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  • 特許-鉄道車両用歯車装置 図1
  • 特許-鉄道車両用歯車装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】鉄道車両用歯車装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/08 20060101AFI20230502BHJP
【FI】
F16H55/08 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021504622
(86)(22)【出願日】2019-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2019009421
(87)【国際公開番号】W WO2020183536
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593109182
【氏名又は名称】株式会社イワサテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】小野 寛
(72)【発明者】
【氏名】辻 勇
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-209968(JP,A)
【文献】中国実用新案第205824096(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源の出力軸に連結される小歯車と、小歯車に噛合する、車軸に連結される大歯車とを備える鉄道車両用歯車装置であって、
小歯車と大歯車は、それぞれ、歯面とピッチ円筒との交線である歯すじが、歯幅方向中央でピッチ円筒の母線に対するねじれ角度が零となる円弧状である円弧歯車で構成されるものにおいて、
小歯車の歯すじの曲率半径は、大歯車の歯すじの曲率半径より大きく、
小歯車と大歯車のうちの一方の歯車の歯面の幅方向両端部に、小歯車と大歯車のうちの他方の歯車の歯面が当たらないようにするレリービング部が設けられることを特徴とする鉄道車両用歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源の出力軸に連結される小歯車と、小歯車に噛合する、車軸に連結される大歯車とを備える鉄道車両用歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒歯車として、歯面とピッチ円筒との交線である歯すじが、歯幅方向中央でピッチ円筒の母線に対するねじれ角度が零となる円弧状である円弧歯車が知られている(例えば、特許文献1参照)。この円弧歯車は、スラストを打消し合うことができるやまば歯車の特長を生かしつつ、一体物として作製できるという利点を有している。そして、円弧歯車は、2個一対として互いの軸を平行に配置して噛合させ、一般に、燃料油、潤滑油等の粘性流体移送用の歯車ポンプに使用されている。
【0003】
円弧歯車の上記特長に注目し、鉄道車両用歯車装置が備える、互いに噛合する小歯車及び大歯車への応用が考えられる。然しながら、試作、実験したところ、鉄道車両用歯車装置が備える小歯車及び大歯車のトルク伝達は、上記歯車ポンプに使用される円弧歯車よりもピッチ円の直径が大きいことから重量が重たく、その上高速で回転するという高負荷高速回転で行われるため、大小両歯車の歯先部分に撓みが生じ、スラスト打消し性能が低下して噛合する歯面が片当りし、歯折損やピッチング等が発生するという問題が見出された。歯面の片当りの解消には歯すじにクラウニングを施すことが有効であることが知られているが、歯すじをクラウニングすると、円弧歯車の上記特長の一つであるスラスト打消し性能が低下し、スラストの抑制効果が損なわれるという別の問題を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-118023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、スラスト打消し性能を十分に確保でき、歯面の片当りを防止できる鉄道車両用歯車装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、駆動源の出力軸に連結される小歯車と、小歯車に噛合する、車軸に連結される大歯車とを備える鉄道車両用歯車装置であって、小歯車と大歯車は、それぞれ、歯面とピッチ円筒との交線である歯すじが、歯幅方向中央でピッチ円筒の母線に対するねじれ角度が零となる円弧状である円弧歯車で構成されるものにおいて、小歯車の歯すじの曲率半径は、大歯車の歯すじの曲率半径より大きく、小歯車と大歯車のうちの一方の歯車の歯面の幅方向両端部に、小歯車と大歯車のうちの他方の歯車の歯面が当たらないようにするレリービング部が設けられることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、小歯車の歯すじの曲率半径が大歯車の歯すじの曲率半径より大きく、小歯車と大歯車のうちの一方の歯車の歯面の幅方向両端部に、小歯車と大歯車のうちの他方の歯車の歯面が当たらないようにするレリービング部が設けられるため、小歯車と大歯車との噛合部における歯面同士は歯面の幅方向両端部のレリービング部を除いた部分で接触できる。