(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】マイクログリッドを含む配電システムを制御する方法
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20230502BHJP
H02J 3/06 20060101ALI20230502BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
H02J13/00 311R
H02J13/00 301A
H02J3/06
H02J3/38 110
(21)【出願番号】P 2021549388
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2020054592
(87)【国際公開番号】W WO2020169788
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-10-19
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(73)【特許権者】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マジュンダー,リトゥック
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-152976(JP,A)
【文献】特開2013-093996(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0036340(US,A1)
【文献】国際公開第2017/211399(WO,A1)
【文献】特開2018-207776(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0005473(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H02J 3/06
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部分(1a)と第2部分(1b)とを含む配電ネットワーク(1)を制御する方法(300)であって、前記第1部分および前記第2部分(1a;1b)の各々はアセット(3~7)を含み、前記第1部分(1a)および前記第2部分(1b)は、接続点(PCC)で選択的に互いに接続されて相互接続状態になり、前記配電ネットワーク(1)は、配電ネットワークコントローラ(9)とマイクログリッドコントローラ(8)とをさらに含み、前記方法は、
前記配電ネットワーク(1)の電気的エンティティを含めて前記配電ネットワーク(1)をモニタリングするステップ(301,306)と、
前記モニタリングするステップ(301,306)に基づいて、前記配電ネットワーク(1)の前記アセット(3~7)を制御するステップ(310)とを含み、
前記制御するステップ(310)は、第1制御モード(310A)に従い、前記相互接続状態の前記配電ネットワーク(1)の前記アセット(3~7)を制御するステップ(310)をさらに含み、前記第1部分(1a)の前記アセット(3~7)は前記配電ネットワークコントローラ(9)によって制御され、前記第2部分(1b)の前記アセット(3~7)は前記マイクログリッドコントローラ(8)によって制御され、
前記方法は、
-前記第1制御モード(310A)に従い、前記相互接続状態の前記配電ネットワーク(1)の前記アセットを制御すること(310)と、
-前記第1部分(1a)の前記アセット(3~7)と前記第2部分(1b)の前記アセット(3~7)とが前記配電ネットワークコントローラ(9)によって制御される第2制御モード(310B)に従い、前記相互接続状態の前記配電ネットワーク(1)の前記アセット(3~7)を制御すること(310)との間で、
選択するステップ(303)を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記選択するステップ(303)は前記マイクログリッドコントローラ(8)によって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択するステップ(303)は、前記配電ネットワーク(1)の前記第2部分(1b)の少なくとも1つの電気的エンティティの評価(305)を、評価される各電気的エンティティのそれぞれのしきい値帯域幅に鑑みて、行うことと、いずれかの電気的エンティティが前記電気的エンティティのしきい値帯域幅に違反する場合に前記第2制御モード(310B)から前記第1制御モード(310A)に切り替えることとを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2部分(1b)の評価される前記少なくとも1つの電気的エンティティは、
-前記配電ネットワークの前記第1部分(1a)と前記配電ネットワーク(1)の前記第2部分(1b)との間の前記接続(PCC)における電圧レベル、
-前記配電ネットワークの前記第1部分(1a)と前記配電ネットワーク(1)の前記第2部分(1b)との間の無効電力潮流、
-前記配電ネットワークの前記第1部分(1a)と前記配電ネットワーク(1)の前記第2部分(1b)との間の有効電力潮流、
-前記配電ネットワーク(1)の前記第2部分(1b)におけるアセット(3~7)での電圧レベル、または
-前記配電ネットワーク(1)の前記第2部分(1b)におけるアセット(3~7)からの電流、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
-前記配電ネットワークコントローラ(9)の特定の制御機能を選択するステップ(308)と、
-前記制御機能に従い、前記第1モード(310A)で前記第1部分(1a)における前記アセット(3~7)を制御し(310)、前記第2モード(310B)で前記配電ネットワーク(1)における前記アセット(3~7)を制御する(310)ステップとを含み、
前記第1モード(310A)または前記第2モード(310B)は、前記配電ネットワークコントローラ(9)が現在使用しているのはどの特定の制御機能であるかを前記マイクログリッドコントローラ(8)に通知すること(311)をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
遮断器が前記PCCに配置され、前記配電ネットワーク(1)の前記第2部分をモニタリングすること(301)は、前記遮断器のステータスをモニタリングすること(302)を含み、前記方法は、前記遮断器が開くと第3制御モード(310C)に切り替えるステップ(304)をさらに含み、前記第3制御モード(310C)において、前記第2部分(1b)は、前記マイクログリッドコントローラ(8)によって、アイランド化されたマイクログリッドとして制御される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
配電ネットワーク(1)の一部を制御するためのマイクログリッドコントローラ(8)であって、前記配電ネットワーク(1)は、アセット(3~7)を含む第1部分(1a)と第2部分(1b)とを含み、前記第1部分(1a)および前記第2部分(1b)は、接続点(PCC)で選択的に互いに接続されて相互接続状態になり、前記配電ネットワーク(1)は配電ネットワークコントローラ(9)をさらに含み、前記マイクログリッドコントローラ(8)は、
