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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/74 20060101AFI20230502BHJP
   F16D 63/00 20060101ALI20230502BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20230502BHJP
   B60T 8/00 20060101ALI20230502BHJP
   F16D 121/04 20120101ALN20230502BHJP
   F16D 121/24 20120101ALN20230502BHJP
   F16D 125/40 20120101ALN20230502BHJP
【FI】
B60T13/74 G
F16D63/00 A
F16D65/18
B60T8/00 Z
F16D121:04
F16D121:24
F16D125:40
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020045119
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021146751
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井熊 直
(72)【発明者】
【氏名】南部 剛男
(72)【発明者】
【氏名】紀陸 達男
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-519568(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0290425(US,A1)
【文献】特開2010-058536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 8/32-8/96
B60T 13/00-13/74
F16D 49/00-71/04
F16D 121/04
F16D 121/24
F16D 125/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と共に回転する被制動部材に、制動部材を押し付けるブレーキピストンと、
前記ブレーキピストンを、前記被制動部材に向けて押圧する油圧システムと、
前記ブレーキピストンを、前記被制動部材に向けて押圧する可動子を有する電動システムと、
前記油圧システム及び前記電動システムを用いて、パーキングブレーキ動作を実行可能な制御装置と、
を備え、
前記パーキングブレーキ動作において、前記制御装置は、前記油圧システムと前記電動システムとの両者によって、前記ブレーキピストンへ所定値以上の押圧力を加えるように構成されており、
前記所定値は、前記電動システムが前記ブレーキピストンへ加え得る最大の押圧力よりも大き
前記油圧システムは、ユーザによるブレーキペダルの操作に応じて、前記ブレーキピストンに加える前記押圧力が変化するように構成されており、
前記パーキングブレーキ動作において、前記制御装置は、前記油圧システムが前記ブレーキピストンに与えている前記押圧力に応じて、前記ユーザに前記ブレーキペダルのさらなる操作を促す報知処理を実行する、
ブレーキ装置。
【請求項2】
前記電動システムは、前記可動子を前記ブレーキピストンに対して進退させる送りねじ部材と、前記送りねじ部材を回転させるモータとを有し、
前記パーキングブレーキ動作において、前記制御装置は、前記モータの動作を制御するように構成されている、請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記油圧システムは、前記ブレーキピストンに加える前記押圧力を増大させる油圧ポンプを有し、
前記パーキングブレーキ動作において、前記制御装置は、前記油圧ポンプの動作を制御するように構成されている、請求項1又は2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記油圧システム及び前記電動システムを用いて、パーキングブレーキ解除動作をさらに実行可能であり、
前記パーキングブレーキ解除動作では、前記制御装置が、前記油圧システムによって前記ブレーキピストンへ前記押圧力を加えながら、前記電動システムの前記可動子を前記ブレーキピストンから退避させる、請求項1からのいずれか一項に記載のブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、車両のブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、ブレーキ装置が開示されている。このブレーキ装置は、車輪と共に回転する被制動部材に、制動部材を押し付けるブレーキピストンと、ブレーキピストンを、被制動部材に向けて押圧する可動子を有する電動システムと、電動システムを用いてパーキングブレーキ動作を実行可能な制御装置から構成されている。電動システムは、可動子をブレーキピストンに対して進退させる送りねじ部材と、送りねじ部材を回転させるモータを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-256578
