(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】塵芥収集車
(51)【国際特許分類】
B65F 3/00 20060101AFI20230502BHJP
【FI】
B65F3/00 L
(21)【出願番号】P 2019173483
(22)【出願日】2019-09-24
【審査請求日】2022-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西▲崎▼ 聡
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-204276(JP,A)
【文献】特開2017-080845(JP,A)
【文献】特開2006-043861(JP,A)
【文献】特開2005-314059(JP,A)
【文献】特開2006-316862(JP,A)
【文献】特開2005-067746(JP,A)
【文献】特開2011-148614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65F 3/00
B25J 19/06
B60P 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵芥を収容する塵芥収容箱と、該塵芥収容箱に連設され、塵芥投入口から投入された塵芥を上記塵芥収容箱に押し込む塵芥積込装置を有する塵芥投入箱と、を備えた塵芥収集車であって、
上記塵芥を積み込む作業者に設けられる第1通信器と、
上記塵芥投入箱に設けられると共に上記第1通信器に対して信号を送信又は受信する第2通信器と、
上記第1通信器と上記第2通信器との間の通信から該第2通信器を基準とした上記作業者の方向及び距離を特定する位置特定部と、
上記位置特定部の情報に基づいて上記塵芥積込装置の停止又は作動を制御する制御部と、
上記塵芥投入口及び/又は該塵芥投入口の後方における検知エリアが設定保存される記憶部と、
上記塵芥投入口を開閉するテールゲートを自動で動作させる自動テールゲート開閉装置と、を備え、
上記検知エリアは、上記方向と上記距離とが一対になった所定の閾値範囲によって設定され、
上記位置特定部は、上記方向及び上記距離から測定値を計算すると共に該測定値が上記閾値範囲に入っているかどうかを判断し、
上記制御部は、上記測定値が上記閾値範囲に入っていることを上記位置特定部から伝えられたことに基づいて、上記塵芥積込装置を停止又は作動するように構成されて
おり、
上記位置特定部は、上記方向及び上記距離から上記測定値を計算すると共に、該測定値が上記テールゲートを開状態にするためのゲート開エリアに対応する第2閾値範囲に入っているかどうかを判断し、
上記制御部は、上記測定値が上記第2閾値範囲に入っていることを上記位置特定部から伝えられたことに基づいて、上記テールゲートを開くように構成されている
ことを特徴とする塵芥収集車。
【請求項2】
請求項1に記載の塵芥収集車において、
上記第1通信器及び上記第2通信器のいずれか一方には、複数のアンテナが設けられ、上記第1通信器と上記第2通信器との間で近距離無線通信を行うように構成されている
ことを特徴とする塵芥収集車。
【請求項3】
請求項2に記載の塵芥収集車において、
上記位置特定部は、上記第1通信器又は上記第2通信器が得た電波強度と、上記複数のアンテナが送信又は受信した信号から得た角度とから上記測定値を計算するように構成されている
ことを特徴とする塵芥収集車。
【請求項4】
請求項
3に記載の塵芥収集車において、
上記位置特定部は、上記第1通信器又は上記第2通信器が得た電波強度と、上記複数のアンテナが送信又は受信した信号から得た角度とから上記測定値を計算すると共に該測定値が第3閾値範囲に入っているかどうかを判断し、
上記制御部は、上記測定値が上記第3閾値範囲に入っていないことを上記位置特定部から伝えられたことに基づいて、作動中の上記塵芥積込装置を停止させると共に該塵芥積込
装置の操作を不可にする制御を行うように構成されている
