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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】乗員検知装置及びシート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20230502BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
B60N2/90
A47C7/62 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019137168
(22)【出願日】2019-07-25
(65)【公開番号】P2021020510
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】大井川 敦彦
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-230853(JP,A)
【文献】特開2005-204871(JP,A)
【文献】特開2001-204694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/90
A47C 7/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションを下方から支持する金属製の支持部材に設置される振動部と、
前記シートクッションに設置される第1の圧電素子と、
前記支持部材に設置される第2の圧電素子と、
前記支持部材に振動が伝播するように前記振動部を振動させる駆動信号を出力する駆動回路と、
前記第1の圧電素子に接続される検知ラインを介して周波数が前記駆動信号よりも低い第1の振動波形を検出することによって生体検知を行い、前記第2の圧電素子に接続される検知ラインを介して得られる第2の振動波形の振幅変化を検出することによって荷重検知を行う検知回路とを備える、乗員検知装置。
【請求項2】
前記検知回路は、前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子に共通に接続される検知ラインを介して得られる検知波形を周波数分解することによって、前記第1の振動波形と前記第2の振動波形とを抽出する、請求項1に記載の乗員検知装置。
【請求項3】
前記第1の圧電素子は、前記シートクッションに蛇行して取り付けられる圧電ラインである、請求項1又は2に記載の乗員検知装置。
【請求項4】
前記シートクッションは、前記支持部材に下方から支持されるクッションパッドと、前記クッションパッドを覆う基材とを有し、
前記第1の圧電素子は、前記基材に取り付けられる圧電ラインである、請求項1から3のいずれか一項に記載の乗員検知装置。
【請求項5】
前記第1の圧電素子は、前記基材に縫い付けられる、請求項4に記載の乗員検知装置。
【請求項6】
前記基材は、シートトリムである、請求項5に記載の乗員検知装置。
【請求項7】
前記シートクッションは、前記支持部材に下方から支持されるクッションパッドと、前記クッションパッドを覆うシートトリムとを有し、
前記第1の圧電素子は、前記クッションパッドに取り付けられる圧電ラインである、請求項1から3のいずれか一項に記載の乗員検知装置。
【請求項8】
前記クッションパッドは、前記第1の圧電素子を収容する溝を有する、請求項7に記載の乗員検知装置。
【請求項9】
前記溝は、前記シートトリムの縫い代を吊り込む吊り込み溝である、請求項8に記載の乗員検知装置。
【請求項10】
前記支持部材は、Sバネを有し、
前記第2の圧電素子は、前記Sバネに取り付けられる圧電ラインである、請求項1から9のいずれか一項に記載の乗員検知装置。
【請求項11】
前記第2の圧電素子は、前記振動部が取り付けられる前記Sバネに取り付けられる、請求項10に記載の乗員検知装置。
【請求項12】
前記第2の圧電素子は、前記振動部とワンパッケージで前記Sバネに取り付けられる、請求項11に記載の乗員検知装置。
【請求項13】
前記振動部は、前記駆動信号により振動する圧電ラインである、請求項1から12のいずれか一項に記載の乗員検知装置。
【請求項14】
