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特許7273047可変アクチュエータおよびセンサを関与させたアクティブノイズ制御方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】可変アクチュエータおよびセンサを関与させたアクティブノイズ制御方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20230502BHJP
   B64D 11/06 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
G10K11/178
B64D11/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020539759
(86)(22)【出願日】2019-01-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2019051350
(87)【国際公開番号】W WO2019145250
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-11-26
(31)【優先権主張番号】1850077-7
(32)【優先日】2018-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】520177998
【氏名又は名称】フォルシア クレオ アーベー
【氏名又は名称原語表記】FAURECIA CREO AB
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク サミュエルソン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ダヴィドソン
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0314778(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0124337(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0117579(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/178
B64D 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の2つ以上の制御位置において検出された1次ノイズ(dm(t))のパワーを能動的に制御することにより、前記車室内の少なくとも1つのモニタ位置(13)においてノイズを低減する方法であって、前記1次ノイズは、それぞれの前記制御位置へ、それぞれの1次経路(Pm)を介して、ノイズ(x(t))を伝達するノイズソース(5)から生じ、
前記車室に少なくとも1つのアクチュエータ(2)を配置し、
各制御位置にエラーセンサ(3)を配置し、
アクチュエータ(2)ごとに少なくとも1つの適応フィルタ(wk(n))を配置し、
前記少なくとも1つの適応フィルタ(wk(n))に、更新されたフィルタ係数を提供する適応アルゴリズムユニット(6)を配置し、
前記少なくとも1つの適応フィルタ(wk(n))および前記適応アルゴリズムユニット(6)に、前記ノイズソース(5)からのノイズ(x(t))とコヒーレントな基準信号x(n)を提供する少なくとも1つの基準センサ(4)を配置し、
それぞれのアクチュエータ(2)に駆動信号(yk(n))を提供し、送信するために、前記少なくとも1つの適応フィルタ(wk(n))を基準信号(x(n))に適用し、
前記駆動信号(yk(n))の応答として、それぞれの前記制御位置に、それぞれの2次アンチノイズ(y'm(t))として到達する、それぞれの2次ノイズ(yk(t))を提供し、送信するように、少なくとも1つのアクチュエータ(2)を配置し、前記2次ノイズ(yk(t))は、前記アクチュエータ(2)と、それぞれの前記制御位置と、の間のそれぞれの2次経路(Skm)を介して提供および送信され、
検知された1次ノイズおよび検知された2次アンチノイズの検知された残留ノイズ(em(t))を表す、それぞれのエラー信号(em(n))を適応アルゴリズムユニット(6)に提供および送信するためにエラーセンサ(3)を配置し、
ノイズソース(5)の動作状態を表す信号(c(n))を受信し、前記ノイズソース(5)の動作状態を表す前記信号(c(n))に基づいて、各アクチュエータ(2)およびエラーセンサ(3)のそれぞれに対する重み付け係数(mpm(n)、kpk(n))のセットを決定し、前記決定された重み付け係数のセットを前記適応アルゴリズムユニット(6)へ送信するために、アクチュエータおよびエラーセンサの重み付けデバイス(7)を配置し、
前記制御位置の少なくとも1つにおいて検知される残留ノイズ(em(t))のパワーを低減するために、前記受信した重み付け係数のセットに基づいて、少なくとも1つの適応フィルタ(wk(n))に更新されたフィルタ係数を提供する適応アルゴリズムユニット(6)を配置し
前記適応アルゴリズムユニット(6)は、
フィルタ更新デバイス(8)と、
前記それぞれの2次経路(Skm)のそれぞれの2次経路デジタルモデル(cfS´km)により基準信号(x(n))を選別するように配置され、前記受信された重み付け係数のセットに基づいて、前記選別された基準信号を更新し、前記選別および重み付けされた基準信号(x'km(n))を前記フィルタ更新デバイス(8)に送信するように配置された選別および重み付けデバイス(9)と、
前記エラー信号(em(n))のそれぞれに、エラーセンサ重み付け係数(mpm(n))を適用することにより、それぞれの重み付けされたエラー信号(e'm(n))を決定し、前記フィルタ更新デバイス(8)に、前記重み付けされたエラー信号(e'm(n))を送信するように配置されたエラーセンサ重み付けデバイス(10)と、
をさらに含み、
前記フィルタ更新デバイス(8)は、以下の式を使用する反復プロセスにより、前記適
応フィルタの前記フィルタ係数を段階的に更新するように構成される、方法。
【数14】

ここで、μは、ステップサイズであり、kは、k番目のアクチュエータを表し、mは、m番目のエラーセンサを表し、wk(n)は、フィルタ係数の現時点のセットを含むベクトルであり、wk(n+1)は、フィルタ係数の更新されたセットを含むベクトルであり、x'km(n)は、重み付けおよび選別された基準信号x(n)の時間履歴を含むベクトルであり、e'm(n)は、m番目のエラーセンサからの重み付けされたエラー信号であり、μγkは、漏れ係数である。
