(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】無極性基材用の接着促進化合物
(51)【国際特許分類】
C08G 79/00 20060101AFI20230502BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20230502BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20230502BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20230502BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20230502BHJP
C09D 11/00 20140101ALI20230502BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20230502BHJP
C08F 220/26 20060101ALI20230502BHJP
C08F 230/00 20060101ALI20230502BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
C08G79/00
C09D7/65
C09D201/00
C09J201/00
C09J11/08
C09D11/00
C09D5/00 Z
C08F220/26
C08F230/00
C08F2/50
(21)【出願番号】P 2020545462
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 EP2018081951
(87)【国際公開番号】W WO2019101747
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-05-27
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505365965
【氏名又は名称】オルネクス ベルギー エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ベルゲン、ユーグ
(72)【発明者】
【氏名】ジェバエルト、ポール
(72)【発明者】
【氏名】ペーテルス、ステファン
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-176118(JP,A)
【文献】国際公開第2016/190373(WO,A1)
【文献】特開2017-095641(JP,A)
【文献】米国特許第06303270(US,B1)
【文献】特開平07-048513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 79/00
C08F 220/26
C08F 230/00
C08F 2/50
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
C09D 7/65
C09D 201/00
C09J 201/00
C09J 11/08
C09D 11/00
C09D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i-1)少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する少なくとも1つのヒドロキシル官能性(メタ)アクリル化化合物、
(ii)少なくとも1つのチタンオルトエステル(ii-a)及び/又は少なくとも1つのジルコニウムオルトエステル(ii-b)、並びに、
(iii)任意選択で、ヒドロキシル基と反応可能な基を有する少なくとも1つの他の化合物であって、前記基がカルボン酸基である化合物
の反応生成物である接着促進剤(AP)であって、
前記化合物(i-1)が、式1:
【化1】
(式中、R’は、アルキレン、(ポリ)エステル、(ポリ)エーテル、(ポリ)カルボナート、(ポリ)ウレタン又は(ポリ)アミドであり、R’’は、-H又は-CH
3であり、n>=2である)で表される化合物である、接着促進剤(AP)。
【請求項2】
1つの(メタ)アクリロイル基を有する少なくとも1つのヒドロキシル官能性(メタ)アクリル化化合物(i-2)からさらに調製される、請求項1に記載の接着促進剤。
【請求項3】
前記化合物(i-1)が、10~300mgKOH/gのヒドロキシル価を有する、請求項1に記載の接着促進剤。
【請求項4】
前記化合物(i-1)が、40~250mgKOH/gのヒドロキシル価を有する、請求項3に記載の接着促進剤。
【請求項5】
前記化合物(i-1)が、100~200mgKOH/gのヒドロキシル価を有する、請求項4に記載の接着促進剤。
【請求項6】
式1により記載される少なくとも1つの化合物(i)と式2により記載される少なくとも1つの化合物(ii)との反応から得られる、請求項1から5のいずれかのいずれか1項に記載の接着促進剤:
【化2】
式中
- n>=2
- M=Ti又はZr
- R=アルキル
- R’=アルキレン、(ポリ)エステル、(ポリ)エーテル、(ポリ)カルボナート、(ポリ)ウレタン又は(ポリ)アミド
- R’’=-H又は-CH
3。
【請求項7】
1モルのオルトエステル(ii)に対して少なくとも3当量の化合物(i)の反応から得られる、請求項6に記載の接着促進剤。
【請求項8】
式1によって記載される少なくとも1つの化合物(i)と、式3によって記載される少なくとも1つの化合物(iii)及び式2によって記載される少なくとも1つの化合物(ii)との反応から得られる、請求項1から5のいずれか1項に記載の接着促進剤:
【化3】
式中
- m≧1
- R’’’=アルキレン、(ポリ)エステル、(ポリ)エーテル、(ポリ)カルボナート、(ポリ)ウレタン又は(ポリ)アミド
- R、R’、R’’、n及びMは前述のとおりである。
【請求項9】
式1の化合物の少なくとも1当量のOH及び式3の化合物の少なくとも1当量のCOOHと、1モルの式2の化合物との反応から得られる、請求項8に記載の接着促進剤。
【請求項10】
前記化合物(ii)がオルトチタナートである、請求項1から5のいずれか1項に記載の接着促進剤。
【請求項11】
前記化合物(ii)がオルトジルコナートである、請求項1から5のいずれか1項に記載の接着促進剤。
【請求項12】
前記化合物(ii)がジルコニウムアルコキシド及び/又は縮合ジルコニウムアルコキシドである、請求項11に記載の接着促進剤。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の少なくとも1重量%の1つ以上の接着促進剤(AP)を含む放射線硬化性組成物。
【請求項14】
少なくとも1つの光開始剤をさらに含む、請求項13に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項15】
前記接着促進剤(AP)に由来するTi又はZrの含有量が少なくとも0.1重量%である、請求項13または14に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項16】
接着促進剤(AP)とは異なる少なくとも1つの(メタ)アクリル化化合物(UC)をさらに含む、請求項13から15のいずれか1項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項17】
前記組成物中に分散又は溶解する、阻害剤、酸化防止剤、UV安定剤、UV吸収剤、分散剤、スリップ助剤、充填剤、可塑剤、流動添加剤、消泡添加剤、水捕捉剤、艶消剤、ワックス、顔料、染料、樹脂材料のリストから選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項16に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項18】
物体又は基材をコーティングするためのプロセスであって、
(a)請求項13から17のいずれか1項に記載の放射線硬化性組成物を提供する工程、
(b)前記組成物を前記物体又は前記基材の表面に適用する工程、及び
(c)化学線で前記表面を照射する工程
を含む、プロセス。
【請求項19】
請求項13から17のいずれか1項に記載の放射線硬化性組成物でコーティングされた基材であって、前記基材が、金属、箔、木材、石、紙、MDF、コンクリート、プラスチック、ガラス、及び繊維製品から選択される、
前記コーティングされた基材。
【請求項20】
請求項13から17のいずれか1項に記載の放射線硬化性組成物から配合された少なくとも1つの層
を含む、医薬品、化粧品、飲料、又は食品グレードの製品を収容するのに適した包装材料。
【請求項21】
請求項1から12のいずれか1項に記載の接着促進剤(AP)から、又は、請求項13から17のいずれか1項に記載の放射線硬化性組成物から調製されたコーティング、インク、塗料、ワニス、又は接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着促進剤、及び印刷インク又はコーティングが適用(塗布)される基材へのそのコーティング又はインクの接着性を改善する放射線硬化性組成物に関する。本発明はさらに、本発明の材料でコーティング又は印刷された包装材料又は他のタイプの基材、例えばフィルムに関する。本発明の材料は、特に、ポリオレフィンのような非多孔性基材上のコーティング及びインクの接着性を改善する。
【0002】
例えばポリオレフィン成形物品又はポリオレフィンフィルム、特にポリプロピレン上に着色画像をコーティング又は印刷し、その画像にポリオレフィン表面への十分な接着性を保持させるのは困難である。主な問題は、ポリオレフィン、特にポリプロピレンは、コーティング又はインクが典型的には結合できる官能基をほとんど又はまったく有していないことである。
【0003】
