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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】硬化性ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/17 20060101AFI20230502BHJP
   C08G 77/38 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
C08G59/17
C08G77/38
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021189525
(22)【出願日】2021-11-22
(62)【分割の表示】P 2018521412の分割
【原出願日】2016-10-13
(65)【公開番号】P2022019809
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】15194036.8
(32)【優先日】2015-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サディック アマヤーエ
(72)【発明者】
【氏名】フラウケ ヘニング
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルフリート ノット
(72)【発明者】
【氏名】ホルスト ダヴィッツ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエレ プラッテ
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン ガービル
(72)【発明者】
【氏名】アルディ デーラー
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-045533(JP,A)
【文献】特開平04-227618(JP,A)
【文献】米国特許第06548568(US,B1)
【文献】特開平09-255741(JP,A)
【文献】特開2008-074795(JP,A)
【文献】特開昭55-129415(JP,A)
【文献】米国特許第04069242(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/17
C08G 77/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのカルボン酸エステル基を有するポリシロキサンであるポリマー材料(P)を製造する方法であって、少なくとも1種のエポキシ含有ポリシロキサンが、アクリル酸および/またはメタクリル酸を含む、またはアクリル酸および/またはメタクリル酸、および重合可能な二重結合を有さない他のモノカルボン酸を含む、1種または複数種のカルボン酸によって転化されるものであり、
溶媒に、該エポキシ含有ポリシロキサン、該1種または複数種のカルボン酸、(A)クロムの塩またはルテニウムの塩、及び(B)第一級アミンを添加し、接触させる工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
少なくとも1つのカルボン酸エステル基を有するポリシロキサンであるポリマー材料(P)を製造する方法であって、少なくとも1種のエポキシ含有ポリシロキサンが、アクリル酸および/またはメタクリル酸を含む、またはアクリル酸および/またはメタクリル酸、および重合可能な二重結合を有さない他のモノカルボン酸を含む、1種または複数種のカルボン酸によって転化されるものであり、
(A)クロムの塩またはルテニウムの塩と(B)第一級アミンを接触させ、次いで、該エポキシ含有ポリシロキサンと該カルボン酸を添加し、接触させることを特徴とする、方法。
【請求項3】
前記第一級アミンは、炭素数8~24の脂肪族アミン又は脂肪族アルコールアミンであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一級アミンは、飽和または不飽和脂肪族アルコールとアクリロニトリルへの付加、ならびに後続の水素化から得ることができるものであることを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項5】
10℃から200℃の温度および/または0.5barから20barの圧力において実施されることを特徴とする、請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー、好ましくはポリシロキサンの分野に属する。本発明は、特に(メタ)アクリレート含有ポリシロキサンの製造および放射線硬化性コーティング剤へのそれらの応用に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシドは、有機化学および高分子化学における非常に多能な合成ユニットである。エポキシドにおける高い環ひずみ(>20kcal/mol)は、求核体に対するそれらの良好な反応性を担っており(開環)、したがって、一連の関心対象の構造への経路を提供するものである。アミン、メルカプタン、およびアルコールに加えて、特にカルボン酸が求核体として利用されるが、これは、この物質のクラスが、好都合に入手可能であることにおいて非常に顕著であるためである。しかしながら、この物質は、多くの場合、触媒の使用を必要とするが、これは、カルボン酸が、例えば、対応するアミンなどと比べて、低い求核性を示すためである。
【0003】
モノマー性エポキシド、例えば、グリシジルアクリレートまたはブチルグリシジルエーテルなどに加えて、ポリマー性エポキシド、例えば、とりわけ、ビスフェノールAタイプのポリグリシジル化合物、ビニルモノマーのエポキシ官能性ポリマーなど、さらにはエポキシシロキサンも、材料科学および産業にとって不可欠である。
【0004】
これまで、アクリル酸エステル基(アクリレート基)を有するポリシロキサンは、例えば、印刷用インクのための、および塗料結合剤の製造のための、またはプラスチック、紙、木材、および金属の表面のコーティング剤のための、高エネルギー放射線硬化性添加剤としての実績がある。硬化は、好ましくは、低温において実施され、ならびに、先行技術の光開始剤、例えば、ベンゾフェノンおよびそれらの誘導体など、の存在下での電子放射線またはUV放射線によって引き起こされる(欧州特許第1897917号)。
【0005】
