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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】釣竿及び振出式の釣竿セット
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/00 20060101AFI20230502BHJP
【FI】
A01K87/00 610A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020053073
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021151199
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】牛之濱 幸佑
(72)【発明者】
【氏名】原田 健二
(72)【発明者】
【氏名】塩田 純也
(72)【発明者】
【氏名】中川 敬介
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5259140(US,A)
【文献】実開平3-65467(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00
A01K 87/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の竿杆を収納する元竿杆を備え、収納された各竿杆を振出式に継合する振出構造部と、
前記振出構造部の元竿杆が着脱可能な継合構造を備え、握持、保持可能なバット部と、
前記バット部の先端に対して着脱可能であり、前記振出構造部を軸方向に亘ってカバーする筒状体と、
を有し、
前記バット部には、リールが装着されるリールシートが設けられており、
前記筒状体は、前記バット部の先端から取り外して前記バット部の後端に対して着脱可能なグリップを構成することを特徴とする振出式の釣竿。
【請求項2】
前記筒状体は、前記振出構造部に被せて前記リールシートを覆った状態で、前記バット部の基端部で着脱可能に固定されることを特徴とする請求項1に記載の振出式の釣竿。
【請求項3】
記筒状体は、前記振出構造部に被せて前記リールシートを露出させた状態で前記バット部に着脱可能に固定されることを特徴とする請求項1に記載の振出式の釣竿。
【請求項4】
前記継合構造は、インロー継ぎ構造又は逆並継構造であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の振出式の釣竿。
【請求項5】
前記振出構造部を構成する竿杆には、釣糸が挿通する釣糸ガイドが複数、固定されており、
前記筒状体は、前記振出構造部に被せた際、前記釣糸ガイドと干渉しないことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の振出式の釣竿。
【請求項6】
前記筒状体は、前記振出構造部に被せた状態で、前記元竿杆に順次収納される小径竿杆の飛び出しを防止することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の振出式の釣竿。
【請求項7】
前記筒状体を前記バット部の後端に装着する際、前記バット部の後端に設けられた突出部に嵌合する開口を具備したトリガーを配設し、前記開口を前記突出部に嵌合することで前記バット部と筒状体との間に前記トリガーを挟持したことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の振出式の釣竿。
【請求項8】
複数の竿杆を収納する元竿杆を備え、収納された各竿杆を振出式に継合する振出構造部と、
前記振出構造部の元竿杆が着脱可能な継合構造を備え、握持、保持可能なバット部と、
前記バット部の先端に対して着脱可能であり、前記振出構造部を軸方向に亘ってカバーする筒状体と、
を有し、
前記バット部には、リールが装着されるリールシートが設けられており、
前記筒状体は、前記バット部の先端から取り外して前記バット部の後端に対して着脱可能なグリップを構成し、
前記振出構造部は、調子及び/又は使用態様が異なるタイプを複数種類備えており、いずれの振出構造部も前記バット部に対して継合可能であることを特徴とする振出式の釣竿セット。
【請求項9】
