(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】2液ウレタン系接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20230502BHJP
C09J 175/08 20060101ALI20230502BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20230502BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J175/08
C09J11/08
C09J11/04
(21)【出願番号】P 2021003983
(22)【出願日】2021-01-14
【審査請求日】2023-03-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】321011088
【氏名又は名称】シーカ・ハマタイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】松木 裕一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 愛美
(72)【発明者】
【氏名】三浦 和樹
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-199526(JP,A)
【文献】特開2018-115298(JP,A)
【文献】特開2003-226028(JP,A)
【文献】特開2002-363525(JP,A)
【文献】特開2019-214681(JP,A)
【文献】国際公開第2015/186555(WO,A1)
【文献】特開2007-031483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソアネート基を有するウレタンプレポリマーを含む第1液と、
水と、イソシアネート基と反応可能な活性水素を有する活性水素化合物(水を除く)と、セルロースナノファイバーとを含む第2液とを有し、
前記第1液、前記第2液は、それぞれ独立に、カーボンブラック及び/又は無機系フィラーを含み、
前記セルロースナノファイバーの含有量が、前記水の含有量に対して、0.1質量%以上1.5質量%以下である、2液ウレタン系接着剤。
【請求項2】
前記ウレタンプレポリマーが、ポリエーテル骨格を少なくとも有し、
前記活性水素化合物が、ポリエーテルポリオールを含む、請求項1に記載の2液ウレタン系接着剤。
【請求項3】
前記第1液中の前記ウレタンプレポリマーが有する前記イソシアネート基のモル数(A)と、前記第2液中の前記活性水素化合物が有する前記活性水素のモル数(B)のモル比:B/Aが、0.1以上1.0未満である、請求項1又は2に記載の2液ウレタン系接着剤。
【請求項4】
前記第1液、前記第2液は、それぞれ独立に、更に、第3級アミン化合物、及び、スズ系又はビスマス系金属錯体を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の2液ウレタン系接着剤。
【請求項5】
前記水の含有量が、前記第2液中の0.1~3.0質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の2液ウレタン系接着剤。
【請求項6】
前記第1液、前記第2液は、それぞれ独立に、前記カーボンブラック、並びに、前記無機系フィラーとしての、炭酸カルシウム及びシリカからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の2液ウレタン系接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液ウレタン系接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のボディーには、軽量化の観点から、鋼板に代えて、樹脂材料(例えば、オレフィン系樹脂や繊維強化プラスチック(FRP)のマトリックス樹脂など)が使用されている。
このような樹脂材料と異種材料(例えば、ガラス)との接着には、従来、ウレタンプレポリマーを含む主剤と硬化剤とを有する2液硬化型ウレタン接着剤組成物が提案されている。
例えば、特許文献1には、硬化性および接着発現性に優れる接着剤組成物に提供を目的として、ウレタンプレポリマーを含有する主剤と、水と、2官能以上の活性水素含有化合物とを含有する硬化剤とからなる2液型ウレタン接着剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは特許文献1を参考にして、主剤(第1液)と、硬化剤(広義の硬化剤を意味する。第2液とも言う。)とを有し、上記第2液がポリオールのような活性水素化合物、フィラー(カーボンブラック及び/又は無機系フィラー。カーボンブラック及び無機系フィラーをまとめて「フィラー」という場合がある。)に加え、水を含む、2液型のウレタン系接着剤組成物を調製しこれを評価した。なお、一般的に、ウレタン系接着剤組成物において、ウレタンプレポリマーに対する硬化成分(狭義の硬化剤)として使用される活性水素化合物は、通常、室温(23℃程度)条件下で液状である。
上記評価の結果、上記第2液において経時で徐々に液成分(上記液成分は、第2液に配合された、水及び/又は活性水素化合物を含む。以下同様。)が上記第2液からブリードアウトする場合があることが明らかとなった。
詳細には、上記のように水等を含む第2液が比較的高い温度環境(例えば40℃程度の温度)に長期間(例えば6か月程度)置かれると、上記第2液が密閉状態で保管されていても、第2液の表面近傍(第2液の内部部分でなく、空気と第2液との界面部分)において、経時で徐々に水等がブリードアウトするという現象を本発明者らは確認した。
【0005】
また、上記のように、活性水素化合物、フィラー、水を含む第2液を長期保管(例えば密閉状態で40℃の条件下で6か月)することによって、第2液のチクソ性が経時で低下する場合があることが明らかとなった。
【0006】
上記のような、第2液における液成分のブリードアウトや、第2液におけるチクソ性の低下は、第1液との混合、硬化において、硬化不良の原因になると考えられる。
【0007】
また、2液型のウレタン系接着剤組成物の硬化物は、長期的に使用されることから、老化後の接着性が要求される。
【0008】
そこで、本発明は、第2液における液成分のブリードアウト及び第2液のチクソ性の低下を抑制することができ、得られる硬化物の老化後の接着性が優れる、2液ウレタン系接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、第2液がセルロースナノファイバー(CNF)を特定の範囲の含有量で含むことによって所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0010】
[1] イソアネート基を有するウレタンプレポリマーを含む第1液と、
水と、イソシアネート基と反応可能な活性水素を有する活性水素化合物(水を除く)と、セルロースナノファイバーとを含む第2液とを有し、
