(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】リニア電気機械
(51)【国際特許分類】
H02K 33/00 20060101AFI20230502BHJP
F16C 32/06 20060101ALI20230502BHJP
F16C 32/04 20060101ALI20230502BHJP
F04B 35/04 20060101ALI20230502BHJP
F04B 17/04 20060101ALI20230502BHJP
G01M 17/04 20060101ALN20230502BHJP
【FI】
H02K33/00 A
F16C32/06 Z
F16C32/04 Z
F04B35/04
F04B17/04
G01M17/04
(21)【出願番号】P 2019542527
(86)(22)【出願日】2018-02-01
(86)【国際出願番号】 GB2018050290
(87)【国際公開番号】W WO2018142137
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2021-01-28
(32)【優先日】2017-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514035084
【氏名又は名称】リバティーン エフピーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘインズ,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】コッカリル,サミュエル
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-073942(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102005030161(DE,A1)
【文献】特開2005-009397(JP,A)
【文献】特表平09-510534(JP,A)
【文献】特開2004-278475(JP,A)
【文献】特開2009-189185(JP,A)
【文献】米国特許第04675563(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/00
F16C 32/06
F16C 32/04
F04B 35/04
F04B 17/04
G01M 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニア電気機械(LEM)(60)であって
ステータ(14)であって、ハウジング(28)内に取り付けられ、前記ハウジングとステータとが作動シリンダ(53)を画定するステータ(14)、
前記作動シリンダ(53)内にある中央コア(34)であって、前記作動シリンダ(53)と前記中央コア(34)との間の円筒状ステータボアキャビティ(51)を画定する中央コア(34)、
前記作動シリンダ(53)内で前記中央コア(34)に対して軸方向に移動可能である中空のトランスレータ(18)であって、前記ステータボアキャビティ(51)内に延び、前記トランスレータ(18)と前記ステータ(14)との間に外部磁気回路エアギャップ(21)を形成するトランスレータ(18)、
前記ステータボアキャビティ(51)内で前記トランスレータの同軸位置を提供する、前記中央コア(34)と前記トランスレータ(18)との間にある少なくとも1つの軸受、
前記トランスレータ(18)に力を加えるための前記作動シリンダ(53)内の少なくとも1つの作動チャンバ(42)
を備え、
前記中央コア(34)が、前記ステータ(14)に対して軸方向に固定されている、リニア電気機械(60)。
【請求項2】
前記軸受が流体軸受(35)である、請求項1に記載のリニア電気機械(60)。
【請求項3】
前記流体軸受(35)が、前記トランスレータ(18)と前記中央コア(34)との同軸位置を提供する、請求項2に記載のリニア電気機械(60)。
【請求項4】
前記流体軸受(35)のうちの少なくとも1つは、前記中央コア(34)に取り付けられ、前記中空のトランスレータ内部の一部に形成された軸受面に延びる、請求項
2に記載のリニア電気機械(60)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの流体軸受(35)が、前記トランスレータ(18)と前記ステータ(14)との間の同軸位置、および前記トランスレータ(18)と前記ステータ(14)との間にある前記外部磁気回路エアギャップ(21)を画定する、請求項
2に記載のリ
ニア電気機械(60)。
【請求項6】
前記作動チャンバ(42)は、前記ステータボアおよび軸受ギャップと同軸である、請求項1に記載のリニア電気機械(60)。
【請求項7】
前記作動チャンバ(42)内の前記トランスレータ(18)と前記シリンダとの間にラビリンスシール(46)をさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のリニア電気機械(60)。
【請求項8】
各作動チャンバ(42)は、シリンダ壁(12)、第1の固定端壁(13)、および第2の端壁によって画定され、その少なくとも一部は前記トランスレータ(18)と共に移動可能である、請求項1から7のいずれか一項に記載のリニア電気機械(60)。
【請求項9】
前記作動チャンバ(42)の少なくとも1つが燃焼チャンバである、請求項1から8のいずれか一項に記載のリニア電気機械(60)。
【請求項10】
前記作動チャンバ(42)の少なくとも1つが予圧チャンバ(29)である、請求項1から8のいずれか一項に記載のリニア電気機械(60)。
【請求項11】
前記中央コア(34)が1つ以上のステータ要素を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のリニア電気機械(60)。
【請求項12】
前記トランスレータ(18)と、前記中央コア(34)の前記ステータ要素のうちの少なくとも1つとの間に、内部磁気回路エアギャップをさらに備える、請求項11に記載のリニア電気機械(60)。
【請求項13】
前記トランスレータ(18)と前記シリンダ壁(12)との間に軸受をさらに備える、請求項
8に記載のリニア電気機械。
【請求項14】