【請求項2】
特定のノイズソースの動作状態に対する前記エラーセンサ(3)およびアクチュエータ(2)の重み付け係数は、ノイズソースの異なる動作状態を表す信号(c(n))と、対応する所定の重み付け係数と、の間の所定の関係のセットから決定される請求項1記載の方法。
【請求項3】
特定のノイズソースの動作状態に対する前記エラーセンサ(3)およびアクチュエータ(2)の前記重み付け係数は、所定の重み付け係数、および、前記ノイズソース動作状態の変化を表す変数の関数として決定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
特定のノイズソースの動作状態おける前記エラーセンサ(3)およびアクチュエータ(2)に対する前記所定の重み付け係数は、前記車室内の1次ノイズフィールドの所定の空間特性、および、前記モニタ位置の少なくとも1つにおける最小残留ノイズレベルに対応する、2次アンチノイズフィールドの所定の空間特性から決定される、請求項またはに記載の方法。
【請求項5】
前記所定の重み付け係数およびノイズソースの異なる動作状態を表す信号(c(n))は、ルックアップテーブルとして保存される、請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
特定の動作状態におけるエラーセンサ(3)とアクチュエータ(2)に対する前記重み付け係数は、保存されている重み付け係数の補間により決定される、請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
ノイズソース動作状態を表す信号(c(n))は、車両のコンピュータバス/ネットワーク、1以上のエラーセンサ(3)、タコメータ信号、1以上の振動センサ、または、前記方法で使用される基準センサ(4)から導出される請求項1~のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記適応アルゴリズムユニット(6)は、前記重み付け係数を、filtered-reference-LMS、leaky-filtered-reference-LMS、filtered-error-LMS、leaky-filtered-error-LMS、normalized-filtered-reference-LMSおよびnormalized-leaky-filtered-reference-LMSを含むグループから選択されたLMSアルゴリズムに適用する、請求項1~のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記適応アルゴリズムユニット(6)は、前記重み付け係数を、filtered-reference-RLS、leaky-filtered-reference-RLS、normalized-filtered-reference-RLSおよびnormalized-leaky-filtered-reference- RLSからなるグループから選択されたRLSアルゴリズムに適用する、請求項1~のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
車室内の2以上の制御位置で検知される1次ノイズ(dm(t))のパワーのアクティブ制御により、前記車室内の少なくとも1つのモニタ位置(13)におけるノイズを低減するアクティブノイズ制御システム(1)であって、前記1次ノイズは、それぞれの1次経路(Pm)を介して、それぞれの前記制御位置へノイズ(x(t))を伝達するノイズソース(5)から発生し、
前記車室内に配置された少なくとも1つのアクチュエータ(2)と、
各制御位置に配置されたエラーセンサ(3)と、
アクチュエータ(2)ごとに配置された少なくとも1つの適応フィルタ(wk(n))と、
前記少なくとも1つの適応フィルタ(wk(n))に、更新されたフィルタ係数を提供するように配置された適応アルゴリズムユニット(6)と、
前記少なくとも1つの適応フィルタ(wk(n))および前記適応アルゴリズムユニット(6)に、前記ノイズソース(5)からの前記ノイズ(x(t))とコヒーレントな基準信号x(n)を提供するように配置された少なくとも1つの基準センサ(4)と、
を備え、
前記少なくとも1つの適応フィルタ(wk(n))は、それぞれのアクチュエータ(2)に駆動信号(yk(n))を提供および送信するために、基準信号(x(n))に適用されるように構成され、
前記少なくとも1つのアクチュエータ(2)は、前記駆動信号(yk(n))の応答として、前記アクチュエータ(2)と前記それぞれの制御位置との間のそれぞれの2次経路(Skm)を介して、前記それぞれの制御位置にそれぞれの2次アンチノイズ(y'm(
t))として到達する、それぞれの2次ノイズ(yk(t))を提供および送信するように構成され、
前記エラーセンサ(3)は、検知された1次ノイズと検知された2次アンチノイズの検知された残留ノイズ(em(t))を表す、それぞれのエラー信号(e(n))を、適応アルゴリズムユニット(6)に提供し、送信するように配置され、
ノイズソース(5)の動作状態を表す信号(c(n))を受信し、前記ノイズソース(5)の動作状態を表す前記信号(c(n))に基づいて、各アクチュエータ(2)およびエラーセンサ(3)のそれぞれに対する重み付け係数(mpm(n)、kpk(n))のセットを決定し、前記決定された重み付け係数のセットを適応アルゴリズムユニット(6)へ送信する、アクチュエータおよびエラーセンサの重み付けデバイス(7)をさらに備え、
前記適応アルゴリズムユニット(6)は、前記制御位置の少なくとも1つにおいて検知される残留ノイズ(em(t))のパワーを低減するために、前記受信した重み付け係数のセットに基づいて、前記少なくとも1つの適応フィルタ(wk(n))に、更新されたフィルタ係数を提供するように配置され
前記適応アルゴリズムユニット(6)は、
フィルタ更新デバイス(8)と、
前記2次経路(Skm)のそれぞれの2次経路デジタルモデル(cfS´km)を用いて基準信号(x(n))を選別し、前記受信した重み付け係数のセットに基づいて、前記選別された基準信号を更新し、前記選別および重み付けされた基準信号(x'km(n))を、前記フィルタ更新デバイス(8)に送信するように配置された選別および重み付けデバイス(9)と、
