特許 7272944 作業用車両

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2023-05-01

(45)【発行日】2023-05-12

(54)【発明の名称】作業用車両

(51)【国際特許分類】

   E02F 9/00 20060101AFI20230502BHJP

   B60K 11/04 20060101ALI20230502BHJP

【ＦＩ】

E02F9/00 M

E02F9/00 N

B60K11/04 F

【請求項の数】 3

(21)【出願番号】P 2019233611

(22)【出願日】2019-12-25

(65)【公開番号】P2021102858

(43)【公開日】2021-07-15

【審査請求日】2022-03-07

(73)【特許権者】

【識別番号】000150154

【氏名又は名称】株式会社竹内製作所

(74)【代理人】

【識別番号】110001726

【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所

(72)【発明者】

【氏名】大山 飛鷹

【審査官】松本 泰典

(56)【参考文献】

【文献】特開２０１２－０４１８１９（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１５－１４０１５６（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１６－２１６９９８（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１０－２７０５５３（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１７－２２７００１（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｅ０２Ｆ ９／００

Ｂ６０Ｋ １１／０４

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

エンジンルーム内において、エンジンが搭載されるエンジン搭載室の直上に、板面が水平方向に沿って配置される第１仕切板を介して、制御装置が搭載される制御装置搭載室が設けられ、
前記制御装置搭載室は、前記エンジンルームの周壁部において外部と連通するように開口形成された吸気口から取入れる外気である冷却風を冷却器に導く冷却風流路として兼用される構成であり、
前記吸気口は、一つもしくは複数設けられており、且つ、その全部もしくは一部が前記エンジンルームの後部を開閉する後部扉において前記エンジン搭載室と同じ高さに設けられており、
前記後部扉と前記エンジン搭載室との間に、板面が鉛直方向に沿って配置される第２仕切板が設けられており、
前記第２仕切板は、ステーを介して前記後部扉に固定され、前記後部扉の開閉に伴って移動する構成であると共に、上端部が、前記後部扉が閉じられた状態において前記第１仕切板の後端部と隙間無く密着もしくは微小隙間で近接するように配設されていること
を特徴とする作業用車両。

【請求項2】

前記第１仕切板は、前記エンジン搭載室と前記制御装置搭載室とを連通する開口部を有し、
前記開口部は、前記制御装置搭載室から前記エンジン搭載室へ前記冷却風を通流させ、且つ、前記エンジン搭載室から前記制御装置搭載室へ高温側冷却液ホースを挿通させる構成であること
を特徴とする請求項１記載の作業用車両。

【請求項3】

前記第１仕切板は、後端部が、オペレータ操縦室の支持用として前記エンジンルーム内を鉛直方向に沿って通過するように設けられるフロアフレームに対してボルト締結により係脱可能に固定され、且つ、前端部が、前記オペレータ操縦室と前記エンジンルームとの境界部に設けられる仕切壁に対してボルト締結により係脱可能に固定されていること
を特徴とする請求項１または請求項２に記載の作業用車両。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、エンジンを備えて走行および駆動が行われる作業用車両に関する。

【背景技術】

【0002】

作業用車両の例として、左右一対のクローラを有する走行装置と、走行装置上に旋回可能に設けられた車体と、車体の前部に設けられたショベル装置とを備えるパワーショベルが従来より知られている。一般的なパワーショベルにおいては、エンジンや電動モータを駆動源として駆動される油圧ポンプや、油圧ポンプから送出される作動油を受けて作動する複数の油圧シリンダが設けられている。当該油圧シリンダによってショベル装置等の駆動装置を作動させ、掘削作業等を行う構成となっている。

