(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】画像処理のための自動アッセイ評価および正規化
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20230502BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
G06T7/00 630
G06T7/00 350B
G06T1/00 295
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022045397
(22)【出願日】2022-03-22
(62)【分割の表示】P 2020505322の分割
【原出願日】2018-08-02
【審査請求日】2022-03-28
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507179346
【氏名又は名称】ベンタナ メディカル システムズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100119781
【氏名又は名称】中村 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】ニエ,ヤオ
(72)【発明者】
【氏名】サインツ デ シア,マリア
【審査官】小池 正彦
(56)【参考文献】
【文献】EHTESHAMI BEJNORRDI BABAK ET AL,Stain Specific Standardization of Whole-Slide Histopathological Image,IEEE TRANSACTION ON MEDICAL IMGING,米国,IEEE,2016年02月01日,VOL.35 NO.2,P404-415,DOI:10.1109/TMI.2015.2476509
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のステインで染色された生物学的サンプルの全スライド画像内の第1のステインのタイターを検査し、全スライド画像を
前記第1のステインのタイターに対して正規化する方法であって、
導出された第1のステイン画像特徴に基づいて、全スライド画像の加重平均タイタースコアを
決定するステップ
であって、前記加重平均タイタースコアが、前記全スライド画像に亘るステインの量を予測する値を含むステップと、
前記決定された加重平均スコアが所定のタイター範囲内でない場合に、全スライド画像
の一組の画素をテンプレート画像に対して正規化するステップ
であって、前記一組の画素が、前記第1のステインを示す画素のクラスに属するステップと、
を含み、
全スライド画像が、
(a)全スライド画像の色・濃度分布をテンプレート画像の色・濃度分布と整合させることであり、
前記全スライド画像
の色・濃度分布および
前記テンプレート画像
の色・濃度分布が、濃度情報を組み込んだカラーモデル内で導出される、ことと、
(b)加重変換座標を用いて、濃度情報を組み込んだカラーモデル内で
前記全スライド画像を逆変換することにより
前記全スライド画像のRGB画像を再構成することと、
によって正規化される、
方法。
【請求項2】
前記加重平均タイタースコアが、
(a)
前記全スライド画像中の一連の画像パッチそれぞれから複数の第1のステイン画像特徴を導出することと、
(b)トレーニングされた特徴識別分類器を用いることにより、
前記一連の画像パッチそれぞれから導出された
前記複数の
第1のステインの画像特徴を分類することと、
によって
決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一連の画像パッチが、
(a)
前記全スライド画像から所定数のFOVを抽出することと、
(b)
前記抽出された各FOVの一組のパッチを演算することと、
(c)
閾値パッチ基準を満足する各抽出FOVの
前記一組のパッチのうち、閾値パッチ基準を満たすパッチを保持することと、
(d)前記抽出されたFOVの各々からの、前記保持されたパッチに基づいて、前記全スライド画像に対して、前記一連の画像パッチを識別することと、
によって導出される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
全スライド画像の色・濃度分布が、
(i)
前記全スライド画像の
一連の画像パッチ
の変換を実行して、
前記一連の画像パッチの各々に対して、前記画像パッチの中の各画素の色・濃度分布座標(cx,cy,D)を取得することと、
(ii)テンプレート色座標と同じ平均および配向を有するように
前記全スライド画像中の得られた色分布座標(cx,cy)をシフトおよび回転させ
ることによって、前記一連の画像パッチの各画像パッチの
各画素ごとに位置合わせされた色座標(cx’,cy’)を
生成することと、
(iii)テンプレート濃度分布と同じ加重平均および加重標準偏差を有するように
前記全スライド画像から得られた濃度分布(D)をスケーリング
することによって、
前記一連の画像パッチの各画像パッチの
各画素ごとにスケーリングされた濃度分布(D’)を
生成することと、
によって、テンプレート画像の色・濃度分布と整合される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
加重変換座標が、
(i)
前記一連の画像パッチ中の画素が第1のステイン画素である確率を演算することと、
(ii)
前記演算された確率によって、位置合わせされた色分布座標およびスケーリングされた濃度分布座標(cx’,cy’,D’)を重み付けすることと、
によって導出される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記色・濃度分布の
、テンプレート画像の色・濃度分布との整合
が、所定の統計パラメータを利用
することを含み、
前記所定の統計パラメータが、
前記全スライド画像の加重平均タイタースコアを近似する
特定のタイターレベルに基づいて選択される
、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第1のステインが、ヘマトキシリンである、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記所定のタイター範囲が、4~6である、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
濃度情報を組み込んだカラーモジュールが、HSDカラーモジュールである、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記第1のステイン画像特徴が、ステイン色特徴及びステイン強度特徴である、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
画像化システム(200)の1つ又は複数のプロセッサ(203)によって実行されるときに、前記画像化システムに、請求項1から10のいずれかの方法を実行させる命令を記憶する、非一時的なコンピュータ可読媒体(201)。
【請求項12】
(i)1つ又は複数のプロセッサ(203);及び
(ii)前記1つ又は複数のプロセッサ(203)に結合された1つ又は複数のメモリ、
を備え、
前記1つ又は複数のプロセッサ(203)によって実行されたときに、画像化システム(200)に、請求項1から10のうちの1つに記載の方法を実行させる、コンピュータ実行可能な命令を、前記1つ又は複数のメモリ(201)が記憶する、
画像化システム(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0004]本開示は、生物学的サンプルの画像内のステインのタイターを評価するとともに、当該ステインのタイターをテンプレート画像中の同じステインのタイターに対して正規化する自動化システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0001]デジタル病理学には、コンピュータ画面上で解釈可能なデジタル画像への全病理組織または病理細胞ガラススライドのスキャンを伴う。これらの画像は後々、撮像アルゴリズムによる処理または病理学者による解釈がなされる。組織切片(実質的に透明)を検査するため、細胞成分と選択的に結合する色付きの組織化学的ステインを用いることにより組織切片が作製される。臨床医またはコンピュータ支援診断(CAD)アルゴリズムによる色強調すなわち染色細胞構造の使用によって、疾患の形態学的マーカを識別するとともに、これに応じた治療を進める。アッセイを観察することは、疾患の診断、処置に対する反応の評価、および疾患に効く新たな医薬品の開発等、多様なプロセスを可能にする。
【0003】
[0002]免疫組織化学的(IHC)スライド染色の利用により、組織切片の細胞中のタンパク質を識別可能であるため、生物組織中のがん細胞および免疫細胞等、さまざまな種類の細胞の研究に広く用いられている。このため、IHC染色の研究での使用により、がん組織中の免疫細胞(T細胞またはB細胞等)の異なる発現のバイオマーカの分布および局在を理解して、免疫反応研究に利用することができる。たとえば、腫瘍は、免疫細胞の浸潤物を含むことが多く、腫瘍の出現を抑える場合もあれば、腫瘍の増殖に寄与する場合もある。
【0004】
[0003]in-situハイブリダイゼーション(ISH)の使用により、顕微鏡下での観察の場合、具体的には形態学的に悪性に見える細胞中の発がん遺伝子の増幅等の遺伝学的異常または状態の有無を調べることができる。in-situハイブリダイゼーション(ISH)では、細胞または組織サンプル内の対象となる核酸の標的遺伝子を検出または特定するために標的遺伝子配列または転写物に対してアンチセンスである標識DNAまたはRNAプローブ分子を採用する。ISHは、細胞または組織サンプル中の所与の標的遺伝子に対して特異的にハイブリダイズ可能な標識核酸プローブに対して、ガラススライドに固定された細胞または組織サンプルを曝露することにより実行される。複数の異なる核酸タグで標識された複数の核酸プローブに対して細胞または組織サンプルを曝露することにより、複数の標的遺伝子が同時に分析され得る。発光波長の異なる標識を利用することにより、単一の標的細胞または組織サンプル上の1回のステップにおいて、同時多色分析が実行されるようになっていてもよい。たとえば、Ventana Medical Systems,Inc.によるINFORM HER2 Dual ISH DNA Probe Cocktail Assayは、HER2遺伝子の第17染色体に対する比の列挙によって、HER2遺伝子のステータスを決定することが意図される。HER2および第17染色体プローブは、ホルマリン固定・パラフィン包埋ヒト乳がん組織標本における2色発色ISHの使用により検出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]ほとんどのデジタル病理学撮像アルゴリズムは一定の染色濃度で機能するように設計されているが、処理される実際のスライドは、ヘマトキシリン濃度またはタイターレベルの変動が広範に及ぶ可能性がある。任意特定の理論に縛られることを望まないなら、このようなステインの色および強度の変動によって、スライド中のヘマトキシリンステイ
ンが暗くなり過ぎたり薄くなり過ぎたりするため、このようなステインタイターの急激な変動を考慮した設計となっていない画像処理アルゴリズムに誤差が生じ得ると考えられる。実際、処理アルゴリズムは通例、所定の染色濃度内で作用するように調節されており、濃度がこの範囲外となった場合は、アルゴリズムが機能しなくなる可能性がある。開示の画像正規化システムおよび方法の使用により、画像内の濃度(または、タイター)は、任意の画像処理アルゴリズムの所定の染色濃度範囲内となるように調整され得る。このように、自動化ステイン正規化のための開示のシステムおよび方法は、ステインの色および強度の変動の抑制を可能にする。また、本明細書に開示の自動化システムおよび方法は、たとえば生物学的サンプルのスコアリングまたは組織画像内の特徴の定量化を行う取得画像の拡張下流処理を可能にする。
【0006】
[0006]取得画像中のすべてのステインを正規化可能ではあるものの、そうすることが望ましくない場合が多い。特定のステインの強度は、具体的な生物学的指標に関連し得るためである。たとえば、がん免疫療法の標的として、プログラム死1(PD-1)がT細胞に発現し、免疫系を下方制御する抑制性受容体として機能する。PD-1の発現レベルは、DABステイン強度により特性化され得る。したがって、DABの正規化は、組織サンプル中のPD-1発現レベル情報を歪ませ得ると考えられるため、望ましくない。また、核(たとえば、エストロゲン受容体(ER))をマークするカウンタステインとステインが常に共局在化される状況が存在する可能性もある。このような場合は、カウンタステインのヘマトキシリン(HTX)との混合物中にDABが現れ得るため、純粋なDAB色分布を抽出して正規化に利用することは不可能である。出願人らは、細胞の核をマークするヘマトキシリンがさまざまなスライドにわたる堅牢な正規化を可能にすることを発見した。出願人らは、本明細書に記載のシステムおよび方法が純粋なヘマトキシリンステインのほか、他のステインと共局在化されたヘマトキシリンステイン(これまでは対処されず)の正規化を可能にするものと考える。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007]本開示の一態様は、クエリ画像内の第1のステインのタイターをテンプレート画像中の第1のステインのタイターに対して正規化する方法であり、クエリ画像が少なくとも第1のステインで染色された生物学的サンプルの画像である、方法であって、(i)濃度成分を含むカラーモデル内でクエリ画像中の色・濃度分布座標を導出するステップと、(ii)導出されたクエリ画像中の色分布座標をテンプレート画像の色分布座標と位置合わせして、変換色分布座標を提供するステップと、(iii)導出されたクエリ画像中の濃度分布座標をテンプレート画像の濃度分布座標でスケーリングして、変換濃度分布座標を提供するステップと、(iv)加重変換色・濃度分布座標を用いることにより、濃度成分を含むカラーモデル内でクエリ画像を逆変換することによってRGB画像を再構成するステップと、を含み、位置合わせおよびスケーリングが、クエリ画像の推定タイターレベルに特有の所定のパラメータ値を利用する、方法である。任意特定の理論に縛られることを望まないなら、所定のパラメータ値または位置合わせおよびスケーリングパラメータのルックアップテーブルの使用は、確実なステインの色または強度統計値を導出するには純粋なステインの画素数が不十分である場合等に、正規化パラメータの堅牢な識別を可能にすると考えられる。いくつかの実施形態において、濃度成分を含むカラーモデルは、HSDカラーモデルである。
【0008】
[0008]いくつかの実施形態において、所定のパラメータ値は、既知の第1のステインタイターレベルで決定された導出平均、角度、およびスケーリングパラメータである。いくつかの実施形態において、所定のパラメータ値は、複数のタイターレベルで少なくとも第1のステインのパラメータ値を含むデータベースに格納され、位置合わせおよびスケーリングの実行に最適なパラメータ値が選択されるように、クエリ画像中の推定された第1のステインタイターレベルが複数のタイターレベルのうちの1つと整合される。いくつかの
実施形態において、第1のステインは、ヘマトキシリンであり、所定のパラメータ値は、クエリ画像内の推定されたヘマトキシリンタイターレベルに対応する。いくつかの実施形態において、推定タイターレベルは、正規化に先立って決定される。いくつかの実施形態において、推定タイターレベルは、正規化中(たとえば、濃度成分を含むカラーモデル(たとえば、HSDカラーモデル)へとRGBクエリ画像を変換した後、画素ごとの変換座標の導出に先立って)に決定される。
【0009】
[0009]いくつかの実施形態において、クエリ画像の推定タイターレベルは、導出された第1のステイン色・強度特徴に基づいて、クエリ画像の加重平均(または、モード)タイタースコアを演算することにより決定される。いくつかの実施形態において、加重平均スコアは、(a)クエリ画像中の一連のパッチそれぞれから複数の第1のステイン画像特徴を導出することと、(b)トレーニングされたタイター識別分類器を用いることにより、画像パッチそれぞれから導出された複数の画像特徴を分類することと、によって演算される。いくつかの実施形態において、タイター識別分類器は、第1のステインタイターレベルをクラス標識として用いることにより標準化サンプルから導出された第1のステイン色・強度特徴に対してトレーニングされたマルチクラス分類器である。いくつかの実施形態において、一連のパッチは、クエリ画像から所定数のFOV(たとえば、50個のFOV)を抽出することと、(b)抽出された各FOVの一組のパッチを演算することと、(c)各抽出FOVの一組のパッチのうち、閾値パッチ基準を満たすパッチを保持することと、によって導出される。いくつかの実施形態において、第1のステインは、ヘマトキシリンであり、基準は、(i)パッチ中の画素の70%超が0より高い(カラーデコンボリューションにより得られた)ヘマトキシリン信号を有する必要があること、(b)画素の50%超が何らかの染色を有する必要があること、および(c)画素の1/3超がガウシアンフィルタリングの差により決定される「細胞様」構造に配置される必要があることを含む。
【0010】
[0010]いくつかの実施形態において、加重変換色・濃度分布座標は、(i)パッチ中の画素が第1のステイン画素である(すなわち、画素が第1のステインを有する)確率を演算することと、(ii)演算された確率で変換色・濃度分布座標を重み付けすることと、によって導出される。いくつかの実施形態において、位置合わせは、テンプレート色分布座標と同じ平均および配向を有するように、導出されたクエリ画像中の色分布座標をシフトおよび回転させることを含む。いくつかの実施形態において、スケーリングは、テンプレート画像中の第1のステイン画素の濃度と同じ加重平均および加重標準偏差を有するように、導出された濃度分布座標を変換することを含む。いくつかの実施形態において、色・濃度分布座標は、クエリ画像中の一連のパッチの画素ごとに導出される。
【0011】
[0011]いくつかの実施形態において、この方法は、正規化および/またはタイター評価に先立ってRGB画像を分離するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、この方法は、少なくとも第1のステインで染色された細胞から、核、膜、形態、および/または他の細胞特徴を抽出するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、抽出された核、膜、形態、および/または他の細胞特徴は、細胞が腫瘍細胞であるとの分類等、細胞の分類に使用される。いくつかの実施形態において、RGB再構成中の色位置合わせの場合は、カラーデコンボリューションに用いられる元のHTX色基準ベクトルの採用の代わりに、テンプレート画像中の純粋なHTX画素からの正規化平均RGB ODベクトルが再構成に用いられる。
【0012】
[0012]本開示の別の態様は、1つまたは複数のステインで染色された生物学的サンプルの全スライド画像内の第1のステインのタイターを検査し、全スライド画像を第1のステインのタイターに対して正規化する方法であって、(i)導出された第1のステイン画像特徴に基づいて、全スライド画像の加重平均タイタースコアを演算するステップと、(i
i)演算された加重平均スコアが所定のタイター範囲内でない場合に、全スライド画像をテンプレート画像に対して正規化するステップと、を含み、全スライド画像が、(a)全スライド画像の色・濃度分布をテンプレート画像の色・濃度分布と整合させることであり、全スライド画像およびテンプレート画像の両者の色・濃度分布が、濃度成分を含むカラーモデル内で導出される、ことと、(b)加重変換座標を用いて、濃度成分を含むカラーモデル内で全スライド画像を逆変換することによりRGB画像を再構成することと、によって正規化される、方法である。いくつかの実施形態において、所定のタイター範囲は、およそ3~およそ6である。いくつかの実施形態において、濃度成分を含むカラーモデルは、HSDカラーモデルである。
【0013】
[0013]いくつかの実施形態において、加重平均スコアは、(a)全スライド画像中の一連の画像パッチそれぞれから複数の第1のステイン画像特徴を導出することと、(b)トレーニングされた特徴識別分類器を用いることにより、画像パッチそれぞれから導出された複数の画像特徴を分類することと、によって演算される。いくつかの実施形態において、一連の画像パッチは、全スライド画像から所定数のFOVを抽出することと、(b)抽出された各FOVの一組のパッチを演算することと、(c)各抽出FOVの一組のパッチのうち、閾値パッチ基準を満たすパッチを保持することと、によって導出される。いくつかの実施形態において、第1のステイン画像特徴は、ステイン色特徴およびステイン強度特徴である。
【0014】
