(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】強度及びめっき性に優れた低比重クラッド鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20230502BHJP
C22C 38/06 20060101ALI20230502BHJP
C22C 38/04 20060101ALI20230502BHJP
C22C 38/08 20060101ALI20230502BHJP
C22C 38/14 20060101ALI20230502BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
C22C38/00 302Z
C22C38/00 301Z
C22C38/06
C22C38/04
C22C38/08
C22C38/14
C21D9/46 Z
(21)【出願番号】P 2021505639
(86)(22)【出願日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 KR2019009268
(87)【国際公開番号】W WO2020032446
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-02-01
(31)【優先権主張番号】10-2018-0091532
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(74)【代理人】
【識別番号】100134382
【氏名又は名称】加藤 澄恵
(72)【発明者】
【氏名】ク、 ミン-ソ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、 テ-ジン
【審査官】河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-287114(JP,A)
【文献】特表2014-501852(JP,A)
【文献】特表2019-524986(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0075138(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 9/46-9/48
C21D 8/00-8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材、及び前記母材の両側面に備えられるクラッド材を含むクラッド鋼板であって、
前記母材は、重量%で、C:0.3~0.7%、Mn:2.0~9.0%、Al:4.5~8.0%、残部Fe及び不可避不純物
からなるフェライト-オーステナイト系二重(Duplex)軽量鋼板
、又は、重量%で、C:0.3~0.7%、Mn:2.0~9.0%、Al:4.5~8.0%、Si:0.03~2.0%、Ni:0.1~4.0%、N:0.04%以下(0%は除く)、P:0.03%以下、S:0.03%以下、残部Fe及び不可避不純物からなるフェライト-オーステナイト系二重(Duplex)軽量鋼板であり、
前記クラッド材は、重量%で、C:0.0005~0.2%、Mn:0.05~2.5%、残部Fe及び不可避不純物
からなるフェライト系炭素鋼
、又は、重量%で、Si:0.03~2.0%、Ti:0.005~0.05%及びNb:0.005~0.05%のうち1以上、C:0.0005~0.2%、Mn:0.05~2.5%、Al:0.01~0.1%、N:0.04%以下(0%は除く)、P:0.03%以下、S:0.03%以下、残部Fe及び不可避不純物からなるフェライト系炭素鋼であり、
前記クラッド材の片面の厚さは25μm以上であり、両面の厚さ合計は前記クラッド鋼板の厚さ合計の30%以下である、
強度及びめっき性に優れたクラッド鋼板。
【請求項2】
前記クラッド鋼板は、引張強度が780MPa以上であり、比重が7.4g/cm
3以下である、請求項1に記載の強度及びめっき性に優れたクラッド鋼板。
【請求項3】
前記軽量鋼板の組織は、フェライト基地に残留オーステナイトを面積分率で10~50%含む、請求項1に記載の強度及びめっき性に優れたクラッド鋼板。
【請求項4】
前記フェライト系炭素鋼の組織は、基地組織がフェライトであり、第2相として、炭化物、パーライト、マルテンサイト、及びベイナイトのうち1種以上を含む、請求項1に記載の強度及びめっき性に優れたクラッド鋼板。
【請求項5】
前記クラッド鋼板は、前記クラッド材の表面に形成されためっき層をさらに含む、請求項1に記載の強度及びめっき性に優れたクラッド鋼板。
【請求項6】
前記めっき層は、Zn系、Zn-Fe系、Zn-Al系、Zn-Mg系、Zn-Mg-Al系、Zn-Ni系、Al-Si系、及びAl-Si-Mg系からなる群より選択された1種である、請求項
5に記載の強度及びめっき性に優れたクラッド鋼板。
【請求項7】
重量%で、C:0.3~0.7%、Mn:2.0~9.0%、Al:4.5~8.0%、残部Fe及び不可避不純物
