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特許7273067吸水性樹脂を主成分とする吸水剤及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】吸水性樹脂を主成分とする吸水剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/26 20060101AFI20230502BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20230502BHJP
   C08L 101/14 20060101ALI20230502BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
B01J20/26 D
B01J20/28 Z
C08L101/14
B01J20/30
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020565224
(86)(22)【出願日】2020-01-10
(86)【国際出願番号】 JP2020000646
(87)【国際公開番号】W WO2020145384
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2019003362
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 一樹
(72)【発明者】
【氏名】武田 大介
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-272349(JP,A)
【文献】特開2006-297373(JP,A)
【文献】国際公開第2013/002387(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/053372(WO,A1)
【文献】特開2016-112475(JP,A)
【文献】国際公開第2012/132861(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/040530(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/12
B01J 20/26
B01J 20/28
B01J 20/30
C08L 101/14
A61L 15/24
A61F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性樹脂の表面架橋工程、及び、硫黄含有還元剤水溶液の混合工程を含む、吸水性樹脂を主成分とする吸水剤の製造方法であって、下記(1)~(4)を満たす、製造方法。
(1)上記吸水性樹脂の比表面積が25m/kg以上であること
(2)上記硫黄含有還元剤水溶液の平均液滴径が2.5mm以下であり、該水溶液の温度が80℃以下であること
(3)上記混合工程において、下記式(a)を満たす攪拌混合を行うこと
攪拌力係数 ≧0.16×(平均液滴径(mm))+0.05・・・(a)
なお、攪拌力係数は、(フルード数Fr)×(重力加速度g)で規定する
(4)上記混合工程後に、40℃以上150℃以下の加熱乾燥工程を行うこと
【請求項2】
上記混合工程において、上記硫黄含有還元剤水溶液を添加するときの上記吸水性樹脂の温度が150℃以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記吸水性樹脂の形状が不定形破砕状である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記吸水性樹脂の質量平均粒子径D50が250μm以上550μm未満であり、かつ、上記吸水性樹脂に含まれる、粒子径150μm未満の粒子の割合が3質量%未満である、請求項1~3の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
上記吸水性樹脂が、不飽和単量体水溶液の発泡重合で得られる、請求項1~4の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
上記硫黄含有還元剤が、その酸基のすべてが中和された水溶性塩である、請求項1~5の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
上記表面架橋工程において、該表面架橋工程で用いられる表面架橋剤が溶液状態で上記吸水性樹脂に添加され、
当該表面架橋剤溶液中の表面架橋剤の濃度が0.1質量%以上60質量%以下である、請求項1~6の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
上記硫黄含有還元剤水溶液の添加量が上記吸水性樹脂100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下である、請求項1~7の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
上記硫黄含有還元剤水溶液の濃度が0.1質量%以上50質量%以下である、請求項1~8の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
上記加熱乾燥工程を行った後、得られた吸水剤を1分間以上20時間以下の間、貯蔵槽で保持する工程を更に含む、請求項1~9の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
上記貯蔵槽で保持する工程後に、吸水剤を製品出荷用容器に充填する工程を更に含む、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
硫黄含有還元剤を含み、かつ、吸水性樹脂を主成分とする吸水剤であって、
粒子径が、300μm未満、300μm以上500μm未満、500μm以上である吸水剤の粒子を含み、
比表面積が25m/kg以上で、
下記式(b)で規定される硫黄含有還元剤分散度が28以下である、吸水剤。
(硫黄含有還元剤分散度)=σ1/(吸水剤の硫黄含有還元剤含有量)×100・・・(b)
ここで、粒度はふるい分級で規定され、
σ1:下記A1、A2、A3の標準偏差
A1:吸水剤を構成する粒子のうち、粒子径が500μm以上の粒子の硫黄含有還元剤含有量(単位:質量%)
A2:吸水剤を構成する粒子のうち、粒子径が300μm以上500μm未満の粒子の硫黄含有還元剤含有量(単位:質量%)
A3:吸水剤を構成する粒子のうち、粒子径が300μm未満の粒子の硫黄含有還元剤含有量(単位:質量%)
である。
【請求項13】
上記吸水剤の形状が不定形破砕状である、請求項12に記載の吸水剤。
【請求項14】
上記吸水剤の硫黄含有還元剤の含有量が0質量%超1質量%以下である、請求項12又は13に記載の吸水剤。
【請求項15】
上記吸水剤の残存モノマーが吸水剤全量に対して500ppm以下である、請求項12~14の何れか1項に記載の吸水剤。
【請求項16】
上記吸水剤のVortex法での吸水速度が10秒超45秒以下である、請求項12~15の何れか1項に記載の吸水剤。
【請求項17】
上記吸水剤の荷重4.83kPaでの加圧下吸収倍率AAPが20g/g以上である、請求項12~16の何れか1項に記載の吸水剤。
【請求項18】
上記吸水剤の含水率が0質量%超10質量%以下である、請求項12~17の何れか1項に記載の吸水剤。
【請求項19】
上記吸水剤の下記式(c)で規定される残存モノマー変動率が20以下である、請求項12~18の何れか1項に記載の吸水剤。
(残存モノマー変動率)=σ2/(吸水剤の残存モノマー量)×100・・・式(c)
ここで、粒度はふるい分級で規定され、
σ2:下記B1、B2、B3の標準偏差
B1:吸水剤を構成する粒子のうち、粒子径が500μm以上の粒子の残存モノマー量(単位:ppm)
B2:吸水剤を構成する粒子のうち、粒子径が500μm未満、300μm以上の粒子の残存モノマー量(単位:ppm)
B3:吸水剤を構成する粒子のうち、粒子径が300μm未満の粒子の残存モノマー量(単位:ppm)
である。
【請求項20】
上記吸水剤の質量平均粒子径が250μm以上550μm以下であり、かつ、
粒子径が150μm未満である粒子の割合が3質量%以下である、請求項12~19の何れか1項に記載の吸水剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂を主成分とする吸水剤、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使い捨てオムツ、生理用ナプキン、いわゆる失禁パット等の衛生材料には、体液を吸収させることを目的として吸水性樹脂を使用した吸水剤が幅広く利用されている。この吸水性樹脂として、ポリアクリル酸部分中和物の架橋体等が知られている。上記吸水剤は、無加圧下吸収倍率や加圧下吸収倍率等の吸水特性に優れることはもちろんのこと、衛生材料用途では衛生上及び臭気上の問題を考慮する必要もある。衛生上及び臭気上の問題に影響を及ぼす原因として、吸水性樹脂中にわずかに残存する未反応のモノマー(以下、「残存モノマー」という)が挙げられる。そのため、残存モノマーを除去する技術が各種提案されている。
【0003】
例えば、表面架橋後の吸水性樹脂に硫黄含有還元剤を含む水溶液を噴霧添加した後、加熱処理する方法(特許文献1)や、吸水性樹脂にキレート剤と無機還元剤とを添加する方法(特許文献2)、吸水性樹脂に還元剤を添加する際に、界面活性剤や無機粉末などの混合助剤を使用する方法(特許文献3、4)、含水ゲルに残存モノマーが反応するヒドロキシルアミンや亜硫酸塩などの添加剤を混合する方法(特許文献5)、特定乾燥条件で残存モノマーを低減する方法(特許文献6、7)がこれまでに提案されている。
【0004】
また、吸水性樹脂に求められる物性として、無加圧下吸収倍率や加圧下吸収倍率、残存モノマーに加えて、吸水速度の要求も高くなっている。そして、近年、吸水速度を速くするために比表面積を高くした吸水性樹脂が開示されている(特許文献8~13)。また血液吸収のために比表面積の高い吸水性樹脂も開示されている(特許文献14)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2006/088115号
【文献】国際公開第2011/040530号
【文献】欧州特許出願公開第0505163号
【文献】国際公開第91/023997号
【文献】米国特許第4929717号
【文献】欧州特許出願公開第0289338号
【文献】欧州特許出願公開第1002806号
【文献】国際公開第97/03114号
【文献】特開平10-057805号
【文献】欧州特許出願公開第0872491号
【文献】欧州特許出願公開第0937739号
【文献】国際公開第99/03577号
【文献】国際公開第2013/018571号
【文献】国際公開第02/085959号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、吸水速度を速くすることを目的に比表面積を高くした吸水性樹脂が提案されている(特許文献8~14)。一方で、本発明者らは、比表面積の高い吸水性樹脂について、その残存モノマー量を低減させるため特許文献1~5に記載の硫黄含有還元剤の使用を検討したが、硫黄含有還元剤水溶液を従来の添加条件で加えると、吸水性樹脂の凝集物が多量に発生するうえに、粒子径間(以下、「粒度間」ということがある)の残存モノマー量のばらつきが大きくなる、又は、添加した硫黄含有還元剤の大部分が凝集物に取り込まれてしまい、最終製品中に硫黄含有還元剤が取り込まれないという問題を見出した。
【0007】
また、特許文献6、7に開示された乾燥条件による残存モノマー量の低減は、比表面積の高い吸水性樹脂に対しては、効果が小さいことも見出した。
【0008】
また、このように残存モノマー量のばらつきが大きくなると、使い捨てオムツ等の衛生材料(以下、「吸収性物品」という。)の製造ライン中で吸水剤に粒度偏析が生じた場合、残存モノマー量の多い吸水剤のみが吸収性物品に投入されてしまい、衛生上及び臭気上の問題が生じる虞がある。
【0009】
すなわち、本発明は吸水速度向上と残存モノマー変動率の低減を両立した吸水剤を提供することであり、さらには吸水速度が速く、残存モノマー量が低く且つ粒子間の残存モノマー量のばらつきも小さい吸水剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決し得た本発明は、以下の構成を有する。
[1]吸水性樹脂の表面架橋工程、及び、硫黄含有還元剤水溶液の混合工程を含む、吸水性樹脂を主成分とする吸水剤の製造方法であって、下記(1)~(4)を満たす、製造方法。
(1)上記吸水性樹脂の比表面積が25m/kg以上であること
(2)上記硫黄含有還元剤水溶液の平均液滴径が2.5mm以下であり、該水溶液の温度が80℃以下であること
(3)上記混合工程において、下記式(a)を満たす攪拌混合を行うこと
攪拌力係数 ≧0.16×(平均液滴径(mm))+0.05・・・(a)
なお、攪拌力係数は、(フルード数Fr)×(重力加速度g)で規定する
(4)上記混合工程後に、40℃以上150℃以下の加熱乾燥工程を行うこと
【0011】
[2]上記混合工程において、上記硫黄含有還元剤水溶液を添加するときの上記吸水性樹脂の温度が150℃以下である、[1]に記載の製造方法。
【0012】
[3]上記吸水性樹脂の形状が不定形破砕状である、[1]又は[2]に記載の製造方法。
【0013】
[4]上記吸水性樹脂の質量平均粒子径D50が250μm以上550μm未満であり、かつ、上記吸水性樹脂に含まれる、粒子径150μm未満の粒子の割合が3質量%未満である、[1]~[3]の何れか1に記載の製造方法。
【0014】
[5]上記吸水性樹脂が、不飽和単量体水溶液の発泡重合で得られる、[1]~[4]の何れか1に記載の製造方法。
【0015】
[6]上記硫黄含有還元剤が、その酸基のすべてが中和された水溶性塩である、[1]~[5]の何れか1に記載の製造方法。
【0016】
[7]上記表面架橋剤が溶液状態で上記吸水性樹脂に添加され、
当該表面架橋剤溶液中の表面架橋剤の濃度が0.1質量%以上60質量%以下である、[1]~[6]の何れか1に記載の製造方法。
【0017】
[8]上記硫黄含有還元剤水溶液の添加量が上記吸水性樹脂100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下である、[1]~[7]の何れか1に記載の製造方法。
【0018】
[9]上記硫黄含有還元剤水溶液の濃度が0.1質量%以上50質量%以下である、[1]~[8]の何れか1に記載の製造方法。
【0019】
[10]上記加熱乾燥工程を行った後、得られた吸水剤を1分間以上20時間以下の間、貯蔵槽で保持する工程を更に含む、[1]~[9]の何れか1に記載の製造方法。
【0020】
[11]上記貯蔵槽で保持する工程後に、吸水剤を製品出荷用容器に充填する工程を更に含む、[10]に記載の製造方法。
【0021】
[12]硫黄含有還元剤を含み、かつ、吸水性樹脂を主成分とする吸水剤であって、
粒子径が、300μm未満、300μm以上500μm未満、500μm以上である吸水剤の粒子を含み、
比表面積が25m/kg以上で、
下記式(b)で規定される硫黄含有還元剤分散度が28以下である、吸水剤。
(硫黄含有還元剤分散度)=σ1/(吸水剤の硫黄含有還元剤含有量)×100・・・(b)
ここで、粒度はふるい分級で規定され、
σ1:下記A1、A2、A3の標準偏差
A1:吸水剤を構成する粒子のうち、500μm以上の粒子の硫黄含有還元剤含有量(単位:質量%)
A2:吸水剤を構成する粒子のうち、300μm以上500μm未満の粒子の硫黄含有還元剤含有量(単位:質量%)
A3:吸水剤を構成する粒子のうち、300μm未満の粒子の硫黄含有還元剤含有量(単位:質量%)
である。
【0022】
[13]上記吸水剤の形状が不定形破砕状である、[12]に記載の吸水剤。
【0023】
[14]上記吸水剤の硫黄含有還元剤の含有量が0質量%超1質量%以下である、[12]又は[13]に記載の吸水剤。
【0024】
[15]上記吸水剤の残存モノマーが吸水剤全量に対して500ppm以下である、[12]~[14]の何れか1に記載の吸水剤。
【0025】
[16]上記吸水剤のVortex法での吸水速度が10秒超45秒以下である、[12]~[15]の何れか1に記載の吸水剤。
【0026】
[17]上記吸水剤の荷重4.83kPaでの加圧下吸収倍率AAPが20g/g以上である、[12]~[16]の何れか1に記載の吸水剤。
【0027】
[18]上記吸水剤の含水率が0質量%超10質量%以下である、[12]~[17]の何れか1に記載の吸水剤。
【0028】
[19]上記吸水剤の下記式(c)で規定される残存モノマー変動率が20以下である、[12]~[18]の何れか1に記載の吸水剤。
(残存モノマー変動率)=σ2/(吸水剤の残存モノマー量)×100・・・式(c)
ここで
σ2:下記B1、B2、B3の標準偏差
B1:吸水剤を構成する粒子のうち、500μm以上の粒子の残存モノマー量(単位:ppm)
B2:吸水剤を構成する粒子のうち、500μm未満、300μm以上の粒子の残存モノマー量(単位:ppm)
B3:吸水剤を構成する粒子のうち、300μm未満の粒子の残存モノマー量(単位:ppm)
である。
【0029】
[20]上記吸水剤の質量平均粒子径が250μm以上550μm以下であり、かつ、
粒子径が150μm未満である粒子の割合が3質量%以下である、[12]~[19]の何れか1に記載の吸水剤。
【発明の効果】
【0030】
本発明の製造方法によれば、比表面積の高い吸水性樹脂について、残存モノマー変動率で表される粒子間の残存モノマー量のばらつきや、硫黄含有還元剤分散度で表される硫黄含有還元剤のばらつきを低減することができる。
したがって、本発明の製造方法によれば吸水速度が速く、しかも、残存モノマー変動率が小さい吸水剤を提供できる。そして残存モノマー変動率を小さくすることで吸収性物品の製造ライン中で吸水剤に粒度偏析が生じた場合でも、吸収性物品ごとに投入される吸水剤中の残存モノマー量が変動しにくくなり、衛生上及び臭気上の問題を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明者らが検討した結果、吸水性樹脂の比表面積を高くすると残存モノマー量が多くなる傾向が分かった。従来の吸水性樹脂は重合後の含水ゲルを粉砕後に十分に乾燥させることで残存モノマー量を低減させていた。一方、含水ゲルの比表面積が高くなるように粉砕した後、乾燥させると乾燥速度が上がって短時間で含水ゲルの水分を低減できるが、乾燥時間が短くなった影響で含水ゲル中の残存モノマーが重合開始剤によってポリマー化する反応時間を確保できず、残存モノマー量を十分に低減できないことがわかった。
【0032】
そのため吸水性樹脂を高比表面積化する場合、乾燥処理以外の方法での残存モノマー量の低減を図ることを検討した。まず、残存モノマー量の低減に有効な添加剤として知られている硫黄含有還元剤水溶液の添加を検討したが、従来の添加方法では下記問題が生じることがわかった。
【0033】
硫黄含有還元剤水溶液は、150℃超の高温で熱処理されると酸化硫黄に起因する臭気が発生する。例えば含水ゲルに硫黄含有還元剤水溶液を加えた場合、含水ゲルを乾燥させる工程における加熱処理によって臭気が発生する。また例えば乾燥後のベースポリマーに表面架橋処理する際に表面架橋剤と共に、あるいは表面架橋剤添加前に硫黄含有還元剤水溶液を加えた場合、表面架橋処理に伴う加熱によって臭気が発生する。そのため吸水性樹脂の製造過程では加熱処理前に硫黄含有還元剤水溶液を加えることは難しい。
【0034】
一方、高温処理後の吸水性樹脂、例えば表面架橋された吸水性樹脂に硫黄含有還元剤水溶液を加えることも検討したが、高比表面積化されているため硫黄含有還元剤水溶液の吸収が速く、また吸水性樹脂の粒子径によって硫黄含有還元剤水溶液の吸収量が異なるため均一混合が難しく、吸水性樹脂の粒度間の残存モノマー量に大きなばらつきが生じた。更に上記高比表面積化した吸水性樹脂は、硫黄含有還元剤水溶液の吸収量の差に起因して表面架橋された吸水性樹脂同士がくっつきやすく、硫黄含有還元剤水溶液の添加混合時に表面架橋された吸水性樹脂が凝集した粗粒子(以下、「凝集粗粒子」ということがある)が生成しやすいなどの問題が生じた。したがって硫黄含有還元剤水溶液の添加は残存モノマー量の低減に有効であるが、吸水性樹脂の高比表面積化と粒度間の残存モノマー量のばらつきの低減は両立が難しかった。
【0035】
