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  • 特許-糖化反応抑制用組成物 図1
  • 特許-糖化反応抑制用組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】糖化反応抑制用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20230502BHJP
   A61K 36/21 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230502BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/21
A61P17/00
A61Q19/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019157890
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021035923
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐太朗
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-027034(JP,A)
【文献】特表2014-511394(JP,A)
【文献】特開2018-197211(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0290575(US,A1)
【文献】Serum,ID 3395565,Mintel GNPD[online],2015年8月,[検索日2022.12.09],URL,https://www.portal.mintel.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K36/00
A61P 1/00-43/00
Mintel GNPD
CAplus/MEDLINE/KOSMET/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッケシソウの二酸化炭素超臨界抽出物を有効成分として含有する、生体内タンパク質糖化反応抑制用組成物。
【請求項2】
タンパク質が皮膚角層タンパク質である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ステロール類を0.1~5質量%含有するアッケシソウの抽出物を有効成分として含有する請求項1または2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内のタンパク質糖化反応を抑制する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
糖化(グリケーション)とは、還元糖とタンパク質が非酵素的な不可逆反応(メイラード反応)により結合し、様々な中間体を経て終末糖化産物(Advanced Glycation Endproducts:AGEs)を形成する現象である。
生体の老化に伴い、体内の各組織や部位において、このメイラード反応が生じ、AGEsが蓄積する。皮膚おいて糖化反応が進行すると、皮膚組織にAGEsが蓄積する。皮膚へのAGEsの蓄積は、皮膚の黄ぐすみや透明感の低下を引き起こすため、美容上の観点からも好ましくないとされる。
【0003】
この糖化反応を抑制するために、肌表面から糖化を抑制する物質を塗布して、タンパク質の糖化を抑制する方法が公知である。特許文献1には、糖化を抑制する天然由来の素材として、例えば、シスツスモンスペリエンシス(Cistus monspeliensis)の抽出物や含有されるエラジタンニンが、肌のメイラード反応を阻害することが記載されている。
【0004】
また特許文献2には、大豆抽出物に含有される大豆サポニンBグループを有効成分とする生体内グリケーション抑制剤が記載されている。
【0005】
一方、近年化粧料の素材として、アッケシソウの抽出物が注目されている。アッケシソウは、ヒユ科に属する一年性草本で、世界的にはヨーロッパ、アジア、北アメリカなどの寒帯地域に広範囲に分布する。潮汐の干満に規定される、平均冠水位から満潮水位の間の海に接する陸地や内陸に発達する塩湿地に生育する塩生植物である。
