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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】イオン注入のためのアンチモン含有材料
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/08 20060101AFI20230502BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20230502BHJP
   C23C 14/48 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
H01J37/08
H01L21/265 603A
H01L21/265 F
C23C14/48 A
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021053687
(22)【出願日】2021-03-26
(62)【分割の表示】P 2020508473の分割
【原出願日】2018-08-22
(65)【公開番号】P2021114467
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】16/106,197
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/548,688
(32)【優先日】2017-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】392032409
【氏名又は名称】プラクスエア・テクノロジー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アーロン・レイニッカー
(72)【発明者】
【氏名】アシュウィニ・ケイ・シンハ
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・シー・ヘイダーマン
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-127976(JP,A)
【文献】特開2015-026623(JP,A)
【文献】特表2001-501772(JP,A)
【文献】特開2017-120755(JP,A)
【文献】特開2016-104912(JP,A)
【文献】特開2010-232668(JP,A)
【文献】特開2010-161072(JP,A)
【文献】特開平05-279850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/08
H01L 21/265
C23C 14/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Sb含有イオンを注入するためのイオン源を操作する方法であって、
少なくとも0.1sccm以上の流量で気相のアンチモン含有材料をアークチャンバ内へ導入することと、
前記組成物をイオン化して、前記アークチャンバ内にSb含有イオンを生成することと、
前記Sb含有イオンを基材内に注入することと、を含み、
グリッチが、50時間のイオン源寿命にわたって1分当たり1グリッチ以下であり、
前記気相で貯蔵されているときの前記アンチモン含有組成物が、前記気相の加熱のない状態で前記アークチャンバに提供され、
気相のアンチモン含有材料を液からの蒸発によって生成する、
前記方法。
【請求項2】
有効量の水素含有化合物を前記アークチャンバ内に導入することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イオン源を操作する前記方法の間に、前記アンチモン含有組成物の蒸発速度を維持して、少なくとも0.1sccm以上の流量で前記気相を生成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
摂氏65を超えないように前記気相の前記アンチモン含有材料の温度を維持することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
50~150Vのアーク電圧で前記イオン源を操作することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン注入のための新規なアンチモン含有材料、並びにイオン注入プロセスのための材料の貯蔵及び送達に好適な条件に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン注入は、半導体/超小型電子製造における重要なプロセスである。イオン注入プロセスは、典型的には、半導体ウエハにドーパント不純物を導入するために、集積回路の製造において使用される。一般的に言えば、半導体用途に関しては、イオン注入は、所望の方法にて、ウエハの物理的、化学的及び/又は電気的特性を変化させるために、通常、ドーパント不純物とも呼ばれるドーパントガスからの、イオンの半導体ウエハへの導入を伴う。所望のドーパント不純物は、ウエハの表面へと、所望の深さにて、ドープ域を形成するために、微量で半導体ウエハへと導入される。ドーパント不純物は、半導体ウエハと結合して電気キャリアを生成し、それにより、半導体ウエハの導電率を変化させるために選択される。ウエハに導入されたドーパント不純物の濃度又は用量は、ドープ域の導電率を決定する。このようにして、半導体デバイスとして集合的に機能するトランジスタ構造体、絶縁構造体、及びその他の電子構造体を形成するために、いくつかの不純物領域が形成される。
【0003】
イオン源は、供給源であるドーパントガスからイオン種のイオンビームを発生させるために使用される。イオン源は、イオン注入システムの重要な構成要素であり、このイオン源は、注入プロセス中に注入される特定のドーパントイオンを生成するためにドーパントガスをイオン化する役割を果たす。イオン源チャンバは、タングステン(W)又はタングステン合金で作製されたフィラメントなどのカソードを含み、これは、その熱電子発電温度まで加熱されて電子を発生させる。電子は、アークチャンバ壁に向かって加速し、アークチャンバ内のドーパント源ガス分子と衝突してプラズマを発生させる。プラズマは、ドーパントガス種の解離イオン、ラジカル、並びに中性原子及び分子を含む。イオン種はアークチャンバから抽出され、次に、質量に基づいてその他のイオン種から分離される。特定の質量電荷比に基づいたビーム内のイオンのみが、フィルタを通過することができる。イオンの選択された質量は、所望のイオン種を含有し、このイオン種は、次に標的基材に向けられて、必要な深さ及び用量にて標的基材へと注入される。
【0004】