[0014]いくつかの実施形態において、全スライド画像の色・濃度分布は、(i)全スライド画像の画像パッチ内で変換(たとえば、HSD変換)を実行して、画像パッチそれぞれのすべての画素の色・濃度分布座標(cx,cy,D)を取得することと、(ii)テンプレート色座標と同じ平均および配向を有するように全スライド画像中の得られた色分布座標(cx,cy)をシフトおよび回転させて、各画像パッチの画素ごとに位置合わせされた色座標(cx’,cy’)を提供することと、(iii)テンプレート濃度分布と同じ加重平均および加重標準偏差を有するように全スライド画像から得られた濃度分布(D)をスケーリングして、各画像パッチの画素ごとにスケーリングされた濃度分布(D’)を提供することと、によって、テンプレート画像の色・濃度分布と整合される。いくつかの実施形態において、加重変換座標は、(i)画像パッチ中の画素が第1のステイン画素である確率を演算することと、(ii)演算された確率によって、位置合わせされた色分布座標およびスケーリングされた濃度分布座標(cx’,cy’,D’)を重み付けすることと、によって導出される。いくつかの実施形態において、RGB再構成中の色位置合わせの場合は、カラーデコンボリューションに用いられる元のHTX色基準ベクトルの採用の代わりに、テンプレート画像中の純粋なHTX画素からの正規化平均RGB ODベクトルが再構成に用いられる。
【0015】
[0015]いくつかの実施形態において、得られた色・濃度分布のテンプレート色・濃度分布との整合には、所定の統計パラメータを利用するが、選定される所定の統計パラメータは、全スライド画像の加重平均タイタースコアを近似するタイターレベルにとって特別である。たとえば、第1のステインの推定タイターレベルが3の場合、この方法は、既知のタイターレベル3で第1のステインに対応するデータベースから所定の統計パラメータを読み出す。いくつかの実施形態において、第1のステインは、ヘマトキシリンである。いくつかの実施形態において、第1のステインは、ヘマトキシリンであり、所定の統計パラメータは、導出された色・濃度分布座標の全スライド画像からテンプレート画像への位置合わせおよびスケーリングに用いられる。
【0016】
[0016]本開示の別の態様は、クエリ画像内の第1のステインのタイターをテンプレート画像中の第1のステインのタイターに対して正規化する撮像システムであり、クエリ画像が少なくとも第1のステインで染色された生物学的サンプルの画像である、撮像システム
であって、(i)画像取得デバイスと、(ii)1つまたは複数のプロセッサと、(iii)プロセッサに結合され、当該1つまたは複数のプロセッサにより実行された場合に、(a)濃度成分を含むカラーモデル内で、クエリ画像において生成されたパッチの画素ごとに色・濃度分布座標を導出することと、(b)クエリ画像の推定タイターレベルに特有の所定の位置合わせおよびスケーリングパラメータ値を用いて、生成されたパッチの画素ごとに導出された色・濃度分布座標を変換することにより、変換色・濃度分布座標を提供することと、(c)画素確率値により重み付けされた変換色・濃度分布座標を用いて、濃度成分を含むカラーモデル内でクエリ画像を逆変換することによりRGB画像を再構成することと、を含む動作を1つまたは複数のプロセッサに実行させるコンピュータ実行可能命令を格納するメモリと、を備えた、撮像システムである。いくつかの実施形態において、この撮像システムは、染色装置をさらに備える。いくつかの実施形態において、生物学的サンプルは、少なくとも2つのステインで染色されている。いくつかの実施形態において、第1のステインは、ヘマトキシリンである。いくつかの実施形態において、濃度成分を含むカラーモデルは、HSDカラーモデルである。
【0017】
[0017]いくつかの実施形態において、生成されたパッチの画素ごとに導出された色・濃度分布座標の変換には、(a)テンプレート色座標と同じ平均および配向を有するように、生成されたパッチの画素ごとに導出された色分布座標(cx,cy)をシフトおよび回転させて、生成されたパッチの画素ごとに変換色座標(cx’,cy’)を提供することと、(b)テンプレート濃度分布と同じ加重平均および加重標準偏差を有するように、生成されたパッチの画素ごとに得られた濃度分布(D)をスケーリングして、生成されたパッチの画素ごとに変換濃度分布(D’)を提供することと、を含む。いくつかの実施形態において、パッチは、クエリ画像から所定数のFOVを抽出することと、(b)抽出された各FOVの一組のパッチを生成することと、(c)各抽出FOVの一組のパッチのうち、閾値パッチ基準を満たすパッチを保持することと、によって生成される。
【0018】
[0018]いくつかの実施形態において、加重変換色・濃度分布座標は、(i)画素が第1のステイン画素である確率を演算することと、(ii)演算された確率で変換色・濃度分布座標を重み付けすることと、によって導出される。
【0019】
[0019]いくつかの実施形態において、複数のタイターレベルにおいて第1のステインに特有の位置合わせおよびスケーリングパラメータ値は、メモリに格納される。いくつかの実施形態において、クエリ画像の推定タイターレベルは、導出された第1のステイン色・強度特徴に基づいて、クエリ画像の加重平均タイタースコアを演算することにより決定され、選択される位置合わせおよびスケーリングパラメータがクエリ画像の加重平均タイタースコアを近似する。いくつかの実施形態において、加重平均スコアは、(a)クエリ画像中の生成されたパッチから複数の第1のステイン画像特徴を導出することと、(b)トレーニングされたタイター識別分類器を用いることにより、生成されたパッチそれぞれから導出された複数の画像特徴を分類することと、によって演算される。いくつかの実施形態において、タイター識別分類器は、第1のステインタイターレベルをクラス標識として用いることにより標準化サンプルから導出された第1のステイン色・強度特徴に対してトレーニングされたマルチクラス分類器である。
【0020】
[0020]本開示の別の態様は、1つまたは複数のステインで染色された生物学的サンプルの全スライド画像内の第1のステインのタイターを検査し、全スライド画像を第1のステインのタイターに対して正規化する非一時的コンピュータ可読媒体であって、(i)導出された第1のステイン画像特徴に基づいて、全スライド画像の加重平均タイタースコアを演算することと、(ii)第1のステインの全スライド画像のタイターをテンプレート画像の第1のステインのタイターに対して正規化することと、を含み、全スライド画像が、(a)濃度成分を含むカラーモデル内でクエリ画像中の色・濃度分布座標を導出すること
と、(b)導出されたクエリ画像中の色分布座標をテンプレート画像の色分布座標と位置合わせして、変換色分布座標を提供することであり、位置合わせが、テンプレート色分布座標と同じ平均および配向を有するように、導出されたクエリ画像中の色分布座標をシフトおよび回転させることを含み、位置合わせステップが、全スライド画像の演算された加重平均タイタースコアと整合された所定の位置合わせパラメータを利用する、ことと、(c)導出されたクエリ画像中の濃度分布座標をテンプレート画像の濃度分布座標でスケーリングして、変換濃度分布座標を提供することであり、スケーリングが、テンプレート濃度分布座標と同じ加重平均および加重標準偏差を有するように、導出された濃度分布座標を変換することを含み、スケーリングステップが、全スライド画像の演算された加重平均タイタースコアと整合された所定のスケーリングパラメータを利用する、ことと、(d)加重変換色・濃度分布座標を用いて、濃度成分を含むカラーモデル内でクエリ画像を逆変換することによりRGB画像を再構成することと、によって正規化される、非一時的コンピュータ可読媒体である。いくつかの実施形態において、第1のステインは、ヘマトキシリンである。いくつかの実施形態において、生物学的サンプルは、免疫組織化学アッセイおよび/またはin-situハイブリダイゼーションアッセイにおいて1つまたは複数のステインで染色されている。いくつかの実施形態において、濃度成分を含むカラーモデルは、HSDカラーモデルである。
【0021】
[0021]いくつかの実施形態において、全スライド画像中の第1のステインは、演算された加重平均タイタースコアが所定の閾値タイタースコア範囲外となった場合、テンプレート画像の第1のステインのタイターに対して正規化される。いくつかの実施形態において、所定の閾値タイタースコアは、およそ3~およそ6の範囲である。いくつかの実施形態において、導出された第1のステイン画像特徴に基づく全スライド画像の加重平均タイタースコアは、(a)全スライド画像から所定数のFOVを抽出することと、(b)抽出された各FOVの一組のパッチを演算することと、(c)一組のパッチ内の各パッチから、複数の第1のステイン色・強度特徴を導出することと、(d)トレーニングされたタイター分類器を用いて、導出された複数の第1のステイン色・強度特徴を分類することと、(e)すべてのパッチからの分類結果に基づいて、加重平均スコアを演算することと、によって演算される。
【0022】
[0022]いくつかの実施形態において、非一時的コンピュータ可読媒体は、関心領域を識別する命令をさらに含む。いくつかの実施形態において、非一時的コンピュータ可読媒体は、入力画像を各ステインの個々のチャネル画像へと分離する命令をさらに含む。いくつかの実施形態において、非一時的コンピュータ可読媒体は、正規化後に細胞または核の付加的な特徴を導出するする命令をさらに含む。いくつかの実施形態において、非一時的コンピュータ可読媒体は、生物学的サンプルをスコアリングする命令をさらに含み、このスコアリングは、生物学的サンプルが染色された特定のアッセイに特有である。
【0023】
[0023]特許または出願包袋には、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。要請があれば、必要な料金の支払いを受けて、カラー図面を含む本特許または特許出願公開の写しが特許庁により提供される。
【0024】
[0024]本開示の特徴の全体理解のため、図面が参照される。図面全体を通して、同一要素の識別には、同様の参照番号が用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】[0025]画像取得デバイスおよびコンピュータシステムを具備する代表的なデジタル病理学システムを示した図である。
【
図2】[0026]デジタル病理学システムまたはデジタル病理学ワークフローにおいて利用され得るさまざまなモジュールを示した図である。
【
図3A】[0027]画像中のステインのタイターを評価するステップの全体を示した図である。
【
図3B】[0028]クエリ画像中のステインのタイターをテンプレート画像のステインのタイターに対して正規化するステップの全体を示した図である。
【
図3C】[0029]ステインのタイターを評価した後に画像を正規化するステップの全体を示した図である。
【
図3D】[0030]正規化プロセスの一部としてステインのタイターを評価するステップの全体を示した図である。
【
図4】[0031]FOV選択の一例を示した図である。
【
図5】[0032]
図5Aは、RGBカメラ信号が3D座標空間として観察され得ることを示し、カメラ限界が空間を立方体(RGB立方体)に制限するとともに、個々のチャネル強度の最大値に等しい一定の全体強度を有する三角形を示した図である。 [0033]
図5Bは、RGBデータの投射の結果としての平面を示した図である。
【
図6】[0034]クエリ画像中のステインのタイターをテンプレート画像中の同じステインのタイターに対して正規化するステップを示した図である。
【
図7】[0035]50個のFOVが例示的な全スライド(低倍率)画像に重ね合わされた後の当該全スライド画像を示し、50個のFOV(赤色正方形)が全スライドの80%ヘマトキシリンレベルに最も近いものとして選択された図である。
【
図8】[0036]色正規化例であって、タイター1のクエリ画像がテンプレートタイター4を有するように正規化された場合(
図8(a)および
図8(b))ならびにタイター9のクエリ画像がテンプレートタイター4を有するように正規化された場合(
図8(c)および
図8(d))を示した図である。
【
図9】[0037]クエリデータセット(
図9(A))およびトレーニング集合(
図9(B))について、タイター1のHERを含むFOVを示した図である(本明細書の表2参照)。
【
図10】[0038]3つの異なるブロック(81個の全スライド画像)にわたる非染色細胞の数の平均的な変動を示した図である。
【
図11】[0039]異なるヘマトキシリンステインを含むエストロゲン受容体(ER)染色乳がん画像を示し、3つの異なる臨床検査室からのスライドが20倍の倍率でスキャンされた図である。
【
図12】[0040]WSIにおいて選択されたFOVの一例(
図12(a))、タイター1のスライドからのサンプルFOV(
図12(b))、タイター9のスライドからのサンプルFOV(
図12(c))、テンプレートスライドからのサンプルFOV(
図12(d))、タイター1のスライドからの正規化サンプルFOV(
図12(e))、およびタイター9のスライドからの正規化サンプルFOV(
図12(f))を示した図である。
【
図13】[0041]ステイン正規化前後のHER2腫瘍細胞検出アルゴリズム出力の比較であって、細胞数比較(
図13(A))および出力一貫性比較(
図13(B))を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[0042]別段の明確な指定のない限り、2つ以上のステップまたは動作を含む本明細書に請求の如何なる方法においても、そのステップまたは動作の順序は、当該ステップまたは動作が列挙された順序に必ずしも限定されないことが了解されるものとする。
【0027】
[0043]本明細書において、単数の用語「a」、「an」、および「the」は、文脈上の別段の明確な指定のない限り、複数の指示対象を含む。同様に、単語「または(or)」は、文脈上の別段の明確な指定のない限り、「および(and)」を含むことが意図される。用語「含む(includes)」は、「AまたはBを含む(includes A or B)」がA、B、またはAおよびBを含むことを意味するように、包含的に定義される。
【0028】
[0044]本明細書および特許請求の範囲において、「または(or)」は、上記定義の「および/または(and/or)」と同じ意味を有することが了解されるものとする。たとえば、リストにおいて項目を分離する場合、「または(or)」または「および/または(and/or)」は、包含的であるものと解釈され、多数または一覧の要素のうちの少なくとも1つだが、2つ以上を包含してもよく、また、任意選択として付加的なリスト外の項目を包含することも可能であるものとする。「~のうちの1つだけ(only one of)」もしくは「~のうちのちょうど1つだけ(exactly one of)」等の別段の明確な指定がなされた用語または特許請求の範囲において使用される「~から成る(consisting of)」という用語のみ、多数または一覧の要素のうちのちょうど1つの要素の包含を表す。一般的に、本明細書における用語「または(or)」は、「either」、「one of」、「only one of」、または「exactly one of」等の排他的な用語が先行する場合に排他的な選択肢(すなわち、「一方または他方であるが、両方ではない(one or the other but not both)」)を示す旨の解釈のみがなされるものとする。特許請求の範囲において使用される「~から本質的に成る(consisting essentially of)」は、特許法の分野において使用される場合の元の意味を有するものとする。
【0029】
[0045]用語「備える(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」等は、区別なく使用され、同じ意味を有する。同様に、「備える(comprises)」、「含む(includes)」、「有する(has)」等は、区別なく使用され、同じ意味を有する。具体的に、これらの用語はそれぞれ、「備える(comprising)」の米国特許法における一般的な定義と矛盾なく定義されているため、「少なくとも以下の(at least the following)」を意味するオープンな用語として解釈され、また、付加的な特徴、限界、態様等を除外しないものと解釈される。このため、たとえば「構成要素a、b、およびcを有するデバイス(a device having components a, b, and c)」は、当該デバイスが少なくとも構成要素a、b、およびcを具備することを意味する。同様に、表現「ステップa、b、およびcを含む方法(a method involving steps a, b, and c)」は、当該方法が少なくともステップa、b、およびcを含むことを意味する。さらに、本明細書においては、ステップおよびプロセスが特定の順序で説明される可能性があるものの、当業者であれば、ステップおよびプロセスの順序が変動し得ることが認識されよう。
【0030】
[0046]本明細書および特許請求の範囲において、表現「少なくとも1つ(at least one)」は、一覧の1つまたは複数の要素を参照して、要素一覧における要素のうちのいずれか1つまたは複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素一覧に具体的に掲載されたありとあらゆる要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含まず、また、要素一覧における要素の如何なる組み合わせも除外しないことが了解されるものとする。また、この定義によれば、表現「少なくとも1つ(at least one)」が参照する要素一覧内で具体的に識別された要素と関係するか否かに関わらず、これらの要素以外の要素が任意選択として存在し得る。このため、非限定的な一例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ(at least one of A and B)」(または同等に、「AまたはBのうちの少なくとも1つ(at least one of A or B)」もしくは「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ(at least one of A and/or B)」)は、一実施形態において、少なくとも1つ(任意選択として、2つ以上)のA(Bは存在せず(任意選択として、B以外の要素を含む))、別の実施形態において、少なくとも1つ(任意選択として、2つ以上)のB(Aは存在せず(任意選択として、A以外の要素を含む))、さらに別の実施形態において、少なくとも1つ(任意選択として、2つ以上)のAおよび少なくとも1つ(任意選択として、2つ以上)のB(任意選択として、他の要素を含む)等を表し得る。
【0031】
[0047]本明細書において、用語「生物学的サンプル(biological sample)」または「組織サンプル(tissue sample)」は、ウイルスを含む任意の有機体から得られた生体分子(タンパク質、ペプチド、核酸、脂質、糖質、またはこれらの組み合わせ等)を含む任意のサンプルを表す。有機体の他の例としては、哺乳類(たとえば、ヒト、猫、犬、馬、牛、および豚等の家畜動物、ならびにマウス、ラット、および霊長類等の実験動物)、昆虫、環形動物、クモ形類動物、有袋動物、爬虫類、両生類、バクテリア、および菌類が挙げられる。生物学的サンプルには、組織サンプル(たとえば、組織切片および組織の針生検標本)、細胞サンプル(たとえば、パップ塗抹標本もしくは血液塗抹標本等の細胞学的塗抹標本または顕微解剖により得られた細胞のサンプル)、または細胞分画、細胞片、もしくは細胞小器官(たとえば、細胞を溶解させ、遠心分離等によって細胞成分を分離したもの)を含む。生物学的サンプルの他の例としては、血液、血清、尿、精液、糞便物質、脳脊髄液、間質液、粘液、涙、汗、膿、(たとえば、外科生検もしくは針生検により得られた)生検組織、乳頭吸引液、耳垢、母乳、膣液、唾液、スワブ(口腔スワブ等)、または第1の生物学的サンプルから導出された生体分子を含む任意の物質が挙げられる。特定の実施形態において、本明細書における用語「生物学的サンプル(biological sample)」は、被験者から得られた腫瘍またはその一部から作製されたサンプル(均質化または液化サンプル)を表す。
【0032】
[0048]本明細書において、用語「バイオマーカ(biomarker)」または「マーカ(marker)」は、何らかの生物学的状態または条件の測定可能なインジケータを表す。特に、バイオマーカは、特異的に染色可能で、細胞の生物学的特徴(たとえば、細胞の種類または細胞の生理学的状態)を示すタンパク質またはペプチド(たとえば、表面タンパク質)であってもよい。免疫細胞マーカは、哺乳類の免疫反応に関する特徴を選択的に示すバイオマーカである。バイオマーカは、疾患もしくは病気の処置に対する身体の反応の決定または被験者が疾患もしくは病気に罹りやすいかの判定に用いられるようになっていてもよい。がんに関して、バイオマーカは、体内のがんの有無を示す生物学的物質を表す。バイオマーカは、腫瘍から分泌される分子またはがんの存在に対する身体の具体的反応であってもよい。がんの診断、予後診断、および疫学には、遺伝子バイオマーカ、後成的バイオマーカ、プロテオームバイオマーカ、グリコミックバイオマーカ、および撮像バイオマーカを使用可能である。このようなバイオマーカは、血液または血清等の非侵襲的に収集された生体液において検査され得る。複数の遺伝子およびタンパク質ベースのバイオマーカが患者ケアにおいてすでに使用されており、AFP(肝臓がん)、BCR-ABL(慢性骨髄性白血病)、BRCA1/BRCA2(乳がん/卵巣がん)、BRAF V600E(黒色腫/大腸がん)、CA-125(卵巣がん)、CA19.9(膵臓がん)、CEA(大腸がん)、EGFR(非小細胞肺がん)、HER-2(乳がん)、KIT(消化管間質系主要)、PSA(前立腺特異抗原)、S100(黒色腫)、その他多くが挙げられるが、これらに限定されない。バイオマーカは、(早期がんを識別する)診断法および/または(がんの進行の予想ならびに/または特定の処置に対する被験者の反応および/もしくはがんの再発の可能性の予測を行う)予後診断法として有用と考えられる。
【0033】
