(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20230502BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20230502BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20230502BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D25/20 F
B62D25/20 G
H01M50/249
(21)【出願番号】P 2020156552
(22)【出願日】2020-09-17
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】廣田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】柴田 峻志
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-028193(JP,A)
【文献】特開2005-154006(JP,A)
【文献】特開2019-018732(JP,A)
【文献】特開2011-255705(JP,A)
【文献】特開平10-006785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B62D 25/20
H01M 50/20 - 50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用モータを有する車両であって、
フロアパネルの左右方向の両側に一対のロッカが設けられた車体と、
前記フロアパネルの下方に配置されており、前記走行用モータに供給される電力を蓄えるバッテリパックと、
前記バッテリパックの前記左右方向の両側に配置されており、前記バッテリパックを前記一対のロッカに対して固定する一対の固定部材と、
を備え、
前記バッテリパックと前記固定部材との間が、複数の接着材により接合されており、
前記複数の接着材が車長方向に沿って断続的に配置されている、車両
であって、
前記バッテリパックは、複数のバッテリスタックが格納されているケースを備えており、
前記ケースは、
前記一対の固定部材と対向している一対の側面と、
前記ケース内部に車幅方向に延びるように配置されており、前記一対の側面を接続しているリインフォースと、
を備えており、
前記接着材は、前記側面のうち前記リインフォースが接続されている領域の少なくとも一部に配置されており、
前記一対の側面と前記一対の固定部材とが接合している接合領域は、前記一対の側面の少なくとも一部に車長方向に沿って存在しており、
前記複数の接着材は、前記接合領域の車両上側の領域に配置されている第1の接着材と、車長方向に伸びるに従って車両上側または車両下側に移動している第3の接着材と、を含んでいる、車両。
【請求項2】
前記一対の側面と前記一対の固定部材とが接合している接合領域は、前記一対の側面の少なくとも一部に車長方向に沿って存在しており、
前記複数の接着材は、前記接合領域の車両下側の領域に配置されている第2の接着材を含んでいる、請求項
1に記載の車両。
【請求項3】
前記一対の側面と前記一対の固定部材とが接合している接合領域は、前記一対の側面の少なくとも一部に車長方向に沿って存在しており、
前記複数の接着材は、
前記接合領域の車両上側の領域に配置されている第1の接着材と、
前記第1の接着材よりも車両下側に配置されている第2の接着材と、
を含んでいる、請求項
1に記載の車両。
【請求項4】
前記第1の接着材および前記第2の接着材は、車長方向に沿って交互に配置されている、請求項
3に記載の車両。
【請求項5】
走行用モータを有する車両であって、
フロアパネルの左右方向の両側に一対のロッカが設けられた車体と、
前記フロアパネルの下方に配置されており、前記走行用モータに供給される電力を蓄えるバッテリパックと、
前記バッテリパックの前記左右方向の両側に配置されており、前記バッテリパックを前記一対のロッカに対して固定する一対の固定部材と、
を備え、
前記バッテリパックと前記固定部材との間が、複数の接着材により接合されており、
前記複数の接着材が車長方向に沿って断続的に配置されている、車両
であって、
前記バッテリパックは、複数のバッテリスタックが格納されているケースを備えており、
前記ケースは、
前記一対の固定部材と対向している一対の側面と、
前記ケース内部に車幅方向に延びるように配置されており、前記一対の側面を接続しているリインフォースと、
を備えており、
前記接着材は、前記側面のうち前記リインフォースが接続されている領域の少なくとも一部に配置されており、
前記一対の側面と前記一対の固定部材とが接合している接合領域は、前記一対の側面の少なくとも一部に車長方向に沿って存在しており、
