(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】還元型補酵素Q10含有組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/09 20060101AFI20230508BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230508BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230508BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230508BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20230508BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20230508BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20230508BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20230508BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230508BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230508BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230508BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20230508BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20230508BHJP
【FI】
A61K31/09
A61K47/36
A61K47/22
A61K9/14
A61K9/19
A61P3/02
A61P17/18
A61P39/06
A61P43/00 107
A61K8/34
A61K8/73
A61K8/67
A23L33/10
(21)【出願番号】P 2020503387
(86)(22)【出願日】2019-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2019005516
(87)【国際公開番号】W WO2019167663
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2018034461
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510259138
【氏名又は名称】ペトロユーロアジア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【氏名又は名称】大森 未知子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英洋
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/022187(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/080787(WO,A1)
【文献】特開2008-297237(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106619588(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00-9/72
A61P 17/18
A61P 39/06
A61P 43/00
A61K 8/00-8/99
A23L 33/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)還元型補酵素Q
10と、(B)オクテニルコハク酸デンプンまたはその塩と、(C)アラビアガムとを含んでなる、粉末状組成物
であって、
組成物中の還元型補酵素Q
10
の含有量が、1.0~50質量%(固形分換算)であり、
(B)オクテニルコハク酸デンプンまたはその塩を(A)還元型補酵素Q
10
に対して少なくとも0.5の割合(質量比、固形分換算)で含んでなり、かつ、(C)アラビアガムを(A)還元型補酵素Q
10
に対して0.2~1の割合(質量比、固形分換算)で含んでなる、粉末状組成物。