[0049]本明細書において、用語「斑点(blob)」は、識別された核中心/種子の周りの一群の連結画素であって、核を表す。
[0050]本明細書において、用語「色チャネル(color channel)」は、画像センサのチャネルを表す。たとえば、画像センサは、赤(R)、緑(G),および青(B)等の3つの色チャネルを有していてもよい。
【0034】
[0051]本明細書において、用語「視野(field of view(FOV))」は、所定のサイズおよび/または形状を有する画像部分を表す。いくつかの実施形態において、FOVは、別途手動または自動検査および分析に用いられるデジタル画像の領域である。FOVは、デジタル画像の一部特徴の分析(たとえば、デジタル画像の画素の強度値の評価)によって自動または手動で選択されるようになっていてもよい。
【0035】
[0052]本明細書において、用語「画像データ(image data)」は、本明細書における理解の通り、光学センサまたはセンサアレイ等によって生物学的組織サンプルから取得された生の画像データまたは前処理された画像データを含む。特に、画像データは、画素行列を含んでいてもよい。本明細書において、用語「免疫組織化学(immunohistochemistry)」は、抗体等の特定の結合剤との抗原の相互作用を検出してサンプル中の抗原の有無または分布を決定する方法を表す。サンプルは、抗体-抗原結合を可能にする条件下で抗体と接触される。抗体-抗原結合は、抗体に接合された検出可能な標識による検出(直接検出)または主抗体と特異的に結合する副抗体に接合された検出可能な標識による検出(間接検出)が可能である。本明細書において、「マスク(mask)」は、デジタル画像の派生語であって、マスクの各画素が2進値(たとえば、「1」もしくは「0」(または、「真」もしくは「偽」))として表される。デジタル画像に前記マスクを重ねることにより、デジタル画像に適用される別途処理ステップにおいては、2進値のうちの特定の1つのマスク画素にマッピングされたデジタル画像のすべての画素が隠蔽、削除、あるいは無視または除去される。たとえば、真あるいは偽の閾値を上回る強度値を元の画像のすべての画素に割り当て、「偽」でマスクされた画素が重なるすべての画素を除去することによって、元のデジタル画像からマスクが生成され得る。
【0036】
[0053]「マルチチャネル画像」は、本明細書における理解の通り、異なるスペクトル帯における蛍光あるいは検出可能性によってマルチチャネル画像のチャネルのうちの1つを構成する特定の蛍光染料、量子ドット、色原体等によって、核および組織構造等の異なる生物学的構造が同時に染色される生物学的組織サンプルから得られたデジタル画像を含む。
【0037】
[0054]本明細書において、用語「RGB色空間(RGB color space)」は、赤-緑-青(RGB)カラーモデルに基づく任意の加法色空間を表す。特定のRGB色空間は、赤、緑、および青という加法原色の3つの色度により規定され、これらの原色により規定される三角形である任意の色度を生成可能である。RGB色空間の完全な仕様には、白色点色度およびガンマ補正カーブも要する。
【0038】
[0055]本明細書において、「テンプレート画像(template image)」は、基準として用いられる特性が既知の画像を表す。その他の画像が当該画像に類似するように、この画像の染色が後続の分析に適当であるものと決定されている。
【0039】
[0056]本明細書において、用語「タイター(titer)」は、サンプル内のステインの濃度または量を表す。一般的に、タイターレベル値は、およそ1~およそ9の範囲であって、1が最低の染色濃度、9が最高の染色濃度を表す。染色時間、濃度等、タイターと関連する多くの物理的プロセスが存在する。
【0040】
[0057]本明細書において、用語「分離画像(unmixed image)」は、マルチチャネル画像の1つのチャネルについて得られた濃淡値またはスカラー画像を含む。マルチチャネル画像を分離することにより、チャネルごとに1つの分離画像が得られる。
【0041】
[0058]本明細書における言及および/または出願データシートにおける掲載の対象となる米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許
刊行物はすべて、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。種々特許、出願、および公開の概念を採用する必要に応じて、さらに別の実施形態を提供するように、実施形態の態様が改良され得る。
【0042】
[0059]概要
[0060]デジタル病理学の全スライド画像(WSI)における画像分析アルゴリズムの性能は、画像間のステイン変動によって妨げられ得る。このような困難を克服するため、画像中のすべてのステインに正規化が適用される多くのステイン正規化法が提案されている。ただし、免疫組織化学(IHC)画像の場合は、特にステイン変動が特定の生物学的指標に関連する場合、画像中のすべてのステインの正規化が望まれるわけでもなければ、すべてのステインの正規化が実現可能なわけでもない状況が存在する。これに対して、カウンタステイン(通例、ヘマトキシリン(HTX))は常に、堅牢な核検出のため、画像間で一貫していることが望まれる。本研究においては、テンプレートIHC WSIに対する位置合わせによってIHC WSIのHTXステインを正規化するフレームワークが開示される。このため、色相飽和濃度(HSD)モデルが利用され、画像の色成分分布がテンプレートと位置合わせされる。その後、テンプレートと整合するように、濃度成分がシフトおよびスケーリングされる。非HTXステインを保持するため、純粋なHTXステインを有する画素は、HTXおよび非HTXステインの混合である画素と区別され、これに応じて、異なる正規化方法が適用される(実施例3参照)。
【0043】
[0061]出願人らは、スライドが処理のための所望のタイター範囲にあるかを推定する前処理システムおよび方法を開発した。このシステムおよび方法は、クエリ画像のステインのタイターをテンプレート画像中のステインのタイターと合わせするようにも機能する。出願人らは、分析前条件に起因するHTX染色間の矛盾を解決するため、本明細書に記載のシステムおよび方法が使用され得ると考える。たとえば、
図11に示されるように、3つの臨床検査室からの3つのER染色乳がん画像が異なるHTXステイン色相および強度を提示している。このような画像間の消極的な腫瘍細胞識別に対して、画像処理アルゴリズムが一貫した感度を有するのは困難である。
【0044】
[0062]これを克服するため、本明細書に記載のシステムおよび方法は、HTXステインを所与のテンプレートWSIに対してのみ正規化する前処理フレームワークを採用する。提案のフレームワークは、濃度成分を組み込んだカラーモジュール(たとえば、色相飽和濃度(HSD)色空間)における座標位置合わせによって正規化を実行する。本開示では、HSD変換に言及する場合があるものの、当業者には当然のことながら、色空間が濃度情報(たとえば、ステインの量と線形関係の濃度成分)を組み込むことを前提として、(現在既知または今後発見される)その他任意の好適な色空間変換が利用されるようになっていてもよい。いくつかの実施形態において、濃度成分を組み込んだカラーモジュールは、ステインの量と線形関係の濃度座標(または、濃度情報)の導出を可能にする。いくつかの実施形態において、濃度成分を組み込んだカラーモジュールは、ステインの量と無関係の色座標(または、色情報)の導出を可能にする。
【0045】
[0063]IHC画像分析の単一ステイン正規化要求を満たすため、カスタマイズされたHTX画素選択による確実な色分布導出およびステイン混合画素の特別処理が開発された。この前処理ステップが撮像アルゴリズムに及ぼす影響を定量化するため、出願人らは、正規化の有無に応じた画像に対するIHC染色細胞検出アルゴリズムの結果を証明することにより、提案の方法が異なるHTX濃度レベル間でより一貫した検出性能を示すことを実証した。
【0046】
[0064]標本を撮像および分析するデジタル病理学システム200が
図1に示される。デジタル病理学システム200は、撮像装置12(たとえば、標本を含む顕微鏡スライドを
スキャンする手段を有する装置)およびコンピュータ14を備えることにより、撮像装置12およびコンピュータが通信可能に(たとえば、直接またはネットワーク20を介して間接的に)一体結合されていてもよい。コンピュータシステム14は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレット等、デジタル電子回路、ファームウェア、ハードウェア、メモリ602、コンピュータ記憶媒体、コンピュータプログラムもしくは命令セット(たとえば、プログラムがメモリもしくは記憶媒体に格納された場合)、プロセッサ(プログラムされたプロセッサを含む)、ならびに/またはその他を含み得る。
図1に示されるコンピュータシステム14は、表示装置16および筐体18を含むコンピュータを備えていてもよい。コンピュータシステムは、(メモリ、サーバ、または別のネットワーク接続デバイス等のローカルに)2進法形式でデジタル画像を格納可能である。また、デジタル画像は、画素行列に分割され得る。画素には、ビット深度により規定される1つまたは複数のビットのデジタル値を含み得る。当業者には当然のことながら、他のコンピュータデバイスまたはシステムが利用されるようになっていてもよく、また、本明細書に記載のコンピュータシステムは、付加的な構成要素(たとえば、標本分析器、顕微鏡、他の撮像システム、自動スライド作成機器等)に対して通信可能に結合されていてもよい。これら付加的な構成要素の一部および利用され得るさまざまなコンピュータ、ネットワーク等については、本明細書において別途記載される。
【0047】
[0065]一般的に、撮像装置12(または、プレスキャン画像がメモリに格納された他の画像源)は、1つまたは複数の画像捕捉デバイスを含み得るが、これに限定されない。画像捕捉デバイスは、カメラ(たとえば、アナログカメラ、デジタルカメラ等)、光学素子(たとえば、1つまたは複数のレンズ、センサ焦点レンズ群、顕微鏡対物レンズ等)、撮像センサ(たとえば、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化物半導体(CMOS)画像センサ等)、写真用フィルム等を含み得るが、これらに限定されない。デジタルの実施形態において、画像捕捉デバイスは、オンザフライ焦点合わせを提供するように協働する複数のレンズを含み得る。画像センサ(たとえば、CCDセンサ)が標本のデジタル画像を捕捉可能である。いくつかの実施形態において、撮像装置12は、明視野撮像システム、マルチスペクトル撮像(MSI)システム、または蛍光顕微鏡システムである。デジタル化組織データは、たとえばVENTANA MEDICAL SYSTEMS、Tucson、ArizによるiSCAN CORE等の画像スキャンシステムまたは他の好適な撮像機器により生成されるようになっていてもよい。付加的な撮像デバイスおよびシステムについては、本明細書において別途記載される。当業者には当然のことながら、撮像装置12により取得されたデジタルカラー画像は従来、原色画素で構成される。各色付き画素は、それぞれ同数のビットを含む3つのデジタル成分上でコード化される。各成分は、用語「RGB」成分でも示される原色(一般的に、赤、緑、または青)に対応する。
【0048】
[0066]
図2は、本開示のデジタル病理学システムにおいて利用されるさまざまなモジュールの概要を示している。いくつかの実施形態において、デジタル病理学システムは、1つまたは複数のプロセッサ203および少なくとも1つのメモリ201を有するコンピュータデバイス200またはコンピュータ実装方法を採用しており、少なくとも1つのメモリ201は、1つまたは複数のプロセッサによる実行によって、1つまたは複数のモジュール(たとえば、モジュール202および205~212)における命令(または、格納データ)を1つまたは複数のプロセッサに実行させる非一時的コンピュータ可読命令を格納する。あるいは、これらの命令は、非一時的コンピュータ可読媒体(201)またはコンピュータ使用可能媒体に格納されていてもよい。いくつかの実施形態において、非一時的コンピュータ可読媒体201は、変動する伝搬信号を除くすべてのコンピュータ可読媒体を含んでいてもよい。
【0049】
[0067]
図2および
図3Aを参照して、本開示は、取得画像におけるステインのタイターを評価または推定するコンピュータ実装方法であって、(a)画像取得モジュール202
の動作により、たとえば取得画像、または1つまたは複数のステインで染色された生物学的サンプルのマルチチャネル画像データを生成または受信するステップと、(b)分離モジュール205の動作により、1つまたは複数のステインチャネルに対応する画像チャネル画像を生成するステップと、(c)FOV生成モジュール206の動作により、テスト画像のFOVを生成するとともに、生成されたすべてのFOVの中から、所定の基準を満たすFOVを選択するステップ(ステップ250)と、パッチ生成・保持モジュール207の動作により、保持された各FOV内で一連のパッチを生成するとともに、タイターが評価されるステインの有無を示す所定の基準を満たすそれらのパッチを保持するステップ(ステップ251)と、特徴抽出モジュール208の動作により、タイターが推定されるステインに関するステイン色特徴およびステイン強度特徴を導出するステップ(ステップ252)と、タイター分類モジュール209の動作により、抽出された色およびステイン特徴を分類するステップ(ステップ253)と、テスト画像のタイターの加重平均スコアを出力するステップ(ステップ254)と、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、ステインは、ヘマトキシリンである。
【0050】
[0068]また、
図2および
図3Bを参照して、本開示は、取得画像中のステインのタイターをテンプレート画像中のタイターレベルに対して正規化するコンピュータ実装方法であって、(a)画像取得モジュール202の動作により、1つまたは複数のステインで染色された生物学的サンプルのマルチチャネル画像データ(たとえば、取得画像)を生成または受信するステップと、(b)分離モジュール205の動作により、1つまたは複数のステインチャネルに対応する画像チャネル画像を生成するステップと、(c)FOV生成モジュール206の動作により、テスト画像のFOVを生成するとともに、生成されたすべてのFOVの中から、所定の基準を満たすFOVを選択するステップ(ステップ260)と、パッチ生成モジュール207の動作により、保持された各FOV内で一連のパッチを生成するとともに、タイターが正規化されるステインの有無を示すある所定の基準を満たすパッチを保持するステップ(ステップ261)と、変換モジュール210の動作により、変換座標を演算するステップ(ステップ262)と、分類モジュール211の動作により、テスト画像内の画素が、タイターが正規化されるステインを示す画素クラスに属する確率を決定するステップ(ステップ263)と、変換モジュール201の動作により、加重変換座標を用いてRGB画像を再構成するステップ(ステップ264)と、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、変換モジュール210は、HSD変換モジュールである。いくつかの実施形態において、ステインは、ヘマトキシリンである。また、当業者には当然のことながら、付加的なモジュールまたはデータベースがワークフローに組み込まれていてもよい。本明細書においてより詳しく記載される通り、いくつかの実施形態においては、HSD変換を実行する特定のパラメータを正規化プロセス中に導出するのとは対照的に、HSDパラメータデータベース212からこれらのパラメータが読み出されるようになっていてもよい。同様に、特定のフィルタの取得画像への適用または組織サンプル内の特定の組織学的および/もしくは形態学的構造の識別を行うように、画像処理モジュールが動作し得る。また、分析する画像の特定部分を選択するため、関心領域選択モジュールが利用されるようになっていてもよい。
【0051】
[0069]いくつかの実施形態においては、正規化に先立って、ステインタイター評価または推定が実行される。
図3Cを参照して、全スライド画像の取得(ステップ270)の後、サンプル内のステインのタイターが推定される。そして、ステインのタイターの推定値が所定のタイター閾値(たとえば、3~6の範囲の閾値)内となるかが判定される。タイターが所定のタイター閾値内となる場合(ステップ271)、画像は、別途処理の準備が整っている(ステップ273)。一方、タイターが所定のタイター閾値内とならない場合(ステップ272)、ステインのタイターは、テンプレート画像のタイターに対して正規化される(ステップ273)。
【0052】
[0070]他の実施形態においては、ステインタイター評価が正規化プロセス中に実行される(たとえば、
図3D参照)。たとえば、いくつかの実施形態においては、ステインのタイターに関連付けられた適当なパラメータがHSDパラメータデータベース212から読み出されてHSD変換モジュール211により使用され得るように、特徴抽出モジュール208およびタイター分類モジュール209の動作によって、正規化中にテスト画像のステインのタイターの推定値を与えるようにしてもよい(ステップ281)。このため、正規化に先立つタイター評価の実行により、ステインのタイターの正規化が必要かを確かめるようにしてもよいし(
図3C参照)、正規化中の実行により(
図3D)、導出された色・濃度分布座標の位置合わせおよびスケーリングを実行する適当なHSDパラメータを読み出すようにしてもよい。
【0053】
[0071]本明細書に記載の方法は、クエリ画像およびテスト画像に対して等しく適用されるようになっていてもよい。このため、特定の箇所がクエリ画像内のFOVの生成に言及している場合、これらの手順は、テンプレート画像に対しても同様に適用されるようになっていてもよい。
【0054】
[0072]画像取得モジュール
[0073]最初のステップとして、
図2を参照するに、デジタル病理学システム200は、画像取得モジュール202を動作させて、1つまたは複数のステインを有する生物学的サンプルの画像または画像データを捕捉する。いくつかの実施形態において、受信または取得される画像は、RGB画像またはマルチスペクトル画像である。いくつかの実施形態において、補足された画像は、メモリ201に格納される。
【0055】
[0074]画像または画像データ(本明細書においては区別なく使用される)は、撮像装置12を用いることにより、たとえば実時間で取得してもよい。いくつかの実施形態において、画像は、本明細書に記載の通り、標本を含む顕微鏡スライドの画像データを捕捉可能な顕微鏡等の器具から取得される。いくつかの実施形態において、画像は、画像タイルをスキャン可能なもの等、2Dスキャナを用いて取得される。あるいは、画像は、過去に取得(たとえば、スキャン)され、メモリ201に格納された(その一方、ネットワーク20を介してサーバから読み出された)画像であってもよい。
【0056】
[0075]サンプルは、1つまたは複数のステインの適用により染色されていてもよく、その結果としての画像または画像データは、1つまたは複数のステインそれぞれに対応する信号を含む。このため、本明細書に記載のシステムおよび方法が単一のステイン(たとえば、ヘマトキシリン)を推定または正規化し得る一方で、生物学的サンプル内のステインの数は制限されない。実際、生物学的サンプルは、多重アッセイにおいて、任意のカウンタステインの追加または一部として2つ以上のステインを含むように染色されていてもよい。
【0057】
[0076]当業者には当然のことながら、異なる種類の核および/または細胞膜バイオマーカに対して組織サンプルが染色されるようになっていてもよい。組織構造の染色およびさまざまな目的に適したステインの選定のガイドの方法については、たとえばSambrook et al.、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual(分子クローニング:実習マニュアル)」、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)およびAusubel et al.、「Current Protocols in Molecular Biology(分子生物学における現行手順)」、Greene Publishing
Associates and Wiley-Intersciences(1987)に論じられており、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる。非限定的な一例として、乳がんの検出に関しては、いくつかの実施形態において、エストロゲン受容体マーカ、プロゲステロン受容体マーカ、Ki-67マーカ、またはHER2マーカを含む1つまたは複数のバイオマーカの有無について、組織サンプルがIHCアッセイにおいて染色される。このため、いくつかの実施形態において、入力として用いられるバイオマーカ画像は、エストロゲン受容体(ER)マーカ、プロゲステロン受容体(PR)マーカ、Ki-67マーカ、またはHER2マーカのうちの少なくとも1つの有無に対応する信号を含むIHC画像である。非限定的な別の例として、非小細胞肺がんの検出に関しては、いくつかの実施形態において、PD-L1バイオマーカを含む1つまたは複数のバイオマーカの有無について、組織サンプルがIHCアッセイにおいて染色される。このため、いくつかの実施形態において、入力として用いられるバイオマーカ画像は、PD-L1マーカ、CD3マーカ、およびCD8マーカのうちの有無に対応する信号を含むIHC画像である。いくつかの実施形態において、コンピュータ実装方法は、分類された核をスコアリングするステップをさらに含む。