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したブレーキ装置の電動システムでは、モータを用いて送りねじ部材を回転させることによって、パーキングブレーキの作動及び解除を行っている。このような構成であると、必要とされる制動力に応じてモータを選定する必要があり、比較的に大きな出力のモータが必要となることがある。一般に、モータの出力に比例して、モータのサイズは大型化する。従って、比較的に大きな出力のモータを採用した場合、ブレーキ装置の大型化や重量の増大を招き、そのことが車両の設計において様々な支障をきたすことがある。
【0005】
上記の実情を鑑み、本明細書は、ブレーキ装置において電動システムに必要とされる出力を低減し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示するブレーキ装置は、車輪と共に回転する被制動部材に制動部材を押し付けるブレーキピストンと、ブレーキピストンを被制動部材に向けて押圧する油圧システムと、ブレーキピストンを被制動部材に向けて押圧する可動子を有する電動システムと、油圧システム及び電動システムを用いてパーキングブレーキ動作を実行可能な制御装置と、を備える。パーキングブレーキ動作において、制御装置は、油圧システムと電動システムとの両者によって、ブレーキピストンへ所定値以上の押圧力を加えるように構成されている。その所定値は、電動システムがブレーキピストンへ加え得る最大の押圧力よりも大きい。
【0007】
上記したブレーキ装置では、油圧システムと電動システムとの両者を用いて、パーキングブレーキ動作が実施される。パーキングブレーキ動作では、必要とされる制動力に対応する所定値以上の押圧力が、油圧システムと電動システムとの両者からブレーキピストンに加えられる。この所定値は、電動システムがブレーキピストンへ加え得る最大の押圧力よりも大きい。即ち、電動システムと油圧システムとの両者を用いることで、電動システムだけでは得られない押圧力を、ブレーキピストンに加えることができる。その結果、パーキングブレーキ動作で必要とされる制動力に対して、電動システム(即ち、モータ又はその他のアクチュエータ)に必要とされる出力を比較的に小さくすることができる。これにより、電動システムを比較的に小型に構成することができ、ブレーキ装置の小型化及び軽量化を図ることで、車両の設計における自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例の電動車のブレーキ装置10のブロック図を示す。
図2】ブレーキ装置10の油圧システム16の回路構造を示す。
図3】ブレーキ装置10が実行するパーキングブレーキ動作に係る一連の処理の一例を示すフローチャートである。
図4】ブレーキ装置10が実行するパーキングブレーキ動作に係る一連の処理の他の一例を示すフローチャートである。
図5】ブレーキ装置10が実行するパーキングブレーキ解除動作に係る一連の処理の一例を示すフローチャートである。
図6】ブレーキ装置10が実行するパーキングブレーキ解除動作に係る一連の処理の他の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本技術の一実施形態において、電動システムは、可動子をブレーキピストンに対して進退させる送りねじ部材と、送りねじ部材を回転させるモータとを有してもよい。この場合、パーキングブレーキ動作において、制御装置は、モータの動作を制御するように構成されていてもよい。但し、電動システムは、このような態様のものに限定されず、可動子をブレーキピストンに対して進退させることができる限りにおいて、様々な構成を有することができる。
【0010】
本技術の一実施形態において、油圧システムは、ユーザによるブレーキペダル12の操作に応じて、ブレーキピストンに加える押圧力が変化するように構成されていてもよい。この場合、パーキングブレーキ動作において、制御装置は、油圧システムがブレーキピストンに与えている押圧力に応じて、ユーザにブレーキペダルのさらなる操作を促す報知処理を実行してもよい。即ち、パーキングブレーキ動作において、制御装置は、油圧システムの動作を直接的に制御することなく、ユーザを介して油圧システムの動作を間接的に制御してもよい。なお、ここでいう報知処理は、特に限定されないが、ユーザの視覚、聴覚、触覚の少なくとも一つを通じて知覚されるものであってよい。
【0011】
本技術の一実施形態において、油圧システムは、ブレーキピストンに加える押圧力を増大させる油圧ポンプを有してもよい。この場合、パーキングブレーキ動作において、制御装置は、油圧ポンプの動作を制御するように構成されていてもよい。このような構成によると、制御装置は、油圧システムの動作を直接的に制御することによって、ユーザの操作を特に必要とすることなく、パーキングブレーキ動作を実施することができる。
【0012】
本技術の一実施形態において、制御装置は、油圧システム及び電動システムを用いて、パーキングブレーキ解除動作をさらに実行可能であってもよい。この場合、パーキングブレーキ解除動作では、制御装置が、油圧システムによってブレーキピストンへ押圧力を加えながら、電動システムの可動子をブレーキピストンから退避させてもよい。前述したパーキングブレーキ動作では、電動システムだけでは実現し得ない押圧力が、ブレーキピストンに加えられる。その結果、パーキングブレーキを解除するときは、ブレーキピストンから可動子へ過大な反力が作用しており、電動システムだけではパーキングブレーキを解除できないおそれがある。そのことから、パーキングブレーキ解除動作においても、制御装置は、油圧システムと電動システムとの両者を用いることで、パーキングブレーキを確実に解除する。即ち、油圧システムによってブレーキピストンへ押圧力を加えることで、ブレーキピストンから可動子へ作用する反力を低減又は消滅させる。この状態で電動システムを動作させることで、可動子をブレーキピストンから確実に退避させることができる。
