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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】通信方法
(51)【国際特許分類】
   H03M 13/19 20060101AFI20230502BHJP
   H03M 13/27 20060101ALI20230502BHJP
   H04L 1/00 20060101ALI20230502BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20230502BHJP
   H04L 27/36 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
H03M13/19
H03M13/27
H04L1/00 F
H04L27/26 100
H04L27/36
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021000313
(22)【出願日】2021-01-05
(62)【分割の表示】P 2019194876の分割
【原出願日】2015-04-27
(65)【公開番号】P2021073759
(43)【公開日】2021-05-13
【審査請求日】2021-01-05
(31)【優先権主張番号】14169535.3
(32)【優先日】2014-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレナー ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン フランク
(72)【発明者】
【氏名】木村 知弘
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/014906(WO,A1)
【文献】特表2011-523318(JP,A)
【文献】国際公開第2013/024584(WO,A1)
【文献】特許第6609684(JP,B2)
【文献】Belkacem Mouhouche et al.,High order non-uniform constellations for broadcasting UHDTV,Wireless Communications and Networking Conference (WCNC), 2014 IEEE,2014年04月09日,pp.600-605
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 13/19
H03M 13/27
H04L 27/26
H04L 27/34
H04L 1/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リピートアキュミュレート疑似巡回低密度パリティ検査符号を含む疑似巡回低密度パリティ検査符号を用いるデジタル通信システムにおけるデータ通信を行うデータ通信装置であって、
前記疑似巡回低密度パリティ検査符号に基づいて生成された符号語に対して巡回ブロックパーミュテーションを実行し、前記符号語はN個の巡回ブロックの列からなり、前記N個の巡回ブロックの夫々はQ個のビットからなり、NとQは夫々正の整数であり、前記巡回ブロックパーミュテーションは前記符号語内での巡回ブロックの並び替えである、インタリービング手段と、
前記巡回ブロックパーミュテーションが実行された符号語の各ビットを非均一コンステレーションのコンステレーションポイントにマッピングするコンステレーションマッピング手段と、
前記マッピングされた符号語をOFDM信号として送信する送信手段と
を備え、
前記巡回ブロックパーミュテーションは符号語の生成に用いる前記似巡回低密度パリティ検査符号の符号化率に対して、最適化され、
前記疑似巡回低密度パリティ検査符号の符号化率が7/15であり、前記非均一コンステレーションが、実数座標及び虚数座標が夫々表1に従って与えられる非均一64-PAMコンステレーションである非均一4096-QAMコンステレーションである、
【表1】
データ通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
2014年5月22日提出の欧州特許出願14169535.3に含まれる明細書、請求項、図面及び要約書の開示内容は全て本願に援用される。
本発明は、デジタル通信分野に関する。より詳細には、本発明は、疑似巡回低密度パリティ検査符号(quasi-cyclic low-density parity-check code:QC LDPC符号)と直交振幅変調(quadrature amplitude modulation:QAM)とを用いるビットインタリーブ符号化変調(bit-interleaved coding and modulation:BICM)システムにおけるビットインタリーバとビットデインタリーバに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報ビットを符号化して符号語ビットを出力するエンコーダと、符号語ビットをコンステレーションにマッピングして変調シンボルを出力するコンステレーションマッパの間にビットインタリーバが配置された送信機が多く提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】EP11006087.8
【非特許文献】
【0004】
【文献】DVB-S2規格:ETSI EN 302 307、V1.2.1(2009年8月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンコーダ、ビットインタリーバ、及びコンステレーションマッパの各処理内容の関連を適切にすることによって通信性能の向上が期待できる。
そこで、本発明は、通信性能の向上が期待できる通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の通信方法は、リピートアキュミュレート疑似巡回低密度パリティ検査符号を含む疑似巡回低密度パリティ検査符号を用いるデジタル通信システムにおけるデータ通信を行うデータ通信方法であって、前記疑似巡回パリティ検査符号に基づいて生成された符号語に対して巡回ブロックパーミュテーションを実行し、前記符号語はN個の巡回ブロックの列からなり、前記N個の巡回ブロックの夫々はQ個のビットからなり、NとQは夫々正の整数であり、前記巡回ブロックパーミュテーションは前記符号語内での巡回ブロックの並び替えである、インタリービングステップと、前記巡回ブロックパーミュテーションが実行された符号語の各ビットを非均一コンステレーションのコンステレーションポイントにマッピングするコンステレーションマッピングステップと、を有し、前記巡回ブロックパーミュテーション及び前記非均一コンステレーションは符号語の生成に用いる前記疑似巡回低密度パリティ検査符号の符号化率に基づいて選択される。
