(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】打撃掘削用の接合部
(51)【国際特許分類】
E21B 17/042 20060101AFI20230502BHJP
F16L 15/06 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
E21B17/042
F16L15/06
(21)【出願番号】P 2020570630
(86)(22)【出願日】2019-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2019054455
(87)【国際公開番号】W WO2019170437
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-12-22
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520344785
【氏名又は名称】サンドヴィック マイニング アンド コンストラクション ツールズ アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハンマルグレーン, ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ヌールマン, アンドレアス
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04295751(US,A)
【文献】特表2005-526201(JP,A)
【文献】米国特許第04040756(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 17/042
F16L 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打撃掘削用の接合部であって、
本体、および
前記本体の外表面に形成された雄ねじ(1t、9t)
を備える雄継手(1、9)と、
本体、および
前記本体の内表面に形成された雌ねじ(2t、6t)
を備える雌継手(2、6)と、
を備え、
各ねじが、山(A
4)、谷底(A
1)、接触フランク(E
1)、および非接触フランク(E
2)を含むねじ形状(4m、4f、10m、10f)を有し、
各ねじ形状(4m、4f、10m、10f)が、それぞれの小径(D
N)または大径(D
J)に位置するそれぞれのベースライン(BL)に対して傾斜した接触フランク角(α)および非接触フランク角(β)を有し、
各非接触フランク角(β)が、前記それぞれの接触フランク角(α)よりも大きく、
前記それぞれのねじ形状(4m、4f、10m、10f)の前記それぞれの小径(D
N)および大径(D
J)を画定する頂点(X
A)が前記それぞれの非接触フランク(E
2)に隣接するように、各ねじ形状(4m、4f、10m、10f)の前記山(A
4)が、前記それぞれの接触フランク(E
1)から前記それぞれの非接触フランク(E
2)まで傾斜して
おり、
各谷底(A
1
)が第1の弧であり、
各接触フランク(E
1
)がそれぞれの第2の弧(A
2
)によって前記それぞれの谷底(A
1
)に接続されており、
各第1の弧の第1の半径(R
1
)が、前記それぞれの第2の弧(A
2
)の第2の半径(R
2
)よりも大きい、
接合部。
【請求項2】
各接触フランク角(α)が15~50度の範囲にあり、各非接触フランク角(β)が前記それぞれの接触フランク角に5~30度を加えた角度と等しい、請求項1に記載の接合部。
【請求項3】
各山(A
4)の前記傾斜が、前記雄継手(1、9)の外径の10%よりも大きい半径(R
4)を有するアーチ形である、請求項1または2に記載の接合部。
【請求項4】
各山(A
4)の前記傾斜が直線状である、請求項1または2に記載の接合部。
【請求項5】
前記それぞれの非接触フランク(E
2)に隣接する各山(A
4)の高さ(H
2)が、前記それぞれの接触フランク(E
1)に隣接する前記それぞれの山(A
4)の高さ(H
1)よりも5%~20%高い、請求項1から4のいずれか一項に記載の接合部。
【請求項6】
各第1の半径(R
1)が、前記それぞれの第2の半径(R
2)よりも少なくとも50%大きく、
各第2の半径(R
2)が、前記雄継手(1、9)の外径の5%よりも大きい、請求項
1から5のいずれか一項に記載の接合部。