【0013】
上記した実施形態において、制御装置は、パーキングブレーキ解除動作における油圧システムの動作を、ユーザを介して間接的に制御してもよい。即ち、パーキングブレーキ解除動作において、制御装置は、油圧システムがブレーキピストンに与えている押圧力に応じて、ユーザにブレーキペダルのさらなる操作を促す報知処理を実行してもよい。あるいは、制御装置は、パーキングブレーキ解除動作における油圧システムの動作を、直接的に制御してもよい。即ち、パーキングブレーキ解除動作において、制御装置は、油圧システムが備える油圧ポンプの動作を制御するように構成されていてもよい。
【実施例
【0014】
図面を参照して、本技術の実施例である車両のブレーキ装置10について説明する。本実施例のブレーキ装置10は、主に電動車両への採用が想定されている。但し、本実施例で説明する構造は、電動車両のブレーキ装置に限らず、例えばエンジン車両といった様々な車両のブレーキ装置に採用することができる。
【0015】
図1に示すように、ブレーキ装置10は、被制動部材52と、制動部材54と、ブレーキピストン56とを備える。被制動部材52は、車輪に対して相対回転不能に固定されおり、車輪と共に回転するように構成されている。制動部材54は、被制動部材52に対して進退可能に支持されており、ブレーキピストン56によって被制動部材52に押し付けられるように構成されている。被制動部材52に制動部材54が押し付けられると、被制動部材52と制動部材54との間で摩擦力が発生して、被制動部材52(即ち、車輪)が制動される。
【0016】
特に限定されないが、被制動部材52は、ディスク形状のブレーキロータであり、制動部材54は、そのブレーキロータを挟んで互いに対向する一対のブレーキパッドである。制動部材54(即ち、一対のブレーキパッド)は、ブレーキピストン56と共に、ブレーキキャリパ60に配設されている。ブレーキキャリパ60は、サスペンション(図示省略)に取り付けられており、ブレーキピストン56を収容するシリンダ59を有する。このように、本実施例のブレーキ装置10は、ディスクブレーキの構造を有する。しかしながら、他の実施形態として、ブレーキ装置10は、ドラムブレーキの構造を有してもよい。この場合、被制動部材52がブレーキドラムであって、制動部材54がブレーキドラム内に配置された一又は複数のブレーキシューであってもよい。
【0017】
ブレーキ装置10は、ブレーキペダル12と、油圧システム16と、電動システム40と、制御装置20とを備える。ブレーキペダル12は、ユーザによって操作される操作部材であり、車両の運転席に配置される。ブレーキペダル12は、油圧システム16を含む油圧回路を介して、ブレーキキャリパ60に接続されている。ユーザがブレーキペダル12を操作すると、その操作量に応じた油圧がブレーキキャリパ60に伝達される。ブレーキキャリパ60では、ブレーキピストン56が制動部材54を被制動部材52に押し付ける。それにより、被制動部材52(即ち、車輪)が制動される。
【0018】
油圧システム16の具体的な構成については、特に限定されない。一例ではあるが、本実施例の油圧システム16は、マスタシリンダ14と、ブレーキアクチュエータ18とを有する。マスタシリンダ14は、倍力装置の一種であって、ブレーキペダル12とブレーキキャリパ60との間に介挿されている。ブレーキペダル12に加えられた操作力は、マスタシリンダ14によって増幅されて、ブレーキキャリパ60のブレーキピストン56に伝達される。ブレーキアクチュエータ18は、油圧ポンプ28等を有しており(図2参照)、ブレーキペダル12に加えられた操作にかかわらず、ブレーキキャリパ60へ供給される油圧(即ち、制動力)を制御することができる。ブレーキアクチュエータ18の動作は、制御装置20によって制御される。
【0019】
図2を参照して、ブレーキアクチュエータ18の構成について説明する。なお、ここで説明する構成は一例であって、ブレーキアクチュエータ18を限定するものではない。図2に示すように、ブレーキアクチュエータ18は、リザーバタンク26と、油圧ポンプ28と、油圧センサ24と、複数のソレノイドバルブ30、32、34と、複数のチェックバルブ36、37と、複数の管路61、63と、ブレーキオイル64を備える。なお、図2は、車両の一つのブレーキキャリパ60に対するブレーキアクチュエータ18を示している。特に限定されないが、本実施例のブレーキ装置10は、複数のブレーキキャリパ60を有してもよく、この場合、各々のブレーキキャリパ60に対して、図2に示す油圧システム16を備えることができる。複数の管路61、63には、第1管路61と第2管路63とが含まれる。リザーバタンク26は、余剰のブレーキオイル64を一時的に貯留する容器である。
【0020】
油圧センサ24は、マスタシリンダ14をリザーバタンク26に接続する第1管路61に設けられており、マスタシリンダ14から供給される油圧(ブレーキオイルの圧力)を検出する。油圧センサ24の具体的な構成については、特に限定されない。油圧センサ24は、第1管路61における油圧を、直接的又は間接的に測定し得るものであればよい。油圧センサ24は制御装置20に接続されており、油圧センサ24による検出結果は制御装置20に入力される。第1管路61には、油圧センサ24とリザーバタンク26との間に、チェックバルブ36が設けられている。このチェックバルブ36は、マスタシリンダ14からリザーバタンク26への直接的なブレーキオイル64の流れを禁止する。
