015】
吸収体11は、吸収性コア20とコアラップシート30とを有する。
吸収性コア20は、液を吸収及び保持する機能を有する。吸収性コア20は、例えば、パルプ繊維等の親水性繊維で構成された繊維集合体で形成されてもよいし、当該繊維集合体に吸水性ポリマーを保持させた構成を有していてもよい。
コアラップシート30は、吸収性コア20を被覆し、例えば吸収性コア20の形状を保持する機能等を有する。コアラップシート30は、例えばティッシュペーパーのような薄く柔らかい紙や液透過性の不織布等で形成される。
コアラップシート30は、吸収性コア20の各部を被覆するコア被覆部と、吸収性コア20の括れ領域を被覆する一対の括れ被覆部34とを有する。図4に示すように、一対の括れ被覆部34は、吸収性コア20が非存在の領域に設けられ、コアラップシート30が二重に重なった形状を有する。
コアラップシート30は例えば被覆前の形状が略矩形状を有し、図4及び図5に示すように、吸収性コア20の肌側面20a、非肌側面20b、幅方向Yにおける両側端縁を覆うように吸収性コア20を覆ったときに対向する一対の端部が互いに重なりあって非肌側面20b側に位置するように配置される。尚、ここでは、コアラップシート30が2枚重なった部分は非肌側面20b側に位置する例をあげたが、肌側面20a側に位置してもよい。
【0016】
表面シート2は、液透過性のシート材として構成され、吸収体11上に配置される。表面シート2は、本体Mにおいてナプキン1のZ軸方向上方の第1の主面2aを構成する。
表面シート2には、圧搾溝6が形成されている。
圧搾溝6は、吸収体11及び表面シート2を圧搾加工することによって形成された線状溝として構成される。圧搾溝6は、図1及び2に示すように本体Mを周回するように構成される。
【0017】
裏面シート3は、吸収体11を挟んで表面シート2と厚み方向に対向して配置される。裏面シート3は、ナプキン1のZ軸方向下方の第2の主面3aを構成する。裏面シート3は、例えば周縁部において、表面シート2及びサイドシート4と接着剤、熱シール等によって接合される。
【0018】
裏面シート3の第2の主面3aには、固定手段としての粘着部5が設けられている。
粘着部5は、裏面シート3の外面に設けられ、ナプキン1を下着に対して固定させる機能を有する。各粘着部5は、例えば、裏面シート3に所定のパターンで粘着剤を塗工することにより形成される。粘着部に用いられる粘着剤として、好ましくは、ゴム系、オレフィン系、エチレン酢酸ビニル(EVA)系等のホットメルト粘着剤が用いられる。
【0019】
粘着部5は、例えば、本体Mに設けられる本体粘着部51と、ウイング部Wに設けられるウイング粘着部52と、後方フラップ部Fに設けられる後方フラップ粘着部53を有する。着用時、本体粘着部51によって本体Mは着衣の肌側面に固定される。ウイング粘着部52によって折り曲げられたウイング部Wは下着の外面に固定される。後方フラップ粘着部53によって後方フラップ部Fは着衣の肌側面に固定される。
【0020】
図3図5に示すように、裏面シート3の非肌対向面側である第2の主面3aには香料が配された賦香領域Kが配される。
図4及び図5に示すように、使用前の状態のナプキン1には、本体粘着部51を覆う剥離紙35が設けられている。賦香領域Kは剥離紙35に形成される、ナプキン1に剥離紙35を配することにより、剥離紙35に設けられた賦香領域Kに含まれる香料が裏面シート3側に移る。この移り香によって、ナプキン1に賦香領域Kが形成され、剥離紙35が剥離されてもナプキン1から香料の香りがするようになっている。
【0021】
剥離紙35への賦香領域Kの形成は、例えば、使用される香料を適当な溶媒(例えば水、エタノール、低分子炭化水素類、多価アルコール類、液体LPGガス、ジメチルエーテル等)に希釈したものや原液そのものを塗布、噴霧又は含浸させて塗工することにより行われる。
香料としては、大気圧化で香気を大気中に蒸散し得るものであればよく、常温常圧の環境下で、その香気を知覚し得る通常の香料を特に制限なく用いることができ、当該技術分野において従来用いられてきたものと同様のものを用いることができる。例えば、香料としては、沸点が約250℃以下の高揮発性香料成分、又は沸点が約250℃~約300℃の中揮発性香料成分が好ましく用いられる。
尚、裏面シート3の第2の主面3aに香料を直接塗工して賦香領域Kを形成してもよい。
【0022】
本実施形態では、賦香領域Kが裏面シート3の非肌側面側に配されているため、ナプキン1の表面側(主面2a側)に接する着用者の肌まで香料の刺激が到達しにくく、肌に優しいナプキン1となっている。
【0023】
(ウイング部)
図4及び図5に示すように、ウイング部Wは、裏面シート3とサイドシート4とが積層された構成を有し、追加的に、表面シート2が全体または一部に積層された構成でも良い。
図2に示すように、サイドシート4は、表面シート2を挟んで幅方向に相互に対向し、ナプキン1の幅方向周縁部に配置される。サイドシート4は、ウイング部W及び後方フラップ部Fにおいてナプキン1の表面を構成する外面4aを含む。
サイドシート4は、不織布や樹脂製等のフィルムで形成することができる。サイドシート4は、液防漏性を有するものが好ましく、具体的には、液不透過性、撥水性及び透湿性等の機能を有することが好ましく、積層構造でも、単層構造でもよい。
一対のウイング部Wは、後述する吸収性コア20の中間コア部22を挟んで幅方向で互いに対向する。
【0024】
(立体ガード)
立体ガードGは、本実施形態においてサイドシート4で構成される。
図2図4及び図5に示すように、立体ガードGは、折返し領域41と、固定端部42と、弾性部材43とを有する。
【0025】
