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特許7273084障害物検知装置、障害物検知方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】障害物検知装置、障害物検知方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20230502BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G08G1/00 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021047117
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146249
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000243881
【氏名又は名称】名古屋電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三浦 宗徳
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博司
(72)【発明者】
【氏名】大塚 久就
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-57113(JP,A)
【文献】国際公開第2011/043006(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/145141(WO,A1)
【文献】特開2016-175549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される障害物検知装置であって、
ユーザ操作に応じて、前記車両の幅方向の範囲である検知幅が異なる複数の範囲のうち一の範囲を障害物の検知範囲として設定する範囲設定部と、
前記範囲設定部により設定された前記検知範囲において前記障害物を検知した場合に、出力部に警報を出力させる警報部と、
前記範囲設定部により設定された前記検知範囲を示す範囲画像を表示する表示部と
を備え、
前記表示部は、前記範囲画像において、予め設定された第1の範囲に比べて前記検知幅の狭い範囲の前記範囲画像を表示する場合に、前記検知幅の狭い範囲と前記第1の範囲とにおいて重ならない範囲と、前記検知幅の狭い範囲と、を視認可能に表示する、障害物検知装置。
【請求項2】
前記障害物を検知する光学センサをさらに備える、請求項1に記載の障害物検知装置。
【請求項3】
前記範囲設定部は、前記第1の範囲と、前記検知幅のうち、前記車両の前進方向に向かって右側の幅が前記第1の範囲の前記右側の幅に比べて狭い第2の範囲と、前記検知幅のうち、前記前進方向に向かって左側の幅が前記第1の範囲の前記左側の幅に比べて狭い第3の範囲と、のいずれかの範囲を設定する、請求項1又は2に記載の障害物検知装置。
【請求項4】
前記車両の運転席に設置され、前記検知範囲の設定指示の前記ユーザ操作を受け付ける操作部をさらに備える、請求項1乃至3の何れか1項に記載の障害物検知装置。
【請求項5】
車両に搭載される障害物検知装置が実行する障害物検知方法であって、
ユーザ操作に応じて、前記車両の幅方向の範囲である検知幅が異なる複数の範囲のうち一の範囲を障害物の検知範囲として設定する範囲設定ステップと、
前記範囲設定ステップにおいて設定された前記検知範囲において前記障害物を検知した場合に、警報を出力する出力ステップと、
前記範囲設定ステップにおいて設定された前記検知範囲を示す範囲画像を表示する表示ステップと
を含み、
前記表示ステップでは、前記範囲画像において、予め設定された第1の範囲に比べて前記検知幅の狭い範囲の前記範囲画像を表示する場合に、前記検知幅の狭い範囲と前記第1の範囲とにおいて重ならない範囲と、前記検知幅の狭い範囲と、を視認可能に表示する、障害物検知方法。
【請求項6】
車両に搭載されるコンピュータを、
ユーザ操作に応じて、前記車両の幅方向の範囲である検知幅が異なる複数の範囲のうち一の範囲を障害物の検知範囲として設定する範囲設定部、
前記範囲設定部により設定された前記検知範囲において前記障害物を検知した場合に、警報を出力部に出力させる警報部及び
前記範囲設定部により設定された前記検知範囲を示す範囲画像を表示部に表示させる表示処理部
として機能させ、
