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特許7272964創傷被覆材で使用するためのスペーサー層
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】創傷被覆材で使用するためのスペーサー層
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20230502BHJP
   A61F 13/00 20060101ALI20230502BHJP
   A61L 15/24 20060101ALI20230502BHJP
   A61L 15/28 20060101ALI20230502BHJP
   A61L 15/22 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
A61M27/00
A61F13/00 301C
A61F13/00 301M
A61L15/24 100
A61L15/28 100
A61L15/22 100
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019568374
(86)(22)【出願日】2018-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2018066575
(87)【国際公開番号】W WO2019002086
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】62/527,922
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/527,959
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397070118
【氏名又は名称】ティージェイ スミス アンド ネフュー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ネイル・ジョン・ローソン
(72)【発明者】
【氏名】エイミー・ニコル・ウェルドレイク
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0095754(US,A1)
【文献】特表2006-503989(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0059496(US,A1)
【文献】米国特許第05575874(US,A)
【文献】特表2013-529942(JP,A)
【文献】特表2015-528727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
A61F 13/00
A61L 15/24
A61L 15/28
A61L 15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷被覆材を備える創傷治療装置であって、
前記創傷被覆材が、
三次元不織布構造に形成された少なくとも一つの不織布層であって、前記三次元不織布構造は、熱成形、化学結合、または真空形成によって形成される、少なくともひとつの不織布層を含む、スペーサー層と、
前記スペーサー層の上に位置付けられるカバー層と、
を備え、
前記創傷被覆材は、創傷滲出液を吸収するための吸収層をさらに含み、前記吸収層は前記スペーサー層の上に位置付けられ、
前記創傷被覆材が、前記吸収層の上に位置付けられた第二のスペーサー層をさらに含
前記スペーサー層および前記第二のスペーサー層は、液体および気体を含む流体の透過を可能とするものである、創傷治療装置。
【請求項2】
前記三次元不織布構造が、波型構造、ハニカム構造、直方体構造、卵ボックス構造、または、三次元ジグザグ構造を含む、請求項1に記載の創傷治療装置。
【請求項3】
前記スペーサー層が一以上の保持層をさらに備え、一以上の前記保持層が前記三次元不織布構造の上に位置付けられる、請求項1または2に記載の創傷治療装置。
【請求項4】
前記スペーサー層が一以上の保持層をさらに備え、一以上の前記保持層が前記三次元不織布構造の下に位置付けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
【請求項5】
前記三次元不織布構造が、熱成形不織布層を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
【請求項6】
前記三次元不織布構造が、熱可塑性繊維を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
【請求項7】
前記三次元不織布構造が、熱可塑性繊維およびその他の繊維の混紡を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
【請求項8】
前記その他の繊維は、ビスコース繊維、ゲル化可能繊維、バインダー繊維、および/または二成分繊維を含む、請求項7に記載の創傷治療装置。
【請求項9】
前記三次元不織布構造が、熱可塑性繊維から本質的に成る、請求項1~8のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
【請求項10】
前記少なくとも一つの三次元不織布構造が、2mm~10mmの厚さを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
【請求項11】
前記少なくとも一つの三次元不織布構造が3mmの厚さを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
【請求項12】
前記不織布が、エアレイド、カーディング、またはメルトスピニングによって生成される、請求項1~11のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
【請求項13】
前記不織布が等方性である、請求項1~12のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
【請求項14】
前記不織布がポリプロピレンを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
【請求項15】
前記不織布が水流交絡される、請求項1~14のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
【請求項16】
前記スペーサー層が、第一の熱成形された不織布層および前記第一の熱成形された不織布層の上に配置された第二の熱成形された布層をさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
【請求項17】
前記スペーサー層が、三次元編みまたは布層をさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
【請求項18】
ポンプと、
前記カバー層のオリフィスを通して創傷部位に陰圧を印加するための吸引ポートと、をさらに備える、請求項1~17のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
【請求項19】
前記第二のスペーサー層が、三次元不織布構造に形成された少なくとも一つの不織布層を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年6月30日出願の米国仮特許出願第62/527,922号、および2017年6月30日出願の米国仮特許出願第62/527,959号に対する優先権を主張する。これらの出願はそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれ、本開示の一部分をなす。
【0002】
開示された技術は、様々なスペーサー層を含む創傷被覆材に関する。開示された技術は、開口不織布スペーサー層または三次元不織布スペーサー層を含む創傷被覆材に関する。本開示技術はさらに、創傷被覆材の方法および使用に関する。
【背景技術】
【0003】
創傷治療では、被覆材と皮膚との間に蓄積する可能性がある創傷流体を除去するために創傷被覆材を提供する間のバランスがある。創傷と被覆材との間の流体の蓄積は、皮膚から被覆材を分離させる可能性がある。皮膚から被覆材を分離させることは、感染を起こす可能性のある微生物によって創傷が汚染される可能性を増加させうる。しかし、被覆材は、創傷を治癒するために必要な生物学的プロセスを身体が確保できるように、十分な時間、配置されるべきである。
【0004】
創傷の性質に応じて、患者は長期間固定されうる。患者または神経障害の固定もまた、潰瘍(褥瘡など、または圧力損傷としても知られる)または床ずれなどの複雑な因子をもたらすこともある。
【0005】
褥瘡(「床ずれ」または褥瘡性潰瘍と呼ばれる場合がある)は、ベッドまたは椅子の特定の位置に、長期間にわたって拘束された個体に発生しうる。事故、疾患、または手術からの長期間の回復などの原因により、ベッドまたは車椅子に拘束される場合、身体は長期間固定される傾向がある。褥瘡は、かかとおよび足首、転子、仙骨、肩甲骨、肘、膝、後頭部、坐骨結節(ischial tuberosites)および尾てい骨においてなど、身体の特定の部分で最も頻繁に起こることに留意されたい。現在理解されているように、これらの身体部分を覆う重さは、下にある軟組織層に十分な圧力をかけることになり、軟組織層へのおよび軟組織層を通る血液の流れの中断を引き起こし、一般的に褥瘡と呼ばれる状態の発生を引き起こす。
【0006】
大きすぎて自然には閉じられない、もしくはそうでなければ、創傷の部位への陰圧の適用では治癒しない、開放創または慢性創傷の治療は、当該技術分野ではよく知られている。現在当該技術分野で知られている陰圧創傷療法(NPWT)システムは、創傷の上に流体に対して不透過性または半透過性の被覆を置くことと、創傷を囲む患者の組織に対して被覆を封止する、様々な手段を使用することと、陰圧を被覆の真下に作り出し維持するような手法で、陰圧の源(真空ポンプなど)を被覆に接続することとを伴う。このような陰圧は、創傷部位における肉芽組織の形成を促進し、かつ人体の通常の炎症プロセスを補助しながら、同時に有害なサイトカインおよび/またはバクテリアを含む可能性がある過剰な流体を除去することにより、創傷の治癒を促進すると考えられている。しかしながら、治療の便益を完全に実現するには、NPWTのさらなる改良が必要とされる。
【0007】
NPWTシステムに役立つ、多くの異なるタイプの創傷被覆材が知られている。様々な種類の創傷被覆材には、様々な種類の材料および層、例えば、ガーゼ、パッド、フォームパッド、または多層創傷被覆材が含まれる。多層創傷被覆材の一例は、Smith&Nephew社製のPICO被覆材であり、これは、裏当て層の下に超吸収層を含み、NPWTによって創傷を治療するためのキャニスターレスシステムをもたらしている。創傷被覆材は、一本のチューブに接続する吸引ポートに対して封止され得、その吸引ポートは、被覆材から流体を吸い出し、および/または、ポンプから創傷被覆材に陰圧を伝達するのに使用されうる。
【発明の概要】
【0008】
一実施形態では、開示された技術は、創傷被覆材、および創傷被覆材の使用方法および使用に関する。一部の実施形態は、創傷治癒の間に潰瘍形成を軽減/低減または予防しうる。創傷被覆材の一部の実施形態は、陰圧創傷治療における使用のために適合されうる。
【0009】
本明細書において使用される場合、「含む(including)」、「含有する」または「特徴づけられる」と同義語である、遷移用語「含む(comprising)」は、包括的または無制限であり、追加の列挙されていない要素または方法ステップを除外しない。しかしながら、本明細書の「含む」の各列挙では、用語は、代替的な実施形態として、「から本質的に成る」および「から成る」という語句も包括し、「から成る」は指定されない任意の要素またはステップを除外し、「から本質的に成る」は検討中の組成物、方法、または使用の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない追加の列挙されていない要素またはステップを含めることを許容することが意図されている。
【0010】
一部の実施形態では、創傷治療装置は創傷被覆材を含むことができる。創傷被覆材は、第一の繊維基層および相互接続された第一の繊維表面層を含む第一の不織布層であって、複数のチャネルは第一の繊維基層と第一の繊維表面層との間に配置される第一の不織布層と、第二の繊維基層および相互接続された第二の繊維表面層を含む第二の不織布層であって、複数のチャネルは第二の繊維基層と第二の繊維表面層との間に配置される第二の不織布層と、第二の不織布層は、第二の不織布の第二の繊維表面層が、第一の不織布の第一の繊維表面層の上に位置付けられるように、第一の不織布層の上に配置され、スペーサー層の上に位置付けられるカバー層と、を含むスペーサー層を含むことができる。
【0011】
前述の段落の装置はまた、本明細書の記載の中でも特に、以下の段落に記載される特徴の、任意の組み合わせを含みうる。また、以下の段落に記載される特徴はそれぞれ、必ずしも前の段落のすべての特徴を含むとは限らない別の実施形態の一部であってもよい。
【0012】
第一または第二の不織布層の複数のチャネルは、第一および第二の不織布層の全長にわたって延びうる。
【0013】
第一の不織布層のチャネルは、第一の方向に延びることができ、第二の不織布層のチャネルは第二の方向に延びる。
【0014】
第一の方向は、第二の方向と並行でありうる。
【0015】
第一の方向は、第二の方向と垂直でありうる。
【0016】
第二の不織布層の複数のチャネルは、第一の不織布層の複数のチャネルの上に直接配置されうる。
【0017】
第二の不織布層の複数のチャネルは、第一の不織布層の複数のチャネルのからオフセットされうる。
【0018】
第一および第二の不織布層の複数のチャネルのそれぞれは、約0.5mm~約5mmの直径を有しうる。
【0019】
第一および/または第二の不織布層の基層および表面層は水流交絡されうる。
【0020】
第一および/または第二の不織布層の表面層は親水性でありうる。
【0021】
第一および/または第二の不織布層の基層は疎水性でありうる。
【0022】
創傷治療装置は、カバー層のオリフィスを通して、創傷部位に陰圧を印加するためのポンプおよび吸引ポートをさらに備えうる。
【0023】
スペーサー層は、創傷治療装置に陰圧が印加されると開いたままになるように構成されうる。
【0024】
創傷治療装置は、創傷滲出液を吸収するための吸収層をさらに含むことができ、吸収層はスペーサー層の上に位置付けられる。
【0025】
吸収層は、超吸収性粒子または繊維を含む不織布材料を含むことができる。
【0026】
創傷治療装置は、吸収層とカバー層との間に位置付けられたマスキング層をさらに含むことができる。
【0027】
創傷治療装置は、吸収層の上に位置付けられる第二のスペーサー層であって、第二のスペーサー層は、第三の繊維基層および相互接続された第三の繊維表面層を含む第三の不織布層であって、複数のチャネルは第三の繊維基層と第三の繊維表面層との間に配置される第三の不織布層と、第四の繊維基層および相互接続された第四の繊維表面層を含む第四の不織布層であって、複数のチャネルは第四の繊維基層と第四の繊維表面層との間に配置される第四の不織布層とを含み、第四の不織布層は、第四の不織布の第四の繊維表面層が、第三の不織布の第三の繊維表面層に接触するように、第三の不織布層の上に配置される、第二のスペーサー層をさらに含むことができる。
【0028】
カバー層はオリフィスを含むことができる。
【0029】
カバー層は、透湿性材料を含むことができる。
【0030】
チャネルは丸み付きチャネルとすることができる。
【0031】
チャネルは長方形チャネルとすることができる。
【0032】
チャネルは三角形チャネルとすることができる。
【0033】
一部の実施形態では、創傷被覆材で使用するためのスペーサー層が提供されている。スペーサー層は、第一の繊維基層および相互接続された第一の繊維表面層を含む第一の不織布層であって、複数のチャネルは第一の繊維基層と第一の繊維表面層との間に配置される第一の不織布層と、第二の繊維基層および相互接続された第二の繊維表面層を含む第二の不織布層であって、複数のチャネルは第二の繊維基層と第二の繊維表面層との間に配置される第二の不織布層とを含むことができ、第二の不織布層は、第二の不織布の第二の表面層が、第一の不織布の第一の表面層の上に位置付けられるように、第一の不織布層の上に配置される。本段落のスペーサー層は、本明細書の記載の中でも特に、前述の段落に記載される特徴の、任意の組み合わせを含みうる。また、前述の段落に記載される特徴はそれぞれ、本段落のすべての特徴を必ずしも含むとは限らない別の実施形態の一部であってもよい。
【0034】
一部の実施形態では、創傷の治療のための方法は、創傷被覆材を提供することであって、スペーサー層であって、第一の繊維基層および相互接続された第一の繊維表面層を含む第一の不織布層であって、複数のチャネルは第一の繊維基層と第一の繊維表面層との間に配置される、第一の不織布層と、第二の繊維基層および相互接続された第二の繊維表面層を含む第二の不織布層であって、複数のチャネルは第二の繊維気相と第二の繊維表年層との間に配置される第二の不織布層とを含み、第二の不織布層は、第二の不織布の第二の表面層が第一の不織布の第一の表面層の上に位置付けられるように第一の不織布層の上に配置されるスペーサー層と、スペーサー層の上に位置付けられてオリフィスを含むカバー層とを含む、提供することと、創傷部位に被覆材を位置付けて、創傷部位の上に密閉された空洞を形成することと、オリフィスを通して創傷部位に陰圧を印加して、流体をスペーサー層を通して吸収層に引き出すことと、を含みうる。
【0035】
前述の段落の方法はまた、本明細書の記載の中でも特に、以下の段落に記載される特徴の、任意の組み合わせを含みうる。また、以下の段落に記載される特徴はそれぞれ、必ずしも前の段落のすべての特徴を含むとは限らない別の実施形態の一部であってもよい。
【0036】
創傷被覆材は、創傷滲出液を吸収するための吸収層をさらに含むことができ、吸収層はスペーサー層の上に位置付けられる。
【0037】
一部の実施形態では、創傷治療装置は創傷被覆材を含むことができる。創傷被覆材は、三次元不織布構造に形成された少なくとも一つの不織布層を含むスペーサー層を含むことができ、三次元不織布構造は、熱成形、化学結合、または真空形成によって形成され、カバー層はスペーサー層の上に位置付けられる。
【0038】
前述の段落の装置はまた、本明細書の記載の中でも特に、以下の段落に記載される特徴の、任意の組み合わせを含みうる。また、以下の段落に記載される特徴はそれぞれ、必ずしも前の段落のすべての特徴を含むとは限らない別の実施形態の一部であってもよい。
【0039】
三次元不織布構造は、熱成形によって形成されうる。
【0040】
三次元不織布構造は、化学結合によって形成されうる。
【0041】
三次元不織布構造は、真空成形によって形成されうる。
【0042】
三次元不織布構造は、波型構造を含むことができる。
【0043】
三次元不織布構造は、ハニカム構造を含むことができる。
【0044】
三次元不織布構造は、直方体構造を含むことができる。
【0045】
三次元不織布構造は、卵ボックス型構造を含むことができる。
【0046】
三次元不織布構造は、三次元ジグザグ構造を含むことができる。
【0047】
スペーサー層はさらに一つまたは複数の保持層を含むことができ、一つまたは複数の保持層は三次元不織布構造の上に位置付けられる。
【0048】
スペーサー層はさらに一つまたは複数の保持層を含むことができ、一つまたは複数の保持層は三次元不織布構造の下に位置付けられる。
【0049】
三次元不織布構造は、熱成形不織布層を含むことができる。
【0050】
三次元不織布構造は、熱可塑性繊維を含むことができる。
【0051】
三次元不織布構造は、熱可塑性繊維と他の繊維との混紡を含むことができる。
【0052】
他の繊維は、ビスコース繊維、ゲル化可能繊維、バインダー繊維、および/または二成分繊維を含むことができる。
【0053】
三次元不織布構造は、熱可塑性繊維から本質的に成ることができる。
【0054】
少なくとも一つの三次元不織布構造は、2~10mmの厚さを有しうる。
【0055】
少なくとも一つの三次元不織布構造は、約3mmの厚さを有しうる。
【0056】
不織布は、エアレイド、カーディング、またはメルトスピニングによって製造されうる。
【0057】
不織布は等方性でありうる。
【0058】
不織布はポリプロピレンを含むことができる。
【0059】
不織布は水流交絡でありうる。
【0060】
創傷被覆材は、創傷滲出液を吸収するための吸収層をさらに含むことができ、吸収層はスペーサー層の上に位置付けられる。
【0061】
創傷被覆材は、吸収層の上に位置付けられた第二のスペーサー層をさらに含むことができる。
【0062】
スペーサー層は、第一の熱成形不織布層および第一の熱成形不織布層の上に配置された第二の熱成形布層をさらに含みうる。
【0063】
スペーサー層は、三次元編みまたは布層をさらに含むことができる。
【0064】
創傷治療装置は、カバー層のオリフィスを通して、創傷部位に陰圧を印加するためのポンプ、吸引ポートをさらに備えうる。
【0065】
