(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】分注特徴付けのためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20230502BHJP
【FI】
G01N35/10 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021116268
(22)【出願日】2021-07-14
(62)【分割の表示】P 2018545378の分割
【原出願日】2017-02-27
【審査請求日】2021-07-14
(32)【優先日】2016-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507179346
【氏名又は名称】ベンタナ メディカル システムズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(72)【発明者】
【氏名】イウォニウク,アーロン
(72)【発明者】
【氏名】タルッチ,ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ディラン
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0184809(US,A1)
【文献】特開2004-251818(JP,A)
【文献】特開2012-179795(JP,A)
【文献】特開2003-121452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
G01N 1/00- 1/44
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料を処理するためのシステムであって、
a.液体試薬を分注するための少なくとも1つの分注器と、
b.前記少なくとも1つの分注器の出口と前記生体試料の間に位置付け可能な少なくとも1つの分注検出器であって、当該分注検出器は発光器及び対応する受光器の少なくとも1つのアレイを備え、前記少なくとも1つのアレイの前記発光器と対応する受光器の間の空間が前記少なくとも1つの分注検出器の第1の検出領域を形成している、少なくとも1つの分注検出器と、
c.分注事象中の前記少なくとも1つの分注検出器からの信号を受信し前記液体試薬の検出分注体積を出力するように構成されている分注検出ユニットと、
を備え、
前記分注検出ユニットは、前記生体試料へ送達される前記液体試薬の前記検出分注体積を生成するために、前記信号と前記分注事象中に前記分注検出器を通過する液体試薬の速度との積を経時的に積分することにより、前記検出分注体積を計算するように構成されており、
前記信号は、前記分注事象中に前記分注検出器を通過する液体試料の断面積に関する信号であり、
前記速度は、
前記液体試薬が前記分注検出器を通過してゆく際の前記液体試薬の測定された速度であり、前記分注検出ユニットのメモリに
記憶されている、システム。
【請求項2】
前記分注検出器は、発光器及び対応する受光器の少なくとも2つのアレイを備えており、前記発光器及び対応する受光器の少なくとも2つのアレイは、前記分注検出器の前記第1の検出領域及び第2の異なる検出領域を形成している、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記分注検出ユニットは、前記分注事象中に観察される前記液体試薬の形状、経時的形状、速度及び軌道のうちの1つ又はそれ以上を出力するように更に構成されている、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記発光器の少なくとも2つのアレイは、それぞれ、前記少なくとも2つのアレイの前記発光器と対応する受光器の間の光路が互いに平行になるように位置決めされている、請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも2つのアレイの第1のアレイの前記発光器と前記少なくとも2つのアレイの前記第1のアレイの前記対応する受光器の間の光の進行方向は、前記少なくとも2つのアレイの第2のアレイの前記発光器及び対応する受光器の間の光の進行方向とは逆になっていて逆平行構成を形成している、請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項6】
前記発光器の少なくとも2つのアレイは、それぞれ、前記少なくとも2つのアレイの前記発光器と対応する受光器の間の光路が互いに非平行になるように位置決めされている、請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項7】
前記の発光器の少なくとも2つのアレイは、それぞれ、前記少なくとも2つのアレイの前記発光器と対応する受光器の間の光路が互いに対し約90度になるように位置決めされている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記の発光器の少なくとも2つのアレイは、それぞれ、前記少なくとも2つのアレイの前記発光器と対応する受光器の間の光路が互いに対し約90度になるように位置決めされ、
較正機構であって、前記分注検出器の前記第1の検出領域及び/又は前記第2の異なる検出領域へ挿入された前記較正機構の後記オブジェクトの信号対直径の較正を遂行するために、既知の直径のオブジェクトを前記分注検出器の前記第1の検出領域及び/又は第2の異なる検出領域へ挿入する較正機構、を更に備えている、請求項2に記載のシステム。
【請求項9】
前記システムは分注エラーユニットを更に備えており、前記検出分注体積が予想体積の既定範囲から外れている場合、前記分注エラーユニットは、次のアクション、即ち、
a.ユーザーへ警報を提供する、
b.前記生体試料と接触している前記液体試薬の体積を調節するようユーザーへ命令を提供する、
c.前記生体試料への補正手続きを遂行するようユーザーへ命令を提供する、
d.前記生体試料への補正手続きを自動的に遂行する、及び、
e.第2の生体試料の新たな解析を自動的に命じる、
のうちの1つ又はそれ以上を開始するように構成されている、請求項1から8の何れか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記分注検出ユニットは、別々の分注オブジェクトを分注信号プロファイル内で分離し、前記検出された分注体積を提供するために前記分注オブジェクトの検出された体積を合計するよう更に構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001](関連出願データ)
本開示は2016年2月29日出願の米国仮特許出願第62/301,221号の恩典を主張する。
【0002】
[0002](分野)
開示は、液体試薬分注事象の1つ又はそれ以上の態様を検出し特徴付けるためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]液体試薬を使用する生体試料解析用自動システムは、自動解析手続き中にそれぞれの予定された液体試薬分注が起こることを検証するシステムを欠いている場合が多い。よって、その様なシステムでの品質制御は大部分を対照試料の解析に依存している。しかしながら、対照物質が試料自体と混合されなければ、対照試料の解析の結果は、或る特定の試料の解析で実際に何が起こったかの代わりにしかならない。
【0004】
[0004]例えば、顕微鏡スライド上に載せられた細胞試料又は組織試料への試薬送達の観点では、現在の解は、同じスライド上に患者試料と並んで置かれている対照試料を使用して、又は「対照スライド」を調製するように別体のスライド上に置かれている対照試料を使用して、潜在的試料分注エラーを識別するというものである。その場合、対照試料と患者試料は同じ染色プロトコルに曝される。潜在的エラーを識別できるのは、その/それらの(単数又は複数の)スライドが完全に処理され病理医によって精査された後でしかない。その様なわけで、染色プロセス中に分注エラーを補正する機会はなく、貴重な時間と試料材料が無駄になっている。場合によっては、エラーが発見されるまでに18時間又はそれ以上ということもある。その後、(もし可能なら)新しい試料が処理されるとなると、結果を得て適切なケアを患者に施行できるようになるまでの時間が更に延びる。
【0005】
[0005]スライド上対照組織を患者試料1つ1つに対して使用することが推奨されてはいても、一部のラボは数個の患者試料スライドを検証するのに1つのスライド上の1つの対照試料しか使用しないこともある。その様な事例では、適正に染色された対照試料は、全ての患者試料も同様に適正な試薬体積で処理されたことの保証とならない。反対に、対照試料への不適正分注に起因する、不適正に染色された対照試料は、実際に患者試料の結果は信頼できるものであった可能性もあるのに、試料全てが不適正に染色されていて廃棄されねばならないという結論を導き得る。
【0006】
[0006]ロボット利用ピペット操作装置を利用するシステムでは、分注事象に付帯する圧力変動域に基づいて、又はピペットバレル内の光学検出器を通じて、分注事象を監視することが可能であるが、使い捨て分注器の場合、その様な技術は法外な費用がかかり、分注器がどの様に作動するのかに依って、また液体の本性に依って、どの事例でも適用できるとは限らない。したがって、必要とされているのは、液体分注事象を特徴付けるためのシステム及び方法であって、高度なロボット利用ピペット操作システムから単純な機械式分注まで、どんな型式の分注器とでも利用することのできるシステム及び方法である。
【発明の概要】
【0007】
[0007]開示されているのは、分注事象を特徴付けるためのシステム及び方法であって、使用されている分注器の型式にとらわれず、また全体システムの一部として、異なる分注器と共に繰り返し使用でき、確実に潜在的解析エラーがリアルタイムで識別されるように
するのを、また可能である場合であって所望される場合にはエラーが補正されるようにするのを支援する品質管理情報を提供することのできるシステム及び方法である。特定の実施形態では、開示されているシステム及び方法は、試料を処理するべく液体試薬が分注されたことの確証を提供するのみならず、分注された液体についての体積推定も、また更には分注事象の特性も提供することができ、それらを使用して解析時のエラーにつながり得る分注事象を識別することができるようにしている。例えば、顕微鏡スライド上に保持されている試料へ液体試薬を適用するという観点では、開示されているシステム及び方法は、一部の実施形態では、液体試薬の既定体積が顕微鏡スライドの試料が保持されている部分へ既定の空間精度で送達されたことを確証するのに使用できる。
【0008】
[0008]他の特定の実施形態では、分注事象の「形態」が検出され、それを使用して、液体試薬の首尾よい分注が起こったかどうかを判定することができる。例えば、或るより特定の実施形態では、開示されているシステム及び方法を使用して、分注事象が、顕微鏡スライド表面へ容易に定着するゆっくり落ちる液滴の形態をしているのか、又は顕微鏡スライドからはね散るかもしれない高速で動く流れの形態をしているのか、を判定することができる。更に他のより特定的な実施形態では、液体試薬が開示されているセンサシステムを通過してゆく際に当該液体がセンサシステムとどの様に相互反応するかに起因するエラーを識別し、分注事象についての改善された体積推定を提供するように補正することができる。
【0009】
[0009]こうして1つの実施形態では、生体試料を処理するためのシステムであって、液体試薬を分注するための少なくとも1つの分注器を含んでいるシステムが開示されている。分注器とは、例えば、ロボット利用ピペッター、使い捨て試薬分注器、配管された分注器、ブリスターパック、又は生体試料に実際に触れることなく液体試薬を分注して試料と接触させるように構成されている何れかの他の装置又は機構、とすることができる。システムは、更に、少なくとも1つの分注器の出口と生体試料との間に位置付け可能な少なくとも1つの分注検出器を含んでおり、分注検出器は、発光器及び対応する受光器の少なくとも1つのアレイを備え、少なくとも1つのアレイの発光器と対応する受光器の間の空間が少なくとも1つの分注検出器の第1の検出領域を形成している。システムは、更にまた、液体試薬を生体試料へ送達する分注事象の間の少なくとも1つの分注検出器からの信号を受信し、かつ、分注検出器を通過する液体試薬の検出された分注体積を出力するように構成されている分注検出ユニットを含んでいる。或る特定の実施形態では、分注検出器は少なくとも2つのアレイを含み、それら2つのアレイを使用して、分注器から生体試料へ動いてゆく液体試薬の速度をリアルタイムで求め、それにより分注検出ユニットによって出力される検出された分注体積の精度を高めることができるようにしている。
【0010】
[0010]その様なわけで、別の態様では、方法が開示されている。開示されている方法は、分注検出器を分注器と生体試料の間に位置決めする段階を含んでおり、分注検出器は、発光器及び対応する受光器の少なくとも1つのアレイを含み、少なくとも1つのアレイの発光器と対応する受光器の間の空間が少なくとも1つの分注検出器の第1の検出領域を形成している。分注事象に応えて分注検出器によって信号が生成され、この信号(線形などの様に、分注オブジェクト直径でスケールされている)が液体試薬の速度で乗算される。信号と速度の積が経時的に積分されて、分注事象についての検出体積が出る。
【0011】
[0011]分注事象を特徴付けるための開示されているシステムの更なる開示されている実施形態は、分注器と生体試料の間の経路に沿って位置付け可能な分注検出器を含んでいる。分注検出器は、発光器及び対応する受光器の少なくとも1つのアレイを含み、少なくとも1つのアレイの発光器と対応する受光器の間の空間が少なくとも1つの分注検出器の少なくとも第1の検出領域を形成している。分注検出ユニットが、液体試薬を生体試料へ送達する分注事象中の少なくとも1つの分注検出器からの信号を受信するように構成されており、また分注検出ユニットは、以下に更に説明されている様に開示の方法の何れかの実施形態に従って検出された分注体積を出力する。
【0012】