ことを特徴とする塵芥収集車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵芥を収容する塵芥収容箱と、この塵芥収容箱に連設されて塵芥投入口から投入された塵芥を塵芥収容箱に押し込む塵芥積込装置を有する塵芥投入箱とを備えた塵芥収集車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1のように、塵芥投入口から投入された塵芥を塵芥投入箱の内方へ掻き込むための掻き込み部材を備えた塵芥収集車における塵芥投入口安全装置であって、塵芥投入口と作業者の相対距離を検知するセンサと、掻き込み部材を非常停止させる停止装置と、掻き込み部材が塵芥投入口を掻き込み方向に横断中であって、かつセンサにより検知された相対距離が所定距離以下であるときに、停止装置を作動させると共に、それら以外では停止装置を非作動とする制御装置とを有するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図5に例示するように、特許文献1の塵芥収集車101では、塵芥投入口の近傍に装着された送信器111と作業者150に装着された受信器110との相対距離のみを測定するので、検出範囲は円形となる。これに対し、停止装置を作動させたい危険エリアA1は、平面視すると塵芥投入口の周縁部に略沿った矩形状となる。
図5において、危険エリアA1の範囲をハッチングで示す。従来では、危険エリアA1の車両前後方向後端位置に合わせて検出範囲を設定した場合には、
図5の太い破線で囲んだ小さな半円状検出範囲A01となり、その半円状検出範囲A01の車幅方向外側に大きな検出不可領域A02(危険エリアA1-半円状検出範囲A01)ができてしまう問題点があった。また、従来では、危険エリアA1の車幅方向左右端位置に合わせて検出範囲を設定した場合には、
図6の太い破線で示した大きな半円状検出範囲A03となり、危険エリアA1よりも外の広い領域A04(半円状検出範囲A03-危険エリアA1、クロスハッチングで示す)まで検出範囲がおよぶという問題点があった。このため、従来では、危険エリアA1に合わせて正確に停止装置を作動させることが困難であった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、検出範囲を特定して確実に作業者の位置を検知して安全性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明では、通信器が受けた信号から作業者の方向及び距離を特定するようにした。
【0007】
具体的には、第1の発明では、塵芥を収容する塵芥収容箱と、該塵芥収容箱に連設され、塵芥投入口から投入された塵芥を上記塵芥収容箱に押し込む塵芥積込装置を有する塵芥投入箱と、を備えた塵芥収集車を対象とし、
上記塵芥収集車は、
上記塵芥を積み込む作業者に設けられる第1通信器と、
上記塵芥投入箱に設けられると共に上記第1通信器に対して信号を送信又は受信する第2通信器と、
上記第1通信器と上記第2通信器との間の通信から該第2通信器を基準とした上記作業者の方向及び距離を特定する位置特定部と、
上記位置特定部の情報に基づいて上記塵芥積込装置の停止又は作動を制御する制御部と、
上記塵芥投入口及び/又は該塵芥投入口の後方における検知エリアが設定保存される記憶部と、を備え、
上記検知エリアは、上記方向と上記距離とが一対になった所定の閾値範囲によって設定され、
上記位置特定部は、上記方向及び上記距離から測定値を計算すると共に該測定値が上記閾値範囲に入っているかどうかを判断し、
上記制御部は、上記測定値が上記閾値範囲に入っていることを上記位置特定部から伝えられたことに基づいて、上記塵芥積込装置を停止又は作動するように構成されている。
【0008】
上記の構成によると、塵芥投入口と作業者との相対距離に加え、作業者が存在している方向を検出できるので、塵芥投入口の形状に合わせ、より最適な検出範囲を設定できる。これにより作業者の位置に合わせて確実に塵芥積込装置の作動と停止の制御が可能になる。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、
上記第1通信器及び上記第2通信器のいずれか一方には、複数のアンテナが設けられ、上記第1通信器と上記第2通信器との間で近距離無線通信を行うように構成されている。
【0010】
上記の構成によると、複数のアンテナにおける電波の遅延量から電波の到来方向を正確に検知することができる。
【0011】
第3の発明では、第2の発明において、
上記位置特定部は、上記第1通信器又は上記第2通信器が得た電波強度と、上記複数のアンテナが送信又は受信した信号から得た角度とから上記測定値を計算するように構成されている。
【0012】
