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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】創傷分析装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20230502BHJP
   A61M 27/00 20060101ALN20230502BHJP
【FI】
A61B5/00 102E
A61M27/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019562602
(86)(22)【出願日】2018-05-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2018062206
(87)【国際公開番号】W WO2018210692
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-05-10
(31)【優先権主張番号】62/506,551
(32)【優先日】2017-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391018787
【氏名又は名称】スミス アンド ネフュー ピーエルシー
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【住所又は居所原語表記】Building 5,Croxley Park,Hatters Lane,Watford,Hertfordshire WD18 8YE,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ケネス・フレイジャー・グルージョン・ハント
(72)【発明者】
【氏名】マーカス・ダミアン・フィリップス
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0100790(US,A1)
【文献】国際公開第2016/014384(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/164904(WO,A1)
【文献】特表2016-538053(JP,A)
【文献】特表2009-539539(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0324634(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0079530(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0136579(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療システムであって、
組織部位の上に配置されるように構成された視覚化センサであって、前記組織部位のビデオデータを収集するように構成された視覚化センサと、
警報を提供するように構成された出力と、
前記視覚化センサと前記出力の両方と通信するコントローラであって、
前記ビデオデータをオイラービデオ倍率で増幅するように、
前記増幅されたビデオデータからの治療パラメータであって、前記組織部位への血流を示す色における変化及び/または前記組織部位への血流を示す動きにおける変化に由来する治療パラメータを決定するように、
前記治療パラメータが閾値と異なると判定することに応答して出力に警報を提供させるように、構成されたコントローラと、を備える治療システム。
【請求項2】
前記閾値は、圧迫損傷の発生確率に対応する、請求項1に記載の治療システム。
【請求項3】
前記コントローラがスマートフォン内に含まれている、請求項1~2のいずれか一項に記載の治療システム。
【請求項4】
前記視覚化センサが、前記コントローラと無線通信するように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の治療システム。
【請求項5】
前記コントローラが、前記出力と無線通信するように構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の治療システム。
【請求項6】
前記コントローラが、前記治療パラメータを複数の閾値と比較するように構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の治療システム。
【請求項7】
前記視覚化センサが、RGB検出器を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の治療システム。
【請求項8】
前記警報が、可聴警報を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の治療システム。
【請求項9】
前記警報が、視覚警報を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の治療システム。
【請求項10】
前記コントローラが、二つ以上のビデオデータのフレーム間の赤値の変化を計算することによって、前記治療パラメータを決定するように構成される、請求項1~9のいずれか一項に記載の治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年5月15日出願の米国仮特許出願第62/506,551号の利益を主張するものであり、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に記述した実施形態は、創傷の治療のための装置、システム、および方法、例えば、創傷のモニタリングおよび適切な治療の提供に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
現代の創傷治療には、様々な被覆材、灌注剤、デブリードマン技術、治癒を促進する化学物質、薬剤、および陰圧創傷療法(NPWT)処置の使用を含む複数の手法が関与しうる。現在当該技術分野で知られているNPWTシステムは、創傷の上に流体に対して不透過性または半透過性の被覆を置くことと、創傷を囲む患者の組織に対して被覆を封止する、様々な手段を使用することと、陰圧を被覆の真下に作り出し維持するような手法で、陰圧の源(真空ポンプなど)を被覆に接続することとを伴う。典型的には、創傷は裸眼によって監視され、治療は臨床実行者の体験に基づいて修正される。
【0004】
しかしながら、従来技術の創傷治療は、例えば、褥瘡形成の初期段階の間など、特に創傷が実際に形成される前に、創傷部位または組織部位の状態について自動化された可視化または情報をほとんど提供しない。さらに、無傷の組織および創傷の評価に対する既存の技術は、ヒトの眼の限界、またはよりまれには標準的なビデオ撮影技術の限界によって制限される。したがって、既存の技術は、創傷が存在する前の組織の状態に関する不適切な情報を提供する場合がある。したがって、創傷および組織内の変化を評価/検出するための改善された方法および技術が必要である。
【0005】
さらに、医療のほぼすべての領域が、特に治療中にかかる情報がリアルタイムで収集される場合、治療される組織、器官、またはシステムの状態に関する改善された情報から恩恵を受ける可能性があるが、多くのタイプの治療は、センサデータ収集を使用することなく、依然として日常的に実施されている。代わりに、こうした治療は、介護者または定量的センサデータではなくその他の限定的手段による目視検査に依存する。例えば、被覆材および/または陰圧創傷療法を介した創傷治療の場合、データ収集は一般的に介護者による目視検査に限定され、また多くの場合、下にある創傷組織は包帯またはその他の視覚障害物によって遮られうる。損傷を受けていない無傷の皮膚でさえ、潰瘍につながりうる血管損傷または深部組織損傷など、裸眼には見えない潜在的な損傷を有しうる。創傷治療と同様に、ギプスまたはその他の覆いで肢の固定化を必要とする整形外科用処置中も、限定された情報のみしか下層組織について収集されない。骨プレートなどの内部組織修復の場合、継続的な直接センサ駆動データ収集は実施されない。さらに、筋骨格機能を保持するために使用される留め具および/またはスリーブは、下にある筋肉の機能または肢の動きを監視しない。直接処置の外には、患者パラメータを監視する能力を追加することによって、ベッドおよび毛布などの一般的な病室のアイテムが改善されうる。
【0006】
したがって、特に既存の治療方法に組み込むことができるセンサ対応型基材の使用により、改善されたセンサモニタリングへのニーズがある。
【発明の概要】
【0007】
特定の開示された実施形態は、組織を監視するための装置、方法、およびシステムに関する。本明細書に記載される装置、方法、およびシステムの適用は、特定の組織または特定の損傷に限定されないことを当業者は理解するであろう。
【0008】
特定の実施形態では、治療システムは、組織部位の上に配置されるように構成された視覚化センサであって、組織部位のビデオデータを収集するよう構成される視覚化センサ、警報を提供するよう構成された出力、および視覚化センサと出力の両方と通信するコントローラを備えてもよく、コントローラは、オイラービデオ倍率によってビデオデータを増幅し、増幅されたビデオデータから治療パラメータを決定し、治療パラメータが閾値と異なると判断したことに応答して、出力に警報を提供させるように構成される。
【0009】
いくつかの実施形態では、閾値は、圧迫損傷の発生確率に対応する。コントローラは、スマートフォン内に収容されうる。視覚化センサは、コントローラと無線通信するように構成されうる。コントローラは、陰圧源と無線通信するように構成され得る。コントローラは、治療パラメータを複数の閾値と比較するように構成されうる。視覚化センサは、RGB検出器を備えてもよい。警報は、音声警報および/または視覚的警報を含んでもよい。
【0010】
コントローラは、二つ以上のビデオデータのフレーム間の赤値の変化を計算することによって、組織パラメータを決定するように構成されうる。
【0011】
特定の実施形態では、切開部位を特定するためのシステムは、組織部位の上に配置されるように構成された視覚化センサであって、組織部位のビデオデータを収集するように構成された視覚化センサ、視覚化センサと通信するコントローラを備えてもよく、コントローラは、オイラービデオ倍率によってビデオデータを増幅し、増幅されたビデオデータから組織部位におけるランガー皮膚割線を特定し、組織部位のビデオデータ上にランガー皮膚割線を位置づけ、およびディスプレイ上にランガー皮膚割線を表示するように構成される。
【0012】
システムは、切開部位警報を提供するように構成された出力をさらに備えてもよい。切開部位警報は、配向および位置を含みうる。
【0013】
特定の実施形態では、組織部位の治療を監視するためのシステムは、超音波発生器であって、内部組織部位に治療用超音波を送達するように構成された超音波発生器、および組織部位上に配置されるように構成された視覚化センサであって、組織部位の磁場誘導断層撮影ビデオデータを収集するように構成された視覚化センサを備えうる。システムは、磁場誘導断層撮影ビデオデータが閾値を超えた時に警報を提供するように構成された出力を備えうる。
【0014】
いくつかの実施形態では、視覚化センサおよびコントローラを備える治療システムを操作する方法は、組織部位の上に配置される視覚化センサによって、組織部位のビデオデータを収集し、およびコントローラによって、オイラービデオ倍率によってビデオデータを増幅し、増幅されたビデオデータから治療パラメータを決定し、治療パラメータが閾値と異なると判断したことに応答して、警報を提供させることを含みうる。
【0015】
いくつかの実施形態では、視覚化センサおよびコントローラを備える治療システムを操作する方法は、組織部位の上に配置される視覚化センサによって、組織部位のビデオデータを収集し、およびコントローラによって、オイラービデオ倍率によってビデオデータを増幅し、増幅されたビデオデータから赤デルタ値を決定し、赤デルタ値が組織部位に血管の存在を示す場合、警報を提供させることを含みうる。
【0016】
さらなる実施形態を以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一部の実施形態による減圧創傷療法システムを示す。
図2A図2Aは、一部の実施形態によるポンプ組立品およびキャニスタを示す。
図2B図2Bは、一部の実施形態によるポンプ組立品およびキャニスタを示す。
図2C図2Cは、一部の実施形態によるポンプ組立品およびキャニスタを示す。
図3図3は、オイラービデオ倍率として知られるビデオ増幅のプロセスの実施形態を示す。
図4図4は、創傷モニタリングおよび治療システムの一実施形態を図示する。
図5A図5Aは、創傷モニタリングおよび治療システムの実施形態を示す。
図5B図5Bは、ビデオからのサンプリングフレームのサンプリング方法の実施形態を示す。
図6図6は、創傷診断システムの実施形態を示す。
図7図7は、ランガー皮膚割線をマッピングし、切開部位を特定する方法および/またはシステムの実施形態を示す。
図8図8は、磁場誘導断層撮影を介して超音波で組織部位の治療を監視するためのシステムの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に開示される実施形態は、センサ対応型基材を用いた生体組織のモニタリングおよび治療のための装置および方法に関する。本明細書に開示される実施形態は、特定のタイプの組織または損傷の治療またはモニタリングに限定されず、代わりに本明細書に開示されるセンサ対応型技術は、センサ対応型基材から恩恵を受ける可能性のある任意のタイプの療法に広く適用可能である。一部の実装は、診断および患者管理両方の決定を行うために、医療提供者に依存するセンサおよびデータ収集を利用する。
【0019】
本明細書に開示される一部の実施形態は、無傷なおよび損傷を受けたヒトまたは動物組織の両方の治療で使用されるように構成された、基材上に取り付けられたまたはその中に埋め込まれたセンサの使用に関する。こうしたセンサは、周囲の組織についての情報を収集し、かかる情報をコンピューティング装置または介護者に送信して、さらなる治療で利用することができる。特定の実施形態では、こうしたセンサは、関節炎をモニタリングするための領域、温度、または問題を生じやすくモニタリングを必要とするその他の領域を含む、体の皮膚のどこにでも取り付けられうる。本明細書に開示されるセンサは、例えば、MRIまたは他の技術を実施する前に、装置の存在を示すために、放射線不透性マーカーなどのマーカーも組み込むことができる。
【0020】
本明細書で開示したセンサ実施形態は、衣服と組み合わせて使用されうる。本明細書に開示されるセンサの実施形態と併用するための衣服の非限定的な例としては、シャツ、パンツ、ズボン、ドレス、下着、外衣、手袋、靴、帽子、およびその他の適切な衣類が挙げられる。特定の実施形態では、本明細書に開示されるセンサ実施形態は、特定の衣類に密着させるか、またはその中/その上に積層されうる。センサ実施形態は、衣類に直接プリントされてもよく、および/または織物内に埋め込まれてもよい。微多孔性フィルムなどの通気性およびプリント可能な材料も適切でありうる。
【0021】
本明細書に開示されるセンサ実施形態は、病院用ベッド内などのクッションまたはベッドパッドに組み込まれて、本明細書に開示される任意の特徴などの患者の特徴を監視することができる。特定の実施形態では、こうしたセンサを含む使い捨てフィルムは、病院用寝具の上に配置され、必要に応じて除去/交換されてもよい。
【0022】
一部の実施では、本明細書に開示されるセンサ実施形態は、センサ実施形態が自立運転するように、環境発電を組み込みうる。例えば、エネルギーは、熱エネルギー源、運動エネルギー源、化学勾配、または任意の適切なエネルギー源から収集してもよい。
【0023】
本明細書に開示されるセンサ実施形態は、スポーツ医学を含むリハビリテーション装置および治療で利用されうる。例えば、本明細書に開示されるセンサ実施形態は、留め具、スリーブ、ラップ、支持体、およびその他の適切な品目で使用されうる。同様に、本明細書に開示されるセンサ実施形態は、ヘルメット、スリーブ、および/またはパッドなどのスポーツ用品に組み込まれうる。例えば、こうしたセンサ実施形態は、震盪の診断において有用でありうる加速度などの特性を監視するために保護ヘルメットに組み込まれうる。
【0024】
本明細書に開示されるセンサ実施形態は、例えば、Smith&NephewInc.によるNAVIO外科手術システムなどの外科手術装置と一体となって使用されてもよい。実施中に、本明細書に開示されるセンサ実施形態は、そのような外科手術装置と通信して、外科手術装置の配置を案内することができる。一部の実施では、本明細書に開示されるセンサ実施形態は、潜在的な外科手術部位へのもしくはそこから離れる血流を監視するか、または外科手術部位への血流がないことを確実にすることができる。さらなる外科手術データは、瘢痕化の防止を助けるためおよび影響を受ける領域から離れた領域を監視するために収集されうる。
【0025】
外科手術技術をさらに補助するために、本明細書に開示されたセンサは、外科用ドレープに組み込まれて、裸眼には直ちに見ることのできないドレープ下の組織に関する情報を提供することできる。例えば、センサ組み込みの可撓性ドレープは、有利に配置されたセンサを有し、改善された領域重視データ収集を提供しうる。特定の実施では、本明細書に開示されるセンサ実施形態は、ドレープの境界または内部に組み込まれて、フェンスを作り出し、外科手術室を制限/制御することができる。
【0026】
本明細書に開示されるセンサ実施形態はまた、術前評価に利用されてもよい。例えば、こうしたセンサ実施形態は、例えば皮膚および潜在的な切開部位の下層組織を監視することによって、潜在的な外科手術部位についての情報を収集するために使用されうる。例えば、灌流レベルまたはその他の適切な特性は、皮膚表面および組織内深部でモニターされ、個別の患者が外科手術合併症のリスクにさらされうるかどうかを評価することができる。本明細書に開示されるものなどのセンサ実施形態は、細菌感染の存在を評価し、抗菌剤の使用のための表示を提供するために使用されうる。さらに、本明細書に開示されるセンサ実施形態は、褥瘡性損傷および/または脂肪組織レベルを特定するなど、深部組織におけるさらなる情報を収集しうる。
【0027】
本明細書に開示されるセンサ実施形態は、心血管モニタリングで利用されうる。例えば、こうしたセンサ実施形態は、皮膚に対して配置されうる可撓性心血管モニターに組み込まれる場合があり、心血管系の特性を監視し、かかる情報を別の装置および/または介護者に伝達することができる。例えば、こうした装置は、脈拍数、血液の酸素化、および/または心臓の電気活性を監視しうる。同様に、本明細書に開示されるセンサ実施形態は、ニューロンの電気活性の監視など、神経生理学的用途に利用されうる。
【0028】
本明細書に開示されるセンサ実施形態は、可撓性の移植を含む、移植可能な整形外科用インプラントなどの移植可能な装置に組み込まれうる。こうしたセンサ実施形態は、インプラント部位に関する情報を収集し、この情報を外部ソースに送信するように構成されうる。いくつかの実施形態では、内部ソースはまた、こうしたインプラントのための電力も提供しうる。
【0029】
