(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】歯間清掃用具
(51)【国際特許分類】
A61C 15/04 20060101AFI20230502BHJP
【FI】
A61C15/04 503
A61C15/04 502
(21)【出願番号】P 2020127921
(22)【出願日】2020-07-29
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】P 2020028159
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【氏名又は名称】大山 夏子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 敏男
(72)【発明者】
【氏名】大島 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】吉井 圭二
(72)【発明者】
【氏名】高村 春菜
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第201026244(CN,Y)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0010876(KR,A)
【文献】特開2011-072696(JP,A)
【文献】実開平02-077014(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0048096(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の係合部を有し、歯間清掃用のフロスの一側を支持する第1の操作部材と、
第2の係合部を有し、前記フロスの他側を支持する第2の操作部材と、
を備え、
前記第1の係合部と前記第2の係合部との係合により前記第1の操作部材と前記第2の操作部材が結合している結合状態において前記フロスを使用可能であり、
前記第1の係合部と前記第2の係合部との係合の解除により、前記結合状態から、前記第1の操作部材と前記第2の操作部材が分離している分離状態に状態が変化し、
前記第1の操作部材および前記第2の操作部材は使用者により把持される把持部を有し、前記結合状態において、各把持部は前記フロスの支持点間の離隔方向である第1方向と直交する第2方向上で重なり、
前記結合状態において、前記第1の操作部材と前記第2の操作部材の前記フロスが支持される側と反対側の端部であって、前記第1の操作部材と前記第2の操作部材の間には、空隙部が存在する、歯間清掃用具。
【請求項2】
前記第1の操作部材および前記第2の操作部材は、前記反対側の端部に、前記空隙部を形成する傾斜面を有する、請求項1に記載の歯間清掃用具。
【請求項3】
前記把持部の幅は、前記結合状態における第1の操作部材および前記第2の操作部材の各々の前記把持部の合計厚みよりも長い、請求項2に記載の歯間清掃用具。
【請求項4】
前記第1の係合部および前記第2の係合部は、互いに嵌り合う嵌め合い構造を含む、請求項1~3までのいずれか一項に記載の歯間清掃用具。
【請求項5】
前記第1の係合部および前記第2の係合部は、各々、複数の係合部を有する、請求項4に記載の歯間清掃用具。
【請求項6】
前記第1の係合部は、前記第1の操作部材の把持部が有する前記第2の操作部材の把持部に対向する第1の対向面縁を含む領域に形成された凸部であり、
前記第2の係合部は、前記第2の操作部材の把持部が有する前記第1の操作部材の把持部に対向する第2の対向面の縁を含む領域に形成された凹部である、請求項4に記載の歯間清掃用具。
【請求項7】
前記把持部は、厚み方向に交差し、前記結合状態において他の前記把持部に当接しない正面を有し、
前記正面は、突起が形成されている第1突起形成領域を含む、請求項3に記載の歯間清掃用具。
【請求項8】
前記把持部の側面は、突起が形成されている第2突起形成領域を含む、請求項3または7に記載の歯間清掃用具。
【請求項9】
前記第1の操作部材および前記第2の操作部材は、前記フロスを支持し、前記結合状態において前記フロスと共に開口を形成するヘッド部を有し、
