(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】二次噴射による複形状ノズルの速度遷移および推力ベクトル化を制御するためのシステム
(51)【国際特許分類】
F02K 9/82 20060101AFI20230502BHJP
F02K 9/97 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
F02K9/82
F02K9/97
(21)【出願番号】P 2020558444
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 FR2019050927
(87)【国際公開番号】W WO2019202269
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-01-28
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】509025832
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(73)【特許権者】
【識別番号】507421290
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ドルレアン
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE D’ORLEANS
(73)【特許権者】
【識別番号】519365919
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・デヴリー-ヴァル-デソンヌ
【氏名又は名称原語表記】Universite d’Evry-Val-d’Essonne
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】レジェ,リュック
(72)【発明者】
【氏名】ズミヤノヴィッチ,ヴラデタ
(72)【発明者】
【氏名】セラム,モハメド
(72)【発明者】
【氏名】チュポン,アメール
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-222010(JP,A)
【文献】特開2006-322395(JP,A)
【文献】国際公開第2008/129372(WO,A2)
【文献】特開平01-041651(JP,A)
【文献】特表2012-530020(JP,A)
【文献】米国特許第03132476(US,A)
【文献】仏国特許出願公開第02618488(FR,A1)
【文献】特開2012-127349(JP,A)
【文献】米国特許第04947644(US,A)
【文献】米国特許第03925982(US,A)
【文献】米国特許第03394549(US,A)
【文献】特開昭56-096136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02K 9/00,9/82,9/97
F02K 1/00,1/06,1/28
B64G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学反応によって推進される航空機または宇宙船用のエンジンの推進ノズル(4)用の複数の湾曲外形を含む発散部(1)であって、前記ノズルは、軸線(41)を中心に回転対称性を有するノズルであり、前記エンジンは、本質的に主流(42)において前記ノズル(4)の外側に放出されることを意図した推進ガスを生成する反応チャンバ(5)を含み、前記発散部(1)は、ノズルスロート(3)から、
-前記ノズル(14)の前記軸線の周りに第1の回転面を有する第1の壁(110)を含み、前記第1の壁(110)は、軸平面において第1の湾曲プロファイルを有し、前記第1の湾曲プロファイルは、低高度での動作に適合した前記推進ガスの流れを生成するのに適する、第1の部分(11)と、
-全長Lを有し、湾曲外形の不連続性を画定する接続ゾーン(13)で前記第1の部分(11)に接続され、前記ノズル(41)の前記軸線の周りに第2の回転面を有する第2の壁(120)を含み、前記第2の壁(120)は、軸平面において第2の湾曲プロファイルを有し、前記第2の湾曲プロファイルは、高高度での動作に適合した前記推進ガスの流れを生成するのに適する、第2の部分(12)と、
-前記ノズル(4)によって排出された推進ガスの前記主流(42)へのガス(15)の少なくとも1つの追加ジェットの制御された噴射(14)のための装置と、を含み、
前記発散部(1)は、前記制御された噴射装置(14)が、前記発散部(1)の前記第2の壁(120)に軸対称に生成された1つのオリフィス(141)もしくは複数のオリフィス、またはオリフィスのグループ(141、142、143、144)に接続され、その結果、前記ガス(15)の追加のジェットの前記噴射が、前記主流に対して半径方向または傾斜した逆流で実行され、前記1つまたは複数のオリフィス(141、142、143、144)は、前記第2の部分(12)の全長Lの95%以下であり、前記第2の部分(12)の全長Lの1%より大きい、湾曲外形の不連続性を含む前記接続ゾーンから距離dで配置されることを特徴とする、発散部(1)。