前記トランスレータ(18)と前記シリンダ壁(12)との間の前記軸受が流体軸受である、請求項13に記載のリニア電気機械。
【請求項15】
前記流体軸受が前記トランスレータ(18)に取り付けられ、前記ハウジング(28)
の内壁の軸受面
に沿って延びる、請求項14に記載のリニア電気機械。
【請求項16】
前記トランスレータ(18)に固定されたアンカーポイントをさらに備える、請求項1から15のいずれか一項に記載のリニア電気機械。
【請求項17】
前記LEM(60)が移動マグネット型の機械である、請求項1から16のいずれか一項に記載のリニア電気機械。
【請求項18】
前記LEM(60)は、スロットレスステータ型の機械である、請求項
1から17のいずれか一項に記載のリニア電気機械。
【請求項19】
前記LEM(60)がフラックス切換型の機械である、請求項1から17のいずれか一項に記載のリニア電気機械。
【請求項20】
前記LEM(60)は、スイッチドリラクタンス型の機械である、請求項1から17のいずれか一項に記載のリニア電気機械。
【請求項21】
前記トランスレータ(18)に接続されたエンコーダをさらに備える、請求項1から
20のいずれか一項に記載のリニア電気機械。
【請求項22】
前記エンコーダは、位置または速度のうちの1つまたは複数を感知する、請求項21に記載のリニア電気機械。
【請求項23】
前記エンコーダが少なくとも1つの光学的、磁気的または機械的センサを使用する、請求項21または22に記載のリニア電気機械。
【請求項24】
前記流体軸受が1つまたは複数の軸受ギャップを画定する、請求項
2から5、14、15のいずれか一項に記載のリニア電気機械。
【請求項25】
前記軸受ギャップが前記
外部磁気回路エアギャップと同軸である、請求項24に記載のリニア電気機械。
【請求項26】
前記軸受ギャップが、前記トランスレータ(18)の周囲に配置された複数の軸方向に延びる弓形断面のチャネルを含む、請求項24または25に記載のリニア電気機械。
【請求項27】
前記軸受ギャップが円筒形であるか、2つ以上の弓形部分を含む、請求項
24から26のいずれか一項に記載のリニア電気機械。
【請求項28】
前記ハウジング(28)が1つまたは複数の冷却チャネルを含む、請求項1から27のいずれか一項に記載のリニア電気機械。
【請求項29】
前記流体軸受のうちの1つまたは複数が、気体軸受、流体力学軸受、または静圧軸受のいずれかである、請求項
14に記載のリニア電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニア電気機械に関する。
【背景技術】
【0002】
当該リニア電気機械は、燃焼圧力がトランスレータに作用して有用な電力出力を生成するフリーピストンエンジンのリニア発電機として使用すること、高圧ガスがトランスレータに作用して有用な電力出力を生成するガスエキスパンダとして使用すること、電気入力がトランスレータでの移動を誘導してガスを加圧するガス圧縮機として使用すること、トランスレータの移動が作動チャンバ内での油圧流体の変位を引き起こす、または引き起こされる油圧システムで使用すること、および電気入力がトランスレータでの移動を誘発して所望の作動効果を生み出すアクチュエータとして使用することを含むがこれらに限定されない様々な用途に使用できる。
【0003】
そのようなアクチュエータは、変位および振動検査システム、製造作業およびロボット工学において使用することができる。変位および振動検査システムの用途では、アクチュエータを使用して周期的な力または運動プロファイルを検査対象に加えることができる。検査対象は、材料のサンプル、個別の部品、部品のサブシステムの組立体または完成品であり得る。そのような検査の目的は、加えられた力または変位の機能に対する検査対象の耐久性を判定することであり得る。あるいは、検査は、加えられた力または変位の機能に対する検査対象の反応を特徴付けることを求めてもよい。
【0004】
自動車産業は、サブアセンブリの検査および完成品の検査のためにそのような検査用のアクチュエータを広く使用している。検査用のアクチュエータは、通常、さらなる車輪またはサスペンションの部品の1つなどの車両または車両の一部を支持するように配置される。
【0005】
特に、車両を検査する用途では、本発明は、通常、車両の各コーナーが別々のアクチュエータに支持されている道路シミュレータ車両検査システムの一部として利用することができる。支持は、車両の車輪に直接設けられてもよく、またはサスペンション部分、スタブアクスルまたは支持アームなどの他の構成要素に設けてもよい。アクチュエータは、特定の状況では車体に取り付けることができる。そのとき、アクチュエータの動きは、様々な路面および他の地形上の車両の移動をシミュレートすることができる。したがって、検査環境は制御された環境であり、様々な走行速度や路面の状態を表す力または変位の入力機能を車両に適用することができる。例として、高周波の変位の振幅を変えることによって、さらに粗いまたはさらに滑らかな路面をシミュレートすることができる。あるいは、極端な負荷をかけて、ポットホールや、その他の道路のより大きな特徴をシミュレートすることもできる。そのような検査は、運転時の騒音を減少して、車両のサスペンションの部品が意図された運転条件範囲に対して十分に有能かつ耐久性があることを確実にするために、車両の開発において使用され得る。
【0006】
代表的な走行速度での道路の負荷を特徴付ける高周波の変位をシミュレートするために、サーボ油圧システムが自動車検査システムの基盤として一般的に使用されている。これらのシステムでは、サーボ油圧パワーパックが高圧の油圧流体を発生させ、それが次に1つまたは複数のサーボ弁を使用して油圧アクチュエータに供給される。これらのシステムは、いくつかの周知の欠点を抱えている。
【0007】
第1に、油圧油およびサーボ油圧パワーパックの構成要素の慣性が、生成可能な道路負
荷機能の実用的な周波数を約150Hzに制限する。これは、路面の粗さを正確に表現するのに必要な性能のレベルをはるかに下回っている。これは、20mm以下のスケールの特徴で特徴付けられ、さらに、やがて望ましくない機内の騒音を出す車両の構造に、共振を発生させることが公知である入力振動周波数を下回るものである。
【0008】