-前記配電ネットワーク(1)の前記第2部分(1b)をモニタリングする(301)ように構成されたモニタリング機能(81)と、
-前記第2部分(1b)の前記モニタリング(301)に基づいて前記配電ネットワーク(1)の前記第2部分(1b)におけるアセット(3~7)を制御する(310)ように構成されたコントローラ(80)とを備え、前記制御(310)は、前記相互接続状態において第1制御モード(310A)に従って実行され、
前記マイクログリッドコントローラ(8)は、
-モード選択部(82)であって、
-前記第1制御モード(310A)に従い、前記相互接続状態の前記配電ネットワーク(1)の前記第2部分(1b)の前記アセット(3~7)を制御すること(310)と、
-前記第2部分(1b)の前記アセット(3~7)が前記配電ネットワークコントローラ(9)によって制御される第2制御モード(310B)に従い、前記相互接続状態の前記配電ネットワーク(1)の前記第2部分(1b)の前記アセット(3~7)を制御すること(310)との間で、
選択する(303)ように構成された、モード選択部(82)と、
-前記第2制御モード(310B)においてモニタリングされたデータを前記配電ネットワークコントローラ(9)に仲介する(313B)ように構成された、モニタリングされたデータの仲介部(83)とを備えることを特徴とする、マイクログリッドコントローラ(8)。
【請求項8】
前記配電ネットワーク(1)の前記第2部分(1b)の少なくとも1つの電気的エンティティの評価(305)を、評価される各電気的エンティティのそれぞれのしきい値帯域幅に鑑みて、行うように構成された評価部(84)をさらに備え、前記モード選択部(82)は、いずれかの電気的エンティティが前記電気的エンティティのしきい値帯域幅に違反する場合に前記第2制御モード(310B)から前記第1制御モード(310A)に切り替えるように適合されている、請求項7に記載のマイクログリッドコントローラ(8)。
【請求項9】
前記第2部分(1b)の評価される前記少なくとも1つの電気的エンティティは、
-前記配電ネットワークの前記第1部分(1a)と前記配電ネットワーク(1)の前記第2部分(1b)との間の前記接続(PCC)における電圧レベル、
-前記配電ネットワークの前記第1部分(1a)と前記配電ネットワーク(1)の前記第2部分(1b)との間の無効電力潮流、
-前記配電ネットワークの前記第1部分(1a)と前記配電ネットワーク(1)の前記第2部分(1b)との間の有効電力潮流、
-前記配電ネットワーク(1)の前記第2部分(1b)におけるアセット(3~7)での電圧レベル、または
-前記配電ネットワーク(1)の前記第2部分(1b)におけるアセット(3~7)からの電流、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載のマイクログリッドコントローラ(8)。
【請求項10】
前記モード選択部(82)は、評価された電気的エンティティが前記電気的エンティティのしきい値帯域幅に再び入ったときに、切り替えて前記第1制御モード(310A)から前記第2制御モード(310B)に戻すように適合されている、請求項8に記載のマイクログリッドコントローラ(8)。
【請求項11】
前記モニタリング機能(81)は、前記配電ネットワーク(1)の前記第1部分(1a)と前記第2部分(1b)との相互接続のために前記PCCに配置された遮断器のステータスをモニタリングする(302)ように適合され、前記モード選択部(82)は前記遮断器が開くと第3制御モード(310C)に切り替える(304)ように適合され、前記マイクログリッドコントローラ(8)は、前記第3制御モード(310C)に従い、前記第2部分(1b)をアイランド化されたマイクログリッドとして制御する(310)ように構成されている、請求項7~10のいずれか1項に記載のマイクログリッドコントローラ(8)。
【請求項12】
前記第2制御モード(310B)において、前記配電ネットワークコントローラ(9)から前記配電ネットワーク(1)の前記第2部分(1b)のアセット(3~7)に、制御設定を仲介するように構成された、制御信号の仲介部(85)をさらに備える、請求項7~11のいずれか1項に記載のマイクログリッドコントローラ(8)。
【請求項13】
前記第2制御モードにおいて、前記マイクログリッドコントローラ(8)によってモニタリングおよび評価される前記第2部分(1b)の前記アセット(3~7)のいずれかが対応するしきい値に違反する場合に、前記マイクログリッドコントローラ(8)が前記第2部分(1b)の制御を回復することをさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1部分(1a)は、送電グリッドに電気的に結合可能に構成される、請求項1~6、13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2制御モードにおいて、前記マイクログリッドコントローラ(8)は、前記第2部分(1b)の前記アセット(3~7)をモニタリングおよび評価して、前記アセット(3~7)のいずれかが対応するしきい値に違反する場合に、前記第2部分(1b)の制御を回復させる、請求項7~12のいずれか1項に記載のマイクログリッドコントローラ(8)。
【請求項16】
前記第1部分(1a)は、送電グリッドに電気的に結合可能に構成される、請求項7~12、15のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力システムに関し、特にマイクログリッドを含む配電システムの制御に関する。本発明のある局面は、マイクログリッドコントローラを提供する。
【背景技術】
【0002】
背景および先行技術
典型的な電力システムは、発電所において電気エネルギを生成する発電機を含む。電力システムはさらに、生成された電力を、電力が消費される電力システムの配電側に送るための、たとえば140kVを超える高電圧の送電線を有する送電システムを含む。送電システムは、通常高圧線を含み、電力は、1kVを超えるが100kV未満の、たとえば15kVと45kVとの間の中間電圧を使用する下流の配電システムで変圧される。したがって、配電システムは、変電所の変圧器から始まるシステムであり、中間電圧および低電圧の電力を消費する負荷に送るためのグリッドまたはネットワーク内の配電線を含み得る。
【0003】
マイクログリッドを含む配電システム
配電システムは、負荷に加えて、分散型発電機、エネルギ貯蔵部および電圧源コンバータ等の、その他のアセットを含み得る。そのため、配電システムは、発電設備を含むものの、電力の純消費を提供し得るものである。また、配電システムネットワークは、電力の生成も消費も行い単独で運転可能な部分である、マイクログリッドを含み得る。このように、配電ネットワークは、送電システムに接続された第1部分と、電気エネルギの純消費を提供し得る第2部分、たとえばマイクログリッドとを含み得る。この第2部分は送電システムからの方向において第1部分の下流に配置され、第2部分を、第1部分から切り離し、第2部分すなわちマイクログリッド内に配置された分散型発電機によって単独で運転することが可能であるが、この第2部分は(通常は)送電グリッドに接続されない。第2部分またはマイクログリッドは、いわゆるPCC(連係点(point of common coupling))に配置された遮断器によって第1部分に接続することおよび第1部分から切断することが可能である。このように、マイクログリッドは、配電ネットワークの第1部分を介して送電グリッドに接続可能である。
