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特許7273082自閉症スペクトラム障害および関連する症候を治療するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】自閉症スペクトラム障害および関連する症候を治療するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/741 20150101AFI20230502BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20230502BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230502BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230502BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
A61K35/741
A61K35/747
A61P25/00
A61P1/00
A61P1/04
A61P43/00 121
A61K9/48
A61K9/50
A61K9/20
A61K9/14
A61K9/19
A61K47/10
A61K47/18
A61K47/20
A61K47/26
A61K47/46
【請求項の数】 23
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021043502
(22)【出願日】2021-03-17
(62)【分割の表示】P 2018512841の分割
【原出願日】2016-05-23
(65)【公開番号】P2021100946
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】62/165,556
(32)【優先日】2015-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504318142
【氏名又は名称】アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ アリゾナ ステート ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】507407168
【氏名又は名称】リージェンツ オブ ザ ユニヴァーシティー オブ ミネソタ
(73)【特許権者】
【識別番号】517396180
【氏名又は名称】フィンチ セラピューティクス ホールディングス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・アダムズ
(72)【発明者】
【氏名】ローザ・クラジマルニーク-ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】デ-ウク・カン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ジェイ・サドウスキー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・コールツ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ジェイ・ボロディー
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/197562(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/036182(WO,A1)
【文献】特表2015-503913(JP,A)
【文献】特表2013-507394(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0252775(US,A1)
【文献】国際公開第2014/078911(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/176774(WO,A1)
【文献】特表2013-537531(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0266539(US,A1)
【文献】Journal of Digestive Diseases (2014) vol.15, Suppl.1, p.118-119(PO-288)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/741
A61K 35/747
A61P 25/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする対象における自閉症スペクトラム障害(ASD)またはASDに関連する胃腸(GI)症候の治療において使用するための医薬組成物であって、
前記治療が前記対象に以下の、
i 前記医薬組成物であって、前記医薬組成物が、定型発達の健康なヒト提供者のふん便からのふん便細菌の群生を含み、前記ふん便細菌の群生が、ふん便から選択されずに得られる、前記医薬組成物、および、
ii Lactobacillus属の細菌を含む単離細菌
を経口投与する工程を含む、
医薬組成物。
【請求項2】
治療を必要とする対象における自閉症スペクトラム障害(ASD)またはASDに関連する胃腸(GI)症候の治療において使用するための医薬組成物であって、
前記治療が前記対象に前記医薬組成物を経口投与する工程を含み、
前記医薬組成物が、
(i) 定型発達の健康なヒト提供者のふん便から抽出されるふん便細菌の群生であって、前記ふん便細菌の群生が、ふん便から選択されずに得られる、ふん便細菌の群生、および、
(ii) Lactobacillus属の細菌を含む単離細菌、
を含む、
医薬組成物。
【請求項3】
前記治療は、抗生物質で前記対象を前処置する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記抗生物質がバンコマイシンである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記治療がASDの症候の重症度を減少させることを含み、前記症候の重症度の減少が、小児自閉症評価尺度(CARS)、小児自閉症評価尺度2-標準形式(CARS2-ST)、小児自閉症評価尺度2-高機能(CARS2-HF)、異常行動チェックリスト(ABC)、Vineland適応行動尺度(VABS)、Vineland適応行動尺度第二版(VABS-II)、対人応答性尺度(SRS)、保護者全般印象(PGI)、およびそれらの組合わせからなる群から選択された評価システムを用いて得られた測定に少なくとも部分的に基づいている、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記治療が、胃腸症候評価尺度(GSRS)を用いて得られた測定に基づいたASDに関連する胃腸(GI)症候の重症度を減少させる、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
カプセル、マイクロカプセル、タブレット、ジェルタブ、ピル、粉末、および顆粒からなる群から選択される固体剤型の形態として投与される、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
ポリエチレングリコール、脱脂乳、エリトリトール、アラビトール、ソルビトール、グルコース、フルクトース、アラニン、グリシン、プロリン、スクロース、ラクトース、リボース、トレハロース、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される抗凍結剤を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記抗凍結剤が、トレハロースである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記治療が、少なくとも10週間連続して投与される、請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物が前記単離細菌を含み、および、前記単離細菌が、前記ふん便細菌の群生中のLactobacillusの個体数と比較して、前記医薬組成物中のLactobacillusの個体数を増強する、請求項1、および、3から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記ふん便細菌の群生が、前記単離細菌を含まない、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記単離細菌が、ヒト提供者の前記ふん便に由来しない、請求項1から12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記単離細菌が、ヒトの提供者と異なるヒトに由来する、請求項1から13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記単離細菌が、培養された細菌を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記Lactobacillus属の細菌が、Lactobacillus leichmanniiを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記医薬組成物および前記単離細菌が、カプセル、マイクロカプセル、タブレット、ジェルタブ、ピル、粉末、または顆粒中にともに製剤化される、請求項1、および3から16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物および前記単離細菌が、前記対象に別々に投与される、請求項1、および、3から16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記対象が18歳未満のヒトである、請求項1から18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記対象が大人のヒトである、請求項1から18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記ASDは、自閉症障害、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)、および、アスペルガー症候群からなる群から選択される、請求項1から20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記対象が、腹痛、逆流、消化不良、過敏性腸症候群、慢性的持続性下痢、下痢、鼓腸、便秘、および交互の便秘/下痢からなる群から選択される1つまたは複数の胃腸症候を示す、請求項1から21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記1つまたは複数の胃腸症候が、便秘である、請求項22に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2015年5月22日に出願された、米国仮特許出願第62/165,556号に対する優先権利益を主張し、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、自閉症スペクトラム障害(ASD)を治療する方法に関する。自閉症スペクトラム障害(ASD)は、社会的な対話およびコミュニケーションの広範囲にわたる異常、ならびに制限された関心および反復的な行動によって特徴付けられる複雑な神経発達的病態である。ASDは、典型的に、生涯の最初の3年の間に現れ、特徴的な症候または行動特性として現れる。現在、ASDの診断には、自閉症障害、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)、およびアスペルガー症候群等、かつて個別に診断されていたいくつかの病態が含まれる。現在、これらの病態のすべてが、アメリカ精神医学会の精神障害の診断と統計マニュアル第五版(DSM-V)に記載されている自閉症スペクトラム障害についての診断基準により包含されている。
【0003】
これらの原則的な診断基準内に見られるスペクトラムの症候に加えて、ASDの個人は、知的障害、てんかん、ならびに不安および気分障害を含む広範囲の神経性共存症、ならびに高セロトニン血症、免疫調節異常、および胃腸障害(例えば、慢性便秘、下痢、腹痛、および胃食道逆流)を含む広範囲の非神経性共存症を見せる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国仮特許出願第62/165,556号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
今日までに、自閉症スペクトラム障害の中心的な症候を減少させるか、または取り除くためのFDAに認可された治療は存在しない。自閉症を治療するためのFDAにより認可されているたった2つの薬剤である、リスペリドン(Risperdal(登録商標)の名で販売されている)およびアリピプラゾール(Abilify(登録商標)の名で販売されている)は、ASDを罹患している対象の被刺激性を減少させるために特に示されている。したがって、自閉症スペクトラム障害に関連する症候の重症度および発症率を治療および減少させるための改善された方法についての技術上の必要性が未だある。この出願は、ASD患者の腸内細菌叢を置換、回復、または再均衡させるために有益なふん便細菌を移植することによりASD患者(GI症候を有するか、または有しない)を治療するための方法である、本明細書で細菌叢移植療法(MTT)と称される治療を提供している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、治療を必要とする対象における自閉症スペクトラム障害(ASD)を治療するための方法であって、ASDを治療するのに有効な量の医薬組成物を対象に投与することを含み、医薬組成物が、ふん便細菌調製物を含み、対象が、治療の開始前と比較して、かつ小児自閉症評価尺度(CARS)、小児自閉症評価尺度2-標準形式(CARS2-ST)、小児自閉症評価尺度2-高機能(CARS2-HF)、異常行動チェックリスト(ABC)、対人応答性尺度(SRS)、およびVineland適応行動尺度第二版(VABS-II)からなる群から選択された評価システムに基づいて、治療後にASD症候の重症度における少なくとも10%の減少を示す、方法を提供している。
【0007】
抗生物質を自閉症のヒト対象に投与することと、自閉症のヒト対象に腸管洗浄を受けさせることと、ふん便細菌叢調製物をヒト対象に投与することと、の工程を含むか、またはこれらから本質的になる、自閉症のヒト対象における自閉症の重症度を減少させる方法であって、ヒト対象が、本方法の開始前と比較して当該方法の後に自閉症の症候の重症度における有意な減少を示す、方法も、本明細書に提供されている。
【0008】
治療を必要とするヒト対象における自閉症スペクトラム障害(ASD)を治療するための方法であって、ふん便細菌またはふん便細菌叢を含む治療用組成物をヒト対象に投与することを含むか、またはこれから本質的にからなり、ヒト対象が、治療の開始前に評価される重症度に関連するCARS、CARS2-ST、CARS2-HF、ABC、SRS、またはVABS-IIによって評価されたとき、自閉症の症候の重症度における少なくとも10%または20%の減少を示し、ヒト対象が、胃腸(GI)症候をさらに示し、GI症候の重症度が、治療の開始前に評価される重症度に関連する胃腸症候評価尺度(GSRS)によって評価されたとき、少なくとも40%減少される、方法が、本明細書にさらに提供されている。
【0009】
治療を必要とするヒト対象における自閉症スペクトラム障害(ASD)を治療するための方法であって、抗生物質を自閉症のヒト対象に経口投与することと、ヒト対象に腸管洗浄を受けさせることと、ふん便細菌またはふん便細菌叢を含む治療用組成物をヒト対象に投与することと、の工程を含むか、またはこれらから本質的にからなり、ヒト対象が、治療の開始前に評価される重症度に関連するCARS、CARS2-ST、CARS2-HF、ABC、SRS、またはVABS-IIによって評価されたとき、自閉症の症候の重症度における少なくとも10%または20%の減少を示し、ヒト対象が、胃腸(GI)症候をさらに示し、GI症候の重症度が、治療の開始前に評価される重症度に関連するGSRSによって評価されたとき、少なくとも40%減少される、方法がまた、本明細書に提供されている。
【0010】
別の態様において、本開示はまた、治療を必要とする対象における自閉症スペクトラム障害(ASD)の治療のための薬剤の製造中におけるふん便細菌またはふん便細菌叢調製物の使用であって、対象が、治療の開始前と比較して、かつ小児自閉症評価尺度(CARS)、小児自閉症評価尺度2-標準形式(CARS2-ST)、小児自閉症評価尺度2-高機能(CARS2-HF)、異常行動チェックリスト(ABC)、対人応答性尺度(SRS)、およびVineland適応行動尺度第二版(VABS-II)からなる群から選択された評価システムに基づいて、治療後にASD症候の重症度における少なくとも10%の減少を示す、使用を開示している。
【0011】
本開示はまた、治療を必要とするヒト対象における自閉症スペクトラム障害(ASD)の治療におけるふん便細菌またはふん便細菌叢調製物の使用であって、ヒト対象が、胃腸(GI)症候をさらに示し、治療が、抗生物質をヒト対象に投与することと、ヒト対象に腸管洗浄を受けさせることと、ふん便細菌またはふん便細菌叢を含む治療用組成物をヒト対象に投与することと、を含むか、またはこれらから本質的にからなり、ヒト対象が、治療の開始前に評価される重症度に関連するCARS、CARS2-ST、CARS2-HF、ABC、SRS、またはVABS-IIによって評価されたとき、12週未満の治療後に自閉症の症候の重症度における少なくとも10%または20%の減少を示し、GI症候の重症度が、治療の開始前に評価される重症度に関連するGSRSによって評価されたとき、12週未満の治療後に少なくとも40%減少される、使用を開示している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、試験の参加者についての胃腸症候評価尺度(Gastrointestinal Symptom Rating Scale)(GSRS)データを示している。
図2図2は、MTT治療の前(「前」)および後(「後」)に収集されたGSRSの下位尺度データを示している。
図3図3は、参加者の平均的なGSRS得点および平均的なPGI-R得点の両方の継続的な改善を示している。
図4図4は、MTT試験の参加者についての異常行動チェックリスト(ABC)データを示している。
図5図5は、治療後8週で収集されたGSRS得点を示している。
図6図6は、年齢とCARS得点の改善の程度との間の関連性の欠如を証明するグラフである。
図7図7は、治療の終了時のPGI-R得点が年齢と関連性がほとんどないことを証明するグラフである。
図8図8は、CARSについての改善の程度と最初のGSRS得点との間の関連性の欠如を証明するグラフである。
