(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】選択的触媒還元反応器
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20230502BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20230502BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20230502BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20230502BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230502BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20230502BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
F01N3/08 B ZAB
F01N3/24 N
F01N13/08 D
F01N3/28 301W
F01N13/08 Z
B01D53/94 400
B01D53/86 222
B01D53/94 222
B01J35/04 311Z
(21)【出願番号】P 2021121289
(22)【出願日】2021-07-26
【審査請求日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】10-2020-0094905
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515349995
【氏名又は名称】エイチエスディー エンジン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウ、ジョングァン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ジンウ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョンフン
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0111580(KR,A)
【文献】特開昭60-217977(JP,A)
【文献】特開2017-180218(JP,A)
【文献】特開2019-124201(JP,A)
【文献】特開2015-014268(JP,A)
【文献】特開2017-075579(JP,A)
【文献】特開2007-153404(JP,A)
【文献】実開昭63-073524(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
F01N 3/24
F01N 13/08
F01N 3/28
B01D 53/94
B01D 53/86
B01J 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒が長手方向に切られ、側面の一部は平面であり側面の残りの一部は曲面形状を有し、一側の底面に排出口が形成された本体部
;
前記本体部の平面である側面に隣接して配置され、一端部が前記本体部の前記一側の反対側である他側において前記平面である側面に連結され、排気ガスを前記本体部に移動させる排気パイプ;
及び、
前記本体部の平面である側面に結合され、前記排気パイプを支持する板状スティフナー(stiffener);
を含
み、
前記本体部の両側の底面は、それぞれ、縁部は平らな形状であり、中央部は外側に凸状に膨らんだ曲面で形成され、
前記本体部の一側の底面の縁部が延びて前記板状スティフナーと共に 排気パイプを支持する選択的触媒還元反応器。
【請求項2】
前記板状スティフナーは、前記排気パイプを支持するため、一領域が貫通して形成される支持ホールを有し、
前記排気パイプは、前記板状スティフナーの前記支持ホールに挿入されて支持されることを特徴とする、請求項
1に記載の選択的触媒還元反応器。
【請求項3】
前記板状スティフナーは、複数個が設けられ、
複数の前記板状スティフナーは、前記本体部の長手方向に沿って離間して配列されることを特徴とする、請求項
1に記載の選択的触媒還元反応器。
【請求項4】
前記本体部の内部に配置された触媒をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の選択的触媒還元反応器。
【請求項5】
前記本体部の曲面である側面に、触媒入出ドア部が設けられることを特徴とする、請求項
4に記載の選択的触媒還元反応器。
【請求項6】
前記本体部と前記排気パイプとの連結部位と、前記触媒との間に配置された多孔板をさらに含むことを特徴とする、請求項
4に記載の選択的触媒還元反応器。
【請求項7】
前記本体部の他側の内部に設けられ、前記排気パイプを介して、前記本体部の内部に流入された排気ガスを前記触媒に向けて均等に分配するガイドベーン(guide vane)をさらに含むことを特徴とする、請求項
4に記載の選択的触媒還元反応器。
