(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】水変色体用水付着具及び水変色体セット
(51)【国際特許分類】
B43K 23/12 20060101AFI20230502BHJP
B43K 1/12 20060101ALI20230502BHJP
B43K 8/02 20060101ALI20230502BHJP
A63H 33/22 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
B43K23/12 100
B43K1/12 B
B43K8/02 100
B43K8/02 130
A63H33/22 K
(21)【出願番号】P 2020522168
(86)(22)【出願日】2019-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2019020822
(87)【国際公開番号】W WO2019230623
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2018104281
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】染矢 優希
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-048737(JP,U)
【文献】中国実用新案第205573410(CN,U)
【文献】実開昭55-140486(JP,U)
【文献】特開2002-254017(JP,A)
【文献】特開2013-173328(JP,A)
【文献】特開2001-252131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
A63H 33/22
B43K 1/00-31/00
B43L 1/00-1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の前端に多孔質体または毛筆体よりなる水吐出部を備えた水変色体用水付着具であって、前記本体の水吐出部側外面にキャップが着脱自在に設けられ、前記キャップが、前記キャップ内部と外気とを連通させる水吐出部乾燥促進用の通気孔を備え
、
前記キャップの通気孔の内面または通気孔近傍の内面に、水吐出部側より滴下する水が外部に漏出することを阻止する漏出阻止部が設けられ、
前記漏出阻止部が、前記通気孔を包囲するように前記キャップの内面に突出形成された突出壁部よりなることを特徴とする水変色体用水付着具。
【請求項2】
本体の前端に多孔質体または毛筆体よりなる水吐出部を備えた水変色体用水付着具であって、前記本体の水吐出部側外面にキャップが着脱自在に設けられ、前記キャップが、前記キャップ内部と外気とを連通させる水吐出部乾燥促進用の通気孔を備え
、
前記キャップの通気孔の内面または通気孔近傍の内面に、水吐出部側より滴下する水が外部に漏出することを阻止する漏出阻止部が設けられ、
前記漏出阻止部が、前記通気孔を包囲するように前記キャップの内面に突出形成された突出壁部と、前記突出壁部を包囲または前記通気孔を塞ぐように前記キャップの内面に配置された吸液部材とからなることを特徴とする水変色体用水付着具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水変色体用水付着具及び水変色体セットに関する。詳細には、水変色体(即ち、水が付着した上層の箇所のみが透明化し、下層の基材の着色層の色が現出し、水分蒸発により元の状態に戻る性質を有するもの、例えば水筆紙、水変色シート等)に用いる水付着具及び水変色体セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、実開昭54-48737(特許文献1)には、内部に水が収容可能であり、一端に筆の穂が取付けられた、キャップを備えた携帯用毛筆が開示されている。 また、特開2008-149593(特許文献2)には、一対の側壁部が見開き状態に開閉可能なバッグであって、前記側壁部の少なくとも一方に、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質層を設けてなる水変色性描画用バッグ、及び該水変色性描画用バッグと水付着手段とからなる水変色性描画用バッグセットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
本明細書が引用する特許文献1は、実開昭54-48737であり、本明細書が引用する特許文献2は、特開2008-149593である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実開昭54-48737(特許文献1)の携帯用毛筆は、使用後に水吐出部側にキャップを装着した状態で保管すると、水を含浸する筆の穂にカビが発生するおそれがある。また、特開2008-149593(特許文献2)の水変色性描画用バッグセットは、携帯時に水付着手段に大きな振動や衝撃が加わった場合、水付着手段のペン先側から水が外部に漏出するおそれがある。
【0005】
本開示は、使用後にキャップ装着状態で保管したとしても、水吐出部にカビが発生することを抑えることができ、さらには、携帯時に水吐出部側から滴下した水が外部に漏出することを防止できうる水変色体用水付着具、及び水変色体セットを提供しようとするものである。
【0006】
尚、本開示で、「前」とは、本体において水吐出部側(ペン先側)、キャップにおいて閉鎖側(頂壁側)を指し、「後」とは、その反対側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、本体2の前端に多孔質体または毛筆体よりなる水吐出部3を備えた水変色体用水付着具であって、前記本体2の水吐出部側外面にキャップ6が着脱自在に設けられ、前記キャップ6が、前記キャップ6内部と外気とを連通させる水吐出部乾燥促進用の通気孔61を備えることを要件とする。
【0008】
