(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】浴室装置
(51)【国際特許分類】
A61H 33/10 20060101AFI20230502BHJP
A61H 33/06 20060101ALI20230502BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
A61H33/10 G
A61H33/06 G
F24F7/06 B
(21)【出願番号】P 2019201755
(22)【出願日】2019-11-06
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000221834
【氏名又は名称】東邦瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】市川 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 実希夫
(72)【発明者】
【氏名】盛興 美千代
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-161338(JP,A)
【文献】特開2014-171608(JP,A)
【文献】特開平11-316083(JP,A)
【文献】特開2009-014255(JP,A)
【文献】特開2001-231836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00-37/00
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室内で菌類の繁殖を抑制する繁殖抑制運転を実行可能な浴室装置であって、
浴室内に臨むミストノズルと、このミストノズルに温水を供給する給湯路と、浴室温度を検知する温度検知手段と、繁殖抑制運転の自動制御を含む浴室装置の運転制御を実行可能な制御手段とを備え、繁殖抑制運転時、ミストノズルから温水ミストを浴室内に噴霧するものにおいて、
浴室温度に対応する、予め設定された繁殖抑制運転の時間係数を記憶する記憶手段を備え、
繁殖抑制運転時、制御手段は、温度検知手段が所定の単位時間間隔で検知する各浴室温度に対応する時間係数を記憶手段から検索して、単位時間に検索した時間係数を乗じて求めたみなし運転時間を積算し、積算したみなし運転時間が所定の繁殖抑制運転完了閾値に到達した時、繁殖抑制運転を完了させることを特徴とする浴室装置。
【請求項2】
繁殖抑制運転時、前記温度検知手段が検知する浴室温度が所定の温度閾値に到達した時、前記制御手段は、前記記憶手段が記憶する時間係数の検索及びみなし運転時間の積算を開始することを特徴とする請求項1記載の浴室装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の浴室装置であって、浴室内の空気を加熱する熱源と、浴室内の空気を吸い込み、吸い込んだ空気を浴室内に吹き出して浴室内の空気を循環させる送風手段と、浴室内の空気を浴室外に排気して換気する換気手段とを更に備え、繁殖抑制運転完了後、換気手段で浴室内を換気しながら、送風手段が、浴室内の空気を吸い込み、熱源で加熱した空気を浴室内に吹き出して、浴室内を温風乾燥する乾燥運転を所定時間実行するものにおいて、
繁殖抑制運転及び乾燥運転の両運転時間を計測するタイマを備え、
前記制御手段は、繁殖抑制運転時間と乾燥運転時間との間の正の相関関係に基づいて、繁殖抑制運転時間に対応する乾燥運転の所定時間を決定することを特徴とする浴室装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室内で菌類の繁殖を抑制する繁殖抑制運転を実行可能な浴室装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この主の浴室装置として、浴室内に臨むミストノズルと、このミストノズルに温水を供給する給湯路と、浴室温度を検知する温度検知手段と、繁殖抑制運転の自動制御を含む浴室装置の運転制御を実行可能な制御手段とを備え、繁殖抑制運転時、ミストノズルから温水ミストを浴室内に噴霧するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献1記載の浴室装置は、浴室内の湿度を検知する湿度検知手段と、浴室内への流入空気の温度及び湿度を夫々検知する流入空気温度検知手段及び流入空気湿度検知手段とを備える。