(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】CD38に結合する抗体治療剤
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230502BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230502BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230502BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230502BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230502BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230502BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230502BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230502BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230502BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230502BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021086783
(22)【出願日】2021-05-24
(62)【分割の表示】P 2017552973の分割
【原出願日】2016-04-08
【審査請求日】2021-05-24
(32)【優先日】2015-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514291864
【氏名又は名称】ソレント・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Sorrento Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヘユー・ジョウ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ディクソン・グレイ
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0171154(US,A1)
【文献】特表2009-511033(JP,A)
【文献】特表2008-533977(JP,A)
【文献】特表2008-504013(JP,A)
【文献】Clin. Cancer Res., 2014. Vol.20, No.17, pp.4574-4583
【文献】Mol. Med., 2006, Vol.12, No.11-12, pp.345-346
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CD38抗体であって、
a.配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと;
b.配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと
を含む、抗体。
【請求項2】
IgGクラスの抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
完全ヒト抗体である、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項4】
少なくとも1×10
-6
Mの解離定数(K
D
)を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
抗CD38抗体Fabフラグメントであって、
a.配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと;
b.配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと
を含む、抗体Fabフラグメント。
【請求項6】
完全ヒト抗体Fabフラグメントである、請求項5に記載の抗体Fabフラグメント。
【請求項7】
前記抗体が少なくとも1×10
-6
MのK
D
を有する、請求項5または6に記載の抗体Fabフラグメント。
【請求項8】
ペプチドリンカーによって接続された重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとを含む、抗CD38一本鎖ヒト抗体であって、
a.前記重鎖可変ドメインが配列番号21のアミノ酸配列を含み;
b.前記軽鎖可変ドメインが配列番号22のアミノ酸配列を含む、
一本鎖抗体。
【請求項9】
前記抗体が少なくとも1×10
-6
MのK
D
を有する、請求項8に記載の一本鎖抗体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗CD38抗体、抗体Fabフラグメントまたは一本鎖ヒト抗体の有効量を含む、癌を処置するための医薬であって、前記癌が、細胞表面にCD38を発現する固形腫瘍または白血病性細胞を含む、医薬。
【請求項11】
前記癌が、非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫(BL)、多発性骨髄腫(MM)、B細胞性慢性リンパ性白血病(B-CLL)、B細胞およびT細胞性急性リンパ性白血病(ALL)、T細胞リンパ腫(TCL)、急性骨髄白血病(AML)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL)および慢性骨髄白血病(CML)からなる群より選択される、請求項10に記載の医薬。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗CD38抗体、抗体Fabフラグメントまたは一本鎖ヒト抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗CD38抗体、抗体Fabフラグメントまたは一本鎖ヒト抗体をコードする1または複数の核酸。
【請求項14】
請求項13に記載の1または複数の核酸を含む、1または複数の発現ベクター。
【請求項15】
請求項13に記載の1または複数の核酸、あるいは、請求項14に記載の1または複数の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗CD38抗体、抗体Fabフラグメントまたは一本鎖ヒト抗体を製造する方法であって、前記抗CD38抗体、前記抗体Fabフラグメント、または前記一本鎖ヒト抗体が発現される条件下で請求項15に記載の宿主細胞を培養することを含む、方法。
【請求項17】
前記抗CD38抗体、前記抗体Fabフラグメント、または前記一本鎖ヒト抗体を精製することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2015年4月8日出願の米国仮出願62/144901号に基づく優先権を主張し、その内容全体を、引用により完全に本明細書に包含させる。
【0002】
技術分野
本発明は、抗CD38抗体に関連するまたはそれに由来する組成物および方法を提供する。より具体的に、本発明は、CD38に結合する完全ヒト抗体、そのような抗体のCD38抗体結合フラグメントおよび誘導体ならびにそのようなフラグメントを含むCD38結合ポリペプチドを提供する。なおさらに、本発明は、そのような抗体、抗体フラグメントおよび誘導体およびポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリヌクレオチドを含む細胞、そのような抗体、抗体フラグメントおよび誘導体およびポリペプチドを製造する方法および疾患の処置法を含む、そのような抗体、抗体フラグメントおよび誘導体およびポリペプチドを使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
背景
CD38は、長C末端細胞外ドメインおよび短N末端細胞質ドメインを有する、45kD II型膜貫通糖タンパク質である。CD38タンパク質は、NAD+の環状ADP-リボース(cADPR)への変換を触媒でき、またcADPRをADP-リボースに加水分解する二機能性エクトエンザイムである。個体発生の間、CD38は、CD34+指定(committed)幹細胞ならびにリンパ球、赤血球および骨髄細胞の系譜指定前駆細胞に出現する。CD38発現は、大部分リンパ球系譜においてT細胞およびB細胞発達の異なる段階で、異なる発現レベルで維持される。
【0004】
CD38は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫(BL)、多発性骨髄腫(MM)、B細胞性慢性リンパ性白血病(B-CLL)、B細胞およびT細胞性急性リンパ性白血病(ALL)、T細胞リンパ腫(TCL)、急性骨髄白血病(AML)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL)および慢性骨髄白血病(CML)を含む、多くの造血器悪性腫瘍および種々の造血器悪性腫瘍由来細胞株で上方制御される。他方で造血系の最も原始的な多能性幹細胞はCD38-である。造血器悪性腫瘍におけるCD38発現および疾患進行とのその相関により、CD38は、抗CD38抗体治療の魅力的標的となっている。
【0005】
CD38は、リンパおよび骨髄細胞または細胞株において、Ca2+可動化(Morra et al., 1998, FASEB J., 12: 581-592; Zilber et al., 2000, Proc Natl Acad Sci USA, 97: 2840-2845)およびホスホリパーゼC-γ、ZAP-70、sykおよびc-cblを含む多数のシグナル伝達分子のチロシンリン酸化を経るシグナル伝達(Funaro et al., 1993, Eur J Immunol, 23: 2407-2411; Morra et al., 1998, FASEB J., 12: 581-592; Funaro et al., 1990, J Immunol, 145: 2390-2396; Zubiaur et al., 1997, J Immunol, 159: 193-205; Deaglio et al., 2003, Blood 102: 2146-2155; Todisco et al., 2000, Blood, 95: 535-542; Konopleva et al., 1998, J Immunol, 161: 4702-4708; Zilber et al., 2000, Proc Natl Acad Sci USA, 97: 2840-2845; Kitanaka et al., 1997, J Immunol, 159: 184-192; Kitanaka et al., 1999, J Immunol, 162: 1952-1958; Mallone et al., 2001, Int Immunol, 13: 397-409)に関与することが報告されている。これらの観察に基づいて、CD38は、リンパおよび骨髄細胞の正常な発達過程の成熟および活性化における重要なシグナル伝達分子であることが提案されていた。
【0006】
シグナル伝達および造血発生におけるCD38の正確な役割は、特にこれらのシグナル伝達研究の大部分が、非生理学的リガンドである異所的にCD38を過発現する細胞株および抗CD38モノクローナル抗体を使用しているため、なお明らかではない。CD38タンパク質は、Ca2+可動化を誘発できる分子であるcADPRを産生する酵素活性を有するため(Lee et al., 1989, J Biol Chem, 264:1608-1615; Lee and Aarhus, 1991, Cell Regul, 2: 203-209)、モノクローナル抗体によるCD38ライゲーションが、cADPR産生増加により、リンパ球におけるCa2+可動化およびシグナル伝達を惹起することが提案されている(Lee et al., 1997, Adv Exp Med Biol, 419: 411-419)。この仮説に反して、CD38タンパク質のトランケーションおよび点変異分析は、その細胞質側末端もその酵素活性も、抗CD38抗体が介在するシグナル伝達に必要ではないことを示した(Kitanaka et al., 1999, J Immunol, 162: 1952-1958; Lund et al., 1999, J Immunol, 162: 2693-2702; Hoshino et al., 1997, J Immunol, 158, 741-747)。
【0007】
CD38の機能の証拠はCD38-/-ノックアウトマウスに由来し、これは、樹状細胞遊走欠損のため、自然免疫が欠損し、T細胞依存的体液性応答が減少している(Partida-Sanchez et al., 2004, Immunity, 20: 279-291; Partida-Sanchez et al., 2001, Nat Med, 7: 1209-1216))。それにも関わらず、ヒトとマウスで造血発生中のCD38発現パターンが大きく異なるため、マウスにおけるCD38機能がヒトのものと同一であるか明らかではない:a)ヒトにおける未成熟前駆細胞幹細胞と異なり、マウスの類似の前駆細胞幹細胞は、高レベルのCD38を発現する(Randall et al., 1996, Blood, 87: 4057-4067; Dagher et al., 1998, Biol Blood Marrow Transplant, 4: 69-74)、b)ヒトB細胞発達中、高レベルのCD38発現が胚中心B細胞および形質細胞で見られるが((Uckun, 1990, Blood, 76: 1908-1923; Kumagai et al., 1995, J Exp Med, 181: 1101-1110)、マウスにおいて、対応する細胞におけるCD38発現レベルは低い(Oliver et al., 1997, J Immunol, 158: 1108-1115; Ridderstad and Tarlinton 1998, J Immunol, 160: 4688-4695)。
【0008】
種々の腫瘍細胞および細胞株に対して種々の増殖性性質を有するいくつかの抗ヒトCD38抗体が文献に記載されている。例えば、マウスFabとヒトIgG1 Fcを有するキメラOKT10抗体は、MM患者または正常個体からの末梢血単核エフェクター細胞存在下、リンパ腫細胞に対して極めて効率的に抗体依存性細胞介在性細胞傷害作用(ADCC)に介在する(Stevenson et al., 1991, Blood, 77: 1071-1079)。抗CD38抗体AT13/5のCDR移植ヒト化バージョンは、CD38陽性細胞株に対して強力なADCC活性を有することが示されている。ヒトモノクローナル抗CD38抗体は、ADCCおよび/または補体依存性細胞傷害(CDC)によるCD38陽性細胞株のインビトロ死滅およびMM細胞株RPMI-8226担持SCIDマウスにおける腫瘍増殖を遅延させることが示されている(WO2005/103083A2号)。他方で、いくつかの抗CD38抗体、IB4、SUN-4B7およびOKT10が、正常個体からの末梢血単核細胞(PBMC)の増殖を誘発したが、IB6、AT1またはAT2はしなかった(Ausiello et al. 2000, Tissue Antigens, 56: 539-547)。
【0009】
先行技術の抗体のいくつかは、CD38+ B細胞のアポトーシスを誘導できることが示されている。しかしながら、それらは、間質細胞または間質由来サイトカイン存在下でしかそうできない。アゴニスト抗CD38抗体(IB4)は、ヒト胚中心(GC)B細胞のアポトーシスを阻止し(Zupo et al. 1994, Eur J Immunol, 24:1218-1222)、KG-1およびHL-60 AML細胞の増殖を誘導するが(Konopleva et al. 1998, J Immunol, 161: 4702-4708)、ジャーカットTリンパ芽球性細胞でアポトーシスを誘発する(Morra et al. 1998, FASEB J, 12: 581-592)ことが報告されている。他の抗CD38抗体T16は、ALL患者からの未成熟リンパ細胞および白血病性リンパ芽球細胞(Kumagai et al. 1995, J Exp Med, 181: 1101-1110)およびAML患者からの白血病性骨髄芽球細胞(Todisco et al. 2000, Blood, 95: 535-542)のアポトーシスを誘発したが、T16は、間質細胞または間質由来サイトカイン(IL-7、IL-3、幹細胞因子)存在下でのみアポトーシスを誘発した。
【発明の概要】
【0010】
概要
本発明は、少なくとも部分的に、抗CD38抗体およびその抗原結合フラグメントを含む、CD38、例えば、ヒトCD38に結合できるタンパク質に関する。
【0011】
一つの側面において、本発明は、CD38エピトープに結合するIgGクラスの単離完全ヒト抗体に関し、ここで、該抗体は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27および配列番号29からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である重鎖可変ドメイン配列ならびに配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18および配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である軽鎖可変ドメイン配列を含む。
【0012】