【0021】
複数のソレノイドバルブ30、32、34には、第1ソレノイドバルブ30と、第2ソレノイドバルブ32と、第3ソレノイドバルブ34とが含まれる。各々のソレノイドバルブ30、32、34は、制御装置20によって制御される。第1ソレノイドバルブ30と第2ソレノイドバルブ32とは、通常時は開弁しており、給電されたときに閉弁する常開型である。第3ソレノイドバルブ34は、通常時は閉弁しており、給電されたときに開弁する常閉型である。第1ソレノイドバルブ30と第2ソレノイドバルブ32は、マスタシリンダ14とブレーキキャリパ60との間に介挿されており、第3ソレノイドバルブ34は、ブレーキキャリパ60とリザーバタンク26との間に介挿されている。通常、第1ソレノイドバルブ30と第2ソレノイドバルブ32は開弁しており、第3ソレノイドバルブ34は閉弁している。この状態では、マスタシリンダ14で発生した油圧が、ブレーキキャリパ60のブレーキピストン56へ伝達される。
【0022】
油圧ポンプ28は、リザーバタンク26から延びる第2管路63上に設けられており、第2ソレノイドバルブ32を介して、ブレーキキャリパ60に接続されている。油圧ポンプ28の下流側には、チェックバルブ37が設けられている。このチェックバルブ37は、油圧ポンプ28の非動作時に、マスタシリンダ14から油圧ポンプ28を介してリザーバタンク26に向かうブレーキオイル64の流れを禁止する。油圧ポンプ28の動作は、制御装置20によって制御される。制御装置20は、油圧ポンプ28を制御することによって、ユーザによるブレーキペダル12の操作にかかわらず、所望の油圧をブレーキキャリパ60に供給することができる。この場合、制御装置20は、第1ソレノイドバルブ30を閉弁して、油圧ポンプ28を駆動する。その後に減圧する場合、制御装置20は、油圧ポンプ28の駆動を停止すると共に、第1ソレノイドバルブ30と第3ソレノイドバルブ34とを開弁する。
【0023】
図1に戻り、電動システム40は、可動子62と、送りねじ部材58と、モータ42を備える。可動子62は、ブレーキピストン56に対して進退するように構成されている。特に限定されないが、可動子62は、ナット状の部材であって、送りねじ部材58に係合する雌ねじを有する。送りねじ部材58は、可動子62をブレーキピストン56に対して進退させる送りねじであって、モータ42によって回転駆動されるように構成されている。モータ42が送りねじ部材58を回転させると、可動子62はブレーキピストン56に対して進退する。これにより、可動子65は、ブレーキピストン56を制動部材54に押圧することができ、それによって制動部材54が被制動部材52に押し付けられる。ここで、送りねじ部材58のねじのピッチは十分に小さく、ブレーキピストン56から可動子62へ反力が付加されても、可動子62が移動することはない。電動システム40の動作、特に、モータ42の動作は、制御装置20によって制御される。なお、ここで説明した電動システム40の構成は一例である。電動システム40は、このような態様のものに限定されず、可動子62をブレーキピストン56に対して進退可能である限りにおいて、様々な構成を有することができる。
【0024】
制御装置20は、電動システム40と、油圧システム16との動作を制御することによって、パーキングブレーキ動作及びパーキングブレーキ解除動作を実行可能である。明らかなように、パーキングブレーキ動作は、車両にパーキングブレーキをかけるものであり、パーキングブレーキ解除動作は、車両にかけられたパーキングブレーキを解除するものである。パーキングブレーキ動作では、必要とされる制動力に対応する所定値以上の押圧力が、油圧システム16と電動システム40との両者から、ブレーキピストン56に加えられる。この所定値は、電動システム40がブレーキピストン56へ加え得る最大の押圧力よりも大きい。即ち、電動システム40と油圧システム16との両者を用いることで、電動システム40だけでは得られない押圧力を、ブレーキピストン44に加えることができる。その結果、パーキングブレーキ動作で必要とされる制動力に対して、電動システム40(即ち、モータ42又はその他のアクチュエータ)に必要とされる出力を比較的に小さくすることができる。これにより、電動システム40を比較的に小型に構成することができ、ブレーキ装置10の小型化及び軽量化を図ることで、車両の設計における自由度を高めることができる。
【0025】
一方、パーキングブレーキ解除動作では、制御装置20が、油圧システム16によってブレーキピストン56へ押圧力を加えながら、電動システム40の可動子62をブレーキピストン56から退避させる。前述したパーキングブレーキ動作では、電動システム40だけでは実現し得ない押圧力が、ブレーキピストン56に加えられる。その結果、パーキングブレーキを解除するときも、ブレーキピストン56には過大な反力が作用しており、電動システム40だけではパーキングブレーキを解除できないおそれがある。そのことから、パーキングブレーキ解除動作においても、制御装置20は、油圧システム16と電動システム40との両者を用いることで、パーキングブレーキを確実に解除する。即ち、油圧システム16によってブレーキピストン56へ押圧力を加えることで、ブレーキピストン56から可動子62へ作用する反力を低減又は消滅させる。この状態で電動システム40を動作させることで、可動子62をブレーキピストン56から確実に退避させることができる。