本開示の水変色体用水付着具1は、本体2の水吐出部側外面にキャップ6が着脱自在に設けられ、キャップ6が、キャップ6内部と外気とを連通させる水吐出部乾燥促進用の通気孔61を備えることにより、使用後にキャップ6を水吐出部側に装着した状態で保管したとしても、通気孔61を介してキャップ6内部と外気とが連通されるため、水吐出部3の水分が蒸発して水吐出部3が乾燥状態に維持され、その結果、水吐出部3にカビが発生することを防止し、水吐出部3の良好な衛生状態が維持できうる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の水変色体用水付着具は、使用後にキャップ装着状態で保管したとしても、水吐出部にカビが発生することを抑え、水吐出部の良好な衛生状態が維持できるという効果を奏しうる。
本開示の水変色体セットは、使用後にキャップ装着状態で水変色体用水付着具を保管したとしても、水吐出部にカビが発生することを抑え、水吐出部の良好な衛生状態を維持できるという効果を奏しうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第1の実施の形態の水変色体用水付着具の縦断面図である。
【
図7】本開示の第2の実施の形態の水変色体用水付着具の縦断面図である。
【
図9】本開示の第3の実施の形態の水変色体用水付着具の縦断面図である。
【
図11】本開示の第4の実施の形態の水変色体用水付着具の縦断面図である。
【
図14】本開示の第5の実施の形態の水変色体用水付着具の縦断面図である。
【
図15】本開示の水変色体セットの使用時を示す外観図である。
【
図16】
図15の水変色体セットの携帯時を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施の形態>
本開示の第1の実施の形態を
図1乃至
図6に示す。
本実施の形態の水変色体用水付着具1は、ペン先3(水吐出部)と、該ペン先3が固着されたホルダー4と、該ホルダー4が着脱自在の容器5とを備えた本体2と、該本体2のペン先側に着脱自在に装着されるキャップ6とからなる。
【0012】
・ペン先
ペン先3は、合成樹脂繊維束の棒状の樹脂加工体(例えば、ポリエステル繊維またはポリアミド繊維の樹脂加工体)である。ペン先3は、筆記先端部として丸み形状を有する。また、ペン先3は、毛筆体(例えば、繊維の収束体)であってもよい。
【0013】
・容器
容器5は、先端に注入孔51が開口され且つ後端が閉塞された有底筒体である。容器5は、合成樹脂(例えばポリプロピレン樹脂)のブロー成形により得られる。容器5の前端部には、縮径部52が形成されるとともに、縮径部52とその後方の容器5外面部との境目には肩部54が形成される。容器5の縮径部52外面には、雄ネジ部53が形成される。容器5内には、水12が直接収容される。
【0014】
・ホルダー
ホルダー4は、前方の小径部と後方の大径部からなる外筒41と、該外筒41内面に前端外面が圧入または接着により固着される内筒42とからなる。外筒41及び内筒42は、合成樹脂(例えばポリプロピレン樹脂、ABS樹脂等)の射出成形により得られる。外筒41の大径部内面には、容器5の前端外周面の雄ネジ部53と螺合可能な雌ネジ部41aが形成される。外筒41の大径部内面の雌ネジ部41aの前方には環状段部41bが形成される。内筒42は、その後端に底部を備えた有底筒体であり、後部が外筒41後端より後方に突出されている。
【0015】
ホルダー4を容器5の注入孔51に装着すると、外筒41の内面の雌ネジ部41aが容器5の縮径部52外面の雌ネジ部41aに螺着され、且つ、外筒41の後端が容器5の肩部54と当接される。それと同時に、内筒42が、注入孔51より容器5内部に遊挿されるとともに、外筒41の内面の環状段部41bと注入孔51の開口端部とが環状に密接され、それにより水の外部への漏出が防止される。また、水を容器5内に補給(注入)する際、または水を容器5内から排出する際、ホルダー4を容器5から取り外すことにより、内筒42の環状段部41bと注入孔51の開口端部との密接状態が解除される。
【0016】
ホルダー4の内筒42の内面には、軸方向のリブ42aが複数本(例えば6本)、等間隔に配設される。リブ42aによってペン先3外面が圧入保持され、それにより、ペン先3の径方向のぐらつきが抑えられ、安定した筆記が可能となる。さらに、リブ42aによってペン先3外面が圧入保持されることにより、隣接するリブ42a相互間のペン先3外面と内筒42内面との間に、毛細管力を有する軸方向の隙間が形成される。この隙間は、容器5内の圧力上昇により溢出された水を一時的に保持し、水の過剰流出を防止する。
【0017】
内筒42は縮径された後端部を有し、内筒42の後端部の側壁には複数(例えば3個)の連通孔42bが開口される。連通孔42bを介して容器5内と内筒42内(即ちペン先3の後端部及び軸方向の隙間)とが連通される。内筒42の後端部より僅かに前方の内面には、内筒42の後端部側壁と連設するストッパ用リブ42cが設けられる。ストッパ用リブ42cとペン先3後端部とが当接している。
【0018】
外筒41の小径部の前端には前端孔が設けられる。前端孔から外部にペン先3前端が突出される。また、前端孔内面とペン先3の前端部外面との間には空気導入孔21が形成される。空気導入孔21は本体2の軸心より径方向に離れた位置に形成される。空気導入孔21を介して、本体2内の水がペン先3より吐出されることに伴い外部より空気が取り込まれる。
【0019】
ペン先3の前端部の後方の外面は、その外径が、前端孔の内径より僅かに大きく設定されており、それにより、ペン先3のホルダー4からの脱落が防止される。さらに、ペン先3の前端部の後方の外面は、外筒41の小径部内面の複数本(例えば6本)の保持リブ41cにより保持され、それにより、ペン先3外面と外筒41内面との間に空気通路が形成される。
【0020】
空気導入孔21は、外筒41内面とペン先3外面との間の空気通路、ペン先3外面と内筒42内面との間の軸方向の隙間、及び内筒42後端部側壁の連通孔42bを介して、容器5内部と連通される。空気導入孔21は、本体2の軸心(ホルダー4の軸心)より径方向に離れた位置に形成される。
【0021】
・キャップ