前記検知回路は、前記生体検知により生体信号が検知された場合、前記荷重検知により得られた荷重値に対応する信号を乗員拘束装置を制御する制御装置に対して出力し、前記生体検知により生体信号が検知されない場合、前記信号を前記制御装置に対して出力しない、請求項1から13のいずれか一項に記載の乗員検知装置。
【請求項15】
シートクッションと、
前記シートクッションを下方から支持する金属製の支持部材と、
前記支持部材に設置される振動部と、
前記シートクッションに設置される第1の圧電素子と、
前記支持部材に設置される第2の圧電素子と、
前記支持部材に振動が伝播するように前記振動部を振動させる駆動信号を出力する駆動回路と、
前記第1の圧電素子に接続される検知ラインを介して周波数が前記駆動信号よりも低い第1の振動波形を検出することによって生体検知を行い、前記第2の圧電素子に接続される検知ラインを介して得られる第2の振動波形の振幅変化を検出することによって荷重検知を行う検知回路とを備える、シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員検知装置及びシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体と直接または間接的に接触する場所に配置される圧電素子により成るセンサを備え、このセンサの出力から、人体の生体情報の検出および質量推定を行う生体情報検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-204694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術は、センサの出力波形の減衰期間での値を質量推定に使用するので、センサの出力波形が大きく減衰した状態では、質量推定を精度良く行うことが難しい。
【0005】
そこで、本開示は、乗員を高精度に検知可能な乗員検知装置及びシートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
シートクッションを下方から支持する金属製の支持部材に設置される振動部と、
前記シートクッションに設置される第1の圧電素子と、
前記支持部材に設置される第2の圧電素子と、
前記支持部材に振動が伝播するように前記振動部を振動させる駆動信号を出力する駆動回路と、
前記第1の圧電素子に接続される検知ラインを介して周波数が前記駆動信号よりも低い第1の振動波形を検出することによって生体検知を行い、前記第2の圧電素子に接続される検知ラインを介して得られる第2の振動波形の振幅変化を検出することによって荷重検知を行う検知回路とを備える、乗員検知装置を提供する。
【0007】
また、本開示は、
シートクッションと、
前記シートクッションを下方から支持する金属製の支持部材と、
前記支持部材に設置される振動部と、
前記シートクッションに設置される第1の圧電素子と、
前記支持部材に設置される第2の圧電素子と、
前記支持部材に振動が伝播するように前記振動部を振動させる駆動信号を出力する駆動回路と、
前記第1の圧電素子に接続される検知ラインを介して周波数が前記駆動信号よりも低い第1の振動波形を検出することによって生体検知を行い、前記第2の圧電素子に接続される検知ラインを介して得られる第2の振動波形の振幅変化を検出することによって荷重検知を行う検知回路とを備える、シートを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術によれば、乗員を高精度に検知可能な乗員検知装置及びシートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】乗員検知システムの構成例を示すブロック図である。
図2】乗員検知システムの構成例を模式的に示す図である。
図3】シートクッション及び支持部材の構成例を示す分解斜視図である。
図4】第1の振動波形及び第2の振動波形を例示する図である。
図5】荷重による第2の振動波形の振幅変化を例示する図である。
図6】第1の圧電素子のシートクッションへの取り付け例を示す図である。
図7】荷重検知用の荷重センサのSバネへの取り付け例を示す図である。
図8】荷重センサの構成例を示す図である。
図9】第1の圧電素子の第1の具体的な取り付け例を示す図である。
図10】第1の圧電素子の第2の具体的な取り付け例を示す図である。
図11】第1の圧電素子の第3の具体的な取り付け例を示す図である。
図12】振動部及び第2の圧電素子の第1の具体的な取り付け例を示す断面図である。