そして、上記浴室装置は、温度検知手段及び湿度検知手段が検知する浴室内の温湿度が所定の閾値を超え、且つ流入空気温度検知手段及び流入空気湿度検知手段が検知する流入空気の温湿度も所定の閾値を超えたと制御手段が判定したとき、温水ミストをミストノズルから浴室内に噴霧する繁殖抑制運転を所定の時間内で実行する。繁殖抑制運転では、浴室内壁面の温度及び浴室内の温湿度が、夫々、所定の閾値以上となる状態を所定の時間以上持続させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
然し、特許文献1記載の浴室装置では、繁殖抑制運転の完了を自動制御するために制御手段に設定すべき条件が、運転時間以外に浴室内壁面の温度及び浴室内の温湿度もあり、設定条件が比較的多いという問題がある。また、実際にはより短時間で繁殖抑制効果が十分得られるのにも関わらず、所定の時間が経過するまで繁殖抑制運転を継続させるため、エネルギーを浪費するという問題もある。
【0006】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、容易な条件設定で最適な繁殖抑制運転を実行でき、且つエネルギーの浪費を抑制できる浴室装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、浴室内で菌類の繁殖を抑制する繁殖抑制運転を実行可能な浴室装置であって、浴室内に臨むミストノズルと、このミストノズルに温水を供給する給湯路と、浴室温度を検知する温度検知手段と、繁殖抑制運転の自動制御を含む浴室装置の運転制御を実行可能な制御手段とを備え、繁殖抑制運転時、ミストノズルから温水ミストを浴室内に噴霧するものにおいて、浴室温度に対応する、予め設定された繁殖抑制運転の時間係数を記憶する記憶手段を備え、繁殖抑制運転時、制御手段は、温度検知手段が所定の単位時間間隔で検知する各浴室温度に対応する時間係数を記憶手段から検索して、単位時間に検索した時間係数を乗じて求めたみなし運転時間を積算し、積算したみなし運転時間が所定の繁殖抑制運転完了閾値に到達した時、繁殖抑制運転を完了させることを特徴とする。
【0008】
本発明者らは、繁殖抑制運転時間は浴室温度が高いほど短くなるのに加え、各浴室温度での繁殖抑制運転には、所定の浴室温度での繁殖抑制運転に対する時間効率に固有値があるとの知見を得た。そして、上記知見に基づいて繁殖抑制運転を実行することによって、浴室内での菌類の繁殖を容易な条件設定で適切に抑制できることを確認した。
【0009】
本発明によれば、繁殖抑制運転の自動制御のために制御手段に設定すべき条件は、基本的に繁殖抑制運転完了閾値だけで済み、また、みなし運転時間を求めるのに用いる時間係数は、各浴室温度での繁殖抑制運転に固有の時間効率であるため、条件設定を容易としながらも、最適な繁殖抑制運転が実現される。また、菌類の繁殖を抑制する時間だけ繁殖抑制運転を実行するため、エネルギーの浪費を抑制できる。
【0010】
また、本発明において、繁殖抑制運転時、前記温度検知手段が検知する浴室温度が所定の温度閾値に到達した時、前記制御手段は、前記記憶手段が記憶する時間係数の検索及びみなし運転時間の積算を開始することが望ましい。繁殖抑制運転は、浴室温度がある程度上昇していないと効果が出にくい。従って、繁殖抑制運転時、温度検知手段が検知する浴室温度に所定の温度閾値を設定し、この温度閾値に到達した時、制御手段が時間係数の検索及びみなし運転時間の積算を開始することで、浴室内の菌類の繁殖抑制効果を確実に得ることができる。
【0011】