図9-1】図9(パネルa~eを含む)は、MTTにより治療された18人のASDを罹患している子どものGIおよび中心的なASD関連の症候の改善を記載している。2週間バンコマイシンにより、その後8週間、ふん便細菌組成物の投与により、子どもを治療し、治療の終了後8週間、単一の経過観察評価を行った。パネルa、GSRS得点における変化。GSRSは、1(症候なし)~7(非常に重度の不快感)のリッカート尺度について得点されている。パネルb、PGI-R得点(全般的な自閉症/関連する症候)における変化。PGI-Rは、基準値と比較して、-3(非常に悪化)、-2(悪化)、-1(わずかに悪化)、0(変化なし)、1(わずかに改善)、2(改善)、3(非常に改善)で得点されている。パネルc、前治療、治療後、治療後8週間でのCARS評価。パネルd、前治療、治療後、治療後8週間での合計SRS得点。パネルe、前治療、治療後、治療後8週間での合計ABC得点。データ点は18人の個人の参加者を表し、いくつかのデータ点は、箱ひげ図において重複している。星印(箱ひげ図の上部で)は、個人(各時間点で)が前治療(0週)以降、有意に減少したかどうかを示している。ns:有意でない、:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001(両側対t検定)。GSRS得点において50%未満の改善があった2人の参加者は、無反応者として定義され、灰色で色分けされている。
図9-2】上記図9-1に同じ。
図9-3】上記図9-1に同じ。
図9-4】上記図9-1に同じ。
図9-5】上記図9-1に同じ。
図10図10(パネルa~cを含む)は、GSRS構成要素および患者における改善の分析結果を提供している。a、基準値、MTT治療の終了、および治療後8週でのGSRSの下位得点。b、2週間超平均化された毎日のふん便記録の結果。c、ABC対時間の下位尺度。:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001(両側対t検定)。
図11図11は、GSRSとPGI-Rとの間の(図10、パネルaおよびbに示されているデータに基づく)相関を証明している。ピアソン相関検定は、r=-0.56およびp<0.001を示した。
図12図12は、異なる下位尺度についての、かつ基準値で測定されたすべての下位尺度の平均についての、4カ月の観察の終了後におけるVineland発育年齢(長年)を示している。平均的な暦年齢は、治療の開始時において10.9歳であったため、基準値において、特に言語および社会的(対人)能力の中心的な自閉症領域等のすべての領域において遅れがあったことに留意されたい。:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001(両側対t検定)。
図13図13は、治療の終了(10週)時のPGI-Rの下位得点を示している。尺度は、3(非常に改善)~2(改善)~1(わずかに改善)~0(変化なし)~-3(非常に悪化)にわたる。得点は、治療なしの8週後(18週)と同様である。データ点は、18人の個人の参加者を表し、いくつかのデータ点は、箱ひげ図において重複している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
別段定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、この開示が属する当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0014】
この明細書で述べられているすべての公開、特許、および特許出願は、各個々の公開、特許、または特許出願が参照により組み込まれると具体的かつ個々に示された場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「a」、「an」、および「the」という単数形は、文脈が明らかに別段の規定をしていない限り、複数の指示対象を含む。本明細書で使用される場合、例えば、「アレイの実質的にすべてのペプチド」という語句における「実質的に」という用語は、アレイのペプチドの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%、および最も好ましくは少なくとも99.9%を指す。「実質的に」という用語の他の使用は、同様の定義を含む。
【0016】
ある範囲の値が提供される場合、その範囲の上限および下限とその述べられた範囲内の任意の他の述べられたまたは介在する値との間の各介在する値が、本開示内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、より小さい範囲内に独立的に含まれ得、また、述べられている範囲内の任意の具体的に除外された制限の対象となる本開示内に包含される。述べられている範囲が制限の1つまたは両方を含む場合、これらの含まれる制限のいずれかまたは両方を除外する範囲がまた、本開示内に含まれる。
【0017】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、(i)病気、疾患、もしくは病態を完全にもしくは部分的に抑制すること、例えば、その進行を止めること、(ii)病気、疾患、もしくは病態を完全にもしくは部分的に緩和すること、例えば、病気、疾患、および/もしくは病態の退行を生じさせること、または(iii)病気、疾患、および/もしくは病態を罹患しやすい可能性があるが、まだ罹患しているとは診断されていない患者に、病気、疾患、もしくは病態が生じることを完全にもしくは部分的に防ぐことを指す。同様に、「治療」とは、治療的処置および予防的手段の両方を指す。自閉症スペクトラム障害の文脈において、「治療する」および「治療」は、自閉症スペクトラム障害に関連する1つ以上の症候を緩和すること、改善すること、その発症を遅らせること、その進行を抑制すること、またはその重症度を減少させることを包含する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「対象」とは、限定されないが、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、例えばラットおよびマウス等の齧歯動物、ならびに例えばサル等の霊長類を含むヒトまたは動物であり得る。好ましい対象は、ヒト対象である。ヒト対象は、小児、大人、または高齢者の対象であり得る。
【0019】
本明細書で使用される場合、「細菌叢」および「微生物叢」とは、真核生物、古細菌、細菌、およびウイルス(細菌ウイルス(すなわち、ファージ)を含む)を含む、持続的かつ一時的の両方で対象の体内または体表に住む細菌の群生を指す。「ふん便細菌叢」または「ふん便細菌叢調製物」とは、対象のふん便内に存在するか、または対象のふん便から調製された細菌の群生を指す。非選択的なふん便細菌叢は、選択せずに提供者のふん便試料から得られ、かかるふん便試料内に見られる微生物構成成分および個体群構造に実質的に類似する、ふん便細菌の群生または混合物を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「治療的に有効な量」または「薬学的に活性な用量」とは、名付けられた病気、疾患、または病態を治療する際に有効な組成物の量を指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「単離された」または「精製された」とは、(1)最初に生成されたときに関連する構成要素の少なくともいくつかから分離され(本質的であろうと、または実験的設定であろうと)、かつ/または(2)ヒトの手で生成、調製、精製、および/または製造された、細菌または他の実体もしくは物質を指す。単離されるか、または精製された細菌を、最初に関連した他の構成要素の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%以上から分離することができる。
【0022】
本明細書で使用される場合、細菌または任意の他の有機体もしくは実体に関する「非病原性」という用語は、有機体または実体を含有する宿主有機体の病気、疾患、または病態を生じさせるか、または影響を与えることができない、任意のかかる有機体または実体を含む。
【0023】
本明細書に使用される場合、「芽胞」または「芽胞の個体群」は、同じ細菌の、典型的に発芽および増殖の可能な栄養型より、熱および殺菌剤等の環境的な影響に耐性がある、一般的に生存可能な細菌(または他の単細胞有機体)を含む。「芽胞形成物」または「芽胞を形成することができる」細菌は、遺伝子、および好適な環境条件下で芽胞を生成するための他の必要な能力を含有するこれらの細菌である。
【0024】
本明細書に使用される場合、「コロニー形成ユニット」(cfu)とは、所与の試料中の生存可能な微生物細胞の推定数を指す。cfuの数を、試料中の生存可能な細菌細胞の数を判定するための標準的な方法として、寒天培地上のコロニーの数を数えることによって評価することができる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「生存可能な」とは、繁殖する能力を保持していることを意味する。細菌の個体群の生存能力を、細胞膜の完全性の機能として観察することができる。損傷した膜を有する細胞は、死滅しているか、または死滅しかかっていると考えられ、無傷の細胞は、生存していると考えられる。例えば、SYTO9およびプロピデュームイオダイドを使用して、生存している細菌および死滅した細菌を染色および分化する。Stocks、Cytometry A、2004 Oct;61(2):189-95を参照されたい。また、細胞生存能力を、分子生存能力分析、例えば、生存可能な細胞に関連する核酸を不活性化細胞に関連する核酸から分化することができるPCRに基づくアプローチを用いて評価することもできる。CangelosiおよびMescheke,Appl Environ Microbiol、2014 Oct;80(19):5884-5891を参照されたい。
【0026】
本明細書で使用される場合、「シャノンの多様度指数」とは、Hがシャノンの多様性指数であり、Rが群生内の種の合計数であり、pがi番目の種から構成されるRの比率である、
【数1】
を用いて所与の群生内に存在する種の個体数および均一性の主要因となる多様様性指数を指す。より高い値は、多様で等しく分布された群生を示し、0の値は、1つのみの種が所与の群生内に存在することを示している。さらなる参照について、Shannon and Weaver、(1949)The mathematical theory of communication、The University of Illinois Press,Urbana.117pp.を参照されたい。
【0027】
本明細書で使用される場合、「抗生物質」は、細菌を死滅させ、細菌の成長を抑制するか、または細菌の生存能力を減少させることによって、細菌の感染を治療および/または予防するために使用される物質を指す。
【0028】
自閉症スペクトラム障害(ASD)は、社会的な対話およびコミュニケーション、制限された関心、ならびに反復的な行動機能障害によって特徴付けられる神経発達的な疾患である。自閉スペクトラム症の個人は、軽度から重度までの幅広い様々な程度および種類の機能障害を経験する。利益を最大にし、症候の重症度を減少させるために、早期の検出および介入が奨励されるが、任意の年齢の個人が、症候を減少させ、技能および能力を増大させることができる介入および治療から利益を得ることができる。本明細書に記載されている方法に対する適切な対象は、制限なく、自閉症スペクトラム障害を罹患しているか、または罹患していると疑われると診断されたヒトを含む。いくつかの事例において、本明細書に提供されている方法に対する適切な対象は、ASDを発症するリスクが増加している(例えば、中程度または高リスク)と考えられる。いくつかの事例において、対象は、DSM-Vに記載されているASDについての診断基準を満たす病態を有していると診断されている。他の事例において、対象は、自閉症障害、アスペルガー障害、または特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)の確立したDSM-IV診断を有する。
【0029】
本明細書に提供されている方法は、制限されないが、視覚刺激に応答する眼追跡の変化、皮膚透過率、および/またはEEG測定、社会的な対話への関与および応答の困難さ、言語的および非言語的コミュニケーションの障害、反復的な行動、知的障害、運動協調の困難さ、注意障害、睡眠障害、および胃腸障害等の身体的な健康障害を含む、限定なく含む、ASDの指標における検出可能な改善を生じるか、または達成することを目的としている。
【0030】
対象の社会的およびコミュニケーションの発達を評価するためのいくつかのスクリーニング手段が、当該技術分野で知られているため、コミュニケーション技能、社会的な対話、ならびに自閉症スペクトラム障害の行動特徴の制限、反復、および常同的なパターンにおける機能障害の重症度の変化をスクリーニングおよび検出する際の補助として使用することができる。評価は、網羅的な認知的および言語的検査と共に、神経学的および遺伝学的評価を含むことができる。自閉症の診断および評価のために特に開発されているさらなる評価基準には、自閉症診断面接改訂版(ADI-R)、自閉症診断観察検査(ADOS-G)、および小児自閉症評価尺度(CARS)が含まれる。
【0031】
CARSに従って、15個の領域、すなわち、対人関係、模倣、情動反応、身体の使用、物体の使用、変化への適応、視覚反応、聴覚反応、味覚、臭覚、および触覚反応および使用、恐怖心、言語的コミュニケーション、非言語的コミュニケーション、活動、知的反応のレベルおよび整合性、ならびに全体的な印象の各々における1~4の尺度について対象を評価する。
【0032】
小児自閉症評価尺度-2、すなわち、CARS-2として知られているCARSの第二版は、Schopler et al.(Childhood Autism Rating Scale-Second edition(CARS2):Manual.Los Angeles:Western Psychological Services,2010)によって開発された。元のCARSは、主に共存性知的機能を有する個人により開発されたものであり、ASDを有するより高機能な個人を正確に特定しないとの批判があった。CARS-2は、より若いか、またはより低い機能の個人(現在では「標準形式」についてのCARS2-STと改名されている)と共に使用するための元のCARS形態を保持していたが、より高い機能の個人(「高機能」についてのCARS2-HFと改名されている)と共に使用するための個々の評価尺度、およびCARS2STおよびCARS2-HF評価を作成するための実用性を有する未得点情報収集尺度(「保護者および介護者に対するアンケート」、すなわち、CARS2-QPC)も含む。
【0033】
本明細書に提供されている方法に従った治療の前、中、または後の症候の重症度の変化を評価するために有用な別の症候評価手段は、異常行動チェックリスト(ABC)である。Aman et al.,Psychometric characteristics of the aberrant behavior checklist.Am J Ment Defic.1985 Mar;89(5):492-502を参照されたい。ABCは、様々な設定で子どもおよび大人の問題行動を評価および分類するために使用される症候評価チェックリストである。ABCは、5つの下位尺度、すなわち、(1)被刺激性/興奮、(2)無気力/社会的離脱、(3)常同行動、(4)多動/不服従、および(5)不適切な発話に分解される58個の項目を含む。
【0034】
本発明者らは、自閉症の個人が、併存胃腸障害の存在または不存在に関わらず、定型発達の個人と比較して腸内細菌の種がより少ないことを観察した。本発明者らはまた、腸内細菌の種の多様性が、治療を必要とする患者の自閉症の症候を治療する助けとなることを発見した。一態様において、この出願は、治療を必要とする対象における自閉症スペクトラム障害(ASD)を治療するための方法であって、ASDを治療するのに有効な量の医薬組成物を対象に投与することを含み、医薬組成物が、ふん便細菌調製物を含み、対象が、治療の開始前と比較して、治療後にASD症候の重症度における少なくとも10%の減少を示す、方法を提供している。一態様において、ASD症候の重症度は、小児自閉症評価尺度(CARS)によって評価される。別の態様において、ASD症候の重症度は、小児自閉症評価尺度2-標準形式(CARS2-ST)によって評価される。さらなる態様において、ASD症候の重症度は、小児自閉症評価尺度2-高機能(CARS2-HF)によって評価される。一態様において、ASD症候の重症度は、異常行動チェックリスト(ABC)によって評価される。別の態様において、ASD症候の重症度は、対人応答性尺度(SRS)によって評価される。別の態様において、ASD症候の重症度は、Vineland適応行動尺度第二版(VABS-II)によって評価される。一態様において、治療は、ASD患者におけるリーター国際動作性尺度(Roid,G.H.,&Miller,L.J.(1997).Leiter International Performance Scale-Revised.Wood Dale,IL:Stoeltingを参照されたい)に基づいて、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の改善を生じる。別の態様において、治療の少なくとも8、16、24、32、40、50、60、または80週後に、リーター得点の改善が測定され、治療前のリーター得点と比較される。
【0035】
当業者は、前述の評価システムがASD関連の社会的および認知的症候を評価するための単なる例示的なツールであることを理解している。中心的なASD関連の症候を評価するために、他の同様のツールを使用するか、または設計することができる。例えば、一態様において、治療は、自閉症治療評価チェックリスト(ATEC)に基づいて、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の改善を生じる。Rimland and Edelson:Autism Treatment Evaluation checklist:Statistical Analyses.Autism Research Institute 2000を参照されたい。別の態様において、治療は、広汎性発達障害の行動一覧(PDD-BI)に基づいて、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の改善を生じる。Cohen et al.,The PDD Behavior Inventory:a rating scale for assessing response to intervention in children with pervasive developmental disorder.J Autism Dev Disord.2003 33(1):31-45を参照されたい。また別の態様において、治療は、自閉症尺度の重症度(SAS)に基づいて、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の改善を生じる。Adams et al.,The severity of autism is associated with toxic metal body burden and red blood cell glutathione levels.J Toxicol.2009,2009:532640を参照されたい。さらなる態様において、自閉症関連の症候の改善または症候の重症度の減少は、Aman et al.,Outcome Measures for Clinical Drug Trials in Autism,CNS Spectr.9(1):36-47(2004)に述べられているシステムまたは尺度のうちのいずれか1つに基づいて評価される。さらなる態様において、自閉症関連の症候の改善または症候の重症度の減少は、表1に列挙されている症候の特徴付けシステムのうちのいずれか1つに基づいて評価される。一態様において、前述のシステムのうちのいずれか1つによる症候の改善は、治療の少なくとも8、16、24、32、40、50、60、または80
週後に測定され、治療前のリーター得点と比較される。一態様において、前述のシステムのうちのいずれか1つによる症候の改善は、治療の少なくとも2、4、6、8、10週間以上の治療の中止後に測定され、治療前の測定値と比較される。