前記複数の接着材は、
前記接合領域の車両上側の領域に配置されている第1の接着材と、
前記第1の接着材よりも車両下側に配置されている第2の接着材と、
車長方向に伸びるに従って車両上側または車両下側に移動している第3の接着材と、
を含んでおり、
前記第1の接着材および前記第2の接着材は、車長方向に沿って交互に配置されており、
前記第3の接着材は、前記第1の接着材または前記第2の接着材の少なくとも一方と接続している、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、車両に関する。特に、フロアパネルの下方にバッテリパックを備える車両に関する。
【0002】
特許文献1に、走行用モータを有する車両が記載されている。この車両は、フロアパネルの両側に一対のロッカが設けられた車体を備えている。また、走行用モータに供給される電力を蓄えるバッテリパックが、フロアパネルの下方に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の車両下部構造では、バッテリパックを一対のロッカに固定するための、一対の固定部材を用いる場合がある。一対の固定部材は、バッテリパックの左右方向の両側に配置される。そして、バッテリパックの両側と一対の固定部材とを、接着材により接合する場合がある。修理やバッテリパックのリサイクルの際には、バッテリパックと固定部材とを切り離す必要があるが、両者を接着材で接合した場合には、切り離しが困難になる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する技術は、走行用モータを有する車両に具現化される。この車両は、フロアパネルの左右方向の両側に一対のロッカが設けられた車体を備える。車両は、フロアパネルの下方に配置されており、走行用モータに供給される電力を蓄えるバッテリパックを備える。車両は、バッテリパックの左右方向の両側に配置されており、バッテリパックを一対のロッカに対して固定する一対の固定部材を備える。バッテリパックと固定部材との間が、複数の接着材により接合されている。複数の接着材が車長方向に沿って断続的に配置されている。
【0006】
バッテリパックと固定部材とを接合する複数の接着材が、車長方向に沿って断続的に配置されている。これにより、接着材が車長方向に沿って連続的に配置される場合に比して、バッテリパックと固定部材との切り離しを容易にすることができる。
【0007】
バッテリパックは、複数のバッテリスタックが格納されているケースを備えていてもよい。ケースは、一対の固定部材と対向している一対の側面を備えていてもよい。ケースは、ケース内部に車幅方向に延びるように配置されており、一対の側面を接続しているリインフォースを備えていてもよい。接着材は、側面のうちリインフォースが接続されている領域の少なくとも一部に配置されていてもよい。側面のうちリインフォースが接続されている領域は、リインフォースが接続されていない領域に比して強度が高い領域である。この高強度の領域でバッテリパックと固定部材とを接合することで、結合剛性を高めることができる。
【0008】
一対の側面と一対の固定部材とが接合している接合領域は、一対の側面の少なくとも一部に車長方向に沿って存在していてもよい。複数の接着材は、接合領域の車両上側の領域に配置されている第1の接着材を含んでいてもよい。接合領域の車両上側で、ケース側面と固定部材とを接合することができる。
【0009】
一対の側面と一対の固定部材とが接合している接合領域は、一対の側面の少なくとも一部に車長方向に沿って存在していてもよい。複数の接着材は、接合領域の車両下側の領域に配置されている第2の接着材を含んでいてもよい。接合領域の車両下側で、ケース側面と固定部材とを接合することができる。
【0010】
一対の側面と一対の固定部材とが接合している接合領域は、一対の側面の少なくとも一部に車長方向に沿って存在していてもよい。複数の接着材は、接合領域の車両上側の領域に配置されている第1の接着材と、第1の接着材よりも車両下側に配置されている第2の接着材と、を含んでいてもよい。接合領域の車両上側および下側で、ケース側面と固定部材とを接合することができる。よって、車両上下方向の結合剛性を高めることができる。
【0011】
第1の接着材および第2の接着材は、車長方向に沿って交互に配置されていてもよい。第1および第2の接着材を交互に配置することで、接着材の配置を均一に分散させることができる。接合領域内の結合剛性を均一化することができる。
【0012】
複数の接着材は、車長方向に伸びるに従って車両上側または車両下側に移動している第3の接着材を含んでいてもよい。車長方向および車両上下方向の結合剛性を高めることができる。
【0013】