【請求項2】
前記制御された噴射装置(14)は、湾曲外形の不連続性を含む前記接続ゾーンから距離dに位置する前記第2の壁(120)の全周にわたって延在するリングの形態を有するスロットからなる単一のオリフィス(141)を含み、前記オリフィス(141)の幅は、亜音速以上の噴射速度で、前記ノズル内の前記推進ガスの質量流量の最大20%に達する流量を得ることを可能にする、請求項1に記載の発散部。
【請求項3】
前記制御された噴射装置(14)は、同一の形状および寸法を有する少なくとも3つのオリフィス(142、143、144)を含み、前記オリフィス(142、143、144)は、湾曲外形の不連続性を含む前記接続ゾーンから距離dに位置する前記第2の壁(12)の円周に沿って規則的に間隔を置いて配置される、請求項1または2に記載の発散部。
【請求項4】
前記噴射装置(14)はまた、各々が前記噴射装置(14)のオリフィス(141、142、143、144)と連通し、前記噴射装置(14)の上流に配置されて、前記ガス(15)の追加のジェットを前記発散部(1)に均一に噴射する、1つまたは複数の供給チャンバ(145、146、147、148)を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の発散部。
【請求項5】
前記一次噴射の下流の前記第2の湾曲外形への前記再付着を防ぐことを可能にする、連続する異なる距離dに位置するいくつかの制御された噴射装置(14)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の発散部。
【請求項6】
前記1つまたは複数の噴射装置(14)によって噴射される前記ガス(15)の追加のジェットは、前記エンジンの前記反応チャンバ(5)、または燃焼剤(71)または燃料(72)タンク、または付属の補助タンク(73)から生じる、請求項1~5のいずれか一項に記載の発散部。
【請求項7】
化学反応によって推進される航空機または宇宙船用のエンジンの推進ノズル(4)であって、前記ノズル(4)は、
-前記反応チャンバ(5)で生成された前記ガスを受け入れる収束部分(2)と、
-ノズルスロート(3)と、
-前記ノズルスロート(3)に接続された発散部(1)と、を含み、
前記ノズル(4)は、前記発散部(1)が請求項1~6のいずれか一項に記載されたものであることを特徴とする、推進ノズル(4)。
【請求項8】
航空機または宇宙船用のエンジンの推進ノズル(4)の複数の湾曲外形を含む発散部における推進ガス流レジームの遷移を、前記航空機または前記宇宙船の高度が増加するかまたは減少するかの関数として制御するための方法であって、
前記方法は、高度が増加する場合、
・前記エンジンが、請求項7に記載の推進ノズル(4)を備えるステップと、
・自然遷移高度に到達する直前に、ガス(15)が、前記制御された噴射装置(14)を介して前記ノズル(4)内に半径方向に噴射されるステップと、
・前記噴射が、前記航空機または前記宇宙船の前記高度が最適遷移高度と呼ばれる前記遷移高度に達するまで維持されるステップと、を含み、
前記方法は、高度が減少する場合、
・宇宙船用の前記エンジンが、請求項7に記載の推進ノズル(4)を備えるステップと、
・前記最適遷移高度で、ガス(15)が、前記制御された噴射装置(14)を介して前記ノズル(4)内に噴射され、前記第2の壁(120)からの前記主流(42)の前記分離を強制するステップと、
・前記航空機または前記宇宙船の前記高度が前記自然遷移高度を下回るまで、前記噴射が維持されるステップと、を含む方法。
【請求項9】
航空機または宇宙船用のエンジンの推進ノズル(4)の複数の湾曲外形を含む発散部における推力ベクトル化のための方法であって、前記方法は、
・前記エンジンが、請求項3および7を合わせて規定された推進ノズル(4)を備えるステップと、
・前記航空機または宇宙船の軌道を修正する必要がある場合、ガスが、あるオリフィスから別のオリフィスへの噴射流量を変化させながら、前記オリフィス(142、143、144)を通して半径方向および非対称の方法で噴射されて、推進ガスの前記主流と前記周辺圧力との流れを非対称にして、そして前記推力をベクトル化するステップと、を含む方法。
【請求項10】
宇宙船が離陸または着陸段階にあるときに、前記宇宙船のエンジンの推進ノズル(4)の複数の湾曲外形を含む発散部の前記第2の湾曲外形への前記ジェットの再付着を制御するための方法であって、前記方法は、
・宇宙船用の前記エンジンが、請求項7に記載の推進ノズル(4)を備えるステップと、
・前記エンジンがオンになると、ガス(15)が、不安定性がないことを保証する十分な高度に達するまで、前記制御された噴射装置(14)を介して前記ノズル(4)内に半径方向に噴射されるステップと、