【発明の効果】
【0007】
上記通信方法によれば、通信性能の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一般的なビットインタリーブ符号化変調(bit-interleaved coding and modulation:BICM)を含む送信機の一構成例を示すブロック図。
図2図1のBICMエンコーダの一構成例を示すブロック。
図3】M=6、N=18、Q=8の疑似巡回低密度パリティ検査符号のパリティ検査行列の一例を示す図。
図4】リピートアキュミュレート疑似巡回低密度パリティ検査符号を定義するテーブルの一例を示す図。
図5図4のリピートアキュミュレート疑似巡回低密度パリティ検査符号に対する、情報パートの各巡回ブロックにおける最初のビットに対するパリティ検査行列の情報パートを示す図。
図6図5のパリティ検査行列に対する、全情報ビットに対する入力と、階段状のパリティパートを含む、完全なパリティ検査行列を示す図。
図7図6のパリティ検査行列の疑似巡回構造を表す行列。
図8】(a)は4-QAMコンステレーションを示す図であり、(b)は16-QAMコンステレーションを示す図であり、(c)は64-QAMコンステレーションを示す図。
図9】(a)は4-QAMマッパの構成を示すブロック図であり、(b)は16-QAMマッパの構成を示すブロック図であり、(c)は64-QAMマッパの構成を示すブロック図。
図10】グレイ符号化を用いた8-PAMシンボルにおける異なるロバストレベルを説明するための概略図。
図11】特定のSNRに対して設計された1D-64 NU-PAMに基づく4096-QAMコンステレーションの一例を示す図。
図12】(a)から(c)はDVB-NGHに基づく図2のBICMエンコーダの一例を説明するための図。
図13】(a)から(c)はATSC3.0に基づく図2のBICMエンコーダの一例を説明するための図。
図14】本発明の実施の形態に係るビットインタリーバの一構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪発明者らが発明に至るまでの確認事項≫
図1は、一般的なビットインタリーブ符号化変調(bit-interleaved coding and modulation:BICM)を含む送信機の一構成例を示すブロック図である。
図1に示す送信機100は、入力プロセシングユニット110、BICMエンコーダ120、OFDMモジュレータ130、アップコンバータ140、RF(radio frequency)増幅器150、及びアンテナ160を備える。
【0010】
入力処理ユニット110は、入力ビットストリームをベースバンドフレームと呼ばれる所定長のブロックに形式を変える。BICMエンコーダ120は、ベースバンドフレームを複数の複素値からなるデータストリームに変換する。OFDMモジュレータ130は、例えば直交周波数分割多重(orthogonal frequency-division multiplexing:OFDM)変調を使用し、典型的にダイバーシティを向上させるための時間インタリービングと周波数インタリービングを行う。アップコンバータ140はデジタルベースバンド信号をアナログRF(radio frequency)信号に変換する。RF増幅器150はアナログRF信号の電力増幅を行い、アンテナ160へ出力する。
【0011】
図2図1のBICMエンコーダ120の一構成例を示すブロックである。
図2に示すBICMエンコーダ120は、低密度パリティ検査(low-density parity-check:LDPC)エンコーダ121、ビットインタリーバ122、及びQAMマッパ124を備える。
LDPCエンコーダ121は、入力ブロック、即ち、ベースバンドフレームを符号化し、LDPC符号語をビットインタリーバ122へ出力する。ビットインタリーバ122は、各LDPC符号語のビットを、QAMマッパ124によって複素セルにマッピングされる前に、並び替える。QAMマッパ124は、ビットが並び替えられた後の各LDPC符号語のビットを、直交振幅変調(quadrature amplitude modulation:QAM)を用いて複素セルにマッピングする。
【0012】
以下、図2のBICMエンコーダ120の各構成要素についてより詳細に説明する。
まず、LDPCエンコーダ121について説明する。
LDPCエンコーダ121は、ベースバンドフレームを、特定のLDPC符号を用いて符号化する。本発明は、特に、DVB-S2、DVB-T2、DVB-C2規格において採用されているような階段状のパリティ構造を持ったLDPCブロック符号と、Raptor-like LDPC符号の変形に対して、設計されている。より詳細を以下に記載する。
【0013】
LDPCブロック符号は、パリティ検査行列(parity-check matrix:PCM)によって完全に定義される線形誤り訂正符号である。このPCMは、符号語ビット(ビットノード又は変数ノードとも呼ばれる。)のパリティ検査(検査ノードとも呼ばれる。)への接続を表す、2値の疎行列である。PCMの列と行は、夫々、変数ノードと検査ノードに対応する。変数ノードの検査ノードへの接続は、PCM行列において“1”エントリによって表される。
【0014】
疑似巡回低密度パリティ検査(quasi-cyclic low-density parity-check:QC LDPC)符号は、ハードウェア実装に特別に適した構造になっている。事実、今日、全てと言うわけではないが多くの規格にQC LDPC 符号が使用されている。このQC LDPC符号のPCMは、巡回行列(又は、巡回とも呼ばれる。)を有する特別な構造になっている。巡回行列は、各行が一つ前の行を行列要素1つ分巡回シフトした正方行列であり、1以上の折りたたまれた対角線(folded diagonals)を有する場合がある。
【0015】
各巡回行列のサイズはQ×Q(Q行Q列)であり、QはQC LDPC符号の巡回係数(cyclic factor)と呼ばれる。この疑似巡回構造により、Q個の検査ノードを並列に処理することが可能になる。このため、疑似巡回構造は効率的なハードウェア実装にとって明らかに有利である。
QC LDPC符号のPCMは、Q×M行Q×N列の行列であり、符号語は夫々がQビットからなるN個のブロックからなる。また、Mはパリティパートにおけるブロックの数である。なお、Qビットのブロックを、本件書類を通して、疑似巡回ブロック、又は、単に巡回ブロックと呼び、QBと簡略化する。
【0016】
図3はM=6、N=18、Q=8のQC LDPC符号のPCMの一例を示す図である。PCMは1又は2の折りたたまれた対角線を有する巡回行列を含む。このQC LDPC符号は、8×12=96ビットのブロックを8×18=144ビットの符号語に符号化し、従って符号化率は2/3である。なお、図3図5から図7において、黒四角が値“1”の行列要素であり、白四角が値“0”の行列要素である。
