(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】ベローズポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F04B 43/10 20060101AFI20230502BHJP
F04B 49/02 20060101ALI20230502BHJP
F04B 49/16 20060101ALI20230502BHJP
F04B 49/22 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
F04B43/10
F04B49/02 321
F04B49/16
F04B49/22
(21)【出願番号】P 2019163783
(22)【出願日】2019-09-09
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】乙野 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】友利 愛
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 一清
【審査官】田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-219015(JP,A)
【文献】特開2015-34481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/10
F04B 49/02
F04B 49/16
F04B 49/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧流体が供給及び排出される流体室と、伸縮自在なベローズと、を備え、前記流体室に加圧流体が供給されると前記ベローズが所定の伸長位置まで伸長して当該ベローズ内に移送流体が吸入され、前記流体室から加圧流体が排出されると前記ベローズが収縮して当該ベローズ内の移送流体が吐出される、ベローズポンプ装置であって、
前記流体室に対する加圧流体の給排を切り換える電磁弁と、
前記流体室に供給される加圧流体の流体圧を調整する流体圧調整部と、
前記ベローズが前記伸長位置にあることを検知して検知信号を出力する検知部と、
前記ベローズポンプ装置の運転を開始する前に、前記電磁弁を切り換えて事前に前記流体室に加圧流体を供給させることで、前記運転中に前記流体室に供給される加圧流体の流体圧である運転流体圧を決定する初期制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記初期制御として、事前に前記流体室に供給される加圧流体の流体圧を徐々に上げるように前記流体圧調整部に制御指令を出力し、前記検知部から前記検知信号が入力されたときに、その時点で前記流体室に供給されている加圧流体の流体圧を前記運転流体圧として決定する、ベローズポンプ装置。
【請求項2】
前記制御部は、事前に前記流体室に供給される加圧流体の流体圧を段階的に上げるように前記流体圧調整部に制御指令を出力する、請求項1に記載のベローズポンプ装置。
【請求項3】
前記運転を開始させる操作指令を出力する操作スイッチをさらに備え、
前記制御部は、前記操作指令が入力されると、前記初期制御を行った後に前記運転を開始する、請求項1又は請求項2に記載のベローズポンプ装置。
【請求項4】
前記流体室として、第1流体室及び第2流体室を備え、
前記ベローズとして、前記第1流体室に加圧流体が給排されることで移送流体を吸入及び吐出する第1ベローズと、前記第1ベローズとは独立して伸縮自在であり且つ前記第2流体室に加圧流体が給排されることで移送流体を吸入及び吐出する第2ベローズと、を備え、
前記電磁弁として、前記第1流体室に対する加圧流体の給排を切り換える第1電磁弁と、前記第2流体室に対する加圧流体の給排を切り換える第2電磁弁と、を備え、
前記流体圧調整部として、前記第1流体室に供給される加圧流体の流体圧を調整する第1流体圧調整部と、前記第2流体室に供給される加圧流体の流体圧を調整する第2流体圧調整部と、を備え、
前記検知部として、前記第1ベローズが前記伸長位置にあることを検知して検知信号を出力する第1検知部と、前記第2ベローズが前記伸長位置にあることを検知して検知信号を出力する第2検知部と、を備え、
前記制御部は、前記初期制御として、
前記第1電磁弁を切り換えて事前に前記第1流体室に加圧流体を供給させることで、前記運転中に前記第1流体室に供給される加圧流体の流体圧である第1運転流体圧を決定する第1初期制御と、
前記第2電磁弁を切り換えて事前に前記第2流体室に加圧流体を供給させることで、前記運転中に前記第2流体室に供給される加圧流体の流体圧である第2運転流体圧を決定する第2初期制御と、を行い、
前記制御部は、前記第1初期制御として、事前に前記第1流体室に供給される加圧流体の流体圧を徐々に上げるように前記第1流体圧調整部に制御指令を出力し、前記第1検知部から検知信号が入力されたときに、その時点で前記第1流体室に供給されている加圧流体の流体圧を前記第1運転流体圧として決定し、
前記制御部は、前記第2初期制御として、事前に前記第2流体室に供給される加圧流体の流体圧を徐々に上げるように前記第2流体圧調整部に制御指令を出力し、前記第2検知部から検知信号が入力されたときに、その時点で前記第2流体室に供給されている加圧流体の流体圧を第2運転流体圧として決定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のベローズポンプ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1初期制御を行った後に前記第2初期制御を行う、請求項4に記載のベローズポンプ装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2初期制御において、事前に前記第2流体室に供給される加圧流体の流体圧を、前記第1初期制御で決定した前記第1運転流体圧から徐々に上げるように前記制御指令を出力する、請求項5に記載のベローズポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベローズポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造や化学工業等において、薬液や溶剤等の移送流体を送給させるために使用されるベローズポンプとして、ポンプヘッドの両側にポンプケースを連結して2つの空気室を形成し、これらの空気室の内部に互いに独立して伸縮可能な一対のベローズを設け、各空気室に交互に加圧空気を供給することによって各ベローズを収縮又は伸長させるように構成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されたベローズポンプでは、一対のベローズのうち一方のベローズが収縮することでその内部に移送流体が吸い込まれ、これと同時に他方のベローズが伸長することでその内部の移送流体が吐出される。