(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】水硬性組成物用粉末増粘剤組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 24/38 20060101AFI20230502BHJP
C04B 24/32 20060101ALI20230502BHJP
C04B 24/04 20060101ALI20230502BHJP
C04B 24/06 20060101ALI20230502BHJP
C04B 24/08 20060101ALI20230502BHJP
C04B 24/12 20060101ALI20230502BHJP
C04B 24/16 20060101ALI20230502BHJP
C04B 24/24 20060101ALI20230502BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20230502BHJP
B28C 7/04 20060101ALI20230502BHJP
C04B 103/44 20060101ALN20230502BHJP
【FI】
C04B24/38 C
C04B24/32 A
C04B24/04
C04B24/06 A
C04B24/08
C04B24/12 A
C04B24/16
C04B24/24 B
C04B28/02
B28C7/04
C04B103:44
(21)【出願番号】P 2020187882
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】島田 恒平
(72)【発明者】
【氏名】佐川 桂一郎
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-095552(JP,A)
【文献】特公昭49-014123(JP,B1)
【文献】特開2007-290905(JP,A)
【文献】特開2012-201531(JP,A)
【文献】特開昭55-023047(JP,A)
【文献】特開2019-172815(JP,A)
【文献】特表2017-512854(JP,A)
【文献】特開2017-218359(JP,A)
【文献】特開2000-103659(JP,A)
【文献】特開2021-191815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
B28C 7/04
C04B 103/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)粉末増粘剤〔以下、(A)成分という〕並びに(B)アミノカルボン酸及びその塩から選択される化合物〔以下、(B)成分という〕を含有する水硬性組成物用粉末増粘剤組成物であって、
(A)成分の含有量と(B)成分の含有量の合計100質量部に対する(B)成分の含有量の割合が
50質量部以上95質量部以下である、
水硬性組成物用粉末増粘剤組成物。
【請求項2】
(B)成分のデイビス法によるHLB値が8以上である、請求項1に記載の水硬性組成物用粉末増粘剤組成物。
【請求項3】
(A)成分が、セルロース系高分子化合物及び主骨格にエーテル結合を有する高分子化合物から選択される、請求項1又は2に記載の水硬性組成物用粉末増粘剤組成物。
【請求項4】
更に(C)成分として粉末分散剤を含有する、請求項1~3の何れか1項に記載の水硬性組成物用粉末増粘剤組成物。
【請求項5】
請求項1~
4の何れか1項に記載の水硬性組成物用粉末増粘剤組成物と、水硬性粉体とを配合してなる、水硬性組成物用プレミックス。
【請求項6】
形態が粉末である、請求項
5に記載の水硬性組成物用プレミックス。
【請求項7】
請求項1~
4の何れか1項に記載の水硬性組成物用粉末増粘剤組成物と、水硬性粉体と、水とを混合する、水硬性スラリーの製造方法。
【請求項8】
水と水硬性粉体とを、水/水硬性粉体比が、20質量%以上200質量%以下となるように混合する、請求項
7に記載の水硬性スラリーの製造方法。
【請求項9】
請求項
7又は
8に記載の方法で製造した水硬性スラリーを、型枠に充填して硬化させる、硬化体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末増粘剤組成物、水硬性組成物用プレミックス、水硬性スラリーの製造方法及び硬化体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
増粘剤は、食品、化粧品、その他の工業製品に広く用いられる化合製品であり、溶媒、分散媒や分散質を保持、拘束することにより系の粘度を高め(増粘)、各々の用途に求められる適切なテクスチャの実現や、系の安定性の向上に貢献している。
【0003】
溶媒、分散媒や分散質を保持、拘束する増粘剤の思想から、その分子設計は、溶媒、分散媒や分散質に対して相互作用力を示す構成単位を有することが考慮される。代表的な増粘剤としては、セルロースエーテル系増粘剤、アクリル系増粘剤、ポリビニルアルコール系増粘剤、ポリオキシエチレン系増粘剤、粘土系増粘剤等が挙げられる。
【0004】
増粘剤の効果を高めるために、増粘剤と他の成分とを組み合わせることが、従来、提案されている。
特許文献1には、水溶性の非イオン-セルロースエーテルと選択された界面活性剤又はナフタレンスルホン酸縮合生成物とのシックナー組合せ物が開示されている。
