(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】高麗人参の実多糖体を含むインフルエンザウイルス感染の予防又は抑制用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20230502BHJP
A61K 36/258 20060101ALI20230502BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20230502BHJP
A61K 31/715 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/258
A61P31/16
A61K31/715
(21)【出願番号】P 2020560975
(86)(22)【出願日】2019-04-26
(86)【国際出願番号】 KR2019005081
(87)【国際公開番号】W WO2019212203
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】10-2018-0050593
(32)【優先日】2018-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0048626
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】100, Hangang-daero, Yongsan-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョ, ドンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム, スファン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジュウォン
(72)【発明者】
【氏名】パク, チャン ウン
(72)【発明者】
【氏名】ソ, デ バン
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-507441(JP,A)
【文献】特表2011-513294(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103705561(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/105
A61K 36/258
A61P 31/16
A61K 31/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高麗人参
(Panax ginseng C.A. Meyer)の実多糖体を含むインフルエンザウイルス感染の予防又は抑制用組成物。
【請求項2】
前記高麗人参の実多糖体は、アラビノース、ガラクトース、ガラクツロン酸、及びグルクロン酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ガラクツロン酸及びグルクロン酸を前記高麗人参の実多糖体の総重量に対して0.1重量%~25重量%の範囲で含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記高麗人参の実多糖体は、β-グルコシルヤリブ試薬(β-glucosyl Yariv reagent)の処理時に標準アラビノ-β-3,6-ガラクタン(arabino-β-3,6-galactan)を100%としたとき、40%以上の反応を示す、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記高麗人参の実多糖体は、高麗人参の実のエタノール不溶性分画中の水溶性成分由来のものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記高麗人参の実多糖体は、インフルエンザのノイラミニダーゼ(neuraminidase)活性を抑制する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記インフルエンザは、H1N1、H1N2、H2N2、H3N2、H5N1、H6N1、H7N2、H7N3、H7N7、H7N9、H9N2、又はH10N7のうちの一種以上を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
当該組成物は健康機能食品用である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
当該組成物は薬学組成物である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、高麗人参の実多糖体を含むインフルエンザウイルス感染の予防又は抑制用組成物に関して記述する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザは、感染の初期症状が一般の風邪(急性ウイルス性鼻咽頭炎)と症状が似ていてひどい風邪とも呼ばれるが、風邪とはその原因や病症が全く異なる疾病である。主にライノウイルス(rhinovirus)、コロナウイルス(coronavirus)、アデノウイルス(adenovirus)、呼吸系発疹ウイルス(respiratory syncytial virus)などによって誘発される風邪とは異なり、インフルエンザはインフルエンザウイルスによって誘発される。
【0003】
