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特許7273187プラズマ移送用の伝送チャネル装置及びコーティング機器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】プラズマ移送用の伝送チャネル装置及びコーティング機器
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20230502BHJP
   C23C 14/35 20060101ALI20230502BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
H05H1/46 A
C23C14/35
C23C16/44 B
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021563180
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-05
(86)【国際出願番号】 CN2021090880
(87)【国際公開番号】W WO2022001342
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】202010627138.X
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521462521
【氏名又は名称】安徽純源鍍膜科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ANHUI CHUNYUAN COATING TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Floor F, No. 99, Yonghe Road, High-tech Zone Hefei City, Anhui 230088, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】張 心鳳
【審査官】牧 隆志
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0131169(KR,A)
【文献】特開2010-103121(JP,A)
【文献】米国特許第06369493(US,B1)
【文献】特開平10-280135(JP,A)
【文献】特開2002-105628(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101792895(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1560320(CN,A)
【文献】中国実用新案第201660693(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第105039914(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0071085(KR,A)
【文献】特開平05-013344(JP,A)
【文献】特開2017-218606(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0240656(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00 - 1/54
B05D 1/08
D01F 11/16
H01J 37/00 - 37/36
H01L 21/027
B23K、C23C、H01L、H01M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャネル本体を含み、チャネル本体には、プラズマが通過するためのAチャネルが形成され、Aチャネルの両端はそれぞれA入口とA出口を構成し、チャネル本体の上又はその側方にはチャネル本体を冷却する冷却ユニットが配置され、かつ、チャネル本体の内壁には、プラズマ中の不純物成分を吸着するための吸着ユニットが配置され
吸着ユニットは、チャネル本体の内壁に配置されたリング状板部材により構成され、リング状板部材の中心線はチャネル本体の中心線と一致し、リング状板部材は、チャネル本体の長さ方向に沿って間隔をおいて配置され、
リング状板部材は、リング状板部材の中心線へ向かってチャネル本体の内壁において立設されているとともに、A出口の側からA入口の側へ向かう方向に傾斜して形成されている
ことを特徴とするプラズマ移送用の伝送チャネル装置。
【請求項2】
冷却ユニットは、チャネル本体の外側に配置された空冷装置により構成される、ことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ移送用の伝送チャネル装置。
【請求項3】
冷却ユニットは、チャネル本体に配置された冷却キャビティにより構成され、冷却キャビティ内に冷却流体が収容される、ことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ移送用の伝送チャネル装置。
【請求項4】
冷却キャビティは、チャネル本体の外側壁に配置される、ことを特徴とする請求項3に記載のプラズマ移送用の伝送チャネル装置。
【請求項5】
冷却キャビティは、チャネル本体に配置された中間層により構成され、冷却キャビティには、冷却流体入口と冷却流体出口が配置される、ことを特徴とする請求項4に記載のプラズマ移送用の伝送チャネル装置。
【請求項6】
冷却キャビティは、チャネル本体に配置された螺旋パイプにより構成され、螺旋パイプの一端は冷却流体入口であり、螺旋パイプの他端は冷却流体出口である、ことを特徴とする請求項4に記載のプラズマ移送用の伝送チャネル装置。
【請求項7】
吸着ユニットは、チャネル本体の長さ範囲に沿って配置される、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のプラズマ移送用の伝送チャネル装置。
【請求項8】
吸着ユニットは、チャネル本体の内壁に配置された板部材又は板ブロックにより構成される、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のプラズマ移送用の伝送チャネル装置。
【請求項9】
リング状板部材はコーンカバー状であり、リング状板部材の内側リングエッジ部とA入口との間の距離は、外側リングエッジ部とA入口との間の距離よりも短い、ことを特徴とする請求項に記載のプラズマ移送用の伝送チャネル装置。
【請求項10】
チャネル本体の側方には磁界装置が配置され、磁界装置により印加された磁界の強度が0.01T~0.98Tである、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のプラズマ移送用の伝送チャネル装置。