【請求項2】
(A)還元型補酵素Q
10
に対する(B)オクテニルコハク酸デンプンまたはその塩の割合(質量比、固形分換算)が、少なくとも0.8である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(A)還元型補酵素Q
10
に対する(C)アラビアガムの割合(質量比、固形分換算)が、0.375~1である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
(D)酸化防止剤をさらに含んでなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(D)酸化防止剤を、(A)還元型補酵素Q
10(1)に対して0.125~1の割合(質量比、固形分換算)で含んでなる、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
酸化防止剤が、アスコルビン酸である、請求項4または5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物が配合されてなる、還元型補酵素Q
10含有固形製剤。
【請求項8】
錠剤、カプセル剤または散剤の形態である、請求項7に記載の固形製剤。
【請求項9】
(A)還元型補酵素Q
10と、(B)オクテニルコハク酸デンプンまたはその塩と、(C)アラビアガムとを、水中で均質化処理して乳化組成物を得る工程と、前記組成物を乾燥させる工程とを含んでなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物の製造方法
であって、
組成物中の還元型補酵素Q
10
の含有量が、1.0~50質量%(固形分換算)であり、
(B)オクテニルコハク酸デンプンまたはその塩を(A)還元型補酵素Q
10
に対して少なくとも0.5の割合(質量比、固形分換算)で配合し、かつ、(C)アラビアガムを(A)還元型補酵素Q
10
に対して0.2~1の割合(質量比、固形分換算)で配合する、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本願は、先行する日本国出願である特願2018-34461(出願日:2018年2月28日)の優先権の利益を享受するものであり、その開示内容全体は引用することにより本明細書の一部とされる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、還元型補酵素Q10含有組成物とその製造方法に関し、詳細には、還元型補酵素Q10を含有する水に分散可能な粉末状組成物とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
補酵素Q10は呼吸鎖や光合成の電子伝達系の脂溶性成分として生体膜内で酸化還元タンパク質間の電子伝達を媒介する役割を果たしている。特に、ヒトを含む哺乳動物では、補酵素Q10はミトコンドリア、リソゾーム、ゴルジ体等の細胞器官に局在し、電子伝達系の構成成分としてATP産生賦活、生体内での抗酸化作用、膜安定化に関与している。すなわち、補酵素Q10は、生体におけるエネルギー生産に深く関与する補酵素であり、生体の機能維持に必要不可欠な物質であるともいえる。このため補酵素Q10は、様々な用途において医薬品、栄養補助食品、化粧品等の成分として幅広く使用されてきた。
【0004】
ところで、補酵素Q10には酸化型と還元型が存在し、生体内では補酵素Q10の大半は還元型補酵素Q10として存在する。還元型補酵素Q10は抗酸化作用を有しており、近年では、種々の用途において酸化型補酵素Q10よりも有効であるとの報告がなされている。
【0005】
しかし、補酵素Q10は難水溶性の物質であり、補酵素Q10の医薬品、食品、化粧品等への実用化に当たっては補酵素Q10の水への可溶化が課題となっていた。これまでに、補酵素Q10をシクロデキストリンにより処理することにより、水に溶解可能な包接化合物が提案されている(特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2005/041945号
【文献】特開2010-126492号公報
【発明の概要】
【0007】
特許文献1に従って還元型補酵素Q10のシクロデキストリン包接体を調製したところ、水への溶解性や保存安定性について、満足のいく結果が得られなかった(データ省略)。すなわち、水への溶解性や保存安定性に優れた還元型補酵素Q10を含有する粉末状組成物が依然として求められているといえる。
【0008】