からなるフェライト-オーステナイト系二重(Duplex)軽量鋼板
、又は、重量%で、C:0.3~0.7%、Mn:2.0~9.0%、Al:4.5~8.0%、Si:0.03~2.0%、Ni:0.1~4.0%、N:0.04%以下(0%は除く)、P:0.03%以下、S:0.03%以下、残部Fe及び不可避不純物からなるフェライト-オーステナイト系二重(Duplex)軽量鋼板である母材を設ける段階と、
重量%で、C:0.0005~0.2%、Mn:0.05~2.5%、残部Fe及び不可避不純物
からなるフェライト系炭素鋼
、又は、重量%で、Si:0.03~2.0%、Ti:0.005~0.05%及びNb:0.005~0.05%のうち1以上、C:0.0005~0.2%、Mn:0.05~2.5%、Al:0.01~0.1%、N:0.04%以下(0%は除く)、P:0.03%以下、S:0.03%以下、残部Fe及び不可避不純物からなるフェライト系炭素鋼であるクラッド材を設ける段階と、
二つの前記クラッド材の間に前記母材を配置して積層物を得る段階と、
前記積層物の端を溶接した後、1050~1350℃の温度範囲で加熱する段階と、
前記加熱された積層物を750~1050℃の温度範囲で仕上げ圧延して熱延鋼板を得る段階と、
前記熱延鋼板を350~700℃で巻取る段階と、
前記巻取られた熱延鋼板を酸洗した後、冷間圧下率35~90%を適用して冷間圧延して冷延鋼板を得る段階と、
前記冷延鋼板を550℃以上前記クラッド材のA3+50℃以下の温度範囲で焼鈍する段階と、を含み、
前記クラッド材の片面の厚さは25μm以上であり、両面の厚さ合計は前記クラッド鋼板の厚さ合計の30%以下である、強度及びめっき性に優れたクラッド鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記焼鈍する段階後に、溶融めっき法を介してめっきしてめっき層を形成する段階をさらに含む、請求項
7に記載の強度及びめっき性に優れたクラッド鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記めっき層は、Zn系、Zn-Fe系、Zn-Al系、Zn-Mg系、Zn-Mg-Al系、Zn-Ni系、Al-Si系、及びAl-Si-Mg系からなる群より選択された1種である、請求項
8に記載の強度及びめっき性に優れたクラッド鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアやボンネットなどの外板及び内板構造部品などに用いることができる強度及びめっき性に優れた低比重クラッド鋼板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、地球温暖化を低減するための二酸化炭素の規制に伴い、自動車の軽量化が強く求められている。自動車軽量化のための一つの方法としては、P添加極低炭素鋼、焼付硬化鋼、二相組織鋼のような高強度鋼板を用いることにより部品の厚さを小さくする設計により部品の重量を減らす方法が挙げられる。しかし、鋼板の厚さが薄くなると、部品の剛性が低下するという問題が発生するため、鋼板の厚さを小さくする部品の軽量化には限界がある。
【0003】
一方、軽量素材としてアルミニウムやマグネシウムの使用を考慮することができるが、上記アルミニウムやマグネシウムには、部品の製造コストが高く、強度及び延性が低いため加工することが難しいという問題がある。
【0004】
特開2009-287114号公報には、軽元素であるアルミニウムを炭素鋼に多量に添加して鋼材の比重を下げる方法が提示されている。但し、鋼材の比重を減らすためには、重量単位で3.0~15.0%のアルミニウムを添加することが一般的である。しかし、この場合、鉄よりも酸化傾向が高いアルミニウムの多量添加により、還元条件の焼鈍雰囲気でも鋼材の表面にアルミニウム酸化膜が形成され、めっき性が低下するという問題がある。
【0005】
したがって、比重が7.4g/cm3以下と従来の鋼材に比べて比重が5%以上低く、引張強度が780MPa以上である、部品の軽量化効率に優れるとともに、めっき性に優れた自動車用鋼板の開発が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高強度及び低比重を有するとともに、めっき性に優れたクラッド鋼板及びその製造方法を提供することである。
【0007】
一方、本発明の課題は上述した内容に限定されない。本発明の課題は、本明細書の内容全般から理解されることができ、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の付加的な課題を理解するのに何ら問題がない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、母材、及び上記母材の両側面に備えられるクラッド材を含むクラッド鋼板において、上記母材は、重量%で、C:0.3~0.7%、Mn:2.0~9.0%、Al:4.5~8.0%、残部Fe及び不可避不純物を含むフェライト-オーステナイト系二重(Duplex)軽量鋼板であり、上記クラッド材は、重量%で、C:0.0005~0.2%、Mn:0.05~2.5%、残部Fe及び不可避不純物を含むフェライト系炭素鋼であることを特徴とする強度及びめっき性に優れた低比重クラッド鋼板に関する。
