(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】サッシ
(51)【国際特許分類】
E06B 1/18 20060101AFI20230502BHJP
【FI】
E06B1/18 X
(21)【出願番号】P 2019233156
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184066
【氏名又は名称】宮崎 恭
(72)【発明者】
【氏名】網谷 志郎
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-197467(JP,A)
【文献】特開2019-214842(JP,A)
【文献】特開2018-184730(JP,A)
【文献】特開2000-64476(JP,A)
【文献】特開2009-2096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-3/99
E04B 2/56-2/70
E04B 2/88-2/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
竪材と、竪材の両側に固定される竪枠を備え、
竪材は、鋼材からなり中空形状を有する長尺部材により形成され、躯体開口部に固定されているとともに、屋外側に向けて延びる連結部材が固定されており、
左右の竪枠は、竪材の屋外側位置において連結部材の見込面に連結されているとともに、屋内側方向に延びて竪材の見込面を覆う屋内側見込壁が設けられている建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竪材の両側に竪枠を固定してなる建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、方立等の竪材の両側に窓を連結してなる連窓が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、連窓について、広い開口面積をもつ連窓が求められている。
【0005】
本発明は、広い開口面積を備える連窓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、竪材と、竪材の両側に固定される竪枠を備え、竪材は、鋼材からなり中空形状を有する長尺部材により形成され、躯体開口部に固定されているとともに、屋外側に向けて延びる連結部材が固定されており、左右の竪枠は、竪材の屋外側位置において連結部材の見込面に連結されているとともに、屋内側方向に延びて竪材の見込面を覆う屋内側見込壁が設けられている建具である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、広い開口面積を備えた連窓を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る建具の外観図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る建具の竪断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る建具の連結部分の横断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る建具の部材を説明する図であり、(a)は、竪材等の横断面図であり、(b)(c)は、竪枠の横断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る建具の連結部分の施工手順を説明する横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態の建具について、方立、壁材等の竪材1の左右両側に窓2,3を固定してなる連窓の例をあげ、図面を参考にして説明する。
なお、窓2,3は同様の構成を有しており、以下の説明において、竪材1の左右に固定される窓について、主に右側に配置される窓2を用いて説明する。
【0010】
(全体の構成)
図1に示すように、本実施形態の建具は、左右方向に並ぶ2つの窓2、3が竪材(方立)1によって連結されて構成されている。