【0058】
[0077]色原体ステインとしては、ヘマトキシリン、エオシン、ファストレッド、または3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)が挙げられる。また、当業者には当然のことながら、任意の生物学的サンプルが1つまたは複数のフルオロフォアで染色されるようになっていてもよい。いくつかの実施形態において、組織サンプルは、主ステイン(たとえば、ヘマトキシリン)で染色されている。いくつかの実施形態においては、特定のバイオマーカについて、組織サンプルがIHCアッセイにおいて染色されている。
【0059】
[0078]通常の生物学的サンプルは、ステインを当該サンプルに適用する自動染色/アッセイプラットフォームにおいて処理される。市場には、染色/アッセイプラットフォームとしての使用に適した多様な商品が存在しており、一例として、Ventana Medical Systems, Inc.(Tucson、AZ)のDiscovery(商標)製品がある。また、カメラプラットフォームとしては、明視野顕微鏡(一例として、Ventana Medical Systems, Inc.のVENTANA iScan HT製品)または1つもしくは複数の対物レンズおよびデジタル撮像装置のほかに一組のスペクトルフィルタを有する任意の顕微鏡が挙げられる。さまざまな波長で画像を捕捉する他の技術が用いられるようになっていてもよい。当技術分野においては、染色された生物標本の撮像に適した別のカメラプラットフォームが知られており、Zeiss、Canon、Applied Spectral Imaging等の企業から市販されている。また、このようなプラットフォームは、本開示のシステム、方法、および装置における使用に対して容易に適応可能である。
【0060】
[0079]いくつかの実施形態において、入力画像は、組織領域のみが画像中に存在するようにマスクされる。いくつかの実施形態においては、非組織領域を組織領域からマスクするように組織領域マスクが生成される。いくつかの実施形態においては、組織領域を識別するとともに、背景領域(たとえば、撮像源からの白色光のみが存在する場所等、サンプルのないガラスに対応する全スライド画像の領域)を除外することによって、組織領域マスクが形成される。当業者には当然のことながら、非組織領域の組織領域からのマスキングのほか、組織マスキングモジュールは、特定の組織種または腫瘍が疑われる領域に属するものとして識別された組織の一部等、必要に応じて他の関心エリアをマスクするようにしてもよい。いくつかの実施形態においては、入力画像において非組織領域から組織領域をマスクすることにより組織領域マスキング画像を生成するのにセグメント化技術が用いられる。好適なセグメント化技術としては、先行技術から既知のものがある(「Digital Image Processing(デジタル画像処理)」、Third Edition、Rafael C.Gonzalez、Richard E.Woods、chapter 10、page 689および「Handbook of Medical Imaging(医用画像ハンドブック)」、Processing and Analysis、Isaac N.Bankman Academic Press、2
000、chapter 2参照)。いくつかの実施形態においては、画像中のデジタル化組織データとスライドとの識別に画像セグメント化技術が利用されるが、この場合、組織が前景に、スライドが背景に対応する。いくつかの実施形態においては、構成要素が全スライド画像中の関心エリア(AoI)を演算することにより、分析される背景の非組織エリアの量を制限しつつ、AoI中のすべての組織領域を検出する。たとえば、組織データと非組織または背景データとの境界を決定するのに、広範な画像セグメント化技術(たとえば、HSVカラーベース画像セグメント化、Lab画像セグメント化、平均シフトカラー画像セグメント化、領域拡張、レベル設定法、高速マーチング法等)が使用され得る。また、構成要素は、セグメント化に少なくとも部分的に基づいて、組織データに対応するデジタル化スライドデータの部分の識別に使用可能な組織前景マスクを生成可能である。あるいは、構成要素は、組織データに対応しないデジタル化スライドデータの部分の識別に用いられる背景マスクを生成可能である。
【0061】
[0080]この識別は、エッジ検出等の画像分析動作によって可能となり得る。画像(たとえば、非組織領域)中の非組織背景ノイズを除去するのに、組織領域マスクが用いられるようになっていてもよい。いくつかの実施形態において、組織領域マスクの生成には、輝度が所与の閾値を上回る画素が1に設定され、閾値を下回る画素が0に設定されて、組織領域マスクが生成されるように、低分解能入力画像の輝度の演算、輝度画像の生成、輝度画像への標準偏差フィルタの適用、フィルタリング輝度画像の生成、およびフィルタリング輝度画像への閾値の適用といった動作のうちの1つまたは複数を含む(ただし、これらの動作に限定されない)。組織領域マスクの生成に関する付加的な情報および例については、「An Image Processing Method and System
for Analyzing a Multi-Channel Image Obtained from a Biological Tissue Sample Being Stained by Multiple Stains(複数のステインにより染色される生物学的組織サンプルから得られたマルチチャネル画像を分析する画像処理方法およびシステム)」という名称のPCT/EP/2015/062015に開示されており、そのすべての開示内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
[0081]いくつかの実施形態においては、画像または画像データを取得すべき生物学的サンプルの部分を選択するのに、関心領域識別モジュールが用いられるようになっていてもよい。
図4は、領域選択のステップを示したフローチャートである。ステップ420において、領域選択モジュールは、識別された関心領域または視野を受信する。いくつかの実施形態において、関心領域は、本開示のシステムまたは本開示のシステムに対して通信可能に結合された別のシステムのユーザにより識別される。あるいは、他の実施形態において、領域選択モジュールは、ストレージ/メモリから関心領域の箇所または識別情報を読み出す。いくつかの実施形態において、ステップ430に示されるように、領域選択モジュールは、たとえばPCT/EP2015/062015に記載の方法によって、FOVまたはROIを自動的に生成するが、そのすべての開示内容が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、関心領域は、画像中または画像のいくつかの所定基準または特性に基づいてシステムにより自動的に決定される(たとえば、3つ以上のステインで染色された生物学的サンプルの場合は、ステインを2つだけ含む画像のエリアを識別する)。ステップ440において、領域選択モジュールは、ROIを出力する。
【0063】
[0100]分離モジュール
[0082]画像取得の後、システム200は、多重化画像を入力として受信する(たとえば、ステップ280)が、多重化画像は、本明細書に記載の通り、1つまたは複数のステインチャネルに対応する信号を含む。別途処理および分析に先立って、この最初の画像はまず、分離モジュール205等によって、その構成チャネルへと分離される。各分離チャネルは、特定のステインまたは信号に対応する。以下、分離画像は、「チャネル画像」と称され、本明細書に記載の各モジュールの入力として使用され得る。
【0064】
[0083]たとえば、1つまたは複数のステインおよびヘマトキシリンを含むサンプルにおいて、これら1つまたは複数のステインおよびヘマトキシリンのチャネルごとに、個々の画像が生成されるようになっていてもよい。任意特定の理論に縛られることを望まないなら、これらのチャネルは、組織画像中の異なる組織構造を強調するものと考えられるため、構造的画像チャネルと称され得る。いくつかの実施形態において、分離は、少なくとも1つのヘマトキシリン画像チャネル画像を提供する。いくつかの実施形態においては、ヘマトキシリンの局所量を表すとともに画像内の核領域を強調する別個のチャネルへと取得画像が分離される。当業者には当然のことながら、これらのチャネルから抽出される特徴は、組織の任意の画像内に存在するさまざまな生物学的構造を表すのに有用である。
【0065】
[0084]撮像システム202により提供されるマルチスペクトル画像は、個々のバイオマーカおよびノイズ成分と関連付けられた基本スペクトル信号の加重混合である。任意特定の画素において、混合重みは、組織の特定箇所における基本共局在化バイオマーカのバイオマーカ発現および当該箇所における背景ノイズに比例する。このため、混合重みは、画素ごとに変動する。本明細書に開示のスペクトル分類方法では、ありとあらゆる画素におけるマルチチャネル画素値ベクトルを一群の構成バイオマーカ・エンドメンバーまたはコンポーネントに分解し、バイオマーカそれぞれについて、個々の構成ステインの割合を推定する。
【0066】
[0085]分離する方法は、当業者によく知られており、現在既知または今後発見される如何なる方法も、多重化画像の血管チャネル画像への「分離」に用いられるようになっていてもよい。一般的に、分離プロセスでは、ステイン固有のチャネルを抽出して、標準型の組織およびステイン組み合わせについてよく知られている基準スペクトルを用いることにより、個々のステインの局所濃度を決定する。分離では、管理画像から受信された基準スペクトルまたは観察下の画像から推定された基準スペクトルを使用するようにしてもよい。各入力画素の成分信号の分離は、血管チャネルおよび核チャネル等、ステイン固有のチャネルの読み出しおよび分析を可能にする。用語「分離(unmixing)」および「カラーデコンボリューション(color deconvolution)」(または、「デコンボリューション(deconvolution)」)等(たとえば、「deconvolving」、「unmixed」)は、当技術分野において区別なく使用される。
【0067】
[0086]いくつかの実施形態において、多重化画像は、分離モジュール205により、線形分類を用いて分離される。線形分離は、たとえばZimmermann、「Spectral Imaging and Linear Unmixing in Light
Microscopy(光学顕微鏡法におけるスペクトル撮像および線形分離)」、Adv Biochem Engin/Biotechnol(2005) 95:245-265およびC.L.Lawson and R.J.Hanson、「Solving least squares Problems(最小二乗問題を解く)」、PrenticeHall、1974、Chapter 23、p. 161に記載されており、そのすべての開示内容が参照により本明細書に組み込まれる。線形ステイン分離においては、如何なる画素における測定スペクトル(S(λ))もステインスペクトル成分の線形混合と考えられ、当該画素において発現する個々のステインの色基準(R(λ))の割合または重み(A)の合計に等しい。
【0068】
[0087]S(λ)=A1・R1(λ)+A2・R2(λ)+A3・R3(λ)・・・・・Ai・Ri(λ)
[0088]これは、以下のように行列形式でより一般的に表され得る。
【0069】
[0089]S(λ)=ΣAi・Ri(λ)またはS=R・A
[0090]取得チャネル画像がM個、個々のステインがN個存在する場合は、M×N行列Rの列が本明細書において導出される最適な表色系であり、N×1ベクトルAが個々のステインの割合の未知の部分であり、M×1ベクトルSが画素における測定マルチチャネル・スペクトルベクトルである。これらの方程式において、各画素の信号(S)は、多重化画像の取得中に測定され、基準スペクトル(すなわち、最適な表色系)は、本明細書に記載の通り導出される。さまざまなステインの寄与(Ai)は、測定スペクトル中の各点に対するそれぞれの寄与を計算することにより決定され得る。いくつかの実施形態においては、以下の方程式集合を解くことにより測定スペクトルと計算スペクトルとの二乗差を最小化する逆最小二乗フィッティング手法を用いて、解が求められる。
【0070】
[0091][∂Σj{S(λj)-ΣiAi・Ri(λi)}2]/∂Ai=0
[0092]この方程式において、jは検出チャネルの数を表し、iはステインの数に等しい。線形方程式の解では、制約を受けた分離が強制的に重み(A)の合計を1とし得る場合が多い。
【0071】
[0093]他の実施形態において、分離は、2014年5月28日に出願された「Image Adaptive Physiologically Plausible Color Separation(生理学的に妥当な画像適応色分離)」という名称のWO2014/195193に記載の方法を用いて実現されるが、そのすべての開示内容が参照により本明細書に組み込まれる。一般的に、WO2014/195193は、反復的に最適化された基準ベクトルを用いて入力画像の成分信号を分離することにより分離する方法を記載する。いくつかの実施形態において、アッセイからの画像データは、アッセイの特性に固有の予想または理想結果と相関されることにより、品質基準を決定する。低品質画像または理想結果に対する低相関の場合は、行列Rの1つまたは複数の基準列ベクトルが調整され、生理学的および解剖学的要件に整合する高品質画像を相関が示すまで、調整された基準ベクトルを用いて分離が反復的に繰り返される。解剖学的、生理学的、およびアッセイ情報は、測定画像データに適用されるルールを規定して品質基準を決定するのに用いられるようになっていてもよい。この情報には、組織が染色された様子、染色の意図の有無に関わらない組織内の構造、および処理対象のアッセイに固有の構造、ステイン、およびマーカ間の関係を含む。反復プロセスの結果は、関心構造および生物学的に関連する情報を正確に識別する画像を生成し得るステイン固有ベクトルであり、ノイズのあるスペクトルも不要なスペクトルも一切含まないため、分析に適合する。基準ベクトルは、探索空間において調整される。探索空間は、基準ベクトルがステインを表すのに取り得るさまざまな値を規定する。探索空間は、既知または一般的に発生する問題を含む多様な代表的トレーニングアッセイをスキャンするとともに、トレーニングアッセイに対して高品質な基準ベクトル集合を決定することにより、決定されるようになっていてもよい。
【0072】
[0094]他の実施形態において、分離は、2015年2月23日に出願された「Group Sparsity Model for Image Unmixing(画像分離のためのグループスパーシティモデル)」という名称のWO2015/124772に記載の方法を用いて実現されるが、そのすべての開示内容が参照により本明細書に組み込まれる。一般的に、WO2015/124772は、グループスパーシティフレームワークを用いた分離を記載しており、複数のコロケーションマーカからのステイン寄与の一部が「同じグループ」においてモデル化され、複数の非コロケーションマーカからのステイン寄与の一部が「異なるグループ」においてモデル化されるため、複数のコロケーションマーカの共局在情報がモデル化グループスパーシティフレームワークに提供され、グループ正則化(group lasso)を用いてモデル化フレームワークを解くことにより、各グループ内の最小二乗解が得られる。この最小二乗解は、コロケーションマーカの分離に対応し、非コロケーションマーカの分離に対応するグループ間のスパース解を生じる。さらに、WO2015/124772は、生物学的組織サンプルから得られた画像データを入力し、複数のステインそれぞれのステイン色を表す基準データを電子メモリから読み出し、それぞれが生物学的組織サンプルにおいて配置され得るステインを含み、それぞれがグループ正則化基準のグループを構成し、少なくとも1つが2以上のサイズを有する各ステイングループを表すコロケーションデータを電子メモリから読み出し、基準データを基準行列として用いることによりグループ正則化基準の解を計算して分離画像を求めることによって分離する方法を記載する。いくつかの実施形態において、画像を分離する方法は、共局在化マーカからのステイン寄与の一部が単一のグループにおいて割り当てられ、非共局在化マーカからのステイン寄与の一部が別個のグループにおいて割り当てられるグループスパーシティモデルを生成するステップと、分離アルゴリズムを用いてグループスパーシティモデルを解くことにより、各グループ内の最小二乗解を得るステップと、を含んでいてもよい。
【0073】
[0095]FOV抽出モジュール
[0096]いくつかの実施形態において、全スライド画像は、その全体または一領域が複数のFOVへと細分され、FOVサンプリンググリッドを生成する(ステップ250または260)。FOVサンプリンググリッドは、互いに比較可能な一組の代表領域を画像内に有するように生成される。いくつかの実施形態において、FOVは、分析する関連領域の代表サンプルを捕捉するように画像全体に分配される。これが実現され得る1つの方法として、FOVの一定間隔のグリッドを自動または手動で生成することにより、偏りのない構造化サンプリングを画像全体に施す。いくつかの実施形態において、グリッドは、画像全体を網羅する。他の実施形態において、グリッドは、画像全体を網羅しない。
【0074】
[0097]通常は、FOVが最大解像度でコンピュータ画面に提示され得るように、FOVサイズが選定される。たとえば、コンピュータ画面が1000×1000画素の解像度を有し、全スライド画像中の画素が0.5マイクロメートル×0.5マイクロメートルである場合、良好なFOV候補サイズもまた、1000×1000画素または0.5mm×0.5mmのサイズである。
【0075】
[0098]いくつかの実施形態においては、所定数のFOVが全スライド画像から抽出される。いくつかの実施形態において、所定のFOV数は、25~100の範囲である。他の実施形態において、所定のFOV数は、およそ50である。いくつかの実施形態においては、画像内のステインの特徴に基づいて、所定数のFOVが選択される。いくつかの実施形態においては、所定のステイン強度レベル(たとえば、ヘマトキシリン強度レベル)に基づいて、所定のFOVが選択される。
【0076】
[0099]いくつかの実施形態においては、画像ヒストグラムを導出するため、タイターが評価されるステインに係るチャネルが使用される(たとえば、タイターが評価されるステインがヘマトキシリンである場合は、ヘマトキシリンチャネルに対応する画像ヒストグラムが生成されることになる)。いくつかの実施形態においては、生成されたグリッド内の各FOVについて、(導出されたヒストグラムを用いて)平均画素強度が計算され、ある所定の平均ステイン強度を満たすFOVが保持される。他の実施形態においては、平均画素強度がFOVごとに計算され、平均画素強度の所定の上位割合に含まれるFOVが保持される。いくつかの実施形態においては、ステインがヘマトキシリンであり、ヘマトキシリンについて80%の強度レベルを満たすFOVが選択される。いくつかの実施形態において、これは、相対的に強いヘマトキシリンステインが細胞核中のステインを表す、という仮定に基づいてなされる。いくつかの実施形態においては、極端に高いヘマトキシリン異常値によるバイアスのリスクを抑えるため、第80の百分位数が経験的に選定される。
【0077】
[00100]パッチ生成・保持モジュール
[00101]FOVが画像から抽出されたら、各FOVにおいて一連のパッチが生成される
(ステップ251および261)。FOV生成と同じように、パッチは、サンプリンググリッドの生成、すなわち、パッチの一定間隔のグリッドを自動または手動で生成して偏りのない構造化サンプリングをFOV内で施すことにより生成されるようになっていてもよい。いくつかの実施形態において、パッチは、FOVの寸法のサイズのおよそ5%~およそ2%の範囲の(x,y)寸法を有する。たとえば、FOVが1000画素×1000画素のサイズを有する場合、FOV内の各パッチは、100画素×100画素のサイズを有していてもよい。当業者には当然のことながら、複数の非重畳パッチがFOVごとに導出されることになる。
【0078】
[00102]いくつかの実施形態において、生成されるパッチは、「スーパーピクセル」の
形態である。スーパーピクセルは、複数の隣接画素を網羅する画像のサブエリアである。「スーパーピクセル」は、画像を自由形状の非交差画像パッチに分割する。いくつかの実施形態において、この形状は、各スーパーピクセルが目標サイズ範囲を満たし、主として1種類の組織または細胞を含むように選定されるようになっていてもよい。スーパーピクセルは、「グラフベースアルゴリズム」、「勾配上昇ベースアルゴリズム」、SLICアルゴリズム、平均シフト、および正規化カットを含む多くの方法により生成され得る。このため、実施形態によれば、スーパーピクセル生成手順が画像に適用され、それぞれがスーパーピクセルであるパッチを生成するようにしてもよい。実施形態によれば、「パッチ」として使用される隣接画素集合(すなわち、スーパーピクセル)を識別するため、単純線形反復クラスタリングが用いられる。単純線形反復クラスタリング(SLIC)は、スーパーピクセル生成のためのK平均法の適応であるが、重要な差異が2つあり、(i)スーパーピクセルサイズに比例する領域に探索空間を制限することによって、最適化における距離計算の数が劇的に少なくなり(これにより複雑性が抑えられて、スーパーピクセルの数kとは独立に画素数が線形になると考えられる)、(ii)加重距離測度がスーパーピクセルのサイズおよび緊密さを制御するのと同時に、色および空間近接性を組み合わせる(Achanta et al.、「SLIC Superpixels Compared to State-of-the-Art Superpixel Methods(最新のスーパーピクセル法との比較によるSLICスーパーピクセル)」、IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence、Vol.34、No.11、November 2012参照(そのすべての開示内容が参照により本明細書に組み込まれる))。たとえば、スーパーピクセルサイズに比例する領域は、スーパーピクセルの識別に用いられるスーパーピクセルエリアの所定の上限と同じであってもよい。