【0003】

ここで、特に作業用車両が小型である程、機器の配置スペースを十分に確保することが難しいという課題がある。また、それに伴い、エンジンの冷却器の周囲に機器が密集する配置となり冷却風の通過が妨げられることによって冷却性能が低下するという課題や、エンジンで熱せられた冷却風が冷却器を通過する配置となり熱交換効率が悪化することによって冷却性能が低下するという課題がある。これに対して、冷却性能を向上させようとすると、冷却器の大型化やファン回転数の上昇による騒音の増大といった別の課題が生じ得る。

【0004】

このような課題の解決を目的として、特許文献１（特開２００４－１６９５１８号公報）記載の冷却器および通風構造を備える作業用車両が開示されている。より具体的には、冷却風の流路を直線状とすることにより通風抵抗を小さくして、冷却性能を向上させようという技術的思想である。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【文献】特開２００４－１６９５１８号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

作業用車両の中でも、特に小型のパワーショベル等において、市街地等の狭い場所での作業性を向上させるべく、車体の後端部の突出量が小さい構成が必要とされている。そのため、より一層効率的な機器配置と優れた冷却性能の両立を図ることが課題となっている。

【課題を解決するための手段】

【0007】

本発明は、上記事情に鑑みてなされ、機器配置の効率化および冷却性能の向上を図ることが可能で、冷却器の小型化およびファン騒音の低減を実現し得る作業用車両を提供することを目的とする。

【0008】

本発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。

【0009】

本発明に係る作業用車両は、エンジンルーム内において、エンジンが搭載されるエンジン搭載室の直上に、板面が水平方向に沿って配置される第１仕切板を介して、制御装置が搭載される制御装置搭載室が設けられ、前記制御装置搭載室は、前記エンジンルームの周壁部において外部と連通するように開口形成された吸気口から取入れる外気である冷却風を冷却器に導く冷却風流路として兼用される構成であり、前記吸気口は、一つもしくは複数設けられており、且つ、その全部もしくは一部が前記エンジンルームの後部を開閉する後部扉において前記エンジン搭載室と同じ高さに設けられており、前記後部扉と前記エンジン搭載室との間に、板面が鉛直方向に沿って配置される第２仕切板が設けられており、前記第２仕切板は、ステーを介して前記後部扉に固定され、前記後部扉の開閉に伴って移動する構成であると共に、上端部が、前記後部扉が閉じられた状態において前記第１仕切板の後端部と隙間無く密着もしくは微小隙間で近接するように配設されていることを要件とする。

【発明の効果】

【0010】

本発明によれば、機器配置の密集化および省スペース化を実現しつつ、併せて、エンジンや冷却器の周囲に機器が密集する配置となり冷却風の通過が妨げられる課題や、エンジンで熱せられた冷却風が冷却器を通過する配置となり熱交換効率が悪化する課題の解決を図り、車両の小型化と冷却器における冷却性能の向上との両立を図ることが可能となる。

【図面の簡単な説明】

【0011】

【図1】本発明の実施形態に係る作業用車両の例を示す斜視図である。

【図2】本発明の実施形態に係る作業用車両のエンジンルームの例を示す拡大図である。

【図3】本発明の実施形態に係る作業用車両の第１仕切板の構成を説明するための説明図である。

【図4】本発明の実施形態に係る作業用車両のエンジンルームの例を示す側面断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0012】

以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。図１は、本実施形態に係る作業用車両１の例を示す概略図（後部上方からの斜視図）である。また、図２は、図１に示す作業用車両１のエンジンルーム２０部分を中心に示す拡大図である（後部扉４０が「開き」の状態）。なお、図をわかり易くするために構成要素の一部について図示を省略する場合がある。また、説明の便宜上、図中において矢印により作業用車両１の上下、左右、前後の方向を示す場合がある。また、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。

【0013】

はじめに、作業用車両１の全体構成について説明する。ここでは、クローラ（無端状の履帯）を備えて走行するパワーショベルを例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。