インフルエンザは、高熱、寒気、筋肉痛、関節痛といったような深刻な病症を引き起こし、且つ高熱や合併症の発病危険が高いため死亡にも至らせることがある。高病原性又は高感染性の新型や変異型インフルエンザウイルスによるパンデミックインフルエンザ(pandemic influenza)が発生すれば多くの死亡者が出る危険性があり、これに対する対策が必要な実情である。
【0004】
インフルエンザの治療は、インフルエンザウイルスそのものをターゲットにしてウイルスの活性や感染メカニズムを直接的に遮断することによって可能となる。インフルエンザの治療剤としてM2抑制剤であるアマンタジン(amantadine)とリマンタジン(rimantadine)、ノイラミニダーゼ(neuraminidase、NA)抑制剤であるザナミビル(zanamivir、Relenza(登録商標))とタミフル(oseltamivir、Tamiflu(登録商標))が常用され、M2抑制剤はA型インフルエンザウイルスだけに作用し、NA抑制剤はA型及びB型インフルエンザウイルスに効果を奏する。タミフルの場合、悪心、嘔吐、神経系や精神系の異常などの副作用をもっており、タミフルを含む前記常用治療剤に対する耐性の様相が報告されたことがある。
【0005】
そこで、インフルエンザウイルス感染を予防し又は抑制して治療する効果に優れ且つ副作用や耐性のない素材についての要求が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国特許出願公開第103705561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一観点において、本発明が解決しようとする課題は副作用なしに効果的にインフルエンザ感染を予防又は抑制する組成物を提供することである。
【0008】
他の観点において、本発明が解決しようとする課題は、インフルエンザターゲット治療剤として作用する組成物を提供することである。
【0009】
また他の観点において、本発明が解決しようとする課題は、インフルエンザウイルスの感染メカニズムを遮断してインフルエンザウイルス感染を予防又は抑制することができる組成物を提供することである。
【0010】
また他の観点において、本発明が解決しようとする課題は、ノイラミニダーゼ活性を抑制してインフルエンザウイルス感染を抑制する効果を奏する組成物を提供することである。
【0011】
また他の観点において、本発明が解決しようとする課題は、A型及びB型インフルエンザウイルスの双方に作用可能なインフルエンザウイルス感染の予防又は抑制用組成物を提供することである。
【0012】
また他の観点において、本発明が解決しようとする課題は、低い投与量で顕著に優れたインフルエンザウイルス感染の予防又は抑制効果を奏する組成物を提供することである。
【0013】
また他の観点において、本発明が解決しようとする課題は、天然物であって副作用がないか低く、且つ耐性のないインフルエンザ感染の予防又は抑制用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一実施例において、本発明は、高麗人参の実多糖体を含むインフルエンザウイルス感染の予防又は抑制用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0015】
一観点において、本発明は、副作用なしに効果的にインフルエンザ感染を予防又は抑制する組成物を提供することができる。
【0016】
他の観点において、本発明は、インフルエンザターゲット治療剤として作用する組成物を提供することができる。
【0017】
また他の観点において、本発明は、インフルエンザウイルスの感染メカニズムを遮断してインフルエンザウイルス感染を予防又は抑制することができる組成物を提供することができる。
【0018】
また他の観点において、本発明は、ノイラミニダーゼ活性を抑制してインフルエンザウイルス感染を抑制する効果を奏する組成物を提供することができる。
【0019】
また他の観点において、本発明は、A型及びB型インフルエンザウイルスの双方に作用可能なインフルエンザウイルス感染の予防又は抑制用組成物を提供することができる。
【0020】
また他の観点において、本発明は、低い投与量で顕著に優れたインフルエンザウイルス感染の予防又は抑制効果を奏する組成物を提供することができる。
【0021】
また他の観点において、本発明は、天然物であって副作用がないか低く、且つ耐性のないインフルエンザ感染の予防又は抑制用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】従来のインフルエンザ治療剤のインフルエンザ阻害メカニズムを示した模式図であって、ヘマグルチニン(haemagglutinin)阻害(a)、mRNA合成阻害(b)、ノイラミニダーゼ(neuraminidase)阻害(c)を示す。
【
図2】β-グルコシルヤリブ試薬によってアラビノガラクタンを検出する反応を模式的に示したものである。
【
図3】高麗人参の実水溶性物質の分画を示したグラフである。
【
図4】高麗人参の実多糖体のクロマトグラフィー結果を示したグラフである。
【
図5】標準物質、高麗人参の実多糖体、及び紅参の根多糖体のβ-グルコシルヤリブ試薬処理によるリーゼガング環を示した写真である。
【
図6】標準物質、高麗人参の実多糖体、及び紅参の根多糖体のβ-グルコシルヤリブ試薬処理によるリーゼガング環の面積を比較して示したグラフである。
【
図7】CVT処理群へのNWSウイルスの接種時のノイラミニダーゼ活性阻害効果を確認したグラフである。
【
図8】高麗人参の実多糖体処理群へのNWSウイルスの接種時のノイラミニダーゼ活性阻害効果を確認したグラフである。