一連の触媒は、酸によるエポキシドの開環にとって好適である。したがって、グリシジル化合物とカルボン酸との反応のための多種多様な触媒が、コーティング剤技術から知られている。この反応は、しばしば、例えば塗料を硬化させるための架橋反応として使用される。アンモニウム塩およびホスホニウム塩ならびにアミンおよびホスフィンに加えて、ある特定の金属化合物についても説明する。先行技術において公知のこれらの触媒は、多くの場合、非選択的であることが分かっており、したがって、例えばシリコーン鎖の結合を破壊し、結果としてモル質量減少または骨格転位などの望ましくない副反応を引き起こす可能性があることから、不都合であることが分かっている。さらに、これらの触媒は、シリコーンに結合した有機基において、例えば、エポキシ基の単独重合、アミドへのカルボン酸の転化、またはアクリレート基へのアミンのMichael付加、さらに、多くの金属化合物とのレドックス反応によって誘発され得るアクリレートのフリーラジカル単独重合などの、望ましくない副反応を誘発させ得る。
【0006】
Mol Divers(2013)17;9-18には、脂肪酸および芳香族酸によるエポキシドの開環のための触媒としての、イオン性液体、例えば、臭化ブチルメチルイミダゾリウムなど、の使用について記載されている。この触媒は、反応の際に強酸であるHBrを放出するため、酸易動性ポリマー、例えば、シロキサンなど、を転化することができない。
【0007】
欧州特許第1693359号には、ある特定の弱いルイス酸性のボラン化合物、例えば、トリスジメチルアミノボランなど、による触媒作用について記載されている。-20℃の発火点は、取り扱いを困難にし、そのため、反応は70℃において行われるため、反応時間は非常に長くなる。
【0008】
国際公開第0177240号には、アクリル酸によるエポキシ化シロキサンの開環のためのクロム塩の使用、ならびにその後のUV硬化性剥離コーティング剤におけるこれらの材料の使用について記載されている。ここでは、触媒とエポキシシロキサンとの混合を確かに向上させると考えられている様々な溶媒が使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ポリマー、特に(メタ)アクリレート含有ポリマーの経済的な製造プロセスの提供を可能にするという目的を有する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
当該目的は、本発明の主題によって達成される。これは、ポリマー材料(P)、好ましくは、少なくとも1つのカルボン酸エステル基を有するポリシロキサン、特に(メタ)アクリレート含有ポリシロキサン、を製造するためのプロセスであって、(A)および(B)による転化生成物(C)の存在下において実施され、(A)が金属塩であり、(B)が第一級アミンである、プロセスに関する。転化生成物(C)の形成は、任意選択により、in situおいて実施することができる。例えば、最初に、転化生成物(C)を形成させて、次いで、同じ混合物を用いて(P)の製造を行うこともできる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
用語「(メタ)アクリレート」は、メタクリル酸および/またはアクリル酸による誘導体、特にエステルを包含する。
【0012】
このプロセスは、ポリマーの特に経済的製造を可能にする。本発明による当該プロセスの特有の利点は、もし必要だったとしても、少ない溶媒しか必要としないという点である。このことは、結果として、空時収量の増加をもたらす。本発明による当該プロセスのさらなる利点は、蒸留時間を短縮することができるという点である。本発明による当該プロセスのさらなる利点は、金属塩の使用量、特にクロム塩の量を減らすことができるという点である。本発明による当該プロセスのさらなる利点は、ろ過時間の短縮を実現することができるという点である。いずれにしても、全体的に、ポリマーのより経済的製造が達成される。
【0013】
本発明によるプロセス、本発明によるポリマー、およびそれらによって得ることができる調製物、ならびにそれらの使用について、本発明をこれらの例示的実施形態に制限する意図なく、実施例によって以下において説明する。範囲、一般式、または化合物のクラスが以下において指定される場合、これらは、明確に言及された対応する範囲または化合物の群だけでなく、個々の値(範囲)または化合物を抜き取ることによって得ることができる全ての部分範囲および化合物の下位群も包含する。本説明に関連して文献が引用される場合、それらの内容は全て、本発明の開示内容の一部を形成する。特に明記されない限り、百分率に対する言及は、重量百分率である。組成物の場合、特に明記されない限り、百分率は、当該組成物全体に対するものである。以下において列挙される平均は、特に明記されない限り、数平均である。使用されるモル質量は、特に明記されない限り、重量平均モル質量Mwである。本発明に関連して列挙される粘度値は、特に明記されない限り、動粘度であり、それらは、当業者に馴染みの方法を使用して特定することができる。以下において測定値が列挙される場合、特に明記されない限り、これらの測定値は、101,325Paおよび23℃の温度において特定されたものである。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明による当該プロセスは、少なくとも1種のエポキシ含有ポリマー、好ましくはポリシロキサンが、好ましくは重合可能な二重結合を有さない、特にアクリル酸および/またはメタクリル酸および/または他のモノカルボン酸を含む、1種または複数種のカルボン酸によって転化されるという特徴を有する。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明による当該プロセスによって製造可能な当該ポリマーは、結果として、少なくとも1つのカルボン酸エステル基を有するという特徴を有する。本発明に従って得られる当該ポリマーは、好ましくは、ポリマー性(ポリ)シロキサンである。
特に、本発明による当該プロセスは、下記の式(I):
1 a12 a23 a31 b12 b23 b3cd (I)
[式中、
1=[R1 3SiO1/2
2=[R21 2SiO1/2
3=[R31 2SiO1/2
1=[R1 2SiO2/2
2=[R12SiO2/2
3=[R13SiO2/2
T=[R1SiO3/2
Q=[SiO4/2
であり、
この場合、
a1=0から50、好ましくは<10、特に2であり;
a2=0から50、好ましくは<10、特に0であり;
a3=0から50、好ましくは1~30、特に>0であり;
b1=10から5000、好ましくは10から1000、特に10から500であり;
b2=0から50、好ましくは0から25、特に0であり;
b3=0から50、好ましくは0から25、特に>0であり;
c=0から50、好ましくは0から10、特に0であり;
d=0から50、好ましくは0から10、特に、0であり;
ただし、添え字a3およびb3のうちの少なくとも一方は、0を超え、好ましくは1を超え;