・非常に低い高度では、前記着陸段階で、前記エンジンが停止するまで、ガス(15)が前記制御された噴射装置(14)を介して前記ノズル(4)内に半径方向に噴射されるステップと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学反応によって推進される航空機または宇宙船用のエンジンの推進ノズルの分野、より具体的には、これらの推進ノズルで使用される発散部の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機および宇宙船(特に宇宙打ち上げロケット)の推進力を最適化するという文脈において、当業者は、最大推力を得るためにノズルの発散部の形状を最適化しようとすることが知られている。エンジンの推力を最適化するために、当業者は、通常、高度の関数として排気ノズルの発散部の形状を適合させる。形状が固定されている場合、この適合は特定の高度範囲内でのみ有効である。この範囲外では、エンジンの性能が低下し、航空機またはロケットのペイロードが制限される。
【0003】
この文脈では、二重湾曲外形ノズルは、その実装が容易であるため、現在、推進ノズルの性能を向上させるための有望なルートを表している
[1]、[2]、[3]、[4]。
図1に示すように、二重湾曲外形ノズルの発散部は、接続ゾーン13によって結合された2つのプロファイル曲率11、12によって構成される。第1の曲率11(または第1の湾曲外形)は、低高度での動作に適合した流れを生成し、第2の曲率12(または第2の湾曲外形)は、高高度での動作に適合した流れを生成する。したがって、二重湾曲外形ノズルは、2つの異なる高度範囲での動作に適しており、エンジン出力を向上させることができる。
図2aおよび
図2bは、「シュリーレン」写真を使用した、それぞれ低高度と高高度での二重湾曲外形ノズルの出口での流れの視覚化を示しており、ノズルが「低高度」モードで動作するときは、推進ガスの流れは第1の湾曲外形11に付着し、第2の湾曲外形12から分離され(
図2aを参照)、ノズルが「高高度」モードで動作するときは、第1の湾曲外形11および第2の湾曲外形12に付着する(
図2bを参照)。
【0004】
しかし、これらの二重湾曲外形ノズルには重大な問題があり、現在、航空機や宇宙船での使用が不可能になっている。上昇時には、低高度レジーム(すなわち、低膨張比NPR(ノズル圧力比)に対応)から高高度レジーム(すなわち、高NPRに対応)への移行は、時期尚早に、すなわち、低すぎる高度で発生し(NPRが低すぎる)、降下時には、高高度レジームから低高度レジームへの移行は遅すぎる、すなわち、NPRが低すぎる。この非最適な遷移(NPRの増加)または再遷移(NPRの減少)は、高度の関数としての推力の変化を示す、
図3aの符号34で示される推力の損失、ならびに時間の関数としての側面荷重とNPRの変化を示す、
図3bの符号36で示す重大な横力を誘発する横方向の不安定性につながる。
【0005】
したがって、高度の関数としての推力の変化(より具体的には、高度の関数としての比推力の変化)を示す本出願の
図3aでは、曲線32は、単一湾曲外形ノズルに存在する理論曲線を表し、その湾曲プロファイルは、二重湾曲外形ノズルの第1の湾曲外形11の曲線プロファイルに対応し、一方、曲線31は、単一湾曲外形ノズルで存在する理論曲線を表し、その湾曲プロファイルは、二重湾曲外形ノズルの第2の湾曲外形12の曲線プロファイルに対応する(
図1を参照)。理想的な遷移点は、曲線31と曲線32(
図3a)の交点に対応する点33(理論上の遷移高度)であり、これにより、2つの曲線の湾曲外形11、12の最高の性能を維持できる。曲線35では、二重湾曲外形ノズルの高度の関数としての比推力の自然な変化(すなわち、流れに干渉しない)を示しており、推力の損失(
図3aの符号34で示す)を見ることができ、また、遷移と再遷移が低すぎる高度で不安定な方法で行われるため、強い側面荷重(
図3bの符号36で示す)もある。より具体的には、
図3cは、推力の変化のレベルでヒステリシスがあることを示しているが、それは、高度が上昇している間の2つのレジーム間の自然な通過(
図3cに示されている遷移37)は、高度が低下しているとき(
図3cに示されている再遷移38)とまったく同じ高度では発生しないからである。
【0006】
これらの欠陥と欠点を解決するために、出願人は推進ノズルの湾曲外形の不連続性を含む発散部を開発し、これによれば、二次流体噴射が、ノズルの下流部分の発散部の第2の湾曲外形に作られた1つまたは複数のオリフィスまたはオリフィスのグループを介して実行され、これにより軌道を制御することもできる。
【0007】
特に、出願EP2103799、FR2618488およびEP2137395から、当業者には追加の噴射を実施することが公知であるが、しかし、この噴射は、流れの方向、流れに対して平行または壁に対して接線方向に、常に2つの湾曲外形の接続ゾーンの前または接続ゾーン内で実行される。
【0008】
より具体的には、欧州特許出願EP2137395は、主な流れの方向におけるノズルの軸線に平行な、ノズルの発散部の傾斜の変化での噴射を記載している。目的は2つある。
・一方では、ベンチュリ効果により、ジェットがエンジンの外側から空気を引き込み、放出される質量を増加させ、したがって、流れが第1の湾曲外形に付着したときのエンジンの推力を増加させ、