この問題に対処するために、ポリオレフィンの表面を処理して、インク又はコーティング材料が結合できる官能基をその上に導入することが知られている。このような表面処理の例には、ポリオレフィンの表面を酸化するために空気の存在下で、ポリオレフィンの表面をコロナ放電、紫外線、熱、火炎、又は電子ビームに曝すことが含まれる。
【0004】
ポリプロピレン成形物品又はフィルムの表面へのインク又はコーティングの接着性の問題に対処する別の方法は、接着促進剤を添加することによってコーティング組成物又はインクを改変することである。
【0005】
接着促進化合物は、例えば、インクとそのインクが印刷される基材との間の接着性を強化するために、市販のインク配合物に使用される。接着不良は、印刷プロセスの困難又は不用意な印刷物の除去につながる。プラスチック食品包装の印刷は広く普及しており、印刷されたインクが包装に残っていること、及びインク組成物の一部が製品に混入しないことがこのような用途で特に重要である。
【0006】
チタン又はジルコニウム化合物に基づく接着促進剤は知られており、長年にわたって商業的に使用されてきた。
【0007】
米国特許第5859087号明細書(DSM)は、チタナート又はジルコナート化合物を含む放射線硬化性プライマー組成物を記載している。
【0008】
米国特許出願公開第2003/0161976号明細書としても公開された米国特許第7294658号明細書は、0.1~20%の有機チタナート化合物を含む放射線硬化性接着組成物を開示している。放射線硬化性接着組成物は、(a)ヒドロキシ(メタ)アクリラートと有機無水物との半エステルである少なくとも50重量%のCOOH官能性(メタ)アクリラートモノマー、及び(b)0.1~20重量%の有機チタナート化合物を含む。
【0009】
米国特許第7619021号明細書には、ポリマー又は合成樹脂の溶液を有機リン化合物と混合し、次いでこのようにして得られた生成物と、ハロゲン化チタン、チタンアルコキシド、チタンハロアルコキシド、縮合チタンアルコキシド、又はこれらのチタン化合物の2つ以上の混合物であってよいチタン化合物とを混合した後に得られる印刷インクのための接着促進剤が記載されている。
【0010】
欧州特許第0606971号明細書には、(A)ビニルオルガノポリシロキサン、(B)有機ケイ素化合物、(C)貴金属触媒、及び(D)(1)少なくとも2つのトリアルコキシシリル基を有するオルガノシロキサン化合物と、(2)少なくとも1つのα,β-不飽和アルケニル基を有する不飽和アルコールとの混合物又は反応の生成物である接着促進剤を含むエラストマー形成シリコーン組成物を記載している。
【0011】
米国特許第4536468号明細書は、金属キレート樹脂及び重合性化合物を含有するレジストインクを使用して、リソグラフィ技術によって基材上にレジストパターンを形成する方法を記載している。
【0012】
米国特許第7083831号明細書には、一般式(I):[CR1R2CR3CO]nMeOX4-n(式中、Meがチタン、ケイ素、又はジルコニウムイオンである)に相当する少なくとも1つのチタン、ケイ素、及び/又はジルコニウム化合物、分子あたり少なくとも2つのオレフィン性不飽和二重結合を含む少なくとも1つの他のオレフィン性不飽和コモノマー、分子あたり1つのオレフィン性不飽和二重結合を含む任意選択の他のコモノマー、ならびに放射線によって活性化される少なくとも1つのラジカル及び/又はカチオン重合開始剤を含むクロム非含有腐食防止剤が記載されている。
【0013】
飽和アルキル基を含有するオルトチタナート誘導体は、放射線硬化性組成物では好ましくない。硬化後、それらは、加水分解時及び/又はバインダ若しくは基材からのヒドロキシル若しくはカルボキシル基との縮合時に飽和アルコールを放出する。これは化学種が移動することにつながる。
【0014】
高速ライン速度(最大300m/分f.i.)で硬化でき、除去する必要がある水などのビヒクルを含まず、非多孔性基材、例えばポリオレフィンに対する接着性が強化されており、従来の放射線硬化性インクと適合性がある放射線硬化性接着促進剤が必要とされている。本発明の材料は、その後、従来の放射線硬化性インクを印刷することができるプライマー組成物として使用されてもよく、又は市場に存在する放射線硬化性インクに接着促進剤として添加され得る。それらはさらにコーティング材料にも使用できる。
【0015】
本発明の材料の利点は、それらがインクに添加された場合に、インクにおける望ましくない色の変化又は望ましくない粘度の変化などのいくつかの望ましくない副作用を回避できることである。本発明の材料は、インクの低い移動の仕様を満たすように調整することができる。
【発明の概要】
【0016】
この背景に対して、本発明者らは今般、以下の反応生成物である接着促進剤(AP)を提供する:
(i-1)少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する少なくとも1つのヒドロキシル官能性(メタ)アクリル化化合物、
(ii)少なくとも1つのチタンオルトエステル(ii-a)及び/又は少なくとも1つのジルコニウムオルトエステル(ii-b)、並びに、
(iii)任意選択で、ヒドロキシル基と反応することができる少なくとも1つの他の化合物(iii)。
【0017】
本発明の一実施形態では、化合物(i-1)の一部は、1つの(メタ)アクリロイル基を有するヒドロキシル官能性(メタ)アクリル化化合物から選択される化合物(i-2)で置き換えられてもよい。
【0018】
したがって、以下の反応生成物である接着促進剤(AP)も提供される:
(i-1)少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する少なくとも1つのヒドロキシル官能性(メタ)アクリル化化合物、
(i-2)任意選択で、1つの(メタ)アクリロイル基を有する少なくとも1つのヒドロキシル官能性(メタ)アクリル化化合物
(ii)少なくとも1つのチタンオルトエステル(ii-a)及び/又は少なくとも1つのジルコニウムオルトエステル(ii-b)、並びに、
(iii)任意選択で、ヒドロキシル基と反応することができる少なくとも1つの他の化合物(iii)。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、化合物(i-2)は使用されず、化合物(i-1)のみが使用される。
【0020】
上記の実施形態における「他の」とは、化合物(iii)は、化合物(i-1)、存在する場合、化合物(i-2)及び化合物(ii)とは異なることを意味する。化合物(iii)は、典型的には、カルボン酸基を有する化合物から選択される。
【0021】
このようにして得られた接着促進剤(AP)は、有利には、1分子あたり少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含有する。「(メタ)アクリロリル」とは、アクリロイル、メタクリロイル、両方の混合物及びその誘導体を意味する。好ましくは、(メタ)アクリロイル基は(メタ)アクリラート基である。
【0022】
好ましくは、化合物(i-1)は、10~300mgKOH/g、好ましくは40~250mgKOH/g、より好ましくは100~200mgKOH/gのヒドロキシル価(IOH)を有する。典型的には、化合物(i)の酸価は、30mgKOH/gより低く、典型的には20mgKOH/gより低く、より典型的には10mgKOH/gより低い。典型的には、ヒドロキシル価は酸価よりも高くなる。
【0023】
好ましくは、化合物(i)は、約1の(1の)平均ヒドロキシル官能価を有する。高い反応性が望まれる場合、一般にアクリル化化合物がメタクリル化化合物よりも好ましい。
【0024】
以下に、好ましい化合物(i-1)に関するいくつかの情報を示す。
【0025】
適切な化合物(i-1.a)は、15~300mgKOH/物質1gの範囲内のOH価を有する、ポリエステル(メタ)アクリラート、ポリエーテル(メタ)アクリラート、ポリエーテルエステル(メタ)アクリラート、アリルエーテル構造単位を有する不飽和ポリエステル、及びポリエポキシ(メタ)アクリラートからなる群から選択されるものである(例えば米国特許出願公開第2012/259065号明細書に記載されるように)。特に、不飽和基に加えてヒドロキシル基を含有するポリエステル(メタ)アクリラート、ポリエーテル(メタ)アクリラート、ポリエーテルエステル(メタ)アクリラート及び/又はポリエポキシ(メタ)アクリラートが好ましい。
【0026】
本明細書において好ましいのは、ヒドロキシル価が15~300mgKOH/物質1g、好ましくは60~200mgKOH/物質1gの範囲のポリエステル(メタ)アクリラートである。米国特許出願公開第2012/259065号明細書は、そのようなポリエステル(メタ)アクリラートを調製するために使用することができるモノマー構成成分の7つのグループを記載している。
【0027】
同様に適切なのは、20~300mgKOH/g、好ましくは100~280mgKOH/g、より好ましくは150~250mgKOH/gの範囲のヒドロキシル価を有するヒドロキシル基含有エポキシ(メタ)アクリラート及び/又は20~300mgKOH/g、好ましくは40~150mgKOH/g、より好ましくは50~140mgKOH/gの範囲のヒドロキシル価を有するヒドロキシル基含有ポリウレタン(メタ)アクリラートである。そのような化合物は、例えばP.K.T.Oldring(Ed.),Chemistry&Technology of UV and EB Formulations For Coatings,Inks&Paints,Vol.2,1991,SITA Technology,Londonの37~56ページに記載されている。
【0028】
ヒドロキシル基含有エポキシ(メタ)アクリラートは、典型的には、アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、モノマー、オリゴマーもしくはポリマービスフェノールA、ビスフェノールF、ヘキサンジオール及び/もしくはブタンジオール、又は、それらのエトキシル化及び/もしくはプロポキシル化誘導体のエポキシド(グリシジル化合物)との反応生成物である。ヒドロキシル基含有エポキシ(メタ)アクリラートには、アクリル酸及び/又はメタクリル酸と不飽和脂肪(脂肪酸トリグリセリド)のエポキシド、例えばEBECRYL(登録商標)860の付加生成物も含まれる。適切なエポキシ(メタ)アクリラートの例には、EBECRYL(登録商標)3600、EBECRYL(登録商標)3700、EBECRYL(登録商標)3701などが含まれる。