アッケシソウ抽出物は、すでに化粧料に配合されている。その配合目的は、皮膚バリア機能回復作用・抗酸化作用・抗炎症作用(特許文献3)、角層細胞の強化作用(特許文献4)、皮膚へのビタミンC取込促進作用(特許文献5)などの作用の発揮を目的としている。
しかし、アッケシソウやアッケシソウ抽出物に糖化反応抑制作用やメイラード反応抑制作用が存在することは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5441232号公報
【文献】特開2012-17270号公報
【文献】特許第3987825号公報
【文献】特開2010-13373号公報
【文献】特開2018-197211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、ヒト皮膚の糖化反応を抑制する物質を探索する過程でアッケシソウ抽出物に強い糖化反応抑制作用を見出し、本発明をなした。
すなわち、本発明は、アッケシソウ抽出物を有効成分として含有する生体内タンパク質糖化反応抑制用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成からなる。
(1)アッケシソウの抽出物を有効成分として含有する、生体内タンパク質糖化反応抑制用組成物。
(2)タンパク質が皮膚角層タンパク質である(1)に記載の組成物。
(3)アッケシソウの抽出物が、アッケシソウの全草の超臨界法による抽出物である(1)または(2)に記載の組成物。
(4)ステロール類を0.1~5質量%含有するアッケシソウの抽出物を有効成分として含有する(1)~(3)のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、アッケシソウの抽出物を有効成分とする、生体内タンパク質糖化反応抑制用組成物が提供される。本発明の組成物は、皮膚に外用することで皮膚角層内のタンパク質の糖化反応を抑制し皮膚組織へのAGEsの蓄積を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】糖化試験に用いるグリオキサールの最適濃度を決定するために行った予備試験の結果を示すグラフである。図中のAGはアミノグアニジンの略である。
図2】植物抽出物について糖化反応抑制作用をスクリーニングした試験結果を示すグラフである。
図3】アッケシソウエキスの抽出方法によって、糖化反応抑制作用の効果が異なることを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について具体的に説明する。
なお、本発明でいう「組成物」とは、アッケシソウの抽出物を含有し、タンパク質の糖化反応を抑制する作用を有するものをいう。「組成物」には、化粧品、医薬品、医薬部外品の、内用及び/または外用形態の剤形となるようにアッケシソウ抽出物を公知の製剤用添加物とともに含有するものをいう。
また本発明でいう「糖化反応」とは、グリケーションとも呼ばれるが、アミノカルボニル反応、あるいはメイラード反応として知られていた褐変反応である。前期段階と後期段階との二段階からなり、タンパク質のアミノ基と還元糖のアルデヒド基やケトン基とが非酵素的に反応し、シッフ塩基を経てアマドリ転移生成物が生成される反応をいう。この反応は可逆的である。後期段階においては、活性酸素の発生を含む複雑な反応を経て、終末糖化産物(Advanced Glycation Endproducts:AGEs)が生成される。この反応は不可逆的である。
「糖化反応の抑制」とは上記過程のいずれの段階の糖化反応過程の阻害であっても良く、終末糖化産物(Advanced Glycation Endproducts:AGEs)の産生量が抑制されていることをいう。
【0012】
本発明の原料として用いられるアッケシソウは、その産地や由来を特に限定されるものではないが、ヨーロッパ、アジア、北アメリカの海岸部に生育するアッケシソウ(厚岸草、学名Salicornia europaea)全草の抽出物が好ましく用いられる。
【0013】
アッケシソウの抽出物は、アッケシソウから、必要ならば予め水洗して異物を除いた後、抽出しようとする部位を、そのままもしくは乾燥した上、必要に応じて細切或いは粉砕して抽出に用いる。
【0014】