本明細書に開示されるセンサ実施形態は、筋肉内のラクトース蓄積または皮膚表面上の発汗など、皮膚の表面上または皮膚の表面下の生化学的活性を監視するためにも利用されうる。いくつかの実施形態では、グルコース濃度、尿濃度、組織圧、皮膚温度、皮膚表面導電率、皮膚表面抵抗率、皮膚の水和性、皮膚の浸軟性、および/または皮膚のリッピングなど、その他の特徴を監視しうる。
【0030】
本明細書に開示されるセンサ実施形態は、耳、鼻、および喉(ENT)用途に組み込まれうる。例えば、こうしたセンサ実施形態は、鼻腔路内の創傷モニタリングなど、ENT関連手術からの回復を監視するために利用されうる。
【0031】
以下でより詳細に説明するように、本明細書に開示されるセンサ実施形態は、ポリマーフィルムでの封入などの封入を伴うセンサプリント技術を包含しうる。こうしたフィルムは、ポリウレタンなど本明細書で説明した任意のポリマーを使用して構築されうる。センサ実施形態の封入は、局所組織、局所液体、およびその他の潜在的な損傷源からの電子機器の防水および保護を提供しうる。
【0032】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるセンサは、以下に開示するように器官保護層に組み込まれうる。このようなセンサ組み込み器官保護層は、対象器官を保護し、器官保護層が所定位置にあり、保護を提供することを確認しうる。さらに、センサ組み込み器官保護層を利用して、例えば血流、酸素化、および器官健康のその他の適切なマーカーを監視することによって、下層器官を監視することができる。いくつかの実施形態では、センサ対応型器官保護層を使用して、例えば器官の脂肪および筋肉含有量を監視することによって、移植された器官を監視することができる。さらに、センサ対応型器官保護層を使用して、器官のリハビリの間など、移植中および移植後の器官をモニターすることができる。
【0033】
本明細書に開示されるセンサ実施形態は、創傷の治療(以下でより詳細に開示)またはさまざまなその他の用途に組み込まれうる。本明細書に開示されるセンサ実施形態の追加的用途の非限定的な例としては、無傷な皮膚のモニタリングおよび治療、血流の監視などの心血管用途、肢の動きおよび骨の修復のモニタリングなどの整形外科用途、電気インパルスのモニタリングなどの神経生理学的用途、および改善されたセンサ対応型モニタリングの恩恵を受けることができる任意の他の組織、器官、システム、または状態が挙げられる。
【0034】
創傷療法
本明細書に開示する一部の実施形態は、ヒトまたは動物の体に対する創傷療法に関する。そのため、本明細書における創傷へのいかなる言及も、ヒトまたは動物の体上の創傷を指すことができ、本明細書における体へのいかなる言及も、ヒトまたは動物の体を指しうる。開示された技術実施形態は、生理学的組織または生体組織への損傷を防止するかもしくは最小化すること、または例えば、陰圧源ならびに創傷被覆材構成要素および装置を含む、減圧を伴うまたは伴わない損傷した組織(例えば、本明細書で説明した創傷など)の治療に関しうる。創傷オーバーレイおよびパッキング材料、または、存在する場合には内層を備える、装置および構成要素は、時に総称して本明細書では被覆材と呼ばれる。いくつかの実施形態では、創傷被覆材は、減圧せずに利用されるように提供されうる。
【0035】
本明細書に開示する一部の実施形態は、ヒトまたは動物の体に対する創傷療法に関する。そのため、本明細書における創傷へのいかなる言及も、ヒトまたは動物の体上の創傷を指すことができ、本明細書における体へのいかなる言及も、ヒトまたは動物の体を指しうる。開示された技術実施形態は、生理学的組織または生体組織への損傷を防止するかもしくは最小化すること、または、損傷した組織(例えば、本明細書に記載される創傷など)の治療に関しうる。
【0036】
本明細書で使用される場合、「創傷」という表現は、切創、殴打、または皮膚が切断または損傷される典型的なものといった、その他の衝撃によって引き起こされうる、生体組織に対する損傷を含みうる。創傷は、慢性または急性損傷でありうる。急性創傷は、手術または外傷の結果として生じる。これらは、予測される期間内に、段階的な治癒を経ていく。慢性創傷は典型的には急性創傷として始まる。急性創傷は、段階的な治癒を経ず、結果的に回復が延びることになる場合に、慢性創傷となりうる。当然のことながら、患者の免疫力が損なわれたことによって、急性創傷から慢性創傷への移行が起こりうる。
【0037】
慢性創傷には、例えば、慢性創傷の大部分を占め、主に高齢者に影響する静脈性潰瘍(脚で発生するものなど)、糖尿病性潰瘍(例えば、足または足首潰瘍)、周辺動脈疾患、褥瘡、または、表皮解析球症(EB)を含みうる。
【0038】
その他の創傷の例としては、腹部創傷、または手術、外傷、胸骨切開、筋膜切開、あるいは他の状態のいずれかの結果としての他の大規模または切開性の創傷、裂開創傷、急性創傷、慢性創傷、亜急性創傷および裂開創傷、外傷性創傷、フラップおよび皮膚移植片、裂傷、擦傷、挫傷、火傷、糖尿病性潰瘍、褥瘡、ストーマ、術創、外傷性潰瘍および静脈性潰瘍などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0039】
創傷には深部組織損傷も含まれうる。深部組織損傷は、米国褥瘡諮問委員会(NPUAP)によって提唱された用語であり、褥瘡の特異な形態を記述するものである。これらの潰瘍は長年、紫色褥瘡、悪化する可能性が高い潰瘍、骨性突起上の打撲、といった用語を用いて臨床医によって説明されてきた。
【0040】
創傷はまた、本明細書で論じられるように、創傷になる恐れのある組織を含みうる。例えば、恐れのある組織は、骨性突起にわたる組織(深部組織損傷/傷害の恐れのある)、または、(例えば、関節置換/外科的修正/復元のために)切断される可能性を有しうる術前組織(例えば、膝部組織)を含みうる。
【0041】
一部の実施形態は、本明細書に開示される技術を、進化した履物、患者を回転させる、オフロードする(例えば、糖尿病性足潰瘍をオフロードする、など)、感染症の治療、システミックス(systemix)、抗菌剤、構成物質、外科手術、組織の除去、血流への影響、理学療法、運動、入浴、栄養摂取、水分補給、神経刺激、超音波、電子刺激、酸素療法、マイクロ波療法、活性剤オゾン、抗生物質、抗菌剤、などのうちの一つまたは複数と併用して創傷を治療する方法に関する。
【0042】
あるいは、またはさらに、創傷は、局所陰圧、および/または、印加された陰圧を使用することによって補助されない、従来の高度な創傷治療(非陰圧療法と呼ばれる場合もある)を使用して治療されうる。
【0043】
高度な創傷治療には、吸収被覆材の使用、閉塞被覆材、創傷被覆材または付属物内における抗菌剤および/または創傷清拭剤の使用、パッド(例えば、靴下や包帯といった、緩衝または圧縮療法)、などが含まれうる。
【0044】
いくつかの実施形態では、そのような創傷の治療は、従来の創傷治療を使用して実施することができ、創傷の治癒を容易にし、促進するために、創傷に被覆材が適用されうる。
【0045】
一部の実施形態は、本明細書に開示されるように創傷被覆材を提供することを含む、創傷被覆材を製造する方法に関する。
【0046】
開示された技術と併せて利用されうる創傷被覆材は、当該技術分野において公知の任意の被覆材を含む。本技術は、陰圧療法および非陰圧療法に適用可能である。
【0047】
いくつかの実施形態では、創傷被覆材は、一つまたは複数の吸収性層を含む。吸収層は、発泡体または超吸収体であり得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、創傷被覆材は、多糖類または修飾多糖類、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、コラーゲン、またはゼラチン、またはそれらの混合物を含む被覆材層を含みうる。リストされたポリマーを含む被覆材層は、陰圧療法または非陰圧療法のいずれかの創傷被覆材層を形成するために有用であることが当技術分野で公知である。
【0049】
いくつかの実施形態では、ポリマーマトリクスは、多糖類または修飾多糖類であってもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、ポリマーマトリクスは、セルロースであってもよい。セルロース材料は、メチルセルロース,カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロース(CEC)、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース,カルボキシエチルスルホナートセルロース、セルロースアルキルスルホナート、またはそれらの混合物といった、親水性修飾セルロースを含みうる。
【0051】
特定の実施形態では、セルロース材料はセルロースアルキルスルホナートであってもよい。アルキルスルホナート置換基のアルキル部分は、メチル、エチル、プロピル、またはブチルなどの、1~6個の炭素原子を有するアルキル基を有してもよい。アルキル部分は、分枝または非分枝であってもよく、したがって、好適なプロピルスルホネート置換基は、1-または2-メチル-エチルスルホナートであってもよい。ブチルスルホナート置換基は、2-エチル-エチルスルホナート、2,2-ジメチル-エチルスルホナート、または1,2-ジメチル-エチルスルホナートであってもよい。アルキルスルホナート置換基は、エチルスルホナートであってもよい。セルロースアルキルスルホナートは、国際特許第10061225号、米国特許第2016/114074号、米国特許第2006/0142560号、または米国特許第5,703,225号に記載されており、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0052】
セルロースアルキルスルホナートは、さまざまな置換、セルロース骨格構造の鎖長およびアルキルスルホナート置換基の構造を有し得る。溶解性および吸収性は、置換の程度により、置換の程度が増大するほど、セルロースアルキルスルホナートはますます溶解性になる。溶解性が増加するにつれ、吸収性が増加するということになる。
【0053】
いくつかの実施形態では、創傷被覆材はまた、上部またはカバー層を含む。
【0054】
本明細書に開示される創傷被覆材の厚さは、1mm~20mm、または2mm~10mm、または3mm~7mmでありうる。
【0055】
いくつかの実施形態では、開示された技術は、非陰圧被覆材と併せて使用されうる。創傷部位で保護を提供するのに適した非陰圧創傷被覆材は、以下を含みうる:
創傷滲出液を吸収するための吸収性層と、
使用時に吸収性層によって吸収される創傷滲出物の視界を少なくとも部分的に遮蔽するための遮蔽要素と、を含み得る。
【0056】
遮蔽要素は部分的に半透明であってもよい。
【0057】
不明瞭要素はマスキング層であってもよい。
【0058】
非陰圧創傷被覆材は、吸収性層を見ることができるように、不明瞭要素内またはそれに隣接した領域をさらに含みうる。例えば、遮蔽要素層は、吸収性層の中央領域の上には提供されうるが、吸収性層の境界領域の上には提供されなくてもよい。いくつかの実施形態では、遮断要素が親水性材料であるか、または親水性材料で被覆されている。
【0059】
遮蔽要素は、三次元編みスペーサ織物を含みうる。スペーサ織物は当該技術では公知であり、編みスペーサ織物層を含みうる。
【0060】
遮蔽要素は、被覆材を変更する必要性を示すためのインジケータをさらに含みうる。
【0061】
いくつかの実施形態では、遮蔽要素は、少なくとも部分的に吸収性層の上に、使用中には吸収性層よりも創傷部位から遠くに、層として提供される。
【0062】
非陰圧創傷被覆材は、それを通して流体を移動させることを可能にするために遮蔽要素に複数の開口部をさらに含みうる。遮蔽要素は、所定のサイズまたは重量の分子の通過を選択的に許容または防止するためのサイズ排除特性を有する材料を含んでもよく、または被覆され得る。
【0063】
遮蔽要素は、600nm以下の波長を有する光放射を少なくとも部分的にマスクするように構成されうる。
【0064】
遮蔽要素は、50%以上、光吸収を減少させるように構成されうる。
【0065】
遮蔽要素は、CIEのL*値50以上、および必要に応じて70以上をもたらすように構成されうる。いくつかの実施形態では、遮蔽要素は、CIEのL*値70以上をもたらすように構成されうる。
【0066】
いくつかの実施形態では、非陰圧創傷被覆材は、創傷接触層、発泡層、臭気抑制要素、耐圧層、およびカバー層のうちの少なくとも一つをさらに含みうる。
【0067】
いくつかの実施形態では、カバー層が存在し、カバー層は半透明フィルムである。通常、半透明フィルムは、24時間で500g/m以上の透湿性を有する。
【0068】
半透明フィルムは細菌バリアであってもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される非陰圧創傷被覆材は、創傷接触層を含み、吸収性層が創傷接触層の上にある。創傷接触層は、創傷部位の上に実質的に流体密封シールを形成するための接着部分を担持する。
【0070】
本明細書に開示される非陰圧創傷被覆材は、単一層として提供される遮蔽要素および吸収性層を含みうる。
【0071】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される非陰圧創傷被覆材が発泡層を含み、遮断要素は、遮蔽要素の移動によって変位または破損されうる構成要素を含む材料からなる。
【0072】
いくつかの実施形態では、非陰圧創傷被覆材が臭気抑制要素を含み、別の実施形態では、被覆材は臭気抑制要素を含まない。存在する場合、臭気抑制要素は、吸収性層または遮蔽要素内またはそれに隣接して分散されてもよい。別の方法として、存在する場合、臭気制御要素は、発泡体層と吸収層との間に挟まれた層として提供され得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、非陰圧創傷被覆材のために開示された技術は、創傷被覆材を製造する方法を含み、その方法は、創傷滲出液を吸収するための吸収性層を提供することと、使用中に吸収性層によって吸収された創傷滲出液の視界を少なくとも部分的に遮蔽するための遮蔽要素を提供することと、を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、非陰圧創傷被覆材は、創傷部位での保護を提供することに好適であってもよく、創傷滲出液を吸収するための吸収性層と、吸収性層の上に、吸収性層よりも創傷被覆材の創傷に面する側から離れて提供される遮蔽層とを含む。遮蔽層は、吸収層の上に直接設けられてもよい。いくつかの実施形態では、遮蔽層は、三次元スペーサ織物層を含む。
【0075】
遮蔽層は、被覆材に印加される圧力が伝達される領域を25%以上、または最初の印加領域を増加させる。例えば、遮蔽層は、被覆材に印加される圧力が伝達される領域を50%以上、必要に応じて100%以上、および必要に応じて200%以上増加させる。
【0076】
遮蔽層は、2つ以上のサブ層を含んでもよく、第一のサブ層が貫通孔を含み、さらなるサブ層が貫通孔を含み、第一のサブ層の貫通孔がさらなるサブ層の貫通孔からずらされている。
【0077】
本明細書に開示される非陰圧創傷被覆材は、ガスおよび蒸気を通過することを可能にする透過性カバー層をさらに備えてもよく、カバー層は遮蔽層の上に設けられ、カバー層の貫通孔は遮蔽層の貫通孔からオフセットされる。
【0078】
非陰圧創傷被覆材は、褥瘡の治療に好適でありうる。
【0079】
本明細書に開示される非陰圧被覆材のより詳細な説明は、WO2013/007973号に提供され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0080】
いくつかの実施形態では、非陰圧創傷被覆材は、創傷部位から滲出液を吸収するための繊維質吸収性層と、創傷被覆材の少なくとも一部分の収縮を低減するよう構成された支持層とを含む、多層の創傷被覆材であってもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される多層の創傷被覆材は、液体不透過性フィルム層をさらに含み、支持層は吸収性層とフィルム層との間に配置される。
本明細書に開示される支持層は、ネットを含みうる。ネットは、それを通って延在する複数の実質的に幾何学的なアパーチャを有する幾何学的構造を含みうる。幾何学的構造は、例えば、ポリマー鎖の間に実質的に幾何学的なアパーチャを形成するよう、ポリマー鎖によって実質的に均等に離間し、結合された複数のボスを含みうる。
【0082】
ネットは、高密度ポリエチレンから形成されうる。
【0083】
アパーチャは、0.005~0.32mmの面積を有しうる。
【0084】
支持層は、0.05Nm~0.06Nmの引張強度を有しうる。
【0085】
支持層は50μm~150μmの厚さを有しうる。
【0086】
いくつかの実施形態では、支持層は、吸収性層に直接隣接して配置される。通常、支持層は、吸収性層の頂面の繊維に結合される。支持層は、結合層をさらに備えてもよく、ここで支持層は、結合層を介して吸収層内の繊維に積層される。結合層は、エチレンビニルアセテート接着剤などの低融点接着剤を含みうる。
【0087】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される多層の創傷被覆材は、フィルム層を支持層に接着させる接着層をさらに含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される多層の創傷被覆材は、創傷に隣接して位置付けるための、吸収層に隣接して配置される創傷接触層をさらに含む。多層の創傷被覆材は、創傷から離れて吸収性層へと滲出液を移動させるため、創傷接触層と吸収性層との間に流体輸送層をさらに含みうる。
【0089】
上記本明細書に開示される多層の創傷被覆材のより詳細な説明は、出願番号GB1618298.2を用いて2016年10月28日に出願された、GB特許出願において提供され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0090】
いくつかの実施形態では、開示された技術が創傷被覆材に組み込まれてもよく、その創傷被覆材は、材料の吸収層の第一の層と、材料の第二の層とを含む垂直重複材料を含み、第一の層は、不織布繊維のうちの少なくとも一つの層から構築され、不織布繊維は、複数の折り目に折り畳まれてひだのある構造を形成する。いくつかの実施形態では、創傷被覆材は、材料の第一の層に一時的に、または永久的に接続された、材料の第二の層をさらに含む。
【0091】
通常、垂直重複材料は、切り込みが入れられている。
【0092】
いくつかの実施形態では、第一の層は、ひだの深さによって、または、切り込みの幅によって決められた深さを有する、ひだのある構造を有する。材料の第一の層は、成形可能、軽量、繊維系材料、材料または組成物層の混合であってもよい。
【0093】
材料の第一の層は、合成、天然、または無機ポリマーで製造された繊維、セルロース性、タンパク質性、または鉱物源の天然繊維のうちの一つまたは複数を含みうる。
【0094】
創傷被覆材は、互いの上に積み重ねられた材料垂直重複材料の吸収性層のうちの二つ以上の層を含んでもよく、二つ以上の層は、同一または異なる密度または組成を有する。
【0095】
いくつかの実施形態では、創傷被覆材は、材料垂直重複材料の吸収性層のうちの一つの層のみを含みうる。
【0096】