本発明者らが鋭意検討した結果、表面架橋前の吸水性樹脂と硫黄含有還元剤水溶液とを混合した後の加熱乾燥工程において、加熱温度が150℃を超えなければ硫黄含有還元剤の分解に起因する臭気の発生が抑えられることを見出した。また、表面架橋後の吸水性樹脂と硫黄含有還元剤水溶液とを混合した後の加熱乾燥工程において、加熱温度が150℃以下であれば上記臭気の発生が抑えられることを見出した。その上で、比表面積の高い吸水性樹脂に硫黄含有還元剤水溶液を添加する際の平均液滴径、水溶液の温度、及び硫黄含有還元剤水溶液と吸水性樹脂との攪拌混合条件を最適化することで、吸水性樹脂の高比表面積化と粒度間の残存モノマー量のばらつきの低減を両立できることを見出し、本発明に至った。
【0036】
以下、本発明の吸水剤の製造方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれら説明に拘束されることなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更、実施し得る。具体的には、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0037】
[1]用語の定義
[1-1]吸水性樹脂、吸水剤
本明細書における「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を意味し、一般的に粉末状である。また、「水膨潤性」とは、WSP241.3(10)で規定される無加圧下吸収倍率(以下、「CRC」と表記する場合がある。)が5g/g以上であることを、「水不溶性」とは、WSP270.3(10)で規定される可溶分(以下、「Ext」と表記する場合がある。)が50質量%以下であることを、それぞれ意味する。
【0038】
上記「吸水性樹脂」は、好ましくはカルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させてなる親水性の架橋重合体であるが、その全量、すなわち、100質量%が架橋重合体である必要はなく、上記CRCやExtなどの性能を満たす範囲内で添加剤等を含有することもできる。
【0039】
また、上記「吸水性樹脂」は、「内部のみが架橋された重合体、つまり、内部と表面の架橋密度が実質的に同じである重合体」又は「内部と表面とが架橋された重合体、つまり、表面の架橋密度が内部の架橋密度に対して相対的に高い重合体」を指す場合がある。
【0040】
本明細書においては、上記「内部のみが架橋された重合体」と上記「内部と表面とが架橋された重合体」は原則、区別することなく、何れも「吸水性樹脂」と表記する。ただし、表面架橋の有無について明確に区別する必要がある場合は、上記「内部のみが架橋された重合体」は表面架橋が施される前であるため「表面架橋前の吸水性樹脂」と、上記「内部と表面とが架橋された重合体」は表面架橋が施された後であるため「表面架橋後の吸水性樹脂」と、それぞれ表記する。なお、「表面架橋前」とは、「表面架橋剤を添加する前」又は「表面架橋剤が添加された後であっても加熱処理による架橋反応が始まる前」のことを意味する。
【0041】
また、上記「吸水性樹脂」は、樹脂成分のみを指す場合もあるが、添加剤等の樹脂以外の成分を含んでいてもよい。
【0042】
本明細書における「吸水剤」とは、上記「吸水性樹脂」と「硫黄含有還元剤」とを混合したもの(以下、「吸水性樹脂組成物」と表記する場合がある。)を意味する。したがって上記「吸水剤」には、硫黄含有還元剤を含む吸水性樹脂組成物が、そのまま最終製品として出荷可能な状態にある場合と、硫黄含有還元剤を含む吸水性樹脂組成物に、更に任意の処理が施されている状態にある場合の両方が含まれる。
【0043】
上記「吸水剤」は、吸水性樹脂を主成分として含む。当該「主成分」とは、吸水剤全体に対する吸水性樹脂の質量割合が、好ましくは50質量%以上、以下順に、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上であって、100質量%以下であることを意味する。また、上記「吸水剤」は、その他の成分として、好ましくは無機酸アルカリ金属塩粉末や水、微量成分を含む。
【0044】
[1-2]ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂
本明細書における「ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂」とは、アクリル酸及び/又はその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と表記する。)を原料とする吸水性樹脂を意味する。つまり、「ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂」とは、アクリル酸(塩)由来の構造単位を有する重合体であり、任意成分としてグラフト成分を有する重合体である。
具体的には、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、重合反応に関与する単量体のうち内部架橋剤を除いた部分に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であって、好ましくは100モル%以下、より好ましくは実質100モル%のアクリル酸(塩)を含む、重合体である。
【0045】
[1-3]「EDANA」及び「WSP」
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称である。また「WSP」は、Worldwide Strategic Partnersの略称であり、EDANAが提供する、吸水剤又は吸水性樹脂の世界標準の測定法を示すものである。本発明では、特に断りのない限り、WSP原本(2010年改定)に準拠して、吸水剤又は吸水性樹脂の物性を測定する。なお、本発明では別途言及しない限り、下記実施例での測定方法に従う。
【0046】
[1-4]CRC(WSP241.3(10))
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacityの略称であり、吸水剤又は吸水性樹脂の無加圧下での吸収倍率を意味する。具体的には、吸水剤又は吸水性樹脂0.2gを不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して吸水剤又は吸水性樹脂を自由膨潤させ、その後、遠心分離機(遠心力:250G)を用いて脱水した後の吸収倍率(単位:g/g)のことである。
【0047】
[1-5]Ext(WSP270.3(10))
「Ext」は、Extractablesの略称であり、吸水剤又は吸水性樹脂の水可溶分、すなわち、水可溶成分量を意味する。具体的には、吸水剤又は吸水性樹脂1.0gを0.9質量%塩化ナトリウム水溶液200mlに添加し、250rpmで1時間又は16時間攪拌した後の溶解ポリマー量(単位:質量%)のことをいう。溶解ポリマー量の測定は、pH滴定を用いて行う。攪拌時間は結果の報告時に記載される。
【0048】
[1-6]その他
本明細書において、「~酸(塩)」は「~酸及び/又はその塩」を意味し、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
【0049】
[2]吸水剤の製造方法
本発明に係る吸水剤は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂及び硫黄含有還元剤を含む吸水性樹脂組成物である。以下、上記吸水性樹脂の製造方法に関して詳細に説明する。
【0050】
[2-1]単量体水溶液の調製工程
本工程は、アクリル酸(塩)を主成分として含む単量体及び1種類以上の重合性内部架橋剤を含む単量体水溶液を調製する工程である。上記「主成分」とは、重合反応に供される単量体のうち、内部架橋剤を除いた部分に対して、アクリル酸(塩)の含有量が、50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上であって、好ましくは100モル%以下であることを意味する。なお、最終製品として得られる吸水剤の吸水性能に影響しない範囲内で、単量体のスラリー液を使用することもできるが、本明細書では便宜上、単量体水溶液について説明する。
【0051】
[2-1-1]アクリル酸(塩)
本発明では、吸水剤又は吸水性樹脂の物性及び生産性の観点から、公知のアクリル酸(塩)を単量体(以下、「重合性単量体」ということがある。)として用いることが好ましい。公知のアクリル酸には、重合禁止剤や不純物等の成分が微量含まれている。
上記重合禁止剤として、好ましくはメトキシフェノール類、より好ましくはp-メトキシフェノール類が使用される。当該重合禁止剤のアクリル酸中での濃度は、アクリル酸の重合性や吸水剤又は吸水性樹脂の色調等の観点から、質量基準で好ましくは10ppm以上、より好ましくは20ppm以上であって、好ましくは200ppm以下、より好ましくは160ppm以下、更に好ましくは100ppm以下である。
【0052】
上記不純物として、酢酸やプロピオン酸、フルフラール等の有機化合物の他、米国特許出願公開第2008/0161512号に記載された各化合物が挙げられる。
また、アクリル酸塩として、上述したアクリル酸を下記塩基性化合物で中和した塩が挙げられる。当該アクリル酸塩は、市販のアクリル酸塩でもよく、アクリル酸を中和して得られる塩でもよい。
【0053】
[2-1-2]塩基性化合物
本発明における「塩基性化合物」とは、塩基性を示す化合物を意味する。具体的には水酸化ナトリウム等が該当する。なお、市販の水酸化ナトリウムには、亜鉛、鉛、鉄等の重金属がppmオーダー(質量基準)で含まれているため、厳密には組成物と表現することもできる。本発明では、このような組成物に関しても塩基性化合物の範疇に含めることとして扱う。
【0054】
上記塩基性化合物の具体例として、アルカリ金属の炭酸塩や炭酸水素塩、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等が挙げられる。中でも、吸水剤又は吸水性樹脂の吸水性能の観点から、強塩基性の化合物が選択される。従って、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。なお、当該塩基性化合物は、取り扱い性の観点から、水溶液とされることが好ましい。
【0055】
[2-1-3]中和
上記アクリル酸塩として、アクリル酸を中和して得られる塩を使用する場合、中和を行う時機としては、重合前、重合中、重合後の何れでもよく、複数の時機又は箇所で中和してもよい。また、吸水剤又は吸水性樹脂の生産効率の観点から、連続式で中和することが好ましい。
【0056】
本発明においてアクリル酸(塩)を用いる場合、その中和率は、単量体の酸基に対して、好ましくは10モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上、特に好ましくは60モル%以上であって、好ましくは90モル%以下、より好ましくは85モル%以下、更に好ましくは80モル%以下、特に好ましくは75モル%以下である。当該中和率の範囲とすることで、吸水剤又は吸水性樹脂の吸水性能の低下をより一層、抑制しやすくなる。
【0057】
なお、上記中和率の範囲は、上述した重合前、重合中、重合後の何れの中和においても適用される。また、吸水性樹脂の酸基のみならず、最終製品としての吸水剤の酸基に対しても同様に適用される。
【0058】
[2-1-4]他の単量体
本発明において、上述したアクリル酸(塩)以外の単量体(以下、「他の単量体」と表記する。)を、必要に応じてアクリル酸(塩)と併用することができる。
上記他の単量体として具体的には、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、ビニルスルホン酸、アリルトルエンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート等のアニオン性不飽和単量体及びその塩;メルカプタン基含有不飽和単量体;フェノール性水酸基含有不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有不飽和単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体が挙げられる。また、当該他の単量体には、水溶性又は疎水性の不飽和単量体が含まれる。当該他の単量体を用いる場合、その使用量は内部架橋剤を除いた単量体に対して、好ましくは30モル%以下、より好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5モル%以下である。
【0059】
[2-1-5]内部架橋剤
本発明の好ましい製造方法において、内部架橋剤が使用される。当該内部架橋剤として具体的には、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの内部架橋剤の中から、反応性等を考慮して1種類以上の内部架橋剤が選択される。また、吸水剤又は吸水性樹脂の吸水性能等の観点から、好ましくは重合性不飽和基を二つ以上有する内部架橋剤、より好ましくは後述する乾燥温度で熱分解性を有する内部架橋剤、更に好ましくは(ポリ)アルキレングリコール構造を有する重合性不飽和基を二つ以上有する内部架橋剤が選択される。
【0060】
上記重合性不飽和基として具体的には、アリル基、(メタ)アクリレート基が挙げられる。中でも、(メタ)アクリレート基が好ましい。また、上記(ポリ)アルキレングリコール構造を有する内部架橋剤として具体的には、ポリエチレングリコールが挙げられる。なお、アルキレングリコール単位の数(以下、「n」と表記する場合がある。)は、好ましくは1以上、より好ましくは6以上であって、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは20以下、特に好ましくは10以下である。
【0061】
上記内部架橋剤の使用量は、内部架橋剤を除く単量体に対して、好ましくは0.0001モル%以上、より好ましくは0.001モル%以上、更に好ましくは0.01モル%以上であって、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、更に好ましくは1モル%以下である。当該範囲内の使用量とすることで、所望する吸水性能を有する吸水剤又は吸水性樹脂がより一層、得られ易くなる。一方、当該範囲外の使用量では、ゲル強度の低下に伴う水可溶分の増加や吸収倍率の低下が見られることがある。
【0062】
上記内部架橋剤は、単量体水溶液の作製時に予め添加しておくことが好ましく、この場合、重合反応と同時に架橋反応が行われる。一方、内部架橋剤を添加せずに重合反応を開始し、当該重合反応中又は当該重合反応後に内部架橋剤を添加して架橋反応することもできる。また、これら手法を併用することもできる。また、内部架橋剤を使用しない自己架橋とすることもできる。
【0063】
[2-1-6]単量体水溶液に添加される物質
本発明では、上記単量体水溶液の作製時、上記重合反応及び架橋反応の期間中、又は上記重合反応及び架橋反応の後の何れか1箇所以上で、吸水剤又は吸水性樹脂の物性向上の観点から、下記物質を単量体水溶液に添加してもよい。
当該物質として具体的には、澱粉、澱粉誘導体、セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」ということがある。)、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)の架橋体等の親水性高分子、炭酸塩、アゾ化合物、各種気泡を生じる発泡剤、界面活性剤、キレート剤、連鎖移動剤等の化合物が挙げられる。
【0064】
上記親水性高分子の添加量は、上記単量体水溶液に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下であって、好ましくは0質量%、より好ましくは0質量%超である。また、上記化合物の添加量は、上記単量体水溶液に対して、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下であって、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0質量%超である。
【0065】
上記親水性高分子として水溶性樹脂又は吸水性樹脂を用いると、澱粉-アクリル酸(塩)共重合体、PVA-アクリル酸(塩)共重合体等のグラフト重合体又は吸水性樹脂組成物が得られる。これらグラフト重合体又は吸水性樹脂組成物も、本発明に係るポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の範疇に含まれる。
【0066】
[2-1-7]単量体成分の濃度
上述した各物質や各成分(以下、「単量体成分」と表記する。)を目的に応じて種々選択し、上記範囲を満たすようにそれぞれの量を規定して互いに混合することによって、単量体水溶液が作製される。なお、本発明では、単量体を水溶液とすること以外に、水と親水性溶媒との混合溶液とすることもできる。
【0067】
また、単量体成分の合計の濃度は、吸水剤又は吸水性樹脂の物性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であって、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。当該単量体成分の濃度は、下記式(1)から算出される。
単量体成分の濃度(質量%)=〔(単量体成分の質量)/(単量体水溶液の質量)〕×100 … 式(1)
なお、上記式(1)中、「単量体水溶液の質量」には、グラフト成分や吸水性樹脂、逆相懸濁重合における疎水性有機溶媒の質量は含まれない。
【0068】
[2-2]重合工程
本工程は、上記単量体水溶液の調製工程で得られた、アクリル酸(塩)を主成分として含む単量体及び1種類以上の重合性内部架橋剤を含む単量体水溶液を重合させて、含水ゲルを得る工程である。
[2-2-1]重合開始剤
本発明においては、重合時に重合開始剤が使用される。当該重合開始剤としては、熱分解型重合開始剤、光分解型重合開始剤、又は、これら重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用したレドックス系重合開始剤が挙げられる。当該重合開始剤として具体的には、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、t-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤が挙げられる。これら重合開始剤の中から、重合形態等を考慮して1種類以上の重合開始剤が選択される。また、重合開始剤の取り扱い性や吸水剤又は吸水性樹脂の物性の観点から、当該重合開始剤として、好ましくは過酸化物又はアゾ化合物、より好ましくは過酸化物、更に好ましくは過硫酸塩が選択される。また、酸化性ラジカル重合開始剤を用いる場合は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L-アスコルビン酸等の還元剤を併用してレドックス重合を行ってもよい。
【0069】
上記重合開始剤の使用量は、内部架橋剤を除いた単量体に対して、好ましくは0.001モル%以上、より好ましくは0.01モル%以上であって、好ましくは1モル%以下、より好ましくは0.5モル%以下、更に好ましくは0.1モル%以下である。また、上記還元剤の使用量は、内部架橋剤を除いた単量体に対して、好ましくは0.0001モル%以上、より好ましくは0.0005モル%以上であって、好ましくは0.02モル%以下、より好ましくは0.015モル%以下である。当該範囲内の使用量とすることで、所望する吸水性能を有する吸水剤又は吸水性樹脂がより一層、得られ易くなる。
【0070】
また、本発明においては、上記重合反応を、放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線の照射によって開始させてもよい。また、活性エネルギー線の照射と上記重合開始剤とを併用してもよい。
【0071】
[2-2-2]重合形態
本発明に適用される重合形態としては、水溶液重合、逆相懸濁重合、噴霧重合、液滴重合、バルク重合、沈澱重合等が挙げられる。中でも、重合の制御の容易性や吸水剤又は吸水性樹脂の吸水性能の観点から、好ましくは水溶液重合又は逆相懸濁重合、より好ましくは水溶液重合、更に好ましくは連続水溶液重合が選択される。逆相懸濁重合は国際公開第2007/004529号、国際公開第2012/023433号などに記載されている。また当該連続水溶液重合は、米国特許第4893999号、米国特許第6906159号、米国特許第7091253号、米国特許第7741400号、米国特許第8519212号、特開2005-36100号公報等に記載された連続ベルト重合や、米国特許第6987151号等に記載された連続ニーダー重合が挙げられる。
【0072】