【0036】
【表1-1】
【表1-2】
【0037】
一態様において、治療は、ASD症候の重症度がCARS、CARS2-ST、CARS2-HF、ABC、SRS、およびVABS-IIからなる群から選択された方法によって評価される治療の開始前と比較して、治療の2週間以上後に、ASD症候の重症度における少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の減少を達成している。一態様において、治療は、ASD症候の重症度がCARS、CARS2-ST、CARS2-HF、ABC、SRS、およびVABS-IIからなる群から選択された方法によって評価される治療の開始前と比較して、治療の4週間以上後に、ASD症候の重症度における少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の減少を達成している。一態様において、治療は、ASD症候の重症度がCARS、CARS2-ST、CARS2-HF、ABC、SRS、およびVABS-IIからなる群から選択された方法によって評価される治療の開始前と比較して、治療の6週間以上後に、ASD症候の重症度における少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の減少を達成している。一態様において、治療は、ASD症候の重症度がCARS、CARS2-ST、CARS2-HF、ABC、SRS、およびVABS-IIからなる群から選択された方法によって評価される治療の開始前と比較して、治療の8週間以上後に、ASD症候の重症度における少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の減少を達成している。
【0038】
別の態様において、治療は、ASD症候の重症度がCARS、CARS2-ST、CARS2-HF、ABC、SRS、およびVABS-IIからなる群から選択された方法によって評価される治療の開始前と比較して、治療の8週間以上後に、ASD症候の重症度における10%~20%、10%~30%、10%~40%、10%~50%、10%~60%、10%~70%、10%~80%、10%~90%、20%~30%、20%~40%、20%~50%、20%~60%、20%~70%、20%~80%、20%~90%、30%~40%、30%~50%、30%~60%、30%~70%、30%~80%、30%~90%、40%~50%、40%~60%、40%~70%、40%~80%、40%~90%、50%~60%、50%~70%、50%~80%、または50%~90%の減少を達成している。別の態様において、治療は、ASD症候の重症度がCARS、CARS2-ST、CARS2-HF、ABC、SRS、およびVABS-IIからなる群から選択された方法によって評価される治療の開始前と比較して、治療の8週間以上後に、ASD症候の重症度における10%~90%、20%~80%、30%~70%、または40%~60%の減少を達成している。別の態様において、治療は、ASD症候の重症度がCARS、CARS2-ST、CARS2-HF、ABC、SRS、およびVABS-IIからなる群から選択された方法によって評価される治療の開始前と比較して、治療の12週間以上後に、ASD症候の重症度における10%~90%、20%~80%、30%~70%、または40%~60%の減少を達成している。別の態様において、治療は、治療の開始前と比較して、ASD症候の重症度がCARS、CARS2-ST、CARS2-HF、ABC、SRS、およびVABS-IIからなる群から選択された方法によって評価される治療の18週間以上後に、ASD症候の重症度における10%~90%、20%~80%、30%~70%、または40%~60%の減少を達成している。別の態様において、治療は、ASD症候の重症度がCARS、CARS2-ST、CARS2-HF、ABC、SRS、およびVABS-IIからなる群から選択された方法によって評価される治療の開始前と比較して、治療の24週間以上後に、ASD症候の重症度における10%~90%、20%~80%、30%~70%、または40%~60%の減少を達成している。
【0039】
一態様において、治療は、ASD症候の重症度における少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の減少を達成しており、ASD症候の重症度がCARSによって評価される治療の中止後、少なくとも8、12、16、20、24、または28週間、症候の重症度の減少が実質的に維持されている。一態様において、治療は、ASD症候の重症度における少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の減少を達成しており、ASD症候の重症度がCARS2-STによって評価される治療の中止後、少なくとも8、12、16、20、24、または28週間、症候の重症度の減少が実質的に維持されている。一態様において、治療は、ASD症候の重症度における少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の減少を達成しており、ASD症候の重症度がCARS2-HFによって評価される治療の中止後、少なくとも8、12、16、20、24、または28週間、症候の重症度の減少が実質的に維持されている。一態様において、治療は、ASD症候の重症度における少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の減少を達成しており、ASD症候の重症度がABCによって評価される治療の中止後、少なくとも8、12、16、20、24、または28週間、症候の重症度の減少が実質的に維持されている。一態様において、治療は、ASD症候の重症度における少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の減少を達成しており、ASD症候の重症度がSRSによって評価される治療の中止後、少なくとも8、12、16、20、24、または28週間、症候の重症度の減少が実質的に維持されている。一態様において、治療は、ASD症候の重症度における少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の減少を達成しており、ASD症候の重症度がVABS-IIによって評価される治療の中止後、少なくとも8、12、16、20、24、または28週間、症候の重症度の減少が実質的に維持されている。
【0040】
一態様において、治療を受けるASD対象は、治療の開始前に胃腸(GI)症候を示していない。別の態様において、治療を受けるASD対象は、治療の開始前に1つ以上のGI症候を示している。一態様において、治療を受けるASD対象は、治療の開始前と比較して治療後に、GI症候の重症度における少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の減少を示している。一態様において、GI症候の重症度は、胃腸症候評価尺度(GSRS)によって評価される。別の態様において、治療は、GI症候の重症度がGSRSによって評価される治療の開始前と比較して治療の8週以上後に、ASD患者のGI症候の重症度における20%~30%、20%~40%、20%~50%、20%~60%、20%~70%、20%~80%、20%~90%、30%~40%、30%~50%、30%~60%、30%~70%、30%~80%、30%~90%、40%~50%、40%~60%、40%~70%、40%~80%、40%~90%、50%~60%、50%~70%、50%~80%、または50%~90%の減少を達成している。
【0041】
一態様において、症候の重症度の減少(例えば、ASD症候、GI症候、または両方について)は、治療の間進行しているか、または治療の中止または完了後に維持される。一態様において、症候の重症度の減少(例えば、ASD症候、GI症候、または両方について)は、治療中または治療後の特定の時点、例えば、治療の開始後約2、4、6、8、12、18、24、32、40、48週、または治療の中止または完了後約2、4、6、8、12、18、24、32、40、48週で評価される。
【0042】
一態様において、方法は、ふん便細菌調製物を含む医薬組成物の投与前に、抗生物質を対象に投与することをさらに含む。別の態様において、方法は、対象に腸管洗浄を受けさせることをさらに含む。
【0043】
別の態様において、本明細書で使用されている医薬組成物は、Prevotella、Desulfovibrio、Copprococcus、およびClostridiumからなる群から選択された1つ以上の生存可能な、非病原性微生物で補完された、非選択的かつ実質的に完全なふん便細菌叢を含む。別の態様において、本明細書で使用されている医薬組成物は、所定の微生物叢の合成ふん便組成物を含む。別の態様において、本明細書で使用されている医薬組成物は、正常で健康なヒトのふん便微生物叢に似ており、耐抗生物質個体群を含まない、釣り合った内容物中の生存可能な微生物叢の調製物を含む、所定の微生物叢を含む。別の態様において、本明細書で使用されている医薬組成物は、カプセル、タブレット、粉末、および顆粒からなる群から選択された固形剤形の形態として投与される。別の態様において、本明細書で使用されている医薬組成物は、耐酸カプセルとして配合される。
【0044】
別の態様において、ヒト対象における自閉症スペクトラム障害を治療する方法が、本明細書に提供されている。例示的な態様において、本方法は、抗生物質をヒト対象に投与すること、ヒト対象に腸管洗浄を受けさせること、および精製されたふん便細菌叢をヒト対象に投与すること等、下記の工程を含むか、または本質的にからなり、自閉症スペクトラム障害は、ヒト対象において治療される。
【0045】
例示的な態様において、ASDの治療は、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、または8つ以上のASDに特徴的な症候を緩和すること、改善すること、その発症を遅らせること、その進行を抑制すること、またはその重症度を減少させることを含む。一態様において、治療は、1つ以上の社会的および認知的な中心的なASD関連の症候を緩和し、改善し、その発症を遅らせ、その進行を抑制し、またはその重症度を減少させる。いくつかの態様において、症候(複数可)は、(i)同一性に関する固執または変化への抵抗、(ii)表現要求の困難、(iii)正常な応答言語の代わりの繰り返し言葉もしくは語句、(iv)他人には明らかでない理由のための笑い、泣き、悲嘆主張、(v)孤独もしくは離れていることを好む、(vi)癇癪、(vii)他人との交流の困難、(viii)抱きしめたりもしくは抱きしめられたりすることを望まない、(ix)アイコンタクトをほとんどもしくは全くしない、(x)通常の授業方法に対する無反応、(xi)奇妙な遊びを続ける、(xii)痛みに対する明らかな過敏性または鈍い感受性、(xiii)危険性への真の恐怖が少ないか、またはない、(xiv)顕著な身体的過剰活動もしくは極端な活動不足、(xv)不均一な全体的な/微細な運動能力、ならびに/または(xvi)言葉合図に対する無反応からなる群から選択される。いくつかの態様において、症候(複数可)は、強迫行動、儀礼的行動、制限行動、常同行動、同一性、または自傷からなる群から選択される。本明細書に記載されている方法は、前述の症候のいずれかの組み合わせの改善を達成することができる
【0046】
例示的な態様において、ヒト対象は、ASD評価尺度に従って評価される自閉症の症候の重症度における有意な減少を示している。いくつかの事例において、例えば、ヒト対象は、本方法の開始前に評価される重症度に関する小児自閉症評価尺度(CARS)により評価される自閉症の症候の重症度における少なくとも10%または20%の減少を示している。
【0047】
本明細書に提供されている方法による治療に好適な対象は、本明細書に提供されている方法の開始前に、胃腸障害の症候を示していないか、または報告していない場合がある。いくつかの事例において、例えば、本明細書に提供されている方法による治療に好適なヒト対象は、治療の開始前、または治療の開始時に、胃腸症候を示していない。一態様において、本明細書で治療されるASD対象は、腹痛、逆流、消化不良、過敏性腸症候群、慢性的持続性下痢、下痢、鼓腸、便秘、および交互の便秘/下痢からなる群から選択された1つ以上または2つ以上のGI症候を示している。
【0048】
胃腸障害の症候の存在または不存在に関わらず、本明細書に提供されている方法に好適なヒト対象は、典型的に、定型発達のヒトと比較して本治療の方法前に、腸内細菌の種が有意に少ない。いくつかの事例において、本方法によって治療されるヒト対象は、定型発達のヒトと比較して精製されたふん便細菌叢製剤の投与前に、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%未満の腸内細菌の種を示している。
【0049】
自閉症のヒト対象における自閉症の重症度を減少させるための方法がまた、提供されている。例示的な態様において、本方法は、非吸収性抗生物質を自閉症のヒト対象に経口投与すること、自閉症のヒト対象に腸管洗浄を受けさせること、および定型発達のヒト提供者から精製されたふん便細菌叢をヒト対象に投与すること等、下記の工程を含むか、または本質的にからなり、ヒト対象は、本方法の開始前と比較して本方法後に、小児自閉症評価尺度(CARS)によって評価される自閉症の症候の重症度における有意な減少を示している。いくつかの事例において、ヒト対象は、本方法の開始前に評価される重症度に関する小児自閉症評価尺度(CARS)により評価される自閉症の症候の重症度における少なくとも10%または20%の減少を示している。
【0050】
一態様において、本明細書に記載されている方法において使用されるふん便細菌叢調製物は、提供者の全体的または実質的に完全な細菌叢を含む。一態様において、ふん便細菌叢調製物は、非選択的なふん便細菌叢を含む。別の態様において、ふん便細菌叢調製物は、生の非病原性ふん便細菌の、単離されているか、または精製された個体群を含む。さらなる態様において、ふん便細菌叢調製物は、一人の提供者からの非選択的かつ実質的に完全なふん便細菌叢調製物を含む。別の態様において、本明細書で使用されている治療用組成物は、生の非病原性の合成細菌または生の非病原性の、精製されたか、または抽出されたふん便細菌叢の混合物を含む。
【0051】
一態様において、ふん便細菌叢調製物の調製物は、エタノール処理、洗浄処理、加熱処理、照射、および超音波処理、またはそれらの組み合わせからなる群から選択された処理を含む。一態様において、ふん便細菌叢調製物の調製物は、エタノール処理、洗浄処理、加熱処理、照射、および超音波処理からなる群から選択された処理を含まない。一態様において、ふん便細菌叢調製物の調製物は、選別、ふるい、密度勾配、濾過、クロマトグラフィー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された分離工程を含む。一態様において、ふん便細菌叢調製物の調製物は、選別、ふるい、密度勾配、濾過、およびクロマトグラフィーからなる群から選択された1つ以上の分離工程を必要としない。一態様において、ふん便細菌叢調製物は、無生物を実質的に含まない。一態様において、ふん便細菌叢調製物は、残存繊維、DNA,ウイルスコート物質、および非生存的物質からなる群から選択された無細胞物質を実質的に含まない。一態様において、ふん便細菌叢調製物は、ふん便細菌叢の提供者からの真核細胞を実質的に含まない。
【0052】
一態様において、本開示は、ASDの治療を必要とする対象を治療するための方法であって、本明細書に記載されている薬学的に活性な用量の治療用組成物を対象に投与することを含む、方法を提供している。一態様において、本開示は、ASDの治療を必要とする対象を治療するための方法であって、本明細書に記載されている薬学的に活性な用量の治療用組成物を対象に毎日投与することを含む、方法を提供している。一態様において、治療用組成物は、少なくとも連続2日間少なくとも1日1回、治療を必要とする対象に投与される。一態様において、治療用組成物は、少なくとも連続3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15日間少なくとも1日1回投与される。別の態様において、治療用組成物は、少なくとも連続1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12日間少なくとも1日1回投与される。一態様において、治療用組成物は、最大で連続4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20日間または週間少なくとも1日1回投与される。別の態様において、治療用組成物は、最大で連続1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12週間または月間少なくとも1日1回投与される。さらなる態様において、治療用組成物は、対象の全体的な寿命の間または無制限の期間、慢性的に、少なくとも連続1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12月間または年間少なくとも1回投与される。
【0053】
一態様において、治療用組成物は、少なくとも連続2日間少なくとも1日2回、治療を必要とする患者に投与される。一態様において、治療用組成物は、少なくとも連続3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15日間少なくとも1日2回投与される。別の態様において、治療用組成物は、少なくとも連続1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12日間少なくとも1日2回投与される。一態様において、治療用組成物は、最大で連続4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20日間または週間少なくとも1日2回投与される。別の態様において、治療用組成物は、最大で連続1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12週間または月間少なくとも1日2回投与される。さらなる態様において、治療用組成物は、対象の全体的な寿命の間または無制限の期間、慢性的に、少なくとも連続1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12月間または年間少なくとも1日2回投与される。
【0054】
一態様において、治療用組成物は、少なくとも連続2日間少なくとも1日3回、治療を必要とする患者に投与される。一態様において、治療用組成物は、少なくとも連続3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15日間少なくとも1日3回、投与される。別の態様において、治療用組成物は、少なくとも連続1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12日間少なくとも1日3回、投与される。一態様において、治療用組成物は、最大で連続4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20日間または週間少なくとも1日3回、投与される。別の態様において、治療用組成物は、最大で連続1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12週間または月間少なくとも1日3回、投与される。さらなる態様において、治療用組成物は、対象の全体的な寿命の間または無制限の期間、慢性的に、少なくとも連続1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12月間または年間少なくとも1日3回、投与される。