第2に、サーボ-油圧システムには、非常に大きくなり得るがそれでもシステム内を移動する油の慣性を制限するために油圧アクチュエータの比較的近くに配置させなければならない高価で専用の設備が、検査施設内にあることが必要となる。さらに、このインフラストラクチャには、専門家による運用、および保守の専門知識が必要である。
【0009】
第3に、サーボ油圧システムが電力を大量に消費するため、運用コストが高くなり、自動車の開発および製造における二酸化炭素の排出の一部に加担することである。
【0010】
第4に、サーボ油圧システムは非常に騒音が多くなる可能性があり、検査対象の反応によって生じる騒音と、検査アクチュエータシステム自体の関連性がある騒音とを区別することが困難になっている。
【0011】
これらの欠点の結果として、ある種の自動車検査用途および他の検査用のアクチュエータの用途のために、サーボ油圧システムの代わりにリニア電磁アクチュエータが採用されている。リニア電磁アクチュエータは、より反応性がよく、よりコンパクトであり、操作および保守がより容易であり、より効率的で騒音が少ないという利点を有する。
【0012】
いくつかのそのようなシステムでは、ばねおよび/または空気圧シリンダが設けられて、従来技術に記載されたアクチュエータが、電気機械トランスレータを通ってまたはそれに沿って、また検査対象の中に、静的な負荷を加えることを可能にする。この構成により、検査対象の重量のバランスをとるために、および/または検査対象が検査開始前に正しい位置にあることを確実にするために、アクチュエータの固定された力の成分を、動作前に調整することが可能になる。
【0013】
米国特許第7401520号明細書は、複数の装置を含む車両の検査用の完全なシステムを教示している。その複数の装置は、車両の車輪の少なくとも一部を支持するためのフレームと、フレーム内に少なくとも部分的に収容されたリニア電磁アクチュエータとを含み、リニア電磁アクチュエータは、可動磁石を有し、使用時に、制御された実質的に垂直方向の力を車両の車輪に付与する。装置のそれぞれは、複数の支持された車両の車輪および複数の空気ばね(エアバッグと呼ばれることもある)の対応する1つに独立して制御された実質的に垂直な力を与えるよう配置される、または別法として、支持された車両を水平にするために、機械的ばね(コイルばね、ねじりばね、および板ばねを含む群に由来)が設けられる。
【0014】
そのようなシステムは、多くの欠点を抱えている。
【0015】
第1に、エアバッグまたは機械的ばねと、ホイールプレートまたは電気機械ムーバとの間の負荷支持の機械的な接続に対する要求が、移動性アセンブリに慣性の質量を追加する。この追加の慣性は、アクチュエータが所与の変位に対して達成することができるピークの周波数を減少させる。
【0016】
第2に、エアバッグまたは機械的ばねのようなコンプライアント部材を使用すると、検査用のアクチュエータシステムに望ましくない共振が発生する可能性が出てきて、検査対象に適用される入力機能の完全性を危うくする。
【0017】
第3に、米国特許第7401520号明細書により教示されている構成は、各アクチュエータ検査フレーム内で個別のばねおよび電気機械アセンブリを結合する必要があるため、構造が不要なレベルまで複雑になることが必要となり、装置全体のコストおよびサイズが増大する。
【0018】
米国特許第8844345号明細書は、自動車などの検査対象に制御された様式で運動を与える装置を教示している。ベースには、第1端部と第2端部とを有するリニア電磁モータが取り付けられており、第1端部はベースに接続されている。空気圧シリンダとピストンとの組み合わせは、第1端部と第2端部とを有し、第1端部はベースに接続されており、そのため空気圧シリンダとピストンとの組み合わせは、リニア電磁モータと略平行である。リニア電磁モータと空気圧シリンダとピストンとの組み合わせの第2の端部は、一般に、検査対象用のマウントにさらに取り付けられている可動部材に連結されている。リニア電磁モータと空気圧シリンダとピストンの組み合わせのための制御システムが、空気圧シリンダとピストンの組み合わせを駆動して検査対象の実質的な静的な負荷を支え、リニア電磁モータが検査対象に制御運動を与える。
【0019】
このようなシステムは、米国特許第7401520号明細書に関連して前述したものと同様のいくつかの欠点を抱えている。
【0020】
第1に、個別の空気圧シリンダとピストンとの組み合わせ、負荷支持可動部材、および検査対象のためのマウントの必要性が、移動性アセンブリに相当の慣性の質量を追加する。この追加の慣性は、アクチュエータが所与の変位に対して達成することができるピークの周波数を減少させる。
【0021】
第2に、エアバッグまたは機械的ばねではなく、空気圧シリンダとピストンとの組み合わせを使用することは、空気圧シリンダとピストンとの間のスライドシールに起因して、摩擦を導入する。この摩擦は検査対象にかかる合力に影響を与え、またアクチュエータの摩耗や寿命の低下を招く可能性がある。
【0022】
第3に、米国特許第8844345号明細書により教示されている構成は、各アクチュエータ検査フレーム内で電気機械、空気圧シリンダ、可動部材および検査対象用のマウントを結合する必要があるため、構造が不要なレベルまで複雑になることが必要となり、装置全体のコストおよびサイズが増大する。
【0023】
リニア電気機械はまた作動チャンバを含むことができ、作動チャンバの容積の変化が、1つ以上のコイルに電流を誘導するトランスレータの運動を引き起こし、またはコイルの1つ以上における電流に起因するトランスレータの運動が、作動チャンバの容積を変化させる。そのようなシステムの例には、燃焼圧力がトランスレータに作用して有用な電力出力を生成するフリーピストンエンジンのリニア発電機として使用すること、高圧ガスがトランスレータに作用して有用な電力出力を生成するガスエキスパンダとして使用すること、電気入力がトランスレータでの移動を誘導してガスを加圧するガス圧縮機として使用すること、トランスレータの移動が作動チャンバ内での油圧流体の変位を引き起こす、または引き起こされる油圧システムで使用することを含む。
【0024】
アクチュエータとしてリニア電気機械を使用することに関して上述した問題の多くは、作動チャンバ内に含まれる流体に作用するモータまたは発電機としてそのような装置を使用するときにも存在するので、同様の利点も達成される。特に、フリーピストンエンジンのリニア発電機は、効率的で低排出量の燃焼に望ましい、一貫した圧縮および膨張の割合を達成するために、ピストンの運動を効果的に制御しなければならない。ピストンの運動の制御の課題は、従来技術において、フリーピストンエンジン形式が成功裏に開発され商