材料の吸収性層は、天然または合成、有機または無機繊維、および結合剤繊維、または、特定温度で軟化し、全体的な混合の結合剤として作用する、低溶融温度PETコーティングを用いた、バイコンポーネント繊維、通常PETの混合である。
【0097】
いくつかの実施形態では、材料の吸収性層は、5%~95%の熱可塑性ポリマー、および、5重量%~95重量%のセルロースまたはその誘導体であってもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される創傷被覆材は、発泡体または被覆材固定剤を含む第二の層を有する。
【0099】
発泡体は、ポリウレタン発泡体であってもよい。ポリウレタン発泡体は、開放または閉鎖孔構造を有してもよい。
【0100】
被覆材固定剤は、包帯、テープ、ガーゼ、または裏当て層を含みうる。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるように、創傷被覆材は、ラミネーションまたは接着剤によって第二の層に直接接続された材料の吸収性層を含み、第二の層は被覆材固定層に接続される。接着剤は、アクリル接着剤、またはシリコン接着剤であってもよい。
【0102】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるように、創傷被覆材は、超吸収性繊維、またはビスコース繊維またはポリエステル繊維の層をさらに含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるように、創傷被覆材は、裏当て層をさらに含む。裏当て層は、透明または不透明なフィルムであってもよい。通常、裏当て層は、ポリウレタンフィルム(通常、透明ポリウレタンフィルム)を含む。
【0104】
上記本明細書に開示される多層の創傷被覆材のより詳細な説明は、出願番号GB1621057.7を用いて2016年12月12日に、および出願番号GB1709987.0を用いて2017年6月22日に出願されたGB特許出願において提供され、その各々の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0105】
いくつかの実施形態では、非陰圧創傷被覆材は、創傷被覆材のための吸収性構成要素を含み得、構成要素が、発泡層に結合されたゲル形成繊維を含む創傷接触層を含み、発泡層が、接着剤、ポリマー系溶融層、フレームラミネーション、または超音波によって創傷接触層に直接結合される。
【0106】
吸収性構成要素は、シート形態であってもよい。
【0107】
創傷接触層は、織りまたは不織り、あるいは編みゲル形成繊維の層を含み得る。
【0108】
発泡層は、開放細胞発泡体、または閉鎖細胞発泡体であってもよく、通常は開放細胞発泡体である。発泡層は、親水性発泡体である。
【0109】
創傷被覆材は、被覆材を創傷に接着する接着剤の周辺によって囲まれた、創傷と直接接触する島を形成する構成要素を含み得る。接着剤は、シリコンまたはアクリル接着剤であってもよく、通常はシリコン接着剤である。
【0110】
創傷被覆材は、創傷から最も遠い被覆材の表面において、フィルム層によって覆われ得る。
【0111】
本明細書の本タイプの創傷被覆材のより詳細な説明は、EP2498829に提供されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0112】
いくつかの実施形態では、非陰圧創傷被覆材は、高レベルの滲出物を生成する創傷で使用する多層創傷被覆材を含んでもよく、被覆材が、少なくとも24時間で300gm2のMVTRを有する透過層と、滲出液を吸収し、保持することができるゲル形成繊維を含む吸収性コアと、滲出液を吸収性コアに送るゲル形成繊維を含む創傷接触層と、吸収性コア上に位置付けられるキーイング層とを含むことで特徴付けられる。
【0113】
創傷被覆材は、24時間で被覆材の10cmあたりの流体のうち、少なくとも6g(または8g~15g)に対応する能力を有し得る。
【0114】
創傷被覆材は、布の形態で化学修飾されたセルロース系繊維であるゲル形成繊維を含み得る。繊維は、カルボキシメチル化セルロース繊維を含み得、通常は塩化カルボキシメチルセルロース繊維である。
【0115】
創傷被覆材は、横方向の吸い上げ量が毎分5mm~毎分40mmの創傷接触層を含み得る。創傷接触層は、35gmなど、25gm~55gmの繊維密度を有し得る。
【0116】
吸収性コアは、少なくとも10g/gの滲出物の吸収性を有し得、通常、横方向の吸い上げ量は、毎分20mmより少ない。
【0117】
吸収性コアは、重量で最大25%のセルロース系繊維、および重量でゲル形成繊維の75%~100%の範囲の混合物を有し得る。
【0118】
あるいは、吸収性コアは、重量で最大50%のセルロース系繊維、および重量でゲル形成繊維の50%~100%の範囲の混合物を有し得る。例えば、混合物は、重量で50%のセルロース系繊維および重量で50%のゲル形成繊維の範囲内である。
【0119】
吸収性コアの繊維密度は、150gm~250gm、または約200gmであってもよい。
【0120】
濡れた場合の創傷被覆材は、その元のサイズ/寸法の25%未満または15%未満の収縮を有し得る。
【0121】
創傷被覆材は、透過層を含み得、層は発泡体である。透過層は、ポリウレタンフィルムにラミネートされたポリウレタン発泡体であってもよい。
【0122】
創傷被覆材は、可溶性薬剤フィルム層、臭気吸収性層、拡散層、および追加的接着剤層を含む群から選択される、一つまたは複数の層を含み得る。
【0123】
創傷被覆材は、厚さ2mm~4mmであってもよい。
【0124】
創傷被覆材は、キーイング層が吸収性コアを隣接する層に結合するという点で特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、キーイング層は、吸収性コアの創傷に面する側、または、吸収性コアの非創傷面側のいずれかに位置付けられ得る。いくつかの実施形態では、キーとなる層は、吸収性コアと創傷接触層との間に位置付けられる。キーイング層はポリアミドウェブである。
【0125】
本明細書の本タイプの創傷被覆材のより詳細な説明は、EP1718257に提供されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0126】
いくつかの実施形態では、非陰圧創傷被覆材は、圧迫包帯であってもよい。圧迫包帯は、例えば下肢の、浮腫およびその他の静脈障害およびリンパ系障害の治療に使用されることが周知である。
【0127】
圧迫包帯システムは、通常、皮膚と圧迫層との間のパディング層を含む複数層を用いる。圧迫包帯は、静脈性脚潰瘍を処置する、といった、創傷に有用であり得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、圧迫包帯は、内側の皮膚に面する層と、弾性外層を含む包帯システムを備え得、内層は、発泡体の第一の層と、吸収性不織りウェブの第二の層とを含み、内層および外層は、患者の手足周りに巻かれることができるよう、十分細長い。本タイプの圧迫包帯は、国際特許第99/58090号において開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0129】
いくつかの実施形態では、圧迫包帯システムは、a)(i)細長い弾性基板と、
【0130】
(ii)細長い発泡層と、を含む内側の皮膚に面した、細長い弾性包帯であって、発泡層が基板の面に取り付けられ、基板の面を横断方向に33%以上横切って、および、基板の面を長手方向に67%以上横切って延在する、弾性包帯と、b)外側の、細長い、ノンテープ式の弾性包帯であって、包帯が、延在されると圧縮力を有し、使用時には、内側包帯の発泡層が皮膚に面し、外側包帯が内側包帯の上にある、弾性包帯と、を含む。本タイプの圧迫包帯は、国際特許第2006/110527号において開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0131】
いくつかの実施形態では、米国特許第6,759,566号および米国特許第2002/0099318号に開示されているものなど、その他の圧迫包帯システムがそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0132】
陰圧創傷被覆材
いくつかの実施形態では、そのような創傷の治療は、陰圧創傷療法を使用して実施することができ、減圧または陰圧が、創傷の治癒を容易にして促進するように、創傷に印加され得る。本明細書に開示される創傷被覆材および方法は、身体の他の部分に適用されてもよく、創傷の治療に必ずしも限定されないことも、理解されるであろう。
【0133】
本開示の実施形態は、概して、局所陰圧(「TNP(topical negative pressure)」)療法システムで使用するように適用可能であることは理解されるであろう。手短に言えば、陰圧創傷療法は、組織の浮腫を減少させ、血流および顆粒組織形成を促し、過度の滲出液を除去することによって、「治癒が困難な」創傷の多くの形態を閉鎖および治癒するのを補助し、細菌負荷(および、それゆえ感染リスク)を低減してもよい。加えて、治療によって、創傷の不安を減らすことが可能になり、より早期の治癒に導く。TNP療法システムはまた、流体を除去し、閉鎖の並列された位置で組織を安定化するのに役立つことで、外科的に閉じられた創傷の治癒を支援し得る。TNP治療のさらなる有益な使用は、過剰な流体を除去することが重要であり、組織の生存度を確保するために移植片が組織に近接していることが求められる、移植片及びフラップにおいて見出すことができる。
【0134】
陰圧療法は、大きすぎて自然には閉じられない、もしくはそうでなければ、創傷の部位への陰圧の適用では治癒しない、開放創または慢性創傷の治療に使用され得る。局所陰圧(TNP)療法または陰圧創傷療法(NPWT)は、創傷の上に流体に対して不透過性または半透過性の被覆を置くことと、創傷を囲む患者の組織に対して被覆を封止する、様々な手段を使用することと、陰圧を被覆の真下に作り出し維持するような手法で、陰圧の源(真空ポンプなど)を被覆に接続することとを伴う。そのような陰圧は、有害なサイトカインまたは細菌を包含する場合がある、過度の流体を除去しながら同時に、創傷部位で肉芽組織の形成を容易にし、平常の体内炎症プロセスを支援することによって、創傷の治癒を促進すると考えられる。
【0135】
NPWTに使用される被覆材のいくつかは、様々な種類の材料及び層、例えば、ガーゼ、パッド、フォームパッド、または多層創傷被覆材が含まれる。多層創傷被覆材の一例は、NPWTで創傷を治療する、キャニスタなしのシステムを提供するように、裏当て層の下方に創傷接触層および超吸収層を含む、Smith&Nephewから市販されているPICO被覆材である。創傷被覆材は、被覆材から流体を汲み上げるか、またはポンプから創傷被覆材へ陰圧を伝達するように使用され得る、長いチューブへの接続を提供する、吸引ポートに封止され得る。加えて、Smith&Nephewから市販されているRENASYS-F、RENASYS-G、RENASYS-ABおよびRENASYS-F/ABも、NPWT創傷被覆材およびシステムのさらなる例である。多層創傷被覆材の別の例は、陰圧を使用せずに創傷を治療するのに使用される、湿潤創傷環境被覆材を含む、Smith&Nephewから市販されているALLEVYN Life被覆材である。
【0136】
本明細書に使用する通り、-XmmHgなど、減圧または陰圧レベルは、760mmHg(または1atm、29.93inHg、101.325kPa、14.696psiなど)に相当し得る、平常の周囲気圧に対する圧力レベルを表す。したがって、-XmmHgの陰圧値は、760mmHgよりもXmmHg低い絶対圧力、または、言い換えれば、(760-X)mmHgの絶対圧力を反映する。加えて、XmmHgよりも「低い」または「小さい」陰圧は、気圧により近い圧力に相当する(例えば、-40mmHgは-60mmHgよりも低い)。-XmmHgよりも「高い」または「大きい」陰圧は、気圧からより離れた圧力に相当する(例えば、-80mmHgは-60mmHgよりも高い)。いくつかの実施形態では、局所的な周囲気圧は基準点として使用され、そのような局所的な気圧は、必ずしも、例えば、760mmHgでなくてもよい。
【0137】
本開示の一部の実施形態に関する陰圧範囲は、約-80mmHg、または約-20mmHgから-200mmHgの間であり得る。これらの圧力は、760mmHgであり得る、平常の周囲気圧に対して相対的であることには留意されたい。それゆえ、-200mmHgは、実質的には約560mmHgであろう。いくつかの実施形態では、圧力範囲は、約-40mmHgと-150mmHgとの間であり得る。代替として、最高-75mmHg、最高-80mmHgまたは-80mmHgを超える圧力範囲が使用され得る。また、他の実施形態では、-75mmHgを下回る圧力範囲が使用され得る。代替として、およそ-100mmHgまたはさらに-150mmHgより上の圧力範囲が、陰圧デバイスにより供給され得る。
【0138】
本明細書に記載する創傷閉鎖デバイスの一部の実施形態では、創傷収縮の増加が、囲んでいる創傷組織における組織拡張の増加につながり得る。この影響は、場合により、創傷閉鎖デバイスの実施形態によって創傷に適用される引張力の増加と連動して、組織に適用される力を変化させること、例えば、時間と共に創傷に適用される陰圧を変化させることによって増大する場合がある。いくつかの実施形態では、例えば、正弦波、方形波を使用して、または一つまたは複数の患者の生理学的指標(心拍など)と同期して、時間と共に陰圧を変化させてもよい。前述に関するさらなる開示を見つけることができる、そのような適用の例には、2012年8月7日に発行された名称「Wound treatment apparatus and method」の米国特許第8,235,955号、および2010年7月13日に発行された名称「Wound cleansing apparatus with stress」の米国特許第7,753,894号を含む。これら両特許の開示は、参照することによりその全体が本明細書に援用される。
【0139】
本明細書に記載する創傷被覆材、創傷被覆材構成要素、創傷治療装置および方法の実施形態はまた、2013年5月22日に国際出願番号第PCT/IB2013/001469号で出願され、2013年11月28日に国際公開第2013/175306A2号として公開された、名称「APPARATUSES AND METHODS FOR NEGATIVE PRESSURE WOUND THERAPY」、2015年1月30日に米国特許出願第14/418,908号で出願され、2015年7月9日に米国特許出願公開第2015/0190286A1号として公開された、名称「WOUND DRESSING AND METHOD OF TREATMENT」に記載されるものと組み合わせて、またはそれらに加えて使用されてもよく、それらの開示は、参照することによりその全体が本明細書に援用される。本明細書に記載する創傷被覆材、創傷被覆材構成要素、創傷治療装置および方法の実施形態はまた、2011年4月21日に米国特許出願第13/092,042号で出願され、米国特許第2011/0282309号として公開された、名称「WOUND DRESSING AND METHOD OF USE」、および2015年5月18日に米国特許出願第14/715,527号で出願され、2016年11月24日に米国特許出願公開第2016/0339158A1号として公開された、名称「FLUIDIC CONNECTOR FOR NEGATIVE PRESSURE WOUND THERAPY」に記載されるものと組み合わせて、またはそれらに加えて使用されてもよく、それらの各開示は、創傷被覆材の実施形態、創傷被覆材の構成要素および原理、ならびに創傷被覆材に使用される材料に関するさらなる詳細を含め、参照することによりその全体が本明細書に援用される。
【0140】
加えて、本明細書に記載するポンプまたは関連電子機器と組み合わせて、創傷被覆材を含むTNP創傷治療に関係する一部の実施形態はまた、2016年4月26日に国際出願第PCT/EP2016/059329号で出願され、2016年11月3日に国際公開2016/174048号として公開された、名称「REDUCED PRESSURE APPARATUS AND METHODS」に記載されるものと組み合わせて、またはそれらに加えて使用されてもよく、その開示が本明細書全体において参照によって組み込まれる。
【0141】
本明細書に記載する創傷閉鎖デバイスのいくつかの実施形態では、創傷収縮の増加が、囲んでいる創傷組織における組織拡張の増加につながり得る。この影響は、場合により、創傷閉鎖デバイスの実施形態によって創傷に適用される引張力の増加と連動して、組織に適用される力を変化させること、例えば、時間と共に創傷に適用される陰圧を変化させることによって増大する場合がある。さらに、フィラーに近接する組織に対して追加的な影響がある場合があり、例えば、組織は組織を押し下げる弾性フィラーの反力による圧縮下にある。こうした圧縮は、血管の閉塞に起因する局所的な低酸素症をもたらす場合がある。より広い周辺組織では、この拡張は血管拡張につながりうる。さらなる詳細は、2010年5月にWounds Internationalに公開されたMalmsjoおよびBorgquistによる“NPWT settings and dressing choices made easy”に提供され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。例えば、虚血のリスクがない創傷では、創傷被覆材からの圧力によって引き起こされる血流の増加および減少は、創傷治癒におそらく有利である。血流の増加は、組織への酸素および栄養物の供給を改善し、抗生物質の浸透および廃棄物の除去を改善し得る。さらに、血流の減少は血管新生を刺激し、それによって肉芽組織形成を促進し得る。
【0142】
創傷治癒
当業者であれば、特にオイラービデオ倍率(EVM)に関して本明細書に記載される実施形態が、NPWTが関与する状況には単に適用されないことを理解するであろう。むしろ、こうした実施形態は、無傷な組織の評価または創傷への追加的な治療の提供など、NPWTを必ずしも必要としない状況に広く適用可能でありうる。
【0143】
創傷は、創傷がどのように引き起こされるかによって、一般的に開放創または閉鎖創として分類されうる。上述のように、実施形態の詳細に応じて、技術は開放創および閉鎖創の両方に適用されうる。開放創は、切開、裂傷、擦り傷、穿刺、貫通、切断およびその他の手段を含む、さまざまな事象によって引き起こされうる。閉鎖創は、血腫の形成をもたらす血管の損傷、および/または圧潰によって生じる内部損傷によって引き起こされうる。さらに、創傷はさまざまな組織の層を含むことができ、例えば、浅い創傷は皮膚の最も上層のみを含む場合があり、一方で深い創傷は下層の結合組織および脂肪層を含む下皮などの皮下組織層を含みうる。特定の実施形態では、創傷は、皮膚の奥深くにある内臓を包含することさえありうる。圧迫損傷に起因するものなどの特定の創傷は、ずっと後になるまで皮膚の表面に明らかになることなく、深部組織層内で起こりうる。
【0144】