【0004】
配電システムおよびマイクログリッドの制御
配電グリッド内の電力の制御のために、配電管理システム(DMS:Distribution Management System)を使用する配電ネットワークコントローラのようなネットワーク制御システムまたは配電ネットワークコントローラを、配電グリッドに設けてもよい。DMSは、測定値を分析しネットワークを制御するためのソフトウェアを含み、一般的に、DMSは、配電ネットワークをモニタリングし配電ネットワークを制御する機能を提供する。DMSは、たとえばタップ変更器および直列キャパシタを制御することによって配電ネットワーク内の電圧レベルおよび無効電力をモニタリングし制御する電圧-無効電力制御(VVC:Volt-VAR control)を好適に含む。また、DMSは、配電ネットワークにおける望ましくない電気的条件の場合に配電ネットワーク内の負荷を切断するために、負荷制限アプリケーション(LSA:Load Shedding application)を好適に含む。また、DMSは、電力潮流制御および故障管理を提供してもよい。DMSは、自動化されたネットワーク制御を提供するとともに、GUI(グラフィカルユーザインターフェイス(Graphical User Interface))を用いてオペレータに対するネットワークデータを提供してもよい。
【0005】
配電ネットワークコントローラは、DMSを利用して、配電ネットワークを送電ネットワークに接続する変圧器と、配電ネットワークをマイクログリッドに接続するPCCとの間の配電ネットワークをモニタリングする、すなわち配電ネットワークの第1部分をモニタリングすることができる。配電ネットワークの第1部分のモニタリングに基づいて、配電ネットワークの第1部分のアセットが、たとえばエネルギ貯蔵部、制御可能な負荷、タップ変更変圧器、分散型発電機、および制御対象の直列キャパシタ等が、制御される。
【0006】
マイクログリッドには、通常、中央コントローラであるかまたはマイクログリッドのアセット間に分散されたコントローラである、マイクログリッドコントローラが設けられる。マイクログリッドコントローラは、通常、PCCから下流の、配電ネットワークの第2部分を、たとえば、PCCにおける電圧レベルおよび電力潮流をモニタリングし、かつ、マイクログリッドまたは第2部分内のいくつかの場所における電気的エンティティを、たとえば、マイクログリッド内の伝送線またはケーブル内、発電機、負荷、および変圧器における電圧および電流をモニタリングする。マイクログリッドがグリッド接続されたとき、およびマイクログリッドが配電グリッドの残りの部分から切断されたときすなわちマイクログリッドがアイランド化されたときに、マイクログリッドコントローラは、マイクログリッドネットワーク内の電圧レベル制御、無効電力制御、負荷制限、電力潮流制御、および有効電力バランスを、提供してもよい。
【0007】
このように、マイクログリッドを含む典型的な配電ネットワークは、一般的に、PCCから上流の配電ネットワークの第1部分内のアセットをモニタリングおよび制御するために設けられた配電ネットワークコントローラを含んでいてもよく、その一方で、マイクログリッドコントローラがPCCから下流の配電ネットワークの第2部分であるマイクログリッドをモニタリングするために設けられる。マイクログリッドコントローラは、PCCにおける、すなわちマイクログリッドと配電ネットワークの第1部分との間における電力潮流を制御するために設けられてもよい。
【0008】
マイクログリッドは、通常、自身の動作を最適化するものであって、配電システムの全体の機能を劇的に高めるものではない。US2017/016071(E1)は、マイクログリッドには配電管理システム(DMS)との相互運用性がないという課題を解決することを目的とする。E1の§0004および§0005を参照されたい。E1には、マイクログリッドは「総合的電力グリッド最適化」に寄与すべきであるという認識がある(§0025)。E1は、マイクログリッドを用いて実現すべきものの例を示しており、それは、たとえば、配電グリッドにおける無効電力に対する寄与(§0012、§0036)、電圧/無効電力制御(§0023、§0032)および「エネルギとコストの最適化」(§0024)である。
【0009】
これらの目標を達成するために、E1のマイクログリッドは、いわゆる「VPPモード」(§0030のバーチャルパワープラント(Virtual Power Plant)を指す)で動作することに適合するようにされており、このモードにおいて、マイクログリッドは、有効および無効電力を注入し電圧および周波数をサポートするために使用される(E1の§0036)。
【0010】
E1で提案されているバーチャルパワープラントの欠点として、E1の制御方式は複雑になる傾向があり、マイクログリッドは突然の地形的または電気的変動に見舞われると動作が不安定になる可能性があり、そうするとマイクログリッドの停電または断線が生じる可能性がある点が、挙げられる。加えて、マイクログリッドをバーチャルパワープラントとみなすことは単純化である、なぜなら、通常、マイクログリッドは発電所(パワープラント)よりも複雑であるからである。また、マイクログリッドは、たとえば、例として太陽光発電所または風力発電所のような再生可能エネルギ源からの変動する出力を用いる分散型発電機を含む、いくつかの分散型発電機を含み得るものであり、マイクログリッドをVPPとみなした場合、専用マイクログリッドコントローラが提供し得る従来の制御よりも遥かに最適化度が低いやり方でマイクログリッドを使用することになる可能性がある。VPPの動作は、PCCにおけるマイクログリッドの目標値を達成することによって配電グリッドをサポートすることを目的としており、このような動作は、PCCの上流の配電ネットワークに対する機能の最適化の提供に寄与することができるが、マイクログリッドには悪影響を及ぼす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
発明の概要
本発明の目的は、先行技術の欠点のない、マイクログリッド制御の代案を提供することである。この目的のために、本発明の局面は、配電ネットワークの制御を、配電ネットワークに接続されたマイクログリッド内に拡張する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の局面に従い、本発明は、配電ネットワーク内のアセットを制御する方法を提供し、この配電ネットワークは第1部分と第2部分とを含み、第1部分および第2部分は、発電機および負荷等のアセットを含む。配電ネットワークの第1部分および第2部分は、選択的に互いに接続されて相互接続状態になる。配電ネットワークはネットワークコントローラとマイクログリッドコントローラとをさらに含む。この方法は、配電ネットワークの電気的エンティティを含めて配電ネットワークをモニタリングするステップと、モニタリングに基づいて、配電ネットワークのアセットを制御するステップとを含む。制御するステップは、第1制御モードに従い、相互接続状態の配電ネットワークのアセットを制御するステップをさらに含み、第1部分のアセットは配電ネットワークコントローラによって制御され、第2部分のアセットはマイクログリッドコントローラによって制御される。
