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特許7273248LDI-MSを用いた血液中のビタミンDの検出方法およびそのための装置
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  • 特許-LDI-MSを用いた血液中のビタミンDの検出方法およびそのための装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】LDI-MSを用いた血液中のビタミンDの検出方法およびそのための装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20230502BHJP
   G01N 33/82 20060101ALI20230502BHJP
   H01J 49/00 20060101ALI20230502BHJP
   H01J 49/16 20060101ALI20230502BHJP
   H01J 49/26 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
G01N27/62 G
G01N33/82
G01N27/62 V
G01N27/62 F
H01J49/00 360
H01J49/16 400
H01J49/26
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022512330
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-20
(86)【国際出願番号】 KR2019015276
(87)【国際公開番号】W WO2021033836
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】10-2019-0103035
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515057001
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティトゥート オブ スタンダーズ アンド サイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ, テ ギョル
(72)【発明者】
【氏名】ソン, ジン ギョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ, スンホ
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-513781(JP,A)
【文献】Analyses of functional polymer-modified nanoparticles for protein sensing by surface-assisted laser desorption/ionization mass spectrometry coupled with HgTe nanomatrices,Colloids and Surfaces B: Biointerfaces,Elsevier B.V.,2015年04月07日,Vol. 130,pp. 157-163,doi: 10.1016/j.colsurfb.2015.04.001
【文献】Detection of Proteins and Protein-Ligand Complexes Using HgTe Nanostructure Matrixes in Surface-Assisted Laser Desorption/Ionization Mass Spectrometry,Analytical Chemistry,American Chemical Society,2010年06月01日,Vol. 82, No. 11,pp. 4543-4550, S1-S5,doi: 10.1021/ac100550c
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60-G01N 27/92
G01N 33/48-G01N 33/98
G01N 30/00-G01N 30/96
G01N 21/00-G01N 21/83
H01J 49/00-H01J 49/48
B01L 3/00-B01L 3/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
ACS PUBLICATIONS
Springer Link
Oxford Journals
Wiley Online Library
IEEE Xplore
SPIE Digital Library
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板層と、前記基板層上に積層され、前記基板層に接する複数の二テルル化タングステンナノフレーク粒子を含む二テルル化タングステン層と、含むLDI-MS試料ロードアレイの二テルル化タングステン層上に、血液を含む試料をロードする試料ロードステップ
LDI-MSスペクトルを得るステップ;
前記スペクトルを用いて検量線を誘導するステップ;
前記検量線を確認するステップ;
前記検量線を用いてビタミンDの含量を計算する定量化ステップ、
を含む、LDI-MSを用いた血液中のビタミンDの検出方法。
【請求項2】
前記LDI-MSを用いた血液中のビタミンDの検出方法は、前記試料ロードステップの前に、液状試料に内部標準物質を添加するステップを含み、