前記表示処理部は、前記範囲画像において、予め設定された第1の範囲に比べて前記検知幅の狭い範囲の前記範囲画像を表示する場合に、前記検知幅の狭い範囲と前記第1の範囲とにおいて重ならない範囲と、前記検知幅の狭い範囲と、を視認可能に前記表示部に表示させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害物検知装置、障害物検知方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路に設置されたラバーコーン(カラーコーン(登録商標))などの規制材を回収する回収車が知られている。規制材は、比較的長い距離に渡って配置されていることがあり、このような場合には、回収車の荷台に作業者が位置し、回収車が後進しながら、作業者の人力で規制材が回収される。このような回収車の後方には、障害物を検知するセンサが設けられ、回収車が後進する範囲に障害物が検知されると、警報音が発せられる。
【0003】
このような技術として、特許文献1には、後方レーダが車両の後方を監視し、接近車両を検出すると警報信号を発生させる技術が開示され、さらに、警報信号の発生を、車両が停止している場合に制限することで、不要な警報を減少させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭60-63480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
道路上に配置された規制材は、車両の走行可能な領域と規制される領域の境界位置に設置されることが多い。このため、上述の回収車等に搭載されたセンサにおいて、規制材が、検知範囲内に存在する障害物として誤って検知されてしまう場合がある。この場合、実際には、想定される障害物(規制材以外の物体)が存在しないにもかかわらず警報音が発せられることになり、警報の信頼性が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みなされたもので、車両に搭載される障害物検知装置における障害物の誤検出を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、車両に搭載される障害物検知装置であって、ユーザ操作に応じて、前記車両の幅方向の範囲である検知幅が異なる複数の範囲を障害物の検知範囲として設定する範囲設定部と、前記範囲設定部により設定された前記検知範囲において前記障害物を検知した場合に、出力部に警報を出力させる警報部とを備える。
【0008】
また、本発明の他の形態は、車両に搭載される障害物検知装置であって、障害物の検知範囲の外側の範囲であって、かつ前記車両の幅方向において前記検知範囲から所定距離の範囲である判定範囲内に規制材が設置されている場合に、前記判定範囲内に前記規制材が設置されていない場合に比べて、前記検知範囲における前記幅方向の範囲である検知幅を狭くする範囲設定部と、前記範囲設定部により設定された前記検知範囲において前記障害物を検知した場合に、出力部に警報を出力させる警報部とを備える。
【0009】
また、本発明の他の形態は、車両に搭載される障害物検知装置が実行する障害物検知方法であって、ユーザ操作に応じて、前記車両の幅方向の範囲である検知幅が異なる複数の範囲を障害物の検知範囲として設定する範囲設定ステップと、前記範囲設定ステップにおいて設定された前記検知範囲において前記障害物を検知した場合に、警報を出力する出力ステップとを含む。
【0010】
車両に搭載され、障害物を検知する障害物検知装置が実行する障害物検知方法であって、障害物の検知範囲の外側の範囲であって、かつ前記車両の幅方向において前記検知範囲から所定距離の範囲である判定範囲内に規制材が設置されている場合に、前記判定範囲内に前記規制材が設置されていない場合に比べて、前記検知範囲における前記幅方向の範囲である検知幅を狭くする範囲設定ステップと、前記範囲設定ステップにおいて設定された前記検知範囲において前記障害物を検知した場合に、出力部に警報を出力させる出力ステップとを含む。
【0011】
車両に搭載されるコンピュータを、ユーザ操作に応じて、前記車両の幅方向の範囲である検知幅が異なる複数の範囲を障害物の検知範囲として設定する範囲設定部、及び前記範囲設定部により設定された前記検知範囲において前記障害物を検知した場合に、警報を出力部に出力させる警報部として機能させるためのプログラムである。
【0012】
車両に搭載されるコンピュータを、障害物の検知範囲の外側の範囲であって、かつ前記車両の幅方向において前記検知範囲から所定距離の範囲である判定範囲内に規制材が設置されている場合に、前記判定範囲内に前記規制材が設置されていない場合に比べて、前記検知範囲における前記幅方向の範囲である検知幅を狭くする範囲設定部、及び前記範囲設定部により設定された前記検知範囲において前記障害物を検知した場合に、出力部に警報を出力させる警報部として機能させるためのプログラムである。