【0029】
典型的には、そのような化合物(i-1.a)は、1より高い残存平均ヒドロキシル官能価を有する。これは製品の拡張につながり、それが常に望ましいわけではない。残存平均ヒドロキシル官能価が約1である他の適切な化合物である化合物(i-1.b)を以下に列挙する。
【0030】
これらは、例えば脂肪族及び/又は芳香族ポリオールと、約1の残存平均ヒドロキシル官能価を有する(メタ)アクリル酸とのエステル化生成物である。(メタ)アクリル酸と、三価、四価、五価又は六価のポリオール又はそれらの混合物との部分エステル化生成物が好ましい。これに関連して、開環反応でこれらのポリオールに付加する、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド又はそれらの混合物とそのようなポリオールとの反応生成物、又はラクトンとそのようなポリオールとの反応生成物を使用することも可能である。適切なラクトンの例は、γ-ブチロラクトン、ならびに、特にδ-バレロラクトン及びε-カプロラクトンである。これらの変性又は未変性ポリオールは、所望の残留ヒドロキシル官能性に達するまで、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの混合物で部分的にエステル化される。
【0031】
(メタ)アクリル酸と、少なくとも1つの(メタ)アクリル官能基と共にエポキシ官能基を有する脂肪族、脂環式又は芳香族化合物との反応生成物も好適であり、同様に使用することができる。
【0032】
同様に適しているのは、アルキル基に1~20個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリラートのように、平均1つのヒドロキシ官能基が遊離したままの直鎖及び分岐ポリオールの(メタ)アクリル酸エステルである。特に好ましいのは、少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む化合物、例えばグリセロールジ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリラート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリラート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリラート及びそれらの(ポリ)エトキシル化及び/又は(ポリ)プロポキシル化同等物、例えばグリセロール(OP)3ジ(メタ)アクリラート、EP/POペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパン(OE)4ジ(メタ)アクリラートである。これらの化合物はしばしば混合物の形態で提供され、例えばペンタエリスリトールトリアクリラート混合物は主にトリアクリラートを含むが、テトラ及びジアクリラートのかなりの部分も含む。例えばペンタアクリラート及びヘキサアクリラートの混合物を含むジペンタエリスリトールペンタアクリラートも同じである。
【0033】
典型的には、化合物(i-1.b)は、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサ(メタ)アクリラート[典型的には、45~75のIOH及び0~8mgKOH/gのIAcを有する]、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリラート[典型的には、90~140のIOH、0~10mgKOH/gのIAcを有する]、ジ-トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート[典型的には、115~155のIOH及び0~8mgKOH/gのIAcを有する]、プロポキシル化グリセロールジ(メタ)アクリラート[典型的には、150~180のIOH及び0~5mgKOH/gのIAc]、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート[典型的には、120~155のIOH及び0~4mgKOH/gのIAcを有する]及び/又はオキシエチル化/オキシプロピル化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリラート[典型的には、75~110のIOH及び0~8mgKOH/gのIAcを有する]からなる群から選択される。ほとんどの場合、アクリラートが使用される。ペンタエリスリトールトリアクリラート、オキシエチル化/オキシプロピル化ペンタエリスリトールトリアクリラート及び/又はジペンタエリスリトールペンタアクリラート(DPHA)が特に好ましい。
【0034】
任意選択で、化合物(i-1)を化合物(i-2)と組み合わせて使用してもよい。以下は適切な化合物(i-2)、1つのヒドロキシル官能基及び1つの(メタ)アクリラート基を有するモノマー化合物である。適切なモノヒドロキシ官能性(メタ)アクリラート基含有アルコールの例は、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリラート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリラートのカプロラクトン-伸長変性物、例えばPemcure 12A(Cognis,DE)、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリラート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリラート、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピル(メタ)アクリラートなどである。このグループには、第三級飽和モノカルボン酸のグリシジルエステル、又はグリシジル(メタ)アクリラートと(メタ)アクリル酸との反応生成物も含まれる。第三級飽和モノカルボン酸は、例えば、2,2-ジメチル酪酸、エチルメチル酪酸、エチルメチルペンタン酸、エチルメチルヘキサン酸、エチルメチルヘプタン酸及び/又はエチルメチルオクタン酸である。
【0035】
一般に好ましい化合物(i-1)は、式1で表される化合物(式中、R’は、アルキレン、(ポリ)エステル、(ポリ)エーテル、(ポリ)カルボナート、(ポリ)ウレタン、又は(ポリ)アミドであってよい)である。ここで、アルキレンは、最も典型的には、アルキレン基中に1~60個、より好ましくは1~20個の炭素原子を有する。任意の化合物(i-2)の場合も同じであるが、n=1である。
【0036】
好ましくは、オルトエステル(ii)は、式M(OR)xを有し、式中、Mはチタン又はジルコニウムであり、Rはアルキル基であり、「x」は典型的には4である(下記の式2を参照)。オルトエステルは、オリゴマー又はポリマー様構造を形成する縮合オルトエステルであることができる。
【0037】
化合物(ii)は、チタンオルトエステル(ii-a)及び/又はジルコニウムオルトエステル(ii-b)であり得る。本発明の一実施形態では、化合物(ii)はオルトチタナートである。別の実施形態では、化合物(ii)はオルトジルコナートである。本発明のさらに別の実施形態では、オルトチタナートとオルトジルコナートとの混合物が使用される。オルトチタナート及びオルトジルコナートは、アクリル化樹脂との相溶性が良好であるため、典型的には好ましい。
【0038】
好ましいのは、一般式M(OR)4のテトラアルキルチタナート及び/又はテトラアルキルジルコナートであり、式中、Rは、アルキル基、好ましくは1~20個の炭素原子を有するものである。アルキル基は典型的には、式-CnH2n+1を有する。典型的には、アルキルはC1-C12アルキル、好ましくはC1-C10アルキル、より好ましくはC1-C8アルキルである。各R基は同じ又は異なっていてもよい。典型的には、本発明の接着促進剤(AP)を調製するために使用されるテトラアルキルチタナート及び/又はテトラアルキルジルコナートは、エチレン性不飽和基を含まず、より具体的には(メタ)アクリロイル基を含まない。
【0039】
特に適切なチタンアルコキシド(アルキルチタナートとも呼ばれる)には、テトラn-ブチルチタナート、テトライソプロピルチタナート、テトラ2-エチルヘキシルチタナート、テトラn-プロピルチタナート、テトラエチルチタナート、テトラt-ブチルチタナート、チタンキレート、例えばジアルキルビス(アセチルアセトナート)チタナート、ジイソプロピルビス(アセチルアセトナート)チタナート、ジイソブチルビス(アセチルアセトナート)チタナート、及び/又はジアルキル-ビスエチルアセトアセタトチタナート、例えばジイソブチル-ビスエチルアセトアセタトチタナート又はジイソプロピル-ビスエチルアセトアセタトチタナートが含まれる。最も好ましいチタナートは、テトライソプロピルオルトチタナート及び/又はテトラエチルチタナートである。
【0040】
しかし、縮合チタンアルコキシド(縮合アルキルチタナートとも呼ばれる)、より具体的には、一般式R6O[Ti(OR6)2O]nR6の1つを使用することも可能であり、式中、R6はアルキル基を表す。好ましくは、nは20未満、より好ましくは10未満である。好ましくは、R6は1~6個の炭素原子を含み、有用な縮合アルコキシドには、ポリブチルチタナート及びポリイソプロピルチタナートとして知られている化合物が含まれる。
【0041】