【請求項11】
螺旋パイプの断面は、円形、矩形、楕円形、半円形のいずれかである、ことを特徴とする請求項6に記載のプラズマ移送用の伝送チャネル装置。
【請求項12】
チャネル本体は、曲がりパイプ又はベンドパイプにより構成される、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のプラズマ移送用の伝送チャネル装置。
【請求項13】
Aチャネルは、可変直径のキャビティである、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のプラズマ移送用の伝送チャネル装置。
【請求項14】
A入口とA出口の流れ方向の間の角度は、30°、90°、180°、270°のいずれかである、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のプラズマ移送用の伝送チャネル装置。
【請求項15】
チャネル本体は、両端にあるストレートパイプ状のAチャネル本体セクションとBチャネル本体セクションを含み、Aチャネル本体セクションとBチャネル本体セクションは、弧状のCチャネル本体セクションを介して互いに接続される、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のプラズマ移送用の伝送チャネル装置。
【請求項16】
Aチャネル本体セクションとBチャネル本体セクションの断面サイズは同じであり、Cチャネル本体セクションの断面サイズは、Aチャネル本体セクションの断面サイズとは異なる、ことを特徴とする請求項15のいずれか一項に記載のプラズマ移送用の伝送チャネル装置。
【請求項17】
Aチャネル本体セクションとBチャネル本体セクションの長さは異なる、ことを特徴とする請求項15のいずれか一項に記載のプラズマ移送用の伝送チャネル装置。
【請求項18】
冷却キャビティを形成する中間層の間の距離は1mm~10mmである、ことを特徴とする請求項5のいずれか一項に記載のプラズマ移送用の伝送チャネル装置。
【請求項19】
請求項1~のいずれか一項に記載のプラズマ移送用の伝送チャネル装置を含み、マグネトロンスパッタリング、真空アーク、化学気相堆積、及び純イオン真空コーティング機器の1つ又は任意の組み合わせである、ことを特徴とするコーティング機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空コーティング機器の分野に関し、具体的には、プラズマ移送用の伝送チャネル装置及びコーティング機器に関する。
【背景技術】
【0002】
真空コーティングは、ターゲット材によって生成されたプラズマを処理される製品に堆積させることである。プラズマは通常、約10%~15%の荷電イオンと電子を含み、残りは、中性粒子、微視的な顆粒などである。荷電イオンは、エネルギーが強く、磁界で制御して、イオン能力を向上させたり方向を変えたりすることができ、膜層の結合力と均一性の向上、膜層顆粒の減少、表面性能の向上、製品寿命の延長に非常に役立つ。一方、中性粒子は制御できず、エネルギーを向上させたり方向を変えたりことができないため、表面性能の向上、製品寿命の延長にほとんど役立たない。プラズマ中のすべての粒子、イオン、顆粒、及び不純物は、処理される製品の表面に堆積されることにより、比較的多くの顆粒、比較的大きな顆粒、低い結合力、欠陥、不十分な均一性制御などの膜層の問題が引き起こされる。イオン伝送チャネルを設けることで、中性粒子と微視的な顆粒を濾過し、荷電イオンと電子のみを通過させることができるため、膜層の性能が向上する。しかしながら、従来のイオンチャネル装置には、まだ多く欠陥がある。例えば、伝送チャネルは中性粒子と微視的な顆粒を濾過する過程で、伝送チャネルの温度上昇を引き起こし、コーティングの効果に影響を与える。また、伝送チャネル内に堆積した中性粒子と微視的な顆粒の除去が容易ではなく、堆積した中性粒子と微視的な顆粒が増えると、伝送チャネルが小さくなり、荷電イオンのスムーズな伝送に影響を与える。従って、さらにそれを改善する必要がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、チャネル本体を冷却し、かつ/又はプラズマ中の不純物成分を吸着することができるプラズマ移送用の伝送チャネル装置及びコーティング機器を提供することである。
【0004】
本発明で採用する技術的手段は、具体的には、以下のとおりである。
【0005】
プラズマ移送用の伝送チャネル装置は、チャネル本体を含み、チャネル本体には、プラズマが通過するためのAチャネルが形成され、Aチャネルの両端はそれぞれA入口とA出口を構成し、チャネル本体の上又はその側方にはチャネル本体を冷却する冷却ユニットが配置され、かつ/又は、チャネル本体の内壁には、プラズマ中の不純物成分を吸着するための吸着ユニットが配置される。
【0006】
好ましくは、冷却ユニットは、チャネル本体の外側に配置された空冷装置により構成される。
【0007】
好ましくは、冷却ユニットは、チャネル本体に配置された冷却キャビティにより構成され、冷却キャビティ内に冷却流体が収容される。
【0008】
好ましくは、冷却キャビティは、チャネル本体の外側壁に配置される。
【0009】
好ましくは、冷却キャビティは、チャネル本体に配置された中間層により構成され、冷却キャビティには、冷却流体入口と冷却流体出口が配置される。
【0010】
好ましくは、冷却キャビティは、チャネル本体に配置された螺旋パイプにより構成され、螺旋パイプの一端は冷却流体入口であり、螺旋パイプの他端は冷却流体出口である。
【0011】
好ましくは、吸着ユニットは、チャネル本体の長さ範囲に沿って配置される。
【0012】
好ましくは、吸着ユニットは、チャネル本体の内壁に配置された板部材又は板ブロックにより構成される。
【0013】
好ましくは、吸着ユニットは、チャネル本体の内壁に配置されたリング状板部材により構成され、リング状板部材の中心線はチャネル本体の中心線と一致し、リング状板部材は、チャネル本体の長さ方向に沿って間隔をおいて配置される。
【0014】
好ましくは、リング状板部材はコーンカバー状であり、リング状板部材の内側リングエッジ部とA入口との間の距離は、外側リングエッジ部とA入口との間の距離よりも短い。
【0015】
好ましくは、チャネル本体の両端にはフランジ接続部材が配置される。
【0016】
好ましくは、チャネル本体の側方には磁界装置が配置され、磁界装置により印加された磁界の強度が0.01T~0.98Tである。
【0017】
好ましくは、吸着ユニットとチャネル本体は着脱可能に接続される。
【0018】