一つの側面において、本発明は、少なくとも10-6Mの結合親和性でCD38エピトープに結合するIgGクラスの完全ヒト抗体を提供し、これは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である重鎖可変ドメイン配列ならびに配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である軽鎖可変ドメイン配列を有する。
【0013】
一つの側面において、本発明は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27および配列番号29からなる群から選択されるアミノ酸配列に示される重鎖可変ドメイン配列;および配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18および配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列に示される軽鎖可変ドメイン配列を含む、単離完全ヒト抗CD38抗体を提供する。
【0014】
ある態様において、完全ヒト抗CD38抗体は、重鎖および軽鎖両方を有し、ここで、抗体は、配列番号1/配列番号2(ここでC38A1と称する)、配列番号3/配列番号4(ここでC38A2と称する)、配列番号5/配列番号6(ここでC38B1と称する)、配列番号7/配列番号8(ここでC38B4と称する)、配列番号9/配列番号10(ここでC38B7と称する)、配列番号11/配列番号12(ここでC38C4と称する)、配列番号13/配列番号14(ここでC38C9と称する)、配列番号15/配列番号16(ここでC38D1と称する)、配列番号17/配列番号18(ここでC38D2と称する)、配列番号19/配列番号20(ここでC38D5と称する)、配列番号21/配列番号22(ここでC38D8と称する)、配列番号23/配列番号24(ここでC38D10と称する)、配列番号25/配列番号26(ここでC38D11と称する)、配列番号27/配列番号28(ここでC38F8と称する)、配列番号29/配列番号30(ここでC38G8と称する)およびこれらの組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変ドメイン配列を有する。
【0015】
ある態様において、本発明は、重鎖からの可変ドメイン領域および軽鎖からの可変ドメイン領域を有する抗CD38完全ヒト抗体Fabフラグメントを提供し、ここで、重鎖可変ドメインは配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列および軽鎖可変ドメインは配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。ある態様において、完全ヒト抗体Fabフラグメントは重鎖可変ドメイン領域および軽鎖可変ドメイン領域の両方を有し、ここで、抗体は、配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4、配列番号5/配列番号6、配列番号7/配列番号8、配列番号9/配列番号10、配列番号11/配列番号12、配列番号13/配列番号14、配列番号15/配列番号16、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24、配列番号25/配列番号26、配列番号27/配列番号28、配列番号29/配列番号30およびこれらの組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変ドメイン配列を有する。
【0016】
ある態様において、本発明は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む完全ヒト抗体Fabフラグメントに関し、ここで、重鎖可変ドメインは配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0017】
他の側面において、本発明は、重鎖からの可変ドメイン領域および軽鎖からの可変ドメイン領域および重鎖および軽鎖可変ドメイン領域を結合するペプチドリンカーを有する抗CD38一本鎖ヒト抗体を提供し、ここで、重鎖可変ドメインは配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0018】
ある態様において、本発明は、重鎖可変ドメイン領域および軽鎖可変ドメイン領域のの両方を含む完全ヒト一本鎖抗体を含み、ここで、一本鎖完全ヒト抗体は配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4、配列番号5/配列番号6、配列番号7/配列番号8、配列番号9/配列番号10、配列番号11/配列番号12、配列番号13/配列番号14、配列番号15/配列番号16、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24、配列番号25/配列番号26、配列番号27/配列番号28、配列番号29/配列番号30およびこれらの組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変ドメイン配列を有する。
【0019】
他の側面において、本発明は、重鎖からの可変ドメイン領域および軽鎖からの可変ドメイン領域および重鎖および軽鎖可変ドメイン領域を結合するペプチドリンカーを含む抗CD38一本鎖ヒト抗体を提供し、ここで、重鎖可変ドメインは配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0020】
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27および配列番号29からなる群から選択される重鎖可変領域アミノ酸配列に示す相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変ドメインおよび配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28および配列番号30からなる群から選択される軽鎖可変領域アミノ酸配列に示すCDRを含む軽鎖可変領域を含む、単離抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントもまた本発明にまた包含される。
【0021】
ある態様において、抗CD38完全ヒト抗体または抗体フラグメントは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である重鎖可変ドメインおよび配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。ある態様において、完全ヒト抗体または抗体フラグメントは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよび配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0022】
ある態様において、抗CD38完全ヒト抗体は、重鎖および軽鎖両方を有し、ここで、抗体は、配列番号1/配列番号2(ここでC38A1と称する)、配列番号3/配列番号4(ここでC38A2と称する)、配列番号5/配列番号6(ここでC38B1と称する)、配列番号7/配列番号8(ここでC38B4と称する)、配列番号9/配列番号10(ここでC38B7と称する)、配列番号11/配列番号12(ここでC38C4と称する)、配列番号13/配列番号14(ここでC38C9と称する)、配列番号15/配列番号16(ここでC38D1と称する)、配列番号17/配列番号18(ここでC38D2と称する)、配列番号19/配列番号20(ここでC38D5と称する)、配列番号21/配列番号22(ここでC38D8と称する)、配列番号23/配列番号24(ここでC38D10と称する)、配列番号25/配列番号26(ここでC38D11と称する)、配列番号27/配列番号28(ここでC38F8と称する)、配列番号29/配列番号30(ここでC38G8と称する)およびこれらの組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変ドメイン配列を有する。他の態様において、完全ヒト一本鎖抗体は重鎖可変ドメイン領域および軽鎖可変ドメイン領域の両方を含み、ここで、一本鎖完全ヒト抗体は配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4、配列番号5/配列番号6、配列番号7/配列番号8、配列番号9/配列番号10、配列番号11/配列番号12、配列番号13/配列番号14、配列番号15/配列番号16、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24、配列番号25/配列番号26、配列番号27/配列番号28、配列番号29/配列番号30およびこれらの組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変ドメイン配列を有する。
【0023】
本発明は、さらに哺乳動物の広範囲の癌の処置法であって、抗CD38ポリペプチド、例えば、抗ヒトCD38抗体またはその抗原結合フラグメントを投与することを含む、方法を提供する。
【0024】
ある態様において、処置する哺乳動物の広範囲の癌は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫(BL)、多発性骨髄腫(MM)、B細胞性慢性リンパ性白血病(B-CLL)、B細胞およびT細胞性急性リンパ性白血病(ALL)、T細胞リンパ腫(TCL)、急性骨髄白血病(AML)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL)および慢性骨髄白血病(CML)からなる群から選択される。
【0025】
ある態様において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントは、少なくとも1×10-6MのKDを有する。他の態様において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントは、少なくとも1×10-7MのKDを有する。他の態様において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントは、少なくとも1×10-8M、少なくとも1×10-9Mまたは少なくとも1×10-10MのKDを有する。
【0026】
ある態様において、抗CD38抗体はIgGである。ある態様において、抗CD38抗体はIgG1アイソタイプである。他の態様において、抗CD38抗体はIgG4アイソタイプである。
【0027】
ある態様において、ここに記載する抗CD38抗体または抗原結合フラグメントは組み換えである。ある態様において、ここに記載する抗CD38抗体または抗原結合フラグメントは、ヒト抗体または抗体の抗原結合フラグメントである。
【0028】
本発明はまた、有効量のここに開示する抗CD38抗体またはフラグメントおよび薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】抗CD38抗体C38A2(“38-A2”)、C38D8(“38-D8”)およびC38D4(“38-D4”)がCD38発現細胞に結合し、機能的活性を促進する能力を評価する抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)アッセイの結果を示すグラフである。試験した各抗体のパーセント(%)細胞毒性を決定した。
図1のデータは、抗CD38抗体38-A2および38-D8がRamos標的細胞に結合し、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)活性を促進したことを示す。IgG適合抗体を対照として使用した。ADCCアッセイを、ナチュラルキラー細胞(エフェクター細胞)と抗体被覆腫瘍細胞(標的細胞)をインキュベートすることにより実施する。NK細胞対腫瘍細胞比は、E:T比(エフェクター対標的比)と称する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な記載
定義
用語“ペプチド”、“ポリペプチド”および“タンパク質”は、各々、ペプチド結合により互いに結合した2以上のアミノ酸残基を含む分子をいう。これらの用語は、例えば、天然および人工タンパク質、タンパク質フラグメントおよびタンパク質配列のポリペプチドアナログ(例えばムテイン、バリアントおよび融合タンパク質)ならびに翻訳後または他に共有結合的または非共有結合的に修飾されたタンパク質を含む。ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は単量体でも多量体でもよい。
【0031】
ポリペプチドの“バリアント”(例えば、抗体のバリアント)は、他のポリペプチド配列に対して、アミノ酸配列において1以上のアミノ酸残基が挿入、欠失および/または置換されているアミノ酸配列をいう。開示されるバリアントは、例えば、融合タンパク質を含む。
【0032】
ポリペプチドの“誘導体”は、例えば、他の化学部分(例えば、ポリエチレングリコールまたはアルブミン、例えば、ヒト血清アルブミンのような)へのコンジュゲーション、リン酸化およびグリコシル化により、化学修飾されているポリペプチド(例えば、抗体)をいう。特に断らない限り、用語“抗体”は、2完全長重鎖および2完全長軽鎖を含む抗体に加えて、その誘導体、バリアント、フラグメントおよびムテインを含み、それらの例を下に記載する。
【0033】
“抗原結合タンパク質”は、抗原に結合する部分、および、所望により、抗原結合部分が抗原への抗原結合タンパク質の結合を促進する立体構造に適合することを可能とする骨格またはフレームワーク部分を含む、タンパク質である。抗原結合タンパク質の例は、抗体、抗体フラグメント(例えば、抗体の抗原結合部分)、抗体誘導体および抗体アナログを含む。抗原結合タンパク質は、例えば、移植CDRまたはCDR誘導体を伴う、代替タンパク質骨格または人工骨格を含み得る。このような骨格は、例えば、抗原結合タンパク質の三次元構造を安定化するために導入された変異を含む抗体由来骨格ならびに、例えば、生体適合性ポリマーを含む、完全合成骨格を含むが、これらに限定されない。例えば、Korndorfer et al., 2003, Proteins: Structure, Function, and Bioinformatics, Volume 53, Issue 1:121-129; Roque et al., 2004, Biotechnol. Prog. 20:639-654参照。さらに、ペプチド抗体模倣体(“PAM”)ならびに骨格としてフィブロネクチン成分を利用する抗体模倣体に基づく骨格を使用できる。
【0034】
抗原結合タンパク質は、例えば、免疫グロブリンの構造を有することができる。“免疫グロブリン”は、ポリペプチド鎖の同一の2対から成る四量体分子であり、各対は一つの“軽”鎖(約25kDa)および一つの“重”鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識を担う約100~110以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能を担う定常領域を規定する。ヒト軽鎖は、カッパ軽鎖またはラムダ軽鎖として分類される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファまたはイプシロンとして分類され、それぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEとしての抗体のアイソタイプを規定する。好ましくは、ここに開示する抗EGFR抗体は、重VHおよび軽VLアミノ酸配列におけるその可変ドメイン領域配列により特徴付けられる。好ましい抗体は、カッパIgG抗体であるA6である。軽鎖および重鎖内で、可変領域および定常領域は、約12以上のアミノ酸の“J”領域により結合され、重鎖はまた約10以上のアミノ酸の“D”領域も含む。一般に、Fundamental Immunology Ch. 7 (Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y. (1989))参照。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、インタクト免疫グロブリンが2結合部位を有するように、抗体結合部位を形成する。
【0035】
免疫グロブリン鎖の可変領域は、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3つの高頻度可変性領域により結合された、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同じ一般構造を示す。N末端からC末端で、両軽鎖および重鎖は、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。アミノ酸の各ドメインへの帰属は、Kabat et al. in Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed., US Dept. of Health and Human Services, PHS, NIH, NIH Publication no. 91-3242, 1991の定義に従う。免疫グロブリン鎖におけるアミノ酸のための他のナンバリングシステムは、IMGT.RTMを含む(international ImMunoGeneTics information system; Lefranc et al, Dev. Comp. Immunol. 29:185-203; 2005) and AHo (Honegger and Pluckthun, J. Mol. Biol. 309(3):657-670; 2001)。