上記連続水溶液重合の好ましい形態として、高温開始重合、高濃度重合、発泡重合等が挙げられる。当該「高温開始重合」とは、重合開始時の単量体水溶液の温度を、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上、特に好ましくは50℃以上であって、上限を単量体水溶液の沸点とする重合形態をいう。また「高濃度重合」とは、重合開始時の単量体濃度を、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは42質量%以上であって、上限を単量体水溶液の飽和濃度とする重合形態をいう。更に「発泡重合」とは、発泡剤又は気泡を含む上記単量体水溶液を重合する重合形態をいう。なお、これらの重合形態は、それぞれ単独で実施してもよいし、二つ以上を併用してもよい。
【0073】
上記発泡重合は本発明の比表面積を向上させる手法の一つであるが、当該発泡重合における気泡の分散方法として、
(1)単量体水溶液に溶存している気体を溶解度の低下によって気泡として分散させる方法
(2)外部から気体を導入して気泡として分散させる方法
(3)単量体水溶液に発泡剤を添加して発泡させる方法
等が挙げられる。
また、吸水剤又は吸水性樹脂の吸水性能に応じて、上記分散方法を併用してもよい。
上記(2)外部から気体を導入して気泡として分散させる方法の場合、当該気体として具体的には、酸素、空気、窒素、炭酸ガス、オゾン等やこれらの混合気体が挙げられる。中でも、重合性やコストの観点から、好ましくは窒素や炭酸ガス等の不活性ガス、より好ましくは窒素が使用される。
【0074】
上記(3)単量体水溶液に発泡剤を添加して発泡させる方法の場合、当該発泡剤として具体的には、アゾ化合物、有機若しくは無機のカーボネート溶液、分散液又は粒径が0.1μm以上1000μm以下の粉末が挙げられるが、好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭酸水素塩が使用される。
上記発泡剤又は気泡を含む上記単量体水溶液において、気泡を安定的に保持させるために界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、有機金属界面活性剤等が挙げられる。具体的には、国際公開第97/017397号や米国特許第6107358号に記載された界面活性剤が挙げられる。
【0075】
上記各重合は、空気雰囲気下で実施可能であるが、吸水剤又は吸水性樹脂の色調の観点から、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましく、酸素濃度が1容積%以下の雰囲気下で実施することがより好ましい。なお、単量体水溶液中の溶存酸素に関しても、不活性ガスを用いて十分に置換することが好ましく、溶存酸素量が1mg/L未満にしておくことがより好ましい。
【0076】
発泡重合で発泡形状の含水ゲルや吸水性樹脂や吸水剤とすることで、吸水剤又は吸水性樹脂の吸水速度が速くなり、また、吸水剤の吸収物品への固定化も容易になるため、好ましい。なお、発泡形状であることは、電子顕微鏡での粒子表面の孔で確認することができる。また、孔の大きさとしては、直径1μm以上、100μm以下の孔が例示される。当該孔は、吸水剤又は吸水性樹脂ひと粒あたり、好ましくは1個以上、より好ましくは10個以上であって、好ましくは10000個以下、より好ましくは1000個以下である。当該孔は、上記発泡重合で制御することができる。
当該発泡重合は、吸水剤や吸水性樹脂の比表面積を高める上で、好ましい技術である。
【0077】
[2-3]ゲル粉砕工程
本工程は、上記重合工程で得られた含水ゲルをゲル粉砕して、粒子状の含水ゲル(以下、「粒子状含水ゲル」と表記する。)を得る工程である。なお、後述する粉砕工程における「粉砕」と区別するため、本工程での粉砕は「ゲル粉砕」と表記する。
上記「ゲル粉砕」とは、ニーダー、ミートチョッパー、カッターミル等のゲル粉砕機を用いて、含水ゲルを所定の大きさに調整することを意味する。
【0078】
ゲル粉砕の実施形態や稼働条件等に関しては、特許第5989913号又は特許第6067126号に記載された内容が本発明にも適用される。なお、重合形態がニーダー重合である場合、重合工程とゲル粉砕工程とが同時に実施されていることになる。また、逆相懸濁重合、噴霧重合又は液滴重合等、粒子状含水ゲルが重合工程で得られる場合には、ゲル粉砕工程が当該重合工程と同時に実施されていると見なす。また、本発明でゲル粉砕工程を経ることで、不定形破砕状の吸水剤や吸水性樹脂を得ることができる。
【0079】
ゲル粉砕工程によって細粒化された粒子状含水ゲルの粒子径は、好ましくは0.05mm以上、10mm以下である。粒子状含水ゲルの粒子径が小さすぎると得られる吸水性樹脂の物性の低いものとなる虞がある。一方、粒子状含水ゲルの粒子径が大き過ぎると乾燥が不十分になる虞がある。
【0080】
また上記粒子状含水ゲルの質量平均粒子径D50は、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上、更に好ましくは140μm以上であって、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下、更に好ましくは1000μm以下である。
【0081】
上記粒子状含水ゲルの粒度として、その粒度分布の狭さを示す対数標準偏差σζは、好ましくは0.2以上であって、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.2以下である。粒度分布の対数標準偏差σζは、その値が小さいほど均一な粒径となり、より均等に乾燥させることができるという利点がある。しかしながら、当該粒度分布の対数標準偏差σζを0.2未満とするには、ゲル粉砕前の重合時における粒度制御や、ゲル粉砕後における粒子状含水ゲルの分級等の特殊な操作を必要とするため、生産性やコストの観点から、実質的には実施することが難しい。
【0082】
本発明では、吸水性樹脂の比表面積が25m/kg以上となるように、(1)単量体水溶液の発泡重合、(2)粒子状含水ゲル又はその乾燥重合体の造粒、(3)微粉リサイクルの何れか1つ以上の手法を制御することが望ましい。
【0083】
上記(1)単量体水溶液の発泡重合として、例えば、単量体水溶液に界面活性剤を共存させた発泡重合、すなわち、特許第5647625号に記載された発泡重合方法を採用することで、吸水性樹脂の比表面積を25m/kg以上に高めることができる。したがって吸水性樹脂が、不飽和単量体水溶液の発泡重合で得られるものであることも好ましい。
【0084】
また、上記(2)粒子状含水ゲル又はその乾燥重合体の造粒として、例えば、ゲル粉砕工程を特許第5989913号や特許第6067126号、国際公開第2016/204302号に記載されたゲル粉砕方法を採用し、更に乾燥することで吸水性樹脂の比表面積を25m/kg以上に高めることができる。また、ミートチョッパーなどのゲル粉砕機のダイス孔径、孔数、ダイス厚み、温水添加量、スクリュー軸の回転数などを適切に制御することでも、所望の比表面積を有する吸水性樹脂が得られる。なお、上記造粒は、重合時の含水ゲルに対して行ってもよく、重合後の含水ゲルの微粉砕物について乾燥と同時に行ってもよく、乾燥後の微粉砕物について水及び/又は有機若しくは無機のバインダーを用いて行うこともできる。したがって、吸水性樹脂の含水ゲルまたはその乾燥物の造粒物を含むことも好ましい。
【0085】
また、上記(3)微粉リサイクルとして、例えば、目開き150μmの篩を通過した吸水性樹脂の微粉を重合工程やゲル粉砕工程、乾燥工程に回収したり、当該微粉を造粒して回収したりすることで、吸水性樹脂の比表面積を25m/kg以上に高めることができる。したがって、吸水性樹脂が、吸水性樹脂の微粉リサイクル物を含むことも好ましい。
上記(1)~(3)の手法は、それぞれ単独で実施してもよく、併用してもよい。
なお、吸水性樹脂の比表面積を25m/kg以上に高める方法として、粒子径の小さい粒子を多く含有させる手法もある。しかしながら、当該手法では、粒子径の小さい粒子、特に目開き150μmの篩を通過する微粉が多く含有することになる。結果として、得られる吸水剤のゲルブロッキングが起こり易くなり、加圧下での吸液性能や通液性能が低下するため、好ましくない。したがって、当該微粉を用いて比表面積を調整する場合には、上記(2)や(3)の手法を採用するのが好ましい。本発明では、粒度分布の調整に十分に注意し、後述の調整方法を実施することが重要である。
【0086】
上記粒子状含水ゲルの質量平均粒子径D50や粒度分布の対数標準偏差σζの測定法は、国際公開第2016/111223号パンフレットに記載された方法で行われる。
【0087】
[2-4]乾燥工程
本工程は、上記重合工程及び/又はゲル粉砕工程で得られた含水ゲル及び/又は粒子状含水ゲルを所望する樹脂固形分まで乾燥させて乾燥重合体を得る工程である。該乾燥重合体の樹脂固形分は、吸水性樹脂1gを180℃で3時間加熱した際の質量変化から求められ、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは92質量%以上であって、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは97質量%以下である。
【0088】
上記含水ゲル及び/又は粒子状含水ゲルの乾燥方法として具体的には、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、流動層乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水による乾燥、高温の水蒸気を利用した高湿乾燥等が挙げられる。中でも乾燥効率の観点から、熱風乾燥が好ましく、通気ベルト上で熱風乾燥を行うバンド乾燥がより好ましい。
【0089】
上記熱風乾燥における乾燥温度は、吸水性樹脂の色調や乾燥効率の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上であって、好ましくは300℃以下、より好ましくは200℃以下である。なお、熱風乾燥における乾燥温度は熱風の温度で規定される。また、熱風の風速や乾燥時間等、上記乾燥温度以外の乾燥条件については、乾燥に供する粒子状含水ゲルの含水率や総質量及び目的とする樹脂固形分に応じて、適宜設定すればよく、バンド乾燥を行う際には、国際公開第2006/100300号パンフレット、同第2011/025012号パンフレット、同第2011/025013号パンフレット、同第2011/111657号パンフレット等に記載される諸条件が適宜適用される。
【0090】
本発明における乾燥時間は、好ましくは1分間以上、より好ましくは5分間以上、更に好ましくは10分間以上であって、好ましくは10時間以下、より好ましくは3時間以下、更に好ましくは1時間以下である。当該範囲内の乾燥温度及び乾燥時間とすることで、得られる吸水剤の物性を所望する範囲とすることができる。また、中間生成物としての吸水性樹脂の物性に関しても、所望する範囲とすることができる。また、乾燥を熱風乾燥で行う場合、熱風の風速としては、好ましくは0.5m/s以上であって、好ましくは3.0m/s以下、より好ましくは2.0m/s以下である。なお、その他の乾燥条件については、乾燥を行う粒子状含水ゲルの含水率及び総重量、並びに目的とする固形分等に応じて、適宜設定すればよい。
【0091】
[2-5]粉砕工程、分級工程
本工程は、上記乾燥工程を経て得られる乾燥後の乾燥重合体を、粉砕工程で粉砕し、所望する範囲の粒度に分級工程で調整してから表面架橋前の吸水性樹脂を得る工程である。乾燥後の粉砕工程を経ることで、不定形破砕状の吸水性樹脂や吸水剤を得ることができる。
【0092】
上記粉砕工程で使用される粉砕機として具体的には、ロールミル、ハンマーミル、スクリューミル、ピンミル等の高速回転式粉砕機や、振動ミル、ナックルタイプ粉砕機、円筒型ミキサー等が挙げられる。中でも、粉砕効率の観点から、好ましくはロールミルが選択される。また、これらの粉砕機を複数併用することもできる。
【0093】
上記分級工程での粒度の調整方法として、JIS標準篩(JIS Z8801-1(2000))を用いた篩分級や気流分級等が挙げられる。中でも、分級効率の観点から、好ましくは篩分級が選択される。なお、吸水剤又は吸水性樹脂の粒度調整は、粉砕工程や分級工程での実施に限定されず、重合工程、特に逆相懸濁重合や液滴重合等や、その他の工程、例えば、造粒工程や微粉回収工程で実施することもできる。
【0094】
分級後の表面架橋前の吸水性樹脂に含まれる(i)粒子径が150μm未満の粒子の割合は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
【0095】
また、(ii)質量平均粒子径D50は好ましくは250μm以上、より好ましくは300μm以上であって、好ましくは550μm未満、より好ましくは500μm以下、更に好ましくは450μm以下、特に好ましくは400μm以下である。
【0096】
更に(iii)表面架橋前の吸水性樹脂の粒度分布は質量平均粒子径D50が上記(ii)の範囲内であり、かつ150μm未満の粒子の割合が上記(i)範囲内であることがより好ましい。
【0097】
更に、(iv)粒度分布の狭さを示す対数標準偏差σζは、好ましくは0.20以上、より好ましくは0.25以上、更に好ましくは0.27以上であって、好ましくは0.50以下、より好ましくは0.40以下、更に好ましくは0.35以下である。粒度分布の対数標準偏差σζは、その値が小さいほど均一な粒径となり、粒子の偏析が少なくなるという利点がある。しかしながら、当該粒度分布の対数標準偏差σζを過度に小さくするには、粉砕と分級を繰り返して粗粒子と微粒子を除去することが必要になり、生産性やコストの観点から不利益をもたらす虞がある。
【0098】
上述した粒度等、即ち上記(i)~(iv)は、表面架橋後の吸水性樹脂のみならず、吸水剤についても適用される。そのため、表面架橋前の吸水性樹脂で調整された上記範囲の粒度を維持するように、表面架橋処理、すなわち、表面架橋工程で処理されることが好ましく、表面架橋工程以降に整粒工程を設けて粒度調整されることがより好ましい。また、本発明では上記(i)と上記(iv)、上記(ii)と上記(iv)、上記(iii)と上記(iv)を任意に選択して組み合わせることができ、その際、それぞれの好ましい範囲を任意に組み合わせることができる。
【0099】
また、上記表面架橋前の吸水性樹脂のCRCは、好ましくは10g/g以上、より好ましくは20g/g以上、更に好ましくは25g/g以上であって、好ましくは100g/g以下、より好ましくは80g/g以下、更に好ましくは60g/g以下である。当該CRCが低すぎると表面架橋後に本願所望のCRCとならず、一方、当該CRCが高すぎると可溶分が多くなり、使い捨てオムツとして使用する際の戻り量が増加するため、上記範囲内となるように制御することが望ましい。
【0100】
また、上記表面架橋前の吸水性樹脂のVortexは、好ましくは10秒以上であって、好ましくは60秒以下、より好ましくは50秒以下、更に好ましくは45秒以下である。当該Vortexを短くするには生産性を犠牲にする必要があり、一方、当該Vortexが長くなると、本願で所望する物性を有する吸水剤が得られないため上記範囲内となるように制御することが望ましい。
【0101】
[2-6]表面架橋工程
本工程は、上述した各工程を経て得られる表面架橋前の吸水性樹脂の表面層に、更に架橋密度の高い部分を設ける工程であり、混合工程、熱処理工程、冷却工程等を含む構成となっている。当該表面架橋工程において、表面架橋工程前の吸水性樹脂の表面でラジカル架橋や表面重合、表面架橋剤との架橋反応等が起こり、表面架橋された吸水性樹脂が得られる。
【0102】
[2-6-1]混合工程
本工程は、表面架橋剤を含む溶液(以下、「表面架橋剤溶液」と表記する)を混合装置内で表面架橋前の吸水性樹脂と混合することで、加湿混合物を得る工程である。
【0103】
[2-6-1-1]表面架橋剤
本発明においては、表面架橋時に表面架橋剤が使用される。当該表面架橋剤として具体的には、多価アルコール化合物、アミノアルコール、アルキレンカーボネート化合物、オキサゾリジノン化合物、及びエポキシ化合物が挙げられる。これらの表面架橋剤から選ばれる少なくとも1種以上の表面架橋剤を使用することが好ましい。また、表面架橋剤としては、カルボキシル基との間でエステル結合を形成しうる有機表面架橋剤が好ましい。ポリカルボン酸系吸水性樹脂の官能基、例えばカルボキシル基とエステル結合、好ましくは脱水エステル結合を形成する表面架橋剤としては、多価アルコール又はアミノアルコール等の分子内に水酸基を有する表面架橋剤や、アルキレンカーボネート、オキサゾリジノン、オキセタン、エポキシ化合物等の開環によって水酸基を発生する表面架橋剤が挙げられる。
【0104】
上記表面架橋剤としてより具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,3,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2-ブテン-1,4-ジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン-オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、mesoエリスリトール、D-ソルビトール、ソルビトール等の多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等のエポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン等の多価アミン化合物及びこれらの無機塩又は有機塩、例えばアジリジニウム塩等;2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等の多価オキサゾリン化合物;N-アシルオキサゾリジノン、2-オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン化合物;1,3-ジオキソラン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキサン-2-オン、4,6-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン、1,3-ジオキソパン-2-オン等のアルキレンカーボネート化合物;環状尿素化合物;オキセタン、2-メチルオキセタン、3-メチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン等のオキセタン化合物;エタノールアミン等のアミノアルコール化合物;亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、ジルコニウム等の水酸化物又は塩化物等の多価金属化合物等が挙げられる。
【0105】
これらの表面架橋剤の中でも、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、多価アミン化合物及びそれらの塩、オキセタン化合物並びにアルキレンカーボネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の表面架橋剤が好適である。より好ましくは、表面架橋剤は、炭素数3以上6以下でかつ分子内に含有する水酸基が2以上3以下の多価アルコール、炭素数6以上12以下のエポキシ化合物、炭素数3以上5以下のアルキレンカーボネート及び炭素数3以上10以下のオキセタン化合物からなる群より選ばれる1種以上である。
また上述した表面架橋剤は、その反応性や熱処理工程での加熱温度を考慮して、1種又は2種類以上の表面架橋剤が用いられる。なお、表面架橋工程は、その効果を考慮して2回以上行ってもよく、その場合、2回目以降の工程は1回目と同一の表面架橋剤を用いて行ってもよく、異なる表面架橋剤を用いて行ってもよい。
【0106】
上記表面架橋剤の使用量は、表面架橋前の吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上であって、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。表面架橋剤の使用量を当該範囲内とすることで、表面架橋前の吸水性樹脂の表面層に最適な架橋構造を形成することができ、より一層、高物性の吸水性樹脂や吸水剤が得られ易くなる。なお、複数の表面架橋剤を使用する場合の使用量は、その合計した量とする。
【0107】