【0009】
本発明の他の一側面は、重量%で、C:0.3~0.7%、Mn:2.0~9.0%、Al:4.5~8.0%、残部Fe及び不可避不純物を含むフェライト-オーステナイト系二重(Duplex)軽量鋼板である母材を設ける段階と、重量%で、C:0.0005~0.2%、Mn:0.05~2.5%、残部Fe及び不可避不純物を含むフェライト系炭素鋼であるクラッド材を設ける段階と、二つの上記クラッド材の間に上記母材を配置して積層物を得る段階と、上記積層物の端を溶接した後、1050~1350℃の温度範囲で加熱する段階と、上記加熱された積層物を750~1050℃の温度範囲で仕上げ圧延して熱延鋼板を得る段階と、上記熱延鋼板を350~700℃で巻取る段階と、上記巻取られた熱延鋼板を酸洗した後、冷間圧下率35~90%を適用して冷間圧延して冷延鋼板を得る段階と、上記冷延鋼板を550℃以上上記クラッド材のA3+50℃以下の温度範囲で焼鈍する段階と、を含む高強度及び低比重を有するとともに、めっき性に優れたクラッド鋼板の製造方法に関する。
【0010】
尚、上記した課題の解決手段は、本発明の特徴をすべて列挙したものではない。本発明の様々な特徴とそれに伴う利点及び効果は、以下具体的な実施形態を参照してより詳細に理解されることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、7.4g/cm3以下の比重、780MPa以上の引張強度を有するとともに、めっき性に優れるため、自動車用鋼板に好適に適用されることができるクラッド鋼板及びその製造方法を提供することができるという効果を奏する。また、本発明によるクラッド鋼板には、冷間プレス成形を適用することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】フェライト-オーステナイト系二重(Duplex)軽量鋼板を母材(B)、フェライト系炭素鋼をクラッド材(A及びC)とするクラッド鋼板の模式図である。
【
図2】発明例1(左)及び比較例1(右)の溶融めっき亜鉛材の外観を撮影した写真である。
【
図3】発明例1の母材とクラッド材の境界部を撮影した光学顕微鏡写真である。
【
図4】発明例1の走査電子顕微鏡写真であって、めっき層を含むクラッド鋼板の元素分布状態を示す図である。
【
図5】発明例1のクラッド鋼板に対してめっき層から母材を横切るように元素分布状態を測定したことを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野における平均的な知識を有する者に本発明をさらに完全に説明するために提供されるものである。
【0014】
本発明者らは、従来の軽量鋼板において、引張強度が高く比重が低い鋼材の製造は可能であるが、多量のアルミニウム添加によって表面に酸化アルミニウムが生成され、めっき性が低下するという問題があることを認知し、これを解決するために深く研究した。
【0015】
その結果、フェライト基地に安定したオーステナイト相を含ませることで強度及び伸び率に優れ、多量のアルミニウム添加により比重が低いフェライト-オーステナイト系であり、且つアルミニウムを多量に含有する軽量鋼板を母材とし、めっき性に優れたフェライト系炭素鋼をクラッド材とする複合鋼板を製造することにより、強度及び低比重を実現することができることは言うまでもなく、めっき性に優れた自動車用鋼板を製造することが可能であることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0016】
以下、本発明の一側面による強度及びめっき性に優れた低比重クラッド鋼板について詳細に説明する。
【0017】
本発明の一側面による強度及びめっき性に優れた低比重クラッド鋼板は、母材、及び上記母材の両側面に備えられるクラッド材を含み、上記母材は、重量%で、C:0.3~0.7%、Mn:2.0~9.0%、Al:4.5~8.0%、残部Fe及び不可避不純物を含むフェライト-オーステナイト系二重(Duplex)軽量鋼板であり、上記クラッド材は、重量%で、C:0.0005~0.2%、Mn:0.05~2.5%、残部Fe及び不可避不純物を含むフェライト系炭素鋼であることを特徴とする。
【0018】
以下、本発明の母材及びクラッド材についてそれぞれ説明した後、上記母材の両側面に備えられるクラッド材を含むクラッド鋼板について説明する。
【0019】
母材(フェライト-オーステナイト系二重軽量鋼板)
以下、本発明の一側面であるクラッド鋼板の母材を構成する軽量鋼板の合金組成について詳細に説明する。各元素の含有量の単位の「%」は、特別な言及がない限り、「重量%」である。
【0020】
炭素(C):0.3~0.7%