好ましくは、チャネル本体は、ステンレス、無酸素銅、銅合金、アルミニウム合金である。
【0019】
好ましくは、螺旋パイプの断面は、円形、矩形、半円形のいずれかである。
【0020】
好ましくは、チャネル本体は、曲がりパイプ又はベンドパイプにより構成される。
【0021】
好ましくは、Aチャネルは、可変直径のキャビティである。
【0022】
好ましくは、A入口とA出口の流れ方向の間の角度は、30°、90°、180°、270°のいずれかである。
【0023】
好ましくは、チャネル本体は、両端にあるストレートパイプ状のAチャネル本体セクションとBチャネル本体セクションを含み、Aチャネル本体セクションとBチャネル本体セクションは、弧状のCチャネル本体セクションを介して互いに接続される。
【0024】
好ましくは、Aチャネル本体セクションとBチャネル本体セクションの断面サイズは同じであり、Cチャネル本体セクションの断面サイズは、Aチャネル本体セクションの断面サイズとは異なる。
【0025】
好ましくは、Aチャネル本体セクションとBチャネル本体セクションの長さは異なる。
【0026】
好ましくは、冷却キャビティを形成する中間層の間の距離は1mm~10mmである。
【0027】
コーティング機器は、上記のプラズマ移送用の伝送チャネル装置を含む。前記コーティング機器は、マグネトロンスパッタリング、真空アーク、化学気相堆積、及び純イオン真空コーティング機器の1つ又は任意の組み合わせである。
【0028】
本発明の技術的効果は以下のとおりである。
【0029】
本発明により提供されるプラズマ移送用の伝送チャネル装置は、チャネル本体内にAチャネルが形成され、Aチャネルの一端のA入口によりプラズマが入力され、他端のA出口によりプラズマが出力される。このプロセスにおいて、チャネル本体の上又はその側方に冷却ユニットを配置して、チャネル本体を冷却することで、チャネル本体の熱放散及び温度降下の目的を実現することができる。チャネル本体の内壁に吸着ユニットを配置することで、プラズマ中の不純物成分の吸着を実現し、効果を向上させる。
【0030】
また、本発明により提供されるコーティング機器は、上記のプラズマ移送用の伝送チャネル装置を使用することで、プラズマ中の不純物を濾過する効果を改善するだけでなく、動作中にチャネル本体を冷却しその温度を制御して、伝送チャネル装置が安定した濾過効果を発揮し続けることを保証し、それによってコーティング品質の改善を助けることができる。
【0031】
上記の目的、特徴、及び利点に加えて、本発明は、他の目的、特徴、及び利点を有する。以下、本発明について、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本出願の一部を構成する図面は、本発明のさらなる理解を提供するために使用され、本発明の例示的な実施例及びその説明は、本発明を説明するために使用され、本発明の不適切な制限を構成するものではない。図面では、
図1】本出願の実施例により提供されるプラズマ移送用の伝送チャネル装置と、陽極装置、真空チャンバ、走査装置のそれぞれとの組立接続の模式図である。AチャネルのA入口とA出口の流れ方向の間の角度は30°である。
図2】本出願の実施例により提供されるリング状板部材の構造模式図である。
図3】本出願の別の実施例により提供されるプラズマ移送用の伝送チャネル装置と、陽極装置、真空チャンバ、走査装置のそれぞれとの組立接続の模式図である。AチャネルのA入口とA出口の流れ方向の間の角度は90°である。
図4】本出願のまた別の実施例により提供されるプラズマ移送用の伝送チャネル装置と、陽極装置、真空チャンバ、走査装置のそれぞれとの組立接続の模式図である。AチャネルのA入口とA出口の流れ方向の間の角度は180°である。
図5】本出願のさらに別の実施例により提供されるプラズマ移送用の伝送チャネル装置と、陽極装置、真空チャンバ、走査装置のそれぞれとの組立接続の模式図である。AチャネルのA入口とA出口の流れ方向の間の角度は270°である。
図6】本出願の実施例により提供される、A入口とA出口の流れ方向の間の角度が90°であり、L1>L2、螺旋パイプの断面形状が円形であるチャネル本体の構造模式図である。
図7】本出願の実施例により提供される、A入口とA出口の流れ方向の間の角度が90°であり、L1>L2、螺旋パイプの断面形状が矩形であるチャネル本体の構造模式図である。
図8】本出願の実施例により提供される、A入口とA出口の流れ方向の間の角度が90°であり、L1>L2、螺旋パイプの断面形状が楕円形であるチャネル本体の構造模式図である。
図9】本出願の実施例により提供される、A入口とA出口の流れ方向の間の角度が90°であり、L1>L2、冷却キャビティが中間層構造であるチャネル本体の構造模式図である。
図10】本出願の実施例により提供される、A入口とA出口の流れ方向の間の角度が90°であり、L1>L2、冷却ユニットが空冷装置であるチャネル本体の構造模式図である。
図11】本出願の実施例により提供される、A入口とA出口の流れ方向の間の角度が90°であり、L1=L2、螺旋パイプの断面形状が円形であるチャネル本体の構造模式図である。
図12】本出願の実施例により提供される、A入口とA出口の流れ方向の間の角度が90°であり、L1<L2、螺旋パイプの断面形状が円形であるチャネル本体の構造模式図である。
図13】本出願の実施例により提供される、A入口とA出口の流れ方向の間の角度が30°であり、L1>L2、螺旋パイプの断面形状が円形であるチャネル本体の構造模式図である。
図14】本出願の実施例により提供される、A入口とA出口の流れ方向の間の角度が180°であり、L1>L2、螺旋パイプの断面形状が円形であるチャネル本体の構造模式図である。
図15】本出願の実施例により提供される、A入口とA出口の流れ方向の間の角度が270°であり、L1>L2、螺旋パイプの断面形状が円形であるチャネル本体の構造模式図である。
図16A】ワークピースの表面の膜層特性を反映するための顕微鏡検査図である。顕微鏡検査の拡大倍率は1000倍であり、このワークピースに使用された、本出願により提供されるコーティング機器は、イオン伝送チャネル装置を有する。
図16B】ワークピースの表面の膜層特性を反映するための顕微鏡検査図である。顕微鏡検査の拡大倍率は1000倍であり、このワークピースに使用されたコーティング機器は、イオン伝送チャネル装置を有していない。
図17A】膜層とベース製品との間の結合力を反映するための検出図である。このワークピースに使用された、本出願により提供されるコーティング機器はイオン伝送チャネル装置を有する。
図17B】膜層とベース製品との間の結合力を反映するための検出図である。このワークピースに使用されたコーティング機器は、イオン伝送チャネル装置を有していない。