【請求項7】
前記雄ねじ形状(4m、10m)の面積が、前記雌ねじ形状(4f、10f)の面積を少なくとも2%上回る、請求項1から
6のいずれか一項に記載の接合部。
【請求項8】
各非接触フランク(E
2)が、それぞれの弧(A
5)によって前記それぞれの山に接続されている、請求項1から
7のいずれか一項に記載の接合部。
【請求項9】
前記継手(1、2、6、9)の外径が2~16cmの範囲にある、請求項1から
8のいずれか一項に記載の接合部。
【請求項10】
各直径(D
J、D
N)が一定である、請求項1から
9のいずれか一項に記載の接合部。
【請求項11】
打撃掘削用のドリルロッド(5)であって、
ロッド本体(8)と、
請求項1から10のいずれか一項に記載の接合部と、
を備え、
前記雌継手(6)は、前記ロッド本体(8)の第1の終端に対して一体化して形成されるかまたは溶接(7)され
、
前記雄継手(9)は、前記ロッド本体(8)の第2の終端に対して一体化して形成されるかまたは溶接された
、
ドリルロッド(5)。
【請求項12】
請求項
11に記載のドリルロッド(5)を備えるドリルストリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、打撃掘削に用いる耐摩耗性の接合部に関する。
【背景技術】
【0002】
CN103015913は、ドリルロッドの技術分野に関し、詳細には12-3/4インチの超大口径を伴う探査ドリルロッドのねじ構造に関する。探査ドリルロッドのねじ構造は雄ねじおよび雌ねじを含み、雄ねじは雄ねじユニットから成り、雌ねじは雌ねじユニットから成り、雄ねじユニットは第1の谷底および雄ねじ歯から成り、雌ねじユニットは第2の谷底および雌ねじ歯から成り、雄ねじ歯の形状と雌ねじ歯の形状が互いに対応し、雄ねじ歯と雌ねじ歯は異常非対称構造である。
【0003】
EP 0 009 398/米国特許第4,295,751号に開示されている、打撃掘削要素用の継手のねじ構造は、雄ねじを有するロッドと雌ねじを有するスリーブとを含み、スリーブとロッドが結合されているとき、雄ねじと雌ねじは、接するフランクと接しないフランクとを有し、フランクは谷部と山部によって接合されており、ねじの条数は少なくとも2つであり、接するフランクは、全体の接する接触部分に沿って実質的に直線であり、ドリル軸に対して10°~25°、好ましくは15°~20°の角度を形成し、ねじのピッチ角は、9°~20°、好ましくは11°~16°の範囲にあり、山部は、実質的に直線であって、明確に定義されたエッジにおいて、接するフランク部分と交差し、接しないフランクは、接するフランクよりもかなり大きいフランク角を有し、接しないフランクのフランク角は、ドリル軸に対して50°~80°、好ましくは65°~75°の範囲にあり、ねじの谷部は曲線状である。
【0004】
EP 0 253 789/米国特許第4,861,209号は、雄ねじを有するロッドと雌ねじを有するスリーブとを含む高周波打撃掘削組立体用のねじ継手を開示している。ねじは非対称タイプであり、各頂部の片側のみに配設された対向する肩部に沿って接触する。ねじは、30~40mmの最大径、7~11mmのピッチ、および1.2~1.6mmの高さを有する。接触する肩部に直接隣接した谷部および頂部の部分は、3~5mmの半径を有する。
【0005】
EP 0 324 442/米国特許第4,799,844号は、筒状支持体部材に沿って間隔を置いたねじ回転で螺旋状に延在する少なくとも1つのねじを有する雄雌ねじ用に用意されたスクリュ構造を開示している。隣接したねじ回転の間に延在する谷部は、大きな負荷がかかっているときの応力低減を改善するための楕円部分によって画定された湾曲を有する。
【0006】
EP 2 710 217/米国特許第2014/0083778号は、相補ねじを含む別のドリルストリング構成要素と繋ぐためのねじを含む打撃削岩用のドリルストリング構成要素におけるデバイスを開示している。このねじは、2つのねじフランクおよび中間のねじ谷底によって形成されたねじ溝を含む。動作において、フランクのうち1つが圧力側フランクを形成する。ねじ溝は、軸方向の延長に沿って基本的に等しく成形された断面形状を有する。ねじ谷底は、横断面で見たときに、部分円形の形状の少なくとも3つの表面部分を表す。部分円形の形状の表面部分は、それぞれのねじフランクからねじ谷底の中間の表面部分へと見たときに、増加する半径を有する。ねじ接合部およびドリルストリング構成要素も同様である。