前記ヘッド部は、前記把持部との境界位置から前記開口の外側に向けて延出する開口幅形成領域を含み、
前記開口幅形成領域の外側の側面は、突起が形成されている第3突起形成領域を含む、請求項2または3に記載の歯間清掃用具。
【請求項10】
前記第1の操作部材および前記第2の操作部材の長手方向上での長さは、40mm以上である、請求項1~9までのいずれか一項に記載の歯間清掃用具。
【請求項11】
前記第1の操作部材および前記第2の操作部材は、前記フロスを支持し、前記結合状態において前記フロスと共に開口を形成するヘッド部を有し、
前記第1の操作部材および前記第2の操作部材の長手方向上での長さは、前記開口の前記長手方向上での長さの3倍以下である、請求項1~8までのいずれか一項に記載の歯間清掃用具。
【請求項12】
前記第1の操作部材および前記第2の操作部材は、前記フロスを支持し、前記結合状態において前記フロスと共に開口を形成するヘッド部を有し、
前記把持部と前記ヘッド部が成す角度は、130度以上である、請求項2に記載の歯間清掃用具。
【請求項13】
前記分離状態から、前記第1の係合部と前記第2の係合部との係合により、前記結合状態に状態が変化する、請求項1~12のいずれか一項に記載の歯間清掃用具。
【請求項14】
前記結合状態においては、前記第1方向に沿って、または前記第1方向を長軸方向として前記フロスが支持される、請求項2または3に記載の歯間清掃用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯間清掃用具に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内の齲蝕および歯周疾患などの予防には、口腔内を清潔に保つことが有用である。口腔内を清潔に保つための清掃用具として、歯ブラシが広く用いられている。また、歯ブラシの毛先が届きにくい歯間を清掃するための歯間清掃用具も普及しつつある。歯間清掃用具としては、フロスと呼ばれる線材の両端を支持するヘッド部、およびヘッド部に連結される把持部を有する糸楊枝が知られている。当該糸楊枝には、把持部の長手方向とフロスの方向が一致するF字型の糸楊枝、および把持部の長手方向とフロスの方向が直交するY字型の糸楊枝などがある。
【0003】
また、分離された2つの把持部の各々がフロスを支持する、分離型の歯間清掃用具の研究も行われている。例えば、特許文献1~3には、このような分離型の歯間清掃用具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3158023号公報
【文献】特開2008-22936号公報
【文献】米国特許第0591229号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、いずれの分離型の歯間清掃用具も、2つの把持部が分離した分離状態では使用可能であるものの、2つの把持部が結合した結合状態での使用が困難であった。このため、上記の分離型の歯間清掃用具では使用方法の自由度が低い。
【0006】
本発明は、使用方法の自由度を向上することが可能であり、また結合状態においても優れた操作性で使用可能な歯間清掃用具に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点は、第1の係合部を有し、歯間清掃用のフロスの一側を支持する第1の操作部材と、第2の係合部を有し、前記フロスの他側を支持する第2の操作部材と、を備え、前記第1の係合部と前記第2の係合部との係合により前記第1の操作部材と前記第2の操作部材が結合している結合状態において前記フロスを使用可能であり、前記第1の係合部と前記第2の係合部との係合の解除により、前記結合状態から、前記第1の操作部材と前記第2の操作部材が分離している分離状態に状態が変化する、歯間清掃用具に関する。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明の歯間清掃用具は、使用方法の自由度を向上することが可能である。また、結合状態においても優れた操作性で使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態による歯間清掃用具1の外観を示す説明図である。