折返し領域41は、サイドシート4における幅方向外側に折り返された部分である。
固定端部42は、立体ガードGの幅方向内側の端部であり、第1の主面2a(表面シート2)に接合される立体ガードGの基部である。固定端部42は、本実施形態において接着剤Bを用いて主面2aに接合される。
【0026】
弾性部材43は、折返し領域41に配置され、本実施形態において長手方向に伸縮可能な複数の糸状弾性部材を含む。弾性部材43は、XY平面に引き延ばされた状態のサイドシート4に、長手方向に伸長された状態で取り付けられる。これにより、着用時に、弾性部材43が長手方向に収縮して主面2aが緩やかに凹むように本体Mが湾曲し、折返し領域41が厚み方向に起立することができる。折返し領域41のZ軸方向上方を向く面は、着用者の肌と当接し得る起立面である。
【0027】
(後方フラップ部)
図5に示すように、後方フラップ部Fは、裏面シート3とサイドシート4とが積層された構成を有し、追加的に、表面シート2が全体または一部に積層された構成でも良い。後方フラップ部Fには、吸収性コア20は存在しない。
ウイング部Wと後方フラップ部Fとは、共通の裏面シート3及びサイドシート4から構成され、前後方向で連なっている。
【0028】
[吸収性コアの構成]
(吸収性コアの全体構成)
吸収性コア20は、パルプなどの繊維材料が積繊されてなる繊維集合体であり、積繊装置を用いて製造することができる。吸収性コア20を構成する繊維材料として主に用いられるのは親水性繊維である。親水性繊維としては、化学繊維に代表される、本来的に疎水性の繊維を親水化処理したものと、木材パルプに代表される、本来的に親水性の繊維とが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、吸収性コア20は、繊維材料に加えてさらに吸水性ポリマーを含有していても良い。これにより、吸収性コア20の液保持力を高めることができる。吸水性ポリマーとしては、一般に球状、塊状、俵状又は不定形のいずれでもよい。吸水性ポリマーとしては、この種の吸収性物品において使用可能なものを特に制限なく用いることができ、例えば、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合物又は共重合物を用いることができる。
【0029】
図4及び図5に示すように、吸収性コア20は、着用者の肌面側に位置する肌側面20aと、着用者の下着側に位置する非肌側面20bとを有する。
図6に示すように、吸収性コア20は、前方コア部21と、中間コア部22と、後方コア部23と、を有する。前方コア部21、中間コア部22及び後方コア部23は、前後方向Xに沿って並んでいる。
中間コア部22は、前方コア部21及び後方コア部23の幅方向Yにおける長さよりも幅が狭い領域を備える。つまり、吸収性コア20は、中間コア部22において幅方向Yに括れた平面形状を有する。
中間コア部22は、ナプキン1の着用時に着用者の排泄部である膣口に対向配置される排泄部対向部である。前方コア部21は中間コア部22よりも着用者の前側(腹側)寄りに配され、後方コア部23は中間コア部22よりも着用者の後側(背中側)寄りに配される。本実施形態のナプキン1では、一対のウイング部Wは、中間コア部22を挟んで幅方向Yに互いに対向して配されている。
ここでは、前後方向Xにおいて、吸収性コア20の幅方向Yにおける長さが最も狭くなる幅狭領域を中間コア部22とする。
【0030】
図6に示すように、吸収性コア20は、前後方向Xに沿って延びる複数の縦溝部27及び幅方向Yに沿って延びる複数の横溝部28と、周縁溝部26を有する。吸収性コア20は、複数の縦溝部27、複数の横溝部28及び周縁溝部26により、複数のブロック部29に分割されている。
縦溝部27、横溝部28及び周縁溝部26は、ブロック部29よりも低い坪量を有し、ブロック部29の上面から厚み方向Z下方に向かって形成された溝で構成される。つまり、縦溝部27及び横溝部28は、ブロック部29よりも剛性が低い領域となる。これにより、ナプキン1に外力が付加された場合に、吸収性コア20が縦溝部27、横溝部28及び周縁溝部26で変形しやすくなり、前後方向X及び幅方向Yのいずれの方向の外力に対しても柔軟に構成される。
縦溝部27は、幅方向Yに沿って間隔をあけて複数配列されている。縦溝部27は、前方コア部21、中間コア部22及び後方コア部23のそれぞれを幅方向Yに分割するように、前後方向Xの全長にわたって形成されている。
横溝部28は、前後方向Xに沿って間隔をあけて配列されている。横溝部28は、前方コア部21、中間コア部22及び後方コア部23のそれぞれを前後方向Xに分割するように、幅方向の全長にわたって形成されている。
周縁溝部26は、後述する第1の高坪量部31の前後方向外縁に沿って形成されている。低坪量で変形しやすい周縁溝部26を設けることによって、第1の高坪量部31の周囲の変形が周縁溝部26に吸収されるため、第1の高坪量部31が周囲の変形の影響を受けにくくなる。
なお、縦溝部27、横溝部28及び周縁溝部26の形状や配置などの構成は、図6に記載された構成に限定されず、吸収性コア20の形状や要求される機能等に基づいて適宜設定される。
【0031】
このように、低坪量で変形しやすい縦溝部27、横溝部28、周縁溝部26を設けることで、吸収性コア20の柔軟性を高めることができる。また、溝部を設けることにより溝の空間に排泄された液を素早く引き込み、吸収性コア20内に取り込むことができ、液吸収速度を高めることができる。また、吸収性コア20が複数のブロック部29に区画されることで、吸収性コア20の表面積を高め、液を効率よく吸収し保持することができる。
【0032】