[0012]本開示の更なる態様は、開示されている方法を遂行するための命令が記憶されている非一時的コンピュータ可読記憶媒体、及び開示されている方法を遂行するための命令が記憶されているコンピュータプログラム製品、を含んでいる。開示されているシステムの更なる態様及び利点は、次に続く詳細な説明から明らかになるであろう。
【0013】
[0013]開示されているシステム及び方法の特徴及び利点は、添付図面と関連付けて提示されている以下の詳細な説明を考察することで更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】[0014]開示されているシステムの或る例示としての概要図を示している。
【
図1B】[0015]或る例示としての分注検出システムを示している。
【
図1C】[0016]液体試薬分注器及び分注検出器を生体試料の上方の所定位置へ入れる相対運動システムへ取り付けられた、開示されている分注検出システムの或る実施形態を示している。
【
図2】[0017]開示されている方法の或る実施形態のプロセス流れ図を示している。
【
図3】[0018]開示されているアレイについてのピンゲージ直径対アナログセンサ電圧のグラフを示している。
【
図4】[0019]理論上の光学センサメッシュグリッド(勾配)解析を描いている。
【
図5】[0020]実験による光学センサメッシュグリッド(勾配)解析を描いている。
【
図6A】[0021]電圧信号プロファイル、対、ヘマトキシリン溶液のための試薬及び水道水について示している。
【
図6B】[0022]様々な幾何学形状を有する分注(オブジェクト)についての、それらが開示されている分注検出器の検出領域を通過してゆく際に捕捉される例示として電圧信号プロファイルを示している。
【
図7A】[0023]0.1インチ(2.54ミリメートル)ピン及び染色溶液についてのMATLAB(登録商標)画像解析を示している。
【
図7B】[0024]不透明液滴対透明液滴の電圧信号プロファイルを示している。
【
図7C】[0025]分注検出器の検出領域を通って落下する2つの個別の液滴を示しており、一方は発光器の光の波長に対して不透明であり、もう一方は発光器の光の波長において透明である。
【
図8】[0026]可変体積実験についての分注液体重量、対、信号持続時間のデータを示している。
【
図9】[0027]特定の分注器システムに対するばね及びダッシュポット等価モデルを示している。
【
図10】[0028]ばね及びダッシュポットモデル、対、実験分注器データを示している。
【
図11A】[0029]第2の発光器/受光器対を第1の発光器/受光器対と直列に配置させた例示としての構成と、2つのアレイが存在する場合に分注検出器を通過するオブジェクトについてどの様に速度を計算することがきるか、を示している。
【
図11B】[0030]直列になった2つの発光器/受光器対によって形成される検出領域を通って落下するピンゲージについての例示としての電圧信号プロファイルを示している。
【
図11C】[0031]直列になった2つの発光器/受光器対によって形成される検出領域を通って落下する分注液体についての例示としての電圧信号プロファイルを示している。
【
図12】[0032]幾つかの開示されている信号処理手続の性能を、測定された液体質量(密度を通じて体積に関係付けられる)と比較して描いている。
【
図13】[0033]開示されているアルゴリズム体積推定方法に付帯する誤差の比較を液体の本性との比較で示している。
【
図14】[0034]初期推定体積誤り性能を複数の試薬に亘って示している。
【
図15】[0035]開示されている体積推定アルゴリズムの他の実施形態についての平均誤差の比較を異なる液体試薬型に亘って示している。
【
図16A】[0036]体積推定のための開示されているアルゴリズムの別の実施形態を示している。
【
図16B】[0037]体積推定のための開示されているアルゴリズムの別の実施形態についての、
図16Aからの段階の続きである。
【
図16C】[0038]体積推定のための開示されているアルゴリズムの別の実施形態についての、
図16A及び
図16Bからの段階の更なる続きである。
【
図17】[0039]体積推定のための異なるアルゴリズム間の比較を示している。
【
図18】[0040]
図17に示されている体積推定のための異なるアルゴリズムについての誤差比較を示している。
【
図19A】[0041]1つの発光器/受光器対を有する開示されている分注検出器、又は平行に配列された2対の発光器/受光器を有する分注検出器、を示している。
【
図19B】[0042]互いに垂直に配列された2対の発光器/受光器を有する開示されている分注検出器を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0043]生体試料を処理するためのシステムであって、液体試薬を分注するための少なくとも1つの分注器と、少なくとも1つの分注器の出口と生体試料の間に位置付け可能である(又は位置付けられている)少なくとも1つの分注検出器と、を含んでいるシステムが開示されている。以下に更に例示されている様に、分注検出器は、発光器及び対応する受光器の少なくとも1つのアレイを備え、発光器と各自の対応する受光器の間の空間が少なくとも1つの分注検出器の第1の検出領域を形成している。分注事象中の少なくとも1つの分注検出器からの信号を受信し液体試薬の検出された分注体積を出力するように構成されている分注検出ユニットが含まれている。
【0016】
[0044]一部の実施形態では、分注検出器は、発光器及び対応する受光器のアレイを少なくとも2つ備えている。それらアレイは、それぞれが、分注検出器の検出領域を形成しており、これらの検出領域は、分注器と生体試料の間の同じ位置に位置付けられているか又は異なる位置に位置付けられているかのどちらでもよい。特定の実施形態では、第1のアレイと第2のアレイは、分注器の出口と生体試料の間の経路に沿った異なる場所に位置決めされている。以下に更に説明されている様に、少なくとも2つのアレイを分注器の出口と生体試料の間の経路に沿った異なる場所に備える分注検出器は、分注事象の速度をリアルタイムで求めるために分注検出ユニットによって利用され得る少なくとも2つの信号を提供し、従って液体試薬のより精度の高い検出された分注体積を出力することができる。
【0017】
[0045]特定的な実施形態では、開示されているシステムの分注検出ユニットは、更に、分注検出器からの1つ又はそれ以上の信号を使用して分注事象の単数又は複数の特性を出力するように構成されることができる。その様な特性の例には、分注事象中に観察される液体試薬の形状、経時的形状、速度、及び軌道が挙げられる。例えば、以下の実施例の中で更に示されている様に、分注器の出口と生体試料の間の液滴の形成を伴う分注事象と、液体試薬の流れが分注器から生体試料に向けて射出される分注事象と、を差別化するために分注検出器信号を使用することも可能である。より特定的な実施形態では、その様な特性は、単独で使用されることもあれば、検出分注体積と共に使用されて解析の結果に影響し得る分注事象にフラグを立てるようにすることもできる。例えば、生体試料が(顕微鏡スライドの様な)基板の表面へ付着された組織試料又は細胞試料を備えている場合で、分注事象が高い速度を有する流れの形態をしていれば、試料が基板から追い払われるかもし
れないし、又は液体試薬が試料及び/又は基板からはね散るかもしれない。
【0018】
[0046]基板上に載せられた試料を解析するためのシステムであって、システム分注器が機械式に作動される取り外し可能な分注器(例えば、ここに参考文献としてそれぞれが援用される米国特許第5,595,707号、同第5,654,199号、同第6,093,574号、同第6,290,809号、同第7,217,392号、同第7,897,108号、同第8,883,509号、及び同第8,932,543号、を参照されたし)であってもよいとされるシステムの観点では、分注器の誤作動(例えば過剰な機械的力など)又は詰まりの原因となる分注器出口の試薬残渣の経時的蓄積は、どちらも、分注される液体試薬が高い速度でそして恐らくは流れの形態で送達されるという事態を生じさせかねない。その様な誤った液体試薬分注の形状及び/又は速度の、開示されているシステム及び方法による検出は、生体試料を例えば液体試薬で再処理することが必要なのか又は解析についての信頼できる結果を得るために第2の生体試料を解析することが必要なのかの判定を下すのに使用することができる。
【0019】
[0047]したがって、他の特定の実施形態では、開示されているシステムは分注エラーユニットを更に含んでいる。分注エラーユニットは、分注事象についての(検出された分注体積の様な)検出される単数又は複数の特性又は特性の何れかの組合せを、あらかじめ決められた対応する予期される単数又は複数の特性又は特性の組合せ(又は例えば分注エラーユニットがアクセスできるメモリに記憶されているそれらの値の範囲)に比較して潜在的な分注エラーを検出するのに使用することができる。より特定的な実施形態では、検出分注体積が予想体積の既定範囲から外れている場合、分注エラーユニットは、更に、次のアクション、即ち、ユーザーへ警報を提供する;生体試料と接触している液体試薬の体積を調節するようユーザーへ命令を提供する;試料への補正手続きを遂行するようユーザーへ命令を提供する;試料への補正手続きを自動的に遂行する;及び、第2の生体試料の新たな解析を自動的に命じる、のうちの1つ又はそれ以上を開始するように構成されることができる。
【0020】
[0048]以下では、顕微鏡スライド上に載せられた組織試料及び細胞試料を染色するための自動システムの観点で解説されているが、開示されているシステムは顕微鏡スライド上に保持されている試料を解析するためのシステムに限定されない。開示されているシステム及び方法は、液体試薬が生体試料の上へ又は中へ分注される何らかのシステムにおける構成要素として採用することもできるだろう。その様な代わりのシステムの例には、自動PCR解析器、自動臨床化学解析器、及び核酸配列解析器が挙げられる。その様な解析器では、試料は、基板とは対照的に容器又は容器のアレイに保持されるのが典型的であるが、本開示による分注検出器を分注器と生体試料の間に位置付けることができる限り、開示されているシステム及び方法を採用することができる。また、何れの型式の分注器が開示されているシステム及び方法と共に使用されてもよい。他の型式の分注器の例には、ロボット利用ピペッター、ロボット利用アスピレータ(例えば「シップ・アンド・スピット(吸い込み吐き出し)型」アスピレータなど)、液体試薬供給部へ配管されたノズル、及び押しつぶして液体試薬を放出させるブリスター又はカプセルが挙げられる。
【0021】
[0049]開示されているシステム及び方法は、基板(例えば顕微鏡スライド)上に保持されている試料を染色するための何れの自動システムについても、そこに採用されている単数又は複数の分注器の型式に関係なく、当該自動システムのサブシステムとして利用することができる。その様なシステムの例には、機械式に作動される取り外し可能な分注器に関して、上に挙げたものを含むが、更に、その様なシステムには、米国特許第6,489,171号、同第7,553,672号、同第7,897,108号、同第8,329,100号、同第8,486,714号、同第8,758,707号、及び米国特許出願第2015/0343445号(それら特許文献のそれぞれを参考文献としてここに援用する)に開示されているものも含められ、それらもまた、液体試薬を基板上へ分注するために使用されるピペッター、アスピレータ、ブリスター、カプセル、及び配管されたノズルの様々な組合せを開示している。
【0022】
[0050]本開示による分注検出器のアレイは、2つ又はそれ以上の発光器と対応する受光器との任意の配置であって、その間を光が発光器からその対応する受光器への空間的に差別化された経路に沿って進んでゆく配列、とすることができる。3つ又はそれ以上、6つ又はそれ以上、10個又はそれ以上の様な、複数の発光器が対応する受光器と対にされて分注検出器のアレイを形成しているのがより典型的である。但し、所与のアレイ内の発光器/受光器対の数への制限はない。また、下記の説明的な実施形態は1×(W)幅のアレイに着目しているが、任意の寸法(dimension:「次元」とも)の(H)高さ×Wの発光器及び対応する受光器の2次元アレイ(例えば、2×10、2×20、10×10、又は20×20、及びダイオードレーザーが採用される場合はおそらくWか又はHのどちらかの寸法がなおいっそう多い)である単一センサを利用することも可能である。H寸法が、分注器から生体試料への分注事象の経路に沿っている場合は、H寸法を検出器の一部である複数の異なるアレイへ分割するやり方でアレイ信号をサンプリングすることもでき得るということを指摘しておきたい。そうすると、例えば、20×20アレイを、10×20の二つのアレイから、二十個の1×20のアレイまでのどれかとして分注事象経路に沿って利用することができるだろう。W寸法でのアレイの分割も、例えば、試料を完全に見失う方向に液体試薬が送り出される分注事象について垂直方向のアレイをサンプリングするのに実施可能である。厳密なアレイ構成に関係なく、アレイの又はアレイの選択されたセグメントの、発光器および対応する受光器の間の区域が分注検出器の検出領域を形成する。アレイは任意の型式の光源をアレイの発光器として利用することもできるが、特定の実施形態では発光器はLEDである。他の特定の実施形態では、アレイの発光器として利用される光源はレーザーダイオードである。検出領域での広いカバレージ対狭いカバレージの混合を提供するためにLEDとレーザーダイオードの組合せを利用することもできる。検出器アレイが作動する光の(単数又は複数の)波長は、概して、スペクトルのUV部分、可視部分、及び赤外線部分から選択することができ、波長は、液体試薬が分注検出器を通過してゆく際に液体試薬を通る予想経路長さ内で液体試薬によって実質的に吸収されるように選択されるのが望ましい。異なる波長で作動するアレイを同じ分注検出器内に有することも実施可能である。
【0023】