【0017】
PCMが図3に示されるQC LDPC符号は、リピートアキュミュレート疑似巡回低密度パリティ検査(repeat-accumulate quasi-cyclic low-density parity-check:RA QC LDPC)符号と呼ばれる、QC LDPC符号の特別なファミリーに属する。RA QC LDPC符号は符号化が容易であることで知られており、第2世代DVB規格(DVB-S2、DVB-T2、DVB-C2)など、非常に多くの規格において採用されている。
【0018】
次に、DVB-S2規格の非特許文献1(DVB-S2規格:ETSI EN 302 307:V1.2.1(2009年8月))のセクション5.3.2と付録B、Cにおいて記載されている、DVB-S2、DVB-T2、DVB-C2の規格ファミリーにおいて使用されている、RA QC LDPC符号の定義について、説明する。この規格ファミリーにおいて、巡回係数Qは360である。
【0019】
各LDPC符号は情報パートにおける各巡回ブロックの最初のビットに対して、その最初のビットが接続される各検査ノードのインデックスを含む、テーブルによって完全に定義される。なお、検査ノードのインデックスは0から始まる。これらのインデックスはDVB-S2規格において“addresses of the parity bit accumulators”と呼ばれる。図3に一例を示すLDPC符号に対するテーブルを図4に示す。
【0020】
図5は、図4のRA QC LDPC符号に対する、情報パートの各巡回ブロックにおける最初のビットに対するPCMの情報パートを示す図である。
完全なPCMは、全情報ビットに対する入力と、階段状のパリティパートを含み、図6に示される。
情報パートにおける各巡回ブロックの最初のビット以外のビットの夫々に対して、そのビットが接続される各検査ノードのインデックスは次の数1を用いて計算される。
【0021】
【数1】
【0022】
但し、qは一つの巡回ブロック内でのビットインデックス(0、・・・、Q-1)である。iqはビットqに対する検査ノードのインデックスである。i0図4のテーブルにおける巡回ブロックの最初のビットが接続される各検査ノードの一つである。Mはパリティパートにおける巡回ブロックの数であり、図6の例では6であり、Qは1つの巡回ブロックのビットの数であり、図6の例では8である。Q×Mはパリティビットの数であり、図6の例では8×6=48である。%はモジューロ演算子(modulo operator)である。なお、例えば、「1」の巡回ブロックQBに対して、上記の数1を用いた計算は、図4の場合には、i0=13、24、27、31、47の夫々に対して行われる。
【0023】
図6のPCMの疑似巡回構造を表すために、次の数2で表されるパーミュテーションを図6のPCMの行に対して適用し、このパーミュテーションの適用により行列は図7に示すものとなる。
【0024】
【数2】
【0025】
但し、iとjはゼロから始まるインデックスである。iは並び替え前の検査ノードのインデックスであり、jは並び替え後の検査ノードのインデックスである。Mはパリティパートにおける巡回ブロックの数であり、図6の例では6であり、Qは1つの巡回ブロックのビットの数であり、図6の例では8である。%はモジューロ演算子(modulo operator)であり、floor(x)はx以下の最大の整数を出力する関数である。
【0026】
この数2を用いたパーミュテーションはビットに対して適用されていないため、符号の定義は変わっていない。しかしながら、この数2を用いたパーミュテーションの結果得られるPCMのパリティパートは疑似巡回とはなっていない。パリティパートを疑似巡回にするために、次の数3で表される特別なパーミュテーションがパリティビットに対してのみ適用されなければならない。
【0027】
【数3】
【0028】
但し、iとjはゼロから始まるインデックスであり、iは並び替え前のパリティビットのインデックス、jは並び替え後のパリティビットのインデックスである。Mはパリティパートにおける巡回ブロックの数であり、図7の例では6であり、Qは1つの巡回ブロックのビットの数であり、図7の例では8である。%はモジューロ演算子(modulo operator)であり、floor(x)はx以下の最大の整数を出力する関数である。
【0029】
このパリティビットに対してのみ適用される数3を用いたパーミュテーションは符号の定義を変える。
なお、パリティビットに対してのみ適用される数3を用いたパーミュテーションを本件書類を通してパリティパーミュテーション又はパリティインタリービングと呼ぶ。但し、パリティパーミュテーション又はパリティインタリービングは、以降、LDPC符号化処理の一部とみなす。
【0030】
デジタルビデオサービスの地上波受信向けの次世代規格であるATSC3.0規格は、現在開発中であり、符号化率として1/15、2/15、・・・、13/15、符号語長として16200符号ビット、64800符号ビットを定義する予定である。
次に、QAMマッパ124について説明する。
QAMマッパ124は、実数成分及び虚数成分を夫々パルス振幅変調(pulse-amplitude modulation:PAM)を用いて独立に変調することによって、符号語のビットをQAMコンステレーションの複数のポイントのうちの一つのポイントにマッピングする。QAMコンステレーションの各ポイントは夫々ビットの一つの組み合わせに対応する。図8(a)から図8(c)は、本発明に関連するQAMコンステレーションの3つのタイプ、4-QAMコンステレーション、16-QAMコンステレーション、及び64-QAMコンステレーションを示す図である。
【0031】
ここで、実数成分と虚数成分に対して同じ型のPAMが用いられる。4-QAMコンステレーション、16-QAMコンステレーション、及び64-QAMコンステレーションでは、夫々、2-PAM、4-PAM、8-PAMが実数成分と虚数成分に対して用いられる。
本発明は、また、図8(a)から図8(c)に示すように、PAMマッピングにグレイ符号化を用いるものと仮定する。
【0032】
図9(a)、(b)、(c)は、夫々、図8(a)、(b)、(c)のコンステレーションに対応するQAMマッパの構成を示すブロックである。図9(a)の4-QAMマッパ124Aは夫々が1ビットを符号化する2つの独立した2-PAMマッパ124A-1,124A-2からなる。図9(b)の16-QAMマッパ124Bは夫々が2ビットを符号化する2つの独立した4-PAMマッパ124B-1,124B-2からなる。図9(c)の64-QAMマッパ124Cは夫々が3ビットを符号化する2つの独立した8-PAMマッパ124C-1,124C-2からなる。
【0033】
PAMシンボルにおいて符号化されたビットは、受信機において受信されたPAMシンボルがデマップされるときに、ロバストレベル、言い換えると、信頼性が異なる。これはよく知られた事実であり、グレイ符号化を用いた8-PAMシンボルにおける異なるロバストレベルを説明するための概略図を図10に示す。