前記調子が異なる複数種類の振出構造部の継合構造は、いずれも前記バット部に対してインロー継ぎ構造であることを特徴とする請求項8に記載の振出式の釣竿セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振出式の釣竿及び振出式の釣竿セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振出式の釣竿が知られている。振出式の釣竿は、元竿杆の内部に複数本の竿杆を収納しており、元竿杆の内部から各竿杆を順次引き出し、大径竿杆の先端に小径竿杆の後端を継合することで使用される。このような振出式の釣竿は、並継竿と比較すると持ち運びが便利であるという利点がある。
【0003】
ところで、上記したような釣竿において、振出式と並継式の特徴を組み合わせたタイプのものが知られている。例えば、特許文献1には、釣糸ガイドを装着した振出式の釣竿において、先端の穂先竿杆部分を並継構造とし、釣り場の状況、対象魚等によって、硬調子/柔調子が使い分け可能となるように、異なる調子の穂先竿杆と交換できる構成が開示されている。また、特許文献2には、振出式の釣竿の内、中間部分の竿杆を並継式の2本竿杆とし、仕舞寸法を長くすることなく、実釣時の魚の取り込み時において、並継部分を分離してスムーズな取り込み操作が行なえる釣竿が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭62-39655号
【文献】実開昭62-142272号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、釣竿として、振出式の継合構造と並継式の継合構造を組み合わせたものが知られているが、実釣時において、釣竿そのものの調子を変えたい場合がある。特許文献1の構成では、穂先竿杆のみを交換することは可能であるものの、それ以外の竿杆については交換することはできず、釣竿全体の調子を変更することはできない。また、特許文献2の構成では、魚の取り込みを考慮したものであり、釣竿の調子そのものを変更するものではない。
【0006】
また、近年の魚釣りでは、長尺竿の持ち運びが大変なことや、運搬が運送会社の制限によって運送できない、更には、運送費が高騰している等の理由から、運搬時に短い仕舞寸法にできる振出式の釣竿(モバイルロッドとも称する)が注目を浴びている。このようなモバイルロッドは、バッグや小物入れ等に収納できるように元竿杆が短いことから、使用時の全長が短くなってしまい、使用状態が制限される等、取扱性が低下するという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、取扱性を向上し、調子そのものを容易に変更することが可能な振出式の釣竿、及び、振出式の釣竿セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る振出式の釣竿は、複数の竿杆を収納する元竿杆を備え、収納された各竿杆を振出式に継合する振出構造部と、前記振出構造部の元竿杆が着脱可能な継合構造を備え、握持、保持可能なバット部と、前記バット部に対して着脱可能であり、前記振出構造部を軸方向に亘ってカバーする筒状体と、を有し、前記筒状体は、前記バット部の後端に対して着脱可能なグリップを構成することを特徴とする。
【0009】
上記した構成の振出式の釣竿は、元竿杆に収納された各竿杆を振出式に継合する振出構造部を、バット部に対して着脱可能に継合する構成であるため、釣竿として調子が異なる振出構造部そのものを釣り場の状況、対象魚等によって、交換することが可能となる。また、振出構造部は、筒状体によってカバーされており、この筒状体は、バット部の後端に対して着脱可能なグリップを構成することから、使用時は、バット部を長くすることができ、かつ、収納時には振出構造部のカバー部材となるため、取扱性の向上が図れる。
【0010】
また、上記した目的を達成するために、本発明は、振出式の釣竿セットを提供するのであり、当該セットは、複数の竿杆を収納する元竿杆を備え、収納された各竿杆を振出式に継合する振出構造部と、前記振出構造部の元竿杆が着脱可能な継合構造を備え、握持、保持可能なバット部と、前記バット部に対して着脱可能であり、前記振出構造部を軸方向に亘ってカバーする筒状体と、を備え、前記筒状体は、前記バット部の後端に対して着脱可能なグリップを構成し、前記振出構造部は、調子及び/又は使用態様が異なるタイプを複数種類備えており、いずれの振出構造部も前記バット部に対して継合可能であることを特徴とする。
【0011】
上記した振出式の釣竿セットは、1つのバット部に対して着脱可能な振出構造部について、調子及び/又は使用態様が異なるタイプを複数種類備えているため、ユーザは、釣り場の状況、対象魚等によって、好みのタイプの振出構造部を選択して使用することが可能となる。筒状体は、バット部に着脱されるグリップとしての機能を有するため、バット部を短くすることができ、いずれのタイプの振出構造部を用いても、全体として軸方向の仕舞寸法を短くでき、取扱性が良く、異なる調子で寸法が長い釣竿を多数本、携行する必要がなくなる。