[0051]2つ又はそれ以上のアレイが分注検出器の一部である実施形態では、様々なアレイでの発光器と受光器の場所の間の関係は、2つ又はそれ以上のアレイの光路が平行又は非平行となるような関係とすることができる。或る特定の実施形態では、少なくとも2つのアレイの第1のアレイの発光器及び少なくとも2つのアレイの第1のアレイの対応する受光器は、少なくとも2つのアレイの第2のアレイの発光器及び対応する受光器と互いに逆になっていて逆平行構成を形成している。2つ又はそれ以上のアレイを分注検出器内の隣接するアレイ同士の間で1つ又はそれ以上の逆平行構成に設置することの利点は、一方のアレイの発光器が第2のアレイの受光器と分注検出器の同じ側になるので当該一方のアレイの発光器からの光がアレイ同士の間にクロストークを引き起こす可能性が低くなる、ということである。別の特定の実施形態では、少なくとも2つのアレイの発光器と対応する受光器の間の光路は互いに非平行(例えば互いに垂直など)とすることができる。非平行である光路を有することの利点は、複数の次元における液体試薬の動きを捕捉して分注事象の形状のより的確な表現を提供し、ひいては検出分注体積のより的確な値を提供できるようにすることであり、というのも、分注断面×速度は、分注事象について経時的に積分されて(又は数値積分法によって合計されて)検出分注体積を出すものであるからだ。よりいっそう特定的な実施形態では、分注事象の形状のより精度の高い表現を提供するために平行と逆平行と非平行のアレイの何れかの組合せを利用することもできる。
【0024】
[0052]開示されているシステムの一部の実施形態では、分注器、分注検出ユニット、及び生体試料のための保持器は、分注器と分注検出ユニットと生体試料のための保持器のうちの少なくとも2つの間の相対運動を提供するように構成されている。その様なシステムには、相対運動を制御するための及び分注事象を開始するためのコントローラが含まれていてもよい。コントローラが生体試料の既定プロトコルに従った処理のためのより大がかりな自動装置の一部になっていて、相対運動及び分注事象開始を制御することだけに従事しているわけではない、ようになっていてもよい。上述の分注検出ユニット及びエラー検出ユニットを機器のコントローラの一部とすることも実施可能である。コントローラの更なる機能としては、試料を追跡すること(バーコード又はRFIDタグを用いるなど)、試料を移送すること、試料を加熱又は冷却すること、試薬供給を監視すること、廃棄物容器を監視すること、LIS(ラボラトリ・インフォーメーション・システム)又はワークフローエンジンと通信すること、ユーザーインターフェースを駆動すること、など、があるだろう。これらの機能その他を遂行するコントローラの例は、米国特許第5,595,707号、同第5,654,199号、同第6,093,574号、同第6,290,809号、同第7,217,392号、同第7,897,108号、同第8,883,509号、同第8,932,543号、同第6,489,171号、同第7,553,672号、同第7,897,108号、同第8,329,100号、同第8,486,714号、同第8,758,707号、及び米国特許出願第2015/0343445号、に見出すことができ、それら特許文献の各々を参考文献としてここに援用する。
【0025】
[0053]或る特定の実施形態では、生体試料のための保持器及び分注検出器は静止に保持される一方、分注器は生体試料に関連している位置へ動き分注検出器を通して液体試薬を生体試料へ分注するように構成されている。他の特定の実施形態では、分注器と分注検出器は分注組立体の中で、生体試料のための保持器と分注組立体の間の相対運動が、分注検出器を通して液体試薬を試料へ分注するために分注器及び分注検出ユニットを位置決めするように、互いへ連結されている;その様な配列は、より大きな数の試料を処理するのに1つ又は少数の分注器(例えばピペッターなど)が使用される場合に有利である。別の特定の実施形態では、分注器及び分注検出器は互いに独立に動くように構成されている;、その様な配列は単一(又は少数)の分注検出器を複数の分注器(例えば取り外し式分注器及び/又は使い捨て分注器とともに)に供することを許容する。更に別の特定の実施形態では、分注器、分注検出器、及び保持器は、どれも独立して動いており、生体試料処理中は必要に応じて液体試薬分注事象を観察するために既定のプロトコルに従ってそれら3つがまとめられる。別の実施形態では、分注器、分注検出ユニット、及び生体試料のための保持器は全て互いに対して固定された位置に保持される。
【0026】
[0054]開示されているシステムの別の特定の実施形態では、較正を遂行するために既知の直径のオブジェクトを分注検出器の検出領域へ挿入するのに使用できる較正機構が含まれている。その様な機構は、同じくコントローラの制御下にあってもよいし、また較正を遂行するよう分注検出器に対してロボット操作で動かされるようになっていてもよい。
【0027】
[0055]以上に示唆されている様に、分注検出ユニットは、信号と液体試薬が分注中に分注検出器を通過してゆく速度の積を経時的に積分することによって、検出分注体積を計算するように構成されることができる。一部の実施形態では、速度は、分注検出ユニット(又はコントローラ)のメモリに記憶されている速度を備えている。他の実施形態では、速度は、液体試薬が分注検出器を通過してゆく際の測定速度を備えている。更に他の実施形態では、分注検出ユニットは、分注信号プロファイル内の別々の分注オブジェクトを分離し、それら分注オブジェクトの検出体積を合計して検出分注体積を提供するように更に構成されることができる。別々の分注オブジェクトの検出体積は、記憶されている速度か又は測定速度のどちらかを用いて計算することができる。
【0028】
[0056]したがって別の態様では、分注事象を検出するための方法が開示されており、方法は、分注器と生体試料の間の液体試薬が従うと予想される経路に沿って分注検出器を分注器と生体試料の間に位置決めする段階を備えており、分注検出器は発光器及び対応する受光器の少なくとも1つのアレイを備え、少なくとも1つのアレイの発光器と対応する受光器の間の空間が少なくとも1つの分注検出器の第1の検出領域を形成している。分注事象に応えて分注検出器によって生成される信号が収集される。液体試薬が分注事象中に分注検出器を通過してゆく速度と分注事象に応えて分注検出器によって生成される信号の積が経時的に積分される。積分された分注検出器信号は分注事象中に生体試料へ送達される液体試薬についての検出分注体積を提供する。
【0029】
[0057]或る特定の実施形態では、信号応答を経時的に積分するために使用される液体試薬の速度は、分注器からの液体試薬の分注についての平均測定速度を備えている。その様な平均測定速度は、例えば、高速度カメラを利用して液体が定められた点間距離を有する基準点を通過する際の分注事象の画像を捕捉させ、捕捉された画像内のそれら時間の点を使用して液体の速度を計算し、次いでそれらを複数の分注で平均すれば得ることができるだろう。その様な平均速度は、例えば分注検出ユニット又はシステムコントローラのメモリに記憶させておいて、検出分注体積を計算するのに使用されるようにしてもよい。
【0030】
[0058]分注検出器が、更に、発光器及び対応する受光器の少なくともの第2のアレイを備え、第2のアレイが分注器と生体試料の間の分注経路に沿った異なる場所に位置決めされて少なくとも第2の検出領域を形成している、という他の特定の実施形態では、分注検出器信号によって生成される信号は、少なくとも第1のアレイからの1つの信号と少なくとも第2のアレイからの1つの信号という少なくとも2つの異なる信号を備えている。その様な他の特定の実施形態では、信号応答を経時的に積分するのに使用される速度は、第1の検出領域と第2の検出領域の間の測定される液体試薬の速度であって、液体試薬が第1のアレイから信号を発生させてから液体試薬が第2のアレイから信号を発生させるまでにかかる時間に反映される速度とすることができる。
【0031】
[0059]更に他の特定の実施形態では、(一度の)分注事象(訳注:原文は「a dispense
event」)内の別々のオブジェクト(例えば別々の液滴)を分注検出器信号内に識別することができ、また、少なくとも2つのアレイが採用されている場合は、2つのアレイを通過するオブジェクトを識別し、それらを一緒にグループ化することも実施可能である(例えば、液滴は第1のアレイと第2のアレイの間で分裂することもある)。なおいっそう特定的な実施形態では、分注事象内の各別々のオブジェクトについての速度プロファイルが計算されてもよい。各別々のオブジェクトについての速度プロファイルを積分段階で使用して、各別々のオブジェクトについて別々の検出分注体積を出すことができる。そうして、別々の検出体積の合計が分注事象についての検出分注体積を提供することができる。
【0032】
[0060]様々な開示されている実施形態では、開示されている方法の積分する段階は数値積分法を備えている。分注検出器のアレイからの信号は、何れかの特定の時間的瞬間における検出器の検出領域でのオブジェクト(例えば分注される液体試薬)の直径及び断面でスケールされる。(単数又は複数の)信号は特定の時間量の間続くはずであるので、オブジェクトが検出器内を動いている速度が分かれば、検出器を通過する体積の計算が可能になる。例えば、円柱形オブジェクトは或る特定の断面及び長さを有している。これら2つのパラメータが分かれば、円柱体の体積の計算が可能になる。同じく、検出領域を通過するオブジェクトの断面(m2)、円柱形オブジェクトが検出領域を通過してゆく速度(m/s)、及び円柱形オブジェクトが検出領域を通過するのにかかる時間(s)が分かれば、オブジェクトについての体積(m2× m/s × s = m3)が出る。分注器から分
注される液体試薬は経時的に直径が(ひいては断面が)変化するはずなので、液体試薬分注を分割した円柱形区分の体積を合計することによって液体試薬の総体積の近似値を求め
ることができる。分注される液体がより多くの円柱形区分に分割されるほど、その様な表現は分注される液体内に包含される真の体積により精度高く近似する。無限小の区分の限界で、数値積分法は真の積分体積に近づく。また、分注される液体試薬の各円柱形区分が分注検出器を通過してゆく速度を精度良く測定することが可能であるなら、体積推定はより精度が高くなるはずであり、というのも、より高速で動く区分はより多くの体積を所与の時間内に検出器を通して進めるからである。この様なわけで、分注事象中の速度の差分を補償する分注液体試薬の速度プロファイルを有することは役に立つ。例えば、液体の分注体積が分裂し液滴になり始めると、表面張力により、滴の、それの落下してゆく方向の先導縁は形成されつつある滴の質量の中心に引き寄せ戻されることでより低速で動く傾向になるだろう。同じく、形成されつつある液滴の後尾端は一緒に引かれ、形成されつつある液滴の質量の中心より高速に動くだろう。また、重力に因る加速のせいで、分注事象速度は、事象が監視されるのが分注器ノズルから遠いほど増加する。したがって、特定の実施形態では、個々の分注オブジェクトについての速度プロファイルを得るのに2つ又はそれ以上のアレイを利用して、検出分注体積を出す数値積分法の精度が改善されるようにしている。
【0033】
[0061]特定の実施形態では、検出分注体積が分注事象についての予想体積に比較され、検出分注体積が予想体積の周りの値の既定範囲を外れていれば、1つ又はそれ以上のアクションが開始されるようになっていてもよい。その様なアクションは、ユーザーへ警報を提供する;生体試料と接触している液体試薬の体積を調節するようユーザーに命令する;試料への補正手続きを遂行するようユーザーに命令する;試料への補正手続きを自動的に遂行する(例えば、初期分注液体を除去し、続いて再分注するか又は補足量を分注して確実に液体試薬の所望体積が実現されるようにする、など);及び、第2の生体試料の新たな解析を自動的に命じる(例えば、LISへ要求を自動的に送信するようにして、指令を生成させ、次いで場合によってはラボラトリ技術者に新しい試料を調製するよう通知するワークフローエンジンへ指令を送信すること、など)、を含む。
【0034】
[0062]或るより特定の実施形態では、試料への補正手続きを自動的に遂行することは、生体試料と接触している液体試薬を(エアナイフ又は液体吸取紙を用いるなどして)自動的に除去し液体試薬を2度目として再適用することを備えている。液体試薬の除去は、液体試薬を生体試料と接触させておく予定の総時間の10%内で遂行されるのが有利であり、予想できる様に、除去及び再適用はより早く遂行されるほど良い。試薬は、生体試料に接触し次第、試料と反応し始めるであろう。試薬を再適用するまでにあまりに長い間試薬を接触させたまま放っておくと、試薬が2度目に適用された場合に試料と試薬の過剰反応につながるだろう。したがって、なおいっそう特定的な実施形態では、再適用される試薬の体積又は試薬を試料と接触させておく予定の時間を縮小して、1度目に適用された試薬が生体試料と接触したままにされた時間を補償させるようにすることができる。
【0035】
[0063]下記の実施例の中でより詳細に論じられている様に、開示されている方法は、積分する段階に先立って、液体試薬の光学的性質に起因する信号アーチファクトを除去又は低減するために、分注検出器によって生成される信号を平滑化するか又はそれ以外のやり方で操作する段階、を更に含むこともできる。発光器によって発せられる光の波長が液体試薬によって完全に吸収されない事例では、液体試薬がレンズのように作用し、発光器からの光を受光器上へ集中させ(いわゆるレンズ化効果)、それにより分注検出器を通過する液体試薬の検出直径(及び断面)にエラーを生じさせかねない。
【0036】
[0064]したがって、液体試薬によって吸収される波長で作動する、分注検出器アレイ(又は複数のアレイ)内の発光器及び受光器を利用するのが有利ということになろう。液体試薬によって吸収される波長が、水によって実質的に吸収される波長を備えている、というのがなおいっそう有利であり、というのも水は生体試料を解析するための試薬中に使用される溶媒である場合が多いからである。水は、赤外線スペクトルに、例えば電磁スペクトルの近IR領域に、有意吸収を有することから、特に、赤外線を利用することができるだろう。代わりに、分注検出器の発光器によって発せられる光を実質的に吸収する不活性分子の存在物を液体試薬へ添加することも実施可能である。
【0037】
[0065]更に別の態様では、分注される液体試薬を分注器から生体試料までの経路に沿って検出するためのシステムであって、分注器と生体試料の間の経路に沿って位置付け可能な分注検出器を含んでいるシステムが提供されている。分注検出器は、発光器及び対応する受光器の少なくとも1つのアレイを含むことができ、少なくとも1つのアレイの発光器と対応する受光器の間の空間が、少なくとも1つの分注検出器の少なくとも第1の検出領域を形成している。液体試薬を生体試料へ送達する分注事象中の少なくとも1つの分注検出器からの信号を受信するように構成されていて且つ開示されている方法の何れかの実施形態に従って検出分注体積を出力するように構成されている分注検出ユニットが更に含まれている。