【0013】
以上説明した本発明の構成によれば、障害物の検知範囲を異ならせることで、検知範囲における障害物の誤判定を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係る検障害物検知装置の構成を示す図である。
図2】距離画像の一例を示す図である。
図3】検知範囲の説明図である。
図4】検知範囲設定処理を示すフローチャートである。
図5】検知範囲画像の一例を示す図である。
図6】障害物検知処理を示すフローチャートである。
図7】第2の実施形態に係る障害物検知装置の構成を示す図である。
図8】第2の実施形態に係る検知範囲設定処理を示すフローチャートである。
図9】検知範囲画像の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)第1の実施形態:
(2)第2の実施形態:
(3)変形例:
【0016】
(1)第1の実施形態:
図1は、第1の実施形態に係る障害物検知装置10の構成を示す図である。障害物検知装置10は、制御部11と、記録媒体12と、操作部13と、表示部14と、スピーカ15と、距離画像センサ16と、を備える。障害物検知装置10は、例えば、ラバーコーン等の規制材を回収する回収車などの車両に搭載される。規制材の回収時には、回収車は、規制材が設置された道路を後進する。回収車の後進中、作業者が道路脇に設置された規制材を回収していく。障害物検知装置10は、回収車が後進する間、後進先の路面において障害物の有無を検知し、障害物が検知された場合に警報を出力する。距離画像センサ16は、例えば、車両の荷台後方に設置され、車両後方の距離画像を取得する。制御部11、記録媒体12、操作部13、表示部14及びスピーカ15は、運転席付近に設置される。
【0017】
制御部11は、CPUとRAMとROM等を備えたコンピュータである。制御部11は、記録媒体12やROMに記憶された種々のプログラムを実行することで、障害物の検知などの処理を行う。記録媒体12は、各種プログラムや各種情報を格納する。操作部13は、不図示のボタン等であり、ユーザ操作を受け付ける。表示部14は、各種情報を表示する。スピーカ15は、警報音を出力する。
【0018】
距離画像センサ16は、投光部161と受光部162とを有し、距離画像センサ16と物体との距離を示す距離画像を撮影する。投光部161は、複数のLEDを有している。受光部162は、2次元に配置された複数の受光素子を有している。投光部161の投光タイミングから、投光された光を受光素子が受光するまでの時間を距離に換算することで物体までの距離が得られる。2次元に配置された各受光素子が、投光された領域に対応した光を受光するので、2次元に配置された受光素子それぞれの受光結果から、2次元の距離画像が得られる。なお、距離画像センサ16としては、例えば、Time-of-flightカメラが挙げられる。ここで、距離画像センサ16は、光学センサの一例である。
【0019】
図2は、距離画像センサ16により得られる距離画像20の一例を示す図である。距離画像センサ16は、撮影範囲内に、車両の後方の所定の距離までの路面でかつ道路の幅方向においては、車両の中心を中心とし、車幅よりも広い範囲の路面を撮影可能なように、その撮影方向が調整されているものとする。なお、距離画像センサ16は、後述の検知範囲200を含む距離画像が得られるように、撮影方向が調整されていればよい。
【0020】
図2に示すように、本実施形態の制御部11は、距離画像内において、障害物の検知範囲200を設定し、検知範囲200内に物体が検知された場合に、障害物が検知されたと判定する。すなわち、検知範囲200は、距離画像のうち、障害物検知を行う対象となる範囲である検知範囲200は、回収車の走行予定の領域である。
【0021】
検知範囲200は、道路上の車両の走行方向に一定距離の範囲で、且つ車幅に対応した範囲である。ただし、図2に示すように、道路にラバーコーンなどの規制材Aが設置されている場合、その設置位置は、検知範囲200の外側ではあるが、検知範囲200の境界線ギリギリの位置である場合が多い。このため、実際には検知範囲200に存在しないにも関わらず、検知位置の誤差に起因し、検知範囲200内に規制材Aが存在すると誤判定される可能性がある。特に、規制材Aとして高輝度反射材を使用したラバーコーンが設置されている場合、投光部161から照射された光は、高輝度反射材により拡散反射してしまう。このため、図2に示すように、拡散反射に起因し、点線円Bで示すように実際の規制材Aよりも広い範囲が物体として誤って検知される場合がある。この場合、検知範囲200内に物体が存在すると誤判定されてしまう。
【0022】