【0013】
特に、この第1の局面の方法は、第1モードに従い、相互接続状態の配電ネットワークのアセットを制御することと、第1部分のアセットと第2部分のアセットとが配電ネットワークコントローラによって制御される第2制御モードに従い、相互接続状態の配電ネットワークのアセットを制御することとの間で、選択するステップを含む。
【0014】
第2部分が配電ネットワークコントローラによって制御される第2モードを使用することは、配電ネットワークの制御におけるより高いパフォーマンスに寄与する。第1モードにおいてマイクログリッドコントローラが第2部分を制御することは、グリッド接続状態において第2部分を制御するためのフォールバックシステムを提供する。第2部分またはマイクログリッドの不適切な制御は、先行技術のシステムよりも一層簡単に回避できる。
【0015】
第1の局面のある実施形態において、上記選択するステップはマイクログリッドコントローラによって実行される。
【0016】
マイクログリッドコントローラにモードの切り替えを実行させることは、さまざまな配電ネットワーク制御システムでの実現を容易にすることに寄与する。なぜなら、マイクログリッドを配電ネットワークに追加するときに、マイクログリッドコントローラが主要な機能を提供できるからである。
【0017】
第1の局面のある実施形態において、選択するステップは、配電ネットワークの第2部分の少なくとも1つの電気的エンティティを評価することと、いずれかの電気的エンティティがこの電気的エンティティのしきい値帯域幅に違反する場合に第2モードから第1モードに切り替えることとを含む。
【0018】
さらに他の実施形態において、第2部分の評価される少なくとも1つの電気的エンティティは、
-配電ネットワークとマイクログリッドとの間の接続(PCC)における電圧レベル、
-配電ネットワークの第1部分と配電ネットワークの第2部分との間の無効電力潮流、
-配電ネットワークの第1部分と配電ネットワークの第2部分との間の有効電力潮流、
-配電ネットワークの第2部分におけるアセットでの電圧レベル、および
-配電ネットワークの第2部分におけるアセットからの電流、
のうちの少なくとも1つを含む。
【0019】
第1の局面のある実施形態は、
-配電ネットワークコントローラのいわゆるDMS機能(配電管理システム)のような特定の制御機能を選択すること、
-この制御機能に従い、第1モードで第1部分におけるアセットを制御すること、または
-この制御機能に従い、第2モードで配電ネットワーク、すなわち第1および第2部分におけるアセットを制御することとを含む。
【0020】
この実施形態において、第1モードおよび/または第2モードは、配電ネットワークコントローラが現在使用しているのはどの特定の制御機能であるかをマイクログリッドコントローラに通知することをさらに含み得る。このようにして、マイクログリッドコントローラを、第2部分の制御時に、第2部分またはマイクログリッドが配電ネットワークの第1部分をサポートし得るよう、選択されたDMS機能の実行に寄与するように、適合させることができる。たとえば、第2モードにおいて配電ネットワークコントローラが電圧制御等のDMS機能を提供すると通知された場合、第2部分は、第1モードに切り替えられた後に、PCCにおける電圧レベルをサポートし、引続きマイクログリッド内の測定値に基づいてマイクログリッドを制御することにより、DMS機能に寄与することができる。
【0021】
第1の局面のある実施形態において、遮断器がPCCに配置され、配電ネットワークの第2部分をモニタリングすることは、遮断器のステータスをモニタリングすることを含み、方法は、遮断器が開くと第3制御モードに切り替えるステップをさらに含み、第3制御モードにおいて、第2部分は、マイクログリッドコントローラによって、アイランド化されたマイクログリッドとして制御される。
【0022】
第2の局面に従い、本発明は、配電ネットワークの一部を、特にマイクログリッドを制御するためのマイクログリッドコントローラを提供する。配電ネットワークは第1部分と第2部分とを含み、第1および第2部分の各々はアセットを含み、第1部分および第2部分は、接続点(PCC)で選択的に互いに接続されて相互接続状態になる。配電ネットワークはネットワークコントローラをさらに含む。マイクログリッドコントローラは、
-配電ネットワークの第2部分をモニタリングするように構成されたモニタリング機能またはモニタリング手段と、
-第2部分のモニタリングに基づいて配電ネットワークの第2部におけるアセットを制御するように構成されたコントローラとを備え、上記制御は、相互接続状態において第1制御モードに従って実行される。
【0023】
特に、マイクログリッドコントローラは、
-第1モードに従い、相互接続状態の配電ネットワークの第2部分のアセットを制御することと、第2部分のアセットが配電ネットワークコントローラによって制御される第2制御モードに従い、相互接続状態の配電ネットワークの第2部分のアセットを制御することとの間で、選択するように構成された、モード選択部と、
-第2制御モードにおいてモニタリングされたデータを配電ネットワークコントローラに仲介するように構成された、モニタリングされたデータの仲介部とを備える。
【0024】
このように、マイクログリッドコントローラは、モニタリング機能による第2部分のモニタリングに基づいて制御モードを選択し、第2部分のモニタリング中に取り出されたデータを第2制御モードにおいて配電ネットワークコントローラに仲介するように構成されている。
【0025】
第2の局面のある実施形態において、マイクログリッドコントローラは、配電ネットワークの第2部分の少なくとも1つの電気的エンティティの評価を、評価される各電気的エンティティのそれぞれのしきい値帯域幅に鑑みて、行うように構成された評価部をさらに備え、モード選択部は、ある電気的エンティティがこの電気的エンティティのしきい値帯域幅に違反する場合に第2制御モードから第1制御モードに切り替えるように適合されている。
【0026】
第2の局面のある実施形態において、第2部分の評価される少なくとも1つの電気的エンティティは、
-配電ネットワークの第1部分と配電ネットワークの第2部分との間の接続(PCC)における電圧レベル、
-配電ネットワークの第1部分と配電ネットワークの第2部分との間の無効電力潮流、
-配電ネットワークの第1部分と配電ネットワークの第2部分との間の有効電力潮流、
-配電ネットワークの第2部分におけるアセットでの電圧レベル、または
-配電ネットワークの第2部分におけるアセットからの電流、
のうちの少なくとも1つを含む。
【0027】
第2の局面のある実施形態において、モード選択部は、評価された電気的エンティティがこの電気的エンティティのしきい値帯域幅に再び入り好ましくは予め定められた時間この帯域幅の中に留まったときに、切り替えて第1制御モードから第2制御モードに戻すように適合されている。
【0028】
このように、マイクログリッドコントローラは、モニタリングされ評価された電気的エンティティがしきい値違反でなくなり好ましくは予め定められた期間この帯域幅の中に留まり安定しているときに、切り替えて元に戻るように構成されている。
【0029】
第2の局面のある実施形態において、モニタリング手段は、配電ネットワークの第1部分と第2部分との相互接続のためにPCCに配置された遮断器のステータスをモニタリングするように適合されている。この実施形態において、モード選択部は、遮断器が開くと第3制御モードに切り替えるように適合され、マイクログリッドコントローラは、第3制御モードに従い、第2部分をアイランド化されたマイクログリッドとして制御するように構成されている。