上記の構成によると、得られた電波強度に基づいて第2通信器から第1通信器(作業者)までの距離が計算されると共に、得られた角度に基づいて第2通信器から第1通信器(作業者)までの方向が計算される。そして、この距離と方向が一対になった測定値により、作業者の位置が特定される。例えば、この特定された作業者の位置が塵芥投入口に対して近すぎると塵芥積込装置を停止し、そこから離れると塵芥積込装置の作動停止状態を解除することができるので、作業者の安全を確保できる。
【0013】
第4の発明では、第3の発明において、
上記塵芥投入口を開閉するテールゲートを自動で動作させる自動テールゲート開閉装置をさらに備え、
上記検知エリアは、上記テールゲートを開状態にするゲート開エリアを有し、
上記位置特定部は、上記第1通信器又は上記第2通信器が得た電波強度と、上記複数のアンテナが送信又は受信した信号から得た角度とから上記測定値を計算すると共に該測定値が上記ゲート開エリアに対応する第2閾値範囲に入っているかどうかを判断し、
上記制御部は、上記測定値が上記第2閾値範囲に入っていることを上記位置特定部から伝えられたことに基づいて、上記テールゲートを開くように構成されている。
【0014】
上記の構成によると、検出された作業者の位置が第2閾値範囲に入っているか否かに合わせて自動テールゲートを開くことで、例えば作業者が塵芥投入口に近付いたときには、作業者による自動テールゲートの開操作の必要なく自動テールゲートが開くようにすれば、塵芥の積込作業が容易である。
【0015】
第5の発明では、第3又は第4の発明において、
上記位置特定部は、上記第1通信器又は上記第2通信器が得た電波強度と、上記複数のアンテナが送信又は受信した信号から得た角度とから上記測定値を計算すると共に該測定値が第3閾値範囲に入っているかどうかを判断し、
上記制御部は、上記測定値が上記第3閾値範囲に入っていないことを上記位置特定部から伝えられたことに基づいて、作動中の上記塵芥積込装置を停止させると共に該塵芥積込装置の操作を不可にする制御を行うように構成されている。
【0016】
上記の構成によると第3閾値に対応するエリアの外に作業者が離れた場合に、作業者以外の人が作動中の塵芥積込装置に触れることができず、また、塵芥積込装置を作動させようとしても操作できないので、作業者以外の人が塵芥投入口に近付いたときの安全性を確保できる。
【0017】
第6の発明では、塵芥を収容する塵芥収容箱と、該塵芥収容箱に連設され、塵芥投入口から投入された塵芥を上記塵芥収容箱に押し込む塵芥積込装置を有する塵芥投入箱と、制御装置と、を備えた塵芥収集車の制御方法を対象とし、
上記塵芥収集車の制御方法は、
作業者が接近作業限界位置に立って携帯する第1通信器を操作し、上記塵芥投入箱に設けた第2通信器とペアリングするペアリング工程と、
上記第2通信器が検知した上記ペアリング工程における電波強度測定値に基づく該第2通信器から上記作業者までの距離と、
上記第1通信器と上記第2通信器との間の通信から該第2通信器を基準とした上記作業者の方向と、
を記憶し、上記接近作業限界位置における上記距離と上記方向とが一対になった値を基準点と設定する基準点設定工程と、
上記基準点を通って車幅方向に延びる基準ラインを含む矩形の検知エリアを、所定の閾値範囲に基づいて設定する検知エリア設定工程と、
上記検知エリア設定工程の後、上記第2通信器が、作業中の作業者の上記第1通信器からの上記距離と上記方向とを測定し、測定した値が上記閾値範囲に入っているかどうかを監視する監視工程と、
上記監視工程において、上記第1通信器に対する上記距離及び上記方向が上記閾値範囲内になると上記塵芥積込装置を停止する緊急停止工程とを含む構成とする。
【0018】
上記の構成によると、作業者が塵芥積込装置を作動停止させたい位置を決める接近作業限界位置について作業者自身が任意に設定することができ、その設定した接近作業限界位置に合わせて検知エリアを簡単に設定することができる。また、検知エリアに合わせて塵芥積込装置を確実に停止させることが可能であり、利便性と安全性に優れた制御方法とすることができる。
【0019】
第7の発明では、第6の発明において、
上記第1通信器からの上記距離及び上記方向が上記閾値範囲内から閾値範囲外になると、上記塵芥積込装置の作動停止状態を解除する作動許可工程とを含む構成とする。
【0020】