複数の接着材は、車長方向に伸びるに従って車両上側または車両下側に移動している第3の接着材を含んでいてもよい。第3の接着材は、第1の接着材または第2の接着材の少なくとも一方と接続していてもよい。車長方向および車両上下方向の結合剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】バッテリパック30およびEA部材18の分解斜視図である。
【
図4】実施例1に係るバッテリパック30の側面図である。
【
図7】実施例2に係るバッテリパック30の側面図である。
【
図8】実施例3に係るバッテリパック30の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
<車両の構造>
図1に、車両10の左側面図を示す。本実施例の車両10は、いわゆる自動車であって、路面を走行する車両である。ここで、図面における方向FRは、車両10の前後方向(車長方向)における前方を示し、方向RRは車両10の前後方向における後方を示す。また、方向LHは車両10の左右方向(車幅方向)における左方を示し、方向RHは車両10の左右方向における右方を示す。そして、方向UPは車両10の上下方向(車高方向)における上方を示し、方向DNは車両10の上下方向における下方を示す。なお、本明細書では、車両10の前後方向、左右方向及び上下方向を、それぞれ単に前後方向、左右方向及び上下方向と称することがある。
【0016】
車両10は、車体12、複数の車輪14fおよび14r、走行用モータ16、バッテリパック30、を備えている。なお、車輪14f、14rの数については、四つに限定されない。車体12は、主に、ユーザが乗車するキャビン12cと、キャビン12cの前方に位置するフロント部12fと、キャビン12cの後方に位置するリア部12rとに区分することができる。
【0017】
走行用モータ16は、一対の前車輪14fに接続されており、一対の前車輪14fを駆動する。バッテリパック30は、走行用モータ16のための電源であって、走行用モータ16へ供給される電力を蓄える。バッテリパック30は、DC-DCコンバータやインバータといった電力供給回路(図示省略)を介して、走行用モータ16へ電気的に接続されている。また、車両10は、走行用モータ16に加えて、又は代えて、エンジンといった他の原動機を備えてもよい。
【0018】
図2に、車両10の主たる構造を模式的に示す底面図を示す。車体12は、フロアパネル20と、一対のロッカ22と、ダッシュクロスメンバ24と、一対のフロントサイドメンバ26と、一対のリアサイドメンバ28とを備える。フロアパネル20は、前後方向及び左右方向に広がる板状の部材であって、キャビン12cのフロアを構成している。一対のロッカ22(サイドシルとも称される)は、キャビン12cに位置しており、フロアパネル20の左右方向の両側に設けられている。各々のロッカ22は、概して前後方向に延びる筒状構造を有しており、車体12の骨格の一部を構成している。各々のロッカ22の前端は、ダッシュクロスメンバ24に接続されており、各々のロッカ22の後端は、リアサイドメンバ28に接続されている。
【0019】
ダッシュクロスメンバ24は、キャビン12cとフロント部12fとの間の境界に位置しており、一方のロッカ22の前端から、他方のロッカ22の前端まで延びている。ダッシュクロスメンバ24は、概して左右方向に延びる筒状構造を有しており、車体12の骨格の一部を構成している。一対のフロントサイドメンバ26は、フロント部12fに位置しており、ダッシュクロスメンバ24から前方に向けて延びている。一対のフロントサイドメンバ26は、概して前後方向に延びる筒状構造を有しており、車体12の骨格の一部を構成している。一対のリアサイドメンバ28は、リア部12rに位置しており、一対のロッカ22から連続して後方に延びている。一対のリアサイドメンバ28は、概して前後方向に延びる筒状構造を有しており、車体12の骨格の一部を構成している。
【0020】
バッテリパック30は、車体12のフロアパネル20の下方に配置されており、一対のEA(Energy Absorber)部材18を介して一対のロッカ22に固定されている。すなわち一対のEA部材18は、バッテリパック30を一対のロッカ22に対して固定するための一対の固定部材である。一対のEA部材18は、バッテリパック30の左右方向の両側において、それぞれ前後方向に延びている。EA部材18は、衝突時のエネルギを吸収するための部材であり、衝突荷重に応じて所定の塑性変形が生じるように構成されている。EA部材18の材料や構造については、特に限定されない。一例ではあるが、本実施例におけるEA部材18は、アルミニウム系の材料で構成されている。
【0021】
<バッテリパックおよびEA部材の構造>
図3に、バッテリパック30およびEA部材18の分解斜視図を示す。