【0055】
一態様において、本開示は、ASDの治療を必要とする対象を治療するための方法であって、生の非病原性の合成細菌混合物または生の非病原性の、精製されたか、または抽出されたふん便細菌叢を含む、薬学的に活性な用量の治療用組成物を対象に経口投与することを含み、用量は、少なくとも連続3日間または週間少なくとも1日1回または2回の投薬予定で投与される。別の態様において、用量は、1~12週、2~12週、3~12週、4~12週、5~12週、6~12週、7~12週、8~12週、9~12週、10~12週、1~2週、2~3週、3~4週、4~5週、5~6週、6~7週、7~8週、8~9週、9~10週、または10~11週の期間、少なくとも連続3日間または週間少なくとも1日1回、2回、または3回投与される、方法を提供している。
【0056】
一態様において、本明細書に記載されている医薬組成物を投与することによって、ASDの治療を必要とする対象を治療するための方法であって、第1の投薬予定に続いて第2の投薬予定を含む、方法を提供している。一態様において、第1の投薬予定は、治療または誘導用量を含む。一態様において、第1の投薬予定は、連続的な投薬予定を含む。別の態様において、第2の投薬予定は、薬学的に活性な用量の第1の投薬予定以下の維持用量を含む。別の態様において、第2の投薬予定は、少なくとも約2、4、6、8、10、12、18、24、36、48、72、または96月間続く。一態様において、第2の投薬予定は、治療される対象の全体的な寿命の間または無制限の期間、永久的に続く。一態様において、第2の投薬予定は、連続的な投薬予定である。別の態様において、第2の投薬予定は、断続的な投薬予定である。さらなる態様において、第2の投薬予定は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日の治療期間に続く、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日の残りの期間を含む、断続的な投薬予定である。別の態様において、第2の投薬予定は、第2の用量(例えば、維持用量)を1日おき、2日おき、または3、4、5、6、7、8日おきに投与することを含む。別の態様において、維持用量は、滴定によるか、または滴定なしに(または別様に、用量または投薬予定を変更する)延長された期間投与される。一態様において、第1および第2の投薬予定間の間隔は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12週である。別の態様において、第2の投薬予定(例えば、維持用量)は、第1の投薬予定(例えば、最初の治療用量)で使用される用量未満の約2、5、10、50、100、200、400、800、1000、5000倍以上の用量を含む。別の態様において、第2の投薬予定(例えば、維持投薬予定)は、第1の投薬予定(例えば、最初の治療投薬予定)以下の投薬頻度を有する。別の態様において、第2の投薬予定(例えば、維持投薬予定)は、第1の投薬予定(例えば、最初の治療投薬予定)より大きい投薬間隔を有する。
【0057】
一態様において、方法において使用される第1または第2の投薬予定は、週に1回、週に2回、または週に3回であり得る。「週に1回」という用語は、用量が週に1回、好ましくは各週の同じ日に投与されることを意味する。「週に2回」とは、用量が週に2回、好ましくは各週の期間の同じ2日に投与されることを意味する。「週に3回」とは、用量が週に3回、好ましくは各週の期間の同じ3日に投与されることを意味する。
【0058】
一態様において、治療を受ける対象は、疾患(例えば、ASD)をすでに罹患している対象である。疾患(例えば、ASD)を遺伝学的に罹患しやすいか、または罹患しやすい、臨床的に無症候のヒト対象への開示されている治療用組成物の投与はまた、臨床的な症候の発症の予防において有用である。ASDを遺伝学的に罹患しやすいか、または罹患しやすいヒト対象は、疾患(例えば、ASD)を発症しているか、または罹患している身近な家族または親近者を有するヒト対象であり得る。別の態様において、治療を受ける対象は、ASDが予防されるべき対象である。別の態様において、治療を受ける対象は、疾患(例えば、ASD)を罹患しやすいか、または影響を受けやすい。別の態様において、治療を受ける対象は、疾患(例えば、ASD)を有していると診断された対象である。一態様において、治療を受ける対象は、治療を必要とする患者である。
【0059】
一態様において、治療を受ける対象は、ヒト患者である。一態様において、患者は、男性患者である。一態様において、患者は、女性患者である。一態様において、患者は、早産新生児である。一態様において、患者は、正期新生児である。一態様において、患者は、新生児である。一態様において、患者は、乳児である。一態様において、患者は、幼児である。一態様において、患者は、幼い子どもである。一態様において、患者は、子どもである。一態様において、患者は、思春期のヒトである。一態様において、患者は、小児患者である。一態様において、患者は、高齢者の患者である。一態様において、ヒト患者は、約18、15、12、10、8、6、4、3、2、または1歳未満の子どもの患者である。別の態様において、ヒト患者は、大人の患者である。別の態様において、ヒト患者は、初老の患者である。さらなる態様において、ヒト患者は、約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95歳超の患者である。別の態様において、患者は、約1~5、2~10、3~18、21~50、21~40、21~30、50~90、60~90、70~90、60~80、または65~75歳である。一態様において、患者は、前記高齢者の患者(65~74歳)である。一態様において、患者は、中期高齢者の患者(75~84歳)である。一態様において、患者は、高齢者の患者(>85歳)である。
【0060】
一態様において、方法は、治療用組成物を、浣腸によるか、または肛門坐薬を用いて経口投与することを含む。一態様において、医薬組成物は、ジェルタブ、ピル、マイクロカプセル、カプセル、またはタブレットとして配合される。一態様において、治療用組成物は、腸溶性被覆カプセルまたはマイクロカプセル、耐酸カプセルまたはマイクロカプセルとして配合され、もしくは食物、食物添加物、乳製品、大豆製品、またはその誘導体、ゼリー、またはヨーグルトの一部として配合されるか、またはそれらと共に投与される。別の態様において、治療用組成物は、耐酸性の腸溶性被覆カプセルとして配合される。治療用組成物は、食物または飲料と組み合わせた販売用粉末として提供され得る。食物または飲料は、乳製品または大豆製品であり得る。別の態様において、食物または補助食品は、治療用組成物を含有する腸溶性被覆および/または耐酸性のマイクロカプセルを含有する。
【0061】
一態様において、治療用組成物は、液体培養を含む。別の態様において、治療用組成物は、凍結乾燥、粉砕、および粉末にされている。次に、治療用組成物は、生理食塩水、浣腸等として、点滴、溶解され得る。代替的に、粉末は、経口投与のために、腸溶性被覆および/または耐酸カプセルとしてカプセル封入されてもよい。これらのカプセルは、腸溶性被覆および/または耐酸性のマイクロカプセルの形態を取ってもよい。好ましくは、粉末を、飲料としての再構成のためか、または食物添加物としての再構成のために、口当たりの良い形態で提供することができる。さらなる態様において、食物は、ヨーグルトである。一態様において、粉末は、経鼻十二指腸注入を介して点滴されるように再構成されてもよい。
【0062】
別の態様において、治療用組成物は、液体、冷凍、フリーズドライ、噴霧乾燥、凍結乾燥、または粉末製剤にある。さらなる態様において、治療用組成物は、遅延または段階的腸溶性放出形態として配合される。別の態様において、治療用組成物は、賦形剤、生理食塩水、緩衝剤、緩衝剤、または液体グルコースセロビオース寒天(RGCA)培地を含む。
【0063】
一態様において、治療用組成物は、胃酸抑制剤、制酸剤、H2拮抗剤、プロトンポンプ阻害薬、またはそれらの組み合わせをさらに含む。一態様において、治療用組成物は、無生物を実質的に含まない。別の態様において、治療用組成物は、残存繊維、DNA、ウイルスコート物質、および非生存的物質からなる群から選択された無細胞物質を実質的に含まない。
【0064】
一態様において、治療用組成物は、抗凍結剤を含む。別の態様において、抗凍結剤は、ポリエチレングリコール、脱脂乳、エリトリトール、アラビトール、ソルビトール、グルコース、フルクトース、アラン、グリシン、プロリン、スクロース、ラクトース、リボース、トレハロース、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、またはそれらの組み合わせを含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる。
【0065】
別の態様において、治療用組成物は、リオプロテクタントを含む。一態様において、同じ物質または同じ物質の組み合わせが、抗凍結剤およびリオプロテクタントの両方として使用される。例示的なリオプロテクタントは、スクロースまたはトレハロース等の砂糖、グルタミン酸ナトリウムまたはヒスチジン等のアミノ酸、ベタイン等のメチルアミン、硫酸マグネシウム等のリオトロピック塩、例えば、グリセリン、エリトリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトール等の三価以上の糖アルコール等のポリオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プルロニック(登録商標)およびそれらの組み合わせを含む。一態様において、リオプロテクタントは、トレハロースまたはスクロース等の非還元糖である。一態様において、この段落および上の段落に述べられている1つ以上の物質から本質的になるか、またはそれからからなる、抗凍結剤またはリオプロテクタント。
【0066】
一態様において、凍結乾燥された製剤は、トレハロースを含む。一態様において、凍結乾燥された製剤は、2%~30%、3%~25%、4%~20%、5%~15%、6%~10%、2%~30%、2%~25%、2%~20%、2%~15%、または2%~10%のトレハロースを含む。一態様において、凍結乾燥された製剤は、少なくとも2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、または15%のトレハロースを含む。一態様において、凍結乾燥された製剤は、最大で2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、または15%のトレハロースを含む。一態様において、凍結乾燥された製剤は、約5%のトレハロースを含む。一態様において、凍結乾燥された製剤は、トレハロースおよびスクロースを含む。一態様において、凍結乾燥された製剤は、約1.5%~3.5%のスクロースおよび約0.5%~1.5% NaClを含む、約8%~12%のトレハロースを含む。
【0067】
一態様において、治療用組成物はまた、ポリオール、フラクトオリゴ糖(FOS)、オリゴフルクトース、イヌリン、ガラクトオリゴ糖(GOS)、キシロオリゴ糖(XOS)、ポリデキストロース、単糖類、タガトースおよび/またはマンノオリゴ糖からなる群から選択された前生物的栄養素を含むか、またはこれで補完される。
【0068】
一態様において、方法は、治療的な細菌または細菌叢組成物の投与前に対象を抗生物質組成物で前治療することをさらに含む。一態様において、抗生物質組成物は、リファブチン、クラリスロマイシン、クロファジミン、バンコマイシン、リファンピシン、ニトロイミダゾール、クロラムフェニコール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された抗生物質を含む。別の態様において、抗生物質組成物は、リファキシミン、リファマイシン誘導体、リファンピシン、リファブチン、リファペンチン、リファラジル、ビコザマイシン、アミノグリコシド、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、パロモマイシン、ベルダマイシン、ミュータマイシン、シソマイシン、ネチルマイシン、レティマイシン、カナマイシン、アズトレオナム、アズトレオナムマクロライド、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、ロキシスロマイシン、テリスロマイシン、アジスロマイシン、次サリチル酸ビスマス、バンコマイシン、ストレプトマイシン、フィダキソマイシン、アミカシン、アルベカシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロドストレプトマイシン、トブラマイシン、アプラマイシン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された抗生物質を含む。さらなる態様において、方法は、治療的な細菌または細菌叢組成物の投与前に、抗炎症薬で対象を前治療することをさらに含む。
【0069】
一態様において、すべての約200mgの医薬組成物が、薬理学的に活性な用量を含む。一態様において、すべての約75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、750、1000、1500、または2000mgの医薬組成物が、薬理学的に活性な用量を含む。
【0070】
一態様において、薬学的に活性なまたは治療的に有効な用量は、少なくとも約10、10、10、10、10、1010、1011、1012、または1013cfuを含む。別の態様において、薬学的に活性で治療的に有効な用量は、最大で約10、10、10、10、10、1010、1011、1012、または1013cfuを含む。さらなる態様において、薬理学的に活性で治療的に有効な用量は、10cfu~1014cfu、10cfu~1013cfu、1010cfu~1012cfu、10cfu~1014cfu、10cfu~1012cfu、10cfu~1011cfu、10cfu~1010cfu、1010cfu~1014cfu、1010cfu~1013cfu、1011cfu~1014cfu、1011cfu~1013cfu、1012cfu~1014cfu、および1013cfu~1014cfuからなる群から選択される。一態様において、医薬組成物は、約0.2、0.4、0.6、0.8または1.0グラムの単位質量、または約0.2、0.4、0.6、0.8または1.0ミリリットルの単位体積中に、前述の薬学的に活性であるか、または治療的に有効な用量を含む。
【0071】
一態様において、薬学的に活性であるか、または治療的に有効な用量は、少なくとも約10、10、10、10、10、1010、1011、1012、または1013個の細胞または芽胞を含む。別の態様において、薬学的に活性であるか、または治療的に有効な用量は、最大で合計約10、10、10、10、10、1010、1011、1012、または1013個の細胞または芽胞を含む。さらなる態様において、薬理学的に活性であるか、または治療的に有効な用量は、10~1014、10~1013、1010~1012、10~1014、10~1012、10~1011、10~1010、1010~1014、1010~1013、1011~1014、1011~1013、1012~1014、および1013~1014個の細胞または芽胞からなる群から選択される。一態様において、薬学的に活性であるか、または治療的に有効な用量の細胞数は、生細胞を対象とする。一態様において、医薬組成物は、約0.2、0.4、0.6、0.8または1.0グラムの単位質量、もしくは約0.2、0.4、0.6、0.8または1.0ミリリットルの単位体積中に、前述の薬学的に活性であるか、または治療的に有効な用量を含む。
【0072】
一態様において、本明細書に記載および使用されている治療用組成物は、Clostridium、Bacillus、Collinsella、Bacteroides、Eubacterium、Fusobacterium、Propionibacterium、Lactobacillus、Ruminococcus、Escherichia coli、Gemmiger、Desulfomonas、Peptostreptococcus、Bifidobacterium、Coprococcus、Dorea、およびMoniliaからなる群から選択された1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、または5つ以上の単離、精製、または培養された微生物を含む。
【0073】
一態様において、本明細書に記載されているふん便細菌叢調製物は、精製されたか、または再構成されたふん便細菌混合物を含む。一態様において、本明細書に記載および使用されているふん便細菌叢調製物は、Acidaminococcus、Akkermansia、Alistipes、Anaerotruncus、Bacteroides、Bifidobacterium、Blautia、Butyrivibrio、Clostridium、Collinsella、Coprococcus、Corynebacterium、Dorea、Enterococcus、Escherichia、Eubacterium、Faecalibacterium、Haemophilus、Holdemania、Lactobacillus、Moraxella、Parabacteroides、Prevotella、Propionibacterium、Raoultella、Roseburia、Ruminococcus、Staphylococcus、Streptococcus、Subdoligranulum、およびVeillonellaからなる群から選択された、1つ以上、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、または5つ以上の生のふん便微生物を含む。一態様において、ふん便細菌叢調製物は、Bacteroides fragilis ssp.vulgatus、Collinsella aerofaciens、Bacteroides fragilis ssp.thetaiotaomicron、Peptostreptococcus productus II、Parabacteroides distasonis、Faecalibacterium prausnitzii、Coprococcus eutactus、Peptostreptococcus productus I、Ruminococcus bromii、Bifidobacterium adolescentis、Gemmiger formicilis、Bifidobacterium longum、Eubacterium siraeum、Ruminococcus torques、Eubacterium rectale、Eubacterium eligens、Bacteroides eggerthii、Clostridium leptum、Bacteroides fragilis ssp.A、Eubacterium biforme、Bifidobacterium infantis、Eubacterium rectale、Coprococcus comes、Pseudoflavonifractor capillosus、Ruminococcus albus、Dorea formicigenerans、Eubacterium hallii、Eubacterium ventriosum I、Fusobacterium russi、Ruminococcus obeum、Eubacterium rectale、Clostridium ramosum、Lactobacillus leichmannii、Ruminococcus callidus、Butyrivibrio crossotus、Acidaminococcus fermentans、Eubacterium ventriosum、Bacteroides fragilis ssp.fragilis、Coprococcus catus、Aerostipes hadrus、Eubacterium cylindroides、Eubacterium ruminantium、Staphylococcus epidermidis、Eubacterium limosum、Tissirella praeacuta、Fusobacterium mortiferum I、Fusobacterium naviforme、Clostridium innocuum、Clostridium ramosum、Propionibacterium acnes、Ruminococcus flavefaciens、Bacteroides fragilis ssp.ovatus、Fusobacterium nucleatum、Fusobacterium mortiferum、Escherichia coli、Gemella morbillorum、Finegoldia magnus、Streptococcus intermedius、Ruminococcus lactaris、Eubacterium tenue、Eubacterium ramulus、Bacteroides clostridiiformis ssp.clostridliformis、Bacteroides coagulans、Prevotella oralis、Prevotella ruminicola、Odoribacter splanchnicus、およびDesuifomonas pigra.からなる群から選択された、1つ以上、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、または5つ以上の生のふん便微生物を含む。