現在の半導体デバイス技術は、p型及びn型半導体を製造するために、特定の量にて種々のドーパント種を利用しており、これらの両方は、トランジスタ及びダイオード電子デバイスの製造のための構成要素とみなされる。p型ドーパントとn型ドーパントとの差は、主に、半導体結晶格子へと導入される電荷担持種に関連する。p型ドーパントは、半導体材料中に自由電子を発生させるためにn型ドーパントが使用されている間に、価電子帯における電子欠損を生じさせることにより、半導体材料において電子「孔」を発生させるために使用される。アンチモン(Sb)は、今日の電子デバイスに必要とされる一般的に使用されるドーパント種の一例である。Sbは、半導体産業において関心を集め続けている多くの望ましい用途を伴うn型ドーパントである。例えば、インジウムアンチモンは、赤外線検出器として使用される狭バンドギャップIII-V半導体である。アンチモンはまた、finFETデバイス内に超浅のp-n接合部と、MOSFET内のチャネルの閾値電圧調整と、pMOSデバイスにおけるパンチスルー停止ハロー注入、及びゲルマニウムn-MOSFETにおけるソース・ドレイン領域と、を形成するために使用される。
【0005】
現在では、Sbの固体源は、ドーパント材料として使用されている。元素状Sb金属は、フィラメントにごく接近して位置付けることにより、イオン注入のために使用することができる。イオン注入の間、フィラメントの温度は十分に高く、これにより、放射加熱によりSbが蒸発して電子と衝突し、ドーピングのためのSb含有イオンを生じさせる。しかし、本方法は、Sbをチャンバ壁に、又はフィラメント上に堆積させる場合があり、フィラメントの寿命を短くする。Sbの固体化合物はまた、SbF、SbCl、及びSbなどのドーパント源としても使用されるが、これらの化合物は、イオン注入に必要な十分な量の蒸気を発生させるために、160℃超まで加熱する必要がある。加えて、システム内の全てのフローラインは、典型的には、アークチャンバに到達する前に、Sbの固体源の再凝結を防止するために加熱される。
【0006】
Sb含有イオンを注入するためのSbの固体源の操作的課題を考慮し、Sbのガス源が想到されてきた。特に、SbH及びSbDは、Sbのガス状源として提案されてきたが、これらの化合物は、室温にて不安定かつ分解している。
【0007】
今日イオン注入に利用できる、いかなる現在有望なSbドーパント源も存在しない。従来のイオン注入システムにおいて使用することができる信頼性の高いSbドーパント源に対する、満たされていない必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、種々の組み合わせで以下の態様のいずれかを含んでよく、また、書面による説明又は添付図面において以下に記載されるいずれかの他の態様を含んでよい。
【0009】
本発明は、部分的に、アンチモンドーパント組成物を使用するための方法及びシステムに関する。本明細書で利用されるSb含有材料の組成物は、イオン注入プロセスへの送達の容易性を向上させ、かつイオンチャンバ内のSb含有堆積物の蓄積を実質的に低減させるということが見出されている。
【0010】
第1の態様では、アンチモン含有イオンを注入してn型電子デバイス構造体を生じさせるためのイオン注入に好適な組成物であって、アンチモン含有材料であって、当該アンチモン材料は、周囲温度にて化学的に安定しており、かつ準大気圧下で、液相の貯蔵条件の下で維持され、更に、この貯蔵条件は、微量の水分の欠如を特徴とする、アンチモン含有材料を含み、当該アンチモン含有材料は、非炭素含有化学式によって表され、当該アンチモン含有材料は、下流の真空圧力条件に応答して十分な蒸気圧を及ぼすように適合された、対応する気相と実質的な平衡状態にある液相である。
【0011】
第2の態様では、アンチモンイオンを注入してn型電子デバイス構造を生じさせるためのイオン注入に好適な組成物のための準大気圧貯蔵及び送達容器であって、アンチモン含有材料であって、当該アンチモン含有材料は、周囲温度にて化学的に安定している、アンチモン含有材料を含み、当該アンチモン含有材料は、非炭素含有化学式によって表され、微量の水分の欠如を特徴とする水分なしの環境によって少なくとも部分的に定義される貯蔵及び送達容器であって、当該貯蔵及び送達容器は、準大気圧条件下で液相の当該アンチモン含有材料を保持するように構成され、それによって、当該液相は、貯蔵及び送達容器のヘッドスペースを占有する、対応する気相と実質的な平衡状態である、貯蔵及び送達容器を備える。
【0012】
第3の態様では、Sb含有イオンを注入するためのイオン源を操作する方法であって、少なくとも約0.1sccm以上の流量で気相のアンチモン含有材料をアークチャンバ内へ導入することと、当該組成物をイオン化して、アークチャンバ内でSb含有イオンを生成することと、Sb含有イオンを基材内に注入することと、を含む。
【0013】
第4の態様では、アンチモンイオンを注入してn型電子デバイス構造を生じさせるためのイオン注入に好適な組成物のための準大気圧貯蔵及び送達のための送達可能な吸着容量を含む吸着材であって、当該組成物は、アンチモン含有材料を含み、当該アンチモン含有材料は、周囲温度にて化学的に安定しており、当該アンチモン含有材料は、非炭素含有化学式によって表され、当該吸着材は、約50ppm以下の水分を有する水分なしの環境を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の目的及び利点は、全体を通して同じ番号が同じ特徴を示す添付図面と関連して、その好ましい実施形態の以下の詳細な説明からより良く理解される。
【0015】
図1】本発明の原理を組み込む、ビームラインイオン注入システムを示す。
【0016】
図2】本発明の原理を組み込む、プラズマ浸漬イオン注入システムを示す。
【0017】
図3】本発明の原理を組み込む、例示的な貯蔵及び送達容器を示す。
【0018】
図4】本発明の原理を組み込む、代替的な貯蔵及び送達容器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の様々な要素の関連性及び機能は、以下の「発明を実施するための形態」によってより良好に理解される。「発明を実施するための形態」は、本開示の範囲内のものとして様々な置換及び組み合わせの特徴、態様、及び実施形態を想到している。したがって、本開示は、これらの特定の特徴、態様、及び実施形態のそのような組み合わせ及び置換のうちのいずれか、又はそれらのうちの選択された1つ以上を備えるように、それらからなるように、又はそれらから本質的になるように指定され得る。
【0020】