前記定量化ステップは、LDI-MSスペクトルにおいて、ビタミンDに該当するピーク強度および内部標準物質に該当するピーク強度からビタミンDの含量を決めるステップを含む、請求項に記載のLDI-MSを用いた血液中のビタミンDの検出方法。
【請求項3】
前記定量化ステップは、補正スペクトルを得るステップを含み、前記補正スペクトルにおいて決定係数(Coefficient of determination)が0.9以上である、請求項に記載のLDI-MSを用いた血液中のビタミンDの検出方法。
【請求項4】
基板層と、
前記基板層上に積層され、血液を含む試料がロードされるようにする二テルル化タングステン層と
を含み、
前記二テルル化タングステン層は、前記基板層に接する複数の二テルル化タングステンナノフレーク粒子を含む、
血液中のビタミンD検出用のLDI-MS試料ロードアレイ。
【請求項5】
前記二テルル化タングステンナノフレーク粒子は、平均厚さが2~15nmである、請求項に記載の血液中のビタミンD検出用のLDI-MS試料ロードアレイ。
【請求項6】
前記二テルル化タングステン層は、二テルル化タングステンナノフレーク粒子が単位面積当たりに0.0001~100mg/cmで存在する、請求項に記載の血液中のビタミンD検出用のLDI-MS試料ロードアレイ。
【請求項7】
前記二テルル化タングステン層は、二テルル化タングステンナノフレーク粒子が分散された溶液から前記基板層上にスポッティング(Spotting)された後、分散媒が蒸発して製造されたものである、請求項に記載の血液中のビタミンD検出用のLDI-MS試料ロードアレイ。
【請求項8】
前記溶液は、二テルル化タングステンナノフレーク粒子を0.001~10重量%で含む、請求項に記載の血液中のビタミンD検出用のLDI-MS試料ロードアレイ。
【請求項9】
前記溶液は、0.001~100μlの含量(25℃、1atm)で、同一領域に2回以上スポッティングされる、請求項に記載の血液中のビタミンD検出用のLDI-MS試料ロードアレイ。
【請求項10】
前記二テルル化タングステン層の平均厚さは、0.001~500μmである、請求項に記載の血液中のビタミンD検出用のLDI-MS試料ロードアレイ。
【請求項11】
前記基板層は、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、クロム、銀、およびシリコンの中から選択される何れか1つまたは2つ以上を含む、請求項に記載の血液中のビタミンD検出用のLDI-MS試料ロードアレイ。
【請求項12】
前記試料ロードアレイは、血液中に存在するビタミンDの定性または定量分析のための用途として用いられる、請求項に記載の血液中のビタミンD検出用のLDI-MS試料ロードアレイ。
【請求項13】
請求項から12の何れか一項に記載の血液中のビタミンD検出用のLDI-MS試料ロードアレイを含むLDI-MS用の試料ロードキット。
【請求項14】
請求項から12の何れか一項に記載の血液中のビタミンD検出用のLDI-MS試料ロードアレイを含むレーザ脱離イオン化質量分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液中のビタミンDの検出方法および血液中のビタミンDを検出するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンDは、カルシウムの恒常性の維持、および骨と無機質の代謝に必須の栄養素であって、ビタミンDの欠乏時、骨粗しょう症および骨折の危険が増加し、子供にはクル病などを、成人には骨軟化症などを招くことがある。最近の研究結果、ビタミンDの不足は、骨の代謝だけでなく、糖尿病、癌、心血管疾患、自己免疫疾患などの発生とも関わりがあることが報告されている。例えば、ビタミンDは、カテリシジン(cathelicidin)のような抗菌ペプチドを産生するのに必要であり、ヒトマクロファージの結核菌(Mycobacterium tuberculosis)などのような病原菌を退治するのに必要である。体内で、ビタミンDは、ビタミンDとビタミンDの2つの形態で存在する。ビタミンDは、主に植物で合成され、ビタミンDは、主に紫外線に露出された際に皮膚で合成される。体内で、ビタミンDは、結合タンパク質と結合して肝臓に移動し水酸化され、25-hydroxyvitamin D(25-(OH)D)となる。この物質は、体内のビタミンDの状態を最もよく反映するマーカーであり、腎臓で活性型である1α,25-Dihydroxyvitamin D[1α,25(OH)D]となる。ヒトの血中ビタミンDの濃度は、衣服や、日光照射などの生活様式や、ビタミンD強化食品の摂取有無、季節や環境などの影響を受ける。現在、25(OH)Dの定量のための臨床方法としては、大きく、液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(Liquid chromatography tandem mass spectrometry、LC-MS/MS)、高速液体クロマトグラフィー質量分析法(High-performance liquid chromatography mass spectrometry、HPLC-MS)、ラジオイムノアッセイ(RadioImmunoAssay、RIAなど)、および酵素結合免疫吸着検査法(Enzyme-linked immunosorbent assay、ELISA)が主に用いられる。臨床実験室においては、液体クロマトグラフィータンデム質量分析法を用いて患者試料中のビタミンの定量を行っているが、1つの試料当たりに3~5分の分析時間がかかるため、リアルタイムの測定が難しく、測定データを即刻に収集することが容易ではない。また、多量の検体を分析するのに難しさがあり、複数の実験段階を必要とし、複雑であるという限界がある。