【0007】
米国特許第4,040,756号は、打撃掘削延長ロッドを結合するのに用いるねじ構造が、そのような延長ロッドを切り離すのに必要なトルクを最小化することを開示している。これは、協働するねじ構造の山部に斜角をつけることによって達成される。斜角は、協働するねじ構造の相補部分への山部の最大の侵入が、これらの接するフランクに直接隣接するところで生じるように方向づけされている。すると、接するフランクは、くさび作用が実質的に回避されるように摩耗する。加えて、谷部は、疲労応力を最小化するように、滑らかに延在してねじフランクを画定する平坦面になる、連続的に湾曲した表面によって画定される。
【0008】
従来技術は、一般に、摩耗したときのねじの性能を考慮に入れていない。それゆえに、従来技術の欠点に煩わされない、打撃削岩用の改善されたドリルストリングねじを提供するのが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、一般に打撃掘削用の耐摩耗性の接合部に関する。一実施形態では、打撃掘削用の接合部は雄継手および雌継手を含む。各継手が、本体と、それぞれの本体のそれぞれの内表面または外表面に形成されたそれぞれのねじ山とを含む。各ねじが、山、谷底、接触フランクおよび非接触フランクを含むねじ形状を有する。各ねじ形状が、それぞれの小径または大径に位置するそれぞれのベースラインに対して傾斜した接触フランク角および非接触フランク角を有する。各非接触フランク角が、それぞれの接触フランク角よりも大きい。各ねじ形状の山は、それぞれの大径または小径を画定するそれぞれのねじ形状の頂点がそれぞれの非接触フランクに隣接するように、それぞれの接触フランクからそれぞれの非接触フランクまで傾斜している。
【0010】
有利には、接触フランクは、上記で論じられた従来技術と比較して、ねじ形状の傾斜した山のために、継手の摩耗に応じて拡大する。その上、接触フランクに隣接する領域に形成された孔食が、摩耗の結果として解消する可能性がある。
【0011】
CN103015913の出願では、接触フランクと非接触フランクが識別されない。EP 0 009 398の特許が開示しているのは、ねじが直線状の山を有する主要な実施形態、および山が下降する代替形態である。EP 0 253 789の特許が開示しているのは、半円形の山を有するねじである。EP 0 324 442の特許が開示しているのは、直線状の山を有するねじである。EP 2 710 217の特許が開示しているのは、直線状の山を有するねじである。米国特許第4,040,756号は、下降する山を有するねじを開示しており、摩耗状態におけるねじのくさび作用を回避するための下降する山の必要性を強調することによって、傾斜した山からかけ離れたことを教示している。
【0012】
実施形態の一態様では、各接触フランク角は15~50度の範囲にあり、各非接触フランク角は、それぞれの接触フランク角に5~30度を加えた角度と等しい。
【0013】
実施形態の別の態様では、各山の傾斜は、雄継手の外径の10パーセントよりも大きい半径を有するアーチ形である。実施形態の別の態様では、各山の傾斜は直線状である。
【0014】
実施形態の別の態様では、それぞれの非接触フランクに隣接する各山は、それぞれの接触フランクに隣接するそれぞれの山よりも5~20パーセント高い。
【0015】
実施形態の別の態様では、各谷底は第1の弧であり、各接触フランクはそれぞれの第2の弧によってそれぞれの谷底に接続されている。任意選択で、各第1の弧の第1の半径は、それぞれの第2の弧の第2の半径よりも大きい。任意選択で、各第1の半径はそれぞれの第2の半径よりも少なくとも50パーセント大きく、各第2の半径は雄継手の外径の5パーセントよりも大きい。上記で論じられた従来技術の参照には、そのような2つの弧の構成を開示しているものはない。
【0016】
実施形態の別の態様では、雄ねじ形状の面積は雌ねじ形状の面積よりも少なくとも2パーセント大きい。
【0017】
実施形態の別の態様では、各非接触フランクが、それぞれの弧によってそれぞれの山に接続されている。
【0018】
実施形態の別の態様では、継手の外径は2~16センチメートルの範囲にある。
【0019】
実施形態の別の態様では、各直径が一定である。
【0020】