・他方では、混合層(ジェットと壁との間に含まれる流体と接触するジェットの外側部分)を加速する、その結果、負圧勾配を間接的に増加させ、流れが第2の湾曲外形に時期尚早に付着するのを防ぐ。
【0009】
この間接的な手法は、かなりのエネルギー(せん断層での間接的な作用)を必要とし、長い応答時間を引き起こす可能性がある。さらに、第1の湾曲外形から第2の湾曲外形への遷移を遅らせることが可能である場合、それでは、遷移中の側面荷重の存在の問題も、再遷移の問題(側面荷重および後期再遷移)も解決しない。
【0010】
仏国特許出願FR2618488は、主に、取り外し可能な第2の湾曲外形を含むノズルの発散部に関連している。この文脈では、この第2の湾曲外形は使用されいときには(物理的に)存在しないので、(EP2137395のように)流れが第2の湾曲外形に時期尚早に付着するのを防ぐ必要はない。この遷移が非対称的に発生し、側面荷重(不安定性)が発生するのを防ぐために、ここでは、勾配の変化の近くにある第2の湾曲外形の壁に接する噴射を使用して、第2の湾曲外形への再付着を強制する。FR2618488のノズルの動作原理は、高圧ゾーンを吹き飛ばして再付着を強制し、第2の湾曲外形への均一な付着を促進することである。次に、この噴射を利用して壁を冷却する。
【0011】
特許出願EP2103799は、推進ノズルの実施形態を記載しており、第1に、湾曲外形の変化点(EP2137395により教示されるように混合層を変更する)のすぐ上流に位置するオリフィスの第1のファミリによって第1の湾曲外形に接する二次噴射を使用して壁の近くで流れを加速することにより、流れが第2の湾曲外形に時期尚早に付着するのを防ぎ、次に、第2に、この動作が停止され、第2の湾曲外形への再付着が制御され、(FR2618488により教示されるように)第2のオリフィスファミリを使用して、未付着ゾーンの第2の湾曲外形に対して接線方向に吹き付けることによりそれを促進する。
【0012】
これらの先行技術文書[1]、[2]、[3]では、実施される物理現象は、再付着を防ぐために(すなわち、上昇段階で第2の湾曲外形に早く付着して推力の損失を防ぐために)、および第2の湾曲外形への再付着を促進するために(すなわち、側面荷重を回避する均一な遷移を得るために)、境界層または混合層を加速することで構成されている。これらの文書のいずれも、再遷移(第2の湾曲外形から第1の湾曲外形へ)を制御する方法を教示しておらず、これらの文書のいずれも、同じ噴射システムで、軌道の制御を可能にする推力ベクトル化を得る方法を教示していない。
【発明の概要】
【0013】
したがって、本発明は、ガスの追加噴射を可能にする二重湾曲外形発散部を開発し、その結果、上昇段階では、流れは第2の湾曲外形から分離されたままであり、次に、降下段階では、この分離を促進する発散部の2つの湾曲プロファイル間の勾配の変化の両方の場合を利用することによって、制御された均一な方法で分離が生じる。
【0014】
EP2103799のノズルとは異なり、本発明では、目的は境界層を加速することではなく、分離ゾーン内に半径方向に噴射または逆流を噴射して、第2の湾曲外形での時期尚早な遷移を防ぐことにより、既に存在する分離を強化し、そして、再遷移を制御するために、理想的な遷移点で第2の湾曲外形の分離を引き起こすことである。より具体的には、このアイデアは、プロファイルの変曲点(2つの湾曲外形の接続ゾーン)の下流で、逆圧力勾配を局所的に強化して、流れを第2の湾曲外形から完全に分離したままにし、またはこの分離を引き起こすことである。この技法には、接線方向の噴射技法と比較して慣性がほとんどなく、分離の駆動力である圧力勾配に直接作用するという利点がある。さらに、EP2103799で教示されているノズルとは異なり、この補強が不十分になったとき、または停止したときには、遷移を制御する場合に、流れは第2の湾曲外形で自然に付着状態に戻り、また、再遷移を制御する場合は、自然な再遷移高度を下回ったら、噴射を停止するだけで十分である。
【0015】
したがって、本発明の主題は、化学反応によって推進される航空機または宇宙船用のエンジンの推進ノズル用の湾曲外形の不連続性を含む発散部であって、前記ノズルは、軸線を中心に回転対称性を有するノズルであり、前記エンジンは、本質的に主流において前記ノズルの外側に放出されることを意図した推進ガスを生成する反応チャンバを含み、前記発散部は、ノズルスロートから始まって、
前記ノズルの前記軸線の周りに第1の回転面を有する第1の壁を含み、前記第1の壁は、軸平面において第1の湾曲プロファイルを有し、前記第1の湾曲プロファイルは、低高度で動作するのに適合した前記推進ガスの流れを生成するのに適する、第1の部分と、
-全長Lを有し、湾曲外形の不連続性を画定する接続ゾーンで前記第1の部分に接続され、前記ノズルの前記軸線の周りに第2の回転面を有する第2の壁を含み、前記第2の壁は、軸平面において第2の湾曲プロファイルを有し、前記第2の湾曲プロファイルは、高高度で動作するのに適合した前記推進ガスの流れを生成するのに適する、第2の部分と、
-前記ノズルによって排出された推進ガスの前記主流へのガスの少なくとも1つの追加ジェットの制御された噴射のための装置と、を含み、