【0036】
“抗体”は、特に断らない限り、インタクト免疫グロブリンまたはインタクト抗体と特異的結合について競合するその抗原結合部分をいう。ある態様において、抗体は、各々重鎖可変ドメイン(VH)および重鎖定常領域CH1、CH2およびCH3を含む二つの同一重鎖ならびに各々軽鎖可変ドメイン(VL)および軽鎖定常領域(CL)を含む二つの同一軽鎖を含む。重鎖および軽鎖可変ドメイン配列は、配列番号1~30にここに記載するものから選択され得る。
【0037】
ある態様において、抗体は、種々の抗原特異性を有する免疫グロブリンを含む、血清または血漿のような起源から得ることができる。このような抗体を親和性精製に付したならば、それらを特定の抗原特異性について富化できる。このような抗体の富化調製物は、通常、特定の抗原に対する特異的結合活性を有する約10%未満の抗体からなる。これらの調製物を数回の親和性精製に付して、抗原に対する特異的結合活性を有する抗体の比率を上昇させ得る。この方法で製造した抗体は、しばしば、“単一特異性”として称される。
【0038】
単一特異性抗体調製物は、特定の抗原に対する特異的結合活性を有する約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%または99.9%抗体から構成され得る。
【0039】
ある態様において、抗体のような抗原結合タンパク質は1以上の結合部位を有し得る。1を越える結合部位を有するならば、これら結合部位は互いに同一でも異なってもよい。例えば、天然に存在するヒト免疫グロブリン一般には、2つの同一結合部位を有するが、一方“二特異性”または“二機能性”抗体は2つの異なる結合部位を有する。
【0040】
“抗体フラグメント”または“抗体の抗原結合フラグメント”は、インタクト抗体の一部を含み、好ましくは抗体抗原結合または可変ドメインを含む。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメントおよび直鎖状抗体を含むが、これらに限定されない。抗体フラグメントは、常に“抗体部分”とも称される。
【0041】
抗体の抗原結合部分(またはフラグメント)は、組み換えDNA技術またはインタクト抗体の酵素もしくは化学開裂により製造できる。抗原結合部分は、とりわけ、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ドメイン抗体(dAb)および相補性決定領域(CDR)フラグメント、一本鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、二重特異性抗体、トリアボディ、テトラボディおよび少なくともポリペプチドに特異的抗原結合を与えるのに十分である免疫グロブリンの一部を含むポリペプチドを含む。
【0042】
FabフラグメントはVL、VH、CLおよびCH1ドメインを有する単価フラグメントであり、F(ab’)2フラグメントはヒンジ領域のジスルフィド架橋により結合された2つのFabフラグメントを有する二価フラグメントであり、FdフラグメントはVHおよびCH1ドメインを有し、Fvフラグメントは抗体の単一アームのVLおよびVHドメインを有し、そして、dAbフラグメントは、VHドメイン、VLドメインまたはVHまたはVLドメインの抗原結合フラグメントを有する(米国特許6,846,634号;6,696,245号、米国出願公開20/0202512号;2004/0202995号;2004/0038291号;2004/0009507号;2003/0039958号およびWard et al., Nature 341:544-546, 1989)。
【0043】
二重特異性抗体は、各ポリペプチド鎖が、同一鎖上の2ドメイン間の対形成を可能とするには短過ぎ、そのために、各ドメインが他のポリペプチド鎖の相補性ドメインと対形成することを可能とするリンカーにより結合されたVHおよびVLドメインを含む、2ポリペプチド鎖を含む二価抗体とする(例えば、Holliger et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-48, and Poljak et al., 1994, Structure 2:1121-23参照)。二重特異性抗体の2ポリペプチド鎖が同一であるならば、対形成によりもたらされる二重特異性抗体は、二つの同一抗原結合部位を有する。異なる配列を有するポリペプチド鎖を使用して、2つの異なる抗原結合部位を有する二重特異性抗体を製造できる。同様に、トリアボディおよびテトラボディは、それぞれ3および4ポリペプチド鎖を含む抗体であり、それぞれ、同一でも異なってもよい3および4抗原結合部位を形成する。
【0044】
用語“ヒト抗体”は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する1以上の可変および定常領域を有する抗体を含む。ある態様において、抗体の可変および定常ドメインの全てがヒト免疫グロブリン配列に由来する(“完全ヒト抗体”と称する)。これらの抗体を、ヒト重鎖および/または軽鎖コード化遺伝子由来抗体を発現するよう遺伝子修飾されたマウスの目的の抗原での免疫化を介するものを含む多様な方法で製造でき、それらの例を下に記載する。好ましい態様において、完全ヒト抗体を、抗体のグリコシル化パターンが、天然で存在するときの同一配列を有する抗体と異なるように、組み換え方法を使用して製造する。
【0045】
“ヒト化抗体”は、ヒト化抗体をヒト対象に投与したとき、非ヒト種抗体と比較して、免疫応答を誘発する可能性が低いようにおよび/または免疫応答の重篤度が低いように、1以上のアミノ酸置換、欠失および/または付加により非ヒト種からの抗体の配列と異なる配列を有する。ある態様において、非ヒト種抗体の重鎖および/または軽鎖のフレームワークおよび定常ドメインにおけるあるアミノ酸を、ヒト化抗体を産生するために変異させる。他の態様において、ヒト抗体からの定常ドメインを、非ヒト種の可変ドメインに融合させる。他の態様において、非ヒト抗体の1以上のCDR配列における1以上のアミノ酸残基を変化させて、ヒト対象に投与したとき非ヒト抗体の免疫原性の可能性を減らし、ここで、変えたアミノ酸残基は、抗体のその抗原への免疫特異的結合に重要ではないかまたはアミノ酸配列に行った変化は、抗原へのヒト化抗体の結合が、抗原への非ヒト抗体の結合より顕著に悪化しないような保存的変化である。ヒト化抗体をどのように製造するかの例は、米国特許6,054,297号、5,886,152号および5,877,293号に見ることができる。
【0046】
用語“キメラ抗体”は、ある抗体からの1以上の領域と、1以上の他の抗体からの1以上の領域を含む、抗体をいう。ある態様において、CDRの1以上はヒト抗CD38抗体に由来する。他の態様において、CDRの全てはヒト抗CD38抗体に由来する。他の態様において、1を超えるヒト抗CD38抗体からのCDRが混合され、キメラ抗体に適合される。例えば、キメラ抗体は、第一ヒト抗PAR-2抗体の軽鎖からのCDR1、第二ヒト抗CD38抗体の軽鎖からのCDR2およびCDR3および第三抗CD38抗体の重鎖からのCDRを含み得る。他の組み合わせが可能である。
【0047】
さらに、フレームワーク領域は、同じ抗CD38抗体の一つ、1以上の異なる抗体、例えば、ヒト抗体またはヒト化抗体由来であり得る。キメラ抗体の例において、重鎖および/または軽鎖の一部は、特定の種からのまたは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体と同一であるか、相同であるかまたはそれに由来し、鎖の残りは、他の種または他の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体と同一であるか、相同であるかまたはそれに由来する。所望の生物学的活性(すなわち、CD38に特異的に結合する能力)を示す、このような抗体のフラグメントも包含される。
【0048】
“CDR移植抗体”は、特定の種またはアイソタイプの抗体由来の1以上のCDRおよび同一または異なる種またはアイソタイプの他の抗体のフレームワークを含む、抗体である。
【0049】
“多特異的抗体”は、1以上の抗原上の1を越えるエピトープを認識する抗体である。このタイプの抗体のサブクラスは、同一または異なる抗原上の2つの異なるエピトープを認識する、“二特異的抗体”である。
【0050】
抗原結合タンパク質は、1ナノモル以下の解離定数で抗原(例えば、ヒトCD38)と結合するならば、その抗原に“特異的に結合する”。
【0051】
“抗原結合ドメイン”、“抗原結合領域”または“抗原結合部位”は、抗原と相互作用し、抗原結合タンパク質の特異性および抗原の親和性に貢献する、アミノ酸残基(または他の部分)を含む抗原結合タンパク質の一部である。その抗原に特異的に結合する抗体に関して、これは、そのCDRドメインの少なくとも一つの少なくとも一部を含む。
【0052】
用語“Fcポリペプチド”は、抗体のFc領域由来のポリペプチドの天然およびムテイン形態を含む。二量体化を促進するヒンジ領域を含むこのようなポリペプチドの切断型も包含される。Fc部分(およびそれから形成されたオリゴマー)を含む融合タンパク質は、プロテインAまたはプロテインGカラムでの親和性クロマトグラフィーによる容易な精製の利益を提供する。
【0053】
“エピトープ”は、抗原結合タンパク質(例えば、抗体)により結合される、分子の部分である。エピトープは、分子の非連続的部分を含み得る(例えば、ポリペプチドにおいて、ポリペプチドの一次配列では連続的ではないが、ポリペプチドの三次および四次構造の状況においては、互いに抗原結合タンパク質により結合されるのに十分に近い、アミノ酸残基)。
【0054】
2ポリヌクレオチドまたは2ポリペプチド配列の“パーセント同一性”または“パーセント相同性”は、GAPコンピュータープログラム(GCG Wisconsin Package, version 10.3(Accelrys, San Diego, Calif.)の一部)を使用して、そのデフォルトパラメータを使用して、配列を比較することにより決定する。
【0055】
用語“ポリヌクレオチド”、“オリゴヌクレオチド”および“核酸”は、全体に相互交換可能に使用し、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)、ヌクレオチドアナログを使用して産生されたDNAまたはRNAのアナログ(例えば、ペプチド核酸および天然に存在しないヌクレオチドアナログ)およびこれらのハイブリッドを含む。核酸分子は、一本鎖でも二本鎖でもよい。ある態様において、本発明の核酸分子は、抗体またはそのフラグメント、誘導体、ムテインもしくはバリアントをコードする連続的オープンリーディングフレームを含む。
【0056】
二つの一本鎖ポリヌクレオチドは、それらの配列が、ギャップの導入なく、そして何れかの配列の5’または3’末端に不対ヌクレオチドなく、一方のポリヌクレオチドにおける全てのヌクレオチドが、他方のポリヌクレオチドにおけるその相補性ヌクレオチドの逆であるように逆平行配向にアラインできるなら、互いに“補体”である。二つのポリヌクレオチドが中程度にストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズできるなら、一方のポリヌクレオチドは他方のポリヌクレオチドと“相補性”である。それゆえに、あるポリヌクレオチドは、その補体であることなく、他方のポリヌクレオチドと相補性であり得る。
【0057】
“ベクター”は、それに結合した他の核酸の細胞への導入に使用できる核酸である。ベクターの一つのタイプは“プラスミド”であり、これは、さらなる核酸セグメントがライゲートされ得る、直鎖状または環状二本鎖DNA分子である。他のタイプのベクターは、さらなるDNAセグメントがウイルスゲノム内に導入され得る、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)である。あるベクターは、導入された宿主細胞内で自律増殖できる(例えば、細菌複製起点を含む細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入により宿主細胞のゲノムに統合され、それにより宿主ゲノムと共に複製される。“発現ベクター”は、選択ポリヌクレオチドの発現を指示できるタイプのベクターである。
【0058】
ヌクレオチド配列は、制御配列がヌクレオチド配列の発現(例えば、発現のレベル、時期または位置)に影響するならば、該制御配列と“操作可能に結合”されている。“制御配列”は、それに操作可能に結合された核酸の発現(例えば、発現のレベル、時期または位置)に影響する核酸である。制御配列は、例えば、その作用を、制御される核酸に直接または1以上の他の分子の作用を介して(例えば、制御配列および/または核酸に結合するポリペプチド)発揮することができる。制御配列の例は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含む。制御配列のさらなる例は、例えば、Goeddel, 1990, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. and Baron et al., 1995, Nucleic Acids Res. 23:3605-06に記載されている。
【0059】
“宿主細胞”は、核酸、例えば、本発明の核酸の発現に使用できる細胞である。宿主細胞は原核生物、例えば、大腸菌であってよく、あるいは真核生物、例えば、単一細胞真核生物(例えば、酵母または他の真菌)、植物細胞(例えば、タバコまたはトマト植物細胞)、動物細胞(例えば、ヒト細胞、サル細胞、ハムスター細胞、ラット細胞、マウス細胞もしくは昆虫細胞)またはハイブリドーマであり得る。宿主細胞の例は、サル腎臓細胞のCOS-7系統(ATCC CRL 1651)(Gluzman et al., 1981, Cell 23:175参照)、L細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはそれらの誘導体、例えばVeggie CHOおよび無血清培地で増殖する関連細胞株(Rasmussen et al., 1998, Cytotechnology 28:31参照)またはDHFRを欠損するCHO株DX-B11(Rasmussen et al., 1998, Cytotechnology 28:31参照)、HeLa細胞、BHK(ATCC CRL 10)細胞株、アフリカミドリザル腎臓細胞株CV1由来CV1/EBNA細胞株(ATCC CCL 70)(McMahan et al., 1991, EMBO J. 10:2821参照)、ヒト胚性腎臓細胞、例えば293,293 EBNAまたはMSR 293、ヒト上皮A431細胞、ヒトColo205細胞、他のトランスフォーム霊長類細胞株、正常二倍体細胞、一次組織のインビトロ培養由来の細胞株、一次外植片、HL-60、U937、HaKまたはジャーカット細胞を含む。ある態様において、宿主細胞は哺乳動物宿主細胞であるが、ヒト宿主細胞ではない。一般に、宿主細胞は、その後に宿主細胞で発現され得る、ポリペプチドコード化核酸でトランスフォームまたはトランスフェクトされ得る培養細胞である。用語“組み換え宿主細胞”を、発現させる核酸でトランスフォームまたはトランスフェクトされている宿主細胞を意味するために使用できる。宿主細胞はまた、核酸を含むが、制御配列が、核酸と操作可能に結合されるように宿主細胞に導入されない限り、所望のレベルでそれを発現しない、細胞でもあり得る。用語宿主細胞は、特定の対象細胞をいうだけでなく、このような細胞の子孫または潜在的子孫もいうことは理解される。ある修飾が、例えば、変異または環境の影響により後代で生じ得るため、実際、このような子孫は、親細胞と同一ではない可能性があるが、ここで使用するこの用語の範囲内になお含まれる。
【0060】
用語“組み換え抗体”は、抗体またはその一部のコード化配列(例えば、重鎖または軽鎖をコードするDNA配列)を含む発現ベクター(または1を超える発現ベクター)でトランスフェクトされた細胞または細胞株から発現される抗体をいう。ある態様において、該コード化配列は、その細胞と天然で関連していない。ある態様において、組み換え抗体は、天然で存在する同じ配列を有する抗体のグリコシル化パターンと異なるグリコシル化パターンを有する。ある態様において、組み換え抗体は、ヒト宿主細胞ではない哺乳動物宿主細胞で発現される。特に、個々の哺乳動物宿主細胞は独特なグリコシル化パターンを有する。
【0061】
ここで使用する用語“有効量”は、対象に投与したとき疾患の処置をもたらすのに十分な、CD38に結合する抗体またはその抗原結合部分の量をいう。ここに提供する抗体の治療有効量は、単独でまたは組み合わせで使用したとき、抗体および組み合わせの相対的活性(例えば、細胞増殖阻害における)ならびに処置する対象および疾患状態、対象の体重および年齢、疾患状態の重症度、投与方式などにより変わり、これは、当業者により容易に決定され得る。
【0062】
用語“単離”は、他の細胞物質が実質的にないタンパク質(例えば、抗体)をいう。ある態様において、単離抗体は、同じ種の他のタンパク質が実質的にない。ある態様において、単離抗体は異なる種の細胞により発現され、その異なる種の他のタンパク質が実質的にない。タンパク質を、当分野で周知のタンパク質精製技術を使用して、天然で関連する成分(または抗体産生に使用する細胞発現系と関連する成分)が実質的にないようにできる。ある態様において、本発明の抗CD38抗体または抗原結合フラグメントは、単離される。
【0063】
“中和抗体”または“阻害性抗体”は、実施例においてここに記載するもののようなアッセイを使用して、過剰の抗CD38抗体が活性化の量を少なくとも約20%減少させたとき、CD38のタンパク分解性活性化を阻害する抗体である。種々の態様において、抗原結合タンパク質は、CD38のタンパク分解性活性化の量を少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%および99.9%減少させる。