一部の実施形態では、創傷被覆材で使用するためのスペーサー層が提供されている。スペーサー層は、三次元構造を含む少なくとも一つの熱成形不織布層を含むことができ、熱成形不織布は熱可塑性繊維を含む。本段落のスペーサー層は、本明細書の記載の中でも特に、前述の段落に記載される特徴の、任意の組み合わせを含みうる。また、前述の段落に記載される特徴はそれぞれ、本段落のすべての特徴を必ずしも含むとは限らない別の実施形態の一部であってもよい。
【0066】
創傷の治療のための方法は、創傷部位に被覆材を位置付けて、密閉された空洞を創傷部位の上に形成することであって、被覆材は、三次元不織布構造に形成された少なくとも一つの不織布層を含むスペーサー層と、スペーサー層を覆うカバー層とを含む、形成することと、創傷部位に陰圧を印加してスペーサー層を通して流体を引き出すことと、を含むことができる。
【0067】
前述の段落の方法はまた、本明細書の記載の中でも特に、以下の段落に記載される特徴の、任意の組み合わせを含みうる。また、以下の段落に記載される特徴はそれぞれ、必ずしも前の段落のすべての特徴を含むとは限らない別の実施形態の一部であってもよい。
【0068】
被覆材は、創傷滲出液を吸収するための吸収層をさらに含むことができ、吸収層はスペーサー層の上に位置付けられる。
【0069】
カバー層はオリフィスを含むことができ、陰圧はオリフィスを通して創傷部位に印加することができる。
【0070】
以下に開示される被覆材の実施形態、ポンプの実施形態、および陰圧創傷療法の実施形態のいずれも含むがこれらに限定しないものとし、本出願に開示された配置または実施形態のいずれかの特徴、構成要素、または詳細のいずれも、新しい配置および実施形態を形成するよう本明細書に開示された配置または実施形態のいずれかのその他の特徴、構成要素、または詳細のいずれとも相互に組み合わせ可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
本開示の実施形態は、単に例示として、添付図面を参照して、ここで以下に記載される。
図1A図1Aは、開口不織布層の実施形態の断面を図示する。
図1B図1Bは、二つの開口不織布層の実施形態の断面を図示する。
図2図2Aは、開口不織布層の実施形態を図示する。図2Bは、創傷被覆材で使用するためのスペーサー層を形成するために、一方の不織布層を他方の上で反転させた、二つの開口不織布層の実施形態を図示する。
図3-1】図3Aは、三次元構造を有する不織布スペーサー層の実施形態を図示する。
図3-2】図3Bは、三次元構造を有する層を含む複数の材料層を備えるスペーサー層の実施形態の断面を図示する。図3Cは、三次元構造を有する複数の層を含む複数の不織布材料層を備えるスペーサー層の実施形態の断面を図示する。
図4A図4Aは、創傷滲出液を吸収し貯蔵できる、可撓性流体コネクターおよび創傷被覆材を用いた、陰圧創傷治療システムの一実施形態を図示する。
図4B図4Bは、創傷滲出液を吸収し貯蔵できる、可撓性流体コネクターおよび創傷被覆材を用いた、陰圧創傷治療システムの一実施形態を図示する。
図4C図4Cは、創傷滲出液を吸収し貯蔵できる、可撓性流体コネクターおよび創傷被覆材を用いた、陰圧創傷治療システムの一実施形態を図示する。
図4D図4Dは、創傷被覆材に接続された流体コネクターの一実施形態の断面を図示する。
図5-1】図5A~5Dは、陰圧なしで使用される、創傷滲出液を吸収し貯蔵できる創傷被覆材を用いる、創傷治療システムの実施形態を図示する。
図5-2】図5Eは、陰圧なしで使用される、創傷滲出液を吸収し貯蔵できる創傷被覆材を用いる、創傷治療システムの実施形態の断面を図示する。
図6A図6Aは、陰圧源および/またはその他の電子構成要素を創傷被覆材内に取り込んだ、創傷被覆材の一実施形態を図示する。
図6B図6Bは、陰圧源および/またはその他の電子構成要素を創傷被覆材内に取り込んだ、創傷被覆材の一実施形態を図示する。
図6C図6Cは、ポンプおよび電子構成要素が被覆材の吸収エリアからオフセットされた、創傷被覆材の層の実施形態を図示する。
図7A図7Aは、可撓性流体コネクターと、周囲にまきつけられたスペーサー層を有する創傷被覆材とを使用し、創傷被覆材は創傷滲出液を吸収し貯蔵できる、陰圧創傷治療システムの一実施形態を図示する。
図7B図7Bは、可撓性流体コネクターと、周囲にまきつけられたスペーサー層を有する創傷被覆材とを使用し、創傷被覆材は創傷滲出液を吸収し貯蔵できる、陰圧創傷治療システムの一実施形態の断面を図示する。
図7C図7Cは、創傷滲出液を吸収し貯蔵できる、創傷被覆材を用いた、陰圧創傷治療システムの一実施形態を図示する。
図8A図8Aは、創傷被覆材の別の実施形態の断面を図示する。
図8B図8Bは、遮蔽層および視認窓を含む創傷被覆材の実施形態の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本開示技術は、本明細書に開示される創傷被覆材に関し、本明細書に開示される方法および使用に関する。
【0073】
本明細書に開示される開示技術の少なくとも一部の実施形態を以下に記載する。
【0074】
本明細書に開示された実施形態は、減圧を伴うまたは伴わない創傷を治療する装置および方法に関し、任意選択で陰圧源および創傷被覆材構成要素および装置を含む。創傷に重ね、パッキングする材料を含む装置および構成要素があれば、本明細書では集合的に被覆材として称される場合がある。一部の実施形態では、創傷被覆材は、減圧せずに利用されるように提供されうる。
【0075】
本明細書で開示される好ましい実施形態は、ヒトまたは動物の体に対する創傷療法に関連する。そのため、本明細書における創傷へのいかなる言及も、ヒトまたは動物の体上の創傷を指すことができ、本明細書における体へのいかなる言及も、ヒトまたは動物の体を指しうる。本明細書で使用される用語「創傷」は、幅広い通常の意味を有するのに加えて、陰圧を使用して治療されてもよい、患者のいかなる体の一部を含む。創傷という用語は広く解釈され、皮膚が断裂、切開、もしくは穿孔される、または外傷によって挫傷が引き起こされる開放創および閉鎖創、あるいは患者の皮膚における任意の他の表面もしくは他の状態または欠陥、あるいは減圧治療によって利益をうる他のものを包含することを理解されたい。よって、創傷は、流体が生成されることもされないこともある、組織の任意の損傷領域として広く定義される。そのような創傷の例としては、腹部創傷、または手術、外傷、胸骨切開、筋膜切開、あるいは他の状態のいずれかの結果としての他の大規模または切開性の創傷、裂開創傷、急性創傷、慢性創傷、亜急性創傷および裂開創傷、外傷性創傷、フラップおよび皮膚移植片、裂傷、擦傷、挫傷、火傷、糖尿病性潰瘍、褥瘡性潰瘍、ストーマ、術創、外傷性潰瘍および静脈性潰瘍などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0076】
本明細書で使用される場合、慢性創傷は、ほとんどの創傷が順序よく一連の段階で、予測可能な時間内で治癒するようには治癒しない創傷であり、三か月以内に治癒しない創傷は、多くの場合慢性とみなされる。例えば、慢性創傷は、糖尿病性潰瘍、褥瘡(または圧力損傷)、または静脈性潰瘍などの潰瘍を含みうる。
【0077】
そのような創傷の治療は、陰圧創傷療法を使用して実施することができ、減圧または陰圧が、創傷の治癒を容易にして促進するように、創傷に印加されうる。本明細書に開示される創傷被覆材および方法は、身体の他の部分に適用されてもよく、創傷の治療に必ずしも限定されないことも、理解されるであろう。
【0078】
本開示の実施形態は、概して、局所陰圧(「TNP(topical negative pressure)」)療法システムで使用するように適用可能であることは理解されるであろう。手短に言えば、陰圧創傷治療は、組織の浮腫を減少させ、血流および顆粒組織形成を促し、過度の滲出液を除去することによって、「治癒が困難な」創傷の多くの形態を閉鎖および治癒するのを補助し、細菌負荷(および、それゆえ感染リスク)を低減してもよい。加えて、治療によって、創傷の不安を減らすことが可能になり、より早期の治癒に導く。TNP療法システムはまた、流体を除去し、閉鎖の並列された位置で組織を安定化するのに役立つことで、外科的に閉じられた創傷の治癒を支援してもよい。TNP治療のさらなる有益な使用は、過剰な流体を除去することが重要であり、組織の生存度を確保するために移植片が組織に近接していることが求められる、移植片およびフラップにおいて見出すことができる。
【0079】
本明細書に使用する通り、-XmmHgなど、減圧または陰圧レベルは、760mmHg(または1atm、29.93inHg、101.325kPa、14.696psiなど)に相当しうる、平常の周囲気圧に対する圧力レベルを表す。したがって、-XmmHgの陰圧値は、760mmHgよりもXmmHg低い絶対圧力、または、言い換えれば、(760-X)mmHgの絶対圧力を反映する。さらに、XmmHgよりも「低い」または「小さい」陰圧は、大気圧により近い圧力に相当する(例えば、-40mmHgは-60mmHgよりも低い)。-XmmHgよりも「高い」または「大きい」陰圧は、大気圧からより遠い圧力に相当する(例えば、-80mmHgは-60mmHgよりも高い)。一部の実施形態では、局所的な周囲気圧は基準点として使用され、そのような局所的な気圧は、必ずしも、例えば、760mmHgでなくてもよい。
【0080】
本開示の一部の実施形態に関する陰圧範囲は、約-80mmHg、または約-20mmHgから-200mmHgの間でありうる。これらの圧力は、760mmHgでありうる、平常の周囲気圧に対して相対的であることには留意されたい。それゆえ、-200mmHgは、実質的には約560mmHgであろう。一部の実施形態では、圧力範囲は、約-40mmHgと-150mmHgとの間でありうる。代替として、最高-75mmHg、最高-80mmHgまたは-80mmHgを超える圧力範囲が使用されうる。また、他の実施形態では、-75mmHgを下回る圧力範囲が使用されうる。代替として、およそ-100mmHgまたはさらに-150mmHgより上の圧力範囲が、陰圧装置により供給されうる。
【0081】
本明細書に記載する創傷閉鎖デバイスの一部の実施形態では、創傷収縮の増加が、囲んでいる創傷組織における組織拡張の増加につながりうる。この影響は、場合により、創傷閉鎖デバイスの実施形態によって創傷に適用される引張力の増加と連動して、組織に適用される力を変化させること、例えば、時間と共に創傷に適用される陰圧を変化させることによって増大する場合がある。一部の実施形態では、陰圧は、例えば正弦波、方形波を使用して、または、一つまたは複数の患者の生理的指標(例えば、心拍)と同期して、経時的に変化させられうる。前述に関するさらなる開示を見つけることができる、そのような適用の例には、2012年8月7日に発行された名称「Wound treatment apparatus and method」の米国特許第8,235,955号、および2010年7月13日に発行された名称「Wound cleansing apparatus with stress」の米国特許第7,753,894号を含む。これら両特許の開示は、参照することによりその全体が本明細書に援用される。
【0082】
本明細書に記載する創傷被覆材、創傷被覆材構成要素、創傷治療装置および方法の実施形態は、また、2013年5月22日に国際出願番号第PCT/IB2013/001469号で出願され、2013年11月28日に国際公開第2013/175306A2号として公開された、名称「APPARATUSES AND METHODS FOR NEGATIVE PRESSURE WOUND THERAPY」、2013年7月31日に国際出願番号第PCT/IB2013/002060号で出願され、国際公開第2014/020440号として公開された、名称「WOUND DRESSING」に記載されるものと組み合わせて、またはそれらに加えて使用されてもよく、それらの開示は、参照することによりその全体が本明細書に援用される。本明細書に記載する創傷被覆材、創傷治療装置および方法の実施形態はまた、2011年4月21日に米国特許出願第13/092,042号で出願され、米国特許第9,061,095号として公開された、名称「WOUND DRESSING AND METHOD OF USE」、および2015年5月18日に米国特許出願第14/715,527号で出願された、名称「FLUIDIC CONNECTOR FOR NEGATIVE PRESSURE WOUND THERAPY」に記載されるものと組み合わせて、またはそれらに加えて使用されてもよく、それらの開示は、創傷被覆材の実施形態、創傷被覆材の構成要素および原理、ならびに創傷被覆材に使用される材料に関するさらなる詳細を含め、参照することによりその全体が本明細書に援用される。
【0083】
加えて、本明細書に記載する、ポンプまたは関連電子機器と組み合わせた、創傷被覆材を含むTNP創傷治療に関係する一部の実施形態は、また、2016年4月26日に国際特許出願番号第PCT/EP2016/059329号で出願され、2016年11月3日に国際公開第2016/174048号として公開された、名称「REDUCED PRESSURE APPARATUSES」に記載されるものと組み合わせて、またはそれらに加えて使用されてもよく、その全体は、参照することにより本明細書に援用される。これらの実施形態の一部では、ポンプまたは関連する電子部品は、創傷被覆材に組み込まれて、創傷に適用される単一の物品を提供しうる。
【0084】
不織布材料
図1Aは、開口不織布材料を図示する。開口不織布材料は、2016年6月1日に公開され、特許の付与に言及した、欧州特許番号第1644564B1号、名称「NONWOVEN SPACER FABRIC」に記載された不織布材料と同様であり得、この特許には開口不織布を作成する方法が開示され、その内容はその全体が参照により援用される。一部の実施形態では、不織布材料は、開口水流交絡不織布でありうる。水流交絡不織布は、水流交絡プロセスと共に結合された二つの材料ウェブから成りうる。水流交絡プロセスは、湿潤または乾燥繊維ウェブのための結合プロセスであり、不織布を形成する。水流交絡プロセスでは、ウェブを貫通する微細で高圧の水ジェットを使用することによって繊維を交絡させ、コンベアベルトに当たり、跳ね返って交絡を引き起こす。このプロセスを通して、二つの材料ウェブは、構造内のチャネルまたは開口部の形成を可能にする様式で一緒に結合されうる。
【0085】
図1Aは、不織布層11の実施形態を図示する。不織布層11は、相互接続された第一の繊維表面層13および第一の繊維基層15を含みうる。一部の実施形態では、第一の表面は、水流交絡プロセスまたはその他の形成プロセスによって作成されるチャネルまたは開口部18を含むことができる。チャネルまたは開口部18は、不織布内に空隙を作り出す。一部の実施形態では、チャネルまたは開口部18は、それらを製造するために使用される材料の直径、および最上ウェブの密度に応じて、波型表面、突出したチャネル、またはよりわずかなチャネルとして示しうる。本明細書で使用される場合、「層」という用語は、材料の単一の層または材料の複数の層を指すことができる。
【0086】
不織布材料で作られたチャネルまたは開口部は、材料内で提供される構造に利用できる。繊維選択および結合レベルは、剛性および望ましい圧縮/回復性能を提供するように操作されうる。一部の実施形態では、不織布層は、ポリエステルおよび二成分繊維の混紡であってもよく、剛性な混紡を生成することができる。一部の実施形態では、不織布層は、熱可塑性繊維および二成分繊維を含む、繊維混紡または合成繊維またはセルロース繊維を含むことができる。一部の実施形態では、不織布層は、ウェブの配置および異なる繊維混合物を利用して、親水性布面および疎水性布裏面または基部で操作されうる。その他の実施形態では、布面は疎水性であり、布裏面または基部は親水性でありうる。
【0087】
図1Aに示すように、開口不織布層は、開口不織布層の長さにわたって実質的に一定の断面を有しうる。チャネルおよび開口部18は、チャネルの周りを形成する長方形の凹部17を有する図1Aに示すものと類似した長方形の形状を有しうる。その他の実施形態では、チャネルは、材料内の丸み付きチャネルまたは材料内の三角形チャネルとすることができる。丸み付きチャネルは波型表面として示されうる。一部の実施形態では、不織布層の開口トンネルの高さおよび幅は、0.5~5mmの間で変化しうる。一部の実施形態では、開口トンネルの高さおよび幅は、約0.5~1mm、約1~2mm、約2~3mm、約3~4mm、および約4~5mmの間でありうる。二方向のなじみ性を作り出すために、不織布層の開口線は、スリット、ジグザグであってもよく、またはチェッカーボード効果を作るように作成されてもよい。一部の実施形態では、開口不織布層の単一層を、創傷被覆材の不織布スペーサー層として使用できる。
【0088】
一部の実施形態では、図1Bに示すように、この構造の二つの層を互いに反転させて、スペーサータイプの層を作り出すことができる。図1Bは、不織布スペーサー層を形成できる二つの不織布層11、12の実施形態を図示する。一部の実施形態では、不織布層は、水流交絡不織布層でありうる。第一の不織布層11は、相互接続された第一の繊維表面層13および第一の繊維基層15を有しうる。第二の不織布層12は、相互接続された第二の繊維表面層14および第二の繊維基層16を含みうる。第一の不織布層11は、第二の不織布層12上に反転させて、創傷被覆材で使用するためのスペーサータイプの層を作り出すことができる。図1Bに示すように、第一の不織布層11の第一の表面層13は、第二の不織布層12の第二の表面層14と接触しうる。
【0089】
一部の実施形態では、二つの不織布層から形成される層は、荷重下の圧縮および圧縮回復に関して、本明細書に記載の3Dスペーサー生地またはその他のスペーサー生地の性能上の利益を有することができる。例えば、一部の実施形態では、本明細書に記述した不織布層から形成されるスペーサー層は、層および/または創傷被覆材に陰圧を印加すると開いたままでありうる。一部の実施形態では、不織布層の開口部、チャネル、および/またはスリットは、独特の流体管理特性を可能にすることができる。
【0090】
図2Aは、開口部またはチャネル18を有する不織布層11の実施形態を図示する。図2Bは、創傷被覆材で使用するためのスペーサー層を形成するために、一方の不織布層を他方の上で反転させた、二つの不織布層11、12の実施形態を図示する。図2Bに示すように、第一の不織布層11の第一の表面層13が、第二の不織布層12の第二の表面層14と接触するように、第一の不織布層11を反転させることができる。第二の不織布層12の複数のチャネルは、図2Bに示す通り、第一の不織布層11の複数のチャネルの間の窪み内に埋め込まれうる。一部の実施形態では、第二の不織布層12の複数のチャネルは、第一の不織布層11の複数のチャネルの上に直接配置されうる。こうした実施形態では、スペーサー層は、第二の不織布層が、相互に埋め込まれるのではなく、第一の不織布層の上に置かれるため、図1Bおよび2Bに示すものとは異なる。
【0091】
一部の実施形態では、第一または第二の不織布層のチャネルは、第一および第二の不織布層の全長にわたって延びる。第一の不織布層のチャネルは、第一の方向に延び、第二の不織布層のチャネルは第二の方向に延びる。一部の実施形態では、第一の不織布層のチャネルは、第二の不織布層のチャネルに並行でありうる。その他の実施形態では、第一の不織布層のチャネルは、第二の不織布層のチャネルに垂直でありうる。こうした実施形態では、スペーサー層は、第二の不織布層が、相互に埋め込まれるのではなく、第一の不織布層の上に置かれるため、図1Aおよび図2Bに示すものとは異なる。第二の不織布層の複数のチャネルは、第一の不織布層の複数のチャネルのからオフセットされうる。一部の実施形態では、不織布層の長さを横切って延びるように、チャネルは直線でありうる。その他の実施形態では、不織布層の長さを横切って延びるように、チャネルはジグザグでありうる。
【0092】
図3Aは、創傷被覆材で使用するための三次元構造を有する不織布スペーサー層12の実施形態を図示する。
【0093】
一部の実施形態では、本明細書に記載されているように、三次元不織布スペーサー層12は、創傷被覆材のスペーサーまたは透過層として使用できる。一部の実施形態では、本明細書に記載の三次元不織布材料構造は、従来の不織布構造では現在利用できない、高レベルの圧縮回復および荷重特性下での独特な圧縮を提供できる。これらの特性により、三次元不織布スペーサー層を創傷被覆材で使用することが可能になり、被覆材が圧縮されていても、スペーサー層内の開口チャネルを通る流体の透過が可能になる。
【0094】
一部の実施形態では、典型的な不織布を、三次元(3D)構造に構成することができる。三次元構造は、図3Aに図示するように、卵ボックス型構造とすることができる。
【0095】
一部の実施形態では、熱および圧力は、波型構造、三次元ジグザグパターン、卵ボックス型構造、チェッカーボード構造、および六角形(ハニカム)構造など、3D構造に不織布を設定するために使用できる。三次元ジグザグ構造は、波型構造と類似している可能性があるが、波型線の代わりのジグザグなどの形状は2方向のなじみ性を可能にすることができる。不織布材料の繊維系媒体は、スペーサー層の圧縮回復特性を可能にしうる。
【0096】
一部の実施形態では、不織布材料は、三次元構造に熱成形されうる。その他の実施形態では、三次元不織布材料は、化学結合および真空形成を使用して形成されうる。
【0097】