【0079】
[00103]いくつかの実施形態においては、ある所定の基準を満たすFOV内のパッチの
みが別途分析用に保持される。たとえば、細胞を一切有していないパッチ(背景パッチ)は、ステインを一切有していないはずであるため、タイターレベル決定に関して有用な情報を有していないと考えられる。
【0080】
[00104]いくつかの実施形態において、第1の要件として、パッチ内のすべての画素の
うちのある所定の割合は、タイターが評価対象となっているステインに対応する信号を有する必要があり、これは、当該ステインの画像チャネルを用いて決定される(たとえば、ステインがヘマトキシリンである場合は、ヘマトキシリンチャネルが利用される)。いくつかの実施形態において、ステイン画素の所定割合は、少なくとも60%である。他の実施形態において、ステイン画素の所定割合は、少なくとも65%である。さらに他の実施形態において、ステイン画素の所定割合は、少なくとも70%である。別の実施形態において、ステイン画素の所定割合は、少なくとも75%である。たとえば、パッチサイズが100画素×100画素であり、閾値割合が70%に設定されている場合は、パッチ内の
10,000画素のうち、7,000個が評価対象のステイン(ヘマトキシリンの場合)を代表する必要がある。
【0081】
[00105]いくつかの実施形態において、別の要件として、すべての画素のうちのある所
定の割合は、何らかの染色がなされている必要がある。RGB色空間における3つの色チャネルがそれぞれ200より大きな値を有する場合(各チャネルが8ビットを有すると仮定して)、画素は「白」と考えられる。当業者には当然のことながら、RGB画像が24ビットの場合は、各チャネル(言い換えると、赤、緑、および青)が8ビットを有し、当該画像は3つの画像(各チャネルに1つずつ)で構成される。各画像は、0~255の従来の輝度強度で離散画素を格納することができる。いくつかの実施形態において、染色がなされる必要がある画素の所定割合は、少なくとも40%である。すなわち、画素の少なくとも40%が、それぞれ200未満のRGBチャネル値を有する必要がある。他の実施形態において、染色がなされる必要がある画素の所定割合は、少なくとも45%である。さらに他の実施形態において、染色がなされる必要がある画素の所定割合は、少なくとも50%である。別の実施形態において、染色がなされる必要がある画素の所定割合は、少なくとも60%である。
【0082】
[00106]さらに別の要件として、すべての画素のうちのある所定の割合は、「細胞様」
構造に配置される必要がある。いくつかの実施形態において、細胞様構造に配置される必要があるすべての画素のうちの所定割合は、取得画像またはその任意の選択部分におけるすべての画素のうちの少なくとも25%である。他の実施形態において、所定割合は、少なくとも30%である。さらに他の実施形態において、所定割合は、およそ30%~およそ35%の範囲である。
【0083】
[0101]いくつかの実施形態においては、このような細胞様構造の識別にガウシアン差分(DoG)フィルタリングが用いられる。一般的に、ガウシアン差分は、元画像の不鮮明版の別の相対的鮮明版からの減算を伴う特徴強調アルゴリズムである。グレースケール画像の簡単な場合、不鮮明画像は、元のグレースケール画像を標準偏差が異なるガウシアンカーネルと畳み込みを実施することにより得られる。ガウシアンカーネルを用いた画像の不鮮明化は、高周波の空間情報のみを抑制すると考えられる。一方の画像を他方から減算することにより、2つの不鮮明画像に保存された周波数の範囲間に存在する空間情報が保存される。このため、ガウシアン差分は、元のグレースケール画像中に存在するわずかな空間周波数以外をすべて破棄する帯域通過フィルタである。
【0084】
[0102]いくつかの実施形態においては、標準偏差が漸進的に減少するガウシアンカーネルを考慮するとともに、2つの連続ガウシアンによるフィルタリング後に得られた画像間の差を考慮することによって、マルチスケールDoGが実装されることにより、特定の半径範囲を有する「斑点様」構造が検出されると考えられる。いくつかの実施形態において、マルチスケールDoGの0番目のレイヤは、最も粗いガウシアン(標準偏差が最大のガウシアン)によりフィルタリングされた画像と次に粗いガウシアン(標準偏差が次に高いガウシアン)によりフィルタリングされた画像との差を取った後に得られた画像に対応する(本明細書においては、「ガウシアン差分画像」または「DoG画像」と称される)。たとえば、0番目のレイヤのDoG画像は、標準偏差が1の第1のフィルタおよび標準偏差が2の第2のガウシアンフィルタを含む第1のガウシアンフィルタ対のガウシアン差分として演算されるようになっていてもよい。1番目のレイヤのDoG画像は、標準偏差が2の第1のフィルタおよび標準偏差が3の第2のガウシアンフィルタを含む第2のガウシアンフィルタ対のガウシアン差分として演算されるようになっていてもよい。2番目のレイヤのDoG画像は、標準偏差が3の第1のフィルタおよび標準偏差が4の第2のガウシアンフィルタを含む第3のガウシアンフィルタ対のガウシアン差分として演算されるようになっていてもよい。標準偏差は、整数値である必要がなく、本開示の他の実施形態においては、類似範囲の他の標準偏差値が用いられるようになっていてもよい。ガウシアンフィルタのカーネルの半径および形状は、予想されるサイズおよび形状の斑点に対して、フィルタ対が大きなDoGを生成するように選定されるようになっていてもよい。
【0085】
[0103]他の実施形態においては、画像内の斑点の検出ひいては細胞様構造の検出にガウシアンフィルタの一般ラプラシアンが利用されるようになっていてもよい。このような手法は、Kong、「A Generalized Laplacian of Gaussian Filter for Blob Detection and Its Applications(斑点検出のためのガウシアンフィルタの一般化ラプラシアンおよびその応用)」、IEEE Trans Cybern.2013 Dec;43(6):1719-33に記載されており、そのすべての開示内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0086】
[0104]特徴抽出モジュール
[0105]パッチ生成・保持モジュール207を用いて、ステインを示すデータを含むパッチを保持した後(ステップ251)は、タイターが評価対象となっているステインを示す色・強度特徴が導出される(ステップ252)。
【0087】
[0106]いくつかの実施形態において、色から導出される特徴としては、色彩比R/(R+G+B)または色主成分が挙げられる。他の実施形態において、色から導出される測定基準としては、局所画像ウィンドウ中の色および/または色強度相関それぞれの局所的統計値(平均値/中央値/分散/標準偏差)が挙げられる。いくつかの実施形態において、特徴としては、(a)カラーデコンボリューション後の第1のステインチャネル画像、(b)全スライド画像の低域通過版、(c)吸光度画像、ならびに(d)LAB分解によるLおよびB画像チャネルから導出される平均値、中央値、第1四分位数、第3四分位数、第1不変モーメント、および標準偏差値が挙げられる。いくつかの実施形態において、これらの特徴は、前述の導出画像または画像チャネル画像それぞれの画像ヒストグラムから導出される。当業者には当然のことながら、画像のヒストグラムは通常、画素強度値のヒストグラムを表す。このヒストグラムは、画像中に見られる異なる各強度値における当該画像の画素の数を示すグラフである。8ビットのグレースケール画像の場合は、256個の異なる強度が存在し得るため、ヒストグラムは、これらのグレースケール値間の画素の分布を示す256個の数字を図式的に表示することになる。また、ヒストグラムは、カラー画像から取得可能である。たとえば、赤、緑、および青チャネルの個々のヒストグラムが得られる。
【0088】
[0107]いくつかの実施形態においては、分離画像チャネル画像から導出された生成画像ヒストグラムの使用により、平均値、中央値、第1四分位数値、および第3四分位数値が挙げられるが、これらに限定されない、特徴を計算するようにしてもよい。また、いくつかの実施形態においては、ステインチャネル画像から導出された強度値のヒストグラムに基づいて、標準偏差が特徴として計算される。
【0089】
[0108]いくつかの実施形態においては、取得画像のRGB画像の光学濃度領域表現内から吸光度画像が演算される。いくつかの実施形態においては、平均値、中央値、第1四分位数値、第3四分位数値、および標準偏差値の導出に吸光度画像のヒストグラムが生成および利用される。
【0090】
[0109]LAB色空間は、1つの輝度チャネルLならびに2つの色チャネルAおよびBを含む。L*a*b色空間において、「L」チャネルは画素の輝度を表し、「A」チャネルは画素の赤および緑成分を表し、「B」チャネルは画素の青および黄成分を表す。いくつかの実施形態においては、平均値、中央値、第1四分位数値、および第3四分位数値の計
算にLチャネルおよびBチャネルのヒストグラムが用いられる。いくつかの実施形態において、第1不変モーメントは、LAB分解の後にLおよびBチャネルから導出された強度値のヒストグラムから計算される。
【0091】
[0110]いくつかの実施形態においては、低域通過フィルタがステインチャネル画像に適用されるようになっていてもよい。低域通過フィルタは、たとえば第1のステインチャネル画像を平滑化することにより、各画素の周りの局所近傍の画素値を平均化あるいは表現する画素値で各画素値を置き換えるフィルタである。いくつかの実施形態においては、平均値、中央値、第1四分位数値、および第3四分位数値の計算に、低域通過フィルタリングされた第1のステインチャネル画像のヒストグラムが用いられる。
【0092】
[0111]いくつかの実施形態においては、特徴として、画像ヒストグラムから導出された第1および第3四分位数が挙げられる。第1および第3四分位数は、データセット中の位置の測定結果である記述統計値である。いくつかの実施形態において、第1および第3四分位数は、昇順等、ヒストグラムの画素強度データの並べ替えにより導出される。第1四分位数すなわち低位四分位数は、昇順に並べ替えられた場合に画素強度値の最初の25%をカットオフする値である。このリストの中央にある画素強度データ値(または、リストの中央の2つの値の平均値)が第1の四半分を表す。同様に、第3四分位数すなわち上位四分位数は、最初の75%をカットオフする値である。このリストの中央にある画素強度データ値(または、リストの中央の2つの値の平均値)が第3四分位数を表す。
【0093】
[0112]いくつかの実施形態において、特徴としては、第1不変モーメントが挙げられる。画像モーメントは、画像の画素強度のある所定の加重平均(モーメント)またはこのようなモーメントの関数であり、通例、何らかの魅力的な特性または解釈を有するように選定される。色モーメントは、画像中の色分布を特性化する測度である。第1色モーメントは、画像中の平均色として解釈され、以下の式を用いて計算され得る。
【0094】
[0113]
【0095】
【0096】
[0114]ここで、Nは画像中の画素の数であり、pijはi番目の色チャネルにおける画像のj番目の画素の値である。
[0115]いくつかの実施形態において、特徴は、画像ヒストグラムの標準偏差値であり、最初にヒストグラムから平均画素強度値を導出した後、平均画素強度値の平方根を取ることによって計算される。
【0097】
[0116]タイター分類モジュール
[0117]特徴抽出モジュール208を用いたステイン色・強度特徴の導出(ステップ252)の後は、導出された特徴が分類モジュールに提供されて、各導出画像パッチ内のステインのタイターレベルが演算されるようになっていてもよい(ステップ253および254)。
【0098】
[0118]機械学習アルゴリズム(分類器)は、本明細書に記載の複数の機械学習法を組み込むことにより、本明細書に記載の機械学習法のいずれにより実現し得るものよりも高い予測性能を得るアンサンブル学習法を含んでいてもよい。アンサンブル学習法としては、ベイズ最適分類器、ブートストラップアグリゲーティング(「バギング」)、ブースティング、ベイズモデル平均化、ベイズモデル組み合わせ、交差検証選択(「bucket
of models」)、スタッキング(stacked generalization)、およびランダムフォレストが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、アンサンブル学習法は、複数の決定木を構成し、個々の木のクラス(分類)または平均予測(回帰)のモードであるクラスを出力することによって動作するランダムフォレストを含む。
【0099】
[0119]本明細書において、「分類器(classifier)」は、カテゴライズされる新たな観察結果の特性値(「オブジェクト特徴値」または「説明変数」とも称される)を分析することによって、一組のカテゴリ(オブジェクトクラス)のうち、新たな観察結果(オブジェクト)が属するカテゴリを識別可能なプログラムロジックである。分類器は、カテゴリメンバーシップが既知の観察結果を含むデータのトレーニング集合(ここでは、ステインのタイターレベルが既知のスライドから導出されたトレーニング画像)に基づいて得られるようになっていてもよい。いくつかの実施形態において、分類器は、教師あり学習手法の適用(たとえば、正しく識別されたステインタイターレベルのトレーニング集合に対して分類器の未トレーニング版をトレーニングすること(これにより、オブジェクトクラスの数および種類が事前に把握される))によって得られる。
【0100】
[0120]いくつかの実施形態において、分類器は、ランダムフォレスト分類器である。たとえば、ランダムフォレスト分類器は、(i)タイターレベルが既知で異なるデジタル画像のトレーニング集合を生成し、(ii)少なくともモジュール205~208を用いて、本明細書に記載されているように、デジタル画像のトレーニング集合から第1のステインを示す画像特徴(たとえば、ステインの色・強度特徴)を抽出し、(iii)当該ランダムフォレスト分類器をトレーニングして、タイターレベルをクラス標識として用いることにより、一組の抽出特徴(ステイン色特徴およびステイン強度特徴に関して上述した特徴等)に基づいてタイターレベルを識別することによりトレーニングされるようになっていてもよい。そして、トレーニングされたランダムフォレスト分類器は、テスト画像の導出画像パッチ内の導出ステイン色・強度特徴を分類する(ステップ253)ように適用されて、特定パッチの推定タイター値を決定するようにしてもよい。いくつかの実施形態においては、トレーニング画像が利用される。トレーニングスライド/画像は、如何なる組織サンプルからも生成され得る。いくつかの実施形態においては、トレーニングが組織固有であり、ヘマトキシリンステインのみが適用される。
【0101】
[0121]いくつかの実施形態においては、トレーニングのため、タイターレベルが異なる複数のトレーニング画像が分類器に提供される。各トレーニングデジタル画像は、第1のステインのタイターを正確に示すために所定のタイタースコアが知られているRGB画像であってもよい。トレーニングデジタル画像それぞれについて、システムは、(本明細書に記載のような)第1のステインを示す複数の画像特徴を演算する。ここで、ランダムフォレスト分類器のトレーニングには、ステイン色およびステイン強度特徴ならびに関連するスライドタイターレベルが用いられる。
【0102】
[0122]分類器209は、トレーニングされた後、タイターレベルが未知のテスト画像内のパッチの分類(ステップ253)に用いられる。分類器の出力は、各パッチの数値スコアすなわち各パッチの推定タイタースコアであり、推定タイタースコアは1~9の範囲であって、1が最低レベル(最も明るい染色)を表し、9が最高レベル(最も暗い染色)を表す(これらは、整数であってもよいし、それぞれの小数であってもよい)。
【0103】
[0123]そして、いくつかの実施形態においては、各パッチの個々のタイタースコアから、全スライド画像のスコアが得られる(ステップ254)。いくつかの実施形態において、全スライド画像のスコアは、分類されたパッチからのタイタースコアの加重平均である。たとえば、50個のパッチが考慮され、これらパッチのうち20個のタイタースコアが1、これらパッチのうち30個のタイタースコアが9であった場合は、((20*1)+(30*9))/50=5.8である。ここで、5.8というスコアは、全スライド画像(テスト画像)の加重平均スコアを表す。いくつかの実施形態において、スコアを演算する代替方法では、パッチスコアヒストグラムのモードを取得する。たとえば、50個のパッチのうち、10個のパッチのスコアが1、10個のパッチのスコアが3、30個のパッチのスコアが4である場合、全スライドのモードスコアは4である。
【0104】
[0124]
図3Cを参照して、いくつかの実施形態においては、この加重平均スコア(または、モードスコア)が所定のタイター閾値と比較されるようになっていてもよい。加重平均(モード)スコアが所定のタイター閾値により規定された限界内である場合は、正規化が必要とされない(ステップ271)。一方、加重平均スコアが所定のタイター閾値により規定された限界内ではない場合(ステップ272)、本明細書に別途記載のように、正規化が必要とされる場合がある。いくつかの実施形態において、所定のタイター閾値は、およそ3.5~およそ6.5の範囲である。
【0105】
[0125]HSD変換モジュール
[0126]本開示のいくつかの態様によれば、入力画像(「クエリ」画像)中のステインのタイターをテンプレート画像中のステインのタイターに対して正規化するのに、HSD変換モジュール210が利用されるようになっていてもよい。そして、結果としての正規化画像が別途処理に用いられるようになっていてもよく、たとえば、正規化画像を用いて、核および/または形態学的特徴が識別、分類、およびスコアリングされるようになっていてもよい。
【0106】
[0127]
図3Bを参照して、HSD変換モジュール210は、(i)(HSDカラーモデル内で)クエリ画像中の各保持パッチ内の各画素の最初の色・濃度分布座標を導出すること(ステップ262)と、(ii)クエリ画像から導出された色・濃度分布座標をテンプレート色・濃度分布座標と整合させて、クエリ画像中の各保持パッチ内の各画素の変換座標を決定すること(ステップ263)と、(iii)HSD分類モジュール211からのステイン確率値の受信に際して、受信確率値により重み付けされた各パッチ内の各画素の最終変換座標を用いることにより、HSDカラーモデルにおいてクエリ画像からRGBを再生すること(ステップ264)と、を担う。これらの各ステップについては、本明細書においてより詳しく説明される。
【0107】
[0128]本明細書に記載の通り、ステインのタイターを最初に検査することなくタイター正規化が実行される状況が存在する。すなわち、タイター検査ステップは、正規化前に実行されるのではなく、本明細書に別途記載の通り、スライドのステインの推定タイターが好適な位置合わせのために確定され、スケーリングパラメータの導出または読み出しがなされ得るように、正規化中に実行されるようになっていてもよい。これらの状況においては、HSD変換モジュール210の動作に先立って、FOV生成モジュール206およびパッチ生成・保持モジュール207が動作される。本明細書に記載の通り、画像の画素のHSD座標が演算されるのは、保持されたパッチ内である。本明細書に概説のステップ250および251の手順はそれぞれ、正規化ステップ260および261に対して繰り返されるようになっていてもよい。本明細書に概説の手順を繰り返すことなく、取得画像がFOVのグリッドに分割されるようになっていてもよい。FOVの全グリッドのうち、閾値基準(たとえば、80%のステイン強度レベル)を満たすFOVが保持される。本明細書に記載の通り、保持されるFOVそれぞれにおいて、ステインのある所定の基準を満たすパッチが生成され、保持される。
【0108】
[0129]HSD座標(cx,cy,D)の導出
[0130]色相飽和濃度(HSD)カラーモデルは、色相飽和強度カラーモデルから導出さ
れる。HSDカラーモデルの背後にある考え方では、強度の代わりとなる個々のRGBチャネルの光学濃度(OD)に対して、RGB-HSI変換(色相飽和強度変換)を適用する。当業者には当然のことながら、カラーカメラにより得られた3つの強度の直接使用によって、RGBカラーモデルが得られる。HSDモデルの色成分がステインの量とは無関係であることから、得られる色空間は、異なるステインの吸収特性をより良好に区別すると考えられる。RGBデータから強度を切り離すことによって、HSIカラーモデルが得られる。任意特定の理論に縛られることを望まないなら、透過光学顕微鏡法において認識される強度の変動の大部分は、染色濃度の変動が原因と考えられる。したがって、HSD変換は、個々のRGBチャネルの強度ではなく光学濃度値に適用されるRGB-HSI変換として規定される。
【0109】