【0064】
CD38抗原結合タンパク質
本発明は、CD38、例えば、ヒトCD38に結合するCD38結合タンパク質、特に抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、抗CD38ヒト抗体および抗体フラグメント)およびその使用に関する。本発明の種々の側面は、抗体および抗体フラグメント、医薬組成物、核酸、組み換え発現ベクターおよびこのような抗体およびフラグメントの製造のための宿主細胞に関する。インビトロまたはインビボいずれかでのヒトCD38の検出、CD38活性の阻害および癌のような障害の予防または処置のための本発明の抗体の使用方法も本発明に包含される。
【0065】
下の表1に記載するとおり、CD38に特異的である新規抗体重鎖および軽鎖可変領域が本発明に含まれる。ある態様において、本発明は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27および配列番号29のいずれか一つに示すアミノ酸配列を含む可変ドメインを有する重鎖を含む、抗CD38抗体またはそのまたはその抗原結合フラグメントを提供する。ある態様において、本発明は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28および配列番号30のいずれか一つに示すアミノ酸配列を含む可変ドメインを有する軽鎖を含む、抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある態様において、本発明は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28および配列番号30のいずれか一つに示すアミノ酸配列を含む可変ドメインを有する軽鎖;および配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27および配列番号29のいずれか一つに示すアミノ酸配列を含む可変ドメインを有する重鎖を含む抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0066】
相補性決定領域(CDR)は、軽鎖および重鎖可変ドメインの両方で高頻度可変性領域として知られる。可変ドメインのより高度に保存的な部分はフレームワーク(FR)と呼ばれる。ある抗体の相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク領域(FR)を、Kabat et al. supra; Lefranc et al.および/またはHonegger and Pluckthun, supraに記載のシステムを使用して同定し得る。Kabat et al.(1991, NIH Publication 91-3242, National Technical Information Service, Springfield, Va.)に記載のナンバリングシステムも当業者にはよく知られている。この点に関し、Kabat et al.は、あらゆる抗体に適用可能な可変ドメイン配列のナンバリングシステムを規定した。当業者は、その配列自体を超える何らかの実験データに頼ることなく、この“Kabatナンバリング”システムを、あらゆる可変ドメインアミノ酸配列に正確に適用できる。
【0067】
ある態様において、本発明は、表1に記載にする重鎖および軽鎖可変ドメインのCDRを含む、抗CD38抗体を提供する(配列番号1~30)。例えば、本発明は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27および配列番号29のいずれか一つに示すアミノ酸配列に記載されたCDRを有する重鎖可変領域を含む、抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある態様において、本発明は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28および配列番号30のいずれか一つに示すアミノ酸配列に記載されたCDRを有する軽鎖可変領域を含む、抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある態様において、本発明は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18および配列番号20のいずれか一つに示すアミノ酸配列に記載されたCDRを有する軽鎖可変領域;および配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27および配列番号29のいずれか一つに示すアミノ酸配列に記載されたCDRを有する重鎖可変領域を含む、抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0068】
ある態様において、本発明は、少なくとも10-6Mの結合親和性でCD38エピトープに結合するIgGクラスの完全ヒト抗体を提供し、これは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である重鎖可変ドメイン配列および配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30およびこれらの組み合わせからなるアミノ酸配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である軽鎖可変ドメイン配列を含む。ある態様において、完全ヒト抗体は、重鎖および軽鎖両方を有し、ここで、抗体は、配列番号1/配列番号2(ここでC38A1と称する)、配列番号3/配列番号4(ここでC38A2と称する)、配列番号5/配列番号6(ここでC38B1と称する)、配列番号7/配列番号8(ここでC38B4と称する)、配列番号9/配列番号10(ここでC38B7と称する)、配列番号11/配列番号12(ここでC38C4と称する)、配列番号13/配列番号14(ここでC38C9と称する)、配列番号15/配列番号16(ここでC38D1と称する)、配列番号17/配列番号18(ここでC38D2と称する)、配列番号19/配列番号20(ここでC38D5と称する)、配列番号21/配列番号22(ここでC38D8と称する)、配列番号23/配列番号24(ここでC38D10と称する)、配列番号25/配列番号26(ここでC38D11と称する)、配列番号27/配列番号28(ここでC38F8と称する)、配列番号29/配列番号30(ここでC38G8と称する)およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、重鎖/軽鎖可変ドメイン配列を有する。
【0069】
ある態様において、本発明は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27および配列番号29のいずれか一つに示すCDR3ドメインおよび配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27および配列番号29のいずれか一つに示す配列と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む可変ドメインを含む重鎖を含む、抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある態様において、本発明は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28および配列番号30のいずれか一つに示すCDR3ドメインを含む軽鎖および配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28および配列番号30のいずれか一つに示す配列と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む、抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。それゆえに、ある態様において、CDR3ドメインは一定を維持するが、抗体またはその抗原結合フラグメントは、CD38に結合する能力を保持し、親の機能的特徴、例えば、結合親和性を保持しながら、可変性がここに記載する重鎖および/または軽鎖可変領域配列の残りのCDRおよび/またはフレームワーク領域に導入できる。
【0070】
ある態様において、少なくとも95%同一(または少なくとも96%同一または少なくとも97%同一または少なくとも98%同一または少なくとも99%同一)である重鎖または軽鎖内に行う置換は、保存的アミノ酸置換である。“保存的アミノ酸置換”は、アミノ酸残基が、類似の化学性質(例えば、荷電または疎水性)の側鎖(R基)を有する他のアミノ酸残基に置換されるものである。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的性質を実質的に変化させない。2以上のアミノ酸配列が保存的置換により互いに異なるとき、パーセント配列同一性または類似の程度は、置換の保存的性質を補正するために上向きに調節され得る。この調節を行う手段は、当業者に周知である。例えば、引用によりここに包含させる、Pearson (1994) Methods Mol. Biol. 24: 307-331参照。類似の化学性質の側鎖を有するアミノ酸群の例は、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン;(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリンおよびスレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン;(5)塩基性側鎖:リシン、アルギニンおよびヒスチジン;(6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸および(7)硫黄含有側鎖:システインおよびメチオニンを含む。
【0071】
ある態様において、本発明は、表1に記載する抗体の何れかの抗原結合領域を有する、抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。表1に記載のものを含む本発明の抗体は、ヒトCD38に結合する。
【0072】
ある態様において、本発明は、抗体C38A1の抗原結合領域を有する、抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。ある態様において、本発明は、配列番号1に示す重鎖可変ドメイン配列および配列番号2に示す軽鎖可変ドメイン配列を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある態様において、本発明は、配列番号1のCDRを含む重鎖可変ドメインおよび配列番号2のCDRを含む軽鎖可変ドメインを有する抗体を提供する。ある態様において、本発明は、配列番号1に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号2に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、単離ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。抗体は、さらにIgG1またはIgG4アイソタイプであり得る。
【0073】
ある態様において、本発明は、抗体C38A2の抗原結合領域を有する、抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。ある態様において、本発明は、配列番号3に示す重鎖可変ドメイン配列および配列番号4に示す軽鎖可変ドメイン配列を有する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある態様において、本発明は、配列番号3のCDRを含む重鎖可変ドメインおよび配列番号4のCDRを含む軽鎖可変ドメインを有する抗体を提供する。ある態様において、本発明は、配列番号3に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号4に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、単離ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。抗体は、さらにIgG1またはIgG4アイソタイプであり得る。
【0074】
ある態様において、本発明は、抗体C38B1の抗原結合領域を有する、抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。ある態様において、本発明は、配列番号5に示す重鎖可変ドメイン配列および配列番号6に示す軽鎖可変ドメイン配列を有する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある態様において、本発明は、配列番号5のCDRを含む重鎖可変ドメインおよび配列番号6のCDRを含む軽鎖可変ドメインを有する抗体を提供する。ある態様において、本発明は、配列番号5に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号6に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、単離ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。抗体は、さらにIgG1またはIgG4アイソタイプであり得る。
【0075】
ある態様において、本発明は、抗体C38B4の抗原結合領域を有する、抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。ある態様において、本発明は、配列番号7に示す重鎖可変ドメイン配列および配列番号8に示す軽鎖可変ドメイン配列を有する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある態様において、本発明は、配列番号7のCDRを含む重鎖可変ドメインおよび配列番号8のCDRを含む軽鎖可変ドメインを有する抗体を提供する。ある態様において、本発明は、配列番号7に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号8に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、単離ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。抗体は、さらにIgG1またはIgG4アイソタイプであり得る。
【0076】
ある態様において、本発明は、抗体C38B7の抗原結合領域を有する、抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。ある態様において、本発明は、配列番号9に示す重鎖可変ドメイン配列および配列番号10配列を有する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある態様において、本発明は、配列番号9のCDRを含む重鎖可変ドメインおよび配列番号10のCDRを含む軽鎖可変ドメインを有する抗体を提供する。ある態様において、本発明は、配列番号9に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号10に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、単離ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。抗体は、さらにIgG1またはIgG4アイソタイプであり得る。
【0077】
ある態様において、本発明は、抗体C38C4の抗原結合領域を有する、抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。ある態様において、本発明は、配列番号11に示す重鎖可変ドメイン配列および配列番号12に示す軽鎖可変ドメイン配列を有する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある態様において、本発明は、配列番号11のCDRを含む重鎖可変ドメインおよび配列番号12のCDRを含む軽鎖可変ドメインを有する抗体を提供する。ある態様において、本発明は、配列番号11に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号12に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、単離ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。抗体は、さらにIgG1またはIgG4アイソタイプであり得る。
【0078】
ある態様において、本発明は、抗体C38C9の抗原結合領域を有する、抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。ある態様において、本発明は、配列番号13に示す重鎖可変ドメイン配列および配列番号14に示す軽鎖可変ドメイン配列を有する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある態様において、本発明は、配列番号13のCDRを含む重鎖可変ドメインおよび配列番号14のCDRを含む軽鎖可変ドメインを有する抗体を提供する。ある態様において、本発明は、配列番号13に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号14に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、単離ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。抗体は、さらにIgG1またはIgG4アイソタイプであり得る。