ブロック部29は、第1の高坪量ブロック部291と、第2の高坪量ブロック部292と、低坪量ブロック部293を有する。
第1の高坪量ブロック部291は第2の高坪量ブロック部292よりも坪量の高いブロック部である。第2の高坪量ブロック部292は低坪量ブロック部293よりも坪量の高いブロック部である。第1の高坪量ブロック部291及び第2の高坪量ブロック部292は、低坪量ブロック部293よりも厚み方向Zに厚く構成される。第1の高坪量ブロック部291は、第2の高坪量ブロック部292よりも厚み方向Zに厚く構成される。
図6において、周縁溝部26、縦溝部27及び横溝部28は無地で示し、ブロック部29はドットで示している。更に、ブロック部29において、坪量が多いほどドットの密度が高くなるように示している。
【0033】
複数の第1の高坪量ブロック部291と、隣り合う第1の高坪量ブロック部291間に位置する縦溝部27及び横溝部28とが位置する領域を第1の高坪量部31と称する。第1の高坪量部31は、中間コア部22の幅方向Y中央部Cに位置する。第1の高坪量部31は、前後方向Xに延び、例えば前後端縁部が前後方向Xに向かって凸な曲線状に構成される。
【0034】
複数の第2の高坪量ブロック部292と、隣り合う第2の高坪量ブロック部292間に位置する縦溝部27及び横溝部28とが形成される領域を第2の高坪量部32と称する。第2の高坪量部32は、前方コア部21の幅方向Yの中央部Cと、後方コア部23の幅方向Yの中央部Cに位置する。
前方コア部21に位置する第2の高坪量部32を前方第2の高坪量部32aと称し、後方コア部23に位置する第2の高坪量部32を後方第2の高坪量部32bと称する。両者を特に区別する必要がない場合は第2の高坪量部32と称する。
図6に示すように、前方第2の高坪量部32a、第1の高坪量部31、後方第2の後方坪量部32bは、前後方向Xに沿って順に並んでいる。
【0035】
複数の低坪量ブロック部293と、隣り合う低坪量ブロック部293間に位置する縦溝部27及び横溝部28とが形成される領域を低坪量部33と称する。低坪量部33は、前方コア部21の幅方向Yの両側部Sと、中間コア部22の幅方向Yの両側部Sと、後方コア部23の幅方向Yの両側部Sに位置する。
図6に示すように、低坪量部33は、前方コア部21から中間コア部22を通って後方コア部23に至るまで前後方向Xに延び、吸収性コア20の幅方向Yにおける両側部Sにそれぞれ位置する。低坪量部33は、前後方向Xに並ぶ高坪量部32a、第1の高坪量部31及び後方第2の高坪量部32bからなる高坪量部群の幅方向Yの両側にそれぞれ位置している。
【0036】
以下、第1の高坪量部31の坪量、第2の高坪量部32の坪量、低坪量部33の坪量の坪量とは、縦溝部27及び横溝部28を含んだ坪量をいうものとする。
【0037】
第1の高坪量部31が最も坪量が大きく、次いで第2の高坪量部32の坪量が大きく、低坪量部33の坪量が最も小さくなっている。また、各坪量部のブロック部の厚みは、第1の高坪量部31の厚みが最も厚く、次いで第2の高坪量部32の厚みが厚く、低坪量部33の厚みが最も薄くなっている。
【0038】
本実施形態では、第1の高坪量部31は、低坪量部33及び第2の高坪量部32よりも表面シート12側に突出している。尚、第1の高坪量部31が、裏面シート3側に突出した構成としてもよい。
【0039】
(前方コア部の構成)
図6に示すように、前方コア部21には、前方第2の高坪量部32aと、低坪量部33とが設けられている。前方第2の高坪量部32aは、前方コア部21の幅方向中央部Cに形成される。前方第2の高坪量部32aは、第1の高坪量部31の前後方向Xの前方に位置する。前方コア部21において、低坪量部33は、前方第2の高坪量部32aの幅方向Y外側に、左右に分かれて位置する。
このように前方コア部21は、幅方向Yの中央部Cの坪量が、幅方向Y両側部Sよりも高い坪量を有し、幅方向Yの中央部Cは両側部Sよりも厚みが厚くなっており、肌へのフィット性が向上する構成となっている。
【0040】
(中間コア部の構成)
図4及び図6に示すように、中間コア部22には、第1の高坪量部31と、低坪量部33とが設けられている。
第1の高坪量部31は、中間コア部22の幅方向Y中央部Cに形成され、着用時に着用者の排泄部に対向するように配置される。第1の高坪量部31は、中間コア部22及び後方コア部23の一部にかけて前後方向に延在する。これに伴い、第1の高坪量部31の全周縁に亘って設けられる周縁溝部26は、中間コア部22及び後方コア部23の一部にかけて前後方向に延在して設けられる。
【0041】
図6に示すように、吸収性コア20において、中間コア部22は、前方コア部21及び後方コア部23よりも幅狭な形状を有している。
これにより、着用者の両脚が閉じ股間幅が狭くなった場合に、第1の高坪量部31に付加される幅方向Y内側への外力を低減させることができ、第1の高坪量部31の圧縮が抑制され、第1の高坪量部31の変形が生じにくい。また、第1の高坪量部31の起立性を高めることができる。
【0042】
剛性の低い低坪量部33は、第1の高坪量部31の幅方向Y外側に、左右に分かれて配置される。このため、着用者の脚等により幅方向内方へ向かう外力が付加された場合、低坪量部33が幅方向Yに圧縮変形する。
一方で、低坪量部33の圧縮変形により、前後方向Xの成分を含む張力(引っ張り力)が発生するが、低坪量部33は剛性が低いため、前方コア部21及び後方コア部23を変形させるような大きな張力が発生しにくい。つまり、低坪量部33は、幅方向内方へ向かう外力の緩衝領域として作用し、外力の影響が前方コア部21及び後方コア部23へ伝搬することを防止できる。