炭素は、オーステナイト相の安定化に寄与する元素であり、その含有量が増加するほどオーステナイト相を確保するのに有利である。軽量鋼板の微細組織内に分布するオーステナイトは強度及び伸び率をともに増加させる役割を果たす。かかる炭素の含有量が0.3%未満の場合には、引張強度及び伸び率を確保することが難しいという問題がある。これに対し、その含有量が0.7%を超えると、鋼材内にセメンタイト及びカッパ炭化物が生成され、強度は増加するが、鋼の延性が著しく低下する。特に、アルミニウムが添加された鋼では、カッパ炭化物が結晶粒界に析出して脆性を起こすため、上限を0.7%とすることが好ましい。したがって、本発明において、上記炭素の含有量は0.3~0.7%であることが好ましい。
【0021】
マンガン(Mn):2.0~9.0%
マンガンは、炭素とともにオーステナイト相を安定化させる元素であり、オーステナイト相内の炭素固溶度を増加させることで、炭化物の生成を抑制する作用をする。また、マンガンは、鋼の格子定数を増加させて鋼の密度を低下させるため、鋼材の比重を下げる役割を果たす。マンガンの含有量が2.0%未満の場合には、炭化物の生成を抑制する効果を期待することが難しい。これに対し、9.0%を超えると、中心偏析によるバンド組織を形成し、延性を低下させるという問題がある。したがって、本発明において、上記マンガンの含有量は2.0~9.0%であることが好ましい。
【0022】
アルミニウム(Al):4.5~8.0%
本発明において、アルミニウムは、鋼材の比重を低減させる役割を果たす最も重要な元素である。このためには、4.5%以上添加されることが好ましい。アルミニウムは、比重の低減のために多量に添加することが好ましいが、多量に添加されると、カッパ炭化物やFeAl、Fe3Alなどの金属間化合物が増加し、鋼の延性を低下させるため、その上限を8.0%に制限することが好ましい。したがって、本発明では、上記アルミニウムの含有量を4.5~8.0%に制限することが好ましい。
【0023】
上記母材の残りの成分は鉄(Fe)である。但し、通常の製造過程では、原料や周囲の環境から意図しない不純物が不可避に混入する可能性があるため、これを排除することはできない。かかる不純物は、通常の製造過程における技術者であれば誰でも分かるものであるため、そのすべての内容を具体的に本明細書に記載しない。
【0024】
上記組成に加えて、母材を構成する軽量鋼板は、重量%で、Si:0.03~2.0%、Ni:0.1~4.0%、N:0.04%以下(0%は除く)、P:0.03%以下、及びS:0.03%以下をさらに含むことができる。
【0025】
シリコン(Si):0.03~2.0%
シリコンは、固溶強化による鋼の降伏強度及び引張強度を向上させるために添加することができる成分である。シリコンは、脱酸剤として用いられるため、通常、0.03%以上鋼中に含まれることができる。但し、シリコンの含有量が2.0%を超えると、熱間圧延時においてシリコン酸化物が表面に多量に形成されて酸洗性を低下させ、且つ電気比抵抗を増加させて溶接性が低下するという問題がある。したがって、シリコンの含有量は0.03~2.0%であることが好ましい。
【0026】
ニッケル(Ni):0.1~4.0%
ニッケルは、マンガンのようにオーステナイトの安定性を増大させ、強度及び延性を増加させる成分である。これにより、マンガンとともに添加する場合には、鋼の強度及び延性を向上させることができる。但し、多量に添加される場合には、鋼の製造原価が増大するという問題があるため、その含有量を4.0%以下にすることが好ましい。一方、0.1%未満添加される場合には、強度及び延性の増加効果が顕著ではないため、本発明において、ニッケルの含有量は0.1~4.0%に制限することが好ましい。
【0027】
窒素(N):0.04%以下(0%を除く)
窒素は、不可避に含有される不純物であって、アルミニウムと作用して微細な窒化物を析出させ、鋼の加工性を低下させる元素であるため、その含有量を可能な限り低く制御することが好ましい。理論上、窒素の含有量を可能な限り低く制御することが好ましいが、製造工程上必然的に含有せざるを得ない。したがって、上限を管理することが重要であり、本発明における上記窒素の含有量を0.04%以下に管理する。
【0028】
リン(P):0.03%以下
リンは、不可避に含有される不純物であって、偏析による鋼の加工性を低下させる主な原因となる元素であるため、その含有量を可能な限り低く制御することが好ましい。理論上、リンの含有量は0%に制限することが有利であるが、製造工程上必然的に含有せざるを得ない。したがって、上限を管理することが重要であり、本発明では、上記リンの含有量を0.03%以下に管理する。
【0029】
硫黄(S):0.03%以下
硫黄は、不可避に含有される不純物であって、粗大なマンガン硫化物(MnS)を形成してフランジクラックのような欠陥を発生させ、鋼板の穴拡げ性を大幅に低下させるため、その含有量を可能な限り低く制御することが好ましい。理論上、硫黄の含有量を0%に制限することが有利であるが、製造工程上必然的に含有せざるを得ない。したがって、上限を管理することが重要であり、本発明では、上記硫黄の含有量を0.03%以下に管理する。