ロバストレベルが異なるのは、ビットの値が0である部分とビットが1である部分との距離が3つのビットb1、b2、b3の間で互いに異なる、ことに起因する。ビットの信頼性は、当該ビットの値が0である部分とビットが1である部分との間の平均距離に比例する。図10に示す例では、ビットb1の信頼性が最も低く、ビットb2の信頼性が2番目に低く、ビットb3の信頼性が最も高い。
【0034】
ビットの伝送レート、即ち、BICMの容量を増大するために、非均一コンステレーションが初めてDVB-NGH規格において取り入れられた。この増大は、PAMコンステレーションのポイント間の間隔を変えることによって達成され、いわゆる1D-NU-PAMsが得られる。そして、次に、1D-NU-PAMsから正方形の非均一コンステレーションが得られる。
【0035】
ATSC3.0において、このアイデアは、二次元の非均一コンステレーション、いわゆる、2D-NUCsを取り入れることによって、さらに改善されている。2D-NUCsは、受信された複素セルのI(In-phase)成分とQ(quadrature)成分が依存しあうため、受信機でのデマッピングの複雑さの増大を伴う。より高いデマッピングの複雑さは、ATSC3.0ではコンステレーションの次数が1024まで許容されると考えられる。その上、4096-QAMコンステレーション用のPAMに基づくコンステレーションのみが許可されることが決定されている。1D-64 NU-PAMに基づく4096-QAMコンステレーションの一例を図11に示す。
【0036】
QAMシンボルのビット数をBで表す。QAMコンステレーションは正方形であるので、Bは偶数である。さらに、正方形QAMシンボルは2つの同じ型のPAMシンボルからなるので、QAMシンボルに符号化されるビットは同じロバストレベルを持つペアにグループ分けすることができる。QAMシンボルに符号化されるビットの集まりをコンステレーションワードと呼ぶ。
【0037】
次に、ビットインタリーバ122について説明する。
通常、LDPC符号語のビットは異なる重要度を有し、コンステレーションのビットは異なるロバストレベルを有する。直接、つまり、インタリービングせずに、LDPC符号語のビットをQAMコンステレーションのビットにマッピングする場合、最適な性能が得られない。この性能の低下を防ぐために、符号語のビットをコンステレーションにマッピングする前にインタリーブする必要がある。
【0038】
このために、ビットインタリーバ122が、図2に示すように、LDPCエンコーダ121とQAMマッパ124との間に設けられている。注意深くビットインタリーバ122を設計することによって、LDPC符号語のビットとコンステレーションによって符号化されるビットとの間で最適な関係を得ることができ、性能の向上につながる。通常、性能の評価基準は、信号対雑音比(signal-to-noise ratio:SNR)の関数としてのビットエラーレート(bit error rate:BER)又はフレームエラーレート(frame error rate:FER)である。
【0039】
LDPC符号語のビットの重要度が異なるのは、第1に、全てのビットにおいてパリティ検査(検査ノード)の数が同じになっているわけではない、ことに起因する。符号語ビット(変数ノード)に接続されるパリティ検査(検査ノード)の数が多ければ多い程、そのビットは反復LDPC復号処理においてより重要になる。
さらに、LDPC符号語のビットの重要度が異なるのは、第2に、変数ノードがLDPC符号のターナグラフ表現においてサイクルに対して異なる接続性を有している、ことに起因する。従って、LDPC符号の符号語ビットに接続されるパリティ検査(検査ノード)の数が同数であったとしても、ビットの重要度が異なることがある。
【0040】
これらの見解は当該技術分野で周知である。原則として、変数ノードに接続される検査ノードの数が多くなると、その変数ノードの重要度が大きくなる。
特にQC LDPC符号の場合、Qビットの巡回ブロックに含まれる全ビットは、ビットに接続されるパリティ検査(検査ノード)の数が同数であり、ターナグラフ表現におけるサイクルに対する接続性が同じであるため、同じ重要度である。
【0041】
次に、QC LDPC符号語のビットをコンステレーションワードにマッピングする方法について記載する。このマッピングは図2のビットインタリーバ122によって行われる。なお、このマッピングの方法は特許文献1(EP11006087.8)に開示されており、ここに完全に援用する。特許文献1(EP11006087.8)は、送信アンテナ数が任意の数Tに関するものであるが、以下では、本発明に関連する場合、つまり送信アンテナ数Tが1である場合について説明する。
【0042】
特許文献1(EP11006087.8)によれば、QC LDPC符号語のビットは、
(i)各コンステレーションワードはQC LDPC符号語のB/2個の巡回ブロックのビットから作られ、
(ii)同じQAMシンボルに符号化され、ロバストレベルが同じである、コンステレーションワードのビットの各ペアは、同じ巡回ブロックのビットから作られる、
ようにコンステレーションワードにマッピングされる。
【0043】
特に、B/2個の巡回ブロックのQ×B/2個のビットは、Q/2個の空間多重ブロックにマッピングされる。この場合、B/2個の巡回ブロックをセクションと呼ぶ。
図12(a)から図12(c)は、図2のBICMエンコーダ120の一例を説明するための図である。
図12(a)は4つのセクションで24個の巡回ブロックに関する配置を示す。図12(a)の例では、1セクション当たりの巡回ブロックの数はB/2=12/2=6である。
【0044】
図12(b)は、DVB-NGHに基づく図2のBICMエンコーダ120のビットインタリーバ122からQAMマッパ124(一対のPAMマッパ124-1、124-2を含む。)までの経路の構造の一例を示す図である。
図2のLDPCエンコーダ121によって生成されたLDPC符号語は図12(b)のビットインタリーバ122に供給される。ビットインタリーバ122は1セクション当たり6巡回ブロックである。なお、図12(a)の各セクションに対して、図12(b)のビットインタリーバ122及びQAMマッパ124(一対のPAMマッパ124-1、124-2を含む。)によって処理が行われる。ビットインタリーバ122は、供給されるビットの並び順を替え、それから並び替え後のビットを対応するコンステレーションワードの実数部と虚数部とに配置する。一対のPAMマッパ124-1、124-2は、64-PAMコンステレーションを用いて、ビット(b1,Re,b2,Re,・・・,b6,Re)を複素シンボルs1の実数成分(Re)に、ビット(b1,Im,b2,Im,・・・,b6,Im)を複素シンボルs1の虚数成分(Im)にマッピングする。
【0045】
