(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F24C 7/02 20060101AFI20230502BHJP
H05B 6/64 20060101ALI20230502BHJP
H05B 6/12 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
F24C7/02 541M
H05B6/64 A
H05B6/12 317
(21)【出願番号】P 2020116250
(22)【出願日】2020-07-06
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平岩 成一
(72)【発明者】
【氏名】荒金 伸明
(72)【発明者】
【氏名】菅野 裕希
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-8298(JP,A)
【文献】特表2009-522997(JP,A)
【文献】特開2006-145136(JP,A)
【文献】実開平3-50959(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 7/02
H05B 6/12、6/46、6/52~6/64、6/70~6/80
H02K 9/00~9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容する加熱室と、前記加熱室に導波管を介して連結されたマグネトロンと、前記マグネトロンを制御する制御装置と、前記制御装置を冷却する冷却ファンとを備えた加熱調理器であって、
前記冷却ファンを収容するケーシングと、前記ケーシングの外側に配置され、回転軸を介して前記冷却ファンを回転駆動するモータとを備え、
前記冷却ファンは、前記回転軸を固定する主板と、中央部に吸込み口を備えた側板と、前記主板と前記側板とによって挟まれるように配置された複数の羽根とを備えると共に、前記主板と、前記側板及び前記複数の羽根とにより通風路を形成し、
前記主板は、前記通風路と連通する主板開口部を備え、
前記ケーシングは、前記吸込み口と連通する第1吸気口と、前記主板開口部と連通する第2吸気口と、前記モータの下部を保持する下保持部と、前記モータの上部を保持する上保持部とを備え、
前記上保持部と前記モータとの間には、前記第2吸気口と連通する第1冷却通路を形成したことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2吸気口は、前記回転軸方向において前記モータと対向する位置に備えたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
請求項2において、
前記モータは、前記回転軸を備えた回転子と、前記回転子の外周に配置された固定子と、前記固定子に巻き付けられた巻線とを備え、
前記固定子と前記巻線との間には、前記第2吸気口と連通する第2冷却通路を形成したことを特徴とする加熱調理器。
【請求項4】
請求項3において、
前記第1冷却通路は、前記上保持部と前記巻線との間に形成したことを特徴とする加熱調理器。
【請求項5】
請求項1又は2において、
前記主板開口部は複数形成したことを特徴とする加熱調理器。
【請求項6】
請求項1又は2において、
前記冷却ファンを収容するファン収容部と、前記ファン収容部と連通すると共に、前記制御装置を収容する基板収容部とを備え、
前記冷却ファンから吐出された気体が前記基板収容部に流入するようにしたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項7】
被加熱物を収容する加熱室と、前記加熱室に導波管を介して連結されたマグネトロンと、前記マグネトロンを制御する制御装置と、前記制御装置を冷却する冷却ファンとを備えた加熱調理器であって、
前記冷却ファンを収容するケーシングと、前記ケーシングの外側に配置され、回転軸を介して前記冷却ファンを回転駆動するモータとを備え、
前記冷却ファンは、前記回転軸を固定する主板と、中央部に吸込み口を備えた側板と、前記主板と前記側板とによって挟まれるように配置された複数の羽根とを備えると共に、前記主板と、前記側板及び前記複数の羽根とにより通風路を形成し、
前記主板は、前記通風路と連通する主板開口部を備え、
前記ケーシングは、前記吸込み口と連通する第1吸気口と、前記主板開口部と連通する第2吸気口とを備え、