本発明は、種々の組み合わせで以下の実施形態のいずれかを含んでよく、また、書面による説明又は添付図面において以下に記載されるいずれかの他の態様を含んでよい。本明細書で使用される場合、用語「実施形態」とは、例として例示するのに役立つが、限定するものではない実施形態を意味する。
【0021】
本明細書及び全体で使用される場合、用語「Sb含有イオン」又は「Sbイオン」とは、基材へと注入するのに好適な、Sb又はSb2+などのSbイオン又はSb含有イオン、及びSb などだがこれらに限定されないオリゴマーイオンを含む、種々のSbイオン種を意味する。
【0022】
「基材」とは、本明細書及び全体で使用される場合、シリコン、二酸化ケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、及びこれらの合金を含む任意の好適な材料から形成され、ドーパントイオンなどの別の材料が注入されるといったような、イオン注入を必要とするウエハ又は他の薄く切られた若しくは薄く切られていない材料、あるいは同様の標的対象を含むがこれらに限定されない、任意の材料を意味する。
【0023】
「Sb」及び「アンチモン」は、本明細書及び全体で交換可能に使用され、同一の意味を有することが意図されると理解すべきである。「Sb含有材料」又は「Sb含有源材料」に関しては、本発明のアンチモン材料の液相及び液相が実質的に平衡状態にある対応する気相を指すことを意図している。「Sb含有液体源材料」は、対応する気相と実質的に平衡状態にある本発明の材料を意味することを意図している。
【0024】
本明細書及び全体で使用される場合、用語「容器(vessel)」及び「容器(container)」は交換可能に使用され、かつ材料の充填、貯蔵、輸送、及び/又は送達に好適な、シリンダ、デュワー、ボトル、タンク、バレル、バルク及びマイクロバルクを含むがこれらに限定されない、任意の種類の貯蔵、充填、輸送及び/又は送達容器を意味することを意図している。
【0025】
本明細書及び全体で使用される場合、別途指示されない限り、全ての濃度は、容積百分率(「体積%」)として表される。
【0026】
「低減する(Reduce)」、「低減された(reduced)」又は「低減(reduction)」とは、本明細書及び全体で使用される場合、イオン注入プロセスに関して行われ、かつ(i)有害事象若しくは有害発生の発現を短縮、抑制、及び/又は遅延させること(例えば、分解反応の低減、イオン短絡の低減)、あるいは(ii)特定の目的が達成不可能な非許容レベルまで、量を低下させること(例えば、プラズマを持続させることができない低減した流れ)、あるいは(iii)特定の目的に悪影響を及ぼさない非実質的な量まで、低下させること(例えば、アークチャンバへの流れを不安定化させない、低減したオリゴマーの量)、あるいは(iv)従来の実施と比較して有意な量だけ低減されるが、意図された機能を変化させないこと(例えば、導管に沿って材料を再凝結させることなく、材料の気相を依然として維持しながら、熱トレースを低減させる)を意味することを、意図している。
【0027】
本明細書及び全体で使用される場合、量又は時間的持続などの測定可能な値を意味する場合、「約」又は「およそ」は、そのような変動が適切である故に、指定された値から±20%、±10%、±5%、±1%及び±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0028】
本開示全体を通して、本発明の種々の態様を範囲形式にて提示することができる。範囲形式の記載は、単に便宜上及び簡潔さのためのものであり、かつ本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではないと理解すべきである。したがって、範囲の記載は、その範囲内の個々の数値の全てだけでなく、全ての可能な部分範囲を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、例えば1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示された部分範囲、同様にその範囲内の個々の数、例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3、6、並びにそれらの間の任意の全体的増分及び部分的増分を有するとみなされるべきである。これは、範囲の広さにかかわらず適用される。
【0029】
イオン注入のための好適なSb源材料の欠如の観点から、本発明が出現している。本開示は、一態様では、n型ドーパントとしてのイオン注入に好適な、アンチモン用の組成物に関し、以下の属性を含む。(i)準大気圧条件下で液相で貯蔵することができるアンチモン含有材料であって、貯蔵条件は、本明細書では約50ppm以下として定義される、微量の水分の欠如を特徴とする水分のない環境であり、(ii)アンチモン含有材料が、非炭素含有化学式によって表され、また、(iii)アンチモン含有材料の液相が、下流の真空圧力条件に応答して気相で実質的に連続する流量にて流れることができる、対応する気相と実質的な平衡状態にある。
【0030】
Sb含有源材料は、貯蔵条件下にて、対応する気相と実質的に平衡状態である液相を有する。材料は周囲温度にて安定したままであり、かつイオン注入の使用中に分解する傾向を有しない。液体としてのSb含有材料は適切な蒸気圧を有し、この蒸気圧は、本明細書では、約0.1~100sccmの流量をアークチャンバ内へ持続させることが可能な蒸気量として定義される。特に、気相中のSb含有材料の流量は、イオン注入器の作動中に安定したプラズマを生成及び維持するのに十分である。安定したプラズマは、約50~150Vのアーク電圧及び引き出し電極に対する約1~300keVの引き出し電圧にて、Sbイオンの注入を実施することを可能にし、それにより、Sb含有イオンのビームが生成される。Sb含有イオンのビーム電流は、約10マイクロアンペア~100mAの範囲であり、約1E11~1E16原子/cmの、基材内へのSbイオン用量をもたらす。
【0031】
一態様では、本発明のSb含有源材料は、容器のヘッドスペースを占有する、その気相と実質的な平衡状態である液相で容器内に貯蔵される。Sb含有源材料の気相は、容器から回収されて、周囲温度条件にてイオン注入器のアークチャンバ内へと導管に沿って送達され得る。有利には、及び従来のSb含有材料とは対照的に、液相のSb含有源材料は、(i)容器のヘッドスペース、及び(ii)容器からアークチャンバまで延在する導管を補充することができる、蒸発速度を有する。このようにして、十分な量のSb含有源材料が気相へと蒸発して、アークチャンバ内へと流れる約0.1~100sccmの流量を維持する。
【0032】