図18A】膜層緻密性を反映するための検出図である。このワークピースに使用された、本出願により提供されるコーティング機器は、イオン伝送チャネル装置を有する。
図18B】膜層緻密性を反映するための検出図である。このワークピースに使用されたコーティング機器は、イオン伝送チャネル装置を有していない。
図19A】膜層硬度を反映するための検出図である。このワークピースに使用された、本出願により提供されるコーティング機器は、イオン伝送チャネル装置を有する。
図19B】膜層硬度を反映するための検出図である。このワークピースに使用されたコーティング機器は、イオン伝送チャネル装置を有していない。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本出願の目的及び利点をさらに明らかにするために、以下は、実施例を参照しながら本出願を具体的に説明する。以下の内容は、本出願の1つ又は複数の具体的な実施形態を説明するためのものに過ぎず、本出願で具体的に主張される保護範囲を厳密に制限するものではない。矛盾がない場合、本出願における実施例及び実施例の特徴は、互いに組み合わせることができる。
【0034】
〈実施例1〉
図1図15を参照すると、本出願の実施例は、まず、プラズマ移送用の伝送チャネル装置を提案する。それが解決しようとしている技術的な問題は次のとおりである。伝送チャネルは、不純物成分00bの濾過中に、伝送チャネルの温度の上昇を引き起こして、コーティングの効果に影響を与える。また、伝送チャネル内に堆積した不純物成分00bは洗浄が容易ではなく、堆積した不純物成分00bが増えると、伝送チャネルが小さくなり、荷電イオン00aのスムーズな伝送に影響を与える。
【0035】
本出願の実施例により提供される実施形態は以下のとおりである。プラズマ移送用の伝送チャネル装置は、チャネル本体100を含む。チャネル本体100には、プラズマが通過するためのAチャネル110が形成される。Aチャネル110の両端はそれぞれA入口120とA出口130を構成する。チャネル本体100の上又は側方にはチャネル本体100を冷却する冷却ユニットが配置され、かつ/又は、チャネル本体100の内壁にはプラズマ中の不純物成分を吸着するための吸着ユニットが配置される。不純物成分00bは、中性粒子、不純物、及び微視的な顆粒を含む。
【0036】
本出願の実施例により提供されるプラズマ移送用の伝送チャネル装置は、チャネル本体100内にAチャネル110が形成される。Aチャネル110の一端のA入口120によりプラズマが入力され、他端のA出口130によりプラズマが出力される。このプロセスにおいて、チャネル本体100の上又はその側方に冷却ユニットを配置して、チャネル本体100を冷却することで、チャネル本体100の熱放散及び温度降下の目的を実現することができる。チャネル本体100の内壁に吸着ユニットを配置することにより、プラズマ中の不純物成分00bの吸着を実現するので、効果が向上する。洗浄操作を実施する場合、吸着ユニットのみを洗浄する必要がある。本出願は、上記の伝送チャネル装置を提供することにより、不純物成分を濾過し、荷電粒子と電子のみをチャネルに通過させることができ、それにより膜層の結合力と均一性を向上させ、膜層顆粒を減少し、表面性能を改善し、製品の寿命を大幅に延長する。
【0037】
図1図6を参照すると、本実施例は、上記の実施形態に基づいてコーティング機器を提供する。このコーティング機器は、上記のプラズマ移送用の伝送チャネル装置を含む。前記コーティング機器は、マグネトロンスパッタリング、真空アーク、化学気相堆積、及び純イオン真空コーティング機器の1つ又は任意の組み合わせである。
【0038】
本出願の実施例により提供されるコーティング機器は、上記のプラズマ移送用の伝送チャネル装置を使用することで、プラズマ中の不純物を濾過する効果を達成するだけでなく、動作中にチャネル本体100を冷却しその温度を制御して、伝送チャネル装置が安定した濾過効果を発揮し続けることを保証し、それによってコーティングの品質を改善するのを助けることができる。
【0039】
〈実施例2〉
図1図15を参照すると、本出願の実施例は、プラズマ移送的伝送チャネル装置をさらに提供する。その解決しようとする技術的問題は次のとおりである。伝送チャネルは、不純物成分の濾過中に、不純物成分の衝撃や電磁界の印加により、伝送チャネルの温度が上昇し、コーティングの効果に影響を与える。
【0040】
本出願の実施例により提供される実施形態は以下のとおりである。プラズマ移送的伝送チャネル装置はチャネル本体100を含む。チャネル本体100には、プラズマが通過するためのAチャネル110が形成される。Aチャネル110の両端はそれぞれA入口120とA出口130を構成する。チャネル本体100の上又はその側方にはチャネル本体100を冷却する冷却ユニットが配置される。
【0041】
本出願の実施例により提供されるプラズマ移送的伝送チャネル装置では、プラズマは、チャネル本体100のA入口120から入り、A出口130から排出される。プラズマがAチャネル110を通過するプロセス中に、Aチャネル110の温度が上昇するが、チャネル本体100の上又はその側方に配置された冷却ユニットにより、チャネル本体100を冷却することができるため、チャネル本体100の熱放散と温度降下、及びチャネル本体100の温度制御の目的を実現することができる。
【0042】
図10を参照すると、本実施例により提供される冷却ユニットの好ましい実施形態として、チャネル本体100の外側に配置された空冷装置210を冷却ユニットとして選択することができる。即ち、空気の流れを早めることにより、熱を放散する。
【0043】
具体的には、ファンを採用することができる。ファンの空気出口は、チャネル本体100に面している。ファンの開閉及び作動時間は、Aチャネル110の作動状態に適合され、Aチャネル110の作動期間中に、ファンが連続的に空気を放出してチャネル本体100の熱を放散することを確実にする。ファンの空気出口のサイズ及び範囲は、チャネル本体100の外側輪郭のサイズ及び形状に適合される。
【0044】
図1図9、及び図11図15を参照すると、本実施例により提供される冷却ユニットの別の好ましい実施形態として、冷却ユニットは、チャネル本体100上に配置された冷却キャビティにより構成され、冷却キャビティには冷却流体が収容される。即ち、チャネル本体100に冷却キャビティを配置し、冷却キャビティ内に冷却及び温度降下のための流体を導入することによって、温度降下を実現する。空冷の温度降下方式と比較して、温度降下のために冷却キャビティに流体を導入することは、冷却キャビティの配置の形と範囲が適切である限り、単位時間あたりに冷却流体によって吸収される熱を増やして、冷却効率を向上させることに役立つ。継続的な温度制御を実現するために、冷却流体は循環できることが好ましい。冷却チャネルは、冷却流体入口と冷却流体出口を有する。