前記モータは、前記回転軸を備えた回転子と、前記回転子の外周に配置された固定子と、前記固定子に巻き付けられた巻線とを備え、
前記固定子と前記巻線との間には、前記第2吸気口と連通する第2冷却通路を形成したことを特徴とする加熱調理器。
【請求項8】
請求項7において、
前記第2吸気口は、前記回転軸方向において前記モータと対向する位置に備えたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項9】
請求項7又は8において、
前記主板開口部は複数形成したことを特徴とする加熱調理器。
【請求項10】
請求項7又は8において、
前記冷却ファンを収容するファン収容部と、前記ファン収容部と連通すると共に、前記制御装置を収容する基板収容部とを備え、
前記冷却ファンから吐出された気体が前記基板収容部に流入するようにしたことを特徴とする加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加熱調理器には、インバータ及びマグネトロンを冷却するために、冷却ファンユニットを備えている。冷却ファンユニットは、樹脂材料で成型されたケーシングの内部にターボファンと、このターボファンを回転させるモータから構成されている。モータの外径は、ターボファンの羽根の外径より小さい寸法となっており、モータは、ターボファンの内側に収容された状態で設置されている。ターボファンは、インバータ及びマグネトロンに送風してインバータ及びマグネトロンを冷却すると共に、ターボファンの内側に収容されたモータを自冷却するようにしている。このような技術が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術においては、ターボファンのケーシング内側に収容されたモータを、ターボファンの内部を流れる風で自冷却するようにしているが、ターボファンが停止した状態においては、モータの外周はターボファンのケーシングで覆われているので、モータが発した熱がこもり、モータの温度が上昇し、モータの寿命が短くなるといった課題があった。
【0005】
本発明の目的は、上記課題を解決し、モータの冷却性能を向上させた加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、被加熱物を収容する加熱室と、前記加熱室に導波管を介して連結されたマグネトロンと、前記マグネトロンを制御する制御装置と、前記制御装置を冷却する冷却ファンとを備えた加熱調理器であって、前記冷却ファンを収容するケーシングと、前記ケーシングの外側に配置され、回転軸を介して前記冷却ファンを回転駆動するモータとを備え、前記冷却ファンは、前記回転軸を固定する主板と、中央部に吸込み口を備えた側板と、前記主板と前記側板とによって挟まれるように配置された複数の羽根とを備えると共に、前記主板と、前記側板及び前記複数の羽根とにより通風路を形成し、前記主板は、前記通風路と連通する主板開口部を備え、前記ケーシングは、前記吸込み口と連通する第1吸気口と、前記主板開口部と連通する第2吸気口と、前記モータの下部を保持する下保持部と、前記モータの上部を保持する上保持部とを備え、前記上保持部と前記モータとの間には、前記第2吸気口と連通する第1冷却通路を形成したことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、被加熱物を収容する加熱室と、前記加熱室に導波管を介して連結されたマグネトロンと、前記マグネトロンを制御する制御装置と、前記制御装置を冷却する冷却ファンとを備えた加熱調理器であって、前記冷却ファンを収容するケーシングと、前記ケーシングの外側に配置され、回転軸を介して前記冷却ファンを回転駆動するモータとを備え、前記冷却ファンは、前記回転軸を固定する主板と、中央部に吸込み口を備えた側板と、前記主板と前記側板とによって挟まれるように配置された複数の羽根とを備えると共に、前記主板と、前記側板及び前記複数の羽根とにより通風路を形成し、前記主板は、前記通風路と連通する主板開口部を備え、前記ケーシングは、前記吸込み口と連通する第1吸気口と、前記主板開口部と連通する第2吸気口とを備え、前記モータは、前記回転軸を備えた回転子と、前記回転子の外周に配置された固定子と、前記固定子に巻き付けられた巻線とを備え、前記固定子と前記巻線との間には、前記第2吸気口と連通する第2冷却通路を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、モータの冷却性能を向上させた加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例に係る加熱調理器の側面断面図。