品化され得る前に解決されなければならない主要な課題として広く認識されている。フリーピストンエンジンに通常使用されるリニア電気機械は、電気機械が加えることができる力に対して高いピストン質量を有するこれらの機械のために、所望のレベルの運動の制御を達成することが、稀にしかできない。この測定基準、または「特定力」と呼ばれることもあるその逆数(移動質量の単位当たりの力)は、フリーピストンエンジンの運動の制御の最も重要な決定要因である。
【0025】
良好なピストン運動制御の性能は、フリーピストンのガスエキスパンダ(例えば、ランキンサイクル廃熱回収システムまたは冷凍サイクル内)、フリーピストンのガス圧縮機、およびフリーピストンのポンプを含む、作動チャンバ内に収容される流体に作用するモータまたは発電機としてリニア電気機械を使用する他の用途においても不可欠である。なぜなら、ストロークの終わりに達成される圧力または変位量をピストン運動が決定するからである。それ故、ピストンのストロークする位置の端での任意の制御されない変動は、装置の機能に直接影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【文献】米国特許第7401520号明細書
【文献】米国特許第8844345号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明は、上部で特定された問題のうちの1つ以上に対処することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明によれば、ステータであって、ハウジング内に取り付けられ、ハウジングとステータとが作動シリンダを画定するステータ、作動シリンダ内にあり、間の円筒状ステータボアキャビティを画定する中央コア、作動シリンダ内で軸方向に移動可能である中空のトランスレータであって、ステータボアキャビティ内に延び、トランスレータとステータとの間に外部磁気回路エアギャップを形成するトランスレータ、ステータボアキャビティ内にトランスレータの同軸位置を備える中央コアとトランスレータとの間にある少なくとも1つの撓み部または軸受を備え、中央コアが、ステータに対して軸方向に固定されている、リニア電気機械(LEM)が提供される。
【0029】
軸受または撓み部は流体軸受とすることができ、これはガス軸受とすることができ、通常は作動シリンダが気体を含む用途に適している。あるいは、流体軸受は、流体力学的軸受または静圧軸受とすることができ、これは通常、作動シリンダが液体を含む用途に適している。本明細書が流体軸受の使用に言及している場合、これは気体軸受、流体力学的軸受および静圧軸受のいずれかを意味すると解釈されるべきである。流体軸受は、トランスレータと中央コアとの同軸位置をもたらし得る。
【0030】
この構成、特に中央コアとトランスレータとの間の流体軸受により、ステータの下の外部流体軸受と係合したままであるようにすべくステータの下端を超える追加のトランスレータの長さの要件はなく、これにより同じ電磁力に対するトランスレータの質量が、実質的に減少する。トランスレータおよび中央コアの同軸(したがって同心)位置をもたらすことに加えて、流体軸受はまた、リニア電気機械のステータによって生じるあらゆる横方向の負荷に対抗するための反力を付与する。中央コア上および電気機械ステータの上端部および下端部内に流体軸受を設けることは、ステータと流体軸受との間の横方向の負荷の力の伝達経路の長さを短くする。トランスレータによる軸受位置への横方向の負荷の力の伝達は、軸受間でビームが曲がる、または片方の軸受の両側へカンチレバーが曲がること
を引き起こす可能性がある。そのように曲がることは、トランスレータと中央コアとの間の非同心位置、拡大すると、トランスレータとステータとの間の非同心位置をもたらす可能性があり、したがって望ましくない。したがって、本発明の構成は、電気機械のステータ側の負荷の作用下でトランスレータが曲がるのを制限するのに十分なトランスレータの剛性を設けるための追加のトランスレータ質量の必要性を低減する。したがって、本発明は、他の構成よりも移動質量の単位当たりの電気機械力を大きくして、リニア電気機械ステータとトランスレータとの間の同軸(したがって同心)関係を維持することができる。
【0031】
流体軸受のうちの少なくとも1つは、好ましくは中央コアに取り付けられ、中空のトランスレータ内部の一部に形成された軸受面に延びる。流体軸受は、典型的には、供給源から軸受ギャップ内への気体または液体軸受流体の流れをもたらす別個の構成要素である。トランスレータではなく固定中央コアに流体軸受を配置することは、トランスレータの移動質量に寄与するこの構成要素の質量の追加を回避する。軸受ジャーナル面は、中空のトランスレータの構造上に形成されてもよく、トランスレータへ別個に構成要素を追加することを必要としない。したがって、この構成は、トランスレータの移動質量を最小限に保ちながら、電気機械ステータによって発生した方向の横方向の負荷を中央コアに伝達するため流体軸受機能を組み込むことを可能にする。
【0032】
少なくとも1つの流体軸受が、トランスレータとステータとの間の同軸(したがって同心)位置、および間にある外部磁気回路エアギャップを好ましくは画定する。したがって、この構成は、トランスレータの移動質量を最小限に保ちながら、中央コアおよび磁気回路エアギャップに対してトランスレータを正確に位置決めするため、低い摩擦の流体軸受機能を組み込むことを可能にする。
【0033】
ラビリンスシールを使用することができ、その場合流体の流れおよび作動チャンバと流体軸受との間の圧力差は、トランスレータに一連の環状チャネルを設けることによって制御される。ラビリンスシールは、ピストンエキスパンダおよび圧縮機の用途で一般的に使用されている非接触性のシールである。本発明においてラビリンスシールを適用することは、別段の場合であれば接触性のシールと関連させられる摩擦を排除し、また流体軸受と作動チャンバとの間に別個の流体圧力軽減機構を必要としない。
【0034】