図13】振動部及び第2の圧電素子の第2の具体的な取り付け例を示す断面図である。
図14】第1の振動波形及び第2の振動波形を共通の検知ラインを介して取得する第1の配線例を示す図である。
図15】第1の配線例の詳細を示す図である。
図16】第1の配線例を詳細に示す図である。
図17】第1の振動波形及び第2の振動波形を別々の検知ラインを介して取得する第2の配線例を示す図である。
図18】圧電ラインの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施形態における乗員検知システムを図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本開示に係る実施形態における乗員検知システムの構成例を示すブロック図である。図1に示す乗員検知システムは、車両に搭載されるシート40に座る乗員を検知し、その検知結果を外部装置に出力する。この乗員検知システムは、車室内に設置されるシート40と、シート40に座る乗員を検知する乗員検知装置100とを備える。
【0012】
図2は、本開示に係る実施形態における乗員検知システムの構成例を模式的に示す図である。シート40は、シートクッション44、シートバック45及び支持部材41を有する。
【0013】
シートクッション44は、シート40に座る乗員の臀部及び大腿部を下方から支持する座部である。シートクッション44の座面は、シート40に座る乗員の臀部及び大腿部と接触する。シートクッション44は、クッションパッド43及びシートトリム42を有する。クッションパッド43は、支持部材41に下方から支持される緩衝部材である。クッションパッド43は、例えば、ウレタンフォームから形成される。シートトリム42は、クッションパッド43を覆う基材であり、シートクッション44の座面を形成する。シートトリム42は、例えば、布地又は皮革から形成される表皮部材である。
【0014】
シートバック45は、シートクッション44の後部から立ち上がり、シート40に座る乗員の背中を後方から支持する背もたれ部である。シートバック45の背もたれ面は、シート40に座る乗員の背中と接触する。
【0015】
支持部材41は、シートクッション44を下方から支持する金属製の部材である。支持部材41は、シートクッション44の下面に接触するSバネ等のクッション支持部を有する。
【0016】
図3は、シートクッション及び支持部材の構成例を示す分解斜視図である。シートクッション44は、クッション性を有するクッションパッド43と、クッションパッド43の上面に設置されるシートトリム42とを有する。図3に示す形態では、支持部材41は、一対のサイドフレーム41a,41bと、フロントフレーム41cと、リアフレーム41dと、複数のSバネ41eとを有する。
【0017】
一対のサイドフレーム41a,41bは、車幅方向に対応する左右方向に互いに離れて配置されている。フロントフレーム41cは、一対のサイドフレーム41a,41bの各々の前部同士を連結し、リアフレーム41dは、一対のサイドフレーム41a,41bの各々の後部同士を連結する。Sバネ41eは、シートクッション44を下方から支持するクッション支持部の一例であり、クッションパッド43の下面に接触する。Sバネ41eは、S字状の部分が繰り返し連続する金属製の弾性線材である。
【0018】
図3には、左右方向に配列された複数のSバネ41eがフロントフレーム41cとリアフレーム41dとの間に架設された形態が例示されているが、前後方向に配列された複数のSバネ41eが一対のサイドフレーム41a,41bの間に架設されてもよい。
【0019】
図1において、乗員検知装置100は、振動部10、第1の圧電素子121、第2の圧電素子122及び制御装置30を備える。制御装置30は、駆動回路31及び検知回路37を有するECU(Electronic Control Unit)である。
【0020】
振動部10は、シートクッション44を下方から支持する金属製の支持部材41に設置され、例えば、上述のSバネ41e等のクッション支持部に設置されている。振動部10は、駆動ライン11を介して駆動回路31に接続されている。
【0021】
振動部10は、駆動回路31から駆動ライン11を介して供給される駆動信号Dによって振動する。振動部10で発生する振動は、金属製の支持部材41に伝播する。
【0022】