また、本発明において、上記浴室装置であって、浴室内の空気を加熱する熱源と、浴室内の空気を吸い込み、吸い込んだ空気を浴室内に吹き出して浴室内の空気を循環させる送風手段と、浴室内の空気を浴室外に排気して換気する換気手段とを更に備え、繁殖抑制運転完了後、換気手段で浴室内を換気しながら、送風手段が、浴室内の空気を吸い込み、熱源で加熱した空気を浴室内に吹き出して、浴室内を温風乾燥する乾燥運転を所定時間実行するものにおいて、繁殖抑制運転及び乾燥運転の両運転時間を計測するタイマを備え、前記制御手段は、繁殖抑制運転時間と乾燥運転時間との間の正の相関関係に基づいて、繁殖抑制運転時間に対応する乾燥運転の所定時間を決定することが望ましい。浴室内での菌類の繁殖抑制効果は、浴室湿度を上げることで高くなる。ここで、例えば、浴室が広かったり、冬場であったりする等の場合、浴室温度が上がりにくいため、浴室湿度を上げるのに要する繁殖抑制運転時間は長くなる。これに伴い、浴室の内壁面、天井面等に付着する水滴量が多くなることから、高い浴室湿度と相俟って、繁殖抑制運転完了後に行う乾燥運転時間を長くする必要がある。即ち、繁殖抑制運転時間及び乾燥運転時間との間には正の相関関係がある。従って、その相関関係から繁殖抑制運転時間の長短に応じた適切な乾燥運転の所定時間を得ることができ、浴室内の乾燥不足や、乾燥運転を必要以上に行うことによるエネルギーの浪費を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の浴室装置の一実施形態を示す要部断面図。
【
図2】
図1に示す浴室装置の繁殖抑制運転及び乾燥運転の自動制御の一形態を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照して、浴室装置1は、浴室BRの天井部に設置されている。浴室装置1の下面カバー2には、吸込み口3と、可変ルーバ4a付きの吹出し口4とが開設されている。浴室装置1内には、吸込み口3から吹出し口4に至る通風路5が設けられている。通風路5には、浴室BR内の空気を吸込み口3から吸い込み、吸い込んだ空気を浴室BR内に吹出し口4から吹き出して浴室BR内の空気を循環させる、ファン等の送風手段6と、通風路5を流れる空気を加熱又は冷却する熱源としての放熱器7とが配置されている。
【0014】
放熱器7には、別置きの熱源機8に連なる第1熱媒循環路9が接続されている。第1熱媒循環路9は、熱源機8で加熱又は冷却された熱媒体を放熱器7に供給する往路9aと、放熱器7を通過した熱媒体を回収して熱源機8に戻す復路9bとで構成されている。往路9aには、熱媒体の循環開始及び停止と、流量調節とを実行可能な開閉弁から成る第1熱媒弁10が介設され、熱源機8で加熱又は冷却された熱媒体は、第1熱媒弁10の開弁で放熱器7を介して第1熱媒循環路9を循環する。そして、送風手段6の作動により吸込み口3から吸い込まれた浴室BR内の空気が放熱器7で加熱又は冷却され、吹出し口4を通じて浴室BR内に吹き出し、浴室装置1の冷暖房運転が実行される。
【0015】
また、浴室装置1には、吸込み口3に臨ませて温度検知手段11が設けられると共に、第1熱媒循環路9の往路9aに熱媒温度検知手段12が設けられている。温度検知手段11及び熱媒温度検知手段12にはサーミスタ等が採用される。また、通風路5の吸込み口3側の部分から分岐して屋外にのびる換気通路13が設けられている。換気通路13にファン等の換気手段14が設けられ、換気手段14の作動により浴室BR内の空気を浴室BR外に排気する際、他室からガラリ等を通じて浴室BR外の室内空気が浴室BR内に導入され、浴室装置1の換気運転が実行される。換気通路13の換気手段14よりも下流側の部分には、逆流防止のための換気用ダンパ15が設けられている。尚、換気運転時に暖房運転を併せて実行すると、浴室BR内を温風乾燥する乾燥運転を実行できる。
【0016】
更に、浴室装置1は、下面カバー2に設けられ、浴室BR内に臨むミストノズル16と、ミストノズル16に温水を供給する給湯路17と、液々熱交換器18とを備えている。液々熱交換器18の二次側18bは給湯路17に介設され、液々熱交換器18の一次側18aは、第1熱媒循環路9の復路9bから分岐させた第2熱媒循環路19に介設されている。第2熱媒循環路19は、第1熱媒循環路9の往路9aから分岐され、熱源機8により加熱された熱媒体を液々熱交換器18の一次側18aに供給する往路19aと、第1熱媒循環路9の復路9bに接続されて液々熱交換器18の一次側18aから熱媒体を回収して熱源機8に戻す復路19bとから構成されている。復路19bには、熱媒体の循環開始及び停止と、流量調節とを実行可能な開閉弁から成る第2熱媒弁20が介設されている。