また、前記他方のベローズが収縮することでその内部に移送流体が吸い込まれ、これと同時に前記一方のベローズが伸長することでその内部の移送流体が吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ベローズポンプでは、その運転開始時に一対のベローズをそれぞれ伸長させるために各空気室に供給する加圧空気の空気圧は一定の圧力値に設定されている。しかし、ベローズを伸長させるために必要な加圧空気の空気圧(適正空気圧)は、ベローズの内部に吸い込まれる移送流体の流量等に応じて変動する。このため、前記一定の圧力値が適正空気圧よりも高くなり過ぎると、ベローズの内部に大きな負圧が発生する。そうすると、移送流体をベローズ内に吸い込む吸込配管内において、「ウォータハンマ」と呼ばれる衝撃圧力やキャビテーションが発生し、半導体製造プロセス等に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、運転開始時にベローズ内に移送流体を吸い込んだときに衝撃圧力等が発生するのを抑制することができるベローズポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、加圧流体が供給及び排出される流体室と、伸縮自在なベローズと、を備え、前記流体室に加圧流体が供給されると前記ベローズが所定の伸長位置まで伸長して当該ベローズ内に移送流体が吸入され、前記流体室から加圧流体が排出されると前記ベローズが収縮して当該ベローズ内の移送流体が吐出される、ベローズポンプ装置であって、前記流体室に対する加圧流体の給排を切り換える電磁弁と、前記流体室に供給される加圧流体の流体圧を調整する流体圧調整部と、前記ベローズが前記伸長位置にあることを検知して検知信号を出力する検知部と、前記ベローズポンプ装置の運転を開始する前に、前記電磁弁を切り換えて事前に前記流体室に加圧流体を供給させることで、前記運転中に前記流体室に供給される加圧流体の流体圧である運転流体圧を決定する初期制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記初期制御として、事前に前記流体室に供給される加圧流体の流体圧を徐々に上げるように前記流体圧調整部に制御指令を出力し、前記検知部から前記検知信号が入力されたときに、その時点で前記流体室に供給されている加圧流体の流体圧を前記運転流体圧として決定する、ベローズポンプ装置である。
【0008】
上記のように構成されたベローズポンプ装置によれば、制御部は、運転を開始する前に、事前に流体室に加圧流体を供給させることで、前記運転中に流体室に供給される加圧流体の流体圧である運転流体圧を決定する初期制御を行う。その際、制御部は、加圧流体の流体圧を徐々に上げるように流体圧調整部に制御指令を出力し、ベローズが伸長位置まで伸長して検知部から検知信号が入力されたときに、その時点で流体室に供給されている加圧流体の流体圧を前記運転流体圧として決定する。これにより、運転流体圧は、ベローズを伸長位置まで伸長させるのに必要な適正流体圧付近の値となるので、運転開始時にベローズ内に移送流体を吸い込んだときに衝撃圧力等が発生するのを抑制することができる。
【0009】
(2)前記制御部は、事前に前記流体室に供給される加圧流体の流体圧を段階的に上げるように前記流体圧調整部に制御指令を出力するのが好ましい。
この場合、制御部は、流体圧を連続的に上げる場合に比べて、適正流体圧に近い値を運転流体圧として決定することができる。
【0010】
(3)前記ベローズポンプ装置は、前記運転を開始させる操作指令を出力する操作スイッチをさらに備え、前記制御部は、前記操作指令が入力されると、前記初期制御を行った後に前記運転を開始するのが好ましい。
この場合、制御部は、ベローズポンプ装置の運転を開始する前に初期制御を確実に行うことができる。
【0011】
(4)前記ベローズポンプ装置は、前記流体室として、第1流体室及び第2流体室を備え、前記ベローズとして、前記第1流体室に加圧流体が給排されることで移送流体を吸入及び吐出する第1ベローズと、前記第1ベローズとは独立して伸縮自在であり且つ前記第2流体室に加圧流体が給排されることで移送流体を吸入及び吐出する第2ベローズと、を備え、前記電磁弁として、前記第1流体室に対する加圧流体の給排を切り換える第1電磁弁と、前記第2流体室に対する加圧流体の給排を切り換える第2電磁弁と、を備え、前記流体圧調整部として、前記第1流体室に供給される加圧流体の流体圧を調整する第1流体圧調整部と、前記第2流体室に供給される加圧流体の流体圧を調整する第2流体圧調整部と、を備え、前記検知部として、前記第1ベローズが前記伸長位置にあることを検知して検知信号を出力する第1検知部と、前記第2ベローズが前記伸長位置にあることを検知して検知信号を出力する第2検知部と、を備え、前記制御部は、前記初期制御として、前記第1電磁弁を切り換えて事前に前記第1流体室に加圧流体を供給させることで、前記運転中に前記第1流体室に供給される加圧流体の流体圧である第1運転流体圧を決定する第1初期制御と、前記第2電磁弁を切り換えて事前に前記第2流体室に加圧流体を供給させることで、前記運転中に前記第2流体室に供給される加圧流体の流体圧である第2運転流体圧を決定する第2初期制御と、を行い、前記制御部は、前記第1初期制御として、事前に前記第1流体室に供給される加圧流体の流体圧を徐々に上げるように前記第1流体圧調整部に制御指令を出力し、前記第1検知部から検知信号が入力されたときに、その時点で前記第1流体室に供給されている加圧流体の流体圧を前記第1運転流体圧として決定し、前記制御部は、前記第2初期制御として、事前に前記第2流体室に供給される加圧流体の流体圧を徐々に上げるように前記第2流体圧調整部に制御指令を出力し、前記第2検知部から検知信号が入力されたときに、その時点で前記第2流体室に供給されている加圧流体の流体圧を第2運転流体圧として決定するのが好ましい。
【0012】