【0038】
[0066]更なる開示されている態様は、開示されている方法の実施形態のうちの少なくとも1つを遂行するための命令が記憶されている非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含んでいる。同じく、開示されている方法の実施形態のうちの少なくとも1つを遂行するための命令が記憶されているコンピュータプログラム製品が開示されている。
【0039】
[0067]ここでの使用に際し、(原文の)「a」及び「the」のは単数および複数の指示対象の双方を含むものとする。したがって、例えば「ひとつの分注器(a dispenser)
」又は「当該分注器(the dispenser)」という言い方は、1つの分注器乃至1つ又はそ
れ以上の分注器を含む。ここでの使用に際し、「約」という用語は、言及されている数の値の±10%、例えば言及されている数の値の±5%、例えば言及されている数の値の±1%など、をいう。
【0040】
実施例
[0068]
図1Aに示されている様に、1つの実施形態では、開示されているシステムは、分注器(110)と、発光器アレイ(120)及び対応する受光器アレイ(121)を含む分注検出器(118)と、マイクロプロセッサ(101)と、メモリ(102)と、を備えている。分注器は、生体試料を保持している顕微鏡スライド(130)の上方に位置決めされている。分注器は、ピペット、機械式分注器、使い捨て分注器、開封されているブリスター又はカプセル、ロボット利用ピペッター、配管された液体分注器、又はシリンジの様な、液体を分注することのできる何れかの装置とすることができる。分注検出器センサは、分注器によって分注される流体の経路の互いに反対側に位置決めされて、それらの間に検出領域(125)を形成している発光器のアレイ(120)及び対応する受光器のアレイ(121)を備えている。従って、発光器からの光は検出領域を通過した末に受光器によって観測されることになり、検出領域に液体試薬が存在しているなら光の一部は受光器に届くのを遮られる。この実施形態では、マイクロプロセッサが分注器を作動的に制御することができアナログ信号をセンサから受信することができるように、マイクロプロセッサは作動的に分注器及び分注検出器の光学センサへ接続されている。メモリは、アナログ信号を解析して液体が分注されたかどうか及びどの体積で分注されたかを判定するためにマイクロプロセッサによって実行される命令を記憶している。特定の実施形態では、マイクロプロセッサは分注検出ユニットとして機能する。例えば、マイクロプロセッサは、分注器のための空気力学を起動する弁信号を監視する。幾つかの実施形態では、マイクロプロセッサは物理的には分注器へ直接接続されていない。マイクロプロセッサは、入力を中央オペレーティングシステムへ提供することのできる権限付与システムであり、そうすると今度は中央オペレーティングシステムが分注結果に基づいてしかるべく情報に働きかけることができるのである。マイクロプロセッサは、処理され働きかけられる情報を収集することができる。分注器システムは、センサ情報を解釈し、次いで体積や分注事象の存在又は不在の様な情報の現在状態を中継する。
【0041】
[0069]
図1Bは、顕微鏡スライド(130)の上方に位置決めされた分注器(110)を分注検出器(118)と共に示しており、分注検出器(118)は発光器のアレイ(120)及び対応する受光器のアレイ(121)を含み、それらアレイは液体(126)が下方の顕微鏡スライド(130)へ適正に分注されたときに通過する分注検出領域(125)を一体となって形成している。
【0042】
[0070]
図1Cは、液体(126)を分注検出器(118)を通して顕微鏡スライド(130)上へ分注している分注器(110)を示している。この実施形態では、分注検出器(118)は、ドリッププレート(140)上に取り付けられている。可動に取り付けられロボット利用により制御されるドリッププレート(140)は、分注検出器(118)が動かされ所与の分注器(110)と顕微鏡スライド(130)上の生体試料の間に位置付けられることになるような、分注器(110)及び顕微鏡スライド(130)に対する分注検出器(118)の運動を付与する。この実施形態では、顕微鏡スライド(130)は静止しているが、分注器(110)と分注検出器(118)はどちらも独立に動かされることができる。
【0043】
[0071]
図2は、分注事象を解析するためにマイクロプロセッサ(例えば分注検出ユニット内又は機器システム用コントローラ内など)によって実行される命令の例示としての実施形態を示している。マイクロプロセッサは、分注器からの分注事象を要求する信号を送信し(200)、分注器に液体を放出させるとともに検出ウィンドーを開く(202)。次いで、マイクロプロセッサは、既定の時間ウィンドーに基づいて、分注検出器から出力されるアナログ信号を収集する(204)。次いで、マイクロプロセッサは信号プロファイルを解析し(208)、解析は以下の段階を含んでよい:第1に、受光器電圧が閾値より下になっている持続時間に基づいて分注が存在するか又は不在かを判定する段階(210)。分注が不在であれば、分注失敗がデータログへ記録されユーザーへ報告される(224)。分注が存在していれば、分注事象が持続時間(214)及び振幅(216)について特徴付けられ(212)、分注事象の体積が推定され(218)、出力された特性が収集され(220)、分注品質測定値が算出され(222)、データがログへ記録されユーザーへ報告される(224)。特定の実施形態では、分注品質に関する情報は、既定値又は既定特性と比較され、少なくとも、分注がそもそも起こったのかどうか、分注は正しい体積であったか、分注は正しい軌道を有したか、分注速度プロファイルは典型か又は非典型か、分注器は失陥しているか、及びどの生体試料が非典型分注によって影響を受ける可能性があるか、を判定するのに使用されることができる。
【0044】
テストベッド開発
[0072]光学スルービームセンサ組立体をテストし特徴付けるためにテストベッドを構築した。テストベッドを使用し、色、不透明度、及び粘度の様な各々の流体性質が対照的であることから選択された複数の試薬に亘って分注データを収集した。前記試薬の例には、水道水及びVentana Medical Systems, Inc.社の適切な染色試薬、例えばヘマトキシリンII、ISHプロテアーゼ3、及び青色染色試薬など、が挙げられる。センサによる特徴付けは、センサを通って落下させる適当なサイズのピンゲージの対照セットを利用することによって行った。
図3に示されている様に、解析は、ピンゲージ直径対センサアナログ出力についての光遮断の間に直接的な相関があることを示している。試薬類は、それらに類似する直径のピンに比べると、異なる光学的性質に因り光の遮断が少ないことが判ったが、一方で、「遮断光対液滴直径」については強い相関が認められた。
【0045】
[0073]高速度カメラ捕捉及びそれに続くMATLAB画像解析から収集された実験的データは、以下に更に論じられている体積計算のための固定パラメータとして使用できる正常分注についての類似の平均速度を割り出した。機械式分注器を押しつぶして非圧縮性流体試薬の変位を生じさせるという力学は、分注器ノズルを出てゆく流体の信号プロファイルへ直接関係付けられるということが判明した。2通りの方法を使用して、分注器の完全押しつぶしストローク長さを短縮させて特徴付け活動を行った。早期停止に因り短縮された分注は体積対信号持続時間について対数的傾向を示している。ハンマーと分注器の間のギャップ増加に因り短縮された分注は指数的傾向を示している。両方のデータセットは一体で、起こり得る分注体積及と信号持続時間の組合せを表現する包絡線を形成した。
【0046】
[0074]加えて、分注の捕捉された信号プロファイルについての曲線下面積を割り出すことを伴う第3の独立した体積推定方法を開発した。高速度カメラ解析は、正常落下分注については幾何学的流体対称性が維持されることを確証しており、捕捉された電圧信号を電圧と分注直径の間の関係に基づいて瞬時的断面積へ変換することができることとなる。この関係は、数値技法を通して推定体積を計算するのに使用される。この方法は内蔵されるソフトウェアに実用化された。
【0047】
[0075]分注速度は、システム内で使用されるセンサの数量に基づいて異なるやり方で求められるようにしてもよい。センサ対が1つという様な実施形態では、分注速度は高速度カメラデータから実験的に導き出され、全ての分注について使用される。センサ対が2つという様な別の実施形態では、時間の関数としての分注速度が測定され、各分注についての体積推定計算の中で使用される。第1のセンサアレイと直列に配置された第2のセンサアレイはリアルタイム速度捕捉を可能にする。センサ対1つと反射センサ1つという様な更に別の実施形態では、分注速度は測定され、各個別分注についての体積推定計算の中で使用される。反射センサ2つ又はセンサ対1つとミラーという様な、多くの適切な構成が存在し得るものと理解される。
【0048】
[0076]1より多いセンサを包含しているシステムについては、各センサからの信号出力を互いに比較して少なくとも初期速度及び最終速度の様な情報が集められる。この情報は、体積推定数値方法の精度を改善することのできる所与の分注についての時間推定の関数としての速度プロファイルを生成するのに使用することができる。リアルタイム速度推定値は、更に、分注品質評価のために使用される。
【0049】
試薬
[0077]異なる流体性質を有する試薬のセットを評定した。ヘマトキシリンII、ISHプロテアーゼ3、及び青色染色試薬は、Ventana Medical Systems社の適切な染色である。ヘマトキシリンIIは水より粘性で透明度が低く、かたやISHプロテアーゼ3は粘性であるが水の様に透き通っていた。青色染色試薬は、多くの先進的染色キットで使用されていて、更に水とは異なる粘度を有した。
【0050】
センサの選択及び説明
[0078]一部の実施形態では、光学センサは重量捕捉の様な他の方法を凌ぐ利点を有しており、というのは、それが分注機器の回転アーム上に取り付けられた単一のセンサ対から各分注を検出することができるのに対し、重量検出は各分注器又は各スライドの位置にセンサを必要とするはずであるからだ。例示を目的に、光ファイバースルービームセンサが、その単純な形、コンパクトな納まり、及び調節可能な機能性を理由に選択された。ここに説明されている実施形態は光学センサを利用することができるとされているが、本開示に従って分注事象を検出するために何れの適切なセンサが使用されてもよいものと理解される。
【0051】
[0079]この実施形態の光学スルービームセンサ組立体は、増幅器/コントローラと発光器及び受光器対の3部品セットを備えている。センサは光ファイバースルービーム技術により作動するものであり、つまり特定された光の波長が発光器とその相手の受光器の間の距離に及んで検出領域を形成するということを意味する。オブジェクトが発光器と受光器の間の区域を通過してゆく際、オブジェクトは光アレイの一部が受光器に進入するのを遮り、監視することのできる信号変化を提供するはずである。
【0052】
[0080]一部の実施形態では、スルービームセンサは、制御モジュールと、2つの光ファイバーアレイユニットと、を備えている。例示となる構成として、光ファイバーアレイは、一方が光を発し他方が光を受け取る状態で同じ平面内に互いを指して位置付けられている。1つの実施形態では、制御モジュールは、受光量を監視し、そのデジタル出力をユーザーによって割り当てられている閾値メトリックに従って変更する。別の実施形態では、アナログ出力は受光量に正比例していて、制御モジュール内の複数の設定を通して調整できるようになっている。
【0053】
[0081]1つの実施形態では、センサは、センサ対が汚れたときに適応するべくそのゼロ状態信号を「風袋引きする(tare)」能力を有していて、分注検出器に保守点検のためのフラグを立てるのに使用することができる。例えば、各分注についてのベースライン信号は、分注事象の前と後にベースライン信号を測定しセンサが汚れていればベースライン信号をより低いベースラインへ設定することによって調節されるようになっていてもよい。これは、ベースライン電圧についての分注毎の信号調節に対するより多くの制御を提供することができる。
【0054】
[0082]幾つかの実施形態では、分注検出器のスルービームセンサ構成は、分注事象の存在又は不在を検出することができる。例えば、発光器及び受光器は、分注される流体に分注器ノズルから生体試料を保持する顕微鏡スライドへ進む間に光のアレイを通過させるようなやり方で位置決めされることができる。分注される流体が感知アレイを通過してゆくと、センサモジュールのデジタル出力から信号プロファイルが生成される。デジタル出力は、受光量及びユーザーによって設定された閾値に基づいてHIとLO(5Vと0V)の間を交互に入れ替わることになる。分注検出を目的に、受光量が特定の閾値より下に落ちればHI信号を発生させるように制御モジュール設定を調節した。これは、分注流体の十分量が発光器と対応する受光器の間にあればデジタル出力はHIになり、分注事象が示唆される、ということを意味する。代わりに、発光器と受光器の間に何もなければデジタル出力はLOとなり、どんなオブジェクトも流体も感知アレイ内に不在であることが示唆されるわけである。
【0055】
[0083]1つの実施形態では、開示されているシステムは、分注事象が起こると予想される時間中の生信号を処理することによって分注事象の存在又は不在を判定することができ、それにより、分注があったかどうか、異常分注があったかどうか、又は分注が全くなかったかどうか、を判定するための十分な情報が提供されることになる。
【0056】
[0084]一部の実施形態によれば、発光器及び受光器を分注事象を監視するべき区域内に位置決めすると共に発光器及び受光器を軌道外れのドリップから保護する目的で試作品ブラケットが使用された。どの分注事象においても通過するための分注貫通穴を有するドリップシールドが提供された。
【0057】