特に適切なジルコニウムアルコキシド(アルキルジルコナートとも呼ばれる)には、テトラn-プロピルジルコナート、テトラn-ブチルジルコナート、ジイソプロピル-ビスエチルアセトアセタトジルコナート、テトラエチルジルコナート、テトライソプロピルジルコナート、テトラn-プロピルジルコナート、チタンテトラ-2-エチルヘキシル、及びキレート、例えばジイソプロピルジ(エトキシアセトアセチル)ジルコナート、ジ-n-ブトキシ(ビス-2,4-ペンタンジオナート)ジルコナートが含まれる。好ましいのは、テトラエチルジルコナート、テトライソプロピルジルコナート、テトラn-プロピルジルコナート、テトラブチルジルコナート及び/又はテトラ2-エチルヘキシルジルコナートである。このカテゴリーで最も好ましいのは、テトラエチルジルコナート、テトラn-プロピルジルコナート、テトライソプロピルジルコナート及び/又はテトラブチルジルコナートである。
【0042】
しかし、縮合ジルコニウムアルコキシド(縮合アルキルジルコナートとも呼ばれる)、より具体的には、一般式R6O[Zr(OR6)2O]nR6の1つを使用することも可能であり、式中R6はアルキル基を表す。好ましくは、nは20未満、より好ましくは10未満である。好ましくは、R6は1~6個の炭素原子を含み、有用な縮合アルコキシドには、ポリブチルジルコナート、ポリイソプロピルジルコナート及び/又はポリ-n-プロピルジルコナートとして知られている化合物が含まれる。
【0043】
本発明の一実施形態では、化合物(ii)はチタナート(上記のいずれか)から選択される。本発明の別の実施形態では、化合物(ii)は、ジルコナート(上記のいずれか)から選択される。おそら両方の混合物が使用され得る。本発明の文脈において好ましいのは、ジルコナートである。
【0044】
典型的には、化合物(ii)の総重量に対するジルコナートの量は、少なくとも60重量%である。この量は、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%である。いくつかの実施形態では、ジルコナート(上記のもののいずれか)のみを使用することが好ましい場合がある。
【0045】
以下に、いくつかの好ましい化合物(AP)並びにこれらを得る方法が記載されている。
例えば、式1により記載される少なくとも1つの化合物(i)と式2により記載される少なくとも1つの化合物(ii)との反応から得られる化合物(AP)である、
【化1】
【0046】
本発明の好ましい実施形態では、これにより、以下の式(I)によって表される化合物(AP)が得られる、
【化2】
【0047】
上記では、典型的には、
-n>=2
-y=1~4までの整数
-x=4-y
-M=Ti又はZr
-R=アルキル
-R’=アルキレン、(ポリ)エステル、(ポリ)エーテル、(ポリ)カルボナート、(ポリ)ウレタン又は(ポリ)アミド
-R’’=-H又は-CH3。
【0048】
上記において、少なくとも1、一般的には少なくとも1.5、より典型的には少なくとも2、好ましくは少なくとも2.5、より好ましくは少なくとも3、さらに好ましくは少なくとも3.5、最も典型的には少なくとも4当量の化合物(i)が、1モルのオルトエステル(ii)と反応するために使用される。
【0049】
好ましくは、化合物(i)及び(ii)の重量パーセンテージの合計は、>70重量%、典型的には>90重量%、最も典型的には>95重量%である。本明細書では、重量パーセンテージは、化合物(AP)の総重量に対するものである。一実施形態では、合計は100重量%に等しく、これは、化合物(i)及び(ii)以外のビルディングブロックが使用されないことを意味する。
【0050】
上記の反応は、溶媒の有無にかかわらず進行することができる。あるいは、反応性希釈剤、典型的にはアクリル化希釈モノマーを使用して、粘度を制御することができる。
【0051】
上記の化合物(AP)は、典型的には、1モルの化合物(ii)と比較して少なくとも3当量の化合物(i)を使用することにより製造される。反応は典型的には、真空下で形成されるアルコール(R’OH、例えばイソプロパノール)をストリッピング除去することで完了される。アルコールをストリッピングした後、未反応の化合物(i)が最終製品に残る可能性がある。触媒は必要ない。
【0052】
本発明のさらに別の実施形態では、化合物(i)及び(ii)を含有する組成物に、化合物(i)とは異なる少なくとも1つの化合物(iii)を添加する。この任意選択の化合物(iii)は、化合物(ii)と反応する。ヒドロキシル官能基と反応することができる官能基は、典型的にはカルボン酸基である。化合物(iii)は、典型的には、(メタ)アクリロイル官能化カルボン酸から選択される。
【0053】
本発明のこの実施形態において、化合物(AP)は、式1によって記載される少なくとも1つの化合物(i)を、式3によって記載される少なくとも1つの化合物(iii)及び例えば式2によって記載されるような少なくとも1つの化合物(ii)と反応させることにより得られる。
【化3】
【0054】
上記では典型的には、
-m≧1
-R’’’=アルキレン、(ポリ)エステル、(ポリ)エーテル、(ポリ)カルボナート、(ポリ)ウレタン又は(ポリ)アミド
-R、R’’、R’’’、n及びMは前述のとおりである。
【0055】
式3の(メタ)アクリル化官能化カルボン酸は、(メタ)アクリル化ポリオールと有機無水物との反応により、米国特許出願公開第2003/0161976号明細書に記載されるように得ることができる。適切な無水物には、無水フタル酸、無水マレイン酸、トリメリト酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、アジピン酸無水物、アゼライン酸無水物、セバシン酸無水物、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、マロン酸無水物、ピメリン酸無水物、スベリン酸無水物、2,2-ジメチルコハク酸無水物、3,3-ジメチルグルタル酸無水物、2,2-ジメチルグルタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、メチルナド酸無水物、オクテニルコハク酸無水物、HET無水物などが含まれるが、これらに限定されない。カルボン酸も使用できる、例えば(メタ)アクリル酸、アクリル酸二量体(例えばβCEA、2-カルボキシエチルアクリラート)又はそのオリゴマー、及び/又は残留カルボン酸基を有するポリエステル(メタ)アクリラート)。
【0056】
典型的には、このような化合物は、式1の化合物の少なくとも1当量のOH及び式3の化合物の少なくとも1当量のCOOHを1モルの式2の化合物と反応させることにより得られる。
【0057】
さらにより好ましくは、化合物(AP)は、式1の化合物の少なくとも1(好ましくは少なくとも2)当量のOH及び式3の化合物の少なくとも1(好ましくは少なくとも2)当量のCOOHを1モルの式2の化合物と反応させることにより調製される。
【0058】
上記において、化合物(i)、(ii)及び(iii)の重量パーセンテージの合計は、典型的には>70重量%、より典型的には>90重量%、最も典型的には>95重量%である。本明細書では、重量パーセンテージは、化合物(AP)の総重量に対するものである。一実施形態では、合計は100重量%に等しく、これは化合物(i)、(ii)及び(iii)以外の他のビルディングブロックが使用されないことを意味する。
【0059】
同様に、上記の反応は、溶媒と共に又は溶媒無しで進行することができる。あるいは、反応性希釈剤、典型的にはアクリル化希釈モノマーを使用して、粘度を制御することができる。
【0060】
存在する場合、化合物(iii)は、典型的には、化合物(i)、(ii)及び(iii)の合計の50%未満などのより少ない重量パーセンテージを形成している。好ましくは、任意選択の化合物(iii)は、化合物(i)及び(iii)の合計の50%未満の量で存在する。好ましくは、接着促進剤は、化合物(iii)を添加せずに、化合物(i)及び(ii)のみを使用して得られる。この実施形態は、ヒドロキシル基含有化合物を無水物化合物と反応させる追加の工程を回避することを可能にする。また、化合物(iii)の各モルは形成された接着促進剤中に典型的には1モルのカルボン酸基を生成するので、化合物(iii)を使用する場合の接着促進剤中の非常に大量の残存カルボキシル基による望ましくない後の副次的影響の可能性を減らすこともできる。
【0061】
カルボキシル基との一部の反応は、例えば接着促進剤が特定量の遊離アクリル酸、アクリル酸二量体、例えばβCEA又は酸官能性ポリエステルアクリラートを含む組成物に組み込まれる場合、害を与えずにその場で(in-situで)起こり得ることに注目することができる。
【0062】
このようにして得られうる化合物(AP)の例は、例えば、式(II)による化合物である、
【化4】
式中n、m、M、R、R’、R’’及びR’’’は上記で定義したとおりである。
【0063】
n≧2及び/又はm≧2(上記のいずれか)の場合、リガンド毎に2つ以上の(メタ)アクリロイル基(典型的にはアクリラート基)が導入される。これは高いUV反応性を与える。別の利点は、これにより、不完全な硬化の可能性が減少し、それにより移動のリスクも減少することである。未反応の化学種の移動は、食品包装産業などの一部の最終用途では望ましくない。
【0064】
好ましくは、OH/Mのモル比は≧3、より好ましくは≧4であり、ここで、OH含有量は、式1の化合物(i)に由来するOHの量(当量)である。これは製品の安定性にプラスの影響を与える。
【0065】
チタナートを使用して化合物(AP)を調製する場合、この化合物のTi含有量は、典型的には0.1~10重量%、より好ましくは1~5重量%、最も好ましくは1.5~3重量%である。本明細書では、重量パーセンテージは、接着促進剤(AP)の総重量に対するものである。
【0066】
ジルコナートを使用して化合物(AP)を調製する場合、この化合物のZr含有量は、典型的には0.2~20重量%、より好ましくは2~10重量%、最も好ましくは3~6重量%である。本明細書では、重量パーセンテージは、接着促進剤(AP)の総重量に対するものである。
【0067】
本発明による化合物(AP)の粘度は、典型的には、25℃で10~100,000、好ましくは10~50,000、より好ましくは50~10,000、最も好ましくは100~5,000mPa・sである。