本実施形態の制御部11は、このような誤判定を防ぐための処理を行うための機能構成として、センサ制御部111と、距離演算部112と、物体検知部113と、範囲設定部114と、障害物検知部115と、警報部116と、を備える。これらの機能は、制御部11のCPUが、ROM等に格納された障害物検知プログラム110を読み出し、これを実行することにより実現される。すなわち、以下において、センサ制御部111、距離演算部112、物体検知部113、範囲設定部114、障害物検知部115及び警報部116が行うものとして記載する処理は、制御部11(CPU)が実行する処理である。
【0023】
センサ制御部111は、距離画像センサ16の投光部161の投光タイミングの制御など、測距に係る処理を行う。距離演算部112は、距離画像センサ16の検出結果、すなわち距離画像センサ16の投光部161の投光のタイミングから受光部162の受光タイミングまでの時間から距離を演算することで、2次元の距離画像を生成する。
【0024】
物体検知部113は、距離画像に基づいて物体を検出する。本実施形態においては、物体検知部113は、距離が連続的に変化する領域を路面と判定し、路面よりも近い距離が検知された場合に、物体として検出する。物体検知部113は、また、距離画像において距離が不連続になる線を境界線として物体を検出してもよい。
【0025】
範囲設定部114は、操作部13がユーザ操作に応じて検知範囲の設定指示を受け付けると、設定指示に従い、検知範囲を設定する。本実施形態においては、範囲設定部114は、通常範囲、右側制限範囲及び左側制限範囲の3つの検知範囲を設定可能であるものとする。
【0026】
図3は、検知範囲を示す図である。図3(A)は、通常範囲210を示す図である。図3(B)は、右側制限範囲220を示す図である。図3(B)は、左側制限範囲230を示す図である。なお、ここでは、車両Cの前進方向に向かって右及び左をそれぞれ検知範囲(通常範囲210、右側制限範囲220及び左側制限範囲230)の右及び左と称する。また、各検知範囲(通常範囲210、右側制限範囲220及び左側制限範囲230)のうち、車両Cの幅方向yの範囲をそれぞれ検知幅W1、W2、W3と称する。また、検知幅W1、W2、W3のうち、幅方向yにおける車両の中心に対応する位置を、基準点Pと称する。基準点Pは、通常範囲210の検知幅W1の中心と一致する点である。また、検知幅W1、W2、W3のうち、右側の幅をそれぞれ右幅R1、R2、R3と称する。検知幅W1、W2、W3のうち、左側の幅をそれぞれ左幅L1、L2、L3と称する。ここで、右幅R1、R2、R3は、それぞれ基準点Pから検知範囲(通常範囲210、右側制限範囲220及び左側制限範囲230)の右端211、221、231までの範囲である。左幅L1、L2、L3は、それぞれ基準点Pから検知範囲(通常範囲210、右側制限範囲220及び左側制限範囲230)の左端212、222、232までの範囲である。
【0027】
通常範囲210、右側制限範囲220及び左側制限範囲230は、互いに検知幅W1、W2、W3が異なる範囲である。より詳しくは、通常範囲210の検知幅W1は、右側制限範囲220の検知幅W2及び左側制限範囲230の検知幅W3よりも長い。また、右側制限範囲220と左側制限範囲230の検知幅W2、W3は、その長さは等しいが、その位置が異なる。
【0028】
図3(A)に示すように、通常範囲210の検知幅W1は、車両Cの幅と等しい長さ及び位置に設定されている。なお、検知幅W1の長さ及び位置は、車両Cの幅及び位置を基準に予め設定されていればよく、車両Cの幅と異なる長さ及び位置が設定されてもよい。本実施形態においては、通常範囲210の右幅R1及び左幅L1は、いずれも1mに設定され、検知幅W1は、2m(1m×2)である。
【0029】
図3(B)に示すように、右側制限範囲220の右幅R2は、通常範囲210の右幅R1よりも狭い。すなわち、右側制限範囲220の右端221は、通常範囲210の右端211よりも基準点Pの近くに位置する。例えば、右側制限範囲220の右幅R2の長さは、通常範囲210の右幅R1の長さよりも20cm短く設定される。なお、右側制限範囲220の左幅L2は、通常範囲210の左幅L1と等しい。
【0030】
図3(B)に示すように、車両Cの右側に規制材Aが設置されているとする。この場合、右側制限範囲220のように、右幅R2を、通常範囲210の右幅R1よりも狭い範囲とすることで、規制材Aと右側制限範囲220の間の距離を、規制材Aと通常範囲210の間の距離よりも長くできる。したがって、規制材Aが障害物と誤判定されるのを防ぐことができる。
【0031】