【
図9】CVT処理群へのCAウイルスの接種時のノイラミニダーゼ活性阻害効果を確認したグラフである。
【
図10】高麗人参の実多糖体処理群へのCAウイルスの接種時のノイラミニダーゼ活性阻害効果を確認したグラフである。
【
図11】試験例4の動物モデルにおけるインフルエンザ感染実験スケジュールを示した模式図である。
【
図12】ウイルスを接種してから3日後の肺病変指標を示したグラフである。
【
図13】ウイルスを接種してから5日後の肺病変指標を示したグラフである。
【
図14】ウイルスを接種してから7日後の肺病変指標を示したグラフである。
【
図15】高麗人参の実多糖体を投与した場合の、ウイルスを接種してから3日後の肺病変組織写真を示したものである。
【
図16】CVT投与群、陽性対照群、及び陰性対照群の、ウイルスを接種してから7日後の肺病変組織写真を示したものである。
【
図17】高麗人参の実多糖体を投与した場合の、ウイルスを接種してから3日後の肺病変組織写真を示したものである。
【
図18】CVT投与群、陽性対照群、及び陰性対照群の、ウイルスを接種してから7日後の肺病変組織写真を示したものである。
【
図19】ウイルスを接種してから3日後のウイルス感染水準を確認したRT-PCR結果である。
【
図20】ウイルスを接種してから5日後のウイルス感染水準を確認したRT-PCR結果である。
【
図21】ウイルスを接種してから7日後のウイルス感染水準を確認したRT-PCR結果である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照して、本出願の実施例をより詳細に説明することにする。なお、本出願に開示された技術はここで説明される実施例に限定されるものではなく、他の形態に具体化することもできる。ここで紹介される実施例は、単に開示された内容が徹底且つ完全なものになるように、また当業者に本出願の思想を十分に伝えられるようにするために提供されるものである。図面では各構成要素を明確に表現するために構成要素の幅や厚さなどの大きさをやや拡大して示した。また、説明の便宜上、構成要素の一部のみを図示したりもしているが、当業者であれば構成要素の残りの部分についても容易に把握できるはずである。さらに、当該分野における通常の知識を有する者であれば本出願の技術的思想を逸脱しない範囲内で本出願の思想を多様な他の形態に具現できるはずである。
【0024】
本発明の一実施例によれば、高麗人参の実多糖体を有効成分として含むインフルエンザウイルス感染の予防又は抑制用組成物を提供することができる。高麗人参の実多糖体は、特定の成分及び構造によってインフルエンザウイルスの活性又は感染阻害効果を奏し、具体的に、ノイラミニダーゼ活性阻害効果に優れる。これにより、本発明の実施例による組成物は、顕著に優れたインフルエンザウイルス感染の予防又は抑制効果を奏することができる。
【0025】
インフルエンザウイルスはA、B、C型などに分類され、A型及びB型が一般的であり、最も流行っている種類はA型インフルエンザウイルスである。A型インフルエンザウイルスはOrthomyxoviridaeに属するエンベロープ(envelope)を有する一本鎖ネガティブ鎖RNA(single-standed negative-sense RNA)ウイルスであって、表面抗原である16種のヘマグルチニン(Haemaglutinine)(H1~H16)と9種のノイラミニダーゼ(Neuraminase)(N1~N9)によって亜型が決められる。
【0026】
図1は、従来のインフルエンザ治療剤であるアマンタジン(amantadine)とザナミビル(zanamivir、Relenza(登録商標))、タミフル(oseltamivir、Tamiflu(登録商標))、リバビリン(ribavirin)のインフルエンザウイルス生活周期阻害メカニズムを示す。インフルエンザウイルスターゲッティング治療剤の代表的阻害メカニズムは、(a)ウイルスの細胞浸透に関与するヘマグルチニン(haemagglutinin)阻害、(b)mRNA合成阻害、及び(c)ウイルス放出のためのノイラミニダーゼ(neuraminidase)阻害が挙げられる。
【0027】
本発明の一実施例に係る高麗人参の実多糖体は、前記ノイラミニダーゼ活性を阻害して感染された細胞からインフルエンザウイルスが放出できないようにするので、他の細胞を感染させることを防ぐことができる。
【0028】
本発明の一実施例に係る高麗人参の実多糖体は、インフルエンザウイルスの増殖を阻害して抗ウイルス効果を奏し、これにより、インフルエンザウイルス感染の予防、抑制、又は治療効果を奏することができる。
【0029】
前記インフルエンザウイルスは、前記高麗人参の実多糖体のノイラミニダーゼ活性抑制作用によって感染が予防又は抑制されるインフルエンザウイルスであって、例えば、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、又はC型インフルエンザウイルスのうちの一種以上であってよい。前記インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザウイルスであってよく、例えば、H1N1、H1N2、H2N2、H3N2、H5N1、H6N1、H7N2、H7N3、H7N7、H7N9、H9N2、又はH10N7のうちの一種以上のインフルエンザウイルスであってよい。
【0030】
高麗人参の実多糖体は、高麗人参(Panax ginseng C.a. Meyer)の地上部のうち実の部位に由来した多糖成分であってよい。一例において、前記高麗人参の実は、高麗人参の実の果肉、果皮、または果肉及び果皮の両方を含む部位であってよい。