キャップ6は、後端が開口された円筒状の有底筒体であり、合成樹脂(例えばポリプロピレン)の成形体により得られる。キャップ6は、前端に形成された円板状の頂壁と、該頂壁より後方に一体に連設される円筒状の側壁とを備える。キャップ6の頂壁には、軸方向に通気孔61が貫設される。通気孔61はキャップ6の頂壁の軸心に形成される。キャップ6の頂壁の内面には、通気孔61を包囲するように円筒状の突出壁部62が形成される。突出壁部62は、キャップ6の頂壁内面より軸方向に後方に突出される。突出壁部62は、ペン先側から水が滴下しキャップ6内面に水が付着したとしも、その水が通気孔61から漏出されることを阻止する漏出阻止部となる。通気孔61の開口部は、例えば、円形状の場合、直径0.5mm~5mmの範囲に設定される。突出壁部62のキャップ6の頂壁内面からの軸方向突出長さは、例えば、1mm~20mmの範囲(好ましくは3mm~15mmの範囲)に設定される。キャップ6は、ペン先3を保護するものであり、ペン先3の汚れや損傷を防ぐ。
【0022】
また、キャップの内面の形状は、キャップ6を本体2のペン先側の外面(即ちホルダー4の外面)に装着する際にキャップ6の周方向の向きを配慮する必要がない点で、少なくとも円筒状が好ましいが、キャップの外面の形状は、任意の外観形状(例えば、人形、動物、乗物、食品、日用品、架空の生物、キャラクター等を模した玩具形象)にすることができる。
【0023】
キャップ6を本体2のペン先側の外面(即ちホルダー4の外面)に装着した際、キャップ6内面とホルダー4外面とが環状に密接嵌合される。それにより、キャップ6内面に付着した水が、ホルダー4外面とキャップ6内面との間から外部に漏出することを回避できる。
【0024】
・使用時
本実施の形態の水変色体用水付着具1は、使用する際、容器5内部に注入孔51より水を補給した後、ホルダー4を容器5の前端部に取り付け、筆記使用することができる。本実施の形態の水変色体用水付着具1は、使用後は、ホルダー4を容器5の前端部から取り外し、容器5の注入孔51から水を排出し、ホルダー4を再び容器5に取り付けた後、キャップ6を本体2の外面(ホルダー4の外面)に装着した状態にして保管する。また、本実施の形態の水変色体用水付着具1は、水を容器5内部に収容したままキャップ6を本体2外面(ホルダー4外面)に装着した状態で携帯することができる。
【0025】
本実施の形態の水変色体用水付着具1は、本体2のペン先側外面にキャップ6が着脱自在に設けられ、キャップ6が、キャップ6内部と外気とを連通させるペン先乾燥促進用の通気孔61を備えることにより、使用後にキャップ6をペン先側に装着した状態で保管したとしても、通気孔61を介してキャップ6内部と外気とが連通されるため、ペン先3の水分が蒸発してペン先3が乾燥状態に維持され、その結果、ペン先3にカビが発生することを防止し、ペン先3の良好な衛生状態が維持できる。
【0026】
本実施の形態の水変色体用水付着具1は、キャップ6の通気孔61近傍の内面に、ペン先側より滴下する水が外部に漏出することを阻止する漏出阻止部が設けられることにより、もし、キャップ6をペン先側に装着した状態で水付着具を携帯した際に大きな衝撃や振動を受けた場合、キャップ6内部にペン先側より水が滴下し、その滴下した水がキャップ6内面に付着したとしても、漏出阻止部により、前記滴下した水が通気孔61からキャップ6外部に漏出することを回避でき、さらに、キャップ6内面に付着した水が通気孔61を介して迅速に蒸発されて消失されるため、キャップ6を本体2から取り外した際にキャップ6内面に付着した水が外部に漏出するおそれがない。
【0027】
本実施の形態の水変色体用水付着具1は、前記漏出阻止部が、前記通気孔61を包囲するように前記キャップ6の内面に突出形成された突出壁部62よりなることにより、ペン先側から滴下した水がキャップ6内面に付着し、キャップ6内面に付着した水がキャップ6内面を通気孔61の方向に流れたとしても、突出壁部62が障壁となり、通気孔61まで水が流出することを阻止でき、通気孔61からキャップ6外部に水が漏出することを確実に回避できる。
【0028】
本実施の形態の水変色体用水付着具1は、キャップ6を本体2のペン先側に装着した状態において、空気導入孔21の軸方向の仮想延長線上に常にキャップ6の頂壁が存在し通気孔61が存在しないことにより、もし、キャップ6をペン先側に装着した状態で大きな衝撃や振動が加わった場合に、本体2内部の水がペン先側の空気導入孔21よりキャップ6内部に漏出したとしても、その漏出した水がキャップ6内面に付着し、通気孔61から直接外部に漏出することを回避できる。
【0029】
<第2の実施の形態>
本開示の第2の実施の形態を
図7及び
図8に示す。
本実施の形態は、第1の実施の形態にキャップの他の形態を採用したものである。
【0030】
本実施の形態のキャップ6は、後端が開口された円筒状の有底筒体であり、合成樹脂の成形体により得られる。キャップ6は、前端に形成された円板状の頂壁と、該頂壁より後方に一体に連設される円筒状の側壁とを備える。キャップ6の頂壁には、軸方向に通気孔61が貫設される。通気孔61はキャップ6の頂壁の軸心に形成される。キャップ6の頂壁の内面には、吸液部材63が通気孔61を覆うように配置される。即ち、吸液部材63は通気孔61を塞ぐように且つ通気孔61を包囲するように配置される。吸液部材63は、キャップ6の頂壁内面に接触され且つ側壁内面に圧入される。吸液部材63は、円柱状または円板状の多孔質材料(例えば、繊維加工体、連続気孔発泡体等)からなる。吸液部材63が、ペン先側から滴下した水が通気孔61より外部に漏出することを阻止する漏出阻止部となる。
【0031】
本実施の形態は、漏出阻止部が、通気孔61を包囲するように且つ通気孔61を塞ぐようにキャップ6の内面に配置された吸液部材63からなることにより、ペン先側から滴下した水がキャップ6内面に付着し、キャップ6内面に付着した水がキャップ6内面を通気孔61の方向に流れたとしても、その水が吸液部材63で保持され、通気孔61からキャップ6外部に水が漏出することを確実に回避できる。
【0032】
尚、本実施の形態における他の構成及び作用効果は第1の実施の形態と共通であるため、説明は省略する。
【0033】
<第3の実施の形態>
本開示の第3の実施の形態を
図9及び
図10に示す。
本実施の形態は、第1の実施の形態にキャップの他の形態を採用したものである。
【0034】