【0074】
一態様において、本明細書に記載および使用されているふん便細菌叢調製物は、Acidaminococcus、Akkermansia、Alistipes、Anaerotruncus、Bacteroides、Bifidobacterium、Blautia、Butyrivibrio、Clostridium、Collinsella、Coprococcus、Corynebacterium、Dorea、Enterococcus、Escherichia、Eubacterium、Faecalibacterium、Haemophilus、Holdemania、Lactobacillus、Moraxella、Parabacteroides、Prevotella、Propionibacterium、Raoultella、Roseburia、Ruminococcus、Staphylococcus、Streptococcus、Subdoligranulum、およびVeillonellaからなる群から選択された、1つ以上、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、または5つ以上の生のふん便微生物を欠いているか、または実質的に含まない。一態様において、ふん便細菌叢調製物は、Bacteroides fragilis ssp.vulgatus、Collinsella aerofaciens、Bacteroides fragilis ssp.thetaiotaomicron、Peptostreptococcus productus II、Parabacteroides distasonis、Faecalibacterium prausnitzii、Coprococcus eutactus、Peptostreptococcus productus I、Ruminococcus bromii、Bifidobacterium adolescentis、Gemmiger formicilis、Bifidobacterium longum、Eubacterium siraeum、Ruminococcus torques、Eubacterium rectale、Eubacterium eligens、Bacteroides eggerthii、Clostridium leptum、Bacteroides fragilis ssp.A、Eubacterium biforme、Bifidobacterium infantis、Eubacterium rectale、Coprococcus comes、Pseudoflavonifractor capillosus、Ruminococcus albus、Dorea formicigenerans、Eubacterium hallii、Eubacterium ventriosum I、Fusobacterium russi、Ruminococcus obeum、Eubacterium rectale、Clostridium ramosum、Lactobacillus leichmannii、Ruminococcus callidus、Butyrivibrio crossotus、Acidaminococcus fermentans、Eubacterium ventriosum、Bacteroides fragilis ssp.fragilis、Coprococcus catus、Aerostipes hadrus、Eubacterium cylindroides、Eubacterium ruminantium、Staphylococcus epidermidis、Eubacterium limosum、Tissirella praeacuta、Fusobacterium mortiferum I、Fusobacterium naviforme、Clostridium innocuum、Clostridium ramosum、Propionibacterium acnes、Ruminococcus flavefaciens、Bacteroides fragilis ssp.ovatus、Fusobacterium nucleatum、Fusobacterium mortiferum、Escherichia coli、Gemella morbillorum、Finegoldia magnus、Streptococcus intermedius、Ruminococcus lactaris、Eubacterium tenue、Eubacterium ramulus、Bacteroides clostridiiformis ssp.clostridliformis、Bacteroides coagulans、Prevotella oralis、Prevotella ruminicola、Odoribacter splanchnicus、およびDesuifomonas pigra.からなる群から選択された、1つ以上、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、または5つ以上の生のふん便微生物を欠いているか、または実質的に含まない。
【0075】
別の態様において、治療用組成物は、ふん便微生物でさらに補完、混入、または強化されたふん便細菌叢を含む。一態様において、ふん便細菌叢は、Clostridium、Collinsella、Dorea、Ruminococcus、Coprococcus、Prevotella、Veillonella、Bacteroides、Bacillus、またはそれらの組み合わせの非病原性(または弱毒した病原性)細菌で補完される。別の態様において、治療用組成物は、Veillonellaceae、Firmicutes、Gammaproteobacteria、Bacteroidetes、またはそれらの組み合わせでさらに補完、混入、または強化されたふん便細菌叢を含む。別の態様において、治療用組成物は、ふん便細菌芽胞でさらに補完されたふん便細菌叢をさらに含む。一態様において、ふん便細菌芽胞は、Clostridium芽胞、Bacillus芽胞、または両方である。別の態様において、治療用組成物は、Bacteroides coprocola、Bacteroides plebeius、Bacteroides massiliensis、Bacteroides vulgatus、Bacteroides helcogenes、Bacteroides pyogenes、Bacteroides tectus、Bacteroides uniformis、Bacteroides stercoris、Bacteroides eggerthii、Bacteroides finegoldii、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides ovatus、Bacteroides acidifaciens、Bacteroides caccae、Bacteroides nordii、Bacteroides salyersiae、Bacteroides fragilis、Bacteroides intestinalis、Bacteroides coprosuis、Bacteroides distasonis、Bacteroides goldsteinii、Bacteroides merdae、Bacteroides forsythus、Bacteroides splanchnicus、Bacteroides capillosus、Bacteroides cellulosolvens、およびBacteroides ureolyticusからなる群から選択されたBacteroides種でさらに補完、混入、または強化された、ふん便細菌叢を含む。
【0076】
一態様において、治療用組成物は、ヒト、ウシ、乳用子牛、反芻動物、ヒツジ、ヤギ、またはシカからなる群から選択された対象からのふん便細菌叢を含む。別の態様において、治療用組成物を、ヒト、ウシ、乳用子牛、反芻動物、ヒツジ、ヤギ、またはシカからなる群から選択された対象に投与することができる。一態様において、治療用組成物は、実質的に、またはほとんど無臭である。
【0077】
一態様において、本明細書に提供されている治療用組成物は、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上、1.0以上、1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.7以上、1.8以上、1.9以上、2.0以上、2.1以上、2.2以上、2.3以上、2.4以上、2.5以上、3.0以上、3.1以上、3.2以上、3.3以上、3.4以上、3.5以上、3.6以上、3.7以上、3.8以上、3.9以上、4.0以上、4.1以上、4.2以上、4.3以上、4.4以上、4.5以上、または5.0以上のシャノンの多様度指数を含む、ふん便細菌叢調製物を含む。別の態様において、治療用組成物は、0.1~3.0、0.1~2.5、0.1~2.4、0.1~2.3、0.1~2.2、0.1~2.1、0.1~2.0、0.4~2.5、0.4~3.0、0.5~5.0、0.7~5.0、0.9~5.0、1.1~5.0、1.3~5.0、1.5~5.0、1.7~5.0、1.9~5.0、2.1~5.0、2.3~5.0、2.5~5.0、2.7~5.0、2.9~5.0、3.1~5.0、3.3~5.0、3.5~5.0、3.7~5.0、31.9~5.0、または4.1~5.0のシャノンの多様度指数を含む、ふん便細菌叢を含む。一態様において、シャノンの多様度指数は、門レベルで計算される。別の態様において、シャノンの多様度指数は、科レベルで計算される。一態様において、シャノンの多様度指数は、属レベルで計算される。別の態様において、シャノンの多様度指数は、種レベルで計算される。さらなる態様において、治療用組成物は、正常で健康なヒトふん便微生物叢に似ているもの中の釣り合った内容物中の微生物叢の調製物を含む。
【0078】
さらなる態様において、治療用組成物は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10の異なる科からのふん便細菌を含む。一態様において、本明細書に提供されている治療用組成物は、0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%以下のふん便から得られた非生体物質とふん便から得られた生体物質との間の重量比を含む、ふん便細菌叢を含む。別の態様において、本明細書に提供されている治療用組成物は、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%以下のふん便から得られた非生体物質とふん便から得られた生体物質との間の重量比を含む、ふん便細菌叢を含む。別の態様において、本明細書に提供されている治療用組成物は、2.0mm、1.0mm、0.5mm、0.25mm、0.212mm、0.180mm、0.150mm、0.125mm、0.106mm、0.090mm、0.075mm、0.063mm、0.053mm、0.045mm、0.038mm、0.032mm、0.025mm、0.020mm、0.01mm、または0.2mmのふるい、圧排、または粒子濾過径を有する、ふるい、カラム、または同様の選別装置を通過する、非生体物質の粒子および/またはふん便試料の生体物質の粒子を含む、それらからなる、またはそれらから本質的になる。「非生体物質」は、処理されたふん便物質に追加された抗凍結剤等の、例えば、薬学的に不活性な物質等の賦形剤を含まない。「生体物質」とは、ふん便物質中の生体物質を指し、細菌および古細菌(例えば、生の原核細胞になるように胞子を形成することができる生の原核細胞および芽胞)等の原核細胞、原虫および菌類等の真核細胞、ならびにウイルスを含む、細菌を含む。一態様において、「生体物質」とは、正常で健康なヒトの結腸内に存在する、例えば、細菌、真核細胞およびウイルス等の生体物質を指す。一態様において、治療用組成物は、ヒトのふん便の抽出物を提供したか、または含み、組成物は、実質的に無臭である。一態様において、治療用組成物は、凍結乾燥、粗製、半精製、または精製された製剤中に、ふん便物質またはふん便微生物叢調製物を提供したか、または含む。
【0079】
一態様において、治療用組成物中のふん便細菌叢は、例えば、非微生物叢ふん便物質を実質的に含まない、高度に精製または精製されたふん便微生物叢を含む。一態様において、ふん便細菌叢を、例えば、ふるいの前、後、または前後に精密濾過を受けるように、さらに処理することができる。別の態様において、高度に精製されたふん便細菌叢製品を、限外濾過して大きい分子を除去するが、治療的な微生物叢、例えば、細菌は保持される。
【0080】
別の態様において、本明細書で使用されている治療用組成物中のふん便細菌叢は、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%の、単離されたか、または純粋なふん便微生物叢の分離株である(または含む)、もしくはわずか約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、または1.0%以上の非ふん便微生物叢物質を有する、実質的に単離または精製されたふん便微生物叢または全体的な(または実質的に全体的な)細菌叢、もしくはSadowsky et al.,WO2012/122478 A1に記載されているか、またはBorody et al.,WO2012/016287 A2に記載されている、実質的に単離、精製されたか、または実質的に全体的な細菌叢を含むか、またはそれから本質的になる。一態様において、ふん便細菌叢調製物は、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、30%、40$、または50%以下のふん便から得られた非生体物質とふん便から得られた生体物質との間の重量比を含む。
【0081】
一態様において、治療用組成物中のふん便細菌叢は、提供者の実質的に全体的な、または非選択的なふん便細菌叢、再構成されたふん便物質、または合成ふん便物質を含む。別の態様において、治療用組成物中のふん便細菌叢は、耐抗生物質個体群を含まない。別の態様において、治療用組成物は、ふん便細菌叢を含み、付着物(例えば、残存繊維、DNA、RNA、ウイルスコート物質、非生存的物質等の無細胞物を含む無生物、および真核細胞、ふん便物の提供者等の生物)を大きく含まない。
【0082】
一態様において、本明細書で使用されている治療用組成物中のふん便細菌叢は、病気のスクリーニングをした新鮮で均質なふん便または同等のフリーズドライおよび再構成されたふん便から得られる。一態様において、新鮮で均質なふん便は、耐抗生物質個体群を含まない。別の態様において、治療用組成物中のふん便細菌叢は、合成ふん便組成物から得られる。一態様において、合成ふん便組成物は、好ましくは釣り合った内容物中の、耐抗生物質個体群を含まない正常で健康なヒトふん便微生物叢に似ている、生存可能な微生物叢の調製物を含む。好適な微生物は、下記のBacteroides、Eubacterium、Fusobacterium、Propionibacterium、Lactobacillus、Ruminococcus、Escherichia coli、Gemmiger、Clostridium、Desulfomonas、Peptostreptococcus、Bifidobacterium、Collinsella、Coprococcus、Dorea、およびRuminococcusから選択され得る。
【0083】
一態様において、治療用組成物は、胃の中の細菌の不活性化を減衰させるための制酸剤(例えば、ミランタ、ムカイン、ガストロゲル)等の他の補助剤と組み合わされる。別の態様において、H2拮抗剤またはプロトンポンプ阻害薬を用いて、胃の中の酸の分泌も、薬理学的に抑制することができる。例示的なH2拮抗剤は、ラニチジンである。例示的なプロトンポンプ阻害薬は、オメプラゾールである。一態様において、胃酸抑制剤は、治療用組成物の投与前に、または同時供与で投与される。
【0084】
一態様において、治療用組成物は、適切な希釈剤により再構成され得る浣腸組成物、腸溶性被覆カプセル、腸溶性被覆マイクロカプセル、耐酸性のタブレット、耐酸カプセル、耐酸性のマイクロカプセル、経鼻腸溶性注入または内視鏡的注入用に適切な希釈剤で再構成された粉末、適切な希釈剤、風味剤、および経口摂取用に胃酸抑制剤により再構成された粉末、食物または飲料により再構成された粉末、もしくは組成物、粉末、ゼリー、または液体の腸溶性被覆および/または耐酸性のマイクロカプセルを含む食物または補助食品の形態で投与される。
【0085】
一態様において、治療方法は、症候の治癒、減少、または疾患(例えば、ASD)の症候の割合の減少に影響を与える。微生物叢の変更は、好ましくは可能な限り「完全に近い」ものであり、微生物叢は、任意の残存する元の微生物叢を締め出すであろう生存可能な有機体と置換される。典型的に、腸溶性微生物叢中の変更は、所定の微生物叢のアレイの胃腸系への導入を含み、したがって、治療の好ましい形態において、治療の方法は、かかる治療を必要とする患者内の病原性腸溶性微生物叢を実質的に、または完全に置換することを含む。
【0086】