特許文献2には、高分子化合物及びアミノ酸類を含有するコンタクトレンズ用眼科組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-166150号公報
【文献】特開2001-187733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
増粘剤の多くは、溶媒、分散媒に溶解、分散して増粘性を発現するため、ハンドリングや輸送の観点から、溶媒、分散媒を極力取り除いた、粉末状の製品として流通することが多い。粉末状の増粘剤は、例えば、水硬性粉体と混合して粉末状のプレミックスを提供できるが、そのようなプレミックスに水を加えて水硬性スラリーとした場合は、増粘効果が低下する傾向があることが判明した。一方、同じ粉末増粘剤を予め水に溶解させてから水硬性粉体等と混合して水硬性スラリーとした場合は、増粘効果の大きな低下は見られない。
【0007】
本発明は、増粘効果に優れた水硬性組成物用粉末増粘剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(A)粉末増粘剤〔以下、(A)成分という〕並びに(B)官能基としてカルボキシ基のみを有する多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アミノカルボン酸、アミノホスホン酸、アミノスルホン酸、アミノリン酸及びこれらの塩から選択される化合物〔以下、(B)成分という〕を含有する水硬性組成物用粉末増粘剤組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、前記本発明の水硬性組成物用粉末増粘剤組成物と、水硬性粉体とを配合してなる、水硬性組成物用プレミックスに関する。
【0010】
また、本発明は、前記本発明の水硬性組成物用粉末増粘剤組成物と、水硬性粉体と、水とを混合する、水硬性スラリーの製造方法に関する。
【0011】
また、本発明は、前記本発明の方法で製造した水硬性スラリーを、型枠に充填して硬化させる、硬化体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、増粘効果に優れた水硬性組成物用粉末増粘剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、粉末増粘剤に対し、官能基としてカルボキシ基のみを有する多価カルボン酸及びその塩、ヒドロキシカルボン酸及びその塩、アミノカルボン酸及びその塩、アミノホスホン酸及びその塩、アミノスルホン酸及びその塩、並びにアミノリン酸及びその塩から選択される化合物を配合した粉末増粘剤組成物を用いることで、水硬性スラリーの粘度が向上すること、更にこの粘度向上効果は、プレミックスから製造した水硬性スラリーにおいても発現することを見出した。このような効果が発現する理由は必ずしも定かではないが、以下のように推測される。
水硬性粉体は、水に触れて金属イオンを放出するものが多いため、水硬性粉体と粉末増粘剤とを予め混合したプレミックスに水を加えると、バルク水のイオン強度は自ずと高くなり、化学的な自由水が減少する。すると、粉末増粘剤の水和に有効な自由水が伴って減少し、粉末増粘剤の水溶性乃至水分散性が低下して増粘効果が十分に発現しないことが予想される。本発明の(B)成分は、金属イオンに対しキレート構造を形成しうる酸構造及び水素結合性の親水部を有することにより、粉末増粘剤の親水的なユニットと金属イオンの介添え役となり、粉末増粘剤の水溶性乃至水分散性を向上させることで、プレミックスから水硬性組成物を調製する場合でも、効果的に水硬性スラリーの粘度を向上させると考えられる。
【0014】
近年、持続的な社会実現のためにSDGsが提唱されている。本発明は、必要添加量削減による粉末増粘剤の混合工程の労務節減、スラリーの自己充填性の向上による省力化などを実現でき、例えば、SDGsのNo.8、9、13、15などに貢献する技術となり得ると考えられる。
【0015】
[水硬性組成物用粉末増粘剤組成物]
(A)成分は、粉末増粘剤である。(A)成分としては、セルロース系高分子化合物及びエーテル系高分子化合物から選択される粉末増粘剤が挙げられる。
セルロース系高分子化合物としては、変性セルロース、特に、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースに代表される、アルキル又はヒドロキシアルキル変性セルロースが挙げられる。
【0016】
(A)成分がセルロース系高分子化合物である場合、スラリーの増粘性およびハンドリング性の観点から、20℃における2質量%濃度の水溶液又は分散液のpH12の粘度は、好ましくは100以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは1,000以上、そして、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、100,000以下である。
【0017】
(A)成分がセルロース系高分子化合物である場合、増粘性およびハンドリング性の観点から、重量平均分子量は、好ましくは50,000以上、より好ましくは100,000以上、さらに好ましくは500,000以上、そして、好ましくは10,000,000以下、より好ましくは5,000,000以下、2,000,000以下である。なお、上記分子量は、以下の測定条件に基づいたゲル浸透クロマトグラフィーによって測定されたものである。
<測定条件>
カラム:α-M+α-M(カチオン)
溶出液:50mmоl/L LiCl、エタノール/水=3:7質量%混合液