本発明は、水への溶解性や保存安定性に優れた還元型補酵素Q10含有組成物とその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1](A)還元型補酵素Q10と、(B)オクテニルコハク酸デンプンまたはその塩と、(C)アラビアガムとを含んでなる、粉末状組成物。
[2](B)オクテニルコハク酸デンプンまたはその塩を、(A)還元型補酵素Q10(1)に対して少なくとも0.5の割合(質量比、固形分換算)で含んでなる、上記[1]に記載の組成物。
[3](C)アラビアガムを、(A)還元型補酵素Q10(1)に対して0.125~1の割合(質量比、固形分換算)で含んでなる、上記[1]または[2]に記載の組成物。
[4](D)酸化防止剤をさらに含んでなる、上記[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5](D)酸化防止剤を、(A)還元型補酵素Q10(1)に対して0.125~1の割合(質量比、固形分換算)で含んでなる、上記[4]に記載の組成物。
[6]酸化防止剤が、アスコルビン酸である、上記[4]または[5]に記載の組成物。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載の組成物が配合されてなる、還元型補酵素Q10含有固形製剤。
[8]錠剤、カプセル剤または散剤の形態である、上記[7]に記載の固形製剤。
[9](A)還元型補酵素Q10と、(B)オクテニルコハク酸デンプンまたはその塩と、(C)アラビアガムとを、水中で均質化処理して乳化組成物を得る工程と、前記組成物を乾燥させる工程とを含んでなる、上記[1]~[6]のいずれかに記載の組成物の製造方法。
【0010】
本発明の組成物によれば、難水溶性物質である還元型補酵素Q10を容易に水に分散させることができ、しかも本発明の組成物は溶解後の安定性に優れていることから、本発明は、還元型補酵素Q10の医薬品、食品および化粧品等への利用を促進できる点で有利な発明である。また、オクテニルコハク酸デンプンまたはその塩およびアラビアガムは、食品への使用が認められており、アレルギー物質ではないことから、本発明の組成物とそれを配合した食品等は安心して摂取することができる点でも有利である。
【発明の具体的説明】
【0011】
本発明の組成物は、(A)還元型補酵素Q10と、(B)オクテニルコハク酸デンプンまたはその塩と、(C)アラビアガムとを含んでなる、粉末状組成物である。
【0012】
(A)還元型補酵素Q10
本発明の組成物に配合される還元型補酵素Q10は、例えば、合成、微生物培養(発酵)、天然物からの抽出等の公知の方法により調製することができるが、好ましくは、既存の高純度補酵素Q10などの酸化型補酵素Q10、あるいは酸化型補酵素Q10と還元型補酵素Q10の混合物を、次亜硫酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、アスコルビン酸等の一般的な還元剤を用いて還元することにより調製することができる。
【0013】
本発明の組成物中の還元型補酵素Q10の含有量は、例えば、1.0~50質量%(固形分換算)であり、好ましくは5.0~40質量%(固形分換算)である。
【0014】
(B)オクテニルコハク酸デンプン
本発明の組成物に配合されるオクテニルコハク酸デンプンは、医薬品、食品、化粧品等において使用が認められている賦形剤または乳化剤であり、市販のものを使用することができる。オクテニルコハク酸デンプンは塩の形態(好ましくは医薬品、食品、化粧品等として許容される塩の形態)で本発明の組成物に配合することができる。オクテニルコハク酸デンプンの塩としては、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムが挙げられる。
【0015】
本発明において、オクテニルコハク酸デンプンおよびその塩は賦形剤または乳化剤として配合することができる。本発明の組成物においては、水への溶解性や保存安定性を損なわない限り、オクテニルコハク酸デンプン以外の賦形剤または乳化剤をさらに配合してもよい。本発明の組成物に配合可能な賦形剤としては、医薬品、食品、化粧品等において許容される賦形剤であればいずれのものを使用することができ、例えば、澱粉、化工澱粉、糖類、セルロースが挙げられる。このうち澱粉としては、トウモロコシ澱粉、コムギ澱粉、バレイショ澱粉が挙げられ、化工澱粉としては、デキストリン、マルトデキストリン、粉あめ、可溶化澱粉が挙げられる。また、糖類としては、単糖および二糖(例えば、乳糖、キシロース)に加えて、糖アルコール(例えば、キシリトール、マルチトール、イノシトール)が挙げられる。また、本発明の組成物に配合可能な乳化剤としては、医薬品、食品、化粧品等において許容される乳化剤であればいずれのものを使用することができ、例えば、各種サポニン、レシチン、酵素処理レシチン、酵素分解レシチン、グリセリンエステル、植物性ステロール、ショ糖脂肪酸エステルが挙げられ、本発明の組成物の乳化や乾燥を阻害しない量で添加することができる。