【0030】
第2の局面のある実施形態において、マイクログリッドコントローラは、配電ネットワークコントローラから配電ネットワークの第2部分のアセットに、特に第2部分の分散型発電機、電圧源コンバータおよび/またはエネルギ貯蔵部に、制御設定を仲介するように構成された、制御信号の仲介部をさらに備える。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】マイクログリッドを含む配電ネットワークを示す図である。
【
図2A】3つの制御モードのうちの1つを示す図である。
【
図2B】3つの制御モードのうちの1つを示す図である。
【
図2C】3つの制御モードのうちの1つを示す図である。
【
図3】マイクログリッドおよび配電ネットワークを制御する方法のある実施形態を示す図である。
【
図4】マイクログリッドコントローラおよびネットワークコントローラのある実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
実施形態の説明
図1は、2つの部分を構成する配電ネットワーク1を示し、これらの2つの部分のうち、第1部分1aは、変圧器10を介して送電グリッドに接続され、マイクログリッドである第2部分1bは、PCC(連係点)で第1部分1aに接続される。配電ネットワーク1はいくつかのアセット3~7を含み、アセットの具体例として、負荷3、電圧源コンバータ4、分散型発電機5、直列キャパシタ6、およびエネルギ貯蔵部7がある。エネルギ貯蔵部7および分散型発電機5は、配電ネットワークグリッド1に電圧源コンバータ4を介して接続されてもよい。アセット3~7は、第1部分1aだけでなくマイクログリッド1bにも配置されている。第1部分1aは配電ネットワークコントローラ9を含み、配電ネットワークコントローラ9は、第1部分1aのアセット3~7に作動的に接続され、PCCを含めて配電グリッド1の第1部分1aをモニタリングするように配置されている。マイクログリッド1bはマイクログリッドコントローラ8を含み、マイクログリッドコントローラ8は、PCCを含めてマイクログリッド1bをモニタリングするように配置され、マイクログリッドのアセット3~7を制御する、たとえばアセットの接続および切断を制御するために、または分散型発電機5の制御についての設定を調整するために、これらのアセット3~7に作動的に接続されている。配電ネットワークコントローラ9およびマイクログリッドコントローラ8は、通信可能に互いに接続される。
【0033】
配電ネットワークのPCCから上流の第1部分1aをモニタリングする配電ネットワークコントローラ9によって配電ネットワークの第1部分1aを制御することは、従来の先行技術のシステムと同様である。配電ネットワークのPCCから下流の第2部分1bまたはマイクログリッドをモニタリングするマイクログリッドコントローラによって配電ネットワークの第2部分1bを制御することは、従来の先行技術のシステムと同様である。そのため、本発明の実施形態は、先行技術のシステムと同様のやり方で、第2部分1bが第1部分1aに接続されているグリッド接続状態にあるマイクログリッド、すなわち第2部分1bの制御を提供することができる。
【0034】
しかしながら、本発明の実施形態に従うと、配電ネットワークコントローラ9は、配電ネットワーク1の第1部分1aのアセット3~7のモニタリングおよび制御に加えて、第2部分1b(すなわちマイクログリッド)のアセット3~7のモニタリングおよび制御も行うように構成されている。第2部分1bのアセット3~7のこのモニタリングおよび制御は、本発明の実施形態において、マイクログリッドコントローラ8を介して配電ネットワークコントローラ9によって行われてもよい。このように、本発明の実施形態は、グリッド接続状態のマイクログリッド、すなわち第2部分1bのアセット制御の追加のモードを提供する。また、実施形態は、グリッド接続状態の2つの制御モードを選択的に使用できるように、これら2つの制御モード間の切り替えを行う方法を提供する。
【0035】
図2A~
図2Cは、マイクログリッドコントローラの第1、第2、および第3動作モードを示す。第1および第2動作モードでは、第1部分1aが接続点であるPCCで第2部分1b(すなわちマイクログリッド)に接続され、第1モードおよび第2モードは、このグリッド接続状態におけるマイクログリッドコントローラ8の選択可能な動作モードを構成する。
【0036】
第1動作モードでは、
図2Aの点線のモニタリングおよび制御線で示されるように、マイクログリッドコントローラ8は、PCCを含めてマイクログリッドをモニタリングし、マイクログリッドのアセット3~7を制御する。配電ネットワークコントローラ9は、配電グリッド1の第1部分1aをモニタリングおよび制御し、これはPCCのモニタリングを含む。マイクログリッドコントローラ8は、PCCの下流の配電ネットワーク1、すなわち第2部分1bを制御するために設けられ、配電ネットワークコントローラ9は、PCCの上流の配電ネットワーク1、すなわち第1部分1aを制御するために設けられる。電力潮流および電圧の双方が、配電ネットワークコントローラ9およびマイクログリッドコントローラ8の双方によって、PCCでモニタリングされる。また、相互接続遮断器(図示せず)のステータス等の、PCCにおける接続のステータスが、コントローラ8および9の双方によってモニタリングされる。
【0037】
図2Cに示される第3動作モードでは、配電ネットワーク1の第1部分1aおよび第2部分1bがPCCで互いに切り離され、マイクログリッドコントローラ8は、PCCの下流の配電ネットワーク、すなわち第2部分1bとも呼ぶマイクログリッドを制御するために設けられ、配電ネットワークコントローラ9は、PCCの上流の配電ネットワーク、すなわち第1部分1aを制御するために設けられる。この場合、PCCに電力潮流はなく、電圧のみがPCCの両側でモニタリングされる。
【0038】
図2Bは第2動作モードを示し、このモードにおいて、マイクログリッドコントローラ8は、マイクログリッド8のアセット3~7を含むマイクログリッド1bと配電ネットワークコントローラ9との間のモニタリングおよび制御信号を仲介するために設けられる。配電ネットワークコントローラ9は、第1部分1aおよびマイクログリッド1b(第2部分)の双方のモニタリングとともに、配電ネットワーク1の第1部分1aおよび第2部分1bの双方のアセット3~7の制御も行うために設けられる。この第2動作モードにおいて、マイクログリッドコントローラ8は、マイクログリッド1b内の電気的エンティティをモニタリングおよび評価し、いずれかの電気的エンティティがこのエンティティの対応するしきい値に違反する場合は制御モードを切り替えるために設けられる。このように、マイクログリッドコントローラ8は、モニタリング機能を提供するとともに、電気的エンティティがしきい値に違反する場合は、たとえば安全もしくは安定化のためまたは電力損失を回避するために、第2部分1bの制御を回復させるように構成されている。
【0039】