【0030】
一方、本発明において、母材を構成する軽量鋼板は、上記成分系を満たすだけでなく、鋼板の微細組織として、フェライト及びオーステナイトからなる複合組織を含むことができる。上記軽量鋼板は、二相組織鋼、すなわち、二重(Duplex)鋼であってもよい。より好ましくは、フェライト基地に残留オーステナイトを面積分率で10~50%含むことができる。上記のような微細組織を確保することにより、所望する強度及び伸び率をともに確保することができる。
【0031】
クラッド材(フェライト系炭素鋼)
以下、本発明の一側面であるクラッド鋼板のクラッド材を構成するフェライト系炭素鋼の合金組成について詳細に説明する。各元素の含有量の単位は、特別な記載がない限り重量%である。
【0032】
炭素(C):0.0005~0.2%
炭素は、溶線を製造する工程において不可避に残留する元素であって、製鋼工程において脱炭工程を行っても鋼中に0.0005%以上残留する可能性がある。また、炭素は、焼鈍過程においてオーステナイトに拡散し、焼鈍後の冷却過程においてパーライト、マルテンサイト、ベイナイトをフェライト基地内に分散するようにして鋼の強度を向上させる役割を果たす。これに対し、その含有量が0.2%を超えると、鋼板の溶接性が低下するおそれがある。したがって、本発明において、上記炭素の含有量は0.0005~0.2%であることが好ましい。
【0033】
マンガン(Mn):0.05~2.5%
マンガンは、鋼中に固溶されて、鋼板の強度を向上させる元素である。かかる効果を十分に得るためには、その含有量が0.05%以上であることが好ましい。これに対し、その含有量が2.5%を超えると、鋼板の成形性を低下させるおそれがある。したがって、本発明のマンガンの含有量は0.05~2.5%であることが好ましい。
【0034】
上記クラッド材の残りの成分は鉄(Fe)である。但し、通常の製造過程では、原料や周囲の環境から意図しない不純物が不可避に混入する可能性があるため、これを排除することはできない。かかる不純物は、通常の製造過程における技術者であれば誰でも分かるものであるため、そのすべての内容を具体的に本明細書に記載しない。
【0035】
上記組成に加えて、クラッド材を構成するフェライト系炭素鋼は、重量%で、Al:0.01~0.1%、N:0.04%以下(0%は除く)、P:0.03%以下、及びS:0.03%以下をさらに含むことができる。
【0036】
アルミニウム(Al):0.01~0.1%
アルミニウムは、鉄炭化物の生成を妨げてマルテンサイトやベイナイトなどの低温変態相を確保することで、鋼の強度を向上させる役割を果たす。アルミニウムは、通常、脱酸のために添加する元素であって、その含有量を0.01%未満に制御するためには、過度な費用が発生し、その含有量が0.1%を超えると、焼鈍時に表面酸化物を生成させ、めっき性を低下させる。したがって、上記アルミニウムの含有量は0.01~0.1%であることが好ましい。
【0037】
窒素(N):0.04%以下(0%を除く)
窒素は、不可避に含有される元素であって、鋼中に残留するアルミニウムと反応して窒化アルミニウム(AlN)を生成し、生成された窒化アルミニウムは、連続鋳造時に表面亀裂を生じさせる可能性がある。したがって、その含有量を可能な限り低く制御することが好ましいが、製造工程上必然的に含有せざるを得ない。したがって、窒素は上限を管理することが重要であり、本発明において上記窒素の含有量は0.04%以下であることが好ましい。
【0038】
リン(P):0.03%以下
リンは、不可避に含有される不純物であって、偏析による鋼の加工性を低下させる主な原因となる元素であるため、その含有量を可能な限り低く制御することが好ましい。理論上、リンの含有量は0%に制限することが有利であるが、製造工程上必然的に含有せざるを得ない。したがって、上限を管理することが重要であり、本発明において上記リンの含有量は0.03%以下であることが好ましい。
【0039】
硫黄(S):0.03%以下
硫黄は、不可避に含有される不純物であって、粗大なマンガン硫化物(MnS)を形成してフランジクラックのような欠陥を発生させ、鋼板の穴拡げ性を大幅に低下させるため、その含有量を可能な限り低く制御することが好ましい。理論上、硫黄の含有量を0%に制限することが有利であるが、製造工程上必然的に含有せざるを得ない。したがって、上限を管理することが重要であり、本発明において、上記硫黄の含有量は0.03%以下であることが好ましい。
【0040】
また、上記組成に加えて、クラッド材を構成するフェライト系炭素鋼は、重量%で、Si:0.03~2.0%、Ti:0.005~0.05%、及びNb:0.005~0.05%のうち1以上をさらに含むことができる。
【0041】
シリコン(Si):0.03~2.0%
シリコンは、鋼板内に固溶されて、鋼の強度を向上させる役割を果たす。また、鉄炭化物の成長を妨げて残留オーステナイトを確保することで、鋼の伸び率を向上させる役割を果たす。シリコンは、溶鋼中に不純物として存在する元素であって、0.03%未満に制御するためには過度な費用が発生し、その含有量が2.0%を超えると、焼鈍時に表面酸化物を生成させ、めっき性を低下させる。したがって、上記シリコンの含有量は0.03~2.0%であることが好ましい。