キャップ6は、後端が開口された円筒状の有底筒体であり、合成樹脂の成形体により得られる。キャップ6は、前端に形成された円板状の頂壁と、該頂壁より後方に一体に連設される円筒状の側壁とを備える。キャップ6の頂壁には、軸方向に通気孔61が貫設される。通気孔61はキャップ6の頂壁の軸心に形成される。キャップ6の頂壁の内面には、通気孔61を包囲するように円筒状の突出壁部62が形成される。突出壁部62は、キャップ6の頂壁内面より軸方向に後方に突出される。突出壁部62は、ペン先側から水が滴下しキャップ6内面に水が付着したとしも、その水が通気孔61から漏出されることを阻止する漏出阻止部となる。
【0035】
また、キャップ6の頂壁の内面の突出壁部62の周囲には突出壁部62を包囲するように吸液部材63が配置される。吸液部材63は、環状の多孔質材料(例えば、繊維加工体、連続気孔発泡体等)からなる。吸液部材63は、キャップ6の頂壁内面に接触され且つ突出壁部62外面とキャップ6側壁内面との間に圧入される。吸液部材63は、ペン先側から滴下した水が通気孔61から漏出されることを阻止する漏出阻止部となる。
【0036】
本実施の形態は、漏出阻止部が、通気孔61を包囲するようにキャップ6の内面に突出形成された突出壁部62と、突出壁部62を包囲するようにキャップ6の内面に配置された吸液部材63とからなることにより、ペン先側から滴下した水がキャップ6内面に付着し、キャップ6内面に付着した水がキャップ6内面を通気孔61の方向に流れたとしても、突出壁部62が障壁となり、通気孔61へ水が流出することを阻止でき、且つ、水が吸液部材63で保持されるため、通気孔61に水が流出することを阻止でき、通気孔61からキャップ6外部に水が漏出することを確実に回避できる。
【0037】
尚、本実施の形態における他の構成及び作用効果は第1の実施の形態と共通であるため、説明は省略する。
【0038】
<第4の実施の形態>
本開示の第4の実施の形態を
図11乃至
図13に示す。
本実施の形態は、第1の実施の形態にキャップの他の形態を採用したものである。
【0039】
キャップ6は、後端が開口された円筒状の有底筒体であり、合成樹脂の成形体により得られる。キャップ6は、前端に形成された円板状の頂壁と、該頂壁より後方に一体に連設される円筒状の側壁とを備える。キャップ6の頂壁には、軸方向に通気孔61が貫設される。通気孔61はキャップ6の頂壁の中央に形成される。通気孔61は、毛細管力を有する間隙部64(スリット)により構成される。スリットの間隙寸法は、例えば、0.1mm~3mmに設定される。間隙部64は、ペン先側から水が滴下しキャップ6内面に水が付着し、通気孔61に流れたとしも、その水を保持し、その水が通気孔61から漏出されることを阻止する漏出阻止部となる。
【0040】
本実施の形態は、前記漏出阻止部が、前記キャップ6の通気孔61の内面または通気孔61近傍の内面に一体に形成される毛細管力を有する間隙部64よりなることにより、水吐出部側から滴下した水がキャップ6内面に付着し、キャップ6内面に付着した水がキャップ6内面を通気孔61の方向に流れたとしても、その水が間隙部64で保持され、通気孔61からキャップ6外部に水が漏出することを確実に回避できる。
【0041】
尚、本実施の形態における他の構成及び作用効果は第1の実施の形態と共通であるため、説明は省略する。
【0042】
<第5の実施の形態>
本開示の第5の実施の形態を
図14に示す。
【0043】
本実施の形態の水変色体用水付着具1は、ペン先3(水吐出部)を備えた本体2と、該本体2のペン先側に着脱自在に装着されるキャップ6とからなる。さらに、本体2は、ペン先3と、該ペン先3を保持するペン先保持部材7と、該ペン先保持部材7が前端部に固着される軸筒8と、ペン先3後端と前端が接続され且つ軸筒8内部に収容される水吸収体9と、該水吸収体9の後端と当接し且つ軸筒2の後端部に固着される尾栓10とからなる。
【0044】
軸筒8は、合成樹脂(例えばポリプロピレン等)の射出成形により得られる円筒体であり、軸筒8の前端開口部には、ペン先3がペン先保持部材7を介して圧入固着され、軸筒8の後端開口部には、尾栓10が圧入固着される。また、軸筒8内部には、水吸収体9が収容される。
【0045】
ペン先3は、合成樹脂繊維の樹脂加工体(例えばアクリル繊維の棒状の樹脂加工体であって、前端を尖頭状またはドーム状に研削加工したもの)が採用される。また、ペン先3は、毛筆体(例えば、繊維の収束体)であってもよい。また、水吸収体9は、繊維束加工体(例えば、ポリエステル繊維束等の合成樹脂繊維束の外周面を、合成樹脂フィルムで被覆したもの)が採用される。
【0046】
軸筒8内部の前部には、軸方向に延びる複数本(具体的には4本)の縦リブ81が一体に設けられる。縦リブ81により、軸筒8内部に収容された水吸収体9の前部外周面が径方向内方に圧接保持される。また、縦リブ81の径方向に水吸収体9を圧接保持する箇所よりも前方には、段部82が形成され、段部82により水吸収体9の前端が軸方向に当接支持される。
【0047】
尾栓10は、合成樹脂(例えばポリエチレン等)の射出成形により得られる円筒体である。尾栓10は、水吸収体9の後端と軸方向に当接する。尾栓10は軸筒8後端開口部内面に圧入固着される。尾栓10の前端部は水吸収体9の後端が軸方向に当接支持される。尾栓10の軸心には、水吸収体9と外気とを連通する空気導入孔10aが軸方向に貫設される。
【0048】
ペン先保持部材7は、合成樹脂(例えばポリアセタール等)の射出成形により得られる筒状体である。ペン先保持部材7内部にはペン先取付孔が貫設され、ペン先取付孔には、ペン先3が圧入保持される。また、ペン先保持部材7の外面は、軸筒8の前端開口部内面に圧入固着される。また、ペン先保持部材7の外面には、軸方向の2本の縦溝が対向位置に設けられ、それにより、軸筒8の前端開口部内面に圧入固着された後、軸筒8の前端開口部内面とペン先保持部材7外面との間に空気導入孔21を形成することができる。空気導入孔21を介して外気を本体2内部に取り込むことが可能である。ペン先側の空気導入孔21は、本体2の軸心から径方向に離れた位置に開口される。
【0049】
・キャップ
軸筒8のペン先側の外面には、縮径部83が形成され、該縮径部83にキャップ6が着脱自在に装着される。
【0050】