振動部10は、例えば、駆動回路31からの駆動信号Dが供給されることによって振動する圧電素子である。振動部10は、バイモルフ型、積層型又はモノモルフ型のいずれの圧電素子でもよい。また、振動部10は、圧電性高分子を利用するものでもよい。
【0023】
駆動回路31は、支持部材41に振動が伝播する大きさで振動部10を振動させる駆動信号Dを駆動ライン11を介して振動部10に供給する。駆動回路31は、生体検知及び荷重検知を行う期間では、シートクッション44上の乗員に振動を感じさせない程度の大きさで振動部10が振動するように、振動部10を振動させる駆動信号Dを出力する。駆動信号Dの波形(駆動波形)は、一定の振幅及び一定の周波数(例えば、5kHz)を有する。駆動波形は、方形波でも正弦波でもよい。
【0024】
第1の圧電素子121は、シートクッション44に設置される生体検知用の圧電素子である。第2の圧電素子122は、支持部材41に設置される荷重検知用の圧電素子である。
【0025】
検知回路37は、第1の圧電素子121に接続される検知ライン13を介して周波数が駆動信号Dよりも低い第1の振動波形Saを検出することによって生体検知を行う。また、検知回路37は、第2の圧電素子122に接続される検知ライン13を介して得られる第2の振動波形Sbの振幅変化を検出することによって荷重検知を行う。図1の形態では、検知回路37は、第1の圧電素子121と第2の圧電素子122に共通に接続される検知ライン13を介して得られる検知波形Sを周波数分解することによって、第1の振動波形Saと第2の振動波形Sbとを抽出する(図4参照)。第1の振動波形Saは、第2の振動波形Sbよりも低い周波数を有する。
【0026】
振動部10で発生する振動は、金属製の支持部材41に伝播するので、その振動は、支持部材41に設置される第2の圧電素子122により検知される。物体がシートクッション44上に載ると、シートクッション44と接する支持部材41に伝播する振動波形は、荷重に応じて変化する。したがって、検知回路37は、第2の圧電素子122に接続される検知ライン13を介して得られる第2の振動波形Sbの振幅変化に基づいて、シートクッション44上の物体の存否と、シートクッション44上に存在する物体の荷重とを検知できる。
【0027】
一方、シートクッション44に接する物体が生体であると、その生体の呼吸や脈拍等の生体信号が、シートクッション44に設置される第1の圧電素子121により検知される。したがって、検知回路37は、第1の圧電素子121に接続される検知ライン13を介して得られる第1の振動波形Saの周波数が生体信号の周波数に一致するか否かを検出することにより、シートクッション44上の物体が生体か否かを検知できる。駆動信号Dの周波数は、生体信号の周波数よりも十分に高く設定されているので、検知回路37は、駆動信号Dの周波数を生体信号の周波数と誤検知しない。
【0028】
したがって、本実施形態における乗員検知装置100によれば、荷重検知と生体検知の両方を行うことができるので、シートクッション44上の物体の存否と荷重を検知できるだけでなく、当該物体が生体か否かの切り分けを行うことができる。また、振動部10によって所定の振動を支持部材41に与え、その振動の振幅変化を検出することで荷重検知を行うので、外部からのノイズ(例えば、ロードノイズやエンジンの振動など)の影響を受けにくく、高精度な荷重検知を継続的に実施できる。このように、荷重検知と生体検知を高精度に行うことができるので、乗員を高精度に検知できる。
【0029】
次に、本実施形態における乗員検知装置100の構成例について、より詳細に説明する。
【0030】
図1に示す形態では、検知回路37は、増幅部32、A/D(Analog to Digital)変換部33、信号処理部34及び演算処理部36を有する。増幅部32は、検知ライン13から入力される検知波形Sを増幅し、増幅後の検知波形SをA/D変換部33に供給する。A/D変換部33は、増幅部32から供給されるアナログの検知波形Sをデジタルの検知波形Sに変換する。信号処理部34は、デジタルの検知波形Sを周波数分解することによって、第1の振動波形Saと、周波数が第1の振動波形Saよりも高い第2の振動波形Sbとを抽出する。
【0031】