流速:0.6mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI
【0018】
(A)成分がセルロース系高分子化合物であり、かつ、アルキル基により変性されている場合、増粘性の観点から、セルロースのグルコース環単位当たり、アルキル基で置換された水酸基の平均個数は、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、さらに好ましくは3.0以下、そして、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上、さらに好ましくは1.5以上である。
【0019】
(A)成分がセルロース系高分子化合物であり、かつ、ヒドロキシアルキル基により変性されている場合、増粘性の観点から、セルロースのグルコース環単位当たりに付加したヒドロキシアルキル基の平均モル数は、好ましくは1.00以下、より好ましくは0.70以下、さらに好ましくは0.40以下、そして、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.10以上である。
【0020】
エーテル系高分子化合物としては、アルキレングリコール、例えば、エチレングリコールの重合体又は共重合体が挙げられ、該化合物がエチレングリコール重合体の場合、親疎水性の観点から、重量平均分子量は、100,000以上10,000,000以下であることが好ましい。
【0021】
エーテル系高分子化合物の重量平均分子量は、市販品の場合は商品情報(カタログなど)に基づいた値を採用してよい。また、重量平均分子量が未知の場合でも、エーテル系高分子化合物の重量平均分子量は、水溶液の粘度と相関があるため、例えば、エーテル系高分子化合物がポリエチレンオキサイドの場合は、下記の方法でおよその値を求めることができる。
<ポリエチレンオキサイドの重量平均分子量>
測定対象のポリエチレンオキサイドから、下記基準表を参照して、各種濃度の水溶液(以下、サンプル水溶液という)を調製する。サンプル水溶液の粘度を、B型粘度計を用い、25℃、No.2ローター、30rpm、1分後の条件で測定する。得られた粘度から、該当する重量平均分子量を求める。なお、この基準表は、重量平均分子量が既知のポリエチレンオキサイドを用いて作成したものである。基準表中、PEOは、ポリエチレンオキサイドの意味である。
【0022】
その他の粉末増粘剤として、変性されたセルロース系高分子化合物によって修飾された、ベントナイトやモンモリロナイト等の粘土鉱物が挙げられる。
【0023】
(A)成分の平均粒径は、好ましくは10μm以上、より好ましくは50μm以上、そして、好ましくは5,000μm以下、より好ましくは1,000μm以下である。この平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-920(株式会社堀場製作所製)を用い、エタノール(エタノール(95)、富士フイルム和光純薬株式会社製)を分散媒として超音波照射後測定されたものである。
【0024】
(B)成分は、官能基としてカルボキシ基のみを有する多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アミノカルボン酸、アミノホスホン酸、アミノスルホン酸、アミノリン酸及びこれらの塩から選択される化合物である。(B)成分も粉末化合物であることが好ましい。
【0025】
(B)成分の平均粒径は、好ましくは10μm以上、より好ましくは50μm以上、そして、好ましくは5,000μm以下、より好ましくは1,000μm以下である。この平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-920(株式会社堀場製作所製)を用い、エタノール(エタノール(95)、富士フイルム和光純薬株式会社製)を分散媒として超音波照射後測定されたものである。
【0026】
官能基としてカルボキシ基のみを有する多価カルボン酸としては、こはく酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸等が挙げられる。
【0027】
ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、グリセリン酸、乳酸、グルコン酸、酒石酸、りんご酸、アスコルビン酸、クエン酸等が挙げられる。
【0028】
アミノカルボン酸としては、アミノ酸、例えば、α-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、6-アミノヘキサン酸、ペプチド等が挙げられる。アミノ酸は分子量が、75以上、更に85以上、そして、100,000以下、更に1,000以下のものが挙げられる。
【0029】
アミノホスホン酸としては、アミノアルキルホスホン酸等が挙げられる。
【0030】
アミノスルホン酸としては、2-アミノエタンスルホン酸等が挙げられる。
【0031】
アミノリン酸としては、O-ホスホリルアルカノールアミン等が挙げられる。
【0032】
(B)成分の前記化合物は、それぞれ、塩であってよく、塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属、アンモニウム塩などが挙げられる。アルカリ金属塩は、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。
【0033】