図3は、本発明のある実施形態において、配電ネットワーク1を、特に配電ネットワーク1のアセット3~7を制御する方法300を示す。この方法300は、配電ネットワーク1の第1部分1aをモニタリングすること306と、配電ネットワークの第2部分1bをモニタリングすること301と、配電ネットワーク1の第1部分1aおよび第2部分1bを制御すること310とを含む。より詳しくは、配電ネットワークコントローラ9は第1部分1aのモニタリングおよび制御310Aを行い、マイクログリッドコントローラ8は第2部分1bのモニタリングおよび制御を行い、この制御310は「第1」制御モードで実施される。これらのモニタリング301、306および制御310、310Aは、マイクログリッド(第2部分1b)を含むまたはこれに接続された配電ネットワーク1の従来の制御と同様である。そのため、第1制御モード(310A)において、配電ネットワーク1の制御はコントローラ8および9の双方によって行われ、各コントローラ8または9は、配電ネットワーク1の対応する部分1aまたは1bを制御する。
【0040】
制御方法300はまた、制御モードの選択303を含む。すなわち、制御モードの選択303は、第2部分1bのモニタリング301に基づき、グリッド接続状態では、第1制御モード310Aまたは第2制御モード310Bのいずれかが選択される。第2制御モード310Bにおいて、配電ネットワーク1の第1部分1aおよび第2部分1bの双方の制御310は、配電ネットワークコントローラ9により、第1部分1aのモニタリング306および第2部分1bのモニタリング301に基づいて行われる。このように、配電ネットワークコントローラ9は、配電ネットワーク1の全体をモニタリングし、配電ネットワーク1の全体の中のアセット3~7を、すなわち、PCCの下流および上流のアセット3~7を制御する。
【0041】
配電ネットワーク1の第2部分1bのようなマイクログリッドは、切断されてアイランドモードで制御されてもよい。制御方法300は、このようなアイランドモード、すなわち第3制御モード310Cも含む。アイランド化は、計画されたものであってもよく、または計画外のイベントであってもよい。計画外のイベントに備えるために、第2部分1bのモニタリング301は、PCCにおける接続をモニタリングすること302、特に、第1部分1aと第2部分1bとを選択的に接続および切断するためにPCCに配置された遮断器のステータスをモニタリングすること302を含む。遮断器が開いている場合、この方法は、第3制御モードすなわちアイランドモード310Cを選択することを含み、この場合、配電ネットワークコントローラは第1部分1aを制御し、マイクログリッドコントローラ8は第2部分1bを制御する。計画されたアイランド化は、マイクログリッドコントローラ8が、配電ネットワークコントローラ9のような制御システムからのメッセージを受信することを含み得る。
【0042】
図3の制御方法300の実施形態はまた、破線の中に示された、任意であるが好ましいいくつかの制御処置を示している。好ましくは、制御モードの選択302は、第2部分1bでモニタリング301されている電気的エンティティを評価すること305を含む。評価すること305は、しきい値帯域幅を含む基準を用いて電気的エンティティを比較し、しきい値違反が検出されると第1制御モード310Aを選択することを含み得る。評価される各電気的エンティティは、それぞれ自身の帯域幅を、たとえば、範囲、最小レベルまたは最大レベルを有し、マイクログリッドコントローラ8は、許容帯域幅の違反が検出されると第1制御モード310Aを選択するように構成されている。
【0043】
モニタリングおよび評価される電気的エンティティのいくつかの例を以下に示す。
グリッド接続状態におけるモード切り替えの基準は、
-マイクログリッド(第2部分1b)内の電力バランスをモニタリングし、マイクログリッド(1b)の電力バランスが、電力バランシングしきい値である第1しきい値に違反すると、第1動作モード310Aに切り替えることを含み得る。第1動作モード310Aは、好ましくはマイクログリッド(1b)の電力バランシングを含み得る。
【0044】
グリッド接続状態におけるモード切り替えの基準は、
-マイクログリッド(1b)内の電圧レベルをモニタリングし、電圧レベルしきい値である第2しきい値に達すると、第1動作モード310Aに切り替えることを含み得る。第1動作モード310Aは、好ましくはマイクログリッド1b内の電圧制御を含む。
【0045】
グリッド接続状態におけるモード切り替えの基準は、
-無効電力をモニタリングし、無効電力しきい値である第3しきい値に達すると、第1動作モード310Aに切り替えることを含み得る。第1動作モード310Aは、好ましくはマイクログリッド1b内の無効電力制御を含む。
【0046】
グリッド接続状態におけるモード切り替えの基準は、
-マイクログリッド1b内の電圧レベルおよび無効電力をモニタリングし、第2および/または第3しきい値に達すると、第1モード310Aに切り替えることを含み得る。第1モード310Aは、好ましくは、マイクログリッド1bおよび/または第1部分1aのVVC(電圧-無効電力制御)を含み得る。第1モード310Aは、VCCを含むマイクログリッド(1b)または第1部分1aにおける電圧-無効電力最適化、および、たとえばシステム損失または電圧降下を同時に最小に保つことを、含み得る。
【0047】
グリッド接続状態におけるモード切り替えの基準は、
-マイクログリッド1b内の高調波をモニタリングし、高調波のしきい値である第4しきい値に達すると、第1動作モード310Aに切り替えることを含み得る。第1動作モード310aは、好ましくはマイクログリッド内の高調波を抑制することを含み得る。
【0048】
マイクログリッドコントローラ8はさらに、上記基準、たとえば第1、第2、第3、および第4の基準が、許容可能な帯域幅に再び入り好ましくは安定したとき、または問題のしきい値に違反しなくなったときに、切り替えて第1動作モードに戻るように、構成されてもよい。
【0049】
図3の実施形態のさらに他の好適な制御処置は、選択された制御モードを配電ネットワークコントローラ9に通知すること307を含む。制御モードの選択303は、配電ネットワークコントローラ9に選択を適切に通知する307マイクログリッドコントローラ8によって実施される。
【0050】
配電ネットワークコントローラ9は、配電ネットワーク1内の制御機能、好ましくはいわゆるDMS機能を用いるように、好適に選択または構成される。配電ネットワークコントローラ9は、好ましくは、使用すべき特定の制御機能を選択する308。また、配電ネットワークコントローラ9は、好ましくは、選択した制御機能、たとえば選択したDMS機能をマイクログリッドコントローラ8に通知する309ように構成される。配電ネットワークコントローラ9は、その後、第1モードに従って第1部分1aを制御する310Aときは、選択したDMS機能を使用する。配電ネットワークコントローラ9は、第2モードに従って第1および第2部分1a、1bを制御する310Bときは、選択したDMS機能を使用する。第1モードにおいて、マイクログリッドコントローラは、(309で)受信したDMS機能の表示に鑑みて、選択されたDMS機能をサポート312Aしてもよい。配電ネットワークコントローラ9は、第1および第2モードの双方において、また第3モードにおいても、選択したDMS機能をマイクログリッドコントローラ8に通知してもよく、そうすると、マイクログリッドコントローラ8は、第1モード310AにおいてDMS機能をサポートする312A準備が整う。
【0051】
配電ネットワークコントローラ9は、第2部分1bのモニタリングおよび制御のために直接通信するように構成されてもよい。しかしながら、