【0045】
さらに、チャネル本体100の内側壁に冷却キャビティを配置することと比較して、チャネル本体100の外側壁に冷却キャビティを配置することにより、加工、組み立て、修理が容易になり、また、冷却キャビティ自体の温度降下と熱放散も容易になり、吸収された熱をチャネル本体100に戻すことが防止される。さらに、冷却キャビティがチャネル本体100の内側壁に配置される場合、Aチャネル110の空間の一部が占められ、プラズマの流れ空間がより狭くなる。また、不純物成分00bなどの微粒子は伝送チャネル内で徐々に堆積するため、冷却キャビティがチャネル本体100の内側壁に位置する場合、これらの微粒子は冷却キャビティに堆積し、洗浄の難易度が向上する。従って、冷却キャビティをチャネル本体100の外側壁に配置することは、より信頼できる選択である。図1図9、及び図11図15を参照されたい。
【0046】
より具体的な実施形態では、図9に示すように、冷却キャビティは、チャネル本体100に配置された中間層230により構成され、冷却キャビティには、冷却流体入口と冷却流体出口が配置される。言い換えれば、内側と外側の中間層230の構造が採用され、内側のキャビティ壁は、Aチャネル110の内部と冷却流体を隔離するために使用され、外側のキャビティ壁は、冷却流体と外部を隔離するために使用される。この形態は、冷却流体とチャネル本体100との接触面積を最大化し、それによって冷却効率が大幅に向上する。ただし、この実施形態では、加工テクノロジに対する要件が高くなり、加工コストが非常に高くなる。従って、実施のコストが許容できる場合、この実施形態の採用は最適である。
【0047】
中間層230の構造を採用して冷却キャビティを構成するとき、通常、中間層230のサイズからチャネル本体100のサイズに与える影響が考慮されるため、中間層230の間の距離は一般に大きすぎない。好ましくは、冷却キャビティを形成する中間層230の間の距離は1mm~10mmである。
【0048】
より具体的な別の実施形態では、図1図8、及び図11図15を参照すると、冷却キャビティは、チャネル本体100に配置された螺旋パイプ220により構成され、螺旋パイプ220の一端は冷却流体入口であり、螺旋パイプ220の他端は冷却流体出口である。即ち、螺旋パイプ220は、チャネル本体100の外側壁に外装される。この実施形態は、螺旋パイプ220のパイプ壁とチャネル本体100の外側壁との接触状況に応じて、冷却効果と加工コストを決定する必要がある。当業者は、同じ長さの螺旋パイプ220の場合、螺旋パイプ220のパイプ壁とチャネル本体100の外側壁との接触面積が大きいほど、冷却効率が高くなることを理解することができる。
【0049】
螺旋パイプ220はまた、他の形状と構造のパイプにより置き換えることができる。螺旋状のパイプの形式は、好ましい実施形態の1つにすぎない。
【0050】
図1図8、及び図11図15を参照すると、具体的な実施では、螺旋パイプ220は異なる断面に従って分類される。螺旋パイプ220の断面は、円形、矩形、半円形、楕円形のいずれかである。断面が円形の螺旋パイプ220は、製造が最も容易であり、加工コストが比較的低いが、断面が円形の螺旋パイプは、チャネル本体100の外壁と線接触するため、冷却効果が制限される。断面が楕円形の螺旋パイプ220は、合理的な配置により、チャネル本体100との接触面積を効果的に増加させることができ、それによって冷却効率を向上させ、加工難易度が、断面が円形の螺旋パイプ220よりも大きい。断面が矩形及び半円形の螺旋パイプ220は、チャネル本体100の外面と面接触し、接触面積がより大きく、三者中で冷却効果が最もよいが、加工難易度が最も高い。具体的な実施では、ユーザー自身の条件とニーズに応じて、包括的な検討を行うことができる。
【0051】
螺旋パイプ220の冷却方式を中間層構造の冷却方式と比較して、螺旋パイプ220をチャネル本体100の外側に配置すると、チャネル本体100の外面が不均一な構造を示し、線路などの構造の配置に影響を及ぼし、干渉を引き起こし、使用寿命に影響を与える。一方、中間層構造は上記のことを引き起こさない。中間層は、チャネル本体のチャンバボディ壁内に位置し、外側壁と内側壁によって囲んで形成されるため、チャネル本体100の外面はより平坦でスムーズであり、線路の配置を容易にし、他の構造との干渉を回避する。
【0052】
チャネル本体100の一端は、通常、プラズマ発生器900を接続し、ターゲット材を励起して、プラズマを生成するために使用され、他端は、真空チャンバボディを接続するために使用される。真空チャンバボディには、コーティングされるワークピースが配置される。伝送チャネルの動作プロセス中に、Aチャネル110は、その濾過機能を実現し、磁界00dの制御により方向を調整できない不純物成分00bなどを濾過する。ストレートパイプが使用される場合、大量の不純物成分00bは真空チャンバ1000内に直接入る可能性があり、それによりコーティングの品質が低下する。従って、本実施例の好ましいチャネル本体100は曲がりパイプ又はベンドパイプにより構成される。
【0053】
好ましくは、図6図15を参照すると、Aチャネル110は可変直径のキャビティである。キャビティの直径が大きいほど、プラズマの通過性が良くなる。これは、より多くの微粒子が通過できることを意味する。より小さな直径は、濾過効果を向上させ、磁界00dにより制御できない不純物成分00bをより多く差し止める。具体的には、直径がより大きいか又はより小さい位置は、実際の実施時のニーズに応じて決定することができる。
【0054】
図1図15を参照すると、チャネル本体100は曲がりパイプ又はベンドパイプであるため、A入口120とA出口130のプラズマ流れ方向は必ず異なる。好ましくは、A入口120とA出口130の流れ方向の間の角度の範囲は、30°~270°である。
【0055】
図1図15に示すように、A入口120とA出口130の流れ方向の間の角度は、30°、90°、180°、270°のいずれかである。
【0056】
A入口120とA出口130は、通常、接続の気密性及び安定性を確保するように、他の機器と接続するためにフランジ接続部材500を使用する必要がある。フランジ接続部材500の配置に適合するために、通常、Aチャネル110の両端にそれぞれストレートパイプを移行として配置する必要がある。それにより、フランジ接続部材500とチャネル本体100との接続の気密性や信頼性などのプロセス性能が向上する。これに対し、本出願の実施例の好ましい実施形態では、図1図15に示すように、チャネル本体100は、両端にあるストレートパイプ状のAチャネル本体セクション140とBチャネル本体セクション150を含み、Aチャネル本体セクション140とBチャネル本体セクション150は、弧状のCチャネル本体セクション160を介して互いに接続される。