出願人らは、液体Sb含有源材料の蒸発速度を維持して、少なくとも約0.1sccm以上の気相流量を、導管に沿ってアークチャンバ内へと生成することが必要であることを発見した。Sb含有源液の蒸発速度が特定の閾値未満である又は閾値未満に下がる場合、これにより、気相でのSb含有源材料の得られる流量が約0.1sccm未満である又は0.1sccm未満に下がり、気相でのSb含有材料は、容器内に収容されるSb含有源材料の蒸発速度よりも速い速度にて、導管に沿ってアークチャンバ内へと流れ得る。アークチャンバ内への流れは、持続可能でなくなることがあり、最終的に、許容不可能な低いレベルへと低減される、又は不規則になる傾向を有する。最終的に、最悪の場合のシナリオでは、流れが完全に停止する、又はイオンビームが不安定となりかつ不良となる程度にまで流れが低減する場合があり、これにより、注入プロセス全体の中断が必要となる。
【0033】
代替的な実施形態では、また蒸発速度を加速させるための1つの実現可能な手段として、液体源Sb含有材料は、準大気圧条件下で維持される貯蔵及び送達容器内に貯蔵されて、アークチャンバ内への約0.1~100sccmの必要な流量を発生させる原因となる気相へと必要な量の源材料を形成するのに十分な、比較的速い速度にて、液体源材料が蒸発することを可能にしてよい。したがって、液体源Sb含有材料は、気相内へと十分な速度にて蒸発して、貯蔵及び送達容器のヘッドスペース内に蒸気を補充し、かつ、アークチャンバ内へと延在する導管に沿って蒸気を補充し、これにより、イオン注入のためのイオン注入器の動作中に、約0.1~100sccmの間のSb含有源材料の気相流量を発生させて維持する。
【0034】
蒸発のための必要な貯蔵条件が発生することを可能にするために、貯蔵及び送達容器は、必要な気相がアークチャンバへと延在する導管内へと流れることを可能にするように、Sb含有源の十分な容積の蒸気が存在し得る、十分なヘッドスペースを伴うように、構成される。具体的には、貯蔵及び送達容器は、少なくとも約1:1、より好ましくは約1:2、最も好ましくは約1:3の液体とヘッドスペースとの容積比を提供するように構成される。加えて、好ましくは、貯蔵及び送達容器内で気相に曝露されるSb含有液体の十分な表面積を利用して、Sb含有材料の対応する気相が導管に沿って流れて、Sb含有蒸気の導管に沿った、かつアークチャンバ内への実質的に安定した流れを生じさせるときに、必要な蒸発が貯蔵及び送達容器のヘッドスペースを補充するのを可能にする。具体的には、気相に曝露される液体の表面積は、好ましくは少なくとも16cm、より好ましくは約50cm以上、最も好ましくは約100cm超である。
【0035】
Sb含有源材料に関するその他の貯蔵条件は、液体源材料の蒸発速度を許容できないほど低くし得る。例えば、Sb含有液体源材料が大気圧以上の圧力にて貯蔵及び送達容器内に貯蔵される場合、次に、充填操作の際に貯蔵及び送達容器のヘッドスペース内へと不注意に導入され得てきた、空気、N、又はいずれかのその他の不活性及び/又は反応性ガス種の結果として、液体源材料の気相の分圧が不十分であり得る。加えて、このようなシナリオでは、他の汚染物質による気相中のSb含有材料の汚染は、イオン注入プロセスにおける使用に適していない材料を与えることになり、これは、一般的に、大気汚染物質を含む汚染物質のアークチャンバ内への導入を許容することができない。
【0036】
別の実施形態では、本発明は、Sb含有材料の気相を、オリゴマーを排除した、又はその量を低減させた実質的にモノマーの形態で容器から流れさせて、アークチャンバ内へのSb含有材料の気相の流れの安定性を確実にすることを目的とする。例えば、貯蔵及び送達容器は、気相内に形成されるオリゴマー(例えば、二量体、三量体、四量体、及び/又は五量体)の数を低減させ、それにより、実質的にモノマーのSb含有材料の気相を形成するための1つの実現可能な手段として、65℃以下まで加熱され得る。別の実施形態では、貯蔵及び送達容器は、実質的にモノマーのSb含有材料の気相を形成するための手段として、50℃以下まで加熱され得る。更に別の実施形態では、貯蔵及び送達容器は、実質的にモノマーのSb含有材料の気相を形成する手段として、40℃以下まで加熱され得る。出願人らは、同じ貯蔵条件下で、気相のSb含有材料のオリゴマーが、実質的にモノマーの気相のSb含有材料の流量よりも低い流量を有し得、許容できない流れの不安定性及び変動をもたらすことを認識した。このようにして、特定の準大気圧及び高温条件の選択は、上に記載したような十分な蒸発に好適な容器構成と組み合わせて、気相のオリゴマーの量を低減させることができる。
【0037】
別の実施形態では、Sb含有源材料は、N、He、Ne、Ar、Kr、又はXeなどの不活性ガスを共流動又は順次流動させて、アークチャンバ内へのSb含有源材料の気相の流量の安定性を向上させることができる。代わりに、又はそれに加えて、不活性ガスは、液相のSb含有源材料を通って流れるように、又は貯蔵及び送達容器と相互作用するように構成され得る。
【0038】
別の態様では、Sb含有源材料は、本明細書及び全体で約50ppm以下であると定義される、微量の水分を含有しない水分のない環境である、貯蔵及び送達容器内に貯蔵される。水分の存在下で、ハロゲン化されたSb含有化合物が反応して、Sb、H、HF、又はHClを形成し得る。微量の水分を含有しないこのような水分のない環境は、いくつかの技術により貯蔵容器内において達成することができ、そのうちの1つは、所謂「凍結脱気法」のサイクルを実行することを含む。凍結脱気法の1サイクルでは、Sb含有源材料は、Sb含有源材料の蒸気の全てが気相から凝結するように冷却されるが、その一方で、水分及び窒素などのその他の汚染物質は気相中に留まる。Sb含有源材料が凝結するのに十分な時間を与えた後、ポンプを使用して容器のヘッドスペースを排気し、その一方で、実質的に全ての蒸気汚染物質が除去されて、Sb含有材料が容器内に固体、液体、又はこれらの混合物として残るように、容器が冷却され続ける。汚染物質が除去された場合、容器を密閉して、固体、液体、又はこれらの混合物でのSb含有材料を周囲温度まで加熱して、その対応する位相と実質的に平衡状態にある液体を形成する。このようにして、水分及びその他の不純物、特に大気不純物が、貯蔵及び送達容器内へと導入されることを回避する。容器の内部表面のフッ素不動態化が挙げられるがこれらに限定されない、Sb含有材料のための水分のない環境を達成するためのその他の技術を使用してよい。あるいは、Sb含有材料をイオン注入用のアークチャンバに貯蔵及び送達するためのプラスチック容器を用いてよい。
【0039】