演算処理部36は、第1の振動波形Saに基づいて生体検知を行い、第2の振動波形Sbに基づいて荷重検知を行う。演算処理部36は、第1の振動波形Saの周波数が、生体信号の周波数に一致するか否かを検出することにより、シートクッション44上の物体が生体か否かを検知する。演算処理部36は、第2の振動波形Sbの振幅変化量に基づいて、シートクッション44上の物体の存否と、シートクッション44上に存在する物体の荷重とを検知する。
【0032】
演算処理部36は、第1の振動波形Saに基づく生体検知により生体信号が検知された場合、第2の振動波形Sbに基づく荷重検知により得られた荷重値に対応する信号Aを、乗員拘束装置を制御する制御装置に対して出力する。一方、演算処理部36は、第1の振動波形Saに基づく生体検知により生体信号が検知されない場合、信号Aを当該制御装置に対して出力しない。これにより、当該制御装置は、シートクッション44上の乗員の体重に応じた適切な乗員拘束制御を実施できる。また、シートクッション44上の物体が非生体物であるときに、当該制御装置が乗員拘束装置を誤作動させることを防止できる。乗員拘束装置の具体例として、エアバッグ、シートベルトなどがある。
【0033】
なお、検知回路37の一部又は全部の機能は、例えば、メモリに読み出し可能に記憶されたプログラムによってCPU(Central Processing Unit)が動作することにより実現される。
【0034】
図5は、荷重による第2の振動波形の振幅変化を例示する図である。荷重検知用の第2の振動波形Sbの振幅は、荷重が支持部材41に付加されていない状態では(荷重M1=0kg)、最大の振幅V1が検出される。シートクッション44に荷重が加わることで、支持部材41がシートクッション44によって押さえつけられるので、振動部10により支持部材41に伝播する振動が抑制され、第2の振動波形Sbの振幅が減衰する。第2の振動波形Sbの振幅は、荷重が大きくなるにつれて減衰するため、この減衰特性を用いて、荷重検知を行うことが可能となる。
【0035】
シートクッション44上の物体の荷重Mが、M1,M2,M3と大きくなると、第2の振動波形Sbの振幅Vは、V1,V2,V3と小さくなる。例えば、V1とV3との間に閾値Vthが設定される。この場合、演算処理部36は、振幅VがVth以上V1以下の場合、荷重Mが基準値よりも小さいことを表す信号Aを出力し、演算処理部36は、振幅VがV3以上Vth以下の場合、荷重Mが基準値よりも大きいことを表す信号Aを出力する。レベルの異なる複数の閾値Vthが、設定されてもよい。これにより、例えば、演算処理部36は、シートクッション44上の乗員が子供か大人かを判別でき、その判別結果を、乗員拘束装置を制御する制御装置に対して信号Aにより提供できる。
【0036】
第2の圧電素子122が設置される支持部材41は、板状のシートパンでもよいが、第2の振動波形Sbの振幅変化の検出を容易にする点で、シートパンよりも撓みやすいSバネが好ましい。Sバネは、シート部品の中でスプリングの機能を果たしており、Sバネとシートクッションとの組合せによりクッション性を確保している。シートクッションに荷重が加わることで、Sバネが徐々に撓み、振動部10により支持部材41に伝播する振動の抑制を段階的に行うことができる。これにより、荷重に対する第2の振動波形Sbの振幅の減衰特性をリニアに近づけることができ、荷重検知の精度が向上する。
【0037】
図6は、第1の圧電素子のシートクッションへの取り付け例を示す図である。図6に示す第1の圧電素子121は、シートクッション44のシートトリム42に蛇行して取り付けられる圧電ラインである。圧電ラインを蛇行させることにより、乗員の着座ずれが発生しても、生体検知が可能となる。例えば、臀部がシートクッション44上をスライドしても、生体検知が可能となるように、一定の間隔Gで圧電ラインを蛇行させることが好ましい。蛇行させる方向は、車両における前後方向でも、車両における左右方向でもよい。
【0038】
圧電ラインは、高分子圧電材を使う柔軟性のある圧電素子であり、印加される張力に応じた大きさの電圧信号を出力する。圧電ラインは、シートトリム42の表面又は裏面に敷設されており、人の体表の微弱な動き(振動)を検知する。
【0039】
なお、第1の圧電素子121は、クッションパッド43を覆うシートトリム42に取り付けられる圧電ラインに限られず、クッションパッド43を覆う別の基材(例えば、人の臀部を温めるためのヒータ)に取り付けられる圧電ラインでもよい。
【0040】