実施形態の別の態様では、打撃掘削用のドリルロッドは、ロッド本体と、ロッド本体の第1の終端と一体化して形成されるかまたは第1の終端に溶接された雌継手と、ロッド本体の第2の終端と一体化して形成されるかまたは第2の終端に溶接された雄継手とを含む。
【0021】
実施形態の別の態様では、ドリルストリングがドリルロッドを備える。
【0022】
実施形態の別の態様では、打撃掘削用のドリルロッドは、ロッド本体と、ロッド本体の第1の終端に一体化して形成された雌継手と、ロッド本体の第2の終端に一体化して形成された雄継手とを含む。
【0023】
次に、本発明の特定の実装形態を、添付図面を参照しながら例としてのみ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】本開示の一実施形態による、耐摩耗性のねじ山を含む、打撃ドリルストリング用の雄継手の図示である。
【
図1B】本開示の一実施形態による、耐摩耗性のねじ山を含む、打撃ドリルストリング用の雌継手の図示である。
【
図2】雄継手と雌継手が螺合された状態の図示である。
【
図4】本開示の別の実施形態による、それぞれが第2の耐摩耗性ねじ山を含む第2の雄継手および第2の雌継手を有する、ドリルロッドの図示である。
【
図5】第2の雄継手と第2の雌継手が螺合された状態の図示である。
【
図6A】第2の雄継手と第2の雌継手が新規に螺合された状態のねじ形状の図示である。
【
図6B】雄ねじ形状と雌ねじ形状の摩耗した状態の図示である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1Aおよび
図1Bは、それぞれ、本開示の一実施形態による、打撃ドリルストリング用の、耐摩耗性のねじ山1tを含む雄継手1および耐摩耗性のねじ山2tを含む雌継手2を図示するものである。打撃ドリルストリングは、複数のドリルロッド(
図4)を、一端における打撃ドリルの刃先3および他端における軸部アダプタ(図示せず)と一緒に螺合することによって形成され得る。各ドリルロッドが、雄継手1と雌継手2を使用して螺合され得る。ドリルストリングは、トップハンマ(図示せず)またはダウンホールハンマ(図示せず)を用いる打撃削岩用に使用され得る。ダウンホールハンマが使用される場合、このハンマは、ドリルストリングの一部として組み立てるための耐摩耗性のねじ山1t、2tの各々を有し得る。
【0026】
雄継手1は、ドリルロッドの長手方向の終端を形成するように、中間ロッド本体に対して溶接などで取り付けられてよい。雌継手2は、打撃ドリルの刃先3と一体化して形成されてよい。雄継手1は、ロッド本体の下端に接続するための外径の上部と、外表面に外側の雄ねじ1tが形成されている縮径の下部と、上部と下部を接続する肩1sとを伴う管状本体を有し得る。雄ねじ1tは、肩1sから第1のスタンドオフ距離において始まってよい。雄ねじ1tは、底部から第2のスタンドオフ距離において終結してよい。雄継手1の雄ねじ1tの終端と底部の間の下部の外表面に、円錐面などのガイド部分が形成されてよい。雄継手1の上部は、外表面に形成された複数のレンチ平面(図示せず)を有し得る。雄継手1を通る流れ穴が形成されてよい。継手1、2の外径は2~16センチメートルの範囲にあり得る。
【0027】
雌継手2は、打撃ドリルの刃先3の軸部として働き得る。打撃ドリルの刃先3は先端をさらに含み得る。先端は、切刃面を画定する最も外側の終端を有し得る。切刃面は、砕石機(図示せず)を収容するように形成された複数のソケット(1つだけ示されている)を有し得る。各砕石機は、締嵌またはろう付けによってそれぞれのソケットの中に取り付けられた事前形成された挿入物でよい。各カッタは超硬合金などサーメット材から作製され得る。ソケットおよびカッタは切刃面のまわりに間隔を置いて配置されてよい。
【0028】
図2は、雄継手1と雌継手2が螺合された状態を図示するものである。雌継手2は管状本体を有し得る。雌継手2は、内表面において流れ穴に隣接して形成された内側の雌ねじ2tを有し得る。流れ穴は、雄継手1の縮径の下部を収容するように寸法設定されてよい。雄継手1は、肩1sが雌継手の最上部2pに接するまで雌継手2にねじ込まれてよく、それによって、流れ穴を絶縁するとともに2つの部材を一緒に締結するための金属同士のシールをもたらす。雌ねじ2tは、最上部2pから第1のスタンドオフ距離において始まってよい。雌ねじ2tは、雌継手2の底部から第2のスタンドオフ距離において終結してよい。雌継手2の流れ穴は、ドリルの刃先の先端を通って形成された流れポートと流体連通し得る。雄ねじ1tおよび雌ねじ2tの各々が単一のねじでよい。