【0031】
前記高麗人参の実多糖体は、高麗人参の実をエタノールを用いて抽出した後、エタノールに溶解していない抽出不可溶成分から得ることができる。例えば、前記エタノール抽出不可溶成分を、水を用いて抽出して水溶性成分のみを選り出すことができ、該水溶性成分に含まれている高麗人参の実多糖体を有効成分として用いてよい。例えば、前記水溶性成分を濃縮し、エタノールで沈澱させた後、低分子量成分を除去して、高麗人参の実多糖体を得ることができる。
【0032】
例えば、種を取り除いた高麗人参の実を50~100%エタノールを用いて抽出した後、抽出不可溶成分を体積3~10倍の水で加温抽出して水溶性抽出物を得る。水溶性抽出物を固形分が10~50重量%になるように濃縮し、これに体積2~5倍のエタノールを用いて沈澱させた後、分画分子量(Molecular Weight Cut off)10,000~30,000で分離して低分子量成分を除去して高麗人参の実多糖体を得ることができる。前記低分子量成分の除去は、限外ろ過膜を用いた限外ろ過などのろ過、透析、2~10倍体積の50~100%エタノールによる1~10回の繰り返しの溶解処理などによって行ってよい。一例において、前記低分子量成分の除去後に乾燥を行ってよい。前記乾燥は、凍結、熱風、噴霧又は真空処理などによって行ってよい。
【0033】
一例において、前記高麗人参の実の水溶性成分を水抽出する前に酵素処理をさらに含んでよい。前記酵素は、食品に用いられる酵素であれば制限されずに使用可能であるが、例えば、アミラーゼ、プロテアーゼ、ペクチナーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、β-グルカナーゼ、又はプルラナーゼから選ばれたものであってよい。前記酵素処理では、例えば、40~60℃で10~60分間酵素と反応させてよい。
【0034】
前記高麗人参の実多糖体は、アラビノース、ガラクトース、ガラクツロン酸、及びグルクロン酸を含んでよい。
【0035】
一例において、前記多糖体の総重量に対して、ガラクツロン酸及びグルクロン酸を合計含量で0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、0.5重量%以上、0.6重量%以上、0.7重量%以上、0.8重量%以上、0.9重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、6重量%以上、7重量%以上、8重量%以上、9重量%以上、又は10重量%以上であり、且つ25重量%以下、24重量%以下、23重量%以下、22重量%以下、21重量%以下、20重量%以下、19重量%以下、18重量%以下、17重量%以下、16重量%以下、15重量%以下、14重量%以下、13重量%以下、12重量%以下、11重量%以下、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、又は4重量%以下で含んでよい。例えば、前記含量は、0.1重量%~25重量%、又は0.5重量%~20重量%の範囲であってよい。
【0036】
前記ガラクツロン酸は、多糖体の総重量に対して、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、0.5重量%以上、0.6重量%以上、0.7重量%以上、0.8重量%以上、0.9重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、6重量%以上、7重量%以上、8重量%以上、9重量%以上、又は10重量%以上であり、且つ20重量%以下、19重量%以下、18重量%以下、17重量%以下、16重量%以下、15重量%以下、14重量%以下、13重量%以下、12重量%以下、11重量%以下、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、又は4重量%以下で含んでよい。前記含量は、例えば、0.1重量%~20重量%、0.1重量%~15重量%、1重量%~5重量%、5重量%~15重量%、又は0.5重量%~5重量%の範囲であってよい。
【0037】
前記グルクロン酸は、多糖体の総重量に対して、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、0.5重量%以上、0.6重量%以上、0.7重量%以上、0.8重量%以上、0.9重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、6重量%以上、又は7重量%以上であり、且つ10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、又は4重量%以下で含んでよい。前記含量は、例えば、0.1重量%~10重量%、0.5重量%~5重量%、又は0.1重量%~5重量%の範囲であってよい。
【0038】
一例において、前記アラビノースは、多糖体の総重量に対して、2重量%~30重量%の範囲で含んでよい。
【0039】
一例において、前記ガラクトースは、多糖体の総重量に対して、5重量%~50重量%の範囲で含んでよい。
【0040】
前記高麗人参の実多糖体は、アラビノガラクタン(arabinogalactan)構造を高い割合で含む。アラビノガラクタン構造の検出の際は、β-グルコシルヤリブ試薬(β-glucosyl Yariv reagent)を用いてよい。