一部の実施形態では、三次元不織布スペーサー層は、それぞれの厚さが約2~10mmの卵ボックス型パターンに成形される、二層または三層のポリプロピレン系の水流交絡不織布から成ることができる。一部の実施形態では、三次元不織布スペーサー層は、それぞれの厚さが2mm未満、約2~3mm、約3~4mm、約4~5mm、約5~6mm、約6~7mm、約7~8mm、約8~9mm、約9~10mm、および/または10mmを超える、卵ボックス型パターンに成形される、二層または三層のポリプロピレン系の水流交絡不織布から成ることができる。一部の実施形態では、三次元不織布スペーサー層は、それぞれの厚さが3mm前後の卵ボックス型パターンに成形される、二層または三層のポリプロピレン系の水流交絡不織布から成ることができる。不織布は、100%熱可塑性繊維含有量、または熱可塑性繊維とビスコースまたはゲル化可能繊維などその他の繊維との混紡のいずれかでありうる。一部の実施形態では、不織布スペーサー層は、バインダー繊維または二成分繊維を含みうる。不織布は、エアレイド、カーディング、またはメルトスピニングなどの従来の不織技術によって生成されうる。一部の実施形態では、等方性不織布も使用されうる。一部の実施形態では、不織布は非等方性でありうる。一部の実施形態では、三次元不織布材料は、形状記憶ポリマーを使用しうる。
【0098】
一部の実施形態では、三次元構造をその他の不織布および/または三次元不織布層の複数の層と層状にして、スペーサー層を形成することができる。図3Bは、三次元不織布構造を有する層を含む複数の材料層を備える不織布スペーサー層の実施形態の断面を図示する。三次元不織布スペーサー層31は、三次元不織布層32および保持層33および34を含む。保持層33および34は、図3Bに示すように三次元不織布層32の上および下に位置付けられうる。保持層33および34は、スペーサー層または透過層で使用するための本明細書に記載の不織布材料または任意のその他の材料でありうる。一部の実施形態では、保持層33および34は、同一の材料および材料構造でありうる。その他の実施形態では、保持層33および34は、異なる材料および異なる材料構造で形成されうる。一部の実施形態では、保持層33および34は、三次元不織布スペーサー層31およびその他の創傷被覆材層を通る、陰圧の移動のための透明なチャネルを提供するように穿孔された開口繊維を含みうる。一部の実施形態では、保持層は、ニードルパンチまたはメルトスパン不織布などの従来の不織布でありうる。一部の実施形態では、保持層は、編み生地もしくは織り生地、または発泡体でありうる。一部の実施形態では、保持層は、押出しウェブ、ネットもしくはフィルム、または3D印刷構造とすることができる。保持層は、穿孔されたフィルム、ネット、ウェブ、および/またはセルロースの「紙」などのパルプ系材料とすることができる。保持層は架橋層として作用し、材料を通るチャネルまたは流体流路を開いた状態に保つことができる。一部の実施形態では、不織布は、超吸収性繊維または粒子を含みうる。
【0099】
図3Cは、三次元構造を有する複数の層を含む複数の材料層を備えるスペーサー層の実施形態の断面を図示する。三次元不織布31は、第一の三次元不織布層35、第二の三次元不織布層36、および保持層37を含む。保持層37は、第一および第二の三次元不織布層35と36の間に位置付けられうる。保持層37は、スペーサー層または透過層で使用するための本明細書に記載の不織布材料または任意のその他の材料でありうる。一部の実施形態では、保持層37は、三次元不織布スペーサー層31およびその他の創傷被覆材層を通る、陰圧の移動のための透明なチャネルを提供するように穿孔された開口繊維を含みうる。一部の実施形態では、保持層は、ニードルパンチまたはメルトスパン不織布などの従来の不織布でありうる。一部の実施形態では、保持層は、編み生地もしくは織り生地、または発泡体でありうる。一部の実施形態では、保持層は、押出しウェブ、ネットもしくはフィルム、または3D印刷構造とすることができる。保持層は、穿孔されたフィルム、ネット、ウェブ、および/またはセルロースの「紙」などのパルプ系材料とすることができる。保持層は架橋層として作用し、材料を通るチャネルまたは流体流路を開いた状態に保つことができる。一部の実施形態では、不織布は、超吸収性繊維または粒子を含みうる。
【0100】
一部の実施形態では、スペーサー層は、第一の三次元不織布スペーサー層および第二の三次元不織布スペーサー層を含みうる。第一の三次元不織布スペーサー層は、第二の三次元不織布スペーサー層の上に配置されうる。第一および第二の三次元不織布スペーサー層は、熱成形不織布層でありうる。
【0101】
創傷被覆材
一部の実施形態では、図1A図2Bを参照しながら説明した開口不織布層と類似した開口不織布層の一つまたは複数の層は、創傷被覆材に配置されうる。一部の実施形態では、創傷被覆材は、創傷接触層、一方を他方の上に反転してスペーサータイプ層を作り出す二つの水流交絡不織布層、吸収層、および上部フィルムまたは裏当て層を含みうる。一部の実施形態では、吸収層は、スペーサー層に過度にかつ直接接触することができる。
【0102】
一部の実施形態では、図3A図3Cに関連して説明した三次元不織布スペーサー層と類似して構成された三次元不織布は、創傷被覆材に配置されうる。一部の実施形態では、創傷被覆材は、創傷接触層、三次元不織布スペーサー層、吸収層、および最上フィルムまたは裏当て層を含みうる。
【0103】
一部の実施形態では、吸収層は、超吸収性粒子または繊維を含む不織布を含むことができる。いくつかの実施形態では、上部フィルムまたは裏当て層は、透湿性材料でありうる。一部の実施形態では、被覆材は、上部フィルムまたは裏当て層の下に位置するマスキング層を含みうる。一部の実施形態では、吸収層は、スペーサー層に過度にかつ直接接触することができる。
【0104】
創傷被覆材は、陰圧創傷装置内に含めるのに適していてもよい。
【0105】
創傷被覆材は、非陰圧創傷装置内に含めることに適していてもよい。
【0106】
被覆材は、簡単に適用できるように設計されており、一つのピースで取り外すことができる。
【0107】
一実施形態では、被覆材は二次的保持を必要としない。
【0108】
創傷被覆材は、包んで滅菌してもよい。
【0109】
創傷被覆材は、陰圧創傷被覆材または非陰圧創傷被覆材であってもよい。
【0110】
一実施形態で開示された技術は、創傷被覆材を含む非陰圧創傷治療キットに関する。
【0111】
創傷被覆材は、陰圧創傷被覆材装置の被覆材構成要素として使用されうる。異なる実施形態における装置は、キャニスターを含む場合と、キャニスターを含まない場合がある。
【0112】
一実施形態では、開示された技術は、上述のように概説された創傷被覆材と創傷被覆材に流体接続されるように構成された陰圧源とを含む陰圧創傷治療キットに関する。
【0113】
一実施形態では、開示された技術は、創傷に陰圧創傷治療を提供する方法に関し、該方法は、
創傷上に概説された創傷被覆材を配置することと、
創傷被覆材と陰圧源との間に流体流路を形成することと、
陰圧源を操作して、陰圧を創傷に提供することと、を含む。
【0114】
一実施形態では、開示された技術は、陰圧創傷システムを操作する方法に関し、該方法は、
上記に概説した創傷被覆材に流体接続された陰圧源を操作することであって、創傷被覆材は創傷の上に位置付けられるように構成される、操作することを含む。
【0115】
創傷被覆材は、非陰圧創傷被覆材装置のための創傷被覆材として使用されてもよい。
【0116】
一実施形態では、開示された技術は、吸収層を含む本明細書に開示される創傷被覆材を配置する方法に関し、創傷被覆材は創傷上に位置付けられるように構成され、滲出液は吸収層を通して滲出液を蒸発させることによって除去されうる。
【0117】
本明細書に開示される創傷被覆材は、創傷の上に1~10日間、典型的には3~7日配置されてもよい。創傷被覆材は、HCPの意見で創傷が十分に治癒したとき、および/または吸収層/キャニスターが飽和/満杯であるときのいずれかで交換されうる。元の被覆材を残したまま、創傷被覆材を交換および/またはキャニスターを交換することができる。
【0118】
一実施形態では、非陰圧創傷治療キットは、
本明細書に開示される創傷被覆材と、
被覆材固定剤(二次的保持として定義されうる)とを、含むかまたはこれらから成る。
【0119】
被覆材固定剤は、療法がこのように適用される場合、手足の創傷の上に圧着し、適度な圧力を印加する、接着(例えば感圧性接着剤)および非接着、ならびに弾性および非弾性のストラップ、バンド、ループ、細片、ひも、包帯、例えば、圧迫包帯、シーツ、カバー、スリーブ、ジャケット、シース、ラップ、ストッキングおよびホース、例えば、弾性チューブ状ホースまたは弾性チューブ状ストッキング;また療法がこのように適用される場合、手足の創傷の上に圧着し、適度な圧力を印加する、膨張式カフ、スリーブ、ジャケット、ズボン、シース、ラップ、ストッキングおよびホースを含むことのできる固定手段であってもよい。
【0120】
こうした固定手段は、それぞれが創傷被覆材の裏当て層の周辺を越えて延びるように創傷被覆材の上に配置されてもよく、必要に応じて創傷および/またはその周りの皮膚に接着もしくは他の方法で固定され、必要に応じて創傷の周辺に流体密シールを配置する創傷被覆材を保持するのに十分な程度に圧縮(例えば、弾性包帯、ストッキング)を印加する。
【0121】
こうした固定手段は、それぞれが被覆材、特に裏当て層の他の構成要素と一体化されうる。
【0122】
別の方法として、例えば接着剤フィルムを用いて、被覆材、特に裏当て層に永久的にまたは取り外し可能に取り付けることができ、またはこれらの構成要素は、互いにVelcro(商標)、プッシュスナップ、もしくはツイストロックフィットであってもよい。
【0123】
固定手段および被覆材は、互いに永久的に取り付けられていない別個の構造であってもよい。
【0124】
一実施形態では、被覆材固定剤は、包帯、チューブ状または圧縮包帯、テープ、ガーゼ、または裏当て層を含みうる。
【0125】
一実施形態では、開示された技術は、創傷に創傷治療を提供する非陰圧方法に関し、この方法は、創傷に本明細書に開示される創傷被覆材を配置することと、包帯、テープ、ガーゼ、または裏当て層などの被覆材固定剤で被覆材を固定することとを含む。
【0126】
裏当て層
一実施形態では、創傷被覆材は、裏当て層をさらに含む。
【0127】
裏当て層は、透明または不透明なフィルムでありうる。透明裏当て層(最上層または上部フィルムと呼ばれうる)は、医療専門家(HCP)に、被覆材を持ち上げたり、取り外したりする必要なく、創傷周囲領域および創傷そのものを含む創傷部位の定期的な評価を実施する能力を提供しうる。これにより、HCPが、治癒過程を遅らせる可能性がある兆候に、早期に反応することを可能にしうる。治癒を奨励し、感染の可能性を低減することで、回復時間の短縮と治療コストの低減がもたらされる。
【0128】
透明裏当て層を形成するために使用される材料は、高い水蒸気透過率(MVTR)を有してもよく、それによって不要な水分を蒸発させ、感染および浸軟を防止することができる。
【0129】
透明裏当て層は耐水性であってもよく、それによって患者は被覆材をつけたままのシャワー/入浴が可能になる。
【0130】
透明裏当て層は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を含む細菌に対するバリアを提供しうる。これにより、外科手術部位感染(SSI)および医療関連感染症(HAI)の発生が減少し、医療提供者に関連する潜在的なコストが削減され、患者の長期入院が低減される。
【0131】
透明裏当て層は、水および汚れに対するバリアとしてさらに作用しうる。
【0132】
裏当て層は、フィルムであってもよい。一実施形態では、裏当て層はポリウレタンフィルムである。ポリウレタンフィルムは、抗菌剤、臭気制御、顔料、染料またはUV破壊剤などの添加剤で随意に機能化されてもよい。裏当て層は、モノリシックもしくは微多孔性フィルムまたは発泡体であってもよい。また、不透過性フィルムであってもよい。
【0133】
一実施形態では、創傷被覆材は、裏当て層をさらに含まない。
【0134】
接着層
一実施形態では、創傷被覆材は、接着層をさらに含む。
【0135】
接着層は、以下の場所に位置しうる。
(i)開示された技術の第一の層と第二の層との間
(ii)存在する場合、存在するいかなる吸収層の周縁部を越えて延びる裏当て層(典型的には透明のフィルム層)の周縁部
【0136】
接着剤は、シリコーン接着剤、またはアクリル接着剤でありうる。
【0137】
接着剤は、開示された技術の第一および第二の層の表面にわたって均等に広がってもよい。均一に広がる接着剤は、開示された技術の層の表面がしっかりと接合されることを確実にしうる。
【0138】
接着層が裏当て層の下側にある場合、創傷被覆材に創傷周囲領域への接着を提供する。
【0139】
別の方法として、接着剤をパターンで広げ、フィルムの通気性を高め、取り外し時の快適性を改善することができる。
【0140】
使用される接着剤は低アレルギーでありうる。このタイプの接着剤は、被覆材の取り外しの際の外傷を減少させ、および/またはアレルギー反応のリスクを低減させる。
【0141】
一実施形態では、創傷被覆材は、比較的平面状の形態を有する被覆材を形成するために、概して層状の様式で構築される多数の層を含みうる。このような創傷被覆材の実施例は、例えば、国際公開第2013/007793号に開示されている場合がある。
【0142】
一実施形態では、創傷被覆材は、被覆材の外周に沿って延びる境界領域と、(平面図では)被覆材の中央の隆起した中央領域(またはパウチ)を含みうる。境界領域および中央領域の正確な寸法は、特定の創傷または特定の創傷タイプに適合するように予め決められてもよい。
【0143】
あるいは、別の実施形態では、境界領域が必要ない場合がある。ここで、境界領域は、創傷部位を囲む患者の皮膚と密封係合して、創傷部位の上に密閉された空洞を形成するための領域を提供する一般的な機能を有する。中央領域は、創傷被覆材のさらなる機能的要素の場所である。
【0144】
本明細書に開示される創傷被覆材は、穿孔された創傷接触層および上部フィルムを含みうる。創傷被覆材のさらなる構成要素は、以下のものを順不同で随意に含む。
- 創傷および創傷周囲を覆う適切なサイズのポリウレタンハイドロセルラーフォームの層
- 創傷側に審美的影響を制限した臭気制御を可能にする、類似またはわずかに小さい寸法の活性炭布の層
-漏れ防止として作用する超吸収性材料の重複を可能にする、わずかに大きい寸法のセルロース繊維および超吸収性ポリアクリレート粒子を含む、超吸収性エアレイド材料の層
- 色付きの滲出液が残る超吸収体の最上面の部分的なマスキングを可能にしながら、圧力からの保護を提供する、三次元編みスペーサー繊維の層。この実施形態では、これは層よりも小さな寸法(平面図で)であり、吸収層の縁部の可視性を可能にし、臨床医が被覆材を取り替える必要があるかどうかを評価するために使用できる。この実施形態では、創傷接触層は、感圧性アクリル接着剤またはシリコーン接着剤など、皮膚適合性の接着剤でコーティングされた、穿孔されたポリウレタンフィルムであってもよい。
【0145】
別の実施形態では、創傷被覆材は、上述の層のうちの二つ、三つ、またはすべてを含む。
【0146】
一実施形態では、創傷被覆材は、特定の順序で、ポリウレタンハイドロセルラーフォームの層から三次元編みスペーサー生地までの順に、上記で開示されたすべての層を含む。
【0147】
別の方法として、創傷接触層は、任意の適切なポリマー、例えば、シリコーン、エチルビニル酢酸塩、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエステル、またはそれらの組み合わせから形成されうる。皮膚適合性の接着剤は、層の下側、すなわち患者に接触する側にコーティングされる。接着剤は層の下側に連続層として適切にコーティングされる。接着剤は、チェッカーボードパターン、水玉模様、ヘリンボーンパターン、メッシュパターンまたはその他の適切なパターンなどのパターンなどの半連続層でコーティングされうる。
【0148】
被覆材
図4A図4Bは、流体コネクター110とともに創傷被覆材100を用いた、陰圧創傷治療システム10の実施形態を図示する。本明細書に記載されるポンプと組み合わせた創傷被覆材を含む陰圧創傷治療に関連する追加的な実施例は、その全体が参照により組み込まれる、米国特許第9,061,095号に記載されるものと組み合わせてまたは追加して使用されうる。図中、流体コネクター110は細長い導管を含んでよく、より好ましくは、近位端130および遠位端140を有するブリッジ120、およびブリッジ120の遠位端140にアプリケータ180を含んでもよい。任意のカップリング160がブリッジ120の近位端130に配置されることが好ましい。キャップ170が、システムに提供されうる(一部の場合、示す通り、カップリング160に取り付けられうる)。キャップ170は、近位端130から流体が漏出するのを妨げるときに有用でありうる。システム10は、ポンプまたは陰圧を供給できる陰圧ユニット150など、陰圧源を含んでもよい。ポンプは、創傷滲出液、および創傷から除去されてもよい他の流体を貯蔵する、キャニスターまたは他の容器を備えてもよい。キャニスターまたは容器はまた、ポンプとは別に提供されてもよい。一部の実施形態では、図4A図4Bに図示するように、ポンプ150は、Smith & Nephewより販売される、PICO(商標)ポンプなど、キャニスターなしのポンプでありうる。ポンプ150は、管190を介してカップリング160に接続してもよく、またはポンプ150は、カップリング160に直接、もしくはブリッジ120に直接接続し得る。使用中、被覆材100は、一部の場合、発泡体またはガーゼなどの創傷パッキング材料で満たされてもよい、好適に準備された創傷の上に置かれる。流体コネクター110のアプリケータ180は、被覆材100の開口部の上に配置され、被覆材100の最上面に封止される封止表面を有する。流体コネクター110の被覆材100への接続の前、間、または後のいずれかに、ポンプ150は、管190を介してカップリング160へ接続されるか、またはカップリング160もしくはブリッジ120へ直接接続される。その後ポンプが起動され、それによって陰圧を創傷に供給する。陰圧の適用は、所望するレベルの創傷治癒を達成するまで行われてもよい。
【0149】
図4Cに示す通り、流体コネクター110は、以下にさらに詳細に記載する通り、被覆材100と流体連通する拡大遠位端または頭部140を含むことが好ましい。一実施形態では、拡大遠位端は丸い形または円形を有する。頭部140は、図中、被覆材100の端近くに位置するように示しているが、被覆材上のいずれの場所に配置されてもよい。例えば、一部の実施形態は、被覆材100の端または角上または近くではない、中心または中心から外れた場所に提供されてもよい。一部の実施形態では、被覆材10は、二つ以上の流体コネクター110を備えてもよく、各々、それと流体連通する一つまたは複数の頭部140を備える。好ましい実施形態では、頭部140は、最も幅の広い縁に沿って30mmありうる。頭部140は、上に記載した、創傷被覆材の最上面に対して封止されるように構成される、アプリケータ180を少なくとも一部形成する。
【0150】
図4Dは、流体コネクター110と共に図4Bに示される、創傷被覆材10に類似する創傷被覆材100の断面を示し、それは国際特許公開WO2013/175306A2に記載され、参照によってその全体が組み込まれる。代替として、本明細書に開示するいずれの創傷被覆材の実施形態、または本明細書に開示する創傷被覆材の実施形態のいずれの数の特徴のいかなる組み合わせでもありうる、創傷被覆材100は、治療される創傷部位の上に置かれうる。被覆材100は、創傷部位の上に密閉された空洞を形成するために設置されてもよい。好ましい実施形態では、被覆材100は、最上層もしくはカバー層、または任意の創傷接触層222に取り付けられる裏当て層220を備え、それらの両方について以下により詳細に記載する。これら二つの層220、222は、内部空間またはチャンバを画定するために、共に接合または封止されることが好ましい。この内部空間またはチャンバは、陰圧を分配または伝達し、創傷滲出液および創傷から除去された他の流体を貯蔵するように適応してもよい追加構造と、以下により詳細に説明するであろう他の機能とを備えてもよい。以下に記載するそのような構造の例は、透過層226および吸収層221を含む。
【0151】
本明細書で使用される通り、上部層、最上層または上方の層は、被覆材が使用中で、創傷の上に位置する間、皮膚または創傷の表面から最も遠い層を指す。したがって、下面、下部層、最下層または下方の層は、被覆材が使用中で、創傷の上に位置する間、皮膚または創傷の表面に最も近い層を指す。
【0152】
図4Dに図示するように、創傷接触層222は、ポリウレタン層、ポリエチレン層、または、例えば、ホットピンプロセス、レーザアブレーションプロセス、または超音波プロセスを介すか、またはその他のいくつかの方法で穴加工された、あるいは別の方法で液体および気体が透過するようにしたその他の可撓性のある層であってもよい。創傷接触層222は、下面224と上面223とを有する。パーフォレーション225は、創傷接触層222において貫通孔を含み、それによって流体が層222を通って流れることが可能となるのが好ましい。創傷接触層222は、創傷被覆材の他の材料中への組織内殖を防ぐのに役立つ。パーフォレーションは、その中を通って流体が流れるのを可能にしつつ、この要件を満たすのに十分小さいことが好ましい。例えば、0.025mmから1.2mmの範囲の寸法を有するスリットまたは孔として形成された穿孔は、創傷滲出液が被覆材内に流れるのを可能にしつつ、創傷被覆材内に組織が内部成長するのを防止する一助となるには十分小さいと考えられる。一部の構成では、創傷接触層222は、陰圧を創傷に維持するために、吸収性パッドの周りに気密状態をも作り出しながら、被覆材100全体の完全性を維持するのに役立つ場合がある。