【0014】

図１に示すように、作業用車両１は、左右一対のクローラ３０を有する走行装置１２と、走行装置１２上に旋回可能に設けられた車体１０と、車体１０や走行装置１２に固定された駆動装置（ショベル装置１６、ブレード装置１８等）とを備えて構成されている。ただし、走行装置１２は、左右一対のクローラに限定されるものではなく、左右一対のタイヤを備える構成としてもよい（不図示）。なお、エンジンとバッテリーとを併用して走行装置等を駆動する構成としてもよい（不図示）。

【0015】

また、車体１０には、中央部にオペレータ（作業者）が乗車して操縦を行うオペレータ操縦室１４（密閉型のキャビンとして例示しているが、開放型のキャノピー（不図示）としてもよい）が設けられ、後部に走行装置等を駆動するためのエンジン８が搭載されるエンジンルーム２０が設けられている。より具体的には、図２に示すように、エンジンルーム２０内にエンジン８が搭載されるエンジン搭載室６が設けられている。このエンジン搭載室６において、例えば、クランク軸が左右方向に沿う配置でエンジン８が搭載され、エンジン８を冷却する冷却器４２（ここでは、エンジン８との間で冷却液を循環させて冷却を行うラジエータ）が車体１０の右端部に配設されている。ここで、本実施形態においては、冷却器４２（冷却液）を冷却するための送風を行う冷却器４２用のファン４４がエンジン８と冷却器４２との間に配置される構成となっており、ファン４４を回転させることによって、吸気口５０から当該ファン４４まで導かれた冷却風を冷却器４２に当てながら通過させて、排気口５８から車外へ排気させる構成となっている。このとき、冷却器４２において熱交換すなわち冷却液の冷却が行われる。なお、ファン４４の駆動力はエンジンから得る構成、バッテリーから得る構成（すなわち電動ファン）のいずれも採用し得る。

【0016】

次に、オペレータ操縦室１４は、オペレータが搭乗して着座するシートや、走行装置１２および駆動装置１６、１８等の作動を操作するための各種の操作レバー、操作スイッチおよび種々の車両情報を表示するディスプレイ装置等を備えて構成されている。

【0017】

次に、ショベル装置１６、ブレード装置１８等の駆動装置について説明する。先ず、ショベル装置１６は、車体１０の前部に上下揺動可能に枢結されたブーム２２と、ブーム２２の先端部に上下揺動可能に枢結されたアーム２４と、アーム２４の先端部に上下揺動可能に枢結されたバケット２６とを備えて構成されている。また、車体１０の前部とブーム２２とに跨って油圧駆動式のブームシリンダ（不図示）が設けられており、このブームシリンダによりブーム２２が揺動作動される。また、ブーム２２とアーム２４とに跨って油圧駆動式のアームシリンダ３４が設けられており、このアームシリンダ３４によりアーム２４が揺動作動される。また、アーム２４とバケット２６とに跨って油圧駆動式のバケットシリンダ３６が設けられており、このバケットシリンダ３６によりバケット２６が揺動作動される。

【0018】

一方、ブレード装置１８は、走行装置１２の前部に上下揺動可能に枢結されたブレード２８を備えて構成されている。また、走行装置１２の前部とブレード２８とに跨って油圧駆動式のブレードシリンダ３８が設けられており、このブレードシリンダ３８によりブレード２８が揺動作動される。

【0019】

上記の各シリンダの駆動を行うための機構は、一例としてエンジン８により駆動される油圧ポンプ、制御バルブ等から構成されている（いずれも不図示）。オペレータの操作に応じて制御バルブ類を作動させ、油圧ポンプから送出される作動油を各シリンダに供給する制御が行われる。これにより、バケット２６やブレード２８が所望の作動をして、掘削等の作業を行うことができる。その他にも、油圧ポンプから送られる作動油によって駆動される駆動装置として、車体１０を旋回駆動する旋回油圧モータ（不図示）を備え、オペレータの操作に応じて車体１０の水平旋回作動を行う旋回装置が設けられている。