【0016】
本発明の組成物中のオクテニルコハク酸デンプンおよびその塩の含有量は、還元型補酵素Q10(1)に対する割合(質量比、固形分換算)で、下限値を0.5(好ましくは0.8)とすることができる。本発明の組成物中のオクテニルコハク酸デンプンおよびその塩の含有量の上限値に特に制限はないが、還元型補酵素Q10(1)に対する割合(質量比、固形分換算)で、例えば、5、2または1.5とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記比率の範囲は、例えば、0.5~5あるいは0.8~5とすることができる。
【0017】
(C)アラビアガム
本発明の組成物に配合されるアラビアガムは、医薬品、食品、化粧品等において使用が認められている増粘剤であり、市販のものを使用することができる。アラビアガムには脱塩型アラビアガムと非脱塩型アラビアガムがあるが、いずれの形態も本発明の組成物に配合することができる。
【0018】
本発明において、アラビアガムは増粘剤として配合することができる。本発明の組成物においては、水への溶解性や保存安定性を損なわない限り、アラビアガム以外の増粘剤をさらに配合してもよい。そのような増粘剤としては、医薬品、食品、化粧品等において許容される増粘剤であればいずれのものを使用することができ、例えば、アラビノガラクタン、アルギン酸、ウェランガム、エレミ樹脂、サバクヨモギシードガム、カードラン、カシアガム、カゼインナトリウム、カラギナン、カラヤガム、カロブビーンガム、キサンタンガム、キチン、キトサン、グァーガム、グルコサミン、サイリウムシードガム、ジェランガム、タマリンドガム、トロロアオイ、トラガニトガム、納豆菌ガム、ファーセレラン、プルラン、ペクチン、マクロホモプシスガム、メチルセルロース、フクロノリ抽出物が挙げられる。
【0019】
本発明の組成物中のアラビアガムの含有量は、還元型補酵素Q10(1)に対する割合(質量比、固形分換算)で、下限値を0.125(好ましくは0.2)とすることができ、上限値1を(好ましくは0.5)とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記比率の範囲は、例えば、0.125~1あるいは0.2~0.5とすることができる。
【0020】
(D)酸化防止剤
本発明においては、本発明の組成物に含まれる還元型補酵素Q10の分解等を抑制するために、1種または2種以上の酸化防止剤を使用することができる。本発明に使用できる酸化防止剤は、医薬品、食品、化粧品等において許容される酸化防止剤であればいずれのものを使用することができ、例えば、アスコルビン酸並びにそのエステルおよび塩、亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム2ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム、L-システイン塩酸塩、ジブチルヒドロキシトルエン、d-α-トコフェロール酢酸エステル、d-トコフェロール類、トコトリエノール、ミックストコフェロール、カテキン、クエルセチン、ルチン、フェルラ酸、没食子酸、コメヌカ油抽出物、セージ抽出物、生コーヒー豆抽出物、ヒマワリ種子抽出物、ブドウ種子抽出物、ゴマ油不けん化物、チャ抽出物、プロポリス抽出物、ヤマモモ抽出物、ヘゴ・イチョウ抽出物、エンジュ抽出物が挙げられる。このうちアスコルビン酸並びにそのエステルおよび塩としては、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸エステル、L-アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステルが挙げられる。本発明においては、好ましくは、アスコルビン酸および/またはその塩を酸化防止剤として使用することができる。
【0021】
本発明の組成物中の酸化防止剤の含有量は、還元型補酵素Q10(1)に対する割合(質量比、固形分換算)で、下限値を0.125(好ましくは0.25)とすることができ、上限値を1(好ましくは0.75)とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記比率の範囲は、例えば、0.125~1あるいは0.25~0.75とすることができる。