なお、調子が異なる釣竿には、継本数が異なるもの、釣竿全体として撓みバランスが異なるもの等、異なる性能を発揮する釣竿構造が含まれ、使用態様が異なる釣竿には、リールを装着できる(釣糸ガイドが装着されている)タイプの釣竿、及び、リールを装着しないタイプの釣竿(のべ竿)が含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、釣竿の調子そのものを変更することが可能であり、取扱性が向上した振出式の釣竿、及び、振出式の釣竿セットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る釣竿の第1の実施形態を示す図であり、(a)は複数の竿杆の収納状態を示す部分断面図、(b)は収納状態の斜視図。
図2図1に示す釣竿の複数の竿杆を振り出した状態(使用状態)を示す斜視図。
図3図1に示す釣竿において、振出構造部とバット部の継合構造、及び、筒状体をバット部の後端に取り付けた状態を示す図。
図4】(a)~(c)は、それぞれバット部に装着される交換可能な振出構造部(振出構造部のセット例)を示す図。
図5】交換される振出構造部に装着されるトップカバー(ガイドカバー)の一例を示す図。
図6】本発明に係る釣竿の第2の実施形態を示す図であり、(a)は複数の竿杆の収納状態を示す部分断面図、(b)は収納状態の斜視図。
図7】継合構造の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1から図3は、本発明に係る釣竿の第1の実施形態を示す図であり、図1(a)は複数の竿杆の収納状態を示す部分断面図、図1(b)は収納状態の斜視図、図2は、図1に示す釣竿の複数の竿杆を振り出した状態(使用状態)を示す斜視図、そして、図3は、図1に示す釣竿において、振出構造部とバット部の継合構造、及び、筒状体をバット部に固定した状態を示す図である。
【0015】
本発明に係る振出式の釣竿(以下、釣竿と称する)1は、振出構造部5と、振出構造部5と同軸上で着脱可能に継合され、握持、保持されるバット部(バット節)20とを備えている。
前記振出構造部5は、元竿杆5aに対して、複数の竿杆5b,5c,5d,5e,5fを順次振り出して、大径の竿杆の先端に小径の竿杆の基端を継合させる振出式に構成されており、複数の竿杆は、大径の竿杆内に順次収納され、全ての竿杆が最も大径の竿杆(元竿杆)5aの内部に収納されるようになっている。なお、本実施形態では、元竿杆5aの内部に収納される竿杆の本数を5本(5b~5f)として示してあるが、継合本数については任意であり、図に示す構成では、最も小径の竿杆が穂先竿杆5fとなる。
このような振出式の振出構造部5は、バット部20の先端部に対して、継合構造によって継合されており、図1に示す収納状態では、後述する筒状体30が装着されて露出することはない(図1(b)参照)。
【0016】
前記バット部20は、軸方向に延びており、本実施形態では内部が空洞の管状体として構成されている。バット部20の先端部には、振出構造部5の元竿杆5aを着脱させる継合構造21が設けられており、その中間部分には、魚釣用リール(図示せず)が装着できるようにリールシート22が配設されている。リールシート22には、スピニングリール及び両軸受リールの両タイプの魚釣用リールが装着可能となっている。
【0017】
前記振出構造部5を構成する各竿杆(本実施形態では、竿杆5b~5f)の先端部分には、リールから繰り出される釣糸を挿通させる釣糸ガイド6b~6fが取り付けられている。この場合、釣糸ガイド6fは、いわゆる穂先ガイドとなっている。なお、元竿杆5aにも釣糸ガイドが装着されていても良いし、各竿杆には、必要に応じて遊動ガイドを装着していても良い。また、高さが高い釣糸ガイド(元竿杆に装着される釣糸ガイド等)については、後述する筒状体30と干渉しないように、竿杆に対して着脱可能に構成したり、倒伏可能に構成されていても良い。
【0018】
上記した振出構造部5及びバット部20は、公知のように繊維強化樹脂製の管状体として構成されており、例えば、強化繊維(主に炭素繊維やガラス繊維等)に、エポキシ樹脂等の合成樹脂を含浸した繊維強化樹脂のプリプレグシートを芯金(マンドレル)に巻回し加熱工程を経た後、脱芯するなど、定法に従って形成されている。また、前記穂先竿杆5fについては、管状体以外にも、中実ソリッド、或いは、ソリッド体と管状体の組み合わせで構成されていても良い。
【0019】
前記バット部20のリールシート22は、バット部20の基端領域に設けられており、公知のように、リール脚が載置されるリール脚載置部22aと、その前後に配設されてリール脚を締め付けるフード部22b,22cとを備えている。本実施形態では、後方側のフード部22cが固定フードとなっており、前方側のフード部22bが軸方向に移動する移動フードとなっている(以下、移動フード22b、固定フード22cと称する)。