上記第1液、上記第2液は、それぞれ独立に、カーボンブラック及び/又は無機系フィラーを含み、
上記セルロースナノファイバーの含有量が、上記水の含有量に対して、0.1質量%以上1.5質量%以下である、2液ウレタン系接着剤。
[2] 上記ウレタンプレポリマーが、ポリエーテル骨格を少なくとも有し、
上記活性水素化合物が、ポリエーテルポリオールを含む、[1]に記載の2液ウレタン系接着剤。
[3] 上記第1液中の上記ウレタンプレポリマーが有する上記イソシアネート基のモル数(A)と、上記第2液中の上記活性水素化合物が有する上記活性水素のモル数(B)のモル比:B/Aが、0.1以上1.0未満である、[1]又は[2]に記載の2液ウレタン系接着剤。
[4] 上記第1液、上記第2液は、それぞれ独立に、更に、第3級アミン化合物、及び、スズ系又はビスマス系金属錯体を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の2液ウレタン系接着剤。
[5] 上記水の含有量が、上記第2液中の0.1~3.0質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載の2液ウレタン系接着剤。
[6] 上記第1液、上記第2液は、それぞれ独立に、上記カーボンブラック、並びに、上記無機系フィラーとしての、炭酸カルシウム及びシリカからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の2液ウレタン系接着剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明の2液ウレタン系接着剤は、第2液における液成分のブリードアウト及び第2液のチクソ性の低下を抑制することができ、得られる硬化物の老化後の接着性が優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、(メタ)アクリルはアクリルまたはメタクリルを表す。
また、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、第2液における液成分のブリードアウトを抑制すること、第2液のチクソ性の低下を抑制すること、及び、得られる硬化物の老化後の接着性が優れることのうちの少なくとも1つがより優れることを、本発明の効果がより優れるということがある。
【0013】
[2液ウレタン系接着剤]
本発明の2液ウレタン系接着剤(本発明の接着剤)は、
イソアネート基を有するウレタンプレポリマーを含む第1液と、
水と、イソシアネート基と反応可能な活性水素を有する活性水素化合物(水を除く)と、セルロースナノファイバー(CNF)とを含む第2液とを有し、
上記第1液、上記第2液は、それぞれ独立に、カーボンブラック及び/又は無機系フィラーを含み、
上記セルロースナノファイバーの含有量が、上記水の含有量に対して、0.1質量%以上1.5質量%以下である、2液ウレタン系接着剤(2液ウレタン系接着剤組成物)である。
【0014】
本発明の接着剤はこのような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
第2液におけるCNFのブリードアウト抑制効果は、第2液の貯蔵(保管)中で生じるブリードアウト現象の抑制効果を意味する。ブリードアウト現象は、第2液(の配合組成物)を構成する物質の運動性がより高まりやすい表面近傍[第2液(の配合組成物)の内部部分でなく、空気と第2液(の配合組成物)との界面部分]の領域で生じ易く、構成物質間の相溶性[フィラー(カーボンブラック及び/又は無機系フィラー)と、水や、イソシアネート基と反応可能な活性水素を有する活性水素化合物(通常は上述のとおり室温条件下で液状物質である。例えばポリオールなど)との間の相溶性]の問題から、経時で徐々に液成分(特に低分子量の液成分)が表面にブリードアウトしてくる。
本発明においては、第2液にCNFを含有させることによって、CNFが有する親水性の強さから、上記液成分のブリードアウト現象を抑制するものと考えられる。
また、第2液において比重の高い無機フィラー成分(炭酸カルシウム等)を使用する場合、CNFの繊維の絡み合いが、上記の比重の高い無機フィラー成分の沈降を防止できるとも推測される。
【0015】
次に、第2液のチクソ性について、第2液(の配合組成物)のチクソ性は、一般的に、主としてフィラー間の粒子間相互作用の発生(低速剪断速度域)と消失(高速剪断速度域)によって生じる。
第2液(の配合組成物)のチクソ性は、第2液(の配合組成物)の長期保管(例えば密閉状態で40℃条件下で6か月程度)によって、フィラーが液成分に徐々に濡れてくることにより弱まる。
しかし、本発明においては、第2液(の配合組成物)系内にCNFを含有させることで、第2液(の配合組成物)のチクソ性の低下を抑制できることが確認された。
第2液のチクソ性の維持は、第2液におけるCNFの繊維の絡み合いによるため、又は、フィラーが液成分に徐々に濡れてくることをCNFが抑制するため、と推測される。
【0016】
また、本発明においては、CNFを所定の量で使用することによって、CNFが、得られる硬化物の老化後の接着性を損なわないことが確認された。
なお、上記メカニズムは本発明者らの推測であり、本発明のメカニズムは上記に限定されない。
以下、本発明の接着剤に含有される各成分について詳述する。
【0017】
[2液ウレタン系接着剤]
本発明の接着剤は、第1液と第2液とを有する2液型のウレタン系接着剤組成物である。本発明の接着剤は、硬化後はウレタン系の硬化物となりうる。
【0018】
<<第1液>>
本発明において、第1液は、イソアネート基を有するウレタンプレポリマーを含む。
【0019】
<ウレタンプレポリマー>
上記ウレタンプレポリマーは、イソアネート基を有する、ウレタン系化合物である。
上記ウレタンプレポリマーにおいて、イソシアネート基が結合する位置は特に制限されないが、上記イソシアネート基はウレタンプレポリマーの末端に結合することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
ウレタンプレポリマーは、複数のイソシアネート基を有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0020】
ウレタンプレポリマーとしては、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリイソシアネート化合物と1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(以下、「活性水素化合物」と略す。)とを、活性水素含有基に対してイソシアネート基が過剰となるように反応させることにより得られる反応生成物等を用いることができる。
本発明において、活性水素含有基は活性水素を含有する基を意味する。活性水素含有基としては例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。
【0021】
(ポリイソシアネート化合物)
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,4-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート化合物;