【
図2】本発明の実施例に係る加熱調理器の正面断面図。
【
図3】ヒータ加熱による調理構成例を示す加熱調理器の側面断面図。
【
図6】モータ側から見た冷却ファンユニット100の外観斜視図。
【
図7】冷却ファン側から見た冷却ファンユニット100の外観斜視図。
【
図8】モータを取外した状態における第1ケーシング101の外観斜視図。
【
図9】第2ケーシング102側から見た冷却ファンユニット100の正面図。
【
図11】側板243を外した状態で冷却ファン24を吸込み口側から見た正面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について添付の図面を参照しつつ説明する。同様の構成要素には同様の符号を付し、同様の説明は繰り返さない。
【0011】
本発明の各種の構成要素は必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、一の構成要素が複数の部材から成ること、複数の構成要素が一の部材から成ること、或る構成要素が別の構成要素の一部であること、或る構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複すること、などを許容する。
【0012】
図1は本発明の実施例に係る加熱調理器の側面断面図、
図2は本発明の実施例に係る加熱調理器の正面断面図である。本実施例では、加熱調理器の例として加熱室の底面に近い大きさで、且つ、略同形状のテーブルが配置されたターンテーブルレスオーブンレンジについて説明する。なお、加熱調理器1(
図1参照)に相対したユーザの視線を基準として、
図1等に示すように前後・上下・左右を定義する。
【0013】
図において、加熱調理器1のキャビネット51の内側には、断熱材54を介して食品(被加熱物)を収納し、加熱調理を行う加熱室7が設けられ、加熱室7の前面には食品を出し入れできる開閉式のドア部52が回動可能に設けられている。
【0014】
また、加熱室7の底面下方で、かつ、テーブル70の略中心の下方位置にはアンテナ57とこのアンテナ57を回転させるアンテナモータ22が設けられ、テーブル70の外周側下方には1つないし複数の重量センサ6が配置されている。
【0015】
テーブル70は、耐熱性に優れ、かつ、高周波を透過するムライトコージライト系のセラミックで構成されており、加熱室7の底面と略一致するように略四角形となっている。ここで、高周波を透過するセラミックであれば、ムライトコージライト系以外でも適用可能である。テーブル70は着色にカーボンを使用しないことで、マイクロ波の損失を可能な限り抑え、加熱効率を現行同等とすることができる。
【0016】
また、アンテナ57は、加熱室7の底面近傍に設けられた凹部に収容され、この凹部を塞ぐように保護板78が配置される。アンテナ57は保護板78によって覆われるので、テーブル70が底面に配置されてない状態においても目視できない構成となっている。
【0017】
ここで、保護板78は、マイカ板のようにマイクロ波に対して高い透磁性を有する材料であれば、アンテナ57の形状や回転速度によって変化する電磁波分布を微小な減衰で加熱室7に伝えることができる。
【0018】
重量センサ6は、テーブル70とこのテーブル70上に載置される食品の重さをテーブル70への載置位置によらず正確に検知させるため、テーブル70の外周側に設けられている。
【0019】
この重量センサ6は、金属バネの変形に伴って変化させる静電容量を検出するものでもよく、また、歪量を検出するものでもよい。
【0020】
また、重量センサ6の数量は、略四角形のテーブル70を安定して保持するために3つもしくは後方に1つあればよく、この重量センサ6全てが常にテーブル70と接触してテーブル70上に載置される食品の重さを正確に検知する。
【0021】
また、ドア部52の側面には、加熱調理を設定する操作パネル(図示せず)が設けられ、この操作パネルの後方となる加熱室7の右側に配置された機械室2に被加熱物をマイクロ波加熱するために必要な部品、例えば、マグネトロン20や電源コイル21、制御基板27、冷却ファン24等が設けられている。
【0022】
制御基板27にはマグネトロン20などを制御するマイコン28(制御装置)が搭載されている。