また、図3(C)に示すように、左側制限範囲230の左幅L3は、通常範囲210の左幅L1よりも狭い。すなわち、左側制限範囲230の左端232は、通常範囲210の左端212より基準点Pの近くに位置する。例えば、左側制限範囲230の左幅L3の長さは、通常範囲210の左幅L1の長さよりも20cm短く設定される。なお、左側制限範囲230の右幅R3は、通常範囲210の右幅R1と等しい。
【0032】
図3(C)に示すように、車両Cの左側に規制材Aが設置されているとする。この場合、左側制限範囲230のように、左幅L3を、通常範囲210の左幅L1よりも狭い範囲とすることで、規制材Aと左側制限範囲230の間の距離を、規制材Aと通常範囲210の間の距離よりも長くできる。したがって、規制材Aが障害物と誤判定されるのを防ぐことができる。このように、範囲設定部114は、検知幅が異なる複数の範囲、より詳しくは、右幅及び左幅の少なくとも一方の長さが異なる複数の範囲を、検知範囲として設定することができる。
【0033】
なお、通常範囲210、右側制限範囲220及び左側制限範囲230の走行方向xにおける範囲は、等しいものとする。ここで、走行方向xは、道路において車両(回収車)が走行(前進及び後進を含む)する方向である。
【0034】
右側制限範囲220及び左側制限範囲230の位置及びサイズは、予め設定されているものとする。右側制限範囲220における右幅R2及び左側制限範囲230の左幅L3は、規制材Aが検知範囲内に存在すると判定される誤差範囲を含まないような長さに設定されるものとする。また、他の例としては、右側制限範囲220における右幅R2及び左側制限範囲230の左幅L3は、高輝度反射材に起因して物体が存在すると判定され得る範囲を含まないような長さに設定されてもよい。なお、通常範囲210、右側制限範囲220及び左側制限範囲230は、それぞれ第1の範囲、第2の範囲及び第3の範囲の一例である。
【0035】
図1に示す操作部13は、通常範囲210、右側制限範囲220及び左側制限範囲230を切り替えるためのスイッチを含む。このスイッチは、運転席の近くに配置されているものとする。スイッチへのユーザ操作が行われる度に、範囲設定部114は、通常範囲210、右側制限範囲220及び左側制限範囲230の順に検知範囲の設定を切り替える。このように、スイッチが運転席近くに配置されているので、運転者は、席に座ったまま、検知範囲を設定することができる。範囲設定部114は、スイッチのユーザ操作に応じて、障害物の検知範囲として、通常範囲210、右側制限範囲220及び左側制限範囲230の異なる複数の範囲を設定する。範囲設定部114はさらに、検知範囲が設定されると、設定された検知範囲を示す範囲画像を表示部14に表示させる。
【0036】
図1に示す、障害物検知部115は、物体検知部113による検知結果と、範囲設定部114による検知範囲とを参照し、検知範囲内において物体が検知された場合に、障害物が検知されたと判定する。警報部116は、障害物が検知された場合に、警報音を出すようスピーカ15を制御する。スピーカ15は、出力部の一例である。
【0037】
図4は、検知範囲設定処理を示すフローチャートである。ステップS100において、範囲設定部114は、検知範囲の設定を切り替えるためのスイッチの状態が変化したか否かを判定する。なお、初期状態においては、検知範囲は、通常範囲210に設定されているものとする。スイッチの状態は、ユーザ操作に応じて変化する。範囲設定部114は、スイッチの状態が変化するまで待機し(ステップS100でN)、スイッチの状態が変化すると(ステップS100でY)、処理をステップS102へ進める。ステップS102において、範囲設定部114は、スイッチへのユーザ操作に応じて受け付けた設定指示に従い、検知範囲を更新する。検知範囲は、例えば、記録媒体12等の記憶部に記憶されており、範囲設定部114は、設定指示に従い、記憶部に設定されている検知範囲を更新する。例えば、通常範囲210から右側制限範囲220、というように検知範囲の設定が更新される。
【0038】
次に、ステップS104において、範囲設定部114は、検知範囲を示す検知範囲画像を表示部14に表示させる。図5は、検知範囲画像30の表示例を示す図である。図5に示す検知範囲画像30においては、紙面の左側から順に、通常範囲210、左側制限範囲230及び右側制限範囲220を示す「通常」、「左」及び「右」のアイコンが表示されている。そして、現在設定されている検知範囲に対応するアイコンが他のアイコンと異なる色で表示される。図5の例では、左側制限範囲230が設定されていることに対応し「左」のアイコンが他のアイコンと異なる色で表示されている。範囲設定部114は、ステップS104の処理の後、処理をステップS100へ進め、スイッチ状態変化の検出を継続する。
【0039】