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような、脂肪族(上記脂肪族は、直鎖状、分岐状及び脂環式を含む概念である)ポリイソシアネート;
これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネートが挙げられる。
【0022】
ポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、硬化性に優れる理由から、芳香族ポリイソシアネート化合物が好ましく、MDIがより好ましい。
【0023】
(活性水素化合物)
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用される1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(活性水素化合物)は特に限定されない。活性水素含有基としては、例えば、水酸(OH)基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。
【0024】
上記活性水素化合物としては、例えば、1分子中に2個以上の水酸(OH)基を有するポリオール化合物、1分子中に2個以上のアミノ基および/またはイミノ基を有するポリアミン化合物等が好適に挙げられる。中でも、ポリオール化合物であることが好ましい。
【0025】
上記ポリオール化合物は、OH基を2個以上有する化合物であれば特に限定されない。ポリオール化合物の具体例としては、ポリエーテルポリオール;ポリエステルポリオール;(メタ)アクリルポリオール;ポリブタジエンポリオール、水素添加されたポリブタジエンポリオール;低分子多価アルコール類;これらの混合ポリオールが挙げられる。なかでも、ポリエーテルポリオールが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0026】
ポリエーテルポリオールは、主鎖(骨格)としてポリエーテルを有し、ヒドロキシ基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。ポリエーテルとは、エーテル結合を2以上有する基であり、その具体例としては、例えば、構造単位-Ra-O-Rb-を合計して2個以上有する基が挙げられる。ここで、上記構造単位中、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭化水素基を表す。炭化水素基は特に制限されない。例えば、炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基、炭素数3~10の分岐状のアルキレン基が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンジオール(ポリエチレングリコール);ポリオキシプロピレンジオール(ポリプロピレングリコール:PPG);ポリオキシプロピレントリオール;ポリオキシアルキレン系テトラオール;エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドの共重合体のポリオール;ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリテトラエチレングリコール、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリエーテルポリオールは、ポリイソアネート化合物との相溶性に優れるという観点から、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオールが好ましい。
ポリエーテルポリオールの重量平均分子量は、イソシアネート化合物との反応によって得られるウレタンプレポリマーの粘度が常温において適度な流動性を有するという観点から、500~20,000であることが好ましい。本発明において上記重量平均分子量は、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン(THF))により得られたポリスチレン換算値である。
活性水素化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
ウレタンプレポリマーは、本発明の効果により優れるという観点から、イソシアネート基の他に、更に、ポリエーテル骨格を少なくとも有することが好ましい。上記ポリエーテル骨格は、例えば、活性水素化合物としての上記ポリエーテルポリオールに由来することができる。
【0028】
ウレタンプレポリマーは、本発明の効果により優れるという観点から、ポリエーテルポリオールと芳香族ポリイソシアネート化合物とを反応させてなるウレタンプレポリマーであることが好ましい。
ウレタンプレポリマーはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
(ウレタンプレポリマーの含有量)
上記ウレタンプレポリマーの含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、第1液中の5~90質量%であることが好ましく、20~70質量%であることがより好ましい。
【0030】
ウレタンプレポリマーの製造方法は特に制限されない。例えば、活性水素化合物が有する活性水素含有基(例えばヒドロキシ基)1モルに対し、1.5~2.5モルのイソシアネート基が反応するようにポリイソシアネート化合物を使用し、これらを混合して反応させることによってウレタンプレポリマーを製造することができる。
ウレタンプレポリマーは、未反応のポリイソシアネート化合物を含んでもよい。
【0031】
ウレタンプレポリマーを上記のように製造する際、可塑剤を使用してもよい。上記可塑剤は、ポリイソシアネート化合物及び活性水素化合物並びにウレタンプレポリマーに対して反応性がなく、反応系内を可塑化しうる化合物であれば特に制限されない。
可塑剤としては、例えば、ジイソノニルフタレート(DINP)、アジピン酸ジオクチルのようなエステルが挙げられる。
上記可塑剤の含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、第1液中の5~20質量%であることが好ましい。
ウレタンプレポリマーを製造する際に使用された可塑剤が、第1液に含まれてもよい。
【0032】
本発明において、ウレタンプレポリマーは、ブロックイソシアネート化合物(ブロック剤でイソシアネート基がブロックされた化合物)を含まないことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0033】
(イソシアネート基含有量)
上記ウレタンプレポリマーが有する上記イソシアネート基の含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、ウレタンプレポリマー全量中の0.5~5.0質量%であることが好ましい。
第1液が更に可塑剤を含有する場合、上記ウレタンプレポリマーが有する上記イソシアネート基の含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、ウレタンプレポリマー及び可塑剤合計中の0.4~4.5質量%であることが好ましい。