【0026】
図3を参照して、パーキングブレーキ動作の一例について説明する。図3の処理は、ユーザが所定の操作を行い、パーキングブレーキ動作をONにすることによって開始される(ステップS10でYES)。先ず、ステップS12では、制御装置20は、油圧センサ24によって検出された検知圧力P1と、所定の第1圧力閾値Pth1とを比較する。このときの検知圧力P1は、ユーザによるブレーキペダル12の操作に依存する。また、第1圧力閾値Pth1は、パーキングブレーキに必要とされるブレーキピストン56への押圧力に応じて定められた値である。即ち、検知圧力P1が第1圧力閾値Pth1に達していれば、油圧システム16によるブレーキピストン56への押圧力と、電動システム40によるブレーキピストン56への押圧力との合計が、パーキングブレーキに必要とされる押圧力以上となることを意味する。このとき、電動システム40によるブレーキピストン56への押圧力は、油圧システム16によるブレーキピストン56への押圧力よりも、十分に小さくてもよい。第1圧力閾値Pth1は、制御装置20に予め記憶されている。
【0027】
制御装置20は、検知圧力P1が第1圧力閾値Pth1以上であると判断した場合(ステップS12でYES)、ステップS14の処理に進む。その一方で、制御装置20は、検知圧力P1が、第1圧力閾値Pth1を下回ると判断した場合(ステップS12でNO)、油圧が不足していると認識して、ステップS22の処理に進む。ステップS22では、制御装置20はユーザに対して報知処理を実行する。この報知処理は、ユーザにブレーキペダル12のさらなる操作(即ち、ブレーキペダル12をさらに踏み込むこと)を促すものである。制御装置20は、報知処理を実行した後、再びステップS12の処理に戻る。
【0028】
ここで、上記した報知処理の具体的な態様は特に限定されない。報知処理は、ユーザの視覚、聴覚、触覚の少なくとも一つを通じて知覚されるものであってよい。ユーザの視覚を通じて知覚されるものとしては、例えば、所定のランプを点灯することや、ディスプレイに所定のメッセージや図形が表示することが挙げられる。ユーザの聴覚を通じて知覚されるものとしては、例えば、所定の報知音や音声メッセージを出力することが挙げられる。ユーザの触覚を通じて知覚するものとしては、例えば、ハンドルやブレーキペダル12といった操作部材を振動させることが挙げられる。
【0029】
ステップS14の処理に進むと、制御装置20は、電動システム40のモータ42を、正方向へ回転するように制御する。これにより、送りねじ部材58が正方向に回転し、可動子62がブレーキピストン56に向けて前進する。このとき、ブレーキピストン56は、既に油圧で制動部材54に押し付けられており、可動子62の前方において可動子62から離れて位置している。従って、モータ42に作用する負荷は小さい。言い換えると、モータ42は、比較的に小さな出力を有するもので足りる。次いで、ステップS16の処理に進む。
【0030】
ステップS16では、制御装置20は、再び検知圧力P1と第1圧力閾値Pth1とを比較する。検知圧力P1が第1圧力閾値Pth1以上であれば(ステップS16でYES)、制御装置20は、パーキングブレーキ動作を継続可能と認識して、ステップS18の処理に進む。その一方で、検知圧力P1が第1圧力閾値Pth1を下回るときは(ステップS16でNO)、制御装置20は、ユーザによるブレーキペダル12の操作が不十分と認識して、ステップS24の処理に進む。ステップS24では、制御装置20は、ユーザへ報知処理を実行する。この報知処理は、前述したステップS22の報知処理と同様のものであり、ユーザにブレーキペダル12のさらなる操作を促すものである。報知処理の実行後、制御装置20は、再びステップS16の処理に戻る。
【0031】
ステップS18の処理に進むと、制御装置20は、モータ42の電流A1と、第1電流閾値Ath1とを比較する。これにより、制御装置20は、可動子62がブレーキピストン56に当接したのか否かを判断する。即ち、可動子62がブレーキピストン56に当接し、モータ42がロックされると、モータ42の電流A1は大幅に上昇する。従って、制御装置20は、モータ42の電流A1が、第1電流閾値Ath1を上回るときに、可動子62がブレーキピストン56に当接したと判断することができる。モータ42の電流A1が第1電流閾値Ath1を上回ると(ステップS18でYES)、制御装置20は、ステップS20の処理に進む。その一方で、モータ42の電流A1が第1電流閾値Ath1を下回るときは(ステップS18でNO)、ステップS16の処理へ戻る。即ち、ステップS16における検知圧力P1の比較処理と、ステップS18における電流A1の比較処理とが、再度実行される。ここで、可動子62がブレーキピストン56に当接したことは、モータ42の電流A1に限られず、他の指標に基づいて認識されてもよい。
【0032】