前記発散部は、前記制御された噴射装置が、前記発散部の前記第2の壁に軸対称に生成された1つもしくは複数のオリフィスまたはオリフィスのグループに接続され、その結果、ガスの追加のジェットの前記噴射が、前記主流に対して半径方向または傾斜した逆流で実行され、前記1つまたは複数のオリフィスは、前記第2の部分の全長Lの95%以下であり、前記第2の部分の全長Lの1%より大きい、湾曲外形の不連続性を含む前記接続ゾーンから距離dで配置されることを特徴とする。
【0016】
追加のガスのジェットとは、主流に対して傾斜した逆流であって、本発明の意味の範囲内で、主流の方向(または噴射方向)とノズルへの追加のジェットの方向との間に形成される角度が90°~180°となるようにノズルスロートに向けられたガスの噴射を意味する。
【0017】
低高度とは、本発明の意味の範囲内で、平均海面と、所与の発散部における推進ガスの流れレジームの自然遷移高度(Atn、
図3aの符号34)より下に位置する高度との間に位置する高度を意味する。この場合、流れレジームは「低高度レジーム」と呼ばれる。
【0018】
所与の発散部における推進ガスの流れレジームの自然遷移高度(Atn)は、本発明の意味の範囲内で、低高度の流れレジームから高高度の流れレジームへの自然な移行、すなわち、ノズルにより排出されるガスの主流にガスを追加噴射を伴わない移行がある高度を意味する。
【0019】
高高度とは、本発明の意味の範囲内で、所与の発散部における推進ガスの流れレジームの自然遷移高度(Atn)より上に位置する高度を意味する。この場合、流れレジームは「高高度レジーム」と呼ばれる。
【0020】
オリフィスのグループは、本発明の意味の範囲内で、各々が少なくとも1つのオリフィスによって構成され、規則的に間隔を置いて配置されたオリフィスの少なくとも3つのグループによって構成される構成を意味する。
【0021】
距離dは、効率的な軌道制御を促進するために可能な限り大きくなるように各ノズルに適合させることができるが、一方、再遷移制御の場合に、分離を湾曲外形の不連続部に位置させることができる。
【0022】
有利には、一次噴射の下流の第2の湾曲外形への再付着を回避する目的で、連続する異なる距離dに配置されたいくつかの制御された噴射装置を前記ノズルに備えることも可能である。
【0023】
本発明による発散部の第1の実施形態によれば、前記制御された噴射装置は、湾曲外形の不連続性を含む前記接続ゾーンから距離dに位置する前記第2の壁の全周にわたって延在するリングの形態を有するスロットからなる単一のオリフィスのみを含むことができ、前記オリフィスの幅は、亜音速以上の噴射速度で、前記ノズル内の前記推進ガスの質量流量の最大20%に達する流量を得ることを可能にする。
【0024】
本発明による発散部の第2の実施形態によれば、制御された噴射装置は、同一の形状および寸法を有する少なくとも3つのオリフィスまたはオリフィスのグループを含むことができ、これらのオリフィスは、湾曲外形の不連続性を含む前記接続ゾーンから距離dに位置する前記第2の壁の円周に沿って規則的に間隔を置いて配置される。
【0025】
本発明による発散部の第3の実施形態によれば、発散部は、前記一次噴射の下流の前記第2の湾曲外形への前記再付着を防ぐことを可能にする、連続する異なる距離dに位置するいくつかの制御された噴射装置を含むことができる。
【0026】
有利には、本発明による発散部の噴射装置はまた、各々が噴射装置のオリフィスに接続され、前記噴射オリフィスの上流に配置されて、ガスの追加のジェットを発散部に均一に噴射する1つまたは複数の供給チャンバを含むことができる。
【0027】
ガスの追加のジェットは、それぞれ
図4aおよび
図4bに図式的に示すように、例えば燃焼による推進の場合、燃焼剤または燃料のタンクの、任意選択で既に存在する反応チャンバまたは他のタンク、あるいは、
図4cに図式的に示されているように、前記発明の使用のために特別に付属または追加された補助タンクから発生し得る。
【0028】
有利なことに、追加のジェットのガスは、反応チャンバから発生することができ(
図5aに図式的に示すように)、均一な噴射を可能にする供給チャンバが(
図5bに示すように)備えられる。
【0029】
本発明の主題はまた、化学反応によって推進される航空機または宇宙船用のエンジンの推進ノズルであり、ノズルは、
-前記反応チャンバで生成された推進ガスを受け取る収束部分と、
-ノズルスロートと、
-ノズルスロートに接続された本発明による発散部と、を含む。
【0030】
本発明の別の主題は、航空機または宇宙船用のエンジンの推進ノズルの複数の湾曲外形を含む発散部における推進ガス流レジームの遷移を、前記航空機または前記宇宙船の高度が増加するかまたは減少するかの関数として制御するための方法であって、
前記方法は、高度が増加する場合、
・前記エンジンが、本発明による推進ノズルを備えるステップと、
・自然遷移高度に到達する直前に、ガスが、前記制御された噴射装置を介して前記ノズル内に半径方向に噴射されるステップと、
・前記噴射が、前記航空機または前記宇宙船の前記高度が最適遷移高度と呼ばれる前記遷移高度に達するまで維持されるステップと、を含み、
前記方法は、高度が減少する場合、