【0034】
(イソシアネート基の含有量の測定方法)
ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基の含有量は、ウレタンプレポリマーを、電位差滴定装置で、JIS K1603-1:2007に準拠したA法により測定することができる。
ウレタンプレポリマーが可塑剤等との混合物である場合、上記混合物中のイソシアネート基の含有量は、上記混合物を、電位差滴定装置で、JIS K1603-1:2007に準拠したA法により測定することができる。
【0035】
<<第2液>>
本発明において、第2液は、水と、イソシアネート基と反応可能な活性水素を有する活性水素化合物(水を除く)と、セルロースナノファイバーとを含む。
水によるウレタンプレポリマー同士の架橋(ウレア結合を形成する)では、一般的には、炭酸ガスによる発泡が起こる。
本発明においては、第2液が、水以外に、水よりもイソシアネート基との反応性が高い活性水素化合物を含むため、上記発泡を抑制することができ、接着性が優れる。
【0036】
<水>
第2液に含まれる水は特に制限されない。例えば、水道水、蒸留水を使用することができる。
【0037】
(水の含有量)
水の含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、第2液中の0.1~3.0質量%であることが好ましい。
【0038】
また、水の含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、本発明の接着剤全量中の1.0質量%以下であることが好ましく、0.01~0.5質量%であることがより好ましい。
また、水の含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、2.0質量部以下であることが好ましく、0.02~1.0質量部であることがより好ましい。
【0039】
<活性水素化合物>
本発明において、第2液は、イソシアネート基と反応可能な活性水素を有する活性水素化合物を含む。ただし、上記活性水素化合物から水を除く。また、イソシアネート基と反応可能な活性水素を有する活性水素化合物は、セルロースナノファイバーを含まない。
上記活性水素化合物は上記活性水素を有することによって、ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基と反応することができる。
活性水素化合物は、室温(23℃)条件下で液状であることが好ましい。
【0040】
(イソシアネート基と反応可能な活性水素)
上記活性水素化合物は、1分子当たり、イソシアネート基と反応可能な活性水素を複数有することが好ましい。
上記活性水素化合物が有する、イソシアネート基と反応可能な活性水素は、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基のような活性水素含有基を形成することができる。
【0041】
上記活性水素化合物としては、例えば、1分子中に2個以上の水酸基(-OH)を有するポリオール化合物、1分子中に2個以上のアミノ基(-NH2)および/またはイミノ基(-NH-)を有するポリアミン化合物等が好適に挙げられる。中でも、ポリオール化合物であることが好ましい。
【0042】
上記ポリオール化合物は、OH基を2個以上有する化合物であれば特に限定されない。ポリオール化合物の具体例としては、ポリエーテルポリオール;ポリエステルポリオール;(メタ)アクリルポリオール;ポリブタジエンポリオール、水素添加されたポリブタジエンポリオール;低分子多価アルコール類;これらの混合ポリオールが挙げられる。
【0043】
上記活性水素化合物は、本発明の効果により優れるという観点から、ポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。
第2液に活性水素化合物として含まれるポリエーテルポリオールは、上記ウレタンプレポリマーの製造に使用される活性水素化合物としてのポリエーテルポリオールと同様とすることができる。
また、第2液に活性水素化合物として含まれるポリエーテルポリオールは、主鎖構造中に窒素原子を有するものであってもよい。
【0044】
第2液に活性水素化合物として含まれるポリエーテルポリオールは、本発明の効果により優れるという観点から、ポリエーテルトリオール及び/又はポリエーテルテトラオールを含むことが好ましく、ポリエーテルトリオールとポリエーテルテトラオールとを含むことがより好ましい。
【0045】
(ポリエーテルトリオール)
ポリエーテルトリオール(3官能ポリエーテルポリオール)としては、例えば、1分子中に、ヒドロキシ基を3個有し、骨格がポリエーテルを有する化合物が挙げられる。
ポリエーテルトリオールとしては、具体的には例えば、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレントリオールのようなポリオキシアルキレン系トリオールが挙げられる。
【0046】
ポリエーテルトリオールの含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、上記活性水素化合物全量中の80質量%以上が好ましく、85~98質量%がより好ましい。
【0047】
(ポリエーテルテトラオール)
ポリエーテルテトラオール(4官能ポリエーテルポリオール)としては、例えば、1分子中に、ヒドロキシ基を4個有し、骨格としてポリエーテルを有する化合物が挙げられる。ポリエーテルテトラオールは更に主鎖構造中に窒素原子を有してもよい。
【0048】
ポリエーテルテトラオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンテトラオール、下記式(4)で表される化合物が挙げられる。
【化1】
式(4)中、R
6~R
9はそれぞれ独立にプロピレン基及び/又はエチレン基を表し、R
10は炭素数2~10のアルキレン基を表し、a~dはそれぞれ独立に1~10を表す。a~dのうち少なくとも1つは3以上である。
上記炭素数2~10のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、テトラメチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、オクチレン基、デシレン基が挙げられる。上記炭素数2~10のアルキレン基は、エチレン基が好ましい。
骨格としてのポリエーテルについて、例えば、式(4)中のaが3以上である場合、H-(O-R
6)
a-は、末端にヒドロキシ基を有するポリエーテルとなる。b~dについても同様である。
【0049】
第2液に活性水素化合物として含まれるポリエーテルテトラオールは、本発明の効果により優れるという観点から、主鎖構造中に窒素原子を有するものを含むことが好ましく、上記式(4)で表される化合物であることがより好ましい。
【0050】
ポリエーテルテトラオールの重量平均分子量は、本発明の効果により優れるという観点から、200~2,000であることが好ましく、400~800であることがより好ましい。