キャップ6は、後端が開口された円筒状の有底筒体であり、合成樹脂の成形体により得られる。キャップ6は、前端に形成された円板状の頂壁と、該頂壁より後方に一体に連接される円筒状の側壁とを備える。キャップ6の頂壁には、軸方向に通気孔61が貫設される。通気孔61はキャップ6の頂壁の軸心に形成される。キャップ6の頂壁の内面には、通気孔61を包囲するように円筒状の突出壁部62が形成される。突出壁部62は、キャップ6の頂壁内面より軸方向に後方に突出される。突出壁部62は、ペン先側から水が滴下しキャップ6内面に水が付着したとしも、その水が通気孔61から漏出されることを阻止する漏出阻止部となる。キャップ6は、ペン先3を保護するものであり、ペン先3の汚れや損傷を防ぐ。
【0051】
キャップ6を本体2のペン先側の外面(即ち軸筒8の縮径部83外面)に装着した際、キャップ6内面と縮径部83外面とが環状に密接嵌合される。それにより、キャップ6内面に付着した水が、縮径部83外面とキャップ6内面との間から外部に漏出することを回避できる。
【0052】
・使用時
本実施の形態の水変色体用水付着具1は、使用する際、容器5内部にペン先側の空気導入孔21または尾栓10の空気導入孔10aより水を補給し水吸収体9に含浸させた後、ペン先3より吐出される水により筆記使用することができる。本実施の形態の水変色体用水付着具1は、使用後は、キャップ6を本体2のペン先側外面(縮径部83外面)に装着した状態にして保管する。また、本実施の形態の水変色体用水付着具1は、キャップ6を本体2のペン先側外面(縮径部83外面)に装着した状態で携帯することができる。
【0053】
本実施の形態の水変色体用水付着具1は、本体2のペン先側外面にキャップ6が着脱自在に設けられ、キャップ6が、キャップ6内部と外気とを連通させるペン先乾燥促進用の通気孔61を備えることにより、使用後にキャップ6をペン先側に装着した状態で保管したとしても、通気孔61を介してキャップ6内部と外気とが連通されるため、ペン先3の水分が蒸発してペン先3が乾燥状態に維持され、その結果、ペン先3にカビが発生することを防止し、ペン先3の良好な衛生状態が維持できる。
【0054】
本実施の形態の水変色体用水付着具1は、キャップ6の通気孔61近傍の内面に、ペン先側より滴下する水が外部に漏出することを阻止する漏出阻止部が設けられることにより、もし、キャップ6をペン先側に装着した状態で水付着具を携帯した際に大きな衝撃や振動を受けた場合、キャップ6内部にペン先側より水が滴下し、その滴下した水がキャップ6内面に付着したとしても、漏出阻止部により、前記滴下した水が通気孔61からキャップ6外部に漏出することを回避でき、さらに、キャップ6内面に付着した水が通気孔61を介して迅速に蒸発されて消失されるため、キャップ6を本体2から取り外した際にキャップ6内面に付着した水が外部に漏出するおそれがない。
【0055】
本実施の形態の水変色体用水付着具1は、漏出阻止部が、通気孔61を包囲するようにキャップ6の内面に突出形成された突出壁部62よりなることにより、ペン先側から滴下した水がキャップ6内面に付着したとしても、突出壁部62により、キャップ6内面に付着した水がキャップ6内面を通気孔61の方向に流れても通気孔61まで水が流出することが阻止され、通気孔61からキャップ6外部に水が漏出することを確実に回避できる。
【0056】
本実施の形態の水変色体用水付着具1は、キャップ6を本体2のペン先側に装着した状態において、空気導入孔21の軸方向の仮想延長線上に常にキャップ6の頂壁が存在し通気孔61が存在しないことにより、もし、キャップ6をペン先側に装着した状態で大きな衝撃や振動が加わった場合に、キャップ6内部に本体2内部の水がペン先側の空気導入孔21より漏出したとしても、その漏出した水がキャップ6内面に付着し、通気孔61から直接外部に漏出することを回避できる。
【0057】
本実施の形態は、これ以外にも、第2の実施の形態のキャップ、第3の実施の形態のキャップまたは第4の実施の形態のキャップを採用することもできる。第2の実施の形態のキャップ、第3の実施の形態のキャップまたは第4の実施の形態のキャップを採用した場合、第2の実施の形態、第3の実施の形態または第4の実施の形態に記載した作用効果を奏する。
【0058】
<第6の実施の形態>
本開示の第6の実施の形態を
図15及び
図16に示す。
本実施の形態は、第1乃至第5の実施の形態の何れかの水変色体用水付着具1と、水変色体11とからなる水変色体セットである。本実施の形態で採用された水変色体用水付着具1の構成及び作用効果は、第1乃至第5の実施の形態と共通のため説明を省略する。
【0059】
水変色体11は、水変色体用水付着具1の水吐出部3で筆記または水吐出部3が接触することにより水が付着した上層の箇所のみが透明化して下層の着色層の色が現出され、水分蒸発により元の状態に戻るものである。具体的には、水変色体11は、主に、多孔質層11bと、多孔質層11bが内面に形成された板状またはシート状の基材11aとからなる。基材11aは長方形形状を有し、基材11aの長辺を2等分する中心線を挟んで2箇所に多孔質層11bが形成される。基材11aはその中心線を介して二つ折りに開閉自在に重ね合わせ可能である。基材11aの長手方向の両端部にはU字状に帯状の取っ手11cが形成され、携帯時に取っ手11cを把持することができる。
【0060】
基材11aの外面には、保持部11dが形成され、携帯時または非使用時、保持部11dで水変色体用水付着具1を保持することができる。保持部11dは、例えば、筒状、ポケット状に形成される。
【0061】
基材11aの長手方向の一端部には、折り畳んで重ね合わせた基材11aが開かないように係止するための係止部11eが形成される。係止部11eは、基材11aの他端部の被係止部と係止可能である。係止部11eと被係止部の係止手段としては、例えば、面ファスナー、ボタンとボタン孔となるもの、凸部と凹部とからなるもの等が挙げられる。
【0062】
本実施の形態の水変色体セットは、前記構成により、キャップ装着状態で水付着具を保管したとしても、ペン先3(水吐出部)にカビが発生することを抑え、ペン先3(水吐出部)の良好な衛生状態を維持でき、且つ、携帯時に水が外部に漏出することを防止できる。
【0063】