図6は、障害物検知処理を示すフローチャートである。障害物検知処理は、例えば、ユーザ操作により開始指示が入力された場合に開始される。障害物検知処理は、回収車が規制材の回収のために、後進している間継続して実行される。ステップS200において、センサ制御部111は、距離画像センサ16による撮影を開始させ、距離演算部112は、距離画像を取得する。次に、ステップS202において、物体検知部113は、距離画像において、物体を検知する。
【0040】
次に、ステップS204において、障害物検知部115は、記憶部を参照し、ステップS204の処理の時点において記憶部に設定されている検知範囲が、通常範囲210、右側制限範囲220及び左側制限範囲230のいずれであるかを特定する。例えば、ユーザ操作により通常範囲210が設定されている場合には、記憶部には通常範囲210が設定されているため、通常範囲210が特定される。また、例えば、ユーザ操作により右側制限範囲220又は左側制限範囲230が設定されている場合には、それぞれ右側制限範囲220又は左側制限範囲230が特定される。
【0041】
次に、ステップS206において、障害物検知部115は、ステップS204において特定した検知範囲を対象として、ステップS202において検知された物体が検知範囲内に存在するか、検知範囲外に存在するかを判定する。次に、ステップS208において、障害物検知部115は、障害物が検知されたか否かを判定する。具体的には、障害物検知部115は、検知範囲内に位置する物体が存在する場合には、障害物が検知されたと判定する。障害物検知部115は、検知範囲内に位置する物体が存在しない場合には、障害物は検知されなかったと判定する。障害物検知部115は、距離画像において物体が検知されなかった場合も、障害物が検知されなかったと判定する。
【0042】
障害物検知部115は、障害物が検知された場合には(ステップS208でY)、処理をステップS210へ進める。障害物検知部115は、障害物が検知されなかった場合には(ステップS208でN)、処理をステップS212へ進める。ステップS210において、警報部116は、警報を出力する。本実施形態においては、スピーカ15から警報音が出力される。なお、警報の出力形態は、実施形態に限定されるものではない。他の例としては、障害物検知装置10は、例えば、出力部としてランプを備え、警報部116は、ランプを点灯又は点滅させてもよい。また、他の例としては、警報部116は、障害物が存在することを示す警報情報を、出力部としての表示部14に表示してもよい。また、警報部116は、表示と音声出力というように、複数の出力を行ってもよい。
【0043】
次に、ステップS212において、制御部11は、操作部13を介してユーザから障害物検知処理の終了指示を受け付けたか否かを確認する。制御部11は、終了指示を受け付けなかった場合には(ステップS212でN)、処理をステップS200へ進め、以降の処理を繰り返す。このように、制御部11は、一定期間経過する度に距離画像を取得し、障害物の検知を行う。一方、制御部11は、終了指示を受け付けた場合には(ステップS212でY)、障害物検知処理を終了する。
【0044】
以上のように、本実施形態の障害物検知装置10は、ユーザ操作に応じて、障害物の検知範囲として、異なる複数の範囲を設定することができる。これにより、例えば、車両が走行予定の範囲に近接して規制材が設置されている場合には、規制材に近い範囲を検知範囲から除外するように、検知範囲を設定することができる。したがって、検知範囲において、規制材を誤って障害物として判定するのを防ぐことができる。このように、障害物検知装置10は、障害物の検知範囲として、異なる複数の範囲を設定することができるため、検知範囲における障害物の誤判定を防ぐことができる。
【0045】
(2)第2の実施形態:
図7は、第2の実施形態に係る障害物検知装置100について、第1の実施形態に係る障害物検知装置10と異なる点を主に説明する。第2の実施形態に係る障害物検知装置100は、第1の実施形態に係る障害物検知装置100の構成に加えて、撮像装置17をさらに備える。また、制御部18は、機能構成として、第1の実施形態において説明した機能構成に加えて、撮像装置制御部117及び規制材検知部118を備える。制御部18の機能構成は、CPUがROM等に格納された障害物検知プログラム180を読み出し、これを実行することにより実現される。
【0046】