【0051】
本発明において、活性水素化合物(例えば、上記ポリエーテルテトラオールのようなポリオール等)の重量平均分子量は、溶媒THF(テトラヒドロフラン)を使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値とすることができる。本発明における活性水素化合物の重量平均分子量の測定方法及び測定条件は以下のとおりである。
【0052】
(活性水素化合物の重量平均分子量の測定方法及び測定条件)
GPC:LC Solution(SHIMAZU製)
検出器:SPD-20A(SHIMAZU製)
カラム:商品名Shim-pack GPC-801(SHIMAZU製)を2本直列させる
溶媒:テトラヒドロフラン
温度:40℃
流速:0.5ml/min
濃度:2mg/ml
標準試料:ポリスチレン
【0053】
ポリエーテルテトラオールの含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、上記活性水素化合物全量中の20質量%以下が好ましく、1~10質量%がより好ましい。
【0054】
・モノエーテルポリオール
上記活性水素化合物がポリエーテルポリオールを含む場合、上記活性水素化合物は更にモノエーテルポリオールを含むことができる。
モノエーテルポリオールは、複数のヒドロキシ基と、少なくとも1個のエーテル結合とを有する化合物である。ただし、モノエーテルポリオールにおいてエーテル結合はポリエーテル骨格を形成しない。
モノエーテルポリオールは、1分子当たり、3~4個のヒドロキシ基を有することが好ましい。
モノエーテルポリオールは、1分子当たり、1~4個のエーテル結合を有することができる。
【0055】
モノエーテルポリオールとしては、例えば、下記式(5)で表される化合物が挙げられる。
【化2】
式(5)中、R
56~R
59はそれぞれ独立にプロピレン基及び/又はエチレン基を表し、R
50は炭素数2~10のアルキレン基を表し、a~dはそれぞれ独立に1~2を表す。a~dのうち少なくとも1つは2である。
【0056】
上記炭素数2~10のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、テトラメチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、オクチレン基、デシレン基が挙げられる。上記炭素数2~10のアルキレン基は、エチレン基が好ましい。
【0057】
モノエーテルポリオールの重量平均分子量は、本発明の効果により優れるという観点から、100~1,000であることが好ましく、200~500であることがより好ましい。
【0058】
モノエーテルポリオールの含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、上記活性水素化合物全量中の0~10質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。
【0059】
(モル比B/A)
本発明の接着剤が有する第1液中のウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基のモル数(A)と、本発明の接着剤が有する第2液中の活性水素化合物が有する活性水素のモル数(B)のモル比であるB/Aは、本発明の効果により優れるという観点から、0.1以上1.0未満であることが好ましく、0.2~0.5がより好ましい。
【0060】
<セルロースナノファイバー>
本発明において、第2液はセルロースナノファイバー(CNF)を含む。
【0061】
セルロースナノファイバーの太さは、本発明の効果により優れるという観点から、100nm以下が好ましく、3~10nmがより好ましい。
セルロースナノファイバーの長さは、本発明の効果により優れるという観点から、0.5~50μmが好ましい。
【0062】
セルロースナノファイバーの太さについて、湿潤したセルロースナノファイバーをろ過し脱溶剤して、微細繊維シートを得て、液体窒素中で凍結乾燥し、走査型電子顕微鏡(SEM)で倍率100~10000倍で観察を行った。上記観察で観察された繊維50本の繊維幅の平均値を、セルロースナノファイバーの太さとできる。
セルロースナノファイバーの長さについて、上記と同様にセルロースナノファイバーを観察し、繊維50本の長さの平均値を、セルロースナノファイバーの長さとできる。
【0063】
CNFは、本発明の効果により優れるという観点から、官能基を有することが好ましく、上記官能基としてカルボキシ基を有することがより好ましい。上記カルボキシ基は、カルボキシイオン又は塩(例えばナトリウム塩)を形成してもよい。
CNFが官能基を有する場合、上記CNFは上記官能基以外に、セルロースに由来するヒドロキシ基及び/又はヒドロキシメチル基を有してもよい。
【0064】
CNFの製造方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。CNFが官能基を有する場合のセルロース繊維の製造方法としては、例えば、官能基を有さない原料セルロース(例えば、原料セルロース繊維)を用いて、従来公知の方法で、上記原料セルロースが有する水酸基の少なくとも一部又は全部を、上記官能基に置換する方法が挙げられる。
【0065】
<セルロースナノファイバーの含有量>
本発明において、セルロースナノファイバーの含有量は、上記水の含有量に対して、0.1質量%以上1.5質量%以下である。
セルロースナノファイバーの含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、上記水の含有量に対して、0.1~1.2質量%であることが好ましい。
【0066】
CNFの形態としては、例えば、CNFと水とを含む混合物が挙げられる。
本発明において、CNFが上記のような混合物である場合、上記のセルロースナノファイバーの含有量は、上記混合物中の正味のセルロースナノファイバーの含有量を意味する。
【0067】
<カーボンブラック及び/又は無機系フィラー>
本発明において、第1液、第2液は、それぞれ独立に、カーボンブラック及び/又は無機系フィラーを含む。なお、上記無機系フィラーからカーボンブラックを除く。
【0068】
(カーボンブラック)
第1液、第2液が、それぞれ独立に含みうるカーボンブラックは特に制限されない。例えば、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace)、HAF(High Abrasion Furnace)、FEF(Fast Extruding Furnace)、GPF(General Purpose Furnace)、SRF(Semi-Reinforcing Furnace)が挙げられる。
【0069】
(無機系フィラー)
第1液、第2液が、それぞれ独立に含みうる無機系フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、マイカ等が挙げられる。無機系フィラーは、表面処理されていてもよい。上記表面処理は特に制限されない。
【0070】
