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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】免震装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20230502BHJP
   F16F 15/023 20060101ALI20230502BHJP
   F16F 7/06 20060101ALI20230502BHJP
   F16F 9/12 20060101ALI20230502BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
F16F15/02 A
F16F15/023 A
F16F7/06
F16F9/12
E04H9/02 351
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019143634
(22)【出願日】2019-08-05
(65)【公開番号】P2021025576
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】小槻 祥江
(72)【発明者】
【氏名】磯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】杉本 浩一
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-184757(JP,A)
【文献】特開2000-274474(JP,A)
【文献】特開2018-087580(JP,A)
【文献】特開2012-037005(JP,A)
【文献】特開2019-002421(JP,A)
【文献】特開平09-291721(JP,A)
【文献】特開昭60-092570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02-15/10
F16F 7/06
F16F 9/12
E04H 9/02
F16H 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一構造体に固定されるとともに、内部に中空部が形成された軸線方向に延びる外筒と、
第二構造体に固定されるとともに、前記中空部内の軸線方向の一方側に前記外筒と同軸上に配置され、外周面にねじ溝が形成されたねじ軸と、
該ねじ軸に螺合され、該ねじ軸の軸方向運動を回転運動に変換するナットと、
前記中空部内の前記軸線方向の他方側に配置され、前記ナットに接合された内筒と、
前記外筒と前記内筒との間に配置された粘性体と、
摩擦材を有し、該摩擦材を前記ナットに押圧して該ナットの前記外筒に対する回転を拘束可能なロック機構と、を備えることを特徴とする免震装置。
【請求項2】
風速計と、
該風速計の計測結果に基づいて、該計測結果が閾値以上の場合に、前記ロック機構に対して、前記ナットの回転を拘束する信号を送信する制御部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
【請求項3】
前記ロック機構は、
先端部に前記摩擦材が設けられた押圧部と、
前記摩擦材を前記ナットに近接させるように圧縮力を付与する油圧ジャッキと、
前記摩擦材を前記ナットから離間させる方向に付勢する付勢部と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載の免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、地震時の揺れを低減するために、下記の特許文献1参照に示すような減衰機能を持つ装置を免震層に備えた免震建物が増加している。
【0003】
また、地震に対する免震性能は維持したまま、風力により生じる免震層の変位を抑えるために、所定の風速以上の場合に免震層をロックして免震層の変位を抑制するロック機構を備えた建物が提案されている。このロック機構では、地震時は免震層の動きを阻害せずに免震性能を維持し、所定の風速以上の場合にのみ、コントローラがソレノイドバルブに信号を出力し、オリフィス及びタンクを結ぶ油路を遮断するようにソレノイドバルブを切換させて、シリンダーにおけるピストンの出入動作をロックする構成とされている(下記の特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-37005号公報
【文献】特開平9-291721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載されたロック機構では、通常の免震装置を用いる場合よりも、ソレノイドバルブの切換等が必要になり、構成が複雑化してしまうという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、風により発生する免震層の変位を抑止することができるとともに、地震時には免震層の動きを阻害せずに免震性能を維持することができる免震装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る免震装置は、第一構造体に固定されるとともに、内部に中空部が形成された軸線方向に延びる外筒と、第二構造体に固定されるとともに、前記中空部内の軸線方向の一方側に前記外筒と同軸上に配置され、外周面にねじ溝が形成されたねじ軸と、該ねじ軸に螺合され、該ねじ軸の軸方向運動を回転運動に変換するナットと、前記中空部内の前記軸線方向の他方側に配置され、前記ナットに接合された内筒と、前記外筒と前記内筒との間に配置された粘性体と、摩擦材を有し、該摩擦材を前記ナットに押圧して該ナットの前記外筒に対する回転を拘束可能なロック機構と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このように構成された免震装置では、風に起因する外力が生じた際には、摩擦材をナットに押圧してナットの外筒に対する回転を拘束して、免震層の動きをロックすることができる。よって、複雑な制御システムを必要とせず、摩擦材をナットに押圧するという簡易な構成で、風により発生する免震層の変位を抑止することができる。