【0023】
マグネトロン20は、加熱室7の底面中央に位置する保護板78と導波管50を介して連結されており、マグネトロン20より放射されるマイクロ波エネルギーが保護板78から加熱室7内部に放射される。
【0024】
加熱室7の内壁の左右には、底面と概略並行に内側に突出した保持棚74が上下二段(保持棚74a,74b)に設けられており、加熱室7の略幅サイズの調理皿であれば調理方法に応じて配置可能な構成となっている。
【0025】
保持棚74a及び保持棚74bは、加熱室7の側面に突出して形成される。また、突出している部分は、前側から後側に向かって連続的に形成される。保護板78から保持棚74aまでの距離は、保護板78から加熱室7の天面までの距離の3分の2の距離よりもやや長い。保護板78から保持棚74bまでの距離は、保護板78から加熱室7の天面までの距離の3分の1の距離よりもやや短い。
【0026】
図5Aはテーブル70を上方から見た斜視図、
図5Bは
図5Aのテーブル70を矢視P方向から見た側面図である。
図5Aに示すように、テーブル70は、右側と左側に縁部70fが形成されている。
図5Bに示す縁部70fの凹部70gまでの部分が、保持棚74a及び保持棚74bと係合するように構成されている。なお、保持棚74は加熱室7の側面に三段以上配置し、調理メニューに応じて使用するテーブル70を保持棚74に係合する段数を適宜調整するようにしても良い。
【0027】
本実施例では、加熱室7の上側の略全面に平面状のグリルヒータ10が設けられ、加熱室7の下側に下ヒータ11が設けられ、マイクロ波加熱による調理と共にヒータ加熱によるグリル調理やオーブン調理を行うことができる。
【0028】
図3はヒータ加熱による調理構成例を示す加熱調理器の側面断面図である。
図3では
図1におけるマイクロ波加熱時に加熱室7の底面に配置したテーブル70が保持棚74bに配置されており、グリルヒータ10と下ヒータ11による輻射熱でテーブル70の上下両面からオーブン加熱することができる。
【0029】
すなわち、加熱室7の底面に配置してあったテーブル70を、一度キャビネット51外に取り出してから移動させて、保持棚74b(保持棚74a)に係合するように嵌め込む。このように、調理方法によらずテーブル70を兼用させて使用することにより、調理毎に異なる調理皿を用意する必要がなくなり、使い勝手が良好になる。
【0030】
また、加熱調理器における付属品を減らすことにより、キッチンに付属品の収納スペースを用意する必要がなく、キッチン環境を広く快適に利用できる。なお、テーブル70は、保持棚74に容易に配置して脱落しないように外周に縁部70fを設けた構成となっている。
【0031】
また、
図1におけるテーブル70の着脱も縁部70fが指にかかり易くなっており、食品投入口の下辺77をテーブル70の縁部70fの底面と略同高さで構成させることで、外観上凹凸の小さいフラットな庫内となる。
【0032】
また、テーブル70を外すことができるので、オーブン加熱では、加熱室7の底面に設置された下ヒータ11からの熱が直接加熱室7に伝わるため、加熱室7の温度上昇スピードを早めるとともに、外部への熱漏洩の小さい省エネ性の高い加熱調理を行うことができる。
【0033】
ここで、テーブル70はコージライト系のセラミックで構成されており、すなわち、熱膨張係数が極めて低く、耐熱衝撃性に優れ、強い機械的強度を有する。さらに、グリル加熱時でもマイコン28の指示でグリルヒータ10をON/OFF及び電力制御することにより、よりテーブル70がグリルヒータ10に近づくように保持棚74aに配置させて、テーブル70上の食品をグリル加熱できる。なお、グリルヒータ10や下ヒータ11は、例えば平面状のマイカヒータでも良いし、石英管ヒータやシーズヒータを用いた構成でも良い。
【0034】
次に本実施例の加熱調理時の動作について説明する。マイクロ波加熱については
図1及び
図2に沿って説明し、また、オーブン加熱については
図3に沿って説明する。
【0035】
例えば、食品をマイクロ波によって加熱調理する場合、ドア部52から加熱室7の底面に配置したテーブル70上に食品を載置し、ドア部52を閉め、
図1及び
図2の状態でマイクロ波加熱調理が開始される。調理の開始は、機械室2の前方に設けられた操作パネル(図示せず)により、加熱時間と加熱パワーなどを設定した後、開始ボタン(図示せず)を押すことで行われる。なお、食品の加熱は食品をテーブル70に載置し、操作パネルで設定をせずに調理を開始し、重量センサ6で検知した食品の重さから加熱時間と加熱パワーを自動設定し、調理する場合もある。