図12(c)は図12(b)のビットインタリーバ122によって実行されるビットの並び替えを説明するための図である。図12(c)に示すように、ビットインタリーバ122は、符号語の1セクションの全ビットを行列に行方向に(row-by-row)書き込み、書き込んだビットを当該行列から列方向に(column-by-column)読み出す、ことと等価な処理を実行する。なお、この行列はB/2行Q列である。
【0046】
図13(a)から図13(c)は、図2のBICMエンコーダ120の他の例を説明するための図である。図13(a)から図13(c)は、夫々、ATSC3.0に基づく配置を示していることを除くと、図12(a)から図12(c)と類似している。
図13(a)は2つのセクションで24個の巡回ブロックに関する配置を示す。図13(a)の例では、図12(a)の場合と異なり、1セクション当たりの巡回ブロックの数は、QAMシンボルのビット数Bであり、図13(a)の例では12である。
【0047】
図13(b)は、ATSC3.0に基づく図2のBICMエンコーダ120のビットインタリーバ122からQAMマッパ124までの経路の構造の一例を示す図である。
図2のLDPCエンコーダ121によって生成されたLDPC符号語は図13(b)のビットインタリーバ122に供給される。ビットインタリーバ122は1セクション当たり12巡回ブロックである。なお、図13(a)の各セクションに対して、図13(b)のビットインタリーバ122及びQAMマッパ124によって処理が行われる。ビットインタリーバ122は、供給されるビットの並び順を替える。QAMマッパ124は、4096-QAMコンステレーションを用いて、ビット(b0,b1,・・・,b11)を複素シンボルs1にマッピングする。
【0048】
図13(c)は図13(b)のビットインタリーバ122によって実行されるビットの並び替えを説明するための図である。図13(c)に示すように、ビットインタリーバ122は、符号語の1セクションの全ビットを行列に行方向に(row-by-row)書き込み、書き込んだビットを当該行列から列方向に(column-by-column)読み出す、ことと等価な処理を実行する。なお、この行列はB行Q列である。
【0049】
≪実施の形態≫
上述したように、所定のLDPC符号の異なる巡回ブロックは、ビットの重要度が当該ビットが接続される検査ノードの数に依存するため、重要度が異なっている可能性がある。従って、巡回ブロックの重要度と、この巡回ブロックがマップされるコンステレーションワードのビットのロバストとを合わすことによって、送信性能の向上が図られる可能性がある。特に、重要度が最も高い巡回ブロックのビットを、ロバストが最も強いコンステレーションワードのビットにマッピングする。逆に、重要度が最も低い巡回ブロックのビットを、ロバストが最も弱いコンステレーションワードのビットにマッピングする。
【0050】
図14は本発明の実施の形態に係るビットインタリーバの一構成例を示すブロック図である。図14の例では、LDPC符号語は夫々がQ=8ビットからなるN=12個の巡回ブロックQB1,QB2,・・・,QB12からなる。
ビットインタリーバにおいて、第1のステージにおいて、巡回ブロック内でのビットの並び順に影響を与えることなく、符号語内での巡回ブロックの並び順を替えるために、符号語に対して巡回ブロックパーミュテーション(QB permutation:QBパーミュテーション)が実行される。この第1のステージの処理は巡回ブロックパーミュテーションユニット210によって行われる。
【0051】
第2のステージにおいて、巡回ブロック内でのビットの並び順を替えるために、巡回ブロックに対して巡回ブロック内パーミュテーション(Intra-QB permutation:Intra-QBパーミュテーション)が実行される。この第2のステージの処理は巡回ブロック内パーミュテーションユニット220-1~220-12によって実行される。なお、第2のステージは存在しなくてもよい。
【0052】
第3のステージにおいて、第1のステージ及び第2のステージが実行された後、符号語の各巡回ブロックのビットがコンステレーションワードにマップされる。この第3のステージは、符号語を複数のセクションに分割し、セクション毎にコンステレーションワードにマッピングする(セクションパーミュテーション)ことによって実装可能である。例えば、巡回ブロック内パーミュテーションユニットの後段に、図13(a)から図13(c)を用いて説明したビットインタリーバ122と同等の機能を有するインタリーバ(セクションインタリーバ)を配置することによって実現される。
【0053】
発明者は、巡回ブロックパーミュテーションを最適化することによって、即ち、異なる信頼性のコンステレーションビットと異なる重要度の巡回ブロックとを合わせる巡回ブロックパーミュテーションを選択することによって、所定のLDPC符号に対する通信性能が向上することを悟った。
しかしながら、巡回ブロックのコンステレーションワードビットへのマッピングは、簡単なことではない。最適化された巡回ブロックパーミュテーションを見つけることは、解析的な解法が現在のところ知られていないため、非常に時間を要する作業である。本発明において開示された最適な巡回ブロックパーミュテーションを見つけるために使用された方法は次のステップからなり、異なるコンステレーション及び異なる符号化率の夫々に対して適用される。
【0054】
予備ステップにおいて、非常に多くの数(1e4・・・1e5)の巡回ブロックパーミュテーションを制約なくランダムに生成する。これらの巡回ブロックパーミュテーションに対して、Monte-Carloシミュレーションが、ブロックエラーレート(block error rate:BLER)の所定の目標値における、閾値信号対雑音比(signal-to-noise ratio:SNR)を求めるために、ブラインドデマッピング及び反復デマッピングを用いて実行される。閾値SNRが最も低い、即ち、最も性能の良い、巡回ブロックパーミュテーションが保持される。
【0055】
発明者は、ブラインドデマッピングに対する巡回ブロックパーミュテーションの最適化は反復デマッピングでは最適な性能にならず、逆もまた然りである、ことを悟った。ブラインドデマッピングと反復デマッピングの両方に対して良い性能が得られる巡回ブロックパーミュテーションを見つけることは、困難な課題のまま残る。
従って、ブラインドデマッピングと反復デマッピングの両方に対して良い性能が得られる巡回ブロックパーミュテーションを提示することが本発明の目的である。
【0056】
予備ステップから、様々な巡回ブロックパーミュテーションに対するSNRの範囲が求められる。それから、閾値SNRがブラインドデマッピングに対して良い性能が得られる巡回ブロックパーミュテーションのみを選択するために設定される。良い性能とは低SNRを意味する。閾値SNRは低く設定し過ぎるべきではない。なぜなら、閾値SNRを低く設定し過ぎると、反復デマッピングに対して非常に良い性能が得られる多くの巡回ブロックパーミュテーションを除外してしまうからである。一方で、ブラインドデマッピングに対して厳しく最適化された巡回ブロックパーミュテーションを反復デマッピングに用いた場合、性能が悪くなってしまう。初期の閾値SNRを適切に選択することは経験の問題である。