本発明は、アッケシソウの全草の超臨界抽出物が好ましく用いられる。特に二酸化炭素による超臨界抽出が好ましい。超臨界抽出装置に特に制限はない。またアッケシソウの植物から直接超臨界抽出してよい。抽出操作にあたっては、アッケシソウの全草を超臨界抽出装置内の抽出槽に収納し、抽出溶媒として二酸化炭素を用いて、抽出操作を行う。適切な抽出条件は、例えば、二酸化炭素流量10~100g/分、抽出圧力10~100MPaおよび抽出温度32~100℃である。より好ましくは二酸化炭素流量65g/分、抽出圧力25MPaおよび抽出温度40℃である。かくして得られたアッケシソウの超臨界抽出物の特徴はステロール類やテルペン類を多く含有することである。ここで、ステロール類を多く含むとは、アッケシソウ抽出物中のステロール類含有率が0.1~5.0質量%、より好ましくは1.0~1.5質量%である。ステロール類の含有率が0.1~5.0質量%である抽出方法であれば、超臨界抽出法をとらなくてもよく、得られたアッケシソウ抽出物は本発明のアッケシソウ抽出物として好ましく使用できる。
【0015】
なお、超臨界抽出により抽出したアッケシソウの抽出物は、それを含むアッケシソウエキスとして市販されており、これを本発明に用いても良い。このような市販されているものとして「アッケシソウ抽出物4質量%含有品:ハイドラサリノール」CODIF RECHERCHE ET NATURE製(販売:株式会社イクノス)を例示できる。ハイドラサリノールは、アッケシソウ抽出物4質量%、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル96.0質量%から成る。トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルは希釈溶媒である。
【0016】
本発明のアッケシソウの抽出物は、ヒト又は哺乳動物の皮膚に塗布又は外用することで、皮膚角層における糖化を抑制する。このため、皮膚における糖化の進行を予防又は改善する目的の医薬部外品、医薬品等として使用可能である。
【0017】
アッケシソウの抽出物を医薬部外品や医薬品、或いは化粧料等の外用剤の製剤とする場合は、アッケシソウの抽出物を一般的な製造法により、直接又は製剤上許容し得る担体とともに混合、分散した後、所望の形態に加工することによって、容易に得ることができる。この場合、本発明に用いられる抽出物の他に、かかる形態に一般的に用いられる植物油、動物油等の油性基剤、鎮痛消炎剤、鎮痛剤、殺菌消毒剤、収斂剤、ホルモン剤、ビタミン類、保湿剤、紫外線吸収剤、アルコール類、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、増粘剤、色素、香料等を本発明の効果を妨害しない範囲で適宜配合することができる。
本発明のアッケシソウの抽出物を含有する組成物は、その含有量が特に限定されるものではないが、好ましくは抽出物として通常全組成の0.0001~10質量%、好ましくは0.001~5質量%、特に好ましくは0.001~1質量%の範囲で含有される組成物とする。
【実施例
【0018】
糖化反応抑制試験例を示し、本発明についてさらに説明する。
1.予備試験(皮膚角層を用いた糖化反応抑制剤の最適濃度の決定)
(1)方法
粘着テープ(セロハンテープ、ニチバン製)を成人の前腕内側部の皮膚表面に密着させ、はがすことで皮膚角層を採取した。
角層の付着した粘着テープをAPSコートスライドガラス(松浪硝子工業製)に貼り、キシレン(富士フイルム和光純薬製)に一晩浸漬した。その後、キシレン中より取り出し、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(以下「PBS」、富士フイルム和光純薬製)に浸漬して洗浄した(室温、5分、3回)。その後、エタノール(富士フイルム和光純薬製)で調製したグリオキサール溶液(糖化誘導剤;富士フイルム和光純薬製)に浸漬し、37℃で一晩、糖化を誘導した。または、エタノール(富士フイルム和光純薬製)で調製したアミノグアニジン(糖化反応抑制剤;東京化成工業製)溶液に浸漬し、37℃で一晩反応させた。
グリオキサール溶液は最終濃度が0、0.625、1.25、2.5、5mmol/Lとなるように調製した。
アミノグアニジン(AG)は最終濃度が0、1、5、10mmol/Lとなるように調製した。
グリオキサールによる糖化誘導後、PBSで洗浄(室温、5分、3回)した後、内因性酵素のブロッキングのため、濃度3容量%となるようにPBSで調製した過酸化水素(富士フイルム和光純薬製)に15分間、室温で浸漬した。その後、PBSで洗浄(室温、5分、3回)し、風乾後、蛍光顕微鏡で励起波長360/40nm、吸収波長460/50nmで1テープあたり3視野ずつ撮影した。