Sbイオン注入中の炭素系堆積物の有害な影響は、好ましくは本発明により回避される。Sb含有源材料は、アークチャンバ内及びイオン源のその他の領域全体にわたる炭素系堆積物の形成を低減又は排除するための、非炭素含有化学式により表される分子である。炭素系堆積物の例としては、C、CF及びCCl化合物が挙げられるが、これらに限定されない。炭素系堆積物は、抽出プレートを含むイオン注入器の種々の構成要素にそって、ウィスカ又はその他の種々の形状の堆積物を形成することにより、イオン源の寿命を低減させ得、炭素系堆積は、イオンビームの形状の歪みを引き起こし得る。代わりに、又はそれに加えて、炭素系堆積物は、基材上に残留粒子として堆積及び蓄積することが可能である。プラズマ中の炭素の存在はまた、プラズマ希釈に自由に利用可能となる炭素含有イオンの形成故に、Sbのビーム電流をも低下させることが可能である。したがって、本発明は、好ましくは、非炭素含有化学式により表されるSb含有源材料を利用する。このようにして、Sb含有源材料における炭素の回避は、関連する有害な影響と共に、アークチャンバに進入する炭素由来堆積物の導入を低減又は排除する。
【0040】
好ましい実施形態では、五フッ化アンチモン(SbF)は、イオン注入を実施するためのSb含有源材料である。SbFは、比較的強いルイス酸である腐食液であり、かつ水分と激しく反応して、Sb及びHFを生成し得る。したがって、SbF5源材料は、本明細書及び全体で約50ppm以下であると定義される、微量の水分を含有しない水分のない環境である、準大気圧条件下で貯蔵及び送達容器に貯蔵される。SbFは、アークチャンバに操作可能に接続された貯蔵及び送達容器内に、約10トールの蒸気圧で、摂氏約25にて、液体として維持され得る。
【0041】
その他の源材料が想到される。例えば、本発明の別の実施形態では、SbClは、イオン注入に好適なアンチモン含有源材料である。SbClは、アークチャンバに操作可能に接続された貯蔵送達容器内に、7.6トールの蒸気圧で、摂氏約25にて、液体として維持され得る。本発明の適用可能な基準によるその他の源材料もまた、本明細書に記載されるように使用されてよい。
【0042】
SbFの安定性及びSbイオン注入のための液体系材料の使用のプロセス効果にもかかわらず、本発明者らは、SbF5及びその他のフッ素含有Sb化合物を利用する設計課題のうちの1つにより、化合物中のフッ素の存在が、プラズマ中の過剰なフッ素イオンをもたらし得るということを認識した。フッ素イオンは、所謂「ハロゲンサイクル」を伝搬することができ、ここで、過剰なハロゲンイオンは、一般に、WFxにより表されるタングステンフッ化物種を生成する、カソード上へのタングステンチャンバ壁の腐食を引き起こし得、これは、タングステンを堆積させ得る熱いイオン源フィラメント上へと移動し得る。タングステンの堆積はイオン源の動作電圧を増加させる傾向を有し、ひいてはイオン源が最終的に劣化し得るまで、イオン源フィラメント上へのWの堆積を増加させる。このハロゲンサイクルは、イオン源の寿命を低減させる傾向を有する。
【0043】
ハロゲンサイクルの効果を軽減させるために、本発明により想到されるSbF5又はその他のSb含有源材料、特にフッ素原子又はその他のハロゲンを含有するようなもののいずれかの使用中に、水素含有化合物を組み込むことができる。水素含有化合物は、本発明のSbF5又はその他のSb含有源材料を用いて、水素含有化合物を順次流動又は共流動させることを含む、任意の可能な方法にて、アークチャンバ内へと導入することができる。あるいは、水素含有化合物は、本発明により想到されるSbF5又はその他のSb含有源材料との混合物として貯蔵することができる。好適な水素含有化合物としては、H、CHF、CH、Si、PH、AsH、SiH、GeH、B、CH、NH、又はHS、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
ハロゲンサイクルを低減させるためにアークチャンバ内へと導入される水素含有化合物の量は、本発明のSb含有源材料に含有され得るフッ素又はその他のハロゲンの有害な影響を中和又は除去することが可能な有効量であるべきである。SbF5を利用する場合、水素含有化合物の有効量は、好ましくは、ハロゲンサイクルの有害な影響を軽減するために十分な量の水素原子を提供するために、SbF5と水素含有化合物との組成物全体の少なくとも約20容積%である。用語「有効量」とは、本明細書及び全体で使用される場合、Sbイオン種のイオン注入の具体的な配合中に、ハロゲンサイクル、ないしは別の方法の結果として存在し得る、フッ素又はその他のハロゲンイオンの有害な影響の中和又は除去などの所定の目標を達成するための、水素含有化合物などの特定の材料の必要量を意味する。一実施例では、ハロゲンサイクルを軽減させるために必要な水素含有化合物の容積%は、アークチャンバ内に形成された、SbF5と水素含有化合物との得られた組成混合物の約50容積%であり得る。有効量の水素含有化合物が、SbF5と水素含有化合物との総組成物の約50容積%超であり得ると理解すべきである。
【0045】
本明細書で定義される適用可能な基準を満たす、本発明の想到された液体源材料を使用することによる、本発明における固体Sb含有源の回避は、いくつかのプロセス効果を含む。例えば、本発明のSb含有源材料を使用する場合、固体Sb含有源を適切に揮発させて、導管に沿ったその凝結及び堆積を防止し、かつイオン注入システムのラインを流すために典型的に必要とされる過剰な加熱を低減させる、又は全体的に回避する。少なくとも、従来のSb含有固体源は、貯蔵及び送達容器とアークチャンバとの間に延在する導管を加熱し、蒸発しているがイオン注入中に凝結の影響を受けやすいSb含有固体源の凝結を防止することが、必要となる。これに対して、本発明は、導管を熱トレースする必要性の量を低減する、又は導管を熱トレースする必要性を排除する。本発明はまた、本発明のSb含有材料が、チャンバ壁及び/又はイオン源フィラメント上に堆積及び蓄積する危険性を低減又は排除する。このような温度上昇過大の回避はまた、Sbイオン注入プロセスの制御を困難にし得る、分解及び副反応の傾向を低減又は排除する。
【0046】
加えて、他のSb源、特にSb含有固体源を用いたより高い温度の必要性は、制御弁の使用を制限し、それにより、流量調整を困難にする。本発明では、高温の回避は、制御弁を使用して、本明細書で言及される所望の流量の蒸気流を制御することを可能にして、イオン注入器の安定した、かつ制御された動作を可能にする。一実施形態では、本発明での制御された流量は、注入器を、少なくとも約50時間のイオン源寿命にわたって少なくとも約10マイクロアンペアのビーム電流で作動するが、その一方で、約1グリッチ/分未満のグリッチ速度を受けることを可能にする。
【0047】
更に、本発明は、キャリアガス又は反応ガスの必要性を低減又は排除する。これに対して、以前は、例として、固体Sb含有源がアークチャンバにごく近接した表面上にメッキされ、それにより、固体Sb含有源を蒸発させるために表面を昇温して加熱する必要がある場合に、キャリアガス又は反応性ガスが供給されてきた。キャリアガス又は反応性ガスは、次に、蒸発したSb含有源をアークチャンバ内へと方向付ける。