第1液、第2液が、それぞれ独立に無機系フィラーを含む場合、上記無機系フィラーは、本発明の効果により優れるという観点から、炭酸カルシウム及び/又はシリカを含むことが好ましい。
【0071】
上記第1液、上記第2液は、本発明の効果により優れるという観点から、それぞれ独立に、上記カーボンブラック、並びに、上記無機系フィラーとしての、炭酸カルシウム及びシリカからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。(つまり、上記第1液、上記第2液は、本発明の効果により優れるという観点から、それぞれ独立に、カーボンブラック、炭酸カルシウム、及び、シリカからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。)
【0072】
第1液は、本発明の効果により優れるという観点から、カーボンブラック及び無機系フィラーを含むことが好ましく、カーボンブラック及び炭酸カルシウムを含むことがより好ましい。
【0073】
第1液がカーボンブラックを含む場合、上記カーボンブラックの含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、第1液中の10~30質量%が好ましい。
第1液が無機系フィラーを含む場合、上記無機系フィラーの含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、第1液中の10~30質量%が好ましい。
第1液がカーボンブラック及び無機系フィラーを含む場合も、カーボンブラックの含有量は上記と同様であり、無機系フィラーの含有量は上記と同様である。
【0074】
第2液は、本発明の効果により優れるという観点から、無機系フィラーを含むことが好ましく、炭酸カルシウム及び/又はシリカを含むことがより好ましく、炭酸カルシウム及びシリカを含むことが更に好ましい。
第2液が無機系フィラーを含む場合、上記無機系フィラーの含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、第1液中の10~35質量%が好ましい。
第2液において、カーボンブラックの含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、第2液中の0~30質量%が好ましい。
【0075】
(触媒)
第1液、第2液は、本発明の効果により優れるという観点から、それぞれ独立に、更に、触媒を含むことが好ましい。
上記触媒は、第1液中のウレタンプレポリマーと第2液中の活性水素化合物又は水との反応を促進することができる。
また、第1液、第2液は、本発明の効果により優れるという観点から、それぞれ独立に、触媒として、第3級アミン化合物、及び、スズ系又はビスマス系金属錯体を含むことが好ましい。
【0076】
・第3級アミン化合物
第3級アミン化合物は、第3級アミノ基(窒素原子に3個の炭素原子が結合し、上記窒素原子は水素原子と結合しない)を有する化合物である。
第3級アミン化合物としては、例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2-メチルトリエチレンジアミン、ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含む化合物等が挙げられる。
【0077】
第3級アミン化合物は、本発明の効果により優れるという観点から、ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含むことが好ましい。
ジモルフォリノジエチルエーテル構造は、ジモルフォリノジエチルエーテルを基本骨格とする構造である。
ジモルフォリノジエチルエーテル構造において、モルフォリン環が有する水素原子が置換基で置換されていてもよい。置換基は特に制限されない。例えば、アルキル基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。
【0078】
ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含むアミン系触媒としては、例えば、下記式(9)で表される化合物が挙げられる。
【化3】
上記式(9)中、R
1、R
2はそれぞれ独立にアルキル基であり、m、nはそれぞれ独立に0、1又は2である。
ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含むアミン系触媒としては、具体的には例えば、ジモルフォリノジエチルエーテル(DMDEE)、ジ(メチルモルフォリノ)ジエチルエーテル、ジ(ジメチルモルフォリノ)ジエチルエーテルが挙げられる。
第3級アミン化合物は、本発明の効果により優れるという観点から、ジモルフォリノジエチルエーテル(DMDEE)及び/又は2-メチルトリエチレンジアミンを含むことが好ましい。
【0079】
(スズ系金属錯体)
スズを有する触媒としてのスズ系金属錯体は、例えば、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、オクチル酸スズのようなスズのカルボン酸エステルが挙げられる。
【0080】
(ビスマス系金属錯体)
ビスマスを有する触媒としてのビスマス系金属錯体は、例えば、オクタン酸ビスマス(具体的には例えばビスマストリオクテート)のようなビスマスのカルボン酸エステルが挙げられる。
【0081】
第1液は、本発明の効果により優れるという観点から、第3級アミン化合物、及び、ビスマス系金属錯体を含むことが好ましく、ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含むアミン系触媒、及び、ビスマス系金属錯体を含むことがより好ましく、DMDEE及びビスマス系金属錯体を含むことが更に好ましい。
【0082】
第2液は、本発明の効果により優れるという観点から、第3級アミン化合物、及び、スズ系金属錯体を含むことが好ましく、2-メチルトリエチレンジアミン及びジブチルスズジラウレートを含むことがより好ましい。
【0083】
第1液が触媒を含有する場合、上記触媒の含有量は適宜選択できる。第1液が触媒を含有する場合、上記触媒の含有量は、例えば、第1液全量中の1質量%以下とすることができる。第2液が触媒を含有する場合についての第2液全量中の触媒の含有量も同様である。
【0084】
(他の任意成分)
本発明の接着剤は、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、更に添加剤を含有することができる。
上記添加剤としては、例えば、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、接着付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤などが挙げられる。
上記添加剤の含有量、又は、上記添加剤を第1液若しくは第2液の何れに添加するかは、適宜選択することができる。
【0085】
・可塑剤
可塑剤としては、例えば、ジイソノニルフタレート(DINP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0086】
(製造方法)