また、地震に起因する外力が生じた際には、ロック機構は解除されていて、ナット及びねじ軸は、軸方向運動を回転運動に変換して、外筒と内筒との間の粘性体の粘性抵抗により減衰力を発揮し、建物を免震し、減衰を付与することができる。
【0009】
また、本発明に係る免震装置は、風速計と、該風速計の計測結果に基づいて、該計測結果が閾値以上の場合に、前記ロック機構に対して、前記ナットの回転を拘束する信号を送信する制御部と、を備えることが好ましい。
【0010】
このように構成された免震装置では、風速計の計測結果が閾値以上の場合に、制御部が、ロック機構に対してナットの回転を拘束する信号を送信することで、免震層の動きをロックすることができる。よって、ロックする作業者を必要とせず、制御することができる。
あるいは、風速計の計測結果等に基づいて作業者が判断してナットの回転を拘束する信号を手動にて送信することも可能である。この場合の作業は信号送信スイッチのオンのみであり複雑な作業は必要としない。
【0011】
また、本発明に係る免震装置では、前記ロック機構は、先端部に前記摩擦材が設けられた押圧部と、前記摩擦材を前記ナットに近接させるように圧縮力を付与する油圧ジャッキと、前記摩擦材を前記ナットから離間させる方向に付勢する付勢部と、を有していてもよい。
【0012】
このように構成された免震装置では、風に起因する外力が生じた際には、油圧ジャッキの圧縮力により、押圧部に設けられた摩擦材がナットを押圧してナットの回転を拘束して、免震層の動きをロックすることができる。付勢部が摩擦材をナットから離間させる方向に付勢しているため、風に起因する外力が所定の風速以下の場合等には、摩擦材がナットから離間して、ロック機構が解除される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る免震装置によれば、簡易な構成で、風により発生する免震層の変位を抑止することができるとともに、地震時には免震層の動きを阻害せずに免震性能を維持して、建物を免震することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る免震装置を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る免震装置のロック機構を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る免震装置のロック機構を示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る免震装置のロック機構を示す断面図であり、ロック解除時を示している。
図5】本発明の一実施形態に係る免震装置のロック機構を示す断面図であり、ロック時を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る免震装置について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る免震装置を示す図である。図1では、免震装置の一部を断面として記載している。
図1に示すように、本実施形態に係る免震装置100は、相対変位可能な柱と梁等のような第一部材(第一構造体)A1と第二部材(第二構造体)A2との間に設けられていて、第一部材A1と第二部材A2との相対変位を低減するように構成されている。
【0016】
免震装置100は、免震機構1と、ロック機構3と、を備えている。免震装置100は、軸線Oを中心軸として配置されている。軸線Oに沿う方向をX方向として、X方向の一方側を+X側とし、他方側を-X側とする。免震装置100は、X方向の+側から-側に沿って、増幅部B1、伝達部B2及び減衰部B3の各領域に区分されている。
【0017】
免震機構1は、固定外筒(外筒)10と、ねじ軸15と、ナット20と、回転内筒25と、を有している。固定外筒10、ねじ軸15、ナット20及び回転内筒25は、軸線Oを同軸として配置されている。
【0018】
固定外筒10は、外筒本体11と、端部プレート12a,12bと、を有している。外筒本体11は、軸線Oを軸線方向として、筒状に形成されている。端部プレート12a,12bは、外筒本体11のX方向の両端部に設けられている。端部プレート(-X側に配置された端部プレート)12bには、第二部材A2に固定される第二取付部13が設けられている。固定外筒10の内部には、中空部Sが形成されている。
【0019】
ねじ軸15は、固定外筒10の+X側の端部から中空部Sに挿入されている。ねじ軸15は、増幅部B1に配置されている。
【0020】
ねじ軸15は、棒状の部材であり、軸線Oを軸線方向として配置されている。ねじ軸15の+X側の端部には、第一部材A1に固定される第一取付部17が設けられている。
【0021】
図2は、ロック機構3を示し、軸線Oに沿う断面図である。