【0079】
ある態様において、本発明は、抗体C38D1の抗原結合領域を有する、抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。ある態様において、本発明は、配列番号15に示す重鎖可変ドメイン配列および配列番号16に示す軽鎖可変ドメイン配列を有する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある態様において、本発明は、配列番号15のCDRを含む重鎖可変ドメインおよび配列番号16のCDRを含む軽鎖可変ドメインを有する抗体を提供する。ある態様において、本発明は、配列番号15に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号16に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、単離ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。抗体は、さらにIgG1またはIgG4アイソタイプであり得る。
【0080】
ある態様において、本発明は、抗体C38D2の抗原結合領域を有する、抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。ある態様において、本発明は、配列番号17に示す重鎖可変ドメイン配列および配列番号18に示す軽鎖可変ドメイン配列を有する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある態様において、本発明は、配列番号17のCDRを含む重鎖可変ドメインおよび配列番号18のCDRを含む軽鎖可変ドメインを有する抗体を提供する。ある態様において、本発明は、配列番号17に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号18に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、単離ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。抗体は、さらにIgG1またはIgG4アイソタイプであり得る。
【0081】
ある態様において、本発明は、抗体C38D5の抗原結合領域を有する、抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。ある態様において、本発明は、配列番号19に示す重鎖可変ドメイン配列および配列番号20に示す軽鎖可変ドメイン配配列を有する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある態様において、本発明は、配列番号19のCDRを含む重鎖可変ドメインおよび配列番号20のCDRを含む軽鎖可変ドメインを有する抗体を提供する。ある態様において、本発明は、配列番号19に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号20に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、単離ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。抗体は、さらにIgG1またはIgG4アイソタイプであり得る。
【0082】
ある態様において、本発明は、抗体C38D8の抗原結合領域を有する、抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある態様において、本発明は、配列番号21に示す重鎖可変ドメイン配列および配列番号22に示す軽鎖可変ドメイン配列を有する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある態様において、本発明は、配列番号21のCDRを含む重鎖可変ドメインおよび配列番号22のCDRを含む軽鎖可変ドメインを有する抗体を提供する。ある態様において、本発明は、配列番号21に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号22に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、単離ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。抗体は、さらにIgG1またはIgG4アイソタイプであり得る。
【0083】
ある態様において、本発明は、抗体C38D10の抗原結合領域を有する、抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。ある態様において、本発明は、配列番号23に示す重鎖可変ドメイン配列および配列番号24に示す軽鎖可変ドメイン配列を有する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある態様において、本発明は、配列番号23のCDRを含む重鎖可変ドメインおよび配列番号24のCDRを含む軽鎖可変ドメインを有する抗体を提供する。ある態様において、本発明は、配列番号23に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号24に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、単離ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。抗体は、さらにIgG1またはIgG4アイソタイプであり得る。
【0084】
ある態様において、本発明は、抗体C38D11の抗原結合領域を有する、抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。ある態様において、本発明は、配列番号25に示す重鎖可変ドメイン配列および配列番号26に示す軽鎖可変ドメイン配列を有する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある態様において、本発明は、配列番号25のCDRを含む重鎖可変ドメインおよび配列番号26のCDRを含む軽鎖可変ドメインを有する抗体を提供する。ある態様において、本発明は、配列番号25に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号26に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、単離ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。抗体は、さらにIgG1またはIgG4アイソタイプであり得る。
【0085】
ある態様において、本発明は、抗体C38F8の抗原結合領域を有する、抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。ある態様において、本発明は、配列番号27に示す重鎖可変ドメイン配列および配列番号28に示す軽鎖可変ドメイン配列を有する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある態様において、本発明は、配列番号27のCDRを含む重鎖可変ドメインおよび配列番号28のCDRを含む軽鎖可変ドメインを有する抗体を提供する。ある態様において、本発明は、配列番号27に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号28に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、単離ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。抗体は、さらにIgG1またはIgG4アイソタイプであり得る。
【0086】
ある態様において、本発明は、抗体C38G8の抗原結合領域を有する、抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。ある態様において、本発明は、配列番号29に示す重鎖可変ドメイン配列および配列番号30に示す軽鎖可変ドメイン配列を有する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある態様において、本発明は、配列番号29のCDRを含む重鎖可変ドメインおよび配列番号30のCDRを含む軽鎖可変ドメインを有する抗体を提供する。ある態様において、本発明は、配列番号29に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号30に示す配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、単離ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。抗体は、さらにIgG1またはIgG4アイソタイプであり得る。
【0087】
本発明の抗原結合タンパク質の抗原結合フラグメントは、慣用の技術により製造できる。このようなフラグメントの例は、FabおよびF(ab’)2フラグメントを含むが、これらに限定されない。
【0088】
ある態様において、本発明は、重鎖からの可変ドメイン領域および軽鎖からの可変ドメイン領域を有するFab完全ヒト抗体フラグメントを提供し、ここで、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である重鎖可変ドメイン配列および配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30およびこれらの組み合わせからなるアミノ酸配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である軽鎖可変ドメイン配列を有する。ある態様において、完全ヒト抗体Fabフラグメントは重鎖可変ドメイン領域および軽鎖可変ドメイン領域の両方を有し、ここで、抗体は、配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4、配列番号5/配列番号6、配列番号7/配列番号8、配列番号9/配列番号10、配列番号11/配列番号12、配列番号13/配列番号14、配列番号15/配列番号16、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24、配列番号25/配列番号26、配列番号27/配列番号28、配列番号29/配列番号30およびこれらの組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変ドメイン配列を有する。ある態様において、本発明は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよび配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む、抗CD38 Fabフラグメントを提供する。
【0089】
一本鎖抗体は、重鎖および軽鎖可変ドメイン(Fv領域)フラグメントを、単一ポリペプチド鎖をもたらすアミノ酸架橋(短ペプチドリンカー)により結合させることにより製造できる。このような一本鎖Fvs(scFvs)は、ペプチドリンカーをコードするDNAを、2つの可変ドメインポリペプチド(VLおよびVH)をコードするDNAの間に融合させることにより製造されている。得られたポリペプチドは、2可変ドメイン間の可動性リンカーの長さによって、それら自体、抗原結合単量体を形成するように折り畳みが戻ることができるかまたは多量体(例えば、二量体、三量体または四量体)を形成できる(Kortt et al., 1997, Prot. Eng. 10:423; Kortt et al., 2001, Biomol. Eng. 18:95-108). By combining different VL and VH-comprising polypeptides, one can form multimeric scFvs that bind to different epitopes (Kriangkum et al., 2001, Biomol. Eng. 18:31-40)。一本鎖抗体の製造のために開発された技術は、米国特許4,946,778号;Bird, 1988, Science 242:423; Huston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879; Ward et al., 1989, Nature 334:544, de Graaf et al., 2002, Methods Mol. Biol. 178:379-87に記載のものを含む。
【0090】
ある態様において、本発明は、重鎖からの可変ドメイン領域および軽鎖からの可変ドメイン領域および重鎖および軽鎖可変ドメイン領域を結合するペプチドリンカーを有する一本鎖ヒト抗体を提供し、当該抗体は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である重鎖可変ドメイン配列および配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30およびこれらの組み合わせからなるアミノ酸配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である軽鎖可変ドメイン配列を有する。ある態様において、完全ヒト一本鎖抗体は重鎖可変ドメイン領域および軽鎖可変ドメイン領域の両方を含み、ここで、一本鎖完全ヒト抗体は配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4、配列番号5/配列番号6、配列番号7/配列番号8、配列番号9/配列番号10、配列番号11/配列番号12、配列番号13/配列番号14、配列番号15/配列番号16、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24、配列番号25/配列番号26、配列番号27/配列番号28、配列番号29/配列番号30およびこれらの組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変ドメイン配列を有する。ある態様において、本発明は、ペプチドリンカーにより結合された重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む一本鎖ヒト抗体を提供し、ここで、重鎖可変ドメイン配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0091】
所望の抗体から、異なるサブクラスの抗体またはアイソタイプを誘導する技術、すなわち、サブクラススイッチングは知られている。それゆえに、例えば、IgG抗体はIgM抗体から誘導でき、この逆も可能である。このような技術は、ある抗体(親抗体)の抗原結合性質を有するが、親抗体と異なる抗体アイソタイプまたはサブクラスと関連する生物学的性質も示す新規抗体の製造を可能とする。組み換えDNA技術を用いることができる。特定の抗体ポリペプチドをコードするクローン化DNA、例えば、所望のアイソタイプの抗体の定常ドメインをコードするDNAをこのような操作に使用し得る(Lantto et al., 2002, Methods Mol. Biol. 178:303-16)。さらに、IgG4が望まれるならば、ヒンジ領域に点変異(CPSCP→CPPCP;それぞれ配列番号31および32)を導入し(Bloom et al., 1997, Protein Science 6:407)、IgG4抗体における不均一性をもたらし得るH鎖内ジスルフィド結合形成傾向を軽減することが望ましいことがあり得る。それゆえに、ある態様において、本発明の抗体はヒトIgG1抗体である。それゆえに、ある態様において、本発明の抗体はヒトIgG4抗体である。
【0092】
本発明は、可変ドメイン領域のアミノ酸配列により構造的に特徴付けられる多数の抗体を提供する。しかしながら、アミノ酸配列は、特異的標的への高い程度の結合を維持しながら、いくぶん変えることができる。より具体的には、可変ドメイン領域における多くのアミノ酸は、保存的置換で変えることができ、得られた抗体の結合特性は、野生型抗体配列の結合特性と異ならないであろうことが予測される。抗原と直接相互作用せずまたは抗原結合に影響せず、かつ、抗体構造決定に重要ではない、多くのアミノ酸が抗体可変ドメインに存在する。例えば、開示する抗体の何れかの予測される非必須アミノ酸残基を、好ましくは、同じクラスの他のアミノ酸残基と置き換える。抗原結合を排除しないアミノ酸保存的置換を同定する方法は、当分野で周知である(例えば、Brummell et al., Biochem. 32: 1180-1187 (1993); Kobayashi et al. Protein Eng. 12(10):879-884 (1999); and Burks et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:412-417 (1997)参照)。Near et al. Mol. Immunol. 30:369-377, 1993は、部位特異的変異誘発により、結合にどのような影響が生じるかまたは生じないか説明する。Near et al.は、抗原結合を変える可能性が高いと考えられる残基のみを変異させた。大部分は、結合親和性に中程度のまたは負の影響を有し(Near et al. Table 3)、ジゴキシンの種々の形態への結合に影響した(Near et al. Table 2)。それゆえに、本発明はまた、ある態様において、ここに開示する配列と少なくとも95%同一性、少なくとも96%同一性、少なくとも97%同一性、少なくとも98%同一性または少なくとも99%同一性を有する可変配列も含む。