【0020】
前記固定フード22cは、バット部20の基端部の外周面に固定されており、リール脚載置部22aに向けて開口する受入穴22caを備えている。また、移動フード22bは、リール脚載置部22aに向けて開口する受入穴22baを備えている(受入穴22baは360°に亘って開口していても良い)。前記移動フード22bは、バット部20に設けられた雄螺子部に対して螺合する雌螺子部が形成された操作部22bbを備えており、リール脚載置部22aにリール脚を載置しながら後方側を固定フード22cの受入穴22caに嵌入し、操作部22bbを回転操作することで、リール脚は、移動フード22bの受入穴22baと固定フード22cの受入穴22caとで締め付け固定される。なお、リールシートの構成、移動フードの移動機構等については公知であるため、詳細な説明については省略する。
【0021】
バット部20は、前記固定フード22cの後端側が軸方向に突出しており、その突出部20aに下栓(尻栓)25が取り付けられている。下栓25は、キャップ状に形成されており、その周壁25aの内面には、前記突出部20aに形成された雄螺子部に螺合する雌螺子部が設けられている。この雌螺子部は、下栓25の内面に直接形成しても良いし、下栓25に対して別途、圧入固定される径調整のための環状体の内面に形成されたものであっても良い。また、周壁25aの外周面には、後述する筒状体30の開口端部を圧入して固定し易いように、リング状の凹凸25fが複数個形成されている(圧入構造が形成されている)。すなわち、下栓25は、バット部20の後端の開口を閉塞すると共に、バット部20に装着される筒状体30の後端の開口を閉塞する機能を有する。
なお、下栓25の内面は、螺合構造ではなく圧入構造であっても良いし、下栓25の外面は、圧入構造ではなく螺合構造であっても良い。
【0022】
前記バット部20の先端部に設けられている継合構造21は、振出構造部5の元竿杆5aを着脱させる機能を備えていれば良く、本実施形態では、公知のインロー継ぎ構造で構成されている。すなわち、バット部20の先端開口部には、インロー部材21Aが圧入、固定されており、インロー部材21Aに対して元竿杆5aを外嵌することで、振出構造部5はバット部20の先端に対して着脱自在に継合されるようになっている。前記元竿杆5aに順次収納される竿杆5b~5fについては、各釣糸ガイドによって、大径竿杆に対する収納が規制されているため、前記竿杆5b~5fは、この規制された状態で、インロー部材21Aと接触しない長さに形成されている。
【0023】
振出構造部5とバット部20の継合構造21として、上記したようなインロー継ぎ構造を用いることで、元竿杆5aの外径がバット部20の内径に制約を受けなくなり、振出構造部の調子や強度の設計自由度の向上が図れる。特に、振出構造部5は、後述する筒状体30によってカバーされて制約を受けるが、インロー部材を先節の内側に挿入するインロー継ぎ構造を用いることで、先節(元竿杆)の径を大径化できるため、設計の自由度が向上する。また、元竿杆が大径化することで、多数本の竿杆を収納することができ、仕舞時の軸長方向長さを短くしても、釣竿全体として長い釣竿にする等、設計の自由度が向上する。
勿論、継合構造としては、一般的な並継構造を用いても良いし、逆並継構造(図7参照)等を用いても良い。図7に示すように、逆並継構造では、バット部20の先端に設けられる継合部21Bに、元竿杆5aの基端部が外嵌して継合がなされることから、インロー継ぎ構造と同様、元竿杆5aの径を大径化することが可能となる。
【0024】
前記バット部20には、筒状体30が軸方向に沿って着脱可能に装着されている。この筒状体30は、図1に示す状態では、振出構造部5を軸方向に亘ってカバーする保護カバーとしての機能(元竿杆内に収納された複数の竿杆の突出を防止する機能)を有すると共に、バット部20から取り外して、バット部20の後端部に装着することが可能となっており、実釣時に握持、保持される、いわゆるグリップとしての機能を兼ね備えている。
【0025】
以下、筒状体30の構成について具体的に説明する。
本実施形態の筒状体30は、前記振出構造部5をバット部20に継合した状態で、振出構造部5を軸方向に亘って覆うように構成されており、バット部20に装着すると、全体として棒状になるよう構成されている。筒状体30の断面形状については、多角形、円、楕円等、特に限定されることはないが、バット部20が断面円形の管状体であるため、デザイン及び外観等を考慮して、円筒形状(断面円形)に形成することが好ましい。また、材質についても特に限定されることはなく、例えば、バット部20、及び、これに継合される振出構造部の各竿杆と同じ材料、アルミ、SUS等の各種金属、樹脂、繊維強化樹脂等で形成されていても良く、必要に応じて塗装や物理的な蒸着、化学的な蒸着などの各種表面処理を施して外観を向上させても良い。或いは、バット部20の後端に装着されてグリップとしての機能を兼ね備えることから、通常のグリップと同様、例えば、EVA、コルク等の柔軟性のある素材を被着して、握持、保持性を向上させても良い。