【0017】
給湯路17は、液々熱交換器18の二次側18bに水を供給し、一次側18aに供給される加熱された熱媒体との熱交換により温水をミストノズル16に供給する。また、給湯路17には、液々熱交換器18の二次側18bの上流側に位置させて、開閉弁から成る給水弁21が介設されると共に、液々熱交換器18の二次側18bの下流側に位置させて、開閉弁から成るミスト弁22が介設されている。更に、液々熱交換器18とミスト弁22との間の給湯路17の部分に、サーミスタ等の湯温検知手段23が設けられている。
【0018】
更にまた、浴室装置1は、浴室BR内で菌類の繁殖を抑制する繁殖抑制運転の自動制御を含む浴室装置1の運転制御(即ち、繁殖抑制運転、冷暖房運転、ミストサウナ運転、換気運転及び乾燥運転の自動制御)を実行可能な制御手段Cを備えている。制御手段Cは、送風手段6、換気手段14、第1熱媒弁10、第2熱媒弁20、給水弁21及びミスト弁22の動作を制御する。この制御のために、制御手段Cには、温度検知手段11、熱媒温度検知手段12及び湯温検知手段23の検知信号が所定の単位時間間隔で入力される。制御手段Cは、例えば、CPU,ROM,RAM,A/Dコンバータ、インターフェース等を備えるマイクロコンピュータから構成され、上記各運転の自動制御に対応するプログラムが予めインストールされている。また、制御手段Cには、図外のリモコンが接続され、このリモコンには浴室装置1の上記各運転に対応するスイッチが設けられている。このスイッチの一つとして繁殖抑制運転の実行及び停止を制御手段Cに入力する繁殖抑制運転実行スイッチがある。この繁殖抑制運転実行スイッチがユーザによりONにされると、制御手段Cは繁殖抑制運転を開始させる。具体的には、暖房運転を実行すると共に、第2熱媒弁20、給水弁21及びミスト弁22を開弁させ、液々熱交換器18の二次側18bからミストノズル16に向かって流れる温水の温度を制御手段Cに予め設定された温度になるように制御して、ミストノズル16から温水ミストを浴室BR内に噴霧させる。
【0019】
そして、浴室装置1は、浴室温度に対応する、予め設定された繁殖抑制運転の時間係数を記憶する、図外の記憶手段を備えている。ここで、時間係数とは、実験により求められた浴室温度に固有の数値である。実験によれば、外気温が5℃~25℃のときの1.25坪の浴室BR内で菌類の繁殖を抑制するために行う繁殖抑制運転の運転時間は、浴室BRの内壁面温度が45℃で90分、46℃で60分、47℃で53分である。つまり、浴室BRの内壁面温度が46℃,47℃のときの繁殖抑制運転時間は、45℃比で夫々、60/90,53/90に短縮され、45℃での繁殖抑制運転時間に換算すると、単位時間当たりで夫々1.5倍、1.7倍(60/90,53/90の逆数)になる。即ち、繁殖抑制運転では、浴室BRの内壁面温度が46℃,47℃の場合、45℃の場合に対して夫々1.5倍、1.7倍の時間効率を有している。そこで、これらの1.5,1.7を夫々内壁面温度46℃,47℃に固有の時間係数と定める。
【0020】
また、実験結果によると、浴室BRの内壁面温度は、温度検知手段11が実際に検知する浴室温度よりも2℃程度低い。本実施形態では、温度検知手段11は、浴室BRの内壁面温度を直接検知しないため、温度検知手段11が実際に検知する浴室温度と浴室BRの内壁面温度との温度差(2℃)を考慮して、温度検知手段11が所定の単位時間間隔で検知する各浴室温度に対応する時間係数を設定する。例えば、以下の表1に示す如く設定することができる。
【0021】
【0022】