別の態様において、治療用組成物を、薬学的に許容可能な担体と共に提供することができる。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」とは、例えば、患者に投与可能な剤形等、医薬組成物の形成を可能にするために、生細菌と混合される、非毒性溶媒、分散剤、賦形剤、補助剤、または他の物質を指す。薬学的に許容可能な担体は、液体(例えば、生理食塩水)、ゲルまたは固形の形態の希釈剤、補助剤、賦形剤、または耐酸性のカプセル封入された成分であり得る。好適な希釈剤および賦形剤には、医薬品グレードの生理学的な生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、マンニトール、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンアトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等、およびそれらの組み合わせが含まれる。別の態様において、治療用組成物は、湿潤剤または乳化剤、安定剤またはpH緩衝剤等の補助物質を含有してもよい。一態様において、治療用組成物は、活性成分の約1%~5%、5%~10%、10%~15%、15~20%、20%~25%、25~30%、30~35%、40~45%、50%~55%、1%~95%、2%~95%、5%~95%、10%~95%、15%~95%、20%~95%、25%~95%、30%~95%、35%~95%、40%~95%、45%~95%、50%~95%、55%~95%、60%~95%、65%~95%、70%~95%、45%~95%、80%~95%、または85%~95%を含有する。一態様において、治療用組成物は、活性成分の約2%~70%、5%~60%、10%~50%、15%~40%、20%~30%、25%~60%、30%~60%、または35%~60%を含有する。
【0087】
一態様において、治療用組成物を、タブレット、飲薬、ボーラス、カプセル、または予備混合に組み込むことができる。かかる剤形へのこれらの活性成分の配合は、医薬製剤の技術においてよく知られている方法の手段によって達成することができる。例えば、米国特許第4,394,377号を参照されたい。ゼラチンカプセルに任意の所望の形態の活性成分を充填することにより、カプセルを容易に生成する。所望される場合、カプセルの充填に便利な容積を増加させるために、これらの物質を、砂糖、デンプン、粉末乳、精製された結晶性セルロース等の不活性粉末希釈剤により希釈することができる。
【0088】
一態様において、従来型の製剤プロセスを使用して、治療用組成物を含有するタブレットを調製することができる。活性成分に加えて、タブレットは、基剤、崩壊剤、吸収剤、結合剤、および潤滑剤を含有してもよい。典型的な基剤には、ラクトース、砂糖、塩化ナトリウム、デンプン、およびマンニトールが含まれる。デンプンはまた、アルギン酸のように良好な崩壊剤である。ラウリル硫酸ナトリウムおよびジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の界面活性剤がまた、使用されることもある。一般的に使用される吸収剤には、デンプンおよびラクトースが含まれる。炭酸マグネシウムはまた、油状物質に有用である。結合剤として、例えば、ゼラチン、ゴム、デンプン、デキストリン、ポリビニルピロリドン、および様々なセルロース誘導体を使用することができる。一般的に使用される潤滑剤の中には、ステアリン酸マグネシウム、タルク、パラフィンろう、様々な金属石鹸、およびポリエチレングリコールがある。
【0089】
一態様において、タブレット等の固形の組成物を調製するために、活性成分は、医薬担体、例えば、コーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、またはゴム、もしくは例えば、水等の他の医薬的な希釈剤等の従来型の打錠成分等の医薬担体と混合して、本開示の組成物の均質な混合物を含有する固形の前製剤組成物を形成する。これらの前製剤組成物を均質と称する場合、タブレット、ピル、およびカプセル等の等しく有効な単位剤形へと容易に細分され得るように、活性成分が組成物全体にわたって均等に分散されることを意味する。次に、この固形の前製剤組成物は、所望の量の活性成分(例えば、少なくとも約10、10、10、10、10、1010、1011、1012、または1013cfu)を含有する、上に記載されている種類の単位剤形へと細分される。本明細書で使用されている治療用組成物を、風味付けすることができる。
【0090】
一態様において、治療用組成物は、タブレットまたはピルであり得る。一態様において、持続性作用の利点を得る剤形を提供するために、タブレットまたはピルを、被覆するか、または別様に、調合することができる。例えば、タブレットまたはピルは、内部用量および外部用量の構成要素を含むことができ、外部用量の構成要素は、内部用量上の外皮の形態である。2つの構成要素を、胃の中での分解に耐える機能を果たし、内部構成要素が十二指腸へと無傷で通過するか、または放出を遅延させることを可能にする、腸溶性層によって分離することができる。かかる腸溶性層または被覆について、様々な物質を使用することができ、かかる物質には、多数のポリマー酸、ならびにセラック、セチルアルコール、およびセルロースアセテート等の物質とのポリマー酸の混合物が含まれる。
【0091】
一態様において、治療用組成物は、遅延または段階的腸溶性放出形態として配合される。一態様において、遅延または段階的腸溶性放出製剤は、セルロースアセテート、ポリエチレングリコース、または両方の使用を含む。一態様において、遅延または段階的腸溶性放出製剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、微結晶セルロース(MCC)、ステアリン酸マグネシウム、またはそれらの組み合わせの使用を含む。一態様において、遅延または段階的腸溶性放出製剤は、ポリ(メタ)アクリレート、メタクリル酸共重合体B、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エステル、ポリビニルピロリドン(PVP)、PVP-K90、またはそれらの組み合わせの使用を含む。一態様において、遅延または段階的腸溶性放出製剤は、2つの外層間に挟まれた固形の内層の使用を含み、固形の内層は、崩壊剤、爆発剤、発泡剤またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択された医薬組成物および別の構成要素を含み、外層は、実質的に水溶性の結晶性ポリマー、または両方を含む。一態様において、遅延または段階的腸溶性放出製剤は、非湿潤性拡散マトリクスの使用を含む。
【0092】
別の態様において、遅延または段階的腸溶性放出製剤は、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルピロリドン、潤滑剤、またはそれらの混合物を含む第1の層、およびポリエチレンオキシド、カルボキシメチルセルロース、または両方を含む第2の浸透性押出層を含む、タブレットまたはカプセルの使用を含む。一態様において、遅延または段階的腸溶性放出製剤は、アクリルポリマー、セルロース、ろう、脂肪酸、セラック、ゼイン、水素添加植物油、硬化ヒマシ油、ポリビニルピロリジン、酢酸ビニル共重合体、ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンオキシド、アクリル酸、およびメタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル共重合体、エトキシエチルメタクリレート重合体、シアノエチルメタクリレート重合体、アミノアルキルメタクリレート共重合体、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミド共重合体、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸無水物)、メタクリル酸メチルポリマー、ポリメタクリレート、ポリ(メタクリル酸メチル)共重合体、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリレート共重合体、グリシジルメタクリレート共重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ヒドロキシプロピルセルロース、天然ろう、合成ろう、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリド、硬化脂肪、炭化水素系ろう、ステアリン酸、ステアリルアルコール、蜜ろう、グリコろう、ヒマシろう、カルナバろう、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸およびグリコール酸の共重合体、カルボキメチルスターチ、メタクリル酸カリウム/ジビニルベンゼン共重合体、架橋ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール共重合体、ポリエチレングリコール、非架橋ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリ酢酸ビニル共重合体、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択された、放出関連のマトリクス物質の使用を含む。一態様において、遅延または段階的腸溶性放出製剤は、微少環境pH調整剤の使用を含む。
【0093】
一態様において、治療用組成物飲薬であり得る。一態様において、飲薬は、治療用組成物の生理食塩水懸濁形態を選択することによって調製される。1つの懸濁液を他方の水溶液と共に調製することによって、1つの成分の水溶性形態を、他方の水不溶性形態と併せて使用することができる。いずれかの活性成分の水不溶性形態を、懸濁液としてか、またはポリエチレングリコール等のいくつかの生理学的に許容可能な溶媒中に調製してもよい。いずれかの活性成分の水不溶性形態の懸濁液を、ピーナッツ、コーン、ごま油等の油中に、ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール等のグリコール中に、または特異的活性成分の溶解度に依存する水中に調製することができる。懸濁される活性成分を維持するために、好適な生理学的に許容可能な補助剤が必要である場合がある。補助剤は、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、およびアルギン酸等の増粘剤を含むことができ、これらの中から選択され得る。界面活性剤は、一般的に、活性成分、具体的には、脂溶性プロピオン酸増強化合物を懸濁させる機能を果たすだろう。液体非溶媒中の懸濁液の製造に最も有用であるのは、アルキルフェノールポリエチレンオキシド付加物、ナフタレンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、およびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである。親水性に影響を与える多くの物質に加えて、液体の密度および表面張力が、個々の事例において懸濁液を製造する際の助けとなり得る。例えば、シリコン抑泡剤、グリコール、ソルビトール、および砂糖が、有用な懸濁剤であり得る。
【0094】
一態様において、治療用組成物は、Clostridium absonum、Clostridium argentinense、Clostridium baratii、Clostridium botulinum、Clostridium cadaveris、Clostridium carnis、Clostridium celatum、Clostridium chauvoei、Clostridium clostridioforme、Clostridium cochlearium、Clostridium fallax、Clostridium felsineum、Clostridium ghonii、Clostridium glycolicum、Clostridium haemolyticum、Clostridium hastiforme、Clostridium histolyticum、Clostridium indolis、Clostridium irregulare、Clostridium limosum、Clostridium malenominatum、Clostridium novyi、Clostridium oroticum、Clostridium paraputrificum、Clostridium perfringens、Clostridium piliforme、Clostridium putrefaciens、Clostridium putrificum、Clostridium sardiniense、Clostridium sartagoforme、Clostridium scindens、Clostridium septicum、Clostridium sordellii、Clostridium sphenoides、Clostridium spiroforme、Clostridium sporogenes、Clostridium subterminale、Clostridium symbiosum、Clostridium tertium、Clostridium tetani、Clostridium welchii、およびClostridium villosumからなる群から選択された、1つ以上、2つ以上、3つ以上、または4つ以上のClostridium種の非病原性芽胞を含む。一態様において、治療用組成物は、Bacteroides coprocola、Bacteroides plebeius、Bacteroides massiliensis、Bacteroides vulgatus、Bacteroides helcogenes、Bacteroides pyogenes、Bacteroides tectus、Bacteroides uniformis、Bacteroides stercoris、Bacteroides eggerthii、Bacteroides finegoldii、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides ovatus、Bacteroides acidifaciens、Bacteroides caccae、Bacteroides nordii、Bacteroides salyersiae、Bacteroides fragilis、Bacteroides intestinalis、Bacteroides coprosuis、Bacteroides distasonis、Bacteroides goldsteinii、Bacteroides merdae、Bacteroides forsythus、Bacteroides splanchnicus、Bacteroides capillosus、Bacteroides cellulosolvens、およびBacteroides ureolyticuからなる群から選択された、1つ以上、2つ以上、3つ以上、または4つ以上の非病原性Bacteroides種を含む。前述のClostridiumおよびBacteroidesを、培養するか、または精製することができ、相乗効果のために、単一の組み合わせで組み合わせて使用することができる。
【0095】
一態様において、治療用組成物は、精製、単離、または培養された生存可能な非病原性Clostridium、およびCollinsella、Coprococcus、Dorea、Eubacterium、およびRuminococcusからなる群から選択された1つ以上の属からの複数の精製、単離、または培養された生存可能な非病原性微生物を含む。別の態様において、治療用組成物は、Clostridium、Collinsella、Coprococcus、Dorea、Eubacterium、およびRuminococcusからなる群から選択された1つ以上の属からの複数の精製、単離、または培養された生存可能な非病原性微生物を含む。
【0096】
一態様において、治療用組成物は、Collinsella、Coprococcus、Dorea、Eubacterium、およびRuminococcusからなる群から選択された2つ以上の属を含む。別の態様において、治療用組成物は、Coprococcus、Dorea、Eubacterium、およびRuminococcusからなる群から選択された2つ以上の属を含む。さらなる態様において、治療用組成物は、Coprococcus catus、Coprococcus comes、Dorea longicatena、Eubacterium eligens、Eubacterium hadrum、Eubacterium hallii、Eubacterium rectale、およびRuminococcus torquesからなる群から選択された1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、または5つ以上の種を含む。
【0097】
一態様において、医薬組成物は、嫌気性包装体または容器内にある。別の態様において、医薬組成物は、脱酸素剤をさらに含む。一態様において、例えば、米国特許第7,541,091号に記載されているような、例えば、酸素掃気ペレット等の内蔵型またはクリップ留め酸素掃気機構を容器に組み込むことによって、容器を無酸素で製造することができる。別の態様において、容器自体は、酸素掃気イオンの性能強化担体として精製および改質された層状粘土を使用する、例えば、O2BLOCK(商標)によって記載されているような、例えば、酸素掃気イオン等の酸素掃気物質、または等価物から製造され、活性イオンは、ポリマー内に直接分散される。一態様において、酸素掃気ポリマーは、例えば、酸素消去作用を示す、1つ以上の不飽和オレフィン性ホモポリマーまたは共重合体、1つ以上のポリアミドホモポリマーまたは共重合体、1つ以上のポリエチレンテレフタレートホモポリマーまたは共重合体を有するポリマー混合物を記載している米国特許出願公開第20110045222号に記載されているように、容器自体を製造するためか、または容器を被覆するため、もしくは追加されるペレットとして使用される。一態様において、酸素掃気ポリマーは、例えば、コポリエステルエーテルがポリ(テトラメチレン-コ-アルキレンエーテル)を含むポリエーテルセグメントを含む、ポリエステル、コポリエステルエーテルおよび酸化触媒を含む組成物を記載している、米国特許出願公開第20110008554号に記載されているように、容器自体を製造するためか、または容器を被覆するため、もしくは追加されるペレットとして使用される。一態様において、酸素掃気ポリマーは、例えば、ポリマーマトリクス中の分散されたイオン/塩粒子、および酸素掃気粒子を含む酸素掃気フィルムを記載している、米国特許出願公開第201000255231号に記載されているように、容器自体を製造するためか、または容器を被覆するため、もしくは追加されるペレットとして使用される。
【0098】
好ましい態様において、精製されたふん便細菌叢は、厳重にスクリーニングされた健康な定型発達のヒト提供者から得られる。細菌叢は、冷凍保存により混合され、冷凍保存による冷凍液体懸濁液として保存され、かつ液体形態での投与前に解凍された健康な提供者から収集されたふん便物質から分離される。投与の経路に基づいて、精製されたふん便細菌叢を、新鮮な、凍結解凍されたか、または凍結乾燥された生細菌叢として提供することができる。いくつかの事例において、精製されたふん便細菌叢は、経口用量の形態でヒト対象に投与される。他の事例において、精製されたふん便細菌叢は、直腸用量の形態で投与される。
【0099】
いくつかの事例において、剤形は、任意の好適な形態の生細菌叢(新鮮な、冷凍、凍結乾燥等)を含み、ヒト対象に経口により、鼻腔栄養チューブにより、結腸内視鏡検査により、または肛門により投与するように配合される。いくつかの事例において、用量は、溶液として投与される。他の事例において、用量は、例えば、カプセル、タブレット、粉末、および顆粒等の固形剤形の形態として投与される。かかる固形剤形の形態において、精製されたふん便細菌叢は、少なくとも1つの不活性賦形剤(または担体)、充填剤または増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはケイ酸)、結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、またはアカシア)、保湿剤(例えば、グリセロール)、崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、じゃがいもまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ケイ酸、炭酸ナトリウム)、吸収促進剤、湿潤剤(例えば、セチルアルコールまたはグリセロールモノステレート)、吸収剤(例えば、カオリンまたはベントナイト)、および/または潤滑剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形のポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、またはそれらの混合物)と混合される。カプセルおよびタブレットの事例において、剤形はまた、緩衝剤を含み得る。