【0068】
本発明の化合物(AP)は、プラスチック、より具体的には無極性プラスチックのような非多孔性基材上に顔料含有(着色)コーティング、インク及び透明コーティングの良好な接着性を与える。典型的には、非多孔性基材(例えば、PP)は表面処理されている。このような表面処理の例には、ポリオレフィンの表面を酸化するために典型的には空気の存在下でプラスチック、より具体的にはポリオレフィンの表面をコロナ放電、紫外線、熱、火炎、又は電子ビームに曝すことが含まれる。コロナ処理及び/又は火炎処理が好ましい。最高の結果は、例えばコロナ処理OPPのような表面処理プラスチックで得られた。
【0069】
本発明の材料と他の材料との違いは、コーティング又はインクが二酸化チタン(例えば、白色顔料含有インク)に基づく場合に最も顕著であったが、もちろん他の顔料も同様に使用できる(例えば、以下のリストを参照)。本発明の化合物(AP)は、標準的なUV材料との適合性をさらに証明した。したがって、それらは、本発明の放射線硬化性組成物(RCC)において使用され得る。
【0070】
したがって、本明細書では、本発明による少なくとも1つの化合物(AP)と、さらに化合物(AP)とは異なる少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物(UC)とを含む放射線硬化性組成物(RCC)も提供される。化合物(UC)は、典型的には(メタ)アクリル化化合物であり、最も典型的にはそれらはアクリル化化合物である。それらは、モノマー、オリゴマー又はポリマーであり得る。
【0071】
典型的には、本発明の組成物(RCC)は、組成物の総重量に対して、少なくとも1重量%(wt%)の本発明による接着促進剤(AP)を含む。この量は、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも20重量%である。典型的には、この量は最大で99重量%、より典型的には最大で80重量%、最も典型的には最大で50重量%である。
【0072】
組成物(コーティング組成物又はインクであり得る)がTiO2を含む場合、組成物中の接着促進剤(AP)の量は、典型的には少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも20重量%である。
【0073】
典型的には、接着促進剤(AP)に由来する、組成物中の(Ti+Zr)の含有量は、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%である。接着促進剤(AP)がマスターバッチで使用される場合、組成物中の化合物(AP)の量は、典型的には10~99重量%、より典型的には20~80重量%、最も典型的には30~70重量%である。
【0074】
本発明の放射線硬化性組成物(RCC)は、化合物(AP)とは異なる少なくとも他のエチレン性不飽和化合物(UC)をしばしば含む。最も典型的な化合物(UC)は、(メタ)アクリル化化合物である。
【0075】
本発明の放射線硬化性組成物(RCC)、例えば、典型的には、いくつかの反応性希釈剤(UC-1)が含まれる。反応性希釈剤は、(メタ)アクリル化ポリオール、例えば1,2-エチレングリコールジアクリラート、1,4-ブタンジオールジアクリラート、1,6-ヘキサンジオールジアクリラート、ジプロピレングリコールジアクリラート、イソソルビドジアクリラート、ネオペンチルグリコールジアクリラート、エトキシル化ネオペンチルグリコールジアクリラート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリラート、トリプロピレングリコールジアクリラート、ビスフェノールAジアクリラート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリラート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリラート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリラート、ポリ(エチレン)グリコールジアクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、トリメチロールプロパントリメタクリラート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリラート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリラート、プロポキシル化グリセロールトリアクリラート、ペンタエリスリトールトリアクリラート、エトキシル化ペンタエリスリトールトリアクリラート、プロポキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリラート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリラート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリラート、ジペンタエリスリトールペンタアクリラート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリラートエトキシル化ジペンタエリスリトールヘキサアクリラート又はそれらの混合物から選択され得、好ましくはエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリラート、エトキシル化ペンタエリスリトールトリアクリラート及びプロポキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリラートである。
【0076】
特に、コーティング組成物又はインクが食品包装用に配合されている場合、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリラート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリラート、ジペンタエリスリトールペンタアクリラート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリラート、エトキシル化ジペンタエリスリトールヘキサアクリラート、又はこれらのいずれかの混合物などの多官能性(メタ)アクリラートが好ましい。
【0077】
典型的には、本発明の組成物(RCC)中の反応性希釈剤(UC-1)の量は、組成物の総重量に対して、0~90重量%、好ましくは10~80重量%、最も好ましくは20~60重量%である。
【0078】
本発明の組成物(RCC)は、他の(メタ)アクリル化化合物(UC-2)、例えばポリエステル(メタ)アクリラート、ポリエーテル(メタ)アクリラート、ウレタン(メタ)アクリラート、エポキシ(メタ)アクリラート及び/又は(メタ)アクリル化(メタ)アクリル系化合物をさらに含んでいてもよい。そのような化合物は、当該技術分野で周知であり、広く記載されている。
【0079】
典型的には、本発明の組成物(RCC)中の化合物(UC-2)の量は、0~90重量%、好ましくは10~80重量%、最も好ましくは20~60重量%である。
【0080】
典型的には、本発明の組成物(RCC)は、100%のUV組成物である。最も典型的には、それは実質的な量の水を含まない。したがって、本発明の組成物は、非水性組成物とも呼ばれる。有機溶媒(水以外の溶媒)が存在してもよいが、存在するとしても、それらの量は、最も典型的には最大で50重量%、より好ましくは最大で10重量%に制限される。
【0081】
本発明の接着促進剤(AP)は、様々な放射線硬化性コーティング組成物において、例えば、金属、非多孔性基材、例えばプラスチックなどで使用のために有用であり得るが、それらは放射線硬化性フレキソスクリーン、インクジェット、グラビアインクで特に有用である。
【0082】
コーティングは、着色コーティング又はクリアコーティングであり得る。光沢のあるコーティング又は艶消しコーティングであってもよい。コーティングは、プライマーとして、ベースコートとして、又はシール剤として使用できる。
【0083】
本発明によるインクは、通常、1つ以上の顔料及び/又は1つ以上の染料を含む。使用できる典型的な顔料は、着色無機顔料、白色無機顔料及び着色有機顔料である。有機染料を使用してインクに適切な色を付けることができ、それらはしばしば二酸化チタンなどの不透明化白色無機顔料と組み合わせて使用される。
【0084】
ワニスは、顔料非含有の状態で基材に適用(塗布)するために調製されてもよく、あるいはワニスは、顔料若しくは染料を添加することによって着色インク又はコーティングを後で調製するために調製されてもよく、これら自体を同様のインク組成物の量で濃縮又はマスターバッチとして分散させてもよい。
【0085】
本発明の放射線硬化性組成物(RCC)は、少なくとも1つの光開始剤をさらに含み得る。光開始剤は、紫外線(UV)放射線硬化に有用である。他の実施形態では、例えば、電子ビーム硬化又はフリーラジカルシステムを使用する場合、光開始剤を省略できる。本発明の放射線硬化性組成物(RCC)は、UV、LED又はHUVなどの低エネルギー源を使用して硬化することが可能である。
【0086】
本発明の放射線硬化性組成物(RCC)はまた、組成物中に分散又は溶解される添加剤、例えば阻害剤、酸化防止剤、UV安定剤、UV吸収剤、分散剤、スリップ助剤、充填剤、可塑剤、流動添加剤、消泡添加剤、水捕捉剤、艶消剤、ワックス、顔料、染料及び/又は樹脂材料を含むことができる。そのような添加剤の選択及び使用は、当該技術分野の範囲内である。
【0087】