[0085]スルービームセンサが機器上に取り付けられた状態で、何らかの分注検出開発コード及び電子ハードウェアを、トリガされるセンサのタイミングウィンドーに適応するように調節した。ラボ仕事台では、センサデータが制御された分注に関し特定の間隔で記録された。機器側では、センサデータは分注が予想されるときに限って記録される必要があった。これは、つまり、機械式分注器を作動させる分注ハンマーの状態を定常的に監視するために割り込み機能がコードへ実装された、ということを意味する。ハンマー弁が機器制御を介して開かれると分注検出コードがトリガされて分注事象を注視することが始まる。或る設定された時間量の後、感知ウィンドーは閉じ、記録されたデータが解析され、分注事象が信号長さの合否判定基準に基づいて評価されることになる。このプロセスはLED出力を用いて実施され観察された。例えば、システムが分注事象を注視するようにトリガされると緑色LEDがオンになるとする。所与の予想時間内で充分な流体がセンサを通過したら、赤色LEDがオンになって分注事象が首尾良く起こったことを示唆することになる。代わりに、分注がなかった場合又は十分な流体がなかった場合は、赤色LEDはオフのままで、不審分注又は不在分注を示唆することになる。
【0058】
[0086]更なる実施形態では、各分注を定量的体積出力に関して監視するのに適したセンサ技術を識別し探究するべくテストベッドを強化した。このテストベッドは、各々の流体性質が対照的であることから選択された水道水及びVentana Medical Systems社の適切な染色試薬であるヘマトキシリンII、ISHプロテアーゼ3、及び青色染色試薬を含む複数の試薬の幾つかの分注についてデータを収集した。オシロスコープを使用してアナログ出力及びデジタル出力をCSVファイルに捕捉し、高速度カメラが分注運動を1フレーム毎に収集し、精密天秤が分注重量を収集した。試験ベッドを制御するためにカスタムシールド及び処理のGUIを有する試作用アルデュイーノ(Arduino)ボードを開発した。オシロスコープと高速度カメラと分注システムは、システム内でのトリガ1回につき、光遮断と映像によるといった様に複数の物理的過程を用いて同期的にデータを収集するべく機能を発揮した。このデータを、センサ特徴付け、物理的モデル化、及びシステム解析のために解析した。
【0059】
センサ特徴付け
[0087]2通りのセンサ特徴付け実験を行った。第1の実験は分注サイズとセンサ出力の間の関係を探求した。第2の実験はセンサと(センサ場内の)分注場所の間の関係を探求した。どちらの実験でも、分注の最も単純な形、即ち不透明材料の一定した円柱体、を表現するために異なる直径のピンゲージを使用した。ピンゲージからのデータは、流体透明度及び粘度の様な分注検出の他の態様を調べる段階の前のセンサのベースライン理解として使用した。オブジェクト直径と受光量の間の相関を発展させるために、既知の直径と体積のピンゲージをセンサ場を通して落下させた。
【0060】
[0088]センサモジュールの特徴付けで使用した10通りのピンゲージサイズは以下の通りである(単位はインチ(括弧内は訳注として付したmm単位(1インチ=25.4mm))、即ち、0.200(5.080)、0.185(4.699)、0.170(4.318)、0.155(3.937)、0.115(2.921)、0.100(2.540)、0.085(2.159)、0.045(1.143)、0.030(0.762)、及び0.015(0.381)。第1のセンサ特徴付け実験について、アナログ電圧出力とピンゲージ直径の間の関係を理解するために、センサ場を様々なピンゲージへ曝した。3通りの異なる方法を使用して、ピンゲージを発光器と受光器の間に挿入した。第1に、ピンゲージをセンサ場の中央に保持した。第2に、最小電圧出力(別名、ベースラインからの最大電圧変化)を割り出すために、ピンゲージを場全体を通して小刻みに動き回らせた。最後に、ピンゲージをセンサ場の中央を通る整列チューブを通して落下させた。これら3通りのデータセットは
図3にプロットされている。センサ特徴付けのための方法を実演するべく、サンプルピンゲージが
図3に示されている様に手でセンサ場に挿入されている。
図3は、ピンゲージ直径対アナログセンサ電圧実験からの3通りのデータセットを、ピン落下データについての「ベストフィット」ソルバーデータと共に示している。この特徴付け実験は、センサアナログ電圧がピンゲージ直径との強い線形関係を有することを実証した。
【0061】
[0089]第2のセンサ特徴付け解析では、センサ場を異なる場所の同じピンゲージへ曝した。
図4はセンサ場の理論解析の結果を示している。フレームの左側に沿った斜交平行線模様の円は分注検出器の発光器ユニットの光ファイバー端を表す。フレームの右側に沿った白丸は受光器ユニットの光ファイバー端を表す。発光器ユニットの各ファイバーは受光器ユニットに向かって円錐状に光を投射するものと仮定する。これらの円錐は1発光器当たり3本の矢(1本は直線、2本は一定角度)によって表現されている。これらの円錐が重なり合うことで、より多くの光が場の中央に集中する。1から13までの番号を付された各大円は、ピンゲージがセンサ場を通って落下する可能性のある場所を表現している。これらの大円の内側の他の数は、何本の矢がピンによって阻まれることなく受け手側に届くのかを表現している。この解析の結果は、感知区域の最も感度及び精度の高いゾーンが中央の横縞に沿って存在することを実証している。
【0062】
[0090]以上に論じられている理論的センサ場解析を確証するために、一定したピンゲージ直径をセンサ場の異なる場所を通して落下させることによって実験を行った。アナログ電圧出力を各場所について記録し、
図5に示される3D等高線プロットにグラフ化した。3D等高線プロットは、0.030’’(0.762mm)のピンゲージをセンサ区域上方の5×4グリッドの異なる区域を通して落下させた結果を示している。X座標は発光器から受光器への動きに対応しており、Y座標は後ろから前への動きに対応している。それら結果を真(中央)の測定値に照らして正規化したところ、これらの実験結果は理論解析にうまく一致した、ということが分かる。
【0063】
システム解析
[0091]分注器とセンサをひとまとめにシステムとして解析した。このシステムに対するどの様な変化がセンサ出力に影響を与えることになるのかを理解するために、3通りの実験を行なった。第1に、異なる粘度の透明流体がどの様に信号に影響を与えることになるのかを理解するために、異なる試薬をセンサを通して分注した。各分注を定量的体積出力に関し監視することを目的に、スルービームセンサを調べた。
図6Aに示されている様に、アナログ出力(上のトレース)の追加は、受光量対デジタル信号(下のトレース)の閾値のみによる真/偽ケイパビリティを監視する能力を有効化する。
図6Aでは、2つの分注の信号プロファイルと高速度カメラ映像からのスチール写真を比較している。第1の分注はヘマトキシリンIIであった。第2の分注は水道水であった。これらの2つのサンプルのアナログ信号及びデジタル信号には明白な相違点が見られる。例えば、ヘマトキシリンIIは、より長い期間に亘ってより流れ様になる傾向があり、水は分注中にいっそう早く滴に分裂する傾向がある。2つの他の主要観察事項は、流体がレンズの役目を果たし信号にスパイクを生じさせてしまうこと、そして全ての分注が同様の持続時間を有しているらしい、ということだ。一部の実施形態では、流体についての何らの事前情報を有すること無しに、2センサ構成が、異なる粘度を有する流体についての実験的平均速度の調節、及び、試薬による固有速度プロファイルを求めること、を可能にする情報を提供することができる。これは、更に、出口速度に僅かに影響を及ぼし得る、流体性質への温度効果についての懸念を払拭することができる。
【0064】
[0092]
図6Bは、理論的分注幾何学形状が分注検出器センサアレイから得られる信号プロファイルにどの様に影響を及ぼすと予想されるかを示している。一番上のパネルでは、ピンゲージの場合に見られたような円柱形分注プロファイルが信号形状を提供している。場合によっては、分注されている液体試薬が分注器から落ちてゆきながらネッキングし始めるだろう。ネッキング挙動は、更に、
図6Bの真ん中のパネルに示されている様に、はっきりと区別できる型式の信号プロファイルを提供する。最後に、
図6Bの一番下のパネルに示されている様に、球形液滴もシグネチャ信号プロファイルを提供する。現実には、所与の分注は各分注型式の成分を有し得るが、全体としての解析は、分注事象が起こったという単純な確証を越える分注事象の特性に関する追加情報を抽出するのに如何に分注信号を使用できるかを実証している。
【0065】
[0093]次に、高速映像のフレーム毎の分注の直径を、生のアナログ信号と比較するべく測定するために、画像解析ツールを開発した。対照分注としてこの場合も同じくピンゲージを使用した。0.1’’(2.54mm)ピンとヘマトキシリンIIについての画像解析ツール出力の一例が
図7Aに示されている。ピンを流体に比較すると、流体はその測定された直径のわりに光をあまり遮断していないことが明白である。
図7Bに模式的に示され、実験に基づいて
図7Bに示されている様に、不透明な実体がセンサアレイビームを通過してゆくと、センサ出力は遮光量に比例した状態を保つが、透明流体がビームを通過するとき、センサ出力は一見するとランダムな間隔でスパイクを呈することがある。これらの結果から、測定された直径の曲線は生信号と一致してスパイクを呈していないので、流体分注による光学レンズ化及び信号スパイクが起こっていたとの結論に至った。信号スパイクは透明流体のレンズ化効果によって発生したのである。各液滴はレンズ化現象を呈している。各透明液滴がアナログ信号プロファイルに「W」形状を示しているのに対し、不透明球体は「U」形状を有するはずである。「W」の真ん中は液滴が感知区域の半ばに差し掛かった瞬間に起こり、そこでは液滴がレンズの様に作用し発光器からの光を受光器に集束させる。このレンズ化効果は、アナログ信号プロファイルでは、予想信号プロファイルの真ん中の電圧スパイクとして捕捉される。
【0066】
[0094]ここでの使用に際し、「レンズ化」又は「レンズ化効果」とは、分注された流体の光学的幾何学形状が、センサ対内で、発せられた光が想定されるように遮られるどころかレンズ同様の流体を通して受光器に集束されるようなやり方で、整列される場合をいう。これは、つまり、瞬時的には、センサを通過してゆく流体が光ビームを受光器に集束させ想定される様に光を遮るどころか信号にスパイクを生じさせてしまう可能性を有しており、それが仮に補償されたかったなら、先に確立されている線形関係を使用して直径へ変換される信号に影響が出てしまう、ということを意味する。
【0067】
[0095]1つのアルゴリズムは分注信号プロファイルより前の信号電圧ベースラインを採用し、曲線下面積がベースラインに基づいて計算されるようにしている。例えば、清潔なセンサ対(発光器及び受光器)は遮断無しで5Vの平均ベースラインを有しているとするなら、信号プロファイルとベースラインの間の面積は比率1で計算されることになる。代わりに、センサ対が汚れているなら、ベースラインは予想される5Vより低くなるだろう。推定重量又は体積の出力は、比例であるスケーリングを介してその完全性を維持する。加えて、このベースラインの追跡を使用してユーザーへセンサ保守点検について合図することもできる。
【0068】
[0096]試薬解析に続いて、可変体積の分注を実験するため更に2通りの特徴付け活動を行なった。機械式に作動させる分注器のストローク長さを変えることによって異なる分注体積を作成した。短縮されたストローク長さは、分注器の根本的な変位性質に因り、より小さい分注を発生させる。第1の実験は、分注器のストローク長さを抑制するのにカスタムバレルストッパーを使用した。第2の実験は、ハンマーと分注器の間のギャップを増加させてより短いストロークを発生させるようにした。これら2通りの実験の結果は
図8に示されている。カスタムバレルストッパーが対数傾向を示しているのに対し、ハンマーと分注器の間のギャップ増加は指数傾向を示している。両方のデータセットは一体で、起こり得る分注体積と信号持続時間の組合せを表現する包絡線を形成した。
【0069】
[0097]1つの実施形態では、分注機器側の分注器及びハンマーをばね及びダッシュポットシステムとしてモデル化することができる。当業者には知られている様に、ダッシュポットは、衝撃又は振動を緩衝するための装置である。モデルは
図9に示される方程式を使用して計算されたものであり、xは流体押し退け量を表している。分注器バレルの運動が、分注体積に直接関係付けられる流体押し退け量をノズルにて生じさせる。分注体積と信号プロファイルの間の関係を分注器運動まで遡って追跡することができる。結果として、このモデルは、実験データと比較するためにストローク長さ毎の予想体積を生成することに用いられた。
図10は、
図9のモデルからの予想体積を実験データと共に示している。
図9のモデルは、カスタムバレルストッパーによる短縮されたストローク長さの場合に観察されたものと同じ対数関係を示しているのは明らかである。
【0070】
アルゴリズム開発及び信号処理
[0098]別の実施形態では、体積推定のための方法は信号プロファイルについての「曲線下面積」を割り出すことを伴う。以下は、導き出された方程式である。
【0071】
【0072】
[0099]電圧Vと直径dの関係と幾何学的関係、上記方程式3から方程式6に示されている、に基づいて、電圧信号を瞬時的断面積Aに変換することができる。方程式1の計算された面積を使用し、方程式7に示されている様に時間の関数としての速度v及び時間的変化Δtで乗算することによって、体積を計算することができる。数値技法を使用して定積
分の近似値を求めると、方程式8になる。1つの実施形態では、高速度カメラ映像に基づく固定速度が使用されているが、第1のセンサと直列に位置決めされている第2のセンサも速度捕捉を可能にする。測定された速度情報は分注事象の推定速度プロファイルを生成するのに使用することができる。この速度プロファイル情報は、分注毎の体積推定を実質的に改善するために、方程式(8)での合計の中で使用することができる。
【0073】