上述のNPWT治療に加えて、創傷は広範な技術および材料によって治療されうる。例えば、創傷はデブリードマンによって治療され、死んだ組織および/または壊死組織を除去しうる。創傷は、乾燥被覆材、湿潤被覆材、化学的に含浸された被覆材、発泡体被覆材、ヒドロゲル被覆材、親水コロイド被覆材、フィルム被覆材、およびその他の適切な被覆材を含む、様々な種類の被覆材を用いて治療されうる。創傷は、抗菌剤、成長因子、抗炎症剤、鎮痛薬、およびその他の適切な治療などの生理活性分子でさらに治療されうる。かかる治療は、前述の被覆材に組み込まれてもよい。
【0145】
創傷および創傷治療、特に圧迫損傷によって引き起こされる創傷に関するさらなる詳細は、2017年3月にMedscapeに発表されたKirmanらによる“Pressure Injuries(Pressure Ulcers)and Wound Care”の記事に見出すことができ、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。例えば、褥瘡になりやすい人として最も一般的なのは、高齢者、慢性的疾患のある人(例えば、ガン、脳卒中、または糖尿病など)、動けない人(例えば、骨折、関節炎、または疼痛の結果)、弱者または衰弱した人、精神状態が変化する患者(例えば、麻薬、麻酔または昏睡の影響で)、および/または感覚の低下または麻痺を伴う人が挙げられる。可能性のある二次的因子として、褥瘡形成を増加させる疾患または衰弱、発熱(代謝要求の増加)、虚血の素因、皮膚の浸軟を促進する発汗、皮膚刺激と汚染を引き起こす失禁、浮腫、黄疸、掻痒症、および乾皮症(乾燥肌)が挙げられる。加えて、褥瘡損傷の予防には、計画的な身体の回転、適切なベッドの配置、骨性突起の保護、スキンケア、痙縮(spascity)の制御および拘縮の予防、保持面/専門のベッドの使用、栄養サポート、および現在の活動レベル、可動性、および可動域の維持が含まれうる。
【0146】
陰圧システム
図1は、創腔110であって、創傷カバー120によって封止された創腔の内部に置かれた創傷充填材130を備える、陰性のまたは低減された圧力創傷治療(またはTNP)システム100の実施形態を示す。創傷カバー120と組み合わされた創傷充填材130は、創傷被覆材として言及され得る。単一または複数の内腔管または導管140は、創傷カバー120と、減圧圧力を供給するように構成されるポンプアセンブリ150とを接続する。創傷カバー120は、創腔110に流体連通することができる。図1に示される実施形態のような本明細書で開示されるいくつかのシステムの実施形態において、ポンプアセンブリは、キャニスタレスポンプアセンブリ(滲出液が、創傷被覆材に集められる、または別の位置に集めるために管140を介して運ばれることを意味する)であることができる。しかし、本明細書で開示されるいくつかのポンプアセンブリの実施形態は、キャニスタを含むまたは支持するように構成され得る。追加的に、本明細書で開示されるいくつかのシステムの実施形態において、いくつかのポンプアセンブリの実施形態は、被覆材に取付けられ、もしくは被覆材によって支持され、または被覆材に隣接することができる。
【0147】
創傷充填材130は、例えば、親水性または疎水性発泡体、ガーゼ、膨張可能なバッグ等の任意の適切なタイプであることができる。創傷充填材130は、それが実質的に空洞を充填するように、創腔110に適合することができる。創傷カバー120は、創腔110を覆う実質的に流体不浸透性の封止を提供することができる。創傷カバー120は、頂側および底側を有することができ、底側は、創腔110を粘着的に(または任意のその他の適切な手法において)封止する。本明細書で開示される導管140もしくは内腔またはいくつかのその他の導管もしくは内腔は、ポリウレタン、PVC、ナイロン、ポリエチレン、シリコン、または任意のその他の適切な材料から形成され得る。
【0148】
創傷カバー120の一部の実施形態は、導管140の端を受けるように構成される、ポート(図示せず)を有し得る。例えば、ポートは、Smith&Nephewから入手可能なRenays Soft Portであることができる。その他の実施形態では、導管140は、別のやり方では、創腔内に目標のまたは所望のレベルの減圧圧力を維持するように、減圧圧力を創腔110に供給するために創傷カバー120を通り抜けるまたはその下にあることができる。導管140は、ポンプアセンブリ150によって提供される減圧圧力を創腔110に供給するように、ポンプアセンブリ150と創傷カバー120との間に少なくとも実質的に密封された流体流路を提供するように構成される、任意の好適な物品であることができる。
【0149】
創傷カバー120および創傷充填材130は、単一な物品または一体型の単一なユニットとして提供され得る。いくつかの実施形態では、創傷充填材が提供されずに、創傷カバーがそれ自体として創傷被覆材とみなされてもよい。ついで、創傷被覆材は、導管140を介して、ポンプアセンブリ150といった陰圧源に接続され得る。ポンプアセンブリ150は小形化され、持ち運び可能とすることができるが、より大きな従来のそのようなポンプがまた使用されてもよい。
【0150】
創傷カバー120は、治療されることになる創傷部位の上に置かれ得る。創傷カバー120は、創傷部位を覆う実質的に密封された空洞またはエンクロージャを形成することができる。いくつかの実施形態では、創傷カバー120は、過剰流体の蒸発を可能にする高い水蒸気浸透性を有するフィルムを有するように構成されることができ、また創傷滲出液を安全に吸収するためにその中に含まれる超吸収性材料を有することができる。本明細書全体を通して、創傷に関して言及することが理解されるであろう。この点において、創傷という用語は広く解釈され、皮膚が断裂、切開、もしくは穿孔される、または外傷によって挫傷が引き起こされる開放創および閉鎖創、あるいは患者の皮膚における任意の他の表面もしくは他の状態または欠陥、あるいは減圧治療によって利益を得る他のものを包含することを理解されたい。よって、創傷は、流体が生成されることもされないこともある、組織の任意の損傷領域として広く定義される。そのような創傷の例としては、急性創傷、慢性創傷、外科切開およびその他の切開、亜急性および裂開創傷、外傷性創傷、フラップおよび皮膚移植片、裂傷、擦傷、挫傷、火傷、糖尿病性潰瘍、褥瘡性潰瘍、ストーマ、外科創傷、外傷性潰瘍および静脈性潰瘍などが挙げられるが、それらに限定されない。本明細書に記載のTNPシステムの構成要素は、少量の創傷滲出液を滲出する切開創傷に特に適し得る。
【0151】
システムの一部の実施形態は、滲出液キャニスタを使用することなく動作するように設計される。いくつかの実施形態は、滲出液キャニスタを支持するように構成され得る。いくつかの実施形態では、チューブ140がポンプアセンブリ150から迅速にかつ容易に取り除かれ得るようにポンプアセンブリ150およびチューブ140を構成することは、必要な場合、被覆材またはポンプを交換するプロセスを容易にする、または改善することができる。本明細書で開示されるいくつかのポンプの実施形態は、管材料とポンプとの間の任意の好適な接続を有するように構成され得る。
【0152】
ポンプ組立品150は、一部の実装において、およそ-80mmHg、または約-20mmHg~200mmHgの陰圧を供給するように構成され得る。これらの圧力は、正常な大気圧に対する相対値であり、つまり、-200mmHgは、実際に則した用語において、約560mmHgであり得ることに留意されたい。圧力範囲は約-40mmHgから-150mmHgの間であり得る。代替として、最高-75mmHg、最高-80mmHgまたは-80mmHgを超える圧力範囲が使用され得る。また、-75mmHgを下回る圧力範囲が使用され得る。別の方法として、およそ-100mmHgまたはさらに150mmHgより上の圧力範囲が、ポンプアセンブリ150により供給され得る。
【0153】
動作時に、創傷充填材130は、創腔110内に挿入され、創傷カバー120は、創腔110を密封するように配置される。ポンプアセンブリ150は、創傷充填材130を介して創腔110に送られる陰圧源を創傷カバー120に提供する。流体(例えば、創傷滲出液)は、導管140を通して引き出され、キャニスタ内に貯蔵され得る。いくつかの実施形態では、流体は、創傷充填材130または一つまたは複数の吸収性の層(図示せず)によって吸収される。
【0154】
本出願のポンプ組立品およびその他の実施形態とともに利用され得る創傷被覆材は、Smith&Nephewから入手可能なRenasys-F、Renasys-G、Renasys ABおよびPico被覆材を含む。本出願のポンプ組立品およびその他の実施形態とともに使用され得る陰圧創傷療法システムのこうした創傷被覆材およびその他の構成要素のさらなる説明は、米国特許公開第2011/0213287号、第2011/0282309号、第2012/0116334号、第2012/0136325号および第2013/0110058号において見出され、それらの全体が参照により援用される。その他の実施形態では、その他の好適な創傷被覆材が利用され得る。
【0155】
ポンプアセンブリおよびキャニスタ
図2Aは、一部の実施形態によるポンプアセンブリ230およびキャニスタ220の前方図を示す。示されるように、ポンプ組立品230とキャニスタが接続されて、それにより、陰圧創傷療法デバイスを形成する。ポンプ組立品230は、一部の実施形態におけるポンプ組立品150と類似し、またはそれと同一であり得る。
【0156】
ポンプ組立品230は、警報を示すように構成される視覚的指標202およびTNPシステムの状態を示すように構成される視覚的指標204などの一つまたは複数の指標を含む。指標202および204は、通常のまたは適切な動作状態、ポンプ停止、ポンプまたは停電に供給される電力、創傷カバーまたは流れ経路内の漏れの検出、吸引閉塞、またはいくつかのその他の同様のまたは適切な状態またはそれらの組み合わせをユーザに警報することを含む、システムの様々な動作または停止状態を患者または医療提供者などのユーザに警報するように構成され得る。ポンプアセンブリ230は、追加的なインジケータを備えることができる。ポンプアセンブリは、単一のインジケータまたは複数のインジケータを使用することができる。任意の好適なインジケータは、例えば、視覚的な、聴覚的な、触覚的なインジケータ等として使用され得る。インジケータ202は、例えば、キャニスタフル、低電力、導管140の接続解除、創傷シール120におけるシール破壊等の警報状態を示すように構成され得る。インジケータ202は、ユーザの注意を引くために赤のせん光を表示するように構成され得る。インジケータ204は、例えば、療法送達は正常である、漏れが検出された、等のTNPシステムの状態を示すように構成され得る。インジケータ204は、例えば、緑、黄などの一つまたは複数の異なる色の光を表示するように構成され得る。例えば、緑色の光は、TNPシステムが適切に動作している時に放出されてもよく、黄色の光は、警報を示すために放出され得る。
【0157】
ポンプアセンブリ230は、ポンプアセンブリの場合に形成されるくぼみ208に取り付けられる、ディスプレイまたはスクリーン206を含む。ディスプレイ206は、タッチスクリーンディスプレイであってもよい。ディスプレイ206は、取扱い説明ビデオなどの視聴覚(AV)コンテンツの再生を支持することができる。以下で説明されるように、ディスプレイ206は、いくつかのスクリーンまたはグラフィカルユーザインターフェース(GUI)がTNPシステムの動作を構成する、制御する、および監視するように構成され得る。ポンプアセンブリ230は、ポンプアセンブリのケースに形成されたグリップ部分210を備える。グリップ部分210は、例えば、キャニスタ220の取り外しの間などに、ユーザがポンプアセンブリ230を保持することを支持するように構成され得る。キャニスタ220は、例えば、キャニスタ220が流体で充填された時などに、別のキャニスタと取り替えられ得る。
【0158】
ポンプアセンブリ230は、ユーザがTNPシステムの動作を操作し、および監視することを可能にするように構成される、一つまたは複数のキーまたはボタンを含む。示されるように、これには、ボタン212a、212bおよび212c(集合的にボタン212として言及される)が含まれる。ボタン212aは、ポンプアセンブリ230の電源を入れる/切るための電源ボタンとして構成され得る。ボタン212bは、陰圧療法の供給のためのプレイ/ポーズボタンとして構成され得る。例えば、ボタン212bを押すことにより、療法を開始することができ、その後ボタン212bを押すことにより、療法を停止または終了することができる。ボタン212cは、ディスプレイ206またはボタン212をロックするように構成され得る。例えば、ボタン212cは、ユーザが故意でなく療法の供給を変えることがないように押され得る。ボタン212cは、制御をアンロックするために押下され得る。その他の実施形態では、追加的なボタンが、用いられてもよく、または示したボタン212a、212bまたは212cのうち一つまたは複数が、省かれてもよい。複数のキーの押下または連続的なキーの押下は、ポンプアセンブリ230を動作させるために使用され得る。
【0159】
ポンプアセンブリ230は、カバーに形成される一つまたは複数のラッチ凹部222を含む。例示的実施形態では、二つのラッチ凹部222は、ポンプアセンブリ230の側部に形成され得る。ラッチ凹部222は、一つまたは複数のキャニスタラッチ221を使用してキャニスタ220の取付けおよび分離を可能にするように構成され得る。ポンプアセンブリ230は、創腔110から取り除かれる空気が漏れ出ることを可能にするための空気出口224を備える。ポンプアセンブリに入る空気は、抗菌フィルタなどの一つまたは複数の適切なフィルタを通り抜けることができる。これは、ポンプアセンブリの再利用性を維持することができる。ポンプアセンブリ230は、ポンプアセンブリ230に携帯ストラップを接続するための、または受け台を取付けるための一つまたは複数のストラップ取付け部226を含む。例示的実施形態では、二つのストラップ取付け部226は、ポンプアセンブリ230の側部に形成され得る。いくつかの実施形態では、種々のこれらの特徴は省かれ、または種々の追加的な特徴がポンプアセンブリ230に加えられる。
【0160】
キャニスタ220は、創腔110から取り除かれる流体(例えば、滲出液)を保持するように構成される。キャニスタ220は、キャニスタをポンプアセンブリ230に取付けるための一つまたは複数のラッチ221を含む。例示的実施形態では、キャニスタ220は、キャニスタの側部に二つのラッチ221を備える。キャニスタ220の外部は、キャニスタが実質的に不透明であり、またキャニスタの中身が平面視で実質的に隠されるように、つや消しプラスチックから形成され得る。キャニスタ220は、キャニスタのケースに形成されるグリップ部分214を備える。グリップ部分214は、例えば、装置230からのキャニスタの取り外しの間などに、ユーザがポンプアセンブリ220を保持することを可能にするように構成され得る。キャニスタ220は、実質的に透明な窓216を含み、それはまた、量の目盛りを含むことができる。例えば、示される300mLのキャニスタ220は、50mL、100mL、150mL、200mL、250mLおよび300mLの目盛りを含む。キャニスタのその他の実施形態は、異なる量の流体を保持することができ、異なる目盛り尺度を含むことができる。例えば、キャニスタは、800mLのキャニスタであることができる。キャニスタ220は、導管140に接続するための管状のチャネル218を備える。いくつかの実施形態では、グリップ部分214などの種々のこれらの特徴は省かれ、または種々の追加的な特徴がキャニスタ220に加えられる。いくつかの開示されるキャニスタは、凝固剤を含んでもよく、または凝固剤を省いてもよい。
【0161】
図2Bは、一部の実施形態によるポンプアセンブリ230およびキャニスタ220の背面図を示す。ポンプ組立品230は、音を生成するためのスピーカーポート232を備える。ポンプアセンブリ230は、フィルタアクセスドア234を含み、そのドアは、アクセスドア234を取り外し、抗菌または臭気フィルタなどの一つまたは複数のフィルタと連通し、それを取り替えるためのねじを有する。ポンプアセンブリ230は、ポンプアセンブリのケースに形成されたグリップ部分236を備える。グリップ部分236は、例えば、キャニスタ220の取り外しの間などに、ユーザがポンプアセンブリ230を保持することを可能にするように構成され得る。ポンプアセンブリ230は、表面上にポンプアセンブリ230を配置するためのねじカバーまたは足部またはプロテクターとして構成される、一つまたは複数のカバー238を含む。カバー230は、ゴム、シリコンまたは任意のその他の適切な材料で形成され得る。ポンプアセンブリ230は、ポンプアセンブリの内部バッテリーを充電および再充電するための電源ジャック239を備える。電源ジャック239は、直流(DC)ジャックであることができる。いくつかの実施形態では、ポンプ組立品は、電源ジャックが必要ないように、バッテリーなどの使い捨て可能な電源を備え得る。
【0162】
キャニスタ220は、表面上にキャニスタを配置するための一つまたは複数の足部244を含む。足部244は、ゴム、シリコンまたは任意のその他の適切な材料で形成されてもよく、キャニスタ220が表面上に配置された時に安定した状態を保つように適切な角度に角度付けられてもよい。キャニスタ220は、一つまたは複数の管がデバイスの前部へと抜け出ることを可能にするように構成される、管取付けレリーフ246を備える。キャニスタ220は、キャニスタが表面上に配置された時にキャニスタを支持するためのスタンドまたはキックスタンド248を含む。以下で説明されるように、キックスタンド248は、開位置と閉位置との間で旋回することができる。閉位置において、キックスタンド248は、キャニスタ220にラッチされ得る。いくつかの実施形態では、キックスタンド248は、プラスチックなどの不透明材料から作られ得る。その他の実施形態では、キックスタンド248は、透明材料から作られ得る。キックスタンド248は、キックスタンドに形成されるグリップ部分242を含む。グリップ部分242は、ユーザがキックスタンド248を閉位置に位置付けることを可能にするように構成され得る。キックスタンド248は、孔249を含み、それは、ユーザがキックスタンドを開位置に位置付けることを可能にする。穴249は、ユーザが指を用いてキックスタンドを伸ばすことが可能となるようにサイズ設定され得る。
【0163】
図2Cは、一部の実施形態によるキャニスタ220から分離されたポンプアセンブリ230を示す。ポンプ組立品230は、真空ポンプがそれを通じてキャニスタ220に陰圧を伝達する、真空アタッチメント、コネクタまたは入口252を含む。ポンプアセンブリは、入口252を介して創傷からのガスなどの流体を吸い出す。ポンプアセンブリ230は、一つまたは複数のUSBポートへのアクセスを可能にするように構成される、USBアクセスドア256を備える。いくつかの実施形態では、USBアクセスドアが省かれ、またUSBポートはドア234を通じてアクセスされる。ポンプアセンブリ230は、例えば、SD、コンパクトディスク(CD)、DVD、ファイアワイア、サンダーボルト、PCIエクスプレスなどの追加的なシリアル、パラレル、またはハイブリッドデータ転送インターフェースへのアクセスを可能にするように構成される、追加的なアクセスドアを含むことができる。その他の実施形態では、これらの追加的なポートのうち一つまたは複数は、ドア234を通じてアクセスされる。
【0164】
オイラービデオ倍率