1=お互いに独立して、同一または異なる、直鎖状または分岐鎖状の、飽和または不飽和の、1個から30個の炭素原子を有する炭化水素基または6個から30個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、好ましくは、1個から14個の炭素原子を有するアルキル基または単環式芳香族、さらに好ましくは、メチル、エチル、プロピル、またはフェニル、特に、メチルであり;
2=お互いに独立して、同一または異なる、直鎖状または分岐鎖状の、飽和または不飽和の、窒素原子または酸素原子で置換されていてもよい炭化水素基であり、好ましい炭化水素は、1個から30個の炭素原子を有するアルキル基であり、
それらは、1つまたは複数のヒドロキシル官能基および/または窒素含有基で置換されていてもよく、
この場合、当該窒素含有基は、アンモニウム基として第四級形態において存在していてもよく、
それらは、エポキシド基で置換されていてもよく、
および/または、それらは、1つまたは複数のカルボキシル基、アミノ酸基、および/またはベタイン基で置換されていてもよく、
またはR2は、6個から30個の炭素原子を有するアリール基であり、
またはR2は、下記の式(IV)のポリオキシアルキレン基であり:
【0016】
【化1】
【0017】
この場合、
eは、1から150、好ましくは2から100、より好ましくは2を超え、特に3から20であり、
fは、0または1であり、
7またはR8ならびにR9またはR10は、同一に、またはお互いに独立して、水素、1個から12個の炭素原子を有する一価のアルキル基および/または6個から12個の炭素原子を有するアリール基であり、
これらは、任意選択により、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、メチルおよび/またはエチル基でさらに置換されていてもよく、
またはR7およびR9ならびにそれらから独立してR8およびR10は、一緒に、R7およびR9ならびにR8およびR10が結合した原子を含む環を形成していてもよく、
またはR7およびR8ならびにそれらから独立してR9およびR10は、一緒に、R7およびR8ならびにR9およびR10が結合した原子を含む環を形成していてもよく、
その場合、これらの環は、任意選択により、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、メチル基および/またはエチル基でさらに置換されていてもよく、ならびに/あるいは、飽和および/または不飽和であってもよく、
添え字eを有する当該個々の断片は、統計的分布を形成しつつ、式(IV)のポリオキシアルキレン基内においてお互いに異なっていてもよく、
2は、好ましくは、
-CH2-CH2-CH2-O-(CH2-CH2O-)x-(CH2-CH(RI)O-)y-RII
-CH2-CH2-O-(CH2-CH2O-)x-(CH2-CH(RI)O-)y-RII
-CH2-CH2-CH2-O-CH2-CH(OH)-CH2OH,
-CH2-CH2-(O)x'-CH2-RIV、-CH2-RIV、または
-CH2-CH2-CH2-O-CH2-C(CH2OH)2-CH2-CH3
であり、
ここで、
x=0から100、好ましくは>0、特に1から50であり、
x’=0または1であり、
y=0から100、好ましくは>0、特に1から50であり、
x+yは、好ましくは、1から50、より好ましくは1を超え、特に2から20であり、 RII=お互いに独立して、水素基、置換または非置換のC1~C4-アルキル、-C(O)NH-RI、-C(O)O-RI、-C(O)-RIIIであり、ここで、
III=置換または非置換のC1~C12-アルキル-CH2-O-RI、置換または非置換のC6~C12-アリール基、好ましくはベンジル基であり、
I=お互いに独立して、置換または非置換のC1~C12-アルキル、置換または非置換のC6~C12-アリール基、置換または非置換のC6~C30-アルカリールであり、
ならびに、
IV=C1~C50-アルキル、環状C3~C50-アルキル、
好ましくはC9~C45-アルキル、環状C9~C45-、
好ましくはC13~C37-アルキル、環状C13~C37-アルキルであり、
3=お互いに独立して、下記の式(II)の同一または異なる基であり:
【0018】
【化2】
【0019】
この場合、
4=当該シロキサンに結合した任意の所望の二価の有機基、
好ましくは置換または非置換のC1~C30-アルキレン(これらは、ヘテロ原子で割り込まれていてもよく、窒素で割り込まれている場合、当該窒素は、四級であり得る)、環状C3~C30-アルキレン、置換または非置換のC1~C30-アルキレンオキシ、置換または非置換のC6~C30-アリーレン、置換または非置換のC6~C30-アリーレンオキシ、置換または非置換のC1~C12-アルケン-C6~C12-アリーレン(これらは、ヘテロ原子で割り込まれていてもよく、窒素で割り込まれている場合、当該窒素は、四級であり得、ならびに対イオンとして、サルフェート、クロリド、およびカルボキシレート、特に、シトレート、ラクテート、ステアレート、およびアセテートを有し得る)であり、
5=水素、置換または非置換のC1~C30-アルキル、1つおよび/または複数の三重結合を有する置換または非置換のC1~C30-アルキル、1つおよび/または複数の二重結合を有する置換または非置換のC1~C30-アルキル、置換または非置換のC6~C30-アリール、置換または非置換のC6~C30-ヘテロアリール、置換または非置換のC1~C12-アルキル-C6~C12-アリール、置換または非置換のC1~C30-アルキルオキシ、置換または非置換の環状C3~C30-アルキル、 好ましくは、メチル、ビニルおよび/または1-メチルビニルである]による(メタ)アクリレート含有(ポリ)シロキサンを提供することを可能にする。
【0020】
本発明に従って製造される、式(I)の当該ポリマーにおいて、a3=2およびb3=0の場合が有利であり得る。
【0021】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、式(I)における添え字は、以下のように定義される:a1=2、a2=0、a3=0、b1=10-500、b2=0、b3=3~25、c=0、およびd=0。
【0022】
式(I)の特に好ましい本発明のポリマーは、直鎖状ポリシロキサン(cおよびd=0)、好ましくは、末端(メタ)アクリロイル置換基を有するものである。それらは、添え字a1=0、a2=0、a3=2、b1=10-500、b2=0、b3=0、c=0、およびd=0を有する式(I)に対応する。
【0023】
特に好ましい本発明のポリマーは、a3=0、b3=2~10、cおよびd=0、R4=プロピルオキシ基、R5=ビニル基である式(I)のポリマーである。
【0024】