【0026】
前記筒状体30は、振出構造部5の先端側から、軸方向に向けて被せるように被着することから、筒状体30とバット部20には、筒状体30を被着した際、両者を固定する固定構造が設けられている。本実施形態の筒状体30は、バット部20に設けられた前記リールシート22を露出させる位置まで被せることが可能に構成されており、固定構造は、筒状体30を圧入して、バット部20との間の摩擦力で固定するよう構成されている。
【0027】
具体的には、前記移動フード22bの外表面、及び、移動フードの操作部22bbの前側に装着されたリング部材の外表面に、それぞれリング状の凹凸20A,20Bを形成し、その部分で、筒状体30の開口内面、及び、先端側の内面が圧入、固定できるように構成されている。このため、筒状体30をバット部20に被着して固定すると、前記リールシート22のリール脚載置部22aが露出した状態となる。
なお、筒状体30とバット部20の固定構造、固定位置、固定方法については特に限定されることはなく、螺合構造で固定しても良いし、爪による係止構造等、適宜変形することが可能である。
【0028】
本実施形態の筒状体30の先端には、上栓40が着脱可能に設けられている。上栓40は、筒状体30の先端開口に対して圧入可能であり、本実施形態では、上栓40の本体41に雄螺子部41aを形成しておき、この部分を筒状体30の先端に固定されている雌螺子部材32に螺合することで着脱可能に固定されるようになっている。また、上栓40の本体41には、各種の保持部材(例えば、カラビナ式のフック等)に係止して持ち運びが容易になるように、開口係止部41bを形成しておくことが好ましい。
【0029】
なお、上栓40は、筒状体30の先端の開口内面に圧入して固定する構造であっても良い。また、筒状体30は、上栓40を設けることなく、単に振出構造部5を覆うように被せて元竿杆5aから複数の竿杆の突出を防止するだけの構造であっても良い。すなわち、釣糸ガイドが装着された一般的な振出式の釣竿では、別途、トップカバー(図5に示すようなトップカバー)が装着されて竿杆の突出を防止すると共に、収納された竿杆の先端部分(釣糸ガイド部分)を保護する機能を果たしているが、上記した筒状体30の構成によれば、元竿杆を含めて、竿杆全体を軸方向に亘って保護できると共に、元竿杆から小径竿杆の飛び出しが防止され、更には、使用時には、バット部20に取り付けられることから、従来のようにトップガイドを紛失するような問題が生じることはない。
【0030】
上記した筒状体30は、軸長方向に所定の長さL1を備えており、図2及び図3に示すように、バット部20の後端に取り付けることにより、釣竿として長さL1のグリップを構成する。すなわち、従来の振出式の釣竿では、握持、保持される部分は、長さLのバット部20の領域に留まっており、握持、保持される部分を長くするためには、バット部を長くする必要があったが、筒状体30をバット部20の後端に取り付けることで、実釣時の釣竿は、筒状体30の長さL1分だけ、握持、保持できる領域を伸ばすことが可能となる。この結果、振出式の釣竿として、仕舞寸法が短くコンパクトな状態にもかかわらず、実際の使用時には、バット部(グリップ部分)が長くなって操作性の向上が図れるようになる。さらに、収納状態がコンパクトになるため、嵩張ることもなく、持ち運びが容易になる。
【0031】
本実施形態の釣竿は、上記したようにリールが装着可能に構成されており、各竿杆には、リールから繰り出される釣糸を挿通させる釣糸ガイドが装着されている。この場合、被着される筒状体30は、装着された釣糸ガイドとの間で干渉しないように構成することが好ましい。例えば、両軸受型リールの場合、装着される釣糸ガイドの高さはそれほど高くなくても良いため、前記筒状体30をバット部20に被着しても、筒状体30と釣糸ガイドは干渉しないようにすることが可能である。或いは、筒状体30の径を多少、大きくすることで、そのような干渉を防止することも可能である。
【0032】
ただし、スピニングリールを装着する場合、基端側の釣糸ガイドの高さは高くなり、バット部20に被着される筒状体30との間で干渉する可能性が生じる。上記したように、筒状体30の径を大径化することで干渉を防ぐことも可能であるが、干渉が生じる釣糸ガイドを竿杆に対して着脱可能に構成したり、倒伏可能に構成することで、筒状体30を大径化する必要性がなくなる。