【0003】
したがって、臨床サンプルからビタミンDの迅速な結果収集が求められ、疾病の診断および薬物治療反応を確認するために正確性、センシティビティの向上はいうまでもなく、直接的且つ高い処理量の検出が可能な、血液中のビタミンDの検出方法およびそのための装置に対するより一層深い研究が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0068280号公報(KR10-2018-0068280A(2018.06.21))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、測定時に、複雑ではなく、多くの測定段階を経る必要がなく、迅速な分析によりリアルタイムで測定および結果収集が容易な、LDI-MSを用いた血液中のビタミンDの検出方法およびそのための装置を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、さらに低いサンプルの濃度においても精密な分析が可能であるためセンシティビティおよび精密性に優れるとともに、多様な亜型(subtype)ビタミンDの精密な検知が可能であることはいうまでもなく、高い処理量を有し、マトリックスによる干渉なしに血液におけるビタミンDの構造分析およびその定量的分析を正確に行うことができる、LDI-MSを用いた血液中のビタミンDの検出方法およびそのための装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るLDI-MSを用いた血液中のビタミンDの検出方法は、基板層と、前記基板層上に積層される二テルル化タングステン層と、を含むLDI-MS試料ロードアレイの二テルル化タングステン層上に、血液を含む試料をロードする試料ロードステップ、および前記LDI-MS試料ロードアレイ上にロードされた試料をLDI-MSで分析し、試料中のビタミンDを検出する分析ステップを含む。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記分析ステップは、ビタミンDの含量を計算する定量化ステップを含んでもよい。
本発明の一実施形態において、前記分析ステップは、LDI-MSスペクトルを得るステップと、前記スペクトルを用いて検量線を誘導するステップと、前記検量線を確認するステップと、前記検量線を用いて試料を定量分析するステップとを含んでもよい。
【0009】
本発明の一実施形態に係るLDI-MSを用いた血液中のビタミンDの検出方法は、前記試料ロードステップの前に、液状試料に内部標準物質を添加するステップを含んでもよく、前記定量化ステップは、LDI-MSスペクトルにおいて、ビタミンDに該当するピーク強度および内部標準物質に該当するピーク強度からビタミンDの含量を決めるステップを含んでもよい。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記定量化ステップは、補正スペクトルを得るステップを含み、前記補正スペクトルにおいて決定係数(Coefficient of determination)が0.9以上であってもよい。
【0011】
本発明に係る血液中のビタミンD検出用のLDI-MS試料ロードアレイは、基板層と、前記基板層上に積層され、血液を含む試料がロードされるようにする二テルル化タングステン層と、を含む。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記二テルル化タングステン層は、前記基板層に接する複数の二テルル化タングステンナノフレーク粒子を含んでもよい。
本発明の一実施形態において、前記二テルル化タングステンナノフレーク粒子は、平均厚さが2~15nmであってもよい。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記二テルル化タングステン層は、二テルル化タングステンナノフレーク粒子が単位面積当たりに0.0001~100mg/cmで存在してもよい。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記二テルル化タングステン層は、二テルル化タングステンナノフレーク粒子が分散された溶液から前記基板層上にスポッティング(Spotting)された後、分散媒が蒸発して製造されたものであってもよい。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記溶液は、二テルル化タングステンナノフレーク粒子を0.001~10重量%で含んでもよい。
本発明の一実施形態において、前記溶液は、0.001~100μlの含量(25℃、1atm)で、同一領域に2回以上スポッティングされてもよい。
本発明の一実施形態において、前記二テルル化タングステン層の平均厚さは、0.001~500μmであってもよい。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記基板層は、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、クロム、銀、およびシリコン(SiO)などから選択される何れか1つまたは2つ以上を含んでもよい。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記試料ロードアレイは、血液中に存在するビタミンDの定性または定量分析のための用途として用いられてもよい。