図7は、荷重検知用の荷重センサのSバネへの取り付け例を示す図である。図8は、荷重センサの構成例を示す図である。図7,8に示す荷重センサ17は、振動部10及び第2の圧電素子122を備える。荷重センサ17をSバネ41eに取り付ける位置は、Sバネ41e上での配線が容易で且つ配線長が比較的短い場所を選択することが好ましい。振動部10と第2の圧電素子122との間の距離が離れるほど、第2の圧電素子122から出力される振動波形の振幅が小さくなるので、振動部10と第2の圧電素子122とは、できるだけ近づけて隣接させることが好ましい。よって、第2の圧電素子122は、振動部10とワンパッケージでSバネ41eに取り付けられることで、第2の圧電素子122の出力信号を安定させることができる。
【0041】
第2の圧電素子122は、左右に連続的に蛇行するSバネ41eへの取り付けを容易にする点で、取り回し自在な圧電ラインであることが好ましい。また、第2の振動波形Sbの振幅が過度に小さくなることを防ぐため、第2の圧電素子122は、シートクッション44を支持する複数のSバネ41eのうち、振動部10が取り付けられるSバネ41eに取り付けられることが好ましい。つまり、第2の圧電素子122と振動部10が同じSバネ41eに取り付けられることが好ましい。
【0042】
図8に示す形態では、振動部10及び第2の圧電素子122は、両面接着フィルム14の一方の表面に接着される。両面接着フィルム14の他方の表面をSバネ41eに接着させることで、振動部10及び第2の圧電素子122をSバネ41eに固定できる。駆動ライン11は、振動部10を振動させる駆動信号Dが通る信号線である。検知ライン13は、第2の振動波形Sbが通る信号線である。グランド線12は、振動部10及び第2の圧電素子122の各々のグランドと、駆動信号Dを出力する駆動回路31のグランドとを結んでいる。
【0043】
図9は、第1の圧電素子の第1の具体的な取り付け例を示す図である。図9に示す形態では、第1の圧電素子121は、シートトリム42の裏側の複数の箇所で糸46で縫い付けられた圧電ラインである。シートトリム42への縫い付けにより、第1の圧電素子121をシートトリム42にしっかりと固定でき、第1の振動波形Saの乱れを抑制できる。
【0044】
図10は、第1の圧電素子の第2の具体的な取り付け例を示す図である。図11は、第1の圧電素子の第2の具体的な取り付け例を示す図である。図10,11に示す形態では、第1の圧電素子121は、クッションパッド43に取り付けられる圧電ラインである。クッション性を有するクッションパッド43への取り付けにより、第1の圧電素子121は、クッションパッド43に埋もれるので、第1の圧電素子121の取り付けによる臀部への異物感を低減又は無くすことができる。図10に示す形態では、蛇行する第1の圧電素子121に沿って第1の圧電素子121をフィルム47でラミネートし、両面テープでクッションパッド43に貼り付けられている。図11に示す形態では、蛇行する第1の圧電素子121の全体をフィルム47でラミネートし、両面テープでクッションパッド43に貼り付けられている。
【0045】
図10,11に示す形態では、クッションパッド43は、第1の圧電素子121の一部又は全部を収容する溝48を有する。溝48に収容することで、第1の圧電素子121の取り付けによる臀部への異物感を低減又は無くすことができる。溝48は、シートトリム42の縫い代を吊り込む吊り込み溝であると、シートトリム42の縫い代で第1の圧電素子121を溝48に押さえこむことができるので、第1の圧電素子121をクッションパッド43にしっかりと固定できる。
【0046】
図12は、振動部及び第2の圧電素子の第1の具体的な取り付け例を示す断面図である。振動部10及び第2の圧電素子122は、エポキシ樹脂18でモールドされ、両面テープや接着剤などの接着部材15でSバネ41eの湾曲表面に接着される。
【0047】
図13は、振動部及び第2の圧電素子の第2の具体的な取り付け例を示す断面図である。振動部10及び第2の圧電素子122は、エポキシ樹脂18でモールドされ、両面テープや接着剤などの接着部材で、金属製又は樹脂製のクリップ16に取り付けられる。振動部10及び第2の圧電素子122が取り付けられたクリップ16をSバネ41eに取り付けることで、振動部10及び第2の圧電素子122をワンタッチでSバネ41eに固定できる。
【0048】