【0022】
本発明の組成物には、上記(A)、(B)および(C)に加えて、上記(D)を配合してもよく、さらには上記(A)、(B)、(C)および(D)以外の医薬品、食品、化粧品等において許容される任意の成分を配合してもよく、そのような成分としては、香料、保存料、甘味料、着色料等が挙げられる。
【0023】
本発明の組成物は、後述のように、原料を均質化処理して製造することができる。従って、本発明の組成物は、上記(A)、(B)および(C)の成分と、場合によっては、上記(D)の成分並びに他の任意の成分とを、均質化状態で含むものとすることができる。
【0024】
本発明の組成物はまた、還元型補酵素Q10の乳化組成物を乾燥させて得られた乳化組成物であり、水に分散可能なものである。ここで、「水に分散可能」なものであるかは、0.2g(固形分換算)の組成物を室温の水100mLに投入し、撹拌混合して溶液の状態を目視観察することにより評価することができる。具体的には、投入した組成物の全量が水に溶解し、浮遊物や沈殿物が生じない場合に、「水に分散可能」と判定することができる。なお、本明細書において「水への溶解」および「水への溶解性」は「水への分散」および「水への分散性」を意味するものとする。
【0025】
本発明の組成物は水に分散可能な還元型補酵素Q10含有組成物であることから、本発明の組成物を食品に原料として添加し、還元型補酵素Q10が均一に配合された食品を製造することができる。本発明の組成物はまた、食品のみならず飼料やペットフードに原料として添加し、還元型補酵素Q10が均一に配合された飼料およびペットフードを製造することができる。すなわち、本発明によれば、本発明の組成物が配合されてなる食品、飼料およびペットフードが提供される。
【0026】
本発明の組成物を配合することができる食品は、特に限定されるものではなく、水(例えば、飲料水、水素水、ミネラルウォーター、ニア・ウォーター)、清涼飲料(例えば、果汁飲料、野菜汁飲料、果汁および野菜汁入り飲料、炭酸飲料、機能性飲料、スポーツ飲料、ノンアルコール飲料)、茶飲料(例えば、緑茶、紅茶、中国茶類、麦茶、そば茶、マテ茶、ブレンド茶)、コーヒー飲料(例えば、缶コーヒー、インスタントコーヒー)、ココア飲料、乳酸菌飲料類、青汁飲料、豆乳飲料、乳製品(例えば、牛乳、乳飲料、加工乳、ヨーグルト)、栄養ドリンク、ゼリー飲料、スープ類、アルコール飲料(例えば、ビール、発泡酒、ウイスキー、バーボン、スピリッツ、リキュール、ワイン、果実酒、日本酒、焼酎、その他雑酒)、炭水化物含有食品(例えば、飯類、麺類、パン類、パスタ類)、洋菓子類(例えば、ビスケット、クラッカー、クッキー、ワッフル、パイ)、和菓子類(例えば、せんべい、饅頭、羊羹)、チューインガム、キャンディ、冷菓類(例えば、アイスクリームおよびシャーベット)が挙げられる。
【0027】
本発明の組成物を配合することができる食品はまた、飲料や流動食のような液状の形態であっても、ペースト状、半液体、ゲル状の形態であっても、固形、粉末の形態であってもよい。本発明の組成物は、水への溶解性のみならず、水に溶解後の安定性にも優れていることから、本発明の組成物を配合した食品や化粧品は、難水溶性の還元型補酵素Q10を含有するにも関わらず、飲料や水性化粧品の形態で提供できる点で有利である。本発明の組成物はまた、打錠機で錠剤に加工しても安定であることから、本発明の組成物を配合した医薬品やサプリメントは、錠剤、カプセル剤、散剤等の固形製剤の形態で提供できる点でも有利である。
【0028】
本発明の食品における本発明の組成物の配合量は、還元型補酵素Q10の1日摂取量を目安に決定することができる。すなわち、還元型補酵素Q10のヒト1日当たりの有効摂取量は3~300mg(好ましくは10~100mg)であることから、このヒト1日分の有効摂取量を摂取できるように本発明の組成物を本発明の食品に配合することができる。この場合、本発明の食品は、還元型補酵素Q10の1日分の有効摂取量を摂取できるように包装されていてもよく、1日分の有効摂取量が摂取できる限り、包装形態は一包装であっても、複数包装であってもよい。包装形態で提供する場合、1日分の有効摂取量が摂取できるように摂取量に関する記載が包装になされているか、または該記載がなされた文書を一緒に提供することが望ましい。また、1日分の有効摂取量を複数包装で提供する場合には、摂取の便宜上、1日分の有効摂取量の複数包装をセットで提供することもできる。