【
図2】各歯間清掃用具の清掃効率を示す説明図である。
【
図3】歯間清掃用具1の分離状態を示す説明図である。
【
図4】
図1に示したI-I線断面を示す説明図である。
【
図5】歯間清掃用具1の平面図、左側面図、および右側面図を示す説明図である。
【
図6】第1の変形例による歯間清掃用具2の分離状態を示す説明図である。
【
図7】第2の変形例による歯間清掃用具3の分離状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
<歯間清掃用具の概略構成>
本発明の実施形態は、口腔内、特に歯間を清掃するための歯間清掃用具に関する。まず、
図1を参照し、本発明の実施形態による歯間清掃用具の概略構成を説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態による歯間清掃用具1の外観を示す説明図である。
図1に示したように、本発明の実施形態による歯間清掃用具1は、第1の操作部材として用いられる操作部材10Aと、第2の操作部材として用いられる操作部材10Bと、フロス20と、を備える。
【0013】
操作部材10Aおよび操作部材10Bは使用者によって把持および操作される部材である。具体的には、操作部材10Aは、フロス20の一側を支持するヘッド部110A、および使用者により把持される把持部120Aを有する。また、操作部材10Bは、フロス20の他側を支持するヘッド部110B、および使用者により把持される把持部120Bを有する。
図1においては、操作部材10Aおよび操作部材10Bが結合している歯間清掃用具1の結合状態を示している。
【0014】
本明細書では、操作部材10Aおよび操作部材10Bに関して共通する説明をする際に、操作部材10Aおよび操作部材10Bを操作部材10と総称する場合がある。同様に、ヘッド部110Aおよびヘッド部110Bをヘッド部110と総称し、把持部120Aおよび把持部120Bを把持部120と総称する場合がある。他の構成についても、末尾にアルファベットを付して区別している構成を、アルファベットを用いない名称で総称する場合がある。
【0015】
また、本明細書では、把持部120の長手方向を前後方向(
図1に示したX軸方向)と称し、把持部120に対してヘッド部110が位置する方向を前方向と称し、ヘッド部110に対して把持部120が位置する方向を後方向と称する。また、結合状態におけるフロス20の支持点間の離隔方向である第1方向を幅方向(
図1に示したY軸方向)と称し、幅方向に直交する第2方向の一例である方向を上下方向(
図1に示したZ軸方向)または厚み方向と称する。上下方向(厚み方向)は、幅方向および前後方向の双方に直交する方向である。
【0016】
操作部材10のヘッド部110は、把持部120との境界位置から幅方向の外側に向けて延出する開口幅形成領域112、さらに、前方向に延出する開口長形成領域114を有する。開口長形成領域114の先端部にフロス20の支持端が位置する。このようなヘッド部110Aおよびヘッド部110Bは、歯間清掃用具1の結合状態においてフロス20と共に開口Sを形成する。当該開口Sの形成により、フロス20が2つの歯の間に挿入される際に2つの歯のうちの手前側の歯が当該開口Sを通るように位置できるので、フロス20を歯間に挿入し易い。
【0017】
操作部材10Aの把持部120Aおよび操作部材10Bの把持部120Bは、上下方向上で重なる。
【0018】
フロス20は、ヘッド部110Aおよびヘッド部110Bの支持端間で支持される線材である。歯間清掃用具1の結合状態において、フロス20は、ヘッド部110Aおよびヘッド部110Bの支持端間の離隔方向に沿って支持される。フロス20は、歯間清掃用具1の結合状態における歯間への挿入のし易さの観点から、
図1に示したように直線形状となるように支持されてもよい。また、フロス20に若干の弛みがあっても歯間へフロス20を挿入することは可能であるので、弛みによりフロス20が半楕円の形状を有する場合、半楕円の長軸方向がヘッド部110Aおよびヘッド部110Bの支持端間の離隔方向となるように支持されてもよい。