【0020】

このような構成を備える作業用車両１においては、走行、駆動を行う際に、制御装置４６を用いて制御が行われる。しかしながら、この４６は、熱に弱い構成部品が組込まれている等の理由から、エンジン８による熱害を受けない場所に搭載することが好適であるため、特に小型の作業用車両１においては、搭載スペースの捻出が困難となる、あるいは、車両構造が大型化する等の課題が生じていた。

【0021】

この課題に対し、本実施形態に係る作業用車両１は、以下の特徴的な構成を備えて、その解決を図っている。具体的には、基本構造が一つの空間として構成されるエンジンルーム２０の内部において、エンジン８が搭載されるエンジン搭載室６が設けられており、当該エンジン搭載室６の直上に、制御装置４６が搭載される制御装置搭載室４が設けられている（なお、制御装置４６の一部機構を他の場所に分散配置する構成も包含される）。ここで、エンジン搭載室６と制御装置搭載室４との間には、板面が水平方向に沿って（厳密な「水平」のみに限定されない趣旨である）配置される第１仕切板４８が設けられている。なお、第１仕切板４８は金属材料からなる板材を用いて構成されている。

【0022】

さらに、この制御装置搭載室４は、エンジンルーム２０の周壁部において外部と連通するように開口形成された吸気口５０から取入れる冷却風を冷却器４２に導く冷却風流路として兼用される構成となっている。

【0023】

前述の通り、制御装置４６は熱に弱いため、従来、エンジン搭載室６すなわちエンジン８の直上に配置する構成は採用されなかった。しかし、本実施形態に係る上記の構成によれば、第１仕切板４８によってエンジン８からの熱を遮蔽でき、且つ、制御装置搭載室４自体が冷却風流路として用いられて冷却風が通流されるため、当該制御装置搭載室４の室内温度の低下と制御装置４６の冷却とを図ることができる。これらの相乗的な作用によって、エンジン搭載室６の直上に制御装置搭載室４を設けると共に、当該制御装置搭載室４内において熱害を受けることなく制御装置４６を搭載することが可能となる。

【0024】

さらに、デッドスペースになりがちであったエンジンルーム２０内におけるエンジン８直上のスペースを、制御装置搭載室４、兼、冷却風流路として用いる構成が実現できるため、機器配置の効率化（具体的には、機器配置の高密度化、デッドスペースの削減等）を図ることができ、特に小型の作業用車両１において車体１０の後端部の突出量が小さい構成の実現が可能となる。

【0025】

これまでは、作業用車両が小型である程、機器の配置スペースを十分に確保することが難しいという課題があった。また、それに伴い、エンジンの冷却器の周囲に機器が密集する配置となり冷却風の通過が妨げられることによって冷却性能が低下するという課題や、エンジンで熱せられた冷却風が冷却器を通過する配置となり熱交換効率が悪化することによって冷却性能が低下するという課題があった。これに対して、本実施形態に係る作業用車両１によれば、上記の構成を備えることによって、これまで採用が困難であった機器配置を実現して、機器の密集化および省スペース化を図ることが可能となる。さらに、機器の密集化および省スペース化のデメリットとして生じ得る冷却風の通過が妨げられる状態や冷却風がエンジンの熱で加熱される状態の発生を防ぎ、冷却性能の低下を防止することが可能となる。その結果、従来の作業用車両と比較して、ファン回転数を変えることなく、冷却器を小型化して低コスト・省スペース化を図ることが可能となる。あるいは、冷却器の大きさを変えることなく、ファン回転数を低下させて低騒音化を図ることが可能となる。もちろん、両方の作用効果をバランス良く得ることも可能となる。

【0026】

ここで、本実施形態に係る第１仕切板４８の詳細構成について説明する。図２に示すように、第１仕切板４８には、エンジン搭載室６と制御装置搭載室４とを連通する開口部５２が設けられている。一例として開口部５２は一つ設けられているが、これに限定されるものではなく、複数設けられる構成であってもよい。