「オイラービデオ倍率」(EVM)と呼ばれる技術を使用して、経時的なピクセルのわずかな変化を分析するための新しい技術が開発された。EVMは、経時的なピクセルのこれらの極めて小さな変化を増幅するように機能するため、これまで検出不能だった変化の検出を可能にする。例えば、EVMは光学カメラによって撮られたものなどの標準ビデオに適用されてもよい。ビデオに撮られた物体および/または人物の状態の微小な視覚的変化は、EVMによって増幅されて検出されうる。例えば、EVMは、新生児や乳児などの皮膚下の血流または呼吸を検出できる。EVMに関するさらなる詳細は、マサチューセッツ工科大学が発表したWuらによる“Eulerian Video Magnification for Revealing Subtle Changes in the World”と題された記事に提供されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0165】
EVMは、ビデオ(ピクセルなど)内の空間位置のわずかな変化を経時的に増幅する役目を果たす。そのような微妙な変化は裸眼に見えない場合があるが、通常の視野およびモニタリングの下で検出不能な微小の現象を、EVMは検出することができる。こうしたビデオは、任意の適切な手段を介して収集することができ、単に可視光スペクトル内で収集されたビデオに限定されない。例えば、カメラ、電荷結合素子(CCD)、酸素飽和(spO2)検出器、磁気共鳴画像法、X線撮像、赤外線撮像または任意の形態のビデオデータ収集を介して経時的にビデオを収集しうる。ピクセル値の増幅された変化は、色、動き、またはビデオのタイプに応じたその他任意の適切な変化による、変化の結果である場合がある。例えば、特定の領域でのspO2測定のビデオは、色などの値として出力される場合があるため、こうしたビデオに適用されるEVMは、spO2の微妙な変化を検出することができる。上記のとおり、EVMに関するさらなる詳細は、マサチューセッツ工科大学が発表したWuらによる“Eulerian Video Magnification for Revealing Subtle Changes in the World”と題された記事に提供されている。
【0166】
Wuらにより説明されるように、空間および時間処理は、ビデオの微妙な時間的変化を強調するために使用され得る。このプロセスの実施形態を図3に示す。簡潔に述べると、EVMシステム300は、入力ビデオシーケンス302を最初に304、異なる空間周波数バンド306に分解し、同じ時間的フィルタをすべてのバンド308に適用する。次に、フィルタリングされた空間バンド310は、所与の係数α312によって増幅され、元の信号314に戻され、折り畳まれて出力ビデオ316を生成する。
【0167】
Wuにより説明されるように、ビデオシーケンスはまず異なる空間周波数バンドに分解される。これらのバンドは、(a)異なる信号対雑音比を呈する可能性があるため、または(b)動作倍率について後述する線形近似が成り立たない空間周波数を含む可能性があるため、異なって拡大される場合がある。後者の場合、これらのバンドの増幅を減少させて、アーチファクトを抑制することができる。空間処理の目的が、複数のピクセルをプールすることによって一時的な信号対雑音比を単に増加させることである場合、ビデオのフレームは、空間的にローパスフィルタにかけられ、計算効率のために低解像度処理されうる。しかしながら、一般的な場合には、完全なラプシアンピラミッド[Burt and Adelson 1983]を実施し、それに続いて各空間バンドで時間処理を行うことができる。周波数バンドのピクセル値に対応する時系列が考慮され、バンドパスフィルタを適用して、対象の周波数バンドを抽出してもよい。例えば、パルスを拡大したい場合、24~240ビート/分に対応する0.4~4Hz以内の周波数を選択してもよい。パルス速度を抽出できる場合は、その値の周りの狭いバンドを使用できる。時間処理は、すべての空間レベルに対して、および各レベル内のすべてのピクセルに対して均一である。次に、抽出されたバンドパス信号に倍率を掛ける。この係数はユーザによって指定でき、下記のガイドラインに従って自動的に減衰されうる。可能性のある時間フィルタも以下に考察する。次に、拡大された信号を元の信号に追加し、空間ピラミッドを折り畳んで、最終出力を得る。自然なビデオは空間的および時間的に滑らかであり、フィルタリングはピクセル全体で均一に実施されるため、この方法は得られた空間的一貫性を間接的に維持する。
【0168】
時間処理と動作倍率との関係を説明するために、並進運動する1D信号の単純なケースを考える。この分析は、2Dにおける局所並進運動に直接一般化する。I(x;t)は、位置xおよび時間tでの画像強度を示す。画像は並進運動をするため、変位関数δ(t)に対して観察された強度は、I(x;t)=f(x+δ(t))およびI(x;0)=f(x)で表すことができる。動作倍率の目的は、
【0169】
【数1】
【0170】
ある増幅因子αの信号を合成することである。
【0171】
画像が、一次テイラー級数展開によって近似させることができると仮定すると、以下のように、xについての一次テイラー展開で時間t、f(x+δ(t))で画像を書き込む。
【0172】
【数2】
【0173】
B(x;t)を、ブロードバンド時間バンドパスフィルタを、すべての位置xで、I(x;t)に適用した結果とする(上記の式でf(x)を除くすべてを選択する)。ここでは、動作シグナル(t)が時間バンドパスフィルタのパスバンド内にあると仮定する(後でこの仮定を緩和する)。その後、以下を有する。
【0174】
【数3】
【0175】
プロセス中、そのバンドパス信号をI(x;t)で増幅し、そしてそれをI(x;t)に戻し、処理された信号を以下のように得る。
【0176】
【数4】
【0177】
以前の方程式を組み合わせることで、以下を有する。
【0178】
【数5】
【0179】
一次テイラー展開が、増幅されたより大きな摂動(1+α)δ(t)に対して成立すると仮定すると、時間バンドパス信号の増幅を動作倍率に関連付けることができる。処理された出力は単に以下のようになる。
【0180】
【数6】
【0181】
これは、処理が動作を拡大すること――時間tでのローカル画像f(x)の空間変位δ(t)が、(1+α)の大きさに増幅されたことを示す。低周波余弦波および比較的小さな変位(t)については、一次テイラー級数展開は、時間t+1で変換信号に対する適切な近似として機能する。時間的信号をブーストしてI(x;t)に戻す場合、(1+α)δによって変換された波を近似する。急速に変化する画像関数(すなわち、高空間周波数)f(x)の場合、一次テイラー級数近似は、摂動1+αδ(t)の大きな値については不正確になり、これは拡大率および動作δ(t)が大きくなると増加する。
【0182】
空間周波数ωの関数として、観測された動作δ(t)が与えられると、動作増幅因子αがどれだけ大きくなるかのガイドを導き出すことができる。処理された信号I(x、t)が、真の倍率動作I(x,t)にほぼ等しくなるように、以下の条件を求める。
【0183】
【数7】
【0184】
余弦の追加法および以下の近似の使用によるさらなる再構成は、
【0185】
【数8】
【0186】
以下のガイドラインにつながる。
【0187】
【数9】
【0188】
このガイドラインは、所与のビデオ動作δ(t)および画像構造空間波長λの正確な動作倍率に適合する最大動作増幅因子αを提供する。一部のビデオでは、近似制限に違反することが知覚的に好ましい場合があり、マルチスケール処理ではユーザ修正可能パラメータとしてλカットオフを残す。
【0189】
いくつかの実施形態では、オイラービデオ倍率により入力ビデオを処理するために、ユーザは四つのステップを踏む必要がある。(1)時間バンドパスフィルタを選択する、(2)増幅因子αを選択する、(3)αの減衰バージョンを使用する空間周波数カットオフ(空間波長λcで特定)を選択する、(4)αの減衰の形態を選択し、すべてのλ<λcに対してαを強制的にゼロまで下げるか、αを直線的にゼロに縮小する。対象の周波数バンドは、一部の場合には自動的に選択することができるが、ユーザにとって、それらのアプリケーションに対応する周波数バンドを制御できることは、しばしば重要である。リアルタイムのアプリケーションでは、増幅因子およびカットオフ周波数はすべて、ユーザによってカスタマイズ可能である。
【0190】
当業者であれば、本明細書の本部分および明細書全体を通して使用される「色」という用語の使用は、光学スペクトルを表すだけではないことを理解するであろう。「色」という語は、スペクトル周波数範囲を識別するために時々口語的に使用されてもよい(これは可視範囲であってもなくてもよい)。当業者であれば、実施形態において、本明細書に記述した技術は、例えば、緑/赤の変化を検出することによって、EVMを使用することなく機能することもできることをさらに理解するであろう。しかしながら、EVMを用いないこのようなシステムは、感度の著しい低下を有しうる。
【0191】
無傷な組織部位または創傷の評価について特に興味深いのは、いくつかの実施形態では、オイラービデオ倍率を使用して、CCDカメラまたはRGB色検出器から収集されたビデオを用いて、色に関するピクセル値のわずかな変化を増幅することができる。いくつかの実施形態では、カメラまたはRGB色検出器を、一つまたは複数の標準LEDと組み合わせて、視覚化のために創傷に光を当てることができる。例えば、無傷な皮膚パッチまたは創傷床内では、色の変化が好ましい血流を示す場合がある。例えば、色検出を介した赤色スペクトルの値は、血流を示し得るため、色のピーク値とトラフ値の差が小さい場合、それはほとんど血流がないことを示唆している。逆に、ピーク値とトラフ値との間の差が比較的高い場合、これは組織領域への良好な血流を示し得る。
【0192】
さらに、値の赤が弱い場合、酸素が不十分である可能性がある。いくつかの実施形態ではさらに、色を使用して、(またはSP02を直接検出するために改変された光源で)血液酸素の表示を生成し、治療中に毛細管が損傷する可能性を最小限に抑え、失血が起こる場合には警報として作用し、NPWTの適用によって引き起こされる可能性のある潜在的な損害を潜在的に軽減しうる。いくつかの実施形態では、創傷近くの皮膚でEVMを使用して、隣接する皮膚の動きを監視し、血液パルスが関心領域に到達しているかどうかを特定することができる。有利なことに、創傷または組織内の潜在的な問題を特定するために絶対値を監視する必要はなく、代わりに値の差を監視すれば十分である。
【0193】
圧迫損傷の監視と治療
圧迫損傷(褥瘡または床ずれとしても知られる)は、圧力によって引き起こされる血流の妨げに起因する皮膚および/または下層組織などの軟組織の損傷である。圧迫損傷は、高齢者または身体障害者などの可動性が限られている患者において一般的である。褥瘡に特になりやすいのは、ベッドまたは車椅子などの特定の場所に限られる患者である。医学分野で特に興味深いのは、褥瘡の特定が、重篤な損傷になる前の早期になされることである。しかしながら、下層組織に対する初期段階の損傷によって、潜在的な圧迫損傷が形成される領域を特定することが困難であることが多い。こうした損傷は、臨床医によって裸眼で検出されない場合があるが、EVMがサポートする監視システムによって検出可能でありうる。
【0194】
図4は、褥瘡検出のためのシステムの実施形態を示す。しかしながら、当業者であれば、こうしたシステムが、その他の潜在的な損傷または皮膚状態に簡単に適用されうることを理解するであろう。さらに、図4に関連して本明細書に記述したシステムは、無傷な組織に限定されず、このようなシステムは開放創にも適用されうる。
【0195】
図4は、EVMを組み込んだモニタリングおよび療法システム1000の実施形態を示す。センサ構築物1002は、対象の組織部位の上に位置付けられうる。いくつかの実施形態において、センサ構築物1002は、一つのセンサ、二つのセンサ、三つのセンサ、四つのセンサ、五つのセンサ、少なくとも約10個のセンサ、少なくとも約20個のセンサ、または20個を超えるセンサを含みうる。センサ構築物は、組織部位の上方、組織部位に対して斜めに、組織部位の下、患者の下方、または任意の適切な位置に位置付けることができる。いくつかの実施形態では、センサ構築物は、特定の組織部位または患者全体のビデオを収集しうる。
【0196】
当業者であれば、センサ構築物が特定の形態または形状に限定されないことを理解するであろう。例えば、センサ構築物は、取り付けられたカメラ、自由に保持されたカメラ、またはスマートフォンの形態であってもよい。センサ構築物は、被覆材の一部、または病院用ベッドもしくは車椅子の一部であってもよい。いくつかの実施形態では、センサ構築物は、毛布、ベッドシステム、シーツ、および/または衣服内に含まれる光ファイバーの束の形態であってもよい。こうした形態は、ベッドに限られた限定された可動性の患者のより良好な視覚化を可能にしうる。いくつかの実施形態では、センサを毛布または衣服の上に配置し、IRなどの不透明物体によって制限されていない視覚化技術を利用することができる。こうした非限定的なセンサ構築物は、病院用ベッドまたは椅子の下に置かれてもよく、ベッドの下側を通して患者の視覚化を提供する。センサ構築物は、患者と密接に接触する詳細情報を提供する圧力マットの形態であってもよい。
【0197】
いくつかの実施形態では、センサは、pH、温度、光、導電率、インピーダンス、静電容量、または創傷のその他の特性などの情報を収集しうる。いくつかの実施形態では、センサは、血流、創傷の湿潤または乾燥、乳酸レベル、または創傷のその他の特性についての情報を提供することができる。いくつかの実施形態では、すべてのセンサの様式は、システムに組み込まれてもよく、温度、pH、酸素、二酸化炭素、ミリ波周波数、導電率、インダクタンス、乳酸、メタロマトリックスプロテアーゼ(metallomatrix protease)、成長因子、赤外線および紫外線周波数と蛍光を含む光吸収および反射、感染(細菌負荷および細菌の種類)、または組織/創傷環境のその他の特性などのパラメータを測定するよう構成されうる。特定の実施形態では、変換器を有するまたは有さない超音波センサを使用しうる。
【0198】
いくつかの実施形態では、サーミスタまたは熱電対は、RGBセンサ/CCDおよび上述の光源の代わりに使用されうる。こうしたセンサのグリッドまたはマトリクスは、組織に取り付けられ、密接に結合されうる。これらは、その他のセンサ(例えば、光学またはEEG/ECG)と協調して、環境の温度雑音から心拍数を分離させることができる(すなわち、心拍数の頻度で発生する温度変化を特定する)。
【0199】
いくつかの実施形態では、磁場および/またはRF信号の生成のためのコイルは、CCD/RGBセンサの代わりに、またはCCD/RGBセンサに加えて、被覆材内または患者に近接して配置されうる。コイルは、被覆材内で入れ子にされるかまたはオフセットして同軸に取り付けることができる。いくつかの実施形態では、コイルを収容するために別個のプローブを使用してもよく、このようなプローブは組織に対して保持され、有線または無線接続によって信号を送信してもよい。特定の実施形態では、一つまたは複数の加速度計は、追加的なデータ入力に使用されうる。ウォブルスイッチおよび/またはジャイロスコープも使用されうる。
【0200】
上記のように、光学センサを使用して、照射源のあるRGBセンサを使用して、創傷の外観を測定することができる。特定の実施形態では、別の適切な光学センサを使用してもよい。RGBセンサおよび照射源の両方は、光が組織中に透過し、組織自体のスペクトル特性を呈するように、皮膚に押し付けることができる。組織内の光伝播は、二つの主要な現象である、散乱および減弱によって支配される。減弱に対して、光が組織を通過するとき、組織の様々な構成要素による吸収のために、強度が損なわれる。青色光は、大きく減衰する傾向がある一方、スペクトルの赤末端の光は、最も減衰が少ない傾向がある。
【0201】
散乱過程はより複雑であり、考慮しなくてはならない様々な「レジーム」を有する。散乱の第一の態様は、入射光の波長と比較した、散乱中心のサイズに基づく。散乱中心が光の波長よりもかなり小さい場合、レイリー散乱が想定され得る。散乱中心が光の波長ほどである場合、より詳細なミー散乱の定式化を考慮しなくてはならない。散乱光に関与する別の要素は、散乱媒質の投入と排出との間の距離である。光の平均自由行程(散乱事象間の距離)が、動く距離よりもかなり長い場合、弾道的光子輸送が想定される。組織の場合、スキャット事象はおよそ100ミクロン離れているため、1mmの行程距離により、光子の方向を効果的にランダム化し、システムは拡散性レジームに入るであろう。
【0202】
超高輝度発光ダイオード(LED)、RGBセンサ、およびポリエステル光フィルタを、光学センサの構成要素として使用して、組織色の分化を測定しうる。FIRの赤外線および/またはNIRも使用しうる。例えば、表面の色は反射光から測定し得るため、色は、所与の形状に対して最初に組織を通過した光から測定され得る。これは、拡散した散光、すなわち、皮膚と接触するLEDからの色の感知を含み得る。いくつかの実施形態では、LEDは、組織を通って拡散した光を検出するように、すぐ近くのRGBセンサと共に使用され得る。光学センサは、拡散した内部の光または表面反射光で撮像し得る。光学センサは、自己蛍光を測定するためにも使用され得る。組織は一つの波長で光を吸収し、別の波長で放出しているため、自己蛍光が使用される。加えて、死んだ組織は自己蛍光を発することができないため、これは、組織が健康か否かに関する非常にはっきりとした指標となり得る。そのような浅い侵入深さを有する青色光(または、さらにUV光)によって、例えば、非常に特有の波長で自己蛍光を発するであろう健康な組織に対して、バイナリテストとして働くように、すぐ近くの赤に敏感なフォトダイオード(または、一部の他の波長をシフトする周波数帯)によるUV光を有することは、非常に有用である場合がある。特定の実施形態では、RGBWセンサを使用してもよいが、RGおよびBの相対値を正規化するためにベースラインとして白色チャネルを利用する。
【0203】
図4の実施形態に戻ると、センサ1004を有するセンサ構築物1002は、組織部位1006の上に位置付けられうる。センサ1004は、任意の適切な有線または無線手段を介して、コントローラ1014と通信1012しうる。特定の実施形態では、センサ構築物、センサ、およびコントローラはすべて、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所で開示されているような、スマートフォン、タブレット、またはその他の適切なコンピューティング装置などの一つの統合装置であってもよい。いくつかの実施形態では、センサ構築物およびコントローラは、物理的に分離されてもよい。
【0204】
センサからコントローラへの通信は、コントローラがセンサからの情報を受信するのみの一方向であってもよい。しかしながら、別の方法として、センサとコントローラとの間の通信1012は、センサがコントローラに情報を送るが、コントローラからも命令および/または情報を受信する双方向であってもよい。次いで、コントローラ1014は、有線または無線手段を介して、陰圧源1010と通信し得る。警報要素1010は、警報を提供するように構成された任意の適切な装置であってもよい。例えば、警報は、聴覚、触覚または視覚のうちの一つまたは複数としうる。警報は、圧迫損傷が形成されるか、または既に形成されていることを介護者に示す。このような警報により、介護者は、回転、ストレス緩和、治療の実行、またはその他の適切な手段などによって、患者の圧力負荷軽減に関与するなど、圧迫損傷を回避するための予防的措置を講じることができるようになる。