使用され得る光開始剤の例には、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ヒドロキシメチルフェニルプロパノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1,1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシル-フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2(2-ヒドロキシ-2-プロピル)-ケトン、ジエトキシフェニルアセトフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスホン、(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンの混合物、並びにこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。一部の企業は、食品包装業界で使用できるポリマー光開始剤を市販している。光開始剤は、典型的に、0.1~10重量%の量で使用される。
【0088】
有利に使用され得る水捕捉剤の例は、イソシアナート、例えばp-トルエンスルホニルイソシアナート、アセタール、例えばジメトキシメタン、1,1-ジメトキシエタン、1,1-ジエトキシエタン、1,1,3,3-テトラエトキシプロパン、ケタール、例えば2,2-ジメトキシプロパン、2,2-ジエトキシプロパン、オルトエステル、例えばテトラメチルオルトカルボナート、トリメチルオルトホルマート、トリメチルオルトアセタート、トリエチルオルトホルマート、トリエチルオルトアセタート、トリエチルオルトプロピオナート、シラン、例えばトリエトキシビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、チタナート、例えばテトライソプロピルチタナート及びテトラエチルチタナート、ジルコナート、例えばテトラエチルジルコナート、テトラn-プロピルジルコナート、テトラn-ブチルジルコナート、オルガノ-アルミナート、例えばアルミニウムイソプロポキシド及びアルミニウムエトキシドである。本発明において好ましいのは、p-トルエンスルホニルイソシアナート、トリエトキシビニルシラン、テトラプロピルオルトジルコナート及び/又はテトラエチルオルトチタナートである。特に好ましいのは、p-トルエンスルホニルイソシアナートである。水捕捉剤は、典型的には、組成物の総重量に対して、0~20重量%、好ましくは0.5~10重量%、最も好ましくは1~5重量%の量で使用される。乾燥剤、例えば酸化バリウム、塩化カルシウム、酸化カルシウム、硫酸カルシウム及び粘土、五酸化リン、活性アルミナ、モレキュラーシーブ、シリカゲル及び乾燥二酸化チタンも使用できるが、あまり好ましくない。
【0089】
本発明の文脈において使用され得る阻害剤及び酸化防止剤の例には、トリフェニルホスファイト(TPP)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、フェノチアジン(PTZ)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、モノメチルエーテルヒドロキノン(MeHQ)、ヒドロキノン、プロピルガラート、4-tert-ブチルカテコール、ブチル化ヒドロキシルアニソール又はIrganox MD 1024(BASFのフェノール系酸化防止剤)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書では、立体障害フェノール(BHTのような)が非立体障害フェノールよりも好ましい。
【0090】
典型的には、これらの阻害剤及び酸化防止剤は、約1000ppmの濃度で使用される。
【0091】
適切なUV安定剤及びUV吸収剤の例は、ヒンダードフェノール、ホスファイト及びチオエーテル、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、ベンゾトリアゾールなどである。ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)及び/又はベンゾトリアゾールが好ましい。硬化時の黄変(光黄変)を低減するのに役立つ可能性のある添加剤の例には、これらに限定されないが、例えば国際公開第2003/060017号明細書に記載されているヒドラジン及びヒドラジドが含まれる。これの適切な例は、例えばJapan HydrazideからのHN130である。適切な酸化防止剤は、例えばBASFからのIrganox MD 1024である。
【0092】
本発明の組成物で使用できる顔料は、ペースト又は液体インクで使用される任意の顔料である。そのような顔料のリストはカラーインデックス(Color Index)に見出すことができる。より具体的には、それらの顔料としては、例えばプロセスイエロ13(ジアリリドイエロ-CibaのIrgalite BAW、ClariantのPermanent GR)、プロセスマゼンタピグメント57(Bona Calcium - SunのIlobona 4BY、CibaのIrgalite SMA)、プロセスブルー15.3(銅フタロシアニン - CibaのIrgalite GLO、ClariantのHostaperm Blue B2G)、プロセスブラック7(酸化カーボンブラック - DegussaのSpecial Black250、Special Black350)などが挙げられる。顔料は、好ましくは組成物の総重量の1~50重量%、より好ましくは1~40重量%で使用される。
【0093】
本発明の接着促進剤は、他のジルコナート及び/又はチタナート、例えば米国特許第5859087号明細書に記載されているものと共に使用されてもよい。「他の」とは、化合物(AP)とは異なる接着促進剤を意味する。適切なジルコナート化合物の具体例には、ジルコナートテトラ-n-ブトキシド、ジルコナートテトラ-t-ブトキシド、ジルコナートジ-n-ブトキシド(ビス-2,4-ペンタンジオナート)、ジルコナートジメタクリラートジブトキシド、ジルコナートテトラエトキシド、ジルコナートテトライソプロポキシド、ジルコナートテトラ-n-プロポキシド、ジルコナートテトラ-2-エチルヘキソキシド及び/又はジルコナート2,4-ペンタンジオナートが含まれる。適切なチタナート化合物の具体例には、チタナートビス(トリエタノールアミン)-ジイソペルオキシド、チタナートテトラ-n-ブトキシド、チタナートジ-n-ブトキシド(ビス-2,4-ペンタンジオナート)、チタナートジイソペルオキシド(ビス-2,4-ペンタンジオナート)、チタナートテトラエトキシド、チタナートテトライソプロポキシド、チタナートテトライソブトキシド、チタナートメタクリラートトリイソプロポキシド、及び/又はチタナートテトラ-n-プロポキシドが含まれる。しかしながら、好ましくは、組成物中の接着促進剤の合計に対して、本発明の接着促進剤(AP)の少なくとも60重量%が使用される。多くの場合、この量は少なくとも70重量%であり、本発明の実施形態では、この量は少なくとも90重量%、ほぼ100重量%である。
【0094】
本発明の接着促進剤(AP)及び放射線硬化性組成物(RCC)は、コーティング組成物、インク、ワニス(オーバープリントワニスを含む)、塗料及び接着剤(UVラミネート接着剤を含む)の製造に使用できる。本発明の別の態様は、本発明の接着促進剤(AP)及び/又は組成物(RCC)から調製されるコーティング組成物、インク、ワニス(オーバープリントワニスを含む)、塗料及び接着剤(UVラミネート接着剤を含む)に関する。本発明の組成物(RCC)は、クリアであることができ又は顔料を含有する(着色する)ことができるが、典型的には顔料を含有している。本発明の実施形態において、二酸化チタン(TiO2)は、本発明の放射線硬化性組成物(RCC)中に存在する。本発明の材料はさらに、UVラミネート接着剤、複合材料、3D印刷用の3D物体などの製造に適している。
【0095】
本発明の一実施形態では、放射線硬化性組成物は、コーティング組成物、より具体的には顔料を含有するコーティング組成物、最も具体的には酸化チタンに基づくコーティング組成物である。別の好ましい実施形態では、放射線硬化性組成物はインク又はワニス、より具体的には二酸化チタンに基づくインクを含むインクである。
【0096】
本発明のインクは、オフセットインク、フレキソインク、グラビアインク、スクリーンインク、デジタルインク及びインクジェットインクであることができる。
【0097】
本発明のインクは、包装(特に食品包装)で使用されるものなどのプラスチック材料(特にフィルム)で形成された基材上での使用に特に適している。そのような基材の例には、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンもしくは共押出ポリプロピレン/ポリエチレンフィルム又はシート、及びポリ二塩化ビニリデンコーティングされたプラスチック材料が含まれるが、このリストは限定を意図するものではない。
【0098】
本発明の包装材料は、医薬品、化粧品、食品又は飲料グレードの製品を含み得る。
【0099】
本発明のさらに別の態様は、医薬品、化粧品、飲料又は食品グレードの製品を収容するのに適した包装材料に関し、
-本発明による放射線硬化性組成物(RCC)から配合された少なくとも1つの層を含む。
【0100】
任意選択で、上記以外のさらなる層を適用することができる。
【0101】
本発明の材料は、間接的な食品接触での使用に特に適しており、本明細書で使用される「食品」という用語は、アルコール飲料を含む飲料にも適用される。包装材料は、様々なタイプのプラスチックフィルム、紙、及びアルミニウム箔を含む、広範囲の異なるタイプの材料から形成され得る柔軟性包装であってよい。プラスチックフィルムには、様々な種類のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドが含まれる。次のもの、PET、ポリカルボナート及びPEも使用されてもよい。フィルムは、ホモポリマー、コポリマー、及びポリマーブレンドの様々な組合せであってもよい。フィルムは単層であっても、多層に共押出されていてもよい。フィルムはまた、一般的にコーティングされ、金属化され、又はそうでなければ得られる包装の性能を高めるために処理されている。
【0102】