図3では、上側ケース33で隠れているパック内クロスメンバ36を点線で示している。
図4に、バッテリパック30の側面図を示す。
図5に、
図3のV-V線における断面図を示す。V-V線は、パック内クロスメンバ36の中心を通る線である。
図5は、バッテリパック30、EA部材18、ロッカ22がすべて組み合わされた状態を示す図である。左右対称の構造を有するため、
図5では、中心線CL1の一方のみを示している。
【0022】
バッテリパック30は、ケース31、複数のバッテリセル40、エンドプレート42、を備えている。ケース31は、バッテリパック30の外殻を構成する部材である。ケース31は、下側ケース32、上側ケース33、パック内クロスメンバ36、締結部材37、ボルト孔38、を備えている。下側ケース32は、下側に窪んだ皿形状である。上側ケース33は、上側に突出した蓋形状である。両者がフランジ部30f(
図5参照)で接合されることにより、内部空間が形成されている。締結部材37は、バッテリパック30を車体12の下面に固定するための部材である。
【0023】
下側ケース32は、車幅方向に一対の側面32sを備えている。側面32sは、EA部材18と対向している。下側ケース32の内部には、車幅方向に延びるようにパック内クロスメンバ36が設けられている。パック内クロスメンバ36は、一対の側面32sを接続している。パック内クロスメンバ36は、下側ケース32の強度を高めるための骨格部材であり、リインフォースとも呼ばれる。
図4では、パック内クロスメンバ36は側面32sで隠れているため、点線で示されている。
図4に示すように、パック内クロスメンバ36は、断面が両ハット形状をした鋼板を、下側ケース32の底面に溶接することで形成されている。具体的には、パック内クロスメンバ36の幅方向の両側に配置されているフランジ36fが、下側ケース32の底面に溶接されていることで、閉断面が形成されている。
【0024】
図5に示すように、ケース31の内部空間には、複数のバッテリセル40が内蔵されている。複数のバッテリセル40の各々は、例えばリチウムイオンバッテリセルといった二次バッテリセルであり、外部電源から供給される電力や、走行用モータ16による回生電力によって、繰り返し充電可能である。複数のバッテリセル40は、車両左右方向に沿って配列されている。エンドプレート42は、上下方向に延びる板状の部材であり、複数のバッテリセル40の一端に配置されている。エンドプレート42は、複数のバッテリセル40をその配列方向に沿って押圧している。
【0025】
下側ケース32の側面32sには、EA部材18が接合される。本明細書では、側面32sとEA部材18とが接合する領域を、接合領域R1と定義する。
図4に示すように、接合領域R1は、側面32sに車長方向に沿って存在している。接合領域R1には、第1の接着材51および第2の接着材52が配置されている。これらの接着材は、下側ケース32とEA部材18とを接合するために用いられる部材である。本実施例では、第1の接着材51および第2の接着材52は両面テープである。
【0026】
複数の第1の接着材51は、車長方向に沿って断続的に配置されている。第1の接着材51は、接合領域R1の車両上側の領域に配置されている接着材である。具体的には、第1の接着材51は、接合領域R1を上下に区切っている中心線CL2に対して、上側に配置されている。また
図4における点線領域で示すように、接合領域R1には、パック内クロスメンバ36が接続されている領域が存在する。このパック内クロスメンバ36が接続されている領域の少なくとも一部に、第1の接着材51が配置されている。換言すると、バッテリパック30の側面視において、パック内クロスメンバ36が接続されている領域に第1の接着材51の一部が重なっている。
【0027】
複数の第2の接着材52は、車長方向に沿って断続的に配置されている。第2の接着材52は、第1の接着材51よりも車両下側に配置されている接着材である。具体的には、第2の接着材52は、中心線CL2に対して下側に配置されている。そして第1の接着材51および第2の接着材52は、車長方向に沿って交互に配置されている。
【0028】
図3の説明に戻る。EA部材18は、フランジ部18fおよび孔部18hを備えている。ボルト39がフランジ部18fを貫通して、ボルト孔38に固定される。これにより、EA部材18を下側ケース32に固定することができる。また、ボルト19が孔部18hを貫通して、ロッカ22下面のボルト孔(不図示)に固定される。これにより、EA部材18をロッカ22に固定することができる。
【0029】
<効果>
図6に、効果を説明するための比較例を示す。
図6は、
図4に対応する側面図である。比較例では、接着材150が接合領域R1を囲うように、接合領域R1の四辺に配置されている。すなわち、接着材150が車長方向に沿って連続的に配置されている。修理やバッテリパック30のリサイクルの際には、バッテリパック30とEA部材18とを切り離す必要がある。しかし