図2にβ-グルコシルヤリブ試薬によってアラビノガラクタンを検出する反応を模式的に示す。β-グルコシルヤリブ試薬は、1,3,5-tri-(β-グルコピラノシル-オキシフェニルアゾ)-2,4,6-トリヒドロキシベンゼン(4-1,3,5-tri-(4-β-glucopyranosyloxyphenylazo)-2,4,6-trihydroxybenzene)であって、アラビノガラクタンのうちのII型のアラビノ-β-3,6-ガラクタン(arabino-β-3,6-galactan)と特異的に反応して赤色沈澱を形成する。β-グルコシルヤリブ試薬を処理して生成される赤色リーゼガング環の面積とアラビノガラクタン構造の含有濃度は濃度依存的に比例する。前記高麗人参の実多糖体は、同一濃度の標準アラビノ-β-3,6-ガラクタン(arabino-β-3,6-galactan)で生成されるリーゼガング環の大きさを100%としたとき、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、又は80%以上であり、且つ90%以下、80%以下、70%以下、又は60%以下の大きさのリーゼガング環面積を示してよい。例えば、前記リーゼガング環面積は、50%~90%、50%~80%の範囲であってよい。
【0041】
前記高麗人参の実多糖体の重量平均分子量は、10kDa以上であってよい。前記高麗人参の実多糖体は、分子量70kDa~80kDaで主ピーク(peak)を有してよい。
【0042】
前記高麗人参の実多糖体は、種々の多糖成分の総合体であって、含まれる成分の組み合わせによる相乗効果によって顕著なインフルエンザウイルスの活性又は感染阻害効果を奏し、具体的に、ノイラミニダーゼ活性阻害効果に優れる。
【0043】
本発明の実施例に係る組成物は、前記有効成分を含む種々の形態の食品添加剤又は機能性食品として提供されてよい。前記有効成分を含む発酵乳、チーズ、ヨーグルト、ジュース、生菌製剤、及び健康食品などとして加工されてよく、その他、種々の食品添加剤の形態で用いられてよい。
【0044】
本発明の実施例に係る組成物は健康食品用組成物であってよい。
【0045】
本発明の実施例に係る健康食品用組成物は、前記有効成分を組成物の総重量に対して、0.0001重量%~99重量%、例えば、0.01重量%~60重量%の範囲で含んでよいが、これに制限されない。
【0046】
本実施例に係る健康食品用組成物は、有効成分を基準にして一日に体重1kg当たり0.001~500mg、例えば、0.005~100mg、0.01~50mg、0.01~10mgの範囲の量で投与できるように1~数回に分けて提供されてよい。前記組成物は、有効成分を前記のような少量使用でも上述した効果を有意に奏することができる。
【0047】
具体例において、前記健康食品用組成物は、丸剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、キャラメル剤、又はドリンク剤などで剤形化することができる。他の具体例において、液剤、粉末、顆粒、錠剤、又はティーバッグなどの形態で加工されてもよい。
【0048】
前記組成物は、単純飲用、注射投与、スプレー方式、又はスクイーズ方式などの様々な方法で投与されてよい。
【0049】
前記組成物は、本発明の主効果を損なわない範囲内で主効果に相乗効果を与え得る他の成分などを含有してよい。例えば、物性改善のために、香料、色素、殺菌剤、酸化防止剤、防腐剤、保湿剤、増粘剤、無機塩類、乳化剤、及び合成高分子物質などの添加剤をさらに含んでよい。その他にも、水溶性ビタミン、油溶性ビタミン、高分子ペプチド、高分子多糖、及び海草エキスなどの補助成分をさらに含んでよい。前記成分は、剤形又は使用目的に応じて当業者が適宜選定して配合してよく、その添加量は、本発明の目的及び効果を損なわない範囲内で選択されてよい。例えば、前記成分の添加量は、組成物の全重量を基準に、0.01重量%~5重量%、例えば、0.01重量%~3重量%の範囲であってよいが、これに制限されることではない。
【0050】
本発明一実施例において、前記組成物は薬学組成物であってよい。
【0051】
本実施例において、前記組成物は、高麗人参の実多糖体を含んでインフルエンザウイルスの感染予防、感染減少、又はインフルエンザの治療が可能な組成物であってよい。
【0052】
一例において、前記組成物は、インフルエンザウイルス感染による疾患の予防又は治療用組成物であってよい。前記インフルエンザウイルス感染による疾患は、ひどい風邪、咽喉炎、気管支炎、及び肺炎などを含んでよいが、これらに制限されない。
【0053】
前記薬学組成物は、経口又は非経口の種々の剤形であってよい。製剤化する場合には、通常用いる充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を用いて調剤される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、軟質又は硬質カプセル剤などが含まれ、これらの固形製剤は、一種以上の化合物に少なくとも一種以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)又はラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調剤される。また、単純な賦形剤の他、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどといった潤滑剤も用いられる。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、よく用いられる単純希釈剤である水、リキッドパラフィンの他、種々の賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてよい。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物性油、オレイン酸エチルなどの注射可能なエステルなどが用いられてよい。坐剤の基剤としては、ウィテプゾール(witepsol)、マクロゴール、トゥイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが用いられてよい。