図2に示すように、ねじ軸15の外周面には、ねじ溝16が形成されている。ねじ溝16には、ねじ溝16を転動可能なボールベアリング18(図2参照。以下同じ。)が配置されている。
【0022】
ナット20には、ねじ軸15が挿通される挿通孔21が形成された円筒状の部材である。ナット20は、ボールベアリング18を介してねじ軸15に螺合されている。図1に示すように、ナット20は、増幅部B1に配置されている。ナット20は、外筒本体11とスラスト軸受け23を介して回転可能に接合される。ナット20及びねじ軸15は、並進運動(軸方向運動)を回転運動に、または回転運動を並進運動に変換するねじ運動機構を構成している。
【0023】
回転内筒25は、固定外筒10の内部に配置されている。回転内筒25は、ナット20と接合されている。回転内筒25は、減衰部B3に配置されている。回転内筒25は、固定外筒10内でナット20とともに回転可能とされている。
【0024】
減衰部B3において、固定外筒10と回転内筒25との間には、粘性体26が配置されている。固定外筒10と回転内筒25との間には、X方向の両側にOリング27が設けられている。
【0025】
ロック機構3は、ナット20の固定外筒10に対する回転を拘束可能に構成されている。ロック機構3は、制御盤30と、油圧ポンプ35と、油圧ジャッキ(油圧シリンダー)40と、ロック装置50と、を有している。
【0026】
制御盤30は、油圧ポンプ35に電気的に接続されている。制御盤30は、圧力表示部31と、スイッチ32と、を有している。圧力表示部31には、油圧ポンプ35の圧力が表示される。スイッチ32のオン及びオフにより、油圧ポンプ35の作動及び停止が可能である。
【0027】
油圧ポンプ35は、油圧ジャッキ40に油圧配管36で接続されている。油圧ポンプ35は、モータ37と、圧力計38と、を有している。モータ37は、油圧ジャッキ40を作動する駆動源である。圧力計38は、油圧ジャッキ40の圧力を計測する。油圧ポンプ35は、小型のものであり、固定外筒10に設置可能である。油圧配管36は、可撓性のない鋼製の部材であってよい。
【0028】
図3は、ロック機構3を示し、軸線Oに直交する断面図である。
図3に示すように、油圧ジャッキ40は、固定外筒10の外筒本体11の周方向に沿って複数設置されている。本実施形態では、油圧ジャッキ40は、4箇所に設置されているが、1箇所以上に設置されていればよい。
【0029】
図4は、ロック機構3を示し、軸線Oに沿う断面図であり、ロック解除時を示している。
図4に示すように、固定外筒10の外筒本体11の外側には、反力治具41が設けられている。油圧ジャッキ40は、反力治具41に支持されている。油圧ジャッキ40は、油圧ポンプ35(図1参照。以下同じ。)が作動することで、反力治具41からの反力を利用して、後述する押し棒51を径方向の内側に移動させて、後述する摩擦材55をナット20に押圧させるように圧縮力を付与する。
【0030】
図2に示すように、ロック装置50は、押し棒(押圧部)51と、摩擦材55と、付勢部60と、を有している。
【0031】
押し棒51は、ジャッキ固定部52と、棒本体53と、摩擦材支持部54と、を有している。
【0032】
ジャッキ固定部52は、油圧ジャッキ40に固定されている。ジャッキ固定部52は、外筒本体11の外側に配置されている。
【0033】
固定外筒10の外筒本体11には、径方向に貫通する取付孔14が形成されている。棒本体53は、ジャッキ固定部52から径方向の内側に延びている。棒本体53は、外筒本体11の取付孔14に挿通されている。摩擦材支持部54は、棒本体53の先端部(径方向内側の端部)に設けられている。
【0034】
摩擦材55は、摩擦材支持部54における径方向の内側を向く面に設けられている。摩擦材55は、ナット20の外周面に当接可能とされている。図2に示す摩擦材55がナット20の外周面に当接した状態(ロック状態)で、固定外筒10の外筒本体11の取付孔14には、摩擦材支持部54よりも径方向の外側にスペースが形成されている。これにより、棒本体53が径方向の外側に変位した際には、摩擦材支持部54がスペースに入って、摩擦材55がナット20の外周面から離間可能とされている。
【0035】
付勢部60は、ジャッキ固定部52と外筒本体11との間に設けられている。付勢部60は、摩擦材55をナット20から離間する方向、つまり径方向の外側に付勢している。本実施形態では、付勢部60は、皿ばねで構成されている。
【0036】
次に、上記の免震装置100の動作について説明する。
通常時には、制御盤30のスイッチ32はオフにされ、油圧ポンプ35は作動しておらず、図4に示すロック解除状態で、摩擦材55がナット20から離間している。
地震時に、第一部材A1と第二部材A2との間で層間変位が生じた際には、ナット20及びねじ軸15は、並進運動を回転運動に変換して、減衰部B3で固定外筒10と回転内筒25との間の粘性体26の粘性抵抗により減衰力を発揮する。つまり、粘性ダンパーとして機能する。
【0037】
図5は、ロック機構3を示し、軸線Oに沿う断面図であり、ロック時を示している。
風速が閾値を超えた場合には、自動的に、あるいは作業者が制御盤30のスイッチ32をオンにして、油圧ポンプ35を作動させ、油圧ジャッキ40の圧縮力により、図5に示すように、押し棒51を径方向の内側に移動させて、摩擦材55でナット20を押圧する。図3に示すように、ジャッキ軸力Nにより、摩擦材55とナット20との間に摩擦抵抗力Pが生じる。これにより、ロックされ、ナット20及びねじ軸15の並進運動が停止し、免震層の変位が抑制される。