前記エラー信号(em(n))のそれぞれに、エラーセンサ重み付け係数(mpm(n))を適用することにより、それぞれの重み付けされたエラー信号(e'm(n))を決定し、前記重み付けされたエラー信号(e'm(n))を、前記フィルタ更新デバイス(8)に送信するように配置されたエラーセンサ重み付けデバイス(10)と、
を含み、
前記フィルタ更新デバイス(8)は、次式を使用した反復プロセスにより、前記適応フィルタの前記フィルタ係数を段階的に更新するように構成されるアクティブノイズ制御システム。
【数18】

ここで、μは、ステップサイズであり、kは、k番目のアクチュエータを表し、mは、m番目のエラーセンサを表し、wk(n)は、フィルタ係数の現時点のセットを含むベクトルであり、wk(n+1)は、フィルタ係数の更新されたセットを含むベクトルである。x'km(n)は、重み付けおよび選別された基準信号x(n)の時間履歴を含むベクトルであり、e'm(n)は、m番目のエラーセンサからの重み付けされたエラー信号であり、μγkは、漏れ係数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可変アクチュエータおよびセンサを関与させて車室内のノイズを低減するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自走車両では、エンジンもしくはエンジンに機械的または音響的に結合された部品(ファンなど)の機械的振動、車両の周りを通過する風、舗装面などに接するタイヤ、または、航空機の胴体壁を震わせるプロペラ波により発生する騒音(ノイズ)が車室内に放射されることがある。
【0003】
アクティブノイズコントロール(ANC)システムおよび方法は、車室内に放射されるそのようなノイズを、特に、低周波数領域において、除去または少なくとも低減することが知られている。
【0004】
一般的なANCシステムの基本原理は、車室内に2次音源を導入して、ノイズである1次音場の逆位相像である2次音場を提供することである。2次音場が1次音場と整合するレベルが、ANCシステムの有効性を左右する。1次音場と2次音場とが空間的にも時間的にも正確に整合された場合、ノイズは完全に除去されるであろう。
【0005】
実際には、そのような整合を完全なものにすることはできず、この不整合は、実現可能なノイズ制御のレベルを制限する。
【0006】
最新のANCシステムは、デジタル信号処理およびデジタルフィルタリング技術を実装している。典型的には、基準センサ(例えば、加速度計またはマイクロフォンのようなアナログセンサ)は、車室内の騒音源を表す電気基準信号を提供するために使用される。あるいは、タコメータなどの非音響センサを使用し、必要な基準信号を合成して生成することもできる。 1つ以上の基準信号は、適応フィルタを介して供給され、2次音源であるアクチュエータ(例えば、スピーカまたはシェーカ)に駆動信号を供給する。アクチュエータは、車室内の1次音波とは逆の振幅および位相を持つことを目的とした2次音波を生成する。2次音波は1次音波と相互作用し、これにより、車室内の騒音を除去または少なくとも低減する。車室内の残留ノイズは、エラーセンサを用いて検知される。結果として得られるエラーセンサ出力信号は「エラー信号」として使用され、適応アルゴリズムに提供される。適応フィルタのフィルタ係数は、コスト関数(例えば、エラー信号のノルムまたはパワー)に変更され、これにより、車室内の残留ノイズが最小限に抑えられる。
【0007】
ANCシステムの性能は、ANCシステムに使用されるアクチュエータとエラーセンサの構成、つまり、車室内のセンサとアクチュエータの位置に大きく依存する。したがって、センサ/アクチュエータの位置を最適化し、異なる騒音源に対して車室内の残留ノイズを最小限に抑えることが重要である。多くの場合、モータ速度、エンジン推力、速度、プロペラ速度などを含む、異なる動作状態に対して異なる最適な解があり、すべての動作状態に対して最適な1つのANCシステム構成を見つけるのは難しいであろう。
【0008】
したがって、異なる動作状態に適合および最適化することが可能な構成を有するANCシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本開示の目的は、さまざまな動作状態に適合し、最適化することが可能なアクティブノイズ制御方法を提供することである。また、改善されたアクティブノイズ制御システムを提供することも目的である。
【0010】
本発明は、添付の独立請求項によって定義される。実施形態は、従属請求項、添付図面、および以下の記載おいて定められる。
【0011】
第1の態様によれば、車室内の2以上の制御位置において検出された1次ノイズのパワーを能動的に制御することにより、前記車室内の少なくとも1つのモニタ位置におけるノイズを低減する方法が提供される。前記1次ノイズは、それぞれの1次経路を介してそれぞれの制御位置にノイズを送信するノイズソースにおいて生じる。前記方法は、前記車室内に少なくとも1つのアクチュエータを配置し、各制御位置にエラーセンサを配置し、アクチュエータごとに少なくとも1つの適応フィルタを配置し、前記少なくとも1つの適応フィルタに更新されたフィルタ係数を提供する適応アルゴリズムユニットを配置することを含む。さらに、前記少なくとも1つの適応フィルタおよび前記適応アルゴリズムユニットに前記ノイズソースからの前記ノイズとコヒーレントな基準信号を提供する少なくとも1つの基準センサを配置し、それぞれのアクチュエータに駆動信号を提供および送信するために、前記少なくとも1つの適応フィルタを前記基準信号に適用し、前記駆動信号の応答として、前記アクチュエータと前記それぞれの制御位置との間のそれぞれの2次経路を介して、それぞれの2次ノイズを提供および送信する前記少なくとも1つのアクチュエータを配置する。2次ノイズは、それぞれの2次アンチノイズとして、前記それぞれの制御位置に到達する。前記エラーセンサは、前記検知された1次ノイズおよび2次アンチノイズの検知された残留ノイズを表すそれぞれのエラー信号を、前記適応アルゴリズムユニットに提供し、送信するように配置される。前記方法は、ノイズソース動作状態を表す信号を受信し、前記ノイズソース動作状態を表す前記信号に基づいて各アクチュエータおよびエラーセンサに対する重み付け係数のセットをそれぞれ決定し、前記決定された重み付け係数のセットを前記適応アルゴリズムユニットに送信するために、アクチュエータおよびエラーセンサ重み付けデバイスを配置することをさらに含み、前記制御位置の少なくとも1つにおいて検知された前記残留ノイズのパワーを低減するために、前記重み付け係数の受信したセットに基づいて、更新されたフィルタ係数を前記少なくとも1つの適応フィルタに提供するように適応アルゴリズムユニットを構成する。