本発明の放射線硬化性組成物(RCC)を適用する好ましい方法は、ロールコーティング、グラビア、オフセットグラビアなどの周知のウェブコーティング法の使用を含む。本発明によるコーティング組成物を適用する他の技術には、スプレー、ディップコーティングなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0103】
本発明の組成物(RCC)は、金属、箔、木材、石、紙、MDF、コンクリート、プラスチック、ガラス、織物などの様々な基材に適用されてもよい。それらは、非多孔性基材、例えばプラスチック、より具体的には無極性プラスチック上の使用に特に適する。本発明の材料は、ポリオレフィン材料上の使用に特に適している。
【0104】
これらは、低分子量有機化合物の移動に対する効果が低いバリアであることが知られており、加えて、それらは接着が困難な基材であることが知られている。当該技術分野で一般的なポリオレフィンは、エチレン、ブチレン、プロピレン、ヘキセン、オクテンなどのホモポリマー又はコポリマーである。好ましいポリオレフィンに基づくフィルムには、ポリプロピレン及びポリエチレン、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリイソブチレン(PIB)が含まれる。二軸配向ポリプロピレン(BOPP)又は配向ポリプロピレン(OPP)などの、配向された形態のポリプロピレンを所望により使用することができる。PET、PE、ポリカルボナート(PC)も使用可能な基材である。
【0105】
所望により、ポリオレフィンをコーティング、ブレンド、共重合、又は他の材料と共押出して、バリア、取り扱い性、外観、又はシーリング特性を向上させてもよい。これらの改変は、「ポリオレフィンに基づく材料」及び「ポリオレフィンを含む材料」の定義に含まれる。
【0106】
ポリオレフィン上で使用される一般的なコーティングには、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、アクリルに基づくコーティング、ならびにその他の様々なバリアコーティング及び加熱封止コーティングが含まれる。ポリオレフィンはまた、真空メタライゼーションプロセスを使用して金属の薄層を受容してもよい。柔軟性包装用フィルムの製造に使用される一般的なポリオレフィンコポリマーには、エチレンとビニルアセタートとのコポリマー(EVA)、エチレンとビニルアルコールとのコポリマー(EVOH)、エチレンとアクリル酸とのコポリマー、エチレンとエチルアクリラートとのコポリマーが含まれる。これらの改変の多くがポリオレフィンのバリア特性を向上させることが知られているという事実にもかかわらず、移動抵抗性(migrating resistant)のラミネート接着剤は、包装製品(例えばPET又はポリカルボナートで形成された包装材料)における悪臭及び異臭を防止することが依然として望ましい。
【0107】
本発明の特定の実施形態は、本発明の接着促進剤(AP)及び/又は放射線硬化性組成物(RCC)から配合される、その外側表面上に印刷物を有する白色ポリオレフィン層を有する包装材料に関する。印刷は、周知のインク及び/又は電子写真技術などの任意の従来の方法を使用して実行することができる。好ましい方法には、フレキソ印刷又はグラビア印刷機を使用して、連続したラインで印刷を施すことが含まれる。
【0108】
本発明はまた、本発明の放射線硬化性組成物(RCC)の、低表面エネルギー層、特に典型的には無極性基材であるポリオレフィン上での使用に関する。典型的には、本発明の材料は、フレキソインクのようなインクに組み込まれる。無極性プラスチックへの接着性は、当該技術分野における課題であるが、本発明の材料が使用されると、大幅に改善される。本発明の材料をポリオレフィンなどの低表面エネルギー層に使用する場合、好ましくは、この低エネルギー層の表面は、接着性を高めるために表面処理されている。表面処理は周知であり、任意の従来の表面処理方法を、特定の用途に望まれるように使用することができる。適切な表面処理方法の例には、コロナ処理、化学処理、プラズマ処理、火炎処理、熱処理、紫外線又は電子ビームへの曝露が含まれる。多くの場合、表面処理は空気の存在下で行われ、ポリオレフィンの表面を酸化する。好ましくは、ポリオレフィンに基づく層が利用される場合、本発明の組成物(RCC)を適用する前に、コロナ処理又は火炎処理が最初に表面に適用される。
【0109】
本発明の別の態様は、以下の工程を含む、物体又は基材をコーティングするためのプロセスに関する:
(a)本発明による放射線硬化性組成物(RCC)を提供する工程、
(b)この組成物を物体又は基材の表面上に適用する工程、
(c)化学線、最も典型的にはUVで表面を照射する工程。
【0110】
本発明の一実施形態では、コーティングする物体又は基材は、プラスチックのような非多孔性材料から、より具体的にはポリオレフィンのような無極性プラスチックから形成される。典型的には、この場合の基材の物体の表面は処理され、最も好ましくはコロナ処理される。表面処理の他の適切な方法は上に列挙されている。
【0111】
本発明のさらに別の態様は、本発明による放射線硬化性組成物(RCC)でコーティング又は処理される(例えば、コーティングの代わりに含浸され得る木材の場合)基材又は物体に関する。基材はポリオレフィンフィルムであってよく、物体は、本発明の材料から調製された印刷可能なコーティングを少なくとも1つの表面上に有するポリオレフィン成形物品又はポリオレフィンフィルムであってよい。コーティング(インクの形態であり得る)は、プライマー、シーラ又はトップコートであることができる。
【0112】
本発明の材料は、それらが低臭気、汚染及びおそらく低移動を提供するという利点を有する。
【0113】
本発明は、以下の非限定的な例によってさらに説明される。
【0114】
例
ヒドロキシル価(mgKOH/gでのIOH)は、次の電位差滴定法を使用して測定した。この「OH価」法には、電位差滴定によるヒドロキシル基の自動定量手順が含められる。ヒドロキシル価は、1グラムの樹脂から調製された完全にアセチル化された誘導体の加水分解生成物を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数として定義される。工程1のアセチル化工程:すべてのヒドロキシル官能基は、塩化アセチルによって75℃でアセチル化される。工程2の加水分解工程:過剰の塩化アセチルは、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)の水溶液で加水分解される。工程3の滴定工程:形成された酸官能基をKOH0.5N溶液で滴定する。
【0115】
酸価(mgKOH/gでのIAc)も電位差滴定を使用して測定した。「総酸価」は、本無水物の加水分解後にサンプル1gに存在する酸(単一種または複数種)を中和するのに必要な水酸化カリウム(KOH)のミリグラムに等しい。サンプルに存在する無水物は、加水分解工程中に対応する酸に加水分解され、KOHの標準溶液で滴定される。酸価がそれぞれ低く、総酸価が高いサンプルを分析する場合は、異なる滴定溶液、すなわち0.1NのKOH及び/又は0.5NのKOHを使用することができる。電位差滴定では、滴定装置及びpH電極を使用して自動的に終点を識別でき、手動滴定では、カラーインジケータ(フェノールフタレイン)を使用して視覚的に終点を識別する。KOHの量は、総酸価の計算に使用される。
【0116】
粘度:接着促進剤の粘度は、DIN EN ISO3219、25 1/s、25℃に従って、コーン及びプレートタイプのレオメータMCR100(Paar-Physica)を使用して、固定剪断速度で測定される。
【0117】
アスペクト:アスペクトは視覚的に評価された。
【0118】
安定性:製品の安定性は、キャップを有する90%充填された100mlのボトル内で80℃で試験された。重合による粘度上昇を経時的に確認した。
【0119】
本発明による化合物(AP)の合成
オーバーヘッドミキサ、コンデンサ、熱電対、及び窒素注入口を備えたダブルジャケット(油加熱)反応器に、1molのテトライソプロピルチタナート(例1~3及び比較例1、2及び4)又は1molのテトラn-プロピルジルコナート(例4~5及び比較例3)、及びオキシプロピル化/オキシエチル化ペンタエリスリトールトリアクリラート(OH価98mgKOH/g、例1~5)又はTONE M-100(OH価161mgKOH/g、例6)又はcarduraアクリラート(OH価152mgKOH/g、例7)の異なる当量を充填する。反応混合物を60℃に加熱し、イソプロパノール(例1~3及び比較例1~4)又はn-プロパノール(例4~5)を真空下での蒸留及びエアスパージにより除去する。蒸留が完了すると、反応混合物は室温で冷却される。
【0120】
mgKOH/gで表されるOH価は、56.1(KOHの分子量)でその値を除算することにより、ミリ当量OH/gに変換され得る。
【表1】
【0121】
一般に、少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物(i-1)が好ましい。例えばCOMP1~3に基づく材料の安定性は、例1~5に基づく材料よりも低かった(表1)。
【0122】
上記の組成物及び比較組成物を用いて、中程度の剪断で、アクリラート、本発明の化合物(AP)及び光開始剤を混合することにより、以下のコーティング配合物を調製した。
【0123】
プラスチックへの白色フレキソインクの接着性
上記の材料から白色フレキソインクを調製した。本明細書では、インクは2つの工程で調製された、最初に、中程度から高い剪断力の下で、アクリル化バインダにTiO
2を混合(分散)して、顔料ペーストを作製し、第2の工程においてこの顔料ペーストに、希釈アクリラート、本発明の組成物及び光開始剤が添加される。下の表は、プラスチックへの接着性の違いを示す。
表2Aは、チタナートアクリラート(AP)の結果を示す。
表2Bは、ジルコナートアクリラート(AP)の結果を示す。
表3は、放射線硬化性組成物(白色インク)のエージング後のプラスチックへの接着性に関するデータを提供する。