・宇宙船用の前記エンジンが、本発明による推進ノズルを備えるステップと、
・最適な遷移高度で、ガスが、前記制御された噴射装置を介して前記ノズル内に噴射され、前記第2の壁からの前記主流の前記分離を強制するステップと、
・前記航空機または前記宇宙船の前記高度が前記自然遷移高度を下回るまで、前記噴射が維持され、噴射停止後の不安定性がないことが保証されるステップと、を含む。
【0031】
最適な遷移高度とは、本発明の意味の範囲内で、(
図3aおよび
図3cに示されているように)推力の損失を回避することを可能にするレジーム変更高度を意味する。
【0032】
本発明の別の主題は、航空機または宇宙船用のエンジンの推進ノズルの複数の湾曲外形を含む発散部における推力ベクトル化のための方法であって、本方法は、
・前記エンジンは、本発明による第2の実施形態による発散部(いくつかの噴射オリフィスを備えた追加のガス噴射装置)を備えた本発明による推進ノズルを備えるステップと、
・軌道を修正する必要がある場合、ガスが、あるオリフィスから別のオリフィスへの噴射流量を変化させながら、前記オリフィスを通して半径方向および非対称の方法で噴射されて、推進ガスの前記主流ならびにそれがノズルの壁に加える圧力を非対称にして、推力をベクトル化するステップと、を含む。
【0033】
したがって、第1の湾曲外形に付着した流れの場合(「低高度」レジーム)、ジェットはその自由部分(勾配の変化後)で衝撃を受けるが、ノズルの内側では、ジェットの非対称性は流体障害物を使用して得られる。「高高度」レジームでは、流れの部分的な分離が(ノズルの内面の一部で)引き起こされ、流れと壁への圧力の分布に非対称性が生じる。
【0034】
本発明によるノズルは、特に、離陸および着陸段階中に、燃焼の不安定性または一時的なレジーム遷移を引き起こす地面の近接によって引き起こされる不安定性を防止するために使用することができる。したがって、ガスの追加のジェットの噴射により、流れが第2の湾曲外形に付着しないことを保証でき、したがって、これらの不安定性が一時的なレジーム変更を引き起こさないことを確認することができる。
【0035】
本発明の別の主題は、宇宙船が離陸または着陸段階にあるときに、前記宇宙船のエンジンの推進ノズルの複数の湾曲外形を含む発散部の第2の湾曲外形へのジェットの再付着を制御するための方法であって、本方法は、
・宇宙船用の前記エンジンが、本発明による推進ノズルを備えるステップと、
・エンジンがオンになると、ガスが、不安定性がないことを保証する十分な高度に達するまで、前記制御された噴射装置を介して前記ノズル内に半径方向に噴射されるステップと、
・非常に低い高度では、前記着陸段階で、前記エンジンが停止するまで、ガスが前記制御された噴射装置を介して前記ノズル内に半径方向に噴射されるステップと、を含む。
【0036】
本発明の他の利点および特徴は、非限定的な例として与えられ、添付の図面および対応する例を参照して作成された以下の説明から生じるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】二重湾曲外形推進ノズルの概略斜視図である。
【
図2】従来技術で知られている推進ノズルの二重湾曲外形を含む発散部の出口での流れのシュリーレン写真によって得られた視覚化を示す図であり、低高度での動作(第1の部分2aは、流れが第1の湾曲外形に付着したままで、第2の湾曲外形から分離されていることを示す)および高高度での動作(第2の部分2bは、流れが第1および第2の湾曲外形に付着したままであることを示す)を示す。
【
図3】
図3aおよび
図3cは、高度の関数としての推力(NPRの関数としての比推力)の変化を示す曲線を示す図であり、
図3bは、再遷移時と遷移時の側面荷重の変化を表す図である。
【
図4】本発明による発散部(単一の噴射オリフィス)の第1の実施形態による二次噴射システムを備えた二重湾曲外形ノズルを備えた燃焼による推進システムを図式的に表す図であり、二次噴射ガスは、燃料タンク(
図4a)、燃焼剤タンク(
図4b)、または補助タンク(
図4c)のいずれかから発生する。
【
図5】本発明による発散部(単一の噴射オリフィス)の第1の実施形態による二次噴射システムを備えた二重湾曲外形ノズルを備えた燃焼による推進システムを図式的に表す図であり、二次噴射ガスは、供給チャンバなし(a)および供給チャンバあり(b)の燃焼室から発生する。
【
図6】本発明による発散部の第1の実施形態(単一の噴射オリフィス)による、湾曲外形の不連続性および二次噴射システムを含む発散部を備えたノズルの一例の概略図である。
【
図7】ノズルに推進ガスを供給する高圧チャンバ70を備えた
図6に示すノズルの写真を示す図であり、ノズルおよび高圧チャンバが実験用試験スタンドに取り付けられている。
【
図8】本発明による発散部の第2の実施形態(複数の噴射オリフィス)による、二重湾曲外形発散部および噴射システムを備えたノズルの概略図であり、二次噴射は、各々が供給チャンバ(
図8bに表示)を有する4つのオリフィス(
図8aに表示)を介して実行される。
【
図9】様々なタイプのオリフィスの使用を示す図であり、噴射は、いくつかのオリフィス(