竪材1の左右に固定される窓2,3は、左右の竪枠23,24,33,34の内周面に上枠21,31及び下枠22,32の端部を当接し、ビス等によって四周に組んで窓枠が形成され、窓枠の内周にガラス等のパネル体25,35が配置されて構成されている。
【0011】
(窓の構成)
窓2の上枠21は、アルミ合金等からなり、
図2に示すように、パネル体25の外周側を覆う中空形状の外周壁部211と、外周壁部211の屋内側に連設される中空形状の屋内壁部212と、外周壁部211の屋外側から内周方向(下方)に延設される屋外壁部213を有しており、外周壁部211の内周にパネル間口21aが設けられている。
【0012】
屋内壁部212の外周面(上面)に固定部212aが設けられており、上枠21は、アンカー部材Bを介して躯体開口部Aに固定されている。アンカー部材Bの屋外側の躯体開口部Aと上枠21の外周壁部211との間には、適宜バックアップ材及びシール材等が設けられている。
【0013】
窓2の下枠22は、アルミ合金等からなり、
図2に示すように、パネル体25の外周側を覆う中空形状の外周壁部221と、外周壁部221の屋内側内周面に内周方向(上方)に向けて設けられる中空形状の屋内壁部222と、外周壁部221の屋外側内周面に取付けられる押縁223を有しており、外周壁部221の屋外側内周にパネル間口22aが設けられている。
【0014】
外周壁部221の屋内側の外周面(下面)に固定部221aが設けられており、下枠22は、アンカー部材Bを介して躯体開口部Aに固定されている。アンカー部材Bの屋外側の躯体開口部Aと下枠22の外周壁部221との間に水切り224が設けられ、下枠22と水切り224との間及び水切り224と躯体開口部Aとの間には、適宜バックアップ材及びシール材等が設けられている。
【0015】
窓2の竪枠23は、アルミ合金等からなり、
図3、
図4(a)に示すように、パネル体25の外周側を覆い竪枠23の外周面を形成する外周壁部231と、外周壁部231の屋内側の内周面から内周方向に向けて設けられる中空形状の屋内壁部232と、外周壁部231の屋外側内周面に取付けられる押縁233と、屋内壁部232の屋内側面に設けられる屋内側見込壁234を備えており、外周壁部231の屋外側の内周にパネル間口23aが設けられている。
【0016】
竪枠23の外周壁部231の外周面は、屋内側の部分が内周方向にへこんで肉薄に形成されており、へこんだ凹部が枠取付部材62を固定する固定部231aとして形成されている。
そして、固定部231aの見込方向両端に一対の固定片231b,231bが設けられている。
【0017】
屋内側見込壁234は、屋内側見込壁部材Fが屋内壁部232の屋内側面にビス等の固定手段bにより固定されて設けられている。
屋内側見込壁234の屋内側端部には、外周方向に延びる耐火ボード取付部234aが設けられ、屋内側見込壁234の内周側には、カバー部材取付部235が設けられている。
【0018】
複層ガラスからなるパネル体25は、
図2、
図3に示すように、下枠22のパネル間口22a内に配置されたセットブロック221bに載置され、各枠のパネル間口21a,22a,23a,24a内に外周縁が挿入されて固定されている。
各枠の屋内壁部212,222,232,242とパネル体25との間、上枠21の屋外壁部213とパネル体25との間及び下枠22の押縁223、左右の竪枠23,34の押縁233,243とパネル体25との間には、バックアップ材及びシール材等のシーリング材が配置されている。
【0019】
(竪材の構成)
竪材1は、
図2、
図3、
図4(c)に示すように、鋼材からなる二つのU字鋼材11,12を向かいあわせて溶接もしくはネジ止め等により連結して形成されており、断面略矩形中空形状の長尺部材からなる。
竪材1は、上下端の左右見込面が躯体開口部Aに固定された一対の竪材取付部材(アンカー)5,5にネジ止め固定されることで躯体開口部Aに固定されている。
なお、竪材1の上下端面と躯体開口部Aとの間には、竪材1の熱延びなどを吸収する緩衝部材等を配置してもよい。
【0020】
竪材1には、左右一対の連結部材61,61が固定されている。
連結部材61は、鋼材からなり、
図3、
図4(c)に示すように、見込壁61aと、見込壁61aの屋外端が屈曲して連続する見付壁61bと、見付壁61bの反見込壁側が屋外側に屈曲して連続する枠材取付部61cを有し、竪材1とほぼ同じ長さ寸法を有する長尺部材からなる。なお、連結部材61は、短尺の部材が高さ方向に複数設けられていてもよい。