【0029】
本発明の組成物は、原料の均質化処理と、得られた乳化組成物の乾燥処理を実施することにより製造することができる。
【0030】
原料の均質化処理は、まず、還元型補酵素Q10、オクテニルコハク酸デンプンまたはその塩およびアラビアガムを含む原料を水に添加して混合し、場合によっては酸化防止剤や他の任意成分をさらに添加して混合し、次いで、得られた混合液を均質化処理することにより実施することができる。
【0031】
均質化処理は、混合液に含まれる成分粒子を小さく均一化する処理である。均質化処理は、ホモジナイザー(例えば、マイルダー(太平洋機工社製)、シルバーソンホモジナイザー(シルバーソンニッポン社製))、高圧ホモジナイザー(例えば、ホモゲナイザー(三和機械社製)、高圧式ホモジナイザー(三丸機械工業社製))等により実施することができる。ホモジナイザーを使用するときは、25~40m/sの条件で均質化処理することができる。また、高圧ホモジナイザーを使用するときは、50~150MPaの条件で均質化処理することができ、さらに強い力をかけて均質化処理してもよい。均質化処理により還元型補酵素Q10を含有する乳化組成物を得ることができ、該乳化組成物において還元型補酵素Q10は均質化された状態、すなわち、水中に分散した状態で存在する。
【0032】
乳化組成物の乾燥処理は、噴霧乾燥、凍結乾燥等の公知の方法で実施することができる。乾燥処理により粉末状の還元型補酵素Q10含有組成物を得ることができ、得られた粉末状の還元型補酵素Q10含有組成物は、還元型補酵素Q10を他の成分とともに均質化された状態で含む。
【実施例】
【0033】
以下の例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0034】
例1:還元型補酵素Q
10
含有粉末状組成物の製造に適した乳化剤の評価
水に分散可能な還元型補酵素Q10含有粉末状組成物の製造に適した乳化剤を評価した。具体的には、下記の乳化剤(A1~15)10gおよびアラビアガム(イナゲル、伊那食品工業社製)2.5gを100mLの水に添加した後、80℃に加温し、そこに還元型補酵素Q10(カネカ社製)20gを添加して混合した。次いで、超音波発振器(SONICS & MATERIALS Inc.社製、20kHz、15分間×2回)を用いて混合物を乳化させた。乳化物を常法に従って凍結乾燥機(FDU-2200、EYELA社製)を用いて乾燥させ、得られた乾燥物を小型強力粉砕機(ForceMill、大阪ケミカル社製)で微粉砕し、還元型補酵素Q10含有乾燥粉末を調製した。
【0035】
<乳化剤>
A1:レシチン(SLP-ホワイトリゾ、辻精油社製)
A2:アルギン酸プロピレングリコール(ダックロイド、キッコーマンバイオケミファ社製)
A3:ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート80、日油社製)
A4:グリセリン脂肪酸エステル(サンソフトNo.118、太陽化学社製)
A5:ショ糖脂肪酸エステル(S-170、三菱ケミカルフーズ社製)
A6:ショ糖脂肪酸エステル(S-970、三菱ケミカルフーズ社製)
A7:ショ糖脂肪酸エステル(S-1670、三菱ケミカルフーズ社製)
A8:ポリグリセリン脂肪酸エステル(サンソフトQ-18S、太陽化学社製)
A9:プロピレングリコール脂肪酸エステル(サンソフトNo.25CD、太陽化学社製)
A10:ソルビタン脂肪酸エステル(サンソフトNo.61S、太陽化学社製)
A11:オクテニルコハク酸デンプンナトリウム(エマルスター500A、松谷化学工業社製)
A12:オクテニルコハク酸デンプンナトリウム(エマルスター500、松谷化学工業社製)
A13:オクテニルコハク酸デンプンナトリウム(CAPSUL、イングレディオン・ジャパン社製)
A14:オクテニルコハク酸デンプンナトリウム(PURITY GUM BE、イングレディオン・ジャパン社製)
A15:カルボキシメチルセルロース(サンローズSLD、日本製紙社製)
【0036】
得られた還元型補酵素Q10含有乾燥粉末について、粉末の状態、水への溶解性、溶解後8時間静置後の安定性を評価した。粉末の状態、水への溶解性および溶解後8時間静置後の安定性は目視観察により、3段階(A:良好、B:普通、C:不良)で評価した。水への溶解性については、若干の浮遊物が観察された場合にはBと評価し、油状のリングが観察された場合にはCと評価した。溶解後8時間静置後の安定性については、溶解時の状態を維持した場合にはAと評価し、若干の浮遊物が観察された場合にはBと評価し、油状のリングが観察された場合にはCと評価した。また、水への溶解性と溶解後8時間静置後の安定性は、室温の水100mLに還元型補酵素Q10含有粉末0.2gを添加し、撹拌混合した後に観察を行った。