本発明の接着剤の製造方法は、特に限定されず、例えば、上記第1液に含まれる成分、上記第2液に含まれる成分を、それぞれ別の容器に入れて、各容器内を窒素ガス雰囲気下で混合する方法により製造することができる。
【0087】
本発明の接着剤の使用方法としては上記第1液と上記第2液とを混合して使用すればよい。上記第1液と上記第2液とを混合する方法は特に制限されない。例えば、従来公知の方法が挙げられる。
第1液と第2液との混合比(第1液:第2液の質量比)は、本発明の効果により優れるという観点から、10:0.5~2.0が好ましい。
【0088】
(基材)
本発明の接着剤を適用することができる基材としては、例えば、プラスチック、ガラス、ゴム、金属等が挙げられる。
基材は、オレフィン樹脂を含む基材が好適に挙げられる。
オレフィン樹脂を含む基材は、オレフィン樹脂と、充填剤との混合物から得られる基材であってもよい。上記充填剤としては、例えば、炭素繊維、ガラスフィラーのようなガラス、タルク、炭酸カルシウム又はアルミナが挙げられる。
【0089】
プラスチックは、例えば、単独重合体、共重合体、水素添加物であってもよい。ゴムも同様である。
【0090】
具体的なプラスチックとしては例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンプロピレン共重合体、COP(シクロオレフィンポリマー)、COC(シクロオレフィンコポリマー)のようなオレフィン樹脂;
ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル樹脂;
ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA樹脂);ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;アセテート樹脂;ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂);ポリアミド樹脂が挙げられる。
上記COCは、例えば、テトラシクロドデセンとエチレン等のオレフィンとの共重合体のようなシクロオレフィンコポリマーを意味する。
また、上記COPは、例えば、ノルボルネン類を開環重合し、水素添加して得られる重合体のようなシクロオレフィンポリマーを意味する。
プラスチックは、難接着性樹脂であってもよい。
【0091】
基材は表面処理がなされていてもよい。表面処理としては、例えば、フレーム処理、コロナ処理、イトロ処理が挙げられる。上記各表面処理の方法は特に制限されない。例えば従来公知の方法が挙げられる。
【0092】
本発明の接着剤を基材に適用する方法は特に制限されない。例えば、従来公知の方法が挙げられる。
【0093】
本発明の接着剤は、第2液に含まれる水、更に含有してもよい触媒等によって硬化することができる。本発明の接着剤を、例えば、5~90℃、相対湿度(RH)5~95%の条件下で硬化させてもよい。
【0094】
(用途)
本発明の接着剤の用途としては、例えば、ダイレクトグレージング剤、自動車用シーラント、建築部材用シーラントが挙げられる。
【実施例】
【0095】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0096】
<2液ウレタン系接着剤の製造>
(第1液)
下記第1表の第1液欄の各成分を同表に示す組成(質量部)で、撹拌機を用いて混合した。得られた混合物を第1液とした。
【0097】
(第2液)
下記第1表の第2液欄の各成分を同表に示す組成(質量部)で、撹拌機を用いて混合した。得られた混合物を第2液とした。
なお、第2液の「水の含有量に対する正味のCNFの含有量(質量%)」欄について、上記「水の含有量」は、第2液に添加された水と、セルロースナノファイバー(CNF)含有物に含まれる水との合計含有量である。
【0098】
・初期第2液
上記のとおり得られた各第2液を初期第2液とした。
・貯蔵後第2液
各初期第2液を40℃の条件下に6か月置く貯蔵試験を行い、貯蔵後第2液を得た。
【0099】
<<第2液に関する評価>>
上記のとおり得られた初期第2液、貯蔵後第2液について、後述のように<第2液のチクソ性>を評価した。結果を第1表に示す。
上記のとおり得られた貯蔵後第2液について、後述のように<第2液の液成分のブリードアウト>を評価した。結果を第1表に示す。
【0100】
<第2液のチクソ性>
(チクソ性の評価方法)
上記のとおり得られた、各初期第2液について、BS型粘度計、No.7ローターを使用して、25℃の条件下で、回転速度1rpm及び10rpmでの粘度を測定し、上記測定結果から1rpm粘度/10rpm粘度の比を求めた。
【0101】
(チクソ性の評価基準)
上記初期第2液のチクソ性について、上記1rpm粘度/10rpm粘度の比が6.5以上であった場合を「初期チクソ性が優れる」と評価し、これを「○」と表示した。
上記1rpm粘度/10rpm粘度の比が6.5未満であった場合を「初期チクソ性が悪い」と評価し、これを「×」と表示した。
【0102】
貯蔵後第2液についても、上記の初期第2液と同様に粘度測定を行い、上記のチクソ性の評価基準と同様の基準で評価した。
【0103】
(第2液のチクソ性の低下の抑制の評価基準)
初期第2液の1rpm粘度/10rpm粘度の比、及び、貯蔵後第2液の1rpm粘度/10rpm粘度の比が両方とも6.5以上であった場合、第2液のチクソ性の低下を抑制できたと評価した。
上記のように両者の比が共に6.5以上であった場合、初期第2液の1rpm粘度/10rpm粘度の比と、貯蔵後第2液の1rpm粘度/10rpm粘度の比との差が小さいほど、第2液のチクソ性の低下をより抑制できたと評価した。
一方、貯蔵後第2液の1rpm粘度/10rpm粘度の比が6.5未満であった場合、第2液のチクソ性の低下を抑制できなかったと評価した。
なお、初期第2液の1rpm粘度/10rpm粘度の比、及び、貯蔵後第2液の1rpm粘度/10rpm粘度の比が両方とも6.5未満であった場合、そもそも第2液のチクソ性が悪く、第2液のチクソ性の低下を抑制できなかったと評価した。
【0104】
<第2液の液成分のブリードアウト>
上記貯蔵試験後の貯蔵後第2液を目視で観察した。
(第2液の液成分のブリードアウトの評価基準)
貯蔵後第2液の表面に液成分のブリードアウトが見られなかった場合、これを「○」と表示した。
貯蔵後第2液の表面に液成分のブリードアウトが見られた場合、これを「×」と表示した。
【0105】
(第1液と第2液の混合)
次に、上記のとおり製造された第1液と、上記のとおり製造された第2液とを、第1表の「第1液:第2液混合比(質量比)」欄に示す混合比で混合し、2液ウレタン系接着剤の混合物を得た。
なお、上記混合比で混合した場合の、第1液中のウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基のモル数(A)と、第2液中の活性水素化合物が有する活性水素のモル数(B)のモル比:B/Aを、第1表の「モル比B/A」欄に合わせて示す。
【0106】
<試験体の作製>
(初期試験体)
表面処理(コロナ処理)された、タルクを含むポリプロピレン樹脂(商品名TSOP#5、プライムポリマー社製。幅25mm、長さ100mm、厚さ3mm)に、プライマー(商品名RC-50E、横浜ゴム社製)を用いてプライマー処理を施した基材を1枚用意した。