本願の第1の開示は、本体2の前端に多孔質体または毛筆体よりなる水吐出部3を備えた水変色体用水付着具であって、前記本体2の水吐出部側外面にキャップ6が着脱自在に設けられ、前記キャップ6が、前記キャップ6内部と外気とを連通させる水吐出部乾燥促進用の通気孔61を備えることを要件とする。
【0064】
前記第1の開示の水変色体用水付着具1は、本体2の水吐出部側外面にキャップ6が着脱自在に設けられ、キャップ6が、キャップ6内部と外気とを連通させる水吐出部乾燥促進用の通気孔61を備えることにより、使用後にキャップ6を水吐出部側に装着した状態で保管したとしても、通気孔61を介してキャップ6内部と外気とが連通されるため、水吐出部3の水分が蒸発して水吐出部3が乾燥状態に維持され、その結果、水吐出部3にカビが発生することを防止し、水吐出部3の良好な衛生状態が維持できる。なお、前記通気孔61は、キャップ6の壁部の任意の位置に形成され、例えば、キャップ6の頂壁に軸方向に貫設される構成、キャップ6の側壁に径方向に貫設される構成が挙げられる。前記通気孔61の個数は、単一または複数の何れであってもよい。前記通気孔6の開口部の形状は、円、楕円、多角形、スリット形状等が挙げられる。なお、前記本体2は、本体2内に水を収容して本体2内の水を水吐出部3に供給するタイプ、または、本体2内に水を収容せず外部より水吐出部3に補給した水を水吐出部3に含浸させるタイプが挙げられる。前記水吐出部3を構成する多孔質体は、例えば、繊維の樹脂加工体、繊維束の熱融着多孔体、フェルト加工体、合成樹脂の連続気孔発泡体が挙げられ、前記水吐出部3を構成する毛筆体は、例えば、繊維(例えば、合成繊維、天然繊維、獣毛等)の収束体が挙げられる。なお、本開示の水変色体用水付着具は、例えば、多孔質体または毛筆体からなる水吐出部(ペン先)を備える筆記具、多孔質体または毛筆体からなる水吐出部(ペン先)を備える塗布具、及び多孔質体からなる水吐出部(印面)を備えるスタンプ具が挙げられる。
【0065】
本願の第2の開示は、前記第1の開示の水変色体用水付着具において、前記キャップ6の通気孔61の内面または通気孔61近傍の内面に、水吐出部側より滴下する水が外部に漏出することを阻止する漏出阻止部が設けられることを要件とする。
【0066】
前記第2の開示の水変色体用水付着具1は、キャップ6の通気孔61の内面または通気孔61近傍の内面に、水吐出部側より滴下する水が外部に漏出することを阻止する漏出阻止部が設けられることにより、もし、キャップ6を水吐出部側に装着した状態で水付着具を携帯した際に大きな衝撃や振動を受けた場合、水吐出部側より水がキャップ6内部に滴下し、その滴下した水がキャップ6内面に付着したとしても、漏出阻止部により、前記滴下した水が通気孔61からキャップ6外部に漏出することを回避でき、さらに、キャップ6内面に付着した水が通気孔61を介して迅速に蒸発されて消失されるため、キャップ6を本体2から取り外した際にキャップ6内面に付着した水が外部に漏出するおそれがない。なお、漏出阻止部は、キャップ6内面に付着した水が通気孔61を介して外部に漏出することを阻止するものであればよく、例えば、突出部、溝部または凹凸部等による障壁機能を有するもの、毛細管力を備えた毛細間隙による吸液機能を有するもの等が挙げられる。
【0067】
本願の第3の開示は、前記第2の開示の水変色体用水付着具において、前記漏出阻止部が、前記通気孔61を包囲するように前記キャップ6の内面に突出形成された突出壁部62よりなることを要件とする。
【0068】
前記第3の開示の水変色体用水付着具1は、前記漏出阻止部が、前記通気孔61を包囲するように前記キャップ6の内面に突出形成された突出壁部62よりなることにより、水吐出部側から滴下した水がキャップ6内面に付着し、キャップ6内面に付着した水がキャップ6内面を通気孔61の方向に流れたとしても、突出壁部62が障壁となり、通気孔61まで水が流出することを阻止でき、通気孔61からキャップ6外部に水が漏出することを確実に回避できる。なお、前記突出壁部62は、通気孔61を包囲するように形成されればよく、例えば、横断面環状の筒状突出部、一部に切欠を有する横断面C字状の筒状突出部、または複数の分散状突出部等が挙げられる。
【0069】
本願の第4の開示は、前記第2の開示の水変色体用水付着具において、前記漏出阻止部が、前記通気孔61を包囲または塞ぐように前記キャップ6の内面に配置された吸液部材63よりなることを要件とする。
【0070】
前記第4の開示の水変色体用水付着具1は、前記漏出阻止部が、前記通気孔61を包囲または塞ぐように前記キャップ6の内面に配置された吸液部材63よりなることにより、水吐出部側から滴下した水がキャップ6内面に付着し、キャップ6内面に付着した水がキャップ6内面を通気孔61の方向に流れたとしても、その水が吸液部材63で保持され、通気孔61からキャップ6外部に水が漏出することを確実に回避できる。前記吸液部材63は、水が保持可能な毛細間隙を有する部材であればよく、例えば、繊維加工体、連続気孔発泡体またはメッシュ材料等の多孔質材料が挙げられる。また、前記吸液部材63は、前記通気孔61を包囲するようキャップ6の内面に配置され、且つ、前記通気孔61を塞ぐようにキャップ6の内面に配置される構成でもよい。
【0071】
本願の第5の開示は、前記第2の開示の水変色体用水付着具において、前記漏出阻止部が、前記通気孔61を包囲するように前記キャップ6の内面に突出形成された突出壁部62と、前記突出壁部62を包囲または前記通気孔61を塞ぐように前記キャップ6の内面に配置された吸液部材63とからなることを要件とする。
【0072】
前記第5の開示の水変色体用水付着具1は、前記漏出阻止部が、前記通気孔61を包囲するように前記キャップ6の内面に突出形成された突出壁部62と、前記突出壁部62を包囲または前記通気孔61を塞ぐように前記キャップ6の内面に配置された吸液部材63とからなることにより、水吐出部側から滴下した水がキャップ6内面に付着し、キャップ6内面に付着した水がキャップ6内面を通気孔61の方向に流れたとしても、突出壁部62が障壁となり、通気孔61まで水が流出することを阻止でき、且つ、水が吸液部材63で保持されるため、通気孔61に水が流出することが阻止され、通気孔61からキャップ6外部に水が漏出することを確実に回避できる。
【0073】