【0036】
加熱が開始されると、マグネトロン20からマイクロ波エネルギーが放射され、導波管50を介して加熱室7にマイクロ波エネルギーが供給される。マグネトロン20の発振とともに、アンテナモータ22が回転をはじめ、保護板78下方のアンテナ57が回転する。 アンテナ57の回転によって、加熱室7のマイクロ波が拡散され、食品を均一に加熱させる。なお、アンテナ57の回転は、テーブル70上の食品の位置に応じて間欠回転又は速度制御などを行ってもよい。
【0037】
また、マイクロ波エネルギーの放射中は、マグネトロン20の発熱による自身の温度上昇を抑制するため、機械室2内に配置した冷却ファン24が駆動する。
【0038】
一方、オーブン調理の場合には、例えば、パン等の食品60が載せられたテーブル70は、前方のドア部52より、加熱室7の左右に配置された保持棚74をスライドさせながら加熱室7の内部に押し込まれ後、ドア部52を閉め、
図3の状態でオーブン調理が開始される。オーブン調理の開始は、食品60の加熱時間や加熱温度などの設定が終了した後、機械室2の前方にある操作パネル上のボタンで行われる。調理が開始されると、加熱室7上方のグリルヒータ10と加熱室7下方の下ヒータ11に通電され、加熱室7の上下壁面から熱が与えられる。
【0039】
また、オーブン調理では加熱室7壁面が高温となるので、熱漏洩による機械室2の温度上昇を抑制するために冷却ファン24が駆動する。冷却ファン24の駆動は、調理時間とともに常時又は間欠的に行ってもよく、例えば制御基板27の温度を検知して行ってもよい。
【0040】
加熱室7の内部温度は、例えば、加熱室7側面に設けた熱電対やサーミスタ等の温度センサ(図示せず)で感知し、加熱室7の温度が設定値よりも高い場合、グリルヒータ10や下ヒータ11への電力供給を止めるか、又は電力を低下させ、設定温度近傍の温度を保持させる。つまり、加熱室の温度は、グリルヒータ10と下ヒータ11のON/OFFおよび電力で制御される。温度センサ(図示せず)は、非接触式である赤外線温度センサであれば、加熱室任意の壁面温度や被加熱物温度を直に計測することも可能である。
【0041】
また、
図3の構成では下ヒータ11の設置される加熱室7の底面にテーブル70が配置された
図1とは異なり、下ヒータ11の熱が直接加熱室7の内部まで伝わり易い構成となっているため、庫内の温度上昇スピードが早く、省エネ性の高い加熱調理ができる。
【0042】
また、
図1の構成に比べて、テーブル70の厚さ分だけ、加熱室7の高さ(容量)が大きくなり、加熱室7の温度を均一に安定化させ、焼きムラの少ないオーブン調理を行うことができる。
【0043】
一方、テーブル70を保持棚74aに配置してグリルヒータ10のみでグリル加熱する場合もオーブンと同様のヒータ制御により、食品を加熱調理できることは言うまでもない。
【0044】
本実施例の加熱調理器では、テーブル70を加熱室7の底面に配置してマイクロ波加熱する構成であってもよく、また、テーブル70を保持棚74bに配置したオーブン加熱であってもよい。さらには、テーブル70を保持棚74aに配置したグリル加熱であってもよい。
【0045】
このように本実施例では、テーブル70の配置高さを変えることで一つのテーブルで各調理法を行うことができる。
【0046】
よって、本実施例のテーブル70を利用した調理では、テーブル70を兼用して使用することで、使用頻度の少ない付属品を加熱調理器とともに梱包する必要がなく、キッチンの収納スペースを損なわず、快適に使用できる加熱調理器を提供することができる。
【0047】
また、テーブル裏面70bには、前側両端付近と後側中央付近に凹部70gが形成され、この凹部70gがそれぞれ重量センサ6と係合する。なお、重量センサ6は凹部70gに対応して3つ設けるのみならず、後側中央付近のみに重量センサ6を対応して設け、残りの前側両端付近は重量センサ6の代わりに単なる支柱に代替して設けても良い。この場合は重量センサ6が1つで食品の重量を計量できる。
【0048】
次に、他の調理例を説明する。
図4は加熱調理器の他の調理例を示す側面断面図である。加熱室7の背面後方には、加熱室7に熱風を循環させる熱風ユニットが配置されている。この調理例においては、加熱室7の内部におけるテーブル70の構成及び使用方法は
図1から
図3と同様であり、説明を省略する。
【0049】