上記の構成によると、作業者が塵芥積込装置に近付きすぎて一旦塵芥積込装置が作動停止になった後、作業者が安全なところまで下がると作業者の操作の必要なくその作動停止状態を解除することができるので、より利便性と安全性に優れた制御方法とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、通信器が受けた信号から作業者の方向及び距離を特定することにより、検出範囲を特定して確実に作業者の位置を検知して安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る塵芥収集車について第1通信器と第2通信器が通信状態にある塵芥投入箱を示す平面図である。
【
図2】第1通信器と第2通信器が通信状態にある塵芥投入箱を示す側面図である。
【
図3】アレイアンテナによる電波到来方向推定法を説明するための概要図である。
【
図4】塵芥収集車の制御方法を示すフローチャートである。
【
図5】従来技術に係る通信状態にある塵芥投入箱を示す平面図である。
【
図6】従来技術に係る通信状態にある塵芥投入箱を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1及び
図2は本発明の実施形態の塵芥収集車1の後ろ側部分を示し、この塵芥収集車1は、運転室を有する車台と、この車台に搭載された塵芥を収容する塵芥収容箱(いずれも図示せず)と、この塵芥収容箱に連設されて塵芥投入口2から投入された塵芥を塵芥収容箱に押し込む塵芥積込装置3を有する塵芥投入箱5とを備えている。塵芥積込装置3の構成は特に限定されないが、例えば、押込板等が油圧アクチュエータによって駆動され、その油圧アクチュエータの駆動が電磁弁等でオンオフ制御されるように構成されている。塵芥投入箱5における塵芥投入口2の側方には、作業者50が塵芥積込装置3を操作するための操作部9が設けられている。
【0025】
そして、この塵芥収集車1は、塵芥投入口2に塵芥51を積み込む作業者50に設けられる、第1通信器としての信号発信器10を備えている。本実施形態では、この信号発信器10は、Bluetooth(登録商標)5.1等の近距離無線通信を利用した発信器であり、小型で低消費電力なため例えばボタン電池でも数年使用できる。
【0026】
一方、塵芥収集車1は、例えば、塵芥投入箱5における塵芥投入口2の上側縁部に信号発信器10からの信号を受信する第2通信器としての信号受信器11を備えている。信号受信器11を設ける位置は塵芥投入口2の近傍であれば特に限定されないが、本実施形態では、左右中央のバックアイカメラ7の近くに設けられている。信号受信器11には、
図3に示すように、複数のアンテナ11aが設けられており、信号発信器10と信号受信器11の間で近距離無線通信を行うように構成されている。この信号受信器11が受けた信号は、例えば、位置特定部6に送られ、作業者50の方向及び距離を特定するようになっている。
【0027】
具体的には、3つ以上の(N本の)アンテナ11aが等間隔dで配置されており(すなわちアレイアンテナである)、信号発信器10からの到来電波がアンテナ11aに対して角度θで到来した場合、経路差lができる(l=dsinθ)。経路差lは、受信信号の遅延になって現れるため、位置特定部6は、各アンテナ11aにおける電波の遅延量から角度θを算出する。また、位置特定部6は、電波強度Eから信号発信器10までの距離Xを推定する。つまり、位置特定部6は、方向(角度θ)及び距離X(電波強度E)から測定値を計算する。具体的には、位置特定部6は、信号発信器10又は信号受信器11が得た電波強度Eと、複数のアンテナ11aが送信又は受信した信号から得た角度θとから測定値(X,θ)を計算するように構成されている。また、位置特定部6は、この測定値(X,θ)が閾値範囲(検知エリア)に入っているかどうかを判断するように構成されている。
【0028】
そして、位置特定部6の角度θ及び位置Xの情報から制御部4が塵芥積込装置3の作動と停止を制御するように構成されている。詳しい説明は省略するが、制御部4は、例えばCPU等を含むマイクロコンピュータよりなり、電磁弁等を制御することで塵芥積込装置3等を含む塵芥収容箱及び塵芥投入箱全体の制御を行えるように構成されている。位置特定部6は、制御部4に含まれていてもよい。塵芥収集車1は、塵芥投入口2及び/又は塵芥投入口2の後方における検知エリアA1,A2,…が設定保存される記憶部8を備えている。記憶部8も制御部4に含まれていてもよい。検知エリアA1,A2,…は、方向(角度θ)と距離X(電波強度E)とが一対になった所定の閾値範囲(Xr,θr)(Xrとθrは変数)によって設定される。検知エリアA1,A2,…は、例えば、危険エリアA1とテールゲート開エリアA2と積込可能エリアA3とからなる。