[0131]HSDモデルは、ステインの量と無関係の2つの色成分(cx,cy)および濃度成分(D:ステインの量と線形関係)へとRGBデータを変換する。任意特定の理論に縛られることを望まないなら、変動するステイン濃度から得られた理論的なRGB強度は、HSD変換の色(cx,cy)平面の1点になるものと考えられる。その結果、特定のステイン(たとえば、ヘマトキシリン)で染色された画素の色データは、ある分布を構成することになり、F(cx,cy)で表される。
【0110】
[0132]
図6Aを参照して、FOVおよびパッチ生成(ステップ601および602)の後は、各保持パッチ内の各画素のHSD座標が計算される(ステップ603)。これにより、色・濃度分布座標(c
x,c
y,D)が画素ごとに与えられる。これは、入力RGB画像のHSD変換を実行することにより実現される。最初の問題として、当業者には当然のことながら、標本を透過した光の検出強度および吸収係数cのステインの量(A)は、ランベルト・ベールの法則I=I
0・e
-A・cによって記述される。そして、赤、緑、および青スペクトル帯の光学濃度(OD)は、方程式(1)により規定される。
【0111】
[0133]
【0112】
【0113】
ただし、ch∈{R,G,B} (1)
[0134]チャネルの光学濃度Dchは、チャネルchにおけるステインの吸収値を所与として、ステインの量に線形依存する。いくつかの実施形態において、RGB信号の全体強度は、方程式(2)のように規定される。
【0114】
[0135]
【0115】
【0116】
[0136]同様に、ODの全体測度は、方程式(3)のように規定され得る。
[0137]
【0117】
【0118】
[0138]
図5Aを参照して、RGB空間の原点は黒を表し(すなわち、3つの主強度がすべてゼロであり)、立方体の最遠隅部が白を表す(主強度がすべて最大である)。これらの極値を結ぶ線がすべてのグレー値を表す。各複合色は、この立方体の点により表される。複合色の強度は、I=(I
R+I
G+I
B)/3(3つの主強度の平均)として規定される。RGB立方体において、グレースケール対角線に垂直な各平面には、当該平面上の点が等しい強度を有する、という特性がある(
図5Aは、そのような1つの平面を示している)。このような平面上の点は、三角形領域に制限され、そのサイズは、特定平面のIの値に線形依存する。グレースケール対角線は、重心においてこの三角形と交差する。この色の正三角形を標準化サイズに対して正規化することにより、この平面上の点の座標を強度から独立させることができる。
【0119】
[0139]
図5Aを再び参照して、色の三角形においては、重心を原点とし、赤強度が最大の隅部を正のx軸が通る2D座標系(c
x,c
y)が規定され得る。RGB空間中のすべての点は、強度と無関係の色座標に変換され得る。色座標が同じ2つのRGB点ごとに、RGB強度の比は同じである。色座標の計算には、RGBデータの三角形への投射を必要とする(
図5Aおよび
図5B参照)。
【0120】
[0140]3つのチャネルの光学濃度(方程式(3)参照)に対して
図5Aおよび
図5Bの投射を使用することにより、RGB-HSD変換は、以下のように規定される。
【0121】
【0122】
[0141]
【0123】
【0124】
[0142]HSDモデルの場合、結果としての(cx,cy)平面には、CR、CG、およびCB間の比が同じRGB点から単一点が得られる、という特性がある。このため、吸収曲線に関するすべての情報が1つの平面に表される。
【0125】
[0143]チャネルの光学濃度は、以下のように規定され得る。
[0144]
【0126】
【0127】
[0145]ここで、I0,chは、ステインが存在しない場合のチャネルchの強度である。
[0146]光学濃度の全体測度は、以下のように規定され得る。
【0128】
【0129】
[0147]変換座標(cx’,cy’,D)の導出
[0148]HSD座標の導出すなわちRGB画像-HSD変換の実行の後、各保持パッチ内の画素ごとに変換座標(cx’,cy’,D)が導出される。一般的に、テスト画像の各パッチ中の各画素の色分布座標(cx,cy)は、テンプレート画像中の色分布座標と整合(位置合わせ)されて、色分布変換座標(cx’,cy’)を与える(ステップ604)。同様に、テスト画像の各パッチ中の各画素の濃度分布座標(D)は、テンプレート画像中の濃度分布座標と整合(スケーリング)されて、濃度分布変換座標(D’)を与える(ステップ605)。位置合わせ(位置合わせを実行するパラメータの導出を含む)およびスケーリングのステップについては、本明細書において記載される。
【0130】
[0149]導出座標の変換
[0150]テンプレート画像中の対応するクラス分布と整合するようにテスト画像の色・濃度分布座標を変換するため(ステップ604)、(cx,cy)平面における色情報の2D位置決めが実行される。以下のように変換関数Tが科せられるような位置決め問題が規定され得るように色分布を示すため、F(cx,cy)が用いられる。
【0131】
[0151]F(T(cx,cy))~Ftemplate(cx,cy)
[0152]色分布の位置決めの手順には、後述の通り、(1)テンプレートスライドからの統計パラメータの抽出および(2)2D色分布の変換という2つのステップがある。
【0132】
[0153]統計パラメータ導出/HSDパラメータデータベース
[0154]統計パラメータは、本明細書に記載の位置合わせおよびスケーリングの両ステップの変換座標の導出に必要とされる。統計パラメータは、HSDパラメータデータベース212から導出または再試行されるようになっていてもよい。
【0133】
[0155]いくつかの実施形態において、導出される統計パラメータとしては、テンプレート画像中のステインクラス分布の平均(μ)および角度(φ)が挙げられる。いくつかの実施形態において、c
x軸に対するステインクラス分布(たとえば、ヘマトキシリン)の角度(φ)は、主固有ベクトルを計算することにより導出される。いくつかの実施形態においては、(c
x,c
y)対の共分散行列の第1固有ベクトルが解かれ、2D色空間において角度が解かれる。また、いくつかの実施形態において、統計パラメータには、スケーリングパラメータを含む。いくつかの実施形態において、スケーリングパラメータは、F
template分布全体を原点へと平行移動させた後(
図5Aおよび
図5B参照)、角度(φ)に沿った回転ステップによってc
x軸に沿った分散を最大化することにより導出される。最後に、スケーリングパラメータは、c
x軸およびc
y軸それぞれへの回転分布の投射後に規定され、各軸に沿った投射値の最小値、第1、第25、第50、第75、および第90の百分位数、ならびに最大値を含む。統計パラメータそれぞれを導出する方法については、J.A.van der Laak、「Hue-saturation-density (HSD) model for stain recognition
in digital images from transmitted light microscopy(透過光学顕微鏡法によるデジタル画像におけるステイン認識のための色相飽和濃度(HSD)モデル)」、Cytometry、vol.39、no.4、pp.275-284、2000にさらに開示されており、そのすべての開示内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0134】
[0156]当業者には当然のことながら、色分布座標の位置合わせおよび濃度分布座標のス
ケーリングに関する統計パラメータの導出は、演算上の負荷がかなり大きくなり得る。また、当業者には当然のことながら、データが制御源から生成される場合は、分析の分散を抑えることができる。実際のところ、組織源からの分散を抑えて、ステインの分散のみを残すことができる。このため、演算時間を早め、演算コストを抑え、組織種、病理学等と関連付けられたバイアスを抑えようとして、出願人らは、アッセイ標準に従って染色された組織から導出された統計パラメータの標準化「参照」値のデータベースの使用を提案する。任意特定の理論に縛られることを望まないなら、パラメータの推定にバイアスまたは誤差がある場合は、正規化を「オフ」にすることにより、結果としての正規化画像が画像品質の点で劣ったものになり得ると考えられる。たとえば、画像が生物学的原因では非常に暗い一方、染色手順によっては暗くなく、これを正規化パラメータで捕捉する場合は、正規化によって、画像がその生物学的意味を失うことになる。
【0135】
[0157]いくつかの実施形態において、統計パラメータのデータベースには、正規化対象のステインの一連の異なるタイターそれぞれの参照値を含む。実際のところ、データベースは、タイターレベル1~9のステインの統計パラメータを含んでいてもよい。たとえば、データベースは、タイター4で第1のステインの平均、角度、スケーリングパラメータ等を含んでいてもよい。また、データベースは、タイター5で第1のステインの平均、角度、スケーリングパラメータ等を含んでいてもよい。同様に、1~9の範囲のタイターレベルで第2、第3、・・・第nのステインの平均、角度、スケーリングパラメータ等を含んでいてもよい。また、当業者には当然のことながら、任意のタイターレベルの小数(たとえば、およそ4.5と推定されるタイター)に対して、統計パラメータが提供されるようになっていてもよい。いくつかの実施形態において、パラメータは、上記説明の通りFOVおよびパッチを用いて、一組のスライドから抽出される。そして、これらの画像は、タイター分類アルゴリズムで分類され、結果としての予測タイターが抽出パラメータに関連付けられる。新たなスライドが生じた場合には、当該スライドが分類され、構成テーブルにおいて対応するパラメータを探すのに結果が用いられる。
【0136】
[0158]HSDパラメータデータベース212を利用することにより、正規化のテストスライドが得られた場合には、本明細書に記載の手順を用いて、テスト画像のタイターレベルが推定されるようになっていてもよい(
図3Bおよび
図6参照)。正規化前または正規化中にタイターレベル(テスト画像の加重スコア)が推定されたら、参照値のデータベース212がHSD変換モジュール211により参照され、クエリ画像の推定タイターレベルに対応する統計パラメータがクエリスライドに固有の実パラメータであるかのように読み出され、位置合わせおよびスケーリングの計算に用いられるようになっていてもよい。このような標準化参照値は、データベース212に格納され、必要に応じてシステム200によりアクセスされるようになっていてもよい。いくつかの実施形態において、統計パラメータは、位置合わせおよびスケーリングの両者に用いられる。
【0137】
[0159]色分布座標の位置合わせ
[0160]統計パラメータの導出またはデータベース212からの読み出しがなされた後、位置合わせが実行される(ステップ604)。一般的に、各パッチ中の各画素の色分布座標(cx,cy)は、導出または読み出し統計値を使用することにより、テンプレート色分布座標と整合されて、位置合わせ色分布座標(cx’,cy’)を与える。
【0138】
[0161]本明細書に記載の通り、F(cx,cy)は、正規化されるテスト画像の色分布を表す。ステインの正規化のプロセスは、F(cx,cy)分布の平均の減算およびΣ(Σは、F(cx,cy)の共分散行列を示す)の主固有ベクトルに沿った回転によってF(cx,cy)分布全体を平行移動させることから始まる。その後、区分的線形スケーリングが適用されて、現在の分布からのランドマークをテンプレートスライドのランドマークに整合させる。次のステップにおいては、スケーリング分布が導出角度に沿って逆回転され、テンプレートテスト画像中の対応する分布の主固有ベクトルと位置合わせされる。変換の最終ステップには、分布の導出平均への平行移動を含む。いくつかの実施形態において、位置合わせの出力は、テスト画像中の全パッチにおける全画素の変換色分布座標(cx’,cy’)を与える。
【0139】
[0162]平均減算ステップの場合は、(cx,c,cy,c)=(cx,cy)-(\mux,i,\muy,i)である。その後、(cx,cr,cy,cr)=Ui
*(cx,c,cy,c)を考慮した画像の共分散行列の特異値分解によって、単位行列Uを乗算することにより、(cx,cy)分布の主固有ベクトルに沿って分布を回転させる。第3のステップにおいては、テンプレートの主固有ベクトルに沿って分布を再び回転させる。すなわち、(cx,crr,cy,crr)=Ut
*(cx,cr,cy,cr)である。最後に、全分布を平行移動させて、テンプレート画像の平均と整合させる。すなわち、(cx’,cy’)=(cx,crr,cy,crr)-(\mux,t,\muy,t)である。
【0140】
[0163]濃度スケーリング
[0164]統計パラメータの導出またはデータベース212からの読み出しがなされた後は、導出または読み出しパラメータを用いてスケーリングが実行される(ステップ605)。一般的に、各パッチ中の各画素の濃度分布座標(D)は、テンプレート濃度分布座標と整合されて、スケーリング色分布座標(D’)を与える。
【0141】
[0165]テンプレート画像の濃度プロファイルと整合するように、HSDカラーモデルのテスト画像の濃度成分(D)が変換される。いくつかの実施形態において、分布は、その平均および標準偏差をテンプレート画像中の統計パラメータと整合させることによって正規化される。したがって、変換濃度分布は、以下により決定される。
【0142】
【0143】
[0166]ここで、μおよび
【0144】
【0145】
は、濃度分布の加重平均および加重標準偏差であり、
【0146】
【0147】
、μtemplateは、テンプレート中の対応する値であって、DおよびD’はそれぞれ、スケーリング前後の濃度を表す。
[0167]あるいは、変換濃度分布は、以下により決定され得る。
【0148】
[0168]Dt=D-\mu+\mutemplate
[0169]\mud=mean(Dt)(所望の平均値)
[0170]Ds=Dt/\sigma*\sigma_t
[0171]\muo=mean(Ds)(標準偏差の正規化後に得られる平均)
[0172]D’=Ds-\muo+\mud
[0173]変換座標の重み付け
[0174]HSD空間における最終的な変換座標は、元の座標と、テンプレート中のステインクラス(たとえば、ヘマトキシリン)により位置合わせおよびスケーリングされた座標との加重和となる。このように、ステインクラス(たとえば、ヘマトキシリン)に属さない画素が不変を維持することになる。
【0149】
[0175]各パッチ中の画素ごとに変換色分布・濃度分布座標(cx’,cy’,D’)が得られた後(ステップ604および605)、各画素の最終的な変換座標は、任意特定の画素がステインクラス画素(たとえば、ヘマトキシリン画素)である確率を表す確率値によって重み付けされる(ステップ607)。これらの確率値は、テスト画像中の画素それぞれについて、画素がステインクラス画素である確率を決定するようにトレーニングされた単純ベイズ分類器等の分類器を用いて導出される(ステップ606)。分類器のトレーニングについては、本明細書において別途記載される(HSD分類モジュール参照)。
【0150】
[0176]最終的な座標(cx,f,cy,f,Df)は、以下の通りである。
[0177](cx,f,cy,f)=wstain(cx’,cy’)+wno-stain(cx,cy)
[0178]Df=wstainD’+wno-stainD
[0179]ここで、wstainは、画素がステインクラスに属する確率であり、wno-stainは、画素がこのステインクラスに属さない確率である。
【0151】
[0180]加重変換座標を用いた逆変換
[0181]最終ステップにおいては、RGB色空間においてテスト画像を再生するため、加重変換座標が用いられる(ステップ607)。これは、本明細書に記載のHSD変換の逆を実行することにより実現されるようになっていてもよい。
【0152】
[0182](cx,cy)からRGBへの逆変換は、方程式IR=I・(cx+1)を用いることにより実行され得る。
[0183]
【0153】
【0154】
[0184]ここで、個々のチャネル濃度は、以下の方程式を用いてRGBへと逆変換され得る。
[0185]Icb=I0,cb・e-Dcb
[0186]いくつかの実施形態において、RGB再構成中の色位置合わせの場合は、カラーデコンボリューションに用いられる元のヘマトキシリン色基準ベクトルの採用の代わりに、テンプレート画像中の純粋なヘマトキシリン画素からの正規化平均RGB ODベクトルが再構成に用いられる。
【0155】
[0187]HSD分類器モジュール
[0188]いくつかの実施形態においては、ステイン画素ではない画素から、タイターが正規化対象となっているステインのステイン画素であるテンプレート画像中の画素を認識するため、すなわち、画素分類結果を与えるために分類器がトレーニングされるが、この場合は、HSD変換(ステップ603)により各パッチ中の画素ごとに導出されたHSD座標(cx,cy,D)が特徴として用いられる。
【0156】
[0189]いくつかの実施形態において、分類器は、画素が特定のステインのものであるか否かを推定するようにトレーニングされる。これは、以下の基準が満たされる場合に、画素がステインクラス(たとえば、ヘマトキシリンクラス)に属する旨を考慮することによって実現される。
【0157】
[0190](a)画像が白ではない。RGB画像の全体光学濃度が0.2未満で、RGBチャネルそれぞれからの光学濃度が0.25未満の場合、画像は白と考えられる。光学濃度の導出については、本明細書において記載される。
【0158】
[0191](b)画像の色相が青の範囲内である。いくつかの実施形態において、色相は、HSI(色相飽和強度)色分解により得られる。色相は、画像の色度を規定する角度である。たとえば、色相値が180~240°の場合、結果としての色は青である。
【0159】
[0192](c)テンプレート画像には、「細胞様」構造が存在する。すなわち、DoGフィルタの出力は、0より高い。DoGフィルタならびにその適用による「斑点」および細胞様構造の探索については、本明細書において記載される。
【0160】
[0193]ステインクラスに属する画素を推定した後は、HSD座標(cx,cy,D)を特徴として用いることにより、ヘマトキシリン画素対非ヘマトキシリン画素に関して、単純ベイズ分類器がテンプレート画像に対してトレーニングされる。いくつかの実施形態において、トレーニング集合は、テンプレート画像中のFOV/パッチから選択された画素から得られる。
【0161】
[0194]本開示の実施形態を実現する他の構成要素
[0195]本開示のシステム200は、組織標本に対して1つまたは複数の作成プロセスを実行可能な標本処理装置に接続されていてもよい。作成プロセスとしては、標本の脱パラフィン化、標本の調節(たとえば、細胞調節)、標本の染色、抗原読み出しの実行、免疫組織化学染色(標識化を含む)もしくは他の反応の実行、ならびに/またはin-situハイブリダイゼーション(たとえば、SISH、FISH等)染色(標識化を含む)もしくは他の反応の実行のほか、顕微鏡法、微量分析法、質量分光法、または他の分析方法のために標本を作成する他のプロセスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
[0196]処理装置は、固定剤を標本に塗布可能である。固定剤としては、架橋剤(アルデヒド(たとえば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、およびグルタルアルデヒド)のほか、非アルデヒド架橋剤等)、酸化剤(たとえば、四酸化オスミウムおよびクロム酸等の金属イオンおよび錯体)、タンパク質変性剤(たとえば、酢酸、メタノール、およびエタノール)、メカニズムが未知の固定剤(たとえば、塩化第二水銀、アセトン、およびピクリン酸)、組み合わせ試薬(たとえば、カルノワ固定剤、メタカン、ブアン液、B5固定剤、ロスマン液、およびジャンドル液)、マイクロ波、および混合固定剤(たとえば、排除体積固定剤および蒸気固定剤)が挙げられる。
【0163】
[0197]標本がパラフィンに埋め込まれたサンプルの場合、このサンプルは、適当な脱パラフィン化液を用いることにより脱パラフィン化され得る。パラフィンが除去された後は、任意数の物質が連続して標本に適用され得る。これらの物質としては、前処理用(たとえば、タンパク質架橋の逆転、核酸の曝露等)、変性用、ハイブリダイゼーション用、洗浄用(たとえば、ストリンジェンシ洗浄)、検出用(たとえば、視覚またはマーカ分子のプローブへのリンク)、増幅用(たとえば、タンパク質、遺伝子等の増幅)、カウンタ染色、封入用が可能である。
【0164】
[0198]標本処理装置は、広範な物質を標本に適用可能である。これらの物質としては、
ステイン、プローブ、試薬、洗浄液、および/または調節剤が挙げられるが、これらに限定されない。これらの物質としては、流体(たとえば、気体、液体、または気体/液体混合物)等が可能である。流体としては、溶媒(たとえば、極性溶媒、非極性溶媒等)、溶液(たとえば、水溶液または他種の溶液)等が可能である。試薬としては、ステイン、湿潤剤、抗体(たとえば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体等)、抗原回復液(たとえば、水性または非水性の抗原緩衝液、抗原回復緩衝剤等)が挙げられるが、これらに限定されない。プローブとしては、検出可能な標識またはレポータ分子に付着した単離核酸または単離合成オリゴヌクレオチドが可能である。標識としては、放射性同位体、酵素基質、補因子、リガンド、化学発光または蛍光剤、ハプテン、および酵素が挙げられる。
【0165】
[0199]標本処理装置としては、Ventana Medical Systems,Inc.が販売するBENCHMARK XT器具およびSYMPHONYC器具のような自動化装置が可能である。Ventana Medical Systems,Inc.