この場合、第1運転流体圧は、第1ベローズを伸長位置まで伸長させるのに必要な適正流体圧付近の値となり、かつ第2運転流体圧は、第2ベローズを伸長位置まで伸長させるのに必要な適正流体圧付近の値となるので、運転開始時に第1ベローズ内及び第2ベローズ内に移送流体を吸い込んだときに衝撃圧力等が発生するのを抑制することができる。
【0013】
(5)前記制御部は、前記第1初期制御を行った後に前記第2初期制御を行うのが好ましい。
例えば、第1ベローズ及び第2ベローズが互いに独立して伸縮する場合、制御部は第1初期制御及び第2初期制御を同時に行うことができる。しかし、実際の運転中には第1ベローズ及び第2ベローズを交互に伸長させるため、第1初期制御及び第2初期制御が同時に行われると、第1ベローズ及び第2ベローズが同時に伸長することになる。このため、第1初期制御及び第2初期制御を同時に行った場合、実際の運転中の場合と比べて各ベローズ内の負圧が大きくなり、各ベローズを伸長位置まで伸長させるのに必要な加圧流体の流体圧が、実際の運転中に必要な適切流体圧よりも高くなる。そうすると、制御部で決定される第1運転流体圧及び第2運転流体圧も適切流体圧よりも高くなってしまう。
【0014】
これに対して、上記(5)では、第1初期制御が行われた後に第2初期制御が行われるので、実際の運転中と同じ環境で第1運転流体圧及び第2運転流体圧を決定することができる。その結果、制御部は、第1初期制御及び第2初期制御が同時に行われる場合に比べて、適正流体圧に近い値を第1及び第2運転流体圧として決定することができる。
【0015】
(6)前記制御部は、前記第2初期制御において、事前に前記第2流体室に供給される加圧流体の流体圧を、前記第1初期制御で決定した前記第1運転流体圧から徐々に上げるように前記制御指令を出力するのが好ましい。
この場合、制御部は、第2初期制御において第2運転流体圧を迅速に決定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のベローズポンプ装置によれば、運転開始時にベローズ内に移送流体を吸い込んだときに衝撃圧力等が発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るベローズポンプ装置の概略構成図である。
【
図5】制御部による初期制御と駆動制御の制御例を示すタイムチャートである。
【
図6】初期制御の変形例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
[ベローズポンプ装置の全体構成]
図1は、本発明の実施形態に係るベローズポンプ装置の概略構成図である。本実施形態のベローズポンプ装置1は、例えば半導体製造装置において薬液や溶剤等の移送流体を一定量供給するときに用いられる。ベローズポンプ装置1は、空気供給装置(流体供給装置)2、機械式レギュレータ3、第1電磁弁4、第2電磁弁5、制御部6、操作スイッチ7、ベローズポンプ10、第1電空レギュレータ(第1流体圧調整部)51、及び第2電空レギュレータ(第2流体圧調整部)52を備えている。
【0019】
空気供給装置2は、例えばエアコンプレッサからなり、ベローズポンプ10に供給する加圧空気(加圧流体)を生成する。機械式レギュレータ3は、空気供給装置2で生成された加圧空気の空気圧(流体圧)を調整する。操作スイッチ7は、ベローズポンプ装置1の運転を開始させる操作指令を出力するスイッチである。作業者が操作スイッチ7をオン操作すると、操作スイッチ7は、前記操作指令を制御部6に出力する。
【0020】
図2は、本実施形態に係るベローズポンプ10の断面図である。本実施形態のベローズポンプ10は、中央部に配置されたポンプヘッド11と、このポンプヘッド11の左右方向の両側に取り付けられる一対のポンプケース12と、各ポンプケース12の内部において、ポンプヘッド11の左右方向の側面に取り付けられる第1ベローズ13及び第2ベローズ14と、第1及び第2ベローズ13,14それぞれの内部において、ポンプヘッド11の左右方向の側面に取り付けられる合計4個のチェックバルブ15,16と、を備えている。
【0021】
[ベローズの構成]
第1ベローズ13及び第2ベローズ14は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素樹脂により有底筒形状に形成されている。第1及び第2ベローズ13,14の開放側端部に一体形成されたフランジ部13a及びフランジ部14aは、ポンプヘッド11の側面に気密状に押圧して固定されている。第1及び第2ベローズ13,14の各周壁は、蛇腹形状に形成され、互いに独立して左右方向に伸縮可能に構成されている。
【0022】
第1及び第2ベローズ13,14の閉塞側端部の外面には、ボルト17及びナット18により作動板19が固定されている。第1及び第2ベローズ13,14は、作動板19の外面が有底円筒状のポンプケース12における底壁部121の内面に当接する最伸長位置と、後述するピストン体23の内面が底壁部121の外面に当接する最収縮位置との間で伸縮可能である。
【0023】
[ポンプケースの構成]
第1ベローズ13のフランジ部13aには、ポンプケース12(以下、「第1ポンプケース12A」ともいう)の開口周縁部が、気密状に押圧して固定されている。これにより、第1ポンプケース12Aの内部における第1ベローズ13の外側には、気密状態が保持された第1吐出側空気室21Aが形成されている。
【0024】
第1ポンプケース12Aには第1吸排気ポート22Aが設けられており、第1吸排気ポート22Aは、第1電磁弁4、第1電空レギュレータ51及び機械式レギュレータ3を介して空気供給装置2に接続されている(
図1参照)。これにより、空気供給装置2から第1吐出側空気室21Aの内部に加圧空気が供給されると、第1ベローズ13は最収縮位置まで収縮する。
【0025】
第2ベローズ14のフランジ部14aには、ポンプケース12(以下、「第2ポンプケース12B」ともいう)の開口周縁部が、気密状に押圧して固定されている。これにより、第2ポンプケース12Bの内部における第2ベローズ14の外側には、気密状態が保持された第2吐出側空気室21Bが形成されている。
【0026】
第2ポンプケース12Bには第2吸排気ポート22Bが設けられており、第2吸排気ポート22Bは、第2電磁弁5、第2電空レギュレータ52及び機械式レギュレータ3を介して空気供給装置2に接続されている(
図1参照)。これにより、空気供給装置2から第2吐出側空気室21Bの内部に加圧空気が供給されると、第2ベローズ14は最収縮位置まで収縮する。
【0027】