上記表面架橋剤は、好ましくは溶液状態で上記吸水性樹脂に添加することであり、より好ましくは水溶液として表面架橋前の吸水性樹脂に添加することである。この場合、水の使用量は、表面架橋前の吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であって、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。水の使用量を当該範囲内とすることで、表面架橋剤溶液の取り扱い性がより一層向上し、表面架橋前の吸水性樹脂に対して表面架橋剤を均等に混合し易くなる。
【0108】
また、上記表面架橋剤溶液中の表面架橋剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であって、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。当該表面架橋剤の濃度を上記範囲内とすることで、比表面積の高い表面架橋前の吸水性樹脂の表面層に最適な架橋構造を形成することができ、吸水性能等の物性を向上させることができる。
【0109】
また、親水性有機溶媒を必要に応じて上記水と併用して、上記表面架橋剤溶液とすることもできる。この場合、親水性有機溶媒の使用量は、表面架橋前の吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。当該親水性有機溶媒として具体的には、メチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジオキサン等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;エチレングリコール等の多価アルコール類;等が挙げられる。しかしながら、これらの親水性有機溶媒は、表面架橋剤を吸水性樹脂の表面に均一に分散させるための混合助剤として寄与するが、商業的な観点ではコストアップにつながるため、使用する場合でもできるだけ少ない使用量に制限されることが好ましい。
【0110】
また、下記「[2-7]添加剤とその添加工程」や「[2-8]硫黄含有還元剤水溶液とその添加工程」で添加される各種の添加剤を、表面架橋前の吸水性樹脂100質量部に対して、5質量部以下の範囲内で、上記表面架橋剤溶液に添加したり、混合工程で別途添加したりすることもできる。
【0111】
[2-6-1-2]混合方法、混合条件
上記表面架橋前の吸水性樹脂と上記表面架橋剤溶液との混合方法として、表面架橋剤溶液を予め作製しておき当該溶液を表面架橋前の吸水性樹脂に対して、好ましくは噴霧又は滴下して、より好ましくは噴霧して、混合する方法が挙げられる。
【0112】
上記混合を行う混合装置として、表面架橋前の吸水性樹脂と表面架橋剤とを均一かつ確実に混合するのに必要なトルクを有している混合装置が好ましい。当該混合装置は、高速攪拌型混合機が好ましく、高速攪拌型連続混合機がより好ましい。なお、当該高速攪拌型混合機の回転数は、好ましくは100rpm以上、より好ましくは300rpm以上であって、好ましくは10000rpm以下、より好ましくは2000rpm以下である。
【0113】
本工程に供給される表面架橋前の吸水性樹脂の温度は、表面架橋剤溶液との混合性や加湿混合物の凝集性の観点から、好ましくは35℃以上であって、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。また、混合時間は、好ましくは1秒間以上、より好ましくは5秒間以上であって、好ましくは1時間以下、より好ましくは10分間以下である。
【0114】
[2-6-2]熱処理工程
本工程は、上記混合工程で得られた加湿混合物に熱を加えて、表面架橋前の吸水性樹脂の表面上で架橋反応させる工程である。
上記加湿混合物の熱処理は、当該加湿混合物を静置状態で加熱してもよく、攪拌等の動力を用いて流動状態で加熱してもよいが、加湿混合物全体を均等に加熱できる点において、攪拌下で加熱することが好ましい。上記熱処理を行う熱処理装置として具体的には、パドルドライヤー、マルチフィンプロセッサー、タワードドライヤー等が挙げられる。
【0115】
本工程における加熱温度は、硫黄含有還元剤水溶液の添加時機や、表面架橋剤の種類及び量並びに吸水剤若しくは吸水性樹脂の吸水性能や臭気の観点から、適宜設定される。具体的には、上記硫黄含有還元剤水溶液が表面架橋前の吸水性樹脂に添加される場合、換言すれば、当該硫黄含有還元剤水溶液が、表面架橋剤の添加前、表面架橋剤の添加と同時、または表面架橋剤の添加後であっても加熱処理による表面架橋反応が開始する前の何れか1つ以上で添加される場合、上記加熱温度として好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上であって、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。また、上記硫黄含有還元剤水溶液が表面架橋後の吸水性樹脂に添加される場合、換言すれば、当該硫黄含有還元剤水溶液が、加熱処理による表面架橋反応が開始された後に添加される場合、上記加熱温度として好ましくは150℃超、より好ましくは170℃以上、更に好ましくは180℃以上であって、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下である。
【0116】
また、本工程における加熱時間は、硫黄含有還元剤水溶液の添加時機に関わらず、好ましくは5分間以上、より好ましくは7分間以上であって、好ましくは1.5時間以下、より好ましくは1時間以下である。
【0117】
上記加熱温度と上記加熱時間とを上記範囲内に制御することにより、得られる吸水剤又は表面架橋後の吸水性樹脂の吸水性能が向上するため好ましい。
【0118】
[2-6-3]冷却工程
本工程は、上記熱処理工程の後に必要に応じて設けられる任意の工程である。本工程は、上記熱処理工程を終えた表面架橋後の吸水性樹脂を所定の温度まで強制冷却し、表面架橋反応を速やかに終了させる工程である。
【0119】
上記表面架橋後の吸水性樹脂の冷却は、静置状態で冷却してもよく、攪拌等の動力を用いて流動状態で冷却してもよいが、吸水性樹脂全体を均等に冷却できる点において、攪拌下で冷却することが好ましい。上記冷却を行う冷却装置は、上記観点から、パドルドライヤー、マルチフィンプロセッサー、タワードドライヤー等が挙げられる。なお、これら冷却装置は、熱処理工程で使用される熱処理装置と同じ仕様とすることもできる。熱処理装置の熱媒を冷媒に変更することで、冷却装置として使用できるからである。
【0120】
本工程における冷却温度は、熱処理工程での加熱温度、吸水剤又は表面架橋後の吸水性樹脂の吸水性能等に応じて適宜設定すればよい。具体的には、表面架橋後の吸水性樹脂の温度が、好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは90℃以下、特に好ましくは80℃以下であって、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上となるように冷却することが望ましい。表面架橋後の吸水性樹脂の温度が上記範囲内であれば、高温状態の吸水性樹脂に硫黄含有還元剤水溶液を添加した際に発生する酸化硫黄等に起因する異臭をより一層、抑制できると共に、硫黄含有還元剤水溶液と吸水性樹脂との良好な混合性が得られるため、好ましい。
【0121】
高比表面積化した吸水性樹脂は吸水速度が従来品より速いため、粒子間で均一に硫黄含有還元剤水溶液を塗布することが困難になっている。そのため、特に高比表面積化した吸水性樹脂と硫黄含有還元剤水溶液との混合性を考慮すると温度を上記範囲に制御することで、凝集粗粒子の生成も抑制できる。一方、吸水性樹脂の吸水速度は温度にも影響されるため、温度が高すぎる吸水性樹脂に硫黄含有吸水剤水溶液を添加して混合すると、一部の吸水性樹脂が硫黄含有還元剤水溶液を吸収してしまうことで吸水性樹脂の表面が粘着性を帯び、凝集粗粒子を生成しやすく、また混合後の均一性も低下するため粒度間の残存モノマー量の差が大きくなる。
【0122】
表面架橋後の吸水性樹脂の形状は、球状、造粒物、凝集物、不定形破砕状などいずれでもよいが、吸水性樹脂の吸水速度を考慮すると不定形破砕状が好ましい。また表面架橋後に吸水性樹脂の破砕等を行うと表面架橋効果が減少するため、表面架橋前後の吸水性樹脂の形状が不定形破砕状であることが好ましい。具体的には吸水性樹脂の表面架橋工程における吸水性樹脂の形状が不定形破砕状であること、また硫黄含有還元剤水溶液の添加効果を考慮すると、硫黄含有還元剤水溶液の混合工程において硫黄含有還元剤水溶液を添加するときの上記吸水性樹脂の形状も不定形破砕状であることが好ましい。不定形破砕状の吸水性樹脂は含水ゲル又は乾燥重合体に対して粉砕を行うことで得ることができる。
【0123】
表面架橋後の吸水性樹脂に含まれる粒子径150μm未満の吸水性樹脂の粒子の割合は3質量%未満であることが好ましい。150μm未満の粒子は150μm以上の粒子に比べると、著しく比表面積が増えるため、水性液体の吸収速度が速い。そのため、150μm未満の粒子が3質量%以上に増えた場合、それらの粒子が優先的に硫黄含有還元剤水溶液を吸液し、硫黄含有還元剤水溶液が表面架橋後の吸水性樹脂全体に均一に混合されなかったり、150μm未満の粒子が凝集した粗粒子が出来てしまうため好ましくない。150μm未満の粒子は吸水性樹脂を上記分級工程と同様の粒度の調整方法を採用することで適切に調整できる。150μm未満の粒子の割合以外にも上記したように(ii)質量平均粒子径D50、(iii)質量平均粒子径D50と150μm未満の粒子、(iv)対数標準偏差σζ、及びこれらの組み合わせと好適な範囲は上記した通りである。特に粒度分布の対数標準偏差σζが上記所望の範囲であれば、粒子間の比表面積のばらつきが小さくて水性液体の吸収速度もばらつきも小さくなり、硫黄含有還元剤水溶液を添加する際に均一に混合されやすくなるため好ましい。
【0124】
[2-7]添加剤とその添加工程
本発明では、表面架橋前の吸水性樹脂、及び表面架橋後の吸水性樹脂のいずれか1つ以上に対して、添加剤を添加してもよい。換言すれば、吸水剤は、吸水性樹脂の他に、添加剤を含有し得る。添加剤としては、通液性向上剤又は同成分剤、その他の添加剤などが含まれ、これらは1種を用いてもよく2種以上を組み合わせてもよい。
【0125】
[2-7-1]通液性向上剤又は同成分剤
本発明で使用される通液性向上剤として、吸水剤又は吸水性樹脂の食塩水流れ誘導性(以下、「SFC」という。)、荷重又は無荷重下のゲル床透過性(以下、「GBP」という。)を向上する機能を有する添加剤が挙げられ、例えば、多価金属塩、カチオン性ポリマー、無機微粒子から選ばれる少なくとも1種類の化合物を使用でき、必要に応じて2種類以上を併用できる。
【0126】
これらの添加剤は、通液性の向上を目的とせず、吸湿下のAnti-Caking剤、粉体の流れ制御剤、吸水性樹脂のバインダー等のその他の機能を発揮するために使用してもよい。なお、その他の機能を目的として添加される場合、同成分剤という。上記通液性向上剤又は同成分剤の添加量は、選択される化合物に応じて、適宜設定される。なお、これら添加剤を単独で用いる場合だけでなく、2種以上を併用する場合のそれぞれの好適な添加量の範囲は以下の記載の範囲内で適宜選択できる。
【0127】
上記「SFC」とはSaline Flow Conductivityの略称であり、2.07kPa荷重下での、吸水剤又は吸水性樹脂に対する0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の通液性であり、米国特許第5669894号に記載されたSFC試験方法に準拠して測定される値である。
【0128】
また、上記「GBP」とはGel Bed Permeabilityの略称であり、荷重下又は自由膨潤での、吸水剤又は吸水性樹脂に対する0.9質量%塩化ナトリウム水溶液の通液性であり、国際公開第2005/016393号に記載されたGBP試験方法に準拠して測定される値である。
【0129】
[2-7-1-1]多価金属塩
多価金属塩を使用する場合、多価金属塩の多価金属カチオンは、好ましくは2価以上、より好ましくは3価以上であって、好ましくは4価以下である。また、使用できる多価金属としては、アルミニウム、ジルコニウム等が挙げられる。従って、本工程で使用することができる多価金属塩としては、乳酸アルミニウム、乳酸ジルコニウム、硫酸アルミニウム、硫酸ジルコニウム等が挙げられる。中でも、SFCの向上効果の観点から、乳酸アルミニウム又は硫酸アルミニウムがより好ましく、硫酸アルミニウムが更に好ましい。
上記多価金属塩の添加量としては、吸水性樹脂1gに対して、好ましくは0モル以上3.6×10-5モル未満、より好ましくは0モル以上1.4×10-5モル未満、更に好ましくは0モル以上1.0×10-5モル未満である。
【0130】
[2-7-1-2]カチオン性ポリマー
カチオン性ポリマーを使用する場合、カチオン性ポリマーとしては、米国特許第7098284号に記載されている物質が挙げられる。中でも、SFCやGBPの向上効果の観点から、ビニルアミンポリマーがより好ましい。また、カチオン性ポリマーの質量平均分子量は、5000以上1000000以下が好ましい。
【0131】
上記カチオン性ポリマーの添加量は、吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0質量部以上、より好ましくは0質量部超であって、好ましくは2.5質量部未満、より好ましくは2.0質量部未満、更に好ましくは1.0質量部未満である。
【0132】
[2-7-1-3]無機微粒子
無機微粒子を使用する場合、無機微粒子としては、米国特許第7638570号に記載されている物質が挙げられる。中でも、SFCやGBPの向上効果の観点から、二酸化ケイ素が好ましい。
【0133】
上記無機微粒子は、一次粒子径が20nm未満である場合、吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0質量部以上、より好ましくは0質量部超であって、好ましくは1.2質量部未満、より好ましくは1.0質量部未満、更に好ましくは0.5質量部未満となるように添加すればよい。また、一次粒子径が20nm以上である場合、吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0質量部以上、より好ましくは0質量部超であって、好ましくは2.0質量部未満、より好ましくは1.5質量部未満、更に好ましくは1.0質量部未満となるように添加すればよい。
【0134】
[2-7-2]その他の添加剤
その他の添加剤として具体的には、キレート剤、無機還元剤、芳香性物質、有機還元剤、ヒドロキシカルボン酸化合物、界面活性剤、リン原子を有する化合物、酸化剤、金属石鹸等の有機粉末、消臭剤、抗菌剤、パルプや熱可塑性繊維等が挙げられる。これらその他の添加剤は1つ又は2つ以上を使用できる。中でも、キレート剤が好ましく、アミノ多価カルボン酸又はアミノ多価燐酸がより好ましい。当該キレート剤として具体的には、特開平11-060975号公報、国際公開第2007/004529号パンフレット、国際公開第2011/126079号パンフレット、国際公開第2012/023433号パンフレット、特表2009-509722号公報、特開2005-097519号公報、特開2011-074401号公報、特開2013-076073号公報、特開2013-213083号公報、特開昭59-105448号公報、特開昭60-158861号公報、特開平11-241030号公報、特開平2-41155号公報等に記載されたキレート剤が挙げられる。
【0135】
その他の添加剤、特にキレート剤は、単量体又は吸水性樹脂に対して、好ましくは0.001質量%以上1質量%以下の範囲で添加又は含有される。
【0136】
[2-7-3]添加剤の添加工程
上記添加剤は、上記の単量体水溶液の調製工程、重合工程、ゲル粉砕工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、表面架橋工程から選ばれる少なくとも1つの工程の前後又はその工程の途中で添加することができる。好ましくは、重合工程以降のいずれかの工程の前、後、又はその工程の途中で添加される。
【0137】
上記添加剤を吸水性樹脂に添加する場合、該添加剤が液体又は水等の水性媒体の溶液の時には、該液体又は溶液を吸水性樹脂に対して噴霧し、十分なトルクをかけて吸水性樹脂と添加剤とを均一かつ確実に混合することが好ましい。一方、上記添加剤が粉状等の固体状である場合には、吸水性樹脂とドライブレンドしてもよく、水等の水性液体をバインダーとして使用してもよい。
【0138】
上記混合に使用する装置として具体的には、攪拌型混合機、円筒型混合機、二重壁円錐型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、流動型ロータリーディスク型混合機、気流型混合機、双腕型ニーダー、内部混合機、粉砕型ニーダー、回転式混合機、スクリュー型押出機等が挙げられる。攪拌型混合機を用いる場合には、その回転数は、好ましくは5rpm以上、より好ましくは10rpm以上であって、好ましくは10000rpm以下、より好ましくは2000rpm以下である。
【0139】
[2-8]硫黄含有還元剤水溶液とその添加工程
本工程は、上述した各工程を経て得られた比表面積の高い吸水性樹脂に対して、硫黄含有還元剤を水溶液の状態にして添加する工程である。本発明によって高比表面積を有し、かつ吸水剤の粒度間の残存モノマー量のばらつきが小さい吸水剤が得られる。また残存モノマー量の低減や、凝集粗粒子量の低減も達成することができる。
【0140】
本発明は吸水性樹脂の表面架橋工程、及び、硫黄含有還元剤水溶液の混合工程を含む、吸水性樹脂を主成分とする吸水剤の製造方法であって、下記(1)~(4)を満たす、製造方法である。
(1)上記吸水性樹脂の比表面積が25m/kg以上であること
(2)上記硫黄含有還元剤水溶液の平均液滴径が2.5mm以下であり、該水溶液の温度が80℃以下であること
(3)上記混合工程において、下記式(a)を満たす攪拌混合を行うこと
攪拌力係数 ≧0.16×(平均液滴径(mm))+0.05・・・(a)
なお、攪拌力係数は、(フルード数Fr)×(重力加速度g)で規定する
(4)上記混合工程後に、40℃以上150℃以下の加熱乾燥工程を行うこと
【0141】
本発明では吸水性樹脂に硫黄含有還元剤水溶液を添加、混合するが、該吸水性樹脂は表面架橋前、表面架橋後のいずれでもよい。また該吸水性樹脂の比表面積は25m/kg以上である。吸水性樹脂の比表面積が低いと十分な吸水速度(vortex)を有する吸水剤が得られない。吸水性樹脂の比表面積は所望する吸水剤の比表面積に応じて設定すればよいが、吸水性樹脂の比表面積は高いほど好ましく、26m/kg以上、27m/kg以上、28m/kg以上、29m/kg以上、30m/kg以上の順に好ましく、50m/kg以下、45m/kg以下の順に好ましい。
【0142】
[2-8-1]硫黄含有還元剤水溶液
硫黄含有還元剤としては、硫黄の見かけの酸化数が+2、+3、+4の酸化硫黄化合物やSH基含有硫黄化合物が挙げられる。当該硫黄含有還元剤は、好ましくは水溶性であり、より好ましくは25℃の水100gに対して0.1g以上、更に好ましくは1g以上溶解する、水溶性の硫黄含有還元剤である。当該硫黄含有還元剤は、無機還元剤でもよく、有機還元剤もよい。
【0143】
硫黄の酸化数が+4の硫黄含有還元剤として、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウム等の亜硫酸塩、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム等の亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸ナトリウム等のピロ亜硫酸塩が挙げられる。
【0144】
硫黄の酸化数が+3の硫黄含有還元剤として、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸マグネシウム等のチオ硫酸塩(亜二チオン酸塩)が挙げられる。
【0145】
硫黄の酸化数が+2の硫黄含有還元剤として、スルホキシル酸やその塩が挙げられる。
【0146】
また、SH基含有硫黄含有還元剤として、システイン、及びシスチンが挙げられる。
硫黄含有有機還元剤として、スルフィン酸やその塩が挙げられる。具体的には、2-ヒドロキシ-2-スルホナト酢酸、2-ヒドロキシ-2-スルホナトプロピオン酸、2-ヒドロキシ-2-ホスホナト酢酸、2-ヒドロキシ-2-ホスホナトプロピオン酸及びこれらの塩が挙げられる。
【0147】
上記硫黄含有還元剤の酸基は、中和された塩型でもよく、未中和の酸型でもよいが、臭気の観点からは塩型の硫黄含有還元剤が好ましく、塩型の水溶性硫黄含有還元剤がより好ましく、すべての酸基が中和された塩型の水溶性硫黄含有還元剤が更に好ましい。したがって上記硫黄含有還元剤が、その酸基のすべてが中和された水溶性塩であることは好ましい実施態様である。また、これらのうち残存モノマー低減効果とコスト面を考慮すると亜硫酸塩、及び/又は亜硫酸水素塩が好ましい。