(B)成分としては、官能基としてカルボキシ基のみを有する多価カルボン酸、アミノカルボン酸及びこれらの塩から選択される化合物が好ましく、アミノカルボン酸及びその塩から選ばれる1種以上の化合物がより好ましく、アミノ酸及びその塩から選ばれる1種以上の化合物がより更に好ましい。
【0034】
(B)成分は、分散媒との親和性の観点から、デイビス法によるHLB値が好ましくは8以上である。(B)成分のHLBは、より好ましくは9以上、更に好ましくは10以上、そして、水硬性スラリー粘度の観点から、好ましくは3,000以下、より好ましくは1,500以下、更に好ましくは500以下である。以下、HLB値という場合、特記しない限りデイビス法によるHLB値を意味する。
【0035】
(B)成分が官能基としてカルボキシ基のみを有する多価カルボン酸及びその塩の場合、HLBは、好ましくは8以上、より好ましくは9以上、更に好ましくは10以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは75以下、更に好ましくは50以下である。
【0036】
(B)成分がヒドロキシカルボン酸及びその塩の場合、HLBは、好ましくは8以上、より好ましくは9以上、更に好ましくは10以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは70以下、更に好ましくは40以下である。
【0037】
(B)成分がアミノカルボン酸及びその塩の場合、HLBは、好ましくは8以上、より好ましくは9以上、更に好ましくは10以上、そして、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、更に好ましくは50以下である。
【0038】
(B)成分がアミノホスホン酸及びその塩の場合、HLBは、好ましくは8以上、より好ましくは16以上、更に好ましくは24以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは60以下である。
【0039】
(B)成分がアミノスルホン酸及びその塩の場合、HLBは、好ましくは8以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは40以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは60以下である。
【0040】
(B)成分がアミノリン酸及びその塩の場合、HLBは、好ましくは8以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは16以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは40以下である。
【0041】
本発明の水硬性組成物用粉末増粘剤組成物は、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量の合計100質量部に対する(A)成分の含有量の割合が好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは25質量部以上、より更に好ましくは35質量部以上、そして、好ましくは99.9質量部以下、より好ましくは95質量部以下、更に好ましくは90質量部以下、より更に好ましくは85質量部以下である。
【0042】
本発明の水硬性組成物用粉末増粘剤組成物は、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量の合計100質量部に対する(B)成分の含有量の割合が好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、より更に好ましくは10質量部以上、そして、好ましくは95質量部以下、より好ましくは85質量部以下、更に好ましくは75質量部以下、より更に好ましくは65質量部以下である。
【0043】
本発明の水硬性組成物用粉末増粘剤組成物は、(A)成分と(B)成分を合計で10質量%以上、更に30質量%以上、更に50質量%以上、そして、100質量%以下、更に90質量%以下、更に80質量%以下含有することができる。
【0044】
本発明の水硬性組成物用粉末増粘剤組成物は、更に(C)成分として粉末分散剤を含有することができる。
(C)成分は、水硬性組成物用粉末分散剤が好ましい。水硬性組成物用粉末分散剤としては、ナフタレンスルホン酸系粉末分散剤、メラミンスルホン酸系粉末分散剤、ポリカルボン酸系粉末分散剤、リン酸エステル系粉末分散剤等が挙げられ、好ましくは、ナフタレンスルホン酸系粉末分散剤、メラミンスルホン酸系粉末分散剤、ポリカルボン酸系粉末分散剤、リン酸エステル系粉末分散剤から選択される一種類以上であり、より好ましくはナフタレンスルホン酸系粉末分散剤、メラミンスルホン酸系粉末分散剤、ポリカルボン酸系粉末分散剤から選択される一種類以上であり、さらに好ましくは、ナフタレンスルホン酸系粉末分散剤、ポリカルボン酸系粉末分散剤から選択される一種類以上である。
【0045】
本発明の水硬性組成物用粉末増粘剤組成物が(C)成分を含有する場合、該組成物は、(C)成分を、例えば、1質量%以上、更に10質量%以上、更に20質量%以上、そして、90質量%以下、更に70質量%以下、更に50質量%以下含有することができる。
【0046】
本発明の水硬性組成物用粉末増粘剤組成物は、その他の任意成分として、粉末消泡剤、粉末収縮低減剤、粉末膨張剤、粉末効果促進剤、粉末効果遅延剤、粉末起泡剤、粉末防水材、粉末防錆剤等を含有することができる。