本発明は、前記血液中のビタミンD検出用のLDI-MS試料ロードアレイを含むLDI-MS用の試料ロードキットを提供してもよい。
本発明は、前記血液中のビタミンD検出用のLDI-MS試料ロードアレイを含むレーザ脱離イオン化質量分析装置を提供してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るLDI-MSを用いた血液中のビタミンDの検出方法およびそのための装置は、測定時に、複雑ではなく、多くの測定段階を経る必要がなく、迅速な分析によりリアルタイムで測定および結果収集が容易であるという効果がある。
【0019】
本発明に係るLDI-MSを用いた血液中のビタミンDの検出方法およびそのための装置は、さらに低いサンプルの濃度においても精密な分析が可能であるためセンシティビティおよび精密性に優れるとともに、多様な亜型ビタミンDの検知が可能であることはいうまでもなく、高い処理量を有し、マトリックスによる干渉なしに血液における代謝過程を経たビタミンDの構造分析およびその定量的分析を正確に行うことができるという効果がある。
【0020】
本発明で明らかに言及していない効果であるとしても、本発明の技術的特徴により期待される明細書に記載された効果およびその内在的な効果は、本発明の明細書に記載されたものと同様に取り扱われる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るLDI-MS試料ロードアレイを示したイメージ(上側)および積層構造を示したイメージ(下側)である。
図2】実施例1のLDI-MS試料ロードアレイを用いて血漿中の250H-ビタミンDを測定して得たレーザ脱離/イオン化質量分析スペクトル(LDI-MS for 25OH-Vitamin D_WTe)である。
図3】実施例1のLDI-MS試料ロードアレイを用いて血漿中の250H-ビタミンDを測定して得たレーザ脱離/イオン化質量分析スペクトル(LDI-MS for 25OH-Vitamin D_WTe)である。
図4】実施例1のLDI-MS試料ロードアレイを用いて血漿中の250H-ビタミンDを測定して得たレーザ脱離/イオン化質量分析スペクトル(LDI-MS for 25OH-Vitamin D_WTe)である。
図5】実施例1のLDI-MS試料ロードアレイを用いて血漿中の250H-ビタミンDを測定して得たレーザ脱離/イオン化質量分析スペクトル(LDI-MS for 25OH-Vitamin D_WTe)である。
図6】実施例1のLDI-MS試料ロードアレイを用いて血漿中の250H-ビタミンDを測定して得たレーザ脱離/イオン化質量分析スペクトル(LDI-MS for 25OH-Vitamin D_WTe)である。
図7】実施例1のLDI-MS試料ロードアレイを用いて血漿中の250H-ビタミンDを測定して得たレーザ脱離/イオン化質量分析スペクトルを検定曲線で示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照し、本発明に係るLDI-MSを用いた血液中のビタミンDの検出方法およびそのための装置について詳しく説明する。
本発明に記載されている図面は、当業者に本発明の思想が十分に伝達されるように例として提供されるものである。よって、本発明は、提示される図面に限定されず、他の形態に具体化されてもよく、前記図面は、本発明の思想を明確にするために誇張して図示されてもよい。
【0023】
本発明で用いられる技術用語および科学用語において他の定義がなければ、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明および添付図面において、本発明の要旨を不要に濁す恐れがある公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0024】
本発明で用いられる用語の単数の形態は、特に指示しない限り、複数の形態も含むものと解釈されてもよい。
本明細書において、特に言及なしに用いられた%の単位は、他の定義がない限り、重量%を意味する。
【0025】
本明細書で言及される「層」または「膜」の用語は、各材料が連続体(continuum)をなし、幅および長さと比べて厚さが相対的に小さい寸法(dimension)を有することを意味する。このため、本明細書において、「層」または「膜」の用語により、2次元の扁平な平面に解釈されてはならない。
【0026】
本発明は、LDI-MSを用いた血液中のビタミンDの検出方法、血液中のビタミンD検出用のLDI-MS試料ロードアレイ、前記アレイを含むLDI-MS用の試料ロードキット、および前記アレイを含むレーザ脱離イオン化質量分析装置を提供する。本明細書において、LDI-MSは、レーザ脱離/イオン化質量分析法(Laser desorption/ionization mass spectrometry、LDI-MS)を意味する。
【0027】
本発明においては、二テルル化タングステン(Tungsten ditelluride、WTe)が用いられることで、二硫化モリブデン(Molybdenum disulfide、MoS)などと比べて、ビタミンDの定量分析にその精密性が顕著に優れる。均一に蒸着された二テルル化タングステン(Tungsten ditelluride、WTe)ナノフレーク(Nanoflake)粒子を用いてチップ-基盤のLDI-MSアレイが用いられることにより、高い処理量分析のための簡単なプラットフォームを提供することができ、試料準備において部分的または完全な自動化が可能であるため分析時間を画期的に減らすことができる。また、質量分析法での正確度および精度を顕著に向上させることができる。よって、ステップが複雑でリアルタイム検出が実質的に難しいLC-MS/MSの場合とは異なり、本発明は、ビタミンDのリアルタイム検出および分析が可能でありながらも、定性分析および定量分析の精密性にさらに優れるという効果がある。