なお、本実施例ではマグネトロン20等の部品が搭載される機械室2が加熱室7の下方に配置した構成であるが、
図1から
図3のように加熱室7の側面に配置した構成でもよいし、
図1から
図3において本実施例のように機械室2を加熱室7の底面に配置した構成としても差し支えない。
【0050】
本実施例では、熱風ユニット9を搭載させたことにより、加熱室7にテーブル70と角型の調理皿71を上下二段に配置させた場合のオーブン調理を行うことができる。ここで、テーブル70と調理皿71の上下の位置関係は問わない。
【0051】
また、グリルヒータ10でグリル加熱をする場合、調理皿71を用いれば、テーブル70を外さなくてもグリル調理は従来の加熱調理器と同様な使い方ができることは言うまでもない。
【0052】
よって、加熱室7にテーブル70と調理皿71が上下二段に配置された場合、加熱室7は加熱室天井面と調理皿71(最上段調理皿)の間の空間7aと、調理皿71とテーブル70の間の空間7bと、テーブル70と加熱室7の底面間の空間7cの3つの空間に分割される。
【0053】
ドア部52と向かい合う加熱室7の背面壁には多数のパンチング孔で形成された通風口72が設けられており、熱風ユニット9に空気を吸い込む通風口72bと、熱風ヒータ12により加熱された空気を吹き出す通風口72a、72cで構成されている。なお、本構造では熱風が加熱室7の空間7aと空間7cからのみ熱風が吹き出る構成であるが、空間7bに熱風が吹き出る通風口を設けるようにしてもよい。
【0054】
これらの通風口72の後方には、ラジアルファン30と、このラジアルファン30に連結されたファンモータ32と、ファンモータ32の外周に配置された熱風ヒータ12から構成される熱風ユニット9が配置され、通風口72を介して加熱室7と熱風ユニット9の間で熱風が循環する構造となっている。熱風ヒータ12は、例えば、棒状の石英管およびシーズヒータ等で構成され、その表面に多数の放熱フィン(図示せず)を設けたものであっても良い。 また、熱風ヒータ12は、熱風ユニット9の内部に配置可能であれば、例えばU字状であっても面状であっても良く、その本数も1本ないし2本、さらには複数本配置した構成にしてもよい。
【0055】
また、ファンモータ32は、ラジアルファン30の後方に設けられるが、このファンモータ32の温度が高い場合、ファンモータ32の回転軸に小型プロペラファン(図示せず)を設置すればファンの空気流により温度上昇が抑えることができる。
【0056】
熱風ユニット9ではラジアルファン30を介して吹き出された空気を、このラジアルファン30の下流に配置された熱風ヒータ12で加熱し、加熱室7の上面と調理皿71の間の空間7a及びテーブル70と加熱室7底面の間の空間7cに配置された通風口72a、72cから加熱室7に熱風43a、43cとして吹き出される。
【0057】
空間7aの通風口72aから吹き出た熱風43aは、調理皿71の食品61表面を加熱しながらドア部52に向かって流れ、ドア部52と調理皿71の間を通り、空間7bに向かう流れとなる。食品61は熱風で加熱が不充分であっても、グリルヒータ10を用いて加熱できるため、熱風43aの熱量が小さくても、焼きムラなくオーブン加熱することができる。
【0058】
また、空間7cの通風口72cから吹き出た熱風43cは、テーブル70の裏面と加熱室7の底面を加熱しながらドア部52に向かって流れ、ドア部52とテーブル70の間隙を上方向に流れ、空間7bに向かう流れとなる。食品60の加熱が熱風のみで不充分であれば、下ヒータ11を利用して焼きムラの少ない加熱調理ができる。
【0059】
空間7aと空間7cから空間7bに入った熱風は、食品60を加熱しながらドア部52から熱風ユニット9に向かって流れ、通風口72bからラジアルファン30に入る循環流れを繰り返す。
【0060】
加熱室7の内部温度は、例えば、加熱室7の側面に設けた熱電対やサーミスタ等の温度センサ(図示せず)で感知し、加熱室7の温度が設定値よりも高い場合には、グリルヒータ10や熱風ヒータ12への電力供給を止めるか、又は電力を低下させ、ラジアルファン30のみを回転駆動させる。つまり、加熱室7の温度は、グリルヒータ10と下ヒータ11と熱風ヒータ12のON/OFFおよび電力で制御される。なお、これら制御は三つのヒータ10、11、12のうち、いずれかを組み合わせて制御してもよいし、必要なヒータをメニューに応じて選択させてもよい。
【0061】