【0037】
結果は表1に示される通りであった。
【0038】
【0039】
以上の通り、乳化剤A1~15のうち、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムを配合した還元型補酵素Q10含有粉末状組成物のみが、粉末の状態および水への溶解性に加え、溶解後の安定性に優れていた。
【0040】
例2:還元型補酵素Q
10
含有粉末状組成物の製造と評価(1)
下記表2に従って各種成分を配合した還元型補酵素Q10含有粉末状組成物を製造した。すなわち、試験区ごとにすべての成分を80℃に加温した500mLの水に添加し、混合して溶解させた。溶解後、超音波発振器(SONICS & MATERIALS Inc.社製、20kHz、15分間×2回)を用いて混合物を乳化させた。乳化物を常法に従って凍結乾燥機(FDU-2200、EYELA社製)を用いて乾燥させ、得られた乾燥物を小型強力粉砕機(ForceMill、大阪ケミカル社製)で微粉砕し、還元型補酵素Q10含有乾燥粉末を調製した。
【0041】
【0042】
得られた還元型補酵素Q10含有乾燥粉末について、粉末の状態(性状)と、水への溶解性および溶解後8時間静置後の安定性を評価した。粉末の状態、水への溶解性および溶解後8時間静置後の安定性は目視観察により、3段階(A:良好、B:普通、C:不良)で評価した。水への溶解性については、若干の浮遊物が観察された場合にはBと評価し、油状のリングが観察された場合にはCと評価した。溶解後8時間静置後の安定性については、溶解時の状態を維持した場合にはAと評価し、若干の浮遊物が観察された場合にはBと評価し、油状のリングが観察された場合にはCと評価した。また、水への溶解性と溶解後8時間静置後の安定性は、室温の水100mLに還元型補酵素Q10含有乾燥粉末0.2gを添加し、撹拌混合した後に観察を行った。
【0043】
結果は表3に示される通りであった。
【0044】
【0045】
以上の通り、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムを還元型補酵素Q10に対して所定量配合した粉末状組成物は、粉末の状態および水への溶解性に加え、溶解後の安定性に優れていた。また、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム以外に、アラビアガムを還元型補酵素Q10に対して所定量配合した粉末状組成物は、粉末の状態および水への溶解性に加え、溶解後の安定性に優れていた。
【0046】
また、得られた還元型補酵素Q10含有乾燥粉末を5gずつ50mL容のガラス瓶に小分けし、45℃で保存して保存安定性を評価した。14日目に粉末の状態(性状)、水への溶解性、溶解後8時間静置後の安定性および還元型補酵素Q10残量を評価した。粉末の状態、水への溶解性および溶解後8時間静置後の安定性は目視観察により、3段階(A:良好、B:普通、C:不良)で評価した。水への溶解性については、若干の浮遊物が観察された場合にはBと評価し、油状のリングが観察された場合にはCと評価した。溶解後8時間静置後の安定性については、溶解時の状態を維持した場合にはAと評価し、若干の浮遊物が観察された場合にはBと評価し、油状のリングが観察された場合にはCと評価した。また、水への溶解性と溶解後8時間静置後の安定性は、室温の水100mLに還元型補酵素Q10含有乾燥粉末0.2gを添加し、撹拌混合した後に観察を行った。有効成分の保存安定性は、還元型補酵素Q10含有比率(保存安定性試験前の含有量に対する保存安定性試験後の含有量の比率%)により評価した。還元型補酵素Q10含有量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により測定した。HPLC条件は以下の通りであった。
<HPLC条件>
機種:Waters Acquity Ultra-Performance Liquid Chromatography システム
カラム:C18、2.5μm、2.1mm×100mm
流速:0.3mL/分
溶出:メタノール/n-ヘキサン(9:1)
注入量:3μL
カラム温度:35℃
検出波長:290nm
【0047】
結果は表4に示される通りであった。
【0048】
【0049】