【0048】
図1を参照すると、本発明の原理による代表的なビームラインイオン注入機器が示されている。ビームラインイオン注入システムは、イオン注入プロセスを実施するために使用される。ビームラインイオン注入システムの構成要素が、図1に示されている。Sb含有液体源料材料101は、適切な蒸気圧を有するように、本発明の原理によって選択される。Sb含有源材料101は、図1にて示すように、ガスボックス100内に配置される貯蔵及び送達容器内に貯蔵される。Sb含有液体源材料101は、本明細書で約50ppm以下として定義される、微量の水分を含有しない水分のない環境で貯蔵される。Sb含有液体源材料101は、非炭素含有式により、更に表される。好ましい実施形態では、Sb含有液体源材料101はSbF5である。あるいは、Sb含有液体源材料101はSbCl5である。1つ以上の水素含有化合物は、所望により、ガスボックス100内に含まれてよく、かつハロゲン(例えば、SbF5又はSbCl5)を含むSb含有材料が利用される場合に、ハロゲンサイクルの効果を軽減させるために、有効量にてアークチャンバ103内へと流れてよい。
【0049】
Sb含有液体源料材料101は、貯蔵及び送達容器のヘッドスペースを占有する対応する気相と実質的に平衡状態にある液相にて、貯蔵される。Sb含有源材料101の蒸気圧は、ガスボックス100とイオン源チャンバ103との間のラインの加熱量を低減又は排除するのに十分であり、それにより、上記のプロセスの制御安定性を可能にする。Sb含有液体材料101の気相は、ガスボックス100の下流の減圧条件に応じて、気相内で、実質的に連続的かつ適切な流量にて流れるように、構成される。蒸気は、貯蔵及び送達容器のヘッドスペースから出て、導管内へと流れ、次に、それに沿ってイオン源チャンバ103に向かって流れる。ガスボックス100における貯蔵及び送達容器内のSb含有源材料の蒸気圧は、導管に沿った、アークチャンバ103内へのSb含有源材料の気相の安定した流れを可能にするのに十分である。Sb含有液体材料101の気相は、イオン源チャンバ103内へと導入され、材料101のイオン化が発生する。エネルギーをチャンバ103内へと導入して、Sb含有蒸気をイオン化する。1つ以上の質量流量制御装置及び対応する弁を含み得る流量制御装置102を使用して、所定値にて気相の流量を制御する。従来の固体含有Sb源で典型的に必要とされるような過剰な温度は、図1のプロセスにて回避され、それにより、本明細書で言及される所望の流量にて蒸気流を制御して、イオン注入器の安定した、かつ制御された操作を可能にするために、制御弁の使用を可能にする。Sb含有材料のイオン化は、種々のアンチモンイオンを生じさせ得る。イオンビーム抽出システム104を使用して、イオン源チャンバ103から、所望のエネルギーのイオンビームの形態にて、アンチモンイオンを抽出する。抽出は、引き出し電極全体にわたって高電圧を印加することによって実行することができる。質量分析器/フィルタ105を介してビームを運搬し、注入されるSbイオン種を選択する。イオンビームは、次に、加速/減速106して、ワークピース108内へとイオンを注入するための、終了ステーション107に位置付けられた標的ワークピース108(即ち、基材)の表面へと運搬され得る。ワークピースは、例えば、イオン注入を必要とする半導体ウエハ又は類似する標的物体とすることができる。ビームのSbイオンは、ワークピースの表面に衝突して特定の深さで貫通し、所望の電気的及び物理的特性を伴うドープ域を形成する。
【0050】
本発明の新規Sb含有材料は、その他のイオン注入システムと共に利用することができる、と理解すべきである。例えば、図2にて示すように、プラズマ浸漬イオン注入(PIII)システムもまた、Sbイオンを注入するために利用されてよい。このようなシステムは、ビームラインイオン注入機器100と同様の構成であるガスボックス200を含む。PIIIシステムの操作は、図1のビームラインイオン注入システムの操作と類似している。図2を参照すると、本発明のSb含有液体源材料の気相は、流量制御装置202により、供給源201からプラズマチャンバ203内へと導入される。供給源201は、貯蔵及び送達容器のヘッドスペースを占有する、対応する気相と実質的に平衡状態でSb含有材料の液相を貯蔵するように構成された、貯蔵及び送達容器を表す。Sb含有液体源材料201は、本明細書で約50ppm以下として定義される、微量の水分を含有しない水分のない環境で貯蔵される。Sb含有液体源材料101は、非炭素含有式により、更に表される。好ましい実施形態では、Sb含有源材料101はSbF5である。あるいは、Sb含有源材料101はSbCl5である。
【0051】
Sb含有源材料201の蒸気圧は、ガスボックス200とプラズマチャンバ203との間のラインの加熱量を低減又は排除するのに十分であり、それにより、上記のプロセスの制御安定性を可能にする。Sb含有液体源材料201の気相は、ガスボックス200の下流の減圧条件に応じて、気相内で、実質的に連続的かつ適切な流量にて流れるように、構成される。気相は、貯蔵及び送達容器のヘッドスペースから出て、導管内へと流れ、次に、それに沿ってプラズマチャンバ203に向かって流れる。ガスボックス200における貯蔵及び送達容器内のSb含有源材料の蒸気圧は、導管に沿った、アークチャンバ203内へのSb含有源材料の気相の安定した流れを可能にするのに十分である。Sb含有液体材料の気相がイオン源チャンバ203内へと導入される際、エネルギーがその後に提供されて、Sb含有蒸気をイオン化し、かつSbイオンを生成する。プラズマ中に存在するSbイオンは、標的ワークピース204に向かって加速される。1つ以上の水素含有化合物は、所望により、ガスボックス200内に含まれてよく、かつハロゲン(例えば、SbF5又はSbCl5)を含むSb含有材料が利用される場合に、ハロゲンサイクルの効果を軽減させるために、有効量にてプラズマチャンバ203内へと流れてよいと理解すべきである。
【0052】
本発明の別の態様では、本明細書に開示されるSb含有源材料のための貯蔵及び送達容器が、図3に示されるように提供される。この貯蔵及び送達容器は、本発明のSb含有源材料の安全なパッケージング及び送達を可能にする。本発明のSb含有源材料は、容器300内に収容される。容器300は入口ポート310を備え、所望のSb含有源材料で容器300を充填することを可能にする。このポートはまた、所望のSbドーパント材料を充填する前に、容器300の内部を不活性ガスにてパージし、かつ容器300を排気するために使用することもできる。一実施例では、凍結ポンプ解凍のサイクルは、容器300を利用して実行して、約50ppm以下の、微量の水分を含有しない水分のない環境を生じさせることができる。