【0057】
第1の選択ステップにおいて、多くの数の巡回ブロックパーミュテーションを制約なくランダムに生成する。各巡回ブロックパーミュテーションに対して、ブラインドデマッピングに関するBLER曲線が、例えば、Monte-Carloシミュレーションを使って、求められる。BLERの目標値におけるSNRが予め定められた閾値SNRより低い巡回ブロックパーミュテーションのみが保持される。その保持された巡回ブロックパーミュテーションに対して、反復デマッピングに関するBLER曲線が求められ、最も良い巡回ブロックパーミュテーションが保持される。
【0058】
第2の選択ステップにおいて、第1の選択ステップによって選択された巡回ブロックパーミュテーションから求められる、中ぐらいの数の巡回ブロックパーミュテーションを制約を受けてランダムに生成する。そして、第1の選択ステップの選択基準が適用される。制約を受けた巡回ブロックパーミュテーションは、一つのランダムに選択されたセクションの巡回ブロックに対して、ランダムパーミュテーションを適用することによって、求められる。この制約を適用することによって、性能の変化が小さく、第1の選択ステップで既に選択された性能の良い巡回ブロックパーミュテーションの周りに集中する、ことが保証さる。この方法により、ブラインドの制約を受けていない検索を使うよりもより効果的に良い性能の巡回ブロックパーミュテーションを見つけることができる。
【0059】
第3の選択ステップにおいて、第2の選択ステップによって選択された巡回ブロックパーミュテーションから求められる、中ぐらいの数の巡回ブロックパーミュテーションを制約を受けてランダムに生成する。そして、第1の選択ステップの選択基準が適用される。制約を受けた巡回ブロックパーミュテーションは、同じロバストレベルを持つビットに対して、ランダムパーミュテーションを適用することによって求められる。従って、性能の変化は、かなり小さく、ブラインドデマッピングよりも反復デマッピングに影響を及ぼす。よって、反復デマッピングに関する性能は、ブラインドデマッピングに関する性能を犠牲にすることなく、最適化される。
【0060】
発明者は、巡回ブロックパーミュテーションの最適化を、符号化率6/15、7/15、8/15の夫々に対して実施した。また、発明者は、巡回ブロックパーミュテーションの最適化と同時に、符号化率6/15、7/15、8/15とともに使用される最適な非均一コンステレーションの決定を行った。以下、符号化率6/15、7/15、8/15の夫々に対する最適化されたQBパーミュテーション及び非均一コンステレーションを示す。
【0061】
表1及び表2は、夫々、本発明に係る符号化率が6/15である場合の巡回ブロックパーミュテーション及び非均一4096-QAMコンステレーションを構成する非均一64-PAMコンステレーションを示すテーブルである。
但し、表1並びに後述する表3及び表5において、巡回ブロックのインデックスは0から始まり、179までである。「j-th block of Group-wise Interleaver Output」は、巡回ブロックが並び替えられた後の符号語内での巡回ブロックのインデックスを示す。また、「π(j)-th block of Group-wise Interleaver Input」は巡回ブロックが並び替えられる前の符号語内での巡回ブロックのインデックスを示す。また、表2並びに後述する表3及び表5において、アドレスラベルxは0から始まり、63まである。「Address Label x (integer, MSB first)」は、ビットの最上位ビット(most significant bit:MSB)のアドレスラベルが「0」、最上位ビットの次のビットのアドレスラベルが「1」である。「PAM spots p(x)」はアドレスラベルに対応するPAMシンボルの実数値を示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
表3及び表4は、夫々、本発明に係る符号化率が7/15である場合の巡回ブロックパーミュテーション及び非均一4096-QAMコンステレーションを構成する非均一64-PAMコンステレーションを示すテーブルである。
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
表5及び表6は、夫々、本発明に係る符号化率が8/15である場合の巡回ブロックパーミュテーション及び非均一4096-QAMコンステレーションを構成する非均一64-PAMコンステレーションを示すテーブルである。
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】
なお、図14の巡回ブロックパーミュテーションユニット210は、LDPCエンコーダ121が用いた符号の符号化率に応じて、符号化率6/15、7/15、及び8/15に応じて表1、表3、及び表5の巡回ブロックパーミュテーションに基づいて符号語内の巡回ブロックの並び替えを行う。
次に、本実施の形態のQAMマッパの動作について説明する。
【0071】
QAMマッパ124による複素セルs(Re,Im)へのマッピングは、次の数4を計算することによって行われる。但し、非均一PAM座標p(x)は、符号化率6/15の場合は表2から、符号化率7/15の場合は表4から、符号化率8/15の場合は表6から得られる。
【0072】
【数4】
【0073】
但し、実数部p(x’)のアドレスラベルx’は、図14の後段に配置される、図13(a)から図13(c)を用いて説明したビットインタリーバ122と同等の機能を有するインタリーバ(セクションインタリーバ)(セクション当たりの巡回ブロック数はB)から出力される偶数番号のビットb0、b2、b4、b6、b8、b10を用いて数5から計算される。
【0074】
【数5】
【0075】
また、虚数部p(x”)のアドレスラベルx”は、上記のセクションインタリーバから出力される奇数番号のビットb1、b3、b5、b7、b9、b11を用いて数6から計算される。
【0076】
【数6】
【0077】
上述した巡回ブロックパーミュテーション(例えば表1、表3、表5)と非均一QAMコンステレーション(例えば表2、表4、表6)は、デジタル通信システムにおける送信機側と受信機の両方に関連する。上述した巡回ブロックパーミュテーションの夫々は一意に逆の巡回ブロックパーミュテーションを定義し、上述した巡回ブロックパーミュテーションの一つが送信機側でのビットインタリービングに使用され、その逆の巡回ブロックパーミュテーションが受信機側でのビットデインタリービングに使用される。さらに、上述した非均一QAMコンステレーション(2次元非均一コンステレーション)の上記の定義に基づいて、コンステレーションワード即ち符号語のビットを送信に使用される複素セルにマッピングすることが送信機において行われ、受信された複素セルのデマッピングが通信チャネルの他方での受信機において行われる。