【0148】
硫黄含有還元剤の添加量、なお2種以上を併用する場合はそれらの合計量は、硫黄含有還元剤水溶液を添加する前の吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上であって、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下、更に好ましくは1.0質量部以下である。硫黄含有還元剤の使用量が少なすぎると十分な残存モノマー低減効果が得られないことがある。一方、硫黄含有還元剤の使用量が多すぎると所望の残存モノマー低減効果に対し過剰の添加量となるだけでなく、物性が低下することがある。更に、硫黄含有還元剤の硫黄臭によって、吸水剤の臭気が悪化することがある。
【0149】
上記硫黄含有還元剤水溶液の添加量は、吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であって、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4.5質量部以下、更に好ましくは4.0質量部以下である。添加量が少なすぎると硫黄含有還元剤水溶液の均一混合性が悪くなる。一方、添加量が多すぎると、添加後の吸水性樹脂や吸水剤の含水率調整に多大な乾燥エネルギーが必要となり、高温で乾燥させた場合には酸化硫黄に起因する悪臭が発生することがある。また添加量が多いほど吸水性樹脂は強固に凝集しやすくなるため、乾燥後に粉砕を行うと既に形成された表面架橋層が破壊されて所望の加圧下吸収倍率が得られないことがある。
【0150】
また硫黄含有還元剤水溶液中の硫黄含有還元剤濃度は、吸水性樹脂に対する上記各含有量や水への溶解度を考慮して適宜調整すればよい。硫黄含有還元剤の濃度は、残存モノマー低減効果が得られる範囲内で適宜調整すればよく、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であって、好ましくは飽和濃度以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
【0151】
硫黄含有還元剤水溶液は、液滴状態で吸水性樹脂に供給するが、平均液滴径が2.5mmを超えると硫黄含有還元剤水溶液の供給量当たりの液滴数が少なくなるため、吸水性樹脂との遭遇確率が低下して均一に混合されず、吸水剤粒子間の残存モノマー量にばらつきが生じる。また平均液滴径が2.5mmを超えた硫黄含有還元剤水溶液と特に比表面積の高い吸水性樹脂とを攪拌混合すると凝集粗粒子が発生しやすくなる。したがって平均液滴径は、2.5mm以下、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.0mm以下、更に好ましくは0.5mm以下である。供給する硫黄含有還元剤水溶液の液滴径が小さい程、硫黄含有還元剤水溶液と吸水性樹脂との均一混合に寄与するが、液滴を微細にするためコストが得られる効果に対して高くなり過ぎるため、平均液滴径は好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは50μm以上である。硫黄含有還元剤水溶液を液滴状態で供給する手段は、所望のノズル径を有するスプレーノズルなどの噴霧手段や所望の内径を有する直管を用いることができる。
【0152】
硫黄含有還元剤水溶液を吸水性樹脂に添加するときの硫黄含有還元剤水溶液の温度、具体的には液滴の温度は好ましくは20℃以上であって、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。上記の温度範囲に調整された硫黄含有還元剤水溶液は特に比表面積の高い吸水性樹脂との混合性向上に有効である。硫黄含有還元剤水溶液の温度が高すぎると酸化硫黄が生成されて臭気が発生しやすくなる。また、硫黄含有還元剤の水分が蒸発し硫黄含有還元剤が析出し易くなるため、均一な混合が困難となる。一方、上記温度が低くなりすぎると、硫黄含有還元剤の水に対する溶解度が小さくなり、作製可能な硫黄含有還元剤水溶液の濃度が薄くなる。そのため、所望の硫黄含有還元剤を添加する際、添加される水分量が多くなり、その結果として製品中の凝集粗粒子(製品ダマ)が多く生成する可能性があり、好ましくない。なお、上記水溶液の温度範囲は、吸水性樹脂の温度や、硫黄含有還元剤水溶液を吸水性樹脂に添加する際に吸水性樹脂が滞留している装置の温度の影響を受ける前に測定された温度とする。
【0153】
硫黄含有還元剤水溶液の温度と該水溶液の液滴径は単独で制御してもよいが、本発明者らがこれらの関係を調べた結果、上記好適範囲内で組み合わせて行うと、特に比表面積の高い吸水性樹脂との混合性向上に有効であり、残存モノマー量の低減、及び粒度間の残存モノマー量のばらつき低減に顕著な効果が得られることがわかった。すなわち、比表面積の高い吸水性樹脂に対して硫黄含有還元剤水溶液の温度が高い程、吸収速度が速くなるため、より均一に混合させる手段として、液滴径を小さくすることが有効である。また硫黄含有還元剤水溶液の温度を高くし過ぎたり、液滴径を小さくしすぎると、硫黄含有還元剤水溶液が揮発して析出しやすくなることがあるため、それぞれを上記範囲内で制御することが好ましい。
【0154】
硫黄含有還元剤水溶液の添加に用いられる装置は、大きな混合力を備えているのが好ましい。この混合装置として具体的には、円筒型混合機、二重壁円錐混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、ロータリーディスク混合機、双腕型ニーダー、内部混合機、粉砕型ニーダー、回転式混合機、スクリュー型押出機、流動層型混合機、気流型混合機などが挙げられる。また攪拌によって混合できる装置がより好ましく、高速攪拌型混合装置や縦型回転円盤型混合装置が例示され、より好ましくは高速攪拌型連続混合装置であり、更に好ましくは横型高速攪拌型連続混合装置、又は縦型高速攪拌型連続混合装置である。具体的にはシュギミキサー(ホソカワミクロン社製)、タービュライザー(ホソカワミクロン社製)、レディゲミキサー(レディゲ社製)、フロージェットミキサー(粉研パウテックス社製)が例示される。攪拌型混合機を用いる場合には、その回転数は、好ましくは5rpm以上、より好ましくは10rpm以上であって、好ましくは10000rpm以下、より好ましくは2000rpm以下である。
【0155】
硫黄含有還元剤水溶液と吸水性樹脂との攪拌混合は、下記式(a)で定義される数式を満たす攪拌混合を実施する。
攪拌力係数 ≧0.16×(平均液滴径(mm))+0.05・・・(a)
なお、上記式(a)における「攪拌力係数」は、(フルード数Fr)×(重力加速度g)で規定される値である。攪拌力係数及びフルード数Frは、実施例に記載の方法によって求められる値である。また、平均液滴径は、ノズル等の噴霧手段の液滴供給口のノズル系や圧力によって定まる値である。
【0156】
上記式(a)を満足するように攪拌力係数及び平均液滴径を調整することで、比表面積の高い吸水性樹脂と硫黄含有還元剤水溶液の液滴との遭遇確率が高まって粒子1つ1つの残存モノマー量を効率よく低減出来ると共に、粒度間での残存モノマー量のばらつきも小さくできる。また攪拌・混合に伴う凝集粗粒子の生成を抑制できる。したがって本発明の効果を達成するためには攪拌力係数を考慮して硫黄含有還元剤水溶液の平均液滴径や攪拌混合条件を調整することが望ましい。
【0157】
上記式(a)における0.16(以下、「定数K」という。)、0.05(以下、「定数L」という。)は、本発明者らが複数の実験を行って得られた液滴径(横軸)と攪拌力係数(縦軸)の関係をグラフにプロットし、本発明の効果が得られる値として導出したものである。より優れた効果を発揮するために定数K、定数Lは下記式(a-2)にしたがい、相互に連動して好適な値に変更することが可能である。
攪拌力係数 ≧K×(平均液滴径(mm))+L・・・(a-2)
なお、具体的に、定数Kは、好ましくは0.16以上、より好ましくは0.20以上、更に好ましくは0.24以上であって、好ましくは0.25以下の範囲内から選ばれる値であり、定数Lは、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、更に好ましくは0.12以上であって、好ましくは0.13以下の範囲内から選ばれる値である。
【0158】
また本発明の効果をより一層向上させる観点から上記式(a)及び(a-2)から算出される攪拌力係数は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、更に好ましくは0.15以上であって、好ましくは100以下、より好ましくは85以下、更に好ましくは70以下である。本発明では上記定数K、定数Lのみを上記好適な範囲に変更してもよいし、或いは攪拌力係数のみを上記各好適な範囲に適宜変更してもよい。また定数K、定数Lを好適な範囲に設定すると共に攪拌力係数も好適な範囲に設定することもより優れた効果が得られるため好ましい。
【0159】
なお、攪拌力係数の詳細は実施例で説明しており、上記攪拌力係数を達成手段として考慮できる。また攪拌力係数は、攪拌翼直径d:0.05以上1.5以下、回転数N:5以上1000以下、回転速度n:0.08以上17以下、フルード数Fr:0.005以上11以下の範囲内で適宜調整すればよい。
【0160】
なお、硫黄含有還元剤水溶液を添加するに際し、硫黄含有還元剤水溶液に、さらに後述するキレート剤、植物成分、抗菌剤、水溶性高分子、無機塩等の他の添加剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。その場合の添加剤の含有量は、必要により適宜選択されるが、硫黄含有還元剤水溶液の0.001質量%以上50質量%以下にすることが望ましい。上記キレート剤としては、Fe及びCuに対するイオン封鎖能やキレート能が高いキレート剤が好ましく、具体的にはFeイオンに対する安定度定数が10以上のキレート剤、好ましくは20以上のキレート剤、更に好ましくはアミノ多価カルボン酸及びその塩、特に好ましくはカルボキシル基を3個以上有するアミノカルボン酸及びその塩が挙げられる。これら多価カルボン酸は、具体的には、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸、シクロヘキサン-1,2-ジアミンテトラ酢酸、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、エチレングリコールジエチルエーテルジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンテトラプロピオン酢酸、N-アルキル-N’-カルボキシメチルアスパラギン酸、N-アルゲニル-N’-カルボキシメチルアスパラギン酸及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩又はアミン塩が挙げられる。塩は完全中和でもよく、部分中和でもよく、混合物でもよい。中でも、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸及びその塩が最も好ましい。また、その使用量は吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.00001質量部以上、より好ましくは0.0001質量部以上であって、好ましくは10質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。
【0161】
上記の植物成分は、消臭性を発揮するために、吸水性樹脂100質量部に対して好ましくは0質量部以上、より好ましくは0.001質量部以上、更に好ましくは0.002質量部以上であって、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下の範囲で配合し得る。植物成分は、好ましくはポリフェノール、フラボン及びその類、カフェインから選ばれる少なくとも1種の化合物であるのが好ましく、タンニン、タンニン酸、五倍子、没食子及び没食子酸から選ばれる少なくとも1種の化合物であるのが更に好ましい。また、上記の抗菌剤としては、抗菌性を有するこれまでの公知の抗菌剤であり、例えば特開平11-267500号公報記載の抗菌剤が挙げられる。
【0162】
[2-8-2]加熱乾燥処理
硫黄含有還元剤水溶液を添加・混合した後の上記吸水性樹脂に対しては、加熱乾燥処理を行うことが望ましい。加熱乾燥処理は、吸水剤の含水率が好ましくは0質量%超10質量%以下である状態になるように行われる。吸水剤の含水率はより好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上であって、より好ましくは9質量%以下である。なお、吸水剤の含水率は、下記実施例に記載された方法で測定される。なお、表面架橋前の吸水性樹脂に表面架橋剤を添加する工程において、表面架橋剤の添加前、添加と同時、または添加後に硫黄含有還元剤水溶液を添加・混合した場合、その後の表面架橋工程内で行われる熱処理工程を、上記加熱乾燥処理工程とみなしてもよい。
【0163】
加熱には熱風等気流の熱媒が使用され、加熱温度、例えば熱媒温度又は材料温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であって、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。またこの温度範囲での加熱時間は、好ましくは1分以上2時間以下である。加熱温度と加熱時間の組み合わせは上記含水率に調整できればよく、60℃で0.1時間以上1.5時間以下が好適である。加熱温度が低すぎたり、加熱時間が短すぎると得られる吸水剤の表面状態が湿潤状態にあるため粘着性が強く、粉体としての取り扱いが困難になることがある。また加熱温度が高すぎたり、加熱時間が長すぎるとエネルギー的に不経済であるばかりでなく、硫黄含有還元剤の熱分解物である酸化硫黄に起因する悪臭が強くなることがある。
【0164】
上記硫黄含有還元剤水溶液の添加、混合とその後の加熱乾燥処理とは同一の装置、あるいは異なる装置で行ってもよい。使用する装置としては上記装置が例示され、装置内が上記温度となるように例えば気体、伝導電熱などの熱媒を調整すればよい。加熱する場合、温度及び含水率が所定範囲に制御できるのであれば、攪拌してもよく、静置、すなわち、無攪拌でもよい。硫黄含有還元剤水溶液を添加するときの吸水性樹脂の温度は好ましくは150℃以下であって、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上である。上記したように吸水性樹脂の温度が低すぎると吸水剤の粘着性が強くなることがあり、また吸水性樹脂の温度が高すぎると悪臭等の問題が生じることがある。硫黄含有還元剤水溶液を添加して混合した後の吸水性樹脂を上記好ましい加熱温度40℃以上150℃以下の範囲で加熱して硬化させることが好ましく、該加熱温度において、加熱時間を好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上であって、好ましくは2時間以下、より好ましくは1.5時間以下の範囲内で適宜調整して加熱乾燥処理すればよい。当該加熱乾燥処理を静置で行う場合には、吸水性樹脂を好ましくは1cm以上、より好ましくは5cm以上、更に好ましくは10cm以上であって、好ましくは100cm以下、より好ましくは80cm以下、更に好ましくは70cm以下の厚みとなるように積層させて加熱乾燥処理してもよい。硬化後の吸水性樹脂は必要により粉砕、又は分級して所望の粒度を有する吸水剤とすることができる。なお、硬化とは、上記加熱乾燥処理工程により吸水剤の表面の湿潤性をなくし、粉体化する操作をいう。
【0165】
硫黄含有還元剤水溶液を添加するときの吸水性樹脂の物性は、上記各物性を満足していることが好ましく、例えば上記(i)~(iv)が適用され得る。特に吸水性樹脂の粒度分布は質量平均粒子径D50が上記(ii)の範囲内であり、かつ150μm未満の粒子の割合が上記(i)範囲内であることがより好ましい。
【0166】
[2-9]その他の工程
本発明においては、上述した工程以外に、造粒工程、整粒工程、微粉除去工程、微粉回収工程、微粉の再利用工程、除鉄工程等を、必要に応じて実施することができる。また、輸送工程、貯蔵工程、梱包工程、保管工程等から選択される少なくとも1種類の工程をさらに含んでいてもよい。
【0167】
なお、上記造粒工程は、微粉回収工程で得られた微粉の含水ゲル化工程などであってもよい。上記整粒工程は、表面架橋工程以降で微粉を分級して除去する工程;吸水性樹脂が凝集して所望の大きさを超えた場合に分級、粉砕を行う工程等を含む。上記微粉の再利用工程は微粉をそのまま、又は上記造粒工程で大きな含水ゲルにして、吸水性樹脂の製造工程の何れかの工程で原料である含水ゲル等に添加する工程であってもよい。
【0168】
例えば、加熱乾燥処理後の吸水剤から粒子径150μm未満の粒子を分離除去し、除去した粒子を吸水性樹脂の製造工程で再利用してもよく、好ましくは上記硬化を行った後に粒子径が150μm未満の粒子を分離し、150μm未満の粒子を吸水性樹脂の製造工程に戻して吸水性樹脂の原料として再利用することである。好ましくは乾燥前の工程に該微粒子を供給することである。
【0169】
また加熱乾燥処理後の吸水剤を貯蔵槽に保存してもよい。本発明では加熱乾燥工程を行った後、好ましくは上記硬化後、得られた吸水剤を1分間以上20時間以下の間、貯蔵槽で保持する工程を含んでいることが好ましい。貯蔵槽に一時保存することで、保存中に吸水剤に残存する臭気や残存モノマーを除去できる。貯蔵槽での保持時間はより好ましくは5分以上、更に好ましくは10分以上であって、より好ましくは18時間以下、更に好ましくは15時間以下である。貯蔵槽での保持時間が長すぎると、生産量に対して貯蔵槽が大きくなりすぎるため、経済的に不利となる。一方、貯蔵槽での保持時間が短すぎると、貯蔵槽が臭気低減効果を十分に発揮できないため、上記範囲内で調整することが好ましい。また、貯蔵槽の内部圧力を微減圧とすることで、吸水剤に残留する臭気をより低減できるため好ましい。
【0170】
本発明では上記貯蔵槽での保持する工程後、吸水剤を製品出荷用容器に充填する工程を含むことができる。貯蔵槽から所定量分離して吸水剤を最終製品として袋や容器に充填する。上記のように貯蔵槽で保持することで臭気がより一層低減された吸水剤を出荷することができる。
【0171】
[3]吸水性樹脂及び吸水剤
以上の様にして製造した吸水剤は出荷可能な状態であれば最終製品となる。本発明の吸水剤は、硫黄含有還元剤を含み、かつ、吸水性樹脂を主成分とする吸水剤であって、粒子径が、300μm未満、300μm以上500μm未満、500μm以上である吸水剤の粒子を含み、比表面積が25m/kg以上で、下記式(b)で規定される硫黄含有還元剤分散度が28以下である。
【0172】
[3-1]比表面積
吸水剤の比表面積を25m/kg以上とすることで、より一層優れたVortex法による吸水速度が得られる。吸水剤の比表面積は高いほど好ましく、26m/kg以上、27m/kg以上、28m/kg以上、29m/kg以上、30m/kg以上の順に好ましく、50m/kg以下、45m/kg以下の順に好ましい。吸水速度を速くするという観点からは比表面積は高いほど望ましいが、比表面積が高くなりすぎると重合工程における過度な発泡重合や、ゲル粉砕工程における細かすぎるゲル粉砕が必要となり、結果として加圧下吸収倍率(AAP)虞がある。一方、吸水剤の比表面積が小さくなりすぎると、所望の吸水速度(Vortex)を有する吸水剤が得られにくくなるため、好ましくない。
【0173】
なお、本明細書において、「比表面積」とは吸水剤又は吸水性樹脂の単位質量当たりの表面積(単位:m/kg)を意味し、後述するマイクロフォーカスX線CTシステム(島津製作所製:inspeXio SMX-100CT)を用いて取得した吸水剤又は吸水性樹脂の3次元画像データを、高速3次元解析ソフト(ラトックシステムエンジニアリング社製:TRI/3D-VOL-FCS64)で解析することにより求めることができる。測定条件の詳細は実施例の記載を参照する。万が一、X線CT法が適用できない吸水剤又は吸水性樹脂が存在する場合はガス吸着(BET)法が利用でき、ガス吸着(BET)法の適用も困難な場合には空気浸透法、水銀圧入法などが利用できる。
【0174】
[3-2]硫黄含有還元剤分散度
また本発明の吸水剤は硫黄含有還元剤分散度が28以下である。硫黄含有還元剤分散度とは吸水剤を粒度に応じて(i)粒子径500μm以上の吸水剤、(ii)粒子径500μm未満、300μm以上の吸水剤、(iii)粒子径300μm未満の吸水剤にわけ、各粒度における硫黄含有還元剤含有量(質量%)A1~A3の標準偏差σ1を下記式(b)にあてはめて求める値である。