【請求項8】
前記排気パイプの他端部には、還元剤噴射部が取り付けられることを特徴とする、請求項1に記載の選択的触媒還元反応器。
【請求項9】
前記排気パイプの他端部には、ミキサーが設けられることを特徴とする、請求項1に記載の選択的触媒還元反応器。
【請求項10】
前記本体部の平面である側面が上方に向くように配置されることを特徴とする、請求項1に記載の選択的触媒還元反応器。
【請求項11】
前記本体部の排出口と前記排気パイプの他端部とは、同一の方向に開口されることを特徴とする、請求項1に記載の選択的触媒還元反応器。
【請求項12】
前記本体部を床面から離間して支持する支持フレームをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の選択的触媒還元反応器。
【請求項13】
前記本体部の両側の底面の平らな面には、放射状に配置された複数の線状補強リブと、前記外側に凸状に膨らんだ曲面で形成される中央部を囲む円状補強リブとが設けられることを特徴とする、請求項
1に記載の選択的触媒還元反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的触媒還元反応器に関し、より詳しくは、排気ガスに含まれた窒素酸化物(NOx)を選択的触媒還元反応により低減させる選択的触媒還元反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
産業化の急速な進行に伴い、石油や石炭のような各種化石燃料の使用量が増加している。これによって、化石燃料の燃焼過程で排出される各種有害ガスが深刻な大気汚染を引き起こしている。代表例として、スモッグ(smog)現象や酸性雨などが挙げられる。
【0003】
大気汚染の原因としては、車両や船舶のエンジン又は火力発電所や工場などから排出される排気ガス中の硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)がある。
【0004】
近年、環境保全意識が高まっており、このような硫黄酸化物や窒素酸化物に対する排出規制が導入されている。
【0005】
特に、窒素酸化物を低減させるための設備としては、代表的に、選択的触媒還元(Selective Catalytic Reduction、「SCR」)システムがある。選択的触媒還元システムは、触媒が内部に設けられた反応器に、排気ガスとともに還元剤を通過させながら、排気ガスに含まれた窒素酸化物と還元剤とを反応させることで、窒素と水蒸気とに還元する処理を行う。
【0006】
このような選択的触媒還元システムが船舶に使用される場合、船舶用ディーゼルエンジンから排出される窒素酸化物(NOx)の排出量が、国際海事機関(International Maritime Organization)で規定した大気汚染防止のための第3次規制(IMO Tier-III)を満たす必要があるため、低コストかつ高効率の脱窒設備、及び効果的な運用方法が求められている。
【0007】
なお、船舶は空間が限られているため、船舶に使用される選択的触媒還元システムには、簡素化が求められている。
【0008】
しかし、従来の選択的触媒還元システムでは、尿素水の形態で噴射される還元剤を、アンモニアに分解させ、又はアンモニア水の形態で噴射される還元剤を気化させるための気化器と、アンモニアと窒素酸化物との反応を促進させるための触媒が内蔵された反応器とが、別体に分離されている。
【0009】
上述のように、気化器と反応器との分離設置によって、選択的触媒還元システムの全体的な設置スペースが増加してしまう。なお、気化器と反応器とをそれぞれ別にメンテナンスする必要があるため、気化器と反応器とを別にメンテナンスするための空間がさらに必要となる。また、気化器及び反応器のメンテナンスにかかる手間や時間が増えてしまう。
【0010】
なお、配管を介して気化器の後端を反応器の前端に連結する必要があるが、設置スペースの制約によって、これらを連結するための配管が余分に長くなったり、複雑になったりするといった問題点がある。
【0011】
特に、大型船舶に採用される反応器は、人間の数十倍ぐらいの大きさで、非常に大型であるので、配管と反応器との連結作業やメンテナンス作業を行うため、作業者が反応器に上がることが頻繁に発生する。
【0012】
なお、従来、反応器が円筒形状であるため、反応器の上で作業を行うことが難しいという問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の実施例は、空間活用度を高め、設置スペースを最小化し、かつ設置及びメンテナンス作業の容易性を向上させることができる選択的触媒還元反応器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の実施例によれば、選択的触媒還元反応器は、円筒が長手方向に切られ、側面の一部は平面であり側面の残りの一部は曲面形状を有し、一側の底面に排出口が形成された本体部と、前記本体部の平面である側面に隣接して配置され、一端部が前記本体部の前記一側の反対側である他側において前記平面である側面に連結され、排気ガスを前記本体部に移動させる排気パイプとを含む。