は、自動分析を実行するシステムおよび方法を開示した多くの米国特許の譲受人であり、米国特許第5,650,327号、第5,654,200号、第6,296,809号、第6,352,861号、第6,827,901号、および第6,943,029号、ならびに米国特許出願公開第2003/0211630号および第2004/0052685号を含み、それぞれのすべての内容が参照により本明細書に組み込まれる。あるいは、標本は、手動で処理され得る。
【0166】
[0200]標本が処理された後、ユーザは、標本支持スライドを撮像装置に移送することができる。いくつかの実施形態において、撮像装置は、明視野撮像スライドスキャナである。明視野撮像装置の1つとして、Ventana Medical Systems,Inc.が販売するiScan Coreo明視野スキャナがある。自動化された実施形態において、撮像装置は、「IMAGING SYSTEM AND TECHNIQUES(撮像システムおよび技法)」という名称の国際特許出願第PCT/US2010/002772号(特許公開第WO/2011/049608号)または2011年9月9日に出願された「IMAGING SYSTEMS,CASSETTES, AND METHODS OF USING THE SAME(撮像システム、カセット、およびこれらの使用方法)」という名称の米国特許出願第61/533,114号に開示されるようなデジタル病理学デバイスである。国際特許出願第PCT/US2010/002772号および米国特許出願第61/533,114号のすべてが参照により本明細書に組み込まれる。
【0167】
[0201]撮像システムまたは装置は、マルチスペクトル撮像(MSI)システムまたは蛍光顕微鏡システムであってもよい。ここで用いられる撮像システムは、MSIである。MSIは一般的に、画素レベルで画像のスペクトル分布にアクセス可能とすることにより、コンピュータ化顕微鏡ベースの撮像システムを病理標本の分析に備える。多様なマルチスペクトル撮像システムが存在するが、これらのシステムすべてに共通する動作的態様は、マルチスペクトル画像を構成する能力である。マルチスペクトル画像とは、電磁スペクトル全体の特定の波長または特定のスペクトル帯域幅において画像データを捕捉したものである。これらの波長は、光学フィルタまたは赤外線(IR)等の可視光範囲を超える波長における電磁放射光線を含む所定のスペクトル成分を選択可能な他の器具の使用により選別されるようになっていてもよい。
【0168】
[0202]MSIシステムとしては、光学撮像システムが挙げられ、その一部が、所定数Nの離散光帯域を規定するように調節可能なスペクトル選択システムを含む。この光学システムは、光検出器上に広帯域光源で透過照射される組織サンプルを撮像するように構成されていてもよい。光学撮像システムは、一実施形態において、たとえば顕微鏡等の拡大システムを含んでいてもよく、当該光学システムの1つの光出力と空間的に大略位置合わせ
された1本の光軸を有する。このシステムは、異なる離散スペクトル帯において画像が取得されるように(たとえば、コンピュータプロセッサによって)スペクトル選択システムが調整または調節されるように、組織の一連の画像を構成する。また、この装置は、ディスプレイも含んでいてもよく、このディスプレイにおいて、取得された一連の画像から少なくとも1つの視覚的に知覚可能な組織の画像が現れる。スペクトル選択システムは、回折格子、薄膜干渉フィルタ等の一群の光学フィルタ、またはユーザ入力もしくは予めプログラムされたプロセッサのコマンドのいずれかに応答して、光源からサンプルを通じて検出器へと透過した光のスペクトルから特定の通過帯域を選択するように構成されたその他任意のシステム等、光分散要素を含んでいてもよい。
【0169】
[0203]代替実施態様において、スペクトル選択システムは、N個の離散スペクトル帯に対応する複数の光出力を規定する。この種のシステムは、光学システムからの透過光出力を取り込み、識別されたスペクトル帯において、この識別されたスペクトル帯に対応する光路に沿ってサンプルを検出システム上で撮像するように、N本の空間的に異なる光路に沿って、この光出力の少なくとも一部を空間的に方向転換させる。
【0170】
[0204]本明細書に記載の主題および動作の実施形態は、デジタル電子回路またはコンピュータソフトウェア、ファームウェア、もしくはハードウェア(本明細書に開示の構造およびその構造的同等物を含む)、あるいはこれらのうちの1つまたは複数の組み合わせにて実装され得る。本明細書に記載の主題の実施形態は、1つまたは複数のコピュータプログラム、すなわち、データ処理装置による実行またはデータ処理装置の動作の制御ためにコンピュータ記憶媒体上に符号化されたコンピュータプログラム命令の1つまたは複数のモジュールとして実装され得る。本明細書に記載のモジュールはいずれも、プロセッサにより実行されるロジックを含んでいてもよい。本明細書において、「ロジック」は、プロセッサの動作に影響を及ぼすように適用され得る命令信号および/またはデータの形態を有する如何なる情報をも表す。ソフトウェアは、ロジックの一例である。
【0171】
[0205]コンピュータ記憶媒体としては、コンピュータ可読記憶装置、コンピュータ可読記憶基板、ランダムもしくは順次アクセス・メモリアレイもしくはデバイス、またはこれらのうちの1つまたは複数の組み合わせも可能であるし、これらに含まれることも可能である。さらに、コンピュータ記憶媒体は、伝搬信号ではないが、人工的に生成された伝搬信号として符号化されたコンピュータプログラム命令の供給源または宛先が可能である。また、コンピュータ記憶媒体としては、1つまたは複数の別個の物理的構成要素または媒体(たとえば、複数のCD、ディスク、または他の記憶装置)も可能であるし、これらに含まれることも可能である。本明細書に記載の動作は、1つまたは複数のコンピュータ可読記憶装置に格納されたデータまたは他の供給源から受信されたデータに対してデータ処理装置により実行される動作として実装され得る。
【0172】
[0206]用語「プログラムされたプロセッサ」は、データを処理するためのあらゆる種類の装置、デバイス、および機械を含み、一例として、プログラム可能なマイクロプロセッサ、コンピュータ、システム・オン・チップ、またはこれらのうちの複数、もしくは組み合わせが挙げられる。装置としては、専用論理回路(たとえば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路))が挙げられる。また、装置としては、ハードウェアのほか、対象のコンピュータプログラムのための実行環境を生成するコード(たとえば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、クロスプラットフォーム・ランタイム環境、仮想機械、またはこれらのうちの1つもしくは複数の組み合わせを構成するコード)が挙げられる。この装置および実行環境は、ウェブサービス、分散型コンピューティング、およびグリッドコンピューティング・インフラストラクチャ等、種々異なるコンピューティングモデル・インフラストラクチャを実現することができる。
【0173】
[0207]コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト、またはコードとしても知られる)は、コンパイラ型またはインタープリタ型言語、宣言型または手続き型言語等、如何なる形態のプログラミング言語でも記述可能であり、また、単体プログラムまたはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、オブジェクト、もしくはコンピューティング環境における使用に適した他のユニット等、如何なる形態でも展開可能である。コンピュータプログラムは、ファイルシステムのファイルに対応していてもよいが、必ずしもその必要はない。プログラムは、他のプログラムもしくはデータ(たとえば、マークアップ言語文書に格納された1つまたは複数のスクリプト)を保持するファイルの一部、対象のプログラムに専用の1つのファイル、または複数の調整されたファイル(たとえば、1つもしくは複数のモジュール、サブプログラム、もしくはコードの一部を格納したファイル)に格納され得る。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上または1つのサイトに位置付けられた複数のコンピュータもしくは複数のサイトに分散され、通信ネットワークにより相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開され得る。
【0174】
[0208]本明細書に記載のプロセスおよびロジックフローは、1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行し、入力データに対する動作および出力の生成によって動作を実行する1つまたは複数のプログラム可能なプロセッサにより実行され得る。これらのプロセスおよびロジックフローは、専用論理回路(たとえば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路))により実行され得る。また、装置は、専用論理回路(たとえば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路))として実装され得る。
【0175】
[0209]コンピュータプログラムの実行に適したプロセッサとしては、一例として、汎用および専用マイクロプロセッサの両者、ならびに任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つまたは複数のプロセッサが挙げられる。一般的に、プロセッサは、リードオンリーメモリ、ランダムアクセスメモリ、またはその両者から命令およびデータを受信することになる。コンピュータの必須要素は、命令に従って動作を実行するプロセッサならびに命令およびデータを格納する1つもしくは複数メモリデバイスである。また、一般的に、コンピュータは、データを格納する1つまたは複数の大容量記憶装置(たとえば、磁気、光磁気ディスク、または光ディスク)を含むか、あるいは、1つまたは複数の大容量記憶装置に対するデータの受信、送信、または両者を行うように動作結合されることになる。ただし、コンピュータは、そのようなデバイスを必ずしも有する必要がない。さらに、コンピュータは、別のデバイス(たとえば、携帯電話、個人用デジタル補助装置(PDA)、モバイルオーディオもしくはビデオプレーヤ、ゲームコンソール、全地球測位システム(GPS)受信機、または携帯型記憶装置(たとえば、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュドライブ)、あるいはその他多くのデバイス)に埋め込まれ得る。コンピュータプログラム命令およびデータを記憶するのに適したデバイスとしては、あらゆる形態の不揮発性メモリ、媒体、およびメモリデバイスが挙げられ、一例として、半導体メモリデバイス(たとえば、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイス)、磁気ディスク(たとえば、内部ハードディスクもしくはリムーバブルディスク)、光磁気ディスク、ならびにCD-ROMおよびDVD-ROMディスクを含む。プロセッサおよびメモリは、専用論理回路による補完または専用論理回路への組み込みがなされ得る。
【0176】
[0210]ユーザとの相互作用を可能にするため、本明細書に記載の主題の実施形態は、ユーザに情報を表示する表示装置(たとえば、LCD(液晶ディスプレイ)、LED(発光ダイオード)ディスプレイ、もしくはOLED(有機発光ダイオード)ディスプレイ)ならびにユーザがコンピュータに入力を与え得るキーボードおよびポインティングデバイス(たとえば、マウスもしくはトラックボール)を有するコンピュータ上に実装され得る。いくつかの実施態様においては、情報の表示およびユーザからの入力の受け付けにタッチスクリーンが使用され得る。また、ユーザとの相互作用を可能にするため、他の種類のデバイスも同様に使用され得る。たとえば、ユーザに提供されるフィードバックとしては、任意の形態の感覚フィードバック(たとえば、視覚的フィードバック、聴覚的フィードバック、または触覚的フィードバック)が可能であり、ユーザからの入力は、音響入力、音声入力、または触覚入力等、任意の形態で受け取られ得る。また、コンピュータは、ユーザが使用するデバイスに対する文書の送信および受信(たとえば、ウェブブラウザから受けた要求に応じてユーザのクライアントデバイス上のウェブブラウザにウェブページを送ること)によって、ユーザと相互作用可能である。
【0177】
[0211]本明細書に記載の主題の実施形態は、バックエンドコンポーネント(たとえば、データサーバ)、ミドルウェアコンポーネント(たとえば、アプリケーションサーバ)、またはフロントエンドコンポーネント(たとえば、本明細書に記載の主題の一実施態様とユーザが相互作用し得るグラフィカルユーザインターフェースもしくはウェブブラウザを有するクライアントコンピュータ)を含むコンピュータシステム、あるいは1つまたは複数のこのようなバックエンド、ミドルウェア、またはフロントエンドコンポーネントの任意の組み合わせにて実現され得る。システムの構成要素は、如何なる形態または媒体のデジタルデータ通信(たとえば、通信ネットワーク)によっても相互接続され得る。通信ネットワークの例としては、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)およびワイドエリアネットワーク(「WAN」)、相互接続ネットワーク(たとえば、インターネット)、ならびにピア・ツー・ピアネットワーク(たとえば、アドホック・ピア・ツー・ピアネットワーク)が挙げられる。たとえば、
図1のネットワーク20は、1つまたは複数のローカルエリアネットワークを含み得る。
【0178】
[0212]コンピュータシステムは、如何なる数のクライアントおよびサーバをも含み得る。クライアントおよびサーバは一般的に、互いに遠隔であって、通常は、通信ネットワークを通じて相互作用する。クライアントおよびサーバの関係は、それぞれのコンピュータ上で実行され、互いにクライアント-サーバ関係を有するコンピュータプログラムによって生じる。いくつかの実施形態においては、サーバが(たとえば、クライアントデバイスと相互作用するユーザへのデータの表示およびユーザからのユーザ入力の受け付けを目的として)クライアントデバイスにデータ(たとえば、HTMLページ)を送信する。クライアントデバイスで生成されたデータ(たとえば、ユーザ相互作用の結果)は、サーバにおいてクライアントデバイスから受信され得る。
【0179】
[0213]実施例
【実施例1】
【0180】
[0214]撮像アルゴリズムの性能
[0215]色正規化の有効性を実証するため、さまざまなタイターレベルでの正規化を伴う場合および伴わない場合について、画像における細胞検出アルゴリズムの性能を評価した。細胞の数は、さまざまなタイターで相対的に一定としたが、正規化が適用されない場合は、増加傾向が観察された。図_および図_は、全細胞数に対する染色および非染色細胞の割合が異なる(4つのブロックからの)12枚のスライドについて、タイター4に対する変動を示している。図示のように、タイターレベルが4以上では、非正規化画像に対して非染色細胞の数が過大評価されているが、この問題は、ステイン正規化が適用された場合に緩和された。
【0181】
[0216]データセットおよび結果
[0217]提案の方法の性能は、3つの異なるスキャナ(便宜上、スキャナ1、スキャナ2、およびスキャナ3と称される)から得られた3020個の全スライド画像から成るデータセットに対して評価された。スキャナごとに、3つの異なるマーカの画像すなわちHER2、ER、およびKi67が収集された。これらの画像は12個のブロックに由来し、ブロックごとに3つの異なる部分が利用可能である。ブロックおよび部分ごとに、タイターレベル1~9の結果が提供される。また、マーカ/スキャナの一部に対して、いくつかの制御全スライドが利用可能である。以下の表1においては、異なるマーカ/スキャナに利用可能な全スライドの数が示される。
表1:全スライド分布
【0182】
【0183】
[0218]タイターレベル推定に関しては、テストのために1つのブロックに属し、トレーニングのためにその他のブロックに属するスライドをすべて使用することにより、利用可能なマーカそれぞれについて、スキャナ1のいくつかの結果を示す。本項の最後の表2、表3、および表4においては、各スライドの各タイターレベルに分類されたパッチの数および最終的な平均化クラスを示す。
表2:タイター推定結果
【0184】
【0185】
[0219]アルゴリズムのステイン正規化部については、非常に薄くて非常に暗いスライドを正規化した場合のいくつかの結果を
図8および
図9に示す。また、
図10には、ステイン正規化を伴う場合および伴わない場合の画像における細胞検出アルゴリズムの性能を示している。
【0186】
[0220]
図8(a)は、ヘマトキシリン染色が薄い(タイター1)スライドからのFOVの一例を示しており、それがタイター4のテンプレートに対して正規化されたものが
図8(b)である。
図8(b)においては、正規化アルゴリズムによって、細胞がはるかに容易に識別され得ることが分かる。同様に、
図8(c)には、タイター9のスライドからの例示的なFOVを示しており、それがタイター4に対して正規化された対応する画像が
図8(d)に示される。
【0187】
[0221]たとえばHER2を取り上げると、より低いタイターレベルの過大評価に留意することができる。これは、
図9に見られるように、ブロック間の染色の差に起因する。表2(
図9A)に示されるブロックの場合、ヘマトキシリン染色は、(トレーニング集合の
別のブロックに属する)
図9BのFOVよりもはるかに暗い。これらの結果もまた、正規化の必要性を示している。特定のタイターは、同じマーカおよびスキャナを用いた異なるブロックに対してさえ異なって見え得るためである。他のマーカについても、同様の結果が観察され得る。
図9(a)は、表2の結果を与えるのに用いられたブロックからのタイター1の例示的なFOVを示している。このブロックについては、タイターがより低いブロックに対して過大評価されているため、同じタイターの例示的なFOVが
図9(b)に示される。トレーニングに用いられるFOVよりもテスト用FOVに対してヘマトキシリンレベルがはるかに暗くなる事実が見られるため、同じマーカおよびスキャナに対してさえ、染色の強度が異なるブロックで変動することを所与として、過大評価の理由が得られるとともに、正規化の必要性が示される。
【実施例2】
【0188】
[0222]純粋なHTXステイン画素に関するHSD座標位置合わせ