LEMは、トランスレータに力を加えるための作動シリンダ内の少なくとも1つの作動チャンバおよび/または予圧チャンバをさらに備えることができる。作動チャンバおよび/または予圧チャンバは、好ましくは、ステータボアおよび軸受ギャップと同軸である。この構成により、本発明は、LEMの構成内に作動チャンバおよび/または予圧チャンバを密接に統合することを可能にし、機械全体の大きさを縮小するのを促す。予圧チャンバは、高圧で供給され、トランスレータに合力を加える流体を収容する。アクチュエータの構成では、これは検査対象の重量のバランスをとること、および/または検査対象が検査開始前に正しい位置にあることを保証するのに役立つ。この密接な統合はまた、移動質量が減少するように作動チャンバおよび/または予圧チャンバとトランスレータとの間に負荷経路を設けるための別個の機械的要素の必要性を排除する。
【0035】
予圧チャンバを形成するために剛性の壁要素を使用することはまた、エアバッグまたは機械的ばねに使用されるようなコンプライアント材料の使用を回避する。これは、そうでなければ検査対象に適用される入力機能に影響を与え得るアクチュエータシステムの共振の影響を低減する。
【0036】
この配置はまた、サイズ、特にその幅がコンパクトであるアクチュエータまたはLEMを提供する。
【0037】
少なくとも1つの流体軸受を設けることにより、トランスレータとステータとの間に非常に低い摩擦の界面がもたらされる。この配置は、スライドの接触軸受で通常見られるよりも低い機械的摩擦および摩耗を提供し、転動要素の軸受の往復の質量ペナルティなしにこの利点を提供する。したがって、この構成は、システムの慣性が低いために、より高い周波数での動作を可能にする。加えて、流体軸受は、接触性のシールに伴う摩擦なしに、任意の作動チャンバに圧力を保持するために有効な非接触圧力シールの一部を形成することができる。
【0038】
本発明は磁気回路エアギャップに関する。本発明の目的に対しては、この用語は、比透磁率が空気に近いギャップを指す。ギャップは空気または他の流体を含んでも含まなくてもよい。そのような使用法は電気機械の分野では周知である。
【0039】
1つ以上の軸受ジャーナルをトランスレータの内面および外面の一方または両方に設けることができる。
【0040】
予圧チャンバはばねのように作用することができ、その場合、トランスレータが移動すると予圧力が変化するように、そのチャンバはゼロでないばね定数を有する。別の構成では、チャンバは、それがゼロのばね定数を有するように構成することができる。予圧チャンバは、チャンバ内の圧力を調整するための少なくとも1つの導管を備えることができる。そのような導管は、予圧チャンバ内の圧力が一定の値に調整されることを可能にし、それによってゼロのばね定数の配置を提供する。
【0041】
電気機械は、磁石が可動トランスレータに固定されている可動磁石タイプのものであってもよい。可動磁石タイプの機械は、他の種類の電気機械よりも移動質量の単位当たりの電気機械の大きい力を提供する。一実施形態は、磁束回路が透磁性材料によって運ばれ、磁束がこの材料内のスロットにセットされた銅のコイルを流れる電流によって遮断される、スロット付きの機械として一般に知られているサブタイプの移動磁石機械を使用する。
【0042】
移動磁石機械の代替のサブタイプはスロットレスの機械として一般に知られており、それはより高いピークの力およびより低いコギング力を提供するが、スロット付きの機械のタイプよりも低い効率を提供する。代替実施形態は、磁束切換および切換リラクタンスの機械を含む他の確立されたリニア電気機械のタイプを使用することができる。これらの機械の種類の各々は、トランスレータに磁石を含まず、トランスレータが、磁性材料の劣化およびその結果として生じる電気機械の性能の低下のリスクなしに、内燃およびランキンサイクルの熱回収用途に関連する高めの温度で動作することを可能にする。
【0043】
端壁の可動部分の移動は、LEMの幅を最小にするのを助けるステータボアと同軸であることが好ましい。磁気回路エアギャップは円筒形であるのが好ましい。
【0044】
アクチュエータの場合、検査対象の取り付け点は、通常その上端でトランスレータに固定されるのが好ましい。検査対象の取り付け点の代わりに、またはそれと同様に、アンカーポイントを設けることができる。アンカーポイントは、外部要素を固定し、接合し、さもなければ接続することのできる場所であり、一方で検査対象取り付け点は、検査対象に力を伝達する目的で特に設けられた一種のアンカーポイントである。
【0045】
流体軸受は、トランスレータの内面の流体軸受ジャーナルに作用するのが好ましい。代替的または追加的に、流体軸受は、トランスレータの外面の流体軸受ジャーナルに作用する。
【0046】
LEMは、通常、位置または速度のうちの1つまたは複数を感知するトランスレータに
接続されたエンコーダをさらに備えることができる。エンコーダは少なくとも1つの光学的、磁気的または機械的センサを使用することができる。エンコーダは、トランスレータの位置および/または速さを判定することによって、アクチュエータの制御を支援する。
【0047】
少なくとも1つの軸受ギャップは、トランスレータの周りに配置された複数の軸方向に延びる弓形断面チャネルを含み得る。軸受ギャップは円筒形であっても、2つ以上の弓形部分を含んでもよい。
【0048】
LEMは、1つ以上の冷却チャネルを収容するハウジング本体を含み得る。これらの冷却機構は、ステータを流れる電流によって発生する熱を除去することによって、より高い電気機械の力をトランスレータに加えることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0049】
本発明の一例を添付の図面を参照しながら説明する。
【0050】
【
図1】断面平面A-Aを示すアクチュエータとして構成されたリニア電気機械(LEM)である。
【
図2】
図1のLEMを通るストロークの中間の軸方向の断面A-Aである。
【
図3】断面平面B-BおよびC-Cを示す代替のLEMの外観図である。
【
図4】中央コアおよび内部流体軸受を示す
図3のLEMを通る軸方向の断面B-Bである。
【
図5】内側および外側の流体軸受を示す垂直断面B-Bである。
【
図6】ストロークの最上部すなわち「上部の死点」の位置を示す垂直断面B-Bである。
【
図7】ストロークの底部すなわち「底部の死点」の位置を示す垂直断面B-Bである。
【
図8】磁気回路エアギャップおよび軸受ジャーナルの詳細を示す垂直断面A-Aの拡大図である。