【0015】
前記選択的触媒還元反応器は、前記本体部の平面である側面に結合され、前記排気パイプを支持する板状スティフナー(stiffener)をさらに含むことができる。
【0016】
前記板状スティフナーは、前記排気パイプを支持するため、一領域が貫通して形成される支持ホールを有することができる。また、前記排気パイプは、前記板状スティフナーの前記支持ホールに挿入されて支持される。
【0017】
前記板状スティフナーは、複数個が設けられ、また、複数の前記板状スティフナーは、前記本体部の長手方向に沿って離間して配列される。
【0018】
前記選択的触媒還元反応器は、前記本体部の内部に配置された触媒をさらに含むことができる。
【0019】
前記本体部の曲面である側面に、触媒入出ドア部が設けられる。
【0020】
また、前記選択的触媒還元反応器は、前記本体部と前記排気パイプとの連結部位と、前記触媒との間に配置された多孔板をさらに含むことができる。
【0021】
また、前記選択的触媒還元反応器は、前記本体部の他側の内部に設けられ、前記排気パイプを介して、前記本体部の内部に流入された排気ガスを、前記触媒に向けて均等に分配するガイドベーン(guide vane)をさらに含むことができる。
【0022】
前記排気パイプの他端部には、還元剤噴射部が取り付けられる。
【0023】
前記排気パイプの他端部には、ミキサーが設けられる。
【0024】
前記本体部の平面である側面が上方に向くように配置される。
【0025】
また、前記本体部の排出口と前記排気パイプの他端部とは、同一の方向に開口される。
【0026】
また、前記選択的触媒還元反応器は、前記本体部を床面から離間して支持する支持フレームをさらに含むことができる。
【0027】
前記本体部の両側の底面は、それぞれ外側に凸状に膨らんだ曲面で形成される。
【0028】
また、前記本体部の両側の底面は、平らに形成される。さらに、前記本体部の両側の底面の平らな面には、放射状に配置された複数の線状補強リブが設けられる。
【0029】
また、前記本体部の両側の底面は、それぞれ縁部は平らな形状であり、中央部は外側に凸状に膨らんだ曲面で形成される。さらに、前記本体部の両側の底面の平らな面には、放射状に配置された複数の線状補強リブと、前記外側に凸状に膨らんだ曲面で形成される中央部を囲む円状補強リブとが設けられる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の実施例によれば、選択的触媒還元反応器は、空間活用度を高め、設置スペースを最小化し、かつ設置及びメンテナンス作業の容易性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の第1の実施例に係る選択的触媒還元反応器を示す斜視図である。
【
図2】
図1の選択的触媒還元反応器の縦方向断面図である。
【
図3】
図1の選択的触媒還元反応器の平面図である。
【
図4】
図1の選択的触媒還元反応器の側面図である。
【
図5】本発明の第2の実施例に係る選択的触媒還元反応器を示す斜視図である。
【
図6】
図5の選択的触媒還元反応器の正面図である。
【
図7】
図5の選択的触媒還元反応器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態について、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。本発明は、種々の異なる形態に具現可能であり、ここで説明する実施形態に何ら限定されない。
【0033】
また、種々の実施例において、同様な構成を有する構成要素には、同様の符号を付するが、代表的に第1の実施例について説明し、その他の実施例においては、第1実施例と異なる構成についてのみ説明することとする。
【0034】
図面は、大まかに示されており、縮尺に合わせて示されていないことに留意されたい。図示の部分の相対的な寸法及び比率は、図面における明確性及び便宜性のためにその大きさが誇張されたり縮小されたりしており、任意の寸法は、単なる例示的なものに過ぎず、限定的なものではない。なお、2以上の図面に示されている同一の構造物、要素又は部品には同じ参照符号が類似の特徴を示すために付される。
【0035】
本発明の実施例は、本明細書において、本開示の理想的な実施例を具体的に示す。従って、図面は様々に解釈されることが予想される。そのため、本発明の実施例は、本明細書において示す領域の特定の形態に限定されるものと解釈されてはならず、例えば、製造による形態の変形を含む。
【0036】
以下、
図1~
図4を参照して本発明の第1の実施例に係る選択的触媒還元反応器101について説明する。
【0037】
本発明の第1の実施例に係る選択的触媒還元反応器101は、動力装置から排出される排気ガスに含まれた窒素酸化物(NOx)を低減させるための選択的触媒還元(Selective Catalytic Reduction、「SCR」)システムに適用される。一例として、動力装置は、船舶に推力を供給する主動力源として使用されるディーゼルエンジンが挙げられる。また、ディーゼルエンジンは、船舶用2行程低速ディーゼルエンジンであることができる。
【0038】