【0033】
上記した釣竿1は、釣法等に応じて各種の形態で使用することが可能であり、例えば、ベイトリールを使用するルアーフィッシング等では、リールを装着する部分に対応して指を掛けることが可能なトリガー50を設けることが好ましい。本実施形態では、バット部20に対してトリガーが着脱式に固定できるように構成されている(図2に示す釣竿及び釣糸ガイドの向きは、スピニングリール対応となっているが、便宜上、トリガー50についても示してある)。
【0034】
トリガー50は、バット部20のリールシート22が設けられる位置に対応して、着脱可能に配設することができ、装着されるリール(両軸受型リール)をバット部20と共に握持、保持した際に、指が掛けられるように、固定フード22cの部分に装着されることが好ましい。例えば、バット部20の後端に設けられた前記突出部20aの部分に装着可能に構成することが可能であり、トリガー50を板状にして指掛け部と基部を形成し、基部に突出部20aが嵌合する円形開口を形成しておけば良い。すなわち、前記下栓25をバット部20から外し、トリガーの円形開口を突出部20aに嵌合させ、この状態で筒状体30を突出部20aに取り付けることで、筒状体30とバット部20との間にトリガーを挟持、固定することが可能である。
【0035】
次に、上記した構成の釣竿1の使用例について説明する。
図1(a)(b)に示すように、未使用状態では、筒状体30は、バット部20に対して被着された状態(リールシート領域を除いてバット部20の外周面を覆う固定状態)となっており、釣竿としての仕舞寸法は、筒状体30の軸方向長さL1に加え、露出するリールシート22までの長さ(下栓25を加えた長さ)となる。この場合、本発明の釣竿としては、長さを限定するものではないが、上記した構成のように、筒状体30をグリップ部分として利用できる構成では、全長を短くすることができる。このため、特に、モバイル式の釣竿(全長が30cm程度以下のロッド)では、仕舞寸法となる全長を短くしても使用時には十分な長さを確保することができ、取扱性の向上を図ることができる。
また、本実施形態では、リールシート22が露出した構成であることから、竿杆の収納状態となる仕舞寸法でリールを装着したまま運搬等することが可能である。
【0036】
釣竿を使用する際、筒状体30をバット部20から取り外して、そのままバット部20の基端部に取り付ける(図2及び図3参照)。本実施形態では、筒状体30の先端をバット部20の基端部に取り付ける構成であるため、前記上栓40は取り外され、筒状体30の先端は開口状態にされる。また、バット部20に取り付けられている下栓25もバット部20の後端から取り外される。
【0037】
筒状体30には、上記したように、先端側に上栓40と螺合する雌螺子部材32が形成されており、この部分がそのままバット部20の突出部20aに形成された雄螺子部に螺合するようになっている。両者が結合されることで、バット部20の後端側には、筒状体30によって、長さL1のグリップが形成される(図2図3参照)。また、必要に応じてバット部20と筒状体30との間にトリガー50が固定され、バット部20から取り外された下栓25は、筒状体30の後端開口の内周面に圧入、固定される(下栓25のリング状の凹凸25fに筒状体の後端開口が圧入されて、開口縁が段部25f´に当て付いて固定される)。
【0038】
そして、図2及び図3に示す使用状態から図1に示すように収納する場合、グリップ状態となっている筒状体30をバット部20の後端から取り外すと共に、下栓25を取り外してバット部20の後端に被着すれば良い。また、筒状体30は、振出構造部5を収納状態(元竿杆5aに収納する)にして、バット部20に対して被着すれば良い。この場合、筒状体30に、空気抜き用の開口を適宜、形成しておくことで、筒状体30の挿入時に空気が抜け、バット部20に対して容易に被着操作を行なうことができる。
【0039】
上記した筒状体30とバット部20との長さ関係については、適宜、変形することが可能である。例えば、図1に示すように、筒状体30の寸法L1を長くして、振出構造部5の先端との間で空洞部を長くしても良い。この場合、筒状体30の内部に柔軟性のある部材(図示せず)を取着しておき、元竿杆5aの先端から収納されている竿杆が飛び出さないようにすることが好ましい。或いは、筒状体30の内部に仕切り構造を設けておき、各種の小物(仕掛け等)を収容できるように構成しても良い。筒状体30の軸方向の寸法L1については、バット部20の軸方向の寸法L以上(L1>L)にすることで、バット部20を短くしつつ、グリップ長さを十分確保することができ、コンパクト性と魚釣り操作性を向上することが可能となる。
【0040】