【0100】
精製されたふん便細菌叢を含むタブレットを、例えば、任意に1つ以上の追加の成分を含む、活性成分を圧縮または成形することによって製造することができる。圧縮されたタブレットを、任意に、結合剤、潤滑剤、賦形剤、界面活性剤、および分散剤のうちの1つ以上と混合された、粉末または粒状の調製物等の自由流動形態で活性成分を好適な装置内で圧縮することによって調製することができる。成形されたタブレットを、活性成分、薬学的に許容可能な担体、および少なくとも混合物を湿潤させるのに十分な液体の混合物を好適な装置内で成形することによって、製造することができる。例示的な態様において、剤形は、凍結乾燥(「フリーズドライ」)によって調製された粉末を含み、本プロセスは、精製、冷凍されたふん便細菌叢から水を例示的な低圧で除去することを含む。
【0101】
使用され得る特定の用量および用量の範囲は、多くの要因に依存し、具体的な患者に対する用量の範囲および最適な用量の判定は、本開示に鑑みて、十分当業者の範囲内である。しかしながら、任意の具体的なヒト用の用量レベルは、用いられる具体的な化合物の活性、ヒトの年齢、体重、一般的な健康、性別、および食生活、投与の時間、投与の経路、排出速度、任意の薬剤の組み合わせ、ならびに治療される任意の疾患の重症度を含む、様々な要因に依存するであろうことがさらに理解される。
【0102】
例示的な態様において、精製されたふん便細菌叢は、複数の用量で対象に投与される。例えば、精製されたふん便細菌叢を、約2日~約8週の期間にわたって複数の用量で本明細書に提供されている方法に従って、対象に投与することができる、
【0103】
精製されたふん便細菌叢の投与前に、任意の好適な抗生物質を、対象に投与することができる。例示的な態様において、抗生物質は、例えば、バンコマイシンまたはリファキシミン等の非吸収性または最小吸収性の抗生物質である。抗生物質は、任意の適切な送達経路を介して対象に投与される。当業者であれば、適切な用量の送達方法を開発することができる。好ましくは、抗生物質は、対象に経口投与される。別の態様において、ASDの治療方法は、抗生物質の前処理を必要としない。さらなる態様において、ASDの治療方法は、腸管調製または腸管洗浄を必要としない。別の態様において、ASDの治療方法は、ふん便細菌叢調製物を含む医薬組成物の投与前に、抗生物質の前処理または腸管洗浄のどちらも必要としない。
【0104】
いくつかの事例において、抗生物質は、腸管洗浄の実行前に、複数の用量で投与される。いくつかの事例において、抗生物質の投与は、腸管洗浄の少なくとも7日(例えば、少なくとも7、9、10、12、14、18、または21日)前に開始される。好ましい態様において、腸管洗浄は、ヒト対象の断食によって進められる。
【0105】
抗生物質の投与後、対象は、腸管洗浄を受ける。例示的な態様において、腸管洗浄は、結腸内視鏡検査用の市販の腸管調製物である、MoviPrep(登録商標)等の製品を対象に投与することを含む。好ましくは、腸管洗浄は、残存するバンコマイシンを除去し、下部消化管を洗浄する。
【0106】
例示的な態様において、本方法は、胃酸抑制剤を対象に投与することをさらに含む。本明細書に提供されている方法に従って使用するのに好適な、胃酸抑制剤としても知られる胃酸抑制剤は、制限なく、プロトンポンプ阻害薬(PPI)およびヒスタミン遮断薬を含む。いくつかの事例において、胃酸抑制剤は、プリロセックであり、精製されたふん便細菌叢の経口投与前に1日以上、対象に投与される。いくつかの事例において、胃酸抑制剤は、精製されたふん便細菌叢の経口投与前に1週間、投与される。
【0107】
別の態様において、精製されたふん便細菌叢を含む単位剤形が、本明細書に提供されている。いくつかの事例において、本明細書に記載されている単位剤形は、キットの一部として提供されている。かかるキットは、精製されたふん便細菌叢製剤、および任意に、組成物を対象に投与するための送達装置、または適切な送達経路を介して用量を対象に投与するための指示を含むことができる。いくつかの事例において、剤形は、任意の好適な形態の生細菌叢(新鮮な、冷凍、凍結乾燥等)を含み、ヒト対象に経口により、鼻腔栄養チューブにより、結腸内視鏡検査により、または肛門により投与するように配合される。本明細書に記載される場合、本明細書に提供されているキットに好適な投薬形態は、制限なく、液体溶液、カプセル、タブレット、粉末、顆粒、および凍結乾燥形態を含む。
【0108】
さらなる態様において、自閉症スペクトラム障害を治療するための薬剤を製造するための、または自閉症スペクトラム障害の1つ以上の重症度を減少させるための、精製された組成物の使用が、本明細書に提供されている。
【0109】
本明細書に記載されている組成物、剤形、および薬剤は、1つ以上の追加の化合物または薬剤が追加されるか、または別様に、精製されたふん便細菌叢組成物と共に同時投与される、組み合わせ医薬組成物を含むことが理解されるだろう。
【0110】
「1つ」という冠詞は、冠詞の文法的なものの1つまたは1つ超(すなわち、少なくとも1つ)を指すものとして本明細書で使用される。例示の方法により、「要素」とは、少なくとも1つの要素を意味しており、1つ超の要素を含むことができる。
【0111】
下記の段落は、例示的な実施形態の下位セットを列挙している。
【0112】
実施形態1 ヒト対象における自閉症スペクトラム障害を治療する方法であって、
(a)抗生物質をヒト対象に投与することと、
(b)ヒト対象に腸管洗浄を受けさせることと、
(c)精製されたふん便細菌叢をヒト対象に投与することであって、ヒト対象における自閉症スペクトラム障害が治療される、投与することと、を含む、方法。
【0113】
実施形態2 抗生物質が、ヒト対象に経口投与される非吸収性抗生物質である、実施形態1の方法。
【0114】
実施形態3 抗生物質が、バンコマイシンである、実施形態1または2の方法。
【0115】
実施形態4 抗生物質が、腸管洗浄前に複数の用量で投与される、先行する実施形態1~3のうちのいずれか1つの方法。
【0116】
実施形態5 抗生物質の投与が、腸管洗浄の少なくとも7日前に開始される、先行する実施形態1~4のうちのいずれか1つの方法。
【0117】
実施形態6 抗生物質の投与が、腸管洗浄の少なくとも14日前に開始される、先行する実施形態1~4のうちのいずれか1つの方法。
【0118】
実施形態7 腸管洗浄が、ヒト対象の断食により進められる、先行する実施形態1~6のうちのいずれか1つの方法。
【0119】
実施形態8 精製されたふん便細菌叢が、定型発達のヒト提供者から得られる、先行する実施形態1~7のうちのいずれか1つの方法。
【0120】
実施形態9 精製されたふん便細菌叢が、経口用量の形態でヒト対象に投与される、先行する実施形態1~8のうちのいずれか1つの方法。
【0121】
実施形態10 本方法が、精製されたふん便細菌叢の投与前に、胃酸抑制剤を投与する工程を含む、実施形態9の方法。
【0122】
実施形態11 精製されたふん便細菌叢が、直腸用量の形態でヒト対象に投与される、先行する実施形態1~8のうちのいずれか1つの方法。
【0123】
実施形態12 精製されたふん便細菌叢が、複数の用量で投与される、先行する実施形態1~11のうちのいずれか1つの方法。
【0124】
実施形態13 精製されたふん便細菌叢が、約2日~約8週の期間にわたって、複数の用量で投与される、先行する実施形態12のうちのいずれか1つの方法。
【0125】
実施形態14 精製されたふん便細菌叢が、新鮮な、凍結解凍、または凍結乾燥された生細菌叢の形態にある、先行する実施形態1~13のうちのいずれか1つの方法。
【0126】
実施形態15 ヒト対象が、本方法の開始前と比較して本方法後に、小児自閉症評価尺度(CARS)によって評価されるような、自閉症の症候の重症度における有意な減少を示す、先行する実施形態1~14のうちのいずれか1つの方法。
【0127】
実施形態16 ヒト対象が、本方法の開始前と比較して本方法後に、小児自閉症評価尺度(CARS)によって評価されるような、自閉症の症候の重症度における少なくとも10%の減少を示す、先行する実施形態1~14のうちのいずれか1つの方法。
【0128】
実施形態17 ヒト対象が、本方法の開始前と比較して本方法後に、小児自閉症評価尺度(CARS)によって評価されるような、自閉症の症候の重症度における少なくとも20%の減少を示す、先行する実施形態1~14のうちのいずれか1つの方法。
【0129】
と比較して本治療方法の前に、腸内細菌の種が有意に少ないことによって特徴付けられる、先行する実施形態1~17のうちのいずれか1つの方法。
【0130】
実施形態19 本方法によって治療されるヒト対象が、定型発達のヒトと比較して本治療方法の前に、腸内細菌の種が約20%少ないことによって特徴付けられる、先行する実施形態1~17のうちのいずれか1つの方法。
【0131】
実施形態20 ヒト対象が、本方法の開始前に、胃腸障害の症候を示さない、先行する実施形態1~19のうちのいずれか1つの方法。
【0132】
実施形態21 ヒト対象における自閉症スペクトラム障害の重症度を減少させる方法であって、
(a)非吸収性抗生物質を自閉症のヒト対象に経口投与することと、
(b)自閉症のヒト対象に腸管洗浄を受けさせることと、
(c)定型発達のヒト提供者からヒト対象に精製されたふん便細菌叢を投与することであって、ヒト対象が、本方法の開始前と比較して本方法後に、小児自閉症評価尺度(CARS)によって評価されるような、自閉症の症候の重症度における有意な減少を示す、投与することと、を含む、方法。
【0133】
実施形態22 ヒト対象が、本方法の開始前と比較して本方法後に、小児自閉症評価尺度(CARS)によって評価されるような、自閉症の症候の重症度における少なくとも10%の減少を示す、実施形態21の方法。
【0134】
実施形態23 ヒト対象が、本方法の開始前と比較して本方法後に、小児自閉症評価尺度(CARS)によって評価されるような、自閉症の症候の重症度における少なくとも20%の減少を示す、実施形態21の方法。
【0135】
実施形態24 ヒト対象が、本方法の開始前に、胃腸障害の症候を示さない、実施形態20~22のうちのいずれか1つの方法。
【0136】
実施形態25 実施形態1~20のうちのいずれか1つの方法による、ヒト対象における自閉症スペクトラム障害の治療の際に使用するための精製されたふん便細菌叢製剤。
【0137】
実施形態26 実施形態21~24のうちのいずれか1つの方法による、ヒト対象における自閉症スペクトラム障害の症候の重症度を減少させる際に使用するための精製されたふん便細菌叢製剤。
【0138】
本開示は、本開示の例示として提供されている、下記の非制限的な実施例を参照することによってより良く理解され得る。下記の実施例は、本開示の好ましい態様をより完全に図示するために提示されるものであるが、いかなる方法でも、本開示の広い範囲を制限するものと解釈されるべきではない。したがって、添付の特許請求の範囲の範囲は、本明細書に含有されている態様の説明に限定されるべきではない。
【実施例
【0139】
実施例1:細菌叢移植療法(MTT)を用いた自閉症の子どもの治療
FDAおよびASUの人体実験委員会(The FDA and ASU’s Human Subject Board)は、胃腸細菌叢の機能を改善することによって自閉症の症候を減少させるように設計された、ふん便細菌叢に基づく治療の安全性および耐容性を評価する試験に参加する、7~17歳の20人の自閉症の子どもの予備的試験を認可した。本明細書に記載される場合、この治療は、健康なヒトからの精製された腸内細菌を、自閉症スペクトラム障害を有すると診断された子どもに移転することを含む。
【0140】
一般的な試験設計は、自閉症診断面接改訂版(ADI-R)によって診断された、中程度~重度の胃腸障害を有する、ASDを罹患している18人の子ども(年齢7~17歳)に対する非盲検臨床試験であった。各子どもは、10週の治療、および治療の中止後8週の経過観察期間の、合計18週の試験に参加した。ふん便物質の移植(FMT)治療について、我々は、最初の用量に対する経口対直腸の2つの経路の投与を比較し、続いて7~8週間、低維持用量を経口で与えた。
【0141】
プロトコルは、FDA(治験新薬番号15886)およびアリゾナ州立大学の治験審査委員会(ASU IRBプロトコル♯:00001053)によって認可された。試験は、グレーターフェニックスの自閉症協会およびアリゾナ州立大学での自閉症/アスペルガーの調査プログラムの連絡先リストを使用して、アリゾナ州のおよそ2500組のASD家族に電子メールで公示された。試験の組み入れおよび除外基準を満たした子どものいる家族が、試験について話し合うために1時間の個別の電話を受けた。電話の後、保護者の許可書および子どもの同意書に署名した家族に、完成すべき最初のアンケートが提供された。我々はまた、彼らのかかりつけ医師が薬剤を二重にチェックし、医師がバンコマイシン、プリロセックの送達、およびふん便の移植を認識するように、彼らに手紙を送った。
【0142】
有益な細菌(非選択的なふん便細菌叢調製物)を、ヒト提供者のふん便から調製した。ふん便試料を、厳重にスクリーニングされた健康な提供者(採用されなかった一般的な個体群の90%)から収集し、細菌のみを保持するように広範囲にわたって精製した。具体的には、細菌叢を、厳重にスクリーニングされた健康な提供者から収集されたふん便物質から分離し、冷凍保存による冷凍液体懸濁液中に冷凍保存で保存し、液体形態での投与前に解凍した。有益な細菌の精製された各試料は、1000以上の細菌種を含有した。比較のため、標準的な市販の生菌には、1~10個の細菌種が含まれる。
【0143】
実施例2:対象の募集
試験は、我々のADI-R評価者との保護者の電話面接を含む、自閉症診断面接改訂版(ADI-R)を使用した自閉スペクトラム症の診断の評価により開始された。試験医は、除外基準についてチェックするために、最初の30分の参加者との面談を通した一般的な身体的健康、および参加者の直近2年の医療記録および身長/体重/成長曲線の広範囲の報告を評価した。参加者の除外基準には、直近6カ月の抗生物質、および直近3カ月の生菌、一遺伝子疾患、主な脳形成異常、経管栄養、緊急の治療を必要とする(生命に関わる)重度のGI障害、潰瘍性結腸炎、クローン病、診断されたセリアック病、好酸球性胃腸炎、重度の低体重/栄養不良、ならびに最近の/予定されている外科手術が含まれる。定型発達の子どものいずれも、ASD、ADHD、うつ症候、および不安を含む精神疾患を有していると診断されておらず、定型発達の子どもは、ASDを有する個人の第1度親近者がいなかった。参加者から、我々は、最初の血液、尿、およびふん便試料を収集し、試験の開始時に1週間参加者の子どもの食事日記を記入するように保護者に求めた。主にアリゾナ地域のグレーターフェニックスから参加者を募集したが、3人の参加者は、この地域以外だった。ASD家族の友人およびASD家族を扱う仕事をしている専門家から、定型発達の家族を募集した。
【0144】
実施例3:試験の参加者
中程度~重度のGI障害および中程度~高度の認知的機能を有する7~17歳の年齢の18人の自閉症の参加者(各々異なる家族から)。20人の参加者を試験に募集したが、2人は、治療の開始前に治療期の試験に参加しなかった。1人の参加者は、薬剤の変更に起因して不適格とみなされ、1人は、参加しないと決断した。18人の試験参加者の特徴および彼らの医療歴を、表2に列挙している。治療期に参加したすべての18人の参加者が、19週の試験を完了した。本明細書に提示されている治療後のデータは、これらの18人の参加者のうちの13人について収集された。加えて、13組の家族からの20人の年齢および性別の一致した定型発達の子ども(6組の家族が、1人の定型発達の参加者を有しており、7組の家族が、2人の定型発達の参加者を有していた)も募集している。これらの20人の定型発達の子どもを、18週間観察したが、治療を受けなかった。
【0145】
【表2】
【0146】
実施例4:試験プロトコル
病原性細菌のレベルを減少させるために、経口バンコマイシン(GI管中に留まる非吸収性広域スペクトル抗生物質)を2週間、次に、残存するバンコマイシンおよびふん便を除去するために、低容積結腸内視鏡検査前処置のMoviPrep(登録商標)(大部分の残存する腸内細菌およびバンコマイシンを除去するために、腸を洗浄する飲料)を1日、参加者に与えた。バンコマイシンは、有害な細菌を全滅させることを企図しており、断食は、任意の残存する細菌を除去し、他の内腔のふん便物質を最小にすることを企図しており、結腸の洗浄は、バンコマイシンの除去および下GI管の洗浄を助けとなった。
【0147】
バンコマイシン治療および腸管洗浄の後、参加者は、高用量経口細菌叢移植療法(チョコレートミルク、代用乳、またはジュース中に混合されたMTT)(1日当たり2.5×1012CFUの用量)を2日か、または単一用量の直腸MTT(浣腸と同様に与えられたものについて2.5×1012CFUの用量)のいずれかを受けた。直腸用量は、試験医の直接の監視の下で投与され、第1の経口用量は、医師の立ち合いの下で同様に投与された。参加者は、投与の経口または直腸経路のいずれかをランダムに割り当てられた。1つの投与経路が耐容されなかった場合、または家族が他の経路を好んだ場合、参加者には、他の経路を試す選択肢が与えられた。最初の経口用量を有する参加者について、主な最初の経口用量の直後に8週間、低経口維持用量(2.5×10CFU)が続けられた。一方、主な最初の直腸用量後、1週の待機期間に続いて、7週間、低経口維持用量(2.5×10CFU)が続けられた。SHGMの維持用量は、最大10週間毎日、本人が経口投与した。治療の中止後、さらに8週間、参加者を観察した。
【0148】
胃酸を減少させ、それによってMTTの生存能力を増大させるために、プリロセック(オメプラゾール)を毎日投与し、これは、経口バンコマイシン治療の12日目に開始され、維持用量の終了まで続いた。表3は、一般的な治療のタイムラインを提供している。
【0149】
【表3】
【0150】
実施例5:MTT用に使用されるふん便細菌叢調製物
ヒトふん便からの高度に精製され標準化された抽出物(標準化ヒト腸内細菌叢(SHGM)とも呼ばれる)を含む、ヒト細菌叢調製物を使用した。これは、非常に健康な提供者の腸内に存在するすべての細菌を含有する全スペクトル製品である。最初に、最適なGIおよび全般的な健康を確実にするために、広範囲の健康アンケートおよび広範囲の医療検査を用いて、提供者を厳重にスクリーニングし、スクリーニングプロセスは、非常に厳密であるため、提供者の90%が除去され、個体群の10%のみの最も健康な部分を残す。次に、提供された物質を広範囲に濾過し、医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理の基準(GMP)に従って標準化した。最終的な製品は、冷凍することができる液体形態であり、C.difficile(Hamilton et al.、Am J Gastroenterol.2012 May;107(5):761-7)の治療に非常に有効であることが証明された。SHGMを、-80℃の冷凍庫で保存し、次に、試験中毎週ドライアイスで家族に送達した。家族は、SHGMを、ドライアイスを含む容器内に保持し、使用の直前に解凍するように指示を受けた。