図9a)またはオリフィスのグループ(
図9b、
図9c)を介して、半径方向にまたはわずかに傾斜した逆流で第2の湾曲外形で非対称的に実行され得る。
【
図10】シミュレーションおよび実験に使用される本発明による、二重湾曲外形発散部の一例のプロファイルを定義する図(寸法を含む)である。
【
図11】流量が主質量流量の2%に相当する非アクティブ(a)およびアクティブ(b)な二次噴射の場合に、異なるNPRについて本発明によるノズル内の数値シミュレーションによって得られたマッハ場を示す図である。
【
図12】異なる二次噴射圧力について、NPRが増加した場合の、NPRの関数としての推力Fxの変化を示す図である。
【
図13】異なる二次噴射圧力について、NPRが減少した場合の、NPRの関数としての推力Fxの変化を示す図である。
【
図14】二次噴射圧力Pi(単位kPaで供給チャンバで測定)、推力Fx(単位N)、側面荷重Fy(単位N)、およびNPRの経時変化を示す図である。
【
図15】シュリーレン写真(a)と数値シミュレーション(b)によって得られた、単一の円形オリフィスを通して実行される半径方向の二次噴射を伴う、従来技術から公知の推進ノズルの単一湾曲外形を含む発散部の出口での流れの可視化を示す図である。
【0038】
図1~
図15に示されている同一の要素は、同一の符号によって識別される。
【0039】
図1~
図5は、先行技術に対応する本発明の記述において説明されている。
【0040】
図6~
図9は、本発明による二重湾曲外形発散部(3つの実施形態)および本発明によるノズルの詳細な記述に関連して、記述の以下の部分でより詳細に説明される。
【0041】
図10~
図15は、その範囲を限定することなく本発明を例示する以下の実施例においてより詳細に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図6は、本発明による第1の実施形態(単一の噴射オリフィス)による湾曲外形の不連続性を含む発散部1を備えたノズル4の一例の概略図を表し、これは、噴射ノズル4と結合された高圧チャンバ70(上流)を含む化学反応によって推進される航空機または宇宙船のための推進システム(
図7のその試験台上に示す)の一部を形成する。ノズル4は、軸線41(
図6)を中心とした回転対称性を有するノズルである。高圧ガスが膨張し、本質的に主流42(
図6)内のノズル4を通って外部に向かって排出される。発散部1は、ノズルスロート3から、
-第1の壁110が軸平面内に第1の湾曲プロファイル(または第1の湾曲外形)を有するように、ノズル41の軸線の周りの第1の回転面を有する第1の壁110を含む第1の部分11と、
-全長Lを有し、湾曲外形の不連続性を画定する接続ゾーン13で前記第1の部分11に接続され、第2の壁120が軸平面内に第2の湾曲プロファイル(または第2の湾曲外形)を有するように、ノズル41の軸線の周りに第2の回転面を有する第2の壁120を含む第2の部分12と、
-ノズル4によって排出されるガス42の主流へのガスの少なくとも1つの追加のジェットの制御された噴射のための装置14と、を含む。
【0043】
流体の噴射は、各々が供給チャンバ(146、147、148~89:
図8b)を有する
1つのオリフィス(141、
図6)
または複数のオリフィス、またはオリフィスのグループ(142、143、144:
図8a)によって、あるいはまた、第2の湾曲外形120において軸対称に生成されたオリフィスのいくつかのグループ(
図9b、
図9c)によって、実施することができ、その結果、ガスの追加のジェットの追加噴射は、半径方向またはわずかに傾斜した逆流で実行される。オリフィスは、第1の2つの実施形態(一方は
図6に示し、他方は
図8、
図9aおよび
図9bに示す)について、高高度動作レジーム(第2の湾曲外形に付着される)の場合、噴射により、分離の衝撃が接続ゾーン13上で安定することを可能にするように、湾曲外形の不連続性を含む接続ゾーン13から距離dに配置される。
【0044】
本発明の第3のモード(オリフィスの複数のグループ:
図9c)では、一次噴射の下流の第2の湾曲外形120への再付着を防ぐために、いくつかの噴射システムを使用することができる。
【実施例】
【0045】
試験スタンドの実験能力の機能として製造された、本発明によるノズル(
図6および
図7に示す)が使用される。初期条件(ノズルスロートの上流)は3.5barおよび290Kで、ノズルスロートの半径r
tは8.5mmであり、理論流量は0.2285kg/sになる。ノズルのプロファイルは、遷音速流に適用されるSauer法
[5]によって開始された逆特性法を使用して得られる。理想的なノズルは、4.4°の出力角度を得るために切り詰められている(長さL
b)。延長部(長さL
e)も、壁に一定の圧力がかかるように特性法によって決定される。接続ゾーン13での角度は8°である。これらのデータは
図10に要約されている。
【0046】
図11は、二次噴射なし(
図11a)およびアクティブな二次噴射あり(
図11b)の、高度の増加(NPRの増加)の場合の本発明による噴射システムの動作原理を示している。
【0047】