【0047】
本発明の水硬性組成物用粉末増粘剤組成物の平均粒径は、好ましくは10μm以上、より好ましくは50μm以上、そして、好ましくは5,000μm以下、より好ましくは1,000μm以下である。この平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-920(株式会社堀場製作所製)を用い、エタノール(エタノール(95)、富士フイルム和光純薬株式会社製)を分散媒として超音波照射後測定されたものである。
【0048】
[水硬性組成物用プレミックス]
本発明の水硬性組成物用プレミックスは、本発明の水硬性組成物用粉末増粘剤組成物と、水硬性粉体とを配合してなる。本発明の水硬性組成物用プレミックスは、本発明の水硬性組成物用粉末増粘剤と、水硬性粉体とを含有するものであってよい。本発明の水硬性組成物用プレミックスは、(A)成分と、(B)成分と、水硬性粉体とを配合してなる水硬性組成物用プレミックスであってよい。
本発明の水硬性組成物用プレミックスには、本発明の粉末増粘剤組成物で述べた事項を適宜適用することができる。(A)成分、(B)成分の具体例及び好ましい態様なども、本発明の粉末増粘剤組成物と同じである。
【0049】
本発明の水硬性組成物用プレミックスは、コンクリート、モルタルなどの水硬性組成物を製造するための混合物であって、予め本発明の水硬性組成物用粉末分散剤組成物と水硬性粉体とを混合して得られる。通常、本発明の水硬性組成物用プレミックスは、水と混合して用いられる。本発明の水硬性組成物用プレミックスは、例えば、モルタルプレミックスであってよい。
【0050】
本発明の水硬性組成物用プレミックスは、形態が粉末であることが好ましい。すなわち、本発明の水硬性組成物用プレミックスは、(A)成分と、(B)成分と、水硬性粉体とを所定条件で配合してなる水硬性組成物用粉末プレミックスであってよい。
【0051】
本発明の水硬性組成物は、水硬性スラリー用プレミックスであってよい。
【0052】
水硬性粉体は、水和反応により硬化する物性を有する粉体のことであり、セメント、石膏等が挙げられる。好ましくは普通ポルトランドセメント、ビーライトセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、耐硫酸塩セメント等のセメントである。また、セメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフュームなどのポソラン作用及び/又は潜在水硬性を有する粉体や、石粉(炭酸カルシウム粉末)等が添加された高炉スラグセメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等のセメントを用いることもできる。水硬性粉体が、セメントなどの水和反応により硬化する物性を有する粉体の他、ポゾラン作用を有する粉体、潜在水硬性を有する粉体及び石粉(炭酸カルシウム粉末)から選ばれる粉体を含む場合、本発明では、それらの量も水硬性粉体の量に算入する。また、水和反応により硬化する物性を有する粉体が、高強度混和材を含有する場合、高強度混和材の量も水硬性粉体の量に算入する。これは、水硬性粉体の質量が関係する質量部や質量比などにおいても同様である。
【0053】
本発明の水硬性組成物用プレミックスは、細骨材を含有することができる。細骨材としては、JIS A0203-2014中の番号2311で規定されるものが挙げられる。細骨材としては、川砂、陸砂、山砂、海砂、石灰砂、珪砂及びこれらの砕砂、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、軽量細骨材(人工及び天然)及び再生細骨材等が挙げられる。細骨材は種類の違うものを混合して使用しても良く、単一の種類のものを使用しても良い。本発明の水硬性組成物用プレミックスが細骨材を含有する場合、その含有量は、水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、そして、好ましくは90質量部以下、より好ましくは70質量部以下である。
【0054】
本発明の水硬性組成物用プレミックスは、水硬性粉体100質量部に対して、(A)成分を、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下含有する。
【0055】
本発明の水硬性組成物用プレミックスは、水硬性粉体100質量部に対して、(B)成分を、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下含有する。
【0056】
本発明の水硬性組成物用プレミックスが(C)成分を含有する場合、該組成物は、水硬性粉体100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、更に0.03質量部以上、更に0.05質量部以上、そして、5質量部以下、更に3質量部以下、更に1質量部以下含有することができる。
【0057】
[水硬性スラリーの製造方法]
本発明の水硬性スラリーの製造方法は、本発明の水硬性組成物用粉末増粘剤組成物と、水硬性粉体と、水とを混合する。本発明の水硬性スラリーの製造方法は、(A)成分と、(B)成分と、水硬性粉体と、水とを混合する水硬性スラリーの製造方法であってよい。
本発明の水硬性スラリーの製造方法には、本発明の粉末増粘剤組成物及び水硬性組成物用プレミックスで述べた事項を適宜適用することができる。(A)成分、(B)成分の具体例及び好ましい態様なども、本発明の粉末増粘剤組成物と同じである。また、水硬性粉体の具体例及び好ましい態様なども本発明の水硬性組成物用プレミックスと同じである。