【0042】
チタン(Ti):0.005~0.05%
チタンは、鋼材内部の窒素及び炭素と反応して炭窒化物を形成し、強度を増加させる役割を果たす。このために、チタンは0.005%以上含まれることが好ましいが、0.05%を超えると、沈殿物が過度に形成されて鋳造性を悪化させる。したがって、上記チタンの含有量は0.005~0.05%であることが好ましい。
【0043】
ニオブ(Nb):0.005~0.05%
ニオブは、チタンのような炭窒化物形成元素として鋼材内部の窒素及び炭素と反応して強度を増加させる役割を果たす。このために、ニオブは0.005%以上含まれることが好ましいが、0.05%を超えると、沈殿物が過度に形成されて鋳造性を悪化させる。したがって、上記ニオブの含有量は0.005~0.05%であることが好ましい。
【0044】
一方、本発明において、クラッド材を構成するフェライト系炭素鋼は、上記成分系を満たすだけでなく、基地組織がフェライトであり、第2相として、炭化物、パーライト、マルテンサイト、及びベイナイトのうち1種以上を含むことができる。また、
図3に示すように、本発明のクラッド鋼板のクラッド材内の母材側にはパーライトが形成されることができる。かかるクラッド材のパーライトは、母材から拡散した炭素に起因したものであり、境界部から一定の深さまで形成され、クラッド鋼板のめっき性には影響を及ぼさないことが確認された。上記のような微細組織を確保することにより、成形性及び優れためっき密着性を確保することができる。
【0045】
クラッド鋼板
本発明の一側面によるクラッド鋼板は、上述した母材、及び上記母材の両側面に備えられるクラッド材を含む。
【0046】
クラッド鋼板とは、二つ以上の金属材料の表面を冶金学的に接合して一体化させた積層型の複合材料として定義される。一般に、クラッド鋼板は、ニッケル(Ni)や銅(Cu)のような貴金属をクラッド材として用いて厳しい腐食環境などの特殊な目的の下で使用されてきた。一方、本発明では、高強度、低比重、及びめっき性にすべて優れるようにするために、上述したフェライト及びオーステナイトからなる複合組織を有し、高アルミニウムを含有する軽量鋼板を母材とし、且つ母材の両側面にフェライト系炭素鋼をクラッド材として含むクラッド鋼板を提案する。
【0047】
本発明の内部鋼材である母材は、フェライト基地に安定したオーステナイト相を含むことで強度及び伸び率に優れ、多量のアルミニウムの添加により比重が低く、フェライト-オーステナイト系であり、アルミニウムを多量に含有する軽量鋼板であることを特徴とする。しかし、添加された高い含有量のアルミニウムにより焼鈍工程において酸化アルミニウムが表面に生成され、めっき性が低下するため、外観上、自動車鋼材として用いるには不適切である。これに対し、外部鋼材であるクラッド材は、めっき性に優れたフェライト系炭素鋼で構成される。
【0048】
このように、上述した母材、及び上記母材の両側面に備えられるクラッド材を含ませることにより、強度が高く比重が低いながらも、めっき性に優れた効果を奏するようにすることができる。
【0049】
一方、本発明のクラッド鋼板における上記母材と上記クラッド材との間では、製造工程における熱間圧延及び焼鈍工程により、成分差による元素濃度の勾配が発生し、界面では元素の拡散が進行する。特に、アルミニウムは、含有量が高い母材からクラッド材に移動し、局部的にアルミニウムの含有量が高い領域がクラッド材内に生成される。すなわち、クラッド鋼板のクラッド材内に一定の厚さのアルミニウム拡散層が生成されるようになる。クラッド材の厚さが上記アルミニウム拡散層の厚さよりも薄い場合には、母材のアルミニウムがクラッド材の表面にまで拡散し、クラッド材の表面に酸化アルミニウムが形成されてめっき性を確保することができないという問題が発生する。したがって、クラッド材の片面の厚さは、アルミニウム拡散層の厚さよりも厚いことが好ましい。
【0050】
本発明では、アルミニウムの拡散距離を考慮したとき、クラッド材の厚さが25μm以上の場合にはめっき性に影響を及ぼさないことが確認された。したがって、上記クラッド材の片面の厚さは25μm以上であることが好ましい。ここで、クラッド材の片面の厚さとは、母材の一側面に備えられる1枚のクラッド材の厚さを意味し、クラッド材の両面の厚さとは、母材の両側面に備えられる2枚のクラッド材の厚さ合計を意味する。
【0051】
また、上記クラッド材の両面の厚さ合計は、上記クラッド鋼板の厚さ合計の30%以下であることができる。ここで、クラッド鋼板の厚さ合計とは、母材の厚さと上記クラッド材の両面の厚さをともに加えた厚さを意味する。クラッド材の一面にめっき層が形成される場合には、そのめっき層の厚さも含む。クラッド材の厚さが過度に厚い場合には、本発明で達成しようとする比重7.4g/cm3以下を確保することができない。比重が7.4g/cm3以下の場合には、一般の鋼材に比べて5%以上の軽量化を達成することができ、同一の重量を有する部品である場合には剛性が15%増加するという効果を奏する。母材に含有されるアルミニウムの含有量に応じて多少の差異があるものの、クラッド材の厚さがクラッド鋼板の厚さの30%以下の場合には、クラッド鋼板の比重を7.4g/cm3以下に確保することができる。