[0100]例えば、2点速度では、データ捕捉が初期速度と最終速度を2つのセンサに係る最小値を使用して出す。2点補間が、(Vo-Vf)/(tf-to)の傾きとVoのy切片を有する時間の関数としての速度についての直線方程式をもたらすことができる。加えて、各センサセットからの2つの信号プロファイル由来の既存信号パターンを使用することによって、時間の関数としての速度プロファイルを分注事象の始まりと終わりの間で推定することができる。この速度(t)アレイが、体積積分の積分段階毎の数値合計方程式の中で数学的に適用される。
【0074】
[0101]3点速度方程式の或る実施例として、各時間信号についての面積の幾何学的中心を割り出すようにすることもできる。両方の信号が同じタイムラインを共有しているので、幾何学形状の各中心間のタイムシフトを使用して、信号の真ん中での速度を計算することができ、それをVmと呼んでもよい。それら3点を、時間の関数としての速度の信号プロファイルのために補間すればよい。別の実施例として、複数のパターンを2つの補足信号の間で照合すれば、複数の速度点を収集することができる。これらの速度点を補間して、完成した速度プロファイル又は3つ又はそれ以上の点についての時間の関数としての速度、を作成することができる。
【0075】
[0102]対照的に、1つのセンサアレイしか使用されない場合、速度プロファイルは平坦な又は最良の実験的平均であると仮定されているので、速度パラメータは積分合計の外に対し代数的に求められ、完了した合計で1回だけ乗算される。特定の実施形態では、センサアレイ2つのほうが速度プロファイルはより完全であるので1つより良い。流体力学モデル化と組み合わされた2つ又はそれ以上のセンサアレイからのデータは、分注事象の各部分について、なおいっそう的確な速度推定値を出し、それにより方法の精度をいっそう高めることができる。
【0076】
[0103]
図11Aに示されている様に、センサ対(発光器及び受光器)を2つ使用して、それらの出力のオフセットに基づいて分注の速度が捕捉されている。説明を目的に、感知区域の一方の側は、受光器#2の上に位置決めされた発光器#1を有することができる。他方の側は、受光器#1を発光器#2の上に有することができる。これは、発光器同士を互いに面するように構成することによるセンサ間「クロストーク」を回避し、それにより発光器#1から受光器#2へ及び発光器#2から受光器#1へ伝送される光の量を最小限に抑えようとする試みである。他の構成も実施可能であるものと理解されたい。
【0077】
[0104]
図11B及び
図11Cに示されている様に、第2のセンサ対によって捕捉される信号プロファイルは第1のセンサ対によって捕捉される信号プロファイルからオフセットしていて、重力からの加速度によって引き起こされる速度の増加に因り僅かに短い持続時間を有している。落ちてゆく液滴は小塊に姿を変えてゆくので、流体分注信号プロファイル形状はセンサ対間で僅かに異なる。
【0078】
[0105]好適な実施形態では、2センサ構成は、良分注か又は不良分注かをスクリーニングすることができる。1つ目のセンサから次のセンサまでの変化は、捕捉された初期速度及び信号持続時間例えば平均速度及び第2の最終速度などと併せて、分注の射出落下力学又は分注の品質を記述するための有用な情報である。例えば、速度、信号持続時間、又は2つのセンサ間のそれらの比、における予想変化からの逸脱は、不審分注を示唆し得る。2センサ構成は、速度と信号持続時間のキーとなる関係を初期測定値及び最終測定値に関連付けて求めることができ、それら各々の差及び比についての方程式モデルを与え、それらを使用すれば、1分注単位で使用される速度を比例的にスケールすることができる。加えて、2センサ用アルゴリズム、例えば算定的決定及び論理的決定など、は不良分注性能に関係付けられる欠陥についてのフラグを有効化する。
【0079】
[0106]先に論じられている様に、レンズ化効果は、信号プロファイル形状を変化させることがあり、積分法の精度に影響が及びかねない。透明液滴に因るレンズ化効果を除去するために、信号は信号処理アルゴリズムを通して調節されて、積分法のために使用される時間信号プロファイル毎の推定幾何学形状が抽出される。
図12は、高速度映像の解析に基づいて開発された信号処理のための反復法を示している。このアルゴリズムは、アナログ信号プロファイルを分注直径のより的確な表現へ操作するのに使用される。この信号処理技法は、流体光学に因る望まれない信号スパイクに適応し、数値積分法からのより高精度の体積推定を可能にさせる。第1の段階では、生信号はパディング処理され、低域通過フィルタに通すことによって平滑化される。平滑化された信号は、次いで元の信号へプルダウンされるが、それは、プルダウンされた信号内の各点を平滑化済み信号と生信号のうち最小値へ設定する段階を備える。プルダウンされた信号は、次に第2の低域通過フィルタに通すことによって2回目の平滑化を施されて第2の平滑化済み信号を現出させる。第2の平滑化済み信号は、次いで2回目になるプルダウンを施され、プルアップされるが、それは、出力信号を第2の平滑化済み信号と生信号のうち最小値へ設定し、信号内の特徴付けられたギャップについてのベースラインへプルアップし、それにより光学的レンズ化効果を除去する段階を備える。出力は、処理済みの信号である。他の実施形態では、信号
処理段階は、最終信号を成形するようにn回繰り返されるようになっていてもよい。典型的に、nは、分注事象の推定体積と既知体積の間の差を最小化するよう最適化される。
【0080】
[0107]最初に、分注体積を推定するための4つの独立した方法、即ち、(1)生信号の積分;(2)処理済み信号の積分;(3)自然対数(分注器ストローク長さ)に係る信号持続時間;及び(4)指数(ハンマー位置)に係る信号持続時間、を試みた。体積出力に係る分注検出システムの実現可能性を示すべく4つの方法を18分注のデータセットに実施した。これら4つの方法を互いに対して論理及びデータ解析を介して重み付けして最良可能体積推定を現出させるアルゴリズムを、第5のデータセット「最適化済み」として作成した。体積を推定するための4つの独立した方法及び第5の組み合わされた方法についての性能結果は
図13に示されている。4つの独立した方法の線形フィットは、それらのデータセット内の十分な相関(R
2>0.8)を示しており、第5の方法は推定体積と実際体積の間でほぼ1:1比にある。1つの実施形態では、アルゴリズムを更にチューニングすることでより高い精度を実現させることができる。別の実施形態では、センサ2つの使用は、分注速度に関しての測定を最適化し、より堅牢な測定を行うことによって、なおいっそう高い精度を実現させることができる。
【0081】
[0108]
図14に示されている様に、テストベッドは、各々の流体性質が対照的であることから選択された複数の試薬(ヘマトキシリンII、ISHプロテアーゼ3、青色染色試薬、水道水)に亘って分注データを収集した。初期の結果は、38分注のデータセットについて正常分注では水道水約95mgとされる真の満量正常分注体積の±10ミリグラムの推定精度を示した。水道水データでの大きな差は、2通りの異なる構成に因る結果である。水道水データを、再充填可能な分注器で2回収集した。再充填可能な分注器は分注器とハンマーの間のギャップに影響を及ぼし得るキャップを最上部に有している。ギャップ高さのこの変化が、1つ目の水道水データについて示されている、異例の信号持続時間及び流体速度に起因するより大きな誤差を発生させたかもしれない可能性がある。幾つかの実施形態では、センサ対2つの使用は、ギャップ距離の変化を勘案することができ、それにより誤差が最小限に抑えられるはずである。
【0082】
[0109]「tog1」及び「tog2」という用語は、組み合わされたアルゴリズムを名付けたもので「Together(一体)」即ち略して「Tog」を意味する。2つの重み付けされた組合せを試験し、「Tog1」は信号処理を他の機能より高く重み付けした。2つ目の「Tog2」は信号持続時間についていっそう高く重み付けされ、試験された。全体として、4つの方法は分注体積を推定するため最初に識別された:(1)生信号の積分;(2)処理済み信号の積分;(3)自然対数(分注器ストローク長さ)に係る信号持続時間;及び(4)指数(ハンマー位置)に係る信号持続時間。4つの方法全てを組み合わせた最適アルゴリズムを作成した。4つの独立した方法を組み合わせ、重み付けして、今度は「Tog」と呼ばれる第5の最適化された方法を作り出した。以下は、最適公式化の非限定的な例である。
【0083】
【0084】
【0085】
[0110]以上に示されている非線形問題を最適化するにあたりエクセル一般化簡約勾配法(GRG2)アルゴリズムを使用した。2つの最適化スキームの主な相違は制約事項であり、「Tog2」は1に等しい係数合計に限定されるとする一方、「Tog1」にはその様な制約がなかった。目的関数F(X)はどちらも同じであった。それらは、38分注の各々の実際重量と「Togs」推定重量の間の差の絶対値の標準偏差を最小化することに基づいたものであった。「Tog2」はかなり上手く性能を発揮し、また一方で「Tog1」は不良分注に対してより堅牢であるかもしれない、というのも、「Tog1」は有意にも数値積分法による体積の計算、即ちAi>Aj、により高く重み付けするのに対し、「Tog2」は信号持続時間(Bj及びCj)を使用することのみに偏って重み付けされており、
図6Bに示されている様に信号持続時間法は他の幾何学形状の体積推定を苦手とするので、歪められる可能性があり得る。例えば、信号持続時間法は、幅狭分注事象プロファイルの体積を過大推定してしまうか又は幅広分注事象プロファイルについて体積を過小推定してしまうだろう。そのうえ、信号持続時間法は、分注事象プロファイル内のネッキング又は個々別々の液滴の存在を勘案することができないだろう。
【0086】
[0111]
図15は、3つの主要な体積推定アルゴリズムと並んで重み付けされた「tog’s」についての平均誤差を示している。38分注のデータセットは正常分注から成っている。グラフに示される様に、このデータセットについては自然対数アルゴリズムが最も精度が高い。これは、自然な分注はシステムモデルに極めて忠実に従うからである。しかしながら、この方法は厳格に信号持続時間解析に限定されており、分注事象が予想通りではなかった場合に誤差を生じ易いままである。他方、他のアルゴリズムは異常分注についてより上手く性能を発揮するはずである。全体としては、重み付けされた「Tog」アルゴリズムが最も多くの分注シナリオに適応するだろう。結果として、推定体積がそれぞれの満量正常分注の既知の重量に対し±10ミリグラム内になることが識別された、と判断される。アルゴリズムを更に微細にチューニングすることによって、及び/又は、速度捕捉のための追加のセンサ、特には、異なる流体型及び流体粘度のための、によって、より高い精度を実現することもできる。また、開示されているシステム及び方法は異常分注特性を識別することもできるだろう。
【0087】
[0112]3つの主要な改善が行われた:分注速度をリアルタイムで測定するためにタンデム及び並列型のダブルセンサ対が設計され、水性試薬について適切な吸収性を有する異なる電磁波長が選択され、そして分注オブジェクトレンダリング(分注幾何学形状、サイズ、及び速度測定値を改善するための前記オブジェクトのチャネル1&2オブジェクトペアリング)をリアルタイムで提供することのできる異なるアルゴリズムを設計したのである。下記の
図23を見られたし)。Joseph A. Curcio and Charles C. Petty, ”The Near Infrared Absorption Spectrum of Liquid Water,” J. Opt. Soc. Am. 41, 302-304 (1951)に基づき、関心対象の分注幾何学形状の直径程度での水について実質的な吸光が示されている大凡1480nmの赤外線波長で作動するセンサアレイが、開示されているシステムにとって望ましいと識別した。
【0088】
[0113]十分な吸光度のもとで、改善された新しいアルゴリズム及びセットアップが堅牢に性能を発揮することを実証するために、1480nm、食品染料着色(暗青色)、での予想される挙動のシミュレーションが、タンデム及び並列型の赤色光ダブルセンサ対と共に利用された。改善された体積推定アルゴリズムを、
図16A、
図16B、及び
図16Cを参照しながら段階を追って解説する。段階1で、生信号が捕捉される。段階2で、信号のベースラインが識別されると、ベースラインはより低い信号対ノイズ比を有しているので、段階3に示されている様にノイズカットオフを使用してベースラインを除去することができる。段階4には、電圧変化への随意的変換が示されており、体積に関係する曲線下面積がどの様に得られるかを視覚化するうえで役立つものである。段階5では、信号について、曲線下面積を合計したものになるリーマン和(数値積分法の一形式)が計算される。信号プロファイルの、曲線下面積が無い(推測するに信号がないから)区域はリーマン和に貢献しないので、段階6に示されている様にプロファイルの部分でオブジェクトを表していない部分が潜在的「アンチオブジェクト」として識別される。段階7に示されている様に、各アンチオブジェクトの始まりと終わりが割り当てられ、段階8で、オブジェクト間既定最小ギャップ持続時間に満たないギャップをフィルタ除去することによって真のアンチオブジェクトが識別される。最後に、
図16Aの段階9で、分注オブジェクトが分注事象プロファイル内に見定められる。
【0089】
[0114]次に
図16Aの続きである
図16Bへ進んで、分注事象プロファイルからレンズ化の様な光学的アーチファクトを除去するために光学的平滑化段階を追加することができる。段階Xに示されている様に、分注検出器の一部である追加のアレイからの信号について、先行の諸段階が繰り返されることになる。
【0090】
[0115]
図16A及び
図16Bの続きである
図16Cに示されている様に、段階11は、異なるセンサアレイのプロファイルを調和させることに努めるオブジェクトペアリング段階である。説明目的の実施例では、分注事象は第1のセンサアレイを2つのオブジェクトとして通過するが、分注事象が第2のセンサアレイに到達するまでには、それは(液滴形成時に起こり得る様な)3つのオブジェクトに割かれてしまっている。アルゴリズムは次いで、第2センサアレイに到達する2つのオブジェクトのうちの最初のオブジェクトを第1のセンサアレイで観察された1番目のオブジェクトとペアにし、第2センサアレイに到達する最後2つのオブジェクトを第1のセンサアレイで観察された2番目のオブジェクトとペアにする。段階12で、オブジェクトについての速度プロファイルが分注検出器を通過する「2つの」オブジェクトについて計算され、これらの速度プロファイル(経時的に変化してゆくことが観察される)が段階13に示されている様に体積推定を計算するのに使用される。センサの電圧変化は分注オブジェクトの直径に比例するので、体積推定は段階13と関連付けられる方程式によって与えられる。