【
図9】同心磁気回路エアギャップおよび軸受ギャップを示す軸方向断面C-Cである。
【
図10】内部流体軸受の代替構成を示す軸方向断面C-Cである。
【
図11】中央コアと内部ステータとを有する代替案を示す断面B-Bである。
【
図12】非対称的なオフセットの予圧チャンバを有するさらなる代替の構成を示す軸方向断面B-Bである。
【
図13】中央コア、内部および外部流体軸受およびトランスレータ流体軸受を用いたさらなる代替例を示す垂直断面B-Bである。
【
図14】ラビリンスシールの例示的な実施形態を詳細に示す垂直断面B-Bの拡大図である。
【
図15】中央コアがトランスレータを通過する代替の構成を示す軸方向断面B-Bである。
【
図16】撓み部の使用を示す拡大軸方向断面B-Bである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、トランスレータ(後に示される)が沿って移動する運動軸20、およびさらなる断面図のための様々な平面の位置を有するアクチュエータ10として動作する第1のLEMの外観図である。
【0052】
図2は、ハウジング本体11を有するアクチュエータ10を示す。ハウジング本体11は、典型的には円筒形の壁12と、中空の内部を画定する端壁13とから形成されている。内部はステータ14、典型的には管状リニア電気機械ステータを保持し、それはステー
タの一端16から他端17まで軸方向に延びる円筒形のボア15を有する。したがって、ハウジング本体とステータとは作動シリンダ53を画定する。中央コア34は、作動シリンダ内でステータ14に対して少なくとも軸方向に固定されており、この配置では中央コア固定点40で端壁13に固定されている。中央コア34の上端は中空のトランスレータ18によって囲まれており、トランスレータは中央コア34の上および外側を摺動する。
【0053】
中央コア34とステータとの間にステータボアキャビティ51が形成されている。ステータボアキャビティは円筒形の環状空間であり、その中でトランスレータ18はステータ14に対して軸方向に移動可能である。トランスレータとステータとの間に外部磁気回路エアギャップ21(
図9参照)が存在する。この例示的な実施形態では、ハウジング、したがってステータはしっかりと保持され、トランスレータ18はステータ14内で中央コア上を移動する。
【0054】
単一の細長い内部流体軸受35が中央コアに取り付けられており、この例では、ハウジング本体11に外部流体軸受は設けられていない。流体軸受はステータ14と実質的に同じ長さであり、その結果電気機械によって発生するあらゆる側方の負荷は、同じ軸方向の位置において流体軸受によって加えられる反対方向の力により適合される。
【0055】
別の例では、軸受は、1つまたは複数の撓み部52によって置き換えられるか、それで補足されてもよく、
図16に示されている。これは、トランスレータの動きが小さく、通常は2mm未満の適用に特に関係する。そのような用途は、乗り物のダイナミクスを制御するために車両サスペンションシステムにおけるような短い原動力の入力を加えるシステムを含むことができるが、それに限定されない。特に、典型的に限られているヘッドルームを考えると、サスペンションシステム、特に車両の内側に取り付けられたものに減衰力を加える任意のシステムである。撓み部は、中央コアとトランスレータとの間のブレート・スプリング、板ばね、ダイヤフラムまたは他の弾性または可撓性要素の形態を取っていてもよく、軸方向の穴または間隙を有しても有さなくてもよい。撓み部のさらなる例は、米国特許第5522214号明細書に示されている。いずれの例でも、撓み部または流体軸受は、トランスレータの半径方向の動きを制限し、ステータボアキャビティ内にトランスレータの同軸の位置を設ける。
【0056】
チャンバハウジング28は予圧チャンバ29を画定する。この例では、チャンバハウジングはハウジング本体内にあり、端壁13によって保持されている。しかし、チャンバハウジングは端壁を形成することができ、必ずしもハウジング本体11内にある必要はない。予圧チャンバへの開口部30は、トランスレータの端部19aによって閉じられている。このようにすると、トランスレータの摺動移動は、予圧チャンバの容積を変える。予圧チャンバには少なくとも1つの導管47aも設けられており、それを通して加圧流体を供給して、トランスレータに必要な力を与えることができる。チャンバ29は、高圧で供給され、検査対象の重量のバランスをとるため、および/または検査対象が検査開始前に確実に正しい位置にあるようにするために、合力をトランスレータ18に加える、通常は気体(ただし液体でも可能である)である流体を収容する。代替的または追加的に、同等の予圧チャンバの機能は、中央コア34の上端とトランスレータ18との間に形成されたチャンバ50により実行されてもよい。
【0057】
トランスレータ18が円筒状ステータボア15内を摺動移動することにより予圧チャンバ29の容積が変化し、ピストンがシリンダ内を移動するのと同じ効果が生じる。予圧チャンバ29内の作動流体は、好ましくは圧縮性ガスであるが、この流体はまた、トランスレータ18の動きによって導管47aを通って移動することになる油圧流体などの非圧縮性の液体であり得る。この配置は、トランスレータの運動および関連するガスの体積の変化がコンプライアント要素の形状の変化によって適応されるエアバッグタイプの予圧の力
のシステムと比較したとき、検査対象の入力信号の質を改善する。そのコンプライアンスにより、共振や減衰などの不要なシステムの動作が発生する可能性がある。
【0058】
記載された例のいずれにおいても、予圧チャンバは、円筒壁であってもなくてもよい側壁29a、典型的には端壁13の内面またはハウジング12によって形成され、側壁29a、トランスレータ18、さらに中央コア34の外面に対して固定されている第1の端壁29bによって形成される。したがって、チャンバ29は略環状である。予圧チャンバは完全に閉鎖された容積部ではない場合があり、導管47aに加えて他の小さな隙間が、トランスレータ18、中央コア34およびチャンバハウジング28の間に存在する場合がある。予圧チャンバの容積部を画定する目的のために、そのような隙間はいずれも表面29a、29b、および19aと一体の部分とみなされる。1つ以上のシール、例えばポリマーガスシールは、このような、または他の任意の例において提供でき、そのような間隙を通して予圧チャンバからの加圧流体の著しい漏れを防ぐことができる。