しかし、本発明の第1の実施例は、これらに限定されない。動力装置は、プラント用内燃機関あるいは車両用エンジンであることもできる。即ち、動力装置としては、当該技術分野で通常の知識を有する者に公知の種々のエンジンを使用することができる。
【0039】
動力装置から排出された窒素酸化物(NOx)を含んだ排気ガスは、排気流路を介して移動される。即ち、排気流路は、動力装置であるディーゼルエンジンの排気口と連結されてディーゼルエンジンの排気ガスを排出させ、また、選択的触媒還元反応器101に連結される。
【0040】
図1~
図4に示されるように、本発明の第1の実施例に係る選択的触媒還元反応器101は、本体部300と排気パイプ500とを含む。
【0041】
また、本発明の第1の実施例に係る選択的触媒還元反応器101は、板状スティフナー(stiffener)400、触媒200、触媒入出ドア部320、多孔板、ガイドベーン(guide vane)、還元剤噴射部700、ミキサー750、及び支持フレーム800をさらに含むことができる。
【0042】
本体部300は、円筒が長手方向に切られ、側面の一部は平面であり側面の残りの一部は曲面形状を有する容器形状で形成される。即ち、本体部は、平面である側面330と、曲面である側面310とを含む。また、本体部300の一側の底面351には、排出口390が設けられる。従って、本体部300は、半円筒形状に類似して形成されるが、底面351、352が正半円形ではない。
【0043】
特に、本発明の第1の実施例において、本体部300の平面である側面330が上方に向くように配置されている。
【0044】
大型船舶に使用される選択的触媒還元反応器101は、その大きさが人間の数十倍ぐらいであって非常に大型である。本発明の第1の実施例では、本体部300の上部面が平面となっているため、作業者が、必要に応じて、本体部300に上がって安全に様々な作業を行えるようになる。
【0045】
また、本体部300の両側の底面351、352は、それぞれ外側に凸状に膨らんだ曲面で形成される。即ち、本体部300の平面である側面330を除いた曲面である側面310は、半円筒状に近い形状であることができ、本体部300の底面351、352は、半球状であるか、湾曲した曲板状であることができる。
【0046】
上述のように、本発明の第1の実施例に係る選択的触媒還元反応器101は、本体部300が、側面の一部を除いては曲面形状を有しているため、作業者に便宜を与えながらも、高い排気ガスの圧力にも安定的に耐えることができる。
【0047】
排気パイプ500は、本体部300の平面である側面330に隣接して配置される。また、排気パイプ500の一端部530が、本体部300の一側の反対側である他側において平面である側面330に連結され、排気ガスを本体部300に移動させる。即ち、排気パイプ500の一端部530は、一側の底面351より他側の底面352に隣接した平面である側面330に連結される。また、排気パイプ500の他端部510は、排気ガスが流入される流入口となる。なお、本体部300の排出口390と、排気パイプ500の他端部510とは、同一の方向に開口されている。
【0048】
板状スティフナー400は、本体部300の平面である側面330に結合され、排気パイプ500を支持することができる。板状スティフナー400は、排気パイプ500を支持するため、一領域が貫通して形成された支持ホール450を有することができる。また、排気パイプ500は、板状スティフナー400の支持ホール450に挿入されて支持されるようになる。
【0049】
また、板状スティフナー400は、複数個が設けられる。複数の板状スティフナー400は、本体部300の長手方向に沿って離間して配列される。
【0050】
上述のような、板状スティフナー400は、排気パイプ500を支持するとともに、本体部300の強度を補強することができる。本体部300の平面である側面330は、曲面である側面310、及び両側の底面351、352に比べ、高圧の排気ガスに耐え得る耐久性が低下することがあり得る。複数の板状スティフナー400は、排気パイプ500を支持するだけでなく、本体部300において相対的に強度が低い平面である側面330を補強するようになる。
【0051】
触媒200は、
図2に示されるように、本体部300の内部に配置される。触媒200は、モジュールの形態で配置され、複数の触媒モジュールが本体部300の内部において排気ガスの移動方向に交差する方向に積層配置され、複数の触媒層を形成している。このような複数の触媒層は、本体部300の内部において排気ガスの移動方向を基準に離間して配置することができる。
【0052】
また、複数の触媒モジュールは、六面体で形成され得る。一例として、複数の触媒モジュールは、直六面体又は正六面体であることができる。このように、触媒モジュールを直六面体又は正六面体で形成することで、触媒モジュールの積層配置が容易であると共に、触媒モジュールの交換及び運搬が容易であり、触媒モジュールに含まれた触媒200の効率を極大化させることが可能となる。
【0053】