【0029】
危険エリアA1は、作業者50が塵芥積込作業をしているときに塵芥積込装置3に身体の一部が接触する恐れのある領域で、平面視で矩形状である。テールゲート開エリアA2は、平面視でそれよりも広い矩形領域である。積込可能エリアA3は、平面視でテールゲート開エリアA2よりも広い矩形領域で、そのエリア外に作業者50が離れた場合に、作業者50以外の人が作動中の塵芥積込装置3に触れることができず、また、塵芥積込装置3の操作部9を操作できないように構成されている。なお、積込可能エリアA3の大きさは、テールゲート開エリアA2と同じでもよい。
【0030】
詳しくは後述するが、制御部4は、測定値(X,θ)が危険エリアA1の第1閾値範囲、積込可能エリアA3の第3閾値範囲に入っているか否かを位置特定部6から伝えられたことに基づいて、塵芥積込装置3を停止又は作動するように構成されている。
【0031】
また、塵芥投入箱5には、塵芥投入口2を自動で開閉する背面視矩形状の自動テールゲート15が設けられている。詳しくは図示しないが、塵芥収集車1は、塵芥投入口2を開閉する自動テールゲート15を自動で動作させる自動テールゲート開閉装置16を有し、この自動テールゲート開閉装置16は、電動モータ16a、これに駆動されるベルト16b、リミットスイッチ等を含み、制御部4の信号を元に電動モータ16aを正回転又は逆回転させて自動テールゲート15の開閉動作をするように構成されている。
【0032】
上述したように、検知エリアは、自動テールゲート15を開状態にするゲート開エリアA2も有する。位置特定部6は、位置特定部6又は信号発信器10が得た電波強度Eと、複数のアンテナ11aが送信又は受信した信号から得た角度θとから測定値(X,θ)を計算すると共に、この測定値(X,θ)がゲート開エリアA2の第2閾値範囲に入っているかどうかを判断する。そして、制御部4は、上記測定値(X,θ)がゲート開エリアA2の第2閾値範囲に入っていることを位置特定部6から伝えられたことに基づいて、閉じられた自動テールゲート15を開くように構成されている。
【0033】
-塵芥収集車の制御方法-
次に、本実施形態に係る塵芥収集車1の制御方法について
図4も用いて具体的に説明する。
【0034】
まず、ペアリング工程S01において、作業者50が接近作業限界位置に立って、携帯する信号発信器10を操作し、塵芥投入箱5に設けた信号受信器11とペアリングする。この接近作業限界位置は、例えば、
図2のように作業者50が塵芥投入口2に近付き、塵芥51を投入する場合に、それ以上塵芥投入口2に近付いたら安全のために塵芥積込装置3を作動停止させたい位置とする。本実施形態では、
図3で示したように、複数のアンテナ11aにおける電波の遅延量から電波の到来方向(角度θ)を正確に検知することができる。
【0035】
次いで、基準点設定工程S02において、信号受信器11がペアリング工程において検知した電波強度測定値E0に基づく信号受信器11から作業者50の信号発信器10までの距離X0と、信号発信器10と信号受信器11との間の通信から信号受信器11を基準とした作業者の方向(角度θ0)とを記憶部8で記憶し、基準点(X0,θ0)として設定する。
【0036】
次いで、基準点設定工程S02の後、検知エリア設定工程S03において、基準点(X0,θ0)を通って車幅方向に延びる基準ラインL0を含む矩形の危険エリアA1を、所定の第1閾値範囲に基づいて設定する。具体的に説明すると、危険エリアA1内のある場所で信号発信器10が信号受信器11と通信する場合には信号受信器11から信号発信器10までの距離X1と方向(角度θ1)による値(X1,θ1)が得られるが、第1閾値範囲は、危険エリアA1全体まで広げた考えたときに、この値(X1,θ1)のとり得る範囲となっている。
【0037】
基準ラインL0は、矩形の危険エリアA1の車両前後方向後端の辺と重なるラインである。基準ラインL0は、作業者50が信号受信器11と信号発信器10とをペアリングさせる場所を変更することによって車両前後方向に位置調整される。つまり、危険エリアA1の車両前後方向後端の辺の位置は、車両前後方向に調整可能となっている。一方、本実施形態において矩形の危険エリアA1の車両前後方向前端の辺と車幅方向左右端の辺とは、予め位置が設定されている。危険エリアA1の車幅方向左右端の辺は、塵芥投入口2の左右幅に合わせて設定されている。
【0038】