式(I)において示されるシロキサン鎖の様々な断片は、統計的分布またはブロック状配置を形成し得る。統計的分布は、任意の数のブロックおよび任意の配列によるブロック状構成を有し得るかまたはランダム分布となり得、それらは、さらに、交互構成を有し得るかまたは鎖に沿って勾配を形成してもよく、特に、それらは、それらの任意のハイブリッドを形成することができる。式(I)および(IV)において使用される添え字は、言及された統計的分布の数平均と見なされる。
【0025】
分子/分子の断片が、1つまたは複数の立体中心を有するか、または対称性により異性体と区別することができるか、または他の効果、例えば、束縛回転など、により異性体と区別することができる場合にはいつでも、全ての可能な異性体は、本発明に含まれる。
【0026】
異性体は、当業者に既知である。本発明に関連して、天然の物質、例えば、ラクテートなど、について言及される場合、これは、概して、全ての異性体を意味するとして理解されるべきであり、好ましいのは、それぞれの天然に存在する異性体であり、したがって、この場合は、L-ラクテートである。
【0027】
天然生成物の定義に関して、例えば、2011年のオンライン版:http://dnp.chemnetbase.com/の「Dictionary of Natural Products」,Chapman and Hall/CRC Press,Taylor and Francis Groupの範囲を参照する。
【0028】
言葉の断片「ポリ」は、本発明との関連において、分子中に1つまたは複数のモノマーによる3つ以上の繰り返しユニットを有する化合物だけでなく、特に、分子量分布を有し、この分布の平均分子量が少なくとも200g/molである、化合物の組成物も包含される。この定義は、たとえ、そのような化合物が、OECDまたはREACHガイドラインによるポリマーの定義に従わないように見えても、そのような化合物をポリマーと呼ぶことは、関心対象の産業の分野において通例であるという事実を考慮している。
【0029】
本明細書において列挙される添え字の数字および示された添え字の値の範囲は、実際に存在する構造および/またはそれらの混合物における可能な統計的分布に対する平均値として理解することができる。それらは、例えば、式(I)および式(IV)の場合のように、実際に、そのようなものとして正確に再現される構造式に対しても成立する。
【0030】
本発明によるプロセスは、特に1種のエポキシ含有ポリマー、好ましくはポリシロキサンが、特にアクリル酸および/またはメタクリル酸および/または他のモノカルボン酸を含む、好ましくは重合可能な二重結合を有さない、1種または複数種のカルボン酸によって転化されるプロセスを提供する。
【0031】
特に好適なポリエポキシド化合物は、ビスフェノールAまたはビスフェノールFタイプのポリグリシジル化合物およびそれらのペル水素化誘導体、あるいは多官能性アルコール、例えば、ブタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、トリメチロールプロパン、またはペンタエリトリトールなど、のグリシジルエーテルである。
【0032】
同様に、例えば、ある割合のグリシジルメタクリレートを使用して、ビニルモノマー、例えば、単官能性アクリレート、メタクリレート、またはスチレンなど、のエポキシ官能性ポリマーを用いることも可能である。
【0033】
しかしながら、とりわけ好適なのは、エポキシシロキサンであり、とりわけ、独国特許第3820294号に記載されているものであり、なお、当該特許は参照により本明細書に組み入れられる。
【0034】
好適なカルボン酸は、単官能性、さらには二官能性またはより多官能性のカルボン酸である。想到されるモノカルボン酸としては、飽和、好ましくは不飽和のカルボン酸、例えば、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸、2-エチルヘキサン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、天然および合成脂肪酸、特に、アクリル酸、メタクリル酸、二量化アクリル酸、またはクロトン酸が挙げられる。好適なジカルボン酸は、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、および水素化された二量化脂肪酸である。特に好ましいモノカルボン酸の1つは、酢酸である。
【0035】
本発明の好ましい実施形態との関連において、本発明によるプロセスは、少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステル基を有する、(メタ)アクリレート含有ポリマー、特に(メタ)アクリレート含有ポリシロキサン、を製造することを目的とし、ならびに、エポキシ基または複数のエポキシ基、好ましくは複数のエポキシ基、を有する少なくとも1種のポリシロキサンが、1種または複数種のカルボン酸によって転化されるという特定の特徴を有する。この転化は、好ましくは、付加反応として為される。
【0036】
好ましい実施形態との関連において、本発明によるプロセスにおけるエポキシ基とカルボン酸との比は、1:0.5~2、好ましくは1:0.6~1.8、特に好ましくは1:0.8~1.5である。
【0037】
好ましい実施形態との関連において、本発明によるプロセスは、10℃から200℃、好ましくは40℃から150℃、好ましくは80℃から140℃の温度において実施され得る。
【0038】
好ましい実施形態との関連において、本発明によるプロセスは、0.5barから20barの圧力、好ましくは1barから5barの圧力、特に好ましくは大気圧において実施され得る。
【0039】
本発明によるプロセスは、溶媒の存在下または不在下において実施され得る。想到される溶媒としては、とりわけ、プロパノール、ブタノール、グリコール、変性グリコール、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレンおよびキシレンの異性体が挙げられる。
【0040】
好ましい実施形態との関連において、本発明によるプロセスは、少量の溶媒しか必要としないという特徴を有する。当該反応混合物全体に対して、<20重量%、好ましくは<10重量%、とりわけ好ましくは<5重量%の溶媒を用いることが可能である。当該プロセスは、特に、溶媒の不在下においても実施することができる。
【0041】
時期尚早な重合を避けるために、任意選択により、それ自体が既知の重合抑制剤、例えば、ヒドロキノン、tert-ブチルカテコール、ジ-tert-ブチルクレゾールなど、を有効量において、開環付加の際に加えてもよい。
【0042】
本発明による転化は、日光の下でまたは光を除外した状態で、好ましくは日光の下で実施され得る。
【0043】
本発明による転化は、不活性条件下(窒素、アルゴン)においてまたは酸素および/または大気中において、好ましくは大気中において実施され得る。酸素枯渇雰囲気下、例えば、<10体積%の酸素を含む窒素雰囲気下、での転化が好ましい。
【0044】