【0153】
創傷接触層222の一部実施形態はまた、任意の上部および下部接着層(図示せず)用の担体として働いてもよい。例えば、下部感圧接着剤が、創傷被覆材100の下面224上に提供されてもよい一方、上部感圧接着層は、創傷接触層の上面223上に提供されてもよい。シリコーン、ホットメルト、親水コロイドもしくはアクリルをベースとする接着剤、または他のそのような接着剤であってもよい感圧接着剤は、創傷接触層の両側面上、もしくは任意で選択された片側面上に形成されてもよく、または創傷接触層のどちらの側面上にも形成されなくてもよい。下部感圧接着層を利用することが、創傷被覆材100を創傷部位の周りの皮膚に接着させる助けになってもよい。一部の実施形態では、創傷接触層は穿孔ポリウレタンフィルムを含んでもよい。フィルムの下面はシリコーン感圧接着剤を提供されてもよく、上面はアクリル感圧接着剤を提供されてもよく、それによって被覆材がその完全性を維持するのを助けてもよい。一部の実施形態では、ポリウレタンフィルム層の上面および下面の両面上に接着層を提供してもよく、全三層は共に穴加工されていてもよい。
【0154】
透過層226は、創傷接触層222の上方に置かれうる。一部の実施形態では、透過層を多孔質材料とすることができる。本明細書で使用される場合、透過層はスペーサー層と呼ぶことができ、本明細書で説明した同一の構成要素を意味するために用語を交換可能に使用することができる。この透過層226により、液体および気体を含む流体が、創傷部位から離れて創傷被覆材の上部層中へと透過することが可能になる。特に、透過層226によって、吸収層が相当量の滲出液を吸収しても創傷エリアの上に陰圧を伝えるよう、外気チャネルが確実に維持されうることが好ましい。層226は、好ましくは、上述の通り、陰圧創傷療法時に適用されることになる通常の圧力の下で開放されたままになるべきであり、それによって、創傷部位全体が等しい陰圧を受ける。層226は、三次元構造を有する材料から形成されてもよい。例えば、編みもしくは織りスペーサー生地(例えば、Baltex7970の横編ポリエステル)、または不織布が使用されうる。三次元材料は、国際出願第WO2013/175306A2号および国際出願第WO2014/020440号に記載される材料と類似した3Dスペーサー生地材料を含むことができ、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0155】
一部の実施形態では、層226は、本明細書で前述し、図1A図2Bに図示する通り、不織布の二つの層から形成された開口不織布スペーサー層を含むことができる。一部の実施形態では、開口不織布スペーサー層は、第一の不織布層および第二の不織布層を含みうる。第一の不織布層は、相互接続された第一の繊維表面層および第一の繊維基層から形成されうる。第二の不織布層は、相互接続された第二の繊維表面層および第二の繊維基層を含みうる。第一の不織布層は、第二の不織布層上に反転させて、創傷被覆材で使用するためのスペーサータイプの層を作り出すことができる。第一の不織布層の第一の表面層は、第二の不織布層の第二の表面層と接触しうる、および/またはその上に位置づけられうる。一部の実施形態では、不織布層は、水流交絡不織布層でありうる。
【0156】
一部の実施形態では、不織布層の複数の開口部はチャネルを形成することができる。不織布材料で作られたチャネルまたは開口部は、材料内で提供される構造に利用できる。例えば、一部の実施形態では、本明細書に記述した不織布層から形成されるスペーサー層は、層および/または創傷被覆材に陰圧を印加すると開いたままでありうる。一部の実施形態では、不織布層の開口部、チャネル、および/またはスリットは、独特の流体管理特性を可能にすることができる。一部の実施形態では、二つの不織布層から形成される層は、荷重下の圧縮および圧縮回復に関して、本明細書に記載の3Dスペーサー生地またはその他のスペーサー生地の性能上の利益を有することができる。こうした実施形態では、開口不織布スペーサー層は、液体および気体を含む流体を創傷部位から創傷被覆材の上層へと透過させることができる。
【0157】
一部の実施形態では、層226は、本明細書で前述し、図3A図3Cに図示する通り、三次元不織布スペーサー層構造を備えることができる。一部の実施形態では、熱および圧力は、波型構造、三次元ジグザグパターン、卵ボックス型構造、チェッカーボード構造、および六角形(ハニカム)構造など、3D構造に不織布を設定するために使用できる。一部の実施形態では、不織布材料は、三次元構造に熱成形されうる。その他の実施形態では、三次元不織布材料は、化学結合および真空形成を使用して形成されうる。
【0158】
一部の実施形態では、3D構造は、互いの上に重ねるかまたは従来の不織布で層状にし、創傷被覆材で使用するスペーサータイプの層を作り出すことができる。
【0159】
例えば、一部の実施形態では、本明細書に記述した不織布層から形成されるスペーサー層は、層および/または創傷被覆材に、圧縮および/または陰圧を加えると開いたままでありうる。一部の実施形態では、不織布スペーサー層の三次元構造は、固有の流体管理特性を可能にすることができる。一部の実施形態では、不織布層から形成される三次元不織布スペーサー層は、荷重下の圧縮および圧縮回復に関して、本明細書に記載の3Dスペーサー生地またはその他のスペーサー生地の性能上の利益を有することができる。こうした実施形態では、三次元不織布スペーサー層は、液体および気体を含む流体を創傷部位から創傷被覆材の上層へと透過させることができる。
【0160】
一部の実施形態では、透過層226の上方に吸収性材料の層221が設けられる。発泡体もしくは不織りの自然または合成材料を含んでもよく、任意で超吸収性材料を含んでもよい吸収性材料は、流体、具体的には、創傷部位から除去される液体用の貯留部を形成する。一部の実施形態では、層221もまた、流体を裏当て層220の方へ引き寄せるのに役立ってもよい。
【0161】
吸収層221の材料はまた、創傷被覆材100内に収集された液体が被覆材内で自由に流れるのを防止し得、好ましくは、収集されたいかなる液体も被覆材内に含むよう作用する。吸収層221はまた、流体を創傷部位から引き寄せ、吸収層中に渡って貯蔵するように、吸い上げ作用によって層全体に流体を分配するのを助ける。これによって、吸収層の範囲における凝集を防止するのを補助する。吸収性材料の容量は、陰圧を適用するとき、創傷の滲出液が流れる速度を管理するのに十分でなくてはならない。使用中、吸収層は陰圧を経験するため、吸収層の材料は、そのような状況下で液体を吸収するように選ばれる。例えば、超吸収体材料といった、陰圧下にあるとき液体を吸収できる、いくつかの材料が存在する。吸収層221は通常、ALLEVYN(商標)発泡体のFreudenberg114-224-4またはChem-Posite(商標)11C-450より製造されてもよい。一部の実施形態では、吸収層221は、超吸収性粉末、セルロースなどの繊維材料、および結合繊維を含む複合材を含んでもよい。好適な実施形態では、複合材は、エアレイドの、熱結合複合材である。
【0162】
一部の実施形態では、吸収層221は、層中に渡って分散する乾燥粒子の形態である超吸収性材料を有する、不織セルロース繊維の層である。セルロース繊維の使用によって、被覆材により吸収される液体を素早くかつ均等に分配するのに役立つ、高速吸い上げ要素が導入される。多数の撚糸様繊維を並列させることが、液体を分配するのに役立つ繊維パッドの、強い毛細管作用につながる。このように、超吸収性材料に液体を効率的に供給する。また、吸い上げ作用によって、被覆材の蒸散率を増加させるのに役立つように、液体を上部カバー層と接触させるように支援する。
【0163】
陰圧を被覆材100に印加することが可能になるように、開口部、孔またはオリフィス227が、好ましくは、裏当て層220に設けられる。流体コネクター110は、被覆材100の中に作られるオリフィス227の上で、裏当て層220の最上部に取り付けられるか、または封止され、オリフィス227を通って陰圧を伝えることが好ましい。長いチューブが、被覆材から流体を汲み上げることが可能になるように、第一端部で流体コネクター110に、第二端部でポンプユニット(図示せず)に連結されてもよい。流体コネクターが創傷被覆材の最上層に接着する場合、長いチューブは、チューブまたは導管が、流体コネクターから離れて平行に、または実質的に被覆材の最上面へ延在するような、流体コネクターの第一端部で連結されてもよい。流体コネクター110は、アクリル、シアノアクリレート、エポキシ、UV硬化性またはホットメルト接着剤などの接着剤を使用して、裏当て層220に接着および封止してもよい。流体コネクター110は、ショアAスケールで30から90の硬度を有する、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、シリコーンまたはポリウレタンといった柔らかいポリマーから形成されてもよい。一部の実施形態では、流体コネクター110は、柔らかい材料または適合する材料から作られてもよい。
【0164】
好ましくは、吸収層221は、流体コネクター110の下にあるように配置される、少なくとも一つの貫通孔228を含みうる。貫通孔228は、一部の実施形態では、裏当て層の開口部227と同じサイズであってもよく、またはより大きいもしくは小さくてもよい。図4Dに図示する通り、単一の貫通孔は、流体コネクター110の下にある開口部をもたらすように使用され得る。複数の開口部が、代替として利用されうることは理解されるであろう。加えて、二つ以上のポートが、本開示の特定の実施形態に従って利用されるべき場合、一つまたは二つ以上の開口部が、各流体コネクターと位置を合わせて、吸収層および遮蔽層に作られてもよい。本開示の特定の実施形態には必須ではないものの、超吸収層に貫通孔を使用することで、吸収層が飽和に近いとき特に、遮断されないままの流体流路を提供してもよい。
【0165】
開口部または貫通孔228は、図4Dに示す通り、オリフィスが透過層226に直接接続するように、オリフィス227の下方の吸収層221に提供されうる。これによって、流体コネクター110に適用される陰圧を、吸収層221を通過することなく、透過層226へ伝えることが可能になる。これで、吸収層が創傷滲出液を吸収しても、創傷部位に印加される陰圧が、吸収層によって阻害されないことが保証される。他の実施形態では、開口部は吸収層221に提供されなくてもよく、または、代替として、オリフィス227の下にある複数の開口部が提供されてもよい。さらなる代替の実施形態では、別の透過層などの追加層、または図8A~8Bを参照して説明されるような、および参照することによりその全体が援用される、国際特許公開第WO2014/020440号に記載されるような不明瞭化層が、吸収層221の上および裏当て層220の下方に提供されてもよい。
【0166】
裏当て層220は、気体は透過させないが、透湿性であるのが好ましく、創傷被覆材100の幅を横切って延在しうる。例えば、片方の側面に感圧接着剤を有するポリウレタンフィルム(例えば、Elastollan SP9109)であってもよい、裏当て層220は、気体に対して不透過性であり、それゆえ、この層は創傷を被覆し、上に創傷被覆材が置かれる創傷空洞を封止するように動作する。このように、効果的なチャンバが、陰圧が確立されうる、裏当て層220と創傷部位との間に作られる。裏当て層220は、被覆材の周囲の境界領域内において、創傷接触層222に対して封止され、例えば接着技術または溶接技術を介して、境界領域に空気が吸い込まれないようにするのが好ましい。裏当て層220によって、創傷が外部の細菌汚染から保護され(細菌バリア)、層を通って創傷滲出液からの液体を移動させ、フィルム外表面から蒸発させることが可能になる。裏当て層220は、二つの層、すなわちポリウレタンフィルムとこのフィルム上に広げられた接着パターンとを含むのが好ましい。ポリウレタンフィルムは透湿性であるのが好ましく、かつ、濡れると透水率が高くなる材料から製造されてもよい。一部の実施形態では、裏当て層の透湿性は、裏当て層が濡れると高くなる。濡れた裏当て層の透湿性は、乾いた裏当て層の透湿性の最大約十倍であってもよい。
【0167】
吸収層221は、透過層226の縁と重複するように、透過層226よりも大きい範囲から成ってもよく、それによって、透過層が裏当て層220に接触しないことを保証する。これにより、創傷接触層222と直接接触する、吸収層221の外側チャネルが提供され、滲出液の吸収層へのより急速な吸収に役立つ。さらに、この外側チャネルによって、液体が創傷空洞の外周に貯留できないことが保証され、そうでない場合には、被覆材の周囲の封止部から染み出して、漏出の形成につながる場合がある。図4C~4Dに図示する通り、吸収層221によって、境界線または境界領域が、吸収層221の端と裏当て層220の端との間に画定されるように、裏当て層220の周囲よりも小さい周囲を画定してもよい。
【0168】
図4Dに示す通り、創傷被覆材100の一実施形態は、流体コネクター110の下方に置かれる吸収層221に、開口部228を備える。使用中、例えば、陰圧が被覆材100に適用されるとき、流体コネクターの創傷に面する部分は、透過層226と接触してもよく、それゆえ、吸収層221が創傷流体で満たされているときでさえ、創傷部位に陰圧を伝達するのに役立ちうる。一部の実施形態は、裏当て層220を透過層226に少なくとも一部接着させてもよい。一部の実施形態では、開口部228は、流体コネクター110の創傷に面する部分またはオリフィス227の直径よりも、少なくとも1~2mm大きい。
【0169】
特に、単一流体コネクター110および貫通孔を伴う実施形態では、図4Cに図示する通り、流体コネクター110および貫通孔が、中心から外れた位置に置かれるのが好ましい場合がある。そのような場所では、流体コネクター110が被覆材100の残余部と比較して持ち上げられるように、被覆材100を患者の上に配置することが可能になってもよい。そのように配置すると、流体コネクター110およびフィルター214は、創傷部位への陰圧の伝達を減じるために、時期を早めてフィルター214を閉塞させ得る創傷流体と、接触する可能性が低くなる場合がある。
【0170】
ここで流体コネクター110に目を転じると、好ましい実施形態は、封止面216と、近位端130および遠位端140を伴うブリッジ211(図4A図4Bのブリッジ120に相当)と、フィルター214とを含む。封止面216は、創傷被覆材の最上面に封止される、前に記載したアプリケータを形成しうる。一部の実施形態では、流体コネクター110の最下層は、封止面216を備えてもよい。流体コネクター110はさらに、一部の実施形態では、流体コネクターの別個の上部層により画定される、封止面216から垂直に間隔を空ける上面を備えてもよい。他の実施形態では、上面および下面は、材料の同じ一片から形成されてもよい。一部の実施形態では、封止面216は、創傷被覆材と連通するように、その中に少なくとも一つの開口部229を備えてもよい。一部の実施形態では、フィルター214は、封止面の開口部229を横切って配置されてもよく、開口部229全体にわたってもよい。封止面216は、創傷被覆材のカバー層に流体コネクターを封止するように構成されてもよく、接着剤または溶接部を含んでもよい。一部の実施形態では、封止面216は、カバー層のオリフィスの上に置かれてもよい。その他の実施形態では、封止面216は、カバー層のオリフィスおよび吸収層221の開口部の上に位置してもよく、流体コネクター110によって透過層226を通る気流を提供することが可能になる。一部の実施形態では、ブリッジ211は、陰圧源と連通する第一の流体通路212を含んでもよく、第一の流体通路212は、前に記載した多孔質層226と同じでもよく、または異なってもよい、多孔質材料を含む。一部の実施形態では、多孔質材料または透過性材料は、図1A図2Bを参照しながら本明細書に記述した開口不織布スペーサー層、または図3A図3Cを参照しながら本明細書に記述した三次元不織布スペーサー層構造とすることができる。一部の実施形態では、多孔質材料または透過性材料は、3D編み材料とすることができる。ブリッジ211は、近位端および遠位端を有し、第一流体通路212を囲むように構成される、少なくとも一つの可撓性フィルム層208、210によって被包されることが好ましく、可撓性フィルムの遠位端は、封止面216に接続する。フィルター214は、創傷滲出液がブリッジに侵入するのを実質的に防ぐように構成される。
【0171】
一部の実施形態はさらに、第一の流体通路212の上方に位置する、任意の第二の流体通路を備えてもよい。例えば、一部の実施形態は、2011年12月20日出願の、「APPARATUSES AND METHODS FOR NEGATIVE PRESSURE WOUND THERAPY」と題された米国特許出願第13/381885号に記載され、米国特許番号8,801,685号として特許を取得した、吸引アダプタに類似する、第一流体通路212および被覆材100中への空気経路を提供するように構成され、最上層の近位端に配置される可能性がある、空気漏れ部を提供しうるが、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0172】
好ましくは、流体通路212は、スペーサーがねじれるかまたは折り重なる場合でも、流体が通過することを可能にする、可撓性のある、規格に準拠した材料から構築される。流体通路212に適切な材料には、ポリエチレンまたはポリウレタン発泡体などの連続気泡発泡体を含む発泡体、メッシュ、3D編み布、図1A~2Bを参照して本明細書で説明される開口不織布スペーサー層、図3A~3Cを参照して本明細書で説明される三次元不織布スペーサー層構造、不織布材料、および流体チャネルが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、流体通路212は、透過層226に関して上に記載したものと、類似の材料から構築されてもよい。有利なことに、流体通路212に使用されるそのような材料によって、患者の快適性をより増すことが可能になるだけでなく、ねじれるか、または曲がっている間でも、依然として流体通路212が流体を創傷から陰圧源の方へと移動できるような、より大きなねじれ抵抗を提供してもよい。
【0173】
一部の実施形態では、流体通路212は、例えば、図1A図2Bを参照しながら本明細書に記述した開口不織布スペーサー層、または図3A図3Cを参照しながら本明細書に記述した三次元不織布スペーサー層構造などのウィッキング生地から成ってもよい。選択されたこれらの材料は、好ましくは、創傷滲出液を創傷から離すように導き、陰圧または吐出された空気を創傷部位へ伝達するために置くことができ、また、ある程度のねじれ抵抗または閉塞抵抗を、流体通路212に与えてもよい。一部の実施形態では、ウィッキング生地は、図1A図2Bを参照しながら本明細書に記述した開口不織布スペーサー層、または図3A図3Cを参照しながら本明細書に記述した三次元不織布スペーサー層構造を有してもよく、一部の場合には、流体の吸い上げまたは陰圧の伝達に役立つ場合がある。特定の実施形態では、ウィッキング生地を含むある実施形態では、これらの材料は、開放されたままで、例えば、40から150mmHgの間の陰圧療法で使用される通常圧力下において、変わらず陰圧を創傷エリアに伝えることができる。一部の実施形態では、ウィッキング生地は、互いの上に積み重なった、または積層された材料のいくつかの層を含んでもよく、一部の場合には、陰圧印加状況下において、流体通路212が崩れるのを防ぐのに有用でありうる。他の実施形態では、流体通路212に使用されるウィッキング生地は、1.5mmと6mmとの間の厚さであってもよく、より好ましくは、ウィッキング生地は、3mmと6mmとの間の厚さであってもよく、一つまたはいくつかの個別のウィッキング生地層から成ってもよい。他の実施形態では、流体通路212は1.2~3mmの間の厚さであってもよく、好ましくは1.5mmよりも厚い。一部の実施形態、例えば、創傷滲出液などの液体を保持する被覆材と共に使用される吸引アダプタは、流体通路212に疎水性の層を用いてもよく、気体のみが流体通路212を通って動いてもよい。さらに、既に記載した通り、システムに使用される材料は、快適で柔らかいものであることが好ましく、それにより患者の皮膚に押し付けられる創傷治療システムに起因する場合がある、圧迫性褥瘡およびその他の合併症を回避するのに役立つ場合がある。
【0174】
フィルター要素214は、液体に対して不透過性であるが、気体に対しては透過性があり、液体バリアとして働き、液体が創傷被覆材100から漏れ出ることができないことを保証するように設けられる。フィルター要素214はまた、細菌バリアとして機能してもよい。通常、管孔サイズは0.2μmである。フィルター要素214のフィルター材料に好適な材料には、MMT範囲からの0.2ミクロンのGore(商標)拡張PTFE、PALL Versapore(商標)200RおよびDonaldson(商標)TX6628を含む。より大きな管孔サイズも使用されうるが、これらは、二次フィルター層が、完全な生物汚染の封じ込めを保証することを必要とする場合がある。創傷流体は脂質を含有するため、必須ではないものの、例えば、0.2ミクロンのMMT-323の前に1.0ミクロンのMMT-332といった、撥油性フィルター膜を使用することが好ましい。これにより、脂質が疎水性フィルターを遮断するのを防げる。フィルター要素は、オリフィスの上のポートもしくはカバーフィルムに取り付けられうるか、または封止されうる。例えば、フィルター要素214は、流体コネクター110に成型されてもよく、または限定するものではないが、UV硬化接着剤などの接着剤を使用して、カバー層の最上部および吸引アダプタ110の最下部の一方または両方に接着してもよい。