【0027】

この開口部５２は、制御装置搭載室４からエンジン搭載室６へ冷却風を通流させる構成であることに加えて、エンジン搭載室６から制御装置搭載室４へ高温側冷却液ホース５４を挿通させる構成となっている。本実施形態においては、エンジン搭載室６から制御装置搭載室４に至るように配設された高温側冷却液ホース５４は、当該制御装置搭載室４内を経由して、冷却器４２の上部に設けられる接続口５６に接続され、冷却液をエンジン８から冷却器４２へ通流させる構成となっている。

【0028】

これによれば、冷却風流路を兼用する制御装置搭載室４から、エンジン搭載室６に配設される冷却器４２用のファン４４へ、冷却風を通過させる流路を構成することができる。さらに、この開口部５２に、エンジン８と冷却器４２とを連通して接続される冷却液ホースのうちの高温側冷却液ホース５４を挿通させる構成とすることで、通流される冷却風によって高温側冷却液ホース５４外表面からの吸熱作用を生じさせることができるため、冷却器４２における冷却作用（冷却液の冷却作用）を向上させることができる。

【0029】

次に、エンジンルーム２０内に冷却風（すなわち外気）を取入れるための吸気口５０について説明する。吸気口５０は、一つもしくは複数設けられており、且つ、その全部もしくは一部がエンジンルーム２０の後部を開閉する後部扉４０においてエンジン搭載室６と同じ高さに設けられている。本実施形態では、吸気口５０が複数設けられる場合を例示する。具体的には、後部扉４０に二つの吸気口５０（５０Ａ）および吸気口５０（５０Ｂ）が設けられている。ここで、下方の吸気口５０（５０Ｂ）がエンジン搭載室６と同じ高さ程度で、上方の吸気口５０（５０Ａ）もエンジン搭載室６と同じ高さ程度、もしくはエンジン搭載室６と制御装置搭載室４との境界位置と同じ高さ程度に配置されている。さらに、エンジンルーム２０の左側の側面に一つの吸気口５０（５０Ｃ）が設けられている。なお、吸気口５０（５０Ｃ）は制御装置搭載室４と同じ高さ程度に配置されている。

【0030】

ここで、本実施形態に特徴的な構成として、後部扉４０とエンジン搭載室６との間に、板面が鉛直方向に沿って（厳密な「鉛直」のみに限定されない趣旨である）配置される第２仕切板６０が設けられている（図４参照）。より具体的には、第２仕切板６０は、棒状もしくは板状のステー６２を介して後部扉４０に固定され、後部扉４０の開閉に伴って移動する構成となっている。また、後部扉４０が閉じられた状態において、第２仕切板６０の上端部６０ａと第１仕切板４８の後端部４８ａとが隙間無く密着もしくは微小隙間で近接するような形状および配置を備えて構成されている。本実施形態においては、スペーサ、パッキン等の密着性向上部材（不図示）を介在させてより密着性を高める構成としている。なお、第２仕切板６０は金属材料からなる板材を用いて構成されている。

【0031】

上記の構成によれば、開閉動作が行われる後部扉４０にも吸気口５０（ここでは、５０Ａ、５０Ｂ）を設けることができるため、例えば、エンジンルーム２０の一方の側壁部にしか吸気口５０（ここでは、５０Ｃ）を設けない場合と比較して、大量の冷却風を取入れることができるため、冷却風量が不足することによる冷却性能の低下を防止することができる。

【0032】

また、後部扉４０の吸気口５０とエンジン８との間の位置において、第１仕切板４８と密着もしくは近接する第２仕切板６０を備える構成により、エンジン８による加熱を受けない状態で、吸気口５０から冷却風流路兼用の制御装置搭載室４へ冷却風を導くことができる。