【0057】
実際の使用では、図6図15を参照すると、Aチャネル本体セクション140とBチャネル本体セクション150の断面サイズは同じであることが好ましい。このような実施の理由は、本出願で提供される伝送チャネル装置が使用されない場合、プラズマ発生器900が真空チャンバ1000に直接接続することもできるためである。これは、通常の状況で2つの機器の接続ポートが一致すべきであることを示すので、Aチャネル本体セクション140とBチャネル本体セクション150の断面サイズは同じであることが好ましい場合がある。さらに、これにより、加工と製造のための材料の統一された選択が容易になり、加工コストを削減できる。Cチャネル本体セクション160の断面サイズは、Aチャネル本体セクション140の断面サイズとは異なる。その理由は、実際にAチャネル110の濾過ニーズ、伝送性能などのニーズに違いがあるためである。実際のニーズに応じて、適切な断面サイズのCチャネル本体セクション160を選択し、Cチャネル本体セクション160の両端をそれぞれAチャネル本体セクション140とBチャネル本体セクション150と組み立てることができる。
【0058】
当然のことながら、プラズマ発生器のインターフェースが真空チャンバ1000のインターフェースと一致しない場合、断面サイズが異なるAチャネル本体セクション140とBチャネル本体セクション150を選択することもできる。
【0059】
また、図11を参照すると、Cチャネル本体セクション160の断面サイズは、Aチャネル本体セクション140とBチャネル本体セクション150の断面サイズと同じであり得る。
【0060】
図6図10、及び図12図15に示すように、通常の状況下では、Cチャネル本体セクション160と、プラズマ発生器900のインターフェース及び真空チャンバ1000のインターフェースのそれぞれとの相対位置は異なる。これに対し、本実施例では、好ましくは、Aチャネル本体セクション140とBチャネル本体セクション150の長さは異なる。
【0061】
当然のことながら、図11を参照すると、Aチャネル本体セクション140とBチャネル本体セクション150の長さは同じであり得る。
【0062】
図1図5を参照すると、本出願の実施例は、上記の実施形態で提供された伝送チャネル装置を含むコーティング機器をさらに提供する。前記コーティング機器は、マグネトロンスパッタリング、真空アーク、化学気相堆積及びピュアイオン真空コーティング機器の1つ又は任意の組み合わせである。
【0063】
本出願の実施例により提供されるコーティング機器は、上記のプラズマ移送の伝送チャネル装置を使用することで、プラズマ中の不純物を濾過することができるだけでなく、動作中にチャネル本体100を冷却しその温度を制御して、伝送チャネル装置が安定した濾過効果を発揮し続けることを保証し、それによってコーティング品質の改善を助けることができる。
【0064】
〈実施例3〉
図1図15を参照すると、本出願の実施例は伝送チャネル装置をさらに提供する。伝送チャネル装置はチャネル本体100を含む。チャネル本体100には、プラズマが通過するためのAチャネル110が形成される。Aチャネル110の両端はそれぞれA入口120とA出口130を構成する。チャネル本体100の内壁には、プラズマの不純物成分00bを吸着するための吸着ユニットが配置される。不純物成分は、中性粒子と微視的な顆粒を含む。
【0065】
本出願の実施例により提供される伝送チャネル装置は、チャネル本体100内にAチャネル110が形成される。プラズマは、Aチャネル110の一端のA入口120から入り、Aチャネル110の他端のA出口130から出力される。チャネル本体100の内壁に吸着ユニットを配置することによって、プラズマ中の不純物成分の吸着が実現され、濾過効果が向上する。
【0066】
また、吸着ユニットは、不純物成分を濾過し除去する機能部分であるため、不純物成分が一定量堆積すると、濾過効果又はプラズマの通過性に影響を与える場合、濾過効果を回復/改善する目的を達成するために吸着ユニットを洗浄することができる。吸着ユニットを分解することができる場合、吸着ユニットの洗浄がより容易になる。これに対し、本出願の実施例では、図1図5を参照すると、吸着ユニットとチャネル本体100は着脱可能に接続されることが好ましい。
【0067】
Aチャネル110内のプラズマに対する濾過効果がさらに向上し、プラズマがA出口130に流れるプロセス中に、不純物が徐々に減少するために、本出願の実施例の好ましい実施形態では、図1図5を参照すると、吸着ユニットは、チャネル本体100の長さ範囲に沿って配置される。吸着ユニットは、チャネル本体100の長さ範囲に沿って配置され、プラズマがチャネルを経由して流れるプロセス中に、プラズマ中の不純物成分00bを徐々に差し止めて、最終的にA出口130から流出するものがすべて荷電イオンと電子であるようにすることができる。また、チャネル本体100の濾過圧力を下げることができ、チャネル本体100は、長さ方向のどこでも機能することができる。プラズマの流れ速度が非常に速いため、局所領域のみでの吸着ユニットの配置は、濾過のニーズを満たすことができない。そのため、吸着ユニットをチャネル本体100の長さ範囲に沿って配置することにより、高速飛行プラズマの不純物を濾過するニーズによりよく適合して、濾過効果を向上させることができる。
【0068】
具体的には、図1図5を参照すると、吸着ユニットは、チャネル本体100の内壁に配置された板部材又は板ブロックにより構成される。板部材の面積は比較的大きいため、板部材の表面積が大きいという特性を十分に活用して、プラズマ中の不純物成分を濾過し除去する目的を達成することができる。
【0069】
プラズマはプラズマ発生器900によって励起されるため、初速度が非常に速く、最初に方向が完全に確定されない。特に、磁界00dにより制御できない中心粒子は、不純物成分00bを濾過し除去するプロセス中に、中心粒子はチャネル本体100の内壁に飛ぶ可能性がある。この状況をできるだけ回避するために、本出願の実施例では、好ましくは、図1図4を参照すると、吸着ユニットは、チャネル本体100の内壁に配置されたリング状板部材410により構成され、リング状板部材410の中心線は、チャネル本体100の中心線と一致し、リング状板部材410は、チャネル本体100の長さ方向に沿って間隔を置いて配置される。濾過のための板部材をリング状に設置することにより、チャネル本体100の内壁の円周方向に沿って配置することができ、不純物成分00bがチャネルの内壁に落下して堆積する確率を高めることができる。それにより、伝送チャネルの不純物成分00bへの吸着性能が向上し、より多くの不純物成分00bが伝送チャネルの内壁に堆積できる。