【0019】
このようなフロス20は、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン、またはポリテトラフルオロエチレンであってもよい。特に、フロス20はポリエチレンであることが好ましい。フロス20をポリエチレンで形成した場合、複数回に亘ってフロス20を使用しても切れ難いという効果を得ることが可能である。
【0020】
<背景>
ここで、本発明の実施形態の背景を説明する。歯間清掃用具としては、把持部の長手方向とフロスの方向が一致するF字型、把持部の長手方向とフロスの方向が直交するY字型、および切断されたフロスを直接手指で持って使用する糸巻型、などが知られている。以下、各歯間清掃用具の清掃効率を具体的に説明する。
【0021】
図2は、各歯間清掃用具の清掃効率を示す説明図である。
図2に示したように、F字型およびY字型では、フロスが略直線形状を有するので、歯とフロスの接触面積が制限され易い。一方、糸巻型では、歯に巻き付けるようにフロスを操ることができるので、歯とフロスの接触面積が広くなり、清掃効率が高い。ただし、糸巻型では、歯間へフロスを挿入し難く、また、指先が口腔内に入ってしまうなど、人前で使用し難い。
【0022】
このように、各歯間清掃用具には長短があり、各歯間清掃用具の長所を併せ持つ新たな歯間清掃用具が望まれた。本発明の実施形態による歯間清掃用具1はこのような観点から創作されたものであり、本発明の実施形態による歯間清掃用具1は、歯間への挿入性、および清掃効率を併せ持つ。以下、このような本発明の実施形態による歯間清掃用具1について改めて詳細に説明を進める。
【0023】
<歯間清掃用具の詳細>
図1を参照して説明したように、本発明の実施形態による歯間清掃用具1は、結合状態において、把持部120の長手方向とフロス20の方向が直交するY字型として機能する。結合状態においては、
図1に示したように、操作部材10Aの把持部120Aおよび操作部材10Bの把持部120Bは、上下方向上で重なっている。一方、本発明の実施形態による歯間清掃用具1は、結合状態と、操作部材10Aおよび操作部材10Bが分離している分離状態との間で両方向に変化することが可能である。以下、
図3を参照して歯間清掃用具1の分離状態を説明する。
【0024】
図3は、歯間清掃用具1の分離状態を示す説明図である。分離状態においては、ヘッド部110Aおよびヘッド部110Bの支持端間の離隔距離を短くすることが可能であり、ヘッド部110Aおよびヘッド部110Bの支持端間の離隔距離を短くするとフロス20に弛みが生じるので、歯に巻き付けるようにフロスを操ることが可能である。
【0025】
上述した結合状態から分離状態への変化は、操作部材10Aおよび操作部材10Bが上下方向に沿って離隔され、操作部材10Aが有する第1の係合部と操作部材10Bが有する第2の係合部との係合が解除されることにより生じる。また、分離状態から結合状態への変化は、操作部材10Aが有する第1の係合部と操作部材10Bが有する第2の係合部との係合により生じる。第1の係合部および前記第2の係合部は、互いに嵌り合う嵌め合い構造を含む。詳細には、第1の係合部および前記第2の係合部は、それぞれ把持部120Aおよび把持部120Bに形成されている。以下、
図3および
図4を参照し、このような第1の係合部および第2の係合部の具体例を説明する。
【0026】
図4は、
図1に示したI-I線断面を示す説明図である。
図3および
図4に示したように、把持部120Bが有する操作部材10Aの把持部120Aに対向する第2の対向面には、第2の係合部の一例である凸部126Bが設けられる。より詳細には、凸部126Bは、第2の対向面の内側領域および当該内側領域を囲む外側領域のうち、内側領域に設けられる。また、凸部126Bは、歯間清掃用具1の前後方向に沿って延びている。
【0027】
同様に、把持部120Aが有する操作部材10Bの把持部120Bに対向する第1の対向面には、第1の係合部の一例である凹部126Aが設けられる。より詳細には、凹部126Aは、第2の対向面の内側領域および当該内側領域を囲む外側領域のうち、内側領域に設けられる。また、凹部126Aは、歯間清掃用具1の前後方向に沿って延びている。