【0012】
上記の方法は、いわゆるANC、アクティブノイズコントロール(もしくはキャンセル)法である。
【0013】
前記車両は、例えば、車、バス、トラック、航空機、ボート、潜水艦、ダンパーなどの大型車両、または、電車や路面電車などの鉄道車両などの乗り物であっても良い。
【0014】
前記ノイズソースは、例えば、エンジン、電気モータ、プロペラ、エアコンシステム、マフラー、ギアボックス、車両のタイヤ、または、そのようなノイズソースの組み合わせであっても良い。
【0015】
したがって、ノイズは音波または振動であっても良い。ノイズは、車室で検知される望ましくない音である。
【0016】
ノイズソース動作状態は、例えば、モータの回転速度、プロペラ速度、車両速度、エンジンの出力設定またはそれらの組み合わせであっても良い。ノイズソース動作状態を表す信号は、継続的に記録されるであろう。そのような信号は、例えば、タコメータまたは振動センサを用いて記録できる。
【0017】
1次経路は、前記ノイズソースから前記エラーセンサまでの前記音響伝達経路である。
【0018】
前記2次経路は、アクチュエータとエラーセンサとの間の前記音響伝達経路である。
【0019】
制御位置は、前記車室内の、エラーセンサを設置することが可能であり、前記1次ノイズのパワーが制御、例えば、除去または少なくとも削減される位置である。
【0020】
モニタの位置は、例えば、前記車室内の乗客の耳の位置である。モニタ位置は、ANC法の設計段階でのみ使用され、最終的な前記方法における実際の部分ではない。したがって、モニタ位置は制御位置とは異なる。モニタ位置には、前記方法の実施中にエラーセンサを配置することはできない。前記方法の目的は、前記制御位置における前記1次ノイズのパワーを制御することにより、前記モニタ位置でのノイズを低減することである。
【0021】
前記方法において使用されるアクチュエータとエラーセンサの数は、前記用途と前記車室のサイズとに依存する。前記車室に配置されるエラーセンサの数は少なくとも2つである。好ましくは、前記方法に使用されるエラーセンサの数を、前記方法に使用されるアクチュエータの数より少なくするべきではない。前記方法に使用されるエラーセンサの数は、例えば、使用されるアクチュエータの数と同じか、50%以上多くてもよい。車内の典型的な設置は、4~6個のアクチュエータと、6~10個のエラーセンサと、を有するであろう。
【0022】
前記エラーセンサにおいて前記ノイズが制御される時に、前記ノイズがモニタ位置で同時に制御されるように、エラーセンサの位置と数は慎重に選択される。モニタの位置は、前記車室内にエラーセンサを設置できないが、前記ノイズの制御が望まれる、例えば、乗客の耳の近く、または、前記車室内のノイズを制御すべき他の位置などの前記車室内の位置である。典型的な用途では、例えば、車、バス、または、旅客機において、前記システムはエラーセンサが取り付けられたいくつかの制御位置を含み、前記エラーセンサは、通常、内装パネルおよび座席内に取り付けられる。前記モニタ位置は、典型的には、前記車室内の乗客の耳の位置である。前記モニタ位置は、前記ANC法の設計段階でのみ使用され、最終的な前記方法の一部とはならない。
【0023】
前記使用されるアクチュエータは、前記方法に使用される前記エラーセンサにおける前記音響パワーを低減する音響信号を送信するように配置される。前記方法に使用される前記エラーセンサおよびアクチュエータは、前記アクティブノイズ制御のために特別に配置され、使用されるユニットであっても良い。あるいは、それらは、前記車両における、例えば、オーディオシステムおよび/または車両内のハンズフリー通信システムにより使用されてもよい。
【0024】
アクチュエータごとの適応フィルタの数は少なくとも1つである。通常、アクチュエータごとに1つのフィルタが使用される。また、ロードノイズなどの複数のソースを制御する場合には、複数の基準信号が使用され、それに応じて適応フィルタの数も増える。
【0025】
前記少なくとも1つのアクチュエータは、例えば、スピーカまたはシェーカである。
【0026】
前記エラーセンサは、例えば、マイクロフォンまたは加速度計であっても良い。
【0027】
制御位置では、それぞれのエラーセンサは、残留ノイズ、すなわち、前記1次ノイズとそれぞれの2次アンチノイズの合計を検知するように配置される。前記2次アンチノイズの目的は、前記車室内において制御したい領域内の前記1次ノイズの逆位相像となることである。2次アンチノイズが前記1次ノイズと整合する程度によって、制御位置においてエラーセンサにより検出される残留ノイズを表す前記エラー信号が決まり、前記制御位置が制御したい前記車室内の領域を表す程度によって、前記システムの前記最終的な性能が決定される。前記1次ノイズと2次アンチノイズが空間的にも時間的にも完全に整合した場合、前記1次ノイズは完全に除去される。
【0028】
前記ノイズソースからの前記ノイズとコヒーレントな前記基準信号は、基準センサによって提供される。ノイズソースが周期的である場合、前記基準センサは、例えば、燃焼機関の点火パルスまたは回転機の回転速度センサなど、非音響センサであっても良い。前記基準信号は、前記周期的なノイズソースの周波数および位相角を検知したこの信号から合成的に再現される。前記基準信号は、例えば、加速度計、マイクロフォン、歪ゲージなどのアナログセンサにより直接検出できる。あるいは、前記基準信号は、基準信号の組み合わせにより生成できる。
【0029】
前記車室内のアクチュエータとエラーセンサの配置は、特定の1次ノイズに対して空間的に最適であっても、前記ノイズソース動作状態が変化すると、最適ではなくなるであろう。例えば、rpmが変化すると、前記車室内の前記1次ノイズの異なる空間分布を生じさせる可能性のある状態の変化がある。そのような場合には、アクチュエータとエラーセンサの異なる空間配置を用いることにより、前記方法の性能を向上させることが可能である。
【0030】
本方法では、ノイズソース動作状態を表す信号は、前記アクチュエータおよびエラーセンサ重み付けデバイスによって受信され、前記信号に基づいて、前記制御位置で検知される前記エラー信号、前記残留ノイズ、すなわち、前記検知される1次ノイズと2次ノイズの合計のパワーを低減するために、各アクチュエータとエラーセンサの重み付け係数が決定される。