この計算は、高いマッハ数で圧縮可能な流体に関して、流体力学用途用に特別に作成されたFASTRAN商用ソフトウェアプログラムを使用して実行される。それは、レイノルズ平均ナビエ-ストークス方程式(RANS)を有限体積法で解き、非粘性項は、3次のOsherフラックスリミッタを備えたVan Leer[6]方式を使用して計算される。使用される乱流モデルはK-オメガSST-メンターである。マルチドメインメッシュが使用される。初期条件は、温度290K、3.5barである。噴射はx/rt=6.483にあり、xは噴射とノズルスロートの間の距離であり、rtはノズルスロートの半径である。噴射オリフィスの幅は0.5mm、噴射圧力は0.4bar、噴射流量はノズルの主流流量(推進ガスの流量)の約2%である。
【0048】
様々なNPR(高度)のマッハ数(速度/音速)の場を示す
図11aでは、二次噴射がない場合、符号80(
図11a)で示される分離点がNPRの増加に伴って下流に移動することが分かる。NPR=11から、分離の衝撃は第2の湾曲外形に付加されるが、NPR=14では、実際には第2の湾曲外形の出口リップに到達する。
図11bは、アクティブな二次噴射81(一次質量流量の2%)の場合の様々なNPRのマッハ数の場を示す。これは、再付着高度を第2の湾曲外形に押し戻すことが可能であることを示している。実際、この場合、分離点82は、NPR14までの湾曲外形の不連続性を含む接続ゾーン13上に維持され、一方、噴射がない場合、この分離点80は、実際には、第2の湾曲外形120の出口に位置する。NPR16の場合、二次噴射は、もはや分離を維持し続けるのに十分なほど(流量に関して)重要ではなく、したがって、流れは噴射81の後ろで再付着する。
【0049】
この予測計算は、
図12および
図13に示すように、
図7に示す設定を使用して実験的に検証され、
図12および
図13は、異なる二次噴射圧力(供給チャンバ145内で測定)のNPRが増加(
図12)および減少(
図13)した場合のNPRの関数としての推力Fxの変化をそれぞれ示している。
【0050】
図12では、自然遷移NPR80と比較して、二次噴射がより高いNPR(50kPaでの二次噴射で83、77kPaでの二次噴射で84)への遷移を遅らせることが分かる。
【0051】
図13では、自然な再遷移90と比較して、二次噴射がより高いNPR(50kPaでの二次噴射で93、77kPaでの二次噴射で94)への再遷移をトリガすることが分かるが、これは求められる有利な効果である。二次噴射は、より好ましい遷移および再遷移を引き起こすだけでなく、損傷を与える側面荷重の低減、または排除さえも引き起こす。
【0052】
図14は、実験中の時間の経過に伴う、二次噴射圧力Pi(供給チャンバ内で測定)、推力Fx、側面荷重Fy、およびNPRの変化を示している。NPRの増加で推力の低下140が観察され、NPRの減少で推力の増加141が観察される。これは、噴射圧力が前述の最適な動作に到達するのに十分な高さではないことを示している(曲線142)。それにもかかわらず、噴射なしの場合のように側面荷重のピーク(
図3bの符号36で示すピーク)は観察されなくなり、これは求められる有利な効果である。
【0053】
図15は、直径5.8mmの単一の円形オリフィスを介して実行される半径方向の二次噴射を伴う、従来技術から公知の推進ノズルの単一の湾曲外形を含む、発散部の出口での流れのシュリーレン写真(図の部分a)と数値シミュレーション(図の部分b)によって得られた視覚化を示している。噴射は発散部の全長の88%に位置し、二次噴射の質量流量は推進ガスの主流流量の8%である。
図15では、二次噴射によってノズル内の流れが部分的に分離することが観察される。したがって、この噴射により、流れと壁の圧力分布に非対称性が生じる。したがって、得られた推力は、ノズルの軸線と整列しなくなる。このため、他の特定の軌道制御システムなしで、航空機または宇宙船の軌道を制御することが可能になる。
【0054】
参考文献リスト
[1]三菱重工業による欧州特許出願EP2103799。
[2]SocieteEuropeennedePropulsion(SEP)による仏国特許出願FR2618488。
[3]MOSCOW AVIATION INSTITUTEによる欧州特許出願EP2137395。
[4]AMERICAN ROCKWELL CORPORATIONによる米国特許US3,394,549。
[5]R.Sauer,“Dreidimensionale Probleme der Charakteristikentheorie partieller Differential-gleichungen”,Zeitschrift fur angewandte Mathematik und Mechanik,Vol 30,pp 347-356,November-December 1950。
[6]Van Leer,B.(1979),“Towards the Ultimate Conservative Difference Scheme,V.A Second Order Sequel to Godunov’s Method”,J.Com.Phys.,32,101-136。