【0028】
これら凹部126Aおよび凸部126Bが
図4に示したように係合することにより結合状態が実現され、凹部126Aおよび凸部126Bの係合の解除により分離状態が実現される。そして、使用者が操作部材10Aおよび操作部材10Bを重ね合わせ、凹部126Aおよび凸部126Bを係合させることにより、歯間清掃用具1の状態が分離状態から結合状態に変化する。なお、把持部120Bの上下方向における厚みに関し、凸部126Bを除く部分の厚みt1は、凸部126Bの厚みt2より大きくてもよい。例えば、厚みt1は2.7mmであり、厚みt2は1.0mmであってもよい。また、把持部120Aおよび把持部120Bの幅w1は、結合状態における把持部120Aおよび把持部120Bの合計厚みt3よりも長い。また、上記では把持部120Bが凸部126Bを有し、把持部120Aが凹部126Aを有する例を説明したが、把持部120Bが凹部を有し、把持部120Aが凸部を有してもよい。
【0029】
以上説明したように、本発明の実施形態による歯間清掃用具1の使用者は、結合状態でフロス20を歯間に挿入することにより、Y字型が有する歯間への挿入性のメリットを享受することができる。一方、使用者は、挿入後には分離状態で歯間を清掃することにより、糸巻型が有する清掃効率のメリットを享受することができる。他の観点では、結合状態でも分離状態でも歯間清掃用具1を使用可能であるので、本発明の実施形態による歯間清掃用具1は、分離状態でしか使用できない他の分離型の歯間清掃用具に比べて、使用方法の自由度が高いと言える。さらに、使用者は、歯間清掃用具1の非使用時には歯間清掃用具1を結合状態に戻しておくことにより、歯間清掃用具1の収まりを良くすることが可能である。
【0030】
また、結合状態において、操作部材10Aの把持部120Aおよび操作部材10Bの把持部120Bは、上下方向上で重なっている。ここで、使用者は、把持部120Aを下方向に押す押圧力を加えることにより、フロス20を歯間に挿入すると考えられる。この挿入の際の押圧力が把持部120Aおよび操作部材10Bの重なりの方向の成分を含んでいることにより、押圧力が把持部120Aおよび操作部材10Bの分離のために作用し難く、押圧力がフロス20の歯間挿入のために伝わり易いという効果が得られる。
【0031】
また、
図4を参照して説明したように、把持部120Aおよび把持部120Bの幅w1は、結合状態における把持部120Aおよび把持部120Bの合計厚みt3よりも長い。このため、使用者が、人差し指と中指が把持部120Aの上面に当たり、親指で把持部120Bの下面に当たるように歯間清掃用具1を持った際に、把持部120Aの上面における接触面積、および把持部120Bの下面における接触面積が十分に確保される。結果、使用者が把持部120Aおよび把持部120Bを安定的に把持し易く、また、把持部120Aへの押圧も行い易くなる。
【0032】
また、本発明の実施形態による歯間清掃用具1は、嵌め合い構造により、結合状態と分離状態との間で両方向に変化することが可能である。また、凹部126Aが把持部120Bに対向する第1の対向面に設けられ、凸部126Bが把持部120Aに対向する第2の対向面に設けられる。このような凹部126Aを有する操作部材10Aおよび凸部126Bを有する操作部材10Bは、いずれも射出成型時に上下方向に沿って金型を分離して製造できるので、製造工程を簡易化することも可能である。また、嵌め合い構造とすることにより、使用者又は製造者は、分離状態へ、または結合状態へ変化させることが容易となる。
【0033】
また、凹部126Aおよび凸部126Bが歯間清掃用具1の前後方向に沿って延びていることにより、把持部120Aおよび把持部120Bの間にズレが生じ難く、結合状態がより安定する。なお、凸部126Bの外側面に上下方向に沿うリブを幾つか形成することにより、凸部126Bと凹部126Aの係合力を強化することも可能である。
【0034】
以下、
図5を参照し、本発明の実施形態による歯間清掃用具1のさらなる創意工夫を説明する。
図5は、歯間清掃用具1の平面図、左側面図、および右側面図を示す説明図である。
【0035】
(リブの形成)