【0058】
本発明の水硬性スラリーの製造方法では、水と水硬性粉体とを、水/水硬性粉体比が、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは200質量%以下、より好ましくは100質量%以下となるように混合する。ここで、水/水硬性粉体比(W/P)は、水と水硬性粉体の質量百分率(質量%)であり、水/水硬性粉体×100で算出される。水/水硬性粉体比は、水と水硬性粉体の量に基づいて算出される。水硬性粉体がセメントである場合、W/PがW/Cと表記される場合がある。なお、水硬性粉体が、セメント等の水和反応により硬化する物性を有する粉体の他、ポゾラン作用を有する粉体、潜在水硬性を有する粉体及び石粉(炭酸カルシウム粉末)から選ばれる粉体を含む場合、本発明では、前述の通り、それらの量も水硬性粉体の量に算入する。また、水和反応により硬化する物性を有する粉体が、高強度混和材を含有する場合、高強度混和材の量も水硬性粉体の量に算入する。これは、水硬性粉体の質量が関係する他の質量%等においても同様である。
【0059】
本発明の水硬性スラリーの製造方法では、水硬性スラリーの均一性の観点から、本発明の水硬性組成物用粉末増粘剤組成物と水とを、前記増粘剤組成物/水の質量比が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは1以下となるように混合する。
【0060】
本発明の水硬性スラリーの製造方法では、水硬性スラリーの均一性の観点から、本発明の水硬性組成物用粉末増粘剤組成物と水とを、該増粘剤組成物中の(B)成分/水の質量比が、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.1以下となるように混合する。
【0061】
本発明の水硬性スラリーの製造方法では、本発明の効果を損なわない範囲で任意成分を混合することができる。任意成分としては、例えば、前記した(C)成分、水溶性高分子化合物、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張材、防水剤、遅延剤、急結剤、起泡剤、発泡剤、防水剤、流動化剤、液体増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、硬化促進剤、防腐剤、消泡剤、防錆剤が挙げられる。
【0062】
本発明の水硬性スラリーの製造方法では、(A)成分、(B)成分及び水硬性粉体を予め混合して水硬性組成物用プレミックスを調製し、該プレミックスに水を加え更に混合して水硬性スラリーを製造することが好ましい。このプレミックスは、本発明の水硬性組成物用プレミックスであってよい。
【0063】
本発明により、本発明の水硬性組成物用粉末増粘剤組成物と、水硬性粉体と、水とを配合してなる水硬性スラリーが提供される。
また、本発明により、(A)成分と、(B)成分と、水硬性粉体と、水とを配合してなる水硬性スラリーが提供される。
また、本発明により、本発明の水硬性組成物用プレミックスと、水とを配合してなる水硬性スラリーが提供される。
【0064】
本発明により製造された水硬性スラリーは、例えば、モルタル、コンクリートが挙げられる。また、本発明により製造された水硬性スラリーは、ボックスカルバート(壁)用、橋梁下部工用、トンネル覆工用、海洋構造物用、PC構造物用、地盤改良用、UHPC用、セルフレベリング材用、グラウト用、寒中用等の何れの分野においても有用である。
【0065】
[硬化体の製造方法]
本発明の硬化体の製造方法は、本発明の方法で製造した水硬性スラリーを、型枠に充填して硬化させる。
本発明の硬化体の製造方法には、本発明の水硬性組成物用粉末増粘剤組成物、水硬性組成物用プレミックス及び水硬性スラリーの製造方法で述べた事項を適宜適用することができる。(A)成分、(B)成分の具体例及び好ましい態様なども、本発明の粉末増粘剤組成物と同じである。また、水硬性粉体の具体例及び好ましい態様なども本発明の水硬性組成物用プレミックス及び水硬性スラリーの製造方法と同じである。
【0066】
本発明では、本発明の製造方法で製造した水硬性スラリーを、未硬化の状態で型枠に充填し、必要に応じて養生を行い、硬化させる。型枠として、構造物の型枠、コンクリート製品用の型枠等が挙げられる。型枠への充填方法として、ミキサーから直接投入する方法、水硬性スラリーをポンプで圧送して型枠に導入する方法等が挙げられる。型枠に充填する際及び充填後には、充填性を向上させる観点から、振動を付加しても良い。また、セルフレベリング材用途では、上記に加えてペール缶等で水を加え調整した水硬性スラリーを、直接フロアに展開することができ、この際には、充填性を向上させる観点から、トンボ等を用いても良い。更に、グラウト材用途では、上記いずれかの方法により調製した水硬性スラリーを、対象箇所に直接充填することができる。
【0067】
本発明の硬化体の製造方法では、水硬性スラリーの養生の際、硬化を促進するために蒸気加熱等の追加的なエネルギーを加えても良い。本発明では、型枠に充填した水硬性スラリーの養生温度は、0℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましく、そして、50℃未満が好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下が更に好ましい。養生として室温での気中養生などを行うことができる。