【0031】
前記重み付け係数は、前記方法におけるアクチュエータまたはエラーセンサの前記寄与を決定する係数である。すなわち、各エラーセンサ/アクチュエータは、前記車室内の制御位置において検知される前記1次ノイズのパワーの低減に等しく寄与すると言うよりも、いくつかは、他のセンサよりも多く貢献するように調整され、また、アクチュエータ/エラーセンサをオフしても良い。
【0032】
前記重み付け係数は、ノイズソースのさまざまな動作状態に依存して変化する。
【0033】
アクチュエータ/エラーセンサの重み付け係数は、ゼロと、さまざまな動作状態における前記アクチュエータ/エラーセンサの重要度を評価した数値と、の間で変化する。前記重み付け係数は、前記ANC法の前記設計段階の最適化プロセスにより決定される。このような設計段階では、アクチュエータとエラーセンサとの異なる組み合わせ、および、異なる動作状態の結果が測定され、シミュレーションされる。
【0034】
前記少なくとも1つの適応フィルタの前記フィルタ係数の更新は、前記更新が段階的に実行され、前記更新が前記可変の重み付け係数に基づく、連続的で反復的なプロセスである。したがって、前記フィルタ係数の更新は、ノイズソースの異なる動作状態に対するエラーセンサとアクチュエータのさまざまな寄与に基づく。これにより、ノイズソースの異なる動作状態に対してアクチュエータ/エラーセンサの最適な空間配置を実現する。
【0035】
前記適応アルゴリズムユニットは、フィルタ更新デバイス、選別および重み付けデバイスを備え、前記基準信号を前記それぞれの2次経路におけるそれぞれの2次経路デジタルモデルにより選別し、前記受信した重み付け係数のセットに基づいて前記選別された基準信号を更新し、前記選別および重み付けされた基準信号を、前記フィルタ更新デバイスとエラーセンサ重み付けデバイスに送信するように構成される。前記エラーセンサ重み付けデバイスは、それぞれのエラーセンサ重み付け係数を前記それぞれのエラーセンサ信号に適用することにより、それぞれの重み付けエラー信号を決定し、前記重み付けされたエラー信号を前記フィルタ更新デバイスに送信するように構成されても良い。前記フィルタ更新デバイスは、次式を使用する反復プロセスによって、前記適応フィルタの前記フィルタ係数を段階的に更新するように構成されてもよい。
【数1】
【0036】
ここで、μは、ステップサイズである。kは、k番目のアクチュエータを表す。mは、m番目のエラーセンサを表す。w(n)は、フィルタ係数の現時点のセットを含むベクトルである。w(n+1)は、フィルタ係数の更新されたセットを含むベクトルである。x'km(n)は、重み付けされ、選別された基準信号x(n)の時間履歴を含むベクトルである。e'(n)は、m番目のエラーセンサからの重み付けされたエラー信号である。μγは、漏れ係数である。
【0037】
2次経路デジタルモデルは、アクチュエータとエラーセンサとの間の伝達関数(インパルス応答関数)を表し、所謂オンライン2次経路モデリング手法により、キャリブレーションステップにおけるオフライン(騒音信号がない場合)、または、オンライン(前記1次ノイズがある場合)において決定できる。前記2次経路は、前記1次背景音によってマスクされている前記アクチュエータを介して音を出すことにより、オンラインで測定できる。
【0038】
2次経路は、前記方法の動作中に変動する可能性があるので、制御位置で検知される前記2次アンチノイズも変化する可能性がある。前記2次経路の前記伝達関数の不完全なモデルは、前記適応フィルタの収束動作、結果として、その動作の安定性および質、および、前記フィルタの適応速度に影響を与え、前記アクティブノイズ制御の性能にかなりの悪影響を与える可能性がある。
【0039】
特定のノイズソース動作状態に対する前記エラーセンサおよびアクチュエータの前記重み付け係数は、ノイズソースの異なる動作状態を表す信号と、対応する所定の重み付け係数と、の間の所定の関係のセットから決定されてもよい。
【0040】
所定の重み付け係数は、ノイズソースの様々な動作状態に対して前記方法を最適化することによって決定できる。前記所定の重み付け係数は、ノイズソースの異なる動作状態を表す、前記対応する信号とともに記憶される。
【0041】
あるいは、特定のノイズソース動作状態に対する前記エラーセンサおよびアクチュエータの前記重み付け係数は、所定の重み付け係数および前記ノイズソース動作状態の変化を表す変数の関数として決定されてもよい。
【0042】
特定のノイズソースの動作状態に対する前記エラーセンサおよびアクチュエータの前記所定の重み付け係数は、前記車室内の1次ノイズフィールドの所定の空間特性と、前記モニタ位置の少なくとも1つにおける最小残留ノイズレベルに対応した前記車室内の2次アンチノイズフィールドの所定の空間特性から決定できる。
【0043】
ここで、空間特性は、特定のノイズソースの動作状態に対する前記車室内のノイズ圧分布、および、このノイズ圧分布がノイズソースの動作状態の変化によってどのように影響を受けるかを意味する。
【0044】
前記1次ノイズフィールドの空間特性は、シミュレーションによって決定されるか、または、動作テスト、すなわち、ノイズソースのさまざまな動作状態に対し、マイクロフォンのようなエラーセンサのアレイを使用して前記車室内の前記音響フィールドの測定を実施することにより測定できる。1次ノイズフィールド測定は、前記方法の設計段階で実施できる。
【0045】
前記2次アンチノイズフィールドは、前記アクチュエータと、前記それぞれの重み付け係数によって重み付けされた前記エラーセンサと、の間の伝達関数、および、前記アクチュエータとモニタ位置との間の伝達関数から決定される。伝達関数は、前記システム設計段階において音響測定により測定/決定できる。
【0046】
モニタ位置における残留ノイズレベルは、前記1次ノイズフィールドと前記重み付けされた2次ノイズフィールドを合わせることにより、所定の重み付け係数セットに対して予測できる。
【0047】
モニタ位置の最小残留ノイズレベルは、ノイズがまったくないノイズレベル、または、その位置で取得できる最小ノイズレベルである。
【0048】
特定のノイズソース動作状態に対する前記所定の重み付け係数の決定は、すべての可能な重み付け係数に対して前記少なくとも1つのモニタ位置における残留ノイズを予測し、前記モニタ位置における最小の残留ノイズレベルに対応する前記重み付け係数を選択するアルゴリズムを使用して実施できる。
【0049】