図6の比較例では、車長方向に沿って連続的に配置されている接着材150が障害となり、カッターなどの簡単な工具を接合面に挿入することが困難である。そのため、切り離しのための専用の工具が必要となる場合がある。また接着材150が連続的に配置されていることにより、接着強度が必要以上に高くなり、切り離しが困難となる場合がある。そこで実施例1の技術では、
図4に示すように、第1の接着材51および第2の接着材52を、車長方向に沿って断続的に配置している。これにより、接着材が配置されていない領域から、カッターなどの工具を接合面に容易に挿入することができる。切り離しを容易化することが可能となる。また、接着材が配置されている領域の配置割合を調整することにより、十分な結合剛性を有しながら切り離しを容易に行えるように、接着強度を最適化することができる。
【0030】
側面32sにおいて、パック内クロスメンバ36が接続されている領域(
図4の点線領域を参照)は、パック内クロスメンバ36が接続されていない領域に比して強度が高い領域である。この高強度領域は、外力により変形しにくいため、結合剛性を高めるための寄与度が高い。この高強度領域に第1の接着材51を配置することにより、高強度領域でバッテリパック30とEA部材18とを接合できるため、両者の結合剛性を高めることが可能となる。
【0031】
第1の接着材51および第2の接着材52を車長方向に沿って交互に配置することで、接合領域R1内の接着材の配置密度を均一化することができる。接合領域R1内の結合剛性を均一化できるため、接合領域R1全体としての結合剛性を高めることが可能となる。
【実施例2】
【0032】
図7に、実施例2における接着材の配置パターンを示す。
図7は、実施例1の
図4に対応する図面である。なお、実施例1と同様の部位には同一符号を付すことで、説明を省略する。以下の他の実施例においても同様である。接合領域R1には、第1の接着材51のみが複数配置されている。複数の第1の接着材51は、車長方向に沿って断続的に配置されている。また複数の第1の接着材51は、パック内クロスメンバ36が接続されている領域の少なくとも一部に配置されている。
【0033】
これにより、接合領域R1の車両上側で、側面32sとEA部材18とを接合することができる。バッテリパック30とEA部材18とを切り離す際に、カッターなどの工具を移動させる領域を、接合面の上側領域のみとすることができる。切り離しを容易化することが可能となる。
【実施例3】
【0034】
図8に、実施例3における接着材の配置パターンを示す。接合領域R1には、実施例1(
図4)で説明した第1の接着材51および第2の接着材52が配置されているとともに、複数の第3の接着材53が追加配置されている。第3の接着材53は、車長方向に伸びるに従って車両上側または車両下側に移動するように配置されている。換言すると、第3の接着材53は、車両前後方向に対して斜めに配置されている。また複数の第3の接着材53の各々は、接続部53cにおいて、第1の接着材51の車両前後方向の端部と接続している。
【0035】
斜めに配置されている第3の接着材53によって、車長方向および車両上下方向の結合剛性を高めることができる。
【0036】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0037】
<変形例>
接着材が両面テープである場合を説明したが、この形態に限られない。液状の接着材を接着面に塗布してもよい。
【0038】
接合領域R1における接着材の配置態様は、本明細書の例に限られず、様々であってよい。例えば、実施例1の配置態様(
図4)において、第1の接着材51および第2の接着材52の配置数を適度に間引いてもよい。実施例1の配置態様(
図4)において、第2の接着材52のみを残してもよい。実施例3の配置態様(
図8)において、第3の接着材53のみを残してもよい。また、接着材を車両上下方向(すなわち縦方向)に配置してもよい。
【0039】
「側面32sにおいてパック内クロスメンバ36が接続されている領域」の構造は、本明細書の例に限られず、様々であってよい。例えば、パック内クロスメンバ36は、各種の連結部を介して側面32sに接続していてもよい。連結部の例としては、ステー、ブラケット、溶接ビードにより形成された補強部、などが挙げられる。
【0040】
EA部材18は、固定部材の一例である。
【符号の説明】
【0041】
10:車両 12:車体 18:EA部材 20:フロアパネル 22:一対のロッカ 30:バッテリパック 31:ケース 32:下側ケース 32s:側面 33:上側ケース 36:パック内クロスメンバ 40:バッテリセル 51:第1の接着材 52:第2の接着材 53:第3の接着材 R1:接合領域