【0205】
いくつかの実施形態では、警報要素は、センサ構築物、センサ、コントローラ、および警報要素を有する単一の統合デバイスの一部であってもよい。例えば、こうした装置は、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所で開示されるようなスマートフォン、タブレット、またはその他の適切なコンピューティング装置であってもよい。特定の実施形態では、警報要素はセンサおよびコントローラから物理的に分離される。しかしながら、さまざまな実施形態では、警報要素がセンサ構築物と統合されるが、コントローラとは統合されない場合があり、または警報要素がコントローラと統合されるが、センサ構築物とは統合されない場合がある。
【0206】
コントローラは、本明細書の本セクション、または本明細書の他の場所で開示されるようなソフトウェアを実行することができる任意の処理装置であってもよい。例えば、処理装置は、プロセッサ、PC、タブレット、スマートフォン、またはホストソフトウェアを実行可能な他のコンピュータであってもよい。
【0207】
システム1000が動作している時、センサ1004は、経時的に創傷1006からビデオデータを収集する。このビデオデータは回収され、定期的な間隔でコントローラ1014に送信されるように保存されてもよく、および/またはビデオデータは連続的にコントローラに送信されてもよい。センサ1004によって収集された組織部位ビデオデータは、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所で開示される任意のセンサから収集される可能性のある任意のデータであってもよいが、可視光データまたはIRデータが適切である。いくつかの実施形態では、センサは、血流が乏しい組織を示す組織部位のビデオを収集しうる。以下でより詳細に説明されるように、こうした例では、警報要素は、介護者が圧迫損傷の形成の可能性を介護者に指示するように警報を送達するように構成されている。いくつかの実施形態では、センサ1004は、創傷1006の縁を検出してから、創傷の縁のビデオを収集してもよく、例えば、動きおよび色情報を含む光学データを収集する。上述の通り、EVMはビデオ内の個々の場所/ピクセルの非常に微妙な変化を検出するために使用され得る。特定の実施形態では、EVMは単一ピクセルに適用されうる。こうした単一のピクセルは、単一のセンサからのものでも、または複数のセンサから組み合わせられた/平均化されたものでもよい。いくつかの実施形態では、単一のセンサから複数のピクセルを描画したり、アレイなどの複数のセンサを形成したりできる。動作検出のために(すなわち、他で説明したように、血液パルスによる組織移動の特定)、複数の密接に整列したピクセルが必要な場合がある。しかし、いくつかの実施形態では、単一のセンサから単一ピクセルまたは複数のピクセルを使用してもよい。
【0208】
次にセンサによって収集されたビデオデータは、コントローラ1014に送信されてもよく、それによってコントローラはEVMをビデオに適用する。上述の通り、EVMはビデオ内の個々の場所/ピクセルの非常に微妙な変化を検出するために使用され得る。色および/または動きの変化は、組織への血流を示す場合があり、血流が乏しいことが圧迫損傷の可能性を示しうる。さらに、赤が弱い組織は、特定の組織部位への血流を制限する圧力の存在を示しうる。
【0209】
以下でより詳細に説明する通り、色、動き、または別のパラメータの変化は、警報要素によって警報を生成することを示しうる。警報に値する場合、コントローラは警報要素1010と通信1016し、警報要素1010に指示して警報を生成することができる。こうした通信は、フィードバックループの形態であってもよく、それにより、組織部位が圧迫損傷につながるリスクがなくなるまで、警報要素が警報を提供し続けることができる。いくつかの実施形態では、対処を取らない場合、音、光、またはその他の適切な手段の増加を介して、警報は次第により強くなる。圧迫損傷の形成のリスクおよび/または圧迫損傷の深刻度に応じて、警報は強度が変化しうる。
【0210】
いくつかの実施形態では、Auto Regressive Integrated Moving Average(ARIMA)、Generalized Autoregressive Conditional Heteroskedasticity (GARCH)、またはCusum(または累積和)などの時系列分析アルゴリズムを使用して、本明細書のセクションまたは本明細書の別の場所で説明した、ビデオフレームのピクセル位置間の値の変化を決定することができる。例えば、血流またはモーションを示す。Cusumは、各サンプルと平均との間の差の累積和として定義され得る(例えば、変化がない場合、Cusumはゼロである)。Cusumは、赤色、デルタ赤、動き、または計算された治療パラメータのうち一つまたは複数を含む、基になる変数の変化を追跡するために使用できる。決定されたCusum値または値は、一つまたは複数の閾値と比較されて、血流および/または動きおよび/または本明細書の本籍ションまたは本明細書の別の場所で開示される任意の適切な値を決定することができる。
【0211】
いくつかの実施形態では、EVMは、皮膚および下層組織の振戦または振動などの皮膚および下層組織の極わずかな移動または動きを検出するために使用できる。皮膚のこうした振戦または振動は、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所で説明した任意の方法を介するなどして、診断のために使用されうる。いくつかの実施形態では、振動または振戦は、多発性硬化症またはパーキンソン病などの神経疾患を診断するために使用されうる。さらに、振戦または振動の特定は、筋挫傷を検出するために利用されうる。例えば、本明細書に開示される任意の適切な方法を介して組織部位のビデオ画像を収集し、その後EVMを介して増幅させることができる。そのような増幅されたビデオは、次いで、パーキンソン病または別の類似の疾患と関連付けられた閾値と比較できる振動/振戦の量を決定するために分析されうる。組織の振動/振戦が閾値を超える場合、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所で開示される任意の警報などの警報が生成されうる。
【0212】
特定の実施形態では、比例積分微分アルゴリズム(PID)スタイルループは、NPWTポンプによって使用され、組織を許容可能な状態に維持するために、統合血流が適切であることを確認し、過剰な血流を生成することなく最適な血流を確保できるように最適な圧力が使用されうる。プロセス変数変化としてポンプの出力を調整するために、PIDスタイルループは当技術分野で周知である。特定の実施形態では、治療パラメータ測定値に対する応答は自己最適化であり、そのためソフトウェアは、治療/応答曲線を検証することによって、治療パラメータの変化毎に、最適な応答を探し得る。例えば、変数の特定の変化が治療パラメータの劇的なシフトをもたらす場合、システムは所望の量の出力のみを変更するよう調整しうる。例えば、EVM出力の最大差が達成されるまで変数を調整することができる。特定の実施形態では、治療調整の間の遅延を組み込んで、身体が以前の治療変化に対応する時間を確保することが有利でありうる。
【0213】
許容可能な赤デルタ値は、(臨床医によって)わずかに変更され、有益であるが痛みに対して副次的な治療が望ましい疼痛になりやすい患者を考慮する。連続的な高赤値(赤デルタが最小)も、NPWTの最も高いリスクの一つである出血の指標となる。こうした制御システムは、NPWTポンプシステムに関連付けられたソフトウェアシステムなど、ソフトウェアパッケージに統合された疼痛管理システムおよび出血識別システムにも適している場合がある。例えば、出血の特定の場所は拍動性として検出される場合があるが、一旦血液が裂け目から流れ出すと脈拍がなくなるため、色は赤と識別され、脈拍数によって変化しない。したがって、このような指標は、出血として識別され、即時介入の原因としてフラグが立てられるため(flaged)、NPWTのシャットダウンをトリガーして、介入が達成される前の失血を最小限に抑えることができる。
【0214】
有利なことに、EVMの使用により、臨床医の観察に単に応答するだけでなく、システムが組織部位の変化に応答することができる。こうしたシステムは、特定の患者の体内の真の血流を特定する。現在の「標準」プロトコルは、特定の時間(より高いリスク患者にはより短い時間)の後、患者の回転を必要とする。図4のシステムの使用は、患者に対するリスクの主観的評価を必要としないが、その代わりに、システムは組織から血液が制限されているかどうかを直接識別し、必要なすべての介入が実施されていることを確実にしながら、不必要な介入を最小限に抑える。
【0215】
こうした反応性システムは、低血流が早く検出されて、従来の検出の前に治療することができるため、虚血を回避するのにプロアクティブでありうる。さらに、システム1000は、浮腫の領域が特定されると、警報を提供することによって浮腫の治療を可能にし、それによって有効な圧迫の増加による浮腫を最小限にすることができる。
【0216】
図5Aは、警報要素1100と組み合わせたEVM処理方法の実施形態を示しており、ビデオデータの収集から図4で上に示した警報までのステップについての詳細を提供する。図5Aは「モジュール」を参照するが、当業者であれば、こうしたモジュールは、図4に関して上述したコントローラなどの一つまたは複数のコンピューティング装置で完了しうるソフトウェアステップであってもよいことを理解するであろう。このようなコンピューティング装置は、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所で開示される任意のコンピューティング装置、例えば、コントローラ、スマートフォン、サーバ、またはノートパソコンまたはデスクトップなどの一般的なコンピュータであってもよい。第一のステップでは、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所に開示されるカメラまたはその他のセンサ装置などのビデオ捕捉装置1102は、対象の組織部位のビデオを収集する。ビデオは、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所で説明されるような任意の適切な方法または適切な場所で撮られうる。
【0217】
次に、所望の長さ1104、例えば10秒間のビデオクリップが収集され、保存1104される。ビデオクリップは、例えば、約1秒、5秒、10秒、15秒、30秒、60秒、5分、1時間、12時間、24時間、または24時間より長い任意の適切な長さでありうることが理解される。さらに、特定の実施形態では、ビデオは連続的に送信され、分析のために連続的に処理される。図5Aに開示した実施形態は、ビデオのクリップまたは連続的に送信されたビデオを用いて実施されうる。いくつかの実施形態では、ビデオは、少なくとも約5フレーム/秒、10フレーム/秒、20フレーム/秒、30フレーム/秒、45フレーム/秒、60フレーム/秒、75フレーム/秒、90フレーム/秒、120フレーム/秒、または120フレーム/秒以上、を含みうる。
【0218】
ビデオが取り込まれると、ビデオ内の各位置/ピクセルの値は、EVM1106で拡大されうる。こうしたEVMアルゴリズムは、任意の適切なソフトウェア媒体、例えば、MATLABコードの中で実行されうる。可視光スペクトルの標準カメラで撮影されたビデオが関与するいくつかの実施形態では、EVMアルゴリズムは、画像の色値を増幅する役割を果たし得る。例えば、EVMアルゴリズムは、ビデオ内の赤色値を増幅し得る。上述のように、赤色は特定の組織への血液灌流のインジケータでありうる。
【0219】
ビデオクリップまたは連続的にビデオが処理されると、「治療パラメータ」が決定される。例えば、赤色の変化に関心がある場合、赤色またはデルタ赤の変化は、対象のすべての場所および/またはピクセルに対して決定され、治療パラメータの計算で使用されうる。いくつかの実施形態では、治療パラメータは、以下の手順1110によって計算されうる。まず、対象の領域は、ビデオフレームの特定の領域内で一つまたは複数のピクセルを選択することによって、ビデオフレーム内に設定される。
【0220】
次に、領域内のピクセルは、平均化され、フレームあたり領域あたりの平均値を提供する。平均化プロセスは、システムに導入されうる異常値を排除するための洗練された技術を組み込んでもよい。次に、ビデオの各連続フレームで追加データが収集されると、経時的な平均値の配列が生成される。これらの連続フレームから、最も高い値および最も低い値は、例えば、最高および最低の赤値を収集し得る。次に、平均ピーク値は最も高い値に対して計算されてもよく、平均トラフ値は最も低い値から計算され得る。最低平均トラフ値からこの最大平均ピーク値を引くと、単一の値が与えられる。この値は、「治療パラメータ」と呼ばれる単一のパラメータ番号に等しいように、較正1112され得る。以下に記述されるように、「治療パラメータ」は、NPWT装置が陰圧の印加を増加または減少させるべきかどうかを示すために、ルックアップテーブル1116の値と比較することができる。治療パラメータがビデオ内の赤色の変化から決定される場合、より高い治療パラメータは良好な血液灌流を示す傾向があり、一方でより低い治療パラメータは貧弱な血流を示す傾向がある。
【0221】
コントローラによって実施されうる図5Bに図示されるように、特定の実施形態では、高速サンプリングの使用を減少させるために、複数のフレームを組み合わせて、より低いフレームレートで信号を提供することができる。例えば、フレーム1およびフレーム2からの値は、フレーム3およびフレーム4からの値と共に、組み合わせられうる1202。次に、1+2の組み合わせを3+4の値と比較して、治療パラメータの計算における最高と最低の信号の両方を特定し得る。いくつかの実施形態では、組み合わされた値を、例えば、フレーム2および3を組み合わせてフレーム4および5の組み合わせなどと比較するなど、異なる方法1204で計算することができる。各フレーム内の値が組み合わされると、値の変化の振幅は、平均ピーク値から平均トラフ値を減算することによって上述したような類似の方法で計算されうる。治療パラメータは、EVMを経たビデオでの赤値の変化から算出されうる。しかし、さらなる実施形態では、青または緑などの任意の特定の色値を使用し得る。さらに、spO2または赤外線などの、本出願のこのセクション、または本明細書の他の場所で開示されているセンサのいずれかによって生成されるビデオに由来することができる任意の特定の値を使用し得る。
【0222】
特定の実施形態では、可能性のある分析ステップは、経時的に血流値を統合することであってもよく、血流の累積制限が圧迫損傷のリスクを示すかどうかを特定する可能性がある。このような示されたリスクは、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所で説明したような警報をトリガーする可能性がある。
【0223】
図5Aに戻ると、治療パラメータが計算されると、コントローラは治療パラメータ1114をあらかじめ設定された所望の値または範囲と比較し得る。こうした所望の値または範囲は、コントローラまたは臨床医によってあらかじめ設定され得る。こうした所望の値または範囲は、文献から、実験を介して、アルゴリズムを介して、またはその他の適切な手段を介して決定されうる。いずれにしても、所望の値または範囲の使用により、コントローラは、警報要素が警報を生成するのを指示するために、計算された治療パラメータを所望の値または範囲と比較することができる。治療パラメータが望ましい値または範囲に維持されたままである場合、警報は生成されないか、または健康組織を示すインジケータが生成されうる。
【0224】
特定の実施形態では、治療パラメータ測定値に対する応答は、ソフトウェアが、治療/応答曲線を検証することによって、治療パラメータの変化ごとに、最適な応答を探し得るように、自己最適化されうる。例えば、変数の特定の変化が治療パラメータの劇的なシフトをもたらす場合、システムは所望の量の変数のみを変更するよう調整しうる。例えば、EVM出力の最大差が達成されるまで変数を調整することができる。特定の実施形態では、治療調整の間の遅延を組み込んで、身体が以前の治療変化に対応する時間を確保することが有利でありうる。
【0225】
診断と治療
当業者であれば、図4図5Bに関連して上述したシステムが、幅広い組織現象および広範囲の治療応答に適用されうることを理解するであろう。例えば、特定の実施形態では、不良血流の検出に伴い警報を提供する代わりに、コントローラは、図1図2Cに関して上述したようなNPWT装置と通信するように構成されうる。こうしたシステムは、コントローラが治療に値すると示すとき、創傷部位にNPWTを提供しうる。
【0226】
当業者であれば、図4図5Bに関連して上述したEVMが関与する実施形態が、無傷な組織の状態または創傷の状態を診断するために十分に適応できることを理解するであろう。図6は、評価アルゴリズムと組み合わせてEVMを使用して創傷を評価する方法1300の実施形態を示す。方法1300は、センサおよびコントローラによって実施されうる。1302では、ビデオは、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所に記載される手段のいずれかを介して組織部位から収集され、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所に記載される任意のセンサを使用する。こうしたセンサは、スマートフォン上に位置付けられうる。しかしながら、特定の実施形態では、スマートフォンは、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所で開示されるようなタブレット、またはその他の適切なコンピューティング装置であってもよい。それでもなお、図6の方法の実施形態を説明する目的で、「スマートフォン」という用語が使用される。
【0227】
ビデオ1302は、対象の任意の組織部位、例えば、裸眼では検出できない可能性のある損傷の疑いのある組織部位、またはNPWTなどの可能性のある治療について考慮されている組織部位ついて収集されうる。ビデオが収集された場合、またはリアルタイムで収集される場合、EVMは、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所で説明した方法に従って、ビデオに適用されうる。EVMが適用されると、スマートフォン内に含まれるプロセッサまたはコントローラは、図5A図5Bに関連して上述した方法と同様に、画像を分析1306して、特定のピクセルおよび/または領域のデルタ値(変化値)を計算しうる。デルタ値が計算されると、プロセッサは、ビデオまたは静止画像の上にデルタ値を重ねて、介護者にオーバーレイ画像を表示することができる。こうしたオーバーレイは、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所で開示されているような任意の適切なもの、例えばスマートフォン画面で表示されうる。特定の実施形態では、アルゴリズムを使用して、特定の特徴を、組織タイプおよび現象のデータベースと相互参照することができる。従って、オーバーレイは、血管、創傷、皮下損傷、血腫、浮腫、またはその他任意の適切な組織もしくは現象を識別するなどの情報を含みうる。