撮像装置17は、撮像装置制御部117の制御の下、通常範囲210を含む領域を撮影する。規制材検知部118は、撮像装置17により得られた撮像画像に基づいて通常範囲210を基準とした判定範囲において規制材Aを検知する。ここで、判定範囲は、通常範囲210の両側に設けられる。判定範囲の一方は、通常範囲210の外側で、且つ通常範囲210の右端211から、車両の幅方向yに沿って所定距離までの範囲である。判定範囲の他方は、通常範囲210の外側で、かつ通常範囲210の左端212から、幅方向yに沿って所定距離までの範囲である。なお、所定距離は例えば50cmとする。本実施形態においては、記録媒体12等の記憶部に、規制材の特徴量が設定されており、規制材検知部118は、撮像画像と、記憶部に格納されている特徴量とを比較することで規制材を検知する。範囲設定部114は、規制材検知部118の検知結果に基づいて、検知範囲を設定する。本処理については、図8を参照しつつ説明する。
【0047】
図8は、第2の実施形態に係る検知範囲設定処理を示すフローチャートである。本実施形態の検知範囲設定処理は、操作部13に入力されたユーザ操作に対応して、検知範囲設定の指示を受け付けた場合に、検知範囲設定処理が実行される。
【0048】
まず、ステップS300において、撮像装置制御部117は、撮像装置17に撮像を実行させ、規制材検知部118は、撮像画像を取得する。次に、ステップS302において、規制材検知部118は、判定範囲において規制材が検知されたか否かを判定する。規制材検知部118は、規制材が検知されなかった場合には(ステップS302でN)、処理をステップS304へ進める。ステップS304において、範囲設定部114は、検知範囲として通常範囲210を記憶部に設定し、その後処理をステップS310へ進める。
【0049】
ステップS302において、通常範囲210の右側の判定範囲において規制材が検知された場合には(ステップS302で右側にあり)、処理をステップS306へ進める。ステップS306において、範囲設定部114は、検知範囲として右側制限範囲220を記憶部に設定し、その後処理をステップS310へ進める。ステップS302において、通常範囲210の左側の判定範囲において規制材が検知された場合には(ステップS302で左側にあり)、処理をステップS308へ進める。ステップS308において、範囲設定部114は、検知範囲として左側制限範囲230を記憶部に設定し、その後処理をステップS310へ進める。
【0050】
ステップS310において、範囲設定部114は、直前に実行された処理(ステップS304、ステップS306、又はステップS308)において、検知範囲が変更されたか否かを判定する。ステップS304、ステップS306又はステップS308において、既に記憶部に記憶されていた検知範囲を、異なる検知範囲に更新した場合には検知範囲が変更されたと判定する。範囲設定部114は、検知範囲が変更されていない場合には(ステップS310でN)、制御部18は、検知範囲設定処理を終了する。
【0051】
検知範囲が変更された場合には(ステップS310でY)、範囲設定部114は、処理をステップS312へ進める。ステップS312において、範囲設定部114は、検知範囲を示す検知範囲画像の表示を新たな検知範囲の設定に応じて更新する。例えば、通常範囲210から右側制限範囲220に変更された場合には、範囲設定部114は、他のアイコンと異なる色で示すアイコンを「通常」のアイコンから「右」のアイコンに変更する。以上で、検知範囲設定処理が完了する。
【0052】
なお、第2の実施形態に係る障害物検知装置100のこれ以外の構成及び処理は、第1の実施形態に係る障害物検知装置10の構成及び処理と同様である。
【0053】
以上のように、第2の実施形態に係る障害物検知装置100は、第1の実施形態の障害物検知装置10と同様に、検知範囲において、規制材を障害物と誤判定するのを防ぐことができる。さらに、検知範囲の設定のためのユーザ操作を不要とすることができる。すなわち、操作性を向上させることができる。
【0054】
(3)変形例:
以上の実施形態は、本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、障害物検知装置10は、複数の装置によって実現されてもよい。例えば、障害物検知装置10は、障害物を検知する検知装置と、警報音を出力する音声出力装置とを含んでもよい。また、上述の実施形態の一部の構成が省略されてもよいし、処理の順序が変動または省略されてもよい。
【0055】
第1の変形例としては、障害物検知装置10の各部が設置される位置は実施形態に限定されるものではない。例えば、操作部13は、規制材の回収等を行う作業者が乗車する荷台に設けられ、作業者が、検知範囲を設定するためのユーザ操作を行うこととしてもよい。また、他の例としては、運転席に設けられた表示部14の他に、荷台にも表示部が設けられてもよい。この場合、荷台の表示部にも、検知範囲が表示される。これにより、運転者だけでなく、作業者も検知範囲を確認することができる。
【0056】
第2の変形例としては、障害物検知装置10は、距離画像センサ16を備えなくてもよい。この場合、障害物検知装置10は、距離画像センサ16等の光学センサにより得られた距離画像をセンサから有線又は無線の通信を介して取得すればよい。