【0175】
他のタイプの材料がフィルター要素214に使用されうることは、理解されるであろう。より広くは、薄く平坦な一枚のポリマー材料である、微多孔膜を使用することができ、これは数十億もの微細な管孔を包含する。選んだ膜に応じて、これらの管孔は、0.01マイクロメートルから10マイクロメートルより大きいサイズの範囲にありうる。微多孔膜は、親水性(水のフィルタリング)および疎水性(撥水)形態の両方で利用可能である。一部の実施形態では、フィルター要素214は、保持層と、保持層上に形成されるアクリルコポリマー膜とを含む。特定の実施形態に従う創傷被覆材100は、好ましくは、疎水性微多孔膜(MHM:microporous hydrophobic membrane)を使用する。多数のポリマーを用いて、MHMを形成してもよい。例えば、MHMは、PTFE、ポリプロピレン、PVDFおよびアクリルコポリマーの一つまたは複数から形成されてもよい。これら任意のポリマーのすべてが、疎水性および撥油性の両方でありうる、特定の表面特性を得るために処理されうる。これらによって、マルチビタミン注入物、脂質、界面活性剤、油および有機溶媒など、表面張力の低い液体を追い払うであろう。
【0176】
MHMは、空気が膜を通って流れることを可能にしながら、液体を遮断する。MHMはまた、潜在的感染エアロゾルおよび粒子を排除する、非常に効率的なエアフィルターである。MHMの単一片は、機械式バルブまたはベントを交換する選択肢として、よく知られる。それゆえ、MHMの組込みによって製品組立費を削減し、利益、および患者に対する費用/利得の割合を改善しうる。
【0177】
フィルター要素214はまた、例えば、活性炭、炭素繊維布もしくはVitec Carbotec-RT Q2003073発泡体、または類似のものといった臭気吸収材を含んでもよい。例えば、臭気吸収材は、フィルター要素214の層を形成してもよく、またはフィルター要素内の疎水性微多孔膜間に挟まれてもよい。それゆえ、フィルター要素214によって、オリフィスを通して気体を排出することが可能になる。しかしながら、液体、微粒子および病原体は被覆材に包含される。
【0178】
上記の創傷被覆材の実施形態に類似して、一部の創傷被覆材は、皮膚接触面上にシリコーン接着剤、および裏面上にアクリル接着剤を伴う穿孔創傷接触層を含む。この縁取られた層の上方には、透過層が存在する。透過層の上方には吸収層が存在する。吸収層は超吸収性不織(NW)パッドを含みうる。吸収層は、周囲をおよそ5mm越えて透過層に接しうる。吸収層は、一つの端部の方に向かう開口部または貫通孔を有しうる。開口部は直径約10mmでありうる。透過層および吸収層の上に、裏当て層がある。裏当て層は、アクリル接着剤でコーティングされた模様である、高水蒸気透過率(MVTR)フィルムでありうる。高MVTRフィルムおよび創傷接触層は、透過層および吸収層を被包して、およそ20mmの周囲境界を作り出す。裏当て層は、吸収層の開口部の上に重なる、10mmの開口部を有しうる。孔の上方には、前述した開口部の上に重なる、液体不透過性、気体透過性の半透過性膜(SPM:semi-permeable membrane)またはフィルターを含む、流体コネクターを結合しうる。
【0179】
図5A図5Dは、陰圧なしで創傷を治癒するために使用されうる、創傷被覆材の様々な実施形態を示す。図5Eは、図5A図5Dの創傷被覆材の断面図を示す。図5A図5Eの被覆材に示す通り、創傷被覆材は、図5A図5Eの被覆材がポートも流体コネクターも含まないことを除いて、図4A図4Dを参照して説明した被覆材に類似する複数の層を有することができる。図5A図5Eの創傷被覆材は、本明細書に記載する通り、カバー層501および創傷接触層505を含みうる。創傷被覆材は、創傷接触層505とカバー層501との間に位置する様々な層を含みうる。例えば、被覆材は、図4A図4Dを参照して本明細書に説明する通り、一つまたは複数の吸収層502または一つまたは複数の透過層503および504を含みうる。
【0180】
一部の実施形態では、一つまたは複数の透過層503および504は、本明細書で前述し、図1A図2Bに図示する通り、不織布の二つの層から形成された開口不織布スペーサー層を含むことができる。一部の実施形態では、開口不織布スペーサー層は、第一の不織布層および第二の不織布層を含みうる。第一の不織布層は、相互接続された第一の繊維表面層および第一の繊維基層から形成されうる。第二の不織布層は、相互接続された第二の繊維表面層および第二の繊維基層を含みうる。第一の不織布層は、第二の不織布層上に反転させて、創傷被覆材で使用するためのスペーサータイプの層を作り出すことができる。第一の不織布層の第一の表面層は、第二の不織布層の第二の表面層と接触しうる、および/またはその上に位置づけられうる。一部の実施形態では、不織布層は、水流交絡不織布層でありうる。
【0181】
一部の実施形態では、不織布層の複数の開口部はチャネルを形成することができる。不織布材料で作られたチャネルまたは開口部は、材料内で提供される構造に利用できる。例えば、一部の実施形態では、本明細書に記述した不織布層から形成されるスペーサー層は、層および/または創傷被覆材に陰圧を印加すると開いたままでありうる。一部の実施形態では、不織布層の開口部、チャネル、および/またはスリットは、独特の流体管理特性を可能にすることができる。一部の実施形態では、二つの不織布層から形成される層は、荷重下の圧縮および圧縮回復に関して、本明細書に記載の3Dスペーサー生地またはその他のスペーサー生地の性能上の利益を有することができる。こうした実施形態では、開口不織布スペーサー層は、液体および気体を含む流体を創傷部位から創傷被覆材の上層へと透過させることができる。
【0182】
一部の実施形態では、一つまたは複数の透過層503および504は、本明細書で前述し、図3A図3Cに図示する通り、三次元不織布スペーサー層構造を備えることができる。一部の実施形態では、熱および圧力は、波型構造、三次元ジグザグパターン、卵ボックス型構造、チェッカーボード構造、および六角形(ハニカム)構造など、3D構造に不織布を設定するために使用できる。一部の実施形態では、不織布材料は、三次元構造に熱成形されうる。その他の実施形態では、三次元不織布材料は、化学結合および真空形成を使用して形成されうる。
【0183】
一部の実施形態では、3D構造は、互いの上に重ねるかまたは従来の不織布で層状にし、創傷被覆材で使用するスペーサータイプの層を作り出すことができる。
【0184】
例えば、一部の実施形態では、本明細書に記述した不織布層から形成されるスペーサー層は、層および/または創傷被覆材に、圧縮および/または陰圧を加えると開いたままでありうる。一部の実施形態では、不織布スペーサー層の三次元構造は、固有の流体管理特性を可能にすることができる。一部の実施形態では、不織布層から形成される三次元不織布スペーサー層は、荷重下の圧縮および圧縮回復に関して、本明細書に記載の3Dスペーサー生地またはその他のスペーサー生地の性能上の利益を有することができる。こうした実施形態では、三次元不織布スペーサー層は、液体および気体を含む流体を創傷部位から創傷被覆材の上層へと透過させることができる。
【0185】
一部の実施形態では、別の透過層などの追加層、または遮蔽層503が、吸収層503の上および裏当て層501の下に提供されてもよい。加えて、本明細書に記載する創傷被覆材を備える、創傷治療に関係する一部の実施形態はまた、2014年5月21日に米国特許出願第2014/0249495号で出願された、名称「WOUND DRESSING AND METHOD OF TREATMENT」と組み合わせて、または該米国特許出願に追加して使用されてもよく、該米国特許出願の開示は、創傷被覆材の実施形態、創傷被覆材の構成要素および原理、ならびに創傷被覆材に使用される材料に関係する、さらなる詳細を含め、参照することによって本明細書によりその全体が援用される。
【0186】
一部の実施形態では、陰圧源(ポンプ等)および、電源、センサ、コネクター、ユーザインターフェース構成要素(ボタン、スイッチ、スピーカ、スクリーン、等)等といった、TNPシステムのいくつかまたはすべてのその他の構成要素は、創傷被覆材と一体になりうる。さらに、本明細書に記載された創傷被覆材を含む創傷治療に関連する一部の実施形態は、2017年3月6日に出願された、「WOUND TREATMENT APPARATUSES AND METHODS WITH NEGATIVE PRESSURE SOURCE INTEGRATED INTO THE WOUND DRESSING」と題する、国際出願第WO2016/174048号および国際特許出願第PCT/EP2017/055225号に記載されたものと組み合わせたりまたそれに加えたりして用いられてもよく、その開示は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれ、創傷被覆材の実施形態、創傷被覆材構成要素および原理、ならびに創傷被覆材に使用される材料および創傷被覆材構成要素に関するさらなる詳細を含む。
【0187】
一部の実施形態では、ポンプおよび/またはその他の電子構成要素が未だ、ポンプおよび/またはその他の電子機器が創傷部位から離れて配置された状態で患者に適用されることになる単一の装置の一部であるが、ポンプおよび/またはその他の電子構成要素は、創傷被覆材の吸収体および/または透過層に隣接して、またはそれらの隣に配置されるよう構成されうる。図6A図6Bは、陰圧源および/またはその他の電子構成要素を創傷被覆材内に組み込んだ創傷被覆材を示す。図6A図6Bは、ポンプおよび/またはその他の電子機器が創傷部位から離れて位置決めされた創傷被覆材1200を図示する。創傷被覆材は、電子機器エリア1261と、吸収エリア1260とを具備しうる。被覆材は、創傷接触層(図示なし)と、被覆材のその接触層とその他の層の上方に位置決めされた透湿性フィルム、すなわちカバー層1213とを含みうる。創傷被覆材層および、電子機器エリアと吸収エリアの構成要素は、図6A図6Bに示すように、1つの連続したカバー層1213によって覆われうる。
【0188】
電子機器エリア1261は、陰圧源(ポンプ等)および、電源、センサ、コネクター、ユーザインターフェース構成要素(ボタン、スイッチ、スピーカ、スクリーン、等)等といった、創傷被覆材と一体になりうるTNPシステムのいくつかまたはすべてのその他の構成要素を具備しうる。例えば、電子機器エリア1261は、図6A図6Bに示すように、ボタンまたはスイッチ1211を具備しうる。ボタンまたはスイッチ1211は、ポンプを動作させる(例えば、ポンプをオン/オフする)ために使用されうる。
【0189】
吸収エリア1260は、吸収性材料1212を具備し得、創傷部位の上に配置されうる。電子機器エリア1261は、吸収エリア1260から横にずらして配置することなどによって、創傷部位から離れて配置されうる。図6A図6Bに示すように、電子機器エリア1261は、吸収エリア1260に隣接するか、またはその隣に、その吸収エリア1260と流体連通して配置されうる。一部の実施形態では、電子機器エリア1261および吸収エリア1260はそれぞれ、長方形状であってよく、互いに隣接して配置されうる。
【0190】
一部の実施形態では、被覆材材料の追加層は、電子機器エリア1261、吸収エリア1260、またはその両エリア内に具備されうる。一部の実施形態では、被覆材は、接触層の上方、および被覆材の創傷カバー層1213の下方に配置された一つまたは複数のスペーサーまたは透過層および/または一つまたは複数の吸収層を含みうる。
【0191】
被覆材は、創傷接触層(図示なし)と、透過層(図示なし)と、透過層の上の吸収層1212と、創傷接触層、透過層、吸収層、または被覆材のその他の層の上方に位置決めされた透湿性フィルムまたはカバー層1213とを含みうる。創傷接触層は、創傷に接触するように構成されうる。創傷接触層は接着剤を、被覆材を周りの皮膚に固定するため、患者に対向する側に具備するか、または、創傷接触層をカバー層または被覆材のその他の層に固定するため、上側に具備しうる。動作時、創傷接触層は、滲出液が創傷に戻るのを阻止または実質的に防止しつつ、創傷から滲出液を取り除きやすくするよう、一方向流をもたらすように構成されうる。一つまたは複数の透過層は、創傷部位の上に陰圧を分配し、創傷被覆材内へ創傷滲出液および流体を輸送しやすくするよう支援する。一部の実施形態では、透過層は、三次元(3D)繊維から少なくとも部分的に形成されうる。さらに、創傷から吸引された滲出液を吸収および保持するための吸収層(層1212等)が利用されうる。一部の実施形態では、超吸収性材料が、吸収層1212に使用されうる。一部の実施形態では、吸収体は、形状設定された超吸収層形態を具備する。一部の実施形態では、透過層は、図1A図2Bを参照しながら本明細書に記述した開口不織布スペーサー層から少なくとも部分的に形成することができるか、または図3A図3Cを参照しながら本明細書に記述した三次元不織布スペーサー層構造とすることができる。電子機器エリアの創傷被覆材層および吸収層は、1つの連続したカバー層1213によって覆われうる。一部の実施形態では、カバー層は、気体の通過を可能にしつつも、創傷から取り除かれた液体の滲出液およびその他の液体が通過するのを防止する透湿性材料を具備しうる。
【0192】
図6Cは、ポンプおよび電子構成要素が被覆材の吸収エリアからオフセットされた、創傷被覆材の層の実施形態を図示する。図6Cに図示されるように、被覆材は、創傷に接触して配置するための創傷接触層1310を具備しうる。下側スペーサー層または透過層1311および1311’は、創傷接触層1310の上方に設けられる。一部の実施形態では、図6Cに示すように、透過層1311は、スペーサー層1311’とは別の層であってもよい。下側透過層1311および/または1311’は、創傷表面に圧力を均等に分配し、および/または、流体を創傷から逃がすことを支援しうる。吸収層1322は、下側透過層1311の上方に位置決めされうる。被覆材層1351は、電子構成要素1350を層1351内に埋め込むための切り欠き部または凹部1328を具備しうる。一部の実施形態では、切り欠き部または凹部1328は、ポンプ1327、電源1326、および/または、その他の電子構成要素を埋め込むようなサイズまたは形状とされうる。一部の実施形態では、層1351は、共に積み重ねられた複数のスペーサー層または透過層を具備しうる。一部の実施形態では、層1351は、電子構成要素1350を取り囲むよう、共に継ぎ合わされた複数のスペーサー層または透過層を具備しうる。上部透過層1317は、吸収層1322、層1351、および/または、電子構成要素1350の上方に設けられうる。
【0193】
一部の実施形態では、一つまたは複数の透過層は、本明細書で前述し、図1A図2Bに図示する通り、不織布の二つの層から形成された開口不織布スペーサー層を含むことができる。一部の実施形態では、開口不織布スペーサー層は、第一の不織布層および第二の不織布層を含みうる。第一の不織布層は、相互接続された第一の繊維表面層および第一の繊維基層から形成されうる。第二の不織布層は、相互接続された第二の繊維表面層および第二の繊維基層を含みうる。第一の不織布層は、第二の不織布層上に反転させて、創傷被覆材で使用するためのスペーサータイプの層を作り出すことができる。第一の不織布層の第一の表面層は、第二の不織布層の第二の表面層と接触しうる、および/またはその上に位置づけられうる。一部の実施形態では、不織布層は、水流交絡不織布層でありうる。
【0194】
一部の実施形態では、不織布層の複数の開口部はチャネルを形成することができる。不織布材料で作られたチャネルまたは開口部は、材料内で提供される構造に利用できる。例えば、一部の実施形態では、本明細書に記述した不織布層から形成されるスペーサー層は、層および/または創傷被覆材に陰圧を印加すると開いたままでありうる。一部の実施形態では、不織布層の開口部、チャネル、および/またはスリットは、独特の流体管理特性を可能にすることができる。一部の実施形態では、二つの不織布層から形成される層は、荷重下の圧縮および圧縮回復に関して、本明細書に記載の3Dスペーサー生地またはその他のスペーサー生地の性能上の利益を有することができる。こうした実施形態では、開口不織布スペーサー層は、液体および気体を含む流体を創傷部位から創傷被覆材の上層へと透過させることができる。
【0195】
一部の実施形態では、一つまたは複数の透過層は、本明細書で前述し、図3A~3Cに図示する通り、三次元不織布スペーサー層構造を備えることができる。一部の実施形態では、熱および圧力は、波型構造、三次元ジグザグパターン、卵ボックス型構造、チェッカーボード構造、および六角形(ハニカム)構造など、3D構造に不織布を設定するために使用できる。一部の実施形態では、不織布材料は、三次元構造に熱成形されうる。その他の実施形態では、三次元不織布材料は、化学結合および真空形成を使用して形成されうる。
【0196】
一部の実施形態では、3D構造は、互いの上に重ねるかまたは従来の不織布で層状にし、創傷被覆材で使用するスペーサータイプの層を作り出すことができる。
【0197】
例えば、一部の実施形態では、本明細書に記述した不織布層から形成されるスペーサー層は、層および/または創傷被覆材に、圧縮および/または陰圧を加えると開いたままでありうる。一部の実施形態では、不織布スペーサー層の三次元構造は、固有の流体管理特性を可能にすることができる。一部の実施形態では、不織布層から形成される三次元不織布スペーサー層は、荷重下の圧縮および圧縮回復に関して、本明細書に記載の3Dスペーサー生地またはその他のスペーサー生地の性能上の利益を有することができる。こうした実施形態では、三次元不織布スペーサー層は、液体および気体を含む流体を創傷部位から創傷被覆材の上層へと透過させることができる。
【0198】
カバー層または裏当て層1313は、上部透過層の上に配置されうる。裏当て層1313は、透過層1311、1311’、及び1317、吸収層1322、層1351、電子構成要素1350を取り囲む周縁領域において、創傷接触層1310に対して封止を形成し得る。一部の実施形態では、裏当て層1313は、被覆材構成要素が創傷に適用されるとき、その被覆材構成要素周りで形成および成型する、柔軟性のある材料のシートでありうる。その他の実施形態では、裏当て層1313は、図6Cに示すような、被覆材構成要素周りに嵌合するようあらかじめ形成され、または、あらかじめ成型された材料でありうる。
【0199】
図7Aは、創傷被覆材を含むTNP創傷治療デバイスの一実施形態を図示する。上術の通り、創傷被覆材400は、本明細書で開示される任意の創傷被覆材実施形態であってもよいし、または本明細書で開示される任意の数の創傷被覆材実施形態の特徴の任意の組み合わせを有してもよい。例えば、創傷被覆材400は、前述のようにSmith & Nephewから入手可能なPICO単一ユニット被覆材と類似していてもよい。創傷被覆材400および関連システムもまた、図4A図4Dに前述のシステムと類似していてもよい。図7A~7Cを参照して本明細書に記載する、創傷被覆材、創傷被覆材構成要素、創傷治療装置および方法の実施形態は、2016年12月22日に出願され、「NEGATIVE PRESSURE WOUND THERAPY APPARATUS」と題する、国際出願番号第PCT/EP2016/082353号と組み合わせたり、これに加えたりして使用されてもよく、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0200】
被覆材400は、創傷の上に配置されてもよく、ポート460は、真空源から創傷への陰圧を提供するために使用されてもよい(図4A図4Dに関連して説明した通り、導管401と共に流体コネクターを形成してもよい)。図7Aに示す実施形態では、被覆材400は、ポート460に予め取り付けられた導管401の少なくとも一部分を備えてもよい。例えば、ポート/導管の組み合わせは、図4A図4Dを参照しながら本明細書に記載されるように可撓性の吸引アダプタとしてもよい。一部の実施形態では、事前に取り付けられた導管401は、管延長部、例えば、チューブ(図示せず)に接続できる。被覆材400にはすべての創傷被覆材要素(ポート460および導管401を含む)があらかじめ取り付けられ、単一のユニットに一体化された、単一の物品として設けられるのが好ましい。次いで、創傷被覆材400は、導管401および/または導管延長部を介して、図4A図4Dを参照して説明したポンプなどの陰圧源に接続されうる。
【0201】