【0029】
図3Aは、雌ねじ2tのねじ形状4fを図示するものである。
図3Bは、雄ねじ1tのねじ形状4mを図示するものである。各ねじ形状4m、4fは、ポイントX
Bから始まり得、谷底A
1を含み得る。各谷底A
1が、それぞれの半径R
1を有する凹面の弧でよく、それぞれの第2の弧A
2まで延在してよい。各第2の弧A
2は、それぞれの半径R
2を有する凹面でよく、それぞれの第1の山A
1からそれぞれの接触フランクE
1まで延在してよい。各ルート半径R
1は、それぞれの第2の半径を少なくとも50パーセント上回るなど、それぞれの第2の半径R
2よりも大きくてよい。各第2の半径R
2は、雄継手1の外径の5パーセントよりも大きくてよい。この2つの弧の構成では、それぞれのねじ形状4m、4fの谷底領域にかなりの応力がかかり得る。各接触フランクE
1は、それぞれのベースラインBLに対してそれぞれの第1のフランク角αだけ傾斜した直線でよい。ベースラインBLは長手方向でよく、それぞれのねじ1t、2tのそれぞれの大径D
Jまたは小径D
Nに位置してよい。各第1のフランク角αは15~50度の範囲にあり得る。各接触フランクE
1が、それぞれの第2の弧A
2からそれぞれの第3の弧A
3まで延在し得る。各第3の弧A
3は、それぞれの半径R
3を有する凸面でよい。
【0030】
各第3の弧A3が、それぞれの接触フランクE1からそれぞれの山A4まで延在し得る。各山A4が、それぞれの第3の弧A3に隣接するそれぞれの第1の高さH1と、それぞれの第5の弧A5に隣接するそれぞれの第2の高さH2とを有し得る。各高さH1、H2は、それぞれのベースラインBLから測定されてよい。各山A4は、それぞれの大径DJまたは小径DNを画定する、それぞれのねじ形状4m、4fのそれぞれの頂点XAが、それぞれの非接触フランクに隣接するように、それぞれの接触フランクE1からそれぞれの非接触フランクE2まで傾斜していてよい。各ねじ形状4m、4fのそれぞれのピークラインPLは長手方向でよく、それぞれのねじ1t、2tのそれぞれの大径DJまたは小径DNに位置し得る。それぞれのねじ1t、2tの各直径DN、DJは一定でよい。各山A4が傾斜しているので、それぞれの第2の高さH2がそれぞれの第1の高さH1を上回り得る。各傾斜は、それぞれが半径R4を有する凸面の弧であるそれぞれの山A4によって達成され得る。各山の半径R4は、雄継手1の外径の10パーセントよりも大きくてよい。各山A4が、それぞれの第3の弧A3からそれぞれの第5の弧A5まで延在し得る。各第2の高さH2が、それぞれの第1の高さH1を5~20パーセント上回り得る。
【0031】
あるいは、各山A4が直線的に傾斜していてもよい。
【0032】
各第5の弧A5は、それぞれの半径R5を有する凹面でよく、それぞれの山A4からそれぞれの非接触フランクE2まで延在してよい。各非接触フランクE2は、それぞれのベースラインBLに対してそれぞれの第2のフランク角βだけ傾斜した直線でよい。各第2のフランク角βは、それぞれの第1のフランク角を5~30度上回るなど、それぞれの第1のフランク角αを上回ってよく、それによって、それぞれの非対称のねじ形状4m、4fをもたらす。各非接触フランクE2が、それぞれの第5の弧A5からそれぞれの第6の弧A6まで延在し得る。各第6の弧A6が、それぞれの非接触フランクE2からそれぞれの終了点XEまで延在し得る。各第6の弧A6は、それぞれの半径R6を有する凸面でよい。各ねじ形状4m、4fが、それぞれの開始点XBとそれぞれの終了点XEの間の長手方向の距離によって画定されるそれぞれのピッチPを有し得る。各ピッチPは、雄継手1の外径よりも大きくてよい。
【0033】
雄ねじ形状4mの面積は、雌ねじ形状4fの面積を少なくとも2パーセント上回ってよく、少なくとも5パーセント上回ってもよい。このように雄ねじ形状4mを拡大すると、通常は雄ねじ形状が決定要因であるため、ドリルロッドの実用寿命が向上し得る。
【0034】
図4は、本開示の別の実施形態による、耐摩耗性ねじ山6tを含む雌継手6と、耐摩耗性ねじ山9tを含む雄継手9とを有する、ドリルロッド5を図示するものである。ドリルロッド5は、金属または鋼などの合金から作製され得る。ドリルロッド5は、浸炭などによって表面硬化されてもよい。各継手6、9は、ドリルロッド5の長手方向の終端を形成するように、溶接7などで中間ロッド本体8に取り付けられてよい。ドリルロッド5を通る流れ穴が形成されてよい。ドリルロッド5は6メートルの長さを有し得る。継手6、9の外径は5~15センチメートルの範囲にあり得る。