【0068】
蒸気等の加熱養生をする場合でも、エネルギーを削減する観点から、加熱養生の時間は短いことが好ましい。加熱養生の時間は0時間であってもよい。つまり、加熱養生を行わなくても良い。
【0069】
硬化した水硬性スラリーは、型枠から脱型して水硬性スラリーの硬化体が得られる。得られた硬化体は、水硬性スラリーで述べた用途に用いることができる。
【0070】
本発明では、水硬性スラリーの調製で水硬性粉体に水を接触させてから脱型するまでの時間は、脱型に必要な強度を得る観点と製造サイクルを向上する観点から、例えば、4時間以上14日以下とすることができる。
【0071】
硬化体は、建材、例えば、外壁材、床材などであってよい。
本発明の一例として、本発明の水硬性組成物用粉末増粘剤組成物と、水硬性粉体と、水とを混合して水硬性スラリーを製造し、水硬性スラリーを型枠に充填して圧縮成形する外壁材又は床材の製造方法が挙げられる。
本発明の他の例として、(A)成分、(B)成分及び水硬性粉体を含有する粉末水硬性組成物と、水とを混合して水硬性スラリーを製造し、水硬性スラリーを型枠に充填して圧縮成形する外壁材又は床材の製造方法が挙げられる。
【実施例】
【0072】
<使用した成分>
以下に、実施例、比較例で用いた成分を示す。
〔(A)成分〕
(A-1)メトローズ 90SH-4000(信越化学工業株式会社製、濃度2質量%水溶液粘度:926mPa・s)
(A-2)メトローズ SM-4000(信越化学工業株式会社製、濃度2質量%水溶液粘度:586mPa・s)
(A-3)アスカクリーンD(信越化学工業株式会社製、濃度2質量%水溶液粘度:3,811mPa・s)
(A-4)メチルセルロース(7000-10000mPa・s、東京化成工業株式会社製、濃度2質量%水溶液粘度:7,099mPa・s)
(A-5)ヒドロキシエチルセルロース(4500-6500mPa・s、東京化成工業株式会社製、濃度2質量%水溶液粘度:5,329mPa・s)
(A-6)ヒドロキシプロピルセルロース(1000-4000mPa・s、東京化成工業株式会社製、濃度2質量%水溶液粘度:1,878mPa・s)
(A-7)ポリエチレングリコール 分子量2,000,000(富士フイルム和光純薬株式会社製、濃度2質量%水溶液粘度:2,844mPa・s)
(A)成分は何れも粉末形態であった。
【0073】
〔(B)成分〕
(B-1)グリコール酸ナトリウム HLB値:27.5(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(B-2)グルコン酸ナトリウム HLB値:33.2(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(B-3)(+)-酒石酸ナトリウム二水和物 HLB値:48.1(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(B-4)L(-)-りんご酸ナトリウム HLB値:46.2(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(B-5)L(+)-アスコルビン酸ナトリウム HLB値:14.6(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(B-6)マロン酸二ナトリウム HLB値:44.7(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(B-7)こはく酸二ナトリウム HLB値:44.3(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(B-8)クエン酸三ナトリウム HLB値:64.8(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(B-9)アジピン酸ナトリウム HLB値:43.3(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(B-10)グリシン HLB値:8.6(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(B-11)L(-)-プロリン HLB値:16.6(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(B-12)L-グルタミン酸ナトリウム HLB値:26.8(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(B-13)L(+)-アルギニン HLB値:15.2(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(B-14)コラーゲンペプチド、平均分子量3000、HLB値:111.2、酵素分解品(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(B-15)β-アラニン HLB値:17.6(東京化成工業株式会社製)
(B-16)6-アミノヘキサン酸 HLB値:16.1(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(B-17)グリシルグリシン HLB値:20.0(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(B-18)サルコシン HLB値:17.6(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(B-19)N-アセチルグリシン HLB値:8.2(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(B-20)硫酸水素2-アミノエチル HLB値:44.8(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(B)成分は何れも粉末形態であった。