図5の平面図に示したように、把持部120Aの正面は、リブが形成されている第1リブ形成領域121Aを含む。把持部120Aの正面は、上下方向に交差し、結合状態において把持部120Bに当接しない面である。また、第1リブ形成領域121Aには、幅方向に沿う複数のリブが前後方向上で互いに離隔するように形成されている。把持部120Aの正面に加えて、または把持部120Aの正面に代えて、把持部120Bの把持部120Aに当接しない面にリブが形成されていてもよい。
【0036】
図5の左側面図および右側面図に示したように、把持部120Aの左側面および右側面は、リブが形成されている第2リブ形成領域122Aを含む。同様に、把持部120Bの左側面および右側面は、リブが形成されている第2リブ形成領域122Bを含む。第2リブ形成領域122Bには、上下方向に沿う複数のリブが前後方向上で互いに離隔するように形成されている。
【0037】
図5の右側面図に示したように、把持部120Aが有する開口幅形成領域112Aの開口Sに対して外側の側面は、リブが形成された第3リブ形成領域123Aを含む。同様に、
図5の左側面図に示したように、把持部120Bが有する開口幅形成領域112Bの開口Sに対して外側の側面は、リブが形成された第3リブ形成領域123Bを含む。
【0038】
これら第1リブ形成領域121A~第3リブ形成領域123Bは滑り止めの機能を有する。結合状態においては、例えば、使用者の人差し指が第1リブ形成領域121A上に位置することにより、人差し指の滑りを抑制することが可能である。
【0039】
分離状態においては、操作部材10Aを持つ手の人差し指の先端が第3リブ形成領域123Aに当たり、当該人差し指の腹が第3リブ形成領域123Aと同側の第2リブ形成領域122Aに当たり、親指が他側の第2リブ形成領域122Aに当たる。同様に、操作部材10Bを持つ手の人差し指の先端が第3リブ形成領域123Bに当たり、当該人差し指の腹が第3リブ形成領域123Bと同側の第2リブ形成領域122Bに当たり、親指が他側の第2リブ形成領域122Bに当たる。これにより、分離状態においても、操作部材10Aおよび操作部材10Bを持つ指の滑りを効果的に抑制することが可能である。
【0040】
なお、上記では突起の一例としてリブを説明し、突起が形成される第1突起形成領域~第3突起形成領域の一例として第1リブ形成領域121A~第3リブ形成領域123Bを説明したが、突起はドット状の複数の突起であってもよい。
【0041】
(空隙部)
図5の左側面図および右側面図に示したように、歯間清掃用具1の後端部には空隙部Pが形成される。具体的には、把持部120Aの把持部120Bに対向する第1の対向面には、後端に近づくほど切り欠きを広げる傾斜面128Aを有する。また、把持部120Bの把持部120Aに対向する第2の対向面には、後端に近づくほど切り欠きを広げる傾斜面128Bを有する。
【0042】
かかる構成によれば、使用者は、歯間清掃用具1を結合状態から分離状態に容易に変化させることが可能である。例えば、使用者は、空隙部Pに指を挿し入れることにより把持部120Aと把持部120Bを分離させることが可能である。なお、傾斜面は一方の把持部に形成し、他方の把持部には形成しなくてもよい。また、
図5においては空隙部Pがくさび状である例を示しているが、コの字状などの他の形状を有する空隙部が形成されてもよい。
【0043】
(サイズ設計)
図5に示した操作部材10の前後方向上での長さd1は、40mm以上であることが好ましく、45mm以上であることがより好ましく、また70mm以下であることが好ましく、65mm以下であることがより好ましい。かかる構成によれば、操作部材10の取り回しが良く、操作部材10の全体を口腔内に入れることも可能である。使用者が奥歯に対して歯間清掃用具1を容易に使用する際に、操作部材10が唇および口腔内の粘膜などに当たることを抑制することも可能である。
【0044】
なお、長さd1を他の観点で表現することも可能である。例えば、長さd1は、開口Sの前後方向上での長さd2の4倍以下であることが望ましく、また2倍以上であることが望ましい。より具体的には、長さd1が22mmであり、長さd2が53mmであってもよい。
【0045】
また、