【0054】
本明細書に係る組成物の薬学的投与形態は、これらの薬学的に許容可能な塩の形態で用いられてもよく、また、単独で、又は他の薬学的活性化合物との結合だけでなく適切な集合で用いられてよい。前記塩としては、薬学的に許容されるものであれば特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ギ酸、酢酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などを用いてよい。
【0055】
本明細書に係る組成物は、目的とするところに応じて、非経口投与又は経口投与してよく、一日に体重1kg当たり0.001~500mg、例えば、0.005~100mg、0.01mg~10mgの範囲の量で1回~数回に分けて投与していてよい。特定の患者に対する投与用量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率、疾患の重症度などに応じて変えてよい。
【0056】
本明細書に係る薬学組成物は、それぞれ通常の方法に従って、散剤、顆粒剤、錠剤、軟質または硬質カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、軟膏、クリームなどの皮膚外用剤、坐剤、注射剤、及び滅菌注射溶液などをはじめ、薬剤学的製剤に適合した如何なる形態で剤形化して用いられてもよい。
【0057】
本発明の他の実施例によれば、前記高麗人参の実多糖体のインフルエンザウイルス感染の予防又は抑制用途を提供することができる。前記用途は、インフルエンザ感染の減少用途又はインフルエンザを治療する用途、又はインフルエンザウイルス感染による疾患の予防用途又は治療用途を含んでよい。高麗人参の実多糖体と効果、投与形態などに関しては上述した通りであるため、それらに関する説明を省略する。
【0058】
本発明また他の実施例によれば、前記高麗人参の実多糖体を含むインフルエンザウイルス感染の予防用又は抑制用組成物を製造するための高麗人参の実多糖体の用途であってよい。前記用途は、インフルエンザ感染の減少用途又はインフルエンザを治療する用途、又はインフルエンザウイルス感染による疾患の予防用途又は治療用途を含んでよい。高麗人参の実多糖体と効果、投与形態などに関しては上述した通りであるため、それらに関する説明を省略する。
【0059】
本発明また他の実施例によれば、前記高麗人参の実多糖体を対象に投与することを含むインフルエンザウイルス感染の予防方法、インフルエンザウイルスの抑制方法、インフルエンザ感染の減少方法、又はインフルエンザの治療方法を提供することができる。これらの方法は、インフルエンザウイルス感染による疾患の予防方法又は治療方法を含んでよい。これらの方法は、高麗人参の実多糖体を含む上述したような組成物を対象に投与することを含んでよい。高麗人参の実多糖体と効果、投与形態などに関しては上述した通りであるため、それらに関する説明を省略する。
【0060】
一例において、前記方法は、インフルエンザウイルスの抑制、インフルエンザ感染の減少、又はインフルエンザの治療を必要とする対象に高麗人参の実多糖体を投与することを含んでよい。前記投与は、有効量の高麗人参の実多糖体を対象に投与することを含んでよい。
【0061】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。なお、これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されると解釈されないことは当業界において通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0062】
[製造例1]高麗人参の実多糖体の製造
種を取り除いた高麗人参の実を10倍体積の90%エタノールで抽出して水溶性成分を沈澱させ上澄液を除去した。沈澱された抽出不可溶成分を体積20倍の水にて90℃で5時間加温抽出した。抽出物を固形分が30重量%になるように濃縮し、濃縮物の体積2倍の90%エタノールを加えて沈澱させた。沈澱された水溶性成分の高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)結果を
図3に示す。沈殿物を限外ろ過にかけて分画分子量(Molecular Weight Cut off)20,000で分離して低分子量成分を除去し、凍結乾燥して、70~80kDaの分子量を主ピーク(peak)とする分子量10kDa以上の高麗人参の実多糖体を得た。製造された高麗人参の実多糖体の高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)結果は
図4に示す。
【0063】
[製造例2]紅参多糖体の製造
高麗人参の実に代えて紅参根を用いたことを除いては、前記製造例1と同じ方法にて紅参多糖体を製造した。
【0064】
[試験例1]アラビノガラクタンの検出