【0053】
出口ポート320は、容器300のヘッドスペースからSb含有材料の気相を回収するために提供される。真空作動逆止め弁330は、シリンダ300の下流に生じる準大気圧条件に応答して、Sb含有材料の制御された流量を分配する出口ポートの上流に設けられている。本真空作動逆止め弁330は、本発明の種々のSb含有材料を取り扱う間の安全性を強化する。弁321が大気圧に開放されている場合、逆止め弁330は、容器300内の任意の空気又はその他の汚染物質の導入を防止し、したがって、容器300のヘッドスペースを占有する気相のSb含有材料の、汚染リスク及び分圧の低減の両方を軽減する。このようにして、その貯蔵、送達、及び使用の間、安全な方法で、Sb含有材料の高純度レベルを維持することができ、それにより、イオン注入の間、Sb含有源材料の回収された気相が適切な蒸気圧を維持して、必要な流量を発生させることができる。逆止め弁330は、容器300の外側に位置し得る(事例I)。あるいは、逆止め弁330は、容器300の内側に位置し得る(事例II)。容器300は、排出流路と流体連通しており、逆止め弁330は、排出流路に沿って達成された準大気圧条件に応答して、容器300の内部容積からの、Sb含有源材料の制御された流れを可能にするように、作動する。
【0054】
容器300は、準大気圧条件下で、Sb含有材料を少なくとも部分的気相にて保持するためのシリンダであってよい。Sb含有材料は、その内部の準大気圧条件にて貯蔵される。Sb含有材料は、化学的に安定したままであり、かつシリンダ300の内部内で分解を受けない。Sb含有材料は、好ましくは、周囲温度(20~25℃)にて、液体として貯蔵される。一実施形態では、蒸気圧は約1トール超である。別の実施形態では、蒸気圧は、約3トール超、またより好ましくは約5トール超である。
【0055】
シリンダ300は、好ましくは、シリンダ300と機械的に連通する二重ポート弁アセンブリを含む。二重ポート弁は図4に示され、かつ注入ポート弁及び排出ポート弁を備え、注入ポート弁は、その内部にSb含有ドーパント材料を導入するために、シリンダの内部と流体連通している。排出ポート弁は、シリンダの内部からの外部へと延在する流れ排出経路と流体連通して、そこからアンチモン含有ドーパント材料を排出する。逆止め弁330は、流れ排出経路に沿って配置され、逆止め弁は、シリンダの外部の準大気圧条件に応答して閉鎖位置から開放位置へと移動するように構成される。
【0056】
その他の貯蔵容器が想到される。例えば、代替的な実施形態では、アンチモン含有ドーパント材料は、吸着材系の送達システムから貯蔵及び分配されてよい。炭素系吸収材又は金属有機フレームワークを含むがこれらに限定されない、種々の好適な吸着材が想到される。
【0057】
更に別の実施形態では、Praxair(Danbury,CT)により市販されており、米国特許第5,937,895号、同第6,045,115号、同第6,007,609号、同第7,708,028号、及び同第7,905,247号、並びに米国特許公開第2016/0258537号(それら全てが、全体として本明細書に参考として組み込まれる)に開示されている、UpTime(登録商標)送達装置が本明細書にて用い、Sbイオン注入のための、容器300からイオン機器への、Sb含有源材料の気相の制御された流量を、安全に送達してよい。UpTime(登録商標)送達装置の真空作動式逆止め弁は、周囲環境にて存在し得る大気圧における空気及びその他のガスの汚染が、容器内に浸潤し、Sb含有前駆体材料を汚染し、その部分圧を低下させることから防止する役割を果たす。
【0058】
その他の好適な準大気圧式送達装置としては、種々の配置にて、圧力調整器、逆止め弁、過流防止弁、及び流れ制限オリフィスを含んでよい。例えば、2つの圧力調整器をシリンダ内に直列に配置して、容器内の気相中のSb含有源材料のシリンダ圧を、流体排出ラインに沿って収容された下流質量流量制御装置に許容可能な所定の圧力まで下方調整してよい。
【0059】
容器又はシリンダ300は、その想到される変形形態と共に、ビームラインイオン注入システム(図1)と組み合わせて構成されてよく、それにより、容器又はシリンダ300は、その間に延在するフローライン又は導管のネットワークにより、当該システムに操作可能に接続される。有利には、導管は、好ましくは、従来のSb含有源と比較して、排除又は低減された量の熱トレースにより特徴付けられる。
【0060】
あるいは容器又はシリンダ300は、その想到される変形形態と共に、プラズマ浸漬注入システム(図2)と組み合わせて構成されてよく、それにより、容器又はシリンダ300は、その間に延在するフローライン又は導管のネットワークにより、当該プラズマ浸漬システムに操作可能に接続される。有利には、導管は、好ましくは、従来のSb含有源と比較して、排除又は低減された量の熱トレースにより特徴付けられる。
【0061】
本発明の多数の利点が、想到される。例えば、Sbイオン注入を目的とした、Sb含有気相の送達用の、本発明の液体系Sb含有前駆体の利用、続いて、異なるガス状ドーパント源への切り替えは、一般に、Sbイオン注入のための固体系Sb含有前駆体を利用する場合と比較して、必要とされる時間がより少ない。具体的には、固体Sb含有源と比較して、Sb含有気相の送達のための本発明の液体系Sb含有前駆体の利用は、イオン注入のための異なるドーパント種に切り替えるために必要とされる始動時間を短縮し、それにより、注入器にとってより大きいウエハスループットをもたらす。一実施例として、それぞれのイオン種を注入するための源材料として固体ヒ素(As)又は固体リン(P)を流す注入器は、イオンビームを調整するために約30分を必要とすると予測され得るが、一方で、ガス状のAsH又はガス状のPH源材料の使用は、一般に、そのイオンビームを調整するために約4分のみを必要とすることが予測され得る。本明細書及び全体で使用される場合、用語「調整する」又は「調整」は、特定のビーム電流及びサイズを有する標的イオン種のみのビームを生成するプロセスを意味する。比較すると、固体Sb含有源材料に関して、アークチャンバ内への質量流量は、昇華に必要な蒸発器温度により制御され、Sb含有源は、アークチャンバへの送達に先立って、固体源が気相へと十分に加熱されることを確実にするために貯蔵される。固体Sb含有源材料をその気相へと加熱する時間、ビームを調整する時間、続いてイオン注入プロセスの完了時に固体Sb含有源を冷却する時間を考慮すると、別のドーパント種へと切り替えるために約30~90分の合計時間が発生し得る一方で、Sb含有液体前駆体から誘導されるガス状ドーパント源の送達は、約5~10分の持続時間を必要とし得る。正味の結果は、本発明によるスループットの有意な増加であり得る。