[0223]テンプレートおよび対象WSIの両者に対してHSD変換が実行され、RGB光学濃度(OD)値をHSD座標(cx,cy,D)に変換する。最初の2つの座標は、ステインの量とは無関係の色情報を含む。一方、最後の座標は、ステイン濃度と線形関係の濃度成分である。対象WSIにおける(cx,cy)成分の分布はテンプレート中の成分と位置合わせされ、濃度成分はテンプレートと整合するようにスケーリングされる。本願のフレームワークにおいては、HSD座標位置合わせをすべてのステインに適用する代わりに、純粋なHTXステインの正規化のみに対して、この位置合わせプロセスを採用する。これは、対象画像中のHTXステインの色・濃度分布をテンプレート画像中の分布と最大限に整合させるためである。最終的に正規化された純粋なHTX画素は、位置合わせされたHSD座標(cx’,cy’,D’)を用いたHSD-RGB変換によって得られる。本願の実験においては、色相飽和分布がテンプレートと劇的に異なるHTXステインを位置合わせしようとする場合に、cxおよびcyに対するヒストグラムの伸長によって、色のアーチファクトが深刻になり得ることが分かっている。したがって、このステップは、IHC画像におけるHTX正規化の場合は省略されるものとする。
【実施例3】
【0189】
[0224]HTXステイン混合画素の特別処理
[0225]HTXステインが他のステインと混合された場合、混合物中のHTXステインの実際の色・濃度分布を導出してHSD座標位置合わせに利用するのは不可能である。そこで、テンプレート画像中の純粋なHTXステインの平均色・濃度に対して「グローバル」位置合わせを実行する。混合物中のDABステインを変更することなくこれを行うため、テンプレート画像および対象画像の両者にカラーデコンボリューションを適用する。HTXI/(DABI)を対象画像のカラーデコンボリューションによるHTX(DAB)成分とし、ΗΤΧT(DABT)をテンプレート画像のHTX(DAB)成分とする。濃度位置合わせのため、ΗΤΧTと同じ平均および標準偏差を有するようにΗΤΧIのシフトおよびスケーリングを行って、ΗΤΧfを得る。その後、ΗΤΧfおよびDABIを用いることにより、RGB再構成が実行される。RGB再構成中の色位置合わせの場合は、カラーデコンボリューションに用いられる元のHTX色基準ベクトルの採用の代わりに、テンプレート画像中の純粋なHTX画素からの正規化平均RGB ODベクトルを再構成に用いる。背景画素およびHTXと共局在しない他の非HTXステインは、正規化されることなく不変である。
【実施例4】
【0190】
[0226]純粋なHTXステインおよびHTXステイン混合物の識別
[0227]以下、純粋なHTXおよびHTX混合物の画素を識別する方法を説明する。ヘマトキシリンおよびエオシンステインの混合物に画素が属し得ることを考慮するなら、ヘマトキシリン、エオシン、または背景に画素が属する確率を導出するように単純ベイズ分類
器がトレーニングされる。そして、最終的な変換座標は、クラス確率を重みとして用いたステイン固有の変換座標の加重和である。本願のフレームワークにおいては、2つのクラスすなわちHTXおよび非HTXのみが考慮されるが、これは、ユーザが正規化したい他種のステインに対する手法の一般化を容易にするためである。分類器は、テンプレート画像の画素のHSD座標を用いてトレーニングされる。本願の実験においては、特にクラス境界画素に関して、クラス確率を重みとして用いる場合、この単純な分類器の分類誤差によって、望ましくない色のアーチファクトがもたらされる可能性があることが分かっている。したがって、以下の基準を用いて規定された純粋なHTX画素に対してのみ、重み付け方式を適用する。
【0191】
[0228]画素が白ではない。すなわち、全体ODが0.2未満であり、RGBチャネルのうちの少なくとも1つからのODが0.25超である。
[0229]画素の色相がHSD空間において所定の青の範囲内である。
【0192】
[0230]いくつかの「細胞様」構造が存在する。すなわち、分離HTX成分に適用されたDoGフィルタの出力が0より大きい。
[0231]HTX混合物の画素を識別するため、DoGフィルタが分離DAB成分に適用される。DoGフィルタの出力が0より大きく、画素の分離DABおよびHTXの両成分が固定閾値(th=0.2)よりも高く、画素の色相が所定の青の範囲外である場合は、画素がHTX混合物と決定される。他の画素は、不変である。
【実施例5】
【0193】
[0232]全スライド正規化
[0233]WSI中の画素数が非常に多いことに留意する。このため、正規化に必要な統計データを解くためにWSI中のすべての画素を使用することは、演算コストが非常に高く、不要である。代替として、WSI中のHTXステインを代表する画素を選択する一般的な方法を設計する。本願の実施態様においては、上位50個の視野(FOV)画像(600×600画素)(その平均分離HTX成分がWSI中のすべてのFOVのうちの第80の百分位数に最も近い)が最初に選択される。
図12は、選択されたFOVの一例を示している。その後は、十分なHTXステインを含むパッチ(100×100画素)を各FOVからさらに選択する。これは、背景画素を主に(70%超)含むパッチを破棄することによって実現される。パッチ選択後は、実施例4に記載の基準を用いて、純粋なHTX画素を識別する。これらの画素は、上記実施例において、すべての統計データを解くのに用いられる。このステップにおいて、画素は、当該FOV中のすべての青色画素の第25の百分位数よりもODが低い場合に背景と考えられるが、ここで青色画素は、色相がHSD空間において所定の青の範囲内である画素として識別される。
【実施例6】
【0194】
[0234]結果
[0235]324個のHER2染色IHC WSIから成るデータセットに対する提案方法の性能を評価する。これらのスライドは、12個の乳がん組織ブロックに由来し、27枚のスライドが各ブロックから切り出されている。同じブロックに由来するスライドは、9つの制御濃度レベルでHTXを用いて染色されるが、これらは1~9の値のタイター数によって表され、1が最も明るい染色を示し、9が最も暗い染色を示す。各HTXタイターは、3つの連続スライドから成る群に適用される。テンプレート画像として、タイター4からWSIを選択する。
【0195】
[0236]提案方法の性能を定性的に評価するため、
図11には、HTX濃度レベルがそれぞれタイター1およびタイター9であるスライドから2つの例示的なFOVを示している。正規化FOV画像中のHTXステインは、異なる濃度レベル間で視覚的により一貫する一方、DABステインは、元のスライドから不変である。
【0196】
[0237]提案方法が画像分析アルゴリズムに及ぼす影響を評価するため、社内既製のHER2腫瘍細胞検出アルゴリズムが324枚のスライドに適用される。具体的には、各スライドに対する細胞数読み出しのため、当該スライドから複数のFOVが処理され、同じ組織ブロックからのスライド間でこれらのFOVが位置決めされる。
図3(a)は、1つの組織ブロックに対する各タイターの平均細胞数読み出しを示している。一般的に、正規化前は、非染色(青)細胞数がHTX濃度レベルに明らかに依存するが、正規化後は、このような依存性は大きく低下する。染色(茶)細胞の場合は、正規化の前も後も依存性が低い。異なるHTX濃度レベル間のアルゴリズム出力の一貫性をさらに示すため、同じ組織ブロックからタイター4スライドにより生成された同じ読み出しに対して、各タイターの平均非染色細胞数が正規化される。出力の一貫性が良好な場合、この数は、タイターごとにおおよそ一定を維持し、値1に近づく(タイター4の場合は1に等しい)はずである。
図12は、すべてのタイター間の一貫性の改善を明確に示している。また、正規化の後でさえ、タイター9のスライドが依然として、タイター4のスライドよりもはるかに高い細胞数を生成していることも観察される。これは、極端に高い濃度のHTXが深刻な背景染色となって、アルゴリズムが背景において大量の細胞誤検出を生じるためであり、ステインの正規化だけでは解決され得ないことが分かっている。
【0197】
[0238]したがって、出願人らは、HTXステインの変動がIHC画像分析に対して難題を突き付けると考える。本願は、HSD色空間において色・濃度分布をテンプレート画像に位置合わせすることによりHTXステインを正規化し得る単一ステイン正規化のフレームワークを提示する。ステイン混合物におけるHTXの正規化は、分離HTX成分の平均および標準偏差の位置合わせにより、テンプレート画像中の純粋なHTX画素の平均RGB ODベクトルをRGB再構成中のHTX色基準ベクトルとして用いることにより処理される。実験結果は、提案の方法がDABステインに影響を及ぼすことなく、異なる画像間のHTXステインの一貫性を改善しており、HTXステイン変動に対する画像分析アルゴリズムの依存性を大幅に抑えていることを示す。この方法は、他のIHCステインにも拡張可能であり、これが今後の課題である。
【0198】
[0239]以上、多くの例示的な実施形態を参照しつつ本開示が説明されたが、本開示の原理の主旨および範囲に含まれるその他多くの改良および実施形態が当業者により考案され得ることが了解されるものとする。より詳細には、本開示の主旨から逸脱することなく、上記開示内容、図面、および添付の特許請求の範囲内の主題組み合わせ構成の構成部分および/または構成において、合理的な変形および改良が可能である。当業者には、構成部分および/または構成における変形および改良のほか、代替的な使用についても明らかとなるであろう。
【0199】
[0240]本明細書においては、1つまたは複数のステインで染色された生物学的サンプルの全スライド画像内の第1のステインのタイターを検査し、全スライド画像を第1のステインのタイターに対して正規化する方法であって、
導出された第1のステイン画像特徴に基づいて、全スライド画像の加重平均タイタースコアを演算するステップと、
演算された加重平均スコアが所定のタイター範囲内でない場合に、全スライド画像をテンプレート画像に対して正規化するステップと、
を含み、
全スライド画像が、(a)全スライド画像の色・濃度分布をテンプレート画像の色・濃度分布と整合させることであり、全スライド画像およびテンプレート画像の両者の色・濃度分布が、濃度情報を組み込んだカラーモデル内で導出される、ことと、(b)加重変換座標を用いて、濃度情報を組み込んだカラーモデル内で全スライド画像を逆変換すること
によりRGB画像を再構成することと、によって正規化される、方法がさらに開示される。
【0200】
[0241]加重平均タイタースコアが、(a)全スライド画像中の一連の画像パッチそれぞれから複数の第1のステイン画像特徴を導出することと、(b)トレーニングされた特徴識別分類器を用いることにより、画像パッチそれぞれから導出された複数の画像特徴を分類することと、によって演算される、方法がさらに開示される。
【0201】
[0242]一連の画像パッチが、全スライド画像から所定数のFOVを抽出することと、(b)抽出された各FOVの一組のパッチを演算することと、(c)各抽出FOVの一組のパッチのうち、閾値パッチ基準を満たすパッチを保持することと、によって導出される、方法がさらに開示される。
【0202】
[0243]第1のステイン画像特徴が、ステイン色特徴およびステイン濃度特徴である、方法がさらに開示される。
[0244]全スライド画像の色・濃度分布が、(i)全スライド画像の画像パッチ内で変換を実行して、画像パッチそれぞれのすべての画素の色・濃度分布座標(cx,cy,D)を取得することと、(ii)テンプレート色座標と同じ平均および配向を有するように全スライド画像中の得られた色分布座標(cx,cy)をシフトおよび回転させて、各画像パッチの画素ごとに位置合わせされた色座標(cx’,cy’)を提供することと、(iii)テンプレート濃度分布と同じ加重平均および加重標準偏差を有するように全スライド画像から得られた濃度分布(D)をスケーリングして、各画像パッチの画素ごとにスケーリングされた濃度分布(D’)を提供することと、によって、テンプレート画像の色・濃度分布と整合される、方法がさらに開示される。
【0203】
[0245]加重変換座標が、(i)画像パッチ中の画素が第1のステイン画素である確率を演算することと、(ii)演算された確率によって、位置合わせされた色分布座標およびスケーリングされた濃度分布座標(cx’,cy’,D’)を重み付けすることと、によって導出される、方法がさらに開示される。
【0204】
[0246]得られた色・濃度分布のテンプレート画像の色・濃度分布との整合に、所定の統計パラメータを利用し、選定される所定の統計パラメータが、全スライド画像の加重平均タイタースコアを近似するタイターレベルにとって特別である、方法がさらに開示される。
【0205】
[0247]第1のステインが、ヘマトキシリンである、方法がさらに開示される。
[0248]所定のタイター範囲が、4~6である、方法がさらに開示される。
[0249]濃度情報を組み込んだカラーモジュールが、HSDカラーモジュールである、方法がさらに開示される。
【0206】
[0250]クエリ画像内の第1のステインのタイターをテンプレート画像中の第1のステインのタイターに対して正規化する撮像システムであり、クエリ画像が少なくとも第1のステインで染色された生物学的サンプルの画像である、撮像システムであって、(i)1つまたは複数のプロセッサと、(ii)プロセッサに結合され、当該1つまたは複数のプロセッサにより実行された場合に、
濃度情報を組み込んだカラーモジュール内で、クエリ画像において生成されたパッチの画素ごとに色・濃度分布座標を導出することと、
クエリ画像の推定タイターレベルに特有の所定の位置合わせおよびスケーリングパラメータ値を用いて、生成されたパッチの画素ごとに導出された色・濃度分布座標を変換することにより、生成されたパッチの画素ごとに変換色・濃度分布座標を提供することと、
画素確率値により重み付けされた変換色・濃度分布座標を用いて、濃度情報を組み込んだカラーモデル内でクエリ画像を逆変換することによりRGB画像を再構成することと、
を含む動作を1つまたは複数のプロセッサに実行させるコンピュータ実行可能命令を格納するメモリと、を備えた、撮像システムがさらに開示される。
【0207】
[0251]染色装置をさらに備えた、撮像システムがさらに開示される。
[0252]生物学的サンプルが、少なくとも2つのステインで染色された、撮像システムがさらに開示される。
【0208】
[0253]生成されたパッチの画素ごとに導出された色・濃度分布座標の変換が、(a)テンプレート色座標と同じ平均および配向を有するように、生成されたパッチの画素ごとに導出された色分布座標(cx,cy)をシフトおよび回転させて、生成されたパッチの画素ごとに変換色座標(cx’,cy’)を提供することと、(b)テンプレート濃度分布と同じ加重平均および加重標準偏差を有するように、生成されたパッチの画素ごとに得られた濃度分布(D)をスケーリングして、生成されたパッチの画素ごとに変換濃度分布(D’)を提供することと、を含む、撮像システムがさらに開示される。
【0209】
[0254]複数のタイターレベルにおいて第1のステインに特有の位置合わせおよびスケーリングパラメータ値が、メモリに格納される、撮像システムがさらに開示される。
[0255]クエリ画像の推定タイターレベルが、導出された第1のステイン色・強度特徴に基づいて、クエリ画像の加重平均タイタースコアを演算することにより決定され、選択される位置合わせおよびスケーリングパラメータがクエリ画像の加重平均タイタースコアを近似する、撮像システムがさらに開示される。
【0210】
[0256]加重平均スコアが、(a)クエリ画像中の生成されたパッチから複数の第1のステイン画像特徴を導出することと、(b)トレーニングされたタイター識別分類器を用いることにより、生成されたパッチそれぞれから導出された複数の画像特徴を分類することと、によって演算される、撮像システムがさらに開示される。
【0211】
[0257]タイター識別分類器が、第1のステインタイターレベルをクラス標識として用いることにより標準化サンプルから導出された第1のステイン色・強度特徴に対してトレーニングされたマルチクラス分類器である、撮像システムがさらに開示される。
【0212】
[0258]パッチが、クエリ画像から所定数のFOVを抽出することと、(b)抽出された各FOVの一組のパッチを生成することと、(c)各抽出FOVの一組のパッチのうち、閾値パッチ基準を満たすパッチを保持することと、によって生成される、撮像システムがさらに開示される。
【0213】
[0259]加重変換色・濃度分布座標が、(i)画素が第1のステイン画素である確率を演算することと、(ii)演算された確率で変換色・濃度分布座標を重み付けすることと、によって導出される、撮像システムがさらに開示される。
【0214】
[0260]濃度情報を組み込んだカラーモジュールが、HSDカラーモジュールである、撮像システムがさらに開示される。
[0261]1つまたは複数のステインで染色された生物学的サンプルの全スライド画像内の第1のステインのタイターを検査し、全スライド画像を第1のステインのタイターに対して正規化する非一時的コンピュータ可読媒体であって、
導出された第1のステイン画像特徴に基づいて、全スライド画像の加重平均タイタースコアを演算することと、
第1のステインの全スライド画像のタイターをテンプレート画像の第1のステインのタ
イターに対して正規化することと、を含み、全スライド画像が、
濃度情報を組み込んだカラーモデル内でクエリ画像中の色・濃度分布座標を導出することと、
導出されたクエリ画像中の色分布座標をテンプレート画像の色分布座標と位置合わせして、変換色分布座標を提供することであり、位置合わせが、テンプレート色分布座標と同じ平均および配向を有するように、導出されたクエリ画像中の色分布座標をシフトおよび回転させることを含み、位置合わせステップが、全スライド画像の演算された加重平均タイタースコアと整合された所定の位置合わせパラメータを利用する、ことと、
導出されたクエリ画像中の濃度分布座標をテンプレート画像の濃度分布座標でスケーリングして、変換濃度分布座標を提供することであり、スケーリングが、テンプレート濃度分布座標と同じ加重平均および加重標準偏差を有するように、導出された濃度分布座標を変換することを含み、スケーリングステップが、全スライド画像の演算された加重平均タイタースコアと整合された所定のスケーリングパラメータを利用する、ことと、
加重変換色・濃度分布座標を用いて、濃度情報を組み込んだカラーモデル内でクエリ画像を逆変換することによりRGB画像を再構成することと、
によって正規化される、非一時的コンピュータ可読媒体がさらに開示される。
【0215】
[0262]全スライド画像中の第1のステインが、演算された加重平均タイタースコアが所定の閾値タイタースコア範囲外となった場合、テンプレート画像の第1のステインのタイターに対して正規化される、非一時的コンピュータ可読媒体がさらに開示される。
【0216】
[0263]所定の閾値タイタースコアが、およそ3~およそ6の範囲である、非一時的コンピュータ可読媒体がさらに開示される。
[0264]導出された第1のステイン画像特徴に基づく全スライド画像の加重平均タイタースコアが、(a)全スライド画像から所定数のFOVを抽出することと、(b)抽出された各FOVの一組のパッチを演算することと、(c)一組のパッチ内の各パッチから、複数の第1のステイン色・強度特徴を導出することと、(d)トレーニングされたタイター分類器を用いて、導出された複数の第1のステイン色・強度特徴を分類することと、(e)すべてのパッチからの分類結果に基づいて、加重平均スコアを演算することと、によって演算される、非一時的コンピュータ可読媒体がさらに開示される。
【0217】
[0265]濃度情報を組み込んだカラーモジュールが、HSDカラーモジュールである、非一時的コンピュータ可読媒体がさらに開示される。