表4は、クリアコートのプラスチックへの接着性を示す。
【表2A】
【0124】
光開始剤ブレンド12/2は、ベンゾフェノン(14%)、Irgacure651(34%)、Irgacure369(7%)、2-イソプロピルチオキサントン(13%)及びエチル4-(ジメチルアミノ)ベンゾアート(32%)の混合物である。
【0125】
安定剤溶液:TMPEOTA中に4%NPAL
このインクは、K Printing Prooferを用いて、コロナ処理されたポリプロピレン(InnoviaからのC58)に約2g/m2のフィルム重量で適用される。
【0126】
フィルムは、140W/cmの水銀ランプを使用して、空気中で様々な速度(30~100m/分)で硬化させた。
【0127】
Tesa 4104テープを使用したテープ試験で接着性を測定した。テープをコーティング又はインクにある程度の圧力で適用して、空気を取り除き、表面とテープとが密着するようにする。テープは速い動きで引き剥がされる。接着性は、適用直後、適用後24時間及び72時間で試験される。接着性は、0(接着性なし)から5(完全な接着性)で表される。
【0128】
UV反応性は、「グラファイト試験」を指触により評価した(数値が高いほど、表面反応性が高くなる)。
【0129】
指触:もはや粘着性がない場合、フィルムは硬化(乾燥)と評価される。
【0130】
グラファイト試験:この試験は、コーティングされた表面にいくらかのグラファイトを置き、その後、綿片でこの表面をこすることにより行われる。表面に黒い汚れが残っていない場合、表面は硬化したと見なされる。例えば、「10m/分」は、グラファイト試験に合格するために10m/分での硬化が必要であったことを意味する。
【0131】
Ti又はZrの量(接着促進剤の総重量に対する重量%):蛍光X線分光法により測定する。
【0132】
また、モノアクリラート(i-2)から調製された接着促進剤は、本発明による同様のTi含有量の接着促進剤(AP)よりも性能が劣っていたことがわかる - 比較例A1対例5(表2A)。
【0133】
表2Bは、Zr含有量が低い場合でも、本発明による接着促進剤(AP)を使用して優れた接着性が得られたことを示している。
【表2B】
【0134】
表3は、プラスチックへの優れた接着性を示す本発明による接着促進剤(AP)から白色インクが調製され得ることを示している。
【表3】
【0135】
以下の表4は、本発明による接着促進剤(AP)から調製されたクリアコートもプラスチックへの優れた接着性を示すことを実証している。エージングを模倣するために、液体クリアコート組成物を40℃で2週間保持した。それでも、市場で入手可能な他の接着促進剤(単純なチタナート及びジルコナート)と比較して、接着性は優れていた。
【0136】
プラスチックへのクリアコートの接着性
例2(配合物B1)のチタナートは、例4(配合物B2及びB3)のジルコナートと比較して、40℃で2週間液体配合物をエージングした後、接着性が低下する。より低いジルコナート濃度(配合物B2)でも、接着性は依然として優れており-より高い濃度(配合物B3)で使用した場合と同じである。ジルコナートは、驚くべきことに、チタナートと比較してより低い濃度でさえ、エージング後によりよく機能する。それらは変色も示さないため、クリアコート及び顔料含有コートの両方での使用に非常に適している(表4)。
【0137】
表4はさらに、化合物(i)及び(ii)と化合物(iii)との反応が良好な結果を与えることを示している。
【0138】
例6-化合物B:1モルのテトラn-プロピルジルコナート(30重量%のn-プロパノール)を2当量のオキシプロピル化/オキシエチル化ペンタエリスリトールトリアクリラート(例1で使用したものと同じ)及び2モルの2-カルボキシエチルアクリラートと反応させ、n-プロパノールを真空下、80℃で3時間ストリッピングした。生成物の粘度は25℃にて2320mPasであり、ジルコニウム含有量は6.0%である。クリアコート(B4)において優れた接着性が得られる。
【0139】
【0140】
UVラミネート接着剤
表5:生成物は、PET/PEのラミネート接着剤として次の配合物で試験された。
【表5】
【0141】
表6:組合せDPHA及びEB LEO10501及びZr-アクリラート(上記の例4及び例6から)を使用したPET/PEラミネーションで優れた接着性が得られる(直後及び1時間後)。
ポリエチレンテレフタラート(PET)及びポリエチレン(PE)フィルム(厚み約80ミクロン)は両方ともコロナ処理された。オフセットMickleプルーファ装置を使用して、PETフィルムのコロナ処理面に約5ミクロンのコーティングを適用した。
【0142】
ポリエチレンフィルムのコロナ処理面を、コーティングされたPETフィルムにラミネートした。ラミネートをUVで硬化させた(LEDランプ8W/cm
2空冷365nm、ベルト速度5m/分で1又は3回)。
接着試験は、両方のフィルムを互いに引き裂くことによって評価された(180℃のT剥離試験)。この試験は、硬化直後及び1時間後の2つのサンプルに対して行われた。スコア5は、ラミネートを裂かずに
両方のフィルムを分離することができなかったことを意味する。これは、本発明の硬化組成物により優れた接着性が達成されることを意味する。
【表6】
なお、本発明に包含され得る諸態様または諸実施形態は、以下のとおり要約される。
[1].
(i-1)少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する少なくとも1つのヒドロキシル官能性(メタ)アクリル化化合物、
(ii)少なくとも1つのチタンオルトエステル(ii-a)及び/又は少なくとも1つのジルコニウムオルトエステル(ii-b)、並びに、
(iii)任意選択で、ヒドロキシル基と反応可能な基を有する少なくとも1つの他の化合物であって、前記基がカルボン酸基である化合物
の反応生成物である接着促進剤(AP)。
[2].
1つの(メタ)アクリロイル基を有する少なくとも1つのヒドロキシル官能性(メタ)アクリル化化合物(i-2)からさらに調製される、上記項目[1]に記載の接着促進剤。
[3].
前記化合物(i-1)が、10~300mgKOH/g、好ましくは40~250mgKOH/g、より好ましくは100~200mgKOH/gのヒドロキシル価(IOH)を有する、上記項目[1]から[2]のいずれかに記載の接着促進剤。
[4].
式1により記載される少なくとも1つの化合物(i)と式2により記載される少なくとも1つの化合物(ii)との反応から得られる、上記項目[1]から[3]のいずれかのいずれか1項に記載の接着促進剤:
[化1]
式中
- n>=2
- M=Ti又はZr
- R=アルキル
- R’=アルキル、(ポリ)エステル、(ポリ)エーテル(ポリ)カルボナート、(ポリ)ウレタン又は(ポリ)アミド
- R’’=-H又は-CH
3
。
[5].
1モルのオルトエステル(ii)に対して少なくとも3当量の化合物(i)の反応から得られる、上記項目[4]に記載の接着促進剤。
[6].
式1によって記載される少なくとも1つの化合物(i)と、式3によって記載される少なくとも1つの化合物(iii)及び式2によって記載される少なくとも1つの化合物(ii)との反応から得られる、上記項目[1]から[3]のいずれか1項に記載の接着促進剤:
[化2]
式中
- m≧1
- R’’’=アルキル、(ポリ)エステル、(ポリ)エーテル(ポリ)カルボナート、(ポリ)ウレタン又は(ポリ)アミド
- R、R’、R’’、n及びMは前述のとおりである。
[7].
式1の化合物の少なくとも1(好ましくは少なくとも2)当量のOH及び式3の化合物の少なくとも1(好ましくは少なくとも2)当量のCOOHと、1モルの式2の化合物との反応から得られる、上記項目[6]に記載の接着促進剤。
[8].
前記化合物(ii)がオルトチタナートである、上記項目[1]から[7]のいずれか1項に記載の接着促進剤。
[9].
前記化合物(ii)がオルトジルコナート、好ましくはジルコニウムアルコキシド及び/又は縮合ジルコニウムアルコキシドである、上記項目[1]から[7]のいずれか1項に記載の接着促進剤。
[10].
上記項目[1]から[9]のいずれか一項に記載の少なくとも1重量%の1つ以上の接着促進剤(AP)、及び好ましくはまた少なくとも1つの光開始剤を含み、好ましくは前記接着促進剤(AP)に由来するTi又はZrの含有量が少なくとも0.1重量%である放射線硬化性組成物。
[11].
化合物(AP)とは異なる少なくとも1つの(メタ)アクリル化化合物(UC)をさらに含み、好ましくは、前記組成物中に分散又は溶解する、阻害剤、酸化防止剤、UV安定剤、UV吸収剤、分散剤、スリップ助剤、充填剤、可塑剤、流動添加剤、消泡添加剤、水捕捉剤、艶消剤、ワックス、顔料、染料、樹脂材料のリストから選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、上記項目[10]に記載の放射線硬化性組成物。
[12].
物体又は基材をコーティングするためのプロセスであって、
(a)上記項目[10]または[11]に記載の放射線硬化性組成物を提供する工程、
(b)前記組成物を前記物体又は前記基材の表面に適用する工程、及び
(c)化学線で前記表面を照射する工程
を含む、プロセス。
[13].
前記基材が、金属、箔、木材、石、紙、MDF、コンクリート、プラスチック、ガラス、及び繊維製品、好ましくはコロナ処理及び/又は火炎処理された非極性プラスチックから選択される、上記項目[10]または[11]に記載の放射線硬化性組成物でコーティングされた基材。
[14].
上記項目[10]または[11]に記載の放射線硬化性組成物から配合された少なくとも1つの層
を含む、医薬品、化粧品、飲料、又は食品グレードの製品を収容するのに適した包装材料。
[15].
上記項目[1]から[9]のいずれか1項に記載の接着促進剤(AP)から、又は、上記項目[10]もしくは[11]に記載の放射線硬化性組成物(RCC)から調製されたコーティング、インク、塗料、ワニス、又はラミネート接着剤から選択されてよい接着剤。