(硫黄含有還元剤分散度)=σ1/(吸水剤の硫黄含有還元剤含有量)×100・・・(b)
なお、上記粒度(i)~(iii)の区分は、この粒度間で硫黄含有還元剤水溶液の吸収速度に違いが大きく、残留モノマー量のばらつきが問題となるからである。
【0175】
硫黄含有還元剤分散度が低い程、吸水剤の上記粒度間での硫黄含有還元剤含有量のばらつきが小さく、硫黄含有還元剤が均一に分散、混合されていることを示す。したがって吸水剤の残存モノマー量は小さく、また吸水剤の粒度間の残存モノマー量のばらつきも小さく、万が一、吸収性物品の製造ライン中で吸水剤の粒度偏析が生じても、吸収性物品ごとに投入される吸水剤中の残存モノマー量の変動が抑えられる。硫黄含有還元剤分散度は28以下、好ましくは26以下、さらに好ましくは24以下である。一方、硫黄含有還元剤分散度が28を超えると吸水剤の粒度間でモノマー残量のばらつきが多くなり、吸収性物品の製造ライン中で吸水剤の粒度偏析が生じた際に、残存モノマー量の多い吸水剤のみが吸収性物品に投入され、衛生上及び臭気上の問題となる虞がある。
【0176】
[3-3]吸水性樹脂と吸水剤の関係
吸水剤に含まれる吸水性樹脂の量は、吸水剤全量に対して、好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上であり、最も好ましくは99質量%以上であり、100質量%であってもよい。100質量%とならない場合、残りの成分には、例えば、上記各種添加剤が含まれ得る。
【0177】
[3-4]吸水剤の特性
本発明の吸水剤は、以下の特性(a)~(j)の少なくとも1つを備えているのが好ましい。
(a)質量平均粒子径D50、(b)粒子径150μm未満の粒子の割合、(c)無加圧下吸収倍率(CRC)、(d)加圧下吸収倍率(AAP)、(e)含水率、(f)吸水速度(Vortex法)、(g)残存モノマー量、(h)硫黄含有還元剤含有量、(i)残存モノマー変動率、(j)製品凝集粗粒子量(製品ダマ量)
【0178】
また上記特性(a)~(j)のうち、何れか2以上を組み合わせて備えていてもよい。好ましくは少なくとも(f)と(g)であり、より好ましくはこれらに加えて(a)と(b)である。更に好ましくはこれらに加えて(c)、及び/又は(d)を備えていてもよく、これらに加えて(i)及び/又は(j)を備えていてもよい。最も好ましくは(a)~(j)の全てを備えていることである。
【0179】
[3-4-1]質量平均粒子径D50
吸水剤の質量平均粒子径D50は、好ましくは250μm以上、より好ましくは270μm以上、更に好ましくは300μm以上であって、好ましくは550μm以下、より好ましくは500μm以下、更に好ましくは450μm以下である。吸水剤の質量平均粒子径D50を上記範囲内とすることで、好ましい吸収特性である加圧下吸収倍率(AAP)やVortex法による吸水速度をより一層、バランスよく制御することができる。質量平均粒子径D50が小さすぎる場合には、ゲル嵩密度が高くなりすぎたり、好ましい吸収特性である加圧下吸収倍率(AAP)が低くなりすぎたりする虞がある。一方で、質量平均粒子径D50が大きすぎる場合には、好ましい吸収特性であるVortex法による吸水速度が遅くなる虞がある。また、吸水剤の粒子の粗さが目立つようになり、使い捨てオムツや生理用ナプキン等の吸収性物品に用いたときに、肌触りや装着感が悪化することがある。詳細な測定条件は実施例を参照する。
【0180】
[3-4-2]粒子径150μm未満の粒子の割合
吸水剤100質量%中の150μm未満の粒子の割合は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下であって、特に好ましくは0質量%である。なお、連続商業生産においては150μm未満の粒子の割合を0質量%にすることは、生産効率の観点から非常に難しい場合がある。そのため、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上である。
150μm未満の粒子の割合を上記の範囲内とすることで、加圧下吸収倍率(AAP)やVortex法による吸水速度をより一層、バランスよく制御し易くなる。150μm未満の粒子の割合が多すぎる場合には、好ましい吸収特性である加圧下吸収倍率(AAP)が低くなりすぎたりする虞があるだけでなく、吸水剤を取り扱う場所におけるダストの飛散による作業環境の悪化や、微粒子の装置内堆積によって取り扱い性が困難になる虞があるため好ましくない。
【0181】
また吸水剤の質量平均粒子径が250μm以上550μm以下であり、かつ粒子径が150μm未満である粒子の割合が3質量%以下であることが好ましい。より好ましくは吸水剤は上記範囲の質量平均粒子径D50を満足し、かつ、上記範囲の150μm未満の粒子の割合を満足することである。両者を満足することで上記効果が相乗的に得られる。なお、吸水剤の質量平均粒子径D50や150μm未満の粒子の割合は、実施例に記載した方法で測定される。
また、本発明の吸水剤は、篩分級で規定される「300μm未満」、「300μm以上500μm未満」、「500μm以上」の3つの粒度フラクションを含むことが好ましい。それぞれ1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。
【0182】
[3-4-3]無加圧下吸収倍率(CRC)
吸水剤の無加圧下吸収倍率(CRC)は、好ましくは25g/g以上であって、好ましくは40g/g以下、より好ましくは38g/g以下、更に好ましくは35g/g以下、特に好ましくは32g/g以下、最も好ましくは30g/g以下である。
上記無加圧下吸収倍率(CRC)が低すぎると、該吸水剤の吸収倍率が低下し、使い捨てオムツや生理用ナプキン等の吸収性物品の吸収体用途に適さないおそれがある。一方、上記無加圧下吸収倍率(CRC)が高すぎると、ゲル強度が弱くなる虞がある。
【0183】
[3-4-4]加圧下吸収倍率(AAP)
「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、吸水剤の加圧下での吸収倍率を意味する。詳細な測定条件は実施例を参照する。
荷重4.83kPaでの吸水剤の加圧下吸収倍率(AAP)は、好ましくは20g/g以上、より好ましくは21g/g以上、更に好ましくは22g/g以上、特に好ましくは23g/g以上であって、好ましくは30g/g以下、より好ましくは28g/g以下である。
加圧下吸収倍率(AAP)を上記範囲内とすることで、吸収体に圧力が加わったときの液の戻り量がより一層、低減できるため、使い捨てオムツや生理用ナプキン等の吸収性物品の吸収体用途に好適な吸水性樹脂又は吸水剤となる。
[3-4-5]含水率
吸水剤の含水率は、好ましくは0質量%超、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であって、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9質量%以下である。なお、本発明において吸水剤の含水率は、180℃で3時間乾燥した際の乾燥減量から求められる。詳細な測定条件は実施例を参照する。
【0184】
[3-4-6]Vortex法による吸水速度
Vortex法による吸水速度は、日本工業規格JIS K 7224(1996)で規定される物性であり、所定量50gの0.9質量%塩化ナトリウム水溶液が2gの吸水剤又は吸水性樹脂に吸収されるまでの時間で定義される。詳細な測定条件は実施例を参照する。
吸水剤のVortex法による吸水速度は、好ましくは45秒以下、より好ましくは40秒以下、更に好ましくは35秒以下であって、好ましくは10秒超、より好ましくは15秒以上である。
上記Vortex法による吸水速度が遅すぎる場合、得られる吸水剤の尿や血液等の体液等の吸水速度が遅くなり、使い捨てオムツ等の吸収性物品の吸収体として適さない。なお、Vortex法による吸水速度は発泡重合や粒度分布等で制御することができる。
【0185】
[3-4-7]残存モノマー量
残存モノマー量(Amount of Residual Acrylate Monomers)は、吸水剤又は吸水性樹脂中の未反応アクリル酸及びその塩のモノマー量である。詳細な測定条件は実施例を参照する。
本発明において、吸水剤の残存モノマー量は、安全性の観点から、吸水剤全量に対して好ましくは500ppm(質量基準、以下同じ)以下、より好ましくは400ppm以下、更に好ましくは300ppm以下であって、好ましくは0ppm以上、より好ましくは0ppm超、更に好ましくは10ppm以上である。
上記残存モノマーの含有量を上記範囲内とすることで、人体の皮膚等への刺激がより一層、軽減される。一方、残存モノマーの含有量が多すぎる場合、当該残存モノマーがゲル膨潤時の不快臭となる虞があるため好ましくない。
【0186】
[3-4-8]硫黄含有還元剤含有量
上記吸水剤の硫黄含有還元剤含有量は、好ましくは0質量%超1質量%以下である。後述する測定方法で規定される硫黄系揮発成分の含有量は吸水剤中、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.7質量%以下であって、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上である。詳細な測定条件は実施例を参照する。
硫黄系揮発成分が多く検出される場合、上記工程で添加した硫黄含有還元剤由来の臭気が膨潤したゲルから発生していることになる。その場合、実際に吸収性物品に使用されると装着者に不快感を与え、また、衛生上も好ましくない。
【0187】
[3-4-9]残存モノマー変動率
吸水剤の残存モノマー変動率は実施例記載の式(7)から求められる値が、好ましくは20以下、より好ましく18以下、更に好ましくは16以下であって、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上である。
残存モノマーの変動率を抑えることで、吸収性物品の製造ライン中で吸水剤の粒度偏析が生じても、吸収性物品ごとに投入される吸水剤中の残存モノマー量の変動が抑えられる。
【0188】
[3-4-10]製品凝集粗粒子量
吸水剤における除去すべき凝集粗粒子量、例えば製品ダマ量は、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。凝集粗粒子が多すぎると、添加した硫黄含有還元剤水溶液のほとんどが凝集粗粒子に含まれるようになり、例えば850μm以下の粒子に添加される硫黄含有還元剤水溶液が著しく減少し、適切な硫黄含有還元剤分散度が得られないことがある。詳細な測定条件は実施例を参照する。
【0189】
また本発明の吸水剤の形状は球状、造粒物、凝集物、不定形破砕状などいずれでもよいが、吸水速度を考慮すると不定形破砕状であることが好ましい。
【0190】
[4]吸水剤の用途
本発明に係る吸水剤は、主に使い捨てオムツや生理用ナプキン等の吸収性物品の吸収体、あるいは吸収層(以下、まとめて「吸収体」という)として使用されることが好ましく、吸収性物品1枚当たりの使用量が多い、吸収性物品の吸収体として使用されることがより好ましい。
【0191】
上記吸収体は、粒子状吸水剤をシート状や繊維状、筒状などに成形したものを意味し、好ましくはシート状に成形されて吸収層となる。本発明に係る吸水剤の他に、パルプ繊維等の吸収性材料や接着剤や不織布などを成形に併用することもできる。この場合、吸収体中の吸水剤の量(以下、「コア濃度」と表記する)は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上であって、好ましくは100質量%以下である。
コア濃度を上記範囲内とすることで、上記吸収体を吸収性物品に用いると、尿を吸収して吸水剤がゲル化しても、ゲル粒子間に適度な空間を作ることができる。
【0192】
[5]吸収性物品
本発明に係る吸収性物品は、上記吸収体を含み、通常、液透過性を有する表面シート及び液不透過性を有する背面シートを備える。吸収性物品として、使い捨てオムツや生理用ナプキン等が挙げられる。
【0193】
吸収性物品が例えば使い捨てオムツである場合には、装着したときに人の肌に触れる側に位置する液透過性のトップシートと、装着したときに外側に位置する液不透過性のバックシートとの間に、本発明の吸水剤を含む吸収体を挟持することにより、当該使い捨てオムツが作製される。なお、使い捨てオムツには、装着後の使い捨てオムツを固定するための粘着テープ等の、当業者にとって公知の部材がさらに設けられている。
【0194】
本発明に係る吸収性物品は、吸収体が液体を吸収して吸水剤が膨潤してゲル化する際に、ゲル粒子間に適度な空間を作り、その空間を通じて好適な芳香を発することで、装着者やその介護者にとって快適な吸収物品を提供することができる。
なお、本発明に係る吸水剤は、上記使い捨てオムツや生理用ナプキン以外に、ペット尿吸収剤、携帯トイレの尿ゲル化剤等の用途にも、好適に利用することができる。
【0195】
本発明では上記各物性の測定方法は特に言及がない場合は、実施例に記載の測定方法に基づくものである。
【0196】
本願は、2019年1月11日に出願された日本国出願第2019-003362号に基づく優先権の利益を主張するものである。日本国出願第2019-003362号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例
【0197】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0198】
<吸水性樹脂の製造>
製造例1
国際公開第2006/088115号(特許文献1)に記載の製造例3を参考にした以下の製造条件で吸水性樹脂(1)を製造した。
【0199】
単量体溶液の調整工程
70モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液1990質量部(モノマー濃度35質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=9)1.8質量部を溶解させ、水溶液(1)を作製した。
【0200】
重合工程
上記水溶液(1)を、縦320mm×横220mm×高さ50mmの大きさのステンレス製バットに注入した。このときの水溶液(1)の高さは23mmであった。このステンレス製バットの上部を、窒素導入口、排気口及び重合開始剤投入口を備えるポリエチレンフィルムでシールした後、30℃のウォーターバスに入れ、水溶液(1)の温度を30℃に保持しながら、この水溶液(1)に窒素ガスを導入して、液中の溶存酸素を除去した。その後も、窒素ガスを反応容器の上部空間に導入し、反対側から排気し続けた。
【0201】
2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジハイドロクロリドの10質量%水溶液を1.5質量部、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液を1.5質量部、L-アスコルビン酸の1質量%を2.8質量部及び過酸化水素の3.5質量%水溶液を0.4質量部注入して、マグネティックスターラーで十分混合した。重合開始剤投入後1分で重合が開始したので、ステンレス製バットを液温12℃のウォーターバスに、底から10mmの高さまで浸かった状態で浸漬させるのを断続的に繰り返して、重合温度をコントロールした。重合開始後12分で重合ピーク74℃を示したので、ゲルを熟成するために液温60℃のウォーターバスに、底から10mmの高さまでステンレス製バットを浸け、20分間保持し、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と表記する)(1)を得た。
【0202】
ゲル粉砕工程
次に、上記含水ゲル(1)を適切な大きさに切断した後に、9.5mmの口径を有するダイスを付けたミートチョッパーで粉砕し、粒子状含水ゲル(1)を得た。得られた粒子状含水ゲル(1)の質量平均粒子径を表1に示した。
【0203】
乾燥工程
次に、上記粒子状含水ゲル(1)を目開き300μmの金網上に広げて載せ、熱風乾燥機内に入れた。その後、190℃の熱風を30分間通気させることで当該粒子状含水ゲル(1)を乾燥させ、乾燥重合体(1)を得た。
【0204】
分級工程
続いて、当該乾燥重合体(1)をロールミルに投入して粉砕し、その後、さらに目開き850μmと150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級することで、不定形破砕状の表面架橋前の吸水性樹脂(1)を得た。得られた表面架橋前の吸水性樹脂(1)の諸物性を表2に示した。
【0205】
表面架橋工程
次に、上記表面架橋前の吸水性樹脂(1)100質量部に対して、プロピレングリコール1.0質量部、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、イソプロピルアルコール1.0質量部、脱イオン水3.0質量部からなる表面架橋剤水溶液を添加して均一に混合した。続いて、当該混合物を195℃で40分間加熱処理した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕することで、表面架橋後の吸水性樹脂(1)を得た。得られた表面架橋後の吸水性樹脂(1)の諸物性を表3に示した。
なお、表面架橋前の吸水性樹脂(1)及び表面架橋後の吸水性樹脂(1)の比表面積は共に22m/kgであった。
【0206】
製造例2
国際公開第2006/088115号(特許文献1)には開示されていない発泡重合及びゲル粉砕によって、吸水性樹脂(2)を製造した。
【0207】
単量体水溶液の調整工程
容量2Lのポリプロピレン製の容器に、アクリル酸352.0質量部、48質量%水酸化ナトリウム水溶液145.1質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=9)2.3質量部、0.1質量%ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液96.0質量部、1.0質量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)水溶液6.6質量部、及び脱イオン水238.0質量部を投入し、混合することで水溶液(2)を作製した。なお、脱イオン水は40℃に予め加温しておいた。
【0208】
重合工程
続いて、上記水溶液(2)を攪拌しながら冷却し、液温が53℃となった時点で、48質量%水酸化ナトリウム水溶液148.9質量部を大気開放状態で、約30秒間掛けて当該水溶液(2)に投入し、混合することで単量体水溶液(2)を調製した。なお、上記混合の過程で発生した中和熱及び溶解熱によって、当該単量体水溶液(2)の温度は約84℃まで上昇していた。
その後、上記単量体水溶液(2)の温度が83℃となった時点で、重合開始剤として3.8質量%過硫酸ナトリウム水溶液15.3質量部を加えて、約5秒間攪拌し、反応液(2)とした。
【0209】
次に、上記反応液(2)をステンレス製のバット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面:テフロン(登録商標)を貼り付け)に大気開放状態で流し込んだ。なお、該バット型容器は、ホットプレート(株式会社井内盛栄堂社製:NEO HOTPLATE HI-1000)を用いて、表面温度が40℃となるように加熱しておいた。
上記反応液(2)を上記バット型容器に流し込んだ後、20秒後に重合反応が開始した。当該重合反応によって反応液(2)は、水蒸気を発生しながら上方に向かって四方八方に膨張、発泡しながら重合反応を進行した後、バット型容器の底面より若干大きいサイズにまで収縮した。当該重合反応(膨張、収縮)は、約1分間以内に終了した。重合反応の開始から3分経過後に、含水ゲル(2)を取り出した。
【0210】
ゲル粉砕工程
次に、上記含水ゲル(2)を適切な大きさに切断した後に、先端部に直径100mm、孔径12.5mm、孔数18個、開口率28%、厚さ10mmの多孔板を有し、スクリュー軸の外径が86mm、スクリュー軸の回転数が130rpm、ケーシング内径が88mmであるミートチョッパーに供給してゲル粉砕し、粒子状含水ゲル(2)を得た。得られた粒子状含水ゲル(2)の質量平均粒子径を表1に示した。
【0211】
乾燥工程
次に、上記粒子状含水ゲル(2)を目開き300μmの金網上に広げて載せ、熱風乾燥機内に入れた。その後、180℃の熱風を30分間通気させることで当該粒子状含水ゲル(2)を乾燥させ、乾燥重合体(2)を得た。
【0212】
分級工程
続いて、当該乾燥重合体(2)をロールミル(有限会社井ノ口技研社製:WML型ロール粉砕機)に投入して粉砕し、その後、目開き710μmと150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級することで、不定形破砕状の表面架橋前の吸水性樹脂(2)を得た。得られた表面架橋前の吸水性樹脂(2)の諸物性を表2に示した。