【0062】
追加で、本発明の液体系Sb含有前駆体は、追加の加熱を必要とせずに、その他のドーパント源と同じガスボックス内に(例えば、図1及び図2に示すように)配置させることができる。対照的に、Sb含有固体源は、Sb含有蒸気が再凝結しないことを確実にする目的のために、アークチャンバへと延在する導管に沿って位置付けられた別個の蒸発器を必要とし、これは、利用可能であり得るよりもより大きい空間を必要とし、また更に、イオン注入プロセスに複雑さ及び費用を追加する。
【0063】
見てとれるように、本発明は、それらの低い蒸気圧及び限られた熱安定性故に、アークチャンバ内へと一貫して送達することが困難であるSb含有固体源を含む、イオン注入のための、従来のSb含有源のための、実現可能な解決策を提供する。
【0064】
本発明の特定の実施形態とみなされるものを示し、記載してきたが、当然ながら、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態又は詳細の様々な修正及び変更を容易に行うことができることが理解されるであろう。したがって、本発明は、本明細書において示され、説明される正確な形態及び詳細に限定されず、本明細書において開示され、以下に特許請求される本発明の全範囲に満たないいかなるものにも限定されないことを意図する。
本発明に関連して、以下の内容を更に開示する。
[1]
アンチモン含有イオンを注入してn型電子デバイス構造を生じさせるためのイオン注入に好適な組成物であって、
アンチモン含有材料であって、前記アンチモン含有材料が、周囲温度にて化学的に安定しており、かつ準大気圧下で、液相の貯蔵条件下で維持され、更に、前記貯蔵条件が、微量の水分の欠如を特徴とする、アンチモン含有材料を含み、
前記アンチモン含有材料が、非炭素含有化学式によって表され、
前記液相の前記アンチモン含有材料が、下流の真空圧力条件に応答して十分な蒸気圧を及ぼすように適合された、対応する気相と実質的な平衡状態にある液相である、組成物。
[2]
水素含有化合物を更に含み、更に、前記水素含有化合物が、ハロゲンサイクルを軽減するための有効量である、[1]に記載の組成物。
[3]
前記アンチモン含有材料が、SbF である、[1]に記載の組成物。
[4]
前記Sb含有ドーパント材料が、約50ppm以下の水分を含む、[1]に記載の組成物。
[5]
前記Sb含有材料が、SbF であり、前記SbF が、約10トールの蒸気圧で、摂氏約25にて、液体として維持される、[1]に記載の組成物。
[6]
アンチモンイオンを注入してn型電子デバイス構造を生じさせるためのイオン注入に好適な組成物のための準大気圧貯蔵及び送達容器であって、
アンチモン含有材料であって、前記アンチモン含有材料が、周囲温度にて化学的に安定している、アンチモン含有材料を含み、
前記アンチモン含有材料が、非炭素含有化学式によって表され、
前記微量の水分の欠如を特徴とする水分なしの環境によって少なくとも部分的に定義される貯蔵及び送達容器であって、前記貯蔵及び送達容器が、準大気圧条件下で液相の前記アンチモン含有材料を保持するように構成され、それにより、前記液相が、前記貯蔵及び送達容器のヘッドスペースを占有する、対応する気相と実質的な平衡状態である、貯蔵及び送達容器を備える、準大気圧貯蔵及び送達容器。
[7]
前記貯蔵及び送達容器と機械的に連通する二重ポート弁アセンブリを更に備え、前記二重ポート弁が、注入ポート弁と、排出ポート弁と、を備え、前記注入ポート弁が、その内部に前記アンチモン含有材料を導入するために、前記貯蔵及び送達容器の内部と流体連通しており、前記排出ポート弁が、前記貯蔵及び送達容器の内部から外部へと延在する流れ排出経路と流体連通して、そこから前記アンチモン含有材料の前記対応する気相を排出する、[6]に記載の準大気貯蔵及び送達システム。
[8]
前記アンチモン含有材料が、約760トール以下の蒸気圧を有する約20~25℃の液体として貯蔵される、[1]に記載の準大気圧貯蔵及び送達容器。
[9]
前記流れ排出経路に沿って逆止め弁を更に備え、更に、前記貯蔵及び送達容器が、約760トール以下の下流側圧力に応答して、前記アンチモン含有材料の前記対応する気相を前記貯蔵及び送達容器の前記ヘッドスペースから分配するように構成される、[6]に記載の準大気圧貯蔵及び送達容器。
[10]
単一の供給源の一部として前記アンチモン含有材料と混合される、又はキットの一部として別体の容器内に貯蔵される、水素含有化合物を更に含む、[6]に記載の準大気圧貯蔵及び送達容器。
[11]
Sb含有イオンを注入するためのイオン源を操作する方法であって、
少なくとも約0.1sccm以上の流量で気相のアンチモン含有材料をアークチャンバ内へ導入することと、
前記組成物をイオン化して、前記アークチャンバ内にSb含有イオンを生成することと、
前記Sb含有イオンを基材内に注入することと、を含む、方法。
[12]
前記グリッチ速度が、約50時間のイオン源寿命にわたって1分当たり約1グリッチ以下である、請求項11に記載の方法。
[13]
有効量の水素含有化合物を前記アークチャンバ内に導入することを更に含む、[11]に記載の方法。
[14]
前記気相で貯蔵されているときの前記アンチモン含有組成物が、前記気相の加熱のない状態で前記アークチャンバに提供される、[11]に記載の方法。
[15]
前記イオン源を操作する前記方法の間に、前記アンチモン含有組成物の蒸発速度を維持して、少なくとも約0.1sccm以上の流量で前記気相を生成することを更に含む、[11]に記載の方法。
[16]
摂氏約65を超えないように前記気相の前記アンチモン含有材料の温度を維持することを更に含む、[11]に記載の方法。
[17]
約50~150Vのアーク電圧で前記イオン源を操作することを更に含む、[11]に記載の方法。
[18]
約150V未満のアーク電圧でアンチモン含有イオン注入を実行するように構成され、前記イオン源が、気相の少なくとも約0.1sccmのアンチモン含有組成物を受容するように適合される、イオン源装置。
[19]
少なくとも約50時間の供給源の寿命の間、1分当たり約1グリッチ以下の平均グリッチ速度を更に含む、[18]に記載のイオン源装置。
[20]
アンチモンイオンを注入してn型電子デバイス構造を生じさせるためのイオン注入に好適な組成物のための準大気圧貯蔵及び送達のための送達可能な吸着容量を含む吸着材であって、前記組成物が、アンチモン含有材料を含み、前記アンチモン含有材料が、周囲温度にて化学的に安定しており、
前記アンチモン含有材料が、非炭素含有化学式によって表され、
前記吸着剤が、約50ppm以下の水分を有する水分なしの環境を有する、吸着材。
図1
図2
図3
図4