【0228】
さらなる例において、深部組織損傷診断のために、臨床医および/またはアルゴリズムは、オフロードの適用のための組織の領域を特定しうる。特定された組織へのさらなる治療には、Smith&NephewによるAllevyn Lifeなどの被覆材を適用することができる。さらなる治療には、部位へのマッサージおよび/またはスキンケア製品の適用に関する推奨事項が含まれうる。特定の実施形態では、NPWTは、本明細書の最初で開示したような破損されていない組織部位に適している場合があり、例えば、Smith&NephewによるPico装置が適用されてもよい。
【0229】
オーバーレイ1306は、治療情報1308を臨床医に提供しうる。例えば、図4~5Bに関連して上述したように、創傷または組織部位の特定の領域のデルタ値が低い場合、これは特定の領域への血流の悪さを示しうる。こうした分析は、NPWTなどの治療1310が、こうした組織を治療するのに適していると医師に示しうる。いくつかの実施形態では、スマートフォンは、NPWT装置と直接通信して、自動的にまたは手動プロンプトのいずれかを介して治療を開始するように構成されうる。別の方法として、デルタは低いが、全体の色値がより高い場合、これは挫傷の存在を示しうる。低デルタに対する代替的な意味は、浮腫の存在でありうる。特定の実施形態では、浮腫については、NPWTおよび/または圧迫が推奨されうる。糖尿病性潰瘍などの可能性のある潰瘍の場合、圧力を除去することによってオフロードすることが推奨されうる。
【0230】
壊死組織の特定については、このような組織は、水噴射デブリードマン(例えば、Smith&NephewによるVersajet)、プラズマデブリーダ、および/またはコラゲナーゼなどの酵素的デブリーダの使用を介して治療されうる。壊死組織は、機械的切断または研磨装置などのより従来的な技術を使用しても清拭しうる。静脈性下肢潰瘍を監視する概要では、例えば、血液に最小限の変化がある、または酸素化血液が非常に低い領域を特定した場合、これは遮断静脈および/または穿孔静脈を示しうる。このような場合、静脈または妨害物の除去のための外科的介入が推奨されうる。有利なことに、こうした診断は、超音波を使用した現在の方法(創傷の後ろから、汚染を回避するために)に改良を加えうる。
【0231】
当業者であれば、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所に記載される治療方法のすべては、治療装置がコンピューティング装置と通信してもよく、またヒト介入なしに治療を適用するよう直接指示されるように、自律的でありうることを理解するであろう。こうした治療は、EVMまたはその他の適切な手段を介した組織の分析によってメリットが得られるように、NPWTおよびデブリードマンなどの複数の治療を組み合わせることができる。
【0232】
特定の実施形態では、さらなる情報は、創傷の縁の周りで収集されうる。例えば、スマートフォンは、パルスまたは物理的動きが治癒した皮膚で減少する間に、特定の場所の皮膚の色が、創傷領域よりも変化が小さいことを特定することによって、創傷の縁を識別しうる。こうしたアプローチは、皮膚と創傷の呈色の識別を強化するために、半静止色測定と連携して機能しうる。いくつかの実施形態では、データは、被覆材から着用者の電話に、看護師の通信対応装置に、データハブに、表示ステーションに、または適切な任意のシステムまたは装置に送信されうる。負の軌道は、介入を行い、治療経路をアップグレードするために強調されうる。積極的な治癒経路は、現在の治療が成功しており、このまま継続することができるか、またはより安価なおよび/またはより積極性の低い治療にダウングレードすることができるかを識別しうる。
【0233】
組織部位の潜在的な分析に戻ると、他の場所に記載されるように、損傷した組織は、あまり血流がない場合があり、したがって低いデルタ値を有する場合がある。しかしながら、組織が治癒するにつれ、健康組織の組織パラメータ/デルタ値を示す領域が増加するはずである。健康な領域が急速に増加する場合、身体が自然に治癒しているので、さらなる積極的および高価な治療を利用する必要はない場合がある。健康な領域が増加していない場合、より多くの介入が必要となる場合がある(例えば、受動的な被覆材からNPWTまたは抗菌剤などの別の療法に変えるなど、より高価な経路に上げる)。
【0234】
特定の組織領域がゼロに近いデルタを有する場合、これは組織が壊死していることを示しうる。こうした例では、スマートフォンアルゴリズムは、プラズマデブリーダ、ウォーターデブリーダ、または酵素的デブリーダなどのデブリードマンを介してこうした組織の除去を推奨しうる。いくつかの実施形態では、スマートフォンは、ゼロデルタ組織が除去され、健康な組織のみが残り、正のデルタで識別されるまで、プラズマまたはウォーターデブリーダと直接通信し、創傷部位にデブリードマンを適用するように構成することができる。
【0235】
特定の実施形態では、スマートフォンセンサは、裸眼に明らかではない血管の存在を識別するために使用されうる。こうした検出は、NPWTの血管への直接的な適用は危険でありうるため、NPWTの適用において臨床医を案内するのに有益でありうる。血管が表面に近い領域は、血液パルス間の色またはその他のパラメータ(動きなど)の変化により、高いデルタ値をもたらす可能性がある。しかしながら、非常に小さな毛細管からの誤検知を避けるために、複数のピクセルが選択されるように、領域選択を変更する必要がある場合があり、そうでなければ、単一の毛細管のためだけに、単一のピクセルが非常に高いデルタ値を示す可能性がある。特定の実施形態では、スマートフォンは、創傷の上部にわたる滲出液の存在を検出するアルゴリズムを含み、それによって医師をそのような滲出液の除去に向けて案内することができる。
【0236】
図6に戻ると、特定の実施形態では、ビデオコレクション1302は、創傷被覆材を取り替える間に発生する可能性がある。従来の被覆材は、一日数回、一日一回、週に数回、週に一回、または週に一回未満取り替えられうる。被覆材適用の間に創傷のビデオが収集されると、EVMを適用して、被覆材を取り替える間の創傷の状態に関する強化された情報を提供しうる。被覆材取り替えの間の異なる時点で撮影されたビデオの比較は、イメージを分析し、オーバーレイ1306を適用するなど、創傷の状態に関する強化された情報を介護者に提供しうる。スマートフォンは、創傷閉鎖の量または望ましくない組織タイプの存在など、治癒している創傷の変化する特性に応じて、臨床医に治療の推奨を提供するためのアルゴリズムで構成されうる。
【0237】
いくつかの実施形態では、被覆材変取り替えの間の創傷のサイズ比較には、固定サイズ2Dバーコード(またはその他の固定画像)を使用して、サイズ基準(および配向)を特定しうる。特定の実施形態では、色ベースのアルゴリズムを使用して、画像を調整するために、異なる時点で創傷間の共通の特徴を識別しうる。以前の治療時間からの第一の画像は、介護者が追って創傷画像を並べ調整できるように、新しい画像上にゴースト化(ghosted)されうる。特定の実施形態では、複数のカメラを使用してサイズを識別し、および/またはカメラの距離計を使用してサイズおよび再スケールを識別しうる。
【0238】
追加信号入力を使用する実施形態
磁場誘導断層撮影
いくつかの実施形態では、図4図6に関連して上述したシステムおよび方法は、磁場誘導断層撮影(MIT)から提供される信号などの異なるタイプの信号と併用されうる。複数コイルオプションを用いるいくつかの実施形態では、一つのコイルに高反復速度(例えば、5~25「フレーム」/秒の範囲)でパルスして、「フレーム」を捕捉して基礎心拍数を識別することができる。その後、残りのコイルは、その心拍数に近いレートで使用されてもよく、これにより「シャッター速度」を下げることができ(例えば、2~5「フレーム」/秒に近く)、信号の心拍数からのノイズが少なく、より長い露出につながる。いくつかの実施形態では、圧迫損傷などの組織損傷が、パルス周波数および/または増幅フレーム間の変化を伴うオイラー増幅信号でほとんどデルタ変更が観察されない「静的」信号のいずれかまたは両方を介して特定されうる。複数のコイルを利用する特定の実施形態では、各コイルが次に干渉することができる場合、心周波数のコイル間の差異を使用して、他のコイルの存在に起因するノイズを除去できる。例えば、組織内の挫傷またはその他の損傷は、心拍数パルスがピークと最低パルス圧力との間で組織インダクタンスを変化させない場所として特定されてもよい。この情報を使用して、血液(健康な組織、あざまたは血塊など)または血液の欠乏(虚血)があるかどうかの「静的」識別を補完することができ、したがって血液が存在する異なる状態の分離が可能となる。
【0239】
特定の実施形態では、出力は、インダクタンスの変化を特定するEVMビデオ(異なるインダクタンスを表す異なる色で)、数値、または血液が行き渡らない(虚血)または損傷している(あざ/血塊)箇所の存在を識別し、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所で開示されるような警報要素から警報をトリガーする診断値であってもよい。
【0240】
超音波
特定の実施形態では、開示されたセンサに関連して上述したように、オイラービデオ倍率も、組織部位1302の超音波ビデオに適用されうる。いくつかの実施形態では、圧迫損傷などの組織損傷が、パルス周波数および/または増幅フレーム間の変化を伴うオイラー増幅信号でほとんどデルタ変更が観察されない「静的」信号のいずれかまたは両方を介して特定されうる。上記の磁場誘導断層撮影と同様に、組織内の挫傷またはその他の損傷は、心拍数パルスがピークと最低パルス圧力との間で組織ノイズ応答を変化させない場所として特定されてもよい。血液(健康な組織、あざまたは血塊など)または血液の欠乏(虚血)があるかどうかの「静的」識別に加えてこの情報を使用し、したがって血液が存在する異なる状態の分離が可能となる。
【0241】
特定の実施形態では、出力は、インダクタンスの変化を特定するEVMビデオ(異なるインダクタンスを表す異なる色で)、数値、または血液が行き渡らない(虚血)または損傷している(あざ/血塊)箇所の存在を識別し、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所で開示されるような警報要素から警報をトリガーする診断値であってもよい。
【0242】
温度信号
特定の実施形態では、図4図6に関連して上述したシステムおよび方法は、温度信号に適用されうる。磁場誘導断層撮影および超音波と同様に、組織内の挫傷またはその他の損傷は、心拍数パルスがピークと最低パルス圧力との間で組織ノイズ応答を変化させない場所として特定されてもよい。血液(健康な組織、あざまたは血塊など)または血液の欠乏(虚血)があるかどうかの「静的」識別に加えてこの情報を使用し、したがって血液が存在する異なる状態の分離が可能となる。
【0243】
特定の実施形態では、出力は、インダクタンスの変化を特定するEVMビデオ(異なるインダクタンスを表す異なる色で)、数値、または血液が行き渡らない(虚血)または損傷している(あざ/血塊)箇所の存在を識別し、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所で開示されるような警報要素から警報をトリガーする診断値であってもよい。
【0244】
いくつかの実施形態では、図4図6に関連して、サーミスタまたは熱電対は、RGBセンサ/CCDおよび上述の光源の代わりに使用されうる。こうしたセンサのグリッドまたはマトリクスは、組織に密接に取り付けられうる。これらのセンサは、したがって、その他のセンサ(例えば、光学またはEEG/ECG)と協調して、環境の温度雑音から心拍数を分離させることができる(すなわち、心拍数の頻度で発生する温度変化を特定する)。特定の実施形態では、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所で開示されているような赤外線測定値は、温度測定に使用されうる。
【0245】
電磁発生器
特定の実施形態では、一つまたは複数の電磁(EM)発生器および受信機は、図4に関して上述した実施形態と同様に、上向きのベッドまたは椅子などの物体内に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、マットレスおよび寝具類の材料は、EM周波数(例えば、ミリ波)に対して透明でありうる。光源およびセンサは、波を正しい位置および方向に向ける光ファイバーなどのEMガイドでリモートであってもよい。いくつかの実施形態では、放射位置は、マットレス/パディングの下方、または使用者に近い一部のポイントのいずれかであってもよいが、圧力損傷のリスクがある点負荷を最小限にするために適切にパッドされている場合がある。ベッドの実装では、光源はベッド/寝具を通して輝き、ベッドの使用者の組織に反射する場合がある。次いで、EM波は受信機で収集され、この戻り波に対してEVMが実施されうる。増幅の出力は、介入の必要性を示すアルゴリズムによって処理されるにつれ、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所に開示されるような警報要素を備えるベッド/椅子取り付け型インジケータに送信されるか、または有線もしくは無線接続によって外部警報要素に通信されうる。患者が失禁する場合、尿および他の排泄物もミリ波信号を反映し、イベントとして示されうる。失禁は、浸軟を介して組織の破壊に寄与する要因であり、したがって、識別および迅速な介入は結果を改善しうる。
【0246】
ランガー皮膚割線
いくつかの実施形態では、図4図6に関連して上述したシステムおよび方法は、切開創傷を形成するための手術ガイドとしてランガー皮膚割線を特定および利用するために使用されうる。ランガー皮膚割線は、真皮中のコラーゲン繊維の自然な配向に対応するヒトの体のマップ上に延伸される位相線であり、下層の筋線維の配向にほぼ平行である。皮膚の特定の領域内のランガー皮膚割線の方向の知識は外科手術、特に美容外科手術のために重要でありうる。可能であれば、外科医は、所与の組織部位内のランガー皮膚割線の方向に切ることが好ましい。ランガー皮膚割線に対して平行になされた外科手術の切開は、ランガー皮膚割線を横切って切られた外科手術の切開と比較して、より迅速に治癒し、瘢痕化をより少なくする傾向がある。ランガー皮膚割線に垂直な切開は、しわが寄り、裸眼にも明らかに残る傾向があるが、必要な外科手術介入によっては時にはこれも不可避である。例えば、ランガー皮膚割線に対する刺創の配向は、創傷の提示にかなりの影響を及ぼす可能性がある。さらに、ケロイドは、ランガー皮膚割線を横切る切開でより一般的である。ランガー皮膚割線の一般的マップは、人体全体にわたるランガー皮膚割線の位置および配向の一般的な理解を外科医に提供することができるが、こうしたマップは完全に正確ではなく、集団および個人にわたる変動により、ひとりひとりの患者の特定のランガー皮膚割線の配向を捕捉しない。一部の事例では、図4図6に関連して上述したEVM実施形態などのリアルタイム画像強化技術の使用は、切開部位に関する適切なガイダンスを有する外科医を提供するのに有利でありうる。
【0247】
図7は、ランガー皮膚割線を識別する評価アルゴリズムと組み合わせてEVMを使用した潜在的切開部位を評価するための方法および/またはシステム1400の実施形態を示す。方法および/またはシステム1400は、センサおよびコントローラを含むおよび/またはセンサおよびコントローラによって埋め込むことができる。1402では、ビデオは、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所に記載される手段のいずれかを介して組織部位から収集され、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所に記載される任意のセンサを使用する。こうしたセンサは、スマートフォン上に位置付けられうる。しかしながら、特定の実施形態では、スマートフォンは、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所で開示されるようなタブレット、またはその他の適切なコンピューティング装置であってもよい。それでもなお、図7の実施形態を説明する目的で、「スマートフォン」という用語が使用される。
【0248】
ビデオ1402は、対象の任意の組織部位、例えば、裸眼では検出できない可能性のある損傷の疑いのある組織部位、または明らかな創傷組織部位ついて収集されうる。いくつかの実施形態では、ビデオは、外科手術切開を通して内部組織部位へのアクセスを必要とする、潜在的な外科手術部位として特定された組織部位について収集されうる。上述のように、ランガー皮膚割線は、外科医が外科手術の切開部位を特定するために使用される。
【0249】
ビデオが収集された場合、またはリアルタイムで収集される場合、EVMは、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所で説明した方法に従って、ビデオに適用されうる1404。EVMが適用されると、スマートフォン内に含まれるプロセッサまたはコントローラは、図4図6に関連して上述した方法と同様に、ビデオ画像を分析1406して、特定のピクセルおよび/または領域のデルタ値(変化値)を計算することによって組織部位内のランガー皮膚割線を識別しうる。例えば、プロセッサまたはコントローラは、静的組織または移動する組織の増幅されたビデオデータに基づいて、皮膚張力の領域を特定しうる。皮膚張力の領域を使用して、ランガー皮膚割線を特定してもよい。いくつかの実施形態では、ブラシュコ線および/またはクライスル割線も、静的または移動する皮膚のビデオを増幅することによって特定されうる。特定の実施形態では、皮膚は、ランガー皮膚割線に対応するしわを皮膚に生成するために、挟まれたり別の方法で操作されたりしうる。特定の実施形態では、EVMは、皮膚内のコラーゲン束などの異なる組織が特定されるように、皮膚のビデオを増幅しうる。プロセッサまたはコントローラは、これらのコラーゲン束を利用して、ランガー皮膚割線をマップおよび識別することができる。
【0250】
デルタ値が計算されると、プロセッサは、ビデオまたは静止画像の上にデルタ値を重ねて、介護者にオーバーレイ画像を表示することができる。こうしたオーバーレイは、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所で開示されているような任意の適切なディスプレイ、例えばスマートフォン画面で表示されうる。特定の実施形態では、アルゴリズムを使用して、特定の特徴を、組織タイプおよび現象のデータベースと相互参照することができる。図4図6に関連して開示された上記の実施形態と類似して、オーバーレイは、血管、創傷、皮下損傷、血腫、浮腫、またはその他任意の適切な組織もしくは現象を識別するなどの情報を含みうる。あるいは、または上記と組み合わせて、プロセッサは、人体におけるランガー皮膚割線の最も一般的な位置および配向に関するデータベース情報に基づいて、ランガー皮膚割線をオーバーレイしてもよい。
【0251】