【0028】
従来のクロマトグラフィー形式の分析法は、特定の時間に現れるピーク(Peak)を分析するため、1種類のターゲット分析物のみを分析することができ、このため、同時に多成分の分析が難しいのに対し、LDI-MSを用いた本発明は、分析管が飛行時間型として試料中に存在する分子の同時測定が可能であるため、迅速に多成分を分析することができる。また、既存のクロマトグラフィー形式の分析法においては、液状の試料がクロマトグラフィー管を通過するのに一定時間がかかって試料当たりに数分かかるのに対し、LDI-MSを用いた本発明は、試料ロードアレイ上に載せ、乾燥させて1プレートを導入し、レーザで分析を行うなどの簡単な手段が用いられるため、数秒内に信号を得ることができ、このため、迅速な分析が可能であるという長所がある。
【0029】
前記血液は、遠心分離などを介して分離された血清(Serum)または血清抽出物であることが好ましい。前記血清抽出物は、血清を液-液抽出(liquid-liquid extraction、LLE)、固相抽出(Solid phase extraction、SPE)などの多様な抽出手段を介して得てもよい。赤血球、白血球、血小板などによるマトリックス効果によるビタミン定量の精度の低下を防止することができるという面で、血清または血清抽出物が用いられることが好ましい。すなわち、血清または血清抽出物を対象とし、本発明に係る分析方法または分析装置手段を用いる場合、非常に精密な定量分析が可能であるという効果がある。
【0030】
本発明に係るLDI-MSを用いた血液中のビタミンDの検出方法は、基板層と、前記基板層上に積層される二テルル化タングステン層と、を含むLDI-MS試料ロードアレイの二テルル化タングステン層上に、血液を含む試料をロードする試料ロードステップ、および前記LDI-MS試料ロードアレイ上にロードされた試料をLDI-MSで分析し、試料中のビタミンDを検出する分析ステップを含む。
【0031】
本明細書で言及される「試料」は、血液または血液を含むものを意味し、血液としては、血液自体が用いられてもよく、血液から分離した血漿が用いられてもよい。
【0032】
前記分析ステップは、定性分析または定量分析をはじめとし、LDI-MSを用いて分析する公知の手段を用いてもよい。例えば、前記分析ステップは、LDI-MSスペクトルを得るステップ、前記スペクトルを用いて検量線を誘導するステップ、前記検量線を確認/分析するステップ、および/または前記検量線を用いて試料を定量分析するステップを含んでもよい。前記得られたスペクトルは、試料中のマトリックスの影響に応じて複雑性が決められ、スペクトルの複雑性を増加させるマトリックスの成分としては、血漿中に存在するタンパク質、脂質、および低分子代謝物質、そして種々の微量イオンが挙げられる。よって、タンパク質および脂質など、分析対象のイオン化を阻害し得る物質を除去する前処理により、分析領域においてさらにきれいなスペクトルを得ることができる。しかし、適した前処理を行うとしても機器の感度がぶれる場合、信号の強さが異に検出され得るため、25OH-ビタミンD-dH)の内部標準物質であるD3-25OH-ビタミンDを用いて値を補正することができる。また、イオン化方法によりイオン化に役立つ物質を検定物質に誘導体化させることができ、例えば、Ampliflex kitを用いることができる。
【0033】
LDI-MSで用いられる質量分析器のm/z領域は、LDI-MSで用いられる公知の文献を参照すればよく、一例を挙げると、100~2,000daであってもよい。この範囲にて、25OH-ビタミンDが誘導体化されたイオンを直接的に検出することができるため、イオンの検出量から定量分析することができる。さらに、LDI-MSにおいて、レーザの強さ強度は、イオン化を起こす基礎物質(underlying material)によりイオン化に応じたスペクトル複雑性を増加させることができるため、適切なレーザの強さに調節することが好ましい。
【0034】
本発明の一実施形態において、前記分析ステップは、ビタミンDの含量を計算する定量化ステップを含んでもよく、前記定量化ステップとして内部標準物質を介した定量化ステップを例に挙げることができる。
【0035】
すなわち、本発明の一実施形態に係るLDI-MSを用いた血液中のビタミンDの検出方法は、前記試料ロードステップの前に、液状試料に内部標準物質を添加するステップを含んでもよく、前記定量化ステップは、LDI-MSスペクトルにおいて、ビタミンDに該当するピーク強度および内部標準物質に該当するピーク強度からビタミンDの含量を決める定量化ステップを含んでもよい。前記内部標準物質は、分析ステップにおいて、ビタミンDと区別可能であり、且つ、物理化学的特性(イオン化特性および溶解度)がビタミンDと類似したものであればよい。かかる内部標準物質を用いて、分子量差によりビタミンDの精密な定量分析が可能である。
【0036】
本発明の一実施形態において、前記定量化ステップは、補正スペクトルを得るステップを含み、前記補正スペクトルにおいて決定係数(Coefficient of determination)が0.9以上、具体的には0.93以上、より具体的には0.95以上であってもよい。すなわち、本発明は、定量分析の精度に顕著に優れるという効果がある。この際、上限値は1以下であればよい。