図14は、第1の振動波形及び第2の振動波形を共通の検知ラインを介して取得する第1の配線例を示す図である。制御装置30は、駆動回路31及び検知回路37(図1参照) を有するECUである。制御装置30は、端子131,132,133を有する。
【0049】
図15,16は、図14に示す第1の配線例の詳細を示す図である。駆動回路31の駆動信号出力部に端子131を介して接続される駆動ライン11は、振動部10の駆動信号入力部に接続される。駆動回路31及び検知回路37のグランドに端子132を介して接続されるグランド線12は、グランド線12aを介して第1の圧電素子121のグランドに接続され、グランド線12bを介して振動部10及び第2の圧電素子122の各グランドに接続される。検知回路37の信号入力部に端子133を介して接続される検知ライン13は、検知ライン13aを介して第1の圧電素子121の信号出力部に接続され、検知ライン13bを介して第2の圧電素子122の信号出力部に接続される。
【0050】
図17は、第1の振動波形及び第2の振動波形を別々の検知ラインを介して取得する第2の配線例を示す図である。制御装置30は、端子131,132,133a,133bを有する。検知回路37は、第1の圧電素子121に接続される検知ライン13aを介して第1の振動波形Saを検出することによって生体検知を行い、第2の圧電素子122に接続される検知ライン13bを介して第2の振動波形Sbを検出することによって荷重検知を行う。検知ライン13aは、第1の圧電素子121の信号出力部と第1の振動波形Saが入力される端子133aとを結んでいる。検知ライン13bは、第2の圧電素子122の信号出力部と第2の振動波形Sbが入力される端子133bとを結んでいる。
【0051】
図18は、圧電ラインの構成例を示す図である。上述の圧電ラインは、例えば、図18に示す圧電ライン20と同じ構造を有する。圧電ライン20は、内部導体26と、内部導体26を囲む圧電材25と、圧電材25を囲む外部導体24とを備える同軸構造を有する。圧電ラインに印加された荷重に応じた電圧信号が内部導体26から出力される。外部導体24は、ノイズに対するシールドとして機能する。
【0052】
以上、乗員検知装置及びシートを実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【0053】
例えば、支持部材41に設置される振動部10の個数は、一つの限られず、複数でもよい。また、振動部10は、圧電素子に限られず、振動モータや振動アクチュエータなどの他の振動発生体でもよい。振動部10は、駆動信号Dにより振動する圧電ラインでもよい。振動部10を圧電ラインとすることで、支持部材41への取り付けの自由度が向上する。
【0054】
また、振動部10は、振動による荷重検知と振動による注意喚起とに兼用されてもよい。すなわち、駆動回路31は、荷重検知を行う場合、シートクッション44上の乗員に振動を感じさせない程度の大きさで振動部10が振動するように、一定の振幅且つ周波数で振動部10を振動させる駆動信号を出力する。一方、駆動回路31は、支持部材41を振動させることによってシートクッション44上の乗員に注意喚起を行う場合、シートクッション44上の乗員に振動を感じさせる程度の大きさで振動部10が振動するように、振動部10を振動させる駆動信号を出力する。これにより、荷重検知用の振動部と注意喚起用の振動部とを共通化できるので、回路構成が簡素化する。例えば、振動による注意喚起は、居眠り、車線逸脱又は車両衝突予測など、乗員に注意喚起すべき事象が検出された場合に実行される。
【0055】
また、圧電素子は、圧電ラインに限らず、帯状の圧電フィルムでもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 振動部
11 駆動ライン
12 グランド線
13 検知ライン
14 両面接着フィルム
15 接着部材
16 クリップ
17 荷重センサ
18 エポキシ樹脂
20 圧電ライン
24 外部導体
25 圧電材
26 内部導体
40 シート
41 支持部材
41e Sバネ
42 シートトリム
43 クッションパッド
44 シートクッション
45 シートバック
46 糸
47 フィルム
48 溝
121 第1の圧電素子
122 第2の圧電素子
S 検知波形
Sa 第1の振動波形
Sb 第2の振動波形
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18