【0057】
第3の変形例としては、障害物検知装置10が搭載される車両は、障害物の検知が必要となる車両であればよく、実施形態に限定されるものではない。他の例としては、ラバーコーンの設置を行う際に利用される車両や、自走式の標識車両などが挙げられる。
【0058】
第4の変形例としては、障害物検知装置10による障害物検知の対象となる検知範囲は、車両の後方に限定されるものではない。他の例としては、車両が前進する場合には、検知範囲は、車両の前方であってもよい。
【0059】
第5の変形例としては、障害物検知装置10において設定可能な範囲の数は、3つに限定されるものではない。他の例としては、制御部11は、高輝度反射材を使用した規制材が設置されている場合には、高輝度反射材が使用されていない規制材が設置されている場合よりも、さらに、設置側の幅が狭い検知範囲を設定可能であってもよい。この場合、検知範囲として、通常範囲とに加えて、右側制限範囲として、右幅の異なる2段階の範囲が設定可能であり、さらに左側制限範囲としても左幅の異なる2段階の範囲が設定可能であってもよい。
【0060】
第6の変形例としては、検知範囲画像は、実施形態において説明したようなボタン表示に限定されるものではない。他の例としては、図9に示すように、検知範囲画像40は、検知範囲の画像を含んでもよい。図9に示す検知範囲画像40は、左側制限範囲230を示す画像である。このように、制御部11は、左側制限範囲230に対応した検知範囲42と、左側制限範囲において、通常範囲210から除外された範囲41とを視認可能に示してもよい。これにより、運転者等は、設定されている検知範囲を視覚的に容易に認識することができる。
【0061】
第7の変形例について説明する。本実施形態においては、距離画像において物体検知を行い、検知された物体が検知範囲内に存在するか否かにより障害物の有無を判定した。ただし、障害物検知のための処理は実施形態に限定されるものではない。他の例としては、障害物検知装置10は、距離画像における検知範囲内に対応した受光素子のみを動作させることにより、検知範囲内の距離画像を取得することとしてもよい。この場合、障害物検知装置10は、距離画像内に物体が検出された場合に、これを障害物と判定する。なお、検知範囲に対応する受光素子ついては、受光素子の位置と、受光素子に対応した距離画像中の位置との対応テーブルを作成し、対応テーブルを参照することで、特定することができる。この対応テーブルを参照することで、各検知範囲が設定された場合にオンすべき受光素子の位置が、障害物検知装置10の出荷前に障害物検知装置10に設定されるものとする。
【0062】
第8の変形例について説明する。本実施形態においては、通常範囲210の右幅R1及び左幅L1は等しい長さとしたが、これらの長さは異なっていてもよい。また、右側制限範囲220の右幅R2は、通常範囲210の右幅R1よりも短ければよく、左側制限範囲230の左幅L2と等しい長さでなくてもよい。
【0063】
第9の変形例について説明する。第2の実施形態において説明したように、判定範囲内に規制材が設置されているかを参照する場合には、制御部18は、判定範囲内に規制材が設置されている場合には、判定範囲内に規制材が設置されていない場合に比べて、検知範囲の検知幅を狭くすればよい。これにより、検知範囲において規制材が障害物として誤検出されるのを防ぐことができる。
【0064】
さらに、制御部18は、判定範囲のうち、通常範囲210の右側の範囲に規制材が設置されている場合には、規制材が設置されていない場合に比べて検知幅のうち右側の幅を狭くすればよく、このための処理は実施形態に限定されるものではない。また、制御部18は、判定範囲のうち、通常範囲210の左側の範囲に規制材が設置されている場合には、規制材が設置されていない場合に比べて、検知幅のうち左側の幅を狭くすればよく、このための処理は実施形態に限定されるものではない。
【0065】
本発明のように、検知範囲を異ならせる手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0066】
10、100…障害物検知装置、11…制御部、12…記録媒体、13…操作部、14…表示部、15…スピーカ、16…距離画像センサ、17…撮像装置、110…障害物検知プログラム、111…センサ制御部、112…距離演算部、113…物体検知部、114…範囲設定部、115…障害物検知部、116…警報部、117…撮像装置制御部、118…規制材検知部、161…投光部、162…受光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9