各ポンプケース12A,12Bの底壁部121には棒状の連結部材20が貫通されており、連結部材20は、底壁部121に対して左右方向に摺動可能に支持されている。連結部材20の外端部にはピストン体23がナット24により固定されている。ピストン体23は、底壁部121の外側に一体に設けられた円筒状のシリンダ体25の内周面に対して、気密状態を保持しながら左右方向へ摺動可能に支持されている。
【0028】
これにより、第1ポンプケース12A側において、底壁部121、シリンダ体25、及びピストン体23によって囲まれた空間は、気密状態が保持された第1吸込側空気室26Aとされている。また、第2ポンプケース12B側において、底壁部121、シリンダ体25、及びピストン体23によって囲まれた空間は、気密状態が保持された第2吸込側空気室26Bとされている。
【0029】
第1ポンプケース12A側のシリンダ体25には、第1吸込側空気室26Aに連通する吸排気口251が形成されている。この吸排気口251は、第1電磁弁4、第1電空レギュレータ51及び機械式レギュレータ3を介して空気供給装置2に接続されている(
図1参照)。これにより、空気供給装置2から吸排気口251を介して第1吸込側空気室26Aの内部に加圧空気が供給されると、第1ベローズ13は所定の伸長位置まで伸長する。本実施形態の第1ベローズ13は、例えば最伸長位置まで伸長する。
【0030】
第2ポンプケース12B側のシリンダ体25には、第2吸込側空気室26Bに連通する吸排気口252が形成されている。この吸排気口252は、第2電磁弁5、第2電空レギュレータ52及び機械式レギュレータ3を介して空気供給装置2に接続されている(
図1参照)。これにより、空気供給装置2から吸排気口252を介して第2吸込側空気室26Bの内部に加圧空気が供給されると、第2ベローズ14は所定の伸長位置まで伸長する。本実施形態の第2ベローズ14は、例えば最伸長位置まで伸長する。
【0031】
以上の構成により、第1吐出側空気室21Aが内部に形成された第1ポンプケース12Aと、第1吸込側空気室26Aを形成するピストン体23及びシリンダ体25とにより、第1ベローズ13を最伸長位置と最収縮位置との間で連続して伸縮動作させる第1エアシリンダ部(第1駆動部)27が構成されている。
また、第2吐出側空気室21Bが内部に形成された第2ポンプケース12Bと、第2吸込側空気室26Bを形成するピストン体23及びシリンダ体25とにより、第2ベローズ14を最伸長位置と最収縮位置との間で連続して伸縮動作させる第2エアシリンダ部(第2駆動部)28が構成されている。
【0032】
[検知部の構成]
第1エアシリンダ部27のシリンダ体25には、一対の近接センサ29A,29Bが取り付けられている。第1エアシリンダ部27のピストン体23には、各近接センサ29A,29Bにより検知される被検知板30が取り付けられている。被検知板30は、ピストン体23とともに往復動することで、近接センサ29A,29Bに交互に近接する。
【0033】
近接センサ29Aは、第1ベローズ13が最収縮位置のときに被検知板30を検知する位置に配置されている。近接センサ29Bは、第1ベローズ13が最伸長位置のときに被検知板30を検知する位置に配置されている。各近接センサ29A,29Bは、被検知板30を検知すると、その検知信号を制御部6に出力する。近接センサ29Bは、第1ベローズ13の伸長位置を検知して検知信号を出力する第1検知部として機能する。
【0034】
第2エアシリンダ部28のシリンダ体25には、一対の近接センサ31A,31Bが取り付けられている。第2エアシリンダ部28のピストン体23には、各近接センサ31A,31Bより検知される被検知板32が取り付けられている。被検知板32は、ピストン体23とともに往復動することで、近接センサ31A,31Bに交互に近接する。
【0035】
近接センサ31Aは、第2ベローズ14が最収縮位置のときに被検知板32を検知する位置に配置されている。近接センサ31Bは、第2ベローズ14が最伸長位置のときに被検知板32を検知する位置に配置されている。各近接センサ31A,31Bは、被検知板30を検知すると、その検知信号を制御部6に出力する。近接センサ31Bは、第2ベローズ14の伸長位置を検知して検知信号を出力する第2検知部として機能する。
【0036】
第1及び第2検知部は、近接センサ29B,31Bによって構成されているが、リミットスイッチ等の他の検知手段により構成されていてもよい。なお、以下において、近接センサ29A,29Bの共通事項を説明する場合は、近接センサ29と総称する。同様に、近接センサ31A,31Bの共通事項を説明する場合は、近接センサ31と総称する。
【0037】
[ポンプヘッドの構成]
ポンプヘッド11は、PTFEやPFA等のフッ素樹脂から形成されている。ポンプヘッド11の内部には、移送流体の吸込通路34と吐出通路35が形成されている。吸込通路34及び吐出通路35は、ポンプヘッド11の外周面において開口し、当該外周面に設けられた吸込ポート及び吐出ポート(いずれも図示省略)に接続されている。
【0038】
吸込ポートは移送流体の貯留タンク等に接続され、吐出ポートは移送流体の移送先に接続される。また、吸込通路34及び吐出通路35は、それぞれポンプヘッド11の左右両側面に向けて分岐するとともに、ポンプヘッド11の左右両側面において開口する吸込口36及び吐出口37を有している。各吸込口36及び各吐出口37は、それぞれチェックバルブ15,16を介してベローズ13,14の内部と連通している。
【0039】
[チェックバルブの構成]
各吸込口36及び各吐出口37には、チェックバルブ15,16が設けられている。
吸込口36に取り付けられたチェックバルブ15(以下、「吸込用チェックバルブ」ともいう)は、バルブケース15aと、このバルブケース15aに収容された弁体15bと、この弁体15bを閉弁方向に付勢する圧縮コイルバネ15cとを有している。
【0040】
バルブケース15aは有底円筒形状に形成されている。バルブケース15aの底壁にはベローズ13,14の内部に連通する貫通孔15dが形成されている。弁体15bは、圧縮コイルバネ15cの付勢力により吸込口36を閉鎖(閉弁)し、ベローズ13,14の伸縮に伴う移送流体の流れによる背圧が作用すると吸込口36を開放(開弁)するようになっている。
【0041】
これにより、吸込用チェックバルブ15は、自身が配置されているベローズ13,14が伸長したときに開弁して、吸込通路34からベローズ13,14内部に向かう方向(一方向)への移送流体の吸入を許容する。また、吸込用チェックバルブ15は、自身が配置されているベローズ13,14が収縮したときに閉弁して、ベローズ13,14内部から吸込通路34に向かう方向(他方向)への移送流体の逆流を阻止する。