また、低坪量部33により外力が緩衝されることで、中間コア部22の幅方向Y中央部Cに位置する第1の高坪量部31の変形も防止することができる。したがって、排泄部と第1の高坪量部31との間に隙間ができることを防止し、幅方向の液漏れも防止することができる。
【0043】
このように、中間コア部22を、前方コア部21及び後方コア部23よりも幅が狭く、幅方向Y中央部Cに第1の高坪量部31を有する構成とすることで、中間コア部22の排泄部に対するフィット性及び液の吸収性を向上させることができる。
【0044】
また、本実施形態のナプキン1では、一対のウイング部Wは、中間コア部22を挟んで幅方向Yに互いに対向して配されている。
ナプキン1の着用時、中間領域Cに位置するウイング部Wを折り曲げ下着の外面に固定した場合、第1の高坪量部31と低坪量部33との剛性差によって、第1の高坪量部31が着用者の排泄部側へと起立しやすくなる。これにより、中間コア部22が着用者の排泄部付近にフィットしやすくなり、ナプキン1と肌との隙間が減少し、液漏れを抑制することができる。
【0045】
また、中間コア部22には、周縁溝部26と、1つの縦溝部27と、4つの横溝部28が設けられている。周縁溝部26は、縦溝部27及び横溝部28と連結している。
【0046】
(後方コア部の構成)
図5及び図6に示すように、後方コア部23には、後方第2の高坪量部32bと、低坪量部33とが設けられている。
後方第2の高坪量部32bは、後方コア部23の幅方向中央部に形成され、着用時に着用者の臀裂に対向するように配置される。後方第2の高坪量部32bは、前後方向に延在して設けられ、中間コア部22に設けられる第1の高坪量部31の前後方向Xの後方に位置する。
後方コア部23において、低坪量部33は、後方第2の高坪量部32bの幅方向Y外側に、左右に分かれて位置する。
【0047】
後方コア部23は、幅方向Yの中央部Cが幅方向Y両側部Sよりも、高い坪量及び厚い厚みのブロック部を有するように構成され、幅方向Y中央部Cは両側部Sよりも、相対的に坪量が高く高剛性となっている。また、図5に示すように、後方第2の高坪量部32bの存在により、ナプキン1の後方部の中央部は凸形状を有している。
後方コア部23において、幅方向Yに加わった外力は、低剛性の低坪量部33が位置する両側部Sが先に変形することにより緩衝され、後方第2の高坪量部32bへの外力の伝播が低減される。更に、後方第2の高坪量部32bは高剛性であるので、後方第2の高坪量部32bの形状が維持されやすい。これにより、幅方向Yに加わった外力によって、後方第2の高坪量部32bが臀裂に向かって起立するようにナプキン1後方部の幅方向Yの中央部が変形しつつも、後方第2の高坪量部32bの形状は好ましくない変形とならないようにほぼ維持される。
従って、ナプキン1の着用時、図7に示すように、凸状となる後方第2の高坪量部32bがその形状を維持しながら着用者Uの臀裂49を埋めるように位置することとなり、臀裂49と着用者Uの肌との間の隙間が生じにくくなる。これによって、排泄部から臀裂49を伝ってくる液を吸収性コア20により効率的に吸収することができ、後方部での液漏れが抑制される。
【0048】
また、後方コア部23において、幅方向Yの中央部に、周囲の第2の高坪量ブロック部292よりも低坪量の縦溝部27が設けられることにより、臀裂を埋めるように吸収性コア20の後方コア部23の幅方向Y中央部が肌側に凸となる起立変形が促される。
更に、図6及び図7に示すように、本実施形態においては、後方コア部23の幅方向Yの全長に亘って複数の縦溝部27が設けられている。これにより、ナプキン1の着用時に、吸収性コア20の後方コア部23は、縦溝部27を変形起点として、幅方向Yの中央部Cは臀裂49を埋めるように肌側に凸の形状に変形し、幅方向Yの側方部Sは幅方向で臀部48を包み込むように変形しやすくなり、臀部48と着用者Uの肌との間の隙間がより生じにくく、幅方向Yの液漏れの発生が抑制される。なお、図示していないが、後方第2の高坪量部32bに配される縦溝部27が、低坪量部33において最も幅方向Yの外側に位置する縦溝部27よりも溝幅が太いことが好ましい。この場合には、後方コア部23に横方向Yからの外力が加わった際に、後方第2の高坪量部32bが太い縦溝部27を起点として幅方向Yの両側へ折れ曲がり易くなるので、最も幅方向Yの外側に位置する縦溝部27を起点に、過度に折れ曲がって後部吸収コア23が破損するリスクを減じることができる。後方コア部23において、よりも太い場合には、後方第2の高坪量部に配される縦溝部27の溝幅(太縦溝)は、低坪量部33における横方向Yの最も外側に位置する縦溝部27(細縦溝)の溝幅に対して1.1倍以上10倍以下、特に1.2倍以上5倍以下であることが、上述した効果を有効に発揮する観点から好ましい。
【0049】
また、後方コア部23において、幅方向Yの中央部に、周囲の第2の高坪量ブロック部292よりも低坪量の横溝部28が設けられることにより、ナプキン1の幅方向中央部に厚みを維持しつつも体の形状に沿って変形する柔軟性が付与される。
図6に示すように、本実施形態においては、後方コア部23の幅方向Yの一方の側縁から他方の側縁までの全長に亘って複数の横溝部28が設けられることにより、ナプキン1の着用時に、吸収性コア20後方コア部23が前後方向Xに臀部を包み込むように変形しやすくなり、臀部と着用者の肌との間の隙間がより生じにくくなり、液漏れの発生が抑制される。
【0050】