【0078】
上述した巡回ブロックパーミュテーションと上述した非均一4096-QAMコンステレーションは、夫々、符号化率が6/15、7/15、8/15である特別なLDPC符号に対して最適化されている。
この符号化率6/15で符号長64800符号ビットのLDPC符号の定義を表7-1、表7-2に示す。なお、実際は、表7-1の最後の行の次に表7-2の最初の行が続くことによってLDPC符号の定義は完成する。
【0079】
【表7-1】
【0080】
【表7-2】
【0081】
この符号化率7/15で符号長64800符号ビットのLDPC符号の定義を表8-1及び表8-2に示す。なお、実際は、表8-1の最後の行の次に表8-2の最初の行が続くことによってLDPC符号の定義は完成する。
【0082】
【表8-1】
【0083】
【表8-2】
【0084】
この符号化率8/15で符号長64800符号ビットのLDPC符号の定義を表9-1及び表9-2に示す。なお、実際は、表9-1の最後の行の次に表9-2の最初の行が続くことによってLDPC符号の定義は完成する。
【0085】
【表9-1】
【0086】
【表9-2】
【0087】
以下、LDPCエンコーダ121が行うパリティビットの演算処理を説明する。
符号化率が6/15、7/15であるLDPC符号は次のアルゴリズムに基づいて定義される。
LDPC符号は、情報ブロックs=(s0,s1,・・・,sK-1)を符号化し、これによって、符号長N=K+M1+M2の符号語Λ=(λ0,λ1,・・・,λN-1)=(λ0,λ1,・・・,λk-1,p0,p1,・・・,pM1+M2-1)を生成する、ために使用される。
【0088】
但し、符号化率6/15の場合、M1=1080、M2=37800、Q1=3、Q2=105である。また、符号化率7/15の場合、M1=1080、M2=33480、Q1=3、Q2=93である。
LDPCエンコーダ121はパリティビットを次のようにして計算する。
(1) 数7の初期化を行う。
【0089】
【数7】
【0090】
(2) λm(但し、m=0,1,・・・,359)に対して、数8を用いてパリティビットアドレスにおいてλmを累積する。
【0091】
【数8】
【0092】
但し、xは最初のビットλ0に対応するパリティビットアキュミュレータのアドレスを示す。なお、modはモジューロ演算子(modulo operator)を表す(以下において同様)。
(3) 360番目の情報ビットλLに対して、パリティビットアキュミュレータのアドレスは、符号化率6/15の場合表7-1及び表7-2に基づく定義の2行目で与えられ、符号化率7/15の場合表8-1及び表8-2に基づく定義の2行目で与えられる。同様の方法で、次のλm(但し、m=L+1,L+2,・・・,L+359)に対するパリティビットアキュミュレータのアドレスが、数9を用いて得られる。
【0093】
【数9】
【0094】
但し、xはλLのアドレスを示し、符号化率6/15の場合表7-1及び表7-2に基づく定義の2行目の値であり、符号化率7/15の場合表8-1及び表8-2に基づく定義の2行目の値である。
(4) 同様の方法で、360個の新しい情報ビットのグループ毎に、符号化率6/15の場合表7-1及び表7-2に基づく定義の新しい行が、符号化率7/15の場合表8-1及び表8-2に基づく定義の新しい行が、パリティビットアキュミュレータのアドレスを見つけるために使用される。
【0095】
(5) λ0からλK-1までの符号語ビットが処理された後、数10に示す演算をi=1から始めて順番に行う。
【0096】
【数10】
【0097】
(6) λKからλK+M1-1までのパリティビットは、数11に示すL=360のインタリービング演算を用いて得られる。
【0098】
【数11】
【0099】
(7) λKからλK+M1-1までの新しいL=360の符号語ビットのグループ毎に、パリティビットアキュミュレータのアドレスが、符号化率6/15の場合表7-1及び表7-2に基づく定義の新しい行を、符号化率7/15の場合表8-1及び表8-2に基づく定義の新しい行を用い、数12から計算される。
【0100】
【数12】
【0101】
但し、xは符号語ビットの各グループの先頭の符号ビットに対応するアドレスを示し、符号化率6/15の場合表7-1及び表7-2に基づく定義の各グループに対応する行の値であり、符号化率7/15の場合表8-1及び表8-2に基づく定義の各グループに対応する行の値である。
(8) λKからλK+M1-1までの符号語ビットが処理された後、λK+M1からλK+M1+M2-1までのパリティビットは、数13に示すL=360のインタリービング演算を用いて得られる。
【0102】
【数13】
【0103】
(9) 符号語のビットλi(i=0,1,・・・,N-1)は続いてビットインタリーバの巡回ブロックパーミュテーションユニット210に送られる。
符号化率が8/15であるLDPC符号は次のアルゴリズムによって定義される。
(1) LDPC符号語のビットをc0,c1,・・・,cN-1と表記し、最初のKビットは情報ビットに等しく、数14で表される。
【0104】
【数14】
【0105】
そして、パリティビットpk=ck+KはLDPCエンコーダ121によって次のように計算される。
(2) 数15の初期化を行う。
【0106】
【数15】
【0107】
但し、N=64800、K=N×符号化率である。
(3)kが0以上K未満に対して、kを360で割った値より大きくない最大の整数をiとし、l=k mod 360とする。全てのjに対してikをpq(i,j,k)に数16に示すように累積する。
【0108】
【数16】
【0109】
但し、w(i)は表9-1と表9-2に基づく定義に基づくインデックスリストにおけるi行目における要素の数である。
(4)0<k<N-Kの全てのkに対して、数17の処理を行う。
【0110】
【数17】
【0111】
(5) 上記のステップまでで、全符号語ビットc0,c1,・・・,cN-1が得られる。数18に示すパリティインタリーバが最後のN-K個の符号語ビットに対して適用される。
【0112】
【数18】
【0113】
パリティインタリーバの役割は、LDPCパリティ検査行列のパリティパートの階段状の構造を、当該行列の情報パートに類似した疑似巡回構造に変換することである。パリティインタリーブされた符号語ビットc0,c1,・・・,cN-1がビットインタリーバの巡回ブロックパーミュテーションユニット210に送られる。
パラメータq(i,j,0)は表9-1及び表9-2に基づく定義に基づくインデックスリストにおけるi行目のj番目のエントリを示し、数19の関係を満たす。
【0114】
【数19】