これまでの説明から理解されるように、図3に示すパーキングブレーキ動作では、ユーザにブレーキペダル12を操作させることにより、油圧システム16からブレーキピストン56へパーキングブレーキに必要とされる押圧力を発生させる。従って、パーキングブレーキ動作の実行中(ステップS12以降)において、ユーザはブレーキペダル12を踏み込み続けて、第1圧力閾値Pth1以上の油圧を発生させ続ける必要がある。そのため、制御装置20は、パーキングブレーキ動作の実行中、検知圧力P1を継続的に監視し、必要に応じて前述した報知処理を実行することで、ユーザにブレーキペダル12のさらなる操作を促す。このように、図3に示すパーキングブレーキ動作では、制御装置20が、油圧システム16の動作を直接的に制御するのではく、ユーザを介して油圧システム16の動作を間接的に制御する。
【0033】
ステップS20の処理に進むと、制御装置20は、モータ42の駆動を停止する。これにより、ブレーキピストン56に十分な押圧力が加えられた状態で、可動子62及びブレーキピストン56の位置はロックされる。次いで、ステップS21では、ユーザのブレーキペダル12の操作が解除されることによって、油圧システム16は減圧される。このとき、制御装置20は、パーキングブレーキ動作が完了したことをユーザに報知することによって、ユーザにブレーキペダル12の操作解除を促してもよい。以上により、パーキングブレーキ動作は終了する。
【0034】
上記のパーキングブレーキ動作において、モータ42の起動(ステップS14)は、パーキングブレーキ動作がONになった直後から開始され、一度目の圧力比較(ステップS12)と並行して実行されてもよい。また、油圧システム16の減圧(ステップS21)は、モータ42の停止(ステップS20)と同時に実行されてもよい。あるいは、油圧システム16が減圧された後に(即ち、ステップS21の後に)、モータ42の停止(ステップS20)が行われてもよい。
【0035】
次に、図4を参照して、パーキングブレーキ動作の他の一例について説明する。図4の処理は、ユーザが所定の操作を行い、パーキングブレーキ動作をONすることによって開始される(ステップS50でYES)。先ず、ステップS52では、制御装置20は、油圧システム16の油圧ポンプ28を駆動する。
【0036】
次いで、ステップS54では、制御装置20は、ポンプ圧力P2と、所定の第1圧力閾値Pth1とを比較する。このときのポンプ圧力P2は、油圧ポンプ28を駆動することによってブレーキキャリパ60に供給される圧力である。なお、ポンプ圧力P2については、直接的に検出されてもよいが、油圧ポンプ28の回転数に基づいて推定することができる。但し、油圧ポンプ28によるポンプ圧力P2の検出は、このような態様のものに限定されず、例えば、油圧ポンプ28とブレーキキャリパ60との間に設けられる油圧センサ(不図示)によって、直接的に行われてもよい。あるいは、設計上、油圧ポンプ28を駆動することで、ポンプ圧力P2が第1圧力閾値Pth1を超えることが明らかな場合は、このステップS54の処理を省略することもできる。
【0037】
制御装置20は、ポンプ圧力P2が第1圧力閾値Pth1以上であると判断した場合(ステップS54でYES)、パーキングブレーキ動作を継続可能と認識して、ステップS56の処理に進む。その一方で、制御装置20は、ポンプ圧力P2が第1圧力閾値Pth1を下回ると判断した場合(ステップS54でNO)、油圧が不足していると認識して、所定時間経過後に、再びステップS54の処理を実行する。
【0038】
ステップS56の処理に進むと、制御装置20は、電動システム40のモータ42を正方向へ回転するように制御する。この処理は、前述したステップS14の処理と同様であり、送りねじ部材58が正方向に回転し、可動子62がブレーキピストン56に向けて前進する。このとき、ブレーキピストン56は、既に油圧で制動部材54に押し付けられており、可動子62の前方において可動子62から離れて位置している。
【0039】
ステップS58では、制御装置20は、モータ42の電流A1と、第1電流閾値Ath1とを比較する。この処理は、前述したステップS18の処理と同様である。モータ42の電流A1が第1電流閾値Ath1を上回ると(ステップS58でYES)、制御装置20は、可動子62がブレーキピストン56に当接したと認識し、ステップS60の処理に進む。その一方で、モータ42の電流A1が第1電流閾値Ath1を下回るときは(ステップS58でNO)、制御装置20は、可動子62がブレーキピストン56に当接していないと認識し、所定時間経過後に、再びステップS58の処理を実行する。ここで、可動子62がブレーキピストン56に当接したことは、モータ42の電流A1に限られず、他の指標に基づいて認識されてもよい。
【0040】
ステップS60の処理に進むと、制御装置20は、油圧ポンプ28の駆動を停止する。次いで、ステップS61では、制御装置20は、第1ソレノイドバルブ30と第3ソレノイドバルブ34とを開弁することによって、油圧システム16を減圧させる。その後、ステップS62では、制御装置20は、モータ42の駆動を停止する。これにより、ブレーキピストン56に十分な押圧力が加えられた状態で、可動子62及びブレーキピストン56の位置はロックされる。以上により、パーキングブレーキ動作は終了する。
【0041】
これまでの説明から理解されるように、図4に示すパーキングブレーキ操作では、制御装置20が油圧ポンプ28の動作を直接的に制御することによって、油圧システム16からブレーキピストン56へパーキングブレーキに必要とされる押圧力を発生させる。従って、ユーザの操作を特に必要とすることなく、車両のパーキングブレーキを実施することができる。
【0042】