【0070】
リング状板部材410が平板状である場合、不純物成分00bがチャネル本体100の内壁に堆積する確率を最大限に向上させるために、隣接する2つのリング状板部材410の間の距離はより小さくなる必要があるか、又はリング状板部材410の板面を大きくする必要がある。前者はコストを増加させ、後者はプラズマの流れ通路を制限し、それによりAチャネル110におけるプラズマの伝送に影響を与える。これに対し、本出願の実施例の好ましい実施形態では、図1図4に示すように、リング状板部材410はコーンカバー状を呈し、リング状板部材410の内側リングエッジ部411とA入口120との間の距離は、外側リングエッジ部412とA入口120との間の距離よりも短い。言い換えれば、A入口120の近くに配置されたリング状板部材410の板面は、プラズマの伝送方向に沿って外向き凸状を呈し、A出口130に近い側に配置されたリング状板部材410の板面は、プラズマの伝送方向に沿って内向き凹状を呈する。このように、平板状のリング状板部材410と比較して、プラズマとの有効な接触面積が十分に大きいことを保証するという前提で、隣接する2つのリング状板部材410の間の組み立て距離が増加し、全体的な組み立て数量もはるかに少ないため、コストが節約される。一方、リング状板部材410の内側リングエッジの内径は比較的に大きく、プラズマの伝送を最大限に回避することができる。つまり、濾過効果を向上させるとともに、プラズマの通過性への影響を最小限に抑えることができる。
【0071】
動作原理は次のとおりである。図1図3及び図4に示すように、リング状板部材410の板体断面のエッジ部はチャネル本体100の内壁と夾角をなすように配置され、即ち、リング状板部材410の外面は、チャネル本体100の内壁に対して傾斜して配置される。図から、夾角の開口は下向き、即ち、リング状板部材410の外面はプラズマ発生器側に対向して配置されることがわかる。このように、プラズマの伝送プロセス中に、不純物成分00bは、リング状板部材410の外面に衝突することができる。不純物成分がリング状板部材410の外面に衝突した後、リバウンドが発生した場合、リバウンド方向もチャネル本体100の内壁に向けられる。それにより、不純物成分00bは、リング状板部材410の外面に堆積することができるとともに、チャネル本体100の内壁に堆積することができる。その結果、伝送チャネル内で差し止められる不純物成分00bの量が増加し、チャネル本体100の不純物成分00bへの吸着性能を向上させる効果が達成される。要約すると、チャネル本体100内にリング状板部材410を配置することにより、より多くの不純物成分00bをチャネル本体100内に堆積させることができ、チャネル本体100の不純物成分00bへの濾過性能を向上させる目的を果たす。
【0072】
上記のリング状板部材410とチャネル本体100の内壁との間の角度の範囲は15°~75°である。
【0073】
図1図15を参照すると、チャネル本体100の両端にはフランジ接続部材500が配置される。フランジ接続部材500を介して、プラズマ発生器900及び真空チャンバ1000のそれぞれとの接続が実現され、これにより、接続の安定性及び気密性の改善が保証される。
【0074】
チャネル本体100の側方には磁界装置600が配置される。磁界装置600は、コイル、正極リード及び負極リードを含む。正極リードは、コイルの一端と電源との間に接続され、負極リードは、コイルの他端と電源との間に接続される。言い換えれば、正極リードと負極リードは、それぞれコイルの両端を延ばすことにより形成される。図1図15を参照すると、磁界装置600によって印加された磁界00dの強度は、0.01T~0.98Tである。
【0075】
図1図15を参照すると、磁界装置600は、通電後に電磁界00dを生成することができるコイルにより構成され得る。コイルは、チャネル本体100の長さ方向に沿って配置される。コイルは、チャネル本体100と同心である。このようにして、コイルに電流00cが流れると、生成された磁界00dが荷電イオン00aをガイドする方向は、チャネルの方向と一致することができる。
【0076】
チャネル本体100は、ステンレス、無酸素銅、銅合金、及びアルミニウム合金材料のいずれかを採用する。
【0077】
図1図5を参照すると、本出願の実施例は、上記のプラズマ移送の伝送チャネル装置を含むコーティング機器をさらに提供する。前記コーティング機器は、マグネトロンスパッタリング、真空アーク、化学気相堆積、及びピュアイオン真空コーティング機器の1つ又は任意の組み合わせである。
【0078】
上記の実施例では、チャネル本体100のA入口120は、フランジ接続部材500を介して陽極装置800に接続され、チャネル本体100と陽極装置800との接続部に絶縁板700が配置される。陽極装置800内にプラズマ発生器900が配置される。プラズマ発生器900は、ターゲット材料を励起して、飛散するプラズマを生成するために使用される。プラズマは、荷電イオン00aと不純物成分00bを含む。陽極装置800はまた、プラズマ発生器900に近い一端で他の機器に接続するためのフランジ接続部材500が配置される。チャネル本体100のA出口130は、フランジ接続部材500を介して真空チャンバ1000に接続される。チャネル本体100と真空チャンバ1000との接続部には、絶縁板700が配置される。チャネル本体100はまた、A出口130に近い一端で走査装置1100が配置される。
【0079】
上記の実施例により提供される伝送チャネル装置は、不純物成分00bと微視的な顆粒を濾過し、荷電イオン00aと電子のみを通過させることができるので、膜層の性能が向上する。
【0080】
コーティング機器に伝送チャネル装置が配置されず、プラズマ中の不純物成分00bと微視的な顆粒が濾過されない場合、プラズマ中のすべての粒子、イオン、顆粒、及び不純物は、処理される製品の表面に堆積される。それは、比較的多くの顆粒、比較的大きな顆粒、低い結合力、欠陥、不十分な均一性制御などの膜層の問題を引き起こす。
【0081】
具体的な実施では、Aチャネル110のバイアス電圧設定範囲は0V~30Vである。
【0082】
図6図15を参照すると、Aチャネル本体セクション140の長さはL1として示され、Bチャネル本体セクション150の長さはL2として示される。具体的な実施では、L1とL2が等しくない実施形態を選択することが好ましい理由は次のとおりである。L1とL2の設定がより自由になるため、機器の取り付け、操作、及びメインテナンスがより柔軟になり、ナノ膜層顆粒に対する制御がより柔軟になる。
【0083】