また、図5に示すように、ナプキン1では、後方コア部32において、後方第2の高坪量部32bの横方向Yの中心線に最も近く配された縦溝部27が、本体粘着剤51とは平面視重ならない。より具体的に言うと、図5のナプキン1では、平面視で、当該縦溝部27は、左右一対の本体粘着部51の間に配されている。このため、当該縦溝部27は横方向Yの両側へ折れ曲がり易くなり、後方第2の高坪量部32bが臀部に沿う形状に変形し易くなる。このとき、前述したように、当該溝が太溝であると、一層臀部に沿う形に変形し易くなる。
【0051】
[賦香領域及び本体粘着部との位置関係]
図3に示すように、本体粘着部51は、前後方向Xに延び、互いに離間して幅方向Yに2つ配置される。2つの本体粘着部51、51は、ナプキン1を幅方向Yに二等分する前後方向Xに延びる中心線50を間に介して幅方向Yに対向配置される。本体粘着部51は、中心線50上には位置しない。
また、一対の本体粘着部51、51は、吸収性コア20の幅狭部分を有する中間コア部22では、吸収性コア20の幅方向Y側縁20cを超えて外方に位置していない。
【0052】
賦香領域Kは、中心線50を含む幅方向Yの中央部に位置し、平面視で、2つの本体粘着部51、51間に位置している。賦香領域Kは、例えば、ナプキン1の前端部から後端部まで前後方向Xに沿って延びるとともに、幅方向Yの中心線50を含む中央部に配置される。
「賦香領域Kが前後方向Xに沿って延びる」とは、香料が前後方向Xに沿って連続して配置されている態様に限定されず、香料が前後方向Xに沿って間欠的に配置されている態様も含む。
香料を用いることにより排泄された液由来の匂いが香料によってマスキングされて外部へ放出され、液由来の匂いが認識されにくくなり、不快感を軽減できる。
【0053】
ナプキン1において、賦香領域Kは、平面視で、吸収性コア20の前方第2の高坪量部32a、第1の高坪量部31、後方第2の高坪量部32bが順に前後方向Xに沿って位置する領域内に位置している。すなわち、着用時、第1の高坪量部31、後方第2の高坪量部32bそれぞれに対応して位置する排泄部である膣口、臀裂に対応して賦香領域Kが位置する。
【0054】
図8(A)に示すように、着用者Uがナプキン1を好ましい位置で着用した場合、ナプキン1の後方部において、吸収性コア20の後方コア部23の第2の高坪量部32が臀裂49に入り込むように位置し、ナプキン1の幅方向Y中央部(中心線50を含む領域)が肌側に起立する形態となる。換言すると、ナプキン1の中心線50を含む領域の着用者Uの肌側への突出が強い形態である。
このような形態では、賦香領域Kを間に介して、賦香領域Kの両側に位置する本体粘着部51が位置する領域のナプキン1の部分が互いに近づくように変形する。これにより、図8(A)に示すように、一対の本体粘着部51、51が位置するナプキン1の部分が、賦香領域Kからの香料が外部に向かって蒸散される空間の一部に配置されることになり、賦香領域Kからの香料の外部への速やかな蒸散が妨害される。このため、幅方向Yにずれることなくナプキン1が好ましい位置で着用されている場合、賦香領域Kから蒸散される香料の香りは着用者にとっては微香程度に感じ取られる。
ここで、賦香領域Kの両側に位置するナプキン1部分によって香料の外部への速やかな蒸散が妨害される状態を、賦香領域Kがナプキン1によって閉じられている状態(閉状態)であるという。
【0055】
一方、図8(B)に示すように、例えばナプキン1が幅方向にずれて着用された場合、ナプキン1の後方部において、幅方向中央部よりも外方側の部分が肌側に突出し、ナプキン1の中心線50を含む領域の着用者Uの肌側への突出が弱まる形態となる。
このような形態では、吸収性コア20の後方コア部23の第2の高坪量部32が臀裂49からずれて位置するため、第2の高坪量部32と低坪量部33との段差と臀裂49との間に隙間が生じやすく、液が吸収性コア20に効率よく吸収されず、排泄部から排泄された液が臀裂49を伝っていき、ナプキン1の後方部から液漏れが生じやすい。
また、ナプキン1が、その中心線50を含む領域の着用者Uの肌側への突出が弱まる形態をとる場合、図8(B)に示す例では、賦香領域Kは、急激な窪みである臀裂49に位置せず臀部48のゆるやかな膨らみ上に位置する。賦香領域Kを間に介して位置するナプキン1の賦香領域Kの両側の部分は、図8(A)に示す形態と比較して、互いに遠くなるように位置することになり、賦香領域Kからの香料が速やかに蒸散される空間が広くなり、一気に香料の香りが匂いたつ。このため、例えば幅方向Yにずれてナプキン1が着用され、ナプキン1が中心線50を含む領域の着用者Uの肌側への突出が弱まる形態をとる場合、好ましい位置でナプキン1を着用した場合と比較して、賦香領域Kから蒸散される香りは着用者Uにとってより強く感じ取られる。
ここで、賦香領域Kの両側に位置するナプキン1部分によって香料の外部への速やかな蒸散が妨害されない状態を、賦香領域Kがナプキン1によって開けてられている状態(開状態)であるという。
【0056】
図8(A)及び(B)において、賦香領域Kからの香料が速やかに放出される空間を破線の楕円で囲み、符号55を付して示す。図8(A)及び(B)に示すように、香料が速やかに放出される空間55は、ナプキン1がその中心線50を含む領域の着用者Uの肌側への突出が弱まる形態をとる場合の方が広くなっている。
【0057】
以上のように、着用者Uは、ナプキン1の着用中、強い香りがするようになったという香りの強弱の変化を感じることにより、ナプキン1が好ましい位置からずれている可能性があると判断することができ、液漏れの発生の可能性を察知することができる。
このように、本実施形態は、ナプキン1の開閉による賦香領域Kから蒸散される香りの強弱によってナプキン1の着用状態を把握することができる構成となっている。
【0058】