次いで、上記基材のプライマー処理を施した面に、上記の2液ウレタン系接着剤の混合物を、幅8mm、長さ100mm、高さ12mmの三角ビードとなるように塗布した後、離型紙を載せ、接着剤層が3mm厚さとなるように接着剤層を平らにした。
その後、20℃、65%RHの条件下で3日間置いて、初期試験体を作製した。
【0107】
(熱老化後試験体)
・熱老化試験
各初期試験体を90℃の条件下に366時間置く熱老化試験を行い、熱老化後試験体を得た。
【0108】
(熱水老化後試験体)
・熱水老化試験
各初期試験体を90℃の温水に366時間浸漬する熱水老化試験を行い、熱水老化後試験体を得た。
【0109】
<接着性の評価>
上記のとおり製造された各試験体について、下記の方法により接着性を評価した。結果を第1表に示す。
(手剥離試験)
上記のとおり作製した、各試験体について、JASO規格(規格番号 M338-89)に準じて、各試験体から2液ウレタン系接着剤による接着剤層を剥離する手剥離試験を行い、各試験体の破壊状態を目視で確認した。
【0110】
・初期接着性の評価基準
上記初期接着試験体の手剥離試験後の破壊状態について、CF率(接着面全体に対する凝集破壊(CF)の面積の割合。単位%)を評価した。
【0111】
・・「初期接着性が非常に優れる」
本発明において、初期試験体のCF率が80%以上であった場合を「初期接着性が非常に優れる」と評価し、これを「◎」と表示した。
・・「初期接着性がやや優れる」
上記CF率が60%以上80%未満であった場合を「初期接着性がやや優れる」と評価し、これを「○」と表示した。
・・「初期接着性がやや悪い」
上記CF率が40%以上60%未満であった場合を「初期接着性がやや悪い」と評価し、これを「△」と表示した。
・・「初期接着性が非常に悪い」
上記CF率が40%未満であった場合を「初期接着性に非常に悪い」と評価し、これを「×」と表示した。
【0112】
熱老化後試験体の接着性(熱老化後の接着性)についても、上記の初期接着性と同様に手剥離試験を行い、上記の初期接着性の評価基準と同様の基準で評価した。
熱水老化後試験体の接着性(熱水老化後の接着性)についても、上記の初期接着性と同様に手剥離試験を行い、上記の初期接着性の評価基準と同様の基準で評価した。
【0113】
(老化後の接着性の評価基準)
熱老化後の接着性、及び、熱水老化後の接着性の評価結果がいずれも○以上(CF率60%以上)であった場合、老化後の接着性に優れると評価した。
一方、熱老化後の接着性、又は、熱水老化後の接着性の評価結果の少なくとも一方又は両方が、△以下(CF率60%未満)であった場合、老化後の接着性が悪いと評価した。
【0114】
【0115】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
((第1液))
・ウレタンプレポリマー含有物:水酸基価56mgKOH/gのポリオキシプロピレンジオール267g(商品名エクセノール2020、AGC社製)、及び、水酸基価28mgKOH/gのポリオキシプロピレントリオール519g(商品名エクセノール3030、AGC社製)に可塑剤としてアジピン酸ジオクチル210gを加え、さらに4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(商品名スミジュール44S、住化コベストロウレタン社製)110gを加えて、80℃で5時間反応させて、ウレタンプレポリマー及び上記可塑剤を含むウレタンプレポリマー含有物を得た。上記ウレタンプレポリマー含有物に含まれるウレタンプレポリマーは、末端にイソシアネート基を有する。上記ウレタンプレポリマー含有物中のイソシアネート基含有量は1.36質量%であった。
【0116】
・カーボンブラック:商品名ニテロン♯200、新日化カーボン社製
・炭酸カルシウム1:重質炭酸カルシウム。商品名SL-100、竹原化学工業社製。比表面積0.8m2/g
【0117】
・可塑剤:ジイソノニルフタレート(DINP)、ジェイプラス社製
【0118】
・第3級アミン化合物1:ジモルフォリノジエチルエーテル(DMDEE)、商品名UCAT-660M、サンアプロ社製
・ビスマス系金属錯体:ビスマストリオクテート。商品名ネオスタンU-600、日東化成社製。
【0119】
((第2液))
(活性水素化合物)
・3官能ポリエーテルポリオール:ポリオキシプロピレントリオール。商品名プレミノール7001K、AGC社製。1分子中にヒドロキシ基を3個有する。室温(23℃)条件下で液状である。
【0120】
・4官能ポリエーテルポリオールポリオール:商品名エクセノール450ED、AGC社製。1分子中にヒドロキシ基を4個有する、下記式(4)で表される化合物。重量平均分子量550。室温(23℃)条件下で液状である。
【化4】
式(4)中、R
6~R
9はそれぞれ独立にプロピレン基を表し、R
10はエチレン基を表し、a~dはそれぞれ独立に1~10を表す。a~dのうち少なくとも1つは3以上である。
【0121】
・モノエーテルポリオール:商品名アデカポリエーテルBM-34、アデカ社製。1分子中にヒドロキシ基を4個有する、下記式(5)で表される化合物。重量平均分子量280。室温(23℃)条件下で液状である。
【化5】
式(5)中、R
56~R
59はそれぞれ独立にプロピレン基及び/又はエチレン基を表し、R
50はエチレン基を表し、a~dはそれぞれ独立に1~2を表す。a~dのうち少なくとも1つは2である。
【0122】
・水:蒸留水
【0123】
・セルロースナノファイバー(CNF)含有物:商品名レオクリスタI-2SP、第一工業製薬社製。CNF含有量2質量%。カルボキシ基(カルボキシ基はカルボキシイオン又は塩となっていてもよい)で変性されたCNFと水の混合物。CNFの太さは3nm、CNFの長さは1μmである。
【0124】
・炭酸カルシウム2:脂肪酸で表面処理された炭酸カルシウム。商品名カルファイン200、丸尾カルシウム社製
・親水性シリカ:商品名レオロシールQS102S、トクヤマ社製
【0125】
・第3級アミン化合物2:2?メチルトリエチレンジアミン(メチルダブコ)。エアプロダクツジャパン社製
・スズ系金属錯体:ジブチルスズジラウレート。ネオスタンU-100、日東化成社製
【0126】
第1表に示す結果から明らかなように、セルロースナノファイバーを含有しない比較例1は、第2液における液成分のブリードアウト及び第2液のチクソ性の低下を抑制することができなかった。比較例1の貯蔵後第2液について、上述のとおり、貯蔵後第2液の表面に液成分のブリードアウトが観察された。上記のブリードアウトした液成分をガスクロマトグラフィー(GC)で分析した結果、液成分には、水、及び、4官能ポリエーテルポリオールが含まれていたことが分かった。
セルロースナノファイバーの含有量が所定の範囲を超える比較例2は、第2液のチクソ性が悪く、第2液のチクソ性の低下を抑制することができず、得られる硬化物の老化後の接着性が悪かった。
【0127】
これに対して、本発明の接着剤は、第2液における液成分のブリードアウト及び第2液のチクソ性の低下を抑制することができ、得られる硬化物の老化後の接着性が優れた。