本発明によるプロセスは、さらに、(A)と(B)とによる転化生成物(C)の存在下において実施され、この場合、(A)は金属塩であり、(B)は第一級アミンである。
【0045】
用語「転化生成物(C)」は、物質の転化を引き起こす(A)と(B)との間の相互作用の結果を包含する。転化生成物(C)は、in situにおいて形成されてもよく、すなわち、ポリマー材料(P)を製造するための当該プロセスは、(A)および(B)の存在下において実施され、この場合、これらは、相互作用することができ、結果として転化生成物を形成することができる。
【0046】
好ましい実施形態との関連において、当該転化生成物(C)は、0.001%から5%、好ましくは0.01%から1%、特に好ましくは0.01%から0.5%の量において用いられる。
【0047】
有利に使用することができる金属塩は、3族から12族の遷移族、特に6族の遷移族の、二価または三価の正電荷を有する金属の塩、特に、クロムの塩、例えば、臭化クロム(III)、塩化クロム(II)、塩化クロム(III)、フッ化クロム(III)、硝酸クロム(III)、過塩素酸クロム(III)、リン酸クロム(III)、硫酸クロム(III)、塩化クロミル、酸化クロム、シュウ酸カリウムクロム(III)、酢酸クロム(III)である。さらに好ましい実施形態に従って、好ましくは、当該金属は、クロム(III)塩、特に酢酸クロム(III)を含む。これらのクロム塩は、水和形態および/または水不含であり得る。
【0048】
(B)は第一級アミンである。用いることができる第一級アミンは、(好ましくは直鎖状の)飽和または(好ましくは直鎖状の)不飽和脂肪族アルコールとアクリロニトリルへの付加、ならびに後続の水素化から得ることができる、第一級モノアミンまたはポリアミン、例えば、置換または非置換のC1~C30-アルキルアミン、1つおよび/または複数の三重結合を有する置換または非置換のC1~C30-アルキルアミン、1つおよび/または複数の二重結合を有する置換または非置換のC1~C30-アルキルアミン、置換または非置換のC6~C30-アリールアミン、置換または非置換のC6~C30-ヘテロアリールアミン、置換または非置換のC1~C12-アルキル-C6~C12-アリールアミン、置換または非置換のC1~C30-アルキルオキシアミン、置換または非置換の環状C3~C30-アルキルアミン、好ましくは脂肪族アミンおよび脂肪族アルコールアミン、とりわけ好ましくは第一級脂肪族アルコールアミンなど、である。
【0049】
用語「脂肪族アミン」は、当業者に既知である。脂肪族アミンは、≧8個の炭素原子、例えば、8~24個の炭素原子を有する少なくとも1つの炭素鎖を有するそれぞれの脂肪酸に由来する長鎖アミンである。脂肪族アミンの名前は、例えば、ココアミン(ココナッツの脂肪族アミン)、獣脂アミン(獣脂脂肪族アミン)など、多くの場合、用いられた脂肪族に由来する。
【0050】
(A)と(B)とによる転化生成物(C)の本発明の製造は、有利には、1:5、好ましくは1:4、とりわけ好ましくは1:3の(A)と(B)のモル比において実施される。
【0051】
転化生成物(C)を製造するための本発明による転化は、10℃から200℃、好ましくは20℃から150℃、好ましくは25℃から100℃の温度において実施され得る。
【0052】
転化生成物(C)を製造するための本発明による転化は、好ましくは、0.5barから20bar、好ましくは1barから5barの圧力、とりわけ好ましくは大気圧において実施され得る。
【0053】
転化生成物(C)を製造するための本発明による転化は、好ましくは、pH2から12、好ましくはpH4から10、特に好ましくはpH5から8において実施され得る。
【0054】
転化生成物(C)を製造するための本発明による転化は、溶媒の存在下または不在下において実施され得る。当該転化は、好ましくは、極性およびプロトン性溶媒、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリコール、変性グリコールなど、の存在下において実施される。
【0055】
転化生成物(C)を製造するための本発明による転化は、日光の下においてまたは光を除外した状態で、好ましくは日光の下において実施され得る。
【0056】
転化生成物(C)を製造するための本発明による転化は、不活性条件下(窒素、アルゴン)においてあるいは酸素および/または大気中において、好ましくは大気中において実施され得る。
【0057】
当該転化生成物(C)の製造におけるさらなる部分工程として、当該転化生成物の後続の蒸留/精製は、有利であり得る。当該蒸留/精製は、例えば、ローテーショナルエバポレーターを用いて、好ましくは20℃から250℃、好ましくは40℃から180℃、特に好ましくは50℃から150℃の温度において実施され得る。ここで、当該圧力は、好ましくは0barから0.02bar、好ましくは0bar超から0.1bar、特に好ましくは0.000001barから0.001barである。当該蒸留/後処理は、特に、溶媒の除去にとって有利であり得る。
【0058】
(A)および(B)により得られた転化生成物(C)は、直接使用され得るか、または後処理され得る。当該後処理は、例えば、抽出と、その後の、任意選択によりろ過助剤を使用した、ろ過によって実施され得る。抽出にとって好適な、本発明によるプロセスの溶媒は、水または有機溶媒またはそれらの単相もしくは多相混合物である。好適な有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルメチルケトン、キシレン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、ヘキサン、石油エーテル、ジエチルエーテル、ポリエーテル、またはイオン性液体が挙げられる。
【0059】
ポリマー材料(P)を製造するための本発明によるプロセスは、好ましくは、それが2つの工程、すなわち、1.当該第一級アミンを金属塩によって転化させることにより、転化生成物(C)を得る工程、および2.当該転化生成物(C)の存在下においてカルボキシ-エステル含有ポリマーを生成する工程、を含むように実施される。これは、本発明の好ましい実施形態に相当する。
【0060】
本発明の前述の好ましい実施形態のプロセス工程である、1.当該第一級アミンを金属塩によって転化させる工程、および2.カルボキシ-エステル含有ポリマーを生成する工程、は、ワンポット反応として、または別々に実施される逐次工程として、または計量供給制御下において、好ましくはワンポット反応として、本発明によるプロセスにおいて実施され得る。当該反応は、バッチプロセスにおいて、半バッチプロセスにおいて、または連続プロセスにおいて実施され得る。特に好ましいのは、ワンポット反応である。ここで、当該転化生成物Cは、「in situ」において生成され、次いで、当該ポリマーを製造するために直接提供される。これに関して、「in situ」は、同じ反応容器においての、出発化合物の生成および即座のそれらのさらなる使用を意味するとして理解されるべきである。