【0213】
表面架橋工程
次に、上記表面架橋前の吸水性樹脂(2)100質量部に対して、1,4-ブタンジオール0.5質量部、プロピレングリコール0.8質量部、脱イオン水4.0質量部からなる表面架橋剤溶液を添加して均一に混合した。続いて、当該混合物を180℃で25分間加熱処理した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕することで、表面架橋後の吸水性樹脂(2)を得た。得られた表面架橋後の吸水性樹脂(2)の諸物性を表3に示した。
なお、表面架橋前の吸水性樹脂(2)及び表面架橋後の吸水性樹脂(2)の比表面積は共に29m/kgであった。
【0214】
製造例3
国際公開第2006/088115号(特許文献1)には開示されていない発泡重合及びゲル粉砕によって、吸水性樹脂(3)を製造した。
【0215】
単量体水溶液の調整工程
容量2Lのポリプロピレン製の容器に、アクリル酸423.7質量部、48質量%水酸化ナトリウム水溶液140.0質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=9)1.9質量部、1.0質量%ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液2.6質量部及び脱イオン水396.0質量部を投入し、混合することで水溶液(3)を作製した。なお、脱イオン水は40℃に予め加温しておいた。
【0216】
重合工程
続いて、上記水溶液(3)を攪拌しながら冷却し、液温が39℃となった時点で、48質量%水酸化ナトリウム水溶液211.9質量部を大気開放状態で、約30秒間掛けて当該水溶液(3)に投入し、混合することで単量体水溶液(3)を調製した。なお、上記混合の過程で発生した中和熱及び溶解熱によって、当該単量体水溶液(3)の温度は約80℃まで上昇していた。
その後、上記単量体水溶液(3)の温度が78℃となった時点で、重合開始剤として4質量%過硫酸ナトリウム水溶液17.6質量部を加えて、約5秒間攪拌し、反応液(3)とした。
【0217】
次に、上記反応液(3)をステンレス製のバット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面:テフロン(登録商標)を貼り付け)に大気開放状態で流し込んだ。なお、該バット型容器は、ホットプレート(株式会社井内盛栄堂社製:NEO HOTPLATE HI-1000)を用いて、表面温度が50℃となるように加熱しておいた。
上記反応液(3)を上記バット型容器に流し込んだ後、50秒後に重合反応が開始した。当該重合反応によって反応液(3)は、水蒸気を発生しながら上方に向かって四方八方に膨張、発泡しながら重合反応を進行した後、バット型容器の底面より若干大きいサイズにまで収縮した。当該重合反応(膨張、収縮)は、約1分間以内に終了した。重合反応の開始から3分経過後に、含水ゲル(3)を取り出した。
【0218】
ゲル粉砕工程
製造例2において使用する多孔板を、直径100mm、孔径9.5mm、孔数40個、開口率36%、厚さ10mmに変更した以外は、製造例2と同様の操作を行って、粒子状含水ゲル(3)を得た。得られた粒子状含水ゲル(3)の質量平均粒子径を表1に示した。
【0219】
乾燥工程
次に、上記粒子状含水ゲル(3)を目開き300μmの金網上に広げて載せ、熱風乾燥機内に入れた。その後、190℃の熱風を30分間通気させることで当該粒子状含水ゲル(3)を乾燥させ、乾燥重合体(3)を得た。
【0220】
分級工程
続いて、当該乾燥重合体(3)をロールミル(有限会社井ノ口技研社製:WML型ロール粉砕機)に投入して粉砕し、その後、目開き850μmと150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級することで、不定形破砕状の表面架橋前の吸水性樹脂(3)を得た。得られた表面架橋前の吸水性樹脂(3)の諸物性を表2に示した。
【0221】
表面架橋工程
次に、上記表面架橋前の吸水性樹脂(3)100質量部に対して、エチレンカーボネート0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部、脱イオン水2.5質量部からなる表面架橋剤溶液を添加して均一に混合した。続いて、当該混合物を205℃で32分間加熱処理した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕することで、表面架橋後の吸水性樹脂(3)を得た。得られた表面架橋後の吸水性樹脂(3)の諸物性を表3に示した。
なお、表面架橋前の吸水性樹脂(3)及び表面架橋後の吸水性樹脂(3)の比表面積は共に29m/kgであった。
【0222】
製造例4
国際公開第2016/111223号に記載の実施例4を参考にした以下の製造条件で吸水性樹脂(4)を製造した。
【0223】
単量体水溶液の調整工程
容量2Lのポリプロピレン製の容器に、アクリル酸421.7質量部、48質量%水酸化ナトリウム水溶液140.4質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=9)2.4質量部、1.0質量%ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液11.3質量部、1.0質量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)水溶液4.4質量部、及び脱イオン水390.3質量部を投入し、混合することで水溶液(4)を作製した。なお、脱イオン水は40℃に予め加温しておいた。
【0224】
重合工程
続いて、上記水溶液(4)を攪拌しながら冷却し、液温が39℃となった時点で、48質量%水酸化ナトリウム水溶液211.9質量部を大気開放状態で、約20秒間掛けて当該水溶液(4)に投入し、混合することで単量体水溶液(4)を調製した。このとき、上記混合の過程で発生した中和熱及び溶解熱によって、当該単量体水溶液(4)の温度は約81℃まで上昇していた。
【0225】
次に、攪拌状態の上記単量体水溶液(4)に木下式ガラスボールフィルター(木下理化工業株式会社製:フィルター粒子No.4)を用いて、当該単量体水溶液(4)中に窒素ガスを圧力0.1MPaおよび流量0.1L/minの条件下で10秒間導入した後、4.0質量%過硫酸ナトリウム水溶液17.6質量部を加え、更に約5秒間攪拌し、ステンレス製のバット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面:テフロン(登録商標)を貼り付け)に大気開放状態で流し込んだ。なお、2段目の中和開始からバット型容器に上記単量体水溶液(4)を注ぎ込むまでの時間は55秒間とし、当該バット型容器は、ホットプレート(株式会社井内盛栄堂社製:NEO HOTPLATE HI-1000)を用いて、表面温度が40℃となるまで加熱した。
上記単量体水溶液(4)を上記バット型容器に流し込んだ後、59秒後に重合反応が開始した。当該重合反応は、水蒸気を発生しながら上方に向かって四方八方に膨張、発泡しながら進行した後、バット型容器の底面より若干大きいサイズにまで収縮した。当該重合反応(膨張、収縮)は、約1分間以内に終了した。重合反応の開始から3分経過後に、含水ゲル(4)を取り出した。
【0226】
ゲル粉砕工程
製造例2において使用する多孔板を、直径100mm、孔径6.4mm、孔数83個、開口率34%、厚さ10mmに変更した以外は、製造例2と同様の操作を行って、粒子状含水ゲル(4)を得た。得られた粒子状含水ゲル(4)の質量平均粒子径を表1に示した。
【0227】
乾燥工程
次に、上記粒子状含水ゲル(4)を目開き300μmの金網上に広げて載せ、熱風乾燥機内に入れた。その後、190℃の熱風を30分間通気させることで当該粒子状含水ゲル(4)を乾燥させ、乾燥重合体(4)を得た。
【0228】
分級工程
続いて、当該乾燥重合体(4)をロールミル(有限会社井ノ口技研社製:WML型ロール粉砕機)に投入して粉砕し、その後、目開き710μmと150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級することで、不定形破砕状の表面架橋前の吸水性樹脂(4)を得た。得られた表面架橋前の吸水性樹脂(4)の諸物性を表2に示した。
【0229】
表面架橋工程
次に、上記表面架橋前の吸水性樹脂(4)100質量部に対して、エチレンカーボネート0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部、脱イオン水2.5質量部からなる表面架橋剤溶液を添加して均一に混合した。続いて、当該混合物を200℃で40分間加熱処理した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕することで、表面架橋後の吸水性樹脂(4)を得た。得られた表面架橋後の吸水性樹脂(4)の諸物性を表3に示した。
なお、表面架橋前の吸水性樹脂(4)及び表面架橋後の吸水性樹脂(4)の比表面積は共に36m/kgであった。
【0230】
【表1】
【0231】
【表2】
【0232】
【表3】
【0233】
<実施例>
実施例1
容量200mL(内径:70mm、深さ:140mm)のプラスチック容器に、製造例2で得られた表面架橋後の吸水性樹脂(2)50gを50℃に加熱した後に投入した。続いて、直径3mmの金属棒で作製したアンカー型攪拌翼(直径:57mm、高さ:70mm)を取り付けたスリーワンモーターを用いて、回転数450rpm(攪拌力係数:3.206)でプラスチック容器内の表面架橋後の吸水性樹脂(2)を攪拌しながら、上記表面架橋後の吸水性樹脂(2)100質量部に対して、脱イオン水1.5質量部及び亜硫酸水素ナトリウム0.5質量部からなる液温25℃の水溶液(1)を内径1mmの直管(平均液滴径2mm)で添加した。得られた混合物を5cmの層状に積層し、雰囲気温度を60℃に設定した通気型熱風乾燥機に1時間静置して硬化させた。硬化処理された混合物を目開き850μmの金網に通すことにより、吸水剤(1)を得た。得られた吸水剤(1)の諸物性を表5に示した。
【0234】
実施例1において、攪拌力係数は3.206であるが、式(a)の右辺から求められる値は0.370(=0.16×2+0.05)であり、式(a)の関係を満たす。
【0235】
実施例2
実施例1において、使用する吸水性樹脂を製造例3で得られた表面架橋後の吸水性樹脂(3)に、及び上記水溶液(1)の添加に用いる直管を、内径0.25mmの直管(平均液滴径0.5mm)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、吸水剤(2)を得た。得られた吸水剤(2)の諸物性を表5に示した。
【0236】
実施例2において、攪拌力係数は実施例1と同じ3.206であるが、式(a)の右辺から求められる値は0.13(=0.16×0.5+0.05)であり、式(a)の関係を満たす。
【0237】
実施例3
実施例2において、上記水溶液(1)の添加に用いる直管を、空円錐ノズル1/4M-K010(いけうち社製、平均液滴径110μm)を用いた噴霧添加に変更した以外は、実施例2と同様の操作を行って、吸水剤(3)を得た。得られた吸水剤(3)の諸物性を表5に示した。
【0238】
実施例3において、攪拌力係数は実施例2と同じ3.206であるが、式(a)の右辺から求められる値は0.0676(=0.16×0.11+0.05)であり、式(a)の関係を満たす。
【0239】
実施例4
実施例1において、攪拌時の回転数を100rpm(攪拌力係数:0.158)に、及び上記水溶液(1)の添加に用いる直管を、空円錐ノズル1/4M-K010(いけうち社製、平均液滴径110μm)を用いた噴霧添加に変更した以外は、実施例3と同様の操作を行って、吸水剤(4)を得た。得られた吸水剤(4)の諸物性を表5に示した。
【0240】
実施例4において、攪拌力係数は0.158であり、式(a)の右辺から求められる値は0.0676(=0.16×0.11+0.05)であり、式(a)の関係を満たす。
【0241】
実施例5
実施例3において、使用する吸水性樹脂を製造例4で得られた表面架橋後の吸水性樹脂(4)に変更した以外は、実施例3と同様の操作を行って、吸水剤(5)を得た。得られた吸水剤(5)の諸物性を表5に示した。
【0242】
実施例6
実施例5において、添加する水溶液を脱イオン水2.0質量部及び亜硫酸ナトリウム0.5質量部からなる液温25℃の水溶液(2)に変更した以外は、実施例5と同様の操作を行って、吸水剤(6)を得た。得られた吸水剤(6)の諸物性を表5に示した。
【0243】
実施例7
実施例3において、吸水性樹脂(3)の加熱温度を50℃から120℃に変更した以外は、実施例3と同様の操作を行って、吸水剤(7)を得た。得られた吸水剤(7)の諸物性を表5に示した。
【0244】
実施例8
実施例1において、攪拌時の回転数を200rpm(攪拌力係数:0.633)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、吸水剤(8)を得た。得られた吸水剤(8)の諸物性を表5に示した。
【0245】
実施例8において、攪拌力係数は0.633であるが、式(a)の右辺から求められる値は0.370(=0.16×2+0.05)であり、式(a)の関係を満たす。
【0246】
実施例9
容量200mL(内径:70mm、深さ:140mm)のプラスチック容器に、製造例4で得られた表面架橋前の吸水性樹脂(4)50gを50℃に加熱した後に投入した。続いて、直径3mmの金属棒で作製したアンカー型攪拌翼(直径:57mm、高さ:70mm)を取り付けたスリーワンモーターを用いて、回転数450rpm(攪拌力係数:3.206)でプラスチック容器内の表面架橋前の吸水性樹脂(4)を攪拌しながら、上記表面架橋前の吸水性樹脂(4)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.1質量部、プロピレングリコール1.5質量部、脱イオン水3.5質量部、及び亜硫酸ナトリウム0.5質量部からなる液温25℃の水溶液(3)を、空円錐ノズル1/4M-K010(いけうち社製、平均液滴径110μm)を用いて噴霧添加した。得られた混合物を5cmの層状に積層し、雰囲気温度を100℃に設定した通気型熱風乾燥機に40分間静置して加熱処理を行った。加熱処理された混合物を、目開き850μmの金網を通すことにより、吸水剤(9)を得た。得られた吸水剤(9)の諸物性を表5に示した。
【0247】
実施例9において、攪拌力係数は3.206であるが、式(a)の右辺から求められる値は0.0676(=0.16×0.11+0.05)であり、式(a)の関係を満たす。
【0248】
比較例1
国際公開第2006/088115号(特許文献1)の実施例6の条件を参考に以下の条件で実験を行った。
【0249】
実施例1において、使用する吸水性樹脂を製造例1で得られた表面架橋後の吸水性樹脂(1)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較吸水剤(1)を得た。得られた比較吸水剤(1)の諸物性を表5に示した。
【0250】
比較例2
実施例1において、使用する吸水性樹脂を製造例1で得られた表面架橋後の吸水性樹脂(1)に、及び攪拌時の回転数を100rpm(攪拌力係数:0.158)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較吸水剤(2)を得た。得られた比較吸水剤(2)の諸物性を表5に示した。
【0251】
比較例2において、攪拌力係数は0.158であるが、式(a)の右辺から求められる値は0.370(=0.16×2+0.05)であり、式(a)の関係を満たさない。
【0252】
比較例3
国際公開第2006/088115号(特許文献1)の実施例3の条件を参考に以下の条件で実験を行った。
【0253】
実施例3において、使用する吸水性樹脂を製造例1で得られた表面架橋後の吸水性樹脂(1)に変更した以外は、実施例3と同様の操作を行って、比較吸水剤(3)を得た。得られた比較吸水剤(3)の諸物性を表5に示した。
【0254】
比較例4
実施例4において、使用する吸水性樹脂を製造例1で得られた表面架橋後の吸水性樹脂(1)に変更した以外は、実施例4と同様の操作を行って、比較吸水剤(4)を得た。得られた比較吸水剤(4)の諸物性を表5に示した。
【0255】
比較例5
実施例1において、使用する吸水性樹脂を製造例1で得られた表面架橋後の吸水性樹脂(1)に変更し、上記吸水性樹脂(1)の加熱温度を50℃から160℃に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較吸水剤(5)を得た。得られた比較吸水剤(5)の諸物性を表5に示した。
【0256】
比較例6
実施例4において、使用する吸水性樹脂を製造例1で得られた表面架橋後の吸水性樹脂(1)に変更し、上記吸水性樹脂(1)の加熱温度を50℃から160℃に変更した以外は、実施例4と同様の操作を行って、比較吸水剤(6)を得た。得られた比較吸水剤(6)の諸物性を表5に示した。
【0257】
比較例7
実施例1において、使用する吸水性樹脂を製造例1で得られた表面架橋後の吸水性樹脂(1)に、添加する水溶液を脱イオン水2.1質量部及び亜硫酸水素ナトリウム0.7質量部からなる水溶液(3)に変更し、更に上記水溶液(3)の添加に用いる直管を、内径2mmの直管(平均液滴径4mm)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較吸水剤(7)を得た。得られた比較吸水剤(7)の諸物性を表5に示した。
【0258】
比較例7において、攪拌力係数は3.206であり、式(a)の右辺から求められる値は0.690(=0.16×4+0.05)であるが、平均液滴径が2.5mmを超える。
【0259】
比較例8
実施例1において、攪拌時の回転数を100rpm(攪拌力係数:0.158)に、及び上記水溶液(1)の添加に用いる直管を、内径2mmの直管(平均液滴径4mm)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較吸水剤(8)を得た。得られた比較吸水剤(8)の諸物性を表5に示した。
【0260】
比較例8において、攪拌力係数は0.158であるが、式(a)の右辺から求められる値は0.690(=0.16×4+0.05)であり、式(a)の関係を満たさない。また平均液滴径が2.5mmを超える。
【0261】
比較例9
実施例1において、上記表面架橋後の吸水性樹脂(2)の加熱温度を160℃に、及び上記水溶液(1)の添加に用いる直管を、内径2mmの直管(平均液滴径4mm)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較吸水剤(9)を得た。得られた比較吸水剤(9)の諸物性を表5に示した。
【0262】
比較例9において、攪拌力係数は3.206であり、式(a)の右辺から求められる値は0.690(=0.16×4+0.05)であるが、平均液滴径が2.5mmを超える。
【0263】
比較例10
実施例1において、添加する水溶液を脱イオン水1.8質量部及び亜硫酸水素ナトリウム0.6質量部からなる水溶液(4)に、及び上記水溶液(4)の添加に用いる直管を、内径1.5mmの直管(平均液滴径3mm)に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較吸水剤(10)を得た。得られた比較吸水剤(10)の諸物性を表5に示した。
【0264】
比較例10において、攪拌力係数は3.206であり、式(a)の右辺から求められる値は0.530(=0.16×3+0.05)であるが、平均液滴径が2.5mmを超える。
【0265】
比較例11
実施例1において、攪拌時の回転数を150rpm(攪拌力係数:0.356)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較吸水剤(11)を得た。得られた比較吸水剤(11)の諸物性を表5に示した。
【0266】
比較例11において、攪拌力係数は0.356であるが、式(a)の右辺から求められる値は0.370(=0.16×2+0.05)であり、式(a)の関係を満たさない。
【0267】
比較例12
実施例1において、亜硫酸塩水溶液添加後の加熱温度(硬化温度)を60℃から室温に変更したところ、混合物は十分に硬化されておらず表面が依然として湿った状態であった。そのため、混合物を目開き850μmの金網に通すことができず、所望の吸水剤は得られなかった。
【0268】
比較例13