皮膚角層は自家蛍光を持つことが知られおり、さらに、その自家蛍光は糖化タンパクの蓄積により増加することが知られている。そこで、画像中の角層細胞1個あたりの蛍光強度を、画像解析ソフトを用いて計測し、糖化タンパク質量とした。なお糖化タンパク質量は、0mMのグリオキサールの値を1としたときの相対値(ratio/0mMGO)として示した。
【0019】
(2)結果
試験結果を図1に示す。図1において、例えば0mM AGは、0mmol/Lの溶液にした場合、1mM AGは、1mmol/Lの溶液にした場合である。
図1に示すように、糖化誘導剤グリオキサールの濃度に依存して自家蛍光が増大することが判明した。
これは、グリオキサールによってタンパク質の糖化が誘導され、AGEsが蓄積し、自家蛍光が増大したことを示すものである。
グリオキサールは、本試験において評価したいずれの濃度においても自家蛍光を増大させたが、自家蛍光の増大率が高く、かつ、さらに糖化した場合も観察できると考えられる5mmol/Lが糖化反応抑制作用の評価に最も好適であると考えられた。以下の試験においてはこの濃度を採用した。
また、アミノグアニジン(AG)の添加濃度に応じて、蛍光強度が減少した。
アミノグアニジン(AG)は、5mmol/L以上の濃度でグリオキサールによる糖化を強く抑制することが判明した。このため、以降の試験例では、糖化反応抑制のポジティブコントロールとして使用した。
【0020】
2.植物抽出物の糖化反応抑制効果スクリーニング
<植物抽出物の糖化反応抑制試験を用いた一次スクリーニング>
化粧品原料として市販されている植物抽出物を用いた一次スクリーニングを行った。
一次スクリーニングは、次の表1に記載のものを用いた。なおシスツスモンスペリエンシスエキスは、タンパク質糖化反応抑制効果が既に知られている
【0021】
【表1】
ただし、組成はすべて質量%で記載。
【0022】
なお表1に記載のアッケシソウエキス(「アッケシソウ超臨界抽出物4質量%含有品:ハイドラサリノール」CODIF RECHERCHE ET NATURE製(販売:株式会社イクノス))を常法により分析したところ、アッケシソウ抽出物中1.35質量%がステロール類であった。残りの98.65質量%の成分については、非鹸化画分以外不明である。また、複数ロットを同様に分析したところ、ステロール類の合計含有量は0.1~5.0質量%の範囲にあった。
【0023】
(1)スクリーニング試験方法
PBS、ポジティブコントロールのアミノグアニジン(AG)、各被験物に共通して含有されているトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(希釈剤)及び、表1の被験物を上記の予備試験と同様の方法で試験を行った。なお、グリオキサールは最終濃度が5mmol/L、被験物質である植物抽出液は最終濃度が20容量%となるように調製し、ポジティブコントロールとしてアミノグアニジン(AG)を最終濃度が5mmol/Lとなるように調製した。
【0024】
(2)結果
図2に試験結果を示す。
試験結果は、糖化誘導した場合の蛍光強度(グリオキサール5mmol/Lのとき)と、糖化誘導していない場合の蛍光強度(グリオキサール0mmol/Lのとき)の比(5mM/0mM ratio)で示した。比較に際し、以下の計算式を用いて補正した値を示した。この値が1より小さいほど糖化抑制作用が強いことを示す。
【0025】
計算式
vs Control=(被験物の5mM/0mM ratio)/(希釈剤の5mM/0mM ratio)
【0026】
また測定結果は、図2中に次の順で示した。
PBS
アミノグアニジン(糖化抑制剤)
トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル(希釈剤)
アッケシソウエキス
シスツスモンスペリエンシスエキス
ウラボシヤハズエキス
ヘリクリスムイタリクムエキス
【0027】
シスツスモンスペリエンシスエキス及びアッケシソウエキスに、強いタンパク質の糖化反応抑制作用があることが確認された。
【0028】
3.アッケシソウエキス抽出方法の相違による糖化反応抑制効果確認試験
<超臨界抽出法と溶媒抽出法によるエキスの効果試験>
アッケシソウエキスについて、抽出方法の異なるエキス(二酸化炭素超臨界抽出物、水抽出物、エタノール抽出物、1,3-ブチレングリコール(BG)抽出物)を用いて試験を行った。