【0037】
本発明の一実施形態に係るLDI-MSを用いた血液中のビタミンDの検出方法は、検出限界(Limit of detection;LoD)が0.01pmol/μl(ターゲット分子/血液)以下であってもよい。すなわち、本発明は、極少量の血液を用いても精密な定量分析が可能であるという効果がある。
【0038】
本発明に係る血液中のビタミンD検出用のLDI-MS試料ロードアレイは、基板層と、前記基板層上に積層され、血液を含む試料がロードされるようにする二テルル化タングステン層と、を含む。
本発明の一実施形態において、前記二テルル化タングステン層は、前記基板層に接する複数の二テルル化タングステンナノフレーク粒子を含んでもよい。
【0039】
前記二テルル化タングステンナノフレークは、二テルル化タングステンが、短幅、長幅、および厚さのうち少なくとも1つ以上がナノサイズとして板状を有する。二テルル化タングステンナノフレークは、多様な方法により製造されてもよく、例えば、単結晶塊から単層または多層の二次元素材を機械的または化学的に剥離して製造する方法、具体的に、TMD(Transition metal dichalcogenide)単結晶塊をリチウムイオンを含む溶液に浸し、リチウムイオンが層間に挿入(intercalate)されるようにした後に水に露出させ、水とリチウムとの間の急激な反応が起こる現象を用いた剥離方法、基板上にTMD素材を合成する蒸着方法(化学気相蒸着法など)などの手段であってもよい。この他にもナノサイズの板状二テルル化タングステンの製造が可能な手段であればよい。
【0040】
前記二テルル化タングステンナノフレーク粒子について具体的にその規格を説明すれば次の例が挙げられるが、これは好ましい一例として説明されたものにすぎず、これに本発明が必ずしも制限されて解釈されるものではないことはいうまでもない。好ましい一例として、前記二テルル化タングステンナノフレーク粒子は、平均厚さが0.8~50nm、具体的には0.8~15nm、より具体的には0.8~5nmであってもよく、その平均長幅が1~5,000nmであってもよく、単位面積当たりに0.0001~100mg/cmで基板層上に存在してもよい。また、前記二テルル化タングステン層は、その表面粗さ(Surface roughness)が1~500nmであってもよい。
【0041】
前記二テルル化タングステン層は、二テルル化タングステンナノフレーク粒子が分散された分散溶液から前記基板層上にスポッティング(Spotting)された後、分散溶液が蒸発して製造されたものであってもよい。この際、分散溶液は、基板層表面の疎水性程度に応じて水、極性有機溶媒、非極性有機溶媒、双極性有機溶媒などの多様な溶媒が選択されてもよいが、好ましくは、基板層の表面に過度に広がらないように、疎水性表面の基板層上にロードされる二テルル化タングステンナノフレーク粒子が適切な形態および構造を有するように調節されるように疎水性溶媒、すなわち、非極性溶媒が用いられることが好ましい。この際、非極性溶媒は、疎水性特性が高い溶媒であるほど良く、前記非極性溶媒の例としては、イソプロパノール、n-プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどの炭素数C3-C6のアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール;ベンゼン、トルエン、ヘキサンなどの環式化合物などが挙げられ、より好ましくは、イソプロパノールがさらに良い。
【0042】
この際、分散溶媒は、二テルル化タングステンナノフレーク粒子が適切な形態および構造を有するためには、疎水性特性が高い溶媒であるほど良く、前記非極性溶媒の例としては、イソプロパノール、n-プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどの炭素数C3-C6のアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール;ベンゼン、トルエン、ヘキサンなどの環式化合物などが挙げられ、より好ましくは、イソプロパノールがさらに良い。前記二テルル化タングステン層は、二テルル化タングステンナノフレーク粒子が分散された分散溶液から前記基板層上にスポッティング(Spotting)された後、表面で広がらずに適切なサイズで基板層に載置するためには、基板層表面の特性が疎水性であるほど良い。前記分散媒を含む分散溶液をスポッティングし、乾燥により基板層上に二テルル化タングステンをナノフレーク粒子を含む二テルル化タングステン層として形成する場合、さらに安定した構造で規則的なパターンの分散ロードされた状態を維持することができ、さらに精密な定性分析および定量分析が可能であるという効果がある。
【0043】
前記基板層は、その表面が疎水性(Hydrophobic)のものが用いられてもよく、一例として、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、クロム、銀、およびシリコン(SiO)などから選択される何れか1つまたは2つ以上を含む素材が用いられてもよく、具体的な一例として、ステンレススチール基板層またはシリコン基板層が用いられることがさらに好ましい。また、他の基材層上に疎水性の表面を有するコーティング層がコーティングされたものが用いられてもよいことはいうまでもない。具体的な一例として、トリクロロ(1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクチル)シラン(Trichloro(1H,1H,2H,2H-perfluorooctyl)silane)、自己組織化単分子膜(Self-assembled monolayers、SAM)などのような疎水性有機物薄膜がコーティングされたものが用いられてもよく、表面に疎水性特性のナノ構造体を形成してもよい。しかし、これは具体的な一例として説明されたものにすぎず、これに本発明が必ずしも制限されて解釈されるものではない。