【0061】
特に、本発明に従って得ることができ、少なくとも1つのカルボン酸エステル基を有する、当該カルボキシ-エステル含有ポリマーは、例えば、本発明による調製物を製造するために使用することができる。本発明による組成物は、少なくとも1つのカルボン酸エステル基を有する本発明のカルボキシ-エステル含有ポリマーを含むという特徴を有する。本発明による当該組成物には、さらなる添加物質、例えば、乾燥剤、流動調整剤、着色剤および/または着色顔料、湿潤剤、結合剤、反応性希釈剤、界面活性剤、熱的に活性化可能な開始剤、光開始剤、触媒、皮膚軟化剤、乳化剤、酸化防止剤、ヒドロトロープ(またはポリオール)、固体材料および充填材料、真珠光沢添加剤、防虫剤、防汚剤、核形成剤、防腐剤、蛍光増白剤、難燃化剤、帯電防止剤、発泡剤、可塑剤/軟化剤、香料、有効成分、ケア用添加剤、過脂肪剤、溶媒、および/または粘度調整剤などを含ませることができる。好ましい添加剤は、着色剤および/または着色顔料である。
【0062】
本発明はさらに、上記において説明したプロセスによって製造された、ポリマー、好ましくは硬化性ポリマー、特に硬化性(メタ)アクリレート含有ポリシロキサンを提供する。特に、本発明によるポリマーにも有利に適用可能な、前述の好ましい実施形態について言及する。本発明に従って、当該硬化性ポリマーが、放射線硬化性ポリマー、特にUV硬化性ポリマーである場合が好ましい。UV硬化性とは、UV放射線の作用により、反応性材料が低分子量状態から高分子量状態へと転化させることを意味する。
【0063】
本発明はさらに、クロム塩、好ましくはクロム(III)塩、特に酢酸クロム(III)と、脂肪族アミンとによる転化によって形成された転化生成物も提供する。特に、前述の好ましい実施形態について言及する。
【0064】
本発明はさらに、ポリマー、好ましくは硬化性ポリマー、特に硬化性(メタ)アクリレート含有シロキサンの製造における、有利には上記において説明したポリマーの製造における、触媒としての前述の転化生成物の使用も提供する。特に、前述の好ましい実施形態について言及する。
【0065】
本発明はさらに、特に上記において説明したように製造可能な、本発明によるポリマー、好ましくは硬化性ポリマー、特に硬化性(メタ)アクリレート含有ポリシロキサンの、剥離コーティング剤単独としての、または、さらなる添加剤、例えば、好ましくは、硬化開始剤、充填剤、顔料、他のシロキサンおよび/またはアクリレート系および/またはさらなる添加物質との混和物において、特にさらなるアクリレート化シリコーンとの混和物においての使用、を提供する。
【0066】
本発明はさらに、本発明による硬化性ポリマー、特に、上記において説明されるような、または上記において説明されるように製造可能な、硬化性(メタ)アクリレート含有ポリシロキサン、の適用によってシート状担持体をコーティングするプロセスを提供する。
【0067】
本発明はさらに、シート状担持体のための放射線硬化性接着コーティング剤としての、本発明による(メタ)アクリレート含有ポリシロキサンの使用を提供する。本発明による生成物は、そのまま直接使用してもよい。UV硬化性の場合のみ、フリーラジカル開始剤を当該(メタ)アクリレート含有ポリシロキサンに加える必要がある。添加は、例えば、シロキサンに対して2重量%から5重量%の量において実施される。
【0068】
当該フリーラジカル開始剤は、硬化に使用される放射線源の波長スペクトルに基づいて選択されるべきである。そのようなフリーラジカル開始剤は既知である。そのようなフリーラジカル開始剤の例としては、ベンゾフェノンおよびオキシムまたはそのベンゾインエーテルが挙げられる。
【0069】
このようにして得られたコーティング材料は、さらなる製造物の添加によって、それ自体公知の方法において修飾することができる。そのような既知の修飾剤は、その硬化の際に当該コーティング材料中に化学的に組み入れられるような基を有するシロキサンである。特に好適な修飾剤は、ケイ素原子に結合した水素原子を有するシロキサンである。これらは、とりわけ、当該コーティング材料の粘度低下を生じさせることができ、したがって、シート状担持体上への被覆性を向上させることができる。
【0070】
さらに、硬化の際に不活性物質として当該コーティング材料によって包み込まれるさらなる添加剤を当該コーティング剤に添加することも可能である。当該コーティング材料中に分散されるそのような物質の例としては、微粉砕されたシリカまたはフルオロカーボンのポリマーが挙げられる。
【0071】
本発明はさらに、
(i)特に、上記において説明したように製造可能な、本発明によるポリマー、好ましくは硬化性ポリマー、特に硬化性(メタ)アクリレート含有ポリシロキサンと、
(ii)添加剤であって、光開始剤、光増感剤、充填剤、顔料、溶媒、UV光で重合するリン含有化合物、安定化剤、例えば、ホスフィットまたはヒンダードアミン光安定化剤(HALS)など、ミスティング防止剤、およびアミン相乗剤から選択される、添加剤と、を、特にさらなるアクリル化シリコーンとの混和物において含む、放射線硬化性コーティング材料を提供する。
【0072】
例示的実施形態
基本的方法および材料
NMR:
NMRスペクトルの取得および解釈は、当業者に既知である(「NMR Spectra of Polymers and Polymer Additives」,A.Brandolini and D.Hills,2000,Marcel Dekker.Inc.)。
【0073】
当該スペクトルは、室温において、Bruker Spectrospin分光計によって取得し、プロトンスペクトルの取得の際の測定周波数は400MHzであった。
【0074】
粘度:
粘度は、DIN 5391に従って、Brookfield Synchro-Lectric(タイプLVT)回転式粘度計およびスピンドルLV2により特定した。
【0075】
材料:
Adogen(登録商標) 163Dは、一次蒸留ラウリルアミンであり、Arosurf(登録商標) MG98は、第一級オクチルとデシルエーテルアミンとの混合物である。TEGO(登録商標) RC711は、変性シリコーンアクリレートである。全てが、Evonik Industries AGの製品である。また、下記の合成例1~合成例7および比較例1~比較例2に記載の「エポキシシラン」は「エポキシ含有ポリシロキサン」である。
【0076】
合成例1