・二酸化炭素超臨界抽出物:「ハイドラサリノール」CODIF RECHERCHE ET NATURE製 アッケシソウ超臨界抽出物4質量%含有品
・水抽出物:アッケシソウ水抽出物2質量%含有品
・エタノール抽出物:アッケシソウエタノール抽出物2質量%含有品
・BG抽出物:アッケシソウBG抽出物2質量%含有品

なお、抽出方法が異なる前記エキスを含む上記4原料の組成を、表2に示す。
【0029】
【表2】

ただし、組成はすべて質量%で記載。
【0030】
(1)試験方法
上記したスクリーニング試験と同様の試験方法で試験を行った。なお、グリオキサールは最終濃度が5mmol/L、被験物質である各抽出方法により得たアッケシソウエキスは、最終濃度でアッケシソウ抽出物として0.8質量%含有するように調製した。ポジティブコントロールとしてアミノグアニジンを最終濃度が5mmol/Lとなるように調製して試験に用いた。
またハイドラサリノールに96質量%含有されているトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルおよび、水抽出物、エタノール抽出物、BG抽出物を含有する各原料中に30質量%含有されているBGについても同様に測定した。
【0031】
(2)試験結果
図3に試験結果を示す。
試験結果は、上記のクリーニング試験と同様に、糖化誘導した場合の蛍光強度(グリオキサール5mmol/Lのとき)と、糖化誘導していない場合の蛍光強度の(グリオキサール0mmol/Lのとき)の比(5mM/0mM ratio)を算出した。比較に際し、抽出方法により溶媒が異なるため、以下の計算式を用いて補正した値を示した。この値は、1より小さいほど糖化抑制作用が強いことを示す。
【0032】
計算式
vs Control=(被験物の5mM/0mM ratio)/(コントロール(トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル又はBG)の5mM/0mM ratio)
【0033】
水、エタノール、BGによる各抽出物には抗糖化作用が確認されなかった。一方、超臨界抽出物に糖化反応抑制作用があることが判明した。
【0034】
本試験で用いた、ハイドラサリノールに含まれるアッケシソウ抽出物は、二酸化炭素超臨界抽出物であり、ステロール類を0.1~5.0質量%含有する。一般的に水抽出物には、ミネラル、糖類、アミノ酸が多く抽出され、ステロール類はほとんど抽出されないことが知られており、この抽出成分の違いが、タンパク質糖化抑制作用の違いに現れたものと考えられる。
【0035】
以下にアッケシソウ抽出物を配合した外用クリーム、外用乳液、化粧料の処方例を示す。この処方例は、目的によりアッケシソウ抽出物の配合量を適宜増減してもよい。処方例中のアッケシソウ抽出物は、二酸化炭素超臨界抽出物である。
処方例1 外用クリーム
下記の処方(単位は質量%)により、抗糖化作用を有する外用クリームを製造した。
(1)ステアリルアルコール 6
(2)ステアリン酸 2
(3)水添ラノリン 4
(4)スクワラン 9
(5)オクチルドデカノール 10
(6)POE(25)セチルアルコールエーテル 3
(7)モノステアリン酸グリセリン 2
(8)アッケシソウ抽出物 5
(9)防腐剤 適量
(10)1,3ブチレングリコール 6
(11)PEG1500 4
(12)精製水 残余
〔製法〕上記成分(1)~(8)を80℃に加熱溶解し油相とする。成分(9)~(12)を70℃に加熱溶解し水相とする。油相に水相を徐々に加え乳化し、攪拌しながら40℃まで冷却し、さらに30℃まで撹拌冷却して抗糖化作用を有する外用クリームを得た。
【0036】
処方例2 外用乳液
下記の処方(単位は質量%)により、抗糖化作用を有する外用乳液を製造した。
(1)ジプロピレングリコール 9
(2)アッケシソウ抽出物 0.0001
(3)(ヒドロキシエチルアクリル酸/アクリルジメチルタウリンNa)コポリマー
0.188
(4)スクワラン 0.127
(5)ポリソルベート60 0.028
(6)ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)1
(7)グリセリン 5
(8)ジメチコン 3
(9)精製水 76.3919
(10)カルボマー 0.2
(11)ベタイン 2
(12)エタノール 3
(13)水酸化カリウム 0.065