【0044】
前記分散溶液の組成比は、最終的に、基板層上に二テルル化タングステンナノフレーク粒子が分散され、適正量がロードされた状態で存在できるように調節されることができるため、大きく制限されるものではないが、例えば、前記分散溶液は、二テルル化タングステンナノフレーク粒子を0.001~10重量%、具体的には0.001~5重量%、より具体的には0.001~1重量%で含んでもよく、この際、残量の分散媒を含んでもよい。
【0045】
本発明の一実施形態において、前記分散溶液は、0.001~100μlの含量(25℃、1atm)で、同一領域に2回以上、具体的には2~10回スポッティングされることがさらに安定した構造で規則的なパターンの分散ロードされた状態を維持することができ、さらに精密な定性分析および定量分析が可能であるという効果がある。
【0046】
前記二テルル化タングステン層の平均厚さは、二テルル化タングステンナノフレーク粒子のロード量およびロード状態に応じて適宜制御されてもよく、例えば、0.001~500μmであってもよい。これを満たす場合、さらに安定的にロードされた状態を維持することができ、さらに精密な定性分析および定量分析が可能であるという効果がある。また、二テルル化タングステン層の幅(横または縦)は、分析/測定規模に応じて適宜調節可能であるため、大きく制限されず、一例として、0.001~10mmであってもよい。
【0047】
前述したように、本発明に係るLDI-MSを用いた血液中のビタミンDの検出方法およびそのための装置は、血液中に存在するビタミンDの定性または定量分析のための用途として用いられてもよい。
【0048】
本発明に係る検出方法および装置は、適用または応用できる多様な手段として利用可能である。一例として、本発明は、LDI-MS試料ロードアレイを含むLDI-MS用の試料ロードキットとして提供されてもよく、LDI-MS試料ロードアレイを含むレーザ脱離イオン化質量分析装置として提供されてもよい。
【0049】
上述したように、本発明に係るLDI-MS試料ロードアレイを用いると、LC-MS/MSなどの従来の分析手段の場合と比べて、定量分析にさらに優れた精度を有することができる。これは、本発明において、二テルル化タングステンを用いることで、非常に精密な定量分析が可能であることを意味し、特に、本発明は、測定過程で時間が多くかかるLC-MS/MSの限界を有しないことにより、LC-MS/MSと比べて、測定が簡単であり、迅速でありながらも、精密な定量分析が可能であるという効果がある。
【0050】
以下、本発明を製造例および実施例により詳細に説明するが、これらは本発明をさらに詳細に説明するためのものであって、本発明の権利範囲が下記の実施例により限定されるものではない。
【0051】
[実施例1]
<LDI-MS試料ロードアレイの製造>
純度99.9995%のWTe結晶(cystal)を超音波処理し、単層において数層からなる平均厚さが1nmであり、且つ、10nm~10μmの範囲の平均長軸を有する二テルル化タングステンナノフレーク粒子(WTe flakes、2D semiconductors)100mgがイソプロパノール1kgに分散された二テルル化タングステン分散液を製造した。次いで、前記二テルル化タングステン分散液を用いて、チップ-基盤のLDI-MSアレイを準備した。具体的に、微液滴分配器を用いて、二テルル化タングステン分散液を1mm厚さのステンレススチールウェハに5回スポッティング(Spotting)して十分に乾燥し、二テルル化タングステンナノフレーク粒子がウェハーに均一に蒸着されて形成された二テルル化タングステン層を含むLDI-MS試料ロードアレイを製造した。この際、スポッティング当たりの二テルル化タングステン分散液の体積は0.1μlに調節された。
【0052】
<LDI-MSアレイを用いたビタミンDの定量分析評価>
分子の予測不可能なイオン化挙動により薬物の濃度を直接決めることは難しいため、類似した脱離/イオン化特性を有する内部標準物質の追加が求められる。すなわち、臨床サンプルにおけるビタミンDの含量を定量化するためには、標的分子と類似した物理化学的特性(イオン化特性および溶解度など)を有する内部標準物質を用いて分子量差によりビタミンDの質量分析を行い、その結果を図2図7に示した。
【0053】
1.試料の準備
25-hydroxyvitamin Dの場合、ステロイド系の脂質分子構造であって、serum状態で抽出するためには、非極性(non-polar)溶媒であるヘキサン(Hexane)を用いて一次的に液-液抽出(liquid-liquid extraction、LLE)を行った。このヘキサン層には非ステロイド系の脂質も抽出されるため、ヘキサン層を乾燥し、アセトニトリル(Acetonitrile)を用いて溶解することで選択的に25-hydroxyvitamin Dを抽出した。
【0054】