このように、本実施例の加熱調理器では、加熱室7に上下二段に食品60、61を配置した構成においても、上下いずれかの食品60、61がテーブル70に載置されるので、使用頻度の低い調理皿71を一枚だけ加熱調理器に梱包させることで、より快適なキッチン環境の加熱調理器を提供することができる。
【0062】
さて、本実施例では、上述したように、マイクロ波エネルギーの放射中におけるマグネトロン20を冷却するために、冷却ファン24を備えている。冷却ファン24はモータで駆動されるため、モータの長寿命化を図るためにはモータの冷却性能を向上させることが好ましい。
【0063】
モータの冷却性能を向上させる構成について、
図6乃至
図11を用いて説明する。
図6はモータ側から見た冷却ファンユニット100の外観斜視図、
図7は冷却ファン側から見た冷却ファンユニット100の外観斜視図、
図8はモータを取外した状態における第1ケーシング101の外観斜視図、
図9は第2ケーシング102側から見た冷却ファンユニット100の正面図、
図10は
図9におけるX-X線断面図、
図11は側板243を外した状態で冷却ファン24を吸込み口側から見た正面図である。
【0064】
冷却ファンユニット100は、ケーシングにより外郭を構成している。ケーシングは第1ケーシング101と第2ケーシング102から構成され、第1ケーシング101と第2ケーシング102は、互いの開口部側が対向するように配置され、内部に空間を形成している。
【0065】
第1ケーシング101には、冷却ファン24を収容するファン収容部103と、このファン収容部103と連通すると共に、マイコン28(制御装置)を搭載した制御基板27を収容する基板収容部104と、冷却ファン24から吐出された気体をマグネトロン20に向けて吹き出す第1吹き出し口105と、基板収容部104を通過した気体を機械室2に吹き出す第2吹き出し口106とを備えている。冷却ファン24から吐出された気体は、基板収容部104に流入し、基板収容部104内において、冷却ファン24から吐出された気体によって冷却される。
【0066】
また、第2ケーシング102には、冷却ファン24の軸方向に形成された吸気口107と、冷却ファン24の径方向に形成された吸気口108と、第1吸気口(吸気口107,108)と連通する吸気空間109と、制御基板27を載置する基板載置部110とを備えている。
【0067】
冷却ファン24は、回転軸121を介してモータ120が接続されている。
【0068】
モータ120は回転軸121を備えた回転子120aと、回転子120aの外周に配置された固定子120bと、固定子120bに巻き付けられた巻線120cを備えている。また、モータ120は第1ケーシング101の外側に配置されている。
【0069】
第1ケーシング101には、モータ120の下部(固定子120b)を保持する下保持部122と、モータ120上部(巻線120c)を保持する上保持部123と、モータ120の回転軸121を挿入するための回転軸用開口124と、ファン収容部103と連通する吸気口125(第2吸気口)を備えている。吸気口125は回転軸121の方向においてモータ120と対向する位置に備えられている。
【0070】
上保持部123は、水平方向に延びた平端部123aと、平端部123aの左右両端部から上方に向かって立ち上がった上リブ123bを備えている。
【0071】
またモータ120には、巻線120cに電力を供給するための端子126と、この端子126を保持すると共に、上保持部123の上リブ123bに固定された端子台127を備えている。モータ120の巻線120cは、端子台127を介して上保持部123に保持されている。
【0072】
巻線120cと上保持部123(平端部123a)との間には第1冷却通路130が形成され、この第1冷却通路130と吸気口125とが連通している。また、巻線120cと固定子120bとの間には第2冷却通路131が形成され、この第2冷却通路131と吸気口125とが連通している。
【0073】
次に、冷却ファン24の構成について説明する。本実施例では、冷却ファン24として回転方向に対して後退する羽根を持つターボファンを用いている。冷却ファン24は、回転軸121が固定される主板241と、主板241上であって回転方向に対して後退するように配置された複数の羽根242と、中央部に吸込み口243aを備え、主板241と共に複数の羽根242を挟むように配置された側板243とを備えている。そして、主板241、側板243及び主板241と側板243との間に配置された複数の羽根242によって通風路244が形成されている。主板241は、吸込み口243a側に向かって突出するよう湾曲して形成されている。この構成により通風路244内を流れる流体を滑らかに流すことができる。