〔製法〕上記成分(2)、(4)~(6)、(8)を80℃に加熱溶解し油相とする。成分(1)、(3)、(7)、(9)~(11)を70℃に加熱溶解し水相とする。油相に水相を徐々に加え乳化し、(13)を(9)の一部に撹拌溶解したものを加え、攪拌しながら30℃まで冷却する。さらに成分(12)を加え、抗糖化作用を有する外用乳液を得た。
【0037】
処方例3 軟膏
常法に従って、下記の処方(単位は質量%)により抗糖化作用を有する軟膏を製造した。
(1)白色ワセリン 24
(2)プロピレングリコール 12
(3)ステアリルアルコール 20
(4)パラオキシ安息香酸メチル 0.05
(5)アッケシソウ抽出物 10
(6)香料 0.1
(7)精製水 33.85
【0038】
処方例4 クレンジングオイル
常法に従って、下記の処方(単位は質量%)により抗糖化作用を有するクレンジングオイルを製造した。
(1)エチルヘキサン酸セチル 71.349
(2)ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 5
(3)メドウフォーム油 1
(4)イソステアリン酸ヘキシルデシル 2
(5)ジイソステアリン酸デカグリセリル 8
(6)ジカプリン酸ヘキサグリセリル 9
(7)モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20EO) 1.7
(8)モノイソステアリン酸ジグリセリル 0.4
(9)(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル 1.3
(10)ステアリン酸イヌリン 0.15
(11)トコフェロール 0.1
(12)アッケシソウ抽出物 0.001
【0039】
処方例5 クレンジングオイル
常法に従って、下記の処方(単位は質量%)により抗糖化作用を有するクレンジングオイルを製造した。
(1)エチルヘキサン酸セチル 66.35
(2)ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 5
(3)メドウフォーム油 1
(4)イソステアリン酸ヘキシルデシル 2
(5)ジオレイン酸デカグリセリル 8
(6)ジカプリン酸ヘキサグリセリル 9
(7)モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20EO) 1.7
(8)モノイソステアリン酸ジグリセリル 0.4
(9)(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル 1.3
(10)ステアリン酸イヌリン 0.15
(11)トコフェロール 0.1
(12)アッケシソウ抽出物 5
【0040】
処方例6 クレンジングジェル
常法に従って、下記の処方(単位は質量%)により抗糖化作用を有するクレンジングジェルを製造した。
(1)エチルヘキサン酸セチル 54.2
(2)トリエチルヘキサノイン 20
(3)ジイソステアリン酸デカグリセリル 8
(4)ジカプリン酸ヘキサグリセリル 9
(5)モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20EO) 1.7
(6)モノイソステアリン酸ジグリセリル 0.6
(7)(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル 3
(8)(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン 2
(9)パルミチン酸デキストリン 0.5
(10)アッケシソウ抽出物 1
【0041】
処方例7 保湿美容乳液
下記の処方(単位は質量%)により、抗糖化作用を有する保湿美容乳液を製造した。
(1)グリセリン 10
(2)1,3-ブチレングリコール 5
(3)ベタイン 3
(4)ジプロピレングリコール 7
(5)クエン酸 0.01
(6)クエン酸ナトリウム 0.1
(7)キサンタンガム 0.08
(8)1,2-ペンタンジオール 1
(9)スクワラン 3
(10)ジメチコン 1
(11)ポリソルベート60 0.8
(12)ステアリン酸ソルビタン 0.3
(13)アッケシソウ抽出物 0.001
(14)精製水 残余
(製法)
成分14へ成分8に加熱分散させた成分7を加え、成分1~6も加えて撹拌溶解する(水相)。成分9~13を加熱溶解した中に、先に調製した水相を加え乳化して抗糖化作用を有する乳化組成物(保湿美容乳液)を調製した。
図1
図2
図3