また、触媒200は、ゼオライト(zeolite)、バナジウム(vanadium)、及び白金(platinum)などのように、当該技術分野の当業者に公知の種々の素材で製造することができる。例えば、触媒200は、摂氏200度~摂氏500度の範囲内の活性温度を有することができる。ここで、活性温度とは、触媒200が被毒することなく安定して窒素酸化物を還元させ得る温度をいう。触媒200が活性温度の範囲外で反応する場合は、触媒200の被毒が生じ、効率が低下する。
【0054】
例えば、摂氏150度以上、摂氏250度未満の、相対的に低い温度で排気ガスに含まれた窒素酸化物を低減させるための還元反応が生じる場合、排気ガスの硫黄酸化物(SOx)と、還元剤であるアンモニア(NH3)とが反応し、触媒被毒物質が生成される。具体的に、触媒200を被毒させる被毒物質には、硫酸アンモニウム(Ammonium sulfate、(NH4)2SO4)、亜硫酸水素アンモニウム(Ammonium bisulfate、NH4HSO4)のうちのいずれか1つ以上が含まれる。このような触媒被毒物質は、触媒200に吸着されて触媒200の活性を低下させる。触媒被毒物質は、相対的に高い温度、即ち、摂氏350度~摂氏450度の範囲内の温度で分解するため、反応器中の触媒200を昇温させ、被毒された触媒200を再生することができる。
【0055】
触媒入出ドア部320は、本体部300の曲面である側面310に設けられる。
図1に示された触媒入出ドア部320は、円形状であるが、本発明の第1の実施例は、これに限定されない。例えば、触媒入出ドア部320は、楕円状、長孔状、または、四角形状であることができる。
【0056】
ガイドベーン630は、本体部300の他側の内部に設けられ、排気パイプ500を介して本体部300の内部に流入された排気ガスを、触媒200に向けて均等に分配することができる。即ち、ガイドベーン630は、触媒200と本体部300の他側の底面352との間に配設される。一例として、ガイドベーン630は、複数の曲板を含むことができる。また、ガイドベーン630は、排気パイプ500から本体部300の内部に流入された排気ガスを、触媒200に向けて均等に拡散させる。
【0057】
多孔板620は、本体部300と排気パイプ500との連結部位と、触媒200との間に配設される。多孔板620は、ガイドベーン630と共に触媒200に向けて排気ガスを均一に拡散させる役割を果たすと共に、後述のミキサー750を補助する機能を行うようになる。
【0058】
還元剤噴射部700は、排気パイプ500の他端部510に取り付けられる。具体的に、還元剤噴射部700は、排気パイプ500を介して本体部300に流入される排気ガスに還元剤を噴射する。例えば、還元剤噴射部700は、尿素(urea、CO(NH2)2)水溶液を噴射することができる。触媒200において窒素酸化物と直接反応する還元剤としては、アンモニア(NH3)が使用されるが、アンモニア自体が汚染物質であって保管と運搬が容易でないため、より安定的な尿素水溶液が使用されるのが一般的である。即ち、尿素水溶液は、還元剤前駆体に該当する。還元剤噴射部700から噴射された尿素(urea、CO(NH2)2)水溶液は、排気パイプ500に沿って移動しながら加水分解又は熱分解され、アンモニア(NH3)とイソシアン酸(Isocyanic acid、HNCO)とを生成する。そして、イソシアン酸(HNCO)は、また、アンモニア(NH3)と二酸化炭素(CO2)とに分解する。即ち、尿素を分解させ、窒素酸化物と反応する還元剤であるアンモニアを生成するようになる。
【0059】
なお、本発明の第1の実施例は、上記の記述に限定されるのではなく、還元剤噴射部700は、アンモニア水溶液を噴射することもできる。還元剤噴射部700がアンモニア水溶液を噴射する場合、噴射されたアンモニア水溶液は、排気パイプ500に沿って移動しながら気化される。
【0060】
このように、還元剤噴射部700が還元剤を噴射すると、排気パイプ500の内部空間は、分解チャンバー又は気化器としての役割を果たすようになる。
【0061】
従って、本発明の第1の実施例によれば、別の分解チャンバー又は気化器を設置する必要がなくなるため、全体的な構成が簡素化され、設置スペースを削減することが可能となる。
【0062】
また、還元剤噴射部700から尿素水溶液が噴射される場合、噴射された尿素水溶液は、まず、触媒200において窒素酸化物と反応するアンモニアに分解する過程を経る必要がある。なお、本発明の第1の実施例によれば、排気パイプ500の他端部510に流入された排気ガスと、還元剤噴射部700から噴射された還元剤とが、後述のミキサー750で混合され、排気パイプ500の内部空間に沿って移動し、本体部300に流入された後、ガイドベーン630により触媒200に向かうことになる。従って、還元剤噴射部700から尿素水溶液が噴射された地点から、触媒200に到達するまでの距離が長く確保できる。即ち、還元剤噴射部700から噴射された尿素水溶液の熱分解又は加水分解のための滞在時間を安定的に確保することができる。
【0063】
ミキサー750は、排気パイプ500の他端部510に設けられる。ミキサー750は、排気パイプ500の他端部510に流入される排気ガスに旋回流または渦流を発生させ、還元剤噴射部700から噴射された還元剤を排気ガスと効果的に混合させることができる。