アラビノ-β-3,6-ガラクタンの存在を確認するためのβ-グルコシルヤリブ試薬(β-glucosyl Yariv reagent;Biosupplies、Parkville、Australia)との反応性検討は、HolstとClarkeの方法(Van Holst GJ、Clarke AE. Quantification of-protein in plant extracts by single radial gel diffusion. Anal. Chem. 148:446-450(1985))によってラジカルゲル拡散法(Single radical gel diffusion)で測定した。
【0065】
β-グルコシルヤリブ試薬10μg/mlを含有した0.15M NaClアガロース平板を調製し、直径2.5mmのウェル(well)を作り、濃度別に希釈した標準物質であるアラビアガム(gum Arabic)と試料5μgを含有した溶液をウェル(well)にそれぞれ注入した。前記平板を湿潤状態で15時間定置して反応させ、生成された赤色のリーゼガング環を観察してアラビノ-β-3,6-ガラクタンの存在の有無を確認し、試料とβ-グルコシルヤリブ試薬との反応性は生成されたリーゼガング環の広さを求めて相互比較した。試料としては、
図5に示されるように、標準物質62.5、125、250、500及び1000μg/ml、製造例1及び製造例2の多糖体をそれぞれ100、500及び1000μg/mlの濃度で用いた。
【0066】
生成された赤色のリーゼガング環の面積を測定し、アラビノ-β-3,6-ガラクタンの相対含量を
図6に示した。
図6の結果は、標準物質1000μg/ml濃度処理群に対して各試料1000μg/ml処理群の面積を比較したものである。
【0067】
図6の結果から、高麗人参の実多糖体は、紅参多糖体に比べ、2倍以上の高含量でアラビノガラクタン構造を含むことを確認することができる。
【0068】
[試験例2]高麗人参の実多糖体のインフルエンザウイルス増殖抑制評価
イヌの腎臓細胞株であるMDCK(Madin-Darby canine kidney、ATCC:CCL-34)を用いて高麗人参の実多糖体の抗ウイルス効果を確認した。
【0069】
96-ウェルマイクロプレート(microplate)にMDCK細胞を各ウェル当たり1×105/wellになるように入れ、EMEM培地(penicillin 100 units、streptomycin 100μg、10%FBS)で培養した。MDCK細胞が単層(monolayer)になると、抗生剤のみを含むEMEM培地で2回洗浄した。H1N1菌株(Influenza A virus subtype/H1N1/pdm)を100TCID50になるように希釈しEPチューブに入れた。これに試料として前記製造例1の高麗人参の実多糖体(APGP)を濃度別に希釈して各チューブに入れた後、4℃で1時間反応させた。陽性対照群の試料としてアメリカニンジン(Panax quinquefolium)抽出物であるCVT-E002(COLD-FX(登録商標)、以下、「CVT」)を用いた。1時間後に前記反応液を予め洗浄したMDCK細胞に一濃度当たり3ウェルずつそれぞれ接種して35℃で1時間培養した。1時間後にプレートの培地を全て除去しPBSで1回洗浄した後、抗生剤と10μg/mLトリプシンが添加されたEMEM培地を各ウェルに100mlずつ分けて37℃で48~72時間培養した。
【0070】
H1N1菌株に感染し試料を無処理した対照群において完全に細胞変性効果(Cytopathic effect、CPE)が現われるまで48~72時間培養し、倒立顕微鏡で毎日細胞状態を観察した。細胞変性効果は、感染による細胞ラウンディング(rounding)、脱離(detachment)後の死滅(death)を含む。培養48~72時間後の細胞生存率を調べるために、Cell Counting kit-8(Dojin、Kumanoto、Japan、tetrazolium salt WST-8)を各ウェル当たり10mlずつ入れて35℃で2時間反応させた後、450nmにおける吸光度を測定した。
【0071】
高麗人参の実多糖体の場合、0.78125~3.125mg/mlの範囲内でインフルエンザウイルスを処理したときにMDCK細胞の細胞変性効果(Cytopathic effect、CPE)が抑制されることを確認することができた。
【0072】
【0073】
前記表1は、試料別のSI指数(Selectivity index)を表す。CC50(50% cytotoxic concentration)値は、試料が50%細胞死滅を誘導する濃度であって、数値が大きいほど安全な物質に該当し、EC50(50% inhibitory concentration)値は、ウイルスが50%抑制される濃度であって、数値が小さいほどウイルスを抑制する効能に優れることを示す。
【0074】
SI指数が大きいほどウイルス増殖抑制効果に優れ、対照群であるCVTの場合、抗ウイルス効果が全く奏されないのに対し、高麗人参の実多糖体の場合、7.95の高い数値を示している。このような数値は、生物学的に知られた単独物質であるEGCG(5.6)、レスベラトロール(2)(Kim、Y.;Narayanan、S.;Chang、K.O.Inhibition of influenza virus replication by plant-derived isoquercetin。Antivir.Res.2010,88,227-235。)の場合よりも顕著に高い値であって、優れたインフルエンザウイルス抑制効果を奏することが分かる。
【0075】
[試験例3]高麗人参の実多糖体のノイラミニダーゼ抑制分析