【0042】
吐出口37に取り付けられたチェックバルブ16(以下、「吐出用チェックバルブ」ともいう)は、バルブケース16aと、このバルブケース16aに収容された弁体16bと、この弁体16bを閉弁方向に付勢する圧縮コイルバネ16cとを有している。
【0043】
バルブケース16aは有底円筒形状に形成されている。バルブケース16aの底壁には、ベローズ13,14の内部に連通する貫通孔16dが形成されている。弁体16bは、圧縮コイルバネ16cの付勢力によりバルブケース16aの貫通孔16dを閉鎖(閉弁)し、ベローズ13,14の伸縮に伴う移送流体の流れによる背圧が作用するとバルブケース16aの貫通孔16dを開放(開弁)するようになっている。
【0044】
これにより、吐出用チェックバルブ16は、自身が配置されているベローズ13,14が収縮したときに開弁して、ベローズ13,14内部から吐出通路35に向かう方向(一方向)への移送流体の流出を許容する。また、吐出用チェックバルブ16は、自身が配置されているベローズ13,14が伸長したときに閉弁して、吐出通路35からベローズ13,14内部に向かう方向(他方向)への移送流体の逆流を阻止する。
【0045】
[ベローズポンプの動作]
次に、本実施形態のベローズポンプ1の動作を
図3及び
図4を参照して説明する。なお、
図3及び
図4においては第1及び第2ベローズ13,14の構成を簡略化して示している。
図3に示すように、第1ベローズ13が収縮し、第2ベローズ14が伸長した場合、ポンプヘッド11の図中左側に装着された吸込用チェックバルブ15及び吐出用チェックバルブ16の各弁体15b,16bは、第1ベローズ13内の移送流体から圧力を受けて、各バルブケース15a,16aの図中右側にそれぞれ移動する。これにより吸込用チェックバルブ15が閉弁するとともに、吐出用チェックバルブ16が開弁し、第1ベローズ13内の移送流体が吐出通路35からポンプ外へ吐出される。
【0046】
一方、ポンプヘッド11の図中右側に装着された吸込用チェックバルブ15の弁体15bは、第2ベローズ14による吸入作用によってバルブケース15aの図中右側に移動する。ポンプヘッド11の図中右側に装着された吐出用チェックバルブ16の弁体16bは、第2ベローズ14による吸入作用、及び第1ベローズ13から吐出通路35に吐出された移送流体による押圧作用によって、バルブケース16aの図中右側に移動する。これにより吸込用チェックバルブ15が開弁するとともに、吐出用チェックバルブ16が閉弁し、吸込通路34から第2ベローズ14内に移送流体が吸い込まれる。
【0047】
次に、
図4に示すように、第1ベローズ13が伸長し、第2ベローズ14が収縮した場合、ポンプヘッド11の図中右側に装着された吸込用チェックバルブ15及び吐出用チェックバルブ16の各弁体15b,16bは、第2ベローズ14内の移送流体から圧力を受けて、各バルブケース15a,16aの図中左側に移動する。これにより吸込用チェックバルブ15が閉弁するとともに、吐出用チェックバルブ16が開弁し、第2ベローズ14内の移送流体が吐出通路35からポンプ外へ吐出される。
【0048】
一方、ポンプヘッド11の図中左側に装着された吸込用チェックバルブ15の弁体15bは、第1ベローズ13による吸入作用によってバルブケース15aの図中左側に移動する。ポンプヘッド11の図中左側に装着された吐出用チェックバルブ16の弁体16bは、第1ベローズ13による吸入作用、及び第1ベローズ13から吐出通路35に吐出された移送流体による押圧作用によって、バルブケース16aの図中左側に移動する。これにより吸込用チェックバルブ15が開弁するとともに、吐出用チェックバルブ16が閉弁し、吸込通路34から第1ベローズ13内に移送流体が吸い込まれる。
以上の動作を繰り返し行うことで、左右のベローズ13,14は、交互に移送流体の吸入と吐出とを行うことができる。
【0049】
[電磁弁の構成]
図1において、第1電磁弁4は、例えば、一対のソレノイド4a,4bを有する三位置の電磁切換弁からなる。各ソレノイド4a,4bは制御部6から受けた指令信号に基づいて励磁されるようになっている。これにより、第1電磁弁4は、制御部6により切り換え制御される。第1電磁弁4は、第1エアシリンダ部27において、第1吐出側空気室21Aに対する加圧空気の給排、及び第1吸込側空気室26Aに対する加圧空気の給排を切り換える。
【0050】
具体的には、第1電磁弁4は、ソレノイド4aが励磁されると、第1吐出側空気室21Aに加圧空気を供給するとともに第1吸込側空気室26A内の加圧空気を排出する状態に切り換わる。また、第1電磁弁4は、ソレノイド4bが励磁されると、第1吐出側空気室21A内の加圧空気を排出するとともに第1吸込側空気室26Aに加圧空気を供給する状態とに切り換わる。
【0051】
第2電磁弁5は、例えば一対のソレノイド5a,5bを有する三位置の電磁切換弁からなる。各ソレノイド5a,5bは制御部6から指令信号を受けて励磁されるようになっている。これにより、第2電磁弁5は、制御部6により切り換え制御される。第2電磁弁5は、第2エアシリンダ部28において、第2吐出側空気室21Bに対する加圧空気の給排、及び第2吸込側空気室26Bに対する加圧空気の給排を切り換える。
【0052】
具体的には、第2電磁弁5は、ソレノイド5aが励磁されると、第2吐出側空気室21Bに加圧空気を供給するとともに第2吸込側空気室26B内の加圧空気を排出する状態に切り換わる。また、第2電磁弁5は、ソレノイド5bが励磁されると、第2吐出側空気室21B内の加圧空気を排出するとともに第2吸込側空気室26Bに加圧空気を供給する状態とに切り換わる。
なお、本実施形態の第1及び第2電磁弁4,5は、三位置の電磁切換弁からなるが、中立位置を有しない二位置の電磁切換弁であってもよい。
【0053】
[電空レギュレータの構成]
第1電空レギュレータ51は、機械式レギュレータ3と第1電磁弁4との間に配置されている。第1電空レギュレータ51は、第1エアシリンダ部27の第1吸込側空気室(第1流体室)26Aに供給される加圧空気の空気圧、及び第1エアシリンダ部27の第1吐出側空気室21Aに供給される加圧空気の空気圧をそれぞれ調整する。
【0054】
同様に、第2電空レギュレータ52は、機械式レギュレータ3と第2電磁弁5との間に配置されている。第2電空レギュレータ52は、第2エアシリンダ部28の第2吸込側空気室(第2流体室)26Bに供給される加圧空気の空気圧、及び第2エアシリンダ部28の第2吐出側空気室21Bに供給される加圧空気の空気圧をそれぞれ調整する。