上記のパーキングブレーキ動作において、モータ42の起動(ステップS56)は、パーキングブレーキ動作がONになった直後から開始され、圧力比較(ステップS54)と並行して実行されてもよい。加えて、又は代えて、モータ42の停止(ステップS62)は、油圧ポンプ28の停止(ステップS60)と同時又はそれよりも先に実行されてもよい。
【0043】
上記のパーキングブレーキ動作において、ポンプ圧力P2は、ユーザがブレーキペダル12を操作することによって発生した圧力を含んでもよい。このとき、ユーザのブレーキペダル12の操作は、油圧ポンプ28の駆動よりも前に実行される。即ち、ユーザがブレーキペダル12を操作することによって発生する油圧に対して、不足分を油圧ポンプ28によって補うことができる。
【0044】
図5を参照して、パーキングブレーキ解除動作の一例について説明する。図5の処理は、ユーザが所定の操作を行い、パーキングブレーキ解除動作をONにすることによって開始される(ステップS30でYES)。
【0045】
先ず、ステップS32では、制御装置20は、油圧センサ24によって検出された検知圧力P1と、第2圧力閾値Pth2とを比較する。このときの第2圧力閾値Pth2は、パーキングブレーキの状態において、ブレーキピストン56から可動子62へ作用している反力に対応する押圧力である。即ち、検知圧力P1が第2圧力閾値Pth2に達していれば、ブレーキピストン56に作用する反力は低減又は消滅している。第2圧力閾値Pth2は、制御装置20に予め記憶されている。厳密に言うと、必要とされる第2圧力閾値Pth2は、最後に実行されたパーキングブレーキ動作に応じて変化する。そのことから、制御装置20は、パーキング動作を実行する毎に、それを解除するのに必要となる第2圧力閾値Pth2を決定し、記憶してもよい。
【0046】
制御装置20は、検知圧力P1が第2圧力閾値Pth2以上であると判断した場合(ステップS32でYES)には、ステップS34の処理に進む。その一方で、制御装置20は、検知圧力P1が、第2圧力閾値Pth2を下回ると判断した場合(ステップS32でNO)、油圧が不足していると認識して、ステップS42の処理に進む。ステップS42では、制御装置20はユーザに対して報知処理を実行する。この報知理処理は、前述した報知処理(図3のステップS22、ステップS24)と同様のものであり、ユーザにブレーキペダル12のさらなる操作を促すものである。報知処理の実行後、制御装置20は、再びステップS32の処理に戻る。
【0047】
ステップS34の処理に進むと、制御装置20は、電動システム40のモータ42を、逆方向へ回転するように制御する。これにより、送りねじ部材58が逆方向に回転し、可動子62がブレーキピストン56から退避する。このとき、パーキングブレーキ動作によってブレーキピストン56に作用している反力は、油圧によって既に低減又は消滅している。この状態でモータ42を動作させることで、可動子62をブレーキピストン56から確実に退避させることができる。次いで、ステップS36の処理に進む。
【0048】
ステップS36では、制御装置20は、モータ42の電流A1と第2電流閾値Ath2とを比較する。これにより、制御装置20は、可動子62が後退限まで移動してストッパーに当接したのか否かを判断する。即ち、可動子62が後退限のストッパーに当接し、モータ42がロックされると、モータ42の電流A1は大幅に上昇する。従って、制御装置20は、モータ42の電流A1が、第2電流閾値Ath2を上回るときに、可動子62がストッパーに当接したと判断することができる。モータ42の電流A1が第2電流閾値Ath2を上回ると(ステップS36でYES)、制御装置20は、ステップS38の処理に進む。その一方で、モータ42の電流A1が第2電流閾値Ath2を下回るときは(ステップS36でNO)、可動子62がストッパーに当接していないと認識し、ステップS36の処理を繰り返し実行する。ここで、可動子62がストッパーに当接したこと(あるいは、可動子62がブレーキピストン56から十分に退避したこと)は、モータ42の電流A1に限られず、他の指標に基づいて認識されてもよい。
【0049】
ステップS38の処理に進むと、制御装置20は、モータ42の駆動を停止する。次いで、ステップS40では、ユーザのブレーキペダル12の操作が解除されることによって、油圧システム16は減圧される。このとき、制御装置20は、パーキングブレーキ解除動作が完了したことをユーザに報知することによって、ユーザにブレーキペダル12の操作解除を促してもよい。以上により、パーキングブレーキ解除動作は終了する。
【0050】
これまでの説明から理解されるように、図5に示すパーキングブレーキ解除操作では、ユーザにブレーキペダル12を操作させることにより、油圧システム16からブレーキピストン56へパーキングブレーキ解除に必要とされる押圧力を発生させる。そのため、制御装置20は、パーキングブレーキ解除動作を実行している間に、必要に応じて前述した報知処理を実行することで、ユーザにブレーキペダル12のさらなる操作を促す。このように、図3に示すパーキングブレーキ動作では、制御装置20が、油圧システム16の動作を直接的に制御するのではく、ユーザを介して油圧システム16の動作を間接的に制御する。
【0051】
図6を参照して、パーキングブレーキ解除動作の他の一例について説明する。図6の処理は、ユーザが所定の操作を行い、パーキングブレーキ解除動作をONすることによって開始される(ステップS80でYES)。先ず、ステップS82では、制御装置20は、油圧システム16の油圧ポンプ28を駆動する。
【0052】