制御手段Cは、繁殖抑制運転時、温度検知手段11が所定の単位時間間隔で検知する各浴室温度に対応する時間係数を上記記憶手段から検索して、所定の単位時間に検索した時間係数を乗じて求めたみなし運転時間を積算する。積算したみなし運転時間が所定の繁殖抑制運転完了閾値に到達した時、繁殖抑制運転を完了させる。例えば、所定の単位時間間隔を1分間に設定すると共に、温度検知手段11が検知する浴室温度が47℃(内壁面温度45℃に相当)のときの繁殖抑制運転時間である90分を繁殖抑制運転の閾値に設定することができる。この場合、制御手段Cが積算したみなし運転時間が90分間に到達した時、制御装置Cは繁殖抑制運転を完了させる。
【0023】
上記の如く、浴室運転1では、繁殖抑制運転の自動制御のために制御手段Cに設定すべき条件は、基本的に繁殖抑制運転完了閾値だけで済み、みなし運転時間を求めるのに用いる時間係数は、各浴室温度での繁殖抑制運転に固有の時間効率であるため、条件設定を容易としながらも、最適な繁殖抑制運転が実現される。また、菌類の繁殖を抑制する時間だけ繁殖抑制運転を実行するため、エネルギーの浪費を抑制できる。
【0024】
ところで、繁殖抑制運転は、浴室温度がある程度上昇していないと効果が出にくい。従って、繁殖抑制運転時、温度検知手段11が検知する浴室温度に所定の温度閾値を設定し、この温度閾値に到達した時、制御手段Cが時間係数の検索及びみなし運転時間の積算を開始するようにすると、浴室BR内の菌類の繁殖抑制効果を確実に得ることができる。そこで、浴室装置1では、制御手段Cに上記所定の温度閾値を設定し、繁殖抑制運転時、温度検知手段11が検知する浴室温度が所定の温度閾値に到達した時、制御手段Cは、上記記憶手段からの時間係数の検索及びみなし運転時間の積算を開始する。上記所定の温度閾値としては、47℃が例示される。
【0025】
また、浴室BR内での菌類の繁殖抑制効果は、浴室湿度を上げることで高くなる。ここで、例えば、浴室BRが広かったり、冬場であったりする等の場合、浴室温度が上がりにくいため、浴室湿度を上げるのに要する繁殖抑制運転時間t1は長くなる。これに伴い、浴室BRの内壁面、天井面等に付着する水滴量が多くなることから、高い浴室湿度と相俟って、繁殖抑制運転完了後に行う浴室BRの乾燥運転が制御手段Cに設定されている場合、乾燥運転時間t2を長くする必要がある。即ち、繁殖抑制運転時間t1及び乾燥運転時間t2との間には正の相関関係がある。具体的には、外気温が5℃~25℃のときの1.25坪の浴室BRで行う繁殖抑制運転及び乾燥運転の夫々の時間t1,t2は、実験により以下の表2に示す正の相関関係がある。尚、この相関関係は、繁殖抑制運転時間t1の最長時間を180分間に設定した場合であり、乾燥状態は、浴室BRの内壁面、天井面、床面等に水滴が無いことを目視で観察することにより行った。
【0026】
【0027】
そこで、浴室装置1は、繁殖抑制運転及び乾燥運転の両運転時間t1,t2を計測する、図外のタイマを備え、制御手段Cは、繁殖抑制運転時間t1と乾燥運転時間t2と間の、表2に示す正の相関関係に基づいて、繁殖抑制運転時間t1に対応する乾燥運転の所定時間を決定する。乾燥運転の所定時間の決定は、制御手段Cが繁殖抑制運転時間t1を一時的に記憶し、上記相関関係から記憶した繁殖抑制運転時間t1に対応する乾燥運転時間t2を検索することにより行うことができる。上記相関関係は、上記記憶手段とは別の記憶手段を設ける等して、記憶させることができる。
【0028】
そして、浴室装置1は、繁殖抑制運転後、決定した所定の乾燥運転時間、乾燥運転を行う。乾燥運転時には、第1熱媒弁10が開弁され、熱媒温度検知手段12が熱媒体の温度を検知し、検知した温度を熱源機8にフィードバックしながら所定温度に加熱した所定量の熱媒体を第1熱媒循環路9を通じて放熱器7と熱源機8との間を循環させる。同時に、送風手段6及び換気手段14を作動させる。浴室BR内の空気が吸込み口3から吸い込まれ、通風路5で放熱器7により加熱され、加熱空気が吹出し口4から浴室BR内に吹き出される。また、換気手段14により通風路5に吸い込まれた空気の一部が浴室BR外に排気されると共に、浴室BR外の室内空気が浴室BR内に導入される。こうして、浴室BR内の温風乾燥が行われる。
【0029】
浴室装置1は、繁殖抑制運転時間t1及び乾燥運転時間t2との間の正の相関関係から繁殖抑制運転時間t1の長短に応じた適切な乾燥運転の所定時間を得ることができ、浴室BR内の乾燥不足や、乾燥運転を必要以上に行うことによるエネルギーの浪費を防止できる。