実施例1において、亜硫酸塩水溶液添加後の加熱温度(硬化温度)及び硬化時間を60℃、1時間から35℃、1分間に変更したところ、混合物は十分に硬化されておらず表面が依然として湿った状態であった。そのため、混合物を目開き850μmの金網に通すことができず、所望の吸水剤は得られなかった。
【0269】
比較例14
容量200mL(内径:70mm、深さ:140mm)のプラスチック容器に、製造例2で得られた表面架橋前の吸水性樹脂(2)50gを50℃に加熱した後に投入した。続いて、直径3mmの金属棒で作製したアンカー型攪拌翼(直径:57mm、高さ:70mm)を取り付けたスリーワンモーターを用いて、回転数450rpm(攪拌力係数:3.206)でプラスチック容器内の表面架橋前の吸水性樹脂(2)を攪拌しながら、上記表面架橋前の吸水性樹脂(2)100質量部に対して、エチレンカーボネート0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部、脱イオン水2.6質量部からなる表面架橋剤溶液とともに、脱イオン水1.5質量部及び亜硫酸水素ナトリウム0.5質量部からなる液温25℃の水溶液(1)を内径1mmの直管(平均液滴径2mm)で添加した。続いて、当該混合物を200℃で30分間加熱処理した後、目開き850μmの金網を通したところ、得られた吸水剤は酸化硫黄に起因する悪臭を発しており、衛生材料での使用には適さないと判断し評価は行わなかった。
【0270】
比較例15
実施例3において、上記水溶液(1)の液温を25℃から90℃に変更した。当該空円錐ノズルによる噴霧添加では、ノズル先端部で析出物が発生し、該析出物が成長してノズルが閉塞するおそれが生じたため、実験を中止した。
【0271】
表中の各物性の測定方法は以下の通りである。なお、例えば、測定対象が吸水剤以外の場合、以下の記載中の「吸水剤」を「粒子状含水ゲル」、「表面架橋前の吸水性樹脂」、「表面架橋後の吸水性樹脂」に読み替えて適用する。
【0272】
[質量平均粒子径D50]
本発明に係る吸水剤の質量平均粒子径D50は、米国特許第7638570号に記載された測定方法に準拠して測定した。
一方、粒子状含水ゲル状架橋重合体の質量平均粒子径D50については、以下の手法で測定した。
即ち、容量1Lのポリプロピレン製円筒型容器(直径8cm×高さ21cm)に、0.08質量%の界面活性剤(花王社製エマール20C)を含む20質量%の塩化ナトリウム水溶液(以下、「エマール水溶液」と称する)500gを投入し、そこに固形分α質量%の粒子状含水ゲル(温度:20℃以上25℃以下)20gを添加した。
続いて、スターラーチップ(直径7mm×長さ50mm)を用いて、300rpmで60分間、上記エマール水溶液を攪拌し、分散液とした。
上記攪拌終了後、回転盤上に設置したJIS標準篩、具体的には直径21cm、篩の目開き:8mm/4mm/2mm/1mm/0.60mm/0.30mm/0.15mm/0.075mmを使用し、篩の中央部に上記分散液を注ぎ込み、更にエマール水溶液100gを用いて、上記円筒型容器内に残存した全粒子状含水ゲルを該篩上に洗い出した。
その後、上記篩を手で回転、具体的には20rpmで回転させながら、エマール水溶液6000gを30cmの高さからシャワーノズル(孔数:72、液量:6.0L/min)を用いて篩全体が注水範囲(50cm)となるように、満遍なく注ぎ、粒子状含水ゲルを分級した。
上記操作後、篩ごとに、篩上に残留した粒子状含水ゲルを約2分間水切りした後に秤量した。その後、各篩上に残留した粒子状含水ゲルの質量から下記式(1)及び(2)に基づいて、質量%を算出した。
X=(w/W)×100 ・・・ 式(1)
R(a)=(20/W)^(1/3)×r ・・・ 式(2)
ここで、
X:分級及び水切り後の各篩上に残留した粒子状含水ゲルの質量%(単位:質量%)
w:分級及び水切り後の各篩上に残留した粒子状含水ゲルのそれぞれの質量(単位:g)
W:分級及び水切り後の各篩上に残留した粒子状含水ゲルの総質量(単位:g)
R(a):固形分α質量%の粒子状含水ゲルに換算したときの篩の目開き(単位:mm)
r:20質量%の塩化ナトリウム水溶液中で膨潤した粒子状含水ゲルが分級された篩の目開き(単位:mm)
である。
【0273】
[無加圧下吸収倍率(CRC)]
本発明に係る吸水剤のCRCは、EDANA法(WSP241.3(10))に準拠して測定した。具体的には、吸水剤0.2gを不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して吸水剤を自由膨潤させ、その後、遠心分離機(250G)を用いて脱水した後に、無加圧下吸収倍率(CRC)(単位:g/g)を測定した。
【0274】
[Vortex法による吸水速度]
本発明に係る吸水剤のVortex法による吸水速度は、JIS K 7224(1996)に準拠して、以下の手順にて測定した。
先ず、生理食塩水1000質量部に食品添加物である食用青色1号(CAS No.3844-45-9)0.02質量部を添加して着色し、液温を30℃に調整した。これを試験液とした。
次に、上記試験液50mLを容量100mLのビーカーに計り取り、長さ40mm、直径8mmの円筒型攪拌子を当該ビーカーに入れ、600rpmで攪拌を開始した。続いて、上記攪拌中の試験液中に吸水性樹脂2.0gを入れ、攪拌子(スターラーチップ)が試験液に覆われるまでの時間を測定し、Vortex法による吸水速度とした。
【0275】
[加圧下吸収倍率(AAP)]
本発明に係る吸水剤のAAPは、EDANA法(WSP242.3(10))に準拠して測定した。具体的には、吸水剤0.9gを大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液に対して、1時間、2.06kPa(21g/cm、0.3psi)荷重下で膨潤させた後に、加圧下吸収倍率(AAP)(単位:g/g)を測定した。なお、本明細書では、荷重条件を4.83kPa(49g/cm、0.7psi)に変更して測定した。また、本明細書では「AAP」と表記しているが、すべて4.83kPa荷重下で測定した。
【0276】
[含水率]
本発明に係る吸水剤の含水率は、EDANA法(WSP230.3(10))に準拠して測定した。なお、本発明においては、WSP230.3(10)で規定される測定条件のうち、試料である吸水剤の量を1.0g、乾燥温度を180℃にそれぞれ変更して測定した。また、「100-含水率(質量%)」で算出される値を、吸水剤の固形分(単位:質量%)とした。
【0277】
[比表面積]
本発明に係る吸水剤の比表面積は、マイクロフォーカスX線CTシステム(島津製作所製inspeXio SMX-100CT)を用いて取得した吸水剤の3次元画像データを、高速3次元解析ソフト(ラトックシステムエンジニアリング社製TRI/3D-VOL-FCS64)で解析することにより求めた値である。
具体的には、まず内径約1cm、高さ約5cmのプラスチック製の蓋付き円柱状容器に吸水剤1gを投入し、粒度に偏りがないようよく振り混ぜた。続いて、上記円柱状容器の底面に両面テープを貼り付け、上記マイクロフォーカスX線CTシステムの試料台上に固定した後、下記表4の条件で3次元画像データを取得した。
【0278】
【表4】
【0279】
続いて、上記高速3次元解析ソフトを用いて、下記手順に沿って解析を実施した。
1.メニュー欄から、粒子計測>3D粒子>粒子分離>巨大粒子分離を選択した。
2.EVCパネル上のBinarizeタブで、L-Wを選択し、W値は初期値のままで、L値を初期値から1大きな値に変更し、円形の計測対象領域を抽出した。続いて、全てのスライス画像にこの処理を適用した。この操作により抽出した画像データを(A)とする。
3.EVCパネル上のBinarizeタブで、L-Wを選択し、W値は初期値のままで、L値を初期値から37580に変更し、計測対象領域における全粒子を抽出した。続いて、全てのスライス画像にこの処理を適用した。この操作により抽出した粒子画像データを(B)とする。
4.粒子画像データ(B)をもとに、まずは、EVCパネル上のBinaryタブで、Ers Smlを選択し、粒子サイズ10voxcel以下のノイズと考えられる粒子を除去した。続いて、EVCパネル上のBinaryタブで、Invertを選択し、粒子が抽出されている領域とされていない領域とを反転させた。続いて、Ers Smlを選択し、粒子サイズ10voxcel以下のノイズと考えられる粒子を除去した。続いて、EVCパネル上の3Dタブで、Labelingを選択し、更に体積およびMaxを選択し、最も体積の大きな領域のみを抽出した。最後に、EVCパネル上のBinaryタブで、再度Invertを選択することで、計測対象領域において、ノイズを除去するとともに全粒子をVoidが埋まった状態で抽出した。これらの操作により抽出した粒子画像データを(C)とする。なお、ここでいうVoidとは、吸水性樹脂の内部に存在する外界とは接していない空洞のことを指す。
5.L Opタブ(チャンネル間論理演算処理)で、粒子画像データ(C)から粒子画像データ(B)を引いた後、EVCパネル上のBinaryタブで、Ers Smlを選択し、粒子サイズ10voxcel以下のノイズと考えられる粒子を除去することで、Voidを抽出した。
6.粒子画像データ(C)をもとに、巨大粒子分離パネル上で小粒子抽出を選択し(大粒子抽出は選択しない)、くびれ割合、Repair Filter Size、Repair Mrg Sml Diameterをいずれも0に設定して、粒子の分離・色分けを行った。
7.EVCパネル上の3Dタブで、Labelingを選択し、更に座標値(サイクル)を選択すると共に微小粒子サイズを10に設定し、粒子の分離操作を行った。
8.メニュー欄から、粒子計測>3D粒子中Void>分離後計測を選択した。続いて、分離後計測パネル上で単位はvoxcel、エッジ粒子は除去、計測項目としては表面積計算およびVoid計算、計測ROI指定としては上記2の操作で抽出された画像データ(A)を選択し、計算処理を行った。以上の操作により、計測対象領域における全粒子の総表面積(単位:mm)と見掛け総体積(単位:mm)、及びVoid総体積(単位:mm)を算出した。なお、見掛け総体積とは、粒子内部にVoidがないものとして算出された全粒子の総体積のことをさす。上記画像解析によって得られた値を用い、且つ吸水剤の真密度を1.7g/cmとして、下記式から吸水剤の比表面積を算出した。
比表面積(m/kg)=全粒子の総表面積(mm)/((見掛け総体積(mm)-Void総体積(mm))×1.7(g/cm
【0280】
[フルード数]
フルード数とは、下記式(4)から算出される値であり、流体の慣性力と重力との比を表す無次元数である。
Fr = n × d/g ただし、n = N/60 ・・・ 式(4)
ここで、
Fr:フルード数
n:回転速度(単位:s-1
d:攪拌翼直径(単位:m)
g:重力加速度(単位:m/s
N:回転数(単位:rpm)
である。
【0281】
[攪拌力係数]
上記式(4)より、n×d(=Fr×g)は流体の慣性力に関わる数と考えられ、つまり本発明ではn×d(=Fr×g)を攪拌される吸水剤の攪拌中における攪拌力係数とした。なお、本発明における攪拌力係数は、容量200mL(内径:70mm、深さ:140mm)のプラスチック容器に投入された吸水剤を、直径3mmの金属棒で作製したアンカー型攪拌翼(直径:57mm、高さ:70mm)を用いて、所定の回転数で攪拌した際に求めた値である。なお、本願では1段の攪拌翼を使用したが、攪拌力係数を向上させ、吸水剤と硫黄含有還元剤水溶液の均一混合性を向上させる手段として多段翼を使用してもよい。ただし、多段翼を使用する場合は、1段あたりの平均攪拌力係数に段数をかけた値を、多段翼の攪拌翼係数とみなすこととする。また、スクリューやリボン型翼などらせん状攪拌翼で巻き数が1巻き以上のものを使用する場合は、1巻き当たりの平均攪拌力係数に巻き数をかけた値を、らせん状攪拌翼の攪拌力係数とみなすこととする。
【0282】
[製品凝集粗粒子量(「製品ダマ量」という)]
本発明に係る硬化処理された混合物における除去すべき粗粒子は製品凝集粗粒子量として、下記式(5)から求められる。
(製品凝集粗粒子量) = a/b×100 ・・・ 式(5)
ここで
a:硬化処理後の混合物を目開き850μmの金網にのせ、スパチュラで押しつぶした際に、金網上に残った混合物の質量(単位:g)
b:硬化処理後の混合物の総質量(単位:g)
である。
【0283】
[硫黄含有還元剤分散度]
本発明に係る吸水剤の硫黄含有還元剤分散度は、下記式(6)から求められる。
(硫黄含有還元剤分散度) = σ1/(吸水剤の硫黄含有還元剤含有量)×100 ・・・ 式(6)
ここで
σ1:下記A1、A2、A3の標準偏差
A1:吸水剤を構成する粒子のうち、500μm以上の粒子の硫黄含有還元剤含有量(単位:質量%)
A2:吸水剤を構成する粒子のうち、500μm未満、300μm以上の粒子の硫黄含有還元剤含有量(単位:質量%)
A3:吸水剤を構成する粒子のうち、300μm未満の粒子の硫黄含有還元剤含有量(単位:質量%)
である。
なお、表中、「on500μm」は500μm以上の粒子、「500-300μm」は500μm未満、300μm以上の粒子、「pass300μm」は300μm未満の粒子を意味する。
【0284】
[残存モノマー]
本発明に係る吸水剤の残存モノマーは、吸水剤1.0gを0.9質量%塩化ナトリウム水溶液200mlに添加し、1時間攪拌して抽出した。その後、抽出液中のモノマー量(単位:ppm(質量基準))を高速液体クロマトグラフィーで測定した。
【0285】
[残存モノマー変動率]
本発明に係る吸水剤の残存モノマー変動率は、下記式(7)から求められる。
(残存モノマー変動率)=σ2/(吸水剤の残存モノマー量)×100・・・式(7)
ここで、粒度は篩分級で規定されるものであり、
σ2:下記B1、B2、B3の標準偏差
B1:吸水剤を構成する粒子のうち、500μm以上の粒子の残存モノマー量(単位:ppm)
B2:吸水剤を構成する粒子のうち、500μm未満、300μm以上の粒子の残存モノマー量(単位:ppm)
B3:吸水剤を構成する粒子のうち、300μm未満の粒子の残存モノマー量(単位:ppm)
である。
【0286】
[硫黄含有還元剤含有量]
本発明に係る硫黄含有還元剤含有量は下記の方法により測定した。
硫黄含有還元剤が亜硫酸水素ナトリウムの場合:
先ず吸水剤0.5gを純水500mlに添加し、600rpmで1時間攪拌した。その後、濾過を行って、濾液10gを採取した。得られた濾液10gに対して、マラカイトグリーンシュウ酸塩0.025gを純水600gで希釈した水溶液10gを添加し、600rpmで30分間攪拌した。その後、得られた液について、分光光度計を用いて波長618nmでの吸光度を測定し、硫黄含有還元剤含有量を算出した。
硫黄含有還元剤が亜硫酸ナトリウムの場合:
亜硫酸塩類をヨウ素と反応させた後、過量のヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで逆滴定し、反応に要したヨウ素の量から亜硫酸塩を定量する方法を用いることができる。
【0287】
【表5】
【0288】
(補足)
表5では省略しているが、実施例1~9及び比較例1~11で得られる各吸水剤のCRC、AAP、Vortexは、硫黄含有還元剤水溶液が添加される前の吸水性樹脂(1)~(4)のCRC、AAP、Vortex(表3)とほぼ同じ値を示している。また、実施例1~8の吸水剤は、AAPが24g/g以上、26g/g以下の高い値、かつ、Vortex法による吸水速度も45秒以下という速い値を示しており、質量平均粒子径D50は380μm以上430μm未満であった。
【0289】
表5の結果から、吸水性樹脂に、脱イオン水及び硫黄含有還元剤からなる水溶液を添加するにあたり、吸水速度が速く残存モノマーのばらつきが小さい吸水剤を得るには、下記(1)~(4)を満たすことが重要であることが分かる。
(1)吸水性樹脂の比表面積が25m/kg以上であること
(2)硫黄含有還元剤水溶液の平均液滴径が2.5mm以下であり、該水溶液の温度が80℃以下であること
(3)混合工程において、下記式(a)を満たす攪拌混合を行うこと
攪拌力係数 ≧0.16×(平均液滴径(mm))+0.05・・・(a)
なお、攪拌力係数は、(フルード数Fr)×(重力加速度g)で規定する
(4)混合工程後に、40℃以上150℃以下の加熱乾燥工程を行うこと
更に、攪拌力係数を適切に調整する必要があることが分かった(実施例1~8)。
その結果、上記水溶液が均一に添加されることで、比表面積が増大した吸水性樹脂であっても、粒度間の残存モノマー量のばらつきを示す残存モノマー変動率を低く抑え、更に粒子間の硫黄含有還元剤のばらつきを示す硫黄含有還元剤分散度を28以下、更には24以下に小さくすることが可能であると分かった。実施例1~9で得られる吸水剤は、比表面積が高く、硫黄含有還元剤分散度や残存モノマー変動率を低く抑えた新規な吸水剤であることが分かる。
【0290】
比較例1~7は、使用した吸水性樹脂の比表面積が低い例であり、吸水性樹脂の比表面積が22m/kgと低く、液滴径及び/又は攪拌力係数及び/又は吸水性樹脂の温度が本願の請求項の範囲外であっても、粒度間の残存モノマーのばらつきを示す残存モノマー変動率を小さくすることは可能であった。しかしながら得られる吸水剤の比表面積が低いため、吸水剤は十分な吸水速度(Vortex)が得られなかった。
【0291】
具体的には、
比較例1及び4は、実施例1及び4において吸水性樹脂の比表面積のみを22m/kgに変更した例であり、
比較例2は、攪拌力係数が式(a)を満足しない例であり、
比較例5及び6は、吸水性樹脂の温度が160℃と高い例であり、
比較例7は、液滴径が4mmと大きい例である。
【0292】
比較例8~11は、使用した吸水性樹脂の比表面積が29m/kgと高い例であり、吸水性樹脂の比表面積が高いとVortex法による吸水速度が33秒と速くなる一方、液滴径及び攪拌力係数及び吸水性樹脂の温度が本願の請求項の範囲外になると、粒度間の残存モノマーのばらつきを示す残存モノマー変動率は20より大きくなった。
【0293】
具体的には、比較例8は液滴径が4mmと大きく、かつ攪拌力係数が式(a)を満足しない例であり、凝集粗粒子が2.2%と多く生成すると共に、残存モノマー変動率が21.0となり粒度間の残存モノマーのばらつきが大きかった。また比較例8では、吸水速度が速く、添加した硫黄含有還元剤の大部分が粒子径850μm以上の吸水剤(凝集物)に取り込まれた。そのため、粒子径が500μm以上850μm未満の吸水剤中の硫黄含有還元剤は0.3質量%であり、粒子径が500μm未満の吸水剤中には硫黄含有還元剤が検出されなかった。
【0294】
比較例9は液滴径が4mmと大きく、吸水性樹脂の温度が160℃と高い例であり、凝集粗粒子が3.4%と多く生成すると共に、残存モノマー変動率が23.2となり粒度間の残存モノマーのばらつきが大きかった。比較例9でも、吸水速度が速く、添加した硫黄含有還元剤の大部分が粒子径850μm以上の吸水剤(凝集物)に取り込まれた。そのため、粒子径が850μm未満の吸水剤中には硫黄含有還元剤が検出されなかった。
【0295】
比較例10は液滴径が3mmと大きい例であり、攪拌力係数が式(a)を満足しても、適切に攪拌、混合できなかった結果、硫黄含有還元剤分散度が29.1で、かつモノマー変動率が20.7となり粒度間の還元剤量や残存モノマーのばらつきが大きく、凝集粗粒子の生成も1.8%と多かった。
【0296】
比較例11は攪拌係数が式(a)を満足しない例であり、適切に攪拌、混合できなかった結果、硫黄含有還元剤分散度が35.0で、かつモノマー変動率が22.5となり粒度間の還元剤量や残存モノマーのばらつきが大きく、凝集粗粒子の生成も多かった。
【0297】
比較例12と比較例13は、硫黄含有還元剤水溶液を吸水性樹脂に添加、混合した後の加熱処理温度が室温又は35℃と低かったため、加熱処理後も吸水性樹脂の表面が湿潤状態で粘性が高く、吸水剤が得られなかった。
【0298】
比較例14は、硫黄含有還元剤水溶液混合後の加熱処理温度が200℃と高かったため、酸化硫黄が生成して悪臭が強く、吸水剤は製品として使用できないものだった。
【0299】
比較例15は、硫黄含有還元剤水溶液の液温が90℃と高かったため、吸水性樹脂に対して添加する途中で添加装置に不具合が発生し、水溶液を最後まで添加できなかった。
【0300】
(まとめ)
以上、実施例及び比較例の対比から、本願課題の解決には、「吸水性樹脂の比表面積」、「混合時の液滴径及び温度」、「攪拌力係数が式(a)を満足」、「硫黄含有還元剤水溶液混合後の加熱処理温度」を満たすことが重要であることがわかる。
本発明によって、25m/kg以上の高い比表面積と低い硫黄含有還元剤分散度、更には低い残存モノマー変動率とを両立した新規な吸水剤が提供される。なお、硫黄含有還元剤による残存モノマー低減を開示する特許文献1~5を含め、上記特許文献1~14は上記吸水剤及びその製造方法について開示されない。