前記重み付け係数の決定は、前記ノイズソース動作状態を表す所定の重み付け係数のリストにつながる、すべてのノイズソース動作状態に対して繰り返すことが可能である。
【0050】
前記所定の重み付け係数およびノイズソースの異なる動作状態を表す信号は、ルックアップテーブルとして記憶されてもよい。
【0051】
特定の動作状態おける前記エラーセンサおよびアクチュエータに対する前記重み付け係数は、保存されている重み付け係数の補間により決定できる。
【0052】
前記補間は、線形補間、2次補間、または、他のタイプの曲線フィッティングであってもよい。
【0053】
前記ノイズソース動作状態を表す信号は、前記車両のコンピュータバス/ネットワーク、タコメータの信号、前記方法に使用される1以上のエラーセンサ、1以上の振動センサ、または、前記基準信号から抽出できる。前記バスは、例えば、CANバス、MOSTバスまたは同等のものである。
【0054】
前記適応アルゴリズムユニットは、前記重み付け係数を、LMSアルゴリズムに適用できる。前記LMSアルゴリズムは、「filtered-reference-LMS」、「leaky-filtered-reference-LMS」、「filtered-error-LMS」、「leaky-filtered-error-LMS」、「normalized-filtered-reference-LMS」および「normalized-leaky-filtered-reference-LMS」を含むグループから選択される。
【0055】
前記適応アルゴリズムユニットは、前記重み付け係数を、RLSアルゴリズムに適用できる。前記RLSアルゴリズムは、「filtered-reference-RLS」、「leaky-filtered-reference-RLS」、「normalized-filtered-reference-RLS」および「normalized-leaky-filtered-reference-RLS」を含むグループから選択される。
【0056】
前記基準信号は、適応FIRフィルタを用いて、次のように選別できる。
【数2】
【0057】
ここで、
【数3】
【数4】
【0058】
ここで、「L」は、前記適応フィルタの係数の数であり、「n」は、現時点のタイムステップである。
【0059】
あるいは、前記基準信号は、IIRフィルタを使用して選別されてもよい。
【0060】
第2の態様によれば、車室内の2以上の制御位置で検知される1次ノイズパワーのアクティブ制御により、前記車室内の少なくとも1つのモニタ位置のノイズを低減するためのアクティブノイズ制御システムが提供され、前記1次ノイズは、それぞれの制御位置へ、それぞれの1次経路を介してノイズを送信するノイズソースから生じる。前記システムは、前記車室内に配置された少なくとも1つのアクチュエータと、各制御位置に配置されたエラーセンサと、アクチュエータごとに配置された少なくとも1つの適応フィルタと、前記少なくとも1つの適応フィルタに更新されたフィルタ係数を提供するように構成された適応アルゴリズムユニットと、前記ノイズソースからのノイズとコヒーレントな基準信号を前記少なくとも1つの適応フィルタおよび前記適応アルゴリズムユニットに提供するように配置された少なくとも1つの基準センサと、を備える。前記少なくとも1つの適応フィルタは、それぞれのアクチュエータに駆動信号を提供および送信するために、前記基準信号に適用される。前記少なくとも1つのアクチュエータは、前記駆動信号に応答して、前記アクチュエータおよびそれぞれの制御位置の間のそれぞれの2次経路を介して、それぞれの2次ノイズを提供および送信し、前記2次ノイズが、それぞれの2次アンチとして、それぞれの制御位置に到達するように構成される。前記エラーセンサは、前記検知された1次ノイズおよび検知された2次アンチノイズの検知された残留ノイズを表すそれぞれのエラー信号を、前記適応アルゴリズムユニットに提供し、送信するように構成される。前記システムは、アクチュエータとエラーセンサの重み付けデバイスとをさらに備え、ノイズソース動作状態を表す信号を受信し、前記ノイズソース動作状態を表す前記信号に基づいて、各アクチュエータおよびエラーセンサに対するそれぞれの重み付け係数のセットを決定するように構成され、前記決定された重み付け係数のセットを、前記適応アルゴリズムユニットへ送信する。前記適応アルゴリズムユニットは、前記制御位置の少なくとも1つにおいて検知される前記残留ノイズのパワーを低減するために、前記受信した重み付け係数のセットに基づいて、前記少なくとも1つの適応フィルタに更新されたフィルタ係数を提供するように構成される。
【0061】
前記適応アルゴリズムユニットは、フィルタ更新デバイスと、前記それぞれの2次経路のそれぞれの2次経路デジタルモデルを用いて基準信号を選別し、前記受信した重み付け係数のセットに基づいて、前記選別された基準信号を更新し、前記選別および重み付けされた基準信号を前記フィルタ更新デバイスへ送信するように構成された選別および重み付けデバイスと、それぞれのエラーセンサ信号に、それぞれのエラーセンサ重み付け係数を適用することにより、それぞれ重み付けされたエラー信号を決定し、前記重み付けされたエラー信号を前記フィルタ更新デバイスに送信するように構成されたエラーセンサ重み付けデバイスと、を備えることができる。前記フィルタ更新デバイスは、次式を使用する反復プロセスによって、前記適応フィルタの前記フィルタ係数を段階的に更新するように構成できる。
【数5】
【0062】
ここで、μは、ステップサイズである。kは、k番目のアクチュエータを表す。mは、m番目のエラーセンサを表す。w(n)は、フィルタ係数の現時点のセットを含むベクトルである。w(n+1)は、フィルタ係数の更新されたセットを含むベクトルである。x'km(n)は、重み付けおよび選別された基準信号x(n)の時間履歴を含むベクトルである。e'(n)は、m番目のエラーセンサからの重み付けされたエラー信号である。μγは、漏れ係数である。
【0063】
第3の態様によれば、自走車両の前記車室に配置された少なくとも1つの制御位置において検知される残留ノイズのパワーを低減するための上記のアクティブノイズ制御システムの使用を提供する。
前記自走車両は路上走行車であってもよい。
前記路上走行車は自動車であってもよい。
前記自走車両は航空機であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1図1は、自動車のANCシステムを例示する。
図2図2は、モデル化されたANCシステム/方法のブロック構成を示す。
図3図3は、図2のモデル化されたANCシステム/方法の模式図である。