上記した振出構造部5については、その元竿杆5aがバット部20の先端部分の継合構造(インロー継ぎ構造)によって着脱可能となっている。このため、振出構造部については、図4(a)及び(b)に示すように、共通の継合構造を備え、釣竿全体として調子が異なるタイプのものを準備することで(図では、振出構造部5とは調子の異なる振出構造部50,50Aがセットとして示されるが、セット化される振出構造部の数は限定されない)、釣り場の状況、対象魚等に応じて、所望の調子の釣竿に容易に変更することが可能となる。また、振出構造部5,50,50Aは、いずれも釣糸ガイドを装着した構造を示してるが、図4(c)に示すように、使用態様が異なるもの(釣糸ガイドが装着されていない振出構造部50B;のべ竿)を準備しておいても良い。この場合、振出構造部50Bについては、元竿杆5a´の内部に、小径竿杆の基端部が後方側に抜けないようにストッパを配設しておいたり、インロー部材21Aと継合し、小径竿杆を抜けないようにする栓体5Aを取り付けておいても良い。
【0041】
前記交換可能な振出構造部50,50Aについては、図5に例示するような一般的なトップカバー70を被着することで、元竿杆5aの内部に収納された竿杆の突出を防止することが可能である。また、のべ竿である振出構造部50Bについては、一般的なキャップ(上栓)を取り付けることで、小径竿杆の突出を防止することが可能である。或いは、セット化される振出構造部については、1つのケース部材(図示せず)に並べて収納する等しても良く、振出構造部の保管形態、運搬形態については適宜、変形することが可能である。
【0042】
上記したような釣竿セットによれば、携行性に優れると共に、複数の長い釣竿を持ち運ぶ必要性が無くなり、好みの釣竿に容易に変更することが可能になる。また、全ての振出構造部が共通のインロー継ぎ構造であるため、各セットにおいて、釣竿の調子等の設計の自由度が向上する。
【0043】
図6は、本発明に係る釣竿の第2の実施形態を示す図であり、(a)は複数の竿杆の収納状態を示す部分断面図、(b)は収納状態の斜視図である。
【0044】
上記した第1の実施形態では、筒状体30は、バット部20に被せた際、リールシート22を露出させるように構成されていたが、本実施形態では、バット部20に被せた状態で、バット部20の基端部で固定されるようになっている。具体的には、固定フード22cの外表面に、リング状の凹凸20Cを形成しておき、その部分で、筒状体30の開口内面が圧入、固定できるように構成されている。このため、筒状体30をバット部20に被着して固定すると、前記リールシート22は露出することはなく覆われた状態となる。
このような構成では、仕舞寸法を更に短くすることができ、取扱性、運搬性の向上が図れるようになる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施の形態に限定されることはなく、例えば、以下のように種々変形することが可能である。
上記した実施形態では、リールが装着される釣竿を例示したが、振出構造部としては、リールシート及び釣糸ガイドを備えていない通常の振出式の釣竿セット(のべ竿セット)として構成することが可能である。また、スピニングリール専用の釣竿(振出式の釣竿セット)、両軸受リール専用の釣竿(振出式の釣竿セット)としたり、これらを任意に組み合わせて構成しても良い。また、振出構造部の継本数についても限定されることはない。
前記筒状体30については、グリップにするに際して、その先端部分をバット部20の基端部に固定する構造としたが、筒状体30の後端部分をバット部20の基端部に固定する構造としても良い。
【0046】
前記筒状体30の長さについては、適宜変形することができ、例えば、バット部20と略同じ長さにして、全長に亘って被着する構造にすることで、釣竿としてコンパクト化(モバイル化)が図れ、かつ、使用時に長くして使用することができ、取扱性の向上が図れる。
前記筒状体30のバット部20に対する固定方法については、圧入構造、螺合構造、クランプ等による構造等、適宜変形することが可能であり、その固定位置についても適宜変形することが可能である。
前記筒状体30の形状については、元竿杆5aに収納される竿杆の飛び出しを防止し、バット部のグリップとして機能されれば、形状、長さ等適宜変形することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 釣竿
5,50,50A,50B 振出構造部
5a 元竿杆
5b~5f 竿杆
20 バット部
21 継合構造
21A インロー部材
22 リールシート
25 下栓
30 筒状体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7