【0059】
予圧チャンバ29の容積は、トランスレータの動きによって変化する。第1の端壁29bはまた、トランスレータと共に予圧チャンバの容積を変えることができる可動要素を含むことができる。そのような構成は、必要とされるより複雑な制御のために、あまり好ましくない。代替的または追加的に、第2の端壁の可動部分として作用するために、さらなる壁の要素をトランスレータ18に取り付けてもよい。このようにすると、トランスレータ自体が予圧チャンバの一部を画定するのではなく、トランスレータと共に移動可能な追加の要素がそれを画定する。予圧チャンバは、軸20に沿って一様な断面を有することができる。
【0060】
トランスレータ18の上端19bは、アクチュエータ10の上端から延出し、アンカーポイント33を備えている。アンカーポイントは、検査対象に使用することができる。アンカーポイントは、平坦な面または他の表面であり得、その上に検査対象が配置され、その自重の下で定位置に保持される。例えば、各タイヤが検査用アクチュエータと接触して配置されているタイヤ上に乗っている車両である。あるいは、アンカーポイントは、トランスレータを検査対象または入力が加えられる外部システムの一部にしっかりと固定するための1つまたは複数の固定手段を含むことができる。これは、トランスレータの端部を通る1つ以上の穴を含み得る。
【0061】
好ましい実施形態では、エンコーダ本体32が中央コアに配置され、中空のトランスレータ18の上端の内側部分に取り付けられたエンコーダスケール31がアクチュエータ内に留まることが可能になる。この例では、エンコーダは位置エンコーダで、エンコーダスケールはシャフトであるが、エンコーダスケールはまた平面であることができ、エンコーダタイプはまた速さ/速度エンコーダであって構わない。エンコーダ本体32は、中央コア34の上端内に配置されているが、適切な場所に配置されてもよく、トランスレータの位置および/または速さ/速度に関する情報を提供し、アクチュエータを確実に制御できるようにする。
【0062】
図3は、リニア電気機械(LEM)60の外観図であり、それは、トランスレータ(後に示す)が沿って移動する運動軸20と、さらなる断面図のための平面B-BおよびC-Cの位置とを有する発電機として動作し得る。後続の図において、同等の構成要素については、
図1および
図2と同じ参照番号が使用されている。
【0063】
図4は、LEM60の断面図を示す。LEM60は、上端、すなわち予圧チャンバ29とは反対側の端部に作動チャンバ42を追加し、検査対象取り付け点33を除去し、導管47bを追加して作動チャンバ42と流体連通するようにしたこと以外はアクチュエータ10と同一である。作動チャンバは、内燃機関の燃焼チャンバ、電力を発生させるための
高圧ガスまたは二相混合物の膨張のための膨張チャンバ、電力を用いてガスまたは二相混合物を加圧するための圧縮チャンバ、または油圧流体または他の液体を受け入れて移動させるための油圧チャンバがあり得る。作動チャンバは、トランスレータ18に作用して運動を発生させることができ、次いで運動がステータ14のコイルに電流を誘導する。
【0064】
後続の図はすべてLEM60を示しているが、作動チャンバに特有のもの以外のそこに開示されている任意の特徴は、
図1および
図2のアクチュエータに等しく適用可能である。例えば、流体軸受構成のいずれもが、LEM60の場合とちょうど同じくらい容易に、アクチュエータ10に利用することができる。
【0065】
予圧チャンバ29は、力を制御してトランスレータ18に加え、作動チャンバ内の作動流体によってトランスレータに加えることのできるいずれかの力に対抗する、または釣り合うよう作用するように設けられる。予圧チャンバ29のこの機能は、トランスレータがその「上部の死点の位置」(すなわち、作動チャンバ42内での移動の最上部の範囲)から離れる下方へのストローク中に発電機として作用するときに電気機械によって回収されなかったトランスレータのエネルギーを蓄えることである。トランスレータがその底部の死点の位置に到達した後、底部の死点から離れるその上方へのストローク中に予圧チャンバがトランスレータに力を加える結果として、こうしたエネルギーがトランスレータ18へ戻ることが達成されることで、リニア電気機械を、上部の死点に向かって戻るストロークで発電機として機能し続けることが可能になる。予圧チャンバ29内での流体の圧力は、予圧チャンバ導管47aによって制御することができ、これはさらに、予圧チャンバの容積がトランスレータ18の運動と共に変化するときに、予圧作動流体を予圧チャンバに出入りさせることを可能にし得る。予圧チャンバ29は、作動チャンバ42で使用されるのと同じ流体(例えば、ランキンサイクルのガスエキスパンダ用途の場合はランキンサイクル用の流体)で充填されてもよい。あるいは、予圧チャンバ29は、用途の要件に従って選択された別の流体で満たされてもよく、それは気体、液体または二相混合物であってもよい。ガスが予圧チャンバ用の流体として使用される場合、予圧チャンバはバウンスチャンバとして作用することができ、この場合、作動流体ガスの圧力は、予圧チャンバの容積が減少するにつれて上昇し、その結果、
図7に示す「底部の死点」のトランスレータの位置またはその近傍でピーク時の予圧チャンバの力になる。予圧チャンバのこのバウンスチャンバの機能は、トランスレータがストロークの底部で停止して方向を変えるのにかかる時間を短縮し、それによってフリーピストンエンジン、ガスエキスパンダ、または他の作動チャンバと予圧チャンバを利用する装置の動作周波数および出力密度を高めるのに役立つ。
【0066】
図5は、内部流体軸受35aと外部流体軸受22aの両方が設けられている代替の軸受の構成を示す。必要ならば、複数の外部または内部の流体軸受を設けることができる。
【0067】
図6および
図7は、
図6のストロークの最上部すなわち「上部の死点」の位置から
図7のストロークの最下部すなわち「底部の死点」の位置までの間の、流体軸受構成に関係がない中空のトランスレータ18の動きを示す。
図6のストロークの最上部では、トランスレータ18の下端はステータ14の下端に実質的に隣接しており、この位置で予圧チャンバ29の容積は最大であり、作動チャンバ42の容積は最小である。この構成では、内部流体軸受35の結果として、別段の場合であればステータ17の下端の下に必要とされるように外部流体軸受と係合したままであるようにすべくステータ17の下端を超える追加のトランスレータの長さの要件はなく、これにより同じ電磁力に対するトランスレータ18の質量が、実質的に減少する。