図2において、ミキサー750が簡略に示されているが、ミキサー750は、ブレード(blade)又はベーン(guide vane)を含むことができる。
【0064】
また、一例として、ミキサー750は、還元剤噴射部700より後方に位置することができる。ここで、後方とは、排気ガスの移動方向を基準にして下流を意味する。
【0065】
支持フレーム800は、本体部300を床面から離間して支持する。本発明の第1の実施例では、本体部300の平面である側面330が上方に向くように本体部300が配置されているため、支持フレーム800は、本体部300の曲面である側面310を支持することができる。
【0066】
上述のような構成により、本発明の第1の実施例に係る選択的触媒還元反応器101は、空間活用度を高め、設置スペースを最小化し、かつ設置及びメンテナンス作業の容易性を向上させることができる。
【0067】
具体的に、選択的触媒還元反応器101は、排気ガスの圧力にも安定的に耐えながら、作業者が安全かつ安定的に種々の作業を行える環境を提供する。
【0068】
また、本発明の第1の実施例によれば、本体部300に連結された排気パイプ500を、分解チャンバー又は気化器としての役割を果たすように活用することで、還元剤を分解又は気化させるための分解チャンバー又は気化器を別途配設する必要がなくなる。
【0069】
また、本体部300に連結される排気パイプ500を単純化するとともに、排気パイプ500を本体部300に結合された板状スティフナー400が安定的に支持することで、船舶用エンジンから排出される高温及び高圧の排気ガスにより発生される応力及び振動への曝露を最小限に抑え、低振動を実現することが可能となる。
【0070】
以下、
図5~
図7を参照して、本発明の第2の実施例について説明する。
【0071】
図5~
図7に示されるように、本発明の第2の実施例に係る選択的触媒還元反応器102では、本体部300の両側の底面353、354が、それぞれ、縁部3532、3542は平らな形状であり、中央部3531、3541は外側に凸状に膨らんだ曲面であることができる。中央部3531、3541の凸状に膨らんだ曲面は、応力の集中を防止するためのものである。
【0072】
また、本体部300の両側の底面353、354の平らな縁部3532、3542には、放射状に配置された複数の線状補強リブ371が設けられる。
【0073】
また、本体部300の両側の底面353、354の平らな縁部3532、3542には、外側に凸状に膨らんだ曲面で形成される中央部3531、3541を囲む円状補強リブ352が設けられる。
【0074】
このため、選択的触媒還元反応器102の長さを縮める一方で強度を向上させることができるようになる。即ち、第1の実施例では、本体部300の両側の底面351、352が全体的に曲面形状を呈すると共に突出しているが、本発明の第2の実施例では、両側の底面353、354の中央部3531、3541のみが曲面で形成され、突出長さを最小化し、両側の底面353、354の平らな縁部3532、3542には、線状補強リブ351と円状補強リブ372とを設け、両側の底面353、354の強度を補強することができる。
【0075】
なお、本発明の第2の実施例の変形例によれば、本体部300の両側の底面353、354が全体的に平らになることもできる。このように、本体部300の両側の底面353、354が平らに形成されることで、選択的触媒還元反応器102の全長が短くなる。このときにも、本体部300の両側の底面353、354の平らな面には、放射状に配置された複数の線状補強リブ371を設けることができる。
【0076】
上述のような構成により、本発明の第2の実施例に係る選択的触媒還元反応器102は、空間活用度を高め、設置スペースを最小化し、かつ設置及びメンテナンス作業の容易性を向上させることができる。
【0077】
以上、添付の図面を参照して本発明の実施例を説明してきたが、本発明が属する技術分野の当業者は、本発明がその技術的思想や必須要素を変更せずに他の具体的な形態で実施できることが理解されるだろう。
【0078】
それで、以上で記述した実施例は、全ての面において例示的なものに過ぎず、限定的ではないものとして理解されるべきであり、本発明の範囲は、詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、並びにその等価概念から導出される全ての変更又は変形された形態が、本発明の範囲に含まれるものとして解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0079】
101、102:選択的触媒還元反応器
200:触媒
300:本体部
310:曲面である側面
320:触媒入出ドア部
330:平面である側面
351、352、353、354:底面
3531、3541:中央部
3532、3542:縁部
371:線状補強リブ
372:円状補強リブ
390:排出口
400:板状スティフナー
450:支持ホール
500:排気パイプ
510:他端部
530:一端部
620:多孔板
630:ガイドベーン
700:還元剤噴射部
750:ミキサー
800:支持フレーム