インフルエンザウイルスのようにウイルスの増殖にウイルス表面のノイラミニダーゼ(NA)タンパク質システムを用いるウイルスに対する抗ウイルス活性を測定する一つの指標として用いられる。ノイラミニダーゼ(neuraminidase)活性抑制試験は、WHO(Standard operating procedure)で推奨する方法に準拠して実施した。
【0076】
2種の哺乳類由来のH1N1ウイルス菌株NWS(A/NWS/33)及びCA(A/California/07/2009)を用いてノイラミニダーゼ抑制IC50で酵素抑制活性を分析した。前記ウイルス菌株は、EMEM(Eagle’s minimum essential medium)培地内でMDCK細胞株に感染させた後、該細胞でウイルスを活性化させたウイルス培養液を用いた。試料として製造例1の高麗人参の実多糖体(APGP)を用い、陽性対照群としてアメリカニンジン(Panax quinquefolium)抽出物であるCVT-E002(COLD-FX(登録商標)、以下、「CVT」)を用い、試料の濃度別のノイラミニダーゼ活性抑制度を分析した。
【0077】
濃度別の試料液(APGP、CVT)10μlとウイルス培養液50μlとを室温で45分間反応させた後、200μM MUNANA基質(2’-(4-methylumbelliferyl)-α-D-N-acetylneuraminic acid,)50μlを添加してから1時間反応させた後、83%エタノールに0.14M NaOHが溶かされた停止液100μlを添加して反応を終了させ、分光蛍光光度計(spectrofluorophotometer)(ABI/Perkin Elmer Biosystems)にてEx.360nm/Em.440nmで蛍光(fluorescence)を測定して酵素活性抑制率を算出した。試料を添加していない無処理対照群の蛍光(fluorescence)値を100%としたときの抑制率(%)を
図7~
図10に示す。
【0078】
図7~
図10の結果から、高麗人参の実多糖体は、ノイラミニダーゼ活性を濃度依存的に抑制し、そのIC
50値が陽性対照群であるCVTに対して約1/4~1/5の値を示しており、顕著に優れたノイラミニダーゼ活性抑制効果を奏することを確認することができる。
【0079】
[試験例4]動物モデルにおけるインフルエンザウイルス感染実験
7週齢のマウス(SPF BALB/c mouse)に、マウス用ゾンデ(zonde)を用いて、試料である高麗人参の実抽出物(APGP)0.5mg/kg、5mg/kg、50mg/kg、陽性対照群試料であるアメリカニンジン(Panax quinquefolium)抽出物であるCVT-E002(COLD-FX(登録商標)、以下、「CVT」)200mg/kgを経口投与した。試料はウイルスの接種14日前に投与し、ウイルスの接種前までに一日に1回ずつ投与した。インフルエンザウイルスの接種は、エーテルを用いて痲酔してから哺乳類インフルエンザウイルス(Influenza A virus subtype/H1N1/NWS strain)をLD0又はLD70の用量で鼻腔から実施した。
図11にインフルエンザウイルス感染実験のスケジュールを模式図で示す。無処理対照群(Negative control)は試料の代わりにPBSを投与しウイルスの接種を実施していない実験群であり、ウイルス対照群(Virus control)は、試料の代わりにPBSの投与及びウイルスの接種を実施していない実験群である。
【0080】
前記したように感染させたマウスを以下のウイルス接種時点から3日(3dpi)、5日(5dpi)及び7日(7dpi)経過した時点での組織病変及びウイルス再分離率実験に供した。
【0081】
[試験例5]動物モデルにおける組織病理学的病変分析
前記試験例4のようにしてインフルエンザウイルスを接種させたマウスをウイルスの接種時点からそれぞれ3日(3dpi)、5日(5dpi)及び7日(7dpi)経過した時点で犠牲させ、肺組織を分離して、H&E染色によって組織病理学的病変分析に用いた。
図15~
図18は肺病変組織の写真を示す。病変の数をカウントして数値化し、これを、無処理対照群(Negative control)を100%として算出した肺病変指標(Lung index)にして
図12~
図14に示す。
【0082】
図12~
図14の結果から、高麗人参の実多糖体を経口投与したときに肺病変指標が緩和されることを確認することができる。特に、陽性対照群であるCVTの場合、高麗人参の実多糖体の投与量の40倍に至る量を処理してはじめて高麗人参の実多糖体と同等な水準の効果を奏することが分かる。
【0083】
[試験例6]ウイルスの再分離率分析
前記試験例4のようにインフルエンザウイルスを接種させたマウスをウイルスの接種時点からそれぞれ3日(3dpi)、5日(5dpi)及び7日(7dpi)経過した時点で犠牲させ、分離した肺組織からRNAを抽出した。抽出されたRNAにてcDNA合成Kitを用いてcDNAライブラリの構築後、quantitative RT-PCRを行って再分離されたウイルスのコピー(copy)数を算出し、ウイルス感染の水準を確認した。その結果を
図19~
図21に示す。
【0084】
図19~
図21の結果から、高麗人参の実多糖体を投与したときにウイルス感染の水準が顕著に低減することを確認することができる。特に、
図19では、高麗人参の実多糖体5、50mg/kg/day投与群の場合、ウイルスの接種から3日までウイルス感染が全く発生していないことを示しており、これより、高麗人参の実多糖体が優れたインフルエンザウイルス感染の予防効果を奏する確認することができる。さらには、陽性対照群であるCVTの場合、高麗人参の実多糖体の投与量の40倍に至る量を処理してはじめて高麗人参の実多糖体と同等な水準の効果を奏することが分かる。