【0021】
左右一対の連結部材61,61は、それぞれ見込壁61a及び見付壁61bを竪材1の左右見込壁から屋外側見付壁に沿わせて竪材1に固定されており、それぞれの枠材取付部61c,61cが見付方向に近接した状態で竪材1の屋外側見付面から屋外方向に延びている。
【0022】
本実施形態の建具においては、一方側(右側)の連結部材61は、竪材1に対して溶接により固定されており、他方側(左側)の連結部材61は、竪材1の屋外側見付面にネジ等の固定手段によって固定されている。
【0023】
また、本実施形態の建具においては、左右の連結部材61,61の枠材取付部61c,61cが見付け方向に近接した状態の一例として、両枠材取付部61c,61cの間に枠取付部材62,62を固定するためのネジの頭部が収まる程度の間隔がある状態を示しているが、ネジ等の固定手段が不要である場合など、枠材取付部61c,61c同士が一部もしくは全部当接した状態であってもよい。
【0024】
左右一対の連結部材61,61の枠材取付部61c,61cの相反する見込面には、所定高さ位置に所定の個数の枠取付部材(アンカー)62,62がネジ止め等によって固定されている。
【0025】
枠取付部材62は、鋼材からなる短尺部材であり、連結部材61の枠材取付部61c,61cに対してネジ止め固定される固定部62aと、竪枠23を取り付けるために屋内側及び屋外側に形成された一対の取付部62b,62bを有している。
【0026】
そして、枠取付部材62の一対の取付部62b,62bに対して、竪枠23の一対の固定片231b,231bがネジ止め固定されて竪枠23が竪材1に固定されており、竪材1の左右に左右の窓2,3の竪枠23,34が固定されている。竪材1の左右に窓2,3が固定された状態で、窓2,3の上枠21,31、下枠22,32及び左、右の竪枠23,24,33,34のパネル間口部分は竪材1の屋外側に配置されており、竪枠23,34の屋内側見込壁234,344が竪材1の見込面を覆っている。
【0027】
竪材1の左右に左右の竪枠23,34が固定された状態で、竪枠23,34の外周壁部231,341間には、バックアップ材u及びシール材sが配置されており、竪材1の屋内側に位置する屋内側見込壁234,344の耐火ボード取付部234a,344aに耐火ボード取付板材72が取付けられている。
【0028】
耐火ボード取付板材72の屋内側に耐火ボード71が配置され、長ネジ等の固定手段bによって竪材1に固定されており、耐火ボード71の屋内側にはカバー部材8が取り付けられている。
カバー部材8は、屋内側見付壁8aと、屋内側見付壁8aの左右両側から屋外側に延設される左、右見込壁8b,8bを有し、左、右見込壁8b,8bの屋外側端部が竪枠23,34のカバー部材取付部235,345にビス等の固定手段b、bにより固定されている。
【0029】
カバー部材8の左、右見込壁8b,8bの内側には上下方向に延びるリブ8c,8cが設けられており、リブ8cの内側端が竪枠23,34の屋内側見込壁234,344に当接することで、カバー部材8は安定して固定されている。
【0030】
(竪材1によって窓2,3を連結する際の施工方法)
本実施形態の建具の左右の窓2,3を連結する際の施工方法について、
図5を参考にして、説明する。
1.竪材1に対して、一方側(右側)の連結部材61が溶接等によって予め固定されている。また、左右の窓2,3は、四周に組まれた窓枠の内周にパネル体25,35が配置されて形成されている。
そして、窓2の竪枠23に、連結部材61及び枠取付材62を介して竪材1を固定しておく。
【0031】
竪材1が固定された窓2を躯体開口部A内の所定の位置に配置し、竪材1の上下部分を、躯体開口部Aに固定された竪材取付部材5,5にネジ止め固定することで、竪材1が固定された窓2を躯体開口部に固定する。
なお、窓2に予め竪材1を固定しておくことなく、竪材1を躯体開口部Aに固定した後に、竪材1に対して窓2を固定するようにしてもよい。
【0032】
2.次に、躯体開口部Aに固定された竪材1に対して、他方側の連結部材61が固定された左側の窓3の竪枠34を取り付ける。
具体的には、窓3の竪枠34に固定された他方側の連結部材61を竪材1に当接して配置し、竪材1の屋内側見付壁に形成されたネジ挿通孔12aから竪材1の屋外側見付壁に連結部材61の見付壁61bをネジ等の固定手段b1によって固定することで窓3の竪枠34を竪材1に固定する。