なお、前記突出壁部62は、通気孔61を包囲するように形成されればよく、例えば、横断面環状の筒状突出部、一部に切欠を有する横断面C字状の筒状突出部、または複数の分散状突出部等が挙げられる。前記吸液部材63は、水が保持可能な毛細間隙を有する部材であればよく、例えば、繊維加工体、連続気孔発泡体またはメッシュ材料等の多孔質材料が挙げられる。また、前記吸液部材63は、前記通気孔61を包囲するようキャップ6の内面に配置され、且つ、前記通気孔61を塞ぐようにキャップ6の内面に配置される構成でもよい。
【0074】
本願の第6の開示は、前記第2の開示の水変色体用水付着具において、前記漏出阻止部が、前記キャップ6の通気孔61の内面または通気孔61近傍の内面に一体に形成される毛細管力を有する間隙部64よりなることを要件とする。
【0075】
前記第6の開示の水変色体用水付着具1は、前記漏出阻止部が、前記キャップ6の通気孔61の内面または通気孔61近傍の内面に一体に形成される毛細管力を有する間隙部64よりなることにより、水吐出部側から滴下した水がキャップ6内面に付着し、キャップ6内面に付着した水がキャップ6内面を通気孔61の方向に流れたとしても、その水が間隙部64で保持され、通気孔61からキャップ6外部に水が漏出することを確実に回避できる。前記毛細管力を有する間隙部64は、水が保持可能な毛細間隙であり、例えば、孔、溝、スリットが挙げられる。間隙部64は、少なくともキャップ6内面に開口する構成であり、さらに、キャップ6外面に開口される構成(即ちキャップ内部と外部との間を貫通される構成)でもよい。また、通気孔61自体が毛細管力を有する間隙部64である構成でもよい。
【0076】
本願の第7の開示は、前記第1乃至第6の開示の水変色体用水付着具において、前記本体2内部に水が収容可能に構成され、前記水吐出部3より前記本体2内部の水が吐出可能に構成され、前記本体2の水吐出部側に、水吐出部3からの水の吐出に応じて本体2内部に空気を取り込むための空気導入孔21が形成され、前記キャップ6を前記本体2の水吐出部側に装着した状態において、前記空気導入孔21の軸方向の仮想延長線上に前記通気孔61が存在しないことを要件とする。
【0077】
前記第7の開示の水変色体用水付着具1は、前記キャップ6を前記本体2の水吐出部側に装着した状態において、前記空気導入孔21の軸方向の仮想延長線上に前記通気孔61が存在しないことにより、もし、キャップ6を水吐出部側に装着した状態で大きな衝撃や振動が加わった場合に、本体2内部の水が水吐出部側の空気導入孔21よりキャップ6内部に漏出したとしても、その漏出した水がキャップ6内面に付着し、通気孔61から直接外部に漏出することを回避できる。
【0078】
本願の第8の開示の水変色体セットは、前記第1乃至第7の何れかの開示の水変色体用水付着具1と、前記水変色体用水付着具1の水吐出部3が接触することにより水が付着した上層の箇所のみが透明化して下層の着色層の色が現出され、水分蒸発により元の状態に戻る水変色体11とからなることを要件とする。
【0079】
前記第8の開示の水変色体セットは、前記構成により、キャップ装着状態で水変色体用水付着具1を保管したとしても、水吐出部3にカビが発生することが抑えられ、水吐出部3の良好な衛生状態を維持でき、また、携帯時に水が外部に漏出することを防止できる。
【0080】
前記水変色体は、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質層を備える。
【0081】
前記水変色体の基材は、樹脂、布帛、皮革、合皮等、特に問わず使用できるが、柔軟性に富み手触りがよいことから、表面に布帛やポリウレタン樹脂等の軟質樹脂を用いたり、内部に発泡体等を収容した構成とすることが好ましい。
【0082】
前記多孔質層は、低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた層であり、筆記面を形成するものである。
前記低屈折率顔料としては、珪酸及びその塩、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらは屈折率が1.4~1.8の範囲にあり、液状組成物を吸液すると良好な透明性を示すものである。
なお、前記珪酸の塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカリウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカリウム等が挙げられる。
前記低屈折率顔料の粒径は特に限定されるものではないが、0.03~10.0μmのものが好適に用いられる。
又、前記低屈折率顔料は二種以上を併用することもできる。
尚、好適に用いられる低屈折率顔料としては珪酸が挙げられる。
前記珪酸は、乾式法により製造させる珪酸であってもよいが、湿式法により製造される珪酸(以下、湿式法珪酸と称する)が特に効果的であり、実用性を満たす。
この点を以下に説明する。
珪酸は非晶質の無定形珪酸として製造され、その製造方法により、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素の熱分解等の気相反応を用いる乾式法によるもの(以下、乾式法珪酸と称する)と、ケイ酸ナトリウム等の酸による分解等の液相反応を用いる湿式法によるものとに大別されるが、本開示の意図する多孔質層として機能させるためには、湿式法珪酸が最適である。
これは、乾式法珪酸と湿式法珪酸とでは構造が異なり、前記乾式法珪酸は珪酸が密に結合した三次元構造を形成するのに対して、湿式法珪酸は、珪酸が縮合して長い分子配列を形成した、所謂、二次元構造部分を有している。
従って、前記乾式法珪酸と比較して分子構造が粗になるため、湿式法珪酸を多孔質層に適用した場合、乾式法珪酸を用いる系と比較して乾燥状態における光の乱反射性に優れ、よって、常態での隠蔽性が大きくなるものと推察される。
又、前記本開示の多孔質層においては、水を吸液させるものであるから、湿式法珪酸は乾式法珪酸に比べて粒子表面にシラノール基として存在する水酸基が多く、親水性の度合いが大であり、好適に用いられる。
尚、前記多孔質層の常態での隠蔽性と吸液状態での透明性を調整するために、湿式法珪酸と共に、他の汎用の低屈折率顔料を併用することもできる。
【0083】