【0093】
ある態様において、ここに提供される抗体またはその抗原結合フラグメントは、1×10-6M以下;5×10-7M以下;1×10-7M以下;5×10-8M以下;1×10-8M以下;5×10-9M以下;または1×10-9M以下の解離定数(KD)を有する。ある態様において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、1×10-7M~1×10-10MのKDを有する。ある態様において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、1×10-8M~1×10-10MのKDを有する。
【0094】
当業者は、抗体またはそのフラグメントのKDを決定することが知られる標準的方法を認識する。例えば、ある態様において、KDは、放射標識抗原結合アッセイ(RIA)により測定する。ある態様において、RIAを、目的の抗体のFabバージョンとその抗原で実施する。例えば、抗原に対するFabの溶液結合親和性を、Fabと、最小濃度の(125I)標識抗原を、タイトレーションシリーズの非標識抗原と平衡化させ、次いで、結合抗原を抗Fab抗体被覆プレートで捕捉することにより測定する(例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881(1999)参照)。
【0095】
他の態様によって、KDを、BIACORE表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定する。ここで使用する用語“表面プラズモン共鳴”は、例えば、BIACOREシステム(Biacore Life Sciences division of GE Healthcare, Piscataway, NJ)を使用する、バイオセンサーマトリクス内のタンパク質濃度の変更の検出により、実時間相互作用の分析を可能とする光学現象をいう。
【0096】
特定の態様において、本発明の抗原結合タンパク質は、CD38に少なくとも106 1/Msの結合親和性(Ka)を有する。他の態様において、抗原結合タンパク質は、少なくとも107 1/Ms、少なくとも108 1/Ms、少なくとも109 1/Msまたは少なくとも1010 1/MsのKaを示す。他の態様において、抗原結合タンパク質は、ここで実施例に記載する抗体のものと実質的に同じKaを有する。
【0097】
他の態様において、本発明は、CD38からの低解離速度を有する抗原結合タンパク質を提供する。ある態様において、抗原結合タンパク質は、1×10-4 to -1 s-1以下のKoffを有する。他の態様において、Koffは5×10-5 to -1 s-1以下である。他の態様において、Koffは、ここに記載する抗体と実質的に同じである。他の態様において、抗原結合タンパク質は、ここに記載する抗体と実質的に同じKoffでCD38に結合する。
【0098】
他の側面において、本発明は、CD38の活性を阻害する抗原結合タンパク質を提供する。ある態様において、抗原結合タンパク質は、1000nM以下のIC50を有する。他の態様において、IC50は100nM以下である;他の態様において、IC50は10nM以下である。他の態様において、IC50は、ここで実施例に記載する抗体のものと実質的に同じである。他の態様において、抗原結合タンパク質は、CD38の活性を、ここに記載する抗体と実質的に同じIC50で阻害する。
【0099】
他の側面において、本発明は、細胞表面に発現されるヒトCD38と結合し、そのように結合したとき、細胞表面のCD38量を顕著に低下させることなく、細胞におけるCD38シグナル伝達活性を阻害する抗原結合タンパク質である。細胞の表面および/または内部のCD38の量の測定または概算のためのあらゆる方法を使用できる。他の態様において、抗原結合タンパク質のCD38発現細胞への結合は、細胞表面CD38の約75%、50%、40%、30%、20%、15%、10%、5%、1%または0.1%未満の内在化を起こす。
【0100】
他の側面において、本発明は、インビトロまたはインビボで少なくとも1日の半減期を有する、抗原結合タンパク質を提供する(例えば、ヒト対象に投与したとき)。ある態様において、抗原結合タンパク質は、少なくとも3日の半減期を有する。他の態様において、抗原結合タンパク質は、4日以上の半減期を有する。他の態様において、抗原結合タンパク質は、8日以上の半減期を有する。他の態様において、抗原結合タンパク質は、非誘導体化または非修飾抗原結合タンパク質と比較して長い半減期を有するように、誘導体化または修飾される。他の態様において、抗原結合タンパク質は、引用により本明細書に包含させるWO2000/09560号に記載のように、血清半減期を延長するための1以上の点変異を含む。
【0101】
本発明は、さらに多特異的抗原結合タンパク質、例えば、二特異性抗原結合タンパク質、例えば、CD38の2つの異なるエピトープまたはCD38のエピトープと他の分子のエピトープに、二つの異なる抗原結合部位または領域により結合する抗原結合タンパク質を提供する。さらに、ここに開示する二特異性抗原結合タンパク質は、他の刊行物を引用してここに記載するものを含む、ここに記載する抗体の一つからのCD38結合部位と、他のここに記載する抗体からの第二のCD38結合領域を含むことができる。あるいは、二特異性抗原結合タンパク質は、ここに記載する抗体の一つからの抗原結合部位と、当分野で知られる他のCD38抗体または当分野で知られる方法またはここに記載する方法により製造した抗体からの第二の抗原結合部位を含み得る。
【0102】
二特異性抗体製造のための多数の方法が当分野で知られる。このような方法は、Milstein et al., 1983, Nature 305:537に記載のハイブリッド-ハイブリドーマの使用および抗体フラグメントの化学カップリング(Brennan et al., 1985, Science 229:81; Glennie et al., 1987, J. Immunol. 139:2367;米国特許6,010,902)を含む。さらに、二特異性抗体を、組み換え手段、例えばロイシンジッパー部分の使用(すなわち、ヘテロ二量体を優先的に形成するFosおよびJunタンパク質から;Kostelny et al., 1992, J. Immunol. 148:1547)または米国特許5,582,996に記載の他の鍵穴と鍵相互作用的ドメイン構造の使用により、製造できる。さらなる有用な技術は、米国特許5,959,083号;および5,807,706号に記載のものを含む。
【0103】
他の側面において、抗原結合タンパク質は、抗体の誘導体を含む。誘導体化抗体は、特定の用途における半減期延長のような、所望の性質を抗体に与えるあらゆる分子または物質を含み得る。誘導体化抗体は、例えば、検出可能(または標識)部分(例えば、放射性、比色、抗原性または酵素分子、検出可能ビーズ(例えば磁気または高電子密度(例えば、金)ビーズ)または他の分子に結合する分子(例えば、ビオチンまたはストレプトアビジン)、治療的または診断的部分(例えば、放射性、細胞毒性または薬学的活性部分)または特定の用途(例えば、ヒト対象のような対象への投与または他のインビボまたはインビトロ用途)のための抗体の適性を上げる分子を含み得る。抗体の誘導体化に使用できる分子の例は、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)およびポリエチレングリコール(PEG)を含む。抗体のアルブミン結合およびペグ化誘導体は、当分野で周知の技術を使用して製造できる。ある態様において、抗体を、トランスサイレチン(TTR)またはTTRバリアントとコンジュゲートまたは他に結合できる。TTRまたはTTRバリアントは、例えば、デキストラン、ポリ(n-ビニルピロリドン)、ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコ-ポリマー、ポリオキシエチル化ポリオールおよびポリビニルアルコールからなる群から選択される化学で化学修飾されていてよい。
【0104】
1以上の抗原結合タンパク質を含むオリゴマーを、CD38アンタゴニストとして用い得る。オリゴマーは、共有結合的に結合または非共有結合的に結合した二量体、三量体または高級オリゴマーの形であり得る。2以上の抗原結合タンパク質を含むオリゴマーは、使用が企図され、ホモ二量体がその一例である。他のオリゴマーは、ヘテロ二量体、ホモ三量体、ヘテロ三量体、ホモ四量体、ヘテロ四量体などを含む。
【0105】
ある態様は、抗原結合タンパク質に融合したペプチド部分間の共有結合または非共有結合相互作用により結合された、複数抗原結合タンパク質を含むオリゴマーに関する。このようなペプチドは、ペプチドリンカー(スペーサー)またはオリゴマー化を促進する性質を有するペプチドであり得る。ロイシンジッパーおよび抗体由来のあるポリペプチドが、下にさらに詳細に記載するとおり、とりわけ、それに結合した抗原結合タンパク質のオリゴマー化を促進できるペプチドである。
【0106】
特定の態様において、オリゴマーは、2~4個の抗原結合タンパク質を含む。オリゴマーの抗原結合タンパク質は、上記の形のいずれか、例えば、バリアントまたはフラグメントのような、任意の形であり得る。好ましくは、オリゴマーは、CD38結合活性を有する抗原結合タンパク質を含む。
【0107】
オリゴマー抗原結合タンパク質を製造する他の方法は、ロイシンジッパーの使用を含む。ロイシンジッパードメインは、それが見られるタンパク質のオリゴマー化を促進するペプチドである。ロイシンジッパーは、数DNA結合タンパク質で元々同定され(Landschulz et al., 1988, Science 240:1759)、それ以来、多数の様々なタンパク質で見られている。既知ロイシンジッパーは、とりわけ、二量体化または三量体化する天然に存在するペプチドおよびその誘導体である。可溶性オリゴマータンパク質の製造に適当なロイシンジッパードメインの例は、WO94/10308号に記載されるものおよびHoppe et al., 1994, FEBS Letters 344:191に記載の肺界面活性剤タンパク質D(SPD)由来ロイシンジッパーである。それに融合した異種タンパク質の安定な三量体形成を可能にする修飾ロイシンジッパーの使用が、Fanslow et al., 1994, Semin. Immunol. 6:267-78に記載されている。一つのアプローチにおいて、ロイシンジッパーペプチドに融合した抗CD38抗体フラグメントまたは誘導体を含む組み換え融合タンパク質が、適当な宿主細胞で発現され、可溶性オリゴマー抗CD38抗体フラグメントまたはその誘導体が培養上清から回収される。
【0108】
CD38に対する抗原結合タンパク質を、例えば、インビトロまたはインビボで、CD38ポリペプチドの存在を検出するためのアッセイにおいて、使用できる。抗原結合タンパク質はまた免疫親和性クロマトグラフィーによるCD38タンパク質精製にも使用できる。遮断抗原結合タンパク質を、ここに開示する方法において使用できる。CD38アンタゴニストとして機能するこのような抗原結合タンパク質を、種々の癌を含むが、これに限定されない、何らかのCD38誘発状態の処置に使用できる。
【0109】
抗原結合タンパク質を、CD38誘発生物学的活性を阻害するためにインビトロ手順で用いてもインビボで投与してもよい。CD38の活性化により利益(直接的または間接的)を受ける障害を、その例をここに提供するが、こうして、処置し得る。ある態様において、本発明は、処置を必要とする哺乳動物に、CD38誘発生物学的活性を低減するための有効量でCD38遮断抗原結合タンパク質をインビボで投与することを含む、治療方法を提供する。
【0110】
ある態様において、抗原結合タンパク質は、CD38の生物学的活性を阻害する、完全ヒトモノクローナル抗体を含む。
【0111】
ここに記載する抗体および抗体フラグメントを含む抗原結合タンパク質を、多数の慣用の技術のいずれかにより製造できる。例えば、それらは、当分野で知られる任意の技術を使用して、それらを天然で発現する細胞から精製でき(例えば、抗体を、それを産生するハイブリドーマから製造できる)または組み換え発現系で産生され得る。例えば、Monoclonal Antibodies, Hybridomas: A New Dimension in Biological Analyses, Kennet et al. (eds.), Plenum Press, New York (1980); and Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Land (eds.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (1988)参照。
【0112】
当分野で知られるあらゆる発現系を、本発明の、ここに記載する抗体および抗体フラグメントを含む、組み換えポリペプチドの製造に使用できる。一般に、宿主細胞を、所望のポリペプチドをコードするDNAを含む組み換え発現ベクターでトランスフォームする。用い得る宿主細胞は、とりわけ、原核生物、酵母または高等真核細胞である。原核生物は、グラム陰性またはグラム陽性生物、例えば大腸菌または桿菌を含む。高等真核細胞は、昆虫細胞および哺乳動物起源の確立された細胞株を含む。適当な哺乳動物宿主細胞株の例は、サル腎臓細胞のCOS-7系統(ATCC CRL 1651)(Gluzman et al., 1981, Cell 23:175)、L細胞、293細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、BHK(ATCC CRL 10)細胞株およびMcMahan et al., 1991, EMBO J. 10: 2821に記載のアフリカミドリザル腎臓細胞株CV1由来CV1/EBNA細胞株(ATCC CCL 70)を含む。細菌、真菌、酵母および哺乳動物細胞宿主で使用するための適切なクローニングおよび発現ベクターは、Pouwels et al.(Cloning Vectors: A Laboratory Manual, Elsevier, N.Y., 1985)により記載される。
【0113】
トランスフォーム細胞を、ポリペプチドの発現を促進する条件下で培養し、ポリペプチドを慣用のタンパク質精製手順により採集できる。一つのこのような精製手順は、例えば、結合したCD38の全てまたは一部(例えば、細胞外ドメイン)を有するマトリクス上での、親和性クロマトグラフィーの使用を含む。ここでの使用が企図されるポリペプチドは、内在性物質汚染が実質的にない、実質的に均一な組み換え哺乳動物抗CD38抗体ポリペプチドを含む。
【0114】
抗原結合タンパク質を、多数の既知技術のいずれかにより、製造し、所望の性質についてスクリーニングできる。ある種の技術は、目的の抗原結合タンパク質(例えば、抗CD38抗体)のポリペプチド鎖(またはその一部)をコードする核酸を単離し、核酸を組み換えDNA技術により操作することを含む。核酸を、他の目的の核酸と融合するか、または、例えば1以上のアミノ酸残基の置換、欠失または置換により改変(例えば、変異誘発または他の慣用技術による)してよい。
【0115】
本発明のポリペプチドを、当分野で知られる任意の標準的方法を使用して製造できる。一例において、ポリペプチドを、ポリペプチドをコードする核酸配列(cDNA)を組み換え発現ベクターに導入し、DNA配列を発現を促進する条件下で発現させることによる、組み換えDNA方法により製造する。
【0116】
ある態様において、本発明は、ここに記載する抗体または抗体フラグメントをコードする核酸に関する。例えば、ある態様において、本発明は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29に示す重鎖可変ドメインをコードする核酸および配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30に示す軽鎖可変ドメインをコードする核酸を含む。
【0117】
ここに開示する種々のポリペプチドのいずれかをコードする核酸は、化学的に合成され得る。コドン使用頻度を、細胞での発現が改善するように選択し得る。このようなコドン使用頻度は、選択した細胞型による。特定化されたコドン使用頻度パターンが、大腸菌および他の細菌、ならびに哺乳動物細胞、植物細胞、酵母細胞および昆虫細胞で開発されている。
【0118】
核酸操作の一般的技術は、例えば、ここに包含させるSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2 ed., 1989, or F. Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (Green Publishing and Wiley-Interscience: New York, 1987)および定期的アップデートに記載される。ポリペプチドをコードするDNAを、哺乳動物、ウイルスまたは昆虫遺伝子由来の適当な転写または翻訳制御要素に操作可能に結合させる。このような制御要素は、転写プロモーター、転写を制御するための任意のオペレーター配列、適当なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列および転写および翻訳の停止を制御する配列を含む。宿主で複製する能力は、通常、複製起点により付与され、形質転換体の認識を促進する選択遺伝子が、さらに取り込まれる。
【0119】
組み換えDNAはまた、タンパク質精製に有用であり得るあらゆるタイプのタンパク質タグ配列も含み得る。タンパク質タグの例は、ヒスチジンタグ、FLAGタグ、mycタグ、HAタグまたはGSTタグを含むが、これらに限定されない。細菌、真菌、酵母および哺乳動物細胞宿主で使用する適切なクローニングおよび発現ベクターは、Cloning Vectors: A Laboratory Manual, (Elsevier, N.Y., 1985)に見ることができる。