図7B図7Cによりはっきりと見られるカバー層430、320は、フィルムといった、実質的に流体不透過の材料で形成されてもよい。カバー層430、320は、図4A図4Dに前述したカバー層または裏当て層と類似していてもよい。フィルムは、図7Aの上面図からカバー層の下の他の層も見えるように、透明であってもよい。カバー層は、被覆材を周りの皮膚または創傷接触層に固定するための接着剤を具備しうる。被覆材は、被覆材の創傷接触層440、322および吸収層450、321を利用できる。創傷接触層および吸収層は、図4A図4Dに前述した創傷接触層および吸収層と同様でありうる。創傷接触層は、創傷に接触するように構成されうる。創傷接触層は接着剤を、被覆材を周りの皮膚に固定するため、患者に面する側に具備するか、または、創傷接触層440、322をカバー層430、320または被覆材のその他の層に固定するため、上側に具備しうる。動作時、一部の実施形態では、創傷接触層は、滲出液が創傷に戻るのを阻止または実質的に防止しつつ、創傷から滲出液を取り除きやすくするよう、一方向流をもたらすように構成されうる。さらに、創傷から吸引された滲出液を吸収および保持するための吸収層(層450、321等)が利用されうる。一部の実施形態では、吸収層は、吸収性材料、例えば、超吸収性材料、または当該技術分野で公知のその他の吸収性材料を含むことができる。一部の実施形態では、吸収層は、ポンプ、電子機器、および付帯構成要素のための凹部またはコンパートメントを有する、形状化された超吸収層形態を具備することができる。一部の実施形態では、創傷被覆材は、複数の吸収層を具備することができる。
【0202】
発泡体もしくは不織の天然または合成材料であってもよく、任意で超吸収性材料を含むかまたは超吸収性材料であってもよい図7Aに示す吸収性材料450は、創傷部位から除去される流体、具体的には液体用の貯留部を形成し、それらの流体をカバー層430に引き寄せる。吸収層の材料は、図4A図4Dを参照して説明した吸収性材料と類似しうる。吸収層の材料はまた、創傷被覆材に収集された液体が、スロッシング様式で流れるのを防ぐ。吸収層450はまた、流体を創傷部位から引き寄せ、吸収層中に渡って貯蔵するように、吸い上げ作用によって層全体に流体を分配するのを助ける。これによって、吸収層の範囲における凝集を防止するのを補助する。
【0203】
一部の実施形態では、吸収層は、層中に渡って分散する乾燥粒子の形態である超吸収性材料を有する、不織セルロース繊維の層である。セルロース繊維の使用によって、被覆材により吸収される液体を素早くかつ均等に分配するのに役立つ、高速吸い上げ要素が導入される。多数の撚糸様繊維を並列させることが、液体を分配するのに役立つ繊維パッドの、強い毛細管作用につながる。このように、超吸収性材料に液体を効率的に供給する。また、吸収層のすべての領域に液体が提供される。
【0204】
また、吸い上げ作用によって、被覆材の蒸散率を増加させるのに役立つように、液体を上部カバー層と接触させるように支援する。
【0205】
吸い上げ作用はまた、滲出が遅くなるまたは停止するときに液体を創傷床に向かって下向きに送達するのを助ける。この送達プロセスは、被覆材(閉塞につながる可能性がある)内のクラスト形成を防止し、創傷治癒に最適化された環境維持に役立つ、透過層または下部スペーサー層および下部創傷床領域を維持するのに役立つ。
【0206】
一部の実施形態では、吸収層はエアレイド材料であってもよい。熱可塑性繊維は、パッドの構造を一緒に保持するのを助けるために随意に使用されうる。当然のことながら、本発明の特定の実施形態によれば、超吸収性粒子を使用するよりも、またはそのような使用に加えて、超吸収性繊維を利用することができる。適切な材料の例には、米国のEmerging Technologies Inc(ETi)から入手可能なProduct Chem-Posite(商標)11Cがある。
【0207】
随意に、本発明の特定の実施形態によると、吸収層は、合成安定繊維および/または二成分安定繊維および/または天然安定繊維および/または超吸収性繊維を含みうる。吸収層内の繊維は、ラテックス結合または熱結合または水素結合または任意の結合技術またはその他の固定機構の組み合わせによって一緒に固定されうる。一部の実施形態では、吸収層は、超吸収性粒子を吸収層内にロックするように作動する繊維によって形成される。これは、超吸収性粒子が吸収層の外部および下にある創傷床に向かって移動しないことを確実にするのに役立つ。陰圧が加えられた時には、吸収性パッドが下向きに崩壊する傾向があり、この作用により、吸収層の繊維状構造によってロックされていない場合、超吸収性粒子物質が創傷床に向かう方向に押しだされるので、これは特に役立つ。
【0208】
吸収層は、複数の繊維の層を含みうる。繊維はストランド様であり、セルロース、ポリエステル、ビスコースまたはこれに類するものから作製されることが好ましい。乾燥吸収性粒子は、使用の準備が整った吸収層全体に分布されることが好ましい。一部の実施形態では、吸収層は、セルロース繊維および複数の超吸収性粒子のパッドを含む。さらなる実施形態では、吸収層は、無作為に配向されたセルロース繊維の不織布層である。
【0209】
超吸収体粒子/繊維は、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムまたはカルボメトキシセルロース料などであってもよく、または液体中でそれ自体の重量を何倍も吸収する能力を有する任意の材料であってもよい。一部の実施形態では、材料は、それ自体の重量の0.9%W/W生理食塩水などの五倍以上を吸収することができる。一部の実施形態では、材料は、それ自体の重量の0.9%W/W生理食塩水などの15倍以上を吸収することができる。一部の実施形態では、材料は、それ自体の重量の0.9%W/W生理食塩水などの20倍以上を吸収する能力を有する。好ましくは、材料は、それ自体の重量の0.9%W/W生理食塩水などの30倍以上を吸収する能力を有する。
【0210】
好ましくは、超吸収体の粒子は、非常に親水性であり、被覆材に入る際に流体をつかみ、接触すると膨張する。被覆材コア内に平衡が確立され、それによって水分が超吸収体からドライヤー周囲領域に通過し、上部フィルムに当たると、フィルムが切り替わり、流体蒸気が発生し始める。被覆材内に水分勾配を確立して、創傷床から流体を継続的に除去し、被覆材が滲出液で重くならないようにする。
【0211】
吸収層は、少なくとも一つの貫通孔を含みうる。貫通孔は、図4Dを参照して説明した吸引ポートの下にあるように位置することができる。単一の貫通孔を使用して、ポート460の下に開口部を作成することができる(図7Bには図示せず)。複数の開口部が、代替として利用されうることは理解されるであろう。加えて、二つ以上のポートが、本発明の特定の実施形態に従って利用されるべき場合、一つまたは二つ以上の開口部が、各ポートと位置を合わせて、超吸収層に作られてもよい。本発明の特定の実施形態に必須ではないが、超吸収層内の貫通孔の使用は、特に妨げられない流体流路を提供し、これは特定の状況で有用である。
【0212】
吸収層の一つまたは複数の貫通孔を使用すると、使用中に吸収層が超吸収体などのゲル形成材料を含む場合、その材料が膨張して液体を吸収するときに、さらなる液体の動きおよび流体の動きが一般に通過できないバリアが形成されないという利点も有する。このようにして、吸収層の各開口部は、下部透過層またはスペーサー層と上部透過層またはスペーサー層との間に、フィルターの創傷に面する表面への流体経路を提供し、次にポートの内部へと進む。
【0213】
これらの層は、単層のフィルムまたはカバー層で覆われうる。カバー層は、吸収層の上に位置付けることができるフィルターを含むことができ、またはフィルターは、ポート460に組み込まれてもよく、国際出願公開番号第WO2013/175306A2号、米国公開番号第US2011/0282309号、および米国公開番号第2016/0339158号に記載されるように、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。図7Aに示すように、気体を透過させないが、透湿性であるカバー層430は、創傷被覆材の幅を横切って延在する。カバー層は、図4A図4Dを参照して説明したカバー層または裏当て層に類似しうる。例えば、片方の側面に感圧接着剤を有するポリウレタンフィルム(例えば、Elastollan SP9109)であってもよい、カバー層は、気体に対して不透過性であり、それゆえ、この層は創傷を被覆し、上に創傷被覆材が置かれる創傷空洞を封止するように動作する。このように、効果的なチャンバが、陰圧が確立されうる、カバー層と創傷部位との間に作られる。カバー層430は、例えば接着技術または溶接技術を介して、被覆材の周囲の境界領域410内において、創傷接触層440に対して封止され、境界領域に空気が吸い込まれないようにする。カバー層430によって、創傷が外部の細菌汚染から保護され(細菌バリア)、層を通って創傷滲出液からの液体を移動させ、フィルム外表面から蒸発させることが可能になる。カバー層430は、典型的には、二つの層、すなわちポリウレタンフィルムとこのフィルム上に広げられた接着パターンとを含む。ポリウレタンフィルムは透湿性であり、かつ、濡れると透水率が高くなる材料から製造されてもよい。
【0214】
カバー層は、陰圧またはポンプの供給源と流体連通を提供するためのカバー層内の開口部を含みうる。フィルターは、創傷カバーの開口部と連通して位置付けられうる。創傷カバーの開口部は、ポート460によって覆われうる。一部の実施形態では、ポート460は、陰圧源またはポンプと連通するための導管に接続される。ポート460は、カバー層430の開口部を覆うために提供されるフィルター420を含みうる。一部の実施形態では、フィルター420は、ポート460に一体型でありうる。フィルター420は、ポンプおよび/またはその他の構成要素を液体滲出物から保護するための疎水性材料を含みうる。フィルター420は、気体の透過は可能にしつつ、流体を阻止しうる。一部の実施形態では、フィルターは、図4A図4Dに前述したフィルターまたはフィルターシステムと類似していてもよい。一部の実施形態では、カバー層430およびポート460の開口部は、創傷被覆材とポンプとの間の流体連通を提供する。一部の実施形態では、ポンプ、電子機器、スイッチおよび電池は、被覆材の遠隔位置に配置することができる。一部の実施形態では、ポンプ、電子機器、スイッチおよび電池を第一のカバー層の上に位置付けることができ、第二のフィルターおよび第二のカバー層は代替的または追加的に使用できる。例えば、第二のフィルターは、ポンプが大気中に気体を排出しうるように抗菌性(antibacterialおよび/またはantimicrobial)材料から構成されうる。また、第二のフィルターは、ポンプにより発生する騒音の軽減の一助となりうる。
【0215】
被覆材に自由吸収性容量が残っていると、陰圧は創傷床で失われる可能性がある。これは、フィルター内の細孔の一部またはすべてが液体または粒子で塞がれているため発生しうる。一部の実施形態では、陰圧源と創傷床との間の空気経路を維持しながら、被覆材吸収層の全容量を利用できるようにする解決策が利用されている。
【0216】
吸収層の上に直接的にカバー層を利用する被覆材実施形態では、被覆材は、液体で充填できるフィルターの下の空隙を有し、これによってフィルター孔を塞ぎ、創傷床への気流を防止することができる。スペーサー層または透過層490を使用して、吸収層450の上方に流体流路を提供し、ポート460の遮断を阻止することができる。一部の実施形態では、被覆材の透過層490を吸収層の上および下に提供することができる。透過層は、非圧縮性であり、陰圧源と創傷床との間の流体流の経路を、フィルターを介して維持することができる。一部の実施形態では、透過層は、図7Aおよび7Bに示すように、吸収層を封入または吸収層に巻き付くことができる。巻き付けられた透過層は、フィルター420から創傷床への連続的な長さの透過性材料を提供することができる。透過層は、吸収層の最上面の長さを横断して、吸収層の少なくとも片側の周りを包み、吸収層の底面(創傷に面する表面)の長さを横断することができる。一部の実施形態では、透過層は、図7Aに示すように、吸収層の二つの側面に巻き付けることができる。
【0217】
一部の実施形態では、透過層は、創傷部位の上に陰圧を分配し、創傷被覆材内へ創傷滲出液および流体を輸送しやすくするよう支援するように利用することができる。
【0218】
多孔質材料の透過層490の下部は、創傷接触層の上方および吸収層の下方に位置し、吸収層の縁の周りに巻き付けることができる。透過層が吸収層の少なくとも一つの縁の周りに巻き付けられると、透過層は、カバー層と吸収層との間に位置付けられうる透過層の上部分を有する。本明細書で使用される場合、吸収層の縁または被覆材は、創傷表面に対して実質的に垂直であり、材料の高さに沿って延びる、材料の側面を指す。
【0219】
一部の実施形態では、透過層を多孔質層とすることができる。このスペーサー層または透過層490により、図4Dを参照して説明するように、液体および気体を含む流体が、創傷部位から離れて創傷被覆材の上部層中へと透過することが可能になる。特に、透過層490によって、吸収層がかなりの量の滲出液を吸収したときでさえ、外気チャネルが、創傷範囲全体に陰圧を伝えるように維持されうることを保証する。層は、前述の通り、陰圧創傷療法時に適用されることになる通常の圧力の下で開放されたままになるべきであり、それによって、創傷部位全体が等しい陰圧を受ける。透過層490は、三次元構造を有する材料から形成されてもよい。例えば、編みもしくは織りスペーサー布(例えば、Baltex 7970の横編みポリエステル)、または不織布が使用されうる。本明細書で前述したものなどのその他の材料は、もちろん利用することができる。
【0220】
一部の実施形態では、透過層は、本明細書で前述し、図1A図2Bに図示する通り、不織布の二つの層から形成された開口不織布スペーサー層から形成することができる。一部の実施形態では、開口不織布スペーサー層は、第一の不織布層および第二の不織布層を含みうる。第一の不織布層は、相互接続された第一の繊維表面層および第一の繊維基層から形成されうる。第二の不織布層は、相互接続された第二の繊維表面層および第二の繊維基層を含みうる。第一の不織布層は、第二の不織布層上に反転させて、創傷被覆材で使用するためのスペーサータイプの層を作り出すことができる。第一の不織布層の第一の表面層は、第二の不織布層の第二の表面層と接触しうる、および/またはその上に位置づけられうる。一部の実施形態では、不織布層は、水流交絡不織布層でありうる。
【0221】
一部の実施形態では、不織布層の複数の開口部はチャネルを形成することができる。不織布材料で作られたチャネルまたは開口部は、材料内で提供される構造に利用できる。例えば、一部の実施形態では、本明細書に記述した不織布層から形成されるスペーサー層は、層および/または創傷被覆材に陰圧を印加すると開いたままでありうる。一部の実施形態では、不織布層の開口部、チャネル、および/またはスリットは、独特の流体管理特性を可能にすることができる。一部の実施形態では、二つの不織布層から形成される層は、荷重下の圧縮および圧縮回復に関して、本明細書に記載の3Dスペーサー生地またはその他のスペーサー生地の性能上の利益を有することができる。こうした実施形態では、開口不織布スペーサー層は、液体および気体を含む流体を創傷部位から創傷被覆材の上層へと透過させることができる。
【0222】
一部の実施形態では、透過層は、本明細書で前述し、図3A~3Cに図示する通り、三次元不織布スペーサー層構造から形成することができる。一部の実施形態では、熱および圧力は、波型構造、三次元ジグザグパターン、卵ボックス型構造、チェッカーボード構造、および六角形(ハニカム)構造など、3D構造に不織布を設定するために使用できる。一部の実施形態では、不織布材料は、三次元構造に熱成形されうる。その他の実施形態では、三次元不織布材料は、化学結合および真空形成を使用して形成されうる。
【0223】
一部の実施形態では、3D構造は、互いの上に重ねるかまたは従来の不織布で層状にし、創傷被覆材で使用するスペーサータイプの層を作り出すことができる。
【0224】
例えば、一部の実施形態では、本明細書に記述した不織布層から形成されるスペーサー層は、層および/または創傷被覆材に、圧縮および/または陰圧を加えると開いたままでありうる。一部の実施形態では、不織布スペーサー層の三次元構造は、固有の流体管理特性を可能にすることができる。一部の実施形態では、不織布層から形成される三次元不織布スペーサー層は、荷重下の圧縮および圧縮回復に関して、本明細書に記載の3Dスペーサー生地またはその他のスペーサー生地の性能上の利益を有することができる。こうした実施形態では、三次元不織布スペーサー層は、液体および気体を含む流体を創傷部位から創傷被覆材の上層へと透過させることができる。
【0225】
図7Aは、吸収層450の周りに巻かれた透過層490を有する創傷被覆材の実施形態の上面図を示す。創傷被覆材は、創傷接触層440と、吸収層450を囲む上部フィルムまたはカバー層430とで構成されうる。上部フィルム430の孔または開口部は、陰圧源につながるポート460によって完全に覆われうる。ポート460は、フィルター420を含むことも、フィルター420の上に位置付けることもできる。被覆材吸収層450は、超吸収性材料を含みうる。吸収層450は、スペーサー生地または透過層490によって完全にまたは部分的に囲まれうる。透過層490は、吸収層450の上方および下方に提供されうる。一部の実施形態では、透過層490は、吸収層450の周りに巻き付けてその二つの側面を覆うことができる。例えば、一部の実施形態では、透過層490の長さは、創傷接触面440およびフィルター420を接続する流体流を提供するように構成されうる。図7Aに図示するように、透過層は、吸収層の底面および最上面の長さに沿って走り、吸収層の少なくとも片側を包むが、吸収層を完全に封入しない吸収層450の周りに延びることができる。一部の実施形態では、図7Aに示すように、透過層490は、吸収層の周辺に延在するが、被覆材の幅の端部上には延びない。例えば、図7Aに図示するように、吸収層450の二つの側面の周辺は、透過層490を越えて延び、スペーサー層は吸収層の他の二つの側面の上に延びてこれを包む。他の実施形態では、透過層490は、吸収層450の全ての側面を完全に封じ込める。
【0226】
ポート460は、被覆材の一方の端または中央に、上部フィルムの上方またはカバー層430のいずれかに位置付けられうる。ポートは、上部フィルムの開口部の上に位置付けることができ、フィルター420を含むかまたはその上に配置することができる。本明細書に記述されるように、吸収層の上下に透過層を設け、吸収層の少なくとも片側に巻き付けることで、被覆材材料の吸収容量が満杯に達するまで、包まれたスペーサー層を通る流体の分布を可能にすることによって、フィルターが液体または粒子で遮蔽されるのを防ぐことができる。これは、創傷床への陰圧の送達を延長させることで、創傷被覆材の摩耗時間を増やす可能性がある。一部の実施形態では、本明細書に記載の層の構成の被覆材は、吸収層とカバー層との間に透過層がなく、吸収層の周りに透過層が巻き付けられていない創傷被覆材と比較して、創傷接触面にNPWTのより長い送達期間を示した。
【0227】
図7Bは、吸収層450の周りに巻かれた透過層490を有する創傷被覆材の断面図を示す。図7Bに示すように、創傷接触層440は、創傷表面に接触するように構成された被覆材の最下層として提供されうる。上部フィルムまたはカバー層430は、透過層490および吸収層450を創傷接触層440と共に封じ込める最上層として提供される。カバー層430は、創傷接触層440の周辺、患者の皮膚、および/または創傷床の周りの境界領域を密閉することができる。ポート460は、カバー層430の上方、およびカバー層430の開口部の上に位置付けられうる。図7Bに示すように、ポート460が透過性材料の上部分と連通し、創傷接触層が透過性材料の下部分と接触するように、創傷被覆材の断面は、吸収層450を囲む透過層490を示す。吸収性材料を囲む透過層の構成は、吸収層を通過することなく、創傷床または創傷接触層からポートへの流体流路を可能にする。
【0228】
透過層490は、吸収層450の周りに巻き付いて、被覆材全体に真空を分散させることができる。一部の実施形態では、透過層490は、被覆材の組み立て中に、吸収層450の最下面に位置付けられ、吸収層450の端部の周りに巻き付けられる材料の一つの平らなピースとして製造することができ、スペーサー層490の二つの端部は、吸収層450の最上面を完全にまたは部分的に覆う吸収層450の最上面上に折り畳まれる。このような実施形態では、上部透過層490は、透過性材料に切れ目495を有することができ、透過性材料490の二つの折り重ねられた端部は、図7Bに示す通りに出会う。代替的な実施形態では、透過層490は、吸収層450の周りに嵌合するように予め成形され、透過性材料の切れ目なしに吸収層450を完全に封入する透過性材料の一つのピースとして製造されてもよい。
【0229】
ポートと吸収層との間に透過層を設けることで、創傷から除去される流体または滲出液が、ポートおよび/またはポート内のフィルターを塞ぐのを防止する。フィルターの下に位置付けられた吸収層の孔にいくらかの自由粒子がありうる。孔の中の遊離した粒子はゲル化し、孔および/またはフィルター領域を塞ぐ可能性がある。従って、上部透過層は、超吸収体粒子がフィルターにないように保つことができ、被覆材が完全に充填されることを可能にする。一部の実施形態では、吸収層の周りに巻かれた透過層は、ポートが重力に関して任意の場所に配置されることを可能にする。吸収層の上方に位置付けられた透過層は、創傷から取り除かれた流体または滲出液が、最初に充填される吸収層のセクションのポートおよび/またはポート内のフィルターを塞ぐという懸念を排除できる。
【0230】