【0074】
〔(C)成分〕
マイテイ 21PN(ポリカルボン酸系粉末分散剤、花王株式会社製、嵩比重0.60)
【0075】
<使用材料>
・水(和歌山市上水道水、比重1.00)
・普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製、比重3.16)
・早強ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製、比重3.14)
・山砂(京都市城陽産、表乾比重2.50)
【0076】
<実施例1及び比較例1>
(1)水硬性組成物用粉末プレミックスの調製方法
JIS R 5201に規定されるモルタルミキサーに、前記普通ポルトランドセメント312g、前記山砂700g、前記(A)成分、前記(B)成分及び前記(C)成分を表に示す添加量で加え、20秒間、62rpmの撹拌速度で撹拌し、粉末状態の水硬性組成物用プレミックスを調製した。
【0077】
(2)モルタルの調製方法
300mLのディスポーサブルカップに、110gの上水道水及び消泡剤として、消泡剤No.21(花王株式会社製)を上水道水100質量部に対して0.05質量部加え、混練水を調製した。続いて、前記混練水を(1)で調製した水硬性組成物用プレミックスに加え、JIS R 5201に規定されるモルタルミキサーで120秒間、62rpmの撹拌速度で撹拌し、水硬性スラリーであるモルタルを調製した。
【0078】
(3)モルタルの粘度測定方法
(2)の方法で調製したモルタルの粘度を、20℃下でB型粘度計(冶具#4)を用いて、30rpmの回転速度で測定し増粘性の指標とした。結果を表1に示す。
【0079】
【0080】
表中、(A)成分、(B)成分の質量比は、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量の合計100質量部に対する各成分の含有量の割合である(以下同様)。
また、表中、(A)成分、(B)成分、(C)成分の添加量は、セメント100質量部に対する質量部である(以下同様)。
【0081】
<実施例2及び比較例2>
(1)水硬性組成物用粉末プレミックスの調製方法
JIS R 5201に規定されるモルタルミキサーに、前記普通ポルトランドセメント700g、前記山砂700g、前記(A)成分、前記(B)成分及び前記(C)成分を表に示す添加量で加え、20秒間、62rpmの撹拌速度で撹拌し、粉末状態の水硬性組成物用プレミックスを調製した。
【0082】
(2)モルタルの調製方法
500mLのディスポーサブルカップに、350gの上水道水及び消泡剤として、消泡剤No.21(花王株式会社製)を上水道水100質量部に対して0.05質量部加え、混練水を調製した。続いて、前記混練水を(1)で調製した水硬性組成物用プレミックスに加え、JIS R 5201に規定されるモルタルミキサーで120秒間、62rpmの撹拌速度で撹拌し、水硬性スラリーであるモルタルを調製した。
【0083】
(3)モルタルの粘度測定方法
(2)の方法で調製したモルタルの粘度を、20℃下でビスコテスターを用いて、30rpmの回転速度で測定し増粘性の指標とした。結果を表2に示す。
【0084】
【0085】
表中、実施例1-1~1-28及び2-1は、比較例1-1~1-7及び2-1に比べ、高い粘度を示した。これは、本発明により、粉末増粘剤表面が改質され、水硬性粉体由来の金属イオンによる高イオン濃度水溶液への溶解性乃至水分散性が向上したことで、より効果的に増粘剤が水分子乃至水硬性粉体粒子に作用したためであると考察される。
【0086】
<実施例3及び比較例3>
(1)水硬性組成物用粉末プレミックスの調製方法
JIS R 5201に規定されるモルタルミキサーに、前記普通ポルトランドセメント700g、前記(A)成分及び前記(B)成分を表に示す添加量で加え、20秒間、62rpmの撹拌速度で撹拌し、粉末状態の水硬性組成物用プレミックスを調製した。
【0087】
(2)セメントペーストの調製方法
1,000mLのディスポーサブルカップに、700g又は350gの上水道水、及び消泡剤として、消泡剤No.21(花王株式会社製)を上水道水100質量部に対して0.05質量部加え、混練水を調製した。続いて、前記混練水を(1)で調製した水硬性組成物用プレミックスに加え、JIS R 5201に規定されるモルタルミキサーで60秒間、62rpmの撹拌速度で撹拌し、水硬性スラリーであるセメントペーストを調製した。表3には各実験における水粉体比を示す。
【0088】
(3)セメントペーストの粘度測定方法
(2)の方法で調製したモルタルの粘度を、20℃下でビスコテスターを用いて、30rpmの回転速度で測定し増粘性の指標とした。結果を表3に示す。
【0089】
【0090】
表中、実施例3-1及び3-2は、比較例3-1及び3-2に比べ、高い粘度を示した。これは、本発明により、粉末増粘剤表面が改質され、水硬性粉体由来の金属イオンによる高イオン濃度水溶液への溶解性乃至水分散性が向上したことで、より効果的に増粘剤が水分子乃至水硬性粉体粒子に作用したためであると考察される。