機械的撹拌機、温度計、およびガス導入口を嵌合した加熱可能なガラスフラスコにおいて、227.7gのエポキシシラン(Evonik Industries AG、エポキシ含有量:1.37%)、0.05gのメチルヒドロキノン、0.05gのパラ-メトキシフェノール、0.06gの酢酸クロム(III)水溶液(水において50%)、0.18gのArosurf MG 98を混和し、当該混合物を80℃で25分間撹拌した。続いて、15.2gのアクリル酸(Aldrich)を0.8gの酢酸(Baker)と一緒に加え、当該混合物を、撹拌およびガス導入しながら120℃に加熱した。次いで、酸価、したがって転化率を、採取した試料によって特定した。4時間の反応時間および>9%の転化率において、当該バッチを冷却し、ろ過し、120℃で蒸留した。1H-NMRスペクトルおよび29Si-NMRスペクトルにより、対応するカルボン酸エステルへの当該エポキシ基の実質的に完全な転化が明らかとなった;粘度:733mPa・s。
【0077】
合成例2
機械的撹拌機、温度計、およびガス導入口を嵌合した加熱可能なガラスフラスコにおいて、227.7gのエポキシシラン(Evonik Industries AG、エポキシ含有量:1.37%)、0.05gのメチルヒドロキノン、0.05gのパラ-メトキシフェノール、0.06gの酢酸クロム(III)水溶液(水において50%)、0.18gのAdogen 163Dを混合し、80℃で25分間撹拌した。続いて、15.2gのアクリル酸(Aldrich)を0.8gの酢酸(Baker)と一緒に加え、当該混合物を、撹拌およびガス導入しながら120℃に加熱した。次いで、酸価、したがって転化率を、採取した試料によって特定した。4時間の反応時間および>99%の転化率において、当該バッチを冷却し、ろ過し、120℃で蒸留した。1H-NMRスペクトルおよび29Si-NMRスペクトルにより、対応するカルボン酸エステルへの当該エポキシ基の実質的に完全な転化が明らかとなった;粘度:784mPa・s。
【0078】
合成例3
機械的撹拌機、温度計、およびガス導入口を嵌合した加熱可能なガラスフラスコにおいて、235gのエポキシシラン(Evonik Industries AG、エポキシ含有量:1.43%)、0.03gのメチルヒドロキノン、0.03gのパラ-メトキシフェノール、0.06gの酢酸クロム(III)水溶液(水において50%)、0.15gのAdogen 163Dを混合し、80℃で25分間撹拌した。続いて、17.4gのアクリル酸(Aldrich)を加え、当該混合物を、撹拌およびガス導入しながら115℃に加熱した。次いで、酸価、したがって転化率を、採取した試料によって特定した。3時間の反応時間および>99%の転化率において、当該バッチを冷却し、ろ過し、120℃で蒸留した。1H-NMRスペクトルおよび29Si-NMRスペクトルにより、対応するカルボン酸エステルへの当該エポキシ基の実質的に完全な転化が明らかとなった;粘度:100mPa・s。
【0079】
合成例4
機械的撹拌機、温度計、およびガス導入口を嵌合した加熱可能なガラスフラスコにおいて、295.6gのエポキシシラン(Evonik Industries AG、エポキシ含有量:0.92%)、0.03gのメチルヒドロキノン、0.03gのパラ-メトキシフェノール、0.08gの酢酸クロム(III)水溶液(水において50%)、0.19gのAdogen 163Dを混合し、80℃で25分間撹拌した。続いて、14.1gのアクリル酸(Aldrich)を加え、当該混合物を、撹拌およびガス導入しながら115℃に加熱した。次いで、酸価、したがって転化率を、採取した試料によって特定した。4時間の反応時間および>99%の転化率において、当該バッチを冷却し、ろ過し、120℃で蒸留した。1H-NMRスペクトルおよび29Si-NMRスペクトルにより、対応するカルボン酸エステルへの当該エポキシ基の実質的に完全な転化が明らかとなった;粘度:122mPa・s。
【0080】
合成例5
機械的撹拌機、温度計、およびガス導入口を嵌合した加熱可能なガラスフラスコにおいて、295.6gのエポキシシラン(Evonik Industries AG、エポキシ含有量:0.92%)、0.03gのメチルヒドロキノン、0.03gのパラ-メトキシフェノール、0.08gの酢酸クロム(III)水溶液(水において50%)、0.23gのAROSURF MG 98を混合し、80℃で25分間撹拌した。続いて、14.1gのアクリル酸(Aldrich)を加え、当該混合物を、撹拌およびガス導入しながら115℃に加熱した。次いで、酸価、したがって転化率を、採取した試料によって特定した。6時間の反応時間および>99%の転化率において、当該バッチを冷却し、ろ過し、120℃で蒸留した。1H-NMRスペクトルおよび29Si-NMRスペクトルにより、対応するカルボン酸エステルへの当該エポキシ基の実質的に完全な転化が明らかとなった;粘度:122mPa・s。
【0081】
合成例6
機械的撹拌機、温度計、およびガス導入口を嵌合した加熱可能なガラスフラスコにおいて、235gのエポキシシラン(Evonik Industries AG、エポキシ含有量:1.43%)、0.03gのメチルヒドロキノン、0.03gのパラ-メトキシフェノール、0.06gの塩化クロム(II)(Aldrich)、0.16gのAdogen 163Dを混合し、80℃で25分間撹拌した。続いて、17.4gのアクリル酸(Aldrich)を加え、当該混合物を、撹拌およびガス導入しながら115℃に加熱した。次いで、酸価、したがって転化率を、採取した試料によって特定した。6時間の反応時間および>99%の転化率において、当該バッチを冷却し、ろ過し、120℃で蒸留した。1H-NMRスペクトルおよび29Si-NMRスペクトルにより、対応するカルボン酸エステルへの当該エポキシ基の実質的に完全な転化が明らかとなった;粘度:108mPa・s。
【0082】
合成例7
機械的撹拌機、温度計、およびガス導入口を嵌合した加熱可能なガラスフラスコにおいて、235gのエポキシシラン(Evonik Industries AG、エポキシ含有量:1.43%)、0.03gのメチルヒドロキノン、0.03gのパラ-メトキシフェノール、0.06gの固体酢酸ルテニウム(III)(Strem)、0.16gのAROSURF(登録商標) MG98を混合し、80℃で25分間撹拌した。続いて、17.4gのアクリル酸(Aldrich)を加え、当該混合物を、撹拌およびガス導入しながら115℃に加熱した。次いで、酸価、したがって転化率を、採取した試料によって特定した。12時間の反応時間および>99%の転化率において、当該バッチを冷却し、過し、120℃で蒸留した。1H-NMRスペクトルおよび29Si-NMRスペクトルにより、対応するカルボン酸エステルへの当該エポキシ基の実質的に完全な転化が明らかとなった;粘度:101mPa・s。
【0083】
比較例1:
機械的撹拌機、温度計、およびガス導入口を嵌合した加熱可能なガラスフラスコに、最初に、合成例1からの227.7gのエポキシシラン、0.02gのメチルヒドロキノン、.02gのパラ-メトキシフェノール、0.49gの酢酸クロム(III)水溶液(水において50%)、最後に15.2gのアクリル酸(Aldrich)を、0.8gの酢酸(Baker)と一緒に装入し、撹拌およびガス導入(空気)しながら、120℃に加熱した。次いで、酸価、したがって転化率を、採取した試料によって特定した。16時間の反応時間の後、当該バッチを転化率93%において中止し、冷却し、ろ過し、120℃で蒸留した。1H-NMRスペクトルおよび29Si-NMRスペクトルにより、対応するカルボン酸エステルへの当該エポキシ基の91%の転化率が明らかとなった;粘度:1026mPa・s。
【0084】
比較例2:
機械的撹拌機、温度計、およびガス導入口を嵌合した加熱可能なガラスフラスコに、最初に、合成例1からの227.7gのエポキシシラン、0.05gのメチルヒドロキノン、0.05gのパラ-メトキシフェノール、0.15gのAdogen 163D、最後に15.2gのアクリル酸(Aldrich)を、0.8gの酢酸(Baker)と一緒に装入し、撹拌およびガス導入しながら、120℃に加熱した。次いで、酸価、したがって転化率を、採取した試料によって特定した。12時間の反応時間の後、当該バッチを転化率67%で中止し、冷却し、ろ過し、120℃で蒸留した。1H-NMRスペクトルおよび29Si-NMRスペクトルにより、対応するカルボン酸エステルへの当該エポキシ基の55%の転化率が明らかとなった;粘度:3390mPa・s。
【0085】
性能試験:
合成例1から5および比較例1および2の剥離コーティング剤としての性能試験を実施した。剥離コーティング剤、好ましくは、接着テープまたはラベルラミネートでの使用のための、シート状担持体上の接着コーティングは、先行技術において公知である。
【0086】
当該剥離コーティング剤は、68gの合成例1から5および比較例1および2のそれぞれを、Evonik Industries AG製の30gのTEGO(登録商標) RC711および2gの光開始剤TEGO(登録商標) A18と混和することによって作製した。TEGO(登録商標) RC 711は、接着成分として一般的に推奨されている。当該コーティング材料を、それらの不均一性が目視で認識できなくなるまで、スパチュラにより手作業で撹拌した。
【0087】
当該コーティング材料を、シート状担持体に塗布した。全ての実施例において、上記担持体は、1kWの出力の発生器によってコロナ前処理を事前に施した、50cm幅のBOPP(配向ポリプロピレン)フィルムであった。当該コーティング材料を、COATEMA(登録商標) Coating Machinery GmbH(ドルマーゲン、ドイツ)製の5ロールコーティング装置を使用して、約1g/m2の単位面積当たりの重量において塗布し、IST(登録商標) Metz GmbH(ニュルティンゲン、ドイツ)製の中圧水銀ランプからの60W/cmのUV光の作用により、50ppm未満の残留酸素含有量の窒素雰囲気下にて100m/分の線速度において硬化させた。
【0088】
当該剥離コーティング剤に対し、こすり落とし、剥離値、および残留接着率試験を行った。
【0089】
こすり落とし: 担持体材料に対する当該硬化させたコーティングの接着性を、当該コーティングへの親指による激しい摩擦によって試験した。不十分な接着の場合、ゴム状の屑が形成される。激しい摩擦でさえ、そのような屑は生成されるものではない。当該試験は、訓練されたパネリストによって実施した。当該評価を1から3のグレードに分類し、この場合、3は不十分である。
【0090】
グレード1=非常に良好な耐スクラッチ性および基材への定着。同じ場所での直線運動およびその後の円運動によって、検出可能な屑を生じない。
【0091】
グレード2=十分な耐スクラッチ性および基材への接着性。直線運動では屑を生じない
が、同じ位置での後続の円運動では屑を形成する。
【0092】
グレード3=不十分な耐スクラッチ性および接着性。直線運動でも屑を生じる。
【0093】
剥離値: 剥離値は、貯蔵を40℃において圧力下で実施したことを除いて、FINAT Handbook 8th Edition, The Hague/ NL, 2009の試験プロトコルFTM 10に従って特定した。用いた接着テープは、TESA(登録商標) 7475およびTESA(登録商標) 7476であり、両方とも、tesa SE(ハンブルグ、ドイツ)の商標であった。剥離値は、試験した接着テープ、シリコーン、および当該シリコーンの硬化に依存した。同様の構成の十分に架橋したシリコーンと比較して、不十分な架橋のシリコーン剥離コーティング剤は、明らかに低すぎる剥離値を生じた。
【0094】
残留接着率:残留接着率は、シリコーンを接触させた試験接着テープの貯蔵を1分間実施したことおよび標準的表面が未処理のBoPP表面であることを除いて、FINAT Handbook 8th Edition, The Hague/ NL, 2009の試験プロトコルFTM 11に従って特定した。
用いた接着テープは、TESA(登録商標) 7475であり、これは、tesa SE(ハンブルグ、ドイツ)の商標であった。残留接着率は、当該シリコーンの架橋の指標である。重合されておらず、その結果として移行可能なシリコーン成分が存在する場合、残留接着率値は、そのような成分の割合の増加に伴って減少する。80%を超える値は、許容可能と見なされる。
【0095】
NMRによる合成転化率の結果(酸価により特定)、粘度、こすり落とし試験、剥離値、残留接着率を表1に報告する。
【0096】
【表1】
【0097】
酸価による転化率[%];粘度[mPa・s]、こすり落とし(符号1から3);40℃での24時間の貯蔵後の2つの接着剤による剥離値(RV)[cN/2.5cm];残留接着率(SA)[%]。
【0098】
本発明の利点は、表1から明確に分かる。したがって、非発明の比較例1および2は、合成例と比較して、粘度のかなりの増加を示している。これは、それぞれ733mPa・sおよび784mPa・sの粘度を有する合成例1および2と、1026mPa・sおよび3390mPa・sの粘度を有する付随の比較例とを参照することによって確かめることができる。不利にも増加した粘度に加えて、比較例1および2からの生成物は、反応時間のかなりの増加および不完全な転化を示し、これらは、結果として乏しい剥離値および残留接着率値を生じている。合成例1および2は、約700mPa・sから800mPa・sの粘度および約4時間から5時間後における完全な転化を示すが、類似する比較例の値は、12時間から16時間の反応時間において約1000mPa・sから3400mPa・sの粘度であり、その場合、さらに、転化も不十分であり、その結果として、乏しい剥離値および残留接着率値を生じている。こすり落とし試験の値も、比較例における不十分な転化を反映している。合成例6および7は、本発明の多用性を反映している。クロムの酢酸塩以外に、全ての一般的なクロム塩および他の金属塩を使用することができ、それにより許容可能な生成物を生じ得る。