【0055】
なお、電空レギュレータ51,52は、少なくとも吸込側空気室26A,26Bに供給される加圧空気の空気圧を調整するものであればよい。また、本実施形態では、流体圧調整部として、空気圧を直接的に調整する電空レギュレータ51,52を用いているが、空気流量を調整する空気流量調整弁を用いて空気圧を間接的に調整してもよいし、空気以外の気体(例えば窒素)や液体等の圧力又は流量を調整する機器を用いてもよい。
【0056】
[制御部の構成]
図1及び
図2において、制御部6は、CPU等を有するコンピュータを備えて構成されている。制御部6は、操作スイッチ7から操作指令が入力されると、初期制御を行った後にベローズポンプ装置1の運転を開始し、ベローズポンプ10を駆動する駆動制御を行う。制御部6の各機能は、前記コンピュータの記憶装置に記憶された制御プログラムがCPUにより実行されることで発揮される。
【0057】
制御部6は、初期制御として、第1初期制御及び第2初期制御をこの順に行う。
第1初期制御では、制御部6は、第1電磁弁4を切り換えて事前に第1エアシリンダ部27の第1吸込側空気室26Aに加圧空気を供給させることで、ベローズポンプ装置1の運転中(駆動制御中)に第1吸込側空気室26Aに供給される加圧空気の空気圧である第1運転空気圧(第1運転流体圧)P1を決定する。
【0058】
具体的には、制御部6は、第1電磁弁4を切り換えて事前に第1吸込側空気室26Aに供給される加圧空気の空気圧を徐々に上げるように第1電空レギュレータ51に制御指令を出力する。そして、制御部6は、第1ベローズ13が最伸長位置まで伸長して近接センサ29Bから検知信号が入力されると、その時点で第1吸込側空気室26Aに供給されている加圧空気の空気圧を第1運転空気圧P1として決定する。
【0059】
第2初期制御では、制御部6は、第2電磁弁5を切り換えて事前に第2エアシリンダ部28の第2吸込側空気室26Bに加圧空気を供給させることで、ベローズポンプ装置1の運転中に第2吸込側空気室26Bに供給される加圧空気の空気圧である第2運転空気圧(第2運転流体圧)P2を決定する。
【0060】
具体的には、制御部6は、第2電磁弁5を切り換えて事前に第2吸込側空気室26Bに供給される加圧空気の空気圧を徐々に上げるように第2電空レギュレータ52に制御指令を出力する。そして、制御部6は、第2ベローズ14が最伸長位置まで伸長して近接センサ31Bから検知信号が入力されると、その時点で第2吸込側空気室26Bに供給されている加圧空気の空気圧を第2運転空気圧P2として決定する。
【0061】
なお、本実施形態の制御部6は、第1初期制御を行った後に第2初期制御を行っているが、第2初期制御を行った後に第1初期制御を行ってもよいし、第1初期制御及び第2初期制御を同時に行ってもよい。
【0062】
制御部6は、駆動制御として、近接センサ29,31からの検知信号に基づいて各電磁弁4,5を切り換えることにより、ベローズポンプ1の第1エアシリンダ部27及び第2エアシリンダ部28の各駆動を制御する。
具体的には、制御部6は、近接センサ29,31からの検知信号に基づいて、第1ベローズ13が最収縮位置となる手前で第2ベローズ14を最伸長位置から収縮させるとともに、第2ベローズ14が最収縮位置となる手前で第1ベローズ13を最伸長位置から収縮させるように、第1及び第2エアシリンダ部27,28の駆動を制御する。
【0063】
ここで、第1ベローズ13が最収縮位置となる「手前」とは、第1ベローズ13の収縮経過位置が収縮開始位置(最伸長位置)よりも収縮終了位置(最収縮位置)に近い位置にあることを意味し、より詳細には、第1ベローズ13が最伸長位置から最収縮位置となるまでの収縮長さの60%~90%(好ましくは60%~70%、より好ましくは66%)まで収縮した位置を意味する。同様に、第2ベローズ14が最収縮位置となる「手前」とは、第2ベローズ14の収縮経過位置が収縮開始位置(最伸長位置)よりも収縮終了位置(最収縮位置)に近い位置にあることを意味し、より詳細には、第2ベローズ14が最伸長位置から最収縮位置となるまでの収縮長さの60%~90%(好ましくは60%~70%、より好ましくは66%)まで収縮した位置を意味する。
【0064】
これにより、一方のベローズの収縮から伸長(移送流体の吐出から吸い込み)への切り換えタイミングにおいて、他方のベローズは既に収縮して移送流体を吐出しているので、前記切り換えタイミングにおいて移送流体の吐出圧力が大きく落ち込むのを低減することができる。その結果、ベローズポンプ1の吐出側の脈動を低減することができる。
【0065】
なお、本実施形態の制御部6は、一方のベローズ13(14)が最収縮位置となる手前で他方のベローズ14(13)を最伸長位置から収縮させているが、一方のベローズ13(14)が最収縮位置となったときに、他方のベローズ14(13)を最伸長位置から収縮させるように制御してもよい。但し、ベローズポンプ10の吐出側の脈動を低減するという観点では、本実施形態のように制御するのが好ましい。
【0066】
[初期制御と駆動制御の制御例]
図5は、本実施形態の制御部6による初期制御と駆動制御の制御例を示すタイムチャートである。以下、
図1及び
図5を参照しながら、制御部6が実行する初期制御と駆動制御について説明する。制御部6は、待機状態において操作スイッチ7からの操作指令の入力を待つ。なお、待機状態において第1ベローズ13及び第2ベローズ14はいずれも自然長の状態にある。
【0067】
制御部6は、操作スイッチ7から操作指令が入力されると、まず第1初期制御を実行する。第1初期制御において、制御部6は、第1電磁弁4を切り換えることにより、空気供給装置2から第1エアシリンダ部27の第1吸込側空気室26Aへの加圧空気(以下、第1加圧空気ともいう)の供給を開始する。その開始時点において、制御部6は、第1加圧空気の空気圧を所定の一次空気圧Paに調整するように、第1電空レギュレータ51に制御指令を出力する。
【0068】
次に、制御部6は、前記開始時点から一定時間T1が経過するまで近接センサ29Bからの検知信号が入力されるのを待つ。一定時間T1は、例えば、通常運転時に第1ベローズ13が最収縮位置から最伸長位置に達するまでの伸長時間よりも少し長い時間に設定されている。
【0069】
したがって、第1加圧空気の空気圧が、第1ベローズ13を伸長させるのに必要な空気圧以上の場合には、第1ベローズ13は伸長するので、一定時間T1が経過するまでに近接センサ29Bからの検知信号が制御部6に入力される。