これによって、小歯車と大歯車は、高負荷高速回転により歯先部分に撓みが生じても、スラスト打消し性能を十分に確保でき、歯面の片当りが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の鉄道車両用歯車装置が備える小歯車と大歯車の概要を示す斜視図。
図2図1に示す小歯車と大歯車との噛合い部の歯すじを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1及び図2を参照して、鉄道用歯車装置は、車両の台車に設置される歯車箱(図示省略)を備え、この歯車箱の内部に、図外の駆動源としての電動機の出力軸に連結される車軸1を有する小歯車2と、小歯車2に噛合する、車軸3に連結される大歯車4とを備えている。出力軸及び車軸3は、それぞれ、水平方向に配置され、車軸1,3は互いに平行である。また、歯車箱の内底部には潤滑油(図示省略)が貯油され、大歯車4の下部がその潤滑油に浸漬し、大歯車4の回転に伴って潤滑油が掻き揚げられ、掻き揚げられた潤滑油により大歯車4と小歯車2との噛合部、軸受け等の潤滑が行われるようにしている。その他、鉄道用歯車装置の部品、要素等については公知のものを利用することができるため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0010】
図2に示す如く、小歯車2と大歯車4は、それぞれ、歯面とピッチ円筒との交線である歯すじ21,41が、歯幅方向中央cでピッチ円筒の母線22,42に対するねじれ角度θ,θが零となる円弧状である円弧歯車で構成されている。また、小歯車2の歯すじ21の曲率半径rは、大歯車4の歯すじ41の曲率半径rより大きく(r>r)、大歯車4の歯面の幅方向両端部に、小歯車2の歯面が当たらないようにするレリービング部5が設けられている。
【0011】
このような小歯車2と大歯車4との噛合部では、歯面同士が歯面の幅方向両端部のレリービング部5を除いた部分で接触できる。この部分での小歯車2と大歯車4の歯面同士の接触は、電動機の停止時では歯たけ方向の線接触となり、電動機の作動時では高負荷高速回転に伴う歯先部分の撓みにより歯幅及び歯たけの両方向で接触する面接触となる。但し、この面接触によっても、小歯車2と大歯車4との噛合部の歯面同士は、接触面の最も歯幅方向中央c寄りの部分の間の領域では接触せず、クリアランス6が形成されたままとなる。このように、本実施形態では、小歯車2と大歯車4は、噛合部において歯面同士が歯面の幅方向両端部のレリービング部5を除いた部分で接触できるため、小歯車2と大歯車4は、高負荷高速回転により歯先部分に撓みが生じても、スラスト打消し性能を十分に確保でき、歯面の片当りが防止される。従って、歯面の片当りによる歯折損やピッチング等は生じない。また、小歯車2と大歯車4との噛合い率をクラウニングする場合に比べて低騒音化できるように大きくすることが可能となる。
【0012】
レリービング部5は、例えば、大歯車4の歯面において、小歯車2の歯面と接触する部分から幅方向の歯端までを切削して形成することができる。尚、レリービング部5は、大歯車4の製造時に施される浸炭焼入によっても焼きが入りやすく、脆性が他の部分に比べて高い部分に相当する部分でもある。レリービングによって、大歯車4の歯において脆性の比較的低い部分を除去できるため、レリービング部5は、小歯車2と大歯車4との噛合いに関与しない。このことは、電動機の作動時における小歯車2と大歯車4の歯折損やピッチング等の防止により有利となる。
【0013】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。小歯車2と大歯車4を除く部分については従来公知のものも含め、多種多様な構造を採用することができる。また、上記実施形態ではレリービング部5を大歯車4に設けているが、レリービング部5は小歯車2に設けてもよい。更に、小歯車2と大歯車4のピッチ円の直径、歯数、曲率半径r,rの具体的な数値等は特に限定的ではない。
【符号の説明】
【0014】
2…小歯車、21…歯すじ、22…母線、3…車軸、4…大歯車、41…歯すじ、42…母線、5…レリービング部、θ,θ…ねじれ角度、r…歯すじ21の曲率半径、r…歯すじ41の曲率半径、c…歯幅方向中央。
図1
図2