検定曲線(Calibration curve)用の試薬を製造するために、100μlの血清(Human serum)にビタミンおよび内部標準物質をそれぞれ10μlずつスパイク(Spiking)した後、5秒間ボルテックス(Vortexing)した。そして、常温で30分間インキュベーション(Incubation)した後、弱くボルテックスしながらメタノール(Methanol)200μlを徐々に添加した。常温で10分間インキュベーションした後、ヘキサン600μlおよび20g/l濃度の炭酸ナトリウム(Sodium carbonate)水溶液150μlを添加した後、弱くボルテックした。次いで、2,000rpmで10分間遠心分離した後、-70℃で30分間保管した。上層液である有機溶媒層を水層から分離してきれいなチューブに移し入れ、下層液である水層に再びヘキサン500μlを添加した後、同一の条件で遠心分離および冷凍過程を繰り返し、試料を追加して抽出した。また、別に移し入れた有機溶媒層を窒素ガスで乾燥させた後、アセトニトリル100μlを添加し、10,000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離後、最終的にアセトニトリル層のみを分離した後に再び乾燥し、誘導体化反応を行う。臨床試料も、血清100μlに内部標準物質を同じ濃度でスパイクした後、同一の前処理を行った。
【0055】
このような方法により、液-液抽出により前処理をした試料に誘導体化物質を導入し、常温で30分間反応を行った。そして、C18固相抽出(Solid phase extraction、SPE)を行って血清抽出物中に存在するマトリックス(matrix)を除去し、実施例1で製造されたLDI-MS試料ロードアレイにロードした。
【0056】
2.質量分析
内部標準物質を用いる標準添加法は、分析しようとする試料に既知の濃度および含量の内部標準物質を添加した後、測定物質の標準溶液を試料に段階的に添加し、25OH-ビタミンDと内部標準物質として用いた25OH-ビタミンD-dとの割合を測定して求めた検定曲線(Calibration curve)によって濃度を決める。濃度および含量を正確に知ることができる内部標準物質から前処理の全過程の回収率(Recovery)を補正することができ、標準添加法は、試料の媒質に応じたマトリックス効果(Matrix effect)による測定バイアス(Bias)を補正して測定の正確度を高める方法である。内部標準物質は、分析しようとする対象元素とその物理的、化学的挙動が類似し、試料中に存在しない元素を選択することが好ましい。
【0057】
内部標準物質として、25OH-ビタミンD-d solutionから出発してgravimetricに薄め、25OH-ビタミンD-d working standard solution(ISTD solution)を作り、一定量の試料に正確な量を添加した。そして、標準添加法のために、25OH-ビタミンD solutionから出発してgravimetricに段階的に薄め、互いに異なる濃度のstandard addition用のworking standard solution(SA working solution)を準備し、内部標準物質が添加された各試料に濃度別に対応してSA working solutionに正確な量を添加した。
【0058】
LDI-MSを用いた血液試料中の25OH-ビタミンDの含量の測定は、前記LDI-MS試料ロードアレイに前処理した試料を5回落としてロードした後に分析を行った。本分析においては、Waters社のSynapG2装置のMALDI(Matrix assisted laser desorption/ionization)システムを用いて測定を行った。この際、355nm Nd:YAGレーザをイオン化源として用い、レーザパワーは350(a.u.)で用いた。分析管のTrap collision energyは6.0Vに、Transfer collision energyは2.0Vに固定して測定を行った。Quadrupole profileは、分析質量範囲の感度を高めるmanual profileを適用し、感度を高めて測定した。混合標準溶液試料および分析対象試料を最後まで一定回数ずつ繰り返し測定した。試料の個数が多い場合、試料の間に適切な間隔で混合標準溶液試料をサンプリングして分析した。
【0059】
3.実験結果
図2図6は、実施例1のLDI-MS試料ロードアレイを用いて血清中のビタミンDを測定して得たレーザ脱離/イオン化質量分析スペクトル(LDI-MS for 25OH-Vitamin D)である。
【0060】
図2図6に示されたように、血清中の25OH-ビタミンD試料の濃度が16pmol/μl、1.6pmol/μl、0.16pmol/μl、0.016pmol/μl、0.008pmol/μlに至るまで、LDI-MS測定時にスペクトルで観察されることを確認することができる。
【0061】
図7は、実施例1のLDI-MS試料ロードアレイを用いて血漿中のビタミンDを測定して得たレーザ脱離/イオン化質量分析スペクトルを検定曲線で示したグラフであって、臨床有効濃度範囲を含む全体濃度区間に対して線形的であり、R値が0.9927であることを確認することができる。
【0062】
したがって、本発明に係るWS LDI-MS測定方法は、LC-MS/MSと比べて、分析が簡単であるとともに製造工程が簡単なプラットフォームとして費用および時間に非常に効率的であり、即刻にリアルタイムで定量分析が可能であるという利点があることはいうまでもなく、LC-MS/MS程度またはそれ以上の精密な定量分析が可能であるため、LC-MS/MSを代替可能であることが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7