特定の実施形態では、オーバーレイは、組織分布マップ内の組織部位の画像またはビデオの上に適用されるランガー皮膚割線を含みうる。こうしたオーバーレイは、ランガー皮膚割線の位置を示す実線および/またはランガー皮膚割線の方向および配向を識別する矢印を含みうる。次いで、ランガー皮膚割線は、外科医によって利用され、潜在的な切開部位1408の適切な配向および位置を特定しうる。切開部位が特定されると、ビデオが引き続き収集および増幅される一方で、外科医は切開1410を行うことができる。したがって、外科医は、手術中に組織部位のわずかな変化を監視しうる。
【0252】
いくつかの実施形態では、ランガー皮膚割線に関する特定の閾値および/またはパラメータに達した時に、警報が発生しうる。例えば、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所で開示される任意のコントローラなどのコントローラは、介護者に警報を提供して、特定の切開がランガー皮膚割線と整列していないことを外科医に通知しうる。こうした警報は、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所に開示される任意の手段を介して提供されうる。さらなる警報は、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所に開示される閾値および/またはパラメータのいずれかなど、他の閾値および/またはパラメータに達するときに提供されうる。
【0253】
超音波による磁場誘導断層撮影
上述のように、超音波を使用して組織部位を撮像しうる。しかしながら、超音波は治癒を促進するために治療的にも使用されうる。いくつかの実施形態では、治療用超音波は、以下の間の周波数で適用されうる。約1~5.0MHz、または約1~3.0MHzなどの約0.5~10MHz。こうした治癒療法は、肩、膝、またはその他の適切な部位における靭帯などの内部組織部位で実施されうる。しかしながら、治療用超音波は内部組織部位に送達されてもよいが、内部組織部位の前述の治癒の進行は一般的にモニタリングが困難である。例えば、従来的な撮像手段は、組織内のわずかな変化を検出できない場合があり、そのため加速治癒が起こるかどうかを判断することが困難になりうる。さらに、従来的な撮像手段は、超音波の送達をリアルタイムで監視できない場合があり、そのため臨床医が超音波治療の有効性を理解することが困難になりうる。
【0254】
図8は、上述の磁場誘導断層撮影(MIT)1506を介してモニタリングと組み合わせて、超音波装置1502から内部組織部位1504への治療用超音波送達を利用する治療システム1500の実施形態を示す。当業者であれば、こうした組織部位は、肩、膝、肘、またはその他の適切な接合部の靭帯など、適切な任意の組織部位を包含しうることを理解するであろう。当業者であれば、上記図4~7に関連して説明した方法および装置が、図8の実施形態に適していることも理解するであろう。
【0255】
いくつかの実施形態では、治療用超音波の送達中、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所に記載されるようなMIT装置1506は、治療用超音波の送達前、送達中、または送達後の内部組織部位の磁場誘導撮像データを収集しうる。上述のように、MITは有利なことに、深部組織データおよび画像収集を可能にする。そのような撮像データは次に、コントローラまたはプロセッサ1508(以下「コントローラ」)に送信されてもよく、コントローラは、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所で説明した任意の適切な方法に従って、EVMを用いて画像データを増幅するよう構成される。次にコントローラは、増幅された画像をディスプレイ1510に送信して、治療用超音波の送達前にまたは送達後に、リアルタイムで画像を表示してもよい。いくつかの実施形態では、コントローラは、非増幅形態で画像を送信してもよく、MIT画像および本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所で開示されているような関連データを単に運搬する。
【0256】
いくつかの実施形態では、コントローラ1508は、図4図7に示すように、本明細書の本セクションまたは本明細書の別の場所に開示される任意の適切な方法を介するなどして、増幅された画像を分析するように構成され、画像のわずかな変化を検出しうる。例えば、上述のように、コントローラは、内部組織の動きまたは色のわずかな変化を検出しうる。増幅された画像のわずかな変化に関するそのような情報は、治療用超音波の有効性に関する情報を提供しうる。したがって、コントローラは、増幅されたピクセルデータを使用して、哺乳動物の関節の組織を含む特定の軟組織および/または硬組織の密度のわずかな増加を検出することによって、損傷した組織の強化/治癒/再接合を検出するように構成されうる。さらに、コントローラは、増幅されたピクセルデータを使用して、灌流の変化、損傷した組織への血液またはその他の流体の流れの増加および/または損傷した組織への特定の細胞の移動を識別するように構成されうる。組織の治癒のわずかな変化の検出は、治療用超音波が治癒を誘発した効果を示す治癒因子を計算するために使用されうる。
【0257】
いくつかの実施形態では、コントローラ1508は、治癒因子が治癒を示す閾値を超えるかまたはこれを下回る場合、本明細書の本セクションまたは本明細書の他の場所で説明した任意の警報などの警報を提供するよう構成することができる。この警報は、介護者によって使用され、治療用超音波を調節しうる。いくつかの実施形態では、警報は、周波数、振幅、または間欠的もしくは連続的などの一般的なパルス周波数を変化させることによって、治療用超音波を特異的に調節する必要性を示しうる。閾値は、介護者によって設定されてもよく、または以前の患者情報に基づいて自動的に提供されてもよく、または文献内にある値によっても設定されてもよい。いくつかの実施形態では、治癒因子の閾値レベルを超えるかまたは下回ると、コントローラは、超音波送達装置と通信して、周波数または振幅を上昇または降下させることによって、および/または超音波のパルス/連続送達パターンを変更することによって、超音波送達のパラメータを自動的に変更しうる。
【0258】
特定の実施形態では、超音波送達装置およびMIT装置は、コントローラを介して整合するように構成されうる。例えば、コントローラは、超音波送達装置が動作している間、MIT画像データのみを収集するように構成されうる。いくつかの実施形態では、コントローラは、治療用超音波の変化に応答して、MIT装置の方向、タイミング、またはその他のパラメータを変更してもよい。
【0259】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンピューティングシステムは、例えば、サーバ、ラップトップコンピュータ、モバイルデバイス(例えば、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレット、パーソナルデジタルアシスタント)、キオスク、自動モバイルコンソール、またはメディアプレーヤーなどの一つまたは複数のコンピューティング装置を含みうる。いくつかの実施形態において、コンピューティング装置は、一つまたは複数の中央処理ユニット(CPU)を含んでもよく、それぞれが従来型または専有のマイクロプロセッサを含みうる。コンピューティング装置は、情報の一時的な保管のためのランダムアクセスメモリ(RAM)、情報の永久保存のための一つまたは複数の読み取り専用メモリ(ROM)および、ハードドライブ、ディスケット、ソリッドステートドライブ、または光学メディア記憶装置など一つまたは複数のマス記憶装置のなどの一つまたは複数のメモリをさらに含みうる。特定の実施形態では、処理装置、クラウドサーバ、サーバまたはゲートウェイ装置は、コンピュータシステムとして実装され得る。一実施形態では、コンピュータシステムのモジュールは、標準ベースのバスシステムを使用してコンピュータに接続される。異なる実施形態において、標準ベースのバスシステムは、例えば、周辺部品相互接続(PCI)、マイクロチャネル、小型コンピュータコンピュータシステムインターフェース(SCSI)、産業標準アーキテクチャ(ISA)および拡張ISA(EISA)構造で実装されうる。さらに、本明細書に開示されるコンピューティング装置の構成要素およびモジュールで提供される機能は、より少ないコンポーネントおよびモジュールに組み合わせられてもよく、またはさらに追加の構成要素およびモジュールに分離され得る。
【0260】
本明細書に開示されるコンピューティング装置は、オペレーティングシステムソフトウェア、例えば、Ios、Windows XP、Windows Vista、Windows 7、Windows 8、Windows 10、Windowsサーバ、組み込みWindows、Unix、Linux(登録商標)、Ubuntu Linux(登録商標)、SunOS、Solaris、Blackberry OS、Android、raspberry Pi、またはその他のオペレーティングシステムによって制御および調整され得る。Macintoshシステムでは、オペレーティングシステムは、MAC OS Xなどの任意の利用可能なオペレーティングシステムであり得る。他の実施形態では、コンピューティング装置は、専有オペレーティングシステムによって制御され得る。従来のオペレーティングシステムは、実行のためのコンピュータプロセスを制御し、スケジュール化し、メモリ管理を実行し、ファイルシステム、ネットワーク、I/Oサービスを提供し、およびグラフィカルユーザインターフェース(GUI)などのユーザインターフェースを提供する。
【0261】
本明細書に開示されるコンピューティング装置は、一つまたは複数のI/Oインターフェースおよびデバイス、例えばタッチパッドまたはタッチスクリーンを含むことができるが、キーボード、マウス、およびプリンタも含みうる。一実施形態では、I/Oインターフェース、およびデバイスは、ユーザへのデータの視覚的提示を可能にする、一つまたは複数のディスプレイ装置(タッチスクリーンまたはモニタなど)を含む。より具体的には、表示装置は、例えば、GUI、アプリケーションソフトウェアデータ、およびマルチメディアプレゼンテーションの提示を提供し得る。本明細書に開示されるコンピューティングシステムは、例えば、カメラ、スピーカー、ビデオカード、グラフィックアクセラレーター、およびマイクロフォンなど、一つまたは複数のマルチメディアデバイスも含みうる。
【0262】
一般に、本明細書で使用される場合、「モジュール」という言葉は、ハードウェアまたはファームウェアで具現化されるロジック、または例えば、Python、Java(登録商標)、Lua、Cおよび/またはC++などのプログラミング言語で記述された入り口および出口ポイントを有する、ソフトウェア命令の集合を意味する。ソフトウェアモジュールは、ダイナミックリンクライブラリにインストールされた実行可能プログラムにコンパイルされてリンクされてもよく、または例えば、BASIC、Perl、またはPythonなどの解釈されるプログラミング言語で記述され得る。ソフトウェアモジュールは、他のモジュールから呼び出すことも、それ自体から呼び出すこともでき、および/または検出されたイベントまたは割込みに応答して呼び出すことができることが理解されよう。コンピューティング装置上で実行するために構成されたソフトウェアモジュールは、コンパクトディスク、デジタルビデオディスク、フラッシュドライブ、または任意の他の有形媒体など、コンピュータ可読媒体上に提供され得る。こうしたソフトウェアコードは、コンピューティング装置によって実行するために、実行コンピューティング装置のメモリデバイス上に、部分的または完全に保存され得る。ソフトウェア命令は、EPROMなどのファームウェアに組み込むことができる。ハードウェアモジュールは、ゲートおよびフリップフロップなどの接続ロジックユニットから成ることができ、および/またはプログラム可能なゲートアレイまたはプロセッサなどのプログラム可能ユニットから成ることができることがさらに理解されるであろう。本明細書に開示されるブロック図は、モジュールとして実装されうる。本明細書に記述したモジュールは、ソフトウェアモジュールとして実装され得るが、ハードウェアまたはファームウェアで表され得る。一般的に、本明細書に記載されるモジュールは、物理的な組織または保存にもかかわらず、他のモジュールと組み合わせることができ、またはサブモジュールに分割されうる論理モジュールを意味する。
【0263】
前述のセクションに記載されるプロセス、方法、およびアルゴリズムの各々は、コンピュータハードウェアを含む、一つまたは複数のコンピュータシステムまたはコンピュータプロセッサによって実行されるコードモジュールによって具現化されてもよく、または完全にまたは部分的に自動化され得る。コードモジュールは、ハードドライブ、ソリッドステートメモリ、光ディスク、および/または同種のものなど、任意のタイプの非一時的コンピュータ可読媒体またはコンピュータ記憶装置に保存されうる。システムおよびモジュールは、無線ベースおよび有線/ケーブルベースの媒体を含むさまざまなコンピュータ可読送信媒体上の生成データ信号(例えば、担体波またはその他のアナログまたはデジタル伝播信号の一部として)として送信されてもよく、さまざま形態(例えば、単一または複数のアナログ信号の一部として、または複数のディスクリートデジタルパケットまたはフレームとして)をとってもよい。プロセスおよびアルゴリズムは、アプリケーション固有の回路に部分的または完全に実装され得る。開示されたプロセスおよびプロセスステップの結果は、例えば、揮発性または不揮発性の保存などの任意のタイプの非一時的コンピュータ保存において、持続的に、またはその他の方法で、保存され得る。
【0264】
(あらゆる添付資料、特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)本明細書において開示されるすべての特徴、及び/又はそのように開示されるあらゆる方法もしくはプロセスのすべてのステップは、そのような特徴及び/又はステップのうち少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わされてよい。開示対象は、いかなる前述の実施形態の詳細にも制限されない。開示は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書および図面のいずれをも含む)に開示する特徴のいずれか新規のもの、もしくはいずれか新規の組み合わせ、または同様に開示するいずれの方法もしくは過程のステップのいずれか新規のもの、もしくはいずれか新規の組み合わせに及ぶ。
【0265】
本開示に記載する実装に対する様々な変形は、当業者には容易に明らかとなってもよく、本明細書に定義する全体的な原理は、本開示の精神または範囲を逸脱することなく、他の実装に適用されてもよい。それゆえ、開示は、本明細書に示す実装に限定することは意図していないが、本明細書に記載する原理および特徴と一致する、最も広い範囲が与えられるべきである。開示の特定の実施形態は、以下に列挙する、または後に提示する請求項の組に網羅される。
[付記項1]
治療システムであって、
組織部位の上に配置されるように構成された視覚化センサであって、前記組織部位のビデオデータを収集するように構成された視覚化センサと、
警報を提供するように構成された出力と、
前記視覚化センサと前記出力の両方と通信するコントローラであって、
前記ビデオデータをオイラービデオ倍率で増幅するように、
前記増幅されたビデオデータからの治療パラメータを決定するように、
前記治療パラメータが閾値と異なると判定することに応答して出力に警報を提供させるように、構成されたコントローラと、を備える治療システム。
[付記項2]
前記閾値は、圧迫損傷の発生確率に対応する、付記項1に記載の治療システム。
[付記項3]
コントローラがスマートフォン内に含まれている、付記項1~2のいずれか一項に記載の治療システム。
[付記項4]
前記視覚化センサが、前記コントローラと無線通信するように構成される、付記項1~3のいずれか一項に記載の治療システム。
[付記項5]
前記コントローラが、前記出力と無線通信するように構成される、付記項1~4のいずれか一項に記載の治療システム。
[付記項6]
前記コントローラが、前記治療パラメータを複数の閾値と比較するように構成される、付記項1~5のいずれか一項に記載の治療システム。
[付記項7]
前記視覚化センサが、RGB検出器を備える、付記項1~6のいずれか一項に記載の治療システム。
[付記項8]
前記警報が、可聴警報を備える、付記項1~7のいずれか一項に記載の治療システム。
[付記項9]
前記警報が、視覚警報を備える、付記項1~8のいずれか一項に記載の治療システム。
[付記項10]
前記コントローラが、二つ以上のビデオデータのフレーム間の赤値の変化を計算することによって、組織パラメータを決定するように構成される、付記項1~9のいずれか一項に記載の治療システム。
[付記項11]
切開部位を特定するためのシステムであって、
組織部位の上に配置されるように構成された視覚化センサであって、前記組織部位のビデオデータを収集するように構成された視覚化センサと、
前記視覚化センサと通信するコントローラであって、
前記ビデオデータをオイラービデオ倍率で増幅するように、
前記増幅されたビデオデータから前記組織部位内のランガー皮膚割線を識別するように、
前記組織部位の前記ビデオデータにランガー皮膚割線をマップするように、
ディスプレイ上にランガー皮膚割線を表示するように、構成されたコントローラと、を備える、システム。
[付記項12]
切開部位警報を提供するように構成された出力をさらに備える、付記項11に記載のシステム。
[付記項13]
前記切開部位警報が配向および位置を含む、付記項12に記載のシステム。
[付記項14]
組織部位の治療をモニターするためのシステムであって、
超音波発生器であって、治療用超音波を内部組織部位に送達するように構成された超音波発生器と、
前記内部組織部位の上に配置されるように構成された視覚化センサであって、前記組織部位の磁場誘導断層撮影ビデオデータを収集するように構成された視覚化センサと、を備えるシステム。
[付記項15]
前記磁場誘導断層撮影ビデオデータが閾値を超えた時に警報を提供するように構成された出力をさらに備える、付記項14に記載のシステム。
[付記項16]
視覚化センサおよびコントローラを備える治療システムを操作する方法であって、
組織部位の上に位置付けられた前記視覚化センサによって、前記組織部位のビデオデータを収集することと、
コントローラによって、
前記ビデオデータをオイラービデオ倍率で増幅することと、
前記増幅されたビデオデータからの治療パラメータを決定することと、
前記治療パラメータが閾値と異なると判定することに応答して警報を提供させることと、を含む、方法。
[付記項17]
視覚化センサおよびコントローラを備える治療システムを操作する方法であって、
組織部位の上に位置付けられた前記視覚化センサによって、前記組織部位のビデオデータを収集することと、
コントローラによって、
前記ビデオデータをオイラービデオ倍率で増幅することと、
前記増幅されたビデオデータから赤デルタ値を決定することと、
前記赤デルタ値が前記組織部位内の血管の存在を示す場合に、警報を提供させることと、を含む、方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8