なお、第1閾値範囲よりも広い範囲の距離Xと角度θとが一対になった所定の閾値範囲(Xr,θr)(Xrとθrは変数)に基づいて、上記テールゲート開エリアA2(第2閾値範囲に対応)、積込可能エリアA3(第3閾値範囲に対応)を設定してもよいし、予め設定して記憶部8に記憶しておいてもよい。
【0039】
本実施形態では、塵芥投入口2と作業者50との間の電波強度Eから求めた距離Xに加え、作業者50が存在している方向(角度θ)を検出できるので、塵芥投入口2の略矩形状の形状に合わせ、より最適な検出範囲を設定できる。
【0040】
次いで、検知エリア設定工程S03の後、監視工程S04において、信号受信器11が、作業中の作業者50の信号発信器10からの距離Xと方向(角度θ)からなる測定値(X,θ)を計測し、測定値(X,θ)が第1閾値範囲、第2閾値範囲、第3閾値範囲のいずれかに入っているかどうかを監視する。
【0041】
次いで、ステップS05において、位置特定部6は、作業者の位置を示す測定値(X,θ)が積込可能エリアA3の外にあるかどうか(第3閾値範囲に入っているかどうか)を判定する。
【0042】
測定値(X,θ)が積込可能エリアA3の外にある(第3閾値範囲外である)と判定した場合、位置特定部6は、作業者50が塵芥投入口2から遠く離れたと判断する。この判断結果は位置特定部6から制御部4に伝えられてステップS06に進む。
【0043】
ステップS06の作動停止工程では、制御部4が作動中の塵芥積込装置3を積込サイクルの正規の停止位置で停止させる。これにより、作業者50が塵芥投入口2から離れた状態で、作業者50以外の者が塵芥投入口2に近付いて巻き込まれるという事故を防ぐことができる。ステップS06の作動停止工程の後は、ステップS13に進む。
【0044】
一方、ステップS05において、測定値(X,θ)が積込可能エリアA3にある(第3閾値範囲内である)と判定されると、ステップS07に進む。
【0045】
ステップS07において、位置特定部6は、測定値(X,θ)が、予め設定したテールゲート開エリアA2の外にあるかどうか(第2閾値範囲に入っているかどうか)を判定する。
【0046】
測定値(X,θ)がテールゲート開エリアA2の外にある(第2閾値範囲外である)と判定した場合、位置特定部6は、テールゲート開エリアA2の外に作業者50が移動したと判断する。この判断結果は位置特定部6から制御部4に伝えられてステップS08に進む。
【0047】
ステップS08のテールゲート閉工程では、制御部4が自動テールゲート15を閉じさせる。この場合も、作業者50が塵芥投入口2から離れた状態で、作業者50以外の者が塵芥投入口2に近付いて巻き込まれるという事故を防ぐことができる。ステップS08のテールゲート閉工程の後は、ステップS13に進む。
【0048】
一方、ステップS07において、測定値(X,θ)がテールゲート開エリアA2にある(第2閾値範囲内である)と判定した場合、位置特定部6は、テールゲート開エリアA2に作業者が進入したと判断する。この判断結果は位置特定部6から制御部4に伝えられてステップS09に進む。
【0049】
ステップS09のテールゲート開工程では、制御部4が閉まっていた自動テールゲート15を自動で開かせ、ステップS10に進む。
【0050】
ステップS10において、位置特定部6は、測定値(X,θ)が危険エリアA1の外にあるかどうか(第1閾値範囲に入っているかどうか)を判定する。
【0051】
測定値(X,θ)が危険エリアA1の外にあると判定した場合、位置特定部6は、作業者50の身体の一部が塵芥積込装置3に接触する恐れのない位置まで作業者50が離れて安全が確保されている判断する。この判断結果は位置特定部6から制御部4に伝えられてステップS11に進む。
【0052】
ステップS11の作動許可工程では、制御部4は、積込サイクルの途中で停止された塵芥積込装置3の作動停止状態を解除し、その作動を再開する。ステップS11の作動許可工程の後は、ステップS13に進む。
【0053】
一方、ステップS10において、測定値(X,θ)が危険エリアA1にある(第1閾値範囲内である)と判定した場合、位置特定部6は、危険エリアA1に作業者50が侵入したと判断する。この判断結果は位置特定部6から制御部4に伝えられてステップS12に進む。
【0054】
ステップS12の緊急停止工程では、制御部4が積込サイクルの途中で作動中の塵芥積込装置3を緊急停止させる。その後ステップS13に進む。
【0055】