【0115】
全アキュミュレーションはGF(2)に関する加算によって実現される。符号化率8/15の場合、Rは84である。
≪補足(その1)≫
本発明は上記の実施の形態で説明した内容に限定されず、本発明の目的とそれに関連又は付随する目的を達成するためのいかなる形態においても実施可能であり、例えば、以下であってもよい。
【0116】
(1) 本発明は、添付した図面において説明される特別な実施の形態を参照することによって、特に、キーパラメータN、M、Qの値として一例を提示することによって、記述されている。しかしながら、本発明は、このパラメータの特定の組み合わせによって限定されるものではない。事実、本発明は、DVB-T2規格において記載されているような、又は、類似の規格によって定義されているような、これらのパラメータに対する値(正の整数)の実用的に関連するいかなる組み合わせに対して適用可能である。
【0117】
(2) 本発明は、ソフトウェアおよびハードウェアの双方において、開示された方法やデバイスを実装するために特定の形態に制限されるものではない。
特に、本発明は、コンピュータ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラなどが本発明の実施の形態に従う方法のすべてのステップを実行できるように適合されたコンピュータ実行可能命令を具現化したコンピュータ読み取り可能媒体の形態で実装されてもよい。
また、本発明は、ASIC(Application-Specific Integrated Circuit)の形態や、FPGA(Field Programmable Gate Array)の形態で実装されてもよい。
【0118】
(3) 本発明は、QC LDPC符号と高次のコンステレーションに基づくデジタル通信システムに関する。本発明は、LDPC符号のビットを並び替える特別なパーミュテーションと、インタリーブされた符号語を伝送する特別な非均一コンステレーションを提供する。パーミュテーションと非均一コンステレーションは、6/15、7/15、又は、8/15の符号化率において、連携して最適化されている。
【0119】
≪補足(その2)≫
本発明に係る通信方法等についてまとめる。
(1) 第1の通信方法は、リピートアキュミュレート疑似巡回低密度パリティ検査符号を含む疑似巡回低密度パリティ検査符号を用いるデジタル通信システムにおけるデータ通信を行うデータ通信方法であって、前記疑似巡回パリティ検査符号に基づいて生成された符号語に対して巡回ブロックパーミュテーションを実行し、前記符号語はN個の巡回ブロックの列からなり、前記N個の巡回ブロックの夫々はQ個のビットからなり、NとQは夫々正の整数であり、前記巡回ブロックパーミュテーションは前記符号語内での巡回ブロックの並び替えである、インタリービングステップと、前記巡回ブロックパーミュテーションが実行された符号語の各ビットを非均一コンステレーションのコンステレーションポイントにマッピングするコンステレーションマッピングステップと、を有し、前記巡回ブロックパーミュテーション及び前記非均一コンステレーションは符号語の生成に用いる前記疑似巡回低密度パリティ検査符号の符号化率に基づいて選択される。
【0120】
(2) 第2の通信方法は、第1の通信方法において、
前記疑似巡回低密度パリティ検査符号の符号化率が6/15であり、前記非均一コンステレーションが、実数座標及び虚数座標が夫々上記の表2に従って与えられる非均一64-PAMコンステレーションである非均一4096-QAMコンステレーションである。
(3) 第3の通信方法は、第1または第2の通信方法において、前記疑似巡回低密度パリティ検査符号の符号化率が6/15であり、前記巡回ブロックパーミュテーションが上記の表1に従って定義される。
【0121】
(4) 第4の通信方法は、第1の通信方法において、前記疑似巡回低密度パリティ検査符号の符号化率が7/15であり、前記非均一コンステレーションが、実数座標及び虚数座標が夫々上記の表4に従って与えられる非均一64-PAMコンステレーションである非均一4096-QAMコンステレーションである。
(5) 第5の通信方法は、第1または第4の通信方法において、前記疑似巡回低密度パリティ検査符号の符号化率が7/15であり、前記巡回ブロックパーミュテーションが上記の表3に従って定義される。
【0122】
(6) 第6の通信方法は、第1の通信方法において、前記疑似巡回低密度パリティ検査符号の符号化率が8/15であり、前記非均一コンステレーションが、実数座標及び虚数座標が夫々上記の表6に従って与えられる非均一64-PAMコンステレーションである非均一4096-QAMコンステレーションである。
(7) 第7の通信方法は、第1または第6の通信方法において、前記疑似巡回低密度パリティ検査符号の符号化率が8/15であり、前記巡回ブロックパーミュテーションが上記の表5に従って定義される。
【0123】
(8) 第8の通信方法は、第1から第7の何れかの通信方法において、前記Nは180、前記Qは360である。
(9) 第9の通信方法は、第1から第8の何れかの通信方法において、前記符号語の生成に用いる前記疑似巡回パリティ検査符号は、互いに符号化率が異なる複数の所定の疑似巡回パリティ検査符号の中から選択される。
【0124】
(10) 第1の通信装置は、第1から第9の何れかの通信方法を行うデジタル通信システムにおける通信装置である。
(11) 第10通信方法は、リピートアキュミュレート疑似巡回低密度パリティ検査符号を含む疑似巡回低密度パリティ検査を用いるデジタル通信システムにおけるデータ通信を行うデータ通信方法であって、前記疑似巡回低密度パリティ検査符号に基づいて生成された符号語に対して巡回ブロックパーミュテーションが実行され、巡回ブロックパーミュテーションが実行された符号語のビットが非均一コンステレーションのコンステレーションマッピングされることにより得られた複素セルの夫々に対して、当該非均一コンステレーションに基づくデマッピングを行い、デマッピングの結果に対して前記巡回ブロックパーミュテーションと逆の処理を行う。
【0125】
(12) 第2の通信装置は、第10の通信方法を行うデジタル通信システムにおける通信装置である。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、QC LDPC符号とQAMとを用いるBICMシステムに利用することができる。
【符号の説明】
【0127】
100 送信機
110 入力プロセシングユニット
120 BICMエンコーダ
130 OFDMモジュレータ
140 アップコンバータ
150 RF増幅器
121 LDPCエンコーダ
122 ビットインタリーバ
124 QAMマッパ
210 巡回ブロックパーミュテーションユニット
220-1~220-12 巡回ブロック内パーミュテーションユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14