図7のストロークの下端では、トランスレータ18の上端は上部流体軸受22aの高さよりわずかに上にあるが、実際には上端はさらに突出していてもよく、流体軸受22aの上端と同じ高さでさえあってもよい。
【0068】
内側軸受ギャップ37および磁気回路エアギャップ21のさらなる詳細は、
図8および
図9の図に示されている。
図8はまた、トランスレータの外部ジャーナル23の位置も示す。これは、任意の外部流体軸受22aが作用する表面である。内部ジャーナル面36も示されており、これは任意の内部流体軸受35が作用する面である。ジャーナル面は通常、トランスレータの適切な位置に機械加工されており、そのため、この目的のためにトランスレータに追加の要素を接合する必要はなく、対応する流体軸受が使用されない限り、通常は設けられない。
【0069】
トランスレータは、流体軸受35の外側表面とトランスレータの内側表面の1つまたは複数のジャーナル36との間に内側軸受ギャップ37を画定する流体軸受35によって、同軸の位置に維持される。1つ以上の外部流体軸受22aも設けられる場合、任意の外部流体軸受22aの内面と、トランスレータの外面の間の軸受ギャップ、および磁気回路エアギャップ21は、連続的であり得る。任意の軸受ギャップと任意の磁気回路エアギャップの相対的なサイズは、トランスレータ、ステータ、および流体軸受のサイズによって異なる。軸受ギャップは典型的には磁気回路エアギャップよりも小さいので、磁気回路エアギャップの厚さは、流体軸受の高いラジアル剛性によって、より効果的に制御される。
【0070】
流体軸受(内部または外部を問わず)は一般に多孔質構造を有する環状要素で、それを通して気体または他の流体が加圧下で供給されて軸受ギャップで負荷軸受機能を提供するが、いずれの流体軸受も
図10に示すような形態を取り得る。それにおいて、流体軸受は、軸受が作用するジャーナル面の周り(外側軸受用)または内側(内側軸受用)に間隔を置いている複数の流体軸受シュー44から形成されている。2つの軸受シュー44が示されているが、3つまたは4つの軸受シューが可能であり、実際には、アクチュエータのサイズおよび軸受シューが受ける負荷に応じて、より多くの数も可能であろう。軸受シューは、トランスレータに均等な負荷をかけ、ステータに対するトランスレータの同軸の位置決めを維持するように、等間隔に配置されることが好ましい。流体軸受は、炭素などの一般に多孔質の材料から形成することができる。あるいは、流体軸受孔は、1つまたは複数の中実の軸受または軸受シュー構成要素内にて機械加工された個別の孔のアレイを通して提供することもできる。
【0071】
図11は、内部流体軸受(外部流体軸受があるまたはない場合のいずれか)が代替的に2つ以上の流体軸受によって形成され得ることを示す。この例では、内部流体軸受は上部内部流体軸受35aおよび下部内部流体軸受35bに置き換えられ、さらに外部流体軸受22aもステータの頂部に示されている。
【0072】
内部流体軸受を分割することは、間の軸方向の空間を利用することを可能にするが、それはこの場合、中央コア34に取り付けられた内部ステータ38を含んで、トランスレータの移動質量の単位当たりのより大きな電気機械の力をもたらすことによる。これにより、作動チャンバに作用するアクチュエータまたはLEM装置の動的な性能が著しく向上する。内部ステータ38は、例えば上部内部流体軸受と下部外部流体軸受(またはその逆)との多くの異なる構成で使用することができ、
図11に示す特定の構成に限定されない。
【0073】
図12は、予圧チャンバ29が均一な形状である必要はなく、予圧チャンバ自体がアクチュエータの他の部分と同軸である必要もないことを示している。予圧チャンバ29への非対称的なオフセットは、前の図の配置のいずれにおいても利用することができ、予圧チャンバが不均一な断面および/または非円筒形の側壁を有することになる可能性がある。
【0074】
図13は、さらなる内部流体軸受25がトランスレータ18自体に設けられているさらなる代替構成を示す。トランスレータ軸受25はトランスレータに取り付けられ、トランスレータと共に移動可能である。作動チャンバ42の内面にはさらなる軸受ジャーナル面
48が形成され、ジャーナル面48とトランスレータ軸受25との間に軸受ギャップが形成されている。
【0075】
図14は、流体の流れ、および作動チャンバ42と流体軸受35との間の圧力の差が、トランスレータに一連の環状チャネル46aを設けることによって制御されるラビリンスシール46を示している。ラビリンスシールは、ピストンエキスパンダおよび圧縮機の用途で一般的に使用されている非接触性のシールである。本発明においてラビリンスシールを使用することは、別段の場合であれば接触性のシールと関連させられる摩擦を排除し、また流体軸受と作動チャンバとの間に別個の通気孔を必要としない。
【0076】
図15は、中央コア34がトランスレータ18全体を貫通して延び、そのためトランスレータが中空の管であり、両端が閉じられてはいないようにしているさらなる変形例を示す。中央コアは、LEM内でその半径方向の位置および軸方向を維持するために、両端で固定点40によってハウジングに固定されている。トランスレータは、使用中、中央コアを上下に摺動する。この配置は、そうでなければトランスレータ19とステータ14との間に非同心性を生じさせる可能性がある中央コアのカンチレバーの曲がる程度を減少させるために、中央コアに対するより確実な固定をもたらす。この配置は、作動チャンバ42と予圧チャンバ29とが同じ大きさおよび断面積であることを可能にし、その結果、予圧チャンバ29は、第2の作動チャンバとして代替的に機能することができる。さらに、この配置は、ピストンに作用する作動チャンバ42の面積を減少させ、したがって高圧の作動流体の用途に有利である。そのような用途では、トランスレータの端部に作動チャンバの圧力によって加えられる力は、別段の場合であれば1ストロークの間に作動チャンバによって加えられる仕事を吸収するためにリニア電気機械および予圧チャンバの容量を超えることが可能である。この変形形態では、前述の軸受構成のいずれも利用することができる。