【0030】
次に、
図2を参照して、浴室装置1が実行する繁殖抑制運転及び乾燥運転の自動制御について説明する。
【0031】
STEP1で、ユーザが上記リモコンの繁殖抑制運転実行スイッチをONにすると、
図1に示す第1熱媒弁10が開弁され、熱源機8から第1熱媒循環路9を介して加熱された熱媒が放熱器7に供給される。そして、送風手段6を動作させることで浴室BR内に温風を送風する暖房運転が開始される(STEP2)。また、
図1に示す第2熱媒弁20が開弁され、熱源機8から所定温度に加熱された所定量の熱媒体が第1熱媒循環路9及び第2熱媒循環路19を介して液々熱交換器18の一次側18aに供給され、熱媒体が熱源機8との間を循環する。また、給水弁21が開弁され、上水が液々熱交換器18の二次側18bに供給され、熱媒体との間で熱交換されて温水になる。この温水の温度を湯温検知手段23が検知する(STEP3)。温水温度が制御手段Cに設定された所定温度に到達して温水ミストの噴霧準備が整うと、温水ミストを噴霧開始を報知するブザーが鳴動する(STEP4)。このブザーは、例えば、上記リモコン等に付設できる。そして、所定時間(例えば、10秒間等)後、給水弁21が開弁されたままの状態でミスト弁22が開弁されて(STEP5)、繁殖抑制運転が開始される。
【0032】
次いで、STEP6に移行し、所定の単位時間間隔で温度検知手段11が浴室温度を検知し、検知した浴室温度が制御手段Cに入力される。制御手段Cは、上記の如く、入力された浴室温度が所定の温度閾値に到達した時、浴室温度に対応する時間係数の検索、また、単位時間に検索した時間係数を乗じて求めるみなし運転時間の積算を開始する。そして、みなし運転時間の積算値が、所定の繁殖抑制完了閾値以上であるか否かの判定を行う。また、制御手段Cは、上記タイマで計測した繁殖抑制運転時間t1を一時的に記憶する。制御手段Cが繁殖抑制完了閾値以上であると判定すると、繁殖抑制運転を完了し、浴室装置1は通常停止の状態になる(STEP7)。尚、制御手段Cが所定の繁殖完了閾値未満であると判定すると、繁殖抑制運転が継続する。
【0033】
この後、制御手段Cは、繁殖抑制運転後に乾燥運転の実行が設定されているか否かを判定し(STEP8)、設定されていると判定する場合、浴室BRの乾燥運転モードに移行する(STEP9)。一方、乾燥運転の実行が設定されていない場合は、一時的に記憶した繁殖抑制運転時間t1を消去してSTEP1の前の待機状態等に戻る。乾燥運転モードに移行すると、制御手段Cは、上記の如く、繁殖抑制運転時間t1と乾燥運転時間t2との間の正の相関関係に基づいて、繁殖抑制運転t1に対応する乾燥運転の所定時間を決定し(STEP10)、乾燥運転を実行する。決定した所定時間が経過すると、制御手段Cは乾燥運転を停止させる(STEP11)。
【0034】
以上、本発明を一実施形態に関して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、繁殖抑制運転時の浴室温度に対応する時間係数は、浴室BRの広さ及び設置方角、季節、浴室BRの内壁面等を形成する材料の材質等に応じて個々の浴室BRの繁殖抑制運転に最適となるように設定することができる。また、時間係数を記憶する記憶手段は、制御手段Cと別体とせずに制御手段Cに組み込み、併合することもできる。更に、熱源機8は、給湯暖房装置、ヒートポンプ、これらのハイブリッド装置等の任意のものから選定することができる。そして、温度検知手段11には、浴室BRの内壁面温度を直接検知できるようなものを採用したり、温度検知手段11の設置部位を変更したりすることができる。この場合、浴室BRの雰囲気温度と内壁面温度との温度差を考慮せずに済む。また、繁殖抑制運転時に暖房運転も同時に実行しているが、温水ミストの噴霧だけで繁殖抑制運転を実行することもできる。
【符号の説明】
【0035】
1…浴室装置、6…送風手段、7…放熱器(熱源)、11…温度検知手段、14…換気手段、16…ミストノズル、17…給湯路、C…制御手段、t1…繁殖抑制運転時間、t2…乾燥運転時間、BR…浴室。