また、本実施形態では、一対の本体粘着部51、51が、中心線50を挟んでその両側に配され、更に、吸収性コア20の幅方向Yにおいて幅狭部の側縁20cを超えて外方に存在していない。
ナプキンにおいて、平面視で、吸収性コア20の幅狭部である中間コア部22の側縁20cを超えて前後方向Xに延びる本体粘着部51が存在していないため、後方コア部23の中間コア部22よりも幅方向Y外方に突き出している部分にも本体粘着部51は存在していない。
これにより、後方コア部23の中間コア部22よりも幅方向Y外方に突き出している部分の変形し易さが本体粘着部51、51により制限されない。したがって、後方コア部23の幅方向Y両側部Sに柔軟性を持たせることができ、ナプキン1の後方部を臀部の膨らみに沿った形状に変形させやすい。
【0059】
また、図4及び図5に示すように、本実施形態のナプキン1では、ナプキン1の中心線50上に吸収性コア20の縦溝部27が位置しているため、ナプキン1の幅方向Y中央部で着用者の肌に向かって凸となる変形が誘起されやすく、賦香領域Kからの香料蒸散のためのナプキン1の開閉がより円滑となる。
【0060】
[上記実施形態の追加説明]
上記実施形態の説明を補足する。
(各構成の数値例)
上記吸収性コアの各構成の数値例について説明するが、ここに記載する数値に限定されない。各溝部の底部及びブロック部の厚み、坪量は、着用者に違和感を与えにくい適度な厚みで快適な着用感を提供しつつ十分な吸収量が得られるように適宜設定される。また、周縁溝部26、縦溝部27及び横溝部28の溝幅及び底部の厚み等は、吸収性コアの柔軟性の点等から適宜設定される。
【0061】
周縁溝部26、縦溝部27及び横溝部28の溝幅は、好ましくは0.5mm以上、10mm以下である。なお、後方コア部23又は前方コア部21で細溝と太溝を有する場合には、細溝の好ましい溝幅は0.5mm以上5mm以下、より好ましくは0.5mm以上2mm以下であり、また、太溝の好ましい溝幅は1mm以上10mm以下、より好ましくは1mm以上5mm以下である。
周縁溝部26、縦溝部27及び横溝部28の底部の厚みは、好ましくは0.5mm以上、6mm以下である。
周縁溝部26、縦溝部27及び横溝部28の坪量は、好ましくは100g/m以上、より好ましくは150g/m以上であり、そして好ましくは1000g/m以下、より好ましくは900g/m以下である。
【0062】
前方コア部21に位置する左側の低坪量部33及び右側の低坪量部33坪量は、好ましくは100g/m以上、より好ましくは150g/m以上であり、そして好ましくは500g/m以下、より好ましくは400g/m以下である。
左側の低坪量部33と右側の低坪量部33坪量はほぼ同じである。ここで、ほぼ同じとは、誤差±100g/mの範囲を含む。以下、中間コア部22及び後方コア部23についても同様である。
前方コア部21の幅方向中央に位置する前方第2の高坪量部32aの坪量は、好ましくは150g/m以上、より好ましくは200g/m以上であり、そして好ましくは600g/m以下、好ましくは500g/m以下である。
【0063】
前方コア部21に位置する左側の低坪量部33及び右側の低坪量部33の低坪量ブロック部293の厚みは、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは2mm以上であり、そして好ましくは10mm以下、より好ましくは8mm以下である。
左側の低坪量部33と右側の低坪量部33それぞれの低坪量ブロック部293の厚みはほぼ同じである。ここで、ほぼ同じとは、誤差±2mmの範囲を含む。以下、中間コア部22及び後方コア部23についても同様である。
前方コア部21の幅方向中央に位置する前方第2の高坪量部32aの第2の高坪量ブロック部292の厚みは、好ましくは2mm以上、より好ましくは2.5mm以上であり、そして好ましくは12mm以下、より好ましくは10mm以下である。
【0064】
中間コア部22に位置する左側の低坪量部33及び右側の低坪量部33の坪量は、好ましくは100g/m以上、より好ましくは150g/m以上であり、そして好ましくは700g/m以下、より好ましくは600g/m以下である。
中間コア部22の幅方向中央に位置する第1の高坪量部31の坪量は、好ましくは300g/m以上、より好ましくは400g/m以上であり、そして好ましくは1000g/m以下、より好ましくは900g/m以下である。
【0065】
中間コア部22に位置する左側の低坪量部33及び右側の低坪量部33の低坪量ブロック部293の厚みは、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは2mm以上であり、そして好ましくは13mm以下、より好ましくは12mm以下である。
中間コア部22の幅方向中央に位置する第1の高坪量部31の第1の高坪量ブロック部291の厚みは、好ましくは3mm以上、より好ましくは4mm以上であり、そして好ましくは15mm以下、より好ましくは14mm以下である。
【0066】
後方コア部23に位置する左側の低坪量部33及び右側の低坪量部33の坪量は、好ましくは100g/m以上、より好ましくは150g/m以上であり、そして好ましくは500g/m以下、より好ましくは400g/m以下である。
後方コア部23の幅方向中央に位置する後方第2の高坪量部32bの坪量は、好ましくは150g/m以上、より好ましくは200g/m以上であり、そして好ましくは600g/m以下であり、より好ましくは500g/m以下である。
【0067】
後方コア部23に位置する左側の低坪量部33及び右側の低坪量部33の低坪量ブロック部293の厚みは、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは2mm以上であり、そして好ましくは10mm以下、より好ましくは8mm以下である。