一方、第1加圧空気の空気圧が、第1ベローズ13を伸長させるのに必要な空気圧未満の場合には、第1ベローズ13は伸長しないので、一定時間T1が経過しても制御部6には近接センサ29Bからの検知信号は入力されない。
【0070】
制御部6は、一定時間T1内に近接センサ29Bから検知信号が入力されなければ、第1加圧空気の空気圧を、一次空気圧Paよりも所定圧だけ高い二次空気圧Pbに調整するように、第1電空レギュレータ51に制御指令を出力する。このようにして、制御部6は、近接センサ29Bから検知信号が入力されるまで、第1加圧空気を一定時間T1毎に所定圧ずつ段階的に上げるように、第1電空レギュレータ51に制御指令を出力する。
【0071】
図5の制御例では、第1加圧空気の空気圧が三次空気圧Pcのときに、一定時間T1内に近接センサ29Bから検知信号が制御部6に入力される場合を示している。制御部6は、近接センサ29Bから検知信号が入力されると、その時点における第1加圧空気の空気圧(ここでは三次空気圧Pc)を第1運転空気圧P1として決定する。そして、制御部6は、第1加圧空気の空気圧を第1運転空気圧P1に維持するように、第1電空レギュレータ51に制御指令を出力し、第1初期制御を終了する。
【0072】
なお、制御部6は、操作スイッチ7から操作指令が入力されたときに第1初期制御を実行しているが、操作スイッチ7とは別に設けられた専用のスイッチから操作指令が入力されたときに第1初期制御を実行してもよい。
【0073】
制御部6は、第1初期制御が終了すると、第2初期制御を実行する。第2初期制御において、制御部6は、第2電磁弁5を切り換えることにより、空気供給装置2から第2エアシリンダ部28の第2吸込側空気室26Bへの加圧空気(以下、第2加圧空気ともいう)の供給を開始する。その開始時点において、制御部6は、第2加圧空気の空気圧を、所定の一次空気圧に調整するように、第2電空レギュレータ52に制御指令を出力する。本実施形態の制御部6は、第2初期制御の一次空気圧を、第1初期制御で決定した第1運転空気圧P1(Pc)に調整するように、第2電空レギュレータ52に制御指令を出力する。
【0074】
次に、制御部6は、前記開始時点から一定時間T2が経過するまで近接センサ31Bからの検知信号が入力されるのを待つ。一定時間T2は、例えば、通常運転時に第2ベローズ14が最収縮位置から最伸長位置に達するまでの伸長時間よりも少し長い時間に設定されている。
【0075】
したがって、第2加圧空気の空気圧が、第2ベローズ14を伸長させるのに必要な空気圧以上の場合には、第2ベローズ14は伸長するので、一定時間T2が経過するまでに近接センサ31Bからの検知信号が制御部6に入力される。
一方、第2加圧空気の空気圧が、第2ベローズ14を伸長させるのに必要な空気圧未満の場合には、第2ベローズ14は伸長しないので、一定時間T2が経過しても制御部6には近接センサ31Bからの検知信号は入力されない。
【0076】
制御部6は、一定時間T2内に近接センサ31Bから検知信号が入力されなければ、第2加圧空気の空気圧を、一次空気圧Pcよりも所定圧だけ高い二次空気圧Pdに調整するように、第2電空レギュレータ52に制御指令を出力する。このようにして、制御部6は、近接センサ31Bから検知信号が入力されるまで、第2加圧空気を一定時間T2毎に所定圧ずつ段階的に上げるように、第2電空レギュレータ52に制御指令を出力する。
【0077】
図5の制御例では、第2加圧空気の空気圧が二次空気圧Pdのときに、一定時間T2内に近接センサ31Bから検知信号が制御部6に入力される場合を示している。制御部6は、近接センサ31Bから検知信号が入力されると、その時点における第2加圧空気の空気圧(ここでは二次空気圧Pd)を第2運転空気圧P2として決定し、第2初期制御を終了する。
【0078】
なお、制御部6は、第1初期制御及び第2初期制御において、吸込側空気室26A,26Bに供給される加圧空気を一定時間毎に所定圧ずつ段階的に上げているが、当該空気圧を連続的に上げるように、電空レギュレータ51,52に制御指令を出力してもよい。
但し、この場合、吸込側空気室26A,26Bに供給される加圧空気が、ベローズ13,14を伸長位置まで伸長させるのに必要な空気圧(適正空気圧)まで上がった時点から、ベローズ13,14が伸長位置まで伸長するまでの間も、前記加圧空気は連続的に上がり続けることになる。このため、ベローズ13,14が伸長位置となって近接センサ29B,31Bの検知信号が制御部6に入力された時点において吸込側空気室26A,26Bに供給される加圧空気を運転空気圧P1,P2とすると、運転空気圧P1,P2が適正空気圧よりも少し高くなってしまう。したがって、本実施形態のように段階的に空気圧を上げたほうが、適正空気圧により近い値を運転空気圧P1,P2として決定することができる。
【0079】
本実施形態では、電空レギュレータ51,52を用いて自動的に第1及び第2運転空気圧P1,P2を決定しているが、機械式レギュレータを用いて手動で第1及び第2加圧空気の空気圧を調整することによって第1及び第2運転空気圧を決定してもよい。
【0080】
図6は、初期制御の変形例を示すタイムチャートである。本変形例では、制御部6は、第2初期制御における第2加圧空気の一次空気圧を、第1初期制御で用いた一次空気圧Paに調整するように、第2電空レギュレータ52に制御指令を出力する。これ以降の制御は、
図5の制御例と同様の手順で行われる。
【0081】
なお、
図6の制御例では、第2加圧空気の空気圧が三次空気圧Pcのときに、一定時間T2内に近接センサ31Bから検知信号が制御部6に入力される場合を示している。したがって、本変形例の制御部6は、近接センサ31Bから検知信号が入力されると、その時点における第2加圧空気の空気圧である三次空気圧Pcを第2運転空気圧P2として決定し、第2初期制御を終了する。
【0082】
図5に戻り、制御部6は、第2初期制御が終了すると、駆動制御を実行する。駆動制御において、制御部6は、第2初期制御の最後に近接センサ31Bから検知信号が入力されたときに、第1電磁弁4を切り換えて空気供給装置2から第1吐出側空気室21Aへの加圧空気の供給を開始する。その際、制御部6は、加圧空気の空気圧を予め定められた空気圧Peに調整するように、第1電空レギュレータ51に制御指令を出力する。空気圧Peは、第1ベローズ13を収縮させるのに必要な空気圧に設定されている。これにより、第1ベローズ13は、最伸長位置から収縮を開始する。
【0083】