様々な断面形状を有する螺旋パイプ220の長所と短所は以下のように分析される。円形断面を有する螺旋パイプ220は、コストが最も低いが、冷却効果が限られる。矩形断面と半円形断面を有する螺旋パイプ220は、冷却効果が最も高いが、加工が比較的難しく、コストが高い。楕円形断面を有するパイプの冷却効果、加工難易度、及びコストなどは、両者の中間にある。
【0084】
内外中間層230の構造が採用される場合、冷却効果は螺旋パイプ220などのパイプ式冷却方式よりも高いが、コストがより高くなり、加工がより難しくなる。実施者がこの実施形態の加工コストと加工難易度を受け入れることができる場合、それはより好ましい方式である。
【0085】
プラズマの生成方式は、マグネトロンスパッタリング、真空アーク、化学気相堆積、及びピュアイオン真空コーティングの任意の1つ又は任意の組み合わせであり得る。さらに、上記の伝送チャネル装置が適用可能な真空コーティング機器に含まれるプラズマ源のタイプは、マグネトロンスパッタリング、真空アーク、化学気相堆積、及びピュアイオンコーティング源、任意の1つ又は任意タイプの任意数の組み合わせであり得る。
【0086】
上記の伝送チャネル装置が適用可能な真空コーティング機器は、イオンビーム洗浄源を含む。このイオンビーム洗浄源は、高エネルギーイオンを生成し、処理される部品の表面を微視的に衝撃、洗浄、及びエッチングすることができるため、コーティング中に、膜層の結合力がより高く、応力がより小さい。
【0087】
高エネルギーイオンは、高エネルギーアルゴンイオンであることが好ましい。
【0088】
図1至~図5を参照すると、真空コーティング機器は、1つの真空チャンバ1000のみを有する単一真空チャンバボディコーティング機器であってもよいし、複数の真空チャンバ1000を有するマルチ真空チャンバボディコーティング機器であってもよい。真空チャンバ1000の数の範囲は、1個~50個である。
【0089】
真空コーティング機器では、サンプルの伝送方式は、モータ駆動、シリンダー駆動、磁気力駆動などの方式の任意の1つ又は任意のタイプの任意の数の組み合わせであり得る。
【0090】
チャネル本体100の断面形状は、「U」字形、半円形、直角形、異形のいずれかであり得る。
【0091】
Aチャネル110の直径範囲は、10mm~800mmで選択することができる。Aチャネル本体セクション140、Bチャネル本体セクション150の長さは、0mm~2000mmで選択することができる。曲がりパイプの角度範囲、即ち、A出口130とA入口120のプラズマ流れ方向の間の角は、30°~270°で選択することができる。当然のことながら、これらのサイズパラメーターの選択範囲は絶対的なものではなく、当業者は、実際のニーズに応じて、対応するサイズパラメーターの選択範囲を拡大することができる。
【0092】
図6図15参照すると、直線セグメントと曲がりパイプセグメントの直径は同じでも異なっていてもよく、互いに独立している。
【0093】
伝送チャネル装置の加工方式は、溶接、機械加工又はそれらの組み合わせ、及び他の既存の任意の加工方式の任意の1つ又は任意の組み合わせであり得る。
【0094】
具体的な実施では、図1図15を参照すると、チャネル本体100に配置された冷却ユニットは、空冷装置210、銅パイプ水冷、中間層230水冷の任意の1つ、又はこれら3つの任意の組み合わせであり得る。銅パイプ水冷水パイプの断面は、円形、楕円形、半円形、又は矩形であり得る。材料は、銅合金又は純銅であることが好ましい。
【0095】
〈実施例4〉
図1図19Bを参照すると、ダイヤモンド様炭素膜層を例として、伝送チャネル装置を使用する場合と伝送チャネル装置を使用しない場合のコーティング機器のコーティングの品質への影響を比較して説明する。ターゲット材料が2つの等しい部分に分割された。一方の部分は実験組に使用され、他方の部分は対照群に使用された。実験組では、伝送チャネル装置を有するコーティング機器を使用してコーティングを実施した。対照群では、伝送チャネル装置を有しないものを使用してコーティング操作を実施した。実験組と対照群で処理されたワークピースは同じである。
【0096】
他の条件制御が同じであるという前提で、ワークピースをコーティングし、図16A図19Bに示される実験結果図を取得した。
【0097】
実験組の実験結果図は、図16A図17A図18A、及び図19Aである。対照群の実験結果図は、図16B図17B図18B、及び図19Bである。具体的な比較分析は次のとおりである。
【0098】
(1)図16A図16Bに示される結果を比較することにより、以下の結論を得ることができる。実験組の顆粒は小さく、数が少なく、膜層特性がよりよい。対照群の顆粒は大きく、数が多く、膜層特性が比較的悪い。
【0099】
(2)図17A図17Bに示される結果を比較することにより、以下の結論を得ることができる。実験組の膜層とベース製品と結合力はHF1である。対照群の膜層とベース製品との結合力はHF2~HF3である。
【0100】
(3)図18A図18Bに示される結果を比較することにより、以下の結論を得ることができる。実験組の膜層は緻密で欠陥がない。対照群の膜層は粗く、欠陥がある。
【0101】
(4)図19A図19Bに示される結果を比較することにより、以下の結論を得ることができる。実験組の膜層の硬度は30GPa~40GPaに達する。対照群の膜層の硬度は通常20GPa未満である。即ち、対照群と比較して、実験組の膜層の硬度は著しく大きい。
【0102】
要約すると、上記の比較により、実験組のコーティングの品質は対照群よりも明らかに優れていることがわかる。そのため、不純物粒子を濾過するための伝送チャネル装置をコーティング機器に追加することが非常に必要である。
【0103】
以上は本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明の原理から逸脱することなく、幾つかの改良及び修飾を行うことができ、これらの改良及び修飾も発明の保護範囲に含まれることは、当業者にとって明らかである。本発明で具体的に記述し説明されていない構造、装置及び操作方法は、別段の指定及び限定がない限り、当技術分野の従来の手段に従って実施される。
【符号の説明】
【0104】
00a-荷電イオン、00b-不純物成分、00c-電流、00d-磁界、100-チャネル本体、110-Aチャネル、120-A入口、130-A出口、140-Aチャネル本体セクション、150-Bチャネル本体セクション、160-Cチャネル本体セクション、210-空冷装置、220-螺旋パイプ、230-中間層、 410-リング状板部材、411-内側リングエッジ部、412-外側リングエッジ部、500-フランジ接続部材、600-磁界装置、700-絶縁板、800-陽極装置、900-プラズマ発生器、1000-真空チャンバ、1100-走査装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B