後方コア部23の幅方向中央に位置する後方第2の高坪量部32bの第2の高坪量ブロック部292の厚みは、好ましくは2mm以上、より好ましくは2.5mm以上であり、そして好ましくは12mm以下、より好ましくは10mm以下である。
【0068】
前方コア部21及び後方コア部23の幅は、好ましくは60mm以上、より好ましくは70mm以上であり、そして好ましくは100mm以下、より好ましくは90mm以下である。中間コア部21の最も狭い部分の幅寸法は、好ましくは40mm以上、より好ましくは50mm以上であり、そして好ましくは75mm以下、より好ましくは70mm以下である。
このように中間コア部22の幅を前方及び後方コア部21,23よりも狭くすることにより、着用者の脚等により付加される幅方向内方へ向かう外力の影響を受けにくくなるとともに、幅方向の着用位置ずれにも対応可能となり、着用者に対して安心感を与えることができる。
中間コア部22の前後方向の長さは、60mm以上170mm以下、好ましくは80mm以上160mm以下である。これにより、前後方向の着用位置ずれ等があった場合にも、中間コア部22を着用者の排泄部に対向させることができる。
【0069】
(溝部の幅の測定方法)
溝部の幅は、溝部の開口部における幅を測定することにより求める。吸収性コアを水平に置き、マイクロスコープ(KEYENCE社製VHX-1000)により測定倍率を調整して吸収性コアの上面を拡大することで、開口幅を測定する。
或いは、フェザー社製片刃剃刀を用いて吸収性コアを切断し、切断されたサンプルの断面を、マイクロスコープ(KEYENCE社製VHX-1000)を用いて20~100倍の倍率で観察し、溝幅を測定してもよい。
【0070】
(吸収性コアの各部の厚みの測定方法)
測定対象である吸収性コアの厚みの測定は、各々の部位について坪量を測定するために切り出した小片の厚みを測定することで行う。吸収性コアより切り出した小片を5kPaの圧力で10分間加圧し、除重後すぐに測定を行う。除重後のサンプルの中央域に、大きさ20mm×20mm、厚み3mmのアクリルプレートを置き、KEYENCE社製非接触式レーザー変位計(レーザーヘッドLK-G30、変位計LK-GD500)を用い、サンプルの厚みを測定する。切り出した小片の大きさが小さく、非接触式レーザー変位計により測定し難い場合には、前記切断されたサンプルの断面を、例えば、マイクロスコープ(KEYENCE社製VHX-1000)を用いて20~100倍の倍率で観察し、測定してもよい。
【0071】
(吸収性コアの各部の坪量の測定方法)
測定対象である吸収性コアの各部を、フェザー社製片刃剃刀を用いて切断し、小片を得る。それらの小片の重量及び面積を以下の方法で測定し、測定により得られた重量を面積で除して小片の坪量を算出する。各部のそれぞれについて、小片5個の坪量の平均を坪量とする。
小片の重量は、電子天秤(A&D社製電子天秤GR-300、精度:小数点以下4桁)を用いて測定する。
小片の面積は、予め切断前の吸収性顔全体を切断部込みでOHPシートに書き写し、パーソナルコンピュータ向けスキャナー(キャノン製 CanoScan MP Navigator EX)でスキャンした画像を、画像解析ソフト(株式会社ネクサス製 nexus New Qube)を用いて求める。
本実施形態では、図6を参照して、吸収性コア20を、前方コア部21に位置する左側の低坪量部33、右側の低坪量部33、第2の高坪量部32、中間コア部22に位置する左側の低坪量部33、右側の低坪量部33、第1の高坪量部31、後方コア部23に位置する左側の低坪量部33、右側の低坪量部33、第2の高坪量部32の計9つのエリアにわけ、エリア毎に坪量を求める。
【0072】
(香料例)
上記賦香領域Kの香料として用いられる高揮発性香料成分としては、例えばアニソール、ベンズアルデヒド、酢酸ベンジル、ベンジルアルコール、ギ酸ベンジル、酢酸イソボルニル、シトロネラール、シトロネロール、酢酸シトロネリル、パラシメン、デカナール、ジヒドロリナロール、ジヒドロミルセノール、ジメチルフェニルカルビノール、ユーカリプトール、1-カルボン、ゲラニアール、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、ゲラニルニトリル、酢酸ネリル、酢酸ノニル、リナロール、エチルリナロール、酢酸リナリル、フェニルエチルアルコール、α-ピネン、β-ピネン、γ-ピネン、α-ヨノン、β-ヨノン、γ-ヨノン、α-テルピネオール、β-テルピネオール、酢酸テルピニル、テンタローム等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
香料として用いられる中揮発性香料成分としては、例えばアミルシンナムアルデヒド、ジヒドロジャスモン酸メチル、サリチル酸イソアミル、β-カリオフィレン、セドレン、セドリルメチルエーテル、桂皮アルコール、クマリン、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、イソオイゲノール、γ-メチルヨノン、ヘリオトロピン、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸シス-3-ヘキセニル、フェニルヘキサノール、ペンタライド等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