【0038】
作業者が制御盤30のスイッチ32をオフにする。あるいは、ロック状態から数時間後にスイッチがオフとなる設定を設けることで自動的にオフとなる。これにより、油圧ポンプ35が停止し、油圧ジャッキ40からの圧縮力がなくなり、付勢部60の付勢力により押し棒51が元の位置(径方向の外側)に移動する。摩擦材55がナット20から離間して、摩擦抵抗力Pが消失する。
【0039】
なお、ロック時に、大地震やより大きな風外力が生じて、設置したロック荷重を超える荷重が作用した場合に、摩擦材55がナット20上を滑り、ロックが解除される構成であってもよい。
【0040】
例えば、最大軸減衰力1400kNの減衰こまを用いて、保証荷重100kN、ストローク25mmの油圧シリンダーを4台設置した際の、各種数値は表1に示すとおりである。
【0041】
【表1】
【0042】
トルクT、必要摩擦力P及び必要ジャッキ軸力Nの計算は、数式(1)~(3)に示すとおりである。
【0043】
【数1】
【0044】
【数2】
【0045】
【数3】
【0046】
このように構成された免震装置100では、風に起因する外力が生じた際には、摩擦材55をナット20に押圧してナット20の固定外筒10に対する回転を拘束して、免震層の動きをロックすることができる。よって、複雑な制御システムを必要とせず、摩擦材55をナット20に押圧するという簡易な構成で、風により発生する免震層の変位を抑止することができる。
【0047】
また、地震に起因する外力が生じた際には、ロック機構3は解除されていて、ナット20及びねじ軸15は、並進運動を回転運動に変換して、固定外筒10と回転内筒25との間の粘性体26の粘性抵抗により減衰力を発揮し、建物を免震し、減衰を付与することができる。
【0048】
また、風に起因する外力が生じた際には、油圧ジャッキ40の圧縮力により、押し棒51に設けられた摩擦材55がナット20を押圧してナット20の回転を拘束して、免震層の動きをロックすることができる。付勢部60が摩擦材55をナット20から離間させる方向に付勢しているため、風に起因する外力が所定の風速以下の場合等には、摩擦材55がナット20から離間して、ロック機構3が解除される。
【0049】
また、シアピンや鋼材ダンパーを用いた耐風ロック機構と異なり、ロック後も部材の交換を必要とせず、自動的に解除できる。また、常時に免震層の剛性を増大させないため、中小地震時にも本来の免震性能を発揮できる。
【0050】
また、免震機構(粘性ダンパー)1にロック機構3を付加するだけの構成であるため、安価に機能追加することができる。すなわち、常時及び地震時には、通常の粘性ダンパーとして機能しつつ、暴風時に免震層をロックする装置となる。ただし、ロック機構3の摩擦抵抗力Pと粘性抵抗力との和がダンパー反力となることから、減衰部B3の長さを縮小したり、減衰部B3を省略しロック機構3だけにしたりすることもできる。また、ロック機構3作動中に地震に遭遇した場合、ロック機構3を解除して摩擦抵抗力Pを消失させる方法をとることもできる。
【0051】
また、ボールねじ機構を利用しているため、ナット(ボールナット)20と固定外筒10の外筒本体11との間の摩擦抵抗力Pはロック荷重と比べて桁違いに小さくて済む。表1に示すように、ロック荷重(装置の軸方向力)1000kNに対し、ナット20と固定外筒10の外筒本体11との間の摩擦抵抗力Pは、18.6×4台=74.4kNと極めて小さくなる。このため、摩擦材55をナット20に押し当てるジャッキ反力も小さくてよい。また、摩擦抵抗を生じさせるためのジャッキストロークも僅かで済む。そのため、使用する油圧ジャッキは小型軽量の安価なものでよく、油圧ポンプ35も油量が小さい装置でよいことから、安価に装置を実現することができる。
【0052】
また、油圧ジャッキ40及び油圧ポンプ35はコンパクトな構成であるため、油圧ジャッキ40及び油圧ポンプ35を免震機構1に載せることができる。よって、油圧ジャッキ40と油圧ポンプ35との間の相対変位がないため、可撓性のない安価な鋼製の油圧配管36で接続でき、高圧で信頼性の高い油圧システムを安価に構築することができる。
【0053】
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0054】
例えば、上記に示す実施形態では、作業者等の人によりスイッチ32のオン・オフが行われているが、本発明はこれに限られない。免震装置100が、風速計と、制御部と、を備え、風速計の計測結果に基づいて、計測結果が閾値以上の場合に、ロック機構3に対して、ナット20の回転を拘束する信号を送信する構成であってもよい。この場合には、風速計の計測結果が閾値以上の場合に、制御部が、ロック機構3に対してナット20の回転を拘束する信号を送信することで、免震層の動きをロックすることができる。よって、ロックする作業者を必要とせず、制御することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…免震機構
3…ロック機構
10…固定外筒(外筒)
15…ねじ軸
16…ねじ溝
18…ボールベアリング
20…ナット
25…回転内筒(内筒)
26…粘性体
30…制御盤
35…油圧ポンプ
40…油圧ジャッキ
50…ロック装置
51…押し棒(押圧部)
55…摩擦材
60…付勢部
100…免震装置
A1…第一部材(第一構造体)
A2…第二部材(第一構造体)
B1…増幅部
B2…伝達部
B3…減衰部
S…中空部
図1
図2
図3
図4
図5