図5に示した、ヘッド部110と把持部120となす角度Qは、130度以上であることが好ましく、150度以上がより好ましく、また175度以下であることが好ましく、170度以下がより好まし。より具体的には、角度Qは、165度であってもよい。かかる構成によれば、分離状態において把持部120を操作する使用者の力が概ね直線的にフロス20の支持端に伝わるので、操作性を向上することが可能である。なお、操作部材10の上下方向における長さhは、上述した角度Qを実現する長さであることが望ましい。例えば、長さhは、10mm以上12mm未満であってもよい。
【0046】
また、
図5に示した、フロス20の支持点間の長さw2は、最も頬舌径が大きい歯の頬舌径以上であることが、フロス20を歯間に挿入することを可能とするために、望ましい。最も頬舌径が大きい歯は一般的に大臼歯であり、大臼歯の頬舌径は概ね10~12mmであることが知られている。このため、長さw2は12mm以上であることが好ましい。一方、大臼歯の舌側の面は舌に接し、大臼歯の頬側の面と頬粘膜との間隔は14mm程度である。このため、長さw2を大臼歯の頬舌径である12mmと上記間隔14mmとの合計値である26mm以下とすることで、フロス20の挿入の際に頬が邪魔になり難い。
【0047】
<変形例>
以上、本発明の実施形態を説明した。以下では、本発明の実施形態の幾つかの変形例を説明する。なお、以下に説明する各変形例は、単独で本発明の実施形態に適用されてもよいし、組み合わせで本発明の実施形態に適用されてもよい。また、各変形例は、本発明の実施形態で説明した構成に代えて適用されてもよいし、本発明の実施形態で説明した構成に対して追加的に適用されてもよい。
【0048】
(第1の変形例)
第1の変形例は、嵌め合い構造の変形に関する。以下、
図6を参照し、第1の変形例による歯間清掃用具2の構成を説明する。
【0049】
図6は、第1の変形例による歯間清掃用具2の分離状態を示す説明図である。
図6に示したように、第1の変形例による歯間清掃用具2は、操作部材12Aと、操作部材12Bと、フロス20と、を備える。操作部材12Aはヘッド部110Aおよび把持部220Aを備え、操作部材12Bはヘッド部110Bおよび把持部220Bを備える。ヘッド部110Aおよびヘッド部110Bの構成は上述した通りである。
【0050】
把持部220Aは、操作部材12Bに対向する対向面に複数の凸部を有する。具体的には、
図6に示したように、当該対向面には第1凸部222Aおよび第2凸部224Aが設けられる。把持部220Bは、操作部材12Aに対向する対向面に複数の凹部を有する。具体的には、
図6に示したように、当該対向面には第1凹部222Bおよび第2凹部224Bが設けられる。第1凸部222Aおよび第1凹部222Bは平面視で円形状を有している。第1凸部222Aおよび第1凹部222Bの形状は特に限定されず、平面視で四角形または六角形などの多角形の形状を有してもよい。
【0051】
結合状態においては、上述した第1凸部222Aと第1凹部222Bが係合し、第2凸部224Aと第2凹部224Bが係合する。これら係合が解除されることにより、歯間清掃用具2の状態が結合状態から分離状態に変化する。
【0052】
このように、第1の変形例による歯間清掃用具2では、操作部材12Aおよび操作部材12Bが前後方向に沿って離間する複数の係合部を有することにより、複数箇所での係合により操作部材12Aおよび操作部材12Bが結合するので、操作部材12Aおよび操作部材12Bの結合力を強化することが可能である。
【0053】
なお、第2凸部224Aの前側の段差面には窪み225Aが形成され、第2凹部224Bの前側の段差面には隆起部225Bが形成されている。結合状態においては、窪み225Aに隆起部225Bが嵌ることにより、第2凸部224Aと第2凹部224Bがより強く係合する。また、操作部材12Aに複数の凹部が形成され、操作部材12Bに複数の凸部が形成されていてもよいし、操作部材12Aに凹部および凸部が形成され、操作部材12Bに凸部および凹部が形成されていてもよい。また、操作部材12Aおよび操作部材12Bが有する凸部または凹部の数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0054】