【0035】
ドリルストリングは、複数のドリルロッド5(
図5)を、一端におけるドリルの刃先および他端における軸部アダプタと一緒に螺合することによって形成され得る。ドリルの刃先および軸部アダプタはまた、耐摩耗性のねじ山6t、9tのいずれかを有し得る。ドリルストリングは、トップハンマ(図示せず)またはダウンホールハンマ(図示せず)を用いる打撃削岩用に使用され得る。ダウンホールハンマが使用される場合、このハンマは、ドリルストリングの一部として組み立てるための耐摩耗性のねじ山6t、9tの各々を有し得る。
【0036】
あるいは、ドリルロッド5が1対の雄継手9を有し得、1対のドリルロッドを接続するために、1対の雌継手6を有するスリーブ(図示せず)が使用されてもよい。あるいは、ドリルの刃先が、継手1、2を使用して最下部のドリルロッドに接続されてもよい。あるいは、各継手6、9が、ロッド本体8に対して、溶接される代わりに一体化して形成されてもよい。
【0037】
雄継手9は、ロッド本体8の下端に接続するための外径の上部と、外表面に外側の雄ねじ9tが形成されている縮径の下部と、上部と下部を接続する肩9sとを伴う管状本体を有し得る。雄ねじ9tは、肩9sから第1のスタンドオフ距離において始まってよい。雄ねじ9tは、底部から第2のスタンドオフ距離において終結してよい。雄継手9の雄ねじ9tの終端と底部の間の下部の外表面に、円錐面などのガイド部分が形成されてよい。雄継手9の上部は、外表面に形成された複数のレンチ平面(図示せず)を有し得る。上部の流れ穴は、ノズルとスロートの一部とを含み得る。スロートは、肩4sおよび下部を通って延在し得る。
【0038】
図5は、雄継手9と雌継手6が螺合された状態を図示するものである。雌継手6は、ロッド本体8の上端に接続するための下部を有する管状本体を有し得る。雌継手6は、内表面において流れ穴に隣接して形成された内側の雌ねじ6tを有し得る。流れ穴は、別のドリルロッドの雄継手9の縮径の下部を収容するように寸法設定されてよい。雄継手9は、肩9sが雌継手の最上部6pに接するまで雌継手6にねじ込まれてよく、それによって、流れ穴を絶縁するとともに2つのドリルロッドを一緒に締結するための金属同士のシールをもたらす。雌ねじ6tは、最上部6pから第1のスタンドオフ距離において始まってよい。雌ねじ6tは、雌継手6の底部から第2のスタンドオフ距離において終結してよい。雌継手6の流れ穴は、雌ねじ6tの下端に隣接するディフューザを含み得る。雌ねじ6tおよび雄ねじ9tの各々が二重ねじでよい。
【0039】
あるいは、雌ねじ6tおよび雄ねじ9tの各々が単一のねじまたは三重ねじでもよい。あるいは、雄継手9がロッド本体8の上端に接続されよく、雌継手6がロッド本体の下端に接続されてもよい。この代替形態では、雄継手9のノズルがディフューザになり、雌継手6のディフューザがノズルになる。あるいは、ねじ1t、2t、6t、9tのいずれかが、ドリルストリングの非管状部材を接続するために使用されてよい。
【0040】
図6Aは、第2の雄継手6と第2の雌継手9が新規に螺合された状態の、雄ねじ形状10mと雌ねじ形状10fを図示するものである。それぞれの第2の継手6、9の各ねじ形状10m、10fは、谷底、山、接触フランク、非接触フランク、およびこれらの部材を接続する様々な弧を含むそれぞれのねじ形状4m、4fに類似のものでよい。第2のねじ形状10m、10fの各々が、上記で論じられたパラメータの範囲内の、それぞれのねじ形状4m、4fの傾斜した山および非対称性を含み得る。第2のねじ形状10m、10fの各々のピッチは、それぞれのねじ形状4m、4fのピッチよりも小さくてよく、第2のねじ形状10m、10fの各々の頂点は、それぞれのねじ形状4m、4fの頂点よりも高くてよい。
【0041】
図6Bは、雄ねじ形状10mと雌ねじ形状10fの摩耗した状態を図示するものである。第2のねじ形状10m、10fの各々の山が傾斜しているために、接触フランクE
1が、第2の継手6、9の摩耗に応じて拡大し得る。その上、接触フランクE
1に隣接する領域Gに形成された孔食が、摩耗の結果として解消する可能性がある。フランクが拡大することによって接触圧力が低下され得、孔食の解消とともに、障害のリスクが低下され得る。