【0074】
モータ120は、主板241の端面よりも反吸込み口側であって、第1ケーシング101の外側に配置される。すなわち、モータ120は外部に露出した状態で、第1ケーシング101に配置される。
【0075】
主板241の中央部には、主板241を貫通した複数の主板開口部241a,241bが形成されている。
【0076】
上記のような構成において、モータ120が回転駆動し、冷却ファン24が回転すると、第1吸気口(吸気口107,108)から吸気空間109内に気体が吸引され、吸引された気体が冷却ファン24の吸込み口243aに吸引される。
【0077】
冷却ファン24に吸引された気体は、通風路244を流れ、冷却ファン24の外周から吐出される。冷却ファン24から吐出された気体の一部は、基板収容部104に流れ、制御基板27を冷却する。また、第1吹き出し口105から吐出された気体は、マグネトロン20を冷却する。
【0078】
冷却ファン24の回転に伴い、冷却ファン24を回転駆動するモータ120は発熱するので、冷却することが好ましい。モータ120の冷却が十分行われない場合、モータ120を構成する部品が熱により劣化し、モータ120の寿命が短くなる可能性がある。この課題を解決するための構成について説明する。
【0079】
上記したように、本実施例では、巻線120cと上保持部123(平端部123a)との間には第1冷却通路130が形成され、この第1冷却通路130と吸気口125とが連通している。また、巻線120cと固定子120bとの間には第2冷却通路131が形成され、この第2冷却通路131と吸気口125とが連通している。さらに、冷却ファン24の主板241の中央部には、主板241を貫通した複数の主板開口部241a,241bが形成されている。
【0080】
図10の矢印で示すように、冷却ファン24が回転すると、巻線120cと上保持部123(平端部123a)との間の第1冷却通路130、及び巻線120cと固定子120bとの間の第2冷却通路131から気体が吸引され、気体は吸気口125を通してファン収容部103に流入する。第1冷却通路130及び第2冷却通路131は、気体がモータ120に沿って流れる流路となっている。ファン収容部103に流入した気体は、冷却ファン24の主板241に形成された主板開口部241a,241bを通過し、冷却ファン24内部の通風路244へと流入する。気体は第1冷却通路130及び第2冷却通路131を通過する際に、モータ120を冷却する。
【0081】
冷却ファン24の回転が停止すると気体の流れが止まるので、気体によるモータ120の冷却も機能しない。しかしながら、本実施例ではモータ120が第1ケーシング101の外部に露出するように配置されているので、モータ120の熱がこもることなく、外部へ放熱することができる。
【0082】
以上説明したように本実施例によれば、冷却ファン24の回転によって気体がモータ120に沿って流れる流路を確保するようにしているので、モータ120の温度上昇を抑制し、モータ120の寿命を延ばすことができる。
【0083】
さらに本実施例によれば、モータ120が第1ケーシング101の外部に露出するように配置されているので、モータ120が運転し停止した状況であってもモータ120の熱がこもることなく、外部へ放熱することができ、モータ120の寿命を延ばすことができる。
【0084】
なお、本発明は、上述した実施例に限定するものではなく、様々な変形例が含まれる。上述した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定するものではない。
【符号の説明】
【0085】
1…加熱調理器、2…機械室、7…加熱室、20…マグネトロン、24…冷却ファン、27…制御基板、28…マイコン、50…導波管、100…冷却ファンユニット、101…第1ケーシング、102…第2ケーシング、103…ファン収容部、104…基板収容部、107,108…吸気口、120…モータ、120a…回転子、120b…固定子、120c…巻線、121…回転軸、122…下保持部、123…上保持部、125…吸気口、130…第1冷却通路、131…第2冷却通路、241…主板、241a,241b…主板開口部、242…羽根、243…側板、243a…吸込み口、244…通風路