図4図4は、モデル化されたANCシステム/方法の詳細な模式図である。
図5図5は、先行技術に係るANCシステム/方法のブロック構成である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1には、自動車に配置されるアクティブノイズ制御(ANC)システム1が例示されている。システムは、車載部品中に配置されるアクチュエータ2、例えば、スピーカ、および、エラーセンサ3、例えば、マイクロフォン、および、ANCコントローラ100を含む。このようなANCシステムは、航空機、バス、列車、ボートなどの他の車両にも配置することができる。
【0066】
図1~4に示すANCシステム1/方法は、車室内の2以上の制御位置において検知される1次ノイズd(t)のパワーを能動的に制御することにより、車室内の少なくとも1つのモニタ位置13における騒音(ノイズ)を低減するために使用できる。モニタ位置13は、通常、車室内の乗客の耳の位置である。制御位置は、エラーセンサ3が設置された位置である。1次ノイズd(t)は、それぞれの制御位置にノイズx(t)をそれぞれの1次経路Pを介して送信するノイズソース5から生じるであろう。このような1次ノイズは、エンジン5(図1に示す)、および/または、それに機械的または音響的に結合されたコンポーネント(ファンなど)の機械的振動、車両の周りを通過する風、および/または、例えば、舗装面の接するタイヤ、客室の壁を震わせるプロペラノイズ波により発生する可能性がある。
【0067】
ANCシステム1/方法を用いて、車室内の2以上の制御位置において検知される1次ノイズd(t)のパワーを能動的に制御することができる。制御位置は、エラーセンサ3を設置することが可能であり、1次ノイズd(t)が制御、例えば、排除または少なくとも削減される車室内の位置であってよい。
【0068】
ANCシステム1/方法は、車室内のそれぞれの制御位置に配置されたM個のエラーセンサ3を含む。ANCシステムは、少なくとも2つのエラーセンサ3を含むべきである。システム1は、K個のアクチュエータ2を含む。システム/方法に使用されるアクチュエータ2およびエラーセンサ3の数は、用途および車室のサイズに依存する。好ましくは、使用されるエラーセンサ3の数は、使用されるアクチュエータ2の数より少なくするべきではない。
【0069】
少なくとも1つの適応フィルタw(n)が各アクチュエータ2に配置されてもよく、少なくとも1つの適応フィルタw(n)に更新されたフィルタ係数を提供するように構成された適応アルゴリズムユニット6があってもよい。
【0070】
基準センサ4は、ノイズソース5からのノイズx(t)とコヒーレントな基準信号x(n)を、適応フィルタw(n)および適応アルゴリズムユニット6に提供するように構成されてもよい。ここで、変数「n」は、信号の最新のサンプルを表す。すなわち、x(n)は、時間的に連続なx(t)の最新のサンプルである。
【0071】
適応フィルタw(n)は、それぞれのアクチュエータ2に駆動信号y(n)を提供および送信するために、基準信号x(n)に適用される。
【0072】
アクチュエータ2は、駆動信号y(n)の応答として、アクチュエータ2とそれぞれの制御位置との間のそれぞれの2次経路Skmを介して、それぞれの2次ノイズy(t)を提供し、送信するように構成できる。2次ノイズy(t)は、それぞれの2次アンチノイズy'(t)として、それぞれの制御位置に到達する。エラーセンサ3は、検知された1次ノイズおよび検知された2次アンチノイズの検知された残留ノイズe(t)を表すそれぞれのエラー信号e(n)を、適応アルゴリズムユニット6に提供し、送信するように構成できる。
【0073】
2次アンチノイズy'(t)の狙いは、検知された1次ノイズd(t)の逆位相像になることである。2次アンチノイズy'(t)が1次ノイズd(t)と整合するレベルにより、検出された残留ノイズe(t)および対応するエラー信号e(n)が決まる。1次ノイズと2次アンチノイズが空間と時間の両方で正確に整合した場合、制御位置において1次ノイズは完全に除去され、制御位置におけるエラー信号e(n)はゼロになるであろう。
【0074】
アクチュエータおよびエラーセンサ重み付けデバイス7は、ノイズソース5の動作状態、例えば、モータの回転速度、プロペラ速度、車両速度、エンジン出力設定またはそれらの組み合わせを表す信号c(n)を受信するように構成されてもよい。アクチュエータおよびエラーセンサ重み付けデバイス7は、ノイズソース5の動作状態を表す信号c(n)に基づいて、システム/方法に使用される各アクチュエータ2およびエラーセンサ3の重み付け係数mp(n)、kp(n)のセットを決定するように構成されてもよい。
【0075】
重み付け係数は、システム/方法におけるアクチュエータ2またはエラーセンサ3の寄与を決定する係数である。アクチュエータ/エラーセンサのいくつかは、制御位置で検知される残留ノイズe(t)の低減に、他のアクチュエータよりも寄与するように調整できる。また、アクチュエータ/エラーセンサはオフされ、まったく使用されないことがある。重み付け係数は、ノイズソースのさまざまな動作状態に依存して変化する。
【0076】
エラーセンサ重み付けデバイス7は、決定された重み付け係数のセットを適応アルゴリズムユニット6に送信できる。適応アルゴリズムユニット6は、受信された重み付け係数のセットに基づいて、少なくとも1つの制御位置において検出される残留ノイズem(t)のパワーを低減するために、更新されたフィルタ係数を少なくとも1つの適応フィルタw(n)に提供するように構成できる。
【0077】
少なくとも1つの適応フィルタw(n)のフィルタ係数の更新は、更新が段階的に実行され、更新が可変の重み付けに基づく、連続的かつ反復的なプロセスであっても良い。したがって、フィルタ係数の更新は、ノイズソースのさまざまな動作状態に対するエラーセンサ3およびアクチュエータ2の変動する寄与に基づいている。これにより、ノイズソースのさまざまな動作状態に対してアクチュエータ/エラーセンサの最適な空間配置を実現する。
【0078】
車室内のアクチュエータ2およびエラーセンサ3の配置は、与えられたノイズ外乱に対して空間的に最適であり得るが、ノイズソース動作状態が変化する場合など、ノイズ外乱の変化には適応できない。そのような場合、アクチュエータ2およびエラーセンサ3の異なる空間分布を使用することにより、方法の性能を改善することができる。
【0079】