【0033】

ところで、エンジン８のメンテナンスを行うために、例えば、上記のようにエンジンルーム２０の開閉を行う後部扉４０が必要となる。そうした場合、前述の第１仕切板４８は、その後端部４８ａを後部扉４０によって支持固定することが不可能もしくは困難なため、如何にして支持固定するかが課題となる。これに加えて、第１仕切板４８はエンジン８の直上位置に配置されるため、エンジン８のメンテナンスを行う場合にそれ自体も取外し可能となるように構成することが課題となる。

【0034】

このような課題に対し、本実施形態においては、以下の構成によって解決を図っている。具体的に、第１仕切板４８の後端部４８ａが、オペレータ操縦室１４等の支持用としてエンジンルーム２０内を鉛直方向に沿って（厳密な「鉛直」のみに限定されない趣旨である）通過するように設けられるフロアフレーム６４に対してボルト締結により係脱可能に固定されている（図２参照）。且つ、第１仕切板４８の前端部４８ｂが、オペレータ操縦室１４とエンジンルーム２０との境界部に設けられる仕切壁６６に対してボルト締結により係脱可能に固定されている（図３参照）。ここで、図３は、第１仕切板４８の前端部４８ｂの固定構造を説明するための図であって、仕切壁６６の部分をオペレータ操縦室１４の室内側から視た状態の斜視図である。なお、図をわかり易くするために構成要素の一部について図示を省略している。

【0035】

これによれば、後部扉４０を利用せずに第１仕切板４８をエンジン８の直上位置に支持固定する構成が実現できる。そのため、後部扉４０を開閉動作可能な構成として設けることができる。

【0036】

また、第１仕切板４８を、フロアフレーム６４と仕切壁６６とによって係脱可能に固定できるため、エンジン８のメンテナンスの際に容易に取外すことが可能となる。さらに、後端部４８ａおよび前端部４８ｂがそれぞれ強度部材（フロアフレーム６４および仕切壁６６）に固定されているため重量物の載置が可能となる。一例として、第１仕切板４８上にバッテリー（不図示）を載置して固定させる構成、すなわち、冷却風流路を兼用する制御装置搭載室４内にバッテリーを搭載する構成が実現できる。これによって、機器配置のさらなる効率化を図ることができる。

【0037】

ここまで、本実施形態に係る作業用車両１における主要構成を中心に説明を行った。なお、走行および作業のためのその他の機構（駆動機構、制御機構等）については、公知の作業用車両（ここでは、パワーショベル）と同様であるため、詳細の説明を省略する。

【0038】

以上説明した通り、本発明に係る作業用車両によれば、機器配置の密集化および省スペース化を実現しつつ、併せて、エンジンや冷却器の周囲に機器が密集する配置となり冷却風の通過が妨げられる課題や、エンジンで熱せられた冷却風が冷却器を通過する配置となり熱交換効率が悪化する課題の解決を図り、車両の小型化と冷却器における冷却性能の向上との両立を図ることが可能となる。

【0039】

なお、本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。特に、作業用車両としてパワーショベルを例に挙げて説明を行ったが、これに限定されるものではなく、例えば、スキッドステアローダ、クローラキャリア等の他の作業用車両に対しても同様に適用できることは言うまでもない。

【符号の説明】

【0040】

１ 作業用車両
４ 制御装置搭載室／冷却風流路
６ エンジン搭載室
８ エンジン
１０ 車体
１２ 走行装置
１４ オペレータ操縦室
１６ ショベル装置
１８ ブレード装置
２０ エンジンルーム
４０ 後部扉
４２ 冷却器
４４ ファン
４６ 制御装置
４８ 第１仕切板
５０、５０Ａ、５０Ｂ、５０Ｃ 吸気口
５２ 開口部
５４ 高温側冷却液ホース
５６ 接続口
５８ 排気口
６０ 第２仕切板
６２ ステー
６４ フロアフレーム
６６ 仕切壁

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】