次に、制御部6は、近接センサ31Bの検知信号が入力されてから所定時間Taが経過し、第1ベローズ13が最収縮位置となる手前まで収縮すると、第2電磁弁5を切り換えて空気供給装置2から第2吐出側空気室21Bへの加圧空気の供給を開始する。その際、制御部6は、加圧空気の空気圧を予め定められた空気圧Pfに調整するように、第2電空レギュレータ52に制御指令を出力する。空気圧Pfは、第2ベローズ14を収縮させるのに必要な空気圧に設定されている。これにより、第1ベローズ13が最収縮位置となる手前で、第2ベローズ14は最伸長位置から収縮を開始する。
【0084】
次に、制御部6は、第1ベローズ13が最収縮位置まで収縮して近接センサ29Aから検知信号が入力されると、第1電磁弁4を切り換えて空気供給装置2から第1吸込側空気室26Aへの加圧空気の供給を開始する。その際、制御部6は、加圧空気の空気圧を第1運転空気圧P1に調整するように、第1電空レギュレータ51に制御指令を出力する。これにより、第1ベローズ13は、最収縮位置から伸長を開始する。
【0085】
次に、制御部6は、第2ベローズ14が最収縮位置となる手前まで収縮し、且つ第1ベローズ13が最伸長位置まで伸長して近接センサ29Bから検知信号が入力されると、第1電磁弁4を切り換えて空気供給装置2から第1吐出側空気室21Aへの加圧空気の供給を開始する。その際、制御部6は、加圧空気の空気圧を再び空気圧Peに調整するように、第1電空レギュレータ51に制御指令を出力する。これにより、第2ベローズ14が最収縮位置となる手前で、第1ベローズ13は、最伸長位置から収縮を開始する。
【0086】
次に、制御部6は、第2ベローズ14が最収縮位置まで収縮して近接センサ31Aから検知信号が入力されると、第2電磁弁5を切り換えて空気供給装置2から第2吸込側空気室26Bへの加圧空気の供給を開始する。その際、制御部6は、加圧空気の空気圧を第2運転空気圧P2に調整するように、第2電空レギュレータ52に制御指令を出力する。これにより、第2ベローズ14は、最収縮位置から伸長を開始する。
【0087】
次に、制御部6は、第2ベローズ14が最伸長位置まで伸長して近接センサ31Bから検知信号が入力されると、第2電磁弁5を切り換えて空気供給装置2から第2吐出側空気室21Bへの加圧空気の供給を開始する。その際、制御部6は、加圧空気の空気圧を再び空気圧Pfに調整するように、第1電空レギュレータ51に制御指令を出力する。これにより、第2ベローズ14は、最伸長位置から収縮を開始する。
【0088】
これ以降、制御部6は、上述のように、近接センサ29,31からの検知信号に基づいて、電磁弁4,5を切り換えて電空レギュレータ51,52に制御指令を出力する制御を繰り返し行う。
【0089】
以上、本実施形態のベローズポンプ装置1によれば、制御部6は、運転を開始する前に、事前に吸込側空気室26A,26Bに加圧空気を供給させることで、前記運転中に吸込側空気室26A,26Bに供給される加圧空気の空気圧である運転空気圧を決定する初期制御を行う。その際、制御部6は、加圧空気の空気圧を徐々に上げるように電空レギュレータ51,52に制御指令を出力し、ベローズ13,14が最伸長位置まで伸長して近接センサ29B,31Bから検知信号が入力されたときに、その時点で吸込側空気室26A,26Bに供給されている加圧空気の空気圧を前記運転空気圧として決定する。これにより、運転空気圧は、ベローズ13,14を伸長位置まで伸長させるのに必要な適正空気圧付近の値となるので、運転開始時にベローズ13,14内に移送流体を吸い込んだときに衝撃圧力等が発生するのを抑制することができる。
【0090】
また、制御部6は、事前に吸込側空気室26A,26Bに供給される加圧空気の空気圧を段階的に上げるように電空レギュレータ51,52に制御指令を出力するので、前記空気圧を連続的に上げる場合に比べて、適正空気圧に近い値を運転空気圧として決定することができる。
【0091】
また、制御部6は、操作スイッチから運転を開始させる操作指令が入力されると、初期制御を行ってから運転を開始するので、ベローズポンプ装置1の運転を開始する前に初期制御を確実に行うことができる。
【0092】
また、本実施形態のように第1ベローズ13及び第2ベローズ14が互いに独立して伸縮する場合、制御部6は第1初期制御及び第2初期制御を同時に行うことができる。しかし、実際の運転中には第1ベローズ13及び第2ベローズ14を交互に伸長させるため、第1初期制御及び第2初期制御が同時に行われると、第1ベローズ13及び第2ベローズ14が同時に伸長することになる。このため、第1初期制御及び第2初期制御を同時に行った場合、実際の運転中の場合と比べて各ベローズ13,14内の負圧が大きくなり、各ベローズ13,14を最伸長位置まで伸長させるのに必要な加圧空気の空気圧が、実際の運転中に必要な適切空気圧よりも高くなる。そうすると、制御部6で決定される第1運転空気圧及び第2運転空気圧も適切空気圧よりも高くなってしまう。
【0093】
これに対して、本実施形態では、第1初期制御が行われた後に第2初期制御が行われるので、実際の運転中と同じ環境で第1運転空気圧及び第2運転空気圧を決定することができる。その結果、制御部6は、第1初期制御及び第2初期制御が同時に行われる場合に比べて、適正空気圧に近い値を第1及び第2運転空気圧として決定することができる。
【0094】
また、制御部6は、第2初期制御において、事前に第2吸込側空気室26Bに供給される加圧空気の空気圧を、第1初期制御で決定した第1運転空気圧から徐々に上げるように制御指令を出力するので、制御部6は、第2初期制御において第2運転空気圧を迅速に決定することができる。
【0095】
[その他]
本発明は、上記実施形態のベローズポンプ10以外に、一対のベローズのうちの一方をアキュムレータに入れ替えて構成されたベローズポンプなど、他のベローズポンプにも適用することができる。
【0096】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0097】
1 ベローズポンプ装置
4 第1電磁弁(電磁弁)
5 第2電磁弁(電磁弁)
6 制御部
7 操作スイッチ
13 第1ベローズ(ベローズ)
14 第2ベローズ(ベローズ)
26A 第1吸込側空気室(流体室,第1流体室)
26B 第2吸込側空気室(流体室,第2流体室)
29B 近接センサ(検知部,第1検知部)
31B 近接センサ(検知部,第2検知部)
51 第1電空レギュレータ(流体圧調整部,第1流体圧調整部)
52 第2電空レギュレータ(流体圧調整部,第2流体圧調整部)
P1 第1運転空気圧(運転流体圧,第1運転流体圧)
P2 第2運転空気圧(運転流体圧,第2運転流体圧)