包括的な音響制御となる空間的配置を実現するには、エラーセンサ3およびアクチュエータ2を慎重に選択する必要がある。これは、特定の車両に対するANCシステム/方法の設計段階における測定と最適化によって実施される。どのセンサ3およびアクチュエータ2が最適な包括的な制御を与えるかを決定するために、アクチュエータ2とセンサ3のさまざまな組み合わせに対して定常的なシミュレーションが実施される。このような最適化における可能な組み合わせの数は、選択されたシステムのサイズ、および、選択可能な場所の数に依存する。自動車などの内部空間の場合、すべての組み合わせを試し、最適な包括制御、すなわち、車室全体において、エラー信号を最小にする組み合わせを選択することができる。しかしながら、バスや航空機などの内部空間における組み合わせの数は、すべての組み合わせを試すには多すぎる。その場合、「ランダムウォーク」や「シミュレーテッドアニーリング」などの最適化アルゴリズムを使用できる。
【0080】
そのような最適化では、通常、ノイズソースのタイプおよび動作状態に依存して、最適なアクチュエータ2およびエラーセンサ3の異なるセットを見つける。たとえば、エンジンノイズを制御する場合、アクチュエータ3とセンサ3の最適なセットは、エンジンの回転速度、および、どのエンジン指標が支配的かに依存する。従来、最適化は、すべての条件において適度に機能するアクチュエータ2およびセンサ3の1つのセットを見つけるように設定される。
【0081】
図2には、上述のANCシステム/方法の簡略化されたブロック構成が示されている。図2は、方法/システムが、アクチュエータ2への駆動信号yk(t)を更新するために、ノイズソース5の動作状態を表す信号c(t)を使用することを示している。その更新は、ノイズソースのさまざまな動作状態に対するエラーセンサ3およびアクチュエータ2の変動する寄与に基づく。これにより、ノイズソースのさまざまな動作状態に対するアクチュエータ/エラーセンサの最適な空間配置を実現する。
【0082】
図5は、一般的な従来技術のANCシステム/方法のブロック構成を示す。アクチュエータ2への駆動信号yk(t)は、基準センサ4およびエラーセンサ3からの信号に基づいてのみ更新される。
【0083】
図4は、図3のシステム/方法のより詳細な説明である。なお、以下の説明において「cfS」は、
を表すものとする。
【0084】
図4に見られるように、適応アルゴリズムユニット6は、フィルタ更新デバイス8、選別および重み付けデバイス9およびエラーセンサ重み付けデバイス10を備えることができる。選別および重み付けデバイス9は、それぞれの2次パスSkmのそれぞれの2次経路デジタルモデルcfS´kmを使用して基準信号x(n)を選別し、受信した重み付け係数のセットに基づいて選別された基準信号を更新するように構成される。
【0085】
2次経路デジタルモデルcfSkmは、アクチュエータ2とエラーセンサ3との間の伝達関数を表している。これは、キャリブレーションステップにおけるオフライン(妨害ノイズがない場合)において決定され、また、オンライン(騒音がある場合)において、所謂オンライン2次経路モデリング手法により決定することが可能である。
【0086】
以下のように、伝達関数はFIRフィルタにより表すことができる。また、選別および重み付けされた基準信号x'km(n)は、ドット積により次のように決定できる。
【数6】
【0087】
ここで、
【数7】
【数8】
【0088】
x'km(n)は、重み付けおよび選別された基準信号である。「n」は、現時点における時間ステップである。x(n)は、基準信号x(n)の時間履歴を含むベクトルである。cfSkm(n)は、アクチュエータkとエラーセンサmとの間の2次経路cfSkmを表す、重み付けおよび選別されたFIRフィルタのL係数を含むベクトルである。
【0089】
選別および重み付けされた基準信号x'km(n)は、選別および重み付けデバイス9からフィルタ更新デバイス8に送信できる。エラーセンサ重み付けデバイス10は、それぞれのエラーセンサ重み付け係数mp(n)をそれぞれのエラーセンサ信号e(n)に適用することにより、それぞれの重み付けされたエラー信号e'(n)を決定し、重み付けされたエラー信号e'(n)をフィルタ更新デバイス8に送信するように構成できる。フィルタ更新デバイス8は、次式を使用する反復プロセスにより、適応フィルタのフィルタ係数を段階的に更新するように構成できる。
【数9】
【0090】
ここで、μは、ステップサイズである。kは、k番目のアクチュエータを表す。mは、m番目のエラーセンサを表す。w(n)は、フィルタ係数の現時点のセットを含むベクトルである。w(n+1)は、フィルタ係数の更新されたセットを含むベクトルである。x'km(n)は、重み付けおよび選別された基準信号x(n)の時間履歴を含むベクトルである。e'(n)は、m番目のエラーセンサからの重み付けされたエラー信号である。μγは、漏れ係数である。
【0091】
適応アルゴリズムユニット6は、重み付け係数をLMSアルゴリズム、RLSアルゴリズムまたは任意の他の適切なアルゴリズムに適用することができる。
【0092】
特定のノイズソース動作状態におけるエラーセンサ3/アクチュエータ2に対する重み付け係数は、異なるノイズソース動作状態を表す信号c(n)と、対応する所定の重み付け係数と、の間の所定の関係のセットから決定できる。所定の重み付け係数は、ノイズソースの様々な動作状態に対して方法を最適化することによって決定できる。所定の重み付け係数は、ノイズソースの異なる動作状態を表す対応信号と共に、例えば、ルックアップテーブルとして記憶されてもよい。
【0093】
アクチュエータ2およびエラーセンサ3に対応する所定の重み付け係数は、重み行列として保存できる。
【数10】
【数11】
【0094】
ここで、mpおよびkpは、それぞれエラーセンサ3とアクチュエータ2に対する関与係数であり、「c」は、例えば、rpm、ホイール速度など可変の車両動作状態を表す。
【0095】
特定のノイズソース動作状態に対するエラーセンサ3/アクチュエータ2の重み付け係数は、記憶された重み付け係数の線形補間または他の曲線フィッティング技術などの補間によって決定できる。
【0096】
以下、動作状態c(n)が状態c0とc1との間にある場合の線形補間の例であり、アクチュエータ2とエラーセンサ3は重み付け(関与係数)を用いて更新されている。
【数12】
【数13】
【0097】
エラーセンサ3/アクチュエータ2に対する重み付け係数は、所定の重み付け係数、および、車両の運転状態の変化を表す変数の関数として決定できる。
図1
図2
図3
図4
図5