【0091】
[0116]
図17では、異なるアルゴリズムの間で比較を行なっている。目下のところは単純に、分注の時間を幾度となく記録しこれらの時間をモデルとしての体積出力へ相関させるのが一般的である、とはいえ、以下に示されている様に、本報告が示すところでは厳密に調べると極めて誤り含みであるにもかかわらず、その様な先行技術の方法は極めて再現性の高いシステムにとっては非常に精度が高いこともある。
図17では、これらの単純な方法をアルゴリズムA1、A2、B1、及びB2として示しており、A1は第1のセンサアレイからの信号に、A2は第2のセンサアレイからの信号に、それぞれ基づいており、B1及びB2にも同じことが当てはまる。開示されている方法の実施形態はC1、C2、D、及びEとして示されており、C1とC2は先と同様に第1のアレイからの信号と第2
のアレイからの信号を別々に取り扱うことを指している。
【0092】
[0117]
図18は、堅牢性の研究で求められた、方法A1、A2、B1、B2、C1、C2、D、及びEの各々についての付帯する誤差を示している。研究は、分注体積を変え(24μLから115μL)、分注システムの圧力を変え(分注速度に影響を及ぼす9PSIから25.4PSI)、粘度を変え(水道水対より粘性の試薬ISHプロテアーゼ3、ともに食品色素で暗青色に染色)、分注システム空気圧式ハンマーと分注器の間のギャップ距離を変えた(ギャップ対無ギャップ)。各アルゴリズムの結果を相関付けるために、n=179の特徴付けセットを収集し、
図18に示している。
【0093】
[0118]方法C1及びC2では、記憶されているもの(例えば高速度カメラ解析から得られる実験的に求められた速度など)を各分注オブジェクトについて使用した。Dでは、分注オブジェクトが第1のセンサアレイと第2のセンサアレイの間を通過する平均速度をセンサ信号からリアルタイムで求めており、これは精度を或る程度まで改善させることが示されている。見て分かる様に、分注事象の異なるオブジェクトについて速度プロファイルを求める段階を含んでいるアルゴリズムEは最も精度が高い(最も誤差が少ない)。厳格に信号持続時間解析に限定される方法は、分注が予想通りの型ではない場合に誤差を生じ易いままである。
【0094】
[0119]以上の性能がデータをセット自体へ相関付けたためではないないことを示すために、より大がかりな独立した堅牢性研究が、新たなデータ、N=360を用いて構築された。特徴付け研究について述べたように、分注検証システムを強調するために、プロジェクトは、体積を変え(24μLから115μL)、分注システムの圧力を変え(分注速度に影響を及ぼす9PSIから25.4PSI)、粘度を変え(水道水対より粘性のISHプロテアーゼ3溶液、ともに食品色素で暗青色に染色)、分注システム空気圧式ハンマーと分注器の間のギャップ距離を変える(ギャップ対無ギャップ)ことにして堅牢性研究を設計した。先と同様に、アルゴリズム(E)は、検出、体積推定、速度プロファイル、及び貧弱な軌道識別(以下の欄で論じられている)を含むリアルタイムフィードバックを提供している。このシステムを100%の検出精度で800流体分注に対して試験した。アルゴリズム(E)について、以上に示されている360サンプルの精度堅牢性評定は、Div1については±16μL(95%CI)、Div5については±17μL(95%CI)、Div10については±18μL(95%CI)という低い体積推定誤差を有しており、現在の「最先端技術の」アルゴリズム又は時間相関(事象駆動型又は全体信号持続時間)からの大凡200%の改善である。
【0095】
[0120]以上の実施例は、如何にアルゴリズムが、分注オブジェクトをペアリングし数値積分法アルゴリズム(E)で使用することのできる速度プロファイルをもたらす堅牢な能力を有しているかを示している。アルゴリズムのために使用されるコードは、ここに開示されている独立型分注検出システムの一部とすることのできる単純なマイクロプロセッサに埋め込むことができる。
【0096】
[0121]分注を合否スクリーニングすることの益は、分注器品質制御を凌駕する可能性を秘めている。例えば、体積推定ケイパビリティは、トラブルシューティング及び検定開発のためのツールを提供することができる。分注検出は、生体試料の所与の解析におけるどの分注事象についても肯定的な試薬送達を確約するのを支援することができる。性能を異なる軌道に跨って評定するために予備的な解析を行い、センサのスクリーニングケイパビリティを評定した。「どの様に」分注検出が一次的な「不在対存在」について機能を発揮するかの包括的結論、「体積推定」の進歩的方法、及び「それはスライドに当たったか」を評定するという着点は、分注検証についての完全な解として一体となる。
【0097】
[0122]リアルタイム分注体積測定データは、記憶され、スライド標本の識別子と照合されてもよく、また各分注器の識別子は前記標本への試薬の送達と関係付けられていてもよい。このメタデータは、組織学ラボでの追跡目的及び報告目的のための機器内に又はホストコンピュータに記憶されてもよい。分注体積メタデータは、全体としてのスライド染色プロセス履歴について追跡されることもできる。加えて、分注器の識別子毎の継続的な性能追跡は、そのライフサイクルの間中収集されるようにしてもよい。所与の「貧弱分注」について、不合格の分注器及び影響を被る標本は例えばソフトウェアなどによってフラグを立てられ、患者安全を高めるために幾つかの電子的方法(即ち、LED指示器、実行レポート、など)を通して組織学者へ報告されるようになっていてもよい。分注体積メタデータは、リサーチ及び開発を目的とする外部データバンクへ収集されてもよい。このデータは、新たな染色キット又は個々の染色製品を認定したりスクリーニングしたりするのに使用できるかもしれない。加えて、分注検証追跡は、経時的に異なる性能の発揮の仕方をして標本スライドへの試薬の分注送達に影響を及ぼし得る試薬類で使用することもできる(即ち、試薬及び分注器との材料適合性)。全体として、開示されているシステム及び方法は、組織染色産業内の関わりのある開発、品質、及び患者安全のプロセスに改善をもたらす。
【0098】
システムコンピュータ環境 (訳注:本節において挙げられている製品名称等の少なくともいくつかは登録商標であり得る。)
[0123]コンピュータは、典型的には、プロセッサ、オペレーティングシステム、システムメモリ、メモリストレージデバイス、入力-出力コントローラ、入力-出力デバイス、及びディスプレイデバイス、の様な既知の構成要素を含んでいる。更に関連技術の当業者には理解される様に、コンピュータの実施可能な構成及び構成要素はたくさんあり、キャッシュメモリ、データバックアップユニット、及び多くの他のデバイスを含めることができるだろう。入力デバイスの例には、キーボード、カーソルコントロールデバイス(例えばマウス)、マイクロフォン、スキャナ、など、が挙げられる。出力デバイスの例には、ディスプレイデバイス(例えばモニタ又はプロジェクタ)、スピーカ、プリンタ、ネットワークカード、など、が挙げられる。ディスプレイデバイスは、視覚的な情報を提供するディスプレイデバイスを含むことができ、この情報は、典型的には、論理的及び/又は物理的にピクセルのアレイとして構造化されていてもよい。入力及び出力インターフェースを提供するための様々な既知の又は将来のソフトウェアプログラムの何れかを備え得るインターフェースコントローラを含めることもできるだろう。例えば、インターフェースは、1つ又はそれ以上のグラフィック表現をユーザーへ提供する一般的に呼称されるところの「グラフィカルユーザーインターフェース」(しばしば「GUI」と呼称される)を含んでいてもよい。インターフェースは、典型的には、関連技術の当業者に既知である選択又は入力の手段を使用するユーザー入力を受け入れるように使用可能にされる。インターフェースは、更に、タッチスクリーンデバイスであってもよい。同じ又は代わりの実施形態では、コンピュータ上のアプリケーションは、「コマンドラインインターフェース」と呼称されるもの(CLI’sと呼称されることもしばしば)を含んでいるインターフェースを採用していてもよい。CLI’sは、典型的には、アプリケーションとユーザーの間にテキストベースの対話を提供する。典型的には、コマンドラインインターフェースは、ディスプレイデバイスを通して、テキストの行として出力を提示し入力を受信する。例えば、一部の実装は、関連技術の当業者には既知であるUnixShells、又はMicrosoft.NETフレームワークの様なオブジェクト指向型プログラミングアーキテクチャを採用するMicrosoft Windows Powershellの様な、「シェル」と呼称されるものを含んでいるものもある。
【0099】
[0124]インターフェースは、1つ又はそれ以上のGUI’s、CLI’s又はそれらの組合せを含んでいてもよい。プロセッサは、Intel Corporation社製のCeleron、Core、又はPentiumプロセッサ、Sun Microsys
tems社製のSPARCプロセッサ、AMD Corporation社製のAthlon、Sempron、Phenom、又はOpteronプロセッサの様な、商業的に入手可能なプロセッサを含んでいてもよいし、又はそれは入手可能であるか入手可能となるであろう他のプロセッサの1つであってもよい。プロセッサの幾つかの実施形態は、マルチコアプロセッサと呼称されるものを含んでいてもよく、及び/又はシングルコア構成又はマルチコア構成での並列処理技術を採用することができるようになっていてもよい。例えば、マルチコアアーキテクチャは、2つ又はそれ以上のプロセッサ「実行コア」を備えているのが典型的である。本例では、各実行コアは、複数スレッドの並行実行を可能にさせる独立プロセッサとして性能を発揮することができる。加えて、関連技術の当業者には理解される様に、プロセッサは一般的な言い方で32ビット又は64ビットアーキテクチャと言われる構成であってもよいし、又は現時点で知られているか若しくは将来開発されるかもしれない他のアーキテクチャ構成であってもよい。
【0100】
[0125]プロセッサは典型的にはオペレーティングシステムを実行するものであって、オペレーティングシステムは、例えば、Microsoft Corporation社からのWindows型オペレーティングシステム、Apple Computer Corp.社からのMac OS X オペレーティングシステム、多くの納入業者から入手可能な、オープンソースとも呼称される、Unix型又はLinux(登録商標)型オペレーティングシステム、別の又は将来のオペレーティングシステム、又はそれらの何らかの組合せ、とすることができる。オペレーティングシステムはよく知られている方式でファームウェア及びハードウェアとインターフェースし、プロセッサが様々なプログラミング言語で書かれている可能性のある様々なコンピュータプログラムの機能を調整したり実行したりするのを円滑化する。オペレーティングシステムは、典型的には、プロセッサとの協働で、コンピュータの他の構成要素の機能を調整したり実行したりする。オペレーティングシステムは、更に、何れも既知の技法によるものであるスケジューリング、入力-出力制御、ファイル及びデータ管理、メモリ管理、及び通信制御並びに関連サービスを提供する。
【0101】
[0126]システムメモリは、所望の情報を記憶するのに使用することができ且つコンピュータによってアクセスすることのできる様々な既知の又は将来のメモリストレージデバイスの何れかを含むことができる。コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、又は他のデータの様な情報の記憶のための何れかの方法又は技術に実装されている揮発性及び不揮発性媒体、リムーバブル及びノンリムーバブル媒体を含むことができる。例として、何れかの一般的に入手可能なランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電子的消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EEPROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、常駐ハードディスク又はテープの様な磁気媒体、読み出し書き込みコンパクトディスクの様な光学媒体、又は他のメモリストレージデバイスが挙げられる。メモリストレージデバイスは、コンパクトディスクドライブ、テープドライブ、リムーバブルハードディスクドライブ、USB又はフラッシュドライブ、又はディスケットドライブを含む、様々な既知又は将来のデバイスの何れを含むこともできる。その様な型式のメモリストレージデバイスは、典型的には、個々に挙げると、コンパクトディスク、磁気テープ、リムーバブルハードディスク、USB又はフラッシュドライブ、又はフロッピーディスケットの様な、プログラム記憶媒体から/へ読み出し及び/又は書き込む。これらのプログラム記憶媒体又は現時点で使用中の又は後日開発される可能性のある他のプログラム記憶媒体は何れもコンピュータプログラム製品と考えることができる。理解される様に、これらのプログラム記憶媒体は、典型的には、コンピュータソフトウェアプログラム及び/又はデータを記憶する。コンピュータ制御論理とも呼ばれるコンピュータソフトウェアプログラムは、典型的には、システムメモリに及び/又はメモリストレージデバイスと関連して使用されるプログラムストレージデバイスに記憶される。一部の実施形態では、コンピュータプログラム製品は、制御論理(プログラムコードを含むコンピュータソフトウェアプログラム)が記憶されているコンピュータ使用可能媒体を備えていると記述されている。制御論理は、プロセッサによって実行されると、ここに説明されている諸機能をプロセッサに遂行させる。他の実施形態では、幾つかの機能は主として、例えばハードウェア状態機械を使用するハードウェアに実装されている。ここに説明されている諸機能を遂行させるためのハードウェア状態機械の実装は、関連技術の当業者には自明であろう。