次いで、ステップS84では、制御装置20は、ポンプ圧力P2と、第2圧力閾値Pth2とを比較する。制御装置20は、ポンプ圧力P2が第2圧力閾値Pth2以上であると判断した場合(ステップS84でYES)、ステップS86の処理に進む。その一方で、制御装置20は、ポンプ圧力P2が、第2圧力閾値Pth2を下回ると判断した場合(ステップS84でNO)、油圧が不足していると認識して、所定時間経過後に再びステップS84の処理を実行する。このパーキングブレーキ解除動作においても、ポンプ圧力P2は、例えば油圧ポンプ28の回転数から推定することができる。
【0053】
ステップS86の処理に進むと、制御装置20は、電動システム40のモータ42を、逆方向へ回転するように制御する。この処理は、前述したステップS34の処理と同様であり、送りねじ部材58が逆方向に回転し、可動子62がブレーキピストン56から退避する。このとき、パーキングブレーキ動作によってブレーキピストン56に作用している反力は、油圧によって、既に低減又は消滅している。この状態でモータ42を動作させることで、可動子62をブレーキピストン56から確実に退避させることができる。次いで、ステップS88の処理に進む。
【0054】
ステップS88では、制御装置20は、モータ42の電流A1と第2電流閾値Ath2とを比較する。この処理は、前述したステップS36の処理と同様である。制御装置20は、モータ42の電流A1が第2電流閾値Ath2を上回ると(ステップS88でYES)、可動子62が後退限のストッパーに当接したと判断して、ステップS90の処理に進む。その一方で、モータ42の電流A1が第2電流閾値Ath2を下回るときは(ステップS88でNO)、可動子62がストッパーに当接していないと認識し、ステップS88の処理を繰り返し実行する。ここで、可動子62が後退限のストッパーに当接したこと(あるいは、可動子62がブレーキピストン56から十分に退避したこと)は、モータ42の電流A1に限られず、他の指標に基づいて認識されてもよい。
【0055】
ステップS90の処理に進むと、制御装置20は、モータ42の駆動を停止する。次いで、ステップS92では、制御装置20は、油圧ポンプ28の駆動を停止する。その後、ステップS94では、制御装置20は、第1ソレノイドバルブ30と第3ソレノイドバルブ34とを開弁することによって、油圧システム16を減圧させる。以上により、パーキングブレーキ解除動作は終了する。
【0056】
これまでの説明から理解されるように、図6に示すパーキングブレーキ操作では、制御装置20が油圧ポンプ28の動作を直接的に制御することによって、油圧システム16からブレーキピストン56へパーキングブレーキ解除に必要とされる押圧力を発生させる。従って、ユーザの操作を特に必要とすることなくパーキングブレーキ解除操作を実施することができる。
【0057】
上記のパーキングブレーキ解除動作において、モータ42の起動(ステップS86)は、パーキングブレーキ動作がONになった直後から開始され、圧力比較(ステップS84)と並行して実行されてもよい。あるいは、油圧ポンプ28の停止(ステップS92)は、モータ42の停止(ステップS90)と同時又はそれよりも先に実行されてもよい。
【0058】
ポンプ圧力P2は、前述したように油圧ポンプ28を駆動することによってブレーキキャリパ60に供給される圧力である。上記のパーキングブレーキ解除動作において、ポンプ圧力P2は、ユーザがブレーキペダル12を操作することによって発生した圧力を含んでもよい。このとき、ユーザのブレーキペダル12の操作は、油圧ポンプ28の駆動よりも前に実行される。従って、ユーザがブレーキペダル12を操作することによってブレーキキャリパ60に発生した油圧に対して、不足分を油圧ポンプ28によって補うことができる。
【0059】
なお、本技術のパーキングブレーキ動作は、全てのパーキングブレーキにおいて毎回実施されもよいし、あるいは、特定の状況でのパーキングブレーキにおいてのみ実施されてもよい。この特定の状況とは、特に限定されないが、例えば坂道といった傾斜がある路面に駐車する場合のように、通常より大きな制動力が必要とされる状況が挙げられる。坂道の判定は、例えば、車両に内蔵のGセンサや、停車時のサービスブレーキ油圧や、GPS位置情報といった情報を参照することによって実施されてよい。
【0060】
本技術の変形例として、制御装置20は、ブレーキピストン56のストローク位置を検出可能なストロークセンサーを備えてもよい。ストローク位置を参照することによって、パーキングブレーキ動作に必要な制動力が被制動部材52に所与されたことを認識することができる。
【0061】
以上、いくつかの具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは組み合わせによって技術的有用性を発揮するものである。
【符号の説明】
【0062】
10:ブレーキ装置
12:ブレーキペダル
14:マスタシリンダ
16:油圧システム
18:ブレーキアクチュエータ
20:制御装置
24:油圧センサ
26:リザーバタンク
28:油圧ポンプ
30、32、34:ソレノイドバルブ
36、37:チェックバルブ
40:電動システム
42:モータ
52:被制動部材
54:制動部材
56:ブレーキピストン
58:送りねじ部材
59:シリンダ
60:ブレーキキャリパ
61、63:管路
62:可動子
64:ブレーキオイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6