ステップS13において、制御部4は、塵芥積込作業が終了したかどうかを判定する。具体的には、制御部4は、塵芥積込装置3の動力源につながるPTO(動力取出装置)がオフになったかどうかを判定する。PTOがオフでない場合には、ステップS04の監視工程に戻り、ステップS05~ステップS12の処理が繰り返される。
【0056】
例えば、ステップS10において位置特定部6により測定値(X,θ)が第1閾値範囲内であると判定されると共にステップS12において塵芥積込装置3が作動途中で緊急停止されたとする。その後、繰り返される次の処理のステップS10において今度は位置特定部6により測定値(X,θ)が第1閾値範囲外であると判定されると、塵芥積込装置3の作動停止状態が解除される。そして緊急停止されたところから塵芥積込装置3が作動を再開する。
【0057】
一方、ステップS13において、制御部4がPTOオフを判断した場合には処理終了となる。
【0058】
本実施形態では、塵芥投入口2と作業者50との相対距離(距離X)に加え、作業者50が存在している方向(角度θ)を検出できるので、塵芥投入口2の形状に合わせ、より最適な検出範囲を設定できる。これにより作業者50の位置に合わせて確実に塵芥積込装置3の作動と停止の制御が可能になる。
【0059】
本実施形態では、信号受信器11が得た電波強度から作業者50の信号発信器10までの距離を計算し、得られた角度θを合わせて作業者50の位置が確実に特定される。この特定された作業者50の位置が塵芥投入口2に対して近すぎると(危険エリアA1内)、塵芥積込装置3を停止し、そこから離れると(危険エリアA1外)、塵芥積込装置3の作動停止状態を解除することができるので、作業者50の安全を確保できる。
【0060】
本実施形態では、検出された作業者50の位置が第2閾値範囲に入っているか否かに合わせて自動テールゲート15を開閉することで、作業者50が塵芥投入口2から離れたときには(テールゲート開エリアA2外)、自動テールゲート15を閉じて作業者50以外の人が塵芥投入口2に近付いたときの安全性を確保でき、逆に作業者50が塵芥投入口2に近付いたときには(テールゲート開エリアA2内)、作業者による自動テールゲート15の開操作をする必要なく自動テールゲート15が開くので、塵芥51の積込作業が容易である。
【0061】
したがって、本実施形態に係る塵芥収集車1によると、検出範囲を特定して確実に作業者50の位置を検知して安全性を向上させることができる。
【0062】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0063】
すなわち、上記実施形態では、作業者50が第1通信器としての信号発信器10を所持し、第2通信器としての信号受信器11を塵芥投入口2の近くに設けたが、逆に塵芥投入口2の近くに第1通信器としての信号発信器10を設け、第2通信器としての信号受信器11を作業者50が所持するようにしてもよい。
【0064】
また上記実施形態では、複数のアンテナ11aを信号受信器11に設けたが、信号発信器側に設けてもよい。この場合、制御部4は、信号発信器10から信号受信器11が得た電波強度と、複数のアンテナが送信した信号から得た角度とから測定値を計算し、この測定値が所定の積込装置用閾値を超える又は下回るときに塵芥積込装置3を停止又は作動したり、自動テールゲート15を開閉したりするように構成すればよい。
【0065】
また、上記実施形態では、信号発信器10を作業者50の胸の辺りに置くように図示しているが、作業者50の頭、手足等に取り付けられる装着物に信号発信器10を埋め込むようにすれば、どの部位を優先して保護するかを作業者50側で任意に決定できる。
【0066】
さらに、上記実施形態では、作業者50の位置で自動テールゲート15の開閉操作をしたり、塵芥積込装置3の作動と停止を制御したりしているが、警報を鳴らすなど他の動作を連動させてもよい。
【0067】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0068】
1 塵芥収集車
2 塵芥投入口
3 塵芥積込装置
4 制御部
5 塵芥投入箱
6 位置特定部
7 バックアイカメラ
8 記憶部
9 操作部
10 信号発信器(第1通信器)
11 信号受信器(第2通信器)
11a アンテナ
15 自動テールゲート
16 自動テールゲート開閉装置
16a 電動モータ
16b ベルト
50 作業者
51 塵芥
A1 危険エリア(検知エリア)
A2 テールゲート開エリア(検知エリア)
A3 積込可能エリア(検知エリア)
L0 基準ライン