図3に示される、ある好ましい実施形態において、マイクログリッドコントローラ8は、第2部分1bの電気的エンティティの測定値等のモニタリングを仲介する313B。また、
図3に示される、ある好ましい実施形態において、マイクログリッドコントローラ8は、第2部分1bのアセット3~7に対する制御設定等の制御信号を仲介する314B。このように、第2制御モード310Bを実行するとき、マイクログリッドコントローラ8は、第2部分1bと配電ネットワークコントローラ9との間で、測定された電気的エンティティの仲介313Bおよび制御設定の仲介314Bを行うように構成されている。
【0052】
さらに他の実施形態(
図3には示されていない)において、マイクログリッドコントローラ8は、配電ネットワーク1の第1部分1aにおける少なくとも1つの場所、たとえば配電ネットワーク内のアセット3~7、電線または遮断器をモニタリングするように構成されている。配電ネットワークコントローラ9は、配電ネットワーク1内の測定された1つまたは複数の電気的エンティティを含むモニタリング等を仲介するように構成されてもよい。第1部分1aの配電ネットワークコントローラ9が実行するDMS機能をサポートする312A場合、このようなモニタリングはマイクログリッドコントローラ8に好適となり得るものであり、DMS機能のサポート312Aは、たとえばその一部が、第2部分1bから離れた第1部分1a内の場所の電気的エンティティのモニタリングに基づいていてもよい。このように、配電ネットワークコントローラ9およびマイクログリッドコントローラ8は、互いに電気的エンティティの測定値を仲介するように適合されてもよく、この場合、配電ネットワークコントローラ9は第1部分1aにおける電気的エンティティのデータをマイクログリッドコントローラ8に送信し、マイクログリッドコントローラ8は第2部分1bにおける電気的エンティティのデータを配電ネットワークコントローラ9に送信する。このようなやり取りは、測定値に加えて、配電ネットワーク1のそれぞれの部分1a、1bにおけるモニタリングされるデバイスのステータス情報を含み得る。
【0053】
図4は、本発明の制御方法を実行するためのマイクログリッドコントローラ8および配電ネットワークコントローラ9のある実施形態を示す。
図4は、コントローラ8、9の構成を簡略化して示したものであり、主として、上記制御方法を実行するための制御機能を開示し、
図3の制御方法300の実行において協力するときのマイクログリッドコントローラ8と配電ネットワークコントローラ9とのやり取りの好ましい実施形態を開示する。マイクログリッドコントローラ8および配電ネットワークコントローラ9は、配電ネットワークの制御のためのさまざまな機能を実行するように選択され構成されたハードウェアとソフトウェアとの組み合わせを含む。これらのさまざまな機能は
図4においてブロックとして示される。マイクログリッドコントローラ8および配電ネットワークコントローラ9は、これらの相互通信のためのそれぞれの通信インターフェイス89、99を含む。配電ネットワーク1の部分1a、1bのモニタリングおよび制御に利用される通信インターフェイスは、
図4に明確に示されていない。しかしながら、このような通信は、
図4において入力および出力を符号で表す水平方向の矢印で示されるように、同じ通信インターフェイス89、99によって提供されてもよく、制御システムネットワーク、たとえばSCADAシステムその他によって実施されてもよい。
【0054】
主な機能ブロックとして、マイクログリッドコントローラ8は、
-配電ネットワーク1の第2部分1b、特にマイクログリッドを制御するように構成されたコントローラ80と、
-配電ネットワークの第2部分1bをモニタリングするように構成されたモニタリング機能またはモニタ81と、
-配電ネットワークに対する制御モードを選択するためのモード選択部82と、
配電ネットワークコントローラ9と情報を交換するように構成された通信インターフェイス89とを、含む。
【0055】
第2部分のためのコントローラ80は、第1および第3制御モードにおいて、すなわち、
図3の第1制御モード310Aおよび第3制御モード310Cに従って、配電ネットワーク1の第2部分1bを制御するように構成されている。コントローラ80は、好ましくは、第1モード310Aにおいて、配電ネットワークコントローラ9が採用したDMS機能をサポートする312Aように構成されたサポート機能86を含む。
図4に示されるように、通信インターフェイス89は、好ましくは、配電ネットワークコントローラ9の通信インターフェイス99を介して、配電ネットワークコントローラ9から「DMS機能表示」を受けるために使用される。マイクログリッドコントローラ8の、第2部分1bのためのコントローラ80は、好ましくは、第2制御モード310B中に第2部分1bのアセット3~7に対する設定等の制御信号を仲介する314Bように構成された制御信号の仲介部85を含む。仲介部85は、第2制御モード310B中、配電ネットワークコントローラ9から受けた制御信号を配電ネットワーク1の第2部分1bに送信するように構成されている。コントローラ80は、
図4に示されるように、配電ネットワークコントローラ9からの制御信号、たとえば、第2部分1bの分散型発電機5等のアセット3~7に対する設定を含む制御信号を、通信インターフェイス89および99を用いて受信するように構成されている。また、マイクログリッドコントローラ8も、配電ネットワークコントローラ9からの、配電ネットワークの第1部分1aの測定値およびステータス情報を、通信インターフェイス89を介して受信してもよい。DMSサポート機能86は、好ましくは、第1制御モード310Aにおいて配電ネットワークコントローラ9から受信した測定値およびステータス情報に基づいて、DMS機能のサポート312Aを提供するように適合されていてもよい。
【0056】
モニタリング機能81は、配電ネットワーク1の第2部分1bのモニタリング301からのモニタリングデータ、特にステータスおよび測定情報の仲介部83を含み、この仲介部83は、第2制御モード310B中、第2部分1bのモニタリングデータ、特に電気的エンティティを、配電ネットワークコントローラ9に仲介する313Bように構成されている。
【0057】
また、モニタリング機能81は、好ましくは、PCCにおける接続を、特にPCCにおける相互接続遮断器のステータスをモニタリングする302ように、構成されている。第2部分1bの計画外のアイランド化の場合、マイクログリッドコントローラ8は、好ましくは、たとえば相互接続遮断器のステータスに基づいて第3制御モード310Cを選択する304ように構成されている。
【0058】
モード選択部82は、配電ネットワーク1の第2部分1bのモニタリング301に基づいて制御モードの選択303を実行するように構成されている。モード選択部82は、好ましくは、第2部分1b内のモニタリングされた1つ以上の電気的エンティティを評価する305ように構成された評価部84を含み、この評価305は、
図3の実施形態を参照して本明細書に開示された範囲、最小および/または最大レベルのしきい値に鑑みて行われる。マイクログリッドコントローラ8は、好ましくは、
図4に示されるように通信インターフェイス89、99を介してモード選択を配電ネットワークコントローラ9に通知する307ように構成されている。
【0059】
モード選択部82はまた、好ましくは、