前記多孔質層中の湿式法珪酸は、粒子径、比表面積、吸油量等の性状に左右されるが、常態での隠蔽性と吸液状態での透明性を共に満足するためには、塗布量が1g/m2~30g/m2であることが好ましく、より好ましくは、5g/m2~20g/m2である。1g/m2未満では、常態で十分な隠蔽性を得ることが困難であり、又、30g/m2を越えると吸液時に十分な透明性を得ることが困難である。
前記珪酸の粒径は特に限定されるものではないが、0.03~10.0μmのものが好適に用いられる。
前記珪酸はバインダー樹脂を結合剤として含むビヒクル中に分散され、基材に塗布した後、揮発分を乾燥させて多孔質層を形成する。
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン-ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル-ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
前記珪酸とこれらのバインダー樹脂の混合比率は、珪酸の種類及び性状に左右されるが、好ましくは、珪酸1重量部に対してバインダー樹脂固形分0.5~2重量部であり、より好ましくは、0.8~1.5重量部である。珪酸1重量部に対してバインダー樹脂固形分が0.5重量部未満の場合には、前記多孔質層の実用的な皮膜強度を得ることが困難であり、2重量部を越える場合には、前記多孔質層内部への水の浸透性が悪くなる。
前記多孔質層は、従来より公知の一般的な塗膜と比較して着色剤に対するバインダー樹脂の混合比率が小さいため、十分な皮膜強度が得られ難い。そこで、耐擦過強度を高めるために、前記のバインダー樹脂のうち、ナイロン樹脂又はウレタン系樹脂を用いると効果的である。
前記ウレタン系樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂等があり、二種以上を併用することもできる。又、前記樹脂が水に乳化分散したウレタン系エマルジョン樹脂や、イオン性を有するウレタン樹脂(ウレタンアイオノマー)自体のイオン基により乳化剤を必要とすることなく自己乳化して、水中に溶解乃至分散したコロイド分散型(アイオノマー型)ウレタン樹脂を用いることもできる。
尚、前記ウレタン系樹脂は水性ウレタン系樹脂又は油性ウレタン系樹脂のいずれを用いることもできるが、本開示においては水性ウレタン系樹脂、殊に、ウレタン系エマルジョン樹脂やコロイド分散型ウレタン系樹脂が好適に用いられる。
前記ウレタン系樹脂は単独で用いることもできるが、支持体の種類や皮膜に必要とされる性能に応じて、他のバインダー樹脂を併用することもできる。ウレタン系樹脂以外のバインダー樹脂を併用する場合、実用的な皮膜強度を得るためには、前記多孔質層のバイン
ダー樹脂中にウレタン系樹脂を固形分重量比率で30%以上含有させることが好ましい。
前記バインダー樹脂において、架橋性のものは任意の架橋剤を添加して架橋させることにより、さらに皮膜強度を向上させることができる。
前記バインダー樹脂には、水との親和性に大小が存在するが、これらを組み合わせることにより、多孔質層中への浸透時間、浸透度合い、浸透後の乾燥の遅速を調整することができる。更には、適宜分散剤や界面活性剤を添加して前記調整をコントロールすることができる。
【0084】
なお、前記多孔質層中には、従来より公知の二酸化チタン被覆雲母、酸化鉄-二酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、グアニン、絹雲母、塩基性炭酸鉛、酸性砒酸鉛、オキシ塩化ビスマス等の金属光沢顔料を添加したり、一般染料や顔料、蛍光染料や蛍光顔料を混在させて色変化を多様化させることができる。
又、温度変化により可逆的に色変化する、従来より公知の可逆熱変色顔料を混在させて、環境温度や付着させる水温により色変化させることができる。
更には、前記多孔質層の上層、下層、及び/又は近傍には着色層を配設して様相変化を更に多様化させることができる。
前記多孔質層及び着色層は、ベタ印刷状のものに限らず、文字、記号、図柄等の像(着色像)であってもよい。
前記多孔質層及び着色層は、従来より公知の手段、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等により形成できる。
【0085】
特に、多孔質層上に着色像を形成する場合、ひらがなやアルファベット等を抜き文字で形成したり、時計の外観像を形成することにより、なぞり書きや時間の記入が可能な学習教材としての要素を加飾効果以外に付与でき、より有用なものとなる。
【0086】
また、前記多孔質層の下層には、非浸水性フィルムや接着剤からなる防水層を介在することもできる。これにより多孔質層の下層に液体が侵入することを抑制できる。前記防水層は透明のものに限らず、着色したものを用いることもできる。
更に、前記防水層を硬質材料により形成することにより、筆記面(多孔質層)に対して下敷きとして機能させることができるので、基材が軟質な材質で構成されていても適度な硬度を備えた筆記面が得られ、しっかりとした筆跡を形成することが可能となる。
【0087】
本開示の水変色体用水付着具は、使用後にキャップ装着状態で保管したとしても、水吐出部にカビが発生することを抑え、水吐出部の良好な衛生状態が維持できる。
本開示の水変色体セットは、使用後にキャップ装着状態で水変色体用水付着具を保管したとしても、水吐出部にカビが発生することを抑え、水吐出部の良好な衛生状態を維持できる。
【符号の説明】
【0088】
1 水変色体用水付着具
2 本体
21 空気導入孔
3 ペン先(水吐出部)
4 ホルダー
41 外筒
41a 雌ネジ部
41b 環状段部
41c 保持リブ
42 内筒
42a リブ
42b 連通孔
42c ストッパ用リブ
5 容器
51 注入孔
52 縮径部
53 雄ネジ部
54 肩部
6 キャップ
61 通気孔
62 突出壁部(漏出阻止部)
63 吸液部材(漏出阻止部)
64 間隙部(漏出阻止部)
7 ペン先保持部材
8 軸筒
81 縦リブ
82 段部
83 縮径部
9 水吸収体
10 尾栓
10a 空気導入孔
11 水変色体
11a 基材
11b 多孔質層
11c 取っ手
11d 保持部
11e 係止部
12 水