図7Cに示すように、創傷被覆材300は、創傷接触層322を含みうる。創傷接触層は、図4Dを参照して説明した創傷接触層322と類似してもよい。一部の実施形態では、創傷接触層322は、両面コーティング(シリコーン‐アクリル)穿孔接着創傷接触層でありうる。透過層326aおよび吸収層321は、図4Dを参照して記述される被覆材と同様に提供されうるが、透過層326aは吸収層の上にある。創傷被覆材300は、吸収層と、吸収層の上にある裏当て層との間に、第二の透過層326bを含みうる。第一および第二の透過層326aおよび326bは、周囲で吸収層を5mm越えて接しうる。これは、前述のように、被覆材の切断形状の逆とすることができる。一部の実施形態では、吸収層321または第二の透過層326bに貫通孔または開口部はない。一部の実施形態では、吸収層の孔は、超吸収性粒子またはその他の材料で充填され、標準物質被覆材のフィルターを遮断する可能性があるため、不利になる可能性がある。裏当て層320は、第二の透過層326bの上に位置し、また裏当て層は、流体コネクターの連結を可能にするオリフィス327を含み、被覆材に陰圧を伝達することができる。
【0231】
一部の実施形態では、第一および第二の透過層326a、326bは、3D布を含みうる。一部の実施形態では、第一および第二の透過層は、本明細書で前述し、図1A~2Bに図示する通り、不織布の二つの層から形成された開口不織布スペーサー層を含みうる。一部の実施形態では、開口不織布スペーサー層は、第一の不織布層および第二の不織布層を含みうる。第一の不織布層は、相互接続された第一の繊維表面層および第一の繊維基層から形成されうる。第二の不織布層は、相互接続された第二の繊維表面層および第二の繊維基層を含みうる。第一の不織布層は、第二の不織布層上に反転させて、創傷被覆材で使用するためのスペーサータイプの層を作り出すことができる。第一の不織布層の第一の表面層は、第二の不織布層の第二の表面層と接触しうる、および/またはその上に位置づけられうる。一部の実施形態では、不織布層は、水流交絡不織布層でありうる。
【0232】
一部の実施形態では、不織布層の複数の開口部はチャネルを形成することができる。不織布材料で作られたチャネルまたは開口部は、材料内で提供される構造に利用できる。例えば、一部の実施形態では、本明細書に記述した不織布層から形成されるスペーサー層は、層および/または創傷被覆材に陰圧を印加すると開いたままでありうる。一部の実施形態では、不織布層の開口部、チャネル、および/またはスリットは、独特の流体管理特性を可能にすることができる。一部の実施形態では、二つの不織布層から形成される層は、荷重下の圧縮および圧縮回復に関して、本明細書に記載の3Dスペーサー生地またはその他のスペーサー生地の性能上の利益を有することができる。こうした実施形態では、開口不織布スペーサー層は、液体および気体を含む流体を創傷部位から創傷被覆材の上層へと透過させることができる。
【0233】
一部の実施形態では、第一および第二の透過層326a、326bは、三次元構造を有する材料から形成されてもよい。前述したとおり、例えば、編みもしくは織りスペーサー生地(例えば、Baltex 7970の横編ポリエステル)、または不織布が使用されうる。第一および第二の透過層326a、326bにより、液体および気体を含む流体が、創傷部位から離れて創傷被覆材の層中へ透過することを可能にしうる。特に、第一および第二の透過層326a、326bによって、吸収層が相当量の滲出液を吸収しても創傷エリアの上、および創傷被覆材全体にわたって陰圧を伝えるよう、外気チャネルが確実に維持されうることが好ましい。
【0234】
一部の実施形態では、第一および第二の透過層326a、326bは、3D布を含みうる。一部の実施形態では、第一および第二の透過層は、本明細書で前述し、図3A~3Cに図示する通り、三次元不織布スペーサー層構造を含みうる。一部の実施形態では、熱および圧力は、波型構造、三次元ジグザグパターン、卵ボックス型構造、チェッカーボード構造、および六角形(ハニカム)構造など、3D構造に不織布を設定するために使用できる。一部の実施形態では、不織布材料は、三次元構造に熱成形されうる。その他の実施形態では、三次元不織布材料は、化学結合および真空形成を使用して形成されうる。
【0235】
一部の実施形態では、3D構造は、互いの上に重ねるかまたは従来の不織布で層状にし、創傷被覆材で使用するスペーサータイプの層を作り出すことができる。
【0236】
例えば、一部の実施形態では、本明細書に記述した不織布層から形成されるスペーサー層は、層および/または創傷被覆材に、圧縮および/または陰圧を加えると開いたままでありうる。一部の実施形態では、不織布スペーサー層の三次元構造は、固有の流体管理特性を可能にすることができる。一部の実施形態では、不織布層から形成される三次元不織布スペーサー層は、荷重下の圧縮および圧縮回復に関して、本明細書に記載の3Dスペーサー生地またはその他のスペーサー生地の性能上の利益を有することができる。こうした実施形態では、三次元不織布スペーサー層は、液体および気体を含む流体を創傷部位から創傷被覆材の上層へと透過させることができる。
【0237】
図8Aは、本開示の実施形態による、図4A図4Dの創傷被覆材に類似した創傷被覆材2100を通した断面図を示す。代替として、創傷被覆材110を含むがこれに限定されない、本明細書に開示するいずれの創傷被覆材の実施形態、または本明細書に開示する創傷被覆材の実施形態のいずれの数の特徴のいかなる組み合わせでもありうる、創傷被覆材2100は、治療されることになる創傷部位の上に置かれうる。被覆材2100は、創傷部位の上に密閉された空洞を形成するように配置されうる。好ましい実施形態では、被覆材2100は、図4A~4Dを参照して説明したカバー層および創傷接触層と類似した、創傷接触層2102に取り付けられた裏当て層2140を含む。これら二つの層2140、2102は、内部空間またはチャンバを画定するために、共に接合または封止されることが好ましい。この内部空間またはチャンバは、陰圧を分配または伝達し、創傷滲出液および創傷から除去された他の流体を貯蔵するように適応してもよい追加構造と、本明細書に記載の他の機能とを備えてもよい。下記の構造の例には、図4A図4Dを参照しながら説明した透過層および吸収層と類似した透過層2105および吸収層2110が含まれる。
【0238】
多孔質材料の層2105は、創傷接触層2102の上方に置かれうる。この多孔質層または透過層2105により、液体および気体を含む流体が、創傷部位から離れて創傷被覆材の上部層中へと透過することが可能になる。特に、透過層2105によって、吸収層が相当量の滲出液を吸収しても創傷エリアの上に陰圧を伝えるよう、外気チャネルが確実に維持され得ることが好ましい。層2105は、好ましくは、上述の通り、陰圧創傷療法時に適用されることになる通常の圧力の下で開放されたままになるべきであり、それによって、創傷部位全体が等しい陰圧を受ける。
【0239】
一部の実施形態では、透過層2105は、本明細書で前述し、図1A図2Bに図示する通り、不織布の二つの層から形成された開口不織布スペーサー層とすることができる。一部の実施形態では、開口不織布スペーサー層は、第一の不織布層および第二の不織布層を含みうる。第一の不織布層は、相互接続された第一の繊維表面層および第一の繊維基層から形成されうる。第二の不織布層は、相互接続された第二の繊維表面層および第二の繊維基層を含みうる。第一の不織布層は、第二の不織布層上に反転させて、創傷被覆材で使用するためのスペーサータイプの層を作り出すことができる。第一の不織布層の第一の表面層は、第二の不織布層の第二の表面層と接触しうる、および/またはその上に位置づけられうる。一部の実施形態では、不織布層は、水流交絡不織布層でありうる。
【0240】
一部の実施形態では、不織布層の複数の開口部はチャネルを形成することができる。不織布材料で作られたチャネルまたは開口部は、材料内で提供される構造に利用できる。例えば、一部の実施形態では、本明細書に記述した不織布層から形成されるスペーサー層は、層および/または創傷被覆材に陰圧を印加すると開いたままでありうる。一部の実施形態では、不織布層の開口部、チャネル、および/またはスリットは、独特の流体管理特性を可能にすることができる。一部の実施形態では、二つの不織布層から形成される層は、荷重下の圧縮および圧縮回復に関して、本明細書に記載の3Dスペーサー生地またはその他のスペーサー生地の性能上の利益を有することができる。こうした実施形態では、開口不織布スペーサー層は、液体および気体を含む流体を創傷部位から創傷被覆材の上層へと透過させることができる。
【0241】
一部の実施形態では、透過層2105は、本明細書で前述し、図3A~3Cに図示する通り、三次元不織布スペーサー層構造とすることができる。一部の実施形態では、熱および圧力は、波型構造、三次元ジグザグパターン、卵ボックス型構造、チェッカーボード構造、および六角形(ハニカム)構造など、3D構造に不織布を設定するために使用できる。一部の実施形態では、不織布材料は、三次元構造に熱成形されうる。その他の実施形態では、三次元不織布材料は、化学結合および真空形成を使用して形成されうる。
【0242】
一部の実施形態では、3D構造は、互いの上に重ねるかまたは従来の不織布で層状にし、創傷被覆材で使用するスペーサータイプの層を作り出すことができる。
【0243】
例えば、一部の実施形態では、本明細書に記述した不織布層から形成されるスペーサー層は、層および/または創傷被覆材に、圧縮および/または陰圧を加えると開いたままでありうる。一部の実施形態では、不織布スペーサー層の三次元構造は、固有の流体管理特性を可能にすることができる。一部の実施形態では、不織布層から形成される三次元不織布スペーサー層は、荷重下の圧縮および圧縮回復に関して、本明細書に記載の3Dスペーサー生地またはその他のスペーサー生地の性能上の利益を有することができる。こうした実施形態では、三次元不織布スペーサー層は、液体および気体を含む流体を創傷部位から創傷被覆材の上層へと透過させることができる。
【0244】
一部の実施形態では、層2105は、三次元構造を有する材料から形成されうる。例えば、編みもしくは織りスペーサー生地(例えば、Baltex 7970の横編みポリエステル)、または不織布が使用されうる。
【0245】
吸収性材料の層2110は、透過層2105の上に設けられる。発泡体もしくは不織りの自然または合成材料を含み、任意で超吸収性材料を含んでもよい吸収性材料は、流体、具体的には、創傷部位から除去される液体用の貯留部を形成する。一部の実施形態では、層2100もまた、流体を裏当て層2140の方へ引き寄せるのに役立ちうる。
【0246】
図8Aを参照すると、マスキング層または遮蔽層2107は、裏当て層2140の少なくとも一部の下に位置付けられうる。一部の実施形態では、遮蔽層2107は、任意の視認窓または孔を有するがこれらに限定されない、本明細書に開示される遮蔽層の他の実施形態の同一の特徴、材料、または他の詳細のいずれかを有することができる。遮蔽層および視認窓を有する創傷被覆材の例は、国際特許公開第WO2014/020440号に記載されており、その全体は参照によりその全体が組み込まれる。さらに、遮蔽層2107は、裏当て層に隣接して位置付けられてもよく、または所望の任意の他の被覆材層に隣接して位置付けられてもよい。一部の実施形態では、遮蔽層2107は、裏当て層に接着されるか、または裏当て層と一体的に形成されうる。遮蔽層2107は、吸収層2110とほぼ同じサイズおよび形状を有し、それを覆うように構成されることが好ましい。そのため、これらの実施形態では、遮蔽層2107は、裏当て層2140よりも小さい領域である。
【0247】
吸収層2110の材料はまた、創傷被覆材2100内に収集された液体が被覆材内で自由に流れるのを防止することができ、好ましくは、収集されたいかなる液体も吸収層2110内に含むよう作用する。吸収層2110はまた、流体を創傷部位から引き寄せ、吸収層中に渡って貯蔵するように、吸い上げ作用によって層全体に流体を分配するのを助ける。これによって、吸収層の範囲における凝集を防止するのを補助する。吸収性材料の容量は、陰圧を適用するとき、創傷の滲出液が流れる速度を管理するのに十分でなくてはならない。使用中、吸収層は陰圧を経験するため、吸収層の材料は、そのような状況下で液体を吸収するように選ばれる。例えば、超吸収体材料といった、陰圧下にあるとき液体を吸収できる、いくつかの材料が存在する。吸収層2110は通常、ALLEVYN(商標)発泡体のFreudenberg114-224-4および/またはChem-Posite(商標)11C-450より製造されてもよい。一部の実施形態では、吸収層2110は、超吸収性粉末、セルロースなどの繊維材料、および結合繊維を含む複合材を含んでもよい。好適な実施形態では、複合材は、エアレイドの、熱結合複合材である。
【0248】
オリフィス2144を、好ましくは、裏当て層2140に設け、被覆材2100に陰圧を印加することを可能にする。吸引ポート2150は、被覆材2100の中に作られるオリフィス2144の上で、裏当て層2140の最上部に取り付けられるか、または封止され、オリフィス2144を通って陰圧を伝えることが好ましい。長いチューブが、被覆材から流体を汲み上げることが可能になるように、第一端部で吸引ポート2150に、第二端部でポンプユニット(図示せず)に連結されてもよい。ポートは、アクリル、シアノアクリレート、エポキシ、UV硬化性またはホットメルト接着剤などの接着剤を使用して、裏当て層2140に接着および封止してもよい。ポート2150は、ショアAスケールで30から90の硬度を有する、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、シリコンまたはポリウレタンといった柔らかいポリマーから形成される。一部の実施形態では、ポート2150は、柔らかい材料または適合する材料から作られてもよい。
【0249】
好ましくは、吸収層2110および遮蔽層2107は、ポート2150の下にあるように配置される、少なくとも一つの貫通孔2145を含む。もちろん、これらの様々な層2107、2140、および2110を通るそれぞれの孔は、互いに対して異なるサイズであってもよい。図8Aに図示する通り、単一の貫通孔は、ポート2150の下にある開口部をもたらすように使用されうる。複数の開口部が、代替として利用されうることは理解されるであろう。加えて、二つ以上のポートが、本開示の特定の実施形態に従って利用されるべき場合、一つまたは二つ以上の開口部が、各ポートと位置を合わせて、吸収層および遮蔽層に作られてもよい。本開示の特定の実施形態には必須ではないものの、超吸収層に貫通孔を使用することで、吸収層2110が飽和に近いとき特に、遮断されないままの流体流路を提供してもよい。
【0250】
開口部または貫通孔2144は、オリフィスが透過層2105に直接接続するように、オリフィス2144の下方の吸収層2110および遮蔽層2107に設けられることが好ましい。これによって、ポート2150に印加される陰圧を、吸収層2110を通過することなく、透過層2105へ伝えることが可能になる。これで、吸収層が創傷滲出液を吸収しても、創傷部位に印加される陰圧が、吸収層によって阻害されないことが保証される。他の実施形態では、吸収層2110および/または遮蔽層2107に開口部を設けなくてもよく、または、代替として、オリフィス2144の下にある複数の開口部を設けてもよい。
【0251】
裏当て層2140は、気体を透過させないが、透湿性であるのが好ましく、創傷被覆材2100の幅を横切って延在しうる。例えば、片方の側面に感圧接着剤を有するポリウレタンフィルム(例えば、Elastollan SP9109)であってもよい、裏当て層2140は、気体に対して不透過性であり、それゆえ、この層は創傷を被覆し、上に創傷被覆材が置かれる創傷空洞を封止するように動作する。このように、効果的なチャンバが、陰圧が確立されうる、裏当て層2140と創傷部位との間に作られる。裏当て層2140は、被覆材の周囲の境界領域2200内において、創傷接触層2102に対して封止され、例えば接着技術または溶接技術を介して、境界領域に空気が吸い込まれないようにするのが好ましい。裏当て層2140によって、創傷が外部の細菌汚染から保護され(細菌バリア)、層を通って創傷滲出液からの液体を移動させ、フィルム外表面から蒸発させることが可能になる。裏当て層2140は、二つの層、すなわちポリウレタンフィルムとこのフィルム上に広げられた接着パターンとを含むのが好ましい。ポリウレタンフィルムは透湿性であるのが好ましく、かつ、濡れると透水率が高くなる材料から製造されてもよい。
【0252】
一部の実施形態では、吸収層2110は、吸収層が透過層2105の縁と重複するように、透過層2105よりも大きい面積から成ってもよく、それによって、透過層が裏当て層2140に接触しないことを保証する。これにより、創傷接触層2102と直接接触する、吸収層2110の外側チャネル2115が提供され、滲出液の吸収層へのより急速な吸収に役立つ。さらに、この外側チャネル2115によって、液体が創傷空洞の外周に貯留できないことが保証され、そうでない場合には、被覆材の周囲の封止部から染み出して、漏出の形成につながる場合がある。
【0253】
図8Bは、くびれた部分、遮蔽層、および視認窓を有する創傷被覆材の実施形態の図を示す。図8Bは、創傷被覆材1400の実施形態の斜視図を示す。創傷被覆材1400は、ポート1406を含むことが好ましい。ポート1406は、ポンプと流体連通するように構成されることが好ましく、ポートに予め取り付けられた管または導管を含みうる。別の方法として、陰圧は、図4A図4Dで後述するタイプの流体コネクターを含むがこれに限定されない、他の好適な流体コネクターを介して創傷被覆材に供給することができる。
【0254】
創傷被覆材1400は、上記の図8Aの実施形態と類似して構成されてもよく、裏当て層1405の下または内部の吸収性材料1402を含んでもよい。随意に、図8Aを参照して上述したように、創傷接触層および透過層は、創傷被覆材1400の一部として提供されてもよい。一部の実施形態では、透過層は、図1A図2Bを参照しながら本明細書に記述した開口不織布スペーサー層とすることができるか、または図3A図3Cを参照しながら本明細書に記述した三次元不織布スペーサー層構造とすることができる。吸収性材料1402は、皮膚表面に対する創傷被覆材の柔軟性およびなじみ性を向上させるために、狭められた中央部分またはくびれた部分1408を含むことができる。裏当て層1405は、吸収性材料料1402の周辺を越えて延在する境界領域1401を有してもよい。裏当て層1405は、半透明または透明裏当て層であってもよく、その結果、裏当て層1405から作成される境界領域1401は、半透明または透明でありうる。裏当て層405の境界面領域1401の面積は、境界領域の面積がより大きい、中央部分が狭まっていることを除き、被覆材全体の周囲でほぼ等しくすることができる。境界領域1401のサイズが、被覆材の全寸法および他の設計選択に依存することを認識するであろう。
【0255】
図8Bに図示するように、少なくとも吸収層1402の上またはこれを覆うように、および裏当て層1405の下に、任意選択的に一つまたは複数の視認窓1403を有する遮蔽層1404が提供されうる。遮蔽層1404は、創傷被覆材1400および/または吸収性材料(すなわち、吸収性材料1402内または裏当て層1405の下)の中に含まれる内容物(流体など)を部分的にまたは完全に遮蔽することができる。遮蔽層は、吸収性材料の色付き部分であってもよく、または吸収性材料を覆う別個の層であってもよい。一部の実施形態では、吸収性材料1402は、上述のものと類似の方法で、美容的および/または審美的改善を提供するように、遮蔽層1404を介して、隠され(部分的または完全に)、着色され、または色づけされてもよい。その他の構成が可能であるが、遮蔽層は最上の裏当て層1405と吸収性材料1402との間に提供されることが好ましい。図8Aの断面図は、マスキングまたは遮蔽層2107に関するこの配置を図示する。その他の層およびその他の創傷被覆材構成要素を、本明細書に記載されるように被覆材に組み込むことができる。
【0256】
遮蔽層1404は、吸収性材料1402の上に少なくとも部分的に位置付けられうる。一部の実施形態では、遮蔽層1404は、裏当て層に隣接して位置付けられてもよく、または望ましい任意の他の被覆材層に隣接して位置付けられてもよい。一部の実施形態では、遮蔽層1404は、裏当て層および/または吸収性材料に接着されるか、または裏当て層および/または吸収性材料と一体的に形成されうる。
【0257】
図8Bに示すように、遮蔽層1404は、吸収性材料1402と実質的に同一の周辺形状およびサイズを有しうる。遮蔽層1404および吸収性材料1402は、吸収性材料1402全体が遮蔽層1404によって遮られうるように、等しいサイズでありうる。遮蔽層1404は、創傷から放出される創傷滲出液、血液、またはその他の物質を遮ることを可能にしうる。さらに、遮蔽層1404は、切り抜き視認窓または穿孔を有しながら、完全にまたは部分的に不透明でありうる。
【0258】
一部の実施形態では、遮蔽層1404は、被覆材表面の部分的な遮蔽またはマスキングを加える材料を使用して、使用中に被覆材の見苦しい外観を減少させるのに役立ちうる。一実施形態における遮蔽層1404は、被覆材を部分的にのみ遮蔽し、臨床医が被覆材表面にわたる滲出物の拡散を観察することによって、要求される情報にアクセスできるようにする。遮蔽層のこの実施形態の部分的マスキング性質により、熟練した臨床医は被覆材の滲出物、血液、副産物などによって生じる異なる色を知覚し、被覆材全体にわたる広がりの程度の視覚的評価およびモニタリングを可能にする。しかしながら、その清浄な状態から滲出液を含有する状態まで、被覆材の色の変化はわずかであるため、患者が審美的な差異に気付く可能性は低い。患者の創傷からの創傷滲出液の視覚的インジケータを低減または除去することは、患者の健康に対する肯定的な効果を有する可能性が高く、例えば、ストレスの低減につながる。