香料として、上述の高揮発性及び中揮発性香料成分以外に、あるいはこれら香料成分に加えてさらに、バラ香調、ラベンダー香調、ジャスミン香調、イランイラン香調を有する香料を含有した香料組成物を用いることもできる。このような香料組成物としては、例えば、ネロール、ラバンジュロール、ジャスマール、シクロピデン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。香料には、上述した香料素材単体、及び天然精油や調合ベースのように、「複数の香料によって構成される香料素材が組み合わされたもの(香料組成物)で、溶剤によって希釈・調整されたもの」が含まれる。例えば、香料として、バラ、ラベンダー、ジャスミン、イランイラン様香気を有する香料を含有する香料組成物を用いることができる。
【0075】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0076】
上記実施形態では、中間コア部22の幅が前後方向に亘って同一幅となる直線部分を含む括れ形状を有する吸収性コア20を例にあげて説明しているが、吸収性コア20の括れ形状が、中間コア部22の前後方向の中央の側縁部が幅方向内側に括れる湾曲形状、より具体的には、円弧状であってもよい。中間コア部22は、着用時に着用者の両脚の間に位置する排泄部が主に対向する部分であり、主に両脚によって挟まれる領域に対応して括れ形状が形成される。
上記第1の高坪量部31は、中間コア部22に位置すればよく、全てが中間コア部22内に納まるように位置してもよいし、上記実施形態のように後端部が後方コア部23の一部まで及ぶ形態であってもよい。また、第1の高坪量部31の前端部が前方コア部21の一部まで及ぶ形態であってもよい。
【0077】
また、吸収性コアの形状は上記実施形態の吸収性コア20に限定されない。以下、図9(A)~(C)を用いて他の例について説明する。各図において、符号31、32、33はそれぞれ第1の高坪量部、第2の高坪量部、低坪量部を示し、これらは、上記実施形態の吸収性コア20における第1の高坪量部31、第2の高坪量部32、低坪量部33と同様の坪量及び厚み関係となっている。
【0078】
図9(A)~(C)に示すいずれの吸収性コアにおいても、排泄部対向部となる中間コア部22が幅狭となっており、中間コア部22に第1の高坪量部31を有し、後方コア部23に幅方向Yの中央部の坪量が、幅方向Y両側部よりも高い坪量を有するように構成される。
このような構成を有することにより、上記実施形態と同様に、吸収性コアを備えるナプキンの排泄部に対するフィット性及び液の吸収性を向上させ、更に、ナプキンの後方部において、臀裂を埋めるようなナプキンの変形を促して液の吸収性の向上及び液の漏れの発生を抑制させることができる。
【0079】
図9(A)に示す吸収性コア51は、第1の高坪量部31と第2の高坪量部32との間に吸収性コア51の幅方向Yに沿って幅方向Yの全幅に亘って位置する横溝部28を有する以外、周縁溝部、縦溝部及び横溝部を有していない。
尚、第1の高坪量部31と第2の高坪量部32との間の横溝部28を設けなくてもよいが、横溝部28を設けることによって着用者の体の形状に沿うように変形しやすくなり、フィット性が向上する。以下の図9(B)及び(C)に示す例においても同様である。
【0080】
図9(B)に示す吸収性コア52は、第1の高坪量部31と第2の高坪量部32との間に吸収性コア52の幅方向Yに沿って幅方向Yの全幅に亘って位置する横溝部28、周縁溝部26、前方コア部21及び後方コア部23の幅方向Y中央部に複数の縦溝部27を有している。前後方向Xに延在する縦溝部27は、前方コア部21及び後方コア部23にそれぞれ複数、ここでは3つ設けられる。そのうち中央に位置する縦溝部27は吸収性コア52の幅方向Yの中心線上に位置し、他の2つの縦溝部27は、第2の高坪量部32と低坪量部33との境界に位置する。
このように、厚みが厚く、変形し難い第2の高坪量部32に、部分的に低坪量の縦溝部27を設けることによって、厚みを維持しつつも体の形状に沿って変形する柔軟性を第2の高坪量部32に持たせることができる。これにより、このような吸収性コア52を備えるナプキンでは、後方部中央部が臀裂にむかって凸となる変形が促される。
また、中間コア部22において、周縁溝部26が設けられることにより、着用時の第1の高坪量部31の肌側への起立がより促される。
尚、第1の高坪量部31の幅方向中央に、前方コア部21及び後方コア部23の幅方向中心に位置する縦溝部27と前後方向Xに沿って連なる縦溝部を設けてもよい。
【0081】
図9(C)に示す吸収性コア53は、第1の高坪量部31と第2の高坪量部32との間に吸収性コア53の幅方向Yに沿って幅方向Yの全幅に亘って位置する横溝部28と、前方コア部21及び後方コア部23それぞれの幅方向Y中央部に複数の横溝部28と、を有している。
このように、厚みが厚く、変形し難い第2の高坪量部32に、部分的に低坪量の横溝部28を設けることによって、厚みを維持しつつも体の形状に沿って変形する柔軟性を第2の高坪量部32に持たせることができる。このような吸収性コア53を備えるナプキンでは、前方部及び後方部において体の形状に沿った変形が促され、フィット性が向上する。
【0082】
また、上述の実施形態では、吸収性物品として生理用ナプキンの例を示したが、これに限定されない。本発明の吸収性物品は、例えば、失禁パットやおりものシート、使い捨ておむつ等であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…吸収性物品(生理用ナプキン、ナプキン)
20、51、52、53…吸収性コア
21…前方コア部
22…中間コア部
23…後方コア部
31…第1の高坪量部(高坪量部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9