図3に示されるように(
図4には示されていない)、PCCステータスのモニタリング302に基づいて、第3制御モード310C、すなわちアイランドモードを選択する304ように構成されている。したがって、モード選択部82は、PCCの遮断器のステータスが「オープン」に変化したときに第3制御モード310Cを選択する304ように適合されていてもよい。
【0060】
配電ネットワークコントローラ9は、以下の主要な機能ブロック、すなわち、
-配電ネットワーク1内のアセット3~7を、特に、
第1、第3制御モード310A/Cにおける第1部分1aのアセット3~7、および、
第2制御モード310Bにおける第1および第2部分1a、1b双方のアセット3~7を、
制御する310ように構成されたコントローラ90と、
-配電ネットワーク1の第1部分1aをモニタリングするように構成されたモニタリング機能91と、
-配電ネットワークの制御310のための制御機能を選択する308ように構成された、特に、
第1モード310Aにおける第1部分1aの制御310、および
第2モード310Bにおける第1および第2部分1a、1bの制御310
のための制御機能を選択する308ように構成された、DMSセレクタと、
-マイクログリッドコントローラ8との通信のために、好ましくは配電ネットワーク1の第1部分1aのモニタリング306のため、および、配電ネットワークの第1部分1aのアセット3~7の制御310のために、構成された、通信インターフェイス99とを、含む。
【0061】
さらに
図4に示されるように、配電ネットワークコントローラ9は、好ましくは、制御モードの表示(
図3の307参照)、ならびに、配電ネットワーク1の第2部分1bに関する測定値およびステータスの表示を、マイクログリッドコントローラ8から受信するように構成されている。またこれも示されているように、配電ネットワークコントローラ9は、DMS機能の表示(
図3の309参照)、ならびに、第2制御モード310Bにおける第1部分1aの測定およびステータス情報および制御信号(
図3の314B参照)を、マイクログリッドコントローラ8に送信するように構成されている。
【0062】
本発明を、本発明の局面の実施形態として、配電ネットワーク1を制御する方法300およびこの方法に適合させたマイクログリッドコントローラ8を参照しながら説明してきた。配電ネットワーク1は、第1部分1aおよび第2部分1bにおけるアセット3~7を含み、これらの部分1aおよび1bは、接続点(PCC)において選択的に相互接続されて相互接続状態になる。この方法は、配電ネットワーク1のアセット3~7をモニタリングすること301、306および制御すること310を含む。第1制御モード310Aにおいて、第1部分1aは配電ネットワークコントローラ9によって制御され、第2部分はマイクログリッドコントローラ8によって制御される。特に、この方法は、第1制御モード310Aに従う相互接続状態で配電ネットワーク1を制御すること310と、第2制御モード310Bに従う相互接続状態で配電ネットワーク1を制御すること310との間で選択すること303を含み、第2制御モード310Bでは、第1部分1aおよび第2部分1bの双方のアセット3~7が配電ネットワークコントローラ9によって制御される。
【0063】
本発明は、DMSモニタリングおよび制御機能をマイクログリッド(第2部分1b)内に拡張するように構成された、マイクログリッド制御システム8、またはマイクログリッドコントローラを提供する。マイクログリッドコントローラ8は、アイランド状態およびグリッド接続状態においてマイクログリッド(第2部分1b)を制御するように構成され、グリッド接続状態において2つの動作モード、すなわち、マイクログリッドを自律的に制御する第1動作モード310Aと、DMS機能をマイクログリッド内に拡張することを含む第2動作モード310Bとを、有する。マイクログリッドコントローラ8は、グリッド接続状態におけるDMSモニタリングおよび制御を、マイクログリッド8の機能についての少なくとも1つの基準が満たされる限り、拡張するように、かつ、上記少なくとも1つの基準の違反が起こるとDMSモニタリングおよび制御を中断し自律的に作用するように、構成されている。マイクログリッドコントローラ8は、少なくとも1つの基準の充足または違反に応じて、第1動作モード310Aと第2動作モード310Bとの間で切り替えるように構成されている。
【0064】
上記DMS拡張を放棄しマイクログリッドを自律的に制御する上記基準は、好ましくは、PCCの遮断器が開いているか否かを検出することも、含む。したがって、マイクログリッドコントローラ8は、PCCにおける遮断器のステータスと、PCC遮断器のステータスが開放であるときにモードを切り替えるための「第5の」基準とをモニタリングするように構成されている。遮断器が開くと、マイクログリッドコントローラ8はアイランドモードに切り替わり、このアイランドモードは第3制御モード310Cとみなすことができる。第3制御モード310Cは、グリッド接続状態からアイランド化状態に至るまでのアイランド化段階を含み得る。
【0065】
本発明は、第1制御モード310Aと第3制御モード310Cとを含み、マイクログリッドコントローラ8は、先行技術のマイクログリッドコントローラと同様のやり方で、マイクログリッドのアセットを制御する。このように、マイクログリッドコントローラ8は、グリッド接続されているとき(第1モード310A)およびアイランド化されているとき(第3モード310C)のマイクログリッド(1b)をモニタリングおよび制御することができる。第1動作モード310Aおよび第3動作モード310C中、配電ネットワークコントローラ9は、マイクログリッドの上流の配電ネットワーク(すなわち第1部分1a)をモニタリングおよび制御する。好ましくは、マイクログリッドコントローラ8および配電ネットワークコントローラ9の双方が、PCCにおける電圧レベルおよび電力潮流をモニタリングする。
【0066】
先行技術との比較において本発明が先行技術と異なる点は、マイクログリッドコントローラ8および配電ネットワークコントローラ9が第2制御モード310Bで機能できる点である。マイクログリッドコントローラ8の第2制御モード310Bは、配電コントローラ9の拡張部として機能してマイクログリッド1bを制御し、マイクログリッド(すなわち第2部分1b)における電気的エンティティに関するモニタリングデータを配電ネットワークコントローラ9に転送することを含む。配電ネットワークコントローラ9の第2制御モード310Bは、配電ネットワーク1を、第1部分1aおよび第2部分1bの双方を含めて、特に部分1a、1bのアセット3~7を含めて、制御することを含み、この制御は部分1a、1bの双方のモニタリングに基づく。本発明の実施形態において、マイクログリッドコントローラ8の動作の第2制御モード310Bから第3制御モード310Cへの変更は、遮断器が開いたときに実施される。本発明の実施形態において、(
図3の303における)第2動作モード310Bから第1動作モード310Cへの変更は、電気的エンティティに対する予め定められた少なくとも1つの基準が、(
図3の305において)許容できる動作帯域幅から外れたときまたは最大もしくは最小しきい値に違反したときに、実施される。
【0067】
しかしながら、本発明は示された実施形態に限定される訳ではない。本発明の範囲は、添付の請求項で定められ、その範囲の中で当業者はこの発明をさまざまな形態で提供することができる。