【0259】
一部の実施形態では、遮蔽層を不織布(例えば、ポリプロピレン)から形成することができ、19%の結合面積を有するダイヤモンドパターンを使用して熱接合されうる。さまざまな実施形態で、遮蔽層は疎水性または親水性でありうる。用途に応じて、一部の実施形態では、親水性遮蔽層は、さらに透湿性を提供しうる。ただし、一部の実施形態では、疎水性の遮蔽層は、依然として十分な透湿性(すなわち、適切な材料選択、遮蔽層の厚さ)を提供しながら、遮蔽層内での染料または色のより良い保持も可能にしうる。このように、染料または色は遮蔽層の下に閉じ込められうる。一部の実施形態では、これにより、遮蔽層がより薄い色または白に着色されることを可能にしうる。好ましい実施形態で、遮蔽層は疎水性である。一部の実施形態では、遮蔽層材料をエチレンオキシドを使用して滅菌することができる。その他の実施形態は、ガンマ線照射、電子ビーム、蒸気またはその他の代替的滅菌方法を使用して滅菌されうる。さらに、さまざまな実施形態では、遮蔽層は例えば、例えば医療用青色で、色付けまたは着色できる。遮蔽層は、より強い無着色の層に積層されたまたは融合された着色層を含む、複数の層からも構成されうる。好ましくは、遮蔽層は臭いがなく、繊維の最小限の脱落を示す。
【0260】
しかし、一部の実施形態では、吸収層1402自体を色付けまたは着色してもよく、その結果遮蔽層は必要ない。被覆材には、随意に最上面を部分的に遮蔽する手段が含まれうる。これはまた、吸収性構造からの流体蒸発を依然として可能にする場合、開口部のないテキスタイル(編み、織り、または不織布)層を使用して達成されうる。また、適切なインクまたはカラーパッド構成要素(織り糸、縫い糸、コーティング)をそれぞれ使用して、上部フィルムまたは最上部のパッド構成要素の最上面に遮蔽パターンを印刷することによって、達成することもできる。これを達成する別の方法は、完全に不透明な最上面を有することであり、これは臨床医によって被覆材状態(例えば、窓を通して)を検査するために一時的に開かれ、創傷の環境を損なうことなく再度閉じられうる。さらに、図8Bは、一つまたは複数の視認窓1403を含む、創傷被覆材の実施形態を図示する。一つまたは複数の視認窓1403は、遮蔽層1404を通って延びることが好ましい。これらの視認窓1403は、臨床医または患者による、遮蔽層の下の吸収性材料中の創傷滲出液の視覚化を可能にしうる。図8Bは、創傷被覆材の遮蔽層1404の視認窓1403としての役割を果たすことができる、ドットの配列(例えば、一つまたは複数の並列行の)を図示する。好ましい実施形態では、二つ以上の視認窓1403は、被覆材1400の一つまたは複数の側面と平行であってもよい。一部の実施形態では、一つまたは複数の視認窓は、0.1mm~20mm、好ましくは0.4mm~10mm、さらにより好ましくは1mm~4mmの範囲で測定できる。視認窓1403は、遮蔽層1404を通して切り抜かれてもよく、または遮蔽層1404の無着色の領域の一部であってもよく、したがって、吸収性材料1402の視覚化を可能にしてもよい。一つまたは複数の視認窓1403は、遮蔽層1404にわたって繰り返しパターンで配置されてもよく、または遮蔽層にわたって無作為に配置されてもよい。さらに、一つまたは複数の視認窓は、円形形状またはドットとすることができる。好ましくは、一つまたは複数の視認窓1403は、飽和の程度だけでなく、流体の流体ポート1406への進行または拡散も許容するように構成され、一部の実施形態では、被覆材の性能は、流体のレベルがポート1406に近接した流体を飽和させた時に、悪影響を受ける可能性がある。一部の実施形態では、ポート1406の周りに出現する視認窓1403の「星形」配列は、この進行を示すために適切でありうるが、もちろんその他の構成は可能である。一部の実施形態では、視認窓1403は、遮蔽層1404によって覆われない吸収性材料1402の面積に対応する。そのため、吸収性材料1402は、この領域の裏当て層1405に直接隣接する。遮蔽層1404は部分的な遮蔽層として機能するため、視認窓1403は、臨床医またはその他の訓練を受けたユーザーによって使用され、被覆材全体にわたる創傷滲出液の拡散を評価することができる。一部の実施形態では、視認窓1403は、ドットの配列または三日月形切り抜きを含むことができる。例えば、視認窓1403としてのドットの配列は、図8Bに図示されており、ドットの配列は5×2配列に配列されている。さらに、一部の実施形態では、ドットパターンは、遮蔽層全体にわたって、かつ遮蔽層の表面全体または実質的に表面全体を横切って均等に分布されうる。一部の実施形態では、視認窓1403は、遮蔽層を通して無作為に分布されうる。一つまたは複数の視認窓1403によって覆われていない遮蔽層1404の領域は、被覆材1400および/または吸収性材料1402の点検を可能にしつつ、滲出液の外観を最小限にするようバランスを取ることが好ましい。一部の実施形態では、一つまたは複数の視認窓1403によって露出される面積は、遮蔽層1404の面積の20%、好ましくは10%、さらにより好ましくは5%を超えない。
【0261】
視認窓1403は、いくつかの構成を取りうる。一部の実施形態では、視認窓1403は、遮蔽層1404に作られる規則正しい間隔を置いた無着色のドット(孔)の配列を備えうる。ここで図示したドットは特定のパターンであるが、ドットは異なる構成で配置されてもよく、またはランダムに配置されてもよい。視認窓1403は、患者または介護者が吸収層の状態の確認を可能にするように、特にその飽和レベルおよび滲出液の色(例えば、過剰な血液が存在するかどうか)を決定できるように構成されることが好ましい。一つまたは複数の視認窓を有することによって、吸収層の状態は、患者にとって審美的に不愉快でない、目立たない様式で決定されうる。吸収層の大部分は遮蔽される可能性があるため、滲出液の総量は隠される場合がある。したがって、吸収層1402の状態および飽和レベルは、患者の恥ずかしさおよび視認性を低減し、それによって患者の快適性を高めるように、より目立たない外観を呈しうる。一部の構成では、一つまたは複数の視認窓1403は、被覆材1400の飽和度の数値評価を提供するために使用されうる。これは、電子的に(例えば、デジタル写真評価を介して)、または手動で行われてもよい。例えば、飽和度は、滲出液またはその他の創傷流体によって遮られまたは着色されうる視認窓1403の数をカウントすることによって監視されうる。
【0262】
一部の実施形態では、吸収層1402、または遮蔽層1404、特に吸収層の色付き部分は、(またはそれにより着色される)補助化合物の存在を含んでもよい。補助化合物は、一部の実施形態では、臭いを吸収するように作用することができる活性炭であってもよい。抗菌剤、抗真菌剤、抗炎症剤、およびその他のそのような治療化合物の使用も可能である。一部の実施形態では、被覆材が飽和している場合、または被覆材が有害物質の特定量を吸収した場合(例えば、感染病原体の存在を示すために)、色は時間の関数として(例えば、被覆材を変更する必要があると表示するために)変化しうる。一部の実施形態では、一つまたは複数の視認窓1403を電子的に監視してもよく、コンピュータプログラムまたはシステムと併せて使用して、被覆材1400の飽和レベルを患者または医師に警告することができる。
【0263】
上記で参照される各文書は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0264】
実施例または別途明示的に示される場合を除いて、材料の量、処理条件などを指定する本明細書のすべての数値は、用語「約」によって修正されるものと理解されたい。
【0265】
本発明を、その好ましい実施形態に関して説明してきたが、本明細書を読む際に、当業者にはその様々な修正が明らかとなることを理解されたい。したがって、本明細書に開示する本発明は、添付した特許請求の範囲内に入るような修正をカバーすることを意図するものと理解されたい。
[付記項1]
創傷治療装置であって、
創傷被覆材であって、
スペーサー層であって、
第一の繊維基層および相互接続された第一の繊維表面層を含む第一の不織布層であって、複数のチャネルは前記第一の繊維基層と前記第一の繊維表面層との間に配置される、第一の不織布層と、
第二の繊維基層および相互接続された第二の繊維表面層を含む第二の不織布層であって、複数のチャネルは前記第二の繊維基層と前記第二の繊維表面層との間に配置される、第二の不織布層と、を含み、
前記第二の不織布層は、前記第二の不織布の前記第二の繊維表面層が、前記第一の不織布の前記第一の繊維表面層の上に位置付けられるように、前記第一の不織布層の上に配置される、スペーサー層と、
前記スペーサー層の上に位置付けられるカバー層と、を備える、創傷被覆材を備える、創傷治療装置。
[付記項2]
前記第一または第二の不織布層の前記複数のチャネルのそれぞれが、前記第一および第二の不織布層の全長にわたって延びる、付記項1に記載の創傷治療装置。
[付記項3]
前記第一の不織布層の前記チャネルは、第一の方向に延び、前記第二の不織布層の前記チャネルは、第二の方向に延びる、付記項2に記載の創傷治療装置。
[付記項4]
前記第一の方向が前記第二の方向に平行である、付記項3に記載の創傷治療装置。
[付記項5]
前記第一の方向が前記第二の方向に対して垂直である、付記項3に記載の創傷治療装置。
[付記項6]
前記第二の不織布層の前記複数のチャネルが、前記第一の不織布層の前記複数のチャネルの上に直接配置される、付記項2~4のいずれかに記載の創傷治療装置。
[付記項7]
前記第二の不織布層の前記複数のチャネルが、前記第一の不織布層の前記複数のチャネルからオフセットされている、付記項2~4のいずれかに記載の創傷治療装置。
[付記項8]
前記第一および第二の不織布層の前記複数のチャネルのそれぞれが、約0.5mm~約5mmの直径を有する、付記項2~7のいずれかに記載の創傷治療装置。
[付記項9]
前記第一および/または第二の不織布層の前記基層および前記表面層が、水流交絡されている、付記項1~8のいずれかに記載の創傷治療装置。
[付記項10]
前記第一および/または第二の不織布層の前記表面層が、親水性である、付記項1~9のいずれかに記載の創傷治療装置。
[付記項11]
前記第一および/または第二の不織布層の前記基層が、疎水性である、付記項1~10のいずれかに記載の創傷治療装置。
[付記項12]
ポンプと、
前記カバー層のオリフィスを通して創傷部位に陰圧を印加するための吸引ポートと、をさらに備える、付記項1~11のいずれかに記載の創傷治療装置。
[付記項13]
前記スペーサー層が、前記創傷治療装置に陰圧が印加されたときに開いたままになるよう構成される、付記項1~12のいずれかに記載の創傷治療装置。
[付記項14]
創傷滲出液を吸収するための吸収層をさらに備え、前記吸収層が前記スペーサー層の上に位置付けられる、付記項1~13のいずれかに記載の創傷治療装置。
[付記項15]
前記吸収層が、超吸収性粒子または繊維を含む不織布材料を含む、付記項14に記載の創傷治療装置。
[付記項16]
前記吸収層とカバー層との間に位置付けられたマスキング層をさらに備える、付記項14に記載の創傷治療装置。
[付記項17]
前記吸収層の上に位置付けられた第二のスペーサー層をさらに備え、前記第二のスペーサー層が、
第三の繊維基層および相互接続された第三の繊維表面層を含む第三の不織布層であって、複数のチャネルは前記第三の繊維基層と前記第三の繊維表面層との間に配置される、第三の不織布層と、
第四の繊維基層および相互接続された第四の繊維表面層を含む第四の不織布層であって、複数のチャネルは前記第四の繊維基層と前記第四の繊維表面層との間に配置される、第四の不織布層と、を含み、
前記第四の不織布層が、前記第四の不織布の前記第四の繊維表面層が前記第三の不織布の第三の繊維表面層と接触するように、前記第三の不織布層の上に配置される、付記項14に記載の創傷治療装置。
[付記項18]
前記カバー層がオリフィスを備える、付記項1~17のいずれかに記載の創傷治療装置。
[付記項19]
前記カバー層が透湿性材料を含む、付記項1~18のいずれかに記載の創傷治療装置。
[付記項20]
前記チャネルが丸み付きチャネルである、付記項1~19のいずれかに記載の創傷治療装置。
[付記項21]
前記チャネルが長方形チャネルである、付記項1~20のいずれかに記載の創傷治療装置。
[付記項22]
前記チャネルが三角形チャネルである、付記項1~21のいずれかに記載の創傷治療装置。
[付記項23]
創傷被覆材で使用するためのスペーサー層であって、
第一の繊維基層および相互接続された第一の繊維表面層を含む第一の不織布層であって、複数のチャネルは前記第一の繊維基層と前記第一の繊維表面層との間に配置される、第一の不織布層と、
第二の繊維基層および相互接続された第二の繊維表面層を含む第二の不織布層であって、複数のチャネルは前記第二の繊維基層と前記第二の繊維表面層との間に配置される、第二の不織布層と、を含み、
前記第二の不織布層は、前記第二の不織布の前記第二の表面層が、前記第一の不織布の第一の表面層の上に位置付けられるように、前記第一の不織布層の上に配置される、創傷被覆材で使用するためのスペーサー層。
[付記項24]
創傷を治療する方法であって、
創傷被覆材を提供することであって、
スペーサー層であって、
第一の繊維基層および相互接続された第一の繊維表面層を含む第一の不織布層であって、複数のチャネルは前記第一の繊維基層と前記第一の繊維表面層との間に配置される、第一の不織布層と、
第二の繊維基層および相互接続された第二の繊維表面層を含む第二の不織布層であって、複数のチャネルは前記第二の繊維基層と前記第二の繊維表面層との間に配置される、第二の不織布層と、を含み、
前記第二の不織布層は、前記第二の不織布の前記第二の表面層が、前記第一の不織布の第一の表面層の上に位置付けられるように、前記第一の不織布層の上に配置される、スペーサー層と、
前記スペーサー層の上に位置付けられ、オリフィスを備えるカバー層と、を備える創傷被覆材を提供することと、
創傷部位の上に前記被覆材を位置付けて、前記創傷部位の上に密閉された空洞を形成することと、
前記オリフィスを通して前記創傷部位に陰圧を印加して、前記スペーサー層を通して前記吸収層に流体を引き出すことと、を含む、創傷を治療する方法。
[付記項25]
前記創傷被覆材は、創傷滲出液を吸収するための吸収層をさらに含み、前記吸収層は前記スペーサー層の上に位置付けられる、付記項24に記載の方法。
[付記項26]
創傷治療装置であって、
創傷被覆材であって、
スペーサー層であって、
三次元不織布構造に形成された少なくとも一つの不織布層であって、前記三次元不織布構造は、熱成形、化学結合、または真空形成によって形成される、少なくともひとつの不織布層を含む、スペーサー層と、
前記スペーサー層の上に位置付けられるカバー層と、を備える、創傷被覆材を備える、創傷治療装置。
[付記項27]
前記三次元不織布構造が、熱成形によって形成される、付記項26に記載の創傷治療装置。
[付記項28]
前記三次元不織布構造が、化学結合によって形成される、付記項26に記載の創傷治療装置。
[付記項29]
前記三次元不織布構造が、真空形成によって形成される、付記項26に記載の創傷治療装置。
[付記項30]
前記三次元不織布構造が、波型構造を含む、付記項26に記載の創傷治療装置。
[付記項31]
前記三次元不織布構造が、ハニカム構造を含む、付記項26に記載の創傷治療装置。
[付記項32]
前記三次元不織布構造が、直方体構造を含む、付記項26に記載の創傷治療装置。
[付記項33]
前記三次元不織布構造が、卵ボックス構造を含む、付記項26に記載の創傷治療装置。
[付記項34]
前記三次元不織布構造が、三次元ジグザグ構造を含む、付記項26に記載の創傷治療装置。
[付記項35]
前記スペーサー層が一つまたは複数の保持層をさらに備え、前記一つまたは複数の保持層が前記三次元不織布構造の上に位置付けられる、付記項26~34のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
[付記項36]
前記スペーサー層が一つまたは複数の保持層をさらに備え、前記一つまたは複数の保持層が前記三次元不織布構造の下に位置付けられる、付記項26~35のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
[付記項37]
前記三次元不織布構造が、熱成形不織布層を含む、付記項26~36のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
[付記項38]
前記三次元不織布構造が、熱可塑性繊維を含む、付記項26~37のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
[付記項39]
前記三次元不織布構造が、熱可塑性繊維およびその他の繊維の混紡を含む、付記項26~38のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
[付記項40]
前記その他の繊維は、ビスコース繊維、ゲル化可能繊維、バインダー繊維、および/または二成分繊維を含む、付記項39に記載の創傷治療装置。
[付記項41]
前記三次元不織布構造が、熱可塑性繊維から本質的に成る、付記項26~40のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
[付記項42]
前記少なくとも一つの三次元不織布構造が、2~10mmの厚さを有する、付記項26~41のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
[付記項43]
前記少なくとも一つの三次元不織布構造が、約3mmの厚さを有する、付記項26~42のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
[付記項44]
前記不織布が、エアレイド、カーディング、またはメルトスピニングによって生成される、付記項26~43のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
[付記項45]
前記不織布が等方性である、付記項26~44のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
[付記項46]
前記不織布がポリプロピレンを含む、付記項26~45のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
[付記項47]
前記不織布が水流交絡される、付記項26~46のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
[付記項48]
前記創傷被覆材は、創傷滲出液を吸収するための吸収層をさらに含み、前記吸収層は前記スペーサー層の上に位置付けられる、付記項26~47のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
[付記項49]
前記創傷被覆材が、前記吸収層の上に位置付けられた第二のスペーサー層をさらに含む、付記項48に記載の創傷治療装置。
[付記項50]
前記スペーサー層が、第一の熱成形された不織布層および前記第一の熱成形された不織布層の上に配置された第二の熱成形された布層をさらに含む、付記項26~49のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
[付記項51]
前記スペーサー層が、三次元編みまたは布層をさらに含む、付記項26~50のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
[付記項52]
ポンプと、
前記カバー層の前記オリフィスを通して創傷部位に陰圧を印加するための吸引ポートと、をさらに備える、付記項26~51のいずれか一項に記載の創傷治療装置。
[付記項53]
創傷を治療するための、付記項26~52のいずれかに記載の創傷治療装置を使用する方法。
[付記項54]
創傷被覆材で使用するためのスペーサー層であって、
三次元構造を含む少なくとも一つの熱成形不織布層を含み、
前記熱成形された不織布が、熱可塑性繊維を含む、スペーサー層。
[付記項55]
創傷を治療する方法であって、
創傷部位の上に被覆材を位置付けて、前記創傷部位の上に密閉された空洞を形成することであって、前記被覆材は、
三次元不織布構造に形成された少なくとも一つの不織布層を含むスペーサー層であって、前記三次元不織布構造は、熱成形、化学結合、または真空形成によって形成される、少なくともひとつの不織布層を含む、スペーサー層と、
前記スペーサー層の上に重なるカバー層と、を備える、形成することと、
前記創傷部位に陰圧を印加して、前記スペーサー層を通して流体を引き出すことと、を含む、創傷を治療する方法。
[付記項56]
前記被覆材は、創傷滲出液を吸収するための吸収層をさらに含み、前記吸収層は前記スペーサー層の上に位置付けられる、付記項55に記載の方法。
[付記項57]
前記カバー層は、オリフィスを備え、陰圧は前記オリフィスを通して前記創傷部位に印加される、付記項55または56のいずれか一項に記載の方法。
図1A
図1B
図2
図3-1】
図3-2】
図4A
図4B
図4C
図4D
図5-1】
図5-2】
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B