【0120】
発現構築物を、宿主細胞に適する方法で、宿主細胞に導入する。核酸を宿主細胞に導入するための多様な方法が当分野で知られ、エレクトロポレーション;塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストランまたは他の物質を用いるトランスフェクション;微粒子銃;リポフェクション;および感染(ベクターが感染性因子であるとき)を含むが、これらに限定されない。適当な宿主細胞は、原核生物、酵母、哺乳動物細胞または細菌細胞を含む。
【0121】
適当な細菌は、グラム陰性またはグラム陽性菌、例えば、大腸菌またはバチルス属を含む。酵母、好ましくはサッカロマイセス・セレビシエのようなサッカロマイセス属の種も、ポリペプチドの産生に使用できる。種々の哺乳動物または昆虫細胞培養系も、組み換えタンパク質発現に使用できる。昆虫細胞における異種タンパク質産生のためのバキュロウイルス系が、Luckow and Summers, (Bio/Technology, 6:47, 1988)によりレビューされている。適当な哺乳動物宿主細胞株の例は、内皮細胞、COS-7サル腎臓細胞、CV-1、L細胞、C127、3T3、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、ヒト胚性腎臓細胞、HeLa、293、293TおよびBHK細胞株を含む。精製ポリペプチドを、適当な宿主/ベクター系を組み換えタンパク質を発現するように培養することにより製造する。多くの適用について、ここに開示するポリペプチドの大部分の小サイズが、発現の好ましい方法として大腸菌における発現をする。その後、タンパク質を培養培地または細胞抽出物から精製する。
【0122】
タンパク質を、細胞-翻訳系を使用しても製造できる。このような目的のために、ポリペプチドをコードする核酸を修飾して、mRNAを産生するためのインビトロ転写を可能にしおよび利用する特定の無細胞系におけるmRNAの無細胞翻訳(哺乳動物または酵母無細胞翻訳系のような真核または細菌無細胞翻訳系のような原核)を可能にしなければならない。
【0123】
CD38結合ポリペプチドはまた、化学合成により製造できる(例えばSolid Phase Peptide Synthesis, 2nd ed., 1984, The Pierce Chemical Co., Rockford, Ill.に記載の方法による)。タンパク質の修飾も化学合成により製造し得る。
【0124】
本発明のポリペプチドを、タンパク質化学の分野で一般に知られるタンパク質の単離/精製方法により精製できる。非限定的例は、抽出、再結晶、塩析(例えば、硫酸アンモニウムまたは硫酸ナトリウムで)、遠心、透析、限外濾過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲル濾過、ゲル浸透クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、電気泳動、向流分配またはこれらの任意の組み合わせを含む。精製後、ポリペプチドを異なる緩衝液で交換するおよび/または濾過および透析を含むが、これらに限定されない当分野で知られる多様な方法のいずれかで濃縮することができる。
【0125】
精製ポリペプチドは、好ましくは少なくとも85%純度、より好ましくは少なくとも95%純度、最も好ましくは少なくとも98%純度である。純度の精密な数値に関係なく、ポリペプチドは、医薬製品として使用するのに十分純粋である。
【0126】
ある態様において、本発明は、CD38に結合するモノクローナル抗体を提供する。モノクローナル抗体を、当分野で知られる任意の技術を使用して、例えば、免疫化スケジュール完了後のトランスジェニック動物から採取した脾臓細胞の不死化により、製造できる。脾臓細胞を、当分野で知られる任意の技術を使用して、例えば、骨髄腫細胞と融合して、ハイブリドーマを形成して、不死化できる。ハイブリドーマ産生融合手順に使用する骨髄腫細胞は、好ましくは非抗体産生性であり、高融合効率を有し、所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖を支持するある選択培地での増殖を不可能とする酵素欠乏である。マウス融合に使用する適当な細胞株の例は、Sp-20、P3-X63/Ag8、P3-X63-Ag8.653、NS1/1.Ag 41、Sp210-Ag14、FO、NSO/U、MPC-11、MPC11-X45-GTG 1.7およびS194/5XX0 Bulを含み、ラット融合において使用する細胞株の例は、R210.RCY3、Y3-Ag 1.2.3、IR983Fおよび48210を含む。細胞融合に有用な他の細胞株は、U-266、GM1500-GRG2、LICR-LON-HMy2およびUC729-6である。
【0127】
本発明の抗原結合タンパク質の抗原結合フラグメントを、当分野で知られる慣用の技術により製造できる。
【0128】
ポリペプチドの翻訳後修飾
ある態様において、本発明の結合ポリペプチドは、さらに翻訳後修飾を含み得る。翻訳後タンパク質修飾の例は、リン酸化、アセチル化、メチル化、ADP-リボシル化、ユビキチン化、グリコシル化、カルボニル化、SUMO化、ビオチン化またはポリペプチド側鎖もしくは疎水性基の付加を含む。その結果、修飾可溶性ポリペプチドは、脂質、ポリまたはモノサッカライドおよびホスフェートのような非アミノ酸要素を含み得る。グリコシル化の好ましい形態はシアリル化であり、これは、1以上のシアル酸部分をポリペプチドにコンジュゲートする。シアル酸部分は、タンパク質の溶解度および血清半減期を改善し、同時に、免疫原性の可能性を低減させる。Raju et al. Biochemistry. 2001 31; 40(30):8868-76参照。
【0129】
ある態様において、対象可溶性ポリペプチドの修飾形態は、対象可溶性ポリペプチドの非タンパク質性ポリマーへの架橋を含む。ある態様において、ポリマーは、米国特許4,640,835号;4,496,689号;4,301,144号;4,670,417号;4,791,192号または4,179,337号に示すような方法での、ポリエチレングリコール(“PEG”)、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレンである。
【0130】
PEGは、市販され、当分野で周知の方法によりエチレングリコールの開環重合化により製造できる、水可溶性ポリマーである(Sandler and Karo, Polymer Synthesis, Academic Press, New York, Vol. 3, pages 138-161)。用語“PEG”は、PEGのサイズまたは末端への修飾と関係なく、あらゆるポリエチレングリコール分子を包含するよう広義に使用し、式:X--O(CH2CH2O)n-CH2CH2OH (1)(式中、nは20~2300であり、XはHまたは末端修飾、例えば、C1-4アルキルである)で表すことができる。ある態様において、本発明のPEGは、一端がヒドロキシまたはメトキシで終わり、すなわち、XがHまたはCH3である(“メトキシPEG”)。PEGはさらなる化学基を含むことができ、これは結合反応に必要である;分子の化学合成に由来する;または分子の複数部分の最適距離のためのスペーサーである。さらに、このようなPEGは、互いに結合する、1以上のPEG側鎖からなり得る。1を超えるPEG鎖を有するPEGは、多アーム化または分枝PEGと称される。分枝PEGは、例えば、ポリエチレンオキシドの、グリセロール、ペンタエリスリオールおよびソルビトールを含む、種々のポリオールへの添加により製造できる。例えば、4アーム分枝PEGをペンタエリスリオールおよびエチレンオキシドから製造できる。分枝PEGは、例えば、EP-A0473084号および米国特許5,932,462号に記載される。PEGの一つの形態は、リシンの一級アミノ基を介して結合された、2PEG側鎖(PEG2)を含む(Monfardini et al., Bioconjugate Chem. 6 (1995) 62-69)。
【0131】
PEG修飾ポリペプチドの血清クリアランス率は、非修飾結合ポリペプチドのクリアランス率と比較して、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%低減され得る。PEG修飾ポリペプチドは、非修飾タンパク質の半減期に比して増強された、半減期(t1/2)を有する。PEG結合ポリペプチドの半減期は、非修飾結合ポリペプチドの半減期に比して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、400%または500%または1000%増強され得る。ある態様において、タンパク質半減期を、緩衝化食塩水溶液または血清のようなインビトロで測定する。他の態様において、タンパク質半減期は、動物の血清または他の体液におけるタンパク質の半減期のようなインビボ半減期である。
【0132】
治療方法、製剤および投与方式
本発明は、さらに本発明の抗CD38抗体または抗原結合フラグメントを投与することを含む、哺乳動物の広範囲の癌を処置する方法を提供する。
【0133】
ある態様において、本発明は、少なくとも10-6Mの結合親和性でCD38エピトープに結合するIgGクラスの完全ヒト抗体;重鎖からの可変ドメインおよび軽鎖からの可変ドメインを含むFab完全ヒト抗体フラグメント;重鎖からの可変ドメインおよび軽鎖からの可変ドメインおよび重鎖および軽鎖可変ドメインを結合するペプチドリンカーを含む一本鎖ヒト抗体からなる群から選択される、抗CD38抗体またはそのフラグメントを投与することを含む、癌を処置する方法を提供する。本発明の抗体およびフラグメントにおいて使用し得る重鎖および軽鎖可変領域(および該配列内のCDR)は、配列番号1~30(表1)に記載される。
【0134】
ある態様において、ここに開示する方法は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である重鎖可変ドメイン配列および配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である軽鎖可変ドメイン配列を含む、完全ヒト抗体の使用を含む。
【0135】
ある態様において、ここに記載する方法は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である重鎖可変ドメイン配列および配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である軽鎖可変ドメイン配列を含む、完全ヒトFab抗体フラグメントの使用を含む。
【0136】
ある態様において、ここに記載する方法は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29およびこれらの組み合わせおよびからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一,少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である重鎖可変ドメイン配列および配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である軽鎖可変ドメイン配列を含む、一本鎖ヒト抗体の使用を含む。
【0137】
ある態様において、完全ヒト抗体は、重鎖および軽鎖両方を有し、ここで、抗体は、配列番号1/配列番号2(ここでC38A1と称する)、配列番号3/配列番号4(ここでC38A2と称する)、配列番号5/配列番号6(ここでC38B1と称する)、配列番号7/配列番号8(ここでC38B4と称する)、配列番号9/配列番号10(ここでC38B7と称する)、配列番号11/配列番号12(ここでC38C4と称する)、配列番号13/配列番号14(ここでC38C9と称する)、配列番号15/配列番号16(ここでC38D1と称する)、配列番号17/配列番号18(ここでC38D2と称する)、配列番号19/配列番号20(ここでC38D5と称する)、配列番号21/配列番号22(ここでC38D8と称する)、配列番号23/配列番号24(ここでC38D10と称する)、配列番号25/配列番号26(ここでC38D11と称する)、配列番号27/配列番号28(ここでC38F8と称する)、配列番号29/配列番号30(ここでC38G8と称する)およびこれらの組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変ドメイン配列を含む。好ましくは、完全ヒト抗体Fabフラグメントは重鎖可変ドメイン領域および軽鎖可変ドメイン領域の両方を有し、ここで、抗体は、配列番号1/配列番号2(ここでC38A1と称する)、配列番号3/配列番号4(ここでC38A2と称する)、配列番号5/配列番号6(ここでC38B1と称する)、配列番号7/配列番号8(ここでC38B4と称する)、配列番号9/配列番号10(ここでC38B7と称する)、配列番号11/配列番号12(ここでC38C4と称する)、配列番号13/配列番号14(ここでC38C9と称する)、配列番号15/配列番号16(ここでC38D1と称する)、配列番号17/配列番号18(ここでC38D2と称する)、配列番号19/配列番号20(ここでC38D5と称する)、配列番号21/配列番号22(ここでC38D8と称する)、配列番号23/配列番号24(ここでC38D10と称する)、配列番号25/配列番号26(ここでC38D11と称する)、配列番号27/配列番号28(ここでC38F8と称する)、配列番号29/配列番号30(ここでC38G8と称する)およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、重鎖/軽鎖可変ドメイン配列を含む。
【0138】
ある態様において、完全ヒト一本鎖抗体は、重鎖可変ドメイン領域および軽鎖可変ドメイン領域の両方を含み、ここで、一本鎖完全ヒト抗体は、配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4、配列番号5/配列番号6、配列番号7/配列番号8、配列番号9/配列番号10、配列番号11/配列番号12、配列番号13/配列番号14、配列番号15/配列番号16、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24、配列番号25/配列番号26、配列番号27/配列番号28、配列番号29/配列番号30およびこれらの組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変ドメイン配列を含む。
【0139】
本発明の抗CD38抗体および抗体フラグメントは、哺乳動物の広範囲の癌の処置に使用される。ある態様において、癌は、細胞表面にCD38を発現する、あらゆる固形腫瘍または白血病性細胞を含む。ある態様において、癌は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫(BL)、多発性骨髄腫(MM)、B細胞性慢性リンパ性白血病(B-CLL)、B細胞およびT細胞性急性リンパ性白血病(ALL)、T細胞リンパ腫(TCL)、急性骨髄白血病(AML)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL)および慢性骨髄白血病(CML)からなる群から選択される。
【0140】
ある態様において、本発明の抗CD38抗体および抗体フラグメントは、血液系腫瘍および/またはCD38+腫瘍を含む、癌または他の新生物状態の処置、進行遅延、再発防止または症状軽減に有用である。ある態様において、本発明の抗CD38抗体および抗体フラグメントは、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫(MM)、乳癌、卵巣癌、頭頸部癌、膀胱癌、黒色腫、結腸直腸癌、膵臓癌、肺癌、平滑筋腫、平滑筋肉腫、神経膠腫、神経膠芽腫および固形腫瘍からなる群から選択される癌の処置に有用であり、ここで、固形腫瘍は、乳房腫瘍、卵巣腫瘍、肺腫瘍、膵臓腫瘍、前立腺腫瘍、黒色腫腫瘍、結腸直腸腫瘍、肺腫瘍、頭頸部腫瘍、膀胱腫瘍、食道腫瘍、肝臓腫瘍および腎臓腫瘍からなる群から選択される。
【0141】
ここで使用する“血液癌”は、血液の癌をいい、とりわけ、白血病、リンパ腫および骨髄腫を含む。“白血病”は、感染と戦うには無効な多すぎる白血球が製造され、そうして、血小板および赤血球のような血液を構成する他の部分が押しだされる、血液の癌である。白血病の症例は、急性または慢性に分類されることが理解される。
【0142】
白血病のある形態は、急性リンパ性白血病(ALL);急性骨髄白血病(AML);慢性リンパ性白血病(CLL);慢性骨髄性白血病(CML);骨髄増殖性障害/新生物(MPDS);および骨髄異形成症候群を含む。“リンパ腫”は、とりわけ、低悪性度および高悪性度非ホジキンリンパ腫の両方のホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫および濾胞性リンパ腫(小細胞および大細胞)をいい得る。骨髄腫は、多発性骨髄腫(MM)、巨細胞骨髄腫、重鎖骨髄腫および軽鎖またはベンス・ジョーンズ骨髄腫をいい得る。
【0143】
ある態様において、本発明は、本発明の抗CD38抗体または抗原結合フラグメントを投与することを含む、黄色ブドウ球菌感染の処置または予防方法に関する。
【0144】
投与の技術および用量は、特定のポリペプチドのタイプおよび処置する特定の状態により変わるが、当業者により容易に決定され得る。一般に、規制当局は、治療に使用するタンパク質剤を、許容可能な低レベルの発熱物質を有するよう、製剤することを要求する。従って、治療製剤は、一般に他の製剤と、実質的に無発熱物質であることまたは少なくとも適切な規制当局(例えば、FDA)により決定される許容されるレベルを超える発熱物質を含まないことにより区別される。
【0145】