【0033】
竪材1の左右両側に窓2,3が固定された状態では、窓2,3の上枠21,31、下枠22,32及び左、右の竪枠23,24,33,34のパネル間口部分は竪材1の屋外側に配置される。そして、両竪枠23,34の屋内側見込壁234,334が竪材1の見込面を覆う状態となり、屋内側見込壁234,334の耐火ボード取付部234a,344aが竪材1よりも屋内側に位置する状態になる。
【0034】
3.竪材1の屋内側に位置する耐火ボード取付部234a,344aに対して、耐火ボード取付板材72がビス等の固定手段b2によって固定される。耐火ボード取付板材72は、矩形板状の部材であり、竪枠23,34の耐火ボード取付部234a,344aに固定されることで、竪材1の屋内側に耐火ボードを当接して配置するための平面部分を形成することができる。
【0035】
4.次に、耐火ボード取付板材72の屋内側に耐火ボード71を配置して、長ネジ等の固定手段b3によって耐火ボード71を竪材1に固定する。耐火ボード71は断面矩形の長尺ブロック形状をしており、竪材1の屋内側に固定された耐火ボード71の上下端面が躯体開口部Aの内周面に当接する程度の長さ寸法を有している。
【0036】
なお、本実施形態の建具においては、竪材1を躯体開口部Aに固定する竪材取付部材5,5には、耐火ボード71を保持するための保持腕部5a,5aが設けられており、保持腕部5a,5aで耐火ボード71の上下部分を保持することで耐火ボード71の反りや外れを防止することができる。
【0037】
5.その後、竪材1及び竪枠23,34の屋内側には、左右の竪枠23,34の屋内側見込壁234,344及び耐火ボード71等を覆うようにカバー部材8が配置され、カバー部材8の左、右見込壁8b,8bの屋外側端部が竪枠23,34に設けられたカバー部材取付部235,345にネジ等の固定手段b4によって固定される。
また、左右の竪枠23,34の外周壁部231,341の間を適宜バックアップ材及びシーリング材等によってシーリングする。
以上、施工手順の一例を説明した。
【0038】
(実施形態の効果)
以上のように、本実施形態の建具は、竪材1の屋外側位置において左右の窓2,3の竪枠23,34が竪材1に固定された連結部材61の見込面に固定されている。すなわち、中空形状を有する竪材1の屋外側で竪材1と窓2,3の竪枠23,34を連結しているので、竪材1の見込み方向両面で窓2,3を連結する必要がなく、窓2,3の左右方向の連結部分の見込幅の増大を抑えることができる。
【0039】
そして、鋼材からなる竪材1の見込面を竪枠23,34の屋内側見込壁で覆うことで、竪材1の露出を防ぎ、鋼材からなる竪材1の保護ができるとともに、意匠性が良好である。
さらに、竪材1を鋼材から構成するとともに、竪材1の屋内側に耐火ボードを配置することで、防火性に優れた連結部を構成することができる。
また、竪枠23,34の屋内側見込壁234,344を竪枠23,34の外周壁部231等と別体に形成することで、窓枠を屋内側見込壁234,344の必要がない連窓以外の窓にも利用でき、汎用性を向上させて部材管理を簡素化することができる。また、押出成形の難易度を下げることができ、成形精度を向上させることができる。
【0040】
(その他の実施形態)
本発明の竪材及び竪枠の構成は、上記実施形態の竪材及び竪枠に限定されるものではない。
例えば、
図4(b)に示すように、竪枠23の屋内側見込壁234を外周壁部231に一体形成し、カバー部材取付部材Gをビス等によって固定してカバー部材取付部235形成するようにしてもよい。
屋内側見込壁234を一体形成することで、屋内側見込壁234,344の取付工程を削除でき、製造工程を少なくすることができる。
【0041】
その他、以上の実施形態は,請求項に記載された発明を限定するものではなく,例示として取り扱われることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
1 :竪材
23,24:竪枠
231 :外周壁部
231a :固定部
231b :固定片
232 :屋内壁部
233 :押縁
234 :屋内側見込壁
344 :屋内側見込壁
61 :連結部材
62 :枠取付部材