【0151】
主な高用量および低維持用量の2回の異なる用量のSHGMを使用した。高用量のSHGMは、2.5×1012個の細胞の1日用量であった。2日間の高用量についての理論的根拠は、MoviPrepおよび1日の断食の後が、新たな有益な細菌を提供するための推定上最も重要な期間であるということだった。低用量のSHGMは、2.5×10個の細胞の用量であった。
【0152】
実施例6:試験薬剤の耐容性
バンコマイシン:バンコマイシンは、2種類の小さい有害事象と関連した。1人の子どもが、経口バンコマイシンの投与時にアレルギー性皮疹を発症したが、オレンジの風味のないバンコマイシンに切り替えると、皮疹が消えた。18人中12人の子どもに、バンコマイシンに対する行動反応があり、これは、バンコマイシンの開始後1~4日で始まり、大部分の事例で1~3日間続いたが、1人の参加者に、3週間続く症候があった。7人の事例において、症候は、多動において軽度~中程度の増加であり、5人の事例において、症候は、癇癪/攻撃性において、軽度~中程度の増加であった。これらの行動症候が消えた後、GI症候および自閉症の症候の改善が始まった。前試験(Sandler、2000)において、同様の結果が報告され、対象とされる試験の保護者は、これが期待されるとの報告を受けていた。バンコマイシンは有害な細菌を全滅させるため、反応は、細菌毒素の放出に起因している可能性がある。
【0153】
プリロセック:これは、一般的に耐容性良好であった。
【0154】
MoviPrep(登録商標):多くの子どもが、味に起因して、この薬剤の消費が困難であった。
【0155】
細菌叢移植療法(MTT)の直腸投与:これは、6人の受容者中6人が、驚くべきことに耐容性良好であった。
【0156】
高用量のMTTの経口投与:これは、13人の受容者中12人が、耐容性良好であったが、1人の参加者が、嘔吐を経験し、直腸経路に切り替えた。
【0157】
維持用量MTTの経口投与:これは、すべての参加者に耐容性良好であった。
【0158】
CBC/化学パネル:全血球算定(CBC)または血液化学パネル(CBC)における変化に関して主な懸念はなかった。下記の小さな変化が観察された。治療の開始から終了までに、カリウム(P=0.01)における5%の減少があったが、すべてのレベルが、正常範囲内に維持されている。バンコマイシン(試験の第2週)の後、血小板(P=0.03)における8%の増加があった。4人の対象が、開始時にレベルが上昇し、2人のみが、バンコマイシン後にレベルが上昇した。血中尿素窒素(BUN)(P=0.002)における26%の低下があったが、すべてが正常範囲内に留まった。アルブミンとグロブリン(A/G)との比率(P=0.03)において6%の増加があり、わずか1人が上昇した。アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)(P=0.01)における17%の増加があったが、すべてが正常範囲内に維持された。アランアミノ基転移酵素(ALT)(P=0.003)における24%の増加があり、1人が上昇を維持し、2人がわずかに上昇した。これらの値のすべて(血小板、BUN、A/G、AST、ALT)が、第3回および第4回目の試験で基準値に戻った。赤血球指標(平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン(MCH)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)、および赤血球分布幅(RDW))のわずかな変化(1~2%)が観察された。
【0159】
実施例7:副作用
ASDを罹患している子どもは、バンコマイシン治療の開始時に一時的な副作用を経験した。表4に列挙されているように、18人のASDを罹患している子どもの内1人の参加者(5%)が、広範な皮疹を発症したが、バンコマイシンが自然なオレンジの風味から風味付けされていない形態に切り替えされたときに、皮疹が消えた。バンコマイシンの開始後1~4日以内に、12人のASDを罹患している子どもに、多動(12人の事例中7人、39%)または癇癪/攻撃性(12人の事例中5人、28%)のいずれかを含む、バンコマイシンに対する一時的な行動反応があった。症候は、症候が3週間続いた1人参加者を除いて、大部分の事例において、1~3日続いた。症候が消えた後、自閉症を有する子どもに対するその経口バンコマイシン療法において、Sandler et al.、Journal of Child Neurology 15、429-35、(2000)が報告しているものと同様の、GI症候および行動症候の改善が始まった。1人のみの参加者が、最初の高用量経口SHGM(吐き気/嘔吐)を耐容せず、最初の直腸投与に切り替えられた。
【0160】
【表4】
【0161】
実施例8:胃腸症候の評価
胃腸症候評価尺度(GSRS)は、次に、5つの領域:腹痛、逆流、消化不良、下痢、および便秘において得点される、15個の質問に基づく前週中のGI症候の評価である。我々は、その領域における質問内の平均に基づく各領域に対する得点を報告している。元のGSRSは、4段階評価を使用していたが、我々は、より単純な言語も有する、リッカートの7段階評価を含む改訂版を使用した。GSRSは、0、7、14、21、28、35、42、56、74、および130日目に評価された。GSRSは、GI症候を評価するための唯一の方法であることを、当業者であれば理解する。GI症候を評価するために、他の同様のツールを使用するか、または設計することができる。
【0162】
毎日のふん便記録(DSR)を、治療期中毎日、2週間、観察期間の最後の2週、基準値で収集した。これらの記録には、ブリストル便性状スケール(1=非常に硬い、7=液体)を用いたふん便の評価が含まれた。
【0163】
実施例9:自閉症および関連する症候の評価
自閉症診断面接改訂版(ADI-R)は、2時間の構成的な面談であり、自閉症および自閉症スペクトラム障害の臨床診断のために使用される主要なツールのうちの1つである。これは、自閉症の重症度の評価基準となるように設計されていないが、より高い得点は、一般的に、より重度の症候と一致する。ADI-Rを使用して、試験の許可のためのASDの診断を実証した。
【0164】
保護者全般印象第三版(Parent Global Impressions-III)は、PGI-Rの拡大版として本明細書に組み込まれる。Adams et al.,Effect of a Vitamin/Mineral Supplement on Children with Autism, BMC Pediatrics,11:111(2011)を参照されたい。PGI-IIIは、17個の領域(図13を参照)における変化を、全般的に、「非常に悪化」~「非常に改善」の範囲の7段階評価を用いて評価している。「平均的な変化」は、PGI-2-最終版の全18得点における平均を算出することによってコンピュータ計算される。このツールが選択されたのは、開始時の症候の重症度を保護者に推測してもらい、次に誤差をコンピュータ計算してもらうよりも、観察された変化について保護者に直接尋ねるほうがより信頼できることが分かったためである。また、変化を検出するための7段階評価の使用は、変化に対する高い感受性を生じるように思われる。
【0165】
小児自閉症評価尺度(CARS)は、自閉症およびASDの診断および症候の全般的な重症度の評価の両方のために使用され得る15個の項目尺度である。CARS評価は、同じ評価者によるADIR評価に続いて行われた。
【0166】
異常行動チェックリスト(ABC)は、被刺激性、無気力、常同行動、多動、および不適切な発話を含む、ASDを罹患している子どもに共通する5つの領域における問題行動を評価している。
【0167】
対人応答性尺度(SRS)は、社会的認識、社会的情報処理、相互の社会的コミュニケーション能力、社会的不安/回避、および自閉症の先入観および特性を含む、社会的機能障害、自閉症における中心的な問題を評価する、65個の項目の尺度である。Constantino et al.,Validation of a brief quantitative measure of autistic traits:comparison of the social responsivenessscale with the autism diagnostic interview-revised.J Autism Dev Disord.2003 Aug;33(4):427-33を参照されたい。
【0168】
Vineland適応行動尺度第二版(VABS-II)は、4つの異なる領域:コミュニケーション、日常の生活技能、社会化、および運転技能、ならびに11個の下位領域における、機能レベルの評価基準である。素点を、年齢相当の得点に変換した。これは、問題行動を評価するABCを補完している。Sara et al.,Vineland Adaptive Behavior Scales,Second Edition(Vineland(商標)-II),Pearson Publishing,2005を参照されたい。
【0169】
GSRSおよびPGI-R3を、0、7、14、21、28、35、42、56、74、および130日目に評価した。ふん便記録を、治療中毎日評価した。CARS、ABC、およびSRSを、基準値、治療の終了、および観察期間の終了時に評価した。VABS-IIは長期にわたり、具体的な適応技能における変化を評価するので、短期間では感受性が低いと我々は考えていたため、VABS-IIを、基準値、および観察期間の終了時にのみ評価した。CARSを、専門の評価者が評価し、GSRS、PGI-R2、ABC、SRS、およびVABS-IIを、保護者が評価した。
【0170】
実施例10:最初の観察
GI症候:2週間のバンコマイシン、次に8週間の有益な細菌の間、大部分の子どもにおいてGI症候の迅速な改善があった。治療の終了時に、胃腸症候評価尺度(GSRS)に対する平均得点における82%の減少があった。(図1および図3)。図2および図5に示されているように、全4個のGSRSの下位尺度の領域(腹痛、消化不良、下痢、便秘)における、およそ等しい減少があった。子どものいずれも有意な逆流障害がなかったため、逆流の下位尺度における変化はなかった。18人中16人の子どもに、70%以上の減少があり、1人に、30%の減少があり、1人は、変化を示さなかった。直腸投与群および経口投与群の両方について、同様の結果が観察された。
【0171】
自閉症の症候:治療期終了時までに、保護者は、保護者全般印象の全般的な尺度に対するその子供の自閉症の症候を、非常に改善-4、改善-8、わずかに改善-5、ほとんど変化なし/変化なし-1として評価した。GI、発話、社会性、受容言語、認知、被刺激性/気分、不安、およびプレイスキルにおいて、最大の改善があった(図3)。経験豊かな評価者により評価された小児自閉症評価尺度(CARS)について、保護者による観察と一致するCARS得点、P<0.001、における22%の減少があった。異常行動チェックリスト(ABC)について、合計得点、P=0.001、における27%の減少があった(図4)。直腸投与群および経口投与群の両方について、同様の結果が観察された。
【0172】
治療後:治療後8週の観察期間を完了した最初の5人の参加者の中で、治療を受けない2カ月後、平均で、GI症候の改善における変化が観察されなかった(治療の終了時のGSRSにおける73%の減少対開始時、治療を受けけない8週後の71%の減少対開始時)。治療後の自閉症の症候に関して、PGI得点は、3人の参加者における中程度~大幅な改善、および2人の参加者における検出された変化なしを含めて、治療の終了時に収集された得点を超えて改善し続けた(図7)。治療後のCARS得点に関して、これらの5人の子どもは、治療の終了時のCARS得点における16%の減少、および治療を受けない(観察)期間の終了時の基準値と比較して25%の減少があった。したがって、治療の中止後であっても、症候における驚くべき継続的な改善があるように思われた。
【0173】
これらのデータは、10週のみの組み合わされた治療後に、小児自閉症評価尺度(CARS)を用いて割り当てられた自閉症の重症度得点における22%の減少を証明している(図3)。CARSに対する改善の程度は、年齢と相関していないように思われた(図6)。これは、治療がより幼い子どもおよび大人の両方に有用であることを示唆している。さらに、CARSに対する改善の程度は、最初のGSRS得点と相関していないように思われた(図8)。これは、治療が軽度のGI症候を有するもの、ならびにGI症候を有していないものに有用であることを示唆している。換言すると、本治療は、GI症候の存在または不存在に関わらず、自閉症の症候を減少させるのに有効であるように思われる。この観察結果は、ASDを罹患している子どもは、その胃腸症候から独立する腸内細菌の多様性が低いと我々が結論付けた、我々の先の試験(Kang et al.、PLOS One 8(7):e68322(2013))で報告されているデータと一致している。
【0174】
実施例11:最終結果および分析
臨床的に、この試験は、広範囲で成功した。第1に、すべてのASD参加者が、18週間の試験を完了した。第2に、胃腸症候評価尺度(GSRS)によって評価されたGI症候は、腹痛、消化不良、下痢、および便秘について有意に改善し、その結果、GSRSの平均得点は、治療の開始から終了までに82%低下し、治療の中止後8週で改善を維持した(基準値から77%の減少)(それぞれ、両側対t検定t=-9.45、P<0.001、t=-7.64、P<0.001)(図9、パネルa)。腹痛、消化不良、下痢、および便秘を含むGSRS評価の大部分の領域における一定かつ大幅な程度の改善(図10、パネルa)が観察された。試験の開始時に有意な逆流があった子どもはいなかったため、逆流における変化はほとんどなかった。注目すべきことに、2つの、一見すると反対のGI症候-下痢および便秘-が、MTT治療に有効に反応した。
【0175】
同様に、毎日のふん便記録(DSR)が、異常なふん便またはふん便のない日数における有意な減少を示し、これらの改善は、治療を受けない8週後に維持された(表5、図10、パネルb)。試験中のふん便の硬さ/軟らかさの変化を評価するために、毎日のふん便記録(DSR)を、2週間にわたって収集し、その平均値を求めた。全般的に、我々は、10週間のMTT治療中の62%~34%(P=0.001)の硬い、軟らかい/液体、およびふん便なしの日%を組み合わせた、「異常なふん便の日%」における有意な減少を観察した(表5および図10、パネルb)。観察期間中、下記の8週間、改善が安定して維持された。詳細には、「硬いふん便の日%」(1型または2型)および「軟らかい/液体のふん便の日%」(6型または7型)の両方が、10週間のMTT治療中に有意に減少したが、「ふん便なしの日%」における減少は、有意ではなかった(表5)。
【0176】
【表5】
【0177】
第3に、バンコマイシン治療による単なる一時的な副作用(主に軽度~中程度の多動および癇癪/攻撃性)があった(表4)が、血液化学における主な変化または長期的な副作用はなかった。
【0178】
これらのGIの改善を超えて、ASD関連の行動がまた、MTT後に改善した。第1に、17個のASD関連の症候を評価する、保護者全般印象(PGI-R)評価が、有意な改善および治療の終了後8週間逆戻りがないことを明らかにした(図9、パネルb)。さらに、GSRSとPGI-Rとの間の有意な負の相関(スピアマン相関検定は、r=-0.59およびP<0.001を示した、図11)は、GI症候がASD行動に影響を与え、これらを、MTTを用いて変えることができることを示唆している。10週でのMTT治療の終了時までに、保護者は、PGI-Rを用いたその子どもの自閉症の症候における変化を評価し、最大の改善は、PGI-Rの17個の下位尺度および「全般的な自閉症/関連する症候」中のGIの下位得点にあった(図12)。具体的には、PGI-Rの全般的な尺度が、非常に改善:n=4(22%)、改善:n=8(44%)、わずかに改善:n=5(28%)、ほとんど変化なし/変化なし:n=1(6%)として評価された。他の下位尺度における改善を、図12に示す。
【0179】
第2に、中心的なASD症候を評価する、小児自閉症評価尺度(CARS)は、治療の開始から終了までに22%、治療を受けない8週後に24%(基準値に対して)減少した(P<0.001、図9、パネルc)。
【0180】
第3に、ASDを罹患している子どもが、社会的技能障害を評価する、対人応答性尺度(SRS)(図9、パネルd)、ならびに被刺激性、多動、無気力、常同行動、および異常な発話を評価する、異常行動チェックリスト(ABC)(図9、パネルe)において、その得点における改善が見られた。図10、パネルcはまた、ASDを罹患している子どもに共通する行動:被刺激性、無気力、常同行動、多動、および不適切な発話に対する治療の影響を評価するためのABC分析のより詳細な分析結果を示している。全5個の下位尺度において、治療の終了時の有意な減少が観察された。
【0181】
第4に、Vineland適応行動尺度第二版(VABS-II)得点は、平均発育年齢が1.4歳(P<0.001、VABS-II)、MTT中のすべての下位領域にわたって増加され(図13)、最終的なVABS-II得点を通して、その歴年齢よりまだ低いことを見出した。VABS-IIは、11個の下位領域に基づく、4つの異なる領域:コミュニケーション、日常の生活技能、社会化、および運転技能における、機能レベルの評価基準である。11個の下位尺度中で、細かい全体的な運転技能は、Vinelandについてのこれら2つの下位尺度が最大6.8歳までに対してのみ計算されたものであり、ASDを罹患している大部分の子どもが尺度の限界近くまで改善したため、除外される。他の9個の下位尺度およびその平均を、基準値と試験の終了時との間で比較した。MTT治療により、基準値における5.4歳から試験の終了時に6.8歳まで、平均発育年齢における有意な増加を生じた(P<0.001)。試験の18週以内の1.4歳の進歩は、実質的な増加であるが、まだ10.9歳のその歴年齢未満に維持された。対人技能(2.2歳)、個人的生活技能(1.8歳)、および対処技能(1.7歳)における最大の進歩を含む、9個の下位尺度領域における有意な改善がまた、観察された(図13)。ASDにおける主な機能障害、すなわち、受容言語、表現言語、および対人能力は、それぞれ、3.1歳、4.5歳、および2.9歳の最初の発育年齢を含む、最も低い最初の得点中にあり、すべての3つの領域は、それぞれ、1.3、1.1、および2.2歳の実質的な改善があったということが留意される。
【0182】
最後に、MTTは、より若い個人からより高齢の個人の両方にわたって(年齢とGSRSまたはCARSの改善との間に有意な相関はない)、最初のMTTが経口的または直腸的に受容されたかどうかに関わらず、有益であるように思われる。我々の試料サイズ下で、MTTが最初に直腸的または経口的に投与されたかに関わらず、治療または臨床結果の有効性において、差異は観察されなかった。
【0183】
また、これらの調査結果は、MTTが、18人のASDを罹患している子どもの多様な年齢のコホートにわたって、安全で耐容良好であることを示している。MTTはまた、治療後少なくとも8週間保持される、GI症候および行動関連の症候の両方における有意な改善を生じさせるため、有効である。
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図2
図3
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図5
図6
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図9-1】
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図10
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