以上の通り、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムを還元型補酵素Q10に対して所定量配合した粉末状組成物は、保存後において粉末の状態および水への溶解性に優れており、さらに、保存後において溶解後の安定性にも優れていた。また、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム以外に、アラビアガムを還元型補酵素Q10に対して所定量配合した粉末状組成物は、保存後において粉末の状態および水への溶解性に優れており、さらに、保存後において溶解後の安定性にも優れていた。さらに、酸化防止剤を還元型補酵素Q10に対して所定量質量%配合した粉末状組成物は、還元型補酵素Q10の保存安定性に優れていた。
【0050】
例3:還元型補酵素Q
10
含有粉末状組成物の製造と評価(2)
例2で得られた結果に基づいて、還元型補酵素Q10含有粉末状組成物を製造した。すなわち、下記表5の試験区ごとにすべての成分を1Lの水に加温しながら溶解し、80℃に加温した後に高圧ホモジナイザー(三丸機械工業社製、500kg/cm2、3回繰り返し)を用いて乳化した。乳化後、噴霧乾燥器(ミニスプレードライアーGB22、ヤマト科学社製)を用いて還元型補酵素Q10含有乾燥粉末を調製した。
【0051】
【0052】
得られた還元型補酵素Q10含有乾燥粉末を10gずつ100mL容の褐色ガラス瓶に分取し、3本は脱気窒素ガスに置換した後に密封し、5℃の冷蔵庫、18℃の保管庫、45℃の恒温器に保存して保存安定性を評価した。1本ずつ2週間保存した後、粉末の状態(性状)、水への溶解性、溶解後8時間静置後の安定性および還元型補酵素Q10残量を評価した。粉末の状態は目視観察により行った。また、水への溶解性および溶解後8時間静置後の安定性は目視観察により、3段階(A:良好、B:普通、C:不良)で評価した。水への溶解性については、若干の浮遊物が観察された場合にはBと評価し、油状のリングが観察された場合にはCと評価した。溶解後8時間静置後の安定性については、溶解時の状態を維持した場合にはAと評価し、若干の浮遊物が観察された場合にはBと評価し、油状のリングが観察された場合にはCと評価した。また、水への溶解性と溶解後8時間静置後の安定性は、室温の水100mLに還元型補酵素Q10含有乾燥粉末0.2gを添加し、撹拌混合した後に観察を行った。有効成分の保存安定性は、還元型補酵素Q10含有比率(保存安定性試験前の含有量に対する保存安定性試験後の含有量の比率%)により評価した。還元型補酵素Q10含有量は例2と同様にHPLC法により測定した。
【0053】
結果は表6~8に示される通りであった。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
以上の通り、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムおよびアラビアガムを還元型補酵素Q10に対して所定割合で配合した粉末状組成物は、保存後において粉末の状態および水への溶解性に優れており、さらに、保存後において溶解後の安定性にも優れていた。また、酸化防止剤を還元型補酵素Q10に対して所定割合で配合した粉末状組成物は、還元型補酵素Q10の保存安定性に優れていた。
【0058】
例4:製剤の安定性評価
例3で得られた還元型補酵素Q10含有乾燥粉末(試験区51~55)を常法に従って錠剤に製剤化し、保存安定性を評価した。具体的には、還元麦芽糖150mg、還元型補酵素Q10含有乾燥粉末(試験区51~55)100mg、結晶セルロース100mg、コーンスターチ35mg、ステアリン酸マグネシウム2mg、ショ糖脂肪酸エステル2mgを混合し、錠剤直径8mm、厚み3.8mm、打錠圧14kNで錠剤を打錠調製した。得られた錠剤を、50mL容の褐色ガラス瓶に20錠ずつ詰め、保存開始時、2週間後、4週間後および6週間後の45℃での保存安定性を評価した。保存安定性は、還元型補酵素Q10含有比率(保存安定性試験前の含有量に対する保存安定性試験後の含有量の比率%)により評価した。還元型補酵素Q10含有量は例2と同様にHPLC法により測定した。
【0059】
結果は表9に示される通りであった。
【0060】
【0061】
以上の通り、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、アラビアガムおよび酸化防止剤を還元型補酵素Q10に対して所定割合で配合した粉末状組成物は、有効成分である還元型補酵素Q10の保存安定性に優れていた。また、試験区55の乾燥粉末を含有する錠剤の保存安定性の試験結果から、酸化防止剤に加えてアラビアガムの存在が還元型補酵素Q10の保存安定性向上に有効であることが判明した。