本発明の治療組成物を、薬学的に許容される希釈剤、担体または添加物とともに、単位投与形態で投与し得る。投与は、非限定的例として、非経腸(例えば、静脈内、皮下)、経口または局所であり得る。さらに、患者の細胞のエクスビボ操作を含む、ネイキッドDNA送達、組み換え遺伝子およびベクター、細胞ベースの送達などのような、本発明のポリペプチドをコードする核酸を使用するあらゆる遺伝子治療技術を用いることができる。
【0146】
組成物は、経口投与用の丸剤、錠剤、カプセル剤、液剤または持続放出錠剤;または静脈内、皮下または非経腸投与用の液体;局所投与用のゲル剤、ローション剤、軟膏剤、クリーム剤またはポリマー剤または他の持続放出媒体の形であり得る。
【0147】
ある態様において、開示される抗体を吸入により投与するが、完全IgG抗体のエアロゾル化は、分子量(約150kDa)により、限定を付し得る。利用可能な市販のエアロゾル化デバイスを最大化するために、小さいFabフラグメントが必要であり得る。
【0148】
製剤の製造のための当分野で周知の方法は、例えば、“Remington: The Science and Practice of Pharmacy”(20th ed., ed. A. R. Gennaro A R., 2000, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, Pa.)に見られる。非経腸投与用製剤は、例えば、添加物、無菌水、食塩水、ポリエチレングリコールのようなポリアルキレングリコール、植物起源の油または水素化ナフタレンを含み得る。生体適合性、生分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマーまたはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーを使用して、化合物の遊離を制御し得る。ナノ粒子製剤(例えば、生分解性ナノ粒子、固体脂質ナノ粒子、リポソーム)を使用して、化合物の体内分布を制御し得る。他の有用な可能性のある非経腸送達系は、エチレン-ビニルアセテートコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、埋め込み式注入系およびリポソームを含む。製剤中の化合物の濃度は、投与する薬物の投与量および投与経路を含む、多数の因子により変わる。
【0149】
ポリペプチドを、所望により、製薬業で通常使用される、非毒性酸付加塩のような薬学的に許容される塩または金属複合体として投与できる。酸付加塩の例は、酢酸、乳酸、パモ酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、パルミチン酸、スベリン酸、サリチル酸、酒石酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸などのような有機酸;タンニン酸、カルボキシメチルセルロースなどのような重合酸;および塩酸、臭化水素酸、硫酸リン酸などのような無機酸を含む。金属複合体は、亜鉛、鉄などを含む。一例において、ポリペプチドを、熱安定性を増加させるために、酢酸ナトリウム存在下で製剤する。
【0150】
経口使用のための製剤は、非毒性の薬学的に許容される添加物との混合物で活性成分を含む、錠剤を含む。これらの添加物は、例えば、不活性希釈剤または充填剤(例えば、スクロースおよびソルビトール)、滑沢剤、流動促進剤および抗接着剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、水素化植物油またはタルク)であり得る。
【0151】
経口使用のための製剤は、咀嚼錠剤または活性成分が不活性固体希釈剤と混合される硬ゼラチンカプセル剤または活性成分が水または油媒体と混合されるゼラチンカプセル剤として提供され得る。
【0152】
治療有効用量は、投与した対象に対し、治療効果を生じる用量をいう。正確な用量は、処置する障害により、既知技術を使用して当業者により決定され得る。一般に、ポリペプチドを、1日あたり約0.01μg/kg~約50mg/kg、好ましくは1日あたり0.01mg/kg~約30mg/kg、最も好ましくは1日あたり0.1mg/kg~約20mg/kg投与する。ポリペプチドは、連日(例えば、1日1回、2回、3回または4回)または好ましくは少ない頻度(例えば、毎週、2週毎、3週毎、毎月または四半期毎)に投与し得る。さらに、当業者には知られるとおり、年齢ならびに体重、一般的健康、性別、食習慣、投与の時間、薬物相互作用および疾患重症度についての調節が必要であるかもしれず、当業者により日常的な実験で決定される。
【0153】
CD38結合ポリペプチドを単独でまたは化学療法、放射線療法、免疫治療、外科的介入またはこれらの任意の組み合わせのような1以上のさらなる治療と組み合わせて投与できる。上記のとおり、他の処置戦略のアジュバント治療である限り、長期治療が同様に可能である。
【0154】
このような方法のある態様において、1以上のポリペプチド治療剤を、一緒に(同時に)または異なる時点で(逐次的に)投与できる。さらに、ポリペプチド治療剤を、癌を処置するまたは血管形成を阻害するための他のタイプの化合物と投与できる。
【0155】
ある態様において、本発明の対象抗CD38抗体剤を単独で使用できる。
【0156】
ある態様において、結合ポリペプチドまたはそのフラグメントを、診断目的で標識しても非標識でもよい。一般に、診断的アッセイは、結合ポリペプチドのCD38への結合に起因する複合体の形成の検出を伴う。結合ポリペプチドまたはフラグメントを、抗体に準じて、標識できる。多様な標識を用いることができ、放射性核種、蛍光体、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤およびリガンド(例えば、ビオチン、ハプテン)を含むが、これらに限定されない。多数の適切な免疫アッセイは当業者に知られる(例えば、米国特許3,817,827号;3,850,752号;3,901,654号;および4,098,876号参照)。非標識のとき、結合ポリペプチドを、凝集アッセイのようなアッセイに使用できる。非標識結合ポリペプチドをまた、結合ポリペプチドと反応する標識抗体または他の適当な試薬(例えば、標識プロテインA)のような結合ポリペプチドの検出に使用できる、他の(1以上の)適当な試薬と組み合わせても使用できる。
【0157】
ある態様において、本発明の結合ポリペプチドを、対象ポリペプチドが酵素にコンジュゲートする酵素免疫アッセイに利用できる。CD38タンパク質を含む生物学的サンプルを対象結合ポリペプチドと組み合わせたとき、結合が結合ポリペプチドとCD38タンパク質の間で生じる。ある態様において、CD38タンパク質発現細胞(例えば、内皮細胞)を含むサンプルを対象抗体と合わせたとき、結合が結合ポリペプチドと、結合ポリペプチドにより認識されるCD38タンパク質担持細胞の間で生じる。これらの結合細胞を、非結合試薬と分離でき、細胞に特異的に結合する結合ポリペプチド-酵素コンジュゲートを、例えば、サンプルと、酵素により作用されたとき、色または他の検出可能変化を生じる酵素の基質と接触させることにより、検出できる。他の態様において、対象結合ポリペプチドは、非標識であり、対象結合ポリペプチドを認識する第二、標識ポリペプチド(例えば、抗体)を添加できる。
【0158】
ある側面において、生物学的サンプルにおけるCD38タンパク質の存在の検出に使用するキットも製造できる。このようなキットは、CD38タンパク質または該受容体の一部に結合するCD38結合ポリペプチドならびに結合ポリペプチドと、受容体タンパク質またはその一部の間の複合体の検出に適する1以上の補助的試薬を含む。本発明のポリペプチド組成物は、単独でまたは他のエピトープに特異的なさらなる抗体と組み合わせて、凍結乾燥形態で提供できる。標識または非標識であり得る結合ポリペプチドおよび/または抗体は、補助剤成分(例えば、緩衝液、例えばTris、リン酸および炭酸、安定化剤、添加物、殺生物剤および/または不活性タンパク質、例えば、ウシ血清アルブミン)と共にキットに包含され得る。例えば、結合ポリペプチドおよび/または抗体を、補助剤成分との凍結乾燥混合物として提供するかまたは補助剤成分を、使用者による組み合わせのために別に提供できる。一般にこれらの補助剤物質は、活性結合ポリペプチドまたは抗体の量に基づき約5重量%未満で存在し、通常ポリペプチドまたは抗体濃度に基づき、少なくとも約0.001重量%の総量で存在する。結合ポリペプチドに結合できる第二抗体を用いるとき、このような抗体をキットに、例えば別のバイアルまたは容器に提供できる。第二抗体は、存在するなら、一般に標識され、上記抗体製剤に準じて製剤できる。
【0159】
ポリペプチド配列は、標準的一文字または三文字略語で示す。特に断らない限り、各ポリペプチド配列は、左側にアミノ末端および右側にカルボキシ末端を有する;各二本鎖核酸配列の各一本鎖核酸配列およびトップ鎖は、左側に5’末端および右側に3’末端を有する。特定のポリペプチド配列は、どのように参照配列と異なるかを説明することによっても述べ得る。
【0160】
本発明をここで詳細に記載しているが、説明の目的のみで包含され、本発明を限定すると解釈してはならない、次の実施例を参照してそれはより明瞭に理解される。
【実施例】
【0161】
CD38に対する特異性およびCD38に対する高い程度の親和性(例えば、少なくとも10-6M)を含む、治療的特性によって、ヒトCD38に対するヒト抗体特異性を同定し、選択した。同定した抗体を表1に記載する。
【0162】
抗CD38抗体がCD38発現細胞に結合し、機能的活性を促進する能力を、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)アッセイを使用して決定した。本アッセイにおいて、Ramos細胞、バーキットリンパ腫細胞株を、5×103細胞/ウェルでウェルに添加した。試験抗体(C38A2(“38-A2”)、C38D8(“38-D8”)およびC38D4(“38-D4”)および対照IgG)を次いで1μg/mlで添加し、Ramos細胞と20分、37℃でインキュベートした。洗浄後、エフェクター細胞を、3つのエフェクター対標的比をもたらす異なる濃度で添加した。エフェクター細胞は、IL-2(100U/ml)存在下、一夜インキュベートされている精製ナチュラルキラー(NK)細胞であった。アッセイを少なくとも4時間進行させ、その後、細胞毒性をPromega Cyto-gloキットを使用して評価した。
【0163】
図1におけるデータは、抗CD38抗体C38A2およびC38D8が、Ramos標的細胞と結合し、ADCC活性を促進することを示す。
【0164】
【表1】
【表2】
さらに、本発明は次の態様を包含する。
1. CD38エピトープに結合するIgGクラスの単離、完全ヒト抗体であって、
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27および配列番号29からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である重鎖可変ドメイン配列;および
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28および配列番号30からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である軽鎖可変ドメイン配列
を含む、抗体。
2. 配列番号1/配列番号2(ここでC38A1と称する)、配列番号3/配列番号4(ここでC38A2と称する)、配列番号5/配列番号6(ここでC38B1と称する)、配列番号7/配列番号8(ここでC38B4と称する)、配列番号9/配列番号10(ここでC38B7と称する)、配列番号11/配列番号12(ここでC38C4と称する)、配列番号13/配列番号14(ここでC38C9と称する)、配列番号15/配列番号16(ここでC38D1と称する)、配列番号17/配列番号18(ここでC38D2と称する)、配列番号19/配列番号20(ここでC38D5と称する)、配列番号21/配列番号22(ここでC38D8と称する)、配列番号23/配列番号24(ここでC38D10と称する)、配列番号25/配列番号26(ここでC38D11と称する)、配列番号27/配列番号28(ここでC38F8と称する)および配列番号29/配列番号30(ここでC38G8と称する)からなる群から選択される重鎖/軽鎖可変ドメイン配列を含む、項1に記載の完全ヒト抗体。
3. 少なくとも1×10
-6Mの解離定数(K
D)を有する、項1または2に記載の完全ヒト抗体。
4. 配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27および配列番号29からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;および
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28および配列番号30からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン配列
を含む、抗CD38完全ヒト抗体Fabフラグメント。
5. 配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4、配列番号5/配列番号6、配列番号7/配列番号8、配列番号9/配列番号10、配列番号11/配列番号12、配列番号13/配列番号14、配列番号15/配列番号16、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24、配列番号25/配列番号26、配列番号27/配列番号28および配列番号29/配列番号30からなる群から選択される重鎖/軽鎖可変ドメイン配列を含む、項4に記載の完全ヒト抗体Fabフラグメント。
6. 少なくとも1×10
-6Mの解離定数(K
D)を有する、項4または5に記載の完全ヒト抗体Fabフラグメント。
7. ペプチドリンカーにより結合された重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む抗CD38一本鎖ヒト抗体であって、ここで、
重鎖可変ドメインが配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27および配列番号29からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み;そして
軽鎖可変ドメインが配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28および配列番号30からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、
一本鎖抗体。
8. 配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4、配列番号5/配列番号6、配列番号7/配列番号8、配列番号9/配列番号10、配列番号11/配列番号12、配列番号13/配列番号14、配列番号15/配列番号16、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24、配列番号25/配列番号26、配列番号27/配列番号28および配列番号29/配列番号30からなる群から選択される重鎖/軽鎖可変ドメイン配列を含む、項7に記載の一本鎖抗体。
9. 少なくとも1×10
-6Mの解離定数(K
D)を有する、項7または8に記載の一本鎖抗体。
10. 癌を処置する方法であって、有効量の項1~9のいずれかに記載の抗CD38抗体または抗体フラグメントを、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。11. 癌が非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫(BL)、多発性骨髄腫(MM)、B細胞性慢性リンパ性白血病(B-CLL)、B細胞およびT細胞性急性リンパ性白血病(ALL)、T細胞リンパ腫(TCL)、急性骨髄白血病(AML)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL)および慢性骨髄白血病(CML)からなる群から選択される、項10に記載の方法。
12. 配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27および配列番号29からなる群から選択される重鎖可変ドメインアミノ酸配列に示す相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変ドメイン;および配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28および配列番号30からなる群から選択される軽鎖可変領域アミノ酸配列に示すCDRを含む軽鎖可変ドメインを含む、単離抗CD38ヒト抗体またはその抗原結合フラグメント。
13. 処置を必要とするヒト対象における癌を処置する方法であって、有効量の項12に記載の抗CD38抗体またはその抗原結合フラグメントを、癌が処置されるように対象に投与することを含む、方法。
14. 癌が非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫(BL)、多発性骨髄腫(MM)、B細胞性慢性リンパ性白血病(B-CLL)、B細胞およびT細胞性急性リンパ性白血病(ALL)、T細胞リンパ腫(TCL)、急性骨髄白血病(AML)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL)および慢性骨髄白血病(CML)からなる群から選択される、項13に記載の方法。
15. 項1~9または12のいずれかに記載の抗CD38抗体または抗体フラグメントおよび薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【配列表】