【0052】
また、上記クラッド鋼板は、引張強度が780MPa以上、伸び率が30%以上であることができる。かかる引張強度及び伸び率を確保することにより、自動車構造部材などに好適に適用されることができる。
【0053】
また、上記クラッド鋼板は、溶融めっき法を介して生成されためっき層をさらに含むことができ、上記めっき層は、Zn系、Zn-Fe系、Zn-Al系、Zn-Mg系、Zn-Mg-Al系、Zn-Ni系、Al-Si系、及びAl-Si-Mg系からなる群より選択された1種であることができる。
【0054】
以下、本発明の他の一側面である強度及びめっき性に優れた低比重クラッド鋼板の製造方法について詳細に説明する。
【0055】
本発明の他の一側面である強度及びめっき性に優れた低比重クラッド鋼板の製造方法は、上述した合金組成を満たすフェライト-オーステナイト系二重軽量鋼板である母材を設ける段階と、上述した合金組成を満たすフェライト系炭素鋼であるクラッド材を設ける段階と、二つの上記クラッド材の間に上記母材を配置して積層物を得る段階と、上記積層物の端を溶接した後、1050~1350℃の温度範囲で加熱する段階と、上記加熱された積層物を750~1050℃の温度範囲で仕上げ圧延して熱延鋼板を得る段階と、上記熱延鋼板を350~700℃で巻取る段階と、上記巻取られた熱延鋼板を酸洗した後、冷間圧下率35~90%を適用して冷間圧延して冷延鋼板を得る段階と、上記冷延鋼板を550℃以上上記クラッド材のA3+50℃以下の温度範囲で焼鈍する段階と、を含む。
【0056】
先ず、上述した合金組成を満たす母材及びクラッド材を設けた後、二つの上記クラッド材の間に上記母材を配置して積層物を得る。このとき、積層前に母材及びクラッド材の表面を洗浄することができる。
【0057】
上記母材及びクラッド材の製造方法は、一般的な製造工程を適用して生産することができるため、本発明では、特に限定されない。但し、好ましい一例として、上記母材は、電気炉又は高炉で生産された溶鋼を鋳造して製造することができ、上記クラッド材は、高炉で生産された溶鋼を精錬及び鋳造し、不可避に含有され得る不純物の含有量を制御することで製造することができる。
【0058】
次に、上記積層物の端を溶接した後、1050~1350℃の温度範囲で加熱する。積層物の端を溶接することにより、母材とクラッド材との間に酸素が侵入することを防止することができるため、加熱時における酸化物の生成を防止することができる。
【0059】
上記加熱温度が1050℃未満の場合には、熱間圧延時に仕上げ圧延温度の確保が難しく、温度の低下による圧延荷重が増加し、所定の厚さまで十分に圧延することが難しいという問題がある。これに対し、加熱温度が1350℃を超えると、結晶粒度が増加し、表面酸化が発生して強度が低下するか、又は表面が劣化する傾向があるため好ましくない。また、連鋳スラブの柱状晶粒界に液相膜が生成されるため、後続する熱間圧延時に亀裂が発生するおそれがある。したがって、上記加熱温度は1050~1350℃に制限することが好ましい。
【0060】
次に、上記加熱された積層剤を750~1050℃の温度範囲で仕上げ圧延して熱延鋼板を得る。上記仕上げ圧延温度が750℃未満の場合には、圧延荷重が高くなり、圧延機に悪影響を及ぼすという問題がある。これに対し、仕上げ圧延温度が1050℃を超えると、圧延時に表面酸化が発生するおそれがある。したがって、上記仕上げ圧延温度は750~1050℃に制限することが好ましい。
【0061】
次に、上記熱延鋼板を350~700℃で巻取る。巻取り温度が350℃未満の場合には、冷却中に低温変態相が生成されて、熱延鋼板の強度が過度に増加し、冷間圧延時に圧延負荷が増加する。これに対し、巻取り温度が700℃を超えると、熱延鋼板の表面に厚い酸化膜が生成され、酸洗過程における酸化層の制御が容易でなくなるという問題がある。したがって、上記巻取り温度は350~700℃に制限することが好ましい。
【0062】
次に、上記巻取られた熱延鋼板を酸洗した後、冷間圧下率35~90%を適用して冷間圧延して冷延鋼板を得る。上記冷間圧下率が35%未満の場合には、クラッド材を構成するフェライト系炭素鋼の再結晶が円滑に行われず、加工性が劣化するという問題がある。これに対し、冷間圧下率が90%を超えると、圧延負荷が原因となって板破断の発生可能性が高くなるという問題がある。したがって、冷間圧延段階における上記冷間圧下率は35~90%に制限することが好ましい。
【0063】