(第2の変形例)
第2の変形例も、嵌め合い構造の変形に関する。以下、
図7を参照し、第2の変形例による歯間清掃用具3の構成を説明する。
【0055】
図7は、第2の変形例による歯間清掃用具3の分離状態を示す説明図である。
図7に示したように、第2の変形例による歯間清掃用具3は、操作部材13Aと、操作部材13Bと、フロス20と、を備える。操作部材13Aはヘッド部110Aおよび把持部320Aを備え、操作部材13Bはヘッド部110Bおよび把持部320Bを備える。ヘッド部110Aおよびヘッド部110Bの構成は上述した通りである。
【0056】
把持部320Aは、操作部材13Bに対向する対向面の縁を含む領域に形成された凸部322Aを有する。把持部320Bは、操作部材13Aに対向する対向面の縁を含む領域に形成された凹部322Bを有する。
【0057】
結合状態においては、上述した操作部材13Aの凸部322Aと操作部材13Bの凹部322Bが係合する。当該係合が解除されることにより、歯間清掃用具3の状態が結合状態から分離状態に変化する。
【0058】
使用者は、結合状態において操作部材13Aと操作部材13Bを上下方向に沿って離隔させることにより、操作部材13Aの凸部322Aと操作部材13Bの凹部322Bの係合を解除できる。さらに、当該変形例においては凹部322Bが操作部材13Aに対向する対向面の縁(
図7に示した例では、長手方向に沿う縁)を含む領域に形成されている。このため、使用者は、操作部材13Aを操作部材13Bに対して幅方向に沿って摺動させることにより操作部材13Aの凸部322Aと操作部材13Bの凹部322Bの係合を解除することも可能である。
【0059】
なお、凸部322Aの前側の段差面および後側の段差面には隆起部325Aが形成され、凹部322Bの前側の段差面および後側の段差面には窪み325Bが形成されている。結合状態においては、窪み325Bに隆起部325Aが嵌ることにより、凸部322Aと凹部322Bがより強く係合する。
【0060】
<補足>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的範囲はかかる例に限定されない。本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0061】
例えば、上記では、結合状態から分離状態への状態変化、および分離状態から結合状態への状態変化の双方が可能である歯間清掃用具1を説明したが、結合状態から分離状態への状態の変化は不可逆変化であってもよい。例えば、操作部材10Aおよび操作部材10Bが脆弱部を介して一体的に形成されている結合状態において、使用者が加える力により脆弱部が破壊されることで、歯間清掃用具1が分離状態となってもよい。かかる構成においては、使用方法の自由度を確保しつつ、分離状態から結合状態への状態変化のための係合部を歯間清掃用具1が有さなくてもよいため製造コストを低減することが可能である。また、例えば、上記では、結合状態は把持部の長手方向とフロスの方向が直交するY字型の歯間清掃用具1を説明したが、把持部の長手方向とフロスの方向が一致するF字型の歯間清掃用具であってもよい。この場合、第1の操作部材と第2の操作部材とは前後方向上の長さd1が異なる。また、例えば、上記では、係合部は凸部及び凹部で形成されていたが、これに制限されず、メカニカルファスナー、両面テープ等の別部材の係合部材を設けてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1、2、3 歯間清掃用具
10、12、13 操作部材
20 フロス
110 ヘッド部
112 開口幅形成領域
114 開口長形成領域
120 把持部
121A 第1リブ形成領域
122A、122B 第2リブ形成領域
123A、123B 第3リブ形成領域
126A 凹部
126B 凸部
128A、128B 傾斜面
220 把持部
222A 第1凸部
222B 第1凹部
224A 第2凸部
224B 第2凹部
225A 窪み
225B 隆起部
320 把持部
322A 凸部
322B 凹部
325A 隆起部
325B 窪み