入力-出力コントローラは、ヒトか機械か、ローカルかリモートかを問わず、ユーザーからの情報を受け入れて処理するための様々な既知のデバイスの何れを含むこともできるだろう。その様なデバイスは、例えば、モデムカード、ワイヤレスカード、ネットワークインターフェースカード、音声カード、又は様々な既知の入力デバイスの何れかのための他の型式のコントローラを含む。出力コントローラは、ヒトか機械か、ローカルかリモートかを問わず、ユーザーへ情報を提示するための様々な既知のディスプレイデバイスの何れかのためのコントローラを含むことができるだろう。目下説明されている実施形態では、コンピュータの機能的要素はシステムバスを介して互いと通信する。コンピュータの幾つかの実施形態は、ネットワーク又は他の型式のリモート通信を使用する幾つかの機能的要素と通信することもできる。関連技術の当業者には明白である様に、機器制御及び/又はデータ処理アプリケーションは、ソフトウェアに実装されているなら、システムメモリ及び/又はメモリストレージデバイスへロードされ、システムメモリ及び/又はメモリストレージデバイスから実行されることになるだろう。更に、機器制御及び/又はデータ処理アプリケーションの全部又は一部が読み出し専用メモリ又はメモリストレージデバイスの類似のデバイスに常駐していてもよく、その様なデバイスなら、最初に機器制御及び/又はデータ処理アプリケーションを入力-出力コントローラを通してロードすることは必要ない。関連技術の当業者には理解される様に、機器制御及び/又はデータ処理アプリケーション又はその一部は、プロセッサによって既知の方式で、実行上の都合に合わせてシステムメモリか又はキャッシュメモリか又はその両方へロードすることができる。更に、コンピュータは、システムメモリに記憶されている1つ又はそれ以上のライブラリファイル、実験データファイル、及びインターネットクライアントを含んでいてもよい。例えば、実験データは、検出信号値、又は1つ又はそれ以上のsequencing by synthesis(SBS)法実験又はプロセスと関連付けられる他の値の様な、1つ又はそれ以上の実験又は検定に関係付けられるデータを含んでいることもあるだろう。加えて、インターネットクライアントは、別のコンピュータ上のリモートサービスにネットワークを使用してアクセスできるようになっているアプリケーションを含むことができ、例えば一般的に「ウェブブラウザ」と称されるものを備えることができる。本例では、一部の一般的に採用されているウェブブラウザは、Microsoft Corporation社から入手可能なMicrosoft Internet Explorer、Mozilla Corporation社からのMozilla Firefox、Apple Computer Corp.社からのSafari、Google Corporation社からのGoogle Chrome、又は当技術で現時点で知られているか又は将来開発されることになる他の型式のウェブブラウザを含む。更に、同じ又は他の実施形態では、インターネットクライアントは、生物学的用途のためのデータ処理アプリケーションの様な、ネットワークを介してリモート情報にアクセスできるようになっている特化されたソフトウェアアプリケーションを含んでいるということもあれば、その様な特化されたソフトウェアアプリケーションの一要素であるということもあるだろう。
【0102】
[0127]ネットワークは、当業者によく知られている多くの様々な型式のネットワークの1つ又はそれ以上を含んでいてもよい。例えば、ネットワークは、通信するためのTCP/IPプロトコル群と一般に称されるものを利用していることもあるローカルエリアネットワーク又はワイドエリアネットワークを含んでいてもよい。ネットワークは、相互接続されたコンピュータネットワークの世界的規模のシステムを備える一般的にはインターネットと呼称されるネットワークを含んでいてもよいし、又は更に、様々なイントラネットアーキテクチャを含むこともできるだろう。同じく関連技術の当業者には理解される様に、ネットワーク化された環境の一部のユーザーは、ハードウェアシステム及び/又はソフトウェアシステムを出入りする情報トラフィックを制御するのに、一般的には「ファイアウォール」と称される(場合によりパケットフィルタ又はボーダープロテクションデバイスとも呼称される)ものを採用するのを好むこともある。例えば、ファイアウォールはハードウェア要素又はソフトウェア要素又はそれらの何らかの組合せを備えていてもよく、典型的には、例えばネットワーク管理人などの様なユーザーによって制定されたセキュリティポリシーを強化するように設計されている。
【0103】
代わりのアレイ構成及び溜り監視
[0128]以上に論じられていた様に、
図19A及び
図19Bは、1つのアレイ又は2つのアレイを分注器と生体試料の間の分注検出のためにどの様に構成できるのかについての代わりの構成を示している。
図19Aでは、分注検出器は、単一アレイか、若しくは互いに対して平行又は逆平行に位置決めされている1対のアレイ(明示的に図示されていない)のどちらかとすることができる。代わりに、
図19Bに示されている様に、アレイの対同士を互いに垂直に配列して発光器(120)と対応する受光器(121)の間の光路が互いに直角に交わるようにすることもできる。アレイ同士を互いに対して他の向きに配列することも可能であるし、分注事象及び当該分注事象の結果に関する追加の及び/又は異なる情報を得るために、4つより多いまた更には5つより多いといった様に3つより多いセンサアレイを分注検出器に含むことも可能である。
【0104】
[0129]別の実施形態では、アレイを、平坦基板(例えば顕微鏡スライド)の上方の、液体が基板の表面に存在しているときにアレイの発光器と対応する受光器の間の光路が遮られるような選択された高さに、位置決めすることもできる。具体的には、選択される高さは、液体の、基板上に載せられた事前に選択されている体積が、光の一部が受光器に届くのを遮ってしまうような高さとすることができる。この実施形態でのアレイは、特定のカバレージ(体積に関係付けられていて、液体及び液体が載せられている基板に依存している)が分注事象によって実現されているとの確証及び/又は尺度を提供することができる。この実施形態のアレイは、更に、流体が基板上の正しい空間位置にあるかどうかを確証することもできる。例えば、アレイの各受光器が別々に監視されるようにすれば、溜りの位置を検出して(受光器のうち発光器からの光を受けることを溜りによって遮られている受光器はどれなのかを検出することによって)、溜りが正しい場所にあるかどうか、例えば、基板の、生体試料が正常に置かれる部分に在るかどうか、を確証することができる。同じく、別々の受光器を監視するというやり方を利用すれば、基板の表面に亘って散らばる別々のオブジェクト(例えば別々の液滴など)があるかどうかを判定することもできる。更に第2の分注事象中に溜りを監視して、既存溜りへの第2の液体の追加が、液体の一部が逃げること(wick)又はそれ以外に基板から除去されることを起こさないことを確実にすることができる。例えば、既に基板上の所定位置にある第1の液体への第2の液体の高速移動分注事象は、自身を第1の液体の一部と共に基板からはね散らし、基板上の流体量を実際に減らしてしまわないとも限らない。同じく、既に基板上の所定位置にある第1の液体への第2の液体の追加が、溜りを拡大すれば(例えば分注があまりに広かった場合など)及び/又は基板からの逃げ経路が確立してしまう位置へ溜りを動かせば、液体の量は減ってしまうかもしれない。その様な事象を検出することは、潜在的解析エラーが修正されない場合であっても少なくとも認識できるようになることを確約するうえで助けとなり得る。この実施形態による溜りの監視は、更に、例えば生体試料に行われる処理を捗らせるために基板が加熱される場合の基板表面からの液体の蒸発を監視するのに使用することができる。
【0105】
[0130]或るより特定の実施形態では、第1の高さと同じ高さか又は基板より上方の別の異なる高さのどちらかでの液体カバレージを監視するのに第2のアレイを利用することも
できるだろう。第1のアレイと同様、第2のアレイからの別々の受光器信号を使用して溜りの位置を判定することもできるだろう。本実施形態による第1のアレイと第2のアレイは、第1のアレイの発光器から対応する受光器までの光路が第2のアレイの光路に垂直になるような構成とすることが有利であり得よう。垂直アレイの組の使用は、溜りが基板上の既定場所にあるかどうかに関する判定への第2の次元を提供することができる。第1のアレイと第2のアレイは、互いと散乱を通して干渉し合わないように、異なる放射波長で作動するようにすることが有利であり得よう。例えば、帯域通過フィルタ又はカットオフフィルタを異なるアレイの受光器に配置して、確実に、異なるアレイ同士が互いと干渉して誤った信号を発生させることのないようにするのを支援することもできるだろう。
【0106】
[0131]更に別の実施形態では、流体のこぼれ、はね散り、走り、又はそれ以外に基板の表面を流れ去ってしまうことを検出及び/又は特徴付けることができるように、基板より下の空間を監視するべく追加の(単数又は複数の)アレイが位置決めされている。
【0107】
[0132]更に別の実施形態では、液体試薬を顕微鏡スライド上に堆積させることによって形成される溜りを、分注事象そのものの代理として監視することができる。したがって、或る特定の実施形態では、発光器及び対応する受光器の2つ又はそれ以上のアレイ、例えば3つ又はそれ以上また更には4つ又はそれ以上の様なアレイが、顕微鏡スライドの長さに沿って、顕微鏡スライドの互いに反対側に、それらの検出領域の平面が生体試料の保持されている顕微鏡スライドの表面に垂直になりアレイが顕微鏡スライドより上方(及び場合によっては下方)の鉛直方向の次元に及ぶように、設置されている。そうすると、顕微鏡スライドは各アレイで光のごく一部が対応する受光器に届くのを遮るであろうが、スライドの上に載せられた溜りは光の追加量を遮るはずである。その様なアレイのセットを用いて溜りを「横向き」に眺めることが、スライドの上側の面のどこに液体が位置しているか、また液体試薬は上側の面の上方のどれぐらいの高さに置かれているか、の尺度を提供してくれる。従って、スライドの表面の液体カバレージマップを得ることができるわけである。スライド上の様々な場所における液体の所在及び量を求めることに加え、その様な横向きに眺めるアレイのシステムは、例えば空気渦流混合法を利用する混合の様な混合時などの溜り力学を追跡するのに使用することができるだろう。したがって、例えば、液体が実際にスライド上を動いてゆく範囲及びそれがどこへ動いてゆくのかを求めるのを支援するために、その様なシステムを使用することができる。
【0108】
[0133]全体的に見て、1つ又はそれ以上のアレイの何れかの組合せを使用して1つ又はそれ以上の特性をモニタし、それら特性を既定の値と比較して、生体試料の処理に悪影響を及ぼすと予想される流動性分注事象にフラグを立てさせるようにすることができる。また、その様な有用な特性を提供するようにアレイの何れかの組合せを利用することもできる。例えば、分注器と生体試料の間の分注経路に沿った1つ又はそれ以上のアレイを、基板上の溜りを監視するための1つ又はそれ以上のアレイ(溜りが留まっている表面に平行、又は溜りが留まっている表面に垂直、又はその両方)と組み合わせることも可能であろう。代わりに、分注器と生体試料の間の分注経路に沿った1つ又はそれ以上のアレイを、液体が堆積されることになっている基板の下に位置決めされている1つ又はそれ以上のアレイと組み合わせることもできるだろう。また、分注器と生体試料の間の分注経路に沿った1つ又はそれ以上のアレイを、液体が堆積されることになっている基板の下に位置決めされている1つ又はそれ以上のアレイ及び基板上の溜りを監視するための1つ又はそれ以上のアレイと組み合わせることもできるだろう。更にまた、溜りを監視するための1つ又はそれ以上のアレイを液体が堆積されることになっている基板の下に位置決めされている1つ又はそれ以上のアレイと組み合わせることも可能であるし、或いは分注経路に沿ったアレイ群を、溜りを監視するアレイ群(平行、垂直、又はその両方)と基板の下方の空間を監視するアレイ群の両方と組み合わせることもできる。
【0109】
[0134]本発明の様々な修正形は、ここに説明されているものの他にも、当業者にはこれまでの説明から自明であろう。その様な修正形も付随の特許請求の範囲による範囲の内に入るものとする。
【0110】
[0135]参照符号が特許請求の範囲に記載されている場合、それらは例示であり、特許庁によるレビューの容易さを図ってのことであり、何ら限定を課すものではない。一部の実施形態では、この特許出願の中に提示されている図面は、角度、寸法比、などを含め、縮尺を合わせて描かれている。一部の実施形態では、図面は表現上のものでしかなく、特許請求の範囲は図面の寸法によって限定されるものではない。ここでの使用に際し、「備えている(comprising)」は、オープンエンドな(制限のない)用語であり、「含んでいる(including)」という用語と入れ替え可能に使用される。よって、例えば、システムが特徴A及び特徴Bを備えている(含んでいる)という記述は、同じく、特徴A、特徴B、及び特徴Cを備えている(含んでいる)システムを包含する。一部の実施形態では、「○○を備えている」という言い回しを使用してここに記述されている本発明の説明は、「○○から成る(consisting of)」と記述され得る実施形態を含んでおり、よって「○○から成る」という言い回しを使用して本発明の1つ又はそれ以上の実施形態を請求する場合の明細書記載要件は満たされる。
【0111】
[0136]特許請求の範囲に記載されている何れかの参照符号は、例示目的であるとされる様に、単にこの特許出願の審査の容易さのためであり、特許請求の範囲による範囲を、図面内の対応する参照符号を有する特定の特徴に如何様にも限定するものではない。
【0112】
[0137]参照文献
[0138]米国特許第5141871号、1992年8月25日、Kureshy他
[0139]米国特許第6541757号、2003年4月1日、Bieman
[0140]米国特許第6708079号、2004年3月16日、Mason
[0141]米国特許第8004683号、2011年8月23日、Tokhtuev他
[0142]米国特許第9010580号、2015年4月21日、Rolek
[0143]米国特許出願第20070041875号、2007年2月22日、Bach