次に、上記冷延鋼板を550℃以上上記クラッド材のA3+50℃以下の温度範囲で焼鈍する。冷間圧延により形成された多数の転位は、焼鈍時における静的再結晶によって減少する。これは、鋼の加工性を確保することができるようにする。焼鈍温度が550℃未満の場合には、十分な加工性を確保することができない。これに対し、クラッド材のA3+50℃を超える温度で焼鈍する場合には、クラッド材の結晶粒度が粗大化するため、鋼の強度を低下させる可能性がある。したがって、焼鈍温度は550℃以上上記クラッド材のA3+50℃以下の温度範囲で行うことが好ましい。
【0064】
一方、上記焼鈍する段階後に、溶融めっき法を介してめっき層を形成する段階をさらに含むことができる。また、上記めっき層は、Zn系、Zn-Fe系、Zn-Al系、Zn-Mg系、Zn-Mg-Al系、Zn-Ni系、Al-Si系、及びAl-Si-Mg系からなる群より選択された1種であることができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。但し、後述する実施例は、本発明を例示してさらに具体化するためのものであって、本発明の権利範囲を制限するためのものではない点に留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項及びこれから合理的に類推される事項によって決定されるためである。
【0066】
(実施例)
下記表1に示した成分組成を有する炭素鋼及び軽量鋼板の鋼塊を設ける。次に、鋼塊の表面を洗浄した後、二つの炭素鋼の間に軽量鋼板を配置して下記表2の積層比を有するように3重積層物を製作した。その後、積層物の境界面に沿って溶接棒を用いてアーク溶接した。上記境界面が溶接された積層物を1150℃の加熱炉で1時間再加熱した後、900℃の仕上げ圧延温度で圧延して熱延鋼板を製造した。続いて、上記熱延鋼板を550℃で巻取った後、酸洗後に、50%の冷間圧下率で冷間圧延して冷延鋼板を製造した。次に、焼鈍温度を820℃にして、5%H2を含むN2雰囲気下で焼鈍して溶融亜鉛めっきを行った。
【0067】
製造されたそれぞれの試験片に対して機械的性質及びめっき性を測定し、下記表2に示した。万能引張実験機を用いて引張試験を行った後、降伏強度(YS)、引張強度(TS)、全伸び率(TEL)を測定した。ここで、降伏強度(YS)及び引張強度(TS)の単位はMPaであり、全伸び率(TEL)の単位は%である。
【0068】
比重は、鋼板を100×100mmのサイズに製作した後、常温で重量を測定し、その後、直径0.05mmのワイヤーに吊り下げ、常温の水が収容されたビーカーに浸漬させた後の重量を測定する方法で測定した。基準となる水の比重は1g/ccとした。
【0069】
めっき性は、外観を観察し、未めっきが発生しない場合を「O」、未めっきが発生するなど表面が不良の場合を「X」と表記した。
【0070】
【0071】
【0072】
上記表1及び表2から分かるように、本発明の組成及び微細組織をすべて満たす発明例1~発明例9は、780MPa以上の引張強度、7.4g/cm3以下の比重、及び優れためっき表面を確保することができることが確認できる。
【0073】
これに対し、比較例1は、クラッド材の厚さが片側15μmのレベルと母材のアルミニウムがクラッド層に拡散し、表面に酸化アルミニウムが形成されてめっき性を確保することができなかった。
【0074】
一方、比較例2は、クラッド層の厚さ比が30%以上となり、7.4g/cm3以下の比重を確保することができなかった。
【0075】
図2は、発明例1及び比較例1の溶融めっき亜鉛材の外観を撮影した写真である。発明例1は、外部鋼材を構成するクラッド材であるフェライト系炭素鋼のめっき性に優れるため、めっき性に優れたクラッド鋼板を製造することができることが確認できる。これに対し、比較例1は、外部クラッド層の片面の厚さがアルミニウム拡散層の厚さよりも薄く、クラッド鋼板の表面に酸化アルミニウムが形成されてめっき性が低下することが確認できる。
【0076】
図3は、発明例1の断面光学顕微鏡写真であって、母材とクラッド材との境界部を撮影した写真である。母材である軽量鋼板は、フェライト及びオーステナイトで構成される。クラッド材はフェライト及びパーライトで構成される。クラッド材のパーライトは、母材から拡散した炭素に起因したものであって、境界部から60μmまで生成されており、めっき性には影響を及ぼさなかった。また、母材及びクラッドはともに動的再結晶が完了し、均一な微細組織を有することが確認できる。
【0077】
図4は、発明例1の走査電子顕微鏡写真であって、めっき層を含むクラッド鋼板の元素分布状態を示す。
図4に示すように、母材とクラッド材との間に酸化物の存在は確認されず、クラッド材の表面には、亜鉛めっき層が均一に生成されたことが確認できる。
【0078】
図5は、発明例1のめっき層から母材を横切るように元素分布状態を測定したことを示すグラフである。クラッド材と母材の界面近くにマンガン及びアルミニウムがクラッド材に拡散した層が約20μmの厚さで形成されたことが確認できる。
【0079】
以